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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】多視点立体空中像表示装置とその方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20230721BHJP
   H04N 13/302 20180101ALI20230721BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20230721BHJP
【FI】
G02B30/56
H04N13/302
H04N13/346
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020134449
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030415
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】巻口 誉宗
(72)【発明者】
【氏名】高田 英明
(72)【発明者】
【氏名】川上 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳人
(72)【発明者】
【氏名】篠井 むつみ
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187707(JP,A)
【文献】特開2016-200660(JP,A)
【文献】特開平11-119154(JP,A)
【文献】特開2017-182069(JP,A)
【文献】特開平07-168126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0009862(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00 - 30/60
H04N 13/30 - 13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に異なる視差を持つ少なくとも3つの視点映像を平面上に前後2段に互い違いに配置して表示するディスプレイ部と、
前記前後2段の後段の前記視点映像の正面で且つ前記ディスプレイ部の該前後2段の前記視点映像の間から垂直に立てて配置される焦点距離fで且つ焦点距離fと等しい高さを持つ第1凸レンズと、
前記第1凸レンズの上端と前記ディスプレイ部の奥行方向の端部との間に45度の角度で固定される第1平面ミラーと、
前記第1平面ミラーと前記第1凸レンズを挟んで対称に配置されるハーフミラーと、
前記ハーフミラーを挟んで前記ディスプレイ部に表示される前記視点映像の幅を直径とし、前記視点映像と平行に配置される焦点距離fの複数の第2凸レンズと、
前記第2凸レンズの前記視点映像と反対側に該視点映像と対向して配置される第2平面ミラーと、
前記第1凸レンズと前記第2凸レンズの正面に配置され、それぞれのレンズの中心部に対応する位置の光の透過率が100%で該透過率が外周部に向かってリニアに低下する複数の光フィルターと、
前記第1凸レンズの正面に、該第1凸レンズから焦点距離fと焦点距離fの和の距離前方に配置され、前記ハーフミラーを透過及び反射して到来する光の範囲をカバーする直径を持つ焦点距離fの第3凸レンズとを備え、
観察者は、前記第3凸レンズを介して結像された両眼視差を有する空中像を観察する多視点立体空中像表示装置。
【請求項2】
前記観察者は、前記第3凸レンズから下記の距離dの位置で前記空中像を観察する
【数2】
請求項1に記載の多視点立体空中像表示装置。
【請求項3】
多視点立体空中像表示装置が行う多視点立体空中像表示方法であって、
前記多視点立体空中像表示装置は、
水平方向に異なる視差を持つ少なくとも3つの視点映像を平面上に前後2段に互い違いに配置して表示するディスプレイ部と、
前記前後2段の後段の前記視点映像の正面で且つ前記ディスプレイ部の該前後2段の前記視点映像の間から垂直に立てて配置される焦点距離fで且つ焦点距離fと等しい高さを持つ第1凸レンズと、
前記第1凸レンズの上端と前記ディスプレイ部の奥行方向の端部との間に45度の角度で固定される第1平面ミラーと、
前記第1平面ミラーと前記第1凸レンズを挟んで対称に配置されるハーフミラーと、
前記ハーフミラーを挟んで前記ディスプレイ部に表示される前記視点映像の幅を直径とし、前記視点映像と平行に配置される焦点距離fの複数の第2凸レンズと、
前記第2凸レンズの前記視点映像と反対側に該視点映像と対向して配置される第2平面ミラーと、
前記第1凸レンズと前記第2凸レンズの正面に配置され、それぞれのレンズの中心部に対応する位置の光の透過率が100%で該透過率が外周部に向かってリニアに低下する複数の光フィルターと、
