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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/282 20060101AFI20230721BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20230721BHJP
   H02G 15/04 20060101ALI20230721BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
H01B7/282
H01B7/00 301
H02G15/04
B60R16/02 623Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019059006
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020161311
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-07-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑山 真吾
(72)【発明者】
【氏名】安斎 裕一
(72)【発明者】
【氏名】岡 史人
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】松永 稔
【審判官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-033540(JP,U)
【文献】特開2016-171623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体線が絶縁体で被覆された複数のケーブルと、
前記複数のケーブルを一括して被覆するシースと、
前記複数のケーブルが導出される前記シースの端部及び当該端部から導出された前記複数のケーブルを覆いモールド成形により成形される樹脂部材と、
を備え
前記樹脂部材は、前記端部の外周を覆って前記シースを保持するシース保持部、及び前記シースから導出された前記複数のケーブルを保持するケーブル保持部を一体に有し、
前記複数のケーブルは、前記ケーブル保持部に保持された前記シースの中心軸の方向である軸方向に沿って前記樹脂部材から互いに平行に導出されており、
前記ケーブル保持部には、前記複数のケーブルの導出方向に沿って所定の長さで前記シース側へ凹ん凹み部が形成されており
前記凹み部における前記軸方向の底面から前記複数のケーブルのうち一部のケーブルが導出されており、前記凹み部が当該一部のケーブルを収容している、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記凹み部を構成する前記底面及び壁面のうち、少なくとも一方の角部がR形状を有している、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記樹脂部材を保持する樹脂部材保持部と、前記樹脂部材保持部と一体に形成されており固定対象に固定される固定部と、を有する固定部材をさらに備える、
請求項1または2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記樹脂部材保持部は、前記ケーブル保持部の少なくとも一部、及び前記シース保持部の少なくとも一部を跨いで保持している、
請求項3に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のABS(アンチロックブレーキシステム)用センサケーブルと、電動式のパーキングブレーキを動作させるパーキングブレーキ用ケーブルとを共通のシースで被覆して一体化したワイヤハーネスには、シースの端部を保持すると共に同端部から導出されたABS用センサケーブル及びパーキングブレーキ用ケーブルを保持する樹脂部材を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1におけるABS用センサケーブルやパーキングブレーキ用ケーブルはそれぞれ、導体線と、導体線を被覆する絶縁体と、を有する複数の絶縁電線を備えている。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤハーネスは、シースの端部においてABSセンサ用ケーブルとパーキングブレーキ用ケーブルとを分岐させて引き出し方向を固定するとともにシースの端部の止水を行う止水部と、ABSセンサ用ケーブル及びパーキングブレーキ用ケーブルの分岐部位とは反対側においてブラケットを取り付けるブラケット取付部とをウレタンにより一体成形してなることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6213447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のワイヤハーネスでは、止水部内でパーキングブレーキ用ケーブルを屈曲させることによって、ABSセンサ用ケーブルとパーキングブレーキ用ケーブルとを分岐させて両ケーブルを異なる引き出し方向に固定している。