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特許7316996マルチコアファイバ及びその製造方法、並びに光伝送システム及び光伝送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ及びその製造方法、並びに光伝送システム及び光伝送方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20230721BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20230721BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20230721BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G02B6/02 461
G02B6/02 466
G02B6/036
C03B37/012 A
H04J14/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020503588
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007639
(87)【国際公開番号】W WO2019168054
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018034619
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武笠 和則
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075061(JP,A)
【文献】特開2013-212955(JP,A)
【文献】特開平07-109141(JP,A)
【文献】米国特許第06611648(US,B2)
【文献】特開2014-152045(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035347(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0180743(US,A1)
【文献】特開2013-167861(JP,A)
【文献】特開2013-092801(JP,A)
【文献】GONDA et al.,125μm 5-core fibre with heterogeneous design suitable for migration from single-core system to multi-core system,42ND EUROPEAN CONFERENCE AND EXHIBITION ON OPTICAL COMMUNICATIONS, ECOC 2016,2016年09月18日,pages 547 - 549
【文献】GONDA et al.,Design of Multicore Fiber Having Upgradability From Standard Single-Mode Fibers and Its Application,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,IEEE,2019年01月15日,Vol. 37, No. 2,pp. 396 - 403,doi:10.1109/JLT.2019.2895903
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00-37/16
G02B 6/02-6/036
JSTPlus/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコア部と、
前記複数のコア部の外周に形成されたクラッド部と、
を備え、
前記複数のコア部のそれぞれは、光の伝搬特性に関する複数の標準規格のいずれか一つに適合する伝搬特性を有しており、
前記複数のコア部のうち最も距離が近いコア部同士は、適合する標準規格が互いに異なり、
前記複数のコア部は最も距離が近い少なくとも2つのコア部を有し、
前記最も距離が近いコア部同士は、一方のコア部がG.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有し、他方のコア部がG.654規格に適合する伝搬特性を有し、
前記伝搬特性は、カットオフ波長、モードフィールド径、およびマクロベンド損失である
ことを特徴とするマルチコアファイバ。
【請求項2】
前記一方のコア部及び前記クラッド部と前記他方のコア部及び前記クラッド部とは、ステップ型又はトレンチ型の屈折率プロファイルであって、前記屈折率プロファイルを規定するパラメータが、前記ステップ型では前記コア部の比屈折率差をΔ1、前記コア部の直径を2aとし、前記トレンチ型では前記コア部の比屈折率差をΔ1、前記クラッド部のトレンチ層の比屈折率差をΔ3、前記コア部の直径を2a、前記トレンチ層の内径を2b、前記トレンチ層の外径を2cとし、コア径を除いて、ステップ型同士では前記Δ1が等しく、トレンチ型同士では前記Δ1、前記Δ3、b/a、c/aが等しい
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
最小クラッド厚が30μm~50μmの範囲にある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
前記最も距離が近いコア部同士の距離が12.5μm~32.5μmの範囲にある
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
