(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】気相成長装置用部品の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 7/00 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
B08B7/00
(21)【出願番号】P 2019194170
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】有村 忠信
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209596(JP,A)
【文献】特開2018-118230(JP,A)
【文献】特開2019-118453(JP,A)
【文献】特開2004-150171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B7/00
H01L21/205
B08B3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物に付着した反応生成物を洗浄ガスとともに加熱して除去する洗浄炉を備えた気相成長装置用部品の洗浄装置において、
前記洗浄炉は、被洗浄物を収容する収容器と、該収容器を内部に囲うチャンバーと、該チャンバーの内周面に沿って立設された支持部材とを有し、
前記洗浄炉の底部は、前記収容器の底部を支持し、前記洗浄炉の外部から洗浄ガスの供給が可能なガス供給経路と、前記洗浄炉の外部へ洗浄排ガスの排出が可能なガス排出経路とを有する底蓋によって開閉可能に形成されており、
前記収容器は、天面及び側面を構成する収容器上部と、底面を構成する収容器下部と、該収容器下部に載置されて被洗浄物を支持する被洗浄物支持体とを備え、前記収容器上部と前記収容器下部とは分離可能に形成されており、
前記収容器上部には、側面から外周に沿って水平方向に突き出た鍔部が設けられ、前記収容器下部には、前記ガス供給経路に接続する給気口と、前記ガス排出経路に接続する排気口とが設けられており、
前記洗浄炉の下方には、前記底蓋を昇降する底蓋昇降手段を備え、前記底蓋が前記底蓋昇降手段によって上昇して前記洗浄炉の底部が閉じられると、前記収容器下部が前記洗浄炉内で前記収容器上部を支持部材よりも上方に押し上げ、前記底蓋が前記底蓋昇降手段によって下降して前記洗浄炉の底部が開かれると、前記支持部材が前記収容器上部の前記鍔部に下方から当接して前記収容器上部を前記洗浄炉内に支持することを特徴とする気相成長装置用部品の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置用部品の洗浄装置に関し、詳しくは、気相成長装置の反応炉内の部品を洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気相成長装置では、サセプタに設置した基板を反応炉内で高温に加熱するとともに、その表面に原料ガスを流して分解・化学反応させ、基板表面に半導体結晶の薄膜を生成させている。反応炉内では、基板周辺の部品にも原料ガスの反応生成物が付着するので、定期的に気相成長装置を分解して反応炉の各部品を洗浄し、付着した反応生成物を除去する必要がある。
【0003】
そこで、反応炉の各部品を洗浄容器に収容したものを洗浄炉に入れて加熱し、そこに洗浄ガスを流して付着した反応生成物を除去するドライ洗浄式の洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された洗浄装置では、被洗浄物を洗浄炉外に搬出して冷却する際に、洗浄容器に内包された状態で搬出されるために冷却に時間がかかり、洗浄から再使用可能になるまでの時間が長くなっているという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、洗浄の工程で加熱された被洗浄物の冷却時間を短縮可能な気相成長装置用部品の洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の気相成長装置用部品の洗浄装置は、被洗浄物に付着した反応生