(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】硬化触媒、樹脂組成物、封止材、接着剤、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/68 20060101AFI20230720BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20230720BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230720BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230720BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230720BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C08G59/68
C08G59/40
C09J163/00
C09K3/10 L
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2022511497
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017853
(87)【国際公開番号】W WO2021199450
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2020064472
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中井 友也
(72)【発明者】
【氏名】山口 喬
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189577(JP,A)
【文献】特開2011-195767(JP,A)
【文献】特開2017-155127(JP,A)
【文献】特開平11-100546(JP,A)
【文献】特開2000-080146(JP,A)
【文献】特開2017-002246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C09J 163/00
C09K 3/10
H01L 23/29
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I)を有するエポキシイミダゾールアダクトを含有する、エポキシ樹脂の硬化触媒。
【化1】
(式中、R
1は、水素、フェニル、およびC1~C17のアルキルから選択される基であり、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素およびC1~C6のアルキルから選択される基である。)
【請求項2】
下記構造式(Io)または(Im)を有するエポキシイミダゾールアダクトを含有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂の硬化触媒。
(式中、R
1は、水素、フェニル、およびC1~C17のアルキルから選択される基であり、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素およびC1~C6のアルキルから選択される基である。)
(式中、R
1は、水素、フェニル、およびC1~C17のアルキルから選択される基であり、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素およびC1~C6のアルキルから選択される基である。)
【請求項3】
R
1は、水素およびC1~C6のアルキルからなる群から選択される基である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂の硬化触媒。
【請求項4】
R
1は、C8~C17のアルキルからなる群から選択される基である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂の硬化触媒。
【請求項5】
前記エポキシイミダゾールアダクトが、下記化合物1~4からなる群から選択される、請求項1に記載のエポキシ樹脂の硬化触媒。
化合物1
化合物2
化合物3
化合物4
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化触媒と、エポキシ樹脂とを含有する樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂の硬化剤をさらに含む、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化剤が、酸無水物またはフェノール系硬化剤である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する封止材。
【請求項10】
請求項6~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する接着剤。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化触媒、樹脂組成物、封止材、接着剤、及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
一液性エポキシ樹脂系接着剤には、主剤と硬化触媒とが含まれるが、硬化触媒は接着剤の可使時間と硬化条件に最も影響を与える材料と考えられている。現在、一液性エポキシ樹脂系接着剤に用いられる硬化触媒が多種市販されているが、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂にアミン等の官能基が修飾しているタイプ(特開昭59-053526号公報;特開平3-177418号公報)や、アミン系硬化触媒を高分子体のシェルで覆ったタイプが主流である(特開2000-080146号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、良好な特性を有する硬化触媒、樹脂組成物、封止材、接着剤、及び硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施態様は、下記構造式(I)を有するエポキシイミダゾールアダクトを含有する、エポキシ樹脂の硬化触媒である。
【0005】
[化1]
(式中、R
1は、水素、フェニル、およびC1~C17のアルキルから選択される基であり、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素およびC1~C6のアルキルから選択される基である。)
下記構造式(Io)または(Im)を有するエポキシイミダゾールアダクトを含有してもよい。
【0006】
(式中、R
1は、水素、フェニル、およびC1~C17のアルキルから選択される基であり、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素およびC1~C6のアルキルから選択される基である。)
(式中、R
1は、水素、フェニル、およびC1~C17のアルキルから選択される基であり、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素およびC1~C6のアルキルから選択される基である。)
【0007】
R1は、水素およびC1~C6のアルキルからなる群から選択される基であってもよく、R1は、C8~C17のアルキルからなる群から選択される基であってもよい。前記エポキシイミダゾールアダクトが、下記化合物1~4からなる群から選択されてもよい。
【0008】
【0009】
本発明の他の実施態様は、上記硬化触媒と、エポキシ樹脂とを含有する樹脂組成物である。前記エポキシ樹脂の硬化剤をさらに含んでもよい。前記硬化剤が、酸無水物またはフェノール系硬化剤であってもよい。
【0010】
本発明のさらなる実施態様は、上記樹脂組成物を含有する封止材または接着剤である。
【0011】
本発明のさらなる実施態様は、上記いずれかの樹脂組成物の硬化物である。
【0012】
==関連文献とのクロスリファレンス==
本出願は、令和2年3月31日付で出願した日本国特許出願特願2020-064472に基づく優先権を主張するものであり、当該基礎出願を引用することにより、本明細書に含めるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の化合物(Io)、化合物(Im)、化合物(Ip)の構造式を示す図である。
【
図2】実施例で硬化触媒として用いる化合物の構造式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0015】
