IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

特許7316980扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法
<>
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図1
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図2
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図3
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図4
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図5
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図6
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図7
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図8
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図9
  • 特許-扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20230721BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20230721BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20230721BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20230721BHJP
   H01B 7/282 20060101ALI20230721BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B7/00 301
H01B7/04
H01B7/18 B
H01B7/18 D
H01B7/282
H01B13/00 525
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020125704
(22)【出願日】2020-07-22
(62)【分割の表示】P 2016120882の分割
【原出願日】2016-06-17
(65)【公開番号】P2020191291
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2020-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(72)【発明者】
【氏名】達川 永吾
(72)【発明者】
【氏名】木原 泰
(72)【発明者】
【氏名】境 克敏
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】棚田 一也
【審判官】小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-158710(JP,A)
【文献】特開2011-014447(JP,A)
【文献】特開2010-282748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線が一方向に一括で周状に撚り合わされて、外面が凹凸形状となる、断面略長方形状の扁平撚線導体と、該扁平撚線導体を被覆する絶縁被覆部とで構成され、
前記扁平撚線導体は、二層構造であるとともに、前記扁平撚線導体を構成する前記複数の素線は断面略扁平状に撚り合わされることで相互に相対移動可能であり、
正面視断面における前記絶縁被覆部は、
曲げられる前記扁平撚線導体の断面形状を維持するように前記扁平撚線導体を被覆する略長方形状に構成され、
正面視断面における前記絶縁被覆部の内面は、
外面が凹凸形状である前記扁平撚線導体における凸部を結ぶ外形線よりわずかに大きく、撚り合わされた前記複数の素線の間に食い込まない平滑面で構成され、
断面の長辺方向に沿うエッジワイズに曲げた状態で、
前記絶縁被覆部が曲げられる前記扁平撚線導体の断面形状を維持しながら、前記扁平撚線導体の外面と、前記絶縁被覆部の内面とが相対移動し、
前記扁平撚線導体を構成する前記素線同士が相対移動して扇状に解け、曲げ内側と曲げ外側との経路差を吸収し、曲げ方向に対して立ち上がることがなく、フラットな状態が維持される
扁平電線。
【請求項2】
前記扁平撚線導体は、
扁平率(幅/厚さ)が8~15である
請求項1に記載の扁平電線。
【請求項3】
前記扁平撚線導体は、