ここで、ABSセンサ用ケーブルとパーキングブレーキ用ケーブルとを分岐させるためにどちらか一方又は両方のケーブルを大きく(小さい曲げ半径で)屈曲させると、絶縁体の外側の領域が大きく伸びることによって絶縁体の膜厚が薄くなる可能性がある。その状態において、樹脂部材をモールド成形により成形する場合、樹脂部材を成形する際のモールド成形の熱によって、ケーブルの屈曲により膜厚が薄くなった絶縁体が溶けやすくなり損傷する虞がある。また、かかる課題は、ケーブルの径を大きくすると、特に顕著となる。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂部材を成形する際のモールド成形の熱によって絶縁体が損傷してしまうことを抑制することができるワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、導体線が絶縁体で被覆された複数のケーブルと、前記複数のケーブルを一括して被覆するシースと、前記複数のケーブルが導出される前記シースの端部及び当該端部から導出された前記複数のケーブルを覆う樹脂部材と、を備え、前記複数のケーブルは、前記樹脂部材から互いに平行に導出されているワイヤハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るワイヤハーネスによれば、樹脂部材を成形する際のモールド成形の熱によって絶縁体が損傷してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す側面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】(a)~(c)は、ワイヤハーネスの製造過程を示す斜視図である。
図4】本発明の一変形例に係るワイヤハーネスを示す側面図である。
図5】(a)、(b)は、本発明の一変形例に係るワイヤハーネスを示す側面図である。
図6】本発明の一変形例に係るワイヤハーネスを示す側面図である。
図7】本発明の一変形例に係るワイヤハーネスを示す側面図である。
図8】本発明の一変形例に係るワイヤハーネスを示す側面図である。
図9】本発明の一変形例に係るワイヤハーネスを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す側面図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図1に示すように、ワイヤハーネス1は、シース2と、シース2に収容された第1のケーブル3及び第2のケーブル4と、シース2の一方の端部2aとこの一方の端部2aから導出された第1のケーブル3及び第2のケーブル4とを保持する、モールド成形された樹脂部材5と、樹脂部材5の外周面5a(図3(b)参照)に巻き付けられて樹脂部材5を保持するブラケット6とを有している。なお、図1では、樹脂部材5の内部のシース2、第1のケーブル3、及び第2のケーブル4を破線で示している。ブラケット6は、固定部材の一例である。
【0011】
このワイヤハーネス1は、車両に搭載され、ブラケット6の貫通孔620に挿通される図略のボルトやリベット等の固定具によって車体側に固定される。第1のケーブル3は、例えば、電動式のパーキングブレーキに動作電源を供給するためのパーキングブレーキ用ケーブルである。第2のケーブル4は、例えば、ABS(アンチロックブレーキシステム)用センサケーブルである。また、第1のケーブル3又は第2のケーブル4を、電子制御式のダンパを制御するためや電子制御式のダンパに動作電源を供給するためのダンパケーブルとしてもよい。あるいは、ダンパケーブルを第3のケーブルとして追加し、シース2に収容してもよい。
【0012】
図2に示すように、シース2は、筒状であり、第1のケーブル3及び第2のケーブル4を一括して被覆している。シース2の内部において、シース2の内面と第1のケーブル及び第2のケーブル4との間には、繊維状の介在21が配置されている。シース2は、一方の端部2aが樹脂部材5に保持され、他方の端部(図示省略)は図略の制御装置のケースに保持されている。シース2は、熱可塑性ポリウレタン等のウレタン系の樹脂により形成されている。
【0013】
第1のケーブル3は、一対の第1の絶縁電線31,31を含んで構成されている。それぞれの第1の絶縁電線31は、例えば銅からなる複数の素線を撚り合わせた第1の導体線311、及び第1の導体線311を被覆するポリエチレンからなる第1の絶縁体312を含む。第1の絶縁電線31は、電源線として用いられる。
【0014】
第2のケーブル4は、一対の第2の絶縁電線41,41を含んで構成されている。それぞれの第2の絶縁電線41は、例えば銅からなる複数の素線を撚り合わせた第2の導体線411、及び第2の導体線411を被覆するポリエチレンからなる第2の絶縁体412を含む。第2の絶縁電線41は、第1の絶縁電線31よりも細く形成されている。なお、一対の第2の絶縁電線41,41は、互いに撚り合わせてもよい。また、一対の第2の絶縁電線41,41を、例えば、ウレタンからなる外皮(不図示)で一括して被覆してもよい。第2の絶縁電線41は、信号線として用いられる。