==硬化触媒==
<エポキシイミダゾールアダクトの構造>
本実施形態にかかる硬化触媒は、下記の構造式(I)を有するエポキシイミダゾールアダクトを含有する。なお、本明細書において、硬化触媒(curing catalyst)とは、主剤が自己重合するか、または主剤と硬化剤が重合する時に、その重合の開始及び/又は進行を促進する機能を有する触媒を意味する。
【0016】
[化]
(式中、R
1は、水素、フェニル、およびC1~C17のアルキルから選択される基であり、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素およびC1~C6のアルキルから選択される基である。)R
1は、フェニルおよびC1~C12のアルキルから選択される基であってもよい。R
2、R
3のアルキル基は、直鎖構造であっても、分岐構造であっても、環状構造であってもよい。なお、化合物(I)は、
図1に示す化合物(Io)、化合物(Im)、及び化合物(Ip)を含むものである。
【0017】
ある態様においては、R1は、C8~C17、特にC8~C12のアルキルから選択される基であることが、エポキシ樹脂組成物の硬化における反応ピークトップ温度を低温側へシフトできるため、好ましい。反応ピークトップ温度は、後述する実施例の測定方法において、好ましくは180℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは130℃以下である。また、別の態様においては、R1は、水素およびC1~C6、特に水素およびC1~C3のアルキルから選択される基であることが、ポットライフの観点から好ましい。ポットライフは、後述する実施例の測定方法において、好ましくは0.7~5.0であり、より好ましくは0.7~3.0であり、さらに好ましくは0.7~2.0である。
【0018】
上記エポキシアミンアダクトは、1つのエポキシ基を有するビフェニル化合物と、アミンとの反応によって得られる化合物である。
【0019】
1つのエポキシ基を持つビフェニル化合物には他に置換基があっても良く、例えば、鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert―ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等)、アリル基、アリール基(例えば、フェニル基、ベンジル基等)、アシル基、アシロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基などが挙げられる。ビフェニルに置換する1つのエポキシ基は、どの位置に置換していてもよい。
【0020】
アダクトするイミダゾール化合物は特に限定されないが、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールが好ましく、硬化性とポットライフの両立の観点から、2-メチルイミダゾールや2-ウンデシルイミダゾールがより好ましい。市販品としては、アダクトするイミダソール化合物として、例えば、四国化成工業社製の2MZ-H、C11Z、C17Z、2PZ、2E4MZが挙げられる。
【0021】
2-メチルイミダゾールとアダクトした場合、ビフェニルに置換する1つのエポキシ基は、融点の観点から、オルト位やメタ位が好ましく、オルト位がより好ましい。オルト位では、100℃以上での硬化触媒の拡散と硬化反応のバランスが最も良好になる。
【0022】
<エポキシイミダゾールアダクトの製造方法>
このエポキシイミダゾールアダクトは、例えば、上記化合物と同じ修飾を有するイミダゾール環をもつメチルイミダゾール誘導体を2-{[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]methyl}oxirane、2-{[([1,1’-biphenyl]-3-yl)oxy]methyl}oxirane、または2-{[([1,1’-biphenyl]-4-yl)oxy]methyl}oxiraneと反応させることで、製造することができるが、製造方法はこれに限定されず、当業者に公知の方法を用いて製造することができる。
【0023】
エポキシイミダゾールアダクトの合成反応に用いる溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;アセトアミド、ホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、イソホロン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水等が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
<エポキシイミダゾールアダクトの特徴>
このエポキシイミダゾールアダクトは、BPA(ビスフェノールA)骨格を有しないので、硬化物から生物の健康に対するリスクが指摘されているBPAを生じることがなく、安全性が高い。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の硬化触媒として、本明細書に開示のエポキシイミダゾールアダクトを使用した場合、従来知られているビスフェノールA型エポキシアミンアダクトを使用した場合と比べて、硬化物からのBPAの発生を著しく抑制することができる。これは、BPAが発生するのは、重合物の構造上、重合したビスフェノールA型エポキシ樹脂の末端からのみであるためだと考えられる。
【0025】
また、実施例で示すように、エポキシ樹脂に対する硬化触媒として用いたときのポットライフが長く、均一な塗膜を形成できる。また硬化物の耐湿劣化が起きにくく、吸水率が低い。これらの効果の原理は以下の理論に拘泥するものではないが、常温で硬化触媒に含まれるビフェニル骨格とエポキシ樹脂との親和性が低いため、ポットライフが長くなると考えられる。また、100℃以上ではビフェニル骨格とエポキシ樹脂との親和性が高くなるため、硬化触媒の拡散と硬化反応のバランス良く進行する。これにより、未反応の硬化触媒の残存量が少なくなり、硬化によって均一な塗膜を形成できる。硬化後に、未反応の硬化触媒が凝集物として存在すると、この凝集物は吸水しやすいため、硬化物の耐湿劣化の原因になる。本発明の硬化触媒を用いることにより、未反応の硬化触媒は凝集物として残存しにくいので、耐湿劣化を低減することができると考えられる。
【0026】
このエポキシイミダゾールアダクトの融点は、例えば、示差走査熱量測定装置(DSC 204 F1 Phoenix(登録商標))(NETZSCH製)を用いて、次の手順で求めることができる。まず、アルミパンに各樹脂組成物5mgを計量し、アルミ製の蓋でシーリングした後、その蓋の中心に針で穴を開けて測定サンプルを準備する。次に、この測定サンプルを、窒素雰囲気下(100mL/分)、25℃から250℃の温度範囲、昇温速度10℃/分の条件で昇温しながら熱流(mW/mg)を測定する。グラフ上でピークトップが得られる温度を解析ソフト(NETZSCH Proteus-Thermal Analysis バージョン6.1.0B)で算出し、その温度を本明細書では、融解ピーク温度と呼ぶ。
【0027】
<硬化触媒>
本明細書に開示の硬化触媒は、上述のエポキシイミダゾールアダクトの1種または複数種を含有してもよい。また、上述のエポキシイミダゾールアダクト以外の1種または複数種の他の硬化触媒を含有してもよい。
【0028】
他の硬化触媒は特に限定されないが、一液性エポキシ樹脂系接着剤に用いられる市販の硬化触媒である、熱可塑性樹脂にアミン等の官能基が修飾しているタイプの硬化触媒や、アミン系硬化剤を高分子体のシェルで覆ったタイプの硬化触媒が例示できるが、これらに限定されない。硬化触媒に複数の化合物が含有している場合、上述のエポキシイミダゾールアダクトの割合は特に限定されないが、硬化触媒全量に対して、1~100wt%であることが好ましく、10~100wt%であることがより好ましく、30~100wt%であることがさらに好ましく、50~100wt%であることが特に好ましく、70~100wt%であることが最も好ましい。
【0029】
==樹脂組成物==
本明細書に開示の樹脂組成物は、構造式(I)を有するエポキシイミダゾールアダクトを含有する硬化触媒と、エポキシ樹脂とを含有する。
【0030】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂は特に限定されず、単官能エポキシ樹脂であっても、多官能エポキシ樹脂であってもよい。
【0031】