成物を洗浄ガスとともに加熱して除去する洗浄炉を備えた気相成長装置用部品の洗浄装置において、前記洗浄炉は、被洗浄物を収容する収容器と、該収容器を内部に囲うチャンバーと、該チャンバーの内周面に沿って立設された支持部材とを有し、前記洗浄炉の底部は、前記収容器の底部を支持し、前記洗浄炉の外部から洗浄ガスの供給が可能なガス供給経路と、前記洗浄炉の外部へ洗浄排ガスの排出が可能なガス排出経路とを有する底蓋によって開閉可能に形成されており、前記収容器は、天面及び側面を構成する収容器上部と、底面を構成する収容器下部と、該収容器下部に載置されて被洗浄物を支持する被洗浄物支持体とを備え、前記収容器上部と前記収容器下部とは分離可能に形成されており、前記収容器上部には、側面から外周に沿って水平方向に突き出た鍔部が設けられ、前記収容器下部には、前記ガス供給経路に接続する給気口と、前記ガス排出経路に接続する排気口とが設けられており、前記洗浄炉の下方には、前記底蓋を昇降する底蓋昇降手段を備え、前記底蓋が前記底蓋昇降手段によって上昇して前記洗浄炉の底部が閉じられると、前記収容器下部が前記洗浄炉内で前記収容器上部を支持部材よりも上方に押し上げ、前記底蓋が前記底蓋昇降手段によって下降して前記洗浄炉の底部が開かれると、前記支持部材が前記収容器上部の前記鍔部に下方から当接して前記収容器上部を前記洗浄炉内に支持することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の気相成長装置用部品の洗浄装置によれば、被洗浄物を洗浄炉で洗浄した後に、収容器の天面及び側面を構成する収容器上部を洗浄炉内に残置したまま、収容器の底部を構成する収容器下部を収容器上部から分離して下降させることで、洗浄炉から被洗浄物を搬出できるので、被洗浄物を、共に加熱された収容器で覆った状態で冷却せずに済み、また、被洗浄物を外気や冷媒に当てて速やかに放熱できるから、被洗浄物の冷却時間を大きく短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の、気相成長装置用部品の洗浄装置の一形態例を示す正面断面図である。
【
図2】洗浄炉と収容器との関係を示す正面断面図である。
【
図3】接合部材と底蓋との関係を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図4は、本発明の気相成長装置用部品の洗浄装置の形態例を示している。洗浄装置11は、被洗浄物12に付着した反応生成物を洗浄ガスとともに加熱して除去する洗浄炉13を備えている。
【0011】
洗浄炉13は、被洗浄物12を収容する収容器14と、収容器14を囲うチャンバー15と、チャンバー15内を外側から加熱するヒーター16と、チャンバー15及びヒーター16を覆って、内側に断熱材17aが取り付けられたケース部材17とを備えている。洗浄炉13の底部は開口していて、底蓋18によって開閉可能に形成されている。
【0012】
収容器14は、天面及び側面を構成する収容器上部19と、底面を構成する収容器下部20とからなる円筒形の容器であり、収容器上部19と収容器下部20とは分離可能に形成されている。
【0013】
収容器上部19には、側面の下端部から外周に沿って水平方向に突き出た鍔部19aが設けられている。また、収容器下部20の中央には、円形に開口した給気口20aと、給気口20aの外周に沿って開口した複数の排気口20bとが設けられている。
【0014】
収容器14の内部には、収容器下部20に載置されて被洗浄物12を支持する被洗浄物支持体21が設けられている。被洗浄物支持体21は、支持円盤21aを複数段重ねて構成されている。支持円盤21aは、扁平円筒状の円筒部21bと、円筒部21bを中心として水平方向に延びて、被洗浄物12を載置可能に形成された円盤状の棚部21cとを備えている。
【0015】
円筒部21bは、下端部が、収容器下部20の給気口20aの周縁の上部と嵌合可能に形成されており、内周の径が給気口20aよりもわずかに狭まっている。また、円筒部21bは、上端部と下端部とが互いに嵌合して積層可能に形成されている。
【0016】
円筒部21bの側面には、それぞれ、通気可能な貫通孔であるガス導入孔21dが複数箇所、周方向に対して等間隔に設けられている。
