(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ダミーディスクおよびダミーディスクを用いた表面高さ測定方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/18 20060101AFI20230719BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20230719BHJP
B24B 53/017 20120101ALI20230719BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
B24B49/18
B24B53/00 A
B24B53/00 J
B24B53/017 A
H01L21/304 622M
(21)【出願番号】P 2019015564
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 弘行
(72)【発明者】
【氏名】本島 靖之
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-145424(JP,A)
【文献】特開2001-219376(JP,A)
【文献】米国特許第06419574(US,B1)
【文献】特開2012-250309(JP,A)
【文献】特開2010-172996(JP,A)
【文献】特開2016-144860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/18
B24B 53/00
B24B 53/017
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ研磨に使用される研磨パッドが貼り付けられる前の研磨テーブルのテーブル面の高さを測定するときにドレッサーのディスクホルダーに固定されるダミーディスクであって、
前記ディスクホルダーに接触可能な第1面と、
前記第1面とは反対側の第2面とを備え、
前記第2面は、
前記テーブル面の高さを測定するときに前記テーブル面に接触する複数の突部と、前記複数の突部の間に位置し、前記テーブル面に供給された液体を前記ダミーディスクの外に流すための複数の液体排出流路を有し、
前記複数の液体排出流路は、前記第2面の一端から他端まで延びている、ダミーディスク。
【請求項2】
前記複数の液体排出流路は、複数の溝である、請求項1に記載のダミーディスク。
【請求項3】
前記複数の溝は、互いに平行に配列された複数の直線溝である、請求項2に記載のダミーディスク。
【請求項4】
前記複数の液体排出流路は、複数の第1溝と、前記複数の第1溝に交差する複数の第2溝である、請求項1に記載のダミーディスク。
【請求項5】
前記複数の第2溝は、前記複数の第1溝と垂直である、請求項4に記載のダミーディスク。
【請求項6】
前記複数の液体排出流路は、前記第2面の全体に均一に分布している、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のダミーディスク。
【請求項7】
前記第2面の全体の面積に占める前記液体排出流路の面積は、40%~81%である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のダミーディスク。
【請求項8】
研磨テーブルおよびダミーディスクを回転させ、
前記研磨テーブルのテーブル面に液体を供給しながら、前記ダミーディスクを前記テーブル面に接触させ、
前記テーブル面上で前記ダミーディスクを移動させながら、前記テーブル面の高さを複数の測定点で測定し、
前記テーブル面の傾きを示すテーブルプロファイルを、前記テーブル面の高さの測定値から作成する工程を含み、
前記ダミーディスクは、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のダミーディスクである、方法。
【請求項9】
水平線からの前記テーブルプロファイルの傾き角度を算出し、
前記傾き角度が0になるまで前記テーブルプロファイルを回転させることで、前記テーブルプロファイルを補正する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記テーブル面上に配置された研磨パッドを前記研磨テーブルとともに回転させ、かつドレッシングディスクを回転させ、
前記研磨パッドの研磨面に液体を供給しながら、前記ドレッシングディスクを前記研磨面に接触させ、
前記研磨面上で前記ドレッシングディスクを移動させながら、前記研磨面の高さを複数の測定点で測定し、
前記研磨面の高さ分布を示す初期パッドプロファイルを、前記研磨面の高さの測定値から作成する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記傾き角度と同じ角度だけ前記初期パッドプロファイルを回転させることで、前記初期パッドプロファイルを補正する工程をさらに含み、前記初期パッドプロファイルを回転させる方向は、前記テーブルプロファイルを回転させる方向と同じである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記補正されたテーブルプロファイルおよび前記補正された初期パッドプロファイルを表示画面上に表示する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記研磨テーブル、前記テーブル面、および前記テーブルプロファイルは、それぞれ、第1研磨テーブル、第1テーブル面、および第1テーブルプロファイルであり、
前記方法は、
第2研磨テーブルおよび前記ダミーディスクを回転させ、
前記第2研磨テーブルの第2テーブル面に液体を供給しながら、前記ダミーディスクを前記第2テーブル面に接触させ、
前記第2テーブル面上で前記ダミーディスクを移動させながら、前記第2テーブル面の高さを複数の測定点で測定し、
前記第2テーブル面の傾きを示す第2テーブルプロファイルを、前記第2テーブル面の高さの測定値から作成し、
前記水平線からの前記第2テーブルプロファイルの傾き角度を算出し、
前記第2テーブルプロファイルの傾き角度が0になるまで前記第2テーブルプロファイルを回転させることで、前記第2テーブルプロファイルを補正する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板を研磨する研磨装置に組み込まれた研磨テーブルのテーブル面の高さ測定に使用されるダミーディスクに関し、特にドレッサーのドレッシングディスクに代えて使用されるダミーディスクに関する。また、本発明は、研磨装置の研磨パッドのドレッシング(コンディショニング)に使用されるドレッシングディスクに関する。さらに、本発明は、上記ダミーディスクを用いて研磨テーブルのテーブル面の高さを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMP装置は、研磨テーブルに貼り付けられた研磨パッド上にスラリーを供給しながら、研磨パッドとウェーハとを相対移動させることにより、ウェーハの表面を化学機械的に研磨する。研磨パッドの研磨性能を維持するためには、ドレッサーにより研磨パッドの研磨面を定期的にドレッシング(コンディショニングともいう)することが必要とされる。ドレッサーは、ダイヤモンド粒子が全面に固定されたドレッシング面を有している。
【0003】
研磨パッドのドレッシングは、次のようにして行われる。研磨テーブルは研磨パッドとともに回転しながら、研磨面上に液体(例えば純水)が供給される。ドレッサーは、その軸心を中心に回転しながら、研磨パッドの研磨面を押圧し、この状態で研磨面上を移動する。ドレッサーのドレッシング面は研磨パッドの研磨面を僅かに削り取り、これにより研磨パッドの研磨面が再生される。
【0004】
ウェーハの研磨中、ウェーハは研磨パッドの研磨面に押し付けられる。したがって、研磨テーブルの半径方向に沿った研磨面の高さ分布を示すパットプロファイルは、ウェーハの研磨に影響する。研磨パッドの厚さは、研磨パッドのドレッシングが繰り返されるにつれて、徐々に減少する。その一方で、パッドプロファイルを一定に維持することは、ウェーハの研磨の正確な制御につながる。
【0005】
研磨パッドの研磨面の高さは、ドレッサーの高さ(上下方向の位置)から間接的に測定することができる。すなわち、研磨テーブルを研磨パッドとともに回転させ、ドレッサーを研磨パッドの研磨面上で移動させながら、表面高さ測定器でドレッサーの高さを測定する。ドレッサーの高さ(上下方向の位置)は、研磨面の高さに依存して変わる。したがって、ドレッサーの高さの分布は、研磨面の高さの分布、すなわちパッドプロファイルを表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-250309号公報
