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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】分岐付ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/62 20060101AFI20230721BHJP
   H01R 4/00 20060101ALI20230721BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20230721BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
H01R4/62 A
H01R4/00 A
H02G15/08
H02G1/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022067264
(22)【出願日】2022-04-15
(62)【分割の表示】P 2020041205の分割
【原出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2022103177
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591086843
【氏名又は名称】古河電工産業電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】桜井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】寺山 喜一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 久弥
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220395(JP,A)
【文献】実開昭49-038983(JP,U)
【文献】特開2002-216864(JP,A)
【文献】実公昭49-033104(JP,Y1)
【文献】米国特許第5281763(US,A)
【文献】中国特許出願公開第101221835(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 3/00-4/22
H01R 4/58-4/72
H01R 31/06
H02G 15/00-15/196
H02G 1/14-1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線ケーブルと、
前記幹線ケーブルから分岐する二本の分岐線ケーブルと、
前記幹線ケーブルに前記分岐線ケーブルを接続する分岐コネクタとを備える分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、
一つの前記分岐コネクタから二本の前記分岐線ケーブルが引き出されており、
前記分岐コネクタは、二本の前記分岐線ケーブルが接続される接続部を有し、
二本の前記分岐線ケーブルの導体の前記接続部の内側となる部分の全体的な断面形状がくびれのない丸みのある形状であり、
前記分岐コネクタの材質がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、
前記分岐線ケーブルの導体が銅又は銅合金であり、
前記分岐コネクタに対して、他の部品を介在させることなく、それぞれの前記分岐線ケーブルの導体が隙間のない状態で圧縮接続状態で接続されており、
圧縮接続後の二本の前記分岐線ケーブルの前記導体の断面は、隣接する前記導体同士の境界が接した線状の部位を有することを特徴とする分岐付きケーブル。
【請求項2】
一つの前記分岐コネクタに接続される複数の前記分岐線ケーブルの全部が前記分岐コネクタから同方向に引き出されていることを特徴とする請求項1に記載の分岐付きケーブル。
【請求項3】
一つの前記分岐コネクタに接続される複数の前記分岐線ケーブルの一部と残る他の一部とが前記分岐コネクタからそれぞれ両方向に引き出されていることを特徴とする請求項1に記載の分岐付きケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐付ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
マンションやオフィスビルなどの中高層ビルに電力を供給するケーブルとして、分岐付ケーブルが知られている。分岐付ケーブルは、幹線ケーブルと、幹線ケーブルから分岐された分岐線ケーブルとを有している(例えば、特許文献1参照。)。
ビルやマンションに布設された分岐付ケーブルの幹線ケーブルは、その上端部が最上階付近に固定されて垂直向きに懸架され、その途中部分が中途の階に適宜支持固定されており、幹線ケーブルは配電盤に、分岐線ケーブルは各階に引き込まれて電力量計にそれぞれ接続される。
【0003】
近年、特に建設現場では労働者人口の減少や高齢化に伴い、作業の省力化、省人化が求められている。従来、分岐付ケーブルの導体には銅もしくは銅合金が広く使用されているが、軽量化やそれに伴う労務節減のためには分岐付ケーブルの導体にアルミニウムもしくはアルミニウム合金を使用することが有効である。これを実現した製品に、アルミ導体を幹線ケーブルに、分岐線ケーブルに銅導体を用いた分岐付きケーブルがある(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。この分岐付きケーブルは、幹線ケーブルにアルミ導体を採用することで軽量化を図り、分岐線ケーブルは従来のまま銅導体ケーブルとすることで、現在広く普及している配電盤や分電盤、電力量計といった設備にそのままつなぎ込むことが出来るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-282935号公報
