(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】パケットタイミング生成装置、パケットタイミング再生装置およびパケットデータ伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04L 47/28 20220101AFI20230721BHJP
【FI】
H04L47/28
(21)【出願番号】P 2020108035
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 康義
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
(72)【発明者】
【氏名】菊池 陽介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 順
(72)【発明者】
【氏名】武田 英明
(72)【発明者】
【氏名】大野 晃弘
【審査官】安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-162254(JP,A)
【文献】特開2012-119760(JP,A)
【文献】特開2015-073166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0043330(US,A1)
【文献】特開2017-005289(JP,A)
【文献】特開2017-063273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 47/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット伝送ネットワークに配置されるパケットタイミング生成装置であって、
固定レートの回線信号から変換された回線パケットを基準周期で受信する処理と、
ネットワークの運営、管理または維持の機能を実現するためのOAMパケットを、前記基準周期より長い周期で受信する処理と、
前記OAMパケットを前記回線パケットの間隔に入れ込んだパケット群、並びに前記回線パケットを含むパケット群を、前記基準周期で送信するパケット送信処理と、
前記基準周期の開始時に送信タイミング制御パケットを生成する処理と、
前記送信タイミング制御パケットの生成後に送信される前記パケット群に含まれる対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとに関する情報を、当該送信タイミング制御パケットに格納する処理と、
前記基準周期の終了時に、前記送信タイミング制御パケットを送信する処理と、
を実行するパケットタイミング生成装置。
【請求項2】
前記パケット伝送ネットワークは、
前記パケット群および前記送信タイミング制御パケットを伝送する送信側の広帯域中継路と、
前記広帯域中継路から、前記パケット群および前記送信タイミング制御パケットを受け取る狭帯域中継路と、
前記狭帯域中継路から、前記パケット群および前記送信タイミング制御パケットを受け取る受信側の広帯域中継路とを含み、
前記パケットタイミング生成装置は、前記狭帯域中継路より送信側に配置されている請求項1に記載のパケットタイミング生成装置。
【請求項3】
前記パケット伝送ネットワークは、MPLS-TPおよびイーサネットの少なくとも一方に対応するネットワークである請求項1または2に記載のパケットタイミング生成装置。
【請求項4】
パケット伝送ネットワークに配置されるパケットタイミング再生装置であって、
固定レートの回線信号から変換された回線パケットと、ネットワークの運営、管理または維持の機能を実現するためのOAMパケットと、対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとを格納した送信タイミング制御パケットとを受信するパケット受信処理と、
受信した前記回線パケットおよび前記OAMパケットを、揺らぎ吸収バッファに格納する処理と、
受信した前記送信タイミング制御パケットから、前記対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとを取得する処理と、
前記揺らぎ吸収バッファから、前記対象パケットの数に相当するパケットを、格納順序の古い方から、前記送信タイミングに従って送信するパケット送信処理と、を実行し、
前記対象パケットは、前記送信タイミング制御パケットと、当該送信タイミング制御パケットの直前に受信した送信タイミング制御パケットとの間に受信されるべき前記回線パケットおよび前記OAMパケットであるパケットタイミング再生装置。
【請求項5】
前記回線パケットおよび前記OAMパケットの送信源は、
複数の回線信号の夫々に対応して前記回線パケットおよび前記OAMパケットを生成し、
前記複数の回線信号の全てに対応する回線パケットおよびOAMパケットを含むパケット群、並びに前記複数の回線信号の全てに対応する回線パケットを含むパケット群を、基準周期で繰り返し送信し、
前記対象パケットの単位は、前記パケット群の単位と一致しており、
前記パケット送信処理は、前記基準周期で開始される請求項4に記載のパケットタイミング再生装置。
【請求項6】
前記パケット伝送ネットワークは、
前記回線パケット、前記OAMパケットおよび前記送信タイミング制御パケットを伝送する送信側の広帯域中継路と、
前記広帯域中継路から、前記回線パケット、前記OAMパケットおよび前記送信タイミング制御パケットを受け取る狭帯域中継路と、