【文献】特開2010-172996号公報
【文献】特開2016-144860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
研磨パッドは、研磨テーブル上に配置される。したがって、パッドプロファイルは、研磨テーブルのテーブル面の傾きを示すテーブルプロファイルに依存して変わりうる。パッドプロファイルの管理を正しく行うためには、(i)研磨パッドをテーブル面に貼り付ける前に、正確なテーブルプロファイルを作成すること、および(ii)研磨パッドをテーブル面に貼り付けた後に、正確なパッドプロファイルを作成すること、が必要とされる。
【0008】
テーブルプロファイルは次のようにして取得することができる。研磨テーブルが回転していない状態でテーブル面の高さを複数の測定点で測定し、テーブル面の高さの測定値からテーブルプロファイルを作成する。しかしながら、テーブル面の高さの測定は、作業員によって手作業で行われるため、作業員のスキルに依存して測定結果が変わりうる。結果として、テーブル面の高さの安定した測定値を取得することが難しい。
【0009】
研磨パッドのドレッシング中にパッドプロファイルを作成する工程は、表面高さ測定器を用いて自動で実施することができ、かつドレッシング動作が終了するのと実質的に同時にパッドプロファイルの作成を完了することができる。しかしながら、研磨パッド上に存在する液体(例えば純水)がドレッサーの姿勢を不安定にし、結果として、ドレッサーの高さ、すなわち研磨面の高さの測定値が不正確となることがパッドドレッシングの実験結果からわかった。
【0010】
そこで、本発明は、表面高さ測定器が研磨テーブルのテーブル面の高さを正確に測定することを可能とするダミーディスクを提供する。さらに、本発明は、上記ダミーディスクを用いて研磨テーブルのテーブル面の高さを測定する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、ウェーハ研磨に使用される研磨パッドが貼り付けられる前の研磨テーブルのテーブル面の高さを測定するときにドレッサーのディスクホルダーに固定されるダミーディスクであって、前記ディスクホルダーに接触可能な第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを備え、前記第2面は、前記テーブル面の高さを測定するときに前記テーブル面に接触する複数の突部と、前記複数の突部の間に位置し、前記テーブル面に供給された液体を前記ダミーディスクの外に流すための複数の液体排出流路を有し、前記複数の液体排出流路は、前記第2面の一端から他端まで延びている、ダミーディスクが提供される。
【0012】
一態様では、前記複数の液体排出流路は、複数の溝である。
一態様では、前記複数の溝は、互いに平行に配列された複数の直線溝である。
一態様では、前記複数の液体排出流路は、複数の第1溝と、前記複数の第1溝に交差する複数の第2溝である。
一態様では、前記複数の第2溝は、前記複数の第1溝と垂直である。
一態様では、前記複数の液体排出流路は、前記第2面の全体に均一に分布している。
一態様では、前記第2面の全体の面積に占める前記液体排出流路の面積は、40%~81%である。
【0013】
一態様では、研磨パッドの研磨面をドレッシングするときにドレッサーのディスクホルダーに固定されるドレッシングディスクであって、前記ディスクホルダーに接触可能な第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを備え、前記第2面は、複数の突部と、前記複数の突部の間に位置する複数の液体排出流路を有し、前記複数の液体排出流路は、前記第2面の一端から他端まで延びており、前記複数の突部の表面には砥粒が固定されている、ドレッシングディスクが提供される。
【0014】
一態様では、前記複数の液体排出流路は、複数の溝である。
一態様では、前記複数の溝は、互いに平行に配列された複数の直線溝である。
一態様では、前記複数の液体排出流路は、複数の第1溝と、前記複数の第1溝に交差する複数の第2溝である。
一態様では、前記複数の第2溝は、前記複数の第1溝と垂直である。
一態様では、前記複数の液体排出流路は、前記第2面の全体に均一に分布している。
一態様では、前記第2面の全体の面積に占める前記液体排出流路の面積は、40%~81%である。
【0015】
一態様では、研磨テーブルおよび前記ダミーディスクを回転させ、前記研磨テーブルのテーブル面に液体を供給しながら、前記ダミーディスクを前記テーブル面に接触させ、前記テーブル面上で前記ダミーディスクを移動させながら、前記テーブル面の高さを複数の測定点で測定し、前記テーブル面の傾きを示すテーブルプロファイルを、前記テーブル面の高さの測定値から作成する方法が提供される。
【0016】
一態様では、前記方法は、水平線からの前記テーブルプロファイルの傾き角度を算出し、前記傾き角度が0になるまで前記テーブルプロファイルを回転させることで、前記テーブルプロファイルを補正する工程をさらに含む。
一態様では、前記方法は、前記テーブル面上に配置された研磨パッドを前記研磨テーブルとともに回転させ、かつ前記ドレッシングディスクを回転させ、前記研磨パッドの研磨面に液体を供給しながら、前記ドレッシングディスクを前記研磨面に接触させ、前記研磨面上で前記ドレッシングディスクを移動させながら、前記研磨面の高さを複数の測定点で測定し、前記研磨面の高さ分布を示す初期パッドプロファイルを、前記研磨面の高さの測定値から作成する工程をさらに含む。
【0017】
一態様では、前記方法は、前記傾き角度と同じ角度だけ前記初期パッドプロファイルを回転させることで、前記初期パッドプロファイルを補正する工程をさらに含み、前記初期パッドプロファイルを回転させる方向は、前記テーブルプロファイルを回転させる方向と同じである。
一態様では、前記方法は、前記補正されたテーブルプロファイルおよび前記補正された初期パッドプロファイルを表示画面上に表示する工程をさらに含む。
【0018】
一態様では、前記研磨テーブル、前記テーブル面、および前記テーブルプロファイルは、それぞれ、第1研磨テーブル、第1テーブル面、および第1テーブルプロファイルであり、前記方法は、第2研磨テーブルおよび前記ダミーディスクを回転させ、前記第2研磨テーブルの第2テーブル面に液体を供給しながら、前記ダミーディスクを前記第2テーブル面に接触させ、前記第2テーブル面上で前記ダミーディスクを移動させながら、前記第2テーブル面の高さを複数の測定点で測定し、前記第2テーブル面の傾きを示す第2テーブルプロファイルを、前記第2テーブル面の高さの測定値から作成し、前記水平線からの前記第2テーブルプロファイルの傾き角度を算出し、前記第2テーブルプロファイルの傾き角度が0になるまで前記第2テーブルプロファイルを回転させることで、前記第2テーブルプロファイルを補正する工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0019】
複数の液体排出流路を持つダミーディスクは、テーブル面上の液体の存在の影響を受けにくく、ダミーディスクの姿勢が安定する。結果として、表面高さ測定器は、テーブル面の高さを正確に測定することができ、正確なテーブルプロファイルを取得することができる。
複数の液体排出流路を持つドレッシングディスクは、研磨面上の液体の存在の影響を受けにくく、ドレッシングディスクの姿勢が安定する。結果として、表面高さ測定器は、研磨面の高さを正確に測定することができ、正確なパッドプロファイルを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】ドレッサーアームおよびドレッサーの上面図である。
【
図3】テーブル面の高さを測定しているときの研磨装置を示す図である。
【
図4】ダミーディスクの一実施形態を示す底面図である。
【
図6】ダミーディスクの一実施形態を示す底面図である。
【
図8】ダミーディスクの一実施形態を示す底面図である。
【
図9】液体排水流路を持たない試験用のフラットディスクを用いてテーブル面の高さを測定した結果を示すグラフである。
【
図10】
図4に示すダミーディスクを用いてテーブル面の高さを測定した結果を示すグラフである。
【
図11】
図6に示すダミーディスクを用いてテーブル面の高さを測定した結果を示すグラフである。
【
図12】
図8に示すダミーディスクを用いてテーブル面の高さを測定した結果を示すグラフである。
【
図13】表示画面上のテーブルプロファイルおよび固有パッドプロファイルを示す図である。