0.1~2.0mmの径で構成された、20~500本の素線を、30mm~500mmの撚りピッチで一方向に撚り合わせて構成された
請求項1又は請求項2に記載の扁平電線。
【請求項4】
前記扁平撚線導体の端部に接続端子が装着されている
請求項1乃至3のうちいずれかに記載の扁平電線。
【請求項5】
前記絶縁被覆部の外側に、シールド層及び防水層のうち少なくとも一方が設けられた
請求項1乃至4のうちいずれかに記載の扁平電線。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれかに記載の扁平電線が集束された
ワイヤーハーネス。
【請求項7】
長手方向の少なくとも一部において、複数の前記扁平電線が断面の長辺方向に配置された
請求項6に記載のワイヤーハーネス。
【請求項8】
長手方向の少なくとも一部において、複数の前記扁平電線が断面の短辺方向に配置された
請求項6に記載のワイヤーハーネス。
【請求項9】
長手方向の一部において、複数の前記扁平電線が断面の長辺方向に配置されるとともに、
前記長手方向における前記一部とは異なる部分において、複数の前記扁平電線が断面の短辺方向に配置された
請求項6に記載のワイヤーハーネス。
【請求項10】
撚線機のサプライボビンから供給された複数の素線を、一方向に一括で周状に、かつ断面略長方形状に撚り合わせて、前記複数の素線が相互に相対移動可能となるように、二層構造であるとともに、外面が凹凸形状となる扁平撚線導体を形成し、
記扁平撚線導体の外面に対して、相対移動可能に絶縁被覆で被覆し、
正面視断面における前記絶縁被覆部の内面を、外面が凹凸形状である前記扁平撚線導体における凸部を結ぶ外形線よりわずかに大きく、撚り合わされた前記複数の素線の間に食い込まない平滑面で構成し、
前記絶縁被覆部を、
曲げられる前記扁平撚線導体の断面形状を維持するように前記扁平撚線導体を被覆する略長方形状に構成するとともに、
断面の長辺方向に沿うエッジワイズに曲げた状態で、
前記絶縁被覆部が曲げられる前記扁平撚線導体の断面形状を維持しながら、前記扁平撚線導体の外面と、前記絶縁被覆部の内面とが相対移動し、
前記扁平撚線導体を構成する前記素線同士が相対移動して扇状に解け、曲げ内側と曲げ外側との経路差を吸収し、曲げ方向に対して立ち上がることがなく、フラットな状態が維持されるように構成する
扁平電線の製造方法。
【請求項11】
撚り合わせた複数の素線を圧縮成形して、所望の断面略長方形状に形成する
請求項10に記載の扁平電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、電気自動車のように高電圧の回路を持つ車両の高電圧用ワイヤーハーネスとしても使用できるような扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド車などのモータを駆動源とした車両の開発が進められている。これらの車両に配策される電力線などの電線(ワイヤーハーネス)は、モータの高出力化に伴って通電時の発熱が大きくなって、高温になりやすく、放熱性の向上が求められている。
【0003】
このような課題に対し、例えば、特許文献1では、複数の電線を集束したこれまでのワイヤーハーネスに比べ放熱性が優れているワイヤーハーネスとして、複数本の導体を並列配置するとともに樹脂被覆で被覆した扁平状のフラット電線を集束したワイヤーハーネスが提案されている。なお、フラット電線の断面としては、特許文献1の図1(B)、図4(B)、図4(C)、図6図8図9(A)のようなものが知られている。
【0004】
また、本明細書における図9に示すような、平編組線である編組導体201を絶縁被覆202で被覆したフラット電線200をワイヤーハーネスとして用いることもできる。平編組線である編組導体201は、集束した素線を編込んだ編組線を複数並列配置した構造であり、編組線自体は、柔軟性があり、可撓性もある導体である。
【0005】
しかしながら、特許文献1や本明細書の図9において従来例として示される扁平状のフラット電線(導体断面は詳細に図示せず)は、フラット電線の厚さ方向(断面の短辺方向:フラットワイズ)には屈曲させやすい一方、曲げ方向外側と曲げ方向内側とで大きな経路差が生じるフラット電線の幅方向(断面の長辺方向:エッジワイズ)には屈曲させにくいという特性があった。
【0006】
具体的には、図10に示すように、フラット電線で構成されたワイヤーハーネスを、図10において破線で示す直線状からエッジワイズEwに曲げて配索しようとすると、曲げ方向(エッジワイズEw)に対して経路差がなくなるように、フラット電線fが立ち上がるようにねじれてしまい、配索スペースの省スペース化の要望を満足することができなかった。また、曲げ方向に対して立ち上がるようにフラット電線fがねじれてしまうため、厚み方向のスペースが狭い配索経路に配索できなくなる、あるいは、無理やり配索すると内部の導体が損傷するおそれがあった。
【0007】