単官能エポキシ樹脂は、エポキシ基を1個有するエポキシ樹脂であり、従来から反応性希釈剤としてエポキシ樹脂組成物の粘度調整に用いられている。単官能エポキシ樹脂は、脂肪族単官能エポキシ樹脂と芳香族単官能エポキシ樹脂に大別される。揮発性の観点から、単官能エポキシ樹脂は、エポキシ当量が180~400g/eqであることが好ましい。
【0032】
芳香族単官能エポキシ樹脂の例としては、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-s-ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル、m-フェニルフェノールグリシジルエーテル、p-フェニルフェノールグリシジルエーテル、N-グリシジルフタルイミド等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのうち、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテルが好ましく、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0033】
脂肪族単官能エポキシ樹脂の例としては、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、α-ピネンオキシド、アリルグリシジルエーテル、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-4-(2-メチルオキシラニル)-1-メチルシクロヘキサン、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ネオデカン酸グリシジルエステル等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0034】
多官能エポキシ樹脂とは、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂をいう。従って、本開示の樹脂組成物は、2官能エポキシ樹脂、3官能エポキシ樹脂、4官能エポキシ樹脂、などを含んでもよい。多官能エポキシ樹脂は、脂肪族多官能エポキシ樹脂と芳香族多官能エポキシ樹脂に大別される。
【0035】
脂肪族多官能エポキシ樹脂の例としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサン型ジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン型ジグリシジルエーテルのようなジエポキシ樹脂;
-トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシ樹脂;ビニル(3,4-シクロヘキセン)ジオキシド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,1-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-m-ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂;テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;1,3-ジグリシジル-5-メチル-5-エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂;及び-1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格を有するエポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
前記の例のうち、「シクロヘキサン型ジグリシジルエーテル」とは、2個のグリシジル基が、各々エーテル結合を介して、1個のシクロヘキサン環を母体構造として有する2価の飽和炭化水素基に結合した構造を有する化合物を意味する。「ジシクロペンタジエン型ジグリシジルエーテル」とは、2個のグリシジル基が、各々エーテル結合を介して、ジシクロペンタジエン骨格を母体構造として有する2価の飽和炭化水素基に結合した構造を有する化合物を意味する。また、シクロヘキサン型ジグリシジルエーテルとしては、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0037】
芳香族多官能エポキシ樹脂は、ベンゼン環等の芳香環を含む構造を有する多官能エポキシ樹脂である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂など、従来頻用されているエポキシ樹脂にはこの種のものが多い。芳香族多官能エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;p-グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂;1,4-フェニルジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシ樹脂;3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;及びナフタレン環含有エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
芳香族多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましく、中でもそのエポキシ当量が90~200g/eqであるものが好ましい。
【0039】
<硬化剤>
本開示の樹脂組成物は、1種または複数種の硬化剤を含有してもよい。なお、本明細書において、硬化剤とは、主剤としてのエポキシ樹脂に対し、エポキシ基と反応し架橋構造を形成することで硬化させる化合物をいう。
【0040】
本開示の樹脂組成物が含有してもよい硬化剤は特に限定されないが、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応性のある活性基を有する化合物が含まれる。硬化剤としては、例えば、アミンとその誘導体などの窒素含有化合物;カルボン酸末端ポリエステル、酸無水物系、フェノール系硬化剤、ビスフェノールA及びクレゾールノボラック、フェノール末端エポキシ樹脂などの酸素含有化合物;チオール化合物が挙げられる。
【0041】
アミンとその誘導体などの窒素含有化合物は特に限定されないが、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン類が例示できる。市販品としては、T-12(商品名、三洋化成工業社製)(アミン当量116)が挙げられる。
【0042】
酸無水物系硬化剤は特に限定されないが、例えば、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、グルタル酸無水物等が挙げられる。特に、3,4-ジメチル-6-(2-メチル-1-プロペニル)-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、ジエチルグルタル酸無水物が好ましい。
【0043】
フェノール系硬化剤はフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般をいい、例えば、フェノールノボラック樹脂およびそのアルキル化物またはアリル化物、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂等が挙げられる。中でも、アリルフェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0044】
チオール化合物には、加水分解性の多官能チオール化合物、非加水分解性の多官能チオール化合物が含まれる。
【0045】
加水分解性の多官能チオール化合物の例としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製:TMMP)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学社製:TEMPIC)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製:PEMP)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製:EGMP-4)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製:DPMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工社製:カレンズMT(登録商標)PE1)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工社製:カレンズMT(登録商標)NR1)等を挙げることができる。