【0015】
樹脂部材5は、第1のケーブル3及び第2のケーブル4が導出されるシース2の一方の端部2aの外周を覆ってシース2を保持するシース保持部51、及びシース2から導出された第1のケーブル3及び第2のケーブル4を保持するケーブル保持部52を一体に有している。樹脂部材5及びシース2は、同種の樹脂材料からなり、樹脂部材5のモールド成形時の熱によりシース2の表面が樹脂部材5と溶け合うことにより、保持強度及び防水性が高められている。この樹脂材料としては、例えばウレタン、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を好適に用いることができる。
【0016】
ブラケット6は、例えばアルミニウム等の板状の金属からなる固定金具である。ブラケット6は、樹脂部材5の外周面5aに巻き締められた巻き締め部61、及び車体側の固定対象に固定される固定部62を一体に有している。固定部62には、板厚方向に貫通する貫通孔620が形成されている。巻き締め部61は、樹脂部材5を保持する樹脂部材保持部として機能する。
【0017】
シース2は、樹脂部材5の内部において直線状にシース保持部51に保持されている。第1のケーブル3及び第2のケーブル4は、シース保持部51に保持されたシース2と平行かつ直線状となる部分を有するようにケーブル保持部52に保持されている。また、第1のケーブル3及び第2のケーブル4は、同一の方向(具体的には、側面視において平行な方向)に向かって樹脂部材5から導出されている。ここで、「同一の方向」とは、互いに完全に平行している状態のみならず、多少の傾き(例えば、5度以下の傾き)を有している状態を含むものとする。
【0018】
また、第1のケーブル3及び第2のケーブル4は、ケーブル保持部52内で、シース2の中心軸を挟んで互いに離間する方向に分岐していてもよい(すなわち、第1のケーブル3及び第2のケーブル4は、ケーブル保持部52内で、シース2と平行とならない部分を有していてもよい(図6参照))。以下、シース保持部51に保持されたシース2の中心軸の方向を軸方向といい、この軸方向に対して垂直な方向を径方向という。
【0019】
樹脂部材5は、図1に示すように径方向から見た場合に、シース2の一方の端部2aの外周面にあたる部分がシース保持部51として、またシース2の一方の端部2aから先の部分がケーブル保持部52として、それぞれ形成されている。シース保持部51は、例えば、円筒状の形状を有している。また、ケーブル保持部52は、シース保持部51と同径の円筒状の形状を有し、シース保持部51に連続的に接続されている。すなわち、樹脂部材5は、シース保持部51とケーブル保持部52とがウレタン等の樹脂により一体成形されてなる。なお、シース保持部51及びケーブル保持部52の形状は、円筒状に限られるものではなく、断面が多角形(例えば、略四角形)の多角筒状でもよい。
【0020】
ブラケット6の巻き締め部61は、シース保持部51上に設けられ、シース保持部51を保持している。つまり、ブラケット6の巻き締め部61が巻き締められた樹脂部材5の外周面5aは、シース保持部51の外周面51a上に設けられている。すなわち、巻き締め部61の全体がシース保持部51の外周面52aに巻き締められている。なお、巻き締め部61は、シース保持部51の少なくとも一部の外周面に巻き締められていればよい。
【0021】
(ワイヤハーネス1の製造工程)
次に、図3(a)~図3(c)を参照して、ワイヤハーネス1の製造工程の一例について説明する。図3(a)~(c)は、この順にワイヤハーネスの製造過程を示す斜視図である。具体的には、図3(a)は、シース2ならびに第1のケーブル3及び第2のケーブル4のみを示している。また、図3(b)は、樹脂部材5が成形された状態を示している。また、図3(c)は、樹脂部材5にブラケット6が取り付けられた状態を示している。
【0022】
まず、図3(a)に示すように、シース2から第1のケーブル3及び第2のケーブル4をそれぞれ軸方向に導出する。次に、図3(b)に示すように、シース2の一方の端部2a、及び当該一方の端部2aから導出された第1のケーブル3及び第2のケーブル4の一部を覆うように樹脂部材5をモールド成形する。このとき、上述したように、モールド成形時の熱によりシース2の表面が樹脂部材5と溶け合って、シース2の表面と樹脂部材5の内面との間の止水性が高められる。
【0023】
次に、図3(c)に示すように、樹脂部材5の外周面5aにブラケット6の巻き締め部61を巻き付けることによりワイヤハーネス1が製造される。その後は、ブラケット6の固定部62に形成されている貫通孔620にボルト、リベット等の締結部材を挿通して車体側に固定される。
