IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7316300投影リソグラフィシステムのための瞳ファセットミラー、照明光学部品、および光学システム
<>
  • 特許-投影リソグラフィシステムのための瞳ファセットミラー、照明光学部品、および光学システム 図1
  • 特許-投影リソグラフィシステムのための瞳ファセットミラー、照明光学部品、および光学システム 図2
  • 特許-投影リソグラフィシステムのための瞳ファセットミラー、照明光学部品、および光学システム 図3
  • 特許-投影リソグラフィシステムのための瞳ファセットミラー、照明光学部品、および光学システム 図4
  • 特許-投影リソグラフィシステムのための瞳ファセットミラー、照明光学部品、および光学システム 図5
  • 特許-投影リソグラフィシステムのための瞳ファセットミラー、照明光学部品、および光学システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】投影リソグラフィシステムのための瞳ファセットミラー、照明光学部品、および光学システム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230720BHJP
   G02B 19/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G02B19/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020557380
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2018082511
(87)【国際公開番号】W WO2019134773
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】102018200167.7
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】デギュンター マルクス
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075962(JP,A)
【文献】特表2011-512659(JP,A)
【文献】特開平06-140307(JP,A)
【文献】特表2008-506159(JP,A)
【文献】特開2016-148873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G02B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影露光装置(1)のための光学システム(24)であって、
1.1 レチクル(17)に照明放射を伝達するための照明光学ユニット(23)と、
1.2 ウェーハ(22)上へと前記レチクル(17)を投影するための投影光学ユニット(19)とを備え、
1.3. 前記レチクル(17)においての前記投影光学ユニット(19)の前記照明放射の角度空間が、前記レチクル(17)の面法線に垂直な面上の方向である第1の方向において、前記照明光学ユニット(23)の前記照明放射の度空間の2倍の大きさである、光学システム(24)。
【請求項2】
前記レチクル(17)は、前記レチクルの面法線(26)が、全体的に前記投影光学ユニット(19)の前記照明放射のビーム内にあるような手立てで、前記照明放射のビーム経路に相対的に傾斜させられることを特徴とする、請求項1に記載の光学システム(23)。
【請求項3】
瞳ファセットミラー(10)が半円形実施形態を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の光学システム(24)。
【請求項4】
前記投影光学ユニット(19)は、少なくとも0.55の物体側開口数を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学システム(24)。
【請求項5】
前記レチクル(17)においての前記投影光学ユニット(19)の前記照明放射の前記角度空間は、第2の方向において、前記照明光学ユニット(23)の前記照明放射の前記角度空間と同じサイズであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学システム(24)。
【請求項6】