光の伝搬特性に関する複数の標準規格のいずれか一つに適合する伝搬特性を有するコア部を作製するためのコア母材であって、適合する標準規格が互いに異なるコア母材を複数準備する準備工程と、
前記複数のコア母材を用いて光ファイバ母材を作製する光ファイバ母材作製工程と、
前記光ファイバ母材を線引きしてマルチコアファイバを作製するマルチコアファイバ作製工程と、を含み、
前記準備工程において、ITU-TによるG.654規格に適合する伝搬特性を有するコア部を作製するための第1規格用コア母材を準備し、前記第1規格用コア母材を延伸することによって、ITU-TによるG.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有するコア部を作製するための第2規格用コア母材を準備し、
前記ITU-TによるG.654規格に適合する伝搬特性を有するコア部および前記ITU-TによるG.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有するコア部はステップ型又はトレンチ型の屈折率プロファイルであって、前記屈折率プロファイルを規定するパラメータが、前記ステップ型では前記コア部の比屈折率差をΔ1、前記コア部の直径を2aとし、前記トレンチ型では前記コア部の比屈折率差をΔ1、クラッド部のトレンチ層の比屈折率差をΔ3、前記コア部の直径を2a、前記トレンチ層の内径を2b、前記トレンチ層の外径を2cとし、コア径を除いて、ステップ型同士では前記Δ1が等しく、トレンチ型同士では前記Δ1、b/a、c/aが等しい
ことを特徴とするマルチコアファイバの製造方法。
【請求項6】
前記光ファイバ母材作製工程において、ガラスロッドに、前記第1規格用コア母材の外径に応じた内径を有する第1空孔と、前記第2規格用コア母材の外径に応じた内径を有する第2空孔とを穿孔し、前記第1空孔に前記第1規格用コア母材を挿入し、前記第2空孔に前記第2規格用コア母材を挿入する
ことを特徴とする請求項に記載のマルチコアファイバの製造方法。
【請求項7】
前記光ファイバ母材作製工程又は前記マルチコアファイバ作製工程において、前記ガラスロッドと前記第1規格用コア母材及び前記第2規格用コア母材とを加熱して一体化する
ことを特徴とする請求項に記載のマルチコアファイバの製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一つに記載のマルチコアファイバと、
前記マルチコアファイバのコア部の少なくとも一つに信号光を入力する光送信装置と、
前記マルチコアファイバを伝搬した前記信号光を受信する光受信装置と、を備える
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項9】
前記光送信装置は、G.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有するコア部に、波長が1260nm以上の複数の信号光を波長多重したCWDM信号光を入力し、G.654規格に適合する伝搬特性を有するコア部に、波長が1530nm以上の複数の信号光を波長多重したDWDM信号光を入力する
ことを特徴とする請求項に記載の光伝送システム。
【請求項10】
前記光送信装置及び前記光受信装置は、双方向伝送が可能に構成されている
ことを特徴とする請求項又はに記載の光伝送システム。
【請求項11】
請求項に記載の光伝送システムを用いた光伝送方法であって、
G.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有するコア部を用いて、波長が1260nm以上の複数の信号光を波長多重したCWDM信号光によるCWDM光伝送を行い、G.654規格に適合する伝搬特性を有するコア部を用いて、波長が1530nm以上の複数の信号光を波長多重したDWDM信号光によるDWDM光伝送を行う
ことを特徴とする光伝送方法。
【請求項12】
請求項又はに記載の光伝送システムを用いた光伝送方法であって、
双方向光伝送を行う
ことを特徴とする光伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバ及びその製造方法、並びに光伝送システム及び光伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチコアファイバにおいて、伝搬屈折率がそれぞれ異なる異種コア部を用いることによって空間多重数及び空間密度を増大させる検討が盛んに行われてきた(特許文献1、非特許文献1)。例えば、非特許文献1では、外径が228μmのクラッド部の中に30個のコア部を高密度に配置した結果が報告がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/027776号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Y. Amma et al.、 “High-density Multi-core Fiber with Heterogeneous Core Arrangement” OFC 2015、 paper Th4C.4、 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバに対しては、光の伝搬特性やその他の特性に関する標準規格が定められている。例えば、世界的に広く受け入れられている標準規格として、ITU-T(国際電気通信連合)勧告による規格がある。
【0006】