なお、特許文献1には、複数のフラット電線を幅方向に配置して曲げ部近傍をクランプで固定し、曲げ部で積層させたワイヤーハーネスが示され、さらに、曲げ部における曲げ状態を保つために、曲げ部をクランプで固定することも示されている。しかし、特許文献1の技術は、フラット電線f自体が曲げ部で図10のようにねじれて立ち上がること自体を解決するものではなく、また、曲げ部にクランプを設ける場合は部品点数が増加し、クランプを取り付けるクランプが配索中または配索後に破損するおそれがあった。
【0008】
さらに、外装部品は、フラット電線fがねじれて立ち上がる曲げ部を収容できるようなものに限られるとともに、外装部品内部でフラット電線fが立ち上がることによる占積率の低さが改善されない問題や、配索のスペース効率が向上しないという問題が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-125079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、エッジワイズの可撓性が優れた扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、複数の素線が一方向に一括で周状に撚り合わされて、外面が凹凸形状となる、断面略長方形状の扁平撚線導体と、該扁平撚線導体を被覆する絶縁被覆部とで構成され、前記扁平撚線導体は、二層構造であるとともに、前記扁平撚線導体を構成する前記複数の素線は断面略扁平状に撚り合わされることで相互に相対移動可能であり、正面視断面における前記絶縁被覆部は、曲げられる前記扁平撚線導体の断面形状を維持するように前記扁平撚線導体を被覆する略長方形状に構成され、正面視断面における前記絶縁被覆部の内面は、外面が凹凸形状である前記扁平撚線導体における凸部を結ぶ外形線よりわずかに大きく、撚り合わされた前記複数の素線の間に食い込まない平滑面で構成され、断面の長辺方向に沿うエッジワイズに曲げた状態で、前記絶縁被覆部が曲げられる前記扁平撚線導体の断面形状を維持しながら、前記扁平撚線導体の外面と、前記絶縁被覆部の内面とが相対移動し、前記扁平撚線導体を構成する前記素線同士が相対移動して扇状に解け、曲げ内側と曲げ外側との経路差を吸収し、曲げ方向に対して立ち上がることがなく、フラットな状態が維持される扁平電線であることを特徴とする。
【0012】
上記素線は、円形素線のみならず略角形状の素線を含むとともに、銅製、銅合金製、アルミ製あるいはアルミ合金製など導電性に優れた素線を含むものとする。
上記断面略長方形状は、例えば楕円形、長円形、平角形などに撚り合わされた素線を圧縮成形によって形成した断面略長方形状、素線を撚り合わせて形成した断面略長方形状、あるいは、概ね断面略長方形状に撚り合わされた素線に対して圧縮成形によって所望の形状に形成した断面略長方形状とすることができる。
【0013】
上記絶縁被覆部は、前記扁平電線のエッジワイズの可撓性を担保するように、扁平撚線導体の外面と前記絶縁被覆部の内面とが相対移動可能に構成される絶縁被覆であれば、押出成形、熱収縮チューブ被覆、焼付け、電着、蒸着、ラミネート被覆など一般的な被覆方法で被覆する絶縁被覆部を含むものとする。
【0014】
上述の複数の素線が一方向に一括で周状に撚り合わされて、外面が凹凸形状となる、断面略長方形状の扁平撚線導体は、扁平撚線導体を構成する複数の素線同士が相対移動可能である。すなわち、撚り合わされた素線同士が固着されず、相互に相対移動可能な状態である。また、上述のように、扁平電線のエッジワイズの可撓性を担保するように絶縁被覆部が設けられる。例えば、前記絶縁被覆部の内面を前記扁平撚線導体の外面より大きく形成したり、境界部分に摺動可能な別部材を介在させたりすることなどによって、撚り合わされた素線間に絶縁被覆部が食い込んだり、上述の前記扁平撚線導体の外面に前記絶縁被覆部が固着したりしない状態となる。
この発明により、エッジワイズの可撓性を向上することができる。
【0015】
詳述すると、この発明の扁平電線は、放熱性が高い断面略長方形状に、一方向に一括で周状に撚り合わされて扁平撚線導体を構成する複数の素線同士は断面略扁平状に撚り合わされることで相対移動可能であるとともに、前記扁平電線のエッジワイズの可撓性を担保するように、前記絶縁被覆部の内面を、外面が凹凸形状である前記扁平撚線導体における凸部を結ぶ外形線よりわずかに大きく、撚り合わされた前記複数の素線の間に食い込まない平滑面で構成し、該扁平撚線導体を被覆する絶縁被覆部の内面と前記扁平撚線導体の外面とが相対移動可能であるため、エッジワイズに扁平電線を曲げた場合に生じる曲げ内側と曲げ外側との経路差に対して、扁平電線が立ち上がるようにねじれることがなく、前記複数の素線同士、及び前記扁平撚線導体の外面と前記絶縁被覆部の内面とが相対移動して、エッジワイズの可撓性を向上することができる。
【0016】