前記第1の方向は、前記レチクル(17)の短い長さの方向と一致することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学システム(24)。
【請求項7】
前記レチクル(17)および前記ウェーハ(22)の両方は、各々の場合において、180°まで回転可能であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学システム(24)。
【請求項8】
前記投影光学ユニット(19)は、複数のミラーを有し、前記投影光学ユニット(19)の前記ビーム経路内の前記最初の2つのミラーは、単純に連続する反射面を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学システム(24)。
【請求項9】
前記投影光学ユニット(19)の前記ビームの包線、および、前記照明光学ユニット(23)のビームの包線は重ならないことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学システム(24)。
【請求項10】
半円形実施形態を特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学システムの照明光学ユニット(23)のための瞳ファセットミラー(10)。
【請求項11】
前記第1の方向において、前記第1の方向に垂直な第2の方向におけるものの最大でも70%の大きさである、出口側最大開口を特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学システム(24)のための照明光学ユニット(23)。
【請求項12】
請求項10に記載の瞳ファセットミラー(10)を特徴とする、請求項11に記載の照明光学ユニット(23)。
【請求項13】
13.1. 請求項1~9のいずれか1項に記載の光学システム(24)と、
13.2. 照明放射を発生させるための放射源(2)と
を備えるマイクロリソグラフィ投影露光装置(1)。
【請求項14】
投影露光装置(1)を用いてウェーハ(22)を照明するための方法であって、
14.1. 請求項1~9のいずれか1項に記載の光学システムを有する投影露光装置(1)を用意するステップと、
14.2. レチクル(17)を、前記投影露光装置(1)の物体平面(16)内に設けるステップと、
14.3. ウェーハ(22)を、前記投影露光装置(1)の像平面(21)内に設けるステップと、
14.4. 前記投影露光装置(1)を用いて、前記ウェーハ(22)上への前記レチクル(17)の第1の投影をするステップと、
14.5. 前記レチクル(17)および前記ウェーハ(22)を、光学軸の周りで、各々の場合において、180°まで回転させるステップと、
14.6. 前記投影露光装置(1)を用いて、前記ウェーハ(22)上への前記レチクル(17)の第2の投影をするステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、独国特許出願DE102018200167.7の優先権を主張するものであり、その独国特許出願の内容は、本明細書に参照により組み込まれている。
【0002】
本発明は、投影露光装置のための光学システム、照明光学ユニットのための瞳ファセットミラー、および、照明光学ユニットに関する。本発明はさらに、マイクロリソグラフィ投影露光装置に関する。最後に、本発明は、投影露光装置を用いてウェーハを露光するための方法、および、そのような方法を使用して生成されるマイクロ構造化またはナノ構造化構成要素に関する。
【背景技術】
【0003】
高い開口数を有する投影露光装置が、従来技術から知られている。しかしながら、照明放射の入射の大きい角度が、マスク構造に起因するシャドーイング効果につながることがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、投影露光装置のための光学システムを改善することである。
【0005】
この目的は、レチクルにおいての投影光学ユニットの照明放射の角度空間が、第1の方向において、照明光学ユニットの照明放射の角度空間の2倍の大きさである、光学システムにより達成される。この第1の方向は、特に、投影露光装置の走査方向に平行に伸びる。走査方向は、照明されるレチクルの広がりに基づいて、照明光学ユニット内で認識され得る。レチクルは、走査方向において、その走査方向に直交する方向においてより有意に短い。
【0006】