異種コア部を用いたマルチコアファイバ(以下、適宜、異種マルチコアファイバと記載する)についても、標準規格に適合することで汎用性が高まり、実使用上好ましい。しかし、従来、異種マルチコアファイバの標準規格への適合性については、必ずしも十分に検討されていなかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、汎用性が高く、空間密度を増大できるマルチコアファイバ及びその製造方法、並びに光伝送システム及び光伝送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、複数のコア部と、前記複数のコア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記複数のコア部のそれぞれは、光の伝搬特性に関する複数の標準規格のいずれか一つに適合する伝搬特性を有しており、前記複数のコア部のうち最も距離が近いコア部同士は、適合する標準規格が互いに異なることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、前記複数の標準規格は、ITU-TによるG.652規格、G.657A規格及びG.654規格を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、前記最も距離が近いコア部同士は、一方のコア部がG.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有し、他方のコア部がG.654規格に適合する伝搬特性を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、前記伝搬特性は、カットオフ波長、モードフィールド径、マクロベンド損失及び波長分散特性の少なくとも一つであることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、前記一方のコア部及び前記クラッド部と前記他方のコア部及び前記クラッド部とは、屈折率プロファイルを規定するパラメータが、コア径を除いて等しいことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、前記屈折率プロファイルは、ステップ型又はトレンチ型であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、クラッド厚が30μm~50μmの範囲にあることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、前記最も距離が近いコア部同士の距離が12.5μm~32.5μmの範囲にあることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバの製造方法は、光の伝搬特性に関する複数の標準規格のいずれか一つに適合する伝搬特性を有するコア部を作製するためのコア母材であって、適合する標準規格が互いに異なるコア母材を複数準備する準備工程と、前記複数のコア母材を用いて光ファイバ母材を作製する光ファイバ母材作製工程と、前記光ファイバ母材を線引きしてマルチコアファイバを作製するマルチコアファイバ作製工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバの製造方法は、前記準備工程において、ITU-TによるG.654規格に適合する伝搬特性を有するコア部を作製するための第1規格用コア母材を準備し、前記第1規格用コア母材を延伸することによって、ITU-TによるG.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有するコア部を作製するための第2規格用コア母材を準備することを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバの製造方法は、前記光ファイバ母材作製工程において、ガラスロッドに、前記第1規格用コア母材の外径に応じた内径を有する第1空孔と、前記第2規格用コア母材の外径に応じた内径を有する第2空孔とを穿孔し、前記第1空孔に前記第1規格用コア母材を挿入し、前記第2空孔に前記第2規格用コア母材を挿入することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバの製造方法は、前記光ファイバ母材作製工程又は前記マルチコアファイバ作製工程において、前記ガラスロッドと前記第1規格用コア母材及び前記第2規格用コア母材とを加熱して一体化することを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る光伝送システムは、前記マルチコアファイバと、前記マルチコアファイバのコア部の少なくとも一つに信号光を入力する光送信装置と、前記マルチコアファイバを伝搬した前記信号光を受信する光受信装置と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る光伝送システムは、前記光送信装置は、G.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有するコア部に、波長が1260nm以上の複数の信号光を波長多重したCWDM信号光を入力し、G.654規格に適合する伝搬特性を有するコア部に、波長が1530nm以上の複数の信号光を波長多重したDWDM信号光を入力することを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様に係る光伝送システムは、前記光送信装置及び前記光受信装置は、双方向伝送が可能に構成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様に係る光伝送方法は、前記光伝送システムを用いた光伝送方法であって、G.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有するコア部を用いて、波長が1260nm以上の複数の信号光を波長多重したCWDM信号光によるCWDM光伝送を行い、G.654規格に適合する伝搬特性を有するコア部を用いて、波長が1530nm以上の複数の信号光を波長多重したDWDM信号光によるDWDM光伝送を行うことを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様に係る光伝送方法は、前記光伝送システムを用いた光伝送方法であって、双方向光伝送を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれは、汎用性が高く、空間密度を増大できるマルチコアファイバを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態1に係るマルチコアファイバの模式的断面図である。