【0046】
非加水分解性多官能チオール化合物の例としては、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル(商品名:TS-G、四国化成工業社製)、(1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル(商品名:C3 TS-G、四国化成工業社製)、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(商品名:PEPT、SC有機化学製)、ペンタエリスリトールテトラプロパンチオール等が挙げられる。
【0047】
非加水分解性多官能チオール化合物としては、分子内にスルフィド結合を2つ以上有する3官能以上のポリチオール化合物を使用することもできる。このようなチオール化合物としては、例えば、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチメチル)メタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,1,5,5-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3-チアペンタン、1,1,6,6-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3,4-ジチアヘキサン、2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、3-メルカプトメチルチオ-1,7-ジメルカプト-2,6-ジチアヘプタン、3,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,9-ジメルカプト-2,5,8-トリチアノナン、3-メルカプトメチルチオ-1,6-ジメルカプト-2,5-ジチアヘキサン、1,1,9,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-5-(3,3-ビス(メルカプトメチルチオ)-1-チアプロピル)3,7-ジチアノナン、トリス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、トリス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、テトラキス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、テトラキス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、3,5,9,11-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,13-ジメルカプト-2,6,8,12-テトラチアトリデカン、3,5,9,11,15,17-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,19-ジメルカプト-2,6,8,12,14,18-ヘキサチアノナデカン、9-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデカン、3,4,8,9,13,14-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,16-ジメルカプト-2,5,7,10,12,15-ヘキサチアヘキサデカン、8-[ビス(メルカプトメチルチオ)メチル]-3,4,12,13-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,15-ジメルカプト-2,5,7,9,11,14-ヘキサチアペンタデカン、4,6-ビス[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7-メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7‐メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-6-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチアン、1,1-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1-[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-3-[2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル]-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、9-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,4,6,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン等の脂肪族ポリチオール化合物;4,6-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-6-[4-(6‐メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,4,8,9‐テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4,5-ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-1,3-ジチオラン、4-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、2-{ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メチル}-1,3-ジチエタン、2-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、4-{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-5-[1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)-4-メルカプト-3-チアブチルチオ]-1,3-ジチオラン等の環式構造を有するポリチオール化合物が挙げられる。
【0048】
<樹脂組成物の構成割合>
樹脂組成物中の硬化触媒の割合は特に限定されないが、樹脂組成物が、硬化剤を含有しないエポキシホモ重合である場合、樹脂組成物中のエポキシ樹脂に対して、0.1~50wt%であることが好ましく、0.1~30wt%であることがより好ましく、0.1~20wt%であることがさらに好ましい。樹脂組成物が、硬化剤を含有する場合、樹脂組成物中のエポキシ樹脂に対して、0.01~10wt%であることが好ましく、0.01~5wt%であることがより好ましく、0.01~1wt%であることがさらに好ましい。
【0049】
<樹脂組成物のそのほかの成分>
本開示の硬化性組成物は、主剤、硬化触媒、硬化剤以外に、例えば以下に述べるものを必要に応じて含有してもよい。
【0050】
・安定剤
本開示の樹脂組成物には、その貯蔵安定性を向上させ、ポットライフを長くするために、安定剤を添加することができる。エポキシ樹脂を主剤とする一液型接着剤の安定剤として公知の種々の安定剤を使用することができるが、液状ホウ酸エステル化合物、アルミキレート及び有機酸からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0051】
液状ホウ酸エステル化合物の例としては、2,2'-オキシビス(5,5'-ジメチル-1,3,2-オキサボリナン)、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-nプロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリス(2-エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13-ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7-トリオキサウンデシル)ボラン、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ-o-トリルボレート、トリ-m-トリルボレート、トリエタノールアミンボレート等が挙げられる。液状ホウ酸エステル化合物は常温(25℃)で液状であるため、配合物粘度を低く抑えられるため好ましい。