第1の方向において角度空間を半減することは、特に、投影光学ユニットのビーム経路内の照明放射のビームの開きが、ウェーハ上の円形角度空間につながり、一方で、そのことと比較して、第1の方向においての、レチクルを照明するための照明放射のビームの開きは、その開きの半分に低減されるという事実によって達成され得る。投影光学ユニットによる非点収差結像(astigmatic imaging)の場合において、投影光学ユニットのビーム経路内の照明放射の角度空間は、特に楕円形であることがある。
【0007】
投影光学ユニットのビーム経路内の照明放射のビームの開きまたは角度空間に言及する場合、このことは、投影光学ユニットにより記録される開口の中にある、すなわち、実際にウェーハに達することができる、光線のみを意味すると理解される。
【0008】
第1の方向において、照明光学ユニットの開口数は、特に、投影光学ユニットの開口数のまさしく半分の大きさである。
【0009】
本発明によれば、レチクル上の照明放射の入射の最大角度は、この手立てで低減され得るということが認識されている。レチクルの結像に対して照明瞳を半減することの成り行きは、照明瞳の他方の半分による後続の第2の露光により補償され得る。このことは、下記でより詳細に説明されることになる。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、レチクルは、そのレチクルの面法線が、全体的に投影光学ユニットの照明放射のビーム内にあるような手立てで、照明放射のビーム経路に相対的に傾斜させられる。レチクル上に入射する照明放射、および、レチクルにより反射させられる照明放射の異なる開き角度のために、レチクルの面法線は、特に、照明光学ユニットのビームと、投影光学ユニットのビームとの間に、もはや対称的にはなく、全体的に投影光学ユニットのビームの中にある。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、光学システムは、半円形瞳ファセットミラーを備える。瞳ファセットミラーは、下記でより詳細に説明される。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、光学システムは、少なくとも0.55、特に、少なくとも0.7の、物体側の開口数を有する投影光学ユニットを備える。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、レチクル上の投影光学ユニットの照明放射の角度空間は、第2の方向において、照明光学ユニットの照明放射の角度空間と同じサイズである。第2の方向は、ここでは特に、第1の方向に垂直に向きを設定される。
【0014】
解像限界においてのレチクルの構造を解像するために、レチクルにおいて反射させられる照明放射の、2つの1次の回折のうちの1つの部分のみが、ウェーハ上へとレチクルを投影するために使用される。
【0015】
レチクルにおいて正反射させられる照明放射、すなわち、ゼロ次の回折に加えて、特に、+1次または-1次のいずれかの回折の部分のみが、投影光学ユニットのビーム内に内包される。+1/-1次の回折は、特に取り除かれ得る、すなわち、投影光学ユニットのビーム内に、単に部分的に、特に、完全にではなく内包され得る。このことは、対応して、より高次の回折に当てはまる。
【0016】
本発明のさらなる態様によれば、レチクルおよびウェーハの両方は、各々の場合において、180°まで回転可能である。特にそれらは、対応して、レチクルまたはウェーハホルダ上に回転可能に装着される。
【0017】
このことは、レチクルを、照明瞳の他方の半分によって照明することを可能にする。同じマスク構造、すなわち、レチクル内に挿入される同じマスクが、ここで、ウェーハの同じ領域上へと結像される。このことは、異なるマスクが、異なる照明瞳を使用してウェーハの同じ領域上へと続けて結像される、二重露光と、および、ウェーハ上に付与されるフォトレジストが、ウェーハ上の同じ領域の2つの露光の間に現像される、ダブルパターニングとの両方で区別されるべきである。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、投影光学ユニットは、複数のミラーを有し、投影光学ユニットのビーム経路内の最初の2つのミラー、特に最初の3つのミラー、特に最初の4つのミラーは、単純に連続する(contiguous)反射面を有する。
【0019】
