(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】無機質球状化粒子製造装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/00 20060101AFI20230720BHJP
F23D 14/32 20060101ALI20230720BHJP
F23D 14/58 20060101ALI20230720BHJP
B01J 2/02 20060101ALI20230720BHJP
C01B 13/18 20060101ALI20230720BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
B01J2/00 A
F23D14/32
F23D14/58 Z
B01J2/02 A
C01B13/18
C01B3/04 B
(21)【出願番号】P 2021046563
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 義之
(72)【発明者】
【氏名】山本 康之
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023853(JP,A)
【文献】特開2018-095512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00- 2/30
F23D 14/32
F23D 14/58
C01B 13/18
C01B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解ガスを含む燃料ガスと、酸素を含有する支燃性ガスとを用いる無機質球状化粒子製造用バーナと、
前記無機質球状化粒子製造用バーナを、炉頂部に垂直下向きに接続する竪型の球状化炉と、
アンモニア供給源と、
酸素供給源と、
前記アンモニア供給源と前記無機質球状化粒子製造用バーナとの間に位置するアンモニア供給ラインと、
前記アンモニア供給ラインに位置し、アンモニアを熱分解する加熱手段と、
前記酸素供給源と前記無機質球状化粒子製造用バーナとの間に位置する酸素供給ラインと、
前記球状化炉の下流に位置する燃焼ガス排出ラインと、を備え、
前記熱分解ガスが、前記アンモニアが熱分解して生成した水素を含
み、
前記加熱手段が、前記燃焼ガス排出ラインからの排ガスとの熱交換によりアンモニアを加熱する熱交換器と、前記アンモニア供給ラインからのアンモニアの流れ方向において前記熱交換器の二次側に位置する温度計と、発熱体と、制御装置とを有する無機質球状化粒子製造装置。
【請求項2】
前記温度計が、前記アンモニア供給ラインからのアンモニアの流れ方向において、前記発熱体の一次側に位置する第1温度計と、前記発熱体の二次側に位置する第2温度計とを有する、請求項1に記載の無機質球状化粒子製造装置。
【請求項3】
助燃用燃料供給源と、
前記助燃用燃料供給源と前記無機質球状化粒子製造用バーナとの間に位置する助燃用燃料供給ラインと、をさらに備える、請求項1又は2に記載の無機質球状化粒子製造装置。
【請求項4】
前記熱交換器が、前記アンモニア供給ラインと前記燃焼ガス排出ラインとに位置する、請求項
1に記載の無機質球状化粒子製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質粒状化粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無機質の粉体原料を火炎中に通すことにより、無機質球状化粒子(以下、単に「球状化粒子」ということがある)を製造する方法が知られている(特許文献1~3)。
【0003】
例えば、特許文献2に開示されている無機質球状化粒子製造装置においては、
図12に示すように、原料粉体が原料供給機(フィーダ)Aから供給され、キャリアガス供給装置A’から供給されるキャリアガスに同伴されてバーナBに搬送される。このバーナBには、酸素供給設備Cからの酸素と、LPG供給設備Dからの燃料ガス(液化石油ガス:LPG)とが供給される。そして、竪型炉E内の火炎中で球状化された粒子を含む排ガスは、経路Fから竪型炉Eの底部に導入された空気により冷却(温度希釈)され、後段のサイクロンG、バグフィルターHで球状化粒子が捕集される。
【0004】
ここで、原料粉体をバーナで形成した火炎中で球状化する為には、高温の火炎が必要であることから、
図12中に示すバーナBとして、通常は、燃料ガスと純酸素とを用いた酸素燃焼バーナ(以下、単に「酸素バーナ」ということがある)が用いられている。
【0005】
このような酸素バーナとして、例えば、特許文献1には、同心円状の二重管であって、その内管と外管との間に多数の小管を設けた構造の拡散型バーナが開示されている。
【0006】
また、特許文献2,3には、同心の四重管構造を有する拡散型の酸素バーナが開示されている。具体的には、特許文献2,3に開示された拡散型バーナは、中心から酸素ガス又は酸素富化ガスをキャリアガスとして原料粉体を燃焼室に供給し、その外周から燃料ガスを、更にその外周から1次酸素と2次酸素を供給するように形成されており、最外周には、バーナを冷却する冷却水通路が設けられている。
【0007】
このように、特許文献1~3に開示された酸素バーナでは、燃料ガスと支燃性ガス(酸素ガス)とを燃焼室で混合、燃焼させるため、高温の酸素燃焼火炎を得る事が出来る。これにより、円形度が高い無機質球状化粒子が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭58-145613号公報
【文献】特許第3331491号公報
【文献】特許第3312228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1~3に開示された、従来の酸素バーナでは、一般的に都市ガスやLPG等の炭素源を含む燃料ガスを用いるため、燃焼時に温暖化ガスである二酸化炭素が多く発生してしまう。
また、不完全燃焼が生じた際には、固体炭素である煤が発生するため、製品となる無機質球状化粒子中に微量の炭素が混入するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い円形度を維持しつつ、温暖化ガスの発生量を大幅に削減し、燃焼中の煤の発生を抑制することが可能な無機質球状化粒子製造装置及び無機質球状化粒子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 熱分解ガスを含む燃料ガスと、酸素を含有する支燃性ガスとを用いる無機質球状化粒子製造用バーナと、
前記無機質球状化粒子製造用バーナを、炉頂部に垂直下向きに接続する竪型の球状化炉と、
アンモニア供給源と、
酸素供給源と、
前記アンモニア供給源と前記無機質球状化粒子製造用バーナとの間に位置するアンモニア供給ラインと、
前記アンモニア供給ラインに位置し、アンモニアを熱分解する加熱手段と、
前記酸素供給源と前記無機質球状化粒子製造用バーナとの間に位置する酸素供給ラインと、を備え、
前記熱分解ガスが、前記アンモニアが熱分解して生成した水素を含む、無機質球状化粒子製造装置。
[2] 前記加熱手段が、発熱体及び熱交換器のいずれか一方又は両方を含む、[1]に記載の無機質球状化粒子製造装置。
[3] 助燃用燃料供給源と、
前記助燃用燃料供給源と前記無機質球状化粒子製造用バーナとの間に位置する助燃用燃料供給ラインと、をさらに備える、[1]又は[2]に記載の無機質球状化粒子製造装置。
[4] 前記球状化炉の下流に位置する燃焼ガス排出ラインをさらに備える[1]乃至[3]のいずれかに記載の無機質球状化粒子製造装置。
[5] 前記熱交換器が、前記アンモニア供給ラインと前記燃焼ガス排出ラインとに位置する、[4]に記載の無機質球状化粒子製造装置。
[6] 燃料ガスと酸素を含有する支燃性ガスとの燃焼により形成されたバーナ火炎により無機質粉体を溶融し、球状化する無機質球状化粒子の製造方法であって、
前記燃料ガスとして、アンモニアが熱分解して生成した水素を含む熱分解ガスを用いる、無機質球状化粒子の製造方法。
[7] 前記熱分解ガスの温度が、150℃以上である、[6]に記載の無機質球状化粒子の製造方法。
[8] 前記熱分解ガスの温度が、300℃以上である、[6]又は[7]に記載の無機質球状化粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無機質球状化粒子製造装置は、高い円形度を維持しつつ、温暖化ガスの発生量を大幅に削減し、燃焼中の煤の発生を抑制できる。
本発明の無機質球状化粒子の製造方法は、高い円形度を維持しつつ、温暖化ガスの発生量を大幅に削減し、燃焼中の煤の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用した第1実施形態の無機質球状化粒子の製造装置の構成を示す系統図である。
