(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】タッチプローブシステム
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20230720BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20230720BHJP
B23Q 17/22 20060101ALN20230720BHJP
【FI】
G01B5/00 B
G01B5/00 P
G01D5/12 G
B23Q17/22 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019150157
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-05-24
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト・ショップ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・スクロール
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-112041(JP,A)
【文献】特開平4-339205(JP,A)
【文献】特開2014-32208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタイラス(3)を備えたケーシング(1)とベース(2)とを含むタッチプローブシステムであって、
ケーシング(1)が第1の位置決め面(1.1)を有し、ベース(2)が第2の位置決め面(2.1)を有し、
ケーシング(1)および/またはベース(2)が磁石(1.4)を有し、これにより磁場が生じ、
スタイラス(3)は、ケーシング(1)に対して偏向可能に支持されており、該スタイラス(3)が偏向された場合に、センサユニットによって電気信号がトリガ可能であり、
ベース(2)は、工作機械のテーブルに固定可能であり、スタイラス(3)を備えたケーシング(1)は、ベース(2)に配置可能であり、
タッチプローブシステムが、第1の位置決め面(1.1)が第1の方向(z)にずらし
た状態で第2の位置決め面(2.1)に向かい合って配置可能であるように構成されており、この配置で、ケーシング(1)およびベース(2)が、磁界によって生成される力によって一緒に保持されるタッチプローブシステムにおいて、
第1の位置決め面(1.1)に3つの円錐体(2.2)が配置されており、該円錐体の軸線(C)が第1の方向(z)に平行に配向されており、
第2の位置決め面(2.1)に6つの円筒体(1.2)が配置されており、該円筒体の軸線(B)が第1の方向(z)に直交して配向されているか;または
第2の位置決め面(2.1)に3つの円錐体(2.2)が配置されており、該円錐体の軸線(C)が第1の方向(z)に平行に配向されており、
第1の位置決め面(1.1)に6つの円筒体(1.2)が配置されており、該円筒体の軸線(B)が第1の方向(z)に直交して配向されており、
第1の位置決め面(1.1)および第2の位置決め面(2.1)が互いに対して正確に、再現可能に組み合わせ可能であるように、円筒体(1.2)を円錐体(2.2)に接触させることが
でき、
測定が実行された後、ベース(2)が工作機械のテーブル上に留まっている間にケーシング(1)がスタイラス(3)と共に工作機械の加工スペースから取り外し可能であり、後にケーシング(1)をスタイラス(3)と共に再びベース(2)に正確に配置することができるように、前記タッチプローブシステムが構成されることを特徴とするタッチプローブシステム。
【請求項2】
請求項
1に記載のタッチプローブシステムにおいて、
前記円筒体(1.2)がピンとして構成されているタッチプローブシステム。
【請求項3】
請求項
2に記載のタッチプローブシステムにおいて、
前記円筒体(1.2)が、前記ケーシング(1)の孔または前記ベース(2)の孔のいずれかに固定されているタッチプローブシステム。
【請求項4】
請求項1から
3までのいずれか1項に記載のタッチプローブシステムにおいて、
前記円筒体(1.2)が対で互いに対して平行に配置されているタッチプローブシステム。
【請求項5】
請求項1から
4までのいずれか1項に記載のタッチプローブシステムにおいて、
前記円錐体(2.2)が円錐台状に構成されているタッチプローブシステム。
【請求項6】
請求項1から
5までのいずれか1項に記載のタッチプローブシステムにおいて、
前記円錐体(2.2)が、ケーシング(2)の孔またはベース(2)の孔(2.11)に固定されているタッチプローブシステム。
【請求項7】
請求項1から
6までのいずれか1項に記載のタッチプローブシステムにおいて、