この手立てで、投影光学ユニットのこれらのミラーの分画された反射面に対する必要性が回避され得る。
【0020】
分画された反射面を回避することは、特に、レチクルと照明光学ユニットとの間のビーム経路を、レチクルと投影光学ユニットとの間のビーム経路から分離することを可能にする。
【0021】
投影露光装置のための照明光学ユニット、および、投影露光装置の照明光学ユニットのための瞳ファセットミラーを改善することが、本発明のさらなる目的である。
【0022】
これらの目的は、照明瞳の半分のみがレチクルを照明することに対して利用可能であるように設計される照明光学ユニットにより、および、半円形外形を有する瞳ファセットミラーにより達成される。
【0023】
照明光学ユニットは、特に、第1の方向において、その第1の方向に垂直な第2の方向においてより小さい出口側開口を有する。第1および第2の方向においての照明光学ユニットの出口側開口の直径の比は、特に、最大で0.7、特に、最大で0.6である。特に、その比は、0.5であり得る。
【0024】
このことは、特に、最後のことについては、円形出口側開口の半分を取り除いて外すことにより達成され得る。このことは、特に、瞳ファセットミラーの適した設計の手立てにより可能である。照明光学ユニットは、特に、半円形開口を有する。
【0025】
瞳ファセットミラーは、さらには、半楕円形であり得る。このことは、その瞳ファセットミラーが、対称的に分割された楕円の半分の形状を有するということを意味すると理解される。
【0026】
瞳ファセットミラーの形状は、特に、その包線(envelope:エンベロープ)、すなわち、その最も小さい凸状包線の形状を意味すると理解される。形状は、特に、瞳ファセットが配置構成され得る領域を定める。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、レチクルを照明するために照明瞳の半分を用意するのみである照明光学ユニットが、照明瞳の半分を遮断するための障害物により形成される。
【0028】
本発明によれば、照明瞳の2分の1のみを用意することにより、レチクルを照明するための照明放射のビームの開きは、1つの方向において2分の1に低減され得るということが認識されている。この手立てで、マスク上への照明放射の入射の最大角度は低減され得る。特に、このことは、シャドーイング効果を低減することができる。
【0029】
本発明のさらなる目的は、マイクロリソグラフィ投影露光装置を改善することである。
【0030】
この目的は、上記の説明による光学システムを有する投影露光装置により達成される。
【0031】
利点は、すでに説明されたことから明白である。
【0032】
投影露光装置は、特に、EUV投影露光装置である。特に、そのEUV投影露光装置は、特に13.5nmまたは7nmの波長を有する照明放射を照明するために、EUV範囲内の、特に30nm未満の波長範囲内の照明放射を発生させるための放射源を備える。
【0033】
本発明の別の目的は、投影露光装置を使用してウェーハを露光するための方法を改善することにある。
【0034】
この目的は、レチクルがウェーハ上へと2回続けて投影され、レチクルおよびウェーハが、各々の場合において、2つの露光ステップの間に光学軸の周りで、180°まで回転させられる、方法により達成される。
【0035】
この手立てで、レチクルを照明し、ウェーハ上へとレチクルの構造を結像するために、逐次的に、照明瞳の2つの半分を使用することが可能である。この手立てで、上記で説明された瞳半減の影響は、補償され得る、特に、実質的に完全に補償され得る。
【0036】
方法は、二重露光方法である。
【0037】
本発明のさらなる目的は、マイクロ構造化またはナノ構造化構成要素を改善することにある。
【0038】
このことは、先に説明された方法を使用して、対応する構成要素を生成することにより達成される。
【0039】
特に投影光学ユニットの、高い開口数と同時に、低減されるシャドーイング効果に起因して、特に、ウェーハ上の構造の精度が、さらに改善され得る。
【0040】
本発明のさらなる詳細および利点は、図を参照しての例示的な実施形態の説明から明らかになるであろう。図においては、次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】マイクロリソグラフィ投影露光装置を貫く子午断面を概略的に示す図である。
図2図1による投影露光装置の照明光学ユニットの瞳ファセットミラーの平面視図を概略的に示す図である。