【
図2】第1実施形態に適用可能な無機質球状化粒子製造用バーナを示す平面図である。
【
図3】
図2中に示すA-A’線に沿った断面図である。
【
図5】第1実施形態に適用可能な加熱部を模式的に示す系統図である。
【
図6】本発明を適用した第2実施形態の無機質球状化粒子の製造装置の構成を示す系統図である。
【
図7】第2実施形態に適用可能な無機質球状化粒子製造用バーナを示す平面図である。
【
図8】
図7中に示すB-B’線に沿った断面図である。
【
図10】本発明の実施例を説明するためのグラフである。
【
図11】本発明の実施例を説明するためのグラフである。
【
図12】従来の無機質球状化粒子の製造装置の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本発明を適用した第1の実施形態である無機質球状化粒子製造装置について、これを用いた無機質球状化粒子の製造方法とともに図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
(無機質球状化粒子の製造装置)
先ず、本発明を適用した第1実施形態の無機質球状化粒子製造装置の構成について、説明する。
図1は、本発明を適用した第1実施形態の無機質球状化粒子製造装置の構成の一例を示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態の無機質球状化粒子製造装置(以下、単に「装置」という場合がある)10は、無機質球状化粒子製造用バーナ(以下、単に「バーナ」という場合がある)11、アンモニア供給源12、酸素供給源13、原料粉体供給源14、球状化炉15、サイクロン16、バグフィルター17、助燃用燃料供給源18、加熱部(加熱手段)19、アンモニア供給ラインL1、酸素供給ラインL2、冷却水循環ラインL3、燃焼ガス排出ラインL5及び助燃用燃料供給ラインL6を備える。
【0016】
(無機質球状化粒子製造用バーナ)
図2~
図4は、第1実施形態の装置10に適用可能なバーナ11を示しており、
図2はバーナ11をその先端側から眺めた平面図であり、
図3は
図2中に示すバーナ11の中心軸Cを通るB-B’に沿って切断した断面図であり、
図4はバーナ11の先端側の拡大断面図である。
【0017】
図2~
図4に示すように、バーナ11は、当該バーナ11の中心軸Cから周方向外側に向けて、原料粉体供給管2、第1燃料供給管23、第1支燃性ガス供給管24、第2燃料供給管7、第2支燃性ガス供給管8、及び水冷ジャケット5から構成される、同心の多重管構造を有している。また、本実施形態のバーナ11は、燃料ガスと酸素を含有する支燃性ガスとを用いた酸素燃焼バーナである。
【0018】
原料粉体供給管2は、
図3に示すように、バーナ11の同心多重管構造の最内側に、当該バーナ11の軸方向に沿って延在している。この原料粉体供給管2の内側の空間は、原料粉体供給路2Aとなっており、原料粉体として無機質粉体をキャリアガス(搬送ガス)との混合物として供給可能となっている。
【0019】
原料粉体供給路2Aは、バーナ11の軸方向の先端寄りの部分において、バーナ11の中心軸から半径方向へ放射状に延びる複数の原料粉体供給支流路2Bに分岐する。
また、原料粉体供給支流路2Bは、
図3及び
図4に示すように、バーナ11の軸方向の先端に開口を有する原料粉体噴出孔2aとそれぞれ連通する。
これにより、バーナ11は、原料粉体供給路2A、複数の原料粉体供給支流路2B、及び複数の原料粉体噴出孔2aを介して、バーナ中心軸Cに対して平行な方向に原料粉体を噴出するようになっている。
【0020】
具体的には、
図2に示すように、バーナ11の先端を平面視した際に、複数の原料粉体噴出孔2aの開口は、バーナ11の中心軸を中心とする円環状となるように、等間隔に配設される。これにより、原料粉体供給孔2aの内側あるいは外側に形成される火炎による熱を、効率よく原料粉体に受熱させることができる。
【0021】
また、原料粉体供給路2Aは、バーナ11の軸方向の先端寄りの部分には、
図3及び
図4に示すように、原料粉体を複数の原料粉体供給支流路2Bに均一に分散させるための分散板2bが設けられている。
さらに、原料粉体供給路2Aは、基端側において原料粉体供給源14と、後述する酸素ガス供給ラインL2及びL2Bを介して接続されている。
【0022】
キャリアガス(搬送ガス)は、原料粉体を搬送可能な気体であれば、特に限定されるものではない。キャリアガスとしては、具体的には、例えば、安全性を考慮する場合には、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを用いることができる。一方、キャリアガスとして酸素もしくは酸素富化空気等を用いた場合には、原料粉体の支燃剤として用いることができる。これにより、後述する火炎を形成する際、より高温な火炎を形成できる。
【0023】
第1燃料供給管23は、
図3に示すように、原料粉体供給管2の外側を覆うように設けられている。第1燃料供給管23の中心軸と原料粉体供給管2中心軸とは一致しており、第1燃料供給管23は、原料粉体供給管2と同軸に設けられている。
【0024】
第1燃料供給管23と原料粉体供給管2との間に設けられた環状の空間は、第1燃料ガスを供給するための第1燃料供給路23Aである。換言すると、第1燃料供給路23Aは、第1粉体供給路2Aの外周を覆うように設けられている。
第1燃料供給路23Aの基端側は、上述した助燃用燃料供給ラインL6を介して助燃用燃料供給源18と接続されている。
【0025】
第1燃料ガスとしては、助燃用燃料を用いることができる。
助燃用燃料としては、例えば、メタン(CH4)やプロパン(C3H8)等の気体燃料を用いることができる。また、液体霧化機構を有する場合であれば、灯油、アルコール等の液体燃料を用いることもできる。
第1燃料ガスは、上述した助燃用燃料に限定されない。第1燃料ガスとしては、炭素源を含まない物質であるアンモニア(NH3)を用いてもよい。
第1燃料ガスは、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスによって希釈されたものを用いてもよい。
【0026】
第1燃料供給路23Aの先端の位置は、バーナ21の軸方向において、原料粉体供給路2Aが複数の原料粉体供給支流路2Bに分岐する位置よりも基端側となっている。したがって、第1粉体供給路2Aの先端寄りの部分の外周には、第1燃料供給路23Aは設けられていない。
【0027】
第1燃料供給路23Aの先端寄りの環状の空間は、基端部分及び中央部分と比較して外径が同じか僅かに大きくなっている。第1燃料供給路23Aの先端寄りの環状の空間の外径の位置は、原料粉体噴出孔2aの位置よりも内側であることが好ましい。これにより、
図2に示すように、バーナ21の先端を平面視した際に、複数の原料粉体噴出孔2aよりも内側に、火炎(第1火炎)を形成するための第1燃料ガスを供給することができる。
【0028】
図3及び
図4に示すように、第1燃料供給路23Aの先端部分には、バーナ11の軸方向と平行方向に延在する複数の第1燃料ガス噴射ノズル(第1燃料供給支流路)3aが接続されている。第1燃料供給路23Aと複数の第1燃料ガス噴射ノズル3aの内側の空間とは、それぞれ連通されている。これにより、第1燃料供給路23Aから複数の第1燃料ガス噴射ノズル3aに、燃料ガスをそれぞれ供給できる。換言すると、第1燃料供給路23Aは、バーナ21の先端寄りの部分において複数の第1燃料ガス噴射ノズル3aに分岐している。
【0029】
第1支燃性ガス供給管24は、
図3に示すように、第1燃料供給管23の外側を覆うように設けられている。第1支燃性ガス供給管24の中心軸と第1燃料供給管23の中心軸とは一致しており、第1支燃性ガス供給管24は、第1燃料供給管23及び原料粉体供給管2と同軸に設けられている。
【0030】
第1支燃性ガス供給管24と第1燃料供給管23との間に設けられた環状の空間は、第1支燃性ガスを供給するための第1支燃性ガス供給路24Aである。換言すると、第1支燃性ガス供給路24Aは、第1燃料供給路23Aの先端及び外周を覆うように設けられている。
第1支燃性ガス供給路24Aの基端側は、酸素供給ラインL2及びL2Aを介して酸素供給源13と接続されている。
【0031】
第1支燃性ガスは、第1燃料ガスと反応して火炎雰囲気を形成可能なガスであれば、特に限定されるものではない。第1支燃性ガスとしては、酸素、酸素富化空気等が挙げられる。
【0032】
第1支燃性ガス供給路24Aの先端の位置は、バーナ11の軸方向において、原料粉体供給路2Aが複数の原料粉体供給支流路2Bに分岐する位置よりも先端側となっている。したがって、第1支燃性ガス供給路24Aは、第1粉体供給路2Aの先端寄りの部分の外周を覆うように設けられている。
【0033】