したがって、本発明の扁平電線は、配索空間の省スペース化及び配索性を向上することができる。また、同じ導体断面積の円形断面の電線と比較して表面積が大きく、放熱性が高いため、高電圧用の電力線や配線用電線として用いることもできる。
また、前記扁平撚線導体を、二層構造であるため、エッジワイズの可撓性をより高めることができる。
【0017】
この発明の態様として、前記扁平撚線導体は、扁平率(幅/厚さ)が8~15であってもよい。
この発明の態様として、前記扁平撚線導体は、0.1~2.0mmの径で構成された、20~500本の素線を、30mm~500mmの撚りピッチで一方向に撚り合わせて構成されてもよい。
【0018】
この発明の態様として、前記扁平撚線導体の端部に接続端子を装着することができる。
この発明により、配索空間の省スペース化及び配索性を向上する効果を有しつつ、接続端子を介して、電気回路に接続することができる。
【0019】
一般的には、接続端子が装着された扁平電線は、接続端子によって、前記扁平撚線導体と前記絶縁被覆部とが固定されるため、曲げ外側と曲げ内側との経路差によるエッジワイズの可撓性の低下がより顕著に表れる。つまりエッジワイズの可撓性が低下するが、この発明の扁平電線は、複数の素線が一方向に一括で周状に撚り合わされて、外面が凹凸形状となる、断面略長方形状の扁平撚線導体を有しており、この扁平撚線導体を構成する複数の素線同士が相対移動するとともに、該扁平撚線導体を被覆する絶縁被覆部の内面と前記扁平撚線導体の外面とが相対移動することによって、扁平電線が立ち上がるようにねじれることがなく、エッジワイズの可撓性の低下を抑制することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記絶縁被覆部の外側に、シールド層及び防水層のうち少なくとも一方を設けることができる。
前記シールド層及び前記防水層は、いずれか一方が前記絶縁被覆部の外側を覆うように配置されてもよいし、前記シールド層及び防水層のうち、前記絶縁被覆部の外側を覆う一方の外側を他方がさらに覆うように配置してもよい。さらには、前記シールド層及び前記防水層を前記絶縁被覆部と一体化して設けてもよい。
【0021】
この発明により、エッジワイズの優れた可撓性を有するとともに、シールド性及び防水性の少なくとも一方を備えた扁平電線を構成することができ、汎用性や用途を拡大することができる。また、扁平電線に対して、別途、シールド部材や防水部材を設ける必要がない。
【0022】
またこの発明は、上述の扁平電線が複数集束されたワイヤーハーネスであることを特徴とする。
この発明により、エッジワイズの可撓性を有するワイヤーハーネスを構成することができる。また、同じ導体断面積の円形断面の電線と比較して表面積が大きく、放熱性が高いため、高電圧用のワイヤーハーネスや配線用電線として用いることもできる。
【0023】
またこの発明の態様として、長手方向の少なくとも一部において、複数の前記扁平電線が断面の長辺方向に配置されていてもよいし、また、長手方向の少なくとも一部において、複数の前記扁平電線が断面の短辺方向に配置されていてもよく、さらには、長手方向の一部において、複数の前記扁平電線が断面の長辺方向に配置されるとともに、前記長手方向における前記一部とは異なる部分において、複数の前記扁平電線が断面の短辺方向に配置されていてもよい。
これらの発明により、エッジワイズの可撓性を損なうことなく、複数の扁平電線を備えたワイヤーハーネスを、用途や仕様に応じた様々な態様で構成することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、シールド層及び防水層のうち少なくとも一方を、複数の扁平電線で構成されるワイヤーハーネスの外側に設けることができる。
この発明により、エッジワイズの優れた可撓性を有するとともに、シールド性及び防水性の少なくとも一方を備えたワイヤーハーネスを構成することができ、汎用性や用途を拡大することができる。
【0025】
なお、各扁平電線に対して、個々にシールド層及び防水層のうち少なくとも一方を外側に設ける場合に比べて、複数の扁平電線で構成するワイヤーハーネスに対して一括でシールド層及び防水層のうち少なくとも一方を外側に設けるため、シールド層や防水層を設けるコストや手間を軽減することができる。
【0026】
またこの発明は、撚線機のサプライボビンから供給された複数の素線を、一方向に一括で周状に、かつ断面略長方形状に撚り合わせて、前記複数の素線が相互に相対移動可能となるように、二層構造であるとともに、外面が凹凸形状となる扁平撚線導体を形成し、前記扁平撚線導体の外面に対して、相対移動可能に絶縁被覆で被覆し、正面視断面における前記絶縁被覆部の内面を、外面が凹凸形状である前記扁平撚線導体における凸部を結ぶ外形線よりわずかに大きく、撚り合わされた前記複数の素線の間に食い込まない平滑面で構成し、前記絶縁被覆部を、曲げられる前記扁平撚線導体の断面形状を維持するように前記扁平撚線導体を被覆する略長方形状に構成するとともに、断面の長辺方向に沿うエッジワイズに曲げた状態で、前記絶縁被覆部が曲げられる前記扁平撚線導体の断面形状を維持しながら、前記扁平撚線導体の外面と、前記絶縁被覆部の内面とが相対移動し、前記扁平撚線導体を構成する前記素線同士が相対移動して扇状に解け、曲げ内側と曲げ外側との経路差を吸収し、曲げ方向に対して立ち上がることがなく、フラットな状態が維持されるように構成する扁平電線の製造方法であることを特徴とする。