図2図2は、屈折率プロファイルの一例であるステップ型プロファイルを示す図である。
図3図3は、屈折率プロファイルの一例であるトレンチ型プロファイルを示す図である。
図4図4は、λccと必要クラッド厚との関係を示す図である。
図5図5は、マルチコアファイバの外径(クラッド径)、クラッド厚、最小クラッド厚、及び最も近いコア部同士の距離を示す図である。
図6図6は、マルチコアファイバの製造フローの一例を示す図である。
図7図7は、コアコア母材の準備工程の一例を説明する図である。
図8図8は、光ファイバ母材作製工程の一例を説明する図である。
図9図9は、光ファイバ母材作製工程の一例を説明する図である。
図10図10は、実施形態2に係るマルチコアファイバの模式的断面図である。
図11図11は、実施形態3に係るマルチコアファイバの模式的断面図である。
図12図12は、実施形態4に係る光伝送システムの模式的構成図である。
図13図13は、実施形態5に係る光伝送システムの模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一又は対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、本明細書においては、カットオフ波長とは、ITU-T G.650.1で定義するケーブルカットオフ波長をいう。また、その他、本明細書で特に定義しない用語についてはITU-T G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。
【0028】
本発明者は、異種マルチコアファイバの空間密度の増大と標準規格への適合性について鋭意検討した。その結果、ある一つの標準規格に適合する条件下において全ての異種コア部を設計すると、異種コア部間に十分な伝搬屈折率差を設けることができず、光のクロストークを許容量に収めようとすると、空間密度の増大に制約が掛かることを見出した。
【0029】
そこで、本発明者は、鋭意検討の結果、複数のコア部のそれぞれを、光の伝搬特性に関する複数の標準規格のいずれか一つに適合する伝搬特性を有するものとするとともに、最も距離が近いコア部同士については適合する標準規格が互いに異なるものとすることに想到した。これによって、十分に伝搬屈折率差があり、かついずれも標準規格に適合する異種コア部を隣接させることができるので、汎用性が高く、空間密度を増大できるマルチコアファイバを実現できる。
【0030】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な模式的断面図である。マルチコアファイバ10は、複数、具体的には6個のコア部として、3個のコア部11a、3個のコア部11bを備えている。また、マルチコアファイバ10は、コア部11a、11bの外周に形成されたクラッド部12を備えている。
【0031】
コア部11a、11bとクラッド部12とは、いずれも石英系ガラスからなる。クラッド部12は、コア部11a、11bの最大屈折率よりも低い屈折率を有する。例えば、コア部11a、11bは、屈折率を高めるドーパントであるゲルマニウム(Ge)などが添加された石英ガラスからなる。一方、クラッド部12は、例えば屈折率調整用のドーパントを含まない純石英ガラスからなる。
【0032】
コア部11a、11bは、クラッド部12の中心軸の周りに交互に配置され、正六角形状を成している。この配置は、六方最密格子の中心以外の格子点にコア部を配置したものと言える。なお、このようにコア部11a、11bが六方最密格子に配置されていると、マルチコアファイバのコア部に対して光の入出力を行う光入力器・光出力器の一種であるファンイン・ファンアウトを製造しやすい。
【0033】
この配置において、コア部11aに最も近いコア部は、隣接する2つのコア部11bであり、コア部11bに最も近いコア部は、隣接する2つのコア部11aである。これらの最も近いコア部同士の距離(ピッチ)はいずれもdである。なお、コア部11a同士のピッチ及びコア部11b同士のピッチは、いずれも√3×dである。
【0034】
コア部11a、11bは、光の伝搬特性に関する複数の標準規格のいずれか一つに適合する伝搬特性を有している。具体的には、コア部11aは、G.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有している。また、コア部11bは、G.654規格に適合する伝搬特性を有している。
【0035】