【0052】
アルミキレートとしては、例えばアルミキレートA(川研ファインケミカル株式会社製)を用いることができる。有機酸としては、例えばバルビツール酸を用いることができる。
【0053】
・充填剤
本開示の樹脂組成物には、充填剤を添加することができる。
【0054】
充填剤の具体的な例としては、シリカフィラー、ガラスフィラー、アルミナフィラー、酸化チタンフィラー、窒化ホウ素フィラー、窒化アルミフィラー、タルクフィラー、炭酸カルシウムフィラー、樹脂フィラー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィラー、シリコーンゴムフィラーなど)、銀や銅やニッケルなどの導電性フィラー等が挙げられる。形状は特に限られず、中空状であっても、球状であっても、不定形であってもよい。また、充填剤は、表面処理されたものであってもよい。
【0055】
・カップリング剤
本開示の樹脂組成物には、カップリング剤を添加することができる。カップリング剤は、シランカップリング剤が好ましく、エポキシ系、アミノ系、ビニル系、メタクリル系、アクリル系、メルカプト系等の各種シランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
・その他の添加剤
本開示の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の添加剤、例えばカーボンブラック、チタンブラック、イオントラップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、揺変剤、粘度調整剤、難燃剤、着色剤、溶剤等を添加することができる。各添加剤の種類、添加量は常法通りである。
【0057】
==樹脂組成物の利用方法==
本明細書に開示の樹脂組成物は、一液性エポキシ樹脂として、例えば、電子部品用の封止材や充填材、ダム材、導電性あるいは絶縁性の接着剤、ダイアタッチ材、フィルム、コート剤、シールド材などが挙げられる。他にも塗料、パイプ用材、タンク用材などの複合材料、床材、メンブレンなどの土木建築材料、接着剤、などに用いることができるが、利用方法はこれらに限定されない。特に、本開示の硬化触媒を使用した樹脂組成物は、高い耐湿信頼性を求められる電子部品用途に好適である。
【実施例】
【0058】
==化合物の合成方法==
(化合物1)1-[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]-3-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-olの合成
【0059】
[化]
2-methyl-1-H-imidazole(四国化成工業社製、150g、1.83mol)を、室温でトルエン(443mL)とメタノール(121mL)の混合溶媒に溶解して得られた溶液を、80℃に加熱し、撹拌しながら還流した。得られた溶液に、2-{[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]methyl}oxirane(三光社製、210g、0.913mol、エポキシ当量230g/eq)を室温でトルエン(363mL)に溶解した溶液を滴下速度3.75mL/minで添加した。全量滴下した後、得られた混合物を80℃で75分間撹拌した。その後、得られた反応物をエバポレーターを用いて50℃で溶媒を留去し、粗生成物(392g)を得た。
【0060】
得られた粗生成物(380g)をメタノール(1514mL)に添加し、50℃に加熱し、撹拌しながら溶解させた。その後、メタノールの全量が1226mLになるまで濃縮し、吸引濾過した。得られた溶液を再度50℃に加熱した後、室温で撹拌しながら16時間放置した。得られた懸濁液を吸引濾過した後、濾物を純水(600mL×4回)で洗浄した。得られた濾物を40℃の乾燥機で178時間乾燥することによって、1-[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]-3-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol(134g、収率60%)を白色固体として得た。生成物の物性測定値は以下の通りである。
【0061】
1-[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]-3-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol
1H NMR (400 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 2.15 (s, 3 H) 3.80 - 3.90 (m, 2 H) 3.95 - 4.07 (m, 3 H) 6.73 (d, 1 H) 6.81 (d, 1 H) 7.02 - 7.07 (m, 2 H) 7.28 - 7.34 (m, 3 H) 7.41 (t, 2 H) 7.50 - 7.54 (d, 2 H).
HRMS (ESI) calcd for C19H20N2O2 [M+H]+ Exact Mass : 309.153, found 309.159.
【0062】
(化合物2)1-[([1,1’-biphenyl]-3-yl)oxy]-3-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-olの合成
【0063】
【0064】
まず、3-Phenylphenol(東京化成工業社製、33.7g、198mmol)および炭酸カリウム(東京化成工業社製、35.5g、257mmol)をEpibromohydrin(東京化成工業社製、48.7mL、593mmol)に加え、120℃に加温し、4.5時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し、ジクロロメタン(300mL)を加え、固体をろ別し、その固体をジクロロメタンで洗浄して得られた液体をろ液に加え、溶媒を減圧下で留去した。得られた固体をジクロロメタン(200mL)に溶解させ、シリカゲル(150g)を加え、減圧下で濃縮し、得られた溶液を中圧カラムクロマトグラフィー(シリカゲル200g、n-ヘキサン/クロロメタン=50/50~35/65)にて精製し、目的物を含む分画を回収して濃縮し、2-{[([1,1’-biphenyl]-3-yl)oxy]methyl}oxirane(37.0g、164mmol)を無色油状物として得た。
【0065】
次に、2-Methyl-1H-imidazole(四国化成工業社製、40.3g、491mmol)をトルエン(130mL)とメタノール(30mL)の混合溶媒に溶解させ、80℃に加温し、2-{[([1,1’-biphenyl]-3-yl)oxy]methyl}oxirane(37.0g、164mmol)のトルエン(230mL)溶液を2時間かけて滴下した。その後、80℃で4時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し、減圧下で濃縮し、得られた固体をメタノール(50mL)に懸濁し、60℃に昇温して溶解させた後、純水(100mL)を加え、その後、室温まで冷却したところ、2層に分離した。さらに氷浴下で攪拌し、析出した固体をろ取し、純水で洗浄し、減圧下で乾燥させた。得られた固体をメタノール(150mL)に懸濁させ、60℃に加温、溶解させ、その後、室温まで冷却した。析出した固体をろ取し、純水で洗浄し、減圧下で乾燥し、1-[([1,1’-biphenyl]-3-yl)oxy]-3-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol(27.8g、収率55%)を無色固体として得た。生成物の物性測定値は以下の通りである。
【0066】
1-[([1,1’-biphenyl]-3-yl)oxy]-3-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol
1H NMR (400 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 2.37 (s, 3 H) 3.95 - 3.99 (m, 2 H) 4.08 - 4.12 (m, 1 H) 4.18 - 4.24 (m, 2 H) 6.79 - 6.80 (m, 1 H) 6.92 (dd, 1 H) 7.02 - 7.03 (m, 1 H) 7.16 - 7.21 (m, 2 H) 7.29 - 7.36 (m, 2 H) 7.41 (t, 2 H) 7.58 (d, 2 H).