前記第1凸レンズの正面に、該第1凸レンズから焦点距離fと焦点距離fの和の距離前方に配置され、前記ハーフミラーを透過及び反射して到来する光の範囲をカバーする直径を持つ焦点距離fの第3凸レンズとを備え、
前記ディスプレイ部は、水平方向に異なる視差を持つ少なくとも3つの前記視点映像を平面上に前記前後2段に互い違いに配置して表示するディスプレイステップと、
観察者は、前記第3凸レンズを介して結像された両眼視差を有する多視点空中像を観察する多視点立体空中像観察ステップと
を行なう多視点立体空中像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多視点立体空中像表示装置とその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズによってディスプレイ上に表示された被写体を空中に結像させ、被写体が空中に浮いている空中像として表示する技術が例えば非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】大川達也、他2名、「結像素子より大きな空中像を表示する対称光学系の提案」、第23回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集、2018年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示された技術では、ディスプレイ上に表示された映像を空中に結像しているため、空中像に視差がなく、2次元の空中像しか提示できない。そのため、奥行き手かかりの提示が不十分な場合や被写体の立体感を提示したい場合は十分な臨場感を提示することができない。
【0005】
両眼視差を実現するためには、ディスプレイにインテグラルディスプレイ又はレンチキュラレンズなどの裸眼3Dディスプレイを用いる方法が考えられる。しかし、これらの特殊なディスプレイ及び特殊なレンズを用いるとシステムの構成が複雑でコストが高くなるという課題がある。
【0006】
本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、両眼視差を有する立体空中像を安いコストで表示することができる多視点立体空中像表示装置とその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る多視点立体空中像表示装置は、水平方向に異なる視差を持つ少なくとも3つの視点映像を平面上に前後2段に互い違いに配置して表示するディスプレイ部と、前記前後2段の後段の前記視点映像の正面で且つ前記ディスプレイ部の該前後2段の前記視点映像の間から垂直に立てて配置される焦点距離fで且つ焦点距離fと等しい高さを持つ第1凸レンズと、前記第1凸レンズの上端と前記ディスプレイ部の奥行方向の端部との間に45度の角度で固定される第1平面ミラーと、前記第1平面ミラーと前記第1凸レンズを挟んで対称に配置されるハーフミラーと、前記ハーフミラーを挟んで前記ディスプレイ部に表示される前記視点映像の幅を直径とし、前記視点映像と平行に配置される焦点距離fの複数の第2凸レンズと、前記第2凸レンズの前記視点映像と反対側に該視点映像と対向して配置される第2平面ミラーと、前記第1凸レンズと前記第2凸レンズの正面に配置され、それぞれのレンズの中心部に対応する位置の光の透過率が100%で該透過率が外周部に向かってリニアに低下する複数の光フィルターと、前記第1凸レンズの正面に、該第1凸レンズから焦点距離fと焦点距離fの和の距離前方に配置され、前記ハーフミラーを透過及び反射して到来する光の範囲をカバーする直径を持つ焦点距離fの第3凸レンズとを備え、観察者は、前記第3凸レンズを介して両眼視差を有する空中像を観察することを要旨とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係る多視点立体空中像表示方法は、上記の多視点立体空中像表示装置が行う多視点立体空中像表示方法であって、前記ディスプレイ部は、水平方向に異なる視差を持つ少なくとも3つの前記視点映像を平面上に前記前後2段に互い違いに配置して表示するディスプレイステップと、観察者は、前記第2凸レンズを介して両眼視差を有する多視点空中像を観察する多視点立体空中像観察ステップとを行なうことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、両眼視差を有する多視点空中像を安いコストで表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る多視点立体空中像表示装置の構成例を模式的に示す平面図である。
図2図1に示す多視点立体空中像表示装置を側面から見た構成例を模式的に示す図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る多視点立体空中像表示装置のディスプレイ部を含む一部の構成例を模式的に示す平面図である。