【
図14】テーブルプロファイル、固有パッドプロファイル、および初期パッドプロファイルを示すグラフである。
【
図15】表示画面上に表示された補正されたテーブルプロファイル、補正された固有パッドプロファイル、および補正された初期パッドプロファイルを示す図である。
【
図16】ドレッシングディスクの一実施形態を示す底面図である。
【
図18】ドレッシングディスクの一実施形態を示す底面図である。
【
図20】ドレッシングディスクの一実施形態を示す底面図である。
【
図21】上述したダミーディスクを用いたテーブルプロファイルの作成と、上述したドレッシングディスクを用いたパッドプロファイルの作成の一実施形態を示すフローチャートの一部を示す図である。
【
図22】フローチャートの他の部分を示す図である。
【
図23】第1研磨テーブル、第1ドレッサー、第2研磨テーブル、および第2ドレッサーを備えた研磨装置の一実施形態を示す図である。
【
図24】
図24(a)は、補正前の第1テーブルプロファイル、第1固有パッドプロファイル、および第1初期パッドプロファイルを示す図であり、
図24(b)は、補正前の第2テーブルプロファイル、第2固有パッドプロファイル、および第2初期パッドプロファイルを示す図である。
【
図25】
図25(a)は、補正された第1テーブルプロファイル、補正された第1固有パッドプロファイル、および補正された第1初期パッドプロファイルを示す図であり、
図25(b)は、補正された第2テーブルプロファイル、補正された第2固有パッドプロファイル、および補正された第2初期パッドプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、基板の一例であるウェーハを研磨する研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド22を保持する研磨テーブル12と、研磨パッド22上に液体(例えば、純水)を供給する液体供給ノズル5と、研磨パッド22上にスラリーを供給するスラリー供給ノズル6と、ウェーハWを研磨するための研磨ユニット1と、ウェーハWの研磨に使用される研磨パッド22をドレッシング(コンディショニング)するドレッシングユニット2とを備えている。
【0022】
研磨ユニット1は、研磨ヘッドシャフト18の下端に連結された研磨ヘッド20を備えている。研磨ヘッド20は、その下面にウェーハWを真空吸着により保持するように構成されている。研磨ヘッドシャフト18は、図示しないモータの駆動により回転し、この研磨ヘッドシャフト18の回転により、研磨ヘッド20およびウェーハWが回転する。研磨ヘッドシャフト18は、図示しない上下動機構(例えば、サーボモータおよびボールねじなどから構成される)により研磨パッド22に対して上下動するようになっている。
【0023】
研磨テーブル12は、その下方に配置されるテーブルモータ13に連結されている。研磨テーブル12は、その軸心周りにテーブルモータ13によって回転される。研磨テーブル12のテーブル面14上には研磨パッド22が貼付されており、研磨パッド22の上面はウェーハWを研磨する研磨面23を構成している。
【0024】
ウェーハWの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド20および研磨テーブル12をそれぞれ回転させ、スラリー供給ノズル6から研磨パッド22上にスラリーを供給する。この状態で、ウェーハWを保持した研磨ヘッド20を下降させ、ウェーハWを研磨パッド22の研磨面23に押し付ける。ウェーハWと研磨パッド22とはスラリーの存在下で互いに摺接され、これによりウェーハWの表面が研磨される。
【0025】
ドレッシングユニット2は、研磨パッド22の研磨面23に接触するドレッサー50と、ドレッサー50に連結されたドレッサーシャフト55と、ドレッサーシャフト55の上端に設けられた押し付け力発生装置としてのエアシリンダ56と、ドレッサーシャフト55を回転自在に支持するドレッサーアーム59と、ドレッサーアーム59を支持する支軸60と、支軸60に連結された揺動モータ65を備えている。
【0026】
ドレッサー50は、下面にダイヤモンド粒子が固定されたドレッシングディスク51と、ドレッシングディスク51を保持するディスクホルダー52と、ディスクホルダー52およびドレッシングディスク51をドレッサーシャフト55に対して傾動可能とするジンバル機構53を備えている。ドレッシングディスク51は、ねじまたは磁石などの締結具(図示せず)によりディスクホルダー52に着脱可能に取り付けられる。ドレッシングディスク51の下面は、研磨パッド22の研磨面23をドレッシング(コンディショニング)するドレッシング面を構成する。
【0027】
ジンバル機構53は、ドレッサー50が、研磨パッド22の研磨面23の表面形状に従って傾動することを可能とする機構である。ジンバル機構53の具体的な構成は特に限定されない。例えば、ジンバル機構53は、日本国特開2010-172996号公報および日本国特開2016-144860号公報に開示されているような、球面軸受、あるいは球面軸受と弾性部材との組み合わせ、あるいは2つの球面軸受の組み合わせから構成されてもよい。
【0028】
ドレッサーシャフト55およびドレッサー50は、ドレッサーアーム59に対して上下動可能となっている。エアシリンダ56は、ドレッサー50が研磨パッド22に加える力を発生させる装置である。エアシリンダ56は、圧力レギュレータ62に接続されており、圧縮気体は、圧力レギュレータ62を通ってエアシリンダ56に供給される。ドレッサー50が研磨パッド22を押し付ける力は、圧力レギュレータ62によって調節される。
【0029】
圧力レギュレータ62は、データ処理部70に電気的に接続されている。圧力レギュレータ62の動作は、データ処理部70によって制御される。より具体的には、データ処理部70は、圧力レギュレータ62に圧縮気体の圧力の目標値を送信し、圧力レギュレータ62は、エアシリンダ56内の圧縮気体の圧力が目標値に維持されるように動作する。
【0030】
ドレッサーシャフト55は、ドレッサーアーム59内に設置されたドレッサーモータ61により回転し、このドレッサーシャフト55の回転により、ドレッサー50がその軸心周りに回転する。エアシリンダ56は、ドレッサーシャフト55を介してドレッサー50を所定の力で研磨パッド22の研磨面23に押圧する。
【0031】
データ処理部70は、プログラムを格納する記憶装置70aと、プログラムに従って演算を実行する処理装置(CPUなど)70bと、データおよびGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)などを表示するための表示画面70cを備えた少なくとも1台のコンピュータから構成されている。
【0032】
図2は、ドレッサーアーム59およびドレッサー50の上面図である。
図2に示すように、ドレッサーアーム59は揺動モータ65に駆動されて、支軸60を中心として揺動するように構成されている。ドレッサーアーム59の揺動に伴い、ドレッサーアーム59の一端に連結されたドレッサー50は、研磨パッド22の研磨面23上を研磨パッド22の半径方向に移動する。
【0033】
研磨パッド22の研磨面23のドレッシングは次のようにして行われる。研磨テーブル12および研磨パッド22をテーブルモータ13により回転させ、液体供給ノズル5から液体(例えば、純水)を研磨パッド22の研磨面23に供給する。さらに、ドレッサー50をその軸心周りに回転させる。ドレッサー50はエアシリンダ56により研磨面23に押圧され、ドレッシングディスク51の下面(ドレッシング面)を研磨面23に摺接させる。この状態で、ドレッサーアーム59を揺動させ、研磨パッド22上のドレッサー50を研磨パッド22の略半径方向に移動させる。研磨パッド22は、回転するドレッサー50により削り取られ、これにより研磨面23のドレッシングが行われる。
【0034】
ドレッサー50の移動方向は、テーブル面14と完全に平行ではないが、ドレッサー50の移動方向とテーブル面14との角度は、ドレッシング動作に影響を与えない程度の微小な範囲内に収められている。
【0035】
ドレッサーアーム59には、研磨面23の高さを測定するパッド高さセンサ40が固定されている。また、ドレッサーシャフト55には、パッド高さセンサ40に対向してセンサターゲット41が固定されている。センサターゲット41は、ドレッサーシャフト55およびドレッサー50と一体に上下動し、一方、パッド高さセンサ40の上下方向の位置は固定されている。
【0036】