HRMS (ESI) calcd for C19H20N2O2 [M+H]+ Exact Mass : 309.160, found 309.159.
【0067】
(化合物3)1-[([1,1’-biphenyl]-4-yl)oxy]-3-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-olの合成
【0068】
[化]
まず、4-Phenylphenol(東京化成工業社製、5.00g、29.4mmol)および炭酸カリウム(東京化成工業社製、5.28g、38.2mmol)をEpibromohydrin(東京化成工業社製、7.23mL、88.1mmol)に加え、120℃に加温し、3時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、ジクロロメタン(30mL)を加え、固体をろ別し、固体をジクロロメタン洗浄して得られた洗浄液をろ液に合わせて、得られた溶液を減圧下で濃縮した。得られた固体を中圧カラムクロマトグラフィー (シリカゲル100g、n-ヘキサン/ジクロロメタン=50/50~35/65)にて精製し、目的物を含む分画を回収して濃縮し、2-{[([1,1’-biphenyl]-4-yl)oxy]methyl}oxirane(5.49g、24.3mmol)を無色固体として得た。
【0069】
次に、2-Methyl-1H-imidazole(東京化成工業社製、3.98g、48.5mmol)をトルエン(8mL)とメタノール(4mL)の混合溶媒に溶解させ、80℃に加温後、2-{[([1,1’-biphenyl]-4-yl)oxy]methyl}oxirane(5.49g、24.3mmol)のトルエン(35mL)溶液を1時間かけて滴下した。その後、80℃で3.5時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却後、減圧下で濃縮した。得られた固体をメタノール(15mL)に懸濁させ、固体をろ別し、固体をメタノール洗浄して得られた液体をろ液と合わせ、得られた溶液を減圧下で濃縮した。得られた固体を中圧カラムクロマトグラフィー (シリカゲル100g、ジクロロメタン/メタノール=98/2~90/10)にて精製し、目的物を含む分画を回収し濃縮して、1-[([1,1’-biphenyl]-4-yl)oxy]-3-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol(4.53g、14.7mmol、収率61%)を無色固体として得た。生成物の物性測定値は以下の通りである。
【0070】
1-[([1,1’-biphenyl]-4-yl)oxy]-3-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol
1H NMR (400 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 2.37 (s, 3 H) 3.91 - 3.99 (m, 2 H) 4.08 - 4.12 (m, 1 H) 4.16 - 4.24 (m, 2 H) 6.80 (d, 1 H) 7.00 - 7.04 (m, 3 H) 7.26 (t, 1 H) 7.38 (t, 2 H) 7.51 - 7.56 (m, 4 H).
HRMS (ESI) calcd for C19H20N2O2 [M+H]+ Exact Mass : 309.160, found 309.159.
【0071】
(化合物4)1-[([1,1'-biphenyl]-2-yl)oxy]-3-(2-undecyl-1H-imidazol-1-yl)propan-2-olの合成
【0072】
[化]
2-Undecyl-1H-imidazole(四国化成工業社製、53.07g、239mmol)をトルエン(64mL)に溶解させ、80℃に加温後、2-{[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]methyl}oxirane(三光社製、30.0g、133mmol)のトルエン(190mL)溶液を4.5時間かけて滴下し、その後、同温度で4時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、減圧下濃縮し、残渣(84.4g)を得た。得られた残渣(67.1g)を中圧カラムクロマトグラフィー (シリカゲル、ジクロロメタン/メタノール=99/1~90/10)にて精製し、目的物を含む分画を濃縮し、1-[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]-3-(2-undecyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol(35.6g)を無色固体として得た。得られた1-[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]-3-(2-undecyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol(35.6g)にアセトニトリル(200mL)を加え、超音波洗浄にて超音波を30分あて、ろ取、アセトニトリル洗浄(10mL × 5)し、固体を減圧下乾燥し、1-[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]-3-(2-undecyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol(30.8g、68.7mmol、収率65%)を無色固体として得た。生成物の物性測定値は以下の通りである。
【0073】
1-[([1,1’-biphenyl]-2-yl)oxy]-3-(2-undecyl-1H-imidazole-1-yl)propan-2-ol
1H NMR (400 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 0.87 (t, 3 H) 1.15 - 1.30 (m, 16 H) 1.51 - 1.55 (m, 2 H) 2.46 (t, 2 H) 3.83 - 3.89 (m, 2 H) 3.94 - 4.00 (m, 2 H) 4.02 - 4.04 (m, 1 H) 6.76 (d, 1 H) 6.84 (s, 1 H) 7.01 - 7.05 (m, 2 H) 7.27 - 7.32 (m, 3 H) 7.40 (t, 2 H) 7.53 (d, 2 H).