図4図1に示す多視点立体空中像表示装置が行う多視点立体空中像表示方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。複数の図面中同一のものには同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態の多視点立体空中像表示装置の構成例を模式的に示す平面図である。図1において、上がx(横)方向、左がy(前後)方向、手前がz(高さ)方向と定義する。
【0013】
図1に示す多視点立体空中像表示装置100は、インテグラルディスプレイ又はレンチキュラレンズなどの特殊な部品を用いずに運動視差及び両眼視差を有する多視点立体空中像を投影する装置である。多視点立体空中像表示装置100は、ディスプレイ部10、第1凸レンズ20、第1平面ミラー30(図1では省略)、ハーフミラー40(図1では省略)、複数の第2凸レンズ50、第2平面ミラー70(図1では省略)、複数の光フィルター60(図1では1個のみを表記)、及び第3凸レンズ80を備える。観察者Hは、第3凸レンズ80を介して両眼視差を有する多視点立体空中像を観察する。
【0014】
図2は、図1に示す多視点立体空中像表示装置100を側面から見た構成例を模式的に示す図である。図1で省略した第1平面ミラー30、ハーフミラー40、及び第2平面ミラー70が表記されている。
【0015】
(構成)
図1図2を参照して、多視点立体空中像表示装置100の構成を説明する。
【0016】
ディスプレイ部10は、水平方向に異なる視差を持つ少なくとも3つの視点映像を平面上に前後2段に互い違いに配置して表示する。ディスプレイ部10は、例えば携帯端末のディスプレイをそのまま用いて構成してもよい。もちろん、例えば有機ELパネル又は液晶パネルを用いて専用のディスプレイ部10を構成しても構わない。
【0017】
3つの視点映像は、ディスプレイ部10上に正方形Bで示す視点映像11、同正方形Aで示す視点映像12、及び同正方形Cで示す視点映像13である。視点映像11は、表示させたい対象物(図示せず)を正面から撮影した映像である。視点映像12は、その対象物を左方向から撮影した映像である。視点映像13は、その対象物を右方向から撮影した映像である。
【0018】
視点映像11~13のそれぞれは、映像がオーバーラップするように撮影された映像である。つまり、対象物の正面左から正面右に向けて視線を移動させると、視点映像12→視点映像11→視点映像13の順に変化する。
【0019】
その視点映像11~13は、前後2段に互い違いに配置して表示される。図2に示すように、左から見た視点映像12はディスプレイ部10のx-y平面上の手前左側(前段左)、右から見た視点映像13は同x-y平面上の手前右側(前段右)、正面から見た視点映像11は同x-y平面の奥中央(後段中央)にそれぞれが配置されて表示される。
【0020】
第1凸レンズ20は、前後2段の後段の視点映像11の正面で且つディスプレイ部10の該前後2段の前後方向の中心から垂直に立てて配置される焦点距離fで且つ該焦点距離fと等しい高さを持つレンズである。第1凸レンズ20は一般的な凸レンズである。
【0021】
図2に示すように、第1平面ミラー30は、第1凸レンズ20の上端とディスプレイ部10の前後方向の後方の端部との間に45度の角度で固定される。第1平面ミラー30を固定する構造の表記は省略している。その固定する構造は一般的でありいくつも考えられる。
【0022】
ハーフミラー40は、第1凸レンズ20を挟んで第1平面ミラー30と対称に配置される。ハーフミラー40は、第1平面ミラー30と同じ構造で固定することができる。
【0023】
複数の第2凸レンズ50,51は、ハーフミラー40を挟んでディスプレイ部10に表示される視点映像12,13の幅を直径とし、視点映像12,13と平行に配置される。第2凸レンズ50は、視点映像12とハーフミラー40を挟んで、視点映像12から第1凸レンズ20の直径の大きさ分離れて水平に配置される。第2凸レンズ51は、視点映像13とハーフミラー40を挟んで、第2凸レンズ50と同様に配置される。第2凸レンズ50,51の焦点距離はfである。
【0024】
第2平面ミラー70は、第2凸レンズ50,51の視点映像12,13と反対側に、視点映像12,13と対向して配置される。第2平面ミラー70は、視点映像12,13のそれぞれに対応させて別々の2つのミラーで構成してもよいし、1つのミラーで構成してもよい。本実施形態では、第2平面ミラー70は例えば1つのミラーで構成する。
【0025】
光フィルター60は、第1凸レンズ20と第2凸レンズ50,51の正面に配置され、それぞれのレンズの中央部に対応する位置の光の透過率が100%で外周部に向けて透過率がリニアに低下するフィルターである。本実施形態の場合、各レンズに対応させて3つ設けられる。
【0026】
なお、光フィルター60は、第1凸レンズ20と第2凸レンズ50,51のそれぞれの表面に蒸着又はスパッタリング等で形成してもよい。その場合、光フィルター60はディスクリート部品として備える必要はない。
【0027】