この発明により、エッジワイズの可撓性を向上できる扁平電線を構成することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、撚り合わせた複数の素線を圧縮成形して、所望の断面略長方形状に形成することができる。
この発明により、精度よく所望の断面略長方形状に形成できるため、所望の放熱性及び可撓性を有する扁平電線を確実に構成することができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、エッジワイズの可撓性が優れた扁平電線、ワイヤーハーネス及び扁平電線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】扁平電線の斜視図。
図2】扁平電線のエッジワイズの曲げについての説明図。
図3】扁平電線の製造装置の構成図。
図4】製造装置におけるマンドレルの概略構成図。
図5】角型ワイヤーハーネスの斜視図。
図6】断面変形ワイヤーハーネスの概略斜視図。
図7】断面変形ワイヤーハーネスの説明図。
図8】別の実施形態の角型ワイヤーハーネスの斜視図。
図9】平編組線を絶縁被覆で被覆して、編組導体で構成した従来のフラット電線の斜視図。
図10】エッジワイズに曲げた従来のワイヤーハーネスの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は扁平電線1の斜視図を示し、図2は扁平電線1のエッジワイズの曲げについての説明図を示している。詳しくは、図2(a)は扁平電線1の断面図を示し、図2(b)は扁平電線1を構成する扁平撚線導体2のエッジワイズの曲げについて説明するための平面図を示し、図2(c)はエッジワイズに曲げられた扁平撚線導体2についての平面図を示している。
【0031】
なお、図1において絶縁被覆部4を透過状態で図示しており、図2(a)においては、絶縁被覆部4を透過状態で図示するとともに、扁平撚線導体2の仮想の外形線Lを図示している。また、図2(b)、(c)において、絶縁被覆部4の図示を省略している。
また、図3は扁平電線1の製造装置100の構成図を示し、図4は製造装置100におけるマンドレル120の概略構成図を示している。
【0032】
図5は角型ワイヤーハーネス10の斜視図を示し、図6は断面変形ワイヤーハーネス20の概略斜視図を示し、図7は断面変形ワイヤーハーネス20の説明図を示している。詳述すると、図6は、断面変形ワイヤーハーネス20の概略斜視図において円形断面部20aと扁平断面部20bの断面図も図示している。図7(a)は断面変形ワイヤーハーネス20における円形断面部20aの断面図を示し、図7(b)は断面変形ワイヤーハーネス20における扁平断面部20bの断面図を示し、図7(c)は、断面変形ワイヤーハーネス20における円形断面部20aと扁平断面部20bとの位置を説明する概略平面図を示している。
【0033】
扁平電線1は、複数の素線3を一方向に一括で周状に撚り合わせた扁平撚線導体2と、扁平撚線導体2の外側を被覆する絶縁被覆部4とで構成されている。
扁平撚線導体2は、後述する製造装置100を用いた製造方法によって複数の素線3が相対移動可能に撚り合わされ、正面視断面略長方形状に構成されている。
【0034】
絶縁被覆部4は、押出成形によって形成され、扁平撚線導体2の外面2aと絶縁被覆部4の内面4aとが相対移動可能に構成された架橋ポリエチレン樹脂による被覆である。ここで、扁平電線1が曲げられた際の扁平撚線導体2の断面形状を維持するため、扁平撚線導体2を被覆する絶縁被覆部4の正面視断面は略長方形状に構成される。
【0035】
具体的には、複数の円形断面の素線3を一括して、一方向且つ周状に撚り合わせて、断面略長方形状に構成した扁平撚線導体2の外面2aは、素線3の外形によって凹凸形状となるが、絶縁被覆部4の内面4aは、凹凸形状の扁平撚線導体2における凸部を結ぶ外形線L(図2(a)参照)よりわずかに大きな平滑面で構成されている。
【0036】
また、扁平撚線導体2は、製造装置100によって、断面円形のタフピッチ銅製の素線3を複数本一括して、撚りピッチpで概ね断面略長方形状に、一方向且つ周状に撚り合わせるとともに、圧縮成形によって所望の断面略長方形に形成している。なお、図1および図2において、扁平撚線導体2は二層構造となっており、Rはエッジワイズの設定曲げ半径である。
【0037】