前記狭帯域中継路から、前記回線パケット、前記OAMパケットおよび前記送信タイミング制御パケットを受け取る受信側の広帯域中継路とを含み、
前記パケットタイミング再生装置は、前記狭帯域中継路より受信側に配置されている請求項4または5に記載のパケットタイミング再生装置。
【請求項7】
前記パケット伝送ネットワークは、MPLS-TPおよびイーサネットの少なくとも一方に対応するネットワークである請求項4乃至6の何れか1項に記載のパケットタイミング再生装置。
【請求項8】
固定レートの回線信号を変換して基準周期で回線パケットを生成するステップと、
ネットワークの運営、管理または維持の機能を実現するためのOAMパケットを、前記基準周期より長い周期で生成するステップと、
前記OAMパケットを前記回線パケットの間隔に入れ込んだパケット群、並びに前記回線パケットを含むパケット群を、前記基準周期で送信するパケット送信ステップと、
前記基準周期の開始時に送信タイミング制御パケットを生成するステップと、
前記送信タイミング制御パケットの生成後に送信される前記パケット群に含まれる対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとに関する情報を、当該送信タイミング制御パケットに格納するステップと、
前記基準周期の終了時に、前記送信タイミング制御パケットを送信するステップと、
前記回線パケット、前記OAMパケットおよび前記送信タイミング制御パケットを受信するパケット受信ステップと、
受信した前記回線パケットおよび前記OAMパケットを、揺らぎ吸収バッファに格納するステップと、
受信した前記送信タイミング制御パケットから、前記対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとを取得するステップと、
前記揺らぎ吸収バッファから、前記対象パケットの数に相当するパケットを、格納順序の古い方から、前記送信タイミングに従って送信するパケット送信ステップと、
を含むパケットデータ伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、パケットタイミング生成装置、パケットタイミング再生装置およびパケットデータ伝送方法に係り、特に、回線パケットとOAMパケットを含む送信パケットを狭小な中継経路を介して伝送する場合に有益なパケットタイミング生成装置、パケットタイミング再生装置およびパケットデータ伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、パケット伝送技術をベースにOAM(Operations,Administration and Maintenance)機能が実現可能であることが記載されている。非特許文献2には、MPLS-TP(Multi Protocol Label Switching-Transport Profile)のOAMメカニズムに関する技術標準が規定されている。また、非特許文献3には、イーサネットのOAM機能に関する技術標準が規定されている。
【0003】
MPLSとは、パケットにラベルを付し、そのラベルに基づいてネットワーク内でパケットデータを伝送する技術である。イーサネットは、ヘッダとペイロードを含むデータをフレーム単位で送受信する技術である。これらは、何れもパケット伝送の手法として広く知られている。
【0004】
OAM機能とは、ネットワークの運用状態を把握し、故障や性能劣化の検出、或いは故障情報の伝達等を実現する機能である。例えば、送信側から定期的に故障検出用のOAMパケットを送信し、受信側で定期的にパケットを受信することとすれば、断線、誤接続、混線などを検出することができる。
【0005】
上述した非特許文献1には、具体的には、固定レートの回線信号を、CEP(Circuit Emulation over Packet)技術により回線パケットに変換する技術が開示されている。生成された回線パケットにはOAMパケットが重畳される。それらは混在した状態でネットワークに送信される。受信側では、送信されてきたパケット信号からOAMパケットを抜き出すことで回線パケットを再生する。再生された回線パケットは、CEP技術により回線信号に復元される。この技術によれば、回線パケットが、送信時の周期と同じ周期で受信されれば、受信側で、固定レートの回線信号を正しく再生することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】パケットトランスポート技術を適用した専用系システムの実用化、NTTネットワークサービスシステム研究所、NTT技術ジャーナル、2016年3月、p.60-63
【文献】JT-G8113.1、パケットトランスポートネットワーク(PTN)におけるMPLS-TPのOAMメカニズム、一般社団法人情報通信技術委員会、第1版、2014年2月20日
【文献】JT-Y1731、イーサネットのOAM機能とメカニズム、社団法人情報通信技術委員会、第1版、2010年2月24日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パケット伝送ネットワークの中には、例えば衛星回線のような狭帯域の中継路が介在することがある。このような環境にOAM機能を適用した場合、送信される固定レートの回線信号が、受信側で回線信号として再生される間に下記のような信号伝達が行われる。
【0008】
(1)固定レートの回線信号→(2)回線パケットに変換→(3)回線パケットにOAMパケットが重畳→(4)広帯域の中継路に送信→(5)狭帯域の中継路を伝送→(6)広帯域の中継路から受信→(7)送信パケットからOAMパケット分離→(8)回線パケットから固定レートの回線信号を再生