本実施形態に使用されるパッド高さセンサ40は変位センサであり、センサターゲット41の変位を測定することで、研磨面23の高さを間接的に測定することができる。センサターゲット41はドレッサーシャフト55を介してドレッサー50に連結されているので、パッド高さセンサ40は、研磨パッド22のドレッシング中に研磨面23の高さを測定することができる。さらに、後述するように、パッド高さセンサ40は、研磨テーブル12のテーブル面14の高さを測定することができる。本実施形態では、パッド高さセンサ40は、研磨面23の高さおよびテーブル面14の高さを測定する表面高さ測定器を構成する。
【0037】
パッド高さセンサ40は、研磨面23に接するドレッサー50の上下方向の位置から研磨面23の高さを間接的に測定する。研磨面23の高さは、予め設定された基準平面からドレッシングディスク51までの距離である。基準平面は、仮想上の平面である。本実施形態では、基準平面は、ドレッサーアーム59の揺動平面、あるいはドレッサーアーム59の揺動平面に平行な平面である。パッド高さセンサ40としては、リニアスケール式センサ、レーザ式センサ、超音波センサ、または渦電流式センサなどのあらゆるタイプの接触式センサまたは非接触式センサを用いることができる。
【0038】
パッド高さセンサ40は、データ処理部70に接続されており、パッド高さセンサ40の出力信号(すなわち、研磨面23の高さの測定値)はデータ処理部70に送られるようになっている。データ処理部70は、研磨面23の高さの測定値から、研磨テーブル12の半径方向に沿った研磨面23の高さ分布を示すパッドプロファイルを作成するように構成されている。
【0039】
研磨パッド22は、研磨テーブル12上に配置される。したがって、パッドプロファイルは、研磨テーブル12のテーブル面14の傾きを示すテーブルプロファイルに影響される。パッドプロファイルの管理を正しく行うためには、(i)研磨パッド22をテーブル面14に貼り付ける前に、正確なテーブルプロファイルを作成すること、および(ii)研磨パッド22をテーブル面14に貼り付けた後に、正確なパッドプロファイルを作成すること、が必要とされる。テーブルプロファイルは、テーブル面14の傾きを表し、より詳しくは、テーブル面14の高さと、研磨テーブル12の半径方向における位置(以下、テーブル半径位置という)との関係を示す。
【0040】
以下、テーブルプロファイルを作成する方法の一実施形態について説明する。テーブル面14は、組み立て上の機械的な誤差に起因して、上述した基準平面に対して完全に平行ではない。すなわち、研磨テーブル12の中心軸線は、基準平面に対して完全に垂直ではない。テーブルプロファイルは、テーブル面14の傾きを反映しており、研磨テーブル12に固有のプロファイルである。
【0041】
テーブルプロファイルは、ウェーハの研磨や研磨パッド22のドレッシングに影響されることなく、不変である。したがって、パッドプロファイルの管理はテーブルプロファイルに基づいて行われる。研磨パッド22を研磨テーブル12に配置する前に、テーブル面14の高さが測定され、テーブル面14の高さの測定値からテーブルプロファイルが作成される。
【0042】
図3は、テーブル面14の高さを測定しているときの研磨装置を示す図である。
図1に示すドレッシングディスク51は、ディスクホルダー52から取り外され、代わりにダミーディスク80がディスクホルダー52に取り付けられる。ダミーディスク80は、ドレッシングディスク51と同様に、ねじまたは磁石などの締結具(図示せず)によりディスクホルダー52に着脱可能に固定される。
【0043】
ダミーディスク80は、テーブル面14を傷つけないように、テーブル面14よりも柔らかい材料から構成されている。本実施形態では、テーブル面14は、SiC(炭化珪素)から構成されており、ダミーディスク80は、アクリル樹脂から構成されている。ただし、ダミーディスク80の材料は、アクリル樹脂に限定されず、テーブル面14よりも柔らかい材料であり、かつテーブル面14を傷つけない材料である限り、他の材料を使用してもよい。
【0044】
研磨パッドが貼り付けられていない状態で研磨テーブル12を回転させ、さらに液体供給ノズル5から液体をテーブル面14上に供給する。液体としては純水が使用される。液体は遠心力によりテーブル面14上に広がり、テーブル面14上に液膜を形成する。ドレッサーモータ61がドレッサーシャフト55およびドレッサー50(ダミーディスク80を含む)を回転させながら、エアシリンダ56は、ドレッサー50を下降させ、回転するダミーディスク80をテーブル面14に接触させる。さらに、揺動モータ65は、ドレッサー50(ダミーディスク80を含む)をテーブル面14の半径方向に移動させながら、パッド高さセンサ40はテーブル面14の高さを複数の測定点で1回または複数回測定する。
【0045】
テーブル面14の高さは、上述した基準平面からダミーディスク80までの距離である。テーブル面14の高さの測定値は、データ処理部70に送られる。データ処理部70は、テーブル面14の高さの測定値からテーブルプロファイルを作成する。テーブル面14の高さを複数の測定点で複数回測定した場合は、同じテーブル半径位置にある測定点で得られた測定値の平均を算出してテーブルプロファイルを作成する。得られたテーブルプロファイルは、記憶装置70aに記憶される。
【0046】
テーブル面14の測定にダミーディスク80を用いる理由は、テーブル面14を傷つけることを防止することに加えて、テーブル面14上の液体に起因してドレッサー50の姿勢が不安定になることを防止するためである。すなわち、ドレッサー50は、ドレッサー50がドレッサーシャフト55に対して自由に傾動することを許容するジンバル機構53を備えている。ドレッサー50がテーブル面14上を移動しているとき、ドレッサー50とテーブル面14との間に存在する液体は、ドレッサー50の姿勢を不安定にしやすい。結果として、ドレッサーシャフト55が上下に揺れ、テーブル面14の測定値がばらついてしまう。
【0047】
そこで、液体の影響を排除するために、ダミーディスク80は以下に説明する構成を備えている。
図4は、ダミーディスク80の一実施形態を示す底面図であり、
図5は、
図4に示すA-A線断面図である。ダミーディスク80は、円形である。ダミーディスク80は、ディスクホルダー52に接触可能な第1面81と、第1面81とは反対側の第2面82とを備えている。第1面81および第2面82は、平坦面である。第2面82の周囲には、環状のテーパー面83が存在している。
【0048】
ダミーディスク80がディスクホルダー52に固定されるとき、第1面81はディスクホルダー52に接触する。ダミーディスク80を用いてテーブル面14の高さが測定されるとき、第2面82はテーブル面14に対向する。本実施形態では、第1面81および第2面82の両方は、平坦な円形である。一実施形態では、第1面81および第2面82のうちの一方または両方は、平坦な円環形状を有してもよい。
【0049】
第2面82は、複数の突部85と、複数の突部85の間に位置する複数の液体排出流路としての複数の溝88を備えている。複数の溝88は、第2面82の一端から他端まで延びている。すなわち、複数の溝88は、第2面82の全体を横切って延びている。本実施形態では、複数の溝88は、いわゆるラインアンドスペースパターンに従って配列されている。複数の溝88は、互いに平行に配列された直線溝である。溝88は、等間隔に配列されており、第2面82の全体に均一に分布している。
【0050】
このように配列された溝88は、液体排出流路として機能する。すなわち、液体が液体供給ノズル5からテーブル面14上に供給されているとき、ダミーディスク80は自身の軸心を中心に回転しながら、テーブル面14上を移動する。ダミーディスク80の下に存在する液体は、溝88を通ってダミーディスク80の外に流れ、複数の突部85の全体は、テーブル面14に接触する。溝88は、第2面82の一端から他端まで延びているので、液体はダミーディスク80の下にとどまらない。結果として、ダミーディスク80の突部85の全体はテーブル面14に接触し、ダミーディスク80の姿勢、すなわちドレッサー50全体の姿勢が安定する。
【0051】
ダミーディスク80の下に存在する液体を速やかに溝88内に導くために、溝88は、第2面82の全体に均一に分布している。第2面82の全体の面積に占める溝88の全体の面積は、約50%である。
【0052】
図6は、ダミーディスク80の一実施形態を示す底面図であり、
図7は、
図6に示すB-B線断面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図4および