第1支燃性ガス供給路24Aの先端寄りの環状の空間は、基端部分及び中央部分と比較して内径が小さくなっている。第1支燃性ガス供給路24Aの先端寄りの環状の空間の内径の位置は、原料粉体噴出孔2aの位置よりも内側であることが好ましい。これにより、
図2に示すように、バーナ11の先端を平面視した際に、複数の原料粉体噴出孔2aよりも内側の位置に、第1火炎を形成するための第1支燃性ガスを供給することができる。
【0034】
図3及び
図4に示すように、バーナ11の周方向の外側から中心軸Cに向かって拡径された第1支燃性ガス供給路24Aの先端部分には、バーナ11の軸方向と平行方向に延在する複数の第1支燃性ガス供給孔(第1支燃性ガス供給支流路)4aが接続されている。第1支燃性ガス供給路24Aと複数の第1支燃性ガス供給孔4aの内側の空間とは、それぞれ連通されている。これにより、第1支燃性ガス供給路24Aから複数の第1支燃性ガス供給孔4aに、第1支燃性ガスをそれぞれ供給できる。換言すると、第1支燃性ガス供給路24Aは、バーナ21の先端寄りの部分において複数の第1支燃性ガス供給孔4aに分岐している。
【0035】
本実施形態のバーナ11は、
図4に示すように、第1燃料ガス噴射ノズル3aが第1支燃性ガス供給孔4aの内側にそれぞれ位置する。また、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bは、第1支燃性ガス供給孔4aの内側にそれぞれ位置する。すなわち、第1燃料ガス噴射ノズル3aは、第1支燃性ガス供給孔4aの内側で開口する。
【0036】
ここで、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bから第1支燃性ガス供給孔4aの内側に第1燃料ガスを噴射すると、第1支燃性ガス供給孔4aの内側に向けて第1支燃性ガス供給路24Aから支燃性ガスが供給される。そして、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bよりも前方の、第1支燃性ガス供給孔4aの内側において、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとが混合される。
【0037】
このように、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bから、第1支燃性ガス供給孔4aの先端4bまでの空間は、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとを混合する第1予混合室6となる。また、第1支燃性ガス供給孔4aの先端4bの開口が、第1予混合室6の開口6aとなる。
【0038】
換言すると、バーナ11は、複数の第1予混合室6を備える。これらの第1予混合室6は、バーナ11の軸方向の先端寄りに位置する。第1予混合室6は、第1燃料ガス噴射ノズル3aの一つ、及び支燃性ガス供給孔4aの一つとそれぞれ連通する。第1予混合室6は、バーナ1の軸方向の先端にそれぞれ開口する。
【0039】
第1予混合室6の容積v1は、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとを充分混合することができ、且つ逆火の恐れがなければ、特に限定されない。
このような容積v1[m3]としては、例えば、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとの合計流量Q1を25~50[Nm3/h]とする場合には、3.0×10-5~1.0×10-3[m3]とすればよく、1.0×10-4~1.0×10-3[m3]がより好ましい。容積v1を1.0×10-4~1.0×10-3[m3]の範囲とすれば、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとを充分混合できる。
【0040】
また、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bから、第1支燃性ガス供給孔4aの先端4bまでのオフセット距離L1としては、1.0×10-3~1.0×10-1[m]とすればよく、2×10-3~5×10-2[m]がより好ましい。
【0041】
また、第1予混合室6の数量は、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとの混合ガスの供給量や、原料粉体噴出孔2aの数量やレイアウト(配置)に応じて適宜選択することができる。
【0042】
第1予混合室6では、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとをあらかじめ混合し、混合ガスとして開口6aからバーナ1の軸方向と平行な方向に向けて噴射する。
【0043】
第2燃料供給管7は、
図3に示すように、第1支燃性ガス供給管24の外側を覆うように設けられている。第1燃料供給管23の中心軸と第1支燃性ガス供給管24の中心軸とは一致しており、第2燃料供給管7は、第1支燃性ガス供給管24と同軸に設けられている。
【0044】
第2燃料供給管7と第1支燃性ガス供給管24との間に設けられた環状の空間は、第2燃料ガスを供給するための第2燃料供給路7Aである。換言すると、第2燃料供給路7Aは、第1支燃性ガス供給路24Aの外周を覆うように設けられている。
第2燃料供給路7Aの基端側は、アンモニア供給ラインL1を介してアンモニア供給源12と接続されている。
【0045】
第2燃料ガスは、熱分解ガスを含む。
ここで、熱分解ガスは、後述する加熱部19によってアンモニアが熱分解して生成した水素を含む。熱分解ガスは、未分解のアンモニア、水素、窒素が含まれてもよいし、すべてのアンモニアが水素と窒素に分解されて未分解のアンモニアを含まなくてもよい。火炎の燃焼速度、燃焼温度の観点から、熱分解ガスは、アンモニアを含まないものが好ましい。なお、未分解のアンモニアを含まない熱分解ガスとは、熱分解ガス中のアンモニア濃度が5ppm以下であることを意味する。
【0046】
熱分解ガスは、窒素を含まないものが好ましい。熱分解ガス中の窒素濃度は、50体積%以下が好ましく、25体積%以下がより好ましい。
【0047】
熱分解ガスの温度は、火炎の燃焼速度の観点、及び燃焼温度の観点から、150℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましい。熱分解ガスは、温度が高いほど、アンモニアが水素と窒素に分解され、火炎の燃焼速度が速く、燃焼温度が高くなるため、上限温度は特に限定するものではない。ただし、熱分解の消費エネルギーと、火炎の燃焼速度と燃焼温度のバランスとから、熱分解ガスの温度は、200℃以上400℃以下が好ましく、250℃以上350℃以下がより好ましい。なお、熱分解ガスの温度は、後述する加熱部19を通過した直後の温度(後述する第2温度計28で測定した温度)である。
【0048】
なお、本実施形態では、第2燃料ガスとして熱分解ガスを含む態様を一例として説明するが、本発明はこれに限定されない。第2燃料ガスは、火炎の燃焼温度を高めるために、助燃用燃料を含むものを用いてもよい。
第2燃料ガスは、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスによって希釈されたものを用いてもよい。
【0049】
第2燃料供給路7Aの先端の位置は、バーナ11の軸方向において、第1燃料供給路23Aと同程度の位置となっている。したがって、第1粉体供給路2Aの先端寄りの部分の外周には、第2燃料供給路7Aは設けられていない。
【0050】
第2燃料供給路7Aの先端寄りの環状の空間は、基端部分及び中央部分と比較して外径が同じか僅かに大きくなっている。第2燃料供給路7Aの先端寄りの環状の空間の外径の位置は、原料粉体噴出孔2aの位置よりも外側であることが好ましい。これにより、
図2に示すように、バーナ11の先端を平面視した際に、複数の原料粉体噴出孔2aよりも外側に、火炎(第2火炎)を形成するための第2燃料ガスを供給することができる。
【0051】
図3及び
図4に示すように、第2燃料供給路7Aの先端部分には、バーナ11の軸方向と平行方向に延在する複数の第2燃料ガス噴射ノズル(第2燃料供給支流路)7aが接続されている。第2燃料供給路7Aと複数の第2燃料ガス噴射ノズル7aの内側の空間とは、それぞれ連通されている。これにより、第2燃料供給路7Aから複数の第2燃料ガス噴射ノズル7aに、第2燃料ガスをそれぞれ供給できる。換言すると、第2燃料供給路7Aは、バーナ21の先端寄りの部分において複数の第2燃料ガス噴射ノズル7aに分岐している。
【0052】
第2支燃性ガス供給管8は、
図3に示すように、第2燃料供給管7の外側を覆うように設けられている。第2支燃性ガス供給管8の中心軸と第2燃料供給管7の中心軸とは一致しており、第2支燃性ガス供給管8は、第2燃料供給管7及び原料粉体供給管2と同軸に設けられている。