【0009】
OAMパケットは、回線パケットに比べて発生頻度が少ない。このため、上記(3)を経て生成される送信パケットには、回線パケットだけが存在する低密度領域と、回線パケットとOAMパケットの双方が存在する高密度領域が含まれる。上記(4)の広帯域の中継路は、高密度領域の送信パケットを、帯域制限をかけることなく伝送することができる。一方、上記(5)の狭帯域の中継路は、高密度領域の送信パケットをそのまま伝送できないことがある。この場合、帯域制限によるパケットの送信待ちが生ずる。そして、高密度領域の送信パケットに間延びが生じ、高密度領域の送信パケットが、低密度領域の送信パケットと同じような密度で狭帯域の中継路を流れる事態が生ずる。
【0010】
低密度領域の送信パケットにはOAMパケットが含まれていない。このため、低密度領域の送信パケットの間隔は、上記(7)の前後、つまり、OAMパケット分離の前後で実質的に変化しない。一方、間延びした高密度領域の送信パケットからOAMパケットが分離されると、残された回線パケットの間隔は、OAMパケット分離前の間隔のほぼ2倍となる。このため、送信パケットが狭帯域回線を経由する場合、上記(8)で処理される回線パケットには、大きな周期揺らぎが生ずることがある。
【0011】
そして、その周期揺らぎが、上記(8)の設計に対して過大なものであれば、回線パケットを適正にデパケットすることができず、固定レートの回線信号を適正に再生できない事態が生ずる。
【0012】
この開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、狭帯域の中継路を経由して伝送された場合でも、送信パケットから適正な回線信号が再現できるように、必要なパケットタイミングの情報を受信側に提供することのできるパケットタイミング生成装置を提供することを第1の目的とする。
また、この開示は、狭帯域の中継路を経由して伝送された場合でも、送信パケットから適正な回線信号が再現できるように、必要なパケットタイミングの情報を受信側において再生することのできるパケットタイミング再生装置を提供することを第2の目的とする。
また、この開示は、狭帯域の中継路を経由する場合でも、送信パケットから適正な回線信号を再現することのできるパケットデータ伝送方法を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この開示の第1の態様は、上記の目的を達成するため、パケット伝送ネットワークに配置されるパケットタイミング生成装置であって、固定レートの回線信号から変換された回線パケットを基準周期で受信する処理と、ネットワークの運営、管理または維持の機能を実現するためのOAMパケットを、前記基準周期より長い周期で受信する処理と、前記OAMパケットを前記回線パケットの間隔に入れ込んだパケット群、並びに前記回線パケットを含むパケット群を、前記基準周期で送信するパケット送信処理と、前記基準周期の開始時に送信タイミング制御パケットを生成する処理と、前記送信タイミング制御パケットの生成後に送信される前記パケット群に含まれる対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとに関する情報を、当該送信タイミング制御パケットに格納する処理と、前記基準周期の終了時に、前記送信タイミング制御パケットを送信する処理と、を実行するパケットタイミング生成装置であることが望ましい。
【0014】
また、第2の態様は、パケット伝送ネットワークに配置されるパケットタイミング再生装置であって、固定レートの回線信号から変換された回線パケットと、ネットワークの運営、管理または維持の機能を実現するためのOAMパケットと、対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとを格納した送信タイミング制御パケットとを受信するパケット受信処理と、受信した前記回線パケットおよび前記OAMパケットを、揺らぎ吸収バッファに格納する処理と、受信した前記送信タイミング制御パケットから、前記対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとを取得する処理と、前記揺らぎ吸収バッファから、前記対象パケットの数に相当するパケットを、格納順序の古い方から、前記送信タイミングに従って送信するパケット送信処理と、を実行し、前記対象パケットは、前記送信タイミング制御パケットと、当該送信タイミング制御パケットの直前に受信した送信タイミング制御パケットとの間に受信されるべき前記回線パケットおよび前記OAMパケットであるパケットタイミング再生装置であることが望ましい。
【0015】