図5に示す構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、本実施形態のダミーディスク80は、複数の液体排出流路として複数の第1溝88aおよび複数の第2溝88bを有している。複数の第2溝88bは、複数の第1溝88aに交差している。本実施形態では、複数の第2溝88bは、複数の第1溝88aと垂直である。第1溝88aは、第2面82の一端から他端まで延びており、第2溝88bも、第2面82の一端から他端まで延びている。
【0054】
ダミーディスク80の下に存在する液体を速やかに溝88内に導くために、溝88は、第2面82の全体に均一に分布している。第2面82の全体の面積に占める溝88の全体の面積は、約75%である。
【0055】
図6に示す突部85は四角形である。
図8に示すように、突部85は円形であってもよい。
図4乃至
図8に示すダミーディスク80は、ドレッサー50とテーブル面14との間に存在する液体に起因するドレッサー50の姿勢の不安定を解消することができる。ただし、複数の液体排出流路が第2面82の一端から他端まで延びている限りにおいて、液体排出流路の配置はこれら実施形態に限られない。一実施形態では、第2面82の全体の面積に占める溝88(または溝88a,88b)の全体の面積は、40%~81%である。
【0056】
図9は、液体排水流路を持たない試験用のフラットディスクを用いてテーブル面14の高さを測定した結果を示すグラフである。
図9において、縦軸はテーブル面14のエッジ部と中心部との間での高さの差を表し、横軸はフラットディスクをテーブル面14に押し付ける力[N]を表している。
図9の横軸上の力F1、F2の関係は、F1<F2である。グラフ中の水平点線は、研磨テーブル12およびフラットディスクを回転させず、かつ液体をテーブル面14上に供給しない静的条件下で測定されたテーブル面14のエッジ部と中心部での高さの差を表している。
【0057】
テーブル面14の高さは、研磨テーブル12およびフラットディスクを回転させ、かつテーブル面14上に液体を供給しながら、動的に測定した。さらに、研磨テーブル12の回転速度と、フラットディスクの回転速度の組み合わせを変えながら、かつ、フラットディスクをテーブル面14に押し付ける力を変えながら、テーブル面14のエッジ部の高さと、中心部の高さを測定した。
図9から分かるように、フラットディスクに加える力が変わると、測定結果がばらつく。さらに、測定結果は、研磨テーブル12およびフラットディスクを回転させながら静的に測定した結果(水平点線で示す)から大きく異なっている。
【0058】
図10は、
図4に示すダミーディスク80を用いてテーブル面14の高さを測定した結果を示すグラフであり、
図11は、
図6に示すダミーディスク80を用いてテーブル面14の高さを測定した結果を示すグラフであり、
図12は、
図8に示すダミーディスク80を用いてテーブル面14の高さを測定した結果を示すグラフである。
図10乃至
図12において、縦軸はテーブル面14のエッジ部と中心部との間での高さの差を表し、横軸はフダミーディスク80をテーブル面14に押し付ける力[N]を表している。グラフ中の水平点線は、研磨テーブル12およびダミーディスク80を回転させず、かつ液体をテーブル面14上に供給しない静的条件下で測定されたテーブル面14のエッジ部と中心部での高さの差を表している。
【0059】
テーブル面14の高さは、研磨テーブル12およびダミーディスク80を回転させ、かつテーブル面14上に液体を供給しながら、動的に測定した。
図10、
図11、および
図12に示すグラフから分かるように、測定結果は、ダミーディスク80に加える力の変化にかかわらずほぼ一定であり、かつ測定結果のばらつきが小さい。さらに、測定結果は、研磨テーブル12およびダミーディスク80を回転させないで静的に測定した結果(水平点線で示す)に極めて近い。
【0060】
以上の実験結果は、複数の液体排出流路88(または88a,88b)を持つダミーディスク80は、液体排出流路を持たないフラットディスクに比べて、テーブル面14上の液体の存在の影響を受けにくく、ダミーディスク80の姿勢が安定していることを示している。結果として、パッド高さセンサ(表面高さ測定器)40は、テーブル面14の高さを正確に測定することができ、データ処理部70は正確なテーブルプロファイルを作成することができる。
【0061】
テーブルプロファイルがデータ処理部70によって作成された後、未使用の(新品の)研磨パッド22がテーブル面14に貼り付けられる。この未使用の研磨パッド22の研磨面23の高さの分布、すなわち固有パッドプロファイルを作成するために、ドレッシングディスク51または上述したダミーディスク80が使用される。固有パッドプロファイルは、研磨パッド22の最初のドレッシングが行われているときの研磨面23の高さ、または研磨パッド22の最初のドレッシングが行われる前の研磨面23の高さと、テーブル半径位置との関係を示している。以下、ドレッシングディスク51を用いた固有パッドプロファイルの作成方法の一実施形態について説明する。
【0062】
ダミーディスク80はディスクホルダー52から取り外され、ドレッシングディスク51はディスクホルダー52に固定される。研磨テーブル12とともに未使用の研磨パッド22をテーブルモータ13により回転させ、かつドレッシングディスク51を備えたドレッサー50をドレッサーモータ61により回転させる。液体供給ノズル5から研磨パッド22の研磨面23に液体を供給しながら、ドレッシングディスク51を研磨面23に接触させる。液体としては純水が使用される。さらに、揺動モータ65は、ドレッサー50(ドレッシングディスク51を含む)を研磨パッド22の半径方向に移動させる。このようにして、ドレッシングディスク51は、研磨面23上を移動しながら、研磨パッド22の最初のドレッシングを行う。
【0063】
ドレッサー50(ドレッシングディスク51を含む)が研磨パッド22の半径方向に移動しながら、パッド高さセンサ40は研磨パッド22の研磨面23の高さを複数の測定点で測定する。研磨面23の高さは、テーブル面14の高さの測定に使用された基準平面からドレッシングディスク51までの距離である。研磨面23の高さの測定値は、データ処理部70に送られる。データ処理部70は、研磨面23の高さの測定値から固有パッドプロファイルを作成する。データ処理部70は、得られた固有パッドプロファイルを、記憶装置70aに記憶する。
【0064】
データ処理部70は、
図13に示すように、テーブルプロファイルおよび固有パッドプロファイルを表示画面70c(
図1参照)上に表示する。
図13において、縦軸は、基準平面からのテーブル面14の高さおよび研磨面23の高さを表し、横軸はテーブル半径位置を表している。研磨パッド22の研磨面23は、テーブル面14に平行であることが理想的である。しかしながら、
図13に示すように、固有パッドプロファイルは、通常、テーブルプロファイルと一致しない。
【0065】
そこで、ドレッシングディスク51を用いて研磨パッド22の研磨面23を削り取り、パッドプロファイルをテーブルプロファイルと一致させる慣らしドレッシングが行われる。具体的には、研磨テーブル12およびドレッサー50(ドレッシングディスク51を含む)をそれぞれ回転させながら、液体供給ノズル5から液体を研磨パッド22の研磨面23上に供給する。回転するドレッシングディスク51を研磨面23に押し付けながら、かつ液体を研磨面23上に供給しながら、ドレッサー50を研磨パッド22の半径方向に移動させる。
【0066】
ドレッサー50が研磨パッド22上を移動しているとき、エアシリンダ56がドレッサー50を研磨パッド22に押し付ける力は、圧力レギュレータ62によって調節される。より具体的には、回転するドレッシングディスク51が研磨パッド22上を移動しているときに、データ処理部70は、
図1に示す圧力レギュレータ62の動作を制御して、エアシリンダ56がドレッシングディスク51を研磨面23に対して押し付ける力を、テーブルプロファイルと固有パッドプロファイルとの差に基づいて調節する。例えば、固有パッドプロファイル上の研磨面23の高さがテーブルプロファイル上のテーブル面14の高さよりも高いテーブル半径位置では、エアシリンダ56はより大きな力でドレッシングディスク51を研磨パッド22に対して押し付ける。一方、固有パッドプロファイル上の研磨面23の高さがテーブルプロファイル上のテーブル面14の高さよりも低いテーブル半径位置では、エアシリンダ56はより小さな力でドレッシングディスク51を研磨パッド22に対して押し付ける。
【0067】