【0053】
第2支燃性ガス供給管8と第2燃料供給管7との間に設けられた環状の空間は、第2支燃性ガスを供給するための第2支燃性ガス供給路8Aである。換言すると、第2支燃性ガス供給路8Aは、第2燃料供給路7Aの先端及び外周を覆うように設けられている。
第2支燃性ガス供給路8Aの基端側は、酸素供給ラインL2及びL2Cを介して酸素供給源13と接続されている。
【0054】
第2支燃性ガスは、第1支燃性ガスと同様に、第2燃料ガスと反応して火炎雰囲気を形成可能なガスであれば、特に限定されるものではない。第2支燃性ガスとしては、酸素、酸素富化空気等が挙げられる。第2支燃性ガスとしては、第1支燃性ガスと同一の成分であってもよいし、異なる成分であってもよい。
【0055】
第2支燃性ガス供給路8Aの先端の位置は、バーナ11の軸方向において、原料粉体供給路2Aが複数の原料粉体供給支流路2Bに分岐する位置よりも先端側となっている。したがって、第2支燃性ガス供給路8Aは、第1支燃性ガス供給路24の先端寄りの部分の外周を覆うように設けられている。
【0056】
第2支燃性ガス供給路8Aの先端寄りの環状の空間は、基端部分及び中央部分と比較して内径が小さくなっている。第2支燃性ガス供給路8Aの先端寄りの環状の空間の内径の位置は、原料粉体噴出孔2aの位置よりも外側であることが好ましい。これにより、
図2に示すように、バーナ11の先端を平面視した際に、複数の原料粉体噴出孔2aよりも外側の位置に、火炎(第2火炎)を形成するための第2支燃性ガスを供給することができる。
【0057】
図3及び
図4に示すように、バーナ11の周方向の外側から中心軸Cに向かって拡径された第2支燃性ガス供給路8Aの先端部分には、バーナ11の軸方向と平行方向に延在する複数の第2支燃性ガス供給孔(第2支燃性ガス供給支流路)8aが接続されている。第2支燃性ガス供給路8Aと複数の第2支燃性ガス供給孔8aの内側の空間とは、それぞれ連通されている。これにより、第2支燃性ガス供給路8Aから複数の第2支燃性ガス供給孔8aに、第2支燃性ガスをそれぞれ供給できる。換言すると、第2支燃性ガス供給路8Aは、バーナ11の先端寄りの部分において複数の第2支燃性ガス供給孔8aに分岐している。
【0058】
水冷ジャケット5は、
図3に示すように、第2支燃性ガス供給管8の外側を覆うように設けられている。水冷ジャケット5には、冷却水の導入口5Aと導出口5Bとが設けられている。これにより、導入口5Aから水冷ジャケット5内の流路に供給された冷却水は、バーナ11の特に先端寄りの部分を冷却した後、導出口5Bから排出される。
【0059】
本実施形態のバーナ11は、
図4に示すように、第2燃料ガス噴射ノズル7aが第2支燃性ガス供給孔8aの内側にそれぞれ位置する。また、第2燃料ガス噴射ノズル7aの先端7bは、第2支燃性ガス供給孔8aの内側にそれぞれ位置する。すなわち、第2燃料ガス噴射ノズル7aは、第2支燃性ガス供給孔8aの内側で開口する。
【0060】
ここで、第2燃料ガス噴射ノズル7aの先端7bから第2支燃性ガス供給孔8aの内側に第2燃料ガスを噴射すると、第2支燃性ガス供給孔8aの内側に向けて第2支燃性ガス供給路8Aから第2支燃性ガスが供給される。そして、第2燃料ガス噴射ノズル7aの先端7bよりも前方の、第2支燃性ガス供給孔8aの内側において、第2燃料ガスと第2支燃性ガスとが混合される。
【0061】
このように、第2燃料ガス噴射ノズル7aの先端7bから、第2支燃性ガス供給孔8aの先端8bまでの空間は、第2燃料ガスと第2支燃性ガスとを混合する第2予混合室9となる。また、第2支燃性ガス供給孔8aの先端8bの開口が、第2予混合室9の開口9aとなる。
【0062】
換言すると、本実施形態のバーナ11は、複数の第2予混合室9を備える。これらの第2予混合室9は、バーナ11の軸方向の先端寄りに位置する。第2予混合室9は、第2燃料ガス噴射ノズル7aの一つ、及び第2支燃性ガス供給孔8aの一つとそれぞれ連通する。第2予混合室9は、バーナ11の軸方向の先端にそれぞれ開口する。
【0063】
第2予混合室9の容積v2は、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとを充分混合することができ、逆火の恐れがなければ、特に限定されない。
このような容積v2[m3]としては、上述した第1予混合室6の容積v1と同様とすることができる。すなわち、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとの合計流量Q1を25~50[Nm3/h]とする場合には、3.0×10-5~1.0×10-3[m3]とすればよく、1.0×10-4~1.0×10-3[m3]がより好ましい。容積v2を1.0×10-4~1.0×10-3[m3]の範囲とすれば、第2予混合室9内で第1燃料ガスと第1支燃性ガスとを充分混合できる。
【0064】
また、第2燃料ガス噴射ノズル7aの先端7bから、第2支燃性ガス供給孔8aの先端8bまでのオフセット距離L2としては、上述したオフセット距離L1と同様に、1.0×10-3~1.0×10-4[m]とすればよく、2.0×10-3~5.0×10-2[m]がより好ましい。
【0065】
また、第2予混合室9の数量は、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとの混合ガスの供給量や、原料粉体噴出孔2aの数量やレイアウト(配置)に応じて適宜選択することができる。
【0066】
第2予混合室9では、第2燃料ガスと第2支燃性ガスとをあらかじめ混合し、混合ガスとして開口9aからバーナ11の軸方向と平行な方向に向けて噴射する。
【0067】
バーナ11は、小さな容積の第1予混合室6及び第2予混合室9を複数備え、第1予混合室6において第1燃料ガスと第1支燃性ガスとをあらかじめ混合し、第2予混合室9において第2燃料ガスと第2支燃性ガスとをあらかじめ混合する構成となっている。これにより、燃料ガスと支燃性ガスとを充分に混合して燃焼効率をあげることができ、逆火のおそれもない。
【0068】
本実施形態のバーナ11によれば、
図2に示すように、バーナ11の先端を平面視した際に、バーナ11の中心軸Cを中心とする円環状に配設された原料粉体噴出孔2aの内側に、同心円となるように、複数の第1予混合室6の開口6aが等間隔に配設され、原料粉体噴出孔2aの外側に、同心円となるように、複数の第2予混合室9の開口9aが等間隔に配設される。すなわち、原料粉体噴出孔2aは、第1予混合室6の開口6aによって内側を、第2予混合室9の開口9aによって外側をそれぞれ囲まれる。
【0069】
換言すると、本実施形態のバーナ11は、バーナ11の中心部(中央部)に、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとの混合ガスからなる火炎(以下、「第1火炎」ともいう)を形成するために、複数の第1予混合室6の開口6aを円環状に配置し、第1火炎の外周を囲むように複数の原料粉体噴出孔2aを円環状に配置する。さらに、複数の原料粉体噴出孔2aの外側に、これらの原料粉体噴出孔2aの外周を囲むように第2燃料ガスと第2支燃性ガスとの混合ガスからなる火炎(以下、「第2火炎」ともいう)を形成するために、複数の第2予混合室9の開口9aを円環状に配置する。これにより、原料粉体噴出孔2aから噴出された原料粉体に対して火炎の熱を効率よく伝達でき、原料粉体を効率よく溶融できる。
【0070】
また、原料粉体噴出孔2aの外周を囲むように第2火炎を形成することで、バーナ21の周囲からの巻き込み空気もしくは炉内燃焼排ガスを遮断できるため、無機質粉体の溶融・球状化の効率を高めることができる。
【0071】
また、本実施形態のバーナ11によれば、第1火炎を形成するための第1燃料ガスの流量と、第2火炎を形成するための第2燃料ガスの流量を各々独立に制御し、第1火炎を形成するための第1支燃性ガス流量と、第2火炎を形成するための第2支燃性ガスの流量を各々独立に制御することができる。これにより、バーナ11の先端から噴射される原料粉体に対して、適切な燃焼状態を作り出す事が可能となる。
【0072】
(無機質球状化粒子の製造装置)
図1に示すように、アンモニア供給ラインL1は、アンモニア供給源12とバーナ11との間に位置する。具体的には、アンモニア供給ラインL1は、バーナ11の第2燃料供給路7Aの基端側と連通している。換言すると、アンモニア供給源12と第2燃料供給路7Aとは、アンモニア供給ラインL1を介して接続されている。これにより、アンモニア供給源12からアンモニアガスをアンモニア供給ラインL1に供給できる。
【0073】
アンモニア供給ラインL1には、後述する熱交換器H2と、流量調節バルブV1と、加熱部(加熱手段)19と、が設けられている。
【0074】