また、第3の態様は、固定レートの回線信号を変換して基準周期で回線パケットを生成するステップと、ネットワークの運営、管理または維持の機能を実現するためのOAMパケットを、前記基準周期より長い周期で生成するステップと、前記OAMパケットを前記回線パケットの間隔に入れ込んだパケット群、並びに前記回線パケットを含むパケット群を、前記基準周期で送信するパケット送信ステップと、前記基準周期の開始時に送信タイミング制御パケットを生成するステップと、前記送信タイミング制御パケットの生成後に送信される前記パケット群に含まれる対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとに関する情報を、当該送信タイミング制御パケットに格納するステップと、前記基準周期の終了時に、前記送信タイミング制御パケットを送信するステップと、前記回線パケット、前記OAMパケットおよび前記送信タイミング制御パケットを受信するパケット受信ステップと、受信した前記回線パケットおよび前記OAMパケットを、揺らぎ吸収バッファに格納するステップと、受信した前記送信タイミング制御パケットから、前記対象パケットの数と当該対象パケット夫々の送信タイミングとを取得するステップと、前記揺らぎ吸収バッファから、前記対象パケットの数に相当するパケットを、格納順序の古い方から、前記送信タイミングに従って送信するパケット送信ステップと、を含むパケットデータ伝送方法であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様によれば、パケット伝送ネットワークを介して、回線パケットとOAMパケットに加えて、送信タイミング制御パケットが送信される。送信タイミング制御パケットには、そのパケットに先立って送信された回線パケットおよびOAMパケットの数と、それらのパケットの正しい送信タイミングが格納されている。このため、それらのパケットが狭帯域の中継路を経由して、パケット周期にゆらぎが生じたとしても、受信側では、送信タイミング制御パケットに格納されている情報に基づいて、適正なタイミングで回線パケットを再生することができる。そして、再生される回線パケットが適正なタイミングを有するため、受信側では、揺らぎの影響を受けることなく、適正な回線信号を再現することができる。
【0017】
第2の態様によれば、パケット伝送ネットワークを介して、回線パケットとOAMパケットに加えて、送信タイミング制御パケットを受信することができる。送信タイミング制御パケットには、当該送信タイミング制御パケットと、一つ前の送信タイミング制御パケットとの間に受信されるべき回線パケットおよびOAMパケットの数と、それらのパケットの送信タイミングが格納されている。この情報は、揺らぎ吸収バッファに格納されている送信パケットを、適正なタイミングで送信するための情報である。このため、本態様によれば、回線パケットに揺らぎが生じていたとしても、適正なタイミングを持つ回線パケットを再生することができる。また、その回線パケットによれば、適正な回線信号を再現することができる。
【0018】
第3の態様によれば、送信側からは、回線パケットとOAMパケットに加えて送信タイミング制御パケットが送信される。また、本態様によれば、受信側では、送信タイミング制御パケットに格納されている情報に基づいて、揺らぎ吸収バッファに格納されているパケットが順次送信される。その結果、本態様によれば、受信側に到達する回線パケットに揺らぎが生じていたとしても、受信側では、適正なタイミングを持つ回線パケットを再生することができる。また、その回線パケットによれば、適正な回線信号を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の実施の形態1の基本構成を示す図である。
【
図2】広帯域の中継路の間に衛星回線が挟まれた環境を示す図である。
【
図3】回線パケットにOAMパケットが重畳される様子を示す図である。
【
図4】
図4(A)は回線パケットだけを含む低密度領域の送信パケットと中継路の帯域制限との関係を説明するための図である。
図4(B)は回線パケットとOAMパケットの双方を含む高密度領域の送信パケットと中継路の帯域制限との関係を説明するための図である。
【
図5】
図5(A)は狭帯域の中継路を経て伝送された低密度領域の送信パケットの一例を示す。
図5(B)は狭帯域の中継路を経て伝送された高密度領域の送信パケットが、回線パケットとOAMパケットに分離される様子を示す。
【
図6】本開示の実施の形態1の特徴であるパケットタイミング生成装置およびパケットタイミング再生装置を含む全体図である。
【
図7】実施の形態1のパケットタイミング生成装置の機能を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1のパケットタイミング生成装置が実行する処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図9】実施の形態1で生成される送信タイミング制御パケットの詳細を説明するための図である。
【
図10】実施の形態1のパケットタイミング再生装置の機能を説明するための図である。
【
図11】
図11(A)はパケットタイミング再生装置で処理された後の低密度領域の送信パケットの一例を示す。
図11(B)はパケットタイミング再生装置で処理された後の高密度領域の送信パケットが、回線パケットとOAMパケットに分離される様子を示す。
【
図12】実施の形態1のパケットタイミング再生装置が実行する処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
[実施の形態1の基本構成]
図1は、本開示の実施の形態1の基本構成を示す図である。
図1の上段に示すように、本実施形態のシステムには、クライアントノード10-i(iは1以上の整数)が含まれている。クライアントノード10-iは、固定レートの回線信号を送受信する装置であり、具体的には、各種の端末、モデム、DSU(Digital Service Unit)で構成される。
【0021】
クライアントノード10-iはパケット伝送装置12に接続されている。尚、本明細書において「接続」とは、有線による接続の他、無線による接続も含むものとする。パケット伝送装置12は、プロバイダーエッジルータとしても機能し、MPLS-TPネットワーク14に接続されている。