HRMS (ESI) calcd for C29H40N2O2 [M+H]+ Exact Mass : 449.316, found 449.316.
【0074】
(化合物5)1-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)-3-phenoxypropan-2-olの合成
【0075】
[化]
2-Methyl-1H-imidazole(四国化成工業社製、21.8g、266mmol)をトルエン(78.7mL)とメタノール(17.7mL)の混合溶媒に溶解させ、80℃に昇温し、2-(Phenoxymethyl)oxirane(ナガセケムテックス社製、22.0g、147mmol)のトルエン(38.1mL)溶液を1時間かけて滴下し、その後、同温度で1時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し、減圧下で溶媒を留去し、1-(2-methyl-1H-imidazole-1-yl)-3-phenoxypropan-2-ol(47.85g)を黄色固体として得た。生成物の同定は
1HNMRより行い、目的物が得られていることを確認した。
【0076】
(化合物6)α,α’-[(1-methylethylidene)bis(4,1-phenyleneoxymethylene)]bis[2-methyl-1H-imidazole-1-ethanolの合成
【0077】
[化]
2-Methyl-1H-imidazole(四国化成工業社製、43.8g、533mmol)をトルエン(60.6mL)とメタノール(16.8mL)の混合溶媒に溶解させ、80℃に昇温し、2,2’-{propane-2,2-diylbis[(4,1-phenylene)oxymethylene]}bis(oxirane)(大阪ソーダ社製、48.0g、133mmol)のトルエン(83.2mL)溶液を2時間かけて滴下し、その後、80℃で2時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し、減圧下で溶媒を留去し、α,α’-[(1-methylethylidene)bis(4,1-phenyleneoxymethylene)]bis[2-methyl-1H-imidazole-1-ethanol(112.9g)を黄色固体として得た。生成物の同定は
1HNMRより行い、目的物が得られていることを確認した。
【0078】
==樹脂組成物の特性 I==
本実施例では、本明細書に開示の硬化触媒を含む樹脂組成物が優れた特性を有することを示す。
【0079】
まず、硬化触媒として、表1に記載の化合物1~6を準備した。各化合物の構造式を、
図2に示す。化合物1~6の合成方法は、上述した通りである。エポキシイミダゾールアダクトの融点(融解ピーク温度)は、示差走査熱量測定装置(DSC 204 F1 Phoenix(登録商標))(NETZSCH製)を用いて、次の手順で求めた。まず、アルミパンに各樹脂組成物5mgを計量し、アルミ製の蓋でシーリングした後、その蓋の中心に針で穴を開けて測定サンプルを準備した。次に、この測定サンプルを、窒素雰囲気下(100mL/分)、25℃から250℃の温度範囲、昇温速度10℃/分の条件で昇温しながら熱流(mW/mg)を測定した。グラフ上でピークトップが得られる温度を解析ソフト(NETZSCH Proteus-Thermal Analysis バージョン6.1.0B)で算出し、その温度を融解ピーク温度とした。化合物1-4(固形物)では、明確な融解ピークが得られたが、化合物5(オイル状)及び化合物6(固形物)では、明確な融解ピークが得られなかった。
【0080】
【表1】
化合物1~6または2-メチルイミダゾール(2MZ)(いずれも硬化触媒)を乳鉢ですり潰した後、エポキシ樹脂であるEXA835LV(DIC社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物)に手で攪拌しながら投入した。なお、これらの割合は、硬化触媒12wt%、エポキシ樹脂88wt%とした。攪拌によって、ある程度なじんだ後、乳鉢で凝集が無くなるまですり潰して、遊星式攪拌脱泡装置を用いて、真空下にて攪拌及び脱泡を行い、樹脂組成物を得た。
【0081】
樹脂組成物を作製時と25℃±2℃、50%RH±10%RH環境下で24時間保管後に、E型粘度計(TVE‐25H:東機産業社製、ロータ名称:3°×R9.7)を用いて、5rpm、25℃で、予め設定された適切なレンジ(H、R、またはU)で測定し、(24時間後の粘度/作製時の粘度)をポットライフとして算出した。反応時のピーク温度は、示差走査熱量計(DSC 204 F1 Phoenix(登録商標))(NETZSCH製)を用いて測定した。まず、アルミパンに各樹脂組成物5mgを計量し、アルミ製の蓋でシーリングした後、その蓋の中心に針で穴を開けて測定サンプルを準備した。次に、この測定サンプルを、窒素雰囲気下(100mL/分)、25~250℃の範囲で、速度10℃/分の条件で昇温しながら、熱流(mW/mg)を測定し、発熱ピークが得られる温度(本明細書では、反応ピークトップ温度と呼ぶ)を解析ソフト(NETZSCH Proteus-Thermal Analysis バージョン6.1.0B)で算出した。ゲルタイムは、ゲル化試験機(GT-D-15A:ユーカリ技研社製)を用いて測定した。ホットプレートを120℃に設定し、試験棒にて樹脂組成物をホットプレート上に転写した。試験棒で樹脂組成物に触れても、形状変化しない硬さになるまでの時間をゲルタイムとした。