第3凸レンズ80は、第1凸レンズ20の正面に、第1凸レンズ20から焦点距離fと焦点距離fの和の距離前方に配置され、ハーフミラー40を透過及び反射する光の範囲をカバーする直径を持つ焦点距離fのレンズである。第3凸レンズ80は一般的な凸レンズである。
【0028】
なお、第3凸レンズ80と第1凸レンズ20との間隔は、焦点距離f+焦点距離fである必要があるが、それぞれのレンズ中心は一致させる必要はない。第3凸レンズ80は、ハーフミラー40を透過及び反射する光の範囲をカバーするように配置すればよい。
【0029】
以上説明したように本実施形態に係る多視点立体空中像表示装置100は、水平方向に異なる視差を持つ少なくとも3つの視点映像を平面上に前後2段に互い違いに配置して表示するディスプレイ部10と、前後2段の後段の視点映像11の正面で且つディスプレイ部10の該前後2段の視点映像11,12の間から垂直に立てて配置される焦点距離fで且つ該焦点距離fと等しい高さを持つ第1凸レンズ20と、第1凸レンズ20の上端とディスプレイ部10の奥行方向の端部との間に45度の角度で固定される第1平面ミラー30と、第1平面ミラー30と第1凸レンズ20を挟んで対称に配置されるハーフミラー40と、ハーフミラー40を挟んでディスプレイ部10に表示される視点映像12,13の幅を直径とし、視点映像12,13と平行に配置される焦点距離fの複数の第2凸レンズ50,51と、第2凸レンズ50,51の視点映像12,13と反対側に該視点映像12,13と対向して配置される第2平面ミラー70と、第1凸レンズ20と第2凸レンズ50,51の正面に配置され、それぞれのレンズの中心部に対応する位置の光の透過率が100%で該透過率が外周部に向かってリニアに低下する複数の光フィルター60と、第1凸レンズ20の正面に、該第1凸レンズ20から焦点距離fと焦点距離fの和の距離前方に配置され、ハーフミラー40を透過及び反射して到来する光の範囲をカバーする直径を持つ焦点距離fの第3凸レンズ80とを備える。
【0030】
(作用)
ディスプレイ部10のx-y平面の後方中央(y方向)に表示された視点映像11の光は、第1平面ミラー30で反射され、第1凸レンズ20を透過し、ハーフミラー40を透過し、第3凸レンズ80を透過する。第3凸レンズ80を透過した光は、観察者Hの目に到達する。
【0031】
また、ディスプレイ部10のx-y平面の前方(-y方向)に表示された視点映像12と13のそれぞれの光は、ハーフミラー40を透過し、第2凸レンズ50,51を透過し、第2平面ミラー70で反射する。第2平面ミラー70で反射した光は、ハーフミラー40で反射され第3凸レンズ80に入射する。
【0032】
視点映像12の光は、第2凸レンズ50を2回通過する。したがって、焦点距離fを焦点距離fの2倍(2f)と仮定すると、視点映像12の光は、視点映像11と同じ焦点距離fの光である。つまり、水平方向に前後2段で表示された視点映像11と12は、第1凸レンズ20から焦点距離fの位置に結像することになる。視点映像12と並んで表示される視点映像13についても同じである。
【0033】
ただし、視点映像12と13の光の明るさは、ハーフミラー40で透過と反射をそれぞれ1回行って第3凸レンズ80に入射するので、視点映像11の半分である。この明るさの差は、ディスプレイ部10の輝度を調整することで容易に一致させることができる。
【0034】
第3凸レンズ80を挟んで第1凸レンズ20と反対側に位置する観察者Hは、第3凸レンズ越しに視点映像11~13を見る。すると観察者Hは、第1凸レンズ20の後方の焦点距離fの位置に、視点映像11~13の虚像10A,10B,10Cが在るように観察することができる。
【0035】
その虚像10A~10Cは、運動視差及び両眼視差を有する立体空中像として観察することができる。何故なら、虚像10A~10Cの元になる視点映像11~13のそれぞれは、水平方向に視差を持つ映像だからである。
【0036】
図1に示すように、第1凸レンズ20の焦点F20と第3凸レンズ80の焦点F80は一致する。焦点F80を通る視点映像11の光は、第3凸レンズ80に入射する。焦点F80を通った視点映像11の光は、第3凸レンズ80を透過すると第3凸レンズ80のレンズ軸80jに平行な光線α,βとなる。
【0037】
一方、第1凸レンズ20から焦点距離fの位置に視点映像11を結像させる他の光線γ,δは、第3凸レンズ80でそのレンズ軸80jに近づくように屈折する。また、図の表記が煩雑になるために省略している第3凸レンズ80のレンズ中心を通過する光線はそのまま直進する。これらの光線の数は無数である。
【0038】
これらの無数の光線が、第3凸レンズ80の観察者H側の焦点距離fの距離離れた位置で交差する。その結果、その位置にf/fで表せる大きさの空中像90が結像する。
【0039】
観察者Hは、第3凸レンズ80から次式で示す距離dの位置で空中像90を観察する。
【0040】
【数1】
【0041】