表1に示すように、G.652規格にはG.652A規格とG.652B規格とがあり、G.657A規格にはG.657A1規格とG.6527A2規格とがある。また、表2に示すように、G.654規格にはG.654A規格とG.654B規格とG.654C規格とG.654D規格とがある。各規格においては、光の伝搬特性に関して規格が定められている。ここでは、光の伝搬特性とは、特定の波長(1310nm又は1550nm)におけるモードフィールド径(MFD)、ケーブルカットオフ波長(λcc)、マクロベンド損失、波長分散特性(特定の波長(1550nm)における波長分散、ゼロ分散波長、又はゼロ分散波長における分散スロープ)である。なお、マクロベンド損失は、特定の波長(1550nm又は1625nm)及び特定の曲げ半径(30mm又は10mm)において、特定のターン数だけ巻いたときの伝送損失の増加量、又は単位長さ当たりの伝送損失の増加量で規定される。なお、表2中、「A/C」はG.654A規格とG.654C規格とを示す。すなわち、G.654A規格とG.654C規格とは表2に示す伝搬特性に関して共通した規格を定めている。
【0036】
【表1】

【表2】
【0037】
本実施形態1では、全てのコア部11aは、表1に示すG.652A規格の伝搬特性に適合し、全てのコア部11bは、表1に示すG.654A規格の伝搬特性に適合している。これにより、各コア部11a、11bは標準規格に適用する汎用性が高いものとなる。さらに、最も距離が近いコア部11a、11b同士については適合する標準規格が互いに異なる。これにより、コア部11a、11bの互いの屈折率プロファイルを異ならせることができる。その結果、コア部11a、11b同士で十分に伝搬屈折率差を設けることができるので、ピッチを狭くして空間密度を増大できる。
【0038】
コア部11a、11b及びクラッド部12は、これらの規格適合を実現するように屈折率プロファイルに設定されている。設定される屈折率プロファイルは特に限定されないが、例えばステップ型やトレンチ型が、従来よく使用されるものであり、製造性や設計性の観点から好ましい。
【0039】
図2は、コア部の中心軸から半径方向におけるステップ型屈折率プロファイルを示す図である。図2において、プロファイルP11がコア部11a又はコア部11bの屈折率プロファイルを示し、プロファイルP12がクラッド部12の屈折率プロファイルを示す。なお、屈折率プロファイルは、クラッド部12に対する比屈折率差で示している。コア部11a又はコア部11bの直径(コア径)は2aであり、クラッド部12に対するコア部11a又はコア部11bの比屈折率差はΔ1である。ステップ型屈折率プロファイルを規定するパラメータ(以下、適宜プロファイルパラメータと記載する)は、a及びΔ1である。
【0040】
なお、コア部11a又はコア部11bの屈折率プロファイルは、幾何学的に理想的な形状のステップ型である場合だけでなく、頂部の形状が平坦ではなく製造特性により凹凸が形成されたり、頂部から裾を引くような形状となっていたりする場合がある。この場合、製造設計上のコア径2aの範囲内における、屈折率プロファイルの頂部の少なくとも一部(Δ1を決定する頂部の領域の平均値や最大値や最小値等)の値が、Δ1を決定する指標となる。以下のトレンチ型の場合のΔ1についても同様である。
【0041】
図3は、コア部の中心軸から半径方向におけるトレンチ屈折率プロファイルを示す図である。図3において、プロファイルP21がコア部11a又はコア部11bの屈折率プロファイルを示し、プロファイルP22がクラッド部12の屈折率プロファイルを示す。
【0042】
プロファイルP22が示すように、クラッド部12は、それぞれプロファイルP22a、P22b、P22cを有する3つの領域を備える。プロファイルP22aは、コア部11a又はコア部11bの外周を囲む隣接領域の屈折率プロファイルであり、隣接領域は純石英ガラスからなる。プロファイルP22bは、隣接領域の外周を囲むトレンチ層の屈折率プロファイルである。トレンチ層は、フッ素(F)などの屈折率を低くするドーパントが添加された領域である。プロファイルP22cは、トレンチ層の外周を囲む基準屈折率領域の屈折率プロファイルである。基準屈折率領域は純石英ガラスからなる。
【0043】
コア部11a又はコア部11bのコア径は2aであり、隣接領域に対するコア部11a又はコア部11bの比屈折率差はΔ1である。基準屈折率領域に対する隣接領域の比屈折率差はΔ2であり、本実施形態では0%である。基準屈折率領域に対するトレンチ層の比屈折率差はΔ3である。また、隣接領域の外径すなわちトレンチ層の内径は2bであり、トレンチ層の外径は2cである。このように、トレンチ型屈折率プロファイルのプロファイルパラメータは、a、b、c、Δ1及びΔ3である。なお、a=bの場合、隣接領域が無くなり、いわゆるW型の屈折率プロファイルとなるが、本明細書ではW型もトレンチ型の一種に含まれるものとする。
【0044】
つぎに、マルチコアファイバ10における好適な構造パラメータについて説明する。まず、マルチコアファイバ10のクラッド部12の外径(クラッド径)については、125μmであることが好ましい。125μmであれば、汎用性が高く、他の光学要素、例えば他のマルチコアファイバ10や光学部品等との接続の際に新たな接続治具を準備する等の煩雑さを抑制できる。
【0045】
つづいて、マルチコアファイバ10における好適なクラッド厚について説明する。クラッド厚とは、コア部11a、11bのそれぞれを囲むクラッド部12の厚さである。コア部11a、11bはクラッド部12の中心に対して偏心しているため、クラッド厚は方向によって変化する。そこで、図1において距離tで示すように、コア部11bの外周面からクラッド部12の外周面までの最短距離を最小クラッド厚とする。コア部11aに対しても同様に最小クラッド厚を規定する。
【0046】
最小クラッド厚は、コア部におけるカットオフ波長に影響を与える。そこで、コア部がクラッド部の中心に配置されたシングルコアファイバにおいて、G.652規格又はG.657A規格に適合する或る屈折率プロファイル(ステップ型及びトレンチ型)を基準として、コア径2aを様々な変化させた場合に、カットオフ波長λccと、そのカットオフ波長を実現するために必要な最小クラッド厚(必要クラッド厚)をシミュレーション計算した。