加熱部(加熱手段)19は、アンモニア供給ラインL1に位置し、アンモニア供給ラインL1に供給されるアンモニアを水素と窒素とに熱分解する。これにより、アンモニア供給源12から供給されるアンモニアが熱分解して生成した水素を含む熱分解ガスとして、バーナ11に供給できる。
図5は、加熱部19の構成を模式的に示す系統図である。
図5に示すように、加熱部19は、熱交換器25、第1温度計26、発熱体27、第2温度計28、及び制御装置(図示略)を有する。
【0075】
熱交換器25は、アンモニア供給ラインL1と燃焼ガス排出ラインL5とにわたるように位置し、燃焼ガスの排熱を利用してアンモニアを加熱する。熱交換器25は、特に限定されるものではなく、例えば、レキュペレータを使用できる。また、利用する排熱は、特に限定されるものではなく、装置の排熱、施設や工場の排熱を使用できる。
【0076】
第1温度計26は、アンモニア供給ラインL1において熱交換器25の二次側に位置し、熱交換器25を通過したガスの温度を測定する。第1温度計26としては、公知の温度計を使用できる。
【0077】
発熱体27は、アンモニア供給ラインL1に位置し、アンモニアを加熱する。発熱体27は、電気、蒸気又はガス等の熱を利用してアンモニアを加熱できるものであれば、特に限定されるものではない。また、発熱体27は、排熱を利用してアンモニアを加熱するものは含まない。発熱体27としては、例えば、ヒータ等が挙げられ、これらの中でも温度制御が容易であることから、電気ヒータを用いることが好ましい。
【0078】
第2温度計28は、アンモニア供給ラインL1において発熱体27の二次側に位置し、発熱体27を通過したガスの温度を測定する。第2温度計28としては、第1温度計26と同様に、公知の温度計を使用できる。
【0079】
制御装置(図示略)は、第1温度計26及び第2温度計28によって測定された温度の測定値に応じて加熱部19を制御する。
具体的には、制御装置は、例えば、第1温度計26の測定値が所定の温度より低い場合、アンモニアを分解するための熱を補うように発熱体27を制御する。また、制御装置は、第2温度計28の測定値が所定の温度よりも高い場合、発熱体27の出力を下げてアンモニアの分解温度を調整する制御を行う。
一方、制御装置は、第1温度計26の測定値が所定の温度よりも高い場合、熱交換器25の温度を下げてアンモニアの分解温度を調整する制御を行う。
【0080】
本実施形態の装置10によれば、加熱部19が制御装置を備える構成であるため、アンモニアを熱分解して水素を含む熱分解ガスとする際、消費エネルギーを削減できる。
なお、本実施形態の装置10では、加熱部19が熱交換器25及び発熱体27を併用する構成を一例として説明したが、これに限定されるものではない。加熱部19は、アンモニアを熱分解して水素を含む熱分解ガスとすることが可能であれば、熱交換器25及び発熱体27のいずれか一方のみを有する構成であってもよい。
【0081】
本実施形態の装置10によれば、加熱部19又は加熱部19の二次側のアンモニア供給ラインL1に、窒素除去手段が設けられていることが好ましい。窒素除去手段も設けることで、燃焼に寄与しない窒素を除去できるため、燃焼効率を向上できる。窒素除去手段としては、特に限定されるものではなく、公知のガス分離膜や圧力変動吸着装置等を用いることができる。
【0082】
酸素供給ラインL2は、酸素供給源13とバーナ11との間に位置する。
また、酸素供給ラインL2は、Q1地点でL2A、L2B及びL2Cに分岐する。
酸素供給ラインL2には、後述する熱交換器H1が設けられている。また、酸素供給ラインL2には、液体の酸素を気化する気化器(図示略)が設けられていてもよい。
分岐した酸素供給ラインL2A,L2B及びL2Cには、流量調節バルブV2,V3,V5がそれぞれ設けられている。
【0083】
分岐した酸素供給ラインL2Aは、バーナ11の第1支燃性ガス供給路24Aの基端側と連通している。換言すると、酸素供給源13と第1支燃性ガス供給路24Aとは、酸素供給ラインL2及びL2Aを介して接続されている。これにより、酸素供給源13から酸素ガスを第1支燃性ガスとしてバーナ11に供給できる。
【0084】
また、分岐した酸素供給ラインL2Bは、バーナ11の原料粉体供給路2Aの基端側と連通している。換言すると、酸素供給源13と原料粉体供給路2Aとは、酸素供給ラインL2及びL2Bを介して接続されている。これにより、酸素ガスをキャリアガスとしてバーナ11に供給できる。
【0085】
また、分岐した酸素供給ラインL2Cは、バーナ11の第2支燃性ガス供給路8Aの基端側と連通している。換言すると、酸素供給源13と第2支燃性ガス供給路8Aとは、酸素供給ラインL2及びL2Cを介して接続されている。これにより、酸素供給源13から酸素ガスを第2支燃性ガスとしてバーナ11に供給できる。
【0086】
助燃用燃料供給源18は、燃料ガスの一部として用いる助燃用燃料を貯蔵する設備である。本実施形態の装置10において、バーナ11の第1燃料ガス噴射ノズル3aに助燃用燃料を供給する事で、燃焼時に発生する二酸化炭素を削減しつつ、バーナの火炎温度を高く維持できるため、原料粉体を効率よく溶融できる。
【0087】
助燃用燃料としては、例えば、メタン(CH4)やプロパン(C3H8)等の気体燃料を用いることができる。また、液体霧化機構を有する場合であれば、灯油、アルコール等の液体燃料を用いることもできる。
【0088】
助燃用燃料供給ラインL6は、助燃用燃料供給源18とバーナ11との間に位置する。具体的には、助燃用燃料供給ラインL6は、バーナ11の第1燃料供給路23Aの基端側と連通している。換言すると、助燃用燃料供給源18と第1燃料供給路23Aとは、助燃用燃料供給ラインL6を介して接続されている。これにより、助燃用燃料供給源18から助燃用燃料を第1燃料ガスとしてバーナ21に供給できる。
【0089】
助燃用燃料供給ラインL6には、熱交換器H3と流量調節弁V4とが設けられている。これにより、バーナ11へ供給する助燃用燃料の温度や供給量を適宜調整できる。
【0090】
原料粉体供給源14は、原料粉体を貯蔵する設備であり、分岐した酸素供給ラインL2Bに設けられている。原料粉体供給源14と原料粉体供給路2Aとは、酸素供給ラインL2Bを介して接続されている。これにより、原料粉体である無機質粉体をキャリアガス(酸素ガス)とともにバーナ11に供給できる。
原料粉体供給源14の形態は、特に限定されない。例えば、原料タンク及び原料切り出し機構等を有していてもよい。
【0091】
原料粉体は、球状粒子を得たい化合物(無機質粉体)であれば、特に限定されるものではない。このような化合物としては、具体的には、例えば、SiO2、Al2O3、MgO又はFe2O3等の無機酸化物が挙げられる。
【0092】
また、原料粉体の粒子形態は、特に限定されるものではなく、角を有する非球形の粒子であってもよいし、角を有さない球形の粒子であってもよい。
【0093】
また、原料粉体の粒子径としては、1~500μmの範囲であることが好ましく、1~100μmの範囲であることが好ましい。ここで、原料粉体の粒子径が1μm未満であると、粒子同士が静電気で凝集し、500μmを超えると、バーナ火炎中で十分に加熱する事が出来なくなるために好ましくない。これに対して、上記範囲内であると、火炎中で適切に分散されつつ、十分に加熱・球状化する事が可能となる為に好ましい。
【0094】
冷却水循環ラインL3は、バーナ11における水冷ジャケット5の冷却水の導出口5Bと導入口5Aとの間に位置する。冷却水循環ラインL3には、冷却水を貯留する冷却塔CT、ポンプP1、熱交換器H1、熱交換器H3及び熱交換器H2が設けられている。
【0095】
冷却水循環ラインL3では、冷却塔CTの冷却水がポンプP1によって導入口5Aから水冷ジャケット5内へ供給され、バーナ11の冷却を終えた後に導出口5Bから排出される。次に、ジャケット5から排出された高温の冷却水は、冷却水循環ラインL3と酸素供給ラインL2とにわたって設けられた熱交換器H1において、低温の液化酸素あるいは酸素ガスとの熱交換によって冷却される。次いで、冷却水は、冷却水循環ラインL3と助燃用燃料供給経路L6とにわたって設けられた熱交換器H3において、低温の助燃用燃料との熱交換によって冷却される。さらに、冷却水は、冷却水循環ラインL3とアンモニア供給ラインL1とにわたって設けられた熱交換器H2において、低温の液化アンモニアあるいはアンモニアガスとの熱交換によって冷却された後、冷却塔CTへ供給される。
【0096】
本実施形態の装置10によれば、バーナ11の水冷ジャケット5に用いた冷却水を、液化酸素や液化アンモニアを気化あるいは加温する際の熱源として利用できる。
【0097】
球状化炉15は、円筒形の竪型炉であって、その天井部(炉頂部)には上述のバーナ11が、その先端側を炉内に臨ませるようにして垂直下向きに取り付けられている。