より具体的には、0.1~2.0mm程度の径で構成された、20~500本程度の素線3を、30mm~500mmの撚りピッチpで一方向に撚り合わせて、扁平断面状の扁平撚線導体2を構成している。また、扁平撚線導体2は、電流容量や被覆材料、使用熱環境にもよるが、直流130Aを導電する場合、扁平率(電線の幅/厚さ)は8~15程度、導体断面積は8mm~12mmが望ましい。
【0038】
扁平撚線導体2を製造する製造装置100は、図3に示すように、素線3を一方向に撚り合わせて撚り合せ素線3aを構成する撚線機110と、撚り合せ素線3aを圧縮成形する圧縮ロール部130と、扁平撚線導体2を巻き取るキャプスタン140とで構成している。
【0039】
撚線機110は、素線3を供給するサプライボビン111と、サプライボビン111から供給された素線3を撚り合わせるマンドレル120とで構成している。なお、扁平撚線導体2を構成する素線3の本数に応じた数分のサプライボビン111が備えられている
【0040】
マンドレル120は、図4に示すように、円盤状の目板121と、撚り合せ主軸122とで構成されている。目板121には、扁平撚線導体2を構成する素線3の本数に応じた数の通過孔121aが外周縁近傍に等間隔で配置されている。
撚り合せ主軸122は、目板121の中心より、製造装置100の下流に向かって配設されており、基端側は断面円形であるが、先端扁平部122aに向かって徐々に断面扁平状に変化している。
【0041】
圧縮ロール部130は、撚線機110で撚り合わされた撚り合せ素線3aを挟み込むように対向配置された二つのローラ131で構成されている。
キャプスタン140は、圧縮ロール部130で圧縮成形した扁平撚線導体2を、下流側に送り出す大小の送り出しローラ141,142と、下流に配置した巻き取りボビン150とで構成している。
【0042】
このように構成した製造装置100では、マンドレル120とともに回転するサプライボビン111から素線3をマンドレル120に供給し、供給された複数の素線3は、目板121の通過孔121aを通り、撚り合せ主軸122に巻き取られて撚り合わされ、先端扁平部122aから撚り合せ素線3aとして、下流側に繰り出される。このとき、撚り合せ主軸122の先端扁平部122aが扁平断面状であるため、撚り合せ素線3aも断面略扁平状となる。
【0043】
下流側に繰り出された、断面略扁平状の撚り合せ素線3aは、圧縮ロール部130においてローラ131同士の間を通過することで圧縮成形されて、所望の扁平断面形状の扁平撚線導体2となる。
圧縮ロール部130で所望の断面形状に加工された扁平撚線導体2は、キャプスタン140で送り出されて、回転する巻き取りボビン150に巻き取られる。そして、巻き取りボビン150から巻き解いた扁平撚線導体2に対して、上述の絶縁被覆部4を押出成形して扁平電線1を製造することができる。
【0044】
このように、製造装置100は、複数の素線3を撚り合わせて撚り合せ素線3aを成形する撚り合せ成形加工と、撚り合せ素線3aを圧縮成形して扁平撚線導体2を製造する圧縮成形加工とを一連の流れの中で行うことができる。
【0045】
なお、扁平撚線導体2を所望の扁平形状に圧縮成形するための圧縮成形手段として圧縮ロール部130について記載したが、例えば、ダイスに、撚り合せ素線3aを通過させて扁平撚線導体2を製造してもよい。
【0046】
上述したように、製造装置100で製造された扁平撚線導体2の外面2aより絶縁被覆部4の内面4aが大きく形成され、撚り合わされた素線3の間に絶縁被覆部4が食い込まない扁平電線1は、優れた放熱性を有するとともに、エッジワイズ(図2において矢印Ewで示す)の可撓性を向上することができる。
【0047】
詳述すると、エッジワイズに扁平電線1を曲げた場合に曲げ内側と曲げ外側とで経路差が生じるが、放熱性が高い断面略長方形状に撚り合わされた扁平撚線導体2を構成する複数の素線3同士が相対移動可能であるとともに、扁平撚線導体2を被覆する絶縁被覆部4の内面4aと扁平撚線導体2の外面2aとが相対移動可能であるため、図2(c)に示すように、扁平撚線導体2は、素線3同士が相対移動して扇状に解けることで、上述の経路差を吸収でき、エッジワイズの可撓性を向上することができる。
【0048】
したがって、図9に示すように、従来のフラット電線をエッジワイズに曲げた際に、曲げ方向に対して立ち上がることがなく、フラットな状態を維持して曲げることができ、厚み方向のスペースが狭い配索経路であっても、素線3が損傷することなく配索することができる。つまり、扁平電線1は、配索空間の省スペース化及び配索性の向上を実現することができる。
【0049】
また、複数本の素線3を、一括して撚りピッチpで一方向且つ周状に撚り合わせて扁平撚線導体2を構成しているため、扁平電線1は、設定されるエッジワイズの曲げに対する優れた可撓性と、扁平撚線導体2における断面形状の保持性とを両立することができる。
【0050】