図1に示す視点映像11による空中像90Bは、第1凸レンズ20の正面に配置されたフルター60を通過した光による空中像であるため、正面が最も明るい。観察者Hが視点を左右に動かすと光フィルター60の作用によって空中像90Bは暗くなる。この様子を一点鎖線の三角形で模式的に表す。
【0042】
他の視点映像12による空中像90A及び視点映像13による空中像90Cについても同様である。視点映像12と視点映像11は、水平方向(x方向)の半分が重なっている。また、視点映像13と視点映像11は、水平方向(x方向)の半分が重なっている。
【0043】
このように、水平方向でオーバーラップする空中像90A,90B,90Cは、観察者Hにおいてリニアブレンディングと称される視覚メカニズムにより、異なる視点に対応する複数の運動視差及び両眼視差を有する多視点立体空中像として知覚されることになる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の第2実施形態に係る多視点立体空中像表示装置のディスプレイ部10を含む一部の構成例を模式的に示す平面図である。
【0045】
図3に示すディスプレイ部10は、7つの視点映像を表示する点で上記の実施例と異なる。図3に示すディスプレイ部10を含む多視点立体空中像表示装置の作用効果は、上記の実施例と同じである。
【0046】
このように視点映像は3つに限られない。視点映像は3つ以上の複数個でも構わない。
【0047】
(多視点立体空中像表示方法)
図4は、上記の多視点立体空中像表示装置100が行う多視点立体空中像表示方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0048】
本実施形態に係る多視点立体空中像表示方法は、多視点立体空中像表示装置100が行う立体空中像表示方法であって、多視点立体空中像表示装置100は、水平方向に異なる視差を持つ少なくとも3つの視点映像11~13を平面上に前後2段に互い違いに配置して表示するディスプレイ部10と、前後2段の後段の視点映像11の正面で且つディスプレイ部10の該前後2段の視点映像11,12の間から垂直に立てて配置される焦点距離fで且つ該焦点距離fと等しい高さを持つ第1凸レンズ20と、第1凸レンズ20の上端とディスプレイ部10の奥行方向の端部との間に45度の角度で固定される第1平面ミラー30と、第1平面ミラー30と第1凸レンズ20を挟んで対称に配置されるハーフミラー40と、ハーフミラー40を挟んでディスプレイ部10に表示される視点映像12,13の幅を直径とし、視点映像12,13と平行に配置される焦点距離fの複数の第2凸レンズ50,51と、第2凸レンズ50,51の視点映像12,13と反対側に該視点映像12,13と対向して配置される第2平面ミラー70と、第1凸レンズ20と第2凸レンズ50,51の正面に配置され、それぞれのレンズの中心部に対応する位置の光の透過率が100%で該透過率が外周部に向かってリニアに低下する複数の光フィルター60と、第1凸レンズ20の正面に、該第1凸レンズ20から焦点距離fと焦点距離fの和の距離前方に配置され、ハーフミラー40を透過及び反射して到来する光の範囲をカバーする直径を持つ焦点距離fの第3凸レンズ80とを備え、ディスプレイ部10は、水平方向に異なる視差を持つ少なくとも3つの視点映像11~13を平面上に前後2段に互い違いに配置して表示するディスプレイステップ(ステップS1)と、観察者Hは、第3凸レンズを介して両眼視差を有する多視点空中像を観察する多視点立体空中像観察ステップ(ステップS2)とを行なう。これにより、両眼視差を有する多視点空中像を安いコストで表示することができる。
【0049】
以上説明したように本実施形態に係る立体空中像表示装置100とその方法によれば、一般的な凸レンズを組み合わせた簡単で且つ低コストな構成で、運動視差及び両眼視差を有する多視点立体空中像を表示することができる。
【0050】
なお、多視点立体空中像が観察できる位置は、上記の距離dのピンポイントの位置に限られない。第1凸レンズ20、第2凸レンズ50,51、及び第3凸レンズ80の焦点深度の範囲で、前後(y)方向に幅を持って多視点立体空中像を観察することができる。
【0051】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変形が可能である。例えば、視点映像の数は3つに限られない。また、第3凸レンズ80は、大口径平凸コンデンサーレンズで構成してもよい。
【0052】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明指定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0053】
10:ディスプレイ部
20:第1凸レンズ
30:第1平面ミラー
40:ハーフミラー
50,51:第2凸レンズ
60:光フィルター
70:第2平面ミラー
80:第3凸レンズ
90:空中像
100:多視点立体空中像表示装置
H:観察者
図1
図2
図3
図4