【0022】
図1には、MPLS-TPネットワーク14に、パケット伝送装置12と共に、パケット伝送装置16が接続された状態を示している。両者の機能は実質的に同様であるが、ここでは、パケット伝送装置12が送信側、パケット伝送装置16が受信側である場合について説明する。
【0023】
パケット伝送装置16には、クライアントノード18-i(iは1~n)が接続されている。クライアントノード18-iは、上記のクライアントノード10-iと同様に、固定レートの回線信号を送受信する装置である。
【0024】
図1の下段は、パケット伝送装置12、16の基本的な構成を示している。ここに示す通り、パケット伝送装置12は、クライアントノード10-iに通じる回線20-iの夫々に対応するインターフェース22-iを備えている。インターフェース22-iは、スイッチ24を介して、選択的にパケット伝送装置25と接続される。
【0025】
パケット伝送装置25には、CEP(Circuit Emulation over Packet)機能26と、OAM(Operations,Administration and Maintenance)機能28とが搭載されている。CEP機能26は、固定レートの回線信号と回線パケットとを変換する機能である。OAM機能28は、ネットワークの運用状態を把握するためのOAMパケットを処理する機能である。OAMパケットには、故障や性能劣化の検出、故障情報の伝達等のために受信側が必要とする情報が格納される。
【0026】
図1に示す例では、クライアントノード10-iから発せられた回線信号は、インターフェース22-iおよびスイッチ24を介してパケット伝送装置25に到達した後、CEP機能26によって回線パケットに変換される。また、パケット伝送装置25は、OAM機能28によりOAMパケットを生成する。生成されたOAMパケットは、回線パケットの間に埋め込まれ、両者を含んだ送信パケットがMPLS-TPネットワーク14に送り出される。
【0027】
パケット伝送装置16にはパケット伝送装置30が搭載されている。パケット伝送装置30には、上述したパケット伝送装置25と場合と同様に、OAM機能32とCEP機能34が搭載されている。パケット伝送装置30は、MPLS-TPネットワーク14から送信パケットを受け取ると、そこからOAMパケットを抜き出し、残った回線パケットをCEP機能34で処理することで固定レートの回線信号を再生する。再生された回線信号は、スイッチ36、インターフェース38-i、回線40-iを介してクライアントノード18-iに伝達される。
【0028】
図2は、MPLS-TPネットワーク14によって実現される具体的な経路の一例を示す。この例では、送信側のパケット伝送装置12に5台のクライアントノード10-1~10-5が接続されている。同様に、受信側のパケット伝送装置12にも、5台のクライアントノード18-1~18-5が接続されている。以下、クライアントノード10-1~10-5の夫々は、クライアントノード18-1~18-5の夫々と通信を確立するものとする。また、クライアントノード10-iおよび20-iに通じる回線20-iおよび40-iを、必要に応じて「回線i」と称する。
【0029】
図2において、送信側のパケット伝送装置12は、広帯域中継路14-1と接続されている。広帯域中継路14-1はGbE(Gigabit Ethernet)の規格に準拠し、1Gbpsでの通信に対応している。広帯域中継路14-1は、スイッチングハブ14-2を介して衛星回線14-3と通じている。
【0030】
衛星回線の伝送容量は、費用等の制約により一般に小さく設定される。本実施形態では、衛星回線14-3が、数Mbpsの通信に対応する狭帯域中継路であるものとする。衛星回線14-3は、スイッチングハブ14-4を介して、広帯域中継路14-5と通じている。広帯域中継路14-5は、送信側の広帯域中継路14-1と同様にGbEの規格に準拠している。
【0031】
図3の上段は、パケット伝送装置12がOAM機能28により生成するOAMパケットの一例を示す。
図3の中段は、パケット伝送装置12がCEP機能26により生成する回線パケットの一例を示す。また、
図3の下段は、それらの双方を含む送信パケットの一例を示す。尚、
図3において、個々のパルスは個々のパケットを表している。また、パルスの中に示す1~5の数字は、夫々に対応する回線iの番号である。
【0032】
図3の中段に示すように、パケット伝送装置12は、5つの回線1~5の夫々に対応する5つの回線パケット1~5を、2msecの送信周期で生成する。OAMパケットの送信頻度は、回線パケットの頻度より低いのが通常である。ここでは、
図3の上段に示すように、回線1~5の夫々に対応する5つのOAMパケット1~5が、1secの送信周期で生成される。
【0033】
図3の下段に示すように、OAMパケットは、回線パケットの間に埋め込まれる。より具体的には、回線iのOAMパケットiは、回線iの回線パケットiの後ろに挿入される。その結果、OAMパケットが存在する場合は、OAMパケットが存在しない場合に比して、送信パケットの密度が2倍となる。以下、送信パケットのうちOAMパケットを含む部分を「高密度領域」と称し、回線パケットだけの部分を「低密度領域」と称する。つまり、本実施形態では、1sec周期で高密度領域が生成され、高密度領域の間に2msec毎に四百九十九の低密度領域が生成される。
【0034】