図3図1による投影露光装置のビーム経路内の領域IIIの拡大された詳細を示す図である。
図4】レチクルの領域内の照明光学ユニットおよび投影光学ユニットの照明放射のビームを貫く、図3による線IV-IVに沿った断面を概略的に示す図である。
図5】第1の露光ステップにおいてのレチクルおよびウェーハの配置構成を概略的に示す図である。
図6】後続の第2の露光ステップにおいてのレチクルおよびウェーハの配置構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本質的に知られているマイクロリソグラフィ投影露光装置1の一般的な詳細が、最初に、下記で例として説明される。ここでは、その投影露光装置1の代表物として、DE102012220597A1を参照し、その文献はここに、本出願に、その一部分として完全に組み込まれている。この参照は、制限的と理解されるべきではない。投影露光装置1の異なる詳細において、脇にそれることは可能である。
【0043】
マイクロリソグラフィ投影露光装置1は、マイクロ構造化またはナノ構造化電子半導体構成要素を生成する働きをする。放射源2は、例えば5nm~30nmの間の波長範囲内の照明のために使用されるEUV放射を放出する。放射源2は、GDPP(ガス放電生成プラズマ)源またはLPP(レーザ生成プラズマ)源であり得る。シンクロトロンまたは自由電子レーザ(FEL)に基づく放射源が、さらには、放射源2のために使用され得る。そのような放射源に関する情報は、例えば、米国特許第6859515B2号において、当業者により見出され得る。結像光ビーム3の形式でのEUV照明光または照明放射が、投影露光装置1の中での照明および結像のために使用される。放射源2の下流の結像光ビーム3は、最初にコレクタ4を通過し、そのコレクタ4は、例えば、従来技術から知られているマルチシェル構造様式を有する入れ子式コレクタ、または代替的には、楕円体に形状設定され、次いで、放射源2の下流に配置構成されるコレクタであり得る。対応するコレクタは、EP1225481Aから知られている。放射源2およびコレクタ4は、放射源モジュール8の構成要素であり得る。
【0044】
コレクタ4の下流で、EUV照明光3は、最初に中間焦点平面5を通過し、その中間焦点平面5は、結像光ビーム3を、望ましくない放射または粒子部分から分離するために使用され得る。中間焦点平面5を通過する後、結像光ビーム3は、最初に、視野ファセット7を有する視野ファセットミラー6上に入射する。視野ファセットミラー6は、投影露光装置1の第1のファセットミラーを構成する。
【0045】
位置的関係性の説明を容易にするために、デカルトグローバルxyz座標系が、各々の場合において、図面において描写される。図1において、x軸は、図面の平面に垂直に、および、その平面から外に伸びる。y軸は、図1において右の方に伸びる。z軸は、図1において上の方に伸びる。
【0046】
視野ファセット7は、各々の場合において、3つの異なる傾斜位置の間で切り替え可能である。視野ファセットミラー6の実施形態に依存して、視野ファセット7のすべてまたは一部は、さらには、4つ以上の異なる傾斜位置の間で切り替え可能である。この目的のために、視野ファセットの各々は、アクチュエータに接続される。すべての傾斜可能視野ファセット7のアクチュエータは、中央制御デバイスによって制御され得る。
【0047】
視野ファセットミラー6においての反射の後、個々の視野ファセット7に割り当てられる結像光部分ビームに分けられた結像光ビーム3は、下記でより詳細に説明されることになる、瞳ファセットミラー10上に入射する。全体の結像光ビーム3のそれぞれの結像光部分ビームは、それぞれの結像光チャネルに沿って誘導される。
【0048】
図2は、瞳ファセットミラー10の瞳ファセット11の例示的なファセット配置構成を、非常に概略的に示す。瞳ファセットミラー10は、投影露光装置1の第2のファセットミラーを構成する。瞳ファセット11は、瞳ファセットミラー10のキャリアプレート上に配置構成される。瞳ファセット11は、x/y格子内の行および列の形で配置構成される。代替的には、瞳ファセット11は、六角格子上に配置構成される。瞳ファセット11は、正方形反射面を有する。他の形式の反射面、例えば、長方形、丸い、または、多角形面、例えば六角形もしくは八角形面が、さらには可能である。菱形の形式で配置構成される瞳ファセット11が、さらには可能である。
【0049】