【0047】
図4は、λccと必要クラッド厚との関係を示す図である。ステップ型及びトレンチ型のいずれにおいても、λccが大きくなるにつれて必要クラッド厚は小さくなることが解った。また、図4から、マルチコアファイバ10の必要クラッド厚は30μm以上であることが好ましい。
【0048】
一方、マルチコアファイバ10のクラッド径を125μmとする観点からは、クラッド厚は50μm以下が好ましいので、クラッド厚は30μm~50μmの範囲にあることが好ましい。図5は、マルチコアファイバ10の外径(クラッド径)、クラッド厚、最小クラッド厚、及び最も近いコア部同士の距離(ピッチ)dを示す図である。マルチコアファイバ10において、最小クラッド厚を50μmとした場合、最も距離が近いコア部11a、11b同士の距離dを12.5μmにすれば、最も近いコア部間の光のクロストークを、長さ100m当たり-30dB以下にしながら、クラッド径を125μmとできる。また、最小クラッド厚を30μmとした場合、距離dを32.5μmにすれば、当該クロストークを長さ100m当たり-30dB以下にしながら、クラッド径を125μmとできる。したがって、距離dは12.5μm~32.5μmの範囲にあることが好ましい。
【0049】
つづいて、マルチコアファイバ10における好適な屈折率プロファイルの具体例について説明する。表3は、G.652規格又はG.657A規格に適合するプロファイルパラメータ及び伝搬屈折率を示す。なお、伝搬屈折率は、プロファイルパラメータを用いてシミュレーション計算により得られたものである。また、トレンチ型のパラメータであるb、cについては、aで規格化したb/a、b/cとして表している。
【0050】
また、表4は、表3に示すパラメータを用いてシミュレーション計算により得られた光の伝搬特性、並びにG.652A規格及びG.657A2規格を示す。なお、最小クラッド厚における(≦50μm)は、クラッド径を125μmとするために好適な最小クラッド厚の範囲を示す。表4に示すように、ステップ型によってG.652A規格に適合する伝搬特性と40μmの最小クラッド厚とが得られた。また、トレンチ型によってG.657A2規格に適合する伝搬特性と39μmの最小クラッド厚とが得られた。ここで、最小クラッド厚は、一般的に、コア部をG.652規格又はG.657A規格に適合させることが制限要因になり、特にカットオフ波長が制限要因となる。そこで、表4のようにカットオフ波長をできるだけ上限値に近い値に設定すると、最小クラッド厚を小さくできるので好ましい。なお、表中の「E」は10のべき乗を表し、例えば5.3E-3は5.3×10-3を意味している。以降の表においても同様である。
【0051】
【表3】

【表4】
【0052】
表5は、G.654規格に適合するプロファイルパラメータ及び伝搬屈折率を示す。また、表6は、表5に示すパラメータを用いてシミュレーション計算により得られた光の伝搬特性、並びにG.654A/C、G.654B及びG.654D規格の各規格を示す。表6に示すように、ステップ型によってG.654B規格に適合する伝搬特性と37μmのクラッド厚とが得られた。また、トレンチ型によってG.654A/C及びG.654B規格に適合する伝搬特性と33μmのクラッド厚とが得られた。
【0053】
【表5】

【表6】
【0054】
したがって、コア部11aに、表3のいずれかの屈折率プロファイルを適用し、コア部11bに、表5のいずれかの屈折率プロファイルを適用することによって、マルチコアファイバ10を実現することができる。このようにして実現されたマルチコアファイバ10のコア部11a、11bの伝搬屈折率の差は、両方ともステップ型とした場合は0.00048であり、両方ともトレンチ型とした場合は0.00056であり、異種コア部としては十分に大きい値である。
【0055】
ところで、表3と表5とに示すプロファイルパラメータを比較すると、ステップ型についてΔ1はいずれも0.37%で同じ値であり、2aはそれぞれ9.0μm、10.5μmで互いに異なる値である。同様に、トレンチ型についてΔ1、Δ3、b/a及びc/aは同じ値であって、それぞれ0.36%、-0.60%、3、及び4であり、2aはそれぞれ8.0μm、9.5μmで互いに異なる値である。
【0056】
このことは、屈折率プロファイルの型が同じである場合、G.654規格に適合するプロファイルパラメータ及びG.652規格又はG.657A規格に適合するプロファイルパラメータは、コア径を除いて相互に等しくすることで実現できることを意味する。したがって、マルチコアファイバ10を製造する際には、まず一方の規格に適合するコア部を作製するためのコア母材を準備し、このコア母材を延伸するなどしてコア径を変更して他方の規格に適合するコア部を作製するためのコア母材を準備することができるので、製造性が向上する。これについては後に詳述する。
【0057】
(製造方法)
つぎに、マルチコアファイバ10の製造方法の一例について、図6の製造フローを参照して説明する。はじめに、ステップS101において、3本の第1規格用コア母材を準備する。このコア母材は、G.654規格に適合する伝搬特性を有するコア部を作製するためのコア母材であって、コア部とクラッド部とを備えている。
【0058】
つづいて、ステップS102において、3本の第2規格用コア母材を準備する。このコア母材は、G.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有するコア部を作製するためのコア母材であって、コア部とクラッド部とを備えている。これら第1及び第2規格用コア母材は、公知のVAD(Vapor Axial Deposition)法やOVD(Outside Vapor Deposition)法を組み合わせて作製できる。