図4(A)の上段は、広帯域中継路14-1に送出された低密度領域の送信パケット、つまり回線パケットの一例を示す。また、
図4(A)の下段は、衛星回線14-3に流入した後の低密度領域の回線パケットを示す。広帯域中継路14-1と衛星回線14-3は、伝送容量において大きく異なっている。このため、広帯域中継路14-1を流れてきた信号が衛星回線14-3に伝送される際には、帯域制限が課されることがある。
図4(A)は、低密度領域の回線パケットには帯域制限の影響が及ばず、制限の前後で回線パケットの周期が変化していない状態を示している。
【0035】
図4(B)の上段は、広帯域中継路14-1に送出された、高密度領域を含む送信パケットの一例を示す。また、
図4(B)の下段は、上段に示す送信パケットに、衛星回線14-3の狭帯域に起因する帯域制限が課されることで生成された波形を示す。高密度領域の送信パケットが衛星回線14-3に流入する際には、帯域制限による送信待ちが生ずる。その結果、高密度領域の送信パケットに間延びが生じ、回線パケット1~5の送信周期に揺らぎが生ずる。
【0036】
図5(A)は、受信側のパケット伝送装置16に到達した低密度領域の送信パケットの一例を示す。低密度領域には、OAMパケットが含まれていない。このため、OAM分離がなされても低密度領域の送信パケットに変化は生じない。その結果、送信時と同様に、5つの回線パケット1~5が2msec間隔で繰り返される信号が生成される。
【0037】
図5(B)の上段は、パケット伝送装置16に到達した後、OAMパケットが分離された後の回線パケットの一例を示す。また、
図5(B)の下段は、その処理により分離されたOAMパケットの一例を示す。この例では、初回2.9msecであった回線パケット1~5の周期が、二回目には1.4msecに変化している。この変化は、最初の5つの回線パケット1~5に狭帯域に起因する間延びが生じたことに起因する。以下、この間延びによる周期の揺らぎを「狭帯域による揺らぎ」と称す。
【0038】
図5(B)の上段中、最も右に位置する回線パケット1や、その隣に位置する回線パケット2には、水平方向に描かれた矢印が付されている。それらの矢印は、衛星の移動に伴う衛星回線14-3の位置の変化に起因するドップラー効果を表している。MPLS-TPネットワークの中継路として衛星回線14-3が用いられる場合、受信側に到達する送信パケットの周期には、ドップラー効果による揺らぎが生ずることがある。
【0039】
以上説明した通り、送信パケットが衛星回線14-3を経由する場合、受信側で再生される回線パケット1~5には、狭帯域に起因する揺らぎと、ドップラー効果に起因する揺らぎが重畳する。このため、このような状況下では、受信側の回線パケット5に大きな周波数揺らぎが生ずる。
【0040】
回線パケットの周期に生ずる揺らぎを吸収する手法としては、受信側のパケット伝送装置16に揺らぎ吸収バッファを設ける技術が知られている。この技術によれば、受信側で再生された回線パケットは一時的に揺らぎ吸収バッファに格納され、送信側が用いる周期と同じ周期で出力される。これによれば、回線パケットに重畳するある程度の揺らぎは吸収することができる。
【0041】
しかしながら、揺らぎ吸収バッファは、自らの許容値を超える揺らぎを吸収することができない。このため、上記の技術を用いても、受信側のパケット伝送装置16に到達した送信パケットに大きな揺らぎが重畳している場合は、正しい周期をもつ回線パケットを受信側で再生することができない。そして、正しい回線パケットが再生できなければ、正しいデパケットが実現できず、クライアントノード18-1~18-5に正しい回線信号を供給することができない。
【0042】
[実施の形態1の特徴]
図6は、本開示の実施の形態1の特徴を説明するための全体図である。尚、
図6において、
図2に示す構成要素と同一の要素については、共通する符号を付してその説明を省略する。
図6に示す構成は、パケット伝送装置12、16のネットワーク側に、パケットタイミングを生成および再生する装置42、44を備えている。本実施形態のシステムは、これらの装置42,44を備える点に特徴を有している。
【0043】
装置42、44は、プロセッサユニット、記憶装置、各種インターフェース等のハードウェアに、専用のソフトウェアを組み合わせることにより実現されている。装置42,44は同様の機能を備えているが、ここでは、装置42が送信側、装置44が受信側である場合について説明する。以下、前者をパケットタイミング生成装置42と称し、後者をパケットタイミング再生装置44と称する。
【0044】
図7は、パケットタイミング生成装置42の機能を説明するための図である。
図7の上段は、パケット伝送装置12からパケットタイミング生成装置42に、2msec毎に順次送信されてくるパケット群45,46,48,50を示している。これらのうち、パケット群45,50は、回線パケットと共にOAMパケットを含む高密度領域に属している。また、パケット群46,48は、回線パケットだけを含む低密度領域に属している。
【0045】
パケット群45,46,48,50の内部には、回線1の回線パケットを先頭にして、回線1~5の送信パケットがその順で並んでいる。以下、先頭に位置する回線1の回線パケット1を「基準の回線パケット」と称す。
【0046】
図7の中段は、パケットタイミング生成装置42によって生成される送信タイミング制御パケット52を示している。送信タイミング制御パケット52は、パケット群の夫々に対応して生成される。具体的には、