前記ケーシング(1)が前記磁石(1.4)を有し、前記ベース(2)が少なくとも部分的に磁性材料により作製されているタッチプローブシステム。
【請求項8】
請求項1から
7までのいずれか1項に記載のタッチプローブシステムにおいて、
前記ベース(2)が前記磁石(1.4)を有し、前記ケーシング(1)が少なくとも部分的に磁性材料から作製されているタッチプローブシステム。
【請求項9】
請求項1から
8までのいずれか1項
に記載のタッチプローブシステムにおいて、
前記ケーシング(1)が、
切欠きとして構成された、機械的コーディングのための第1の手段(1.3)を有し、前記ベース(2)が、
螺子として構成された、機械的コーディングのための第2の手段(2.3)を有し、これによりケーシング(1)とベース(2)とが、定められた相対位置でのみ互いに組み合わせ可能であるタッチプローブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のケーシングとベースとを含むタッチプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなタッチプローブシステム、特にベースは、工作機械のテーブルに持続的に固定され、工作機械の工具を測定するために使用されることが多い。テストルーチンの実行時に、例えば工作機械のスピンドル内にクランプされた工具は、タッチプローブシステムのタッチプレートに対して移動される。この場合、回転状態で工具を測定することもできる。
【0003】
工具によるタッチプレートの接触が起こるとすぐに、切換信号が、例えば工作機械の数値制御装置に送信される。一般に、工具もしくはスピンドル軸線の実際位置は、工作機械の位置測定装置によって常に決定されるので、工具の現在の実際半径を計算することができる。必要に応じて、数値制御装置における補正をその後の加工プロセスのために考慮することができる。
【0004】
偏向が極めて小さい場合にも切換信号が生成されるように、タッチプローブシステム内には光学測定装置などの測定装置が設けられている。スタイラスを介して、タッチプレートの偏向が測定装置に機械的に伝達される。
【0005】
例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102009031323号明細書は、アダプタ手段が工作機械に取り付けられるタッチプローブを記載している。磁気手段を用いて測定用タッチプローブをアダプタ手段に位置決めすることができる。繰返し正確に位置決めするためには、位置決め面が半球状の端部を有していることが望ましいことを提案している。
【0006】
しかしながら、このような構成は位置決め精度に関して欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102009031323号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の基礎をなす課題は、とりわけ、ケーシングとベースとを有するタッチプローブシステムを提供することであり、ケーシングをベースに対して、磁石によって再現可能に、極めて位置決め精度良く、もしくは繰返し正確に組み合わせることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を有するタッチプローブシステムによって解決される。
【0010】
したがって、タッチプローブシステムはケーシングとベースとを備え、ケーシングは第1の位置決め面を有し、ベースは第2の位置決め面を有する。さらにケーシングおよび/またはベースは磁石を有する。したがって磁場が生じる。タッチプローブシステムは、第1の位置決め面が第1の方向にずらして第2の位置決め面に向かい合って配置可能であるように構成されている。この配置では、ケーシングおよびベースは、磁界によって生成される力によって一緒に保持される。この場合:
a)第1の位置決め面に3つの円錐体が配置されており、これらの円錐体の軸線が第1の方向に互いに平行に配向されており、さらに第2の位置決め面に6つの円筒体が配置されており、これらの円筒体の軸線が第1の方向に直交して配向されているか、または
b)3つの円錐体が第2の位置決め面に配置されており、これらの円錐体の軸線が第1の方向に互いに平行に配向されており、さらに第1の位置決め面に6つの円筒体が配置されており、これらの円筒体の軸線が第1の方向に直交して配向されているかのいずれかである。
【0011】
さらに第1および第2の位置決め面を互いに対して正確に、再現可能に、もしくは繰返し正確に組み合わせ可能であるように円筒体を円錐体に接触させることができる。
【0012】
特に、第1の位置決め面が第1の方向にずらして第2の位置決め面に向かい合って位置決めされており、ケーシングとベースとが磁界によって生成される力によって一緒に保持される構成において円筒体が円錐体に接触している。