【0059】
つづいて、ステップS103において、3本の第1規格用コア母材と3本の第2規格用コア母材を用いて光ファイバ母材を作製する。光ファイバ母材は、公知のスタックアンドドロー法や穿孔法を用いて作製できる。
【0060】
つづいて、ステップS104において、光ファイバ母材を線引きしてマルチコアファイバ10を作製する。これにより、マルチコアファイバ10を製造することができる。
【0061】
ところで、上述したように、屈折率プロファイルの型が同じである場合、G.654規格に適合するプロファイルパラメータ及びG.652規格又はG.657A規格に適合するプロファイルパラメータは、コア径を除いて相互に等しくすることで実現できる。そこで、上記ステップS101、S102のコア母材の準備工程は、図7に一例を示すように行うことができる。
【0062】
すなわち、まず第1規格用コア母材として、コア部21とクラッド部22とを備える第1規格用コア母材20を6本作製する。つづいて、3本の第1規格用コア母材20はそのままとし、他の3本の第1規格用コア母材20を、火炎や電気炉を用いて加熱延伸し、コア部31とクラッド部32とを備える第2規格用コア母材30を作製する。このとき、例えばトレンチ型の場合には、第1規格用コア母材20を加熱延伸すると、Δ1、Δ3、b/a、c/aの値を維持しながら、コア径のみを変更することができるので、第1規格用コア母材20の加熱延伸により第2規格用コア母材30を作製できるのである。これにより、異なる規格に適合するコア母材の製造を独立に行うのではなく、その製造工程の一部を共通化できるので、製造性が向上する。
【0063】
つづいて、図7のように準備した第1規格用コア母材20、第2規格用コア母材30を用いた光ファイバ母材の作製工程の一例について説明する。
【0064】
まず、図8に示すように、純石英ガラスからなる円柱状のガラスロッド40に、その中心軸に平行に3個の第1空孔41、3個の第2空孔42を穿孔する。第1空孔41は、第1規格用コア母材20の外径に応じた内径を有している。第2空孔42は、第2規格用コア母材30の外径に応じた内径を有しているものであり、第1空孔41に比して内径が小さい。第1空孔41、第2空孔42は、マルチコアファイバ10におけるコア部11a、11bの配列となるように、正六角形状に配列する。
【0065】
つづいて、図9に示すように、第1規格用コア母材20、第2規格用コア母材30をそれぞれガラスロッド40の第1空孔41、第2空孔42に挿入する。そして、ガラスロッド40と第1規格用コア母材20及び第2規格用コア母材30とを加熱して一体化し、光ファイバ母材を作製する。このように作製した光ファイバ母材を線引きすることによってマルチコアファイバ10を製造できる。
【0066】
なお、ガラスロッド40と第1規格用コア母材20及び第2規格用コア母材30との加熱一体化は、必ずしも光ファイバ母材作製工程において行わなくてもよく、マルチコアファイバ作製工程における線引き時の加熱により行ってもよい。
【0067】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な模式的断面図である。マルチコアファイバ10Aは、複数、具体的には8個のコア部として、4個のコア部11a、4個のコア部11bを備えている。また、マルチコアファイバ10Aは、コア部11a、11bの外周に形成されたクラッド部12を備えている。
【0068】
コア部11a、11aとクラッド部12との構成材料、屈折率プロフィル及び伝搬特性の適合規格については、マルチコアファイバ10における対応する要素を同じであるので、説明を省略する。
【0069】
コア部11a、11bは、交互に円環状に配列している。また、コア部11a、11bは、正八角形状に配列しているとも言える。その結果、コア部11aに最も距離が近いコア部はコア部11bであり、コア部11bに最も距離が近いコア部はコア部11aである。このように、マルチコアファイバ10Aは、最も距離が近いコア部同士の適合する標準規格が互いに異なることによって、マルチコアファイバ10と同様に汎用性が高く、狭ピッチ化が可能であり、空間密度を増大できる。
【0070】
(実施形態3)
図11は、実施形態3に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な模式的断面図である。マルチコアファイバ10Bは、複数、具体的には9個のコア部として、5個のコア部11a、4個のコア部11bを備えている。また、マルチコアファイバ10Bの状態は、コア部11a、11bの外周に形成されたクラッド部12を備えている。
【0071】
コア部11a、11bとクラッド部12との構成材料、屈折率プロフィル及び伝搬特性の適合規格については、マルチコアファイバ10における対応する要素を同じであるので、説明を省略する。
【0072】
コア部11a、11bは、交互に正方格子状に配列している。その結果、コア部11aに最も距離が近いコア部はコア部11bであり、コア部11bに最も距離が近いコア部はコア部11aである。このように、マルチコアファイバ10Bは、最も距離が近いコア部同士の適合する標準規格が互いに異なることによって、マルチコアファイバ10と同様に汎用性が高く、狭ピッチ化が可能であり、空間密度を増大できる。
【0073】
さらには、本発明に係るマルチコアファイバにおけるコア部の配列は、最も距離が近いコア部同士の適合する標準規格が互いに異なるような配列であれば、上記の三角格子状、円環状、正方格子状に限らず、様々な配列とできる。
【0074】
(実施形態4)