図7上段の最も右側に位置するパケット群45に対応して、中段の右から2番目に位置する送信タイミング制御パケット52が生成される。同様に、パケット群46,48に対しては、中段の右から3番目および4番目に位置する送信タイミング制御パケット52が生成される。以下、夫々の送信タイミング制御パケット52に対応するパケット群を「対象パケット群」と称す。また、対象パケット群に含まれる送信パケットを「対象パケット」と称す。
【0047】
送信タイミング制御パケット52には、対象パケットの数と、対象パケット夫々の送信タイミングとが格納される。対象パケットの送信タイミングは、基準の回線パケットの受信時点を起点として定義される。
図7の中段に示すように、送信タイミング制御パケット52は、対応するパケット群に割り当てられた2msecの周期の末期に送信される。
【0048】
図7の下段は、送信タイミング制御パケット52が、パケット群45,46,48,50に重畳されて送信されている様子を示している。ここに示すように、送信タイミング制御パケット52は、夫々の対象パケット群に続いて、その次のパケット群の直前に送信される。
【0049】
図8は、上記の機能を実現するべくパケットタイミング生成装置42が実行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図8に示す処理が開始されると、先ず、送信タイミング制御パケット52が新規に生成される(ステップ100)。
【0050】
次に、回線パケットまたはOAMパケットが受信される(ステップ102)。
【0051】
次いで、受信したパケットが基準の回線パケットであるか否かが判別される(ステップ104)。
【0052】
その結果、基準の回線パケットであると判別された場合は、各パケットの送信タイミングをカウントするためのタイマーが、クリアの後起動される(ステップ106)。これにより、基準の回線パケットが受信された後の経過時間が、タイマーによりカウントされ始める。
【0053】
続いて、送信タイミング制御パケット52が送信される(ステップ108)。尚、このルーチンの開始後、初めて本ステップが実行される段階では、送信タイミング制御パケット52に何の情報も格納されていない。この場合、そのパケットの送信は省略してもよい。
【0054】
上記ステップ104で、受信したパケットが基準の回線パケットでないと判別された場合は、次に、基準の回線パケット1を含めた受信パケット数がカウントされるように、タイマーがカウントアップされる(ステップ112)。本ステップの処理は、新たに基準の回線パケットが受信されるまで繰り返される(ステップ104参照)。そのため、カウントアップの値は、最終的には対象パケットの数に到達する。
【0055】
次に、タイマーの値から、今回のサイクルで受信した送信パケットの受信タイミングが算出される(ステップ114)。
【0056】
次いで、送信タイミング制御パケットに、ステップ112で得た受信パケット数と、ステップ114で得た受信タイミングが記録される(ステップ116)。以後、基準の回線パケットが再び受信されるまで、ステップ102,104,112~116の処理が繰り返される。
【0057】
図9は、送信タイミング制御パケット52の詳細を説明するための図である。
図9の上段および中段に示すように、基準の回線パケット1が受信されると、タイマー値が0msecにクリアされる。送信タイミング制御パケット52には、その時点で、1つ目のパケットのタイミングが0msecであること、対象パケット数が1であることが記録される。タイマー値が1.3msecの時点で10個目のパケットであるOAMパケット5が受信される。その時点で、送信タイミング制御パケット52には、10個のパケット夫々の受信タイミングと、対象パケット数が10であることとが記録されている。この送信タイミング制御パケット52は、
図9の下段に示すように、新たに基準の回線パケット1が受信された時点で送信される。
【0058】
図10は、受信側に配置されるパケットタイミング再生装置44の機能を説明するための図である。具体的には、
図10(A)は、衛星回線14-3を経て伝送されてきた低密度領域の送信パケットがパケットタイミング再生装置44で処理される様子を示している。
図10(A)には低密度領域の送信パケットが、送信時の周期を維持したままパケットタイミング再生装置44に到達する様子が示されている。
【0059】
一方、
図10(B)は、同様の経路を経て伝送されてきた高密度領域の送信パケットがパケットタイミング再生装置44で処理される様子を示している。
図10(B)には、高密度領域の送信パケットが、送信時に比して間延びした状態でパケットタイミング再生装置44に到達する様子が示されている。
【0060】
図10(A)および
図10(B)に示すように、パケットタイミング再生装置44は、揺らぎ吸収バッファ54と、パケット送信制御部56とを備えている。パケットタイミング再生装置44によって受信された送信パケットは、一時的に揺らぎ吸収バッファ54に格納される。格納された送信パケットは、パケット送信制御部56からの指令に従って、後段のパケット伝送装置16に向けて送出される。
【0061】
図9を参照して説明した通り、個々の送信タイミング制御パケット52は、夫々の対象パケット群に続いてを送信される。このため、受信側のパケットタイミング再生装置44が送信タイミング制御パケット52を受信する際には、そのパケット52の対象パケット群が既に揺らぎ吸収バッファ54に格納されている。
【0062】