厳密に1つの瞳ファセット11が、3つの傾斜位置のうちの1つにおいての視野ファセット7のうちの1つにより反射させられる、EUV照明光3の、各々の結像光部分ビームに割り当てられ、その結果、各々の場合において光を当てられる、および、視野ファセット7のうちの厳密に1つと、瞳ファセット11のうちの厳密に1つとを有する、ファセット対が、EUV照明光3の関連付けられる結像光部分ビームに対する結像光チャネルを定める。かくして、それぞれの視野ファセット7の、各々の傾斜位置において、前記視野ファセット7は、厳密に1つの瞳ファセット11を、前記瞳ファセット11の方向においてEUV照明光3を偏向させるために割り当てられる。
【0050】
視野ファセット7への瞳ファセット11の、チャネル単位での割り当ては、投影露光装置1により、所望される照明を基にして実現される。異なる視野ファセット傾斜位置のために、視野ファセット7の各々は、それゆえに、異なる結像光チャネルを定めることができる。視野ファセット7の各々は、その傾斜位置のすべてにわたる、傾斜位置の数に対応する瞳ファセット11のセットを割り当てられる。
【0051】
代替的実施形態において、視野ファセット7は、さらには、2つの傾斜位置の間で、4つの傾斜位置の間で、または、いっそう多くの傾斜位置の間で切り替え可能であり得るものであり、以て、各々の場合において、1つの結像光チャネルを定めることができる。それぞれの瞳ファセットセット内の瞳ファセット11の数は、したがって、対応して、より大きい。
【0052】
複数の傾斜位置の間で切り替え可能である視野ファセット7に加えて、視野ファセットミラー6は、さらには、切り替え可能ではなく、むしろ、1つの瞳ファセットに永続的に割り当てられる、視野ファセット7を有し得る。切り替え不可能な視野ファセット7を有するそのような変形例は、特に、特定の瞳ファセットが常に、定められることになる照明設定に関わらず、EUV照明光により光を当てられるように、特定の同一の方向からの光が、定められることになるすべての照明設定に対して要されるように、定められることになる異なる照明設定が共通点をもつときに使用される。
【0053】
視野ファセット7の瞬間的な傾斜位置に起因して照明光3により光を当てられる、瞳ファセットミラー10の瞳ファセット11が、図2において例として強調表示される。x双極子設定の半分、特に、そのようなx双極子設定の極のうちのまさに1つに対応する照明設定が、図2において例として図解される。この照明設定は、投影露光装置1によって定められ得る照明角度分布に対応する。照明光3により光を当てられる瞳ファセット11は、各々の照明設定において、少なくとも1つの連続する瞳ファセット群を形成する。原理的に、視野ファセット7の瞬間的な傾斜位置に依存して、連続しない分布を有する照明設定が、さらには、照明光3により光を当てられる瞳ファセット11により実現され得る。少なくとも1つの連続する瞳ファセット群を有する、および、離隔された様式で光を当てられる少なくとも1つの瞳ファセット11を有する、混合された形式の照明設定が、さらには可能である。離隔された様式で光を当てられる瞳ファセット11を有する、そのような照明設定は、視野ファセットの数と比較して、有意により大きい数の瞳ファセットが存する場合において実現され得るものであり、瞳ファセットミラー10上の瞳ファセットは、例えば、より小さい数の視野ファセットによって、可能な限り一様に光を当てられることになる。照明設定が、少なくとも1つの連続する瞳ファセット群を有するならば、前記瞳ファセット群は、少なくとも2つの瞳ファセット11を内包する。
【0054】
瞳ファセットミラー10(図1)、および、3つのEUVミラー12、13、14からなる下流伝達光学ユニット15によって、視野ファセット7は、投影露光装置1の物体平面16内へと結像される。EUVミラー14は、かすめ入射のためのミラー(かすめ入射ミラー)として実施される。物体平面16内に配置構成されるのがレチクル17であり、そのレチクル17から、投影露光装置1の下流投影光学ユニット19の物体視野18と一致する照明領域が、EUV照明光3によって照明される。照明領域は、さらには照明視野と呼称される。物体視野18は、投影露光装置1の照明光学ユニットの具体的な実施形態に依存して、長方形または弓形である。結像光チャネルが、物体視野18内で重畳される。EUV照明光3は、レチクル17から反射させられる。レチクル17は、レチクルホルダ17aにより保持され、そのレチクルホルダ17aは、概略的に指示される物体変位駆動装置17bを用いて、変位方向yに沿って、駆動される様式で変位可能である。