【0017】
チャンバー15は、洗浄ガスや反応生成物に対して耐食性があり、ヒーター16からの輻射熱を透過可能な材料(例えば、石英ガラス等)によってドーム状に形成されている。チャンバー15の下端部と、ケース部材17の下端部との間は、金属製の接合部材22により気密に閉じられている。
【0018】
接合部材22は、内周面がチャンバー15の下端部の内周よりも狭まった接合部材上部22aと、内周面がチャンバー15の下端部の内周よりも広まった接合部材下部22bとを備えている。
【0019】
接合部材下部22bの一カ所には、接合部材下部22bの内周面と外周面とを貫通するシールガス供給経路24が設けられており、外周面側からシールガス(例えば、窒素ガス)の供給源(図示せず)と接続されて、内周面側にシールガスを供給可能に構成されている。
【0020】
接合部材上部22aの内周縁上部には、チャンバー15の内周面に沿って上方に延びた、断熱性を有する円筒状の支持部材23が立設されている。支持部材23の上端部には、内側に向けて水平方向に延びたリング状の受け部23aが設けられている。
【0021】
ここで、受け部23aの内周は、収容器下部20が通過できるように、収容器下部20の外周よりも径が広くなっている。
【0022】
底蓋18は、円盤状の蓋板18aと、蓋板18aの上部に設けられた断熱性のある扁平円柱状の台座部18bとを備えている。蓋板18aは、接合部材下部22bの内径に対応していて、わずかに狭まった外径を有し、チャンバー15内を閉塞可能に形成されている。台座部18bは、支持部材23の内径及び高さのそれぞれに対応していて、わずかに狭まった外径及び同程度の高さを有し、上部外縁が受け部23aに当接可能に形成されている。
【0023】
また、台座部18bには、中央から上方に突出していて収容器下部20を下方から支持する収容器下部支持部18cが設けられている。蓋板18aには、外周縁下部から外側に広がって接合部材下部22bの底部と当接可能に形成され、上面に弾性部材である内外一対のOリングがはめ込まれた外縁部18dが設けられている。
【0024】
収容器下部支持部18cの内部及びその下方は中空に形成されていて、台座部18b及び蓋板18aの内部を鉛直方向に貫く通気管25になっている。通気管25の下部は、蓋板18aの下方まで延びて、ガスを吸引する真空ポンプ(図示せず)を備えた排気管26と接続されている。
【0025】
また、収容器下部支持部18cの上面には、収容器14を支持した状態で、収容器下部20の給気口20aと接続して通気可能に形成されたガス供給孔18eと、排気口20bと接続して通気可能に形成されたガス排出孔18fとがそれぞれ設けられている。収容器下部支持部18cの側面にも、通気可能に形成された炉内ガス排出孔18gが設けられており、チャンバー15内と通気管25内とが連通されている。
【0026】
ガス供給孔18eの通気管25側には、洗浄ガス(例えば、塩素ガスと窒素ガスの混合ガス)の供給源(図示せず)と繋がった管状のガス供給経路27が接続されており、このガス供給経路27を通じて収容器14の内部へと洗浄ガスを供給可能に形成されている。
【0027】
一方、ガス排出孔18f及び炉内ガス排出孔18gから通気管25を通って排気管26に至る経路が、洗浄炉13の外部へと洗浄排ガスやシールガスを排出するガス排出経路28となっている。
【0028】
また、洗浄炉13の下方には、底蓋18を昇降する底蓋昇降手段29が設けられている。底蓋昇降手段29は、底蓋18の外縁部18dが接合部材に圧接する位置、すなわち、洗浄炉13の底部が底蓋18によって閉じられる位置まで底蓋18を上昇させることができ、収容器14上端の高さ位置が接合部材22の下端部より下方になる位置まで底蓋18を下降させることができる。
【0029】
洗浄工程では、まず、底蓋昇降手段29によって、被洗浄物12を載せた被洗浄物支持体21を支持した底蓋18が上昇して洗浄炉13の底部が閉じられる。
【0030】
このとき、接合部材上部22aと接合部材下部22bとがなす段差部分に蓋板18aの上面が嵌まり込み、接合部材下部22bの底面に外縁部18dの上面が圧接するとともに、台座部18bの上部周縁が受け部23aに当接することで、チャンバー15内が閉塞される。