【0024】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態では、第1のケーブル3及び第2のケーブル4は、シース保持部51に保持されたシース2と平行かつ直線状となる部分を有するようにケーブル保持部52に保持されている。これにより、第1のケーブル3や第2のケーブル4を大きく(小さい曲げ半径で)屈曲させなくてもよくなり、第1の絶縁体312や第2の絶縁体412の膜厚が薄くなることを抑制することができる。この結果、樹脂部材5のモールド成形時の熱の影響によってケーブル(第1のケーブル3や第2のケーブル4)の絶縁体(第1の絶縁体312や第2の絶縁体412)が損傷してしまうことを抑制することができる。ここで、「絶縁体が損傷する」とは、モールド成形時の熱の影響により、絶縁体が溶けてしまうことや、絶縁体が変形してしまうこと等である。
【0025】
<変形例>
次に、本発明の変形例について、図4から図9を参照して説明する。図4から図9において、上述の実施の形態において説明したものと共通する構成要素については、上述の実施の形態で用いた符号と同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0026】
(変形例1)
図4は、本発明の一変形例に係るワイヤハーネス1を示す断面図である。図4に示すように、樹脂部材5のケーブル保持部52の軸方向における端部には、凹み部53が設けられてもよい。凹み部53は、第1のケーブル3及び第2のケーブル4の導出方向に沿って所定の長さでシース2側へ凹んでおり、第1のケーブル3及び第2のケーブル4のうちの一部を収容するものである。
【0027】
具体的には、凹み部53は、横断面視において一方のケーブル(図4に示す例では、第2のケーブル4)が導出される部分を含む。また、凹み部53は、ケーブル保持部52(すなわち、円柱状の形状)から弓形柱状の形状を切り取ったような形状をしている。ここで、弓形柱状の形状とは、ケーブル保持部52の外周縁の一部と、この一部の外周縁の両端同士を結ぶ線分とで囲まれた弓形状の形状を上底面及び下底面として有するとともに、ケーブル保持部52の軸方向に沿った所定の深さを有する形状のことである。凹み部53は、ケーブル保持部52から、弓形柱状の形状の一例として、半円柱状(半円形状の上底面と半円形状の下底面とを有する柱状)の形状を切り取ったような形状をしていてもよい。
【0028】
なお、説明の便宜上、凹み部53を説明する際に、「ケーブル保持部52から・・を切り取ったような形状」と表現したが、その製造方法は、上述した凹み部53の形状(例えば、弓形柱状の形状や半円柱状の形状)に適合する突起部(不図示)を備えた金型(不図示)を用いて形成している。
【0029】
具体的には、凹み部53は、径方向に並行な底面53aと、この底面53aに連続する、軸方向に平行な壁面53bとにより構成される。底面53aは、第1のケーブル3(すなわち、一対の第1の絶縁電線31,31)と第2のケーブル4(すなわち、一対の第2の絶縁電線41,41)との間を通る線分を弦とし、樹脂部材5の外周縁を円弧として囲んで形成された弓形の形状を有する。弓形の形状の一例として、底面53a53は、第1のケーブル3と第2のケーブル4との間を通る線分を直線とし、樹脂部材5の外周縁を円弧として囲んで形成された半円の形状を有していてもよい。壁面53bは、長方形等の矩形状の形状を有している。
【0030】
本発明の一変形例に係るワイヤハーネス1は、樹脂部材5における第2のケーブル4が導出される面(底面53a)を、樹脂部材5における第1のケーブル3が導出される面よりもシース2側に近づけたものである。すなわち、樹脂部材5が第1のケーブル3を保持する長さは、樹脂部材5が第2のケーブル4を保持する長さよりも長い。
【0031】
換言すれば、ケーブル保持部52は、円筒形状の本体部520と、この本体部520から軸方向に突出し、第1のケーブル3を導出させる導出部521とを一体に有している。導出部521は、シース保持部51の外周縁と共通する円弧を有する弓形形状(特に、半円形状)を有する底面及び上面と、凹み部53の壁面53bと共通する側面と、この側面と対向する曲面とで囲まれた弓形(特に、半円形)の筒状の形状を有している。また、導出部521の先端面である上面からは第1のケーブル3が導出されている。なお、導出部521の形状は、弓形や半円形の筒状のものに限定されるものではなく、本体部520よりも小径の円筒状でもよく、多角筒状でもよい。
【0032】
なお、第1のケーブル3及び第2のケーブル4のうち屈曲させる一方のケーブルが導出される領域を含む側を切り取ればよい。一例として、第1のケーブル3を屈曲させる場合、第1のケーブル3が導出される部分を含む領域(図4の側面視における上側)を、ケーブル保持部52の中心軸側から外周縁に亘って所定の深さで切り取ればよい。
【0033】
かかる凹み部53を形成することにより、凹み部53が形成されている領域側から導出されているケーブル(図4の例では、第2のケーブル4)を、シースの一方の端部2aから近い側にて屈曲させることができるようになる。これにより、凹み部53を形成された構成では、凹み部53が設けられていない構成と比較して配策性を向上させることができる。なお、第2のケーブル4を屈曲させた例を図4において破線で示した。