球状化炉15の底部付近には、送風ブロワP2が設けられた空気導入ラインL4が接続されており、ここから冷却用空気を内部に導入し、排出される燃焼ガスの温度を下げることができるようになっている。
【0098】
球状化炉15の底部付近には、排気ブロワP3が設けられた燃焼ガス排出ラインL5が接続されている。これにより、生成した球状化粒子は、燃焼ガスによって搬送され、サイクロン16の入口に送られるようになっている。
また、サイクロン16の出口にはダクトが設けられており、このダクトはバグフィルター17の入口に接続されている。
【0099】
(無機質球状化粒子の製造方法)
次に、上述した装置10を用いた球状化粒子の製造方法について説明する。
本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法は、上述した装置10の運転方法を含む。
装置10の運転方法は、昇温過程と、燃料変更過程と、製造過程と、を含む。
【0100】
昇温過程は、第1燃料ガスとして炭化水素を用いて火炎を形成し、球状化炉15の温度を上昇させる。炭化水素の火炎は、燃焼温度が高いため、炉の温度を素早く上昇させることができる。これにより、装置10の起動時間を短縮できる。
【0101】
二酸化炭素(CO2)の発生量を抑制したい場合、昇温過程では、炭素を含まない燃料を使用することができる。具体的には、第1燃料ガスに代えて、第2燃料ガスとして熱分解ガスを利用する。熱分解ガスは、アンモニアを熱分解することで得られる。なお、アンモニアの熱分解にバーナ11の排熱を利用する場合、装置10の運転開始直後では、アンモニアは発熱体27によって熱分解される。装置10の運転開始後、排熱の温度が所定の温度まで上昇した後は、アンモニアは熱交換器25によって熱分解される。その際、発熱体27は、運転を停止してもよいし、出力を下げて使用を継続してもよい。
【0102】
燃料変更過程は、球状化炉15の温度が上昇した後、バーナ11の火炎を形成する燃料ガスとして、熱分解ガスを含む第2燃料ガスを用いる。なお、助燃用燃料の使用は、昇温過程のみとし、バーナ11の燃焼が安定した後、助燃用燃料の供給を停止してもよい。
【0103】
製造過程は、アンモニアが熱分解して生成した水素を含有する熱分解ガスを含む燃料ガスと、酸素を含有する支燃性ガスとの燃焼により形成されたバーナ火炎により無機質粉体を溶融し、球状化する。これにより、無機質球状化粒子を製造する際、二酸化炭素(CO2)の発生量を抑制し、製品への煤等の混入を抑制できる。
【0104】
また、本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法では、第1及び第2燃料ガスの少なくとも一方に、炭素源を含まない、アンモニアが熱分解して生成した水素を含有する熱分解ガスを含む燃料ガスを用いる。熱分解ガスを効率よく燃焼させるために、バーナ11の複数の第1予混合室6及び複数の第2の予混合室9に、それぞれ燃料ガスと支燃性ガスとを供給して予め混合した後に燃焼させて火炎を形成し、この火炎中に無機質粉体を投入する。
【0105】
また、本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法では、バーナ11の第1及び第2燃料ガス噴射ノズルへの燃料ガス及び支燃性ガスの供給が各々独立しているため、第1燃料ガス噴射ノズルに炭素源を含む物質を助燃用燃料として供給し、第2燃料ガス噴射ノズルに熱分解ガスを燃料ガスとして供給できる。
【0106】
特に、アンモニアは、従来の炭素源を含む気体燃料や水素と比較して燃焼性が低いため、円形度が高い無機質球状化粒子が得られにくい。したがって、燃料ガスとしてアンモニアを用いる場合は、第1燃料ガス噴射ノズル3aに助燃用燃料を供給して、バーナの火炎温度を高く維持する必要があった。
【0107】
本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法によれば、燃焼条件に応じてバーナ11の運転パターンを変更することができる。
具体的には、バーナ11の高温が必要とされる条件では、熱分解ガスを含む第2燃料ガスと炭化水素等の炭素源を含む第1燃料ガスとを併用することで、高い円形度を維持しつつ、温暖化ガスの発生量を大幅に削減し、燃焼中の煤の発生を抑制できる。
また、バーナ11の高温が必要とされない条件では、第2燃料ガスとして熱分解ガスとアンモニアとを併用することで、アンモニアの熱分解に用いるエネルギーを抑制できる。
【0108】
(無機質球状化粒子)
本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法によれば、高い円形度を有する無機質球状化粒子が得られる。具体的には、無機質球状化粒子の円形度は、0.9以上であり、0.93以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましい。
ここで、円形度は、無機質球状化粒子1万個をCCDカメラにより撮影して2次元化した画像を用い、その形状の面積をS、周囲長をLとして、(円形度)=4πS/L2で求めた算術平均値である。なお、形状の測定には、フロー式粒子像分析装置(Malvern Panalytical社のFPIA-3000)を用いる事が出来る。
【0109】
以上説明したように、本実施形態の装置(無機質球状化粒子製造装置)10は、バーナ11に対し、燃料ガスとして炭素源を含まない熱分解ガスを用いるため、二酸化炭素(CO2)等の温暖化ガスの発生量を大幅に削減できる。また、燃料中の炭素源が原因となる煤の発生を抑制し、製品である無機質球状化粒子中への混入を避ける事ができる。
【0110】
また、本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法によれば、上述の製造装置10を用いるため、温暖化ガスの発生量を大幅に削減し、燃焼中の煤の発生を抑制できる。
【0111】
また、本実施形態の装置10及び製造方法によれば、バーナ11の第1燃料ガス噴射ノズル3aへの燃料ガスの供給と、第2燃料ガス噴射ノズル7aへの燃料ガスの供給とが各々独立しているため、第1火炎を形成するための第1燃料ガス及び第1支燃性ガスの流量と、第2火炎を形成するための第2燃料ガス及び第2支燃性ガスの流量とを各々独立に制御することができる。これにより、原料ガスとして熱分解ガスを用いる場合であっても、バーナ11の先端から噴射される原料粉体に対して、適切な燃焼状態を作り出す事が可能となり、高い円形度を有する無機質球状化粒子を提供できる。また、装置10の起動時間を短縮できる。
【0112】
<第2の実施形態>
次に、本発明を適用した第2の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態である装置20の構成を示す系統図である。
図6に示すように、本実施形態の装置20は、助燃用燃料供給源18及び助燃用燃料供給ラインL6を有しない点、バーナの構成およびバーナへの各供給ラインの接続位置が異なる点で、第1の実施形態の装置10とは異なる構成となっている。したがって、本実施形態の装置20については、第1の実施形態と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0113】
(無機質球状化粒子の製造装置)
図6に示すように、本実施形態の装置20は、無機質球状化粒子製造用バーナ11、アンモニア供給源12、酸素供給源13、原料粉体供給源14、球状化炉15、サイクロン16、バグフィルター17、加熱部(加熱手段)19、アンモニア供給ラインL1、酸素供給ラインL2、冷却水循環ラインL3及び燃焼ガス排出ラインL5を備える。
【0114】
(無機質球状化粒子製造用バーナ)
次に、本実施形態の装置20に適用可能な無機質球状化粒子製造用バーナ21の構成について説明する。
図7~
図9は、本実施形態の装置20に適用可能なバーナ21を示しており、
図7はバーナをその先端側から眺めた平面図であり、
図8は
図7中に示すバーナの中心軸Cを通るA-A’に沿って切断した断面図であり、
図9はバーナの先端側の拡大断面図である。
【0115】
図7~
図9に示すように、バーナ21は、当該バーナ21の中心軸Cから周方向外側に向けて、原料粉体供給管2、第1燃料供給管3、第1支燃性ガス供給管4、及び水冷ジャケット5から構成される、同心の多重管構造を有している。また、バーナ21は、燃料ガスと酸素を含有する支燃性ガスとを用いた酸素燃焼バーナである。
【0116】
第1燃料供給管3は、
図8に示すように、原料粉体供給管2の外側を覆うように設けられている。第1燃料供給管3の中心軸と原料粉体供給管2中心軸とは一致しており、第1燃料供給管3は、原料粉体供給管2と同軸に設けられている。
【0117】
第1燃料供給管3と原料粉体供給管2との間に設けられた環状の空間は、第1燃料ガスを供給するための第1燃料供給路3Aである。換言すると、第1燃料供給路3Aは、第1粉体供給路2Aの外周を覆うように設けられている。