【0013】
円錐体という概念は、以下では、コーンもしくは円錐または円錐台として形成されている本体として理解されるべきである。特に、円錐は、真っ直ぐな円錐として形成されていてもよい。円錐体の表面の少なくとも一部が円錐面として形成されており、この円錐面を円筒体の表面と接触させることができることが重要である。したがって、円錐体と円筒体との間にそれぞれ点接触が存在する。特に、それぞれの円錐面の対称軸線を円錐体の軸線と理解することができる。
【0014】
有利には、タッチプローブシステムは、ケーシングに対して偏向可能に支持されたスタイラスを有し、スタイラスが偏向された場合には、センサユニットによって電気信号がトリガ可能である。
【0015】
本発明の別の実施形態では、円筒体はピンとして構成されている。
【0016】
有利には、円筒体は、ケーシングの孔またはベースの孔のいずれかに固定されており、円筒体は、孔から部分的に突出することができる。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、円筒体は対で互いに対して平行に配置されており、したがって、3対の円筒体が設けられており、円筒体はそれぞれ互いに対して平行に配置されている。特に、6つの円筒体はそれぞれ長手方向に軸線、特に対称軸線を有し、これらの軸線は第1の方向zに直交して配向されている。
【0018】
有利には、円錐体は円錐台状に構成されている。
【0019】
本発明の別の実施形態では、円錐体は、特に、ケーシングの孔またはベースの孔に圧入嵌めによって固定されているか、または螺子によって固定されている。
【0020】
有利には、ケーシングは磁石を有し、ベースは少なくとも部分的に磁性材料により作製されている。
【0021】
代替的には、ベースは磁石を有していてもよく、この場合、ケーシングは少なくとも部分的に磁性材料から作製されてもよい。
【0022】
適切な磁性材料として、特に、強磁性材料、例えば、比較的高い鉄含有量を有する材料が考慮される。
【0023】
もちろん、ケーシングおよびベースの両方が磁石を有していてもよい。
【0024】
有利な構成によれば、ケーシングは、機械的コーディングのための第1の手段を有し、ベースは、機械的コーディングのための第2の手段を有し、これによりケーシングとベースとは、定められた相対位置でのみ互いに組み合わせ可能である。特に、ケーシングとベースとは、長手方向軸線に対して定められた角度位置でのみ機械的コーディングによって組み合わせることができる。
【0025】
本発明の有利な実施形態が従属請求項に記載されている。
【0026】
本発明によるタッチプローブシステムのさらなる詳細および利点が以下の実施形態の説明により明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】ケーシングおよびベースを含むタッチプローブシステムの斜視図である。
【
図2】タッチプローブシステムの別の斜視図である。
【
図3】タッチプローブシステムのケーシングの下面図である。
【
図4】ベースを取り付ける場合のベースの斜視図である。
【
図6】タッチプローブシステムのベースの上面図である。
【
図7】ベースとケーシングとが組み合わされた状態のタッチプローブシステムの別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施形態の説明
図1は、ケーシング1およびベース2を含むタッチプローブシステムを示す。
【0029】
長手方向軸線Aを有するケーシング1からスタイラス3が突出し、スタイラス3の長手方向軸線は、停止状態または停止位置においてケーシング1の長手方向軸線Aと一致する。スタイラス3の一端にはタッチプレート3.1が固定されている。ケーシング1の反対側の端部またはケーシング1の底部には、
図3に示すように第1の位置決め面1.1が設けられている。これらの位置決め面1.1には切欠き1.5が設けられている。さらに、ケーシング1の凹部1.5の領域には孔が設けられており、これらの孔内には、それぞれ1つの円筒体1.2が固定されている。したがって、切欠き1.5の領域には、ここでは硬質金属からなるピンとして形成された2つの円筒体1.2がそれぞれ取り付けられている。これらの円筒体1.2は、提示した実施形態では対で互いに平行に配置されている。6つの円筒体1.2は、それぞれ長手方向に軸線B(対称軸線)を有する。6つの円筒体1.2の軸線Bは、第1の方向zに直交して配向されている。図示の実施形態では、ケーシング1の長手方向軸線Aは、第1の方向zに配向されている。
【0030】
対の円筒体1.2の間の、中央に延在する線は、それぞれ周方向に角度a=120°だけずらして配置されている。これらの線は、ケーシング1の長手方向軸線Aに交点を有する。