【0082】
また、厚さ3mmのガラス板の表面にテフロン(登録商標)シートを貼り、その上に、硬化した際の膜厚が300±200μmとなるようにスペーサー(耐熱テープを重ねたもの)を2ヶ所に配置した。次に、スペーサー間に樹脂組成物を塗布し、気泡を巻き込まないように、表面にテフロン(登録商標)シートを貼った別のガラス板で挟み込み、150℃で30分間硬化させて硬化物を得た。最後に、その硬化物をテフロン(登録商標)シートを貼ったガラス板から剥がした後、カッターで所定寸法(30mm×30mm)に切り取り、試験片を得た。なお、切り口はサンドペーパーで滑らかにし、その硬化物の重量を測定した。試験片を高度加速寿命試験装置(EHS‐221M:エスペック社製)にてPCT(プレッシャークッカー試験)(条件:121℃、2気圧、100%RH、20時間)を行った後、15分以内に試験片の重量を測定し、(((放置後の重量-放置前の重量)×100)/放置前の重量)を吸水率として算出した。また、硬化物表面のザラつきや穿孔、成分の溶出、軟化、変形を目視で観察したり触診したりすることにより劣化の有無を確認した。表2にその結果を示す。
【0083】
【表2】
実施例1~4(化合物1~4を用いた場合)では、樹脂組成物作製後24時間経っても粘度はほとんど変わらなかったが、比較例1~3(化合物5,6及び2MZを用いた場合)では、24時間後は測定できないほど粘度が高くなった(表ではUMと示した)。このように、実施例の樹脂組成物のほうが、ポットライフが長かった。なお、イミダゾールが、ビフェニルのオルト位に置換している実施例1および4について、72時間後の粘度を測定した。ポットライフは、実施例1の樹脂組成物では1.2倍となったが、実施例4の樹脂組成物では1.4倍となった。
【0084】
また、実施例1~4では120℃でもゲル化した。比較例1~3では、ポットライフが短く、実使用に耐えられないため、ゲルタイムは測定されなかった。
【0085】
硬化後は、比較例1~3の硬化物より、実施例1~4の硬化物のほうが高温・高湿・高圧処理に対する耐性があった。また、硬化物の吸水率は、実施例ではすべて3.0%以下であり、実施例1,2、4では、2.0%以下と特に優れていた。一方、比較例では、硬化物の吸水率は、3.0%を超えるものもあった。
【0086】
このように、単官能のフェニルエポキシのアダクト(比較例1)、2官能エポキシのアダクト(比較例2)、非アダクト(比較例3)と比べ、本明細書に開示のエポキシアミンアダクトでは、ポットライフが良好で十分な硬化性を持ち、さらに耐湿性の面で、より良好な特性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0087】
==樹脂組成物の特性 II==
本実施例5~7では、化合物1とエポキシ樹脂を含む樹脂組成物が、他のエポキシ樹脂および他の硬化剤との併用においても、優れた特性を有することを示す。
【0088】
硬化触媒として、実施例5~7では化合物1を用い、比較例4~6では、2-メチルイミダゾール(2MZ)を用いた。エポキシ樹脂として、EXA835LV(DIC社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物)、YDF8170(日鉄ケミカル&マテリアル社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、CDMDG(昭和電工社製、脂肪族エポキシ樹脂)を用いた。これらエポキシ樹脂の硬化は、それぞれ、エポキシのホモ重合、酸無水物による硬化反応、フェノール系による硬化反応による。なお、ゲルタイム測定のための加温を150℃にした以外は、表2の場合と同じ実験条件で、ポットライフ、反応ピークトップ温度、ゲルタイムの測定、及びPCT後の劣化観察、並びに吸水率の算出を行った。
【0089】
【表3】
実施例5~7で示すように、エポキシ樹脂が脂肪族エポキシ樹脂であっても、あるいは硬化剤が酸無水物やフェノール樹脂であっても、本明細書に開示のエポキシイミダゾールアダクトは良好なポットライフを持ち、かつ十分に硬化させることができる。また、硬化触媒を2MZにしたときと比べても、ポットライフ、及び耐湿性の面で、より良好な特性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によって、良好な特性を有する硬化触媒、樹脂組成物、封止材、接着剤、及び硬化物を提供することができるようになった。