このように、ドレッシングディスク51が研磨パッド22を押し付ける力は、テーブルプロファイルと固有パッドプロファイルとの差に基づいて調節され、パッドプロファイルをテーブルプロファイルに一致させる。このドレッシングは、研磨パッド22の慣らしドレッシングである。以下の説明では、ウェーハの研磨に使用されていない研磨パッド22をドレッシングすることでテーブルプロファイルに一致したパッドプロファイル(すなわち慣らし済みパッドプロファイル)を、初期パッドプロファイルという。初期パッドプロファイルは、慣らしドレッシングが施された研磨パッド23の研磨面23の高さと、テーブル半径位置との関係を示している。
【0068】
図14は、テーブルプロファイル、固有パッドプロファイル、および初期パッドプロファイルを示すグラフである。
図14において、縦軸は、基準平面からのテーブル面14の高さおよび研磨面23の高さを表し、横軸はテーブル半径位置(研磨テーブル12の半径方向における位置)を表している。
図14から分かるように、初期パッドプロファイルはテーブルプロファイルに一致している。
【0069】
初期パッドプロファイルは、ウェーハの研磨に使用されていない研磨パッド22のパッドプロファイルである。ウェーハが研磨されるたびに、研磨パッド22の研磨面23はドレッサー50によりドレッシングされる。このとき、パッドプロファイルがテーブルプロファイルに一致するように、データ処理部70は、圧力レギュレータ62に指令を発して、エアシリンダ56がドレッサー50を研磨パッド22に対して押し付ける力を調節させる。このように、ウェーハ研磨後のパッドプロファイルは、テーブルプロファイルに基づいて維持される。
【0070】
研磨テーブル12の回転軸心は、組み立て時の機械的な誤差に起因して、鉛直方向、すなわちドレッサー50の揺動軸である支軸60の軸心に対してわずかに傾いている。このため、テーブル面14は、水平方向に対してわずかに傾いている。
図14に示すように、テーブルプロファイルの全体も傾いている。そこで、データ処理部70は、テーブルプロファイルの傾き角度を算出し、テーブルプロファイルの傾きを補正する。テーブルプロファイルの傾き角度は、水平線からのテーブルプロファイルの全体の傾き角度である。水平線は、水平方向を示す仮想線である。データ処理部70は、得られたテーブルプロファイルの傾き角度を、記憶装置70aに記憶する。
【0071】
データ処理部70は、傾き角度が0になるまでテーブルプロファイルを回転させることで、テーブルプロファイルを補正する。データ処理部70は、テーブルプロファイルの傾き角度と同じ角度だけ固有パッドプロファイルおよび初期パッドプロファイルをそれぞれ回転させることで、固有パッドプロファイルおよび初期パッドプロファイルを補正する。固有パッドプロファイルおよび初期パッドプロファイルを回転させる方向は、テーブルプロファイルを回転させる方向と同じである。データ処理部70は、補正されたテーブルプロファイル、補正された固有パッドプロファイル、および補正された初期パッドプロファイルを表示画面70c上に表示する。
【0072】
図15は、表示画面70c上に表示された補正されたテーブルプロファイル、補正された固有パッドプロファイル、および補正された初期パッドプロファイルを示す図である。
図15に示すように、補正されたテーブルプロファイルおよび補正された初期パッドプロファイルは、表示画面70c上に水平に表示される。
【0073】
固有パッドプロファイルは、研磨パッド22の慣らしドレッシングが行われる前に作成される。一方、初期パッドプロファイルは、慣らしドレッシングが行われているときであって、かつウェーハが研磨される前に作成される。初期パッドプロファイルが作成された後、研磨パッド22の研磨面23上でウェーハが研磨され、そして研磨パッド22がドレッシングされる。研磨パッド22のドレッシングが行われるたびに、研磨面23の高さがパッド高さセンサ40によって測定され、研磨面23の高さの測定値からパッドプロファイルがデータ処理部70によって作成される。
【0074】
研磨パッド22の研磨面23をドレッシングしているとき、液体が研磨面23に供給される。ジンバル機構53を備えたドレッサー50の姿勢は、ドレッサー50と研磨パッド22との間に存在する液体に影響されやすい。結果として、ドレッサー50を用いて間接的に測定される研磨パッド22の研磨面23の高さの測定値が変動しやすい。そこで、ドレッサー50の姿勢を安定させて、正確な研磨面23の高さを測定するために、ドレッシングディスク51は、上述したダミーディスク80と同様に、以下に説明する複数の液体排出流路を備えている。
【0075】
図16は、ドレッシングディスク51の一実施形態を示す底面図であり、
図17は、
図16に示すC-C線断面図である。ドレッシングディスク51は、円形である。ドレッシングディスク51は、ディスクホルダー52に接触可能な第1面91と、第1面91とは反対側の第2面92とを備えている。第1面91および第2面92は、平坦面である。第2面92の周囲には、環状のテーパー面93が存在している。
【0076】
ドレッシングディスク51がディスクホルダー52に固定されるとき、第1面91はディスクホルダー52に接触する。ドレッシングディスク51を用いて研磨パッド22の研磨面23の高さが測定されるとき、第2面92は研磨面23に対向する。本実施形態では、第1面91および第2面92の両方は、平坦な円形である。一実施形態では、第1面91および第2面92のうちの一方または両方は、平坦な円環形状を有してもよい。
【0077】
第2面92は、複数の突部95と、複数の突部95の間に位置する複数の液体排出流路としての複数の溝98を備えている。複数の突部95の表面には、研磨パッド22の研磨面23を目立て(ドレッシング)するための砥粒であるダイヤモンド粒子が固定されている。ダイヤモンド粒子は微粒子であるので、
図16には描かれていない。
【0078】
複数の溝98は、第2面92の一端から他端まで延びている。すなわち、複数の溝98は、第2面92の全体を横切って延びている。本実施形態では、複数の溝98は、いわゆるラインアンドスペースパターンに従って配列されている。複数の溝98は、互いに平行に配列された直線溝である。溝98は、等間隔に配列されており、第2面92の全体に均一に分布している。
【0079】
このように配列された溝98は、液体排出流路として機能する。すなわち、液体が液体供給ノズル5から研磨パッド22の研磨面23上に供給されているとき、ドレッシングディスク51は自身の軸心を中心に回転しながら、研磨パッド22の研磨面23上を移動する。ドレッシングディスク51の下に存在する液体は、溝98を通ってドレッシングディスク51の外に流れ、複数の突部95の全体は、研磨面23に接触する。溝98は、第2面92の一端から他端まで延びているので、液体はドレッシングディスク51の下にとどまらない。結果として、ドレッシングディスク51の突部95の全体は研磨パッド22の研磨面23に接触し、ドレッシングディスク51の姿勢、すなわちドレッサー50全体の姿勢が安定する。
【0080】
ドレッシングディスク51の下に存在する液体を速やかに溝98内に導くために、溝98は、第2面92の全体に均一に分布している。第2面92の全体の面積に占める溝98の全体の面積は、約50%である。
【0081】
図18は、ドレッシングディスク51の一実施形態を示す底面図であり、
図19は、
図18に示すD-D線断面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図16および
図17に示す構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0082】
図18に示すように、本実施形態のドレッシングディスク51は、複数の液体排出流路として複数の第1溝98aおよび複数の第2溝98bを有している。複数の第2溝98bは、複数の第1溝98aに交差している。本実施形態では、複数の第2溝98bは、複数の第1溝98aと垂直である。第1溝98aは、第2面92の一端から他端まで延びており、第2溝98bも、第2面92の一端から他端まで延びている。
【0083】
ドレッシングディスク51の下に存在する液体を速やかに溝98内に導くために、溝98は、第2面92の全体に均一に分布している。第2面92の全体の面積に占める溝98の全体の面積は、約75%である。
【0084】
図18に示す突部95は四角形である。
図20に示すように、突部95は円形であってもよい。
図16乃至
図20に示すドレッシングディスク51は、ドレッサー50と研磨パッド22の研磨面23との間に存在する液体に起因するドレッサー50の姿勢の不安定を解消することができる。ただし、複数の液体排出流路が第2面92の一端から他端まで延びている限りにおいて、液体排出流路の配置はこれら実施形態に限られない。一実施形態では、第2面92の全体の面積に占める溝98(または溝98a,98b)の全体の面積は、40%~81%である。