なお、このように構成された扁平電線1の両端に、図示省略する接続端子を接続してもよい。具体的は、図示省略する接続端子は、他の端子と接続する接続部と、扁平電線1と接続する電線接続部とで構成され、電線接続部は、扁平電線1の扁平撚線導体2を接続する導体接続部を備えている。
ここで、電線接続部は、扁平電線の絶縁被覆部4を圧縮固定する被覆固定部を備えていてもよい。また、接続端子と扁平電線1との接続は、圧着、溶接等の技術を、要求性能に応じて適用可能である。
【0051】
このように、接続端子が両端に設けられた扁平電線1は、接続端子を介して、電気回路に接続することができる。
なお、接続端子が装着された扁平電線1は、接続端子によって、扁平撚線導体2が固定されるため、曲げ外側と曲げ内側との経路差によるエッジワイズの可撓性の低下がより顕著に表れるが、断面略長方形状に撚り合わされて扁平撚線導体2を構成する複数の素線3同士が相対移動するとともに、扁平撚線導体2を被覆する絶縁被覆部4の内面4aと扁平撚線導体2の外面2aとが相対移動することによって、エッジワイズの可撓性の低下を抑制することができる。また、扁平電線1は、同じ導体断面積の円形断面の電線と比較して表面積が大きく、放熱性が高いため、高電圧用の電力線や配線用電線として用いることもできる。
【0052】
また、扁平電線1における絶縁被覆部4の外側に、後述するシールド層5や防水プロテクタ層6を設けてもよい。このように、扁平電線1における絶縁被覆部4の外側に、後述するシールド層5や防水プロテクタ層6を設けることにより、エッジワイズの優れた可撓性を有するとともに、シールド性及び防水性の少なくとも一方を備えた扁平電線1を構成することができ、扁平電線1の汎用性や用途を拡大することができる。なお、扁平電線1における絶縁被覆部4の外側に、シールド層5と防水プロテクタ層6とを一体構成して設けてもよい。
【0053】
続いて、扁平電線1を集束して構成したワイヤーハーネスについて説明する。
角型ワイヤーハーネス10は、図5に示すように、積層した2本の扁平電線1と、2本の扁平電線1をまとめて囲繞するシールド層5と、シールド層5の外側を囲繞する防水プロテクタ層6とで構成した扁平断面形のワイヤーハーネスである。
【0054】
シールド層5は、金属箔や金属シート、金属編組等を巻き付けて構成し、防水プロテクタ層6は、防水性樹脂で構成され、シールド層5の外側に適宜の方法で装着される。
なお、角型ワイヤーハーネス10を構成する扁平電線1としては、上述の構成であってもよいが、素線3の径を0.1mm~0.3mm程度に細くし、撚本数を20~40本程度と少なくすることで、さらにワイヤーハーネスとしての可撓性を向上することができる。また、シールド層5は、導電性物質で構成されていればよく、要求特性に応じて、導電性樹脂シートの配置、扁平電線上のメッキまたは溶射などによる金属層の配置、カーボンコートの配置などを行うことができる。
【0055】
また、扁平電線1同士の間に間隔cを設けることで、角型ワイヤーハーネス10の放熱性を向上することができる。具体的には、2本の12mm相当(厚さ1mm×幅12mm)の扁平撚線導体2に130Aの直流電流を流す場合は、扁平電線1の扁平撚線導体2同士の間に2mm以上の間隔cを設けることがより好ましい。
【0056】
このように、2本の扁平電線1を積層して構成する角型ワイヤーハーネス10は、上述したような、エッジワイズの可撓性の向上をはじめとする扁平電線1による効果を奏するとともに、シールド効果及び防水効果を奏することができる。
【0057】
また、扁平電線1自体が優れた可撓性を有しているため、例えば、編組線のように編みこまれた高価なシールド材を用いることなく、優れた可撓性とシールド性を兼ね備えることができる。また、防水プロテクタ層6を備えているため、扁平電線1に対して、別途プロテクタを装着する必要もない。
【0058】
また、各扁平電線1に対して、個々にシールド層5や防水プロテクタ層6を設ける場合に比べて、複数の扁平電線1で構成するワイヤーハーネス10に対して一括でシールド層5及び防水プロテクタ層6を設けるため、コストや手間を軽減することができる。
さらに、角型ワイヤーハーネス10は、放熱性に優れているため、例えば、3相交流モータとインバータ間を接続するような高圧用のワイヤーハーネスや配線用電線として用いることもできる。
【0059】
なお、上述の説明では、シールド層5と防水プロテクタ層6とを別途設けたが、シールド性と防水性を兼ね備えたシールド防水層を設けてもよいし、厚さ方向に配置した複数本の扁平電線1をまとめて囲繞する防水プロテクタ層6の外側にシールド層5を設けてもよい。
【0060】
次に、複数本の扁平電線1を備えるとともに、断面が円形及び扁平形である断面変形ワイヤーハーネス20について、図6及び図7とともに説明する。
図6及び図7に示すように、断面変形ワイヤーハーネス20は、3本の扁平電線1を備えるとともに、円形断面の円形断面部20aと、扁平断面の扁平断面部20bとで構成されている。
【0061】