【0055】
瞳ファセットミラー10が、直接的に、投影光学ユニット19の入口瞳内に配置構成されるのであれば、伝達光学ユニット15を省くことが可能である。
【0056】
投影光学ユニット19は、物体平面16内の物体視野18を、像平面21内の像視野20内へと結像する。前記像平面21内に配設されるのが、投影露光装置1の手段により投影露光の間に露光される感光層をもつウェーハ22である。ウェーハ22、すなわち、結像が遂げられる基板は、ウェーハまたはウェーハホルダ22aにより保持され、そのホルダは、レチクルホルダ17aの変位と同期して、変位方向yに沿って、同じように概略的に指示されるウェーハ変位駆動装置22bを用いて変位可能である。投影露光の間、レチクル17およびウェーハ22の両方は、y方向において、同期される様式で走査される。投影露光装置1は、スキャナとして実施される。走査方向yは、物体変位方向である。
【0057】
視野ファセットミラー6、瞳ファセットミラー10、および、伝達光学ユニット15のミラー12~14は、投影露光装置1の照明光学ユニット23の構成部品である。
【0058】
投影光学ユニット19とともに、照明光学ユニット23は、投影露光装置1の光学システム24を形成する。
【0059】
放射源モジュール8とともに、照明光学ユニット23は、投影露光装置1の照明システム25を形成する。
【0060】
投影露光装置1の、特に照明光学ユニット23の、特に瞳ファセットミラー10の、さらなる詳細が、下記で説明される。
【0061】
照明光学ユニット23は、好ましくは、高い開口数、特に、少なくとも0.55、特に少なくとも0.65、特に少なくとも0.7の開口数を有し得る。しかしながら、本発明によれば、レチクル17の領域内の照明放射の入射の大きい角度が、所望されないシャドーイング効果につながることがあるということが認識されている。
【0062】
照明放射の放射誘導の理由のために、照明光学ユニット23の照明放射のビーム経路は、通常、レチクル17の法線26に対して傾斜させられ、そのことによって、照明光学ユニット23のビーム経路は、投影光学ユニット19のビーム経路に関して重なりがない。照明光学ユニット23のビーム経路は、特に、そのビーム経路が、レチクル17により正反射させられるビーム、すなわち、ゼロ次へと回折させられる照明放射を有する、投影光学ユニット19のビーム経路内で重ならないように、傾斜させられる。
【0063】
シャドーイング効果は、少なくとも部分的に、投影光学ユニット19のアナモルフィックな実施形態により補償され得る。しかしながら、このことは、輸送される情報の低減に、およびかくして、投影露光装置1のスループットの低減につながる。ここで説明される本発明は、投影光学ユニット19のアナモルフィックな実施形態と組み合わされ得る。有利な設計が、後で論考されることになる。
【0064】
本発明によれば、レチクル17において照明光学ユニット23のビーム経路内で照明放射のビーム3の開きを低減することの手立てにより、レチクル17において照明放射の入射の最大角度を低減することが可能にされる。
【0065】
このことは、例えば、単に、円形瞳ファセットミラー10の代わりに半円形瞳ファセットミラー10を使用することにより達成され得る(図2を確認されたい)。
【0066】
図3および4は、例として、レチクル17の領域内の照明光学ユニット23のビーム27、および、レチクル17の領域内の投影光学ユニット19のビーム28を概略的に図解する。図4の破線29は、図3の図面の平面を示す。
【0067】
特に、照明光学ユニット23のビーム27の最大広がり、すなわち、照明光学ユニット23の物体側開口、および、投影光学ユニット19の物体側開口が図解される。対応する領域は、必ずしも照明放射によって完全に満たされるとは限らない(例えば、図2においての例示的な図解を確認されたい)。
【0068】
図3および4において例として図解されるように、照明光学ユニット23のビーム27の開き角度b(BO)は、第1の方向において、投影光学ユニット19のビーム28の開き角度b(PO)のまさしく半分の大きさであり得る。
【0069】
第1の方向は、特にy方向、すなわち走査方向であり得る。
【0070】
その第1の方向に垂直な第2の方向において、照明光学ユニット23のビーム経路内の、および、投影光学ユニット19のビーム経路内の、照明放射のビーム27、28は、同一の開き角度を有し得る(図4を確認されたい)。