図12は、実施形態4に係る光伝送システムの模式的構成図である。この光伝送システム100は、光送信装置110と、光受信装置120と、実施形態1に係るマルチコアファイバ10とを備えている。
【0075】
光送信装置110は、半導体レーザなどの光源を有する6個の光送信器と、光入力器とを備えている。光送信器は、使用波長帯に含まれる波長を有し、かつ変調信号にて変調された信号光をそれぞれ出力する。使用波長帯は、光ファイバ通信にて使用される波長帯であり、特に限定はされない。
【0076】
光入力器は、公知のファンインを含んで構成されており、光送信器から出力された6個の信号光のそれぞれを、マルチコアファイバ10のコア部11a、11bのそれぞれに入力する。これにより、コア部11a、11bは、6個の信号光を伝搬する。
【0077】
光受信装置120は、フォトダイオードなどの受光素子を有する6個の光受信器と、光出力器とを備えている。
【0078】
光出力器は、公知のファンアウトを含んで構成されており、コア部11a、11bが伝送した6個の信号光を取り出して出力する。光受信器は、それぞれ、出力された信号光のそれぞれを受信し、信号光に含まれる変調信号を復調する。
【0079】
この光伝送システム100は、実施形態1に係るマルチコアファイバ10を光伝送ファイバとして用いているので、高い汎用性や、空間密度を増大の効果を享受できる。
【0080】
また、この光伝送システム100を用いて様々な光伝送方法を実施することができる。
例えば、この光伝送システム100を用いて、CWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing)光伝送とDWDM(Dense WDM)光伝送とを同時に行うことができる。ここで、CWDM光伝送とは、波長が1260nm以上の複数の信号光を波長多重したCWDM信号を用いた光伝送である。CWDM信号光は、例えば1271nmから1611nmまでの波長帯において、20nm間隔で信号光を配列したものである。DWDM光伝送とは、波長が1530nm以上の複数の信号光を波長多重したDWDM信号を用いた光伝送である。DWDM信号光は、例えば約1530nmから約1624nmまでの波長帯において、100GHzや200GHz等の間隔で信号光を配列したものである。
【0081】
この場合、光送信装置110は、マルチコアファイバ10に対して、コア部11aにCWDM信号光を入力する。また、光送信装置110は、コア部11bにDWDM信号光を入力する。G.652規格又はG.657A規格に適合する伝搬特性を有するコア部11aはCWDM信号光をシングルモードで伝搬でき、G.654規格に適合する伝搬特性を有するコア部11bはDWDM信号光をシングルモードで伝搬できる。また、最も距離が近いコア部11aとコア部11bとで伝送するWDM信号の波長帯が異なるので、WDM信号間の干渉を抑制することができる。
【0082】
(実施形態5)
図13は、実施形態5に係る光伝送システムの模式的構成図である。この光伝送システム200は、光送受信装置210と、光送受信装置220と、実施形態1に係るマルチコアファイバ10とを備えている。
【0083】
光送受信装置210、220は、双方向伝送を実現できるように構成されている。光送受信装置210、220は、いずれも、6個の光送信器と、6個の光受信器と、光入出力器とを備えている。光送信器は、使用波長帯に含まれる波長を有し、かつ変調信号にて変調された信号光をそれぞれ出力する。使用波長帯は、光ファイバ通信にて使用される波長帯であり、特に限定はされない。
【0084】
光入出力器は、公知のファンインと光合分波器とを備える。このファンインは、ファンアウトとしても機能する。
【0085】
光送受信装置210、220のそれぞれにおいて、光入出力器は、光送信器から出力された6個の信号光のそれぞれを、マルチコアファイバ10のコア部11a、11bのそれぞれに入力する。これにより、コア部11a、11bは、6個の信号光を伝搬する。一方、光送受信装置210、220のそれぞれにおいて、光入出力器は、他方の光送受信装置からコア部11a、11bを介して伝送してきた6個の信号光を光合分波器によって取り出して出力する。光受信器は、それぞれ、出力された信号光のそれぞれを受信し、信号光に含まれる変調信号を復調する。
【0086】
この光伝送システム200は、双方向光伝送を実現できるとともに、実施形態1に係るマルチコアファイバ10を光伝送ファイバとして用いているので、高い汎用性や、空間密度を増大の効果を享受できる。また、最も距離が近いコア部11aとコア部11bとで光伝送の方向を変えることで、双方向伝送間の信号光の干渉を抑制することができる。
【0087】
なお、上記実施形態に係る光伝送システムでは、マルチコアファイバ10のコア部11a、11bの全てを用いて光伝送を行っているが、コア部11a、11bの少なくとも一つを用いて光伝送を行ってもよい。
【0088】
また、上記実施形態に係るマルチコアファイバに対して、コア部を識別するための公知のマーカを設けてもよい。このようなマーカは、例えばクラッド部内に、クラッド部とは屈折率が異なる領域を設けることによって実現できる。
【0089】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明に係るマルチコアファイバ及びその製造方法、並びに光伝送システム及び光伝送方法は、複数の異種コア部を用いたマルチコアファイバに有用である。
【符号の説明】
【0091】
10、10A、10B マルチコアファイバ
11a、11b コア部
12 クラッド部
100、200 光伝送システム
110 光送信装置
120 光受信装置
210、220 光送受信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13