第1燃料供給路3Aの基端側は、第1燃料ガスであるアンモニア供給源12と、アンモニア供給ラインL1を介して接続されている。
【0118】
第1燃料ガスとしては、上述した第1実施形態で説明した第2燃料ガスを用いる。第1燃料ガスは、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスによって希釈されたものを用いてもよい。
【0119】
第1燃料供給路3Aの先端の位置は、バーナ21の軸方向において、原料粉体供給路2Aが複数の原料粉体供給支流路2Bに分岐する位置よりも基端側となっている。したがって、第1粉体供給路2Aの先端寄りの部分の外周には、第1燃料供給路3Aは設けられていない。
【0120】
第1燃料供給路3Aの先端寄りの環状の空間は、基端部分及び中央部分と比較して外径が大きくなっている。第1燃料供給路3Aの先端寄りの環状の空間の外径の位置は、原料粉体噴出孔2aの位置よりも外側であることが好ましい。これにより、
図7に示すように、バーナ21の先端を平面視した際に、複数の原料粉体噴出孔2aよりも外側の位置に、火炎を形成するための第1燃料ガスを供給することができる。
【0121】
図8及び
図9に示すように、バーナ21の中心軸Cから半径方向に向かって拡径された第1燃料供給路3Aの先端部分には、バーナ21の軸方向と平行方向に延在する複数の第1燃料ガス噴射ノズル(第1燃料供給支流路)3aが接続されている。第1燃料供給路3Aと複数の第1燃料ガス噴射ノズル3aの内側の空間とは、それぞれ連通されている。これにより、第1燃料供給路3Aから複数の第1燃料ガス噴射ノズル3aに、燃料ガスをそれぞれ供給できる。換言すると、第1燃料供給路3Aは、バーナ21の先端寄りの部分において複数の第1燃料ガス噴射ノズル3aに分岐している。
【0122】
第1支燃性ガス供給管4は、
図8に示すように、第1燃料供給管3の外側を覆うように設けられている。第1支燃性ガス供給管4の中心軸と第1燃料供給管3中心軸とは一致しており、第1支燃性ガス供給管4は、第1燃料供給管3及び原料粉体供給管2と同軸に設けられている。
【0123】
第1支燃性ガス供給管4と第1燃料供給管3との間に設けられた環状の空間は、第1支燃性ガスを供給するための第1支燃性ガス供給路4Aである。換言すると、第1支燃性ガス供給路4Aは、第1燃料供給路3Aの先端及び外周を覆うように設けられている。
第1支燃性ガス供給路4Aの基端側は、第1支燃性ガスである酸素供給源13と、酸素供給ラインL2及びL2Aを介して接続されている。
【0124】
第1支燃性ガスは、第1燃料ガスと反応して火炎雰囲気を形成可能なガスであれば、特に限定されるものではない。第1支燃性ガスとしては、酸素、酸素富化空気等が挙げられる。
【0125】
第1支燃性ガス供給路4Aの先端の位置は、バーナ21の軸方向において、原料粉体供給路2Aが複数の原料粉体供給支流路2Bに分岐する位置よりも先端側となっている。したがって、第1支燃性ガス供給路4Aは、第1粉体供給路2Aの先端寄りの部分の外周を覆うように設けられている。
【0126】
第1支燃性ガス供給路4Aの先端寄りの環状の空間は、基端部分及び中央部分と比較して内径が小さくなっている。第1支燃性ガス供給路4Aの先端寄りの環状の空間の内径の位置は、原料粉体噴出孔2aの位置よりも内側であることが好ましい。これにより、
図7に示すように、バーナ21の先端を平面視した際に、複数の原料粉体噴出孔2aよりも内側の位置に、火炎を形成するための第1支燃性ガスを供給することができる。
【0127】
図8及び
図9に示すように、バーナ21の周方向の外側から中心軸Cに向かって拡径された第1支燃性ガス供給路4Aの先端部分には、バーナ21の軸方向と平行方向に延在する複数の第1支燃性ガス供給孔(第1支燃性ガス供給支流路)4aが接続されている。第1支燃性ガス供給路4Aと複数の第1支燃性ガス供給孔4aの内側の空間とは、それぞれ連通されている。これにより、第1支燃性ガス供給路4Aから複数の第1支燃性ガス供給孔4aに、第1支燃性ガスをそれぞれ供給できる。換言すると、第1支燃性ガス供給路4Aは、バーナ21の先端寄りの部分において複数の第1支燃性ガス供給孔4aに分岐している。
【0128】
水冷ジャケット5は、
図8に示すように、第1支燃性ガス供給管4の外側を覆うように設けられている。水冷ジャケット5には、冷却水の導入口5Aと導出口5Bとが設けられている。これにより、導入口5Aから水冷ジャケット5内の流路に供給された冷却水は、バーナ21の特に先端寄りの部分を冷却した後、導出口5Bから排出される。
【0129】
本実施形態のバーナ21は、
図9に示すように、第1燃料ガス噴射ノズル3aが第1支燃性ガス供給孔4aの内側にそれぞれ位置する。また、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bは、第1支燃性ガス供給孔4aの内側にそれぞれ位置する。すなわち、第1燃料ガス噴射ノズル3aは、第1支燃性ガス供給孔4aの内側で開口する。
【0130】
ここで、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bから第1支燃性ガス供給孔4aの内側に第1燃料ガスを噴射すると、第1支燃性ガス供給孔4aの内側に向けて第1支燃性ガス供給路4Aから支燃性ガスが供給される。そして、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bよりも前方の、第1支燃性ガス供給孔4aの内側において、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとが混合される。
【0131】
このように、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bから、第1支燃性ガス供給孔4aの先端4bまでの空間は、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとを混合する第1予混合室6となる。また、第1支燃性ガス供給孔4aの先端4bの開口が、第1予混合室6の開口6aとなる。
【0132】
換言すると、バーナ21は、複数の第1予混合室6を備える。これらの第1予混合室6は、バーナ21の軸方向の先端寄りに位置する。第1予混合室6は、第1燃料ガス噴射ノズル3aの一つ、及び支燃性ガス供給孔4aの一つとそれぞれ連通する。第1予混合室6は、バーナ1の軸方向の先端にそれぞれ開口する。
【0133】
第1予混合室6の容積v1は、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとを充分混合することができ、且つ逆火の恐れがなければ、特に限定されない。
このような容積v1[m3]としては、例えば、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとの合計流量Q1を25~50[Nm3/h]とする場合には、3.0×10-5~1.0×10-3[m3]とすればよく、1.0×10-4~1.0×10-3[m3]がより好ましい。容積v1を1.0×10-4~1.0×10-3[m3]の範囲とすれば、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとを充分混合できる。
【0134】
また、第1燃料ガス噴射ノズル3aの先端3bから、第1支燃性ガス供給孔4aの先端4bまでのオフセット距離L1としては、1.0×10-3~1.0×10-1[m]とすればよく、2×10-3~5×10-2[m]がより好ましい。
【0135】
また、第1予混合室6の数量は、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとの混合ガスの供給量や、原料粉体噴出孔2aの数量やレイアウト(配置)に応じて適宜選択することができる。
【0136】
第1予混合室6では、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとをあらかじめ混合し、混合ガスとして開口6aからバーナ1の軸方向と平行な方向に向けて噴射する。
【0137】
バーナ21は、第1燃料ガスとして炭素源を含まない熱分解ガスを用いるため、小さな容積の第1予混合室6を複数備え、これらの第1予混合室6において第1燃料ガスと第1支燃性ガスとをあらかじめ混合する構成となっている。これにより、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとを充分に混合して燃焼効率をあげることができ、逆火のおそれもない。
【0138】
複数の第1予混合室6の開口6aは、