【0034】
(変形例2)
図5各図は、本発明の一変形例に係るワイヤハーネス1を示す側面図である。図5(a)に示すように、例えばエッジ処理(角取り処理や面取り処理)等により、凹み部53の径方向外側の第1の角部53c(すなわち、凹み部53を構成する底面53aとケーブル保持部52の外周面52aとが接続して形成される角部)をR形状としてもよい。
【0035】
また、図5(b)に示すように、凹み部53の径方向内側の第2の角部53d(すなわち、凹み部53を構成する壁面53bとケーブル保持部52の端面52bとが接続して形成される角部)をR形状としてもよい。なお、第1の角部53c及び第2の角部53dのいずれか一方のみならず、第1の角部53c及び第2の角部53dをともにR形状としてもよい。
【0036】
このようにすれば、ケーブル(図5に示す例では、第2のケーブル4)を屈曲させることにより、当該ケーブルが第1の角部53c又は第2の角部53dに接触してしまう場合であっても、ケーブルの絶縁体(図5に示す例では、第2の絶縁体412)が角部から受ける負担を緩和することができる。
【0037】
(変形例3)
図6は、本発明の一変形例に係るワイヤハーネス1を示す側面図である。図6に示すように、ワイヤハーネス1の正面視(図6の右側方向から視た場合をいう。)において、第1のケーブル3(すなわち、一対の第1の絶縁電線31,31)と第2のケーブル4(すなわち、一対の第2の絶縁電線41,41)との間に形成された、所定の深さを有する溝部50を形成してもよい。
【0038】
換言すれば、ケーブル保持部52は、シース保持部51と同径の円筒状の本体部520と、第1のケーブル3を導出させる導出部521(以下、「第1の導出部521」ともいう。)と、ワイヤハーネス1の正面視において第1の導出部521と離間して設けられた、第2のケーブル4を導出させる第2の導出部522とを一体に有している。
【0039】
第1の導出部521及び第2の導出部522は、それぞれ、本体部520の軸方向における端部に接続されている。第1の導出部521及び第2の導出部522は、横断面視において弓形の形状を有する弓形の筒状の形状を有している。また、第1の導出部521及び第2の導出部522は、平坦な面(横断面視における弦)同士が互いに対向するように配置されている。なお、第1の導出部521及び第2の導出部522の形状は、弓形の筒状のものに限定されるものではなく、例えば、本体部520よりも小径の円筒状のものでもよく、多角筒状のものでもよい。
【0040】
また、かかる変形例の形態では、第1のケーブル3及び第2のケーブル4は、シース保持部51に保持されたシース2と平行かつ直線状となる部分を有するようにケーブル保持部52に保持されている。また、第1のケーブル3及び第2のケーブル4は、ケーブル保持部52内で、シース2の中心軸を挟んで互いに離間する方向に分岐していてもよい。換言すれば、第1のケーブル3及び第2のケーブル4は、ケーブル保持部52内で、シース2と平行とならない部分を有している。
【0041】
かかる溝部50を設けることにより、使用する樹脂の量を低減することができる。
【0042】
(変形例4)
図7は、本発明の一変形例に係るワイヤハーネス1を示す側面図である。上述した凹み部53は、必ずしも階段状に、すなわち底面53aと壁面53bとが直交するように形成しなくてもよい。例えば、図7に示すように、ケーブル保持部52の軸方向における端面52bと、ケーブル保持部52の外周縁とを繋ぎ、この端面52b又はケーブル保持部52の外周面52aに対して所定の角度(0度よりも大きく90度よりも小さい角度)で傾斜する斜面54を形成してもよい。
【0043】
(変形例5)
図8は、本発明の一変形例に係るワイヤハーネス1を示す側面図である。図8に示すワイヤハーネス1は、上述の実施の形態に係るワイヤハーネス1と同様、シース2と、シース2に収容された第1のケーブル3及び第2のケーブル4と、モールド成形された樹脂部材5と、固定部材としてのブラケット6とを有しているが、ブラケット6の位置が上述の実施の形態とは異なる。
【0044】
すなわち、上述の実施の形態では、ブラケット6がシース保持部51上に設けられていたが、変形例5の形態では、ブラケット6は、上述の実施の形態よりもケーブル保持部52側に寄った位置に設けられている。具体的には、ブラケット6は、シース保持部51及びケーブル保持部52の両方の上に跨って設けられている。
【0045】
具体的には、巻き締め部61は、一部がケーブル保持部52の外周面52aに巻き締められ、残部がシース保持部51の外周面51aに巻き締められている。つまり、巻き締め部61は、ケーブル保持部52の少なくとも一部の外周面に巻き締められている。
【0046】
なお、図8では、一例として、貫通孔620の中心部の位置が、軸方向において、一対の巻き締め部611,612の中間の位置に位置するように、ブラケット6を配置する場合を例に挙げたが、必ずしもかかる配置に限定されるものではない。また、図8では、一例として図1に示す構成を有するワイヤハーネス1を例に挙げて説明したが、図4から図7に示した構成を有するワイヤハーネス1であってもよい。