【0031】
また、収容器上部19は、収容器下部支持部18cに支持された収容器下部20によって支持部材23の受け部23aよりも上方に押し上げられているので、収容器14が閉じられた状態になっている。
【0032】
洗浄炉13が閉じられると、排気管26の真空ポンプによってガス排出経路28を通じて炉内ガス排出孔18gから空気が吸引されてることで洗浄炉13内が真空引きされ、ヒーター16によって洗浄炉13内が加熱される。
【0033】
そして、ガス供給経路27から洗浄ガスが、収容器下部20の給気口20a及び収容器下部支持部18cのガス供給孔18eを介して収容器14内に送り込まれ、被洗浄物支持体21の円筒部21b内及びガス導入孔21dを通じて各棚部21cに載置された被洗浄物12が洗浄ガスに晒される。
【0034】
このとき、シールガス供給経路24から洗浄炉13内にシールガスが供給されて、収容器14から漏出した洗浄ガス又は洗浄排ガスが、底蓋18と接合部材22との隙間に流れることが防止される。
【0035】
洗浄中は、洗浄炉13内が所定の圧力まで達するとシールガス供給経路24からの洗浄ガスの供給が停止されるとともに、洗浄炉13内が再度真空引きされて、洗浄炉13内の圧力が十分に低下すると洗浄ガスの供給が再開されるプロセスが繰り返される。
【0036】
このプロセスにおいて、洗浄炉13内に残留するシールガス、洗浄ガス及び洗浄排ガスは、炉内ガス排出孔18gからガス排出経路28を通じて排気管26に吸引される。また、収容器14内に残留する洗浄ガス及び洗浄排ガスは、収容器下部支持部18cのガス排出孔18f及び収容器下部20の排気口20bからガス排出経路28を通じて排気管26に吸引される。
【0037】
洗浄後は、底蓋昇降手段29によって底蓋18が下降して洗浄炉13の底部が開かれた状態になる。底蓋18が下降すると、収容器14も下降するが、支持部材23の受け部23aが鍔部19aに下方から当接して収容器上部19が支持されるので、収容器上部19はチャンバー15内に残る一方で、収容器下部20は収容器上部19から分離して底蓋18とともに下降する。
【0038】
したがって、収容器下部20上の被洗浄物支持体21、及び、被洗浄物支持体21が支持する被洗浄物12も下降するので、被洗浄物12は、収容器上部19に覆われていない状態で洗浄炉13の外に運び出される。
【0039】
このように、本発明の気相成長装置用部品の洗浄装置11によれば、被洗浄物12を洗浄炉13で洗浄した後に、収容器14の天面及び側面を構成する収容器上部19を洗浄炉13内に残置したまま、収容器14の底面を構成する収容器下部20を収容器上部19から分離して下降させることで、洗浄炉13から被洗浄物12を搬出できるので、被洗浄物12を、共に加熱された収容器14で覆った状態で冷却せずに済み、また、被洗浄物12を外気や冷媒に当てて速やかに放熱できるから、被洗浄物12の冷却時間を大きく短縮することができる。
【0040】
なお、本発明は、以上の形態例に限定されることなく、発明の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、本形態例では、収容器は円筒形に形成されているが、収容器上部を洗浄炉内に残し、被洗浄物を載せた収容器下部を洗浄炉外に搬出できれば、収容器の形状は円筒形に限られず、ドーム状や多角柱状の形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
11…洗浄装置、12…被洗浄物、13…洗浄炉、14…収容器、15…チャンバー、16…ヒーター、17…ケース部材、17a…断熱材、18…底蓋、18a…蓋板、18b…台座部、18c…収容器下部支持部、18d…外縁部、18e…ガス供給孔、18f…ガス排出孔、18g…炉内ガス排出孔、19…収容器上部、19a…鍔部、20…収容器下部、20a…給気口、20b…排気口、21…被洗浄物支持体、21a…支持円盤、21b…円筒部、21c…棚部、21d…ガス導入孔、22…接合部材、22a…接合部材上部、22b…接合部材下部、23…支持部材、23a…受け部、24…シールガス供給経路、25…通気管、26…排気管、27…ガス供給経路、28…ガス排出経路、29…底蓋昇降手段