【0085】
図4乃至
図8に示すダミーディスク80と同様に、複数の液体排出流路98(または98a,98b)を持つドレッシングディスク51は、研磨パッド22上の液体の存在の影響を受けにくく、ドレッシングディスク51の姿勢が安定する。結果として、パッド高さセンサ(表面高さ測定器)40は、研磨面23の高さを正確に測定することができ、データ処理部70は正確なパッドプロファイルを作成することができる。上述した固有パッドプロファイルおよび初期パッドプロファイルも、
図16乃至
図20に示す実施形態のうちのいずれか1つの実施形態に係るドレッシングディスク51を用いて取得された研磨面23の高さの測定値から作成される。
【0086】
次に、上述したダミーディスク80を用いたテーブルプロファイルの作成と、上述したドレッシングディスク51を用いたパッドプロファイルの作成の一実施形態について、
図21および
図22に示すフローチャートを用いて説明する。以下に説明するダミーディスク80は、
図4乃至
図8に示す実施形態のうちのいずれか1つの実施形態に係るダミーディスクであり、以下に説明するドレッシングディスク51は、
図16乃至
図20に示す実施形態のうちのいずれか1つの実施形態に係るドレッシングディスクである。
【0087】
ステップ1では、
図3に示すように、ダミーディスク80は、ドレッサー50のディスクホルダー52に固定される。
ステップ2では、テーブルモータ13は、研磨パッドが貼り付けられていない状態で研磨テーブル12を回転させ、さらにドレッサーモータ61は、ディスクホルダー52とともにダミーディスク80を回転させる。
ステップ3では、液体供給ノズル5から研磨テーブル12のテーブル面14に液体を供給しながら、エアシリンダ56は、ドレッサー50を下降させ、回転するダミーディスク80をテーブル面14に接触させる。液体としては純水が使用される。液体は遠心力によりテーブル面14上に広がり、テーブル面14上に液膜を形成する。
【0088】
ステップ4では、揺動モータ65は、ドレッサー50(ダミーディスク80を含む)をテーブル面14上で研磨テーブル12の半径方向に移動させながら、パッド高さセンサ(表面高さ測定器)40はテーブル面14の高さを複数の測定点で測定する。テーブル面14の高さは、基準平面からダミーディスク80までの距離である。テーブル面14の高さの測定値は、データ処理部70に送られる。テーブル面14の高さが測定された後に、液体のテーブル面14への供給が停止され、さらに研磨テーブル12およびドレッサー50(ダミーディスク80を含む)の回転が停止される。
【0089】
ステップ5では、データ処理部70は、テーブル面14の高さの測定値からテーブルプロファイルを作成する。
ステップ6では、データ処理部70は、テーブルプロファイルの傾き角度を算出する。テーブルプロファイルの傾き角度は、水平線からのテーブルプロファイルの全体の傾き角度である。データ処理部70は、得られたテーブルプロファイルおよび傾き角度を、記憶装置70aに記憶する。
【0090】
ステップ7は、ダミーディスク80をディスクホルダー52から取り外し、ドレッシングディスク51をディスクホルダー52に固定する。
ステップ8では、未使用の研磨パッド22を研磨テーブル12のテーブル面14に貼り付ける。ステップ8は、ステップ7の前に実施してもよい。
ステップ9では、テーブルモータ13は、研磨パッド22とともに研磨テーブル12を回転させ、かつドレッサーモータ61は、ディスクホルダー52とともにドレッシングディスク51を回転させる。
ステップ10では、液体供給ノズル5から研磨パッド22の研磨面23に液体を供給しながら、エアシリンダ56は、ドレッサー50を下降させ、回転するドレッシングディスク51を研磨面23に接触させる。液体としては純水が使用される。
【0091】
ステップ11では、揺動モータ65は、ドレッサー50(ドレッシングディスク51を含む)を研磨面23上で研磨パッド22の半径方向に移動させながら、パッド高さセンサ(表面高さ測定器)40は研磨面23の高さを複数の測定点で測定する。研磨面23の高さは、上記ステップ4で使用された基準平面からドレッシングディスク51までの距離である。研磨面23の高さの測定値は、データ処理部70に送られる。
ステップ12では、データ処理部70は、研磨面23の高さの測定値から固有パッドプロファイルを作成する。データ処理部70は、得られた固有パッドプロファイルを、記憶装置70aに記憶する。
【0092】
ステップ13では、研磨パッド22の慣らしドレッシングを実行しながら、研磨面23の高さを測定する。具体的には、研磨パッド22およびドレッシングディスク51を回転させながら、かつ揺動モータ65はドレッサー50(ドレッシングディスク51を含む)を研磨パッド22の半径方向に移動させながら、パッド高さセンサ40は研磨パッド22の研磨面23の高さを複数の測定点で測定する。研磨面23の高さは、上記ステップ4で使用された基準平面からドレッシングディスク51までの距離である。研磨面23の高さの測定値は、データ処理部70に送られる。研磨パッド22の慣らしドレッシングが実施されている間、純水などの液体が液体供給ノズル5から研磨面23に供給される。
【0093】
上記ステップ13の慣らしドレッシングにおいて、回転するドレッシングディスク51が研磨パッド22上を移動しているときに、データ処理部70は、圧力レギュレータ62の動作を制御して、エアシリンダ56がドレッシングディスク51を研磨面23に対して押し付ける力を、テーブルプロファイルと固有パッドプロファイルとの差に基づいて調節し、パッドプロファイルをテーブルプロファイルに一致させる。
【0094】
ステップ14では、データ処理部70は、ステップ13で得られた研磨面23の高さの測定値から初期パッドプロファイルを作成する。データ処理部70は、得られた初期パッドプロファイルを記憶装置70aに記憶する。初期パッドプロファイルが作成された後に、液体の研磨面23への供給が停止され、さらに研磨テーブル12およびドレッサー50(ドレッシングディスク51を含む)の回転が停止される。
ステップ15では、データ処理部70は、テーブルプロファイルの傾き角度が0になるまでテーブルプロファイルを回転させることで、テーブルプロファイルを補正する。データ処理部70は、テーブルプロファイルの傾き角度と同じ角度だけ固有パッドプロファイルおよび初期パッドプロファイルをそれぞれ回転させることで、固有パッドプロファイルおよび初期パッドプロファイルを補正する。固有パッドプロファイルおよび初期パッドプロファイルを回転させる方向は、テーブルプロファイルを回転させる方向と同じである。
【0095】
ステップ16では、データ処理部70は、補正されたテーブルプロファイル、補正された固有パッドプロファイル、および補正された初期パッドプロファイルを表示画面70c上に表示する。
【0096】
本実施形態よれば、テーブルプロファイル、固有パッドプロファイル、および初期パッドプロファイルは水平線に基づいて補正される。この水平線を用いたプロファイル補正は、複数の研磨テーブルを備えた研磨装置におけるプロファイル補正に効果的に適用される。
【0097】
図23は、第1研磨テーブル12A、第1ドレッサー50A、第2研磨テーブル12B、および第2ドレッサー50Bを備えた研磨装置の一実施形態を示す図である。
図23において、
図1に示す各構成要素に対応する構成要素は、接尾辞A,Bを付した同じ符号で表され、それらの重複する説明は省略する。
図23に示す第1ドレッシングディスク51Aおよび第2ドレッシングディスク51Bのそれぞれは、
図16乃至
図20に示す実施形態のうちのいずれか1つの実施形態に係るドレッシングディスクである。
【0098】
データ処理部70は、第1パッド高さセンサ40Aおよび第2パッド高さセンサ40Bに接続されている。第1パッド高さセンサ40Aは、ダミーディスク80を用いて、第1研磨テーブル12Aの第1テーブル面14Aの高さを測定し、第2パッド高さセンサ40Bは、同じダミーディスク80を用いて、第2研磨テーブル12Bの第2テーブル面14Bの高さを測定する。そして、データ処理部70は、第1テーブル面14Aの高さの測定値から第1研磨テーブル12Aの第1テーブルプロファイルを作成し、第2テーブル面14Bの高さの測定値から第2研磨テーブル12Bの第2テーブルプロファイルを作成する。
【0099】
図4乃至