【0047】
以上説明した変形例5に係る形態によれば、シース保持部51の外周面51a及びケーブル保持部52の外周面52aに跨ってブラケット6の巻き締め部61が巻き締められているので、巻き締め部61の幅を十分に確保することが可能となる。
【0048】
(変形例6)
図9は、本発明の一変形例に係るワイヤハーネス1を示す側面図である。図9に示すワイヤハーネス1は、ブラケット6が一対の巻き締め部611,612を有している点で上述の実施の形態とは異なる。
【0049】
すなわち、上述の実施の形態では、ブラケット6は、先端に1つの半楕円形状の巻き締め部61を有しているが、変形例6では、ブラケット6は、先端が分岐して互いに離間した一対の巻き締め部611,612を有している。
【0050】
かかる構成により、例えば、一対の巻き締め部611,612の間に、一対の巻き締め部611,612の間隔に相当する幅を有し径方向に突出するガイド突起部(不図示)を設けることにより、ブラケット6の樹脂部材5に対する軸方向の位置ずれを規制することができる。なお、図9では、一例として図1に示す構成を有するワイヤハーネス1を例に挙げて説明するが、図4から図7に示した構成を有するワイヤハーネス1であってもよい。
【0051】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0052】
[1]導体線(311、411)が絶縁体(312、412)で被覆された複数のケーブル(3、4)と、前記複数のケーブル(3、4)を一括して被覆するシース(2)と、前記複数のケーブル(3、4)が導出される前記シース(2)の端部2a及び当該端部(2a)から導出された前記複数のケーブル(3、4)を覆いモールド成形により成形される樹脂部材(5)と、を備え、前記複数のケーブル(3、4)は、前記樹脂部材(5)から互いに平行に導出されている、ワイヤハーネス(1)。
[2]前記樹脂部材(5)は、前記端部(2a)の外周を覆って前記シース(2)を保持するシース保持部(51)、及び前記シース(2)から導出された前記複数のケーブル(3、4)を保持するケーブル保持部(52)を一体に有する、前記[1]に記載のワイヤハーネス(1)。
[3]前記ケーブル保持部(52)の端部には、前記複数のケーブル(3、4)の導出方向に沿って所定の長さで前記シース(2)側へ凹んでおり前記複数のケーブル(3、4)のうち一部を収容する凹み部(53)が形成されている、前記[2]に記載のワイヤハーネス(1)。
[4]前記凹み部(53)を構成する底面(53a)及び壁面(53b)のうち、少なくとも一方の角部(53c、53d)がR形状を有している、前記[3]に記載のワイヤハーネス(1)。
[5]前記ケーブル保持部(52)の端部に前記ケーブル保持部(52)の端面(52b)と外周面(52a)とを結び、前記端面(52b)又は前記外周面(52a)に対して傾斜する斜面(54)が形成されている、前記[2]に記載のワイヤハーネス(1)。
[6]前記樹脂部材(5)を保持する樹脂部材保持部と、前記樹脂部材保持部と一体に形成されており固定対象に固定される固定部(62)と、を有する固定部材をさらに備える、前記[1]から[5]のいずれか1つに記載のワイヤハーネス(1)。
[7]前記樹脂部材保持部は、前記ケーブル保持部(52)の少なくとも一部、及び前記シース保持部(51)の少なくとも一部を跨いで保持している、前記[6]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0053】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0054】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、細径の第2のケーブル4を屈曲させる場合について説明したが、太径の第1のケーブル3を屈曲させてもよい。また、シース保持部51のシース2の他方側の端部に、巻き締め部61を係止する係止突起として機能するフランジ部(不図示)を設けてもよい。また、ワイヤハーネス1の用途についても特に限定はない。
【符号の説明】
【0055】
1…ワイヤハーネス
2…シース
2a…端部
21…介在
3…第1のケーブル
31…第1の絶縁電線
311…第1の導体線
312…第1の絶縁体
4…第2のケーブル
41…第2の絶縁電線
411…第2の導体線
412…第2の絶縁体
5…樹脂部材
5a…外周面
50…溝部
51…シース保持部
51a…外周面
52…ケーブル保持部
52a…外周面
52b…端面
520…本体部
521…導出部(第1の導出部)
522…第2の導出部
53…凹み部
53a…底面
53b…壁面
53c…第1の角部
53d…第2の角部
54…斜面
6…ブラケット
61…巻き締め部
62…固定部
611,612…一対の巻き締め部
620…貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9