パケット送信制御部56は、送信タイミング制御パケット52が受信される度に、そこから対象パケットの数と、対象パケット夫々の送信タイミングとを読み出す。そして、読み出した対象パケットの数と同じ数の送信パケットを揺らぎ吸収バッファ54から送出させる。この際、個々の送信パケットは、読み出された送信タイミングに従って送出される。
【0063】
つまり、本実施形態では、低密度領域か高密度領域かに関わらず、対象パケット群に属する全ての送信パケットは、対応する送信タイミング制御パケット52が受信されるまでは待機の状態に置かれる。そして、送信タイミング制御パケット52が受信されたら、その時点を起点に、正しい送信タイミングで個々の送信パケットが揺らぎ吸収バッファ54から送出される。このため、パケットタイミング再生装置44は、正しい周期のパケットと、間延びしてしまったパケットとが混在して到達する環境下でも、それらの全てについて正しい送信タイミングを再現することができる。
【0064】
図11(A)は、パケットタイミング再生装置44からパケット伝送装置16に送出された低密度領域のパケット群の一例を示す。これらのパケット群は、送信時に設定された2msecの周期で繰り返し送信されている。
【0065】
図11(B)の上段は、パケットタイミング再生装置44からパケット伝送装置16に送出された後、OAMパケットが分離された後の回線パケットの一例を示す。また、
図11(B)の下段は、その処理により分離されたOAMパケットの一例を示す。パケットタイミング再生装置64で正しい送信タイミングが再現されているため、高密度領域の回線パケットについても、2msecの周期が正しく再現されている。
【0066】
図12は、上記の機能を実現するべくパケットタイミング再生装置44が実行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図12に示す処理では、先ず、パケット受信の処理がなされる(ステップ120)。
【0067】
次に、受信したパケットが送信タイミング制御パケット52であるかが判別される(ステップ122)。
【0068】
その結果、受信したパケットが送信タイミング制御パケット52ではないと判別された場合は、そのパケットは、パケット伝送装置16に送り出すべき送信パケットであると判断できる。この場合、そのパケットが揺らぎ吸収バッファ54に格納される(ステップ126)。この処理が終わると、再びステップ120以降の処理が実行される。
【0069】
上記ステップ122で、送信タイミング制御パケット52が受信されたと判別されると、次に、当該パケットから、対象パケットの数と、対象パケット夫々の送信タイミングとが読み出される(ステップ124)。
【0070】
次に、基準の送信タイミングが到来したか否かが判別される(ステップ130)。本実施形態では、基準の送信タイミングは、送信周期と同様に2msec毎に発生するように設定されている。
【0071】
そして、基準の送信タイミング到来が判別されると、上記ステップ124で読み出された対象パケットの数だけ、同様に読み出された送信タイミングで、揺らぎ吸収バッファ54から送信パケットが送信される。
【0072】
以上説明した通り、本実施形態のシステムによれば、送信側で作動するパケットタイミング生成装置42は、中継過程で周期に揺らぎが生ずる環境下で、正しい送信タイミングを再現するのに必要な情報を、送信パケットと共に受信側に提供することができる。また、受信側で作動するパケットタイミング再生装置44は、受信したパケットの周期に揺らぎが生じていたとしても、送信側から提供される情報に基づいて、正しい送信タイミングを再現することができる。
【0073】
パケット伝送装置16は、送信パケットが正しい周期で送られてくれば、固定レートの回線信号を正しく再生することができる。このため、本実施形態のシステムによれば、衛星回線14-3のような狭帯域の中継路を挟む場合でも、OAM機能を実現しつつ、送信側から受信側に、固定レートの回線信号を正しく伝えることができる。
【0074】
[実施の形態1の変形例]
ところで、上述した実施の形態1では、MPLS-TPに準拠してパケットを伝送することとしているが、本発明は、これに限定されるものではない。パケットを伝達する手法は、MPLS-TPに限らず、イーサネット等の他のパケット伝達手法であってもよい。
【0075】
また、上述した実施の形態1では、狭帯域の中継路として衛星回線14-3を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、狭帯域の中継路を経由してパケットを伝送するシステム一般に適用することができる。
【0076】
また、上述した実施の形態1では、パケットタイミング生成装置42を送信側のパケット伝送装置12とネットワークとの間に配置し、パケットタイミング再生装置44を受信側のパケット伝送装置16とネットワークとの間に配置している。しかしながら、その配置はこれに限定されるものではない。パケットタイミング生成装置42およびパケットタイミング再生装置44は、夫々、狭帯域の中継路の入口と出口に配置することとしてもよい。
【0077】
また、上述した実施の形態1では、回線パケットの基準周期を2msecとしているが、この周期は単なる例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0078】
10-i、18-i クライアントノード
12、16 パケット伝送装置
14 MPLS-TPネットワーク
14-1、14-5 広帯域中継路
14-3 衛星回線
45,46,48,50 パケット群
52 送信タイミング制御パケット
54 揺らぎ吸収バッファ