図8に示すダミーディスク80は、ダミーディスク80の下に存在する液体を除去することができるので、パッド高さセンサ(表面高さ測定器)40A,40Bは、第1テーブル面14Aの高さおよび第2テーブル面14Bの高さを正確に測定することができる。したがって、第1テーブルプロファイルおよび第2テーブルプロファイルは、第1テーブル面14Aの実際の傾き、および第2テーブル面14Bの実際の傾きをそれぞれ正確に反映している。
【0100】
第1固有パッドプロファイルおよび第1初期パッドプロファイルは、第1ドレッシングディスク51Aを用いて得られた研磨面23Aの高さの測定値から作成され、第2固有パッドプロファイルおよび第2初期パッドプロファイルは、第2ドレッシングディスク51Bを用いて得られた研磨面23Bの高さの測定値から作成される。第1ドレッシングディスク51Aおよび第2ドレッシングディスク51Bは、ダミーディスク80と同様に、これらドレッシングディスク51A,51Bの下に存在する液体を除去することができるので、パッド高さセンサ(表面高さ測定器)40A,40Bは、第1研磨パッド22Aの研磨面23Aの高さおよび第2研磨パッド22Bの研磨面23Bの高さを正確に測定することができる。したがって、第1固有パッドプロファイルおよび第1初期パッドプロファイルのそれぞれは、第1研磨パッド22Aの研磨面23Aの実際の高さ分布を正確に反映し、第2固有パッドプロファイルおよび第2初期パッドプロファイルのそれぞれは、第2研磨パッド22Bの研磨面23Bの実際の高さ分布をそれぞれ正確に反映している。
【0101】
第1研磨パッド22A上でウェーハW1が研磨された後、第1研磨パッド22Aの研磨面23Aは、パッドプロファイルが第1テーブルプロファイルに一致するように、第1ドレッシングディスク51Aでドレッシングされる。同様に、第2研磨パッド22B上でウェーハW2が研磨された後、第2研磨パッド22Bの研磨面23Bは、パッドプロファイルが第2テーブルプロファイルに一致するように、第2ドレッシングディスク51Bでドレッシングされる。
【0102】
通常、第1研磨テーブル12Aの回転軸心と、第2研磨テーブル12Bの回転軸心は、組み立て時の機械的誤差に起因して、互いに平行ではない。結果として、第1テーブル面14Aの傾きと第2テーブル面14Bの傾き、すなわち第1テーブルプロファイルと第2テーブルプロファイルは同じではない。しかしながら、上述したように、第1研磨パッド22Aのパッドプロファイルは、第1テーブルプロファイルに基づいて制御され、第2研磨パッド22Bのパッドプロファイルは、第2テーブルプロファイルに基づいて制御される。言い換えれば、第1研磨パッド22Aのパッドプロファイルと、第2研磨パッド22Bのパッドプロファイルは、それぞれ独立に制御される。したがって、第1テーブル面14Aと第2テーブル面14Bの傾きの違いによらず、第1研磨パッド22Aのパッドプロファイルおよび第2研磨パッド22Bのパッドプロファイルは、同じように管理することができる。
【0103】
特に、ダミーディスク80は、液体の影響を排除した正確な表面高さ測定を可能とするので、第1研磨テーブル12Aと第2研磨テーブル12Bとの間での測定環境の違いを排除することができる。同様に、第1ドレッシングディスク51Aおよび第2ドレッシングディスク51Bは、液体の影響を排除した正確な表面高さ測定を可能とするので、第1研磨パッド22Aと第2研磨パッド22Bとの間での測定環境の違いを排除することができる。したがって、研磨装置は、第1研磨テーブル12Aおよび第2研磨テーブル12Bにおいて、ウェーハ研磨を同じように制御できる。
【0104】
第1テーブルプロファイルおよび第2テーブルプロファイルは、上述した共通の水平線に基づいて補正される。水平線に基づいた第1テーブルプロファイルの補正は、
図21および
図22に示すフローチャートに示す工程に従って実施される。水平線に基づいた第2テーブルプロファイルの補正も、基本的に同じようにして行われる。
【0105】
より具体的には、第2テーブルプロファイルを補正する工程は、第2研磨テーブル12B、および第2ドレッサー50Bの第2ディスクホルダー52Bに固定されたダミーディスク80(
図4乃至
図8参照)を回転させ、第2研磨テーブル12Bの第2テーブル面14Bに液体を供給しながら、ダミーディスク80を第2テーブル面14Bに接触させ、第2テーブル面14B上でダミーディスク80を移動させながら、第2テーブル面14Bの高さを複数の測定点で測定し、第2テーブル面14Bの傾きを示す第2テーブルプロファイルを、第2テーブル面14Bの高さの測定値から作成し、上記水平線からの第2テーブルプロファイルの傾き角度を算出し、第2テーブルプロファイルの傾き角度が0になるまで第2テーブルプロファイルを回転させることで、第2テーブルプロファイルを補正する工程を含む。第2テーブルプロファイルの作成および第2テーブルプロファイルの補正は、データ処理部70によって行われる。
【0106】
さらに、データ処理部70は、第1研磨パッド22Aの第1固有パッドプロファイルおよび第1初期パッドプロファイルを先述の実施形態で説明した方法に従って作成し、第1固有パッドプロファイルおよび第1初期パッドプロファイルを、上記水平線からの第1テーブルプロファイルの傾き角度と同じ角度で回転させて、第1固有パッドプロファイルおよび第1初期パッドプロファイルを補正する。データ処理部70は、補正された第1テーブルプロファイル、補正された第1固有パッドプロファイル、および補正された第1初期パッドプロファイルを表示画面70c上に表示する。
【0107】
同様に、データ処理部70は、第2研磨パッド22Bの第2固有パッドプロファイルおよび第2初期パッドプロファイルを先述の実施形態で説明した方法に従って作成し、第2固有パッドプロファイルおよび第2初期パッドプロファイルを、上記水平線からの第2テーブルプロファイルの傾き角度と同じ角度で回転させて、第2固有パッドプロファイルおよび第2初期パッドプロファイルを補正する。データ処理部70は、補正された第2テーブルプロファイル、補正された第2固有パッドプロファイル、および補正された第2初期パッドプロファイルを表示画面70c上に表示する。
【0108】
図24(a)は、表示画面70c上に表示された補正前の第1テーブルプロファイル、第1固有パッドプロファイル、および第1初期パッドプロファイルを示す図であり、
図24(b)は、表示画面70c上に表示された補正前の第2テーブルプロファイル、第2固有パッドプロファイル、および第2初期パッドプロファイルを示す図である。
図24(a)および
図24(b)に示すように、補正前の第1テーブルプロファイルの傾きは、補正前の第2テーブルプロファイルの傾きとは異なっている。結果として、補正前の第1初期パッドプロファイルの傾きは、補正前の第2初期パッドプロファイル傾きとは異なっている。
【0109】
図25(a)は、表示画面70c上に表示された、補正された第1テーブルプロファイル、補正された第1固有パッドプロファイル、および補正された第1初期パッドプロファイルを示す図であり、
図25(b)は、表示画面70c上に表示された、補正された第2テーブルプロファイル、補正された第2固有パッドプロファイル、および補正された第2初期パッドプロファイルを示す図である。
図25(a)および
図25(b)に示すように、補正された第1テーブルプロファイルの傾きは、補正された第2テーブルプロファイルの傾きに実質的に同じである。結果として、補正された第1初期パッドプロファイルの傾きは、補正された第2初期パッドプロファイルの傾きに極めて近い。
【0110】
図25(a)および
図25(b)から分かるように、本実施形態によれば、第1テーブルプロファイルおよび第2テーブルプロファイルは、共通の水平線に基づいて補正されるので、第1テーブルプロファイルと第2テーブルプロファイルとの間での差が実質的になくなる。さらに、第1初期パッドプロファイルと第2初期パッドプロファイルとの間での差も実質的になくなる。
【0111】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0112】
1 研磨ユニット
2 ドレッシングユニット
5 液体供給ノズル
6 スラリー供給ノズル
12 研磨テーブル
13 テーブルモータ
14 テーブル面
18 研磨ヘッドシャフト
20 研磨ヘッド
22 研磨パッド
23 研磨面
50 ドレッサー
51 ドレッシングディスク
52 ディスクホルダー
53 ジンバル機構
55 ドレッサーシャフト
56 エアシリンダ
59 ドレッサーアーム
62 圧力レギュレータ
70 データ処理部
80 ダミーディスク
81 第1面
82 第2面
83 テーパー面
85 突部
88,88a,88b 溝(液体排出流路)
91 第1面
92 第2面
93 テーパー面
95 突部
98,98a,98b 溝(液体排出流路)