【0071】
レチクル17においての照明放射の入射の最大角度bin_maxが、レチクル17において正反射させられる照明放射の反射の最大角度baus_maxとまさしく同じ大きさであるように、照明光学ユニット23内の照明放射のビーム27が、レチクル17に相対的に傾斜させられることがさらに可能にされる。
【0072】
照明光学ユニット23のビーム経路内の、および、投影光学ユニット19のビーム経路内の、ビーム27、28の異なる開きのゆえに、レチクル17上の面法線26は、完全に投影光学ユニット19のビーム28の領域内にある。
【0073】
アナモルフィックな投影光学ユニット19を使用するとき、特に有利な実施形態は、総合的な角度広がりがxおよびy方向において同一であるような手立てで、拡大スケールを選択することにある。角度空間においての、投影光学ユニット19のビーム経路内の照明放射の放射ビーム28の広がりは、x方向において、y方向においてより50%大であり得る。結果として、レチクルの法線に関するビームの最大角度は、方向に非依存的である。
【0074】
レチクル17の面法線26は、完全に投影光学ユニット19のビーム経路内にあるが、投影光学ユニット19のビーム経路内の、最初の2つのミラー、特に最初の3つのミラー、特に最初の4つのミラーは、単純に連続する反射面を有し得る。特に、それらのミラーは、分画されない反射面を有する。
【0075】
図4は、例として、正反射させられるゼロ次の照明放射が、完全に(ハッチングされた領域30)投影光学ユニット19のビーム28内に内包されるということを示す。投影光学ユニット19のビーム28は、その上、より高次の部分(陰影付けされない領域31)を内包する。しかしながら、投影光学ユニット19のビーム28は、特にy方向において、ゼロ次の領域30の1つの側にある、より高次の部分を内包するのみである。より高次の部分は、特に、照明光学ユニット23のビーム27と、そのビーム27の正反射との間の領域内にある。
【0076】
図4からさらに確認され得るように、照明光学ユニット23のビーム27の開きは、第1の方向、特にy方向においてのみ低減される。その第1の方向に垂直な第2の方向、特にx方向において、ビーム27の開きの低減は存しない。
【0077】
照明光学ユニット23のビーム27は、かくして、異なる最大広がりを有する。アナモルフィックなシステムにおいて、最大広がりは、投影光学ユニットの開口数に相対的に、対応する方向においてとられることになる。
【0078】
本発明によれば、ウェーハ22上へのレチクル17の結像に対する照明瞳の、先に説明された半減することの成り行きは、二重露光により補償され得るということが認識されている。この二重露光において、照明瞳の、2つの相補的な半分が、ウェーハ22上へとレチクル17を結像するために、逐次的に使用される。この場合において、投影露光装置1の光学システム24は、不変のままであり、一方で、レチクル17およびウェーハ22は、光学軸の周りで回転させられる。レチクル17およびウェーハ22は、特に、光学軸の周りで、180°まで回転させられる。2つの露光ステップにおいての、レチクル17の、およびウェーハ22の配置構成が、図5および6において例として示される。
【0079】
先程説明された二重露光は、有利であり得るが、必須ではないということが留意されるべきである。この二重露光なしでは、レチクルおよび/またはウェーハの、焦点誤差またはz位置誤差が、ウェーハ上に生成される構造のずれに、および減退につながる。ずれは、説明された二重露光によって有意に低減され得るが、このことには、構造の減退の増大が付随することがある。投影露光装置の所望される用途に依存して、説明された二重露光は、それゆえに、必須である、有利であるが必須ではない、または、不利であることがある。
【0080】
レチクルホルダ17aは、レチクル17を回転させる働きをする。
【0081】
ウェーハホルダ22aは、ウェーハ22を回転させる働きをする。
【0082】
レチクル17の観点からは、その構造は、各々の場合において、2つの露光ステップにおいて、照明瞳の相補的な半分によって照明される。
【0083】
上記で説明された解決策を用いて、レチクルにおいての照明放射の、入射の最大角度/反射の角度は、25%だけ低減され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6