【0031】
ケーシング1もしくは第1の位置決め面1.1の中央には、磁石1.4、ここでは永久磁石が配置されており、ケーシング1の長手方向軸線Aはこの磁石1.4と交差する。
【0032】
さらに、第1の位置決め面1.1は、機械的コーディングのための第1の手段1.3としての役割を果たす切欠きを有する。これについては以下でより詳細に説明する。
【0033】
図4~
図6を参照してプローブシステムのベース2について説明する。磁性材料からなるベース2は、第2の位置決め面2.1を有する。
図4に示すように、ベース2を取り付ける場合のベース2の図を示しており、円錐体2.2にはボルト2.21が一体成形されている。ボルト2.21は孔2.11に圧入される。このために、ボルト2.21および孔2.11は、中間ばめもしくはプレスばめが生じる寸法に作製されている。
【0034】
提示した実施形態では、3つの円錐体2.2がこのようにベース2に結合されており、これにより円錐体2.2は表面もしくは第2の位置決め面2.1に当接する。特に円錐体2.2の底面は第2の位置決め面2.1に接触している。円錐体2.2は、ここでは硬質金属によって作製されている。円錐体2.2は、円錐台もしくは円錐部分に対応する幾何学形状を有し、当然ながら、それぞれの円錐台もしくはそれぞれの円錐体2.2は、軸線C(円錐面の対称軸線)を有する。3つの円錐体2.2の軸線Cは互いに平行に配置され、第1の方向zに配向されている。
【0035】
さらに、ベース2には螺子がねじ込まれており、これらの螺子は、機械的コーディングのための第2の手段2.3であり、機械的コーディングのための上述の第1の手段1.3と協働して、ケーシング1とベース2とが、特に長手方向軸線Aに関して定められた相対位置においてのみ互いに組み合わせ可能となるために使用される。
【0036】
ベース2は、工作機械のテーブルに固定することができる。測定タスクが保留されるとすぐに、工作機械の操作員は、スタイラス3を備えるケーシング1をベース2に配置することができる。このプロセスにおいて、機械的コーディングのための第2の手段2.3(ここでは螺子のヘッド)が機械的コーディングのための第1の手段1.3(ここでは切欠き)に潜り込み、この構造によって、ベース2とケーシング1との間で長手方向軸線Aを中心とした常に同じ相対角度方向を保証することができる。したがって、磁石1.4によって磁界が生じ、
図7に示すように第1の位置決め面1.1と第2の位置決め面2.1とが向かい合って配置されている場合には、ケーシング1とベース2とは、磁界によって生成される力によって共に保持される。換言すれば、ケーシング1は、磁気的なベース2に対する磁石1.4の吸引力によってベース2に固定されている。さらに本発明により、ケーシング1がベース2に対して極めて正確な位置へ移動することが保証される。この状況では、第1の位置決め面1.1は、第1の方向zにずらして第2の位置決め面2.1に向かい合っている。この場合、ケーシング1とベース2とは6点で接触している。
【0037】
工作機械は、テーブルに対して可動な工具を有し、この工具は、例えば工作機械のスピンドル内にクランプされている。工作機械を制御することによって工具の実際値を考慮に入れることができるように、工具は回転状態で規則的な間隔をおいて測定される。したがって、例えば、ワークピースを加工する場合に必要となるスピンドルの軸線の位置を検出する場合に工具の摩耗を補正することができる。
【0038】
スタイラス3は、ケーシング1の中央に偏向可能に支持されている。タッチプレート3.1が、接近している測定したい工具によって接触されるとすぐに、ケーシング1の内部のセンサは対応する信号を生成する。信号はさらに処理され、所定の基準を満たすと、電気的な切換信号が生成される。切換信号は、最終的に、例えば工具の位置が決定される工作機械の制御装置内などの電子機器に伝送され、同時に工作機械が停止される。
【0039】
工具が当接位置から移動された場合には、スタイラス3は再び停止位置に戻る。
【0040】
ケーシング1は、スタイラス3と共に、例えば、測定が行われた後に工作機械の加工スペースから取り外すことができ、ベース2は工作機械のテーブルに留まる。本発明によって、ケーシング1をスタイラス3と共に後に再びベース2に正確に配置することができ、特に、第1および第2の位置決め面1.1,2.1を互いに正確に、再現可能に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ケーシング
1.1 第1の位置決め面
1.2 円筒体
1.3 第1の手段
1.4 磁石
2 ベース
2.1 第2の位置決め面
2.2 円錐体
2.11 孔
2.2 円錐体
2.3 第2の手段
3 スタイラス
3.1 タッチプレート
B 軸線
C 軸線
z 第1の方向