図7に示すように、バーナ21の先端を平面視した際に、バーナ21の中心軸Cを中心とする円環状に配設された原料粉体噴出孔2aの内側及び外側に、同心円となるように等間隔にそれぞれ配設される。すなわち、原料粉体噴出孔2aは、第1予混合室6の開口6aによって内側および外側を囲まれる。
【0139】
バーナ21は、バーナ21の中心部(中央部)に、第1燃料ガスと第1支燃性ガスとの混合ガスからなる火炎(以下、「第1火炎」ともいう)を形成するために、複数の第1予混合室6の開口6aを円環状に配置し、第1火炎の外周を囲むように複数の原料粉体噴出孔2aを円環状に配置する。さらに、複数の原料粉体噴出孔2aの外側に、これらの原料粉体噴出孔2aの外周を囲むように第1燃料ガスと第1支燃性ガスとの混合ガスからなる火炎(以下、「第2火炎」ともいう)を形成するために、複数の第1予混合室6の開口6aを円環状に配置する。これにより、原料粉体噴出孔2aから噴出された原料粉体に対して火炎の熱を効率よく伝達でき、原料粉体を効率よく溶融できる。
【0140】
また、原料粉体噴出孔2aの外周を囲むように第2火炎を形成することで、バーナ21の周囲からの巻き込み空気もしくは炉内燃焼排ガスを遮断できるため、無機質粉体の溶融・球状化の効率を高めることができる。
【0141】
アンモニア供給ラインL1は、アンモニア供給源12とバーナ21との間に位置する。具体的には、アンモニア供給ラインL1は、バーナ21の第1燃料供給路3Aの基端側と連通している。換言すると、アンモニア供給源12と第1燃料供給路3Aとは、アンモニア供給ラインL1を介して接続されている。また、アンモニア供給ラインL1には、第1実施形態のバーナ11と同様に、加熱部19が設けられている。これにより、アンモニア供給源12から供給されるアンモニアが熱分解して生成した水素を含む熱分解ガスを第1燃料ガスとしてバーナ21に供給できる。
【0142】
酸素供給ラインL2は、酸素供給源13とバーナ21との間に位置する。
また、酸素供給ラインL2は、Q1地点でL2A及びL2Bに分岐する。
酸素供給ラインL2には、後述する熱交換器H1が設けられている。また、酸素供給ラインL2には、液体の酸素を気化する気化器(図示略)が設けられていてもよい。
分岐した酸素供給ラインL2A及びL2Bには、流量調節バルブV2,V3がそれぞれ設けられている。
【0143】
分岐した酸素供給ラインL2Aは、バーナ21の第1支燃性ガス供給路4Aの基端側と連通している。換言すると、酸素供給源13と第1支燃性ガス供給路4Aとは、酸素供給ラインL2及びL2Aを介して接続されている。これにより、酸素供給源13から酸素ガスを第1支燃性ガスとしてバーナ21に供給できる。
【0144】
一方、分岐した酸素供給ラインL2Bは、バーナ21の原料粉体供給路2Aの基端側と連通している。換言すると、酸素供給源13と原料粉体供給路2Aとは、酸素供給ラインL2及びL2Bを介して接続されている。これにより、酸素ガスをキャリアガスとしてバーナ21に供給できる。
【0145】
冷却水循環ラインL3は、バーナ21における水冷ジャケット5の冷却水の導出口5Bと導入口5Aとの間に位置する。冷却水循環ラインL3には、冷却水を貯留する冷却塔CT、ポンプP1、熱交換器H1及び熱交換器H2が設けられている。
【0146】
冷却水循環ラインL3では、冷却塔CTの冷却水がポンプP1によって導入口5Aから水冷ジャケット5内へ供給され、バーナ21の冷却を終えた後に導出口5Bから排出される。次に、ジャケット5から排出された高温の冷却水は、冷却水循環ラインL3と酸素供給ラインL2とにわたって設けられた熱交換器H1において、低温の液化酸素あるいは酸素ガスとの熱交換によって冷却される。さらに、冷却水は、冷却水循環ラインL3とアンモニア供給ラインL1とにわたって設けられた熱交換器H2において、低温の液化アンモニアあるいはアンモニアガスとの熱交換によって冷却された後、冷却塔CTへ供給される。
【0147】
以上説明したように、本実施形態の装置20及びその製造方法によれば、第1実施形態と同様の効果が得ることができる。
【0148】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した第1及び第2実施形態の装置10,20では、アンモニア供給ラインL1と助燃用燃料供給ラインL6とが合流しない構成を例示したが、アンモニア供給ラインL1と助燃用燃料供給ラインL6とが合流する構成としてもよい。これにより、バーナ11、21の着火時に助燃用燃料を使用することができる。
【0149】
第2実施形態のバーナ11及び第3実施形態のバーナ21に助燃用燃料を供給するための態様は、特に限定されない。
例えば、バーナ11の第2燃料供給路7A、又はバーナ21の第1燃料供給路3Aが、助燃用燃料供給源18と接続されており、第1燃料ガス噴射ノズル3aあるいは第2燃料ガス噴射ノズル7aに対して助燃用燃料を供給可能であればよい。
また、助燃用燃料が供給される第1予混合室6または第2予混合室9において、助燃用燃料100%燃焼、熱分解ガス100%燃焼、アンモニア100%燃焼、助燃用燃料、アンモニア及び熱分解ガスのうち、いずれか2以上の燃料の混合燃焼のあいだで切り替え可能とされていてもよい。
【0150】
また、第1実施形態の装置10及び無機質球状化粒子の製造方法では、バーナ11の第1燃料ガス噴射ノズルに炭素源を含む物質を助燃用燃料として供給し、第2燃料ガス噴射ノズルに炭素源を含まないアンモニア(NH3)由来の熱分解ガスを燃料ガスとして供給する態様を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、バーナ11の第1燃料ガス噴射ノズルにアンモニア(NH3)由来の熱分解ガスを燃料ガスとして供給し、第2燃料ガス噴射ノズルに炭素源を含む物質を助燃用燃料として供給する態様であってもよい。
【実施例】
【0151】
図1に示す装置10を用いて、アンモニアの一部又は全部を加熱し、熱分解ガスに分解したときの、火炎の燃焼速度と燃焼温度について、以下の条件を用いて計算した。
・計算ソフト:Ansys社製、Chemkin Pro
・第2燃料ガス:アンモニア,水素、窒素(アンモニア分解ガス)
・支燃性ガス:酸素
【0152】
図10は、アンモニアの分解温度と火炎の燃焼速度との関係について、計算した結果を示す図である。また、
図11は、アンモニアの分解温度と火炎の燃焼温度との関係について計算した結果を示す図である。
【0153】
図10及び
図11に示すように、アンモニアの分解温度が150℃以上では、アンモニアから水素と窒素とへの分解が進み、火炎の燃焼速度及び燃焼温度が顕著に上昇することを確認できた。
また、アンモニアの分解温度が300℃以上では、ほとんどのアンモニアが分解され、火炎の燃焼速度が約700cm/sec、燃焼温度が約2670℃に達することを確認できた。
さらに、アンモニアの分解温度が500℃では、ほぼ全量のアンモニアが分解され、火炎の燃焼速度が約720cm/sec、燃焼温度が約2680℃に達することを確認できた。
更にまた、支燃性ガスとして酸素を用いた場合の火炎では、アンモニアを加熱しない場合(約20℃)に比べ、燃焼速度が約8倍となり、火炎温度が約100℃上昇することを確認できた。
これらの結果から、無機質球状化粒子製造用バーナにおいて、アンモニア由来の熱分解ガスを燃料として用いることで、炭化水素の火炎で補助せずとも、火炎の燃焼速度及び燃焼温度を上昇でき、円形度が優れた無機質球状化粒子を製造できることが示唆された。
【符号の説明】
【0154】
10,20・・・無機質球状化粒子製造装置(装置)
11,21・・・バーナ(無機質球状化粒子製造用バーナ)
2A・・・原料粉体供給路
2B・・・原料粉体供給支流路
2a・・・原料粉体噴出孔
3A,23A・・・第1燃料供給路
3a・・・第1燃料ガス噴射ノズル(第1燃料供給支流路)
3b・・・第1燃料供給支流路の先端
4A,24A・・・第1支燃性ガス供給路
4a・・・第1支燃性ガス供給孔(第1支燃性ガス供給支流路)
4b・・・第1支燃性ガス供給支流路の先端
6・・・第1予混合室
6a・・・第1予混合室の開口
7・・・第2燃料供給路
7a・・・第2燃料ガス噴射ノズル(第2燃料供給支流路)
7b・・・第2燃料供給支流路の先端
8・・・第2支燃性ガス供給路
8a・・・第2支燃性ガス供給孔(第2支燃性ガス供給支流路)
8b・・・第2支燃性ガス供給支流路の先端
9・・・第2予混合室
9a・・・第2予混合室の開口
12・・・アンモニア供給源
13・・・酸素供給源
14・・・原料粉体供給源
15・・・球状化炉
16・・・サイクロン
17・・・バグフィルター
18・・・助燃用燃料供給源
19・・・加熱部(加熱手段)
25・・・熱交換器
26・・・第1温度計
27・・・発熱体
28・・・第2温度計
L1・・・アンモニア供給ライン
L2・・・酸素供給ライン
L3・・・冷却水循環ライン
L6・・・助燃用燃料供給ライン
C・・・バーナの中心軸
H1,H2,H3・・・熱交換器