円形断面部20aは、3本の扁平電線1を厚さ方向に配置するとともに、3本の扁平電線1をまとめてシールド層5で囲繞するとともに、シールド層5の外側に防水プロテクタ層6を配置して構成している。
【0062】
扁平断面部20bは、3本の扁平電線1を幅方向に配置するとともに、配置した3本の扁平電線1をまとめてシールド層5で囲繞するとともに、シールド層5の外側に防水プロテクタ層6を配置して構成している。
【0063】
円形断面部20aにおいては、放熱性を確保するため、およそ2mm程度の間隔cを隔てて3本の扁平電線1を厚さ方向に配置し、扁平断面部20bにおいても、およそ2mm程度の間隔cを隔てて3本の扁平電線1を幅方向に配置している。
【0064】
なお、このように円形断面部20a及び扁平断面部20bを有する断面変形ワイヤーハーネス20は、円形断面部20aから扁平断面部20b、逆に、扁平断面部20bから円形断面部20aに向かって徐々に断面が変化するように構成している。詳述すると、例えば、円形断面部20aから扁平断面部20bへの移行については、厚さ方向に配置した扁平電線1が、扁平断面部20bに向かって徐々に幅方向に移動して、3本の扁平電線1が幅方向に配置される。
【0065】
このように、円形断面部20a及び扁平断面部20bを有する断面変形ワイヤーハーネス20は、上述したような、エッジワイズの可撓性の向上をはじめとする扁平電線1による効果、及び角型ワイヤーハーネス10におけるシールド効果及び防水効果に加え、用途や仕様に応じた様々な態様で構成することができる。
【0066】
例えば、図7(c)に示すように、配索経路における直線部分を扁平断面部20bで構成し、屈曲部分を円形断面部20aで構成するように配索することで、車体下の床下を配索する扁平断面部20bで電線高さ方向の省スペース化を実現し、屈曲部に配索する円形断面部20aは曲げ塑性加工に耐えうる強度を保持することができる。
【0067】
さらには、床下における排気管との隙間など高さ方向が狭隘な配索空間に扁平断面部20bを配索し、制限のない他の配索空間に円形断面部20aを配索することもできる。この場合、エッジワイズの可撓性が高い扁平電線1を幅方向に配列配置した扁平断面部20bは、従来のフラット電線をエッジワイズに曲げる場合のように、曲げに対して捩じれて立ち上がることがなく、高さ方向が狭隘な配索空間であっても、扁平電線1を構成する素線3が損傷したりすることなく、所望の配索経路で配索することができる。
【0068】
したがって、放熱性に優れている断面変形ワイヤーハーネス20は、様々な配索経路において、それぞれに応じた態様で構成されるとともに、例えば、3相交流モータとインバータ間を接続するような高圧用のワイヤーハーネスや配線用電線として用いることもできる。
【0069】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のワイヤーハーネスは角型ワイヤーハーネス10、10a,断面変形ワイヤーハーネス20に対応し、
扁平電線の断面の短辺方向は厚さ方向に対応し、
扁平電線の断面の長辺方向は幅方向に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0070】
例えば、扁平撚線導体2の例として、二層構造の例を示しているが、エッジワイズの可撓性を有するものであれば、二層構造に限られない。
また、例えば、図8に示すように、扁平撚線導体2の外面2aに絶縁被覆部4が食い込まないように、扁平撚線導体2の外側を覆う、囲繞体として機能する囲繞箔7を設けた扁平電線1aを用いて角型ワイヤーハーネス10aを構成してもよい。これにより、複数の素線3を一括して、一方向且つ周状に撚り合わせて構成した扁平撚線導体2の外面2aに絶縁被覆部4が食い込むことがなく、つまり、扁平撚線導体2と絶縁被覆部4との縁切りがされるため、素線3同士の相対移動及び扁平撚線導体2と絶縁被覆部4との相対移動を確保することができる。
【0071】
また、例えば、扁平撚線導体2の外側に蒸着や溶射などの方法で絶縁被覆部4を形成しても、扁平撚線導体2と絶縁被覆部4とが囲繞箔7によって縁切りされるため、扁平撚線導体2の外面2aに絶縁被覆部4が食い込むことなく、素線3同士の相対移動及び扁平撚線導体2と絶縁被覆部4との相対移動を確保することができる。つまり、囲繞箔7により、素線3同士の相対移動及び扁平撚線導体2と絶縁被覆部4との相対移動を確保できる絶縁被覆部4の形成方法の選択肢を拡大することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…扁平電線
2…扁平撚線導体
2a…外面
3…素線
4…絶縁被覆部
4a…内面
5…シールド層
6…防水プロテクタ層
7…囲繞箔
10,10a…角型ワイヤーハーネス
20…断面変形ワイヤーハーネス
110…撚線機
111…サプライボビン
p…撚りピッチ
R…設定曲げ半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10