【文献】特開2016-152089号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】電気と工事、オーム社、2018年1月号、p.49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アルミ導体を幹線に用いた分岐付きケーブル(以下、アルミ導体分岐付きケーブル)に使用されているコネクタには、アルミ導体専用の分岐コネクタ40(例えば、図5参照)が用いられる。この分岐コネクタ40には、幹線ケーブルの導体を収める溝状の凹部42と分岐線ケーブルの導体を収める溝状の凹部41を有している。これらの凹部41,42には、それぞれ1本の導体を収めることが想定されている。
このため、同じ階に電力量計が2か所あった場合には、アルミ導体分岐付きケーブルが2本必要となり、作業負担や必要な作業者人数が二倍となり、幹線ケーブルを通すための床貫通孔を大きくするか二つ開ける必要がある等の問題が生じていた。
【0007】
本発明の目的は、軽量であって幹線ケーブルの同一箇所から複数に分岐可能な分岐付ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
幹線ケーブルと、
前記幹線ケーブルから分岐する二本の分岐線ケーブルと、
前記幹線ケーブルに前記分岐線ケーブルを接続する分岐コネクタとを備える分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、
一つの前記分岐コネクタから二本の前記分岐線ケーブルが引き出されており、
前記分岐コネクタは、二本の前記分岐線ケーブルが接続される接続部を有し、
二本の前記分岐線ケーブルの導体の前記接続部の内側となる部分の全体的な断面形状がくびれのない丸みのある形状であり、
前記分岐コネクタの材質がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、
前記分岐線ケーブルの導体が銅又は銅合金であり、
前記分岐コネクタに対して、他の部品を介在させることなく、それぞれの前記分岐線ケーブルの導体が隙間のない状態で圧縮接続状態で接続されており、
圧縮接続後の二本の前記分岐線ケーブルの前記導体の断面は、隣接する前記導体同士の境界が接した線状の部位を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量化及び布設時の作業負担の軽減を図ることが可能であって、良好な接続が可能な分岐付ケーブル及びその接続方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の分岐付ケーブルを示す外観図である。
図2】幹線ケーブルに二本の分岐線ケーブルが分岐接続されている箇所を示す分岐付ケーブルの斜視図である。
図3】分岐接続箇所が樹脂封止されている状態を示す分岐付ケーブルの斜視図である。
図4】ケーブル接続前の状態の分岐コネクタの幹線ケーブルの軸線方向から見た形状を示す側面図である。
図5】ケーブル接続前の状態の分岐コネクタの幹線ケーブルの軸線方向から見た他の形状例を示す側面図である。
図6】第2実施形態の分岐付ケーブルの幹線ケーブルに二本の分岐線ケーブルが分岐接続されている箇所を示す分岐付ケーブルの斜視図である。
図7】第2実施形態の分岐付ケーブルの分岐接続箇所が樹脂封止されている状態を示す分岐付ケーブルの斜視図である。
図8】第2中継用導体の軸方向断面図である。
図9】第3実施形態の分岐付ケーブルにおける圧縮接続直前の分岐コネクタに対する幹線ケーブルの導体及び二本の分岐線ケーブルの導体の配置を軸線方向から見た説明図であって、図9(A)は図示の上下方向に二つの導体が並んだ状態、図9(B)、図9(C)は傾斜した方向に並んだ状態を示す。
図10図10(A)~図10(C)は、前述した図9(A)~図9(C)の各配置での圧縮接続後の二つの導体及び分岐コネクタの断面形状を示している。
図11図10(A)における圧縮接続後の二本の導体の断面図である。
図12】二本の分岐線ケーブルの導体をバインド線で束ねた状態を示す斜視図である。
図13】二本の分岐線ケーブルの導体をダイスで一つにまとめる状態を示す斜視図である。
図14】分岐コネクタに対してケーブル軸線方向の両側に二本の分岐線ケーブルが個別に引き出された状態を示す斜視図である。
図15】分岐コネクタに対してケーブル軸線方向の両側に二本の分岐線ケーブルが個別に引き出された状態の布設例を示す説明図である。
図16】分岐コネクタに対してケーブル軸線方向の両側に四本の分岐線ケーブルが二本ずつ引き出された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る分岐付ケーブルの実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の分岐付ケーブル100を示す外観図である。
分岐付ケーブル100は、例えば、図1に示すように、幹線ケーブル20と、複数の分岐線ケーブル30と、幹線ケーブル20から複数の分岐線ケーブル30を分岐接続する分岐コネクタ40と、各ケーブル20,30の導体及び分岐コネクタ40の露出部分を封止する樹脂成形体60(図3参照)とを備えている。
本実施形態では、分岐付ケーブル100が、複数の階層からなるビルに電力を供給するための布設例を示す。また、ここでは、各階毎に、二本の分岐線ケーブル30が幹線ケーブル20に接続されている構成を例示するが、一箇所からの分岐線ケーブル30の分岐本数はより多くしても良い。
【0013】
幹線ケーブル20は、一端部がビルの最上階において図示しない吊り下げ治具を介して懸架される。なお、幹線ケーブル20の途中部分は、各階の壁面などに適宜支持固定しても良い。
また、幹線ケーブル20の他端部は、ビルへ電力を供給する電源である図示しない配電盤に接続されている。
各分岐線ケーブル30は、その一端部が各階毎に設けられた分岐コネクタ40を介して幹線ケーブル20に接続されており、他端部が個別に電力量計50に接続されている。
【0014】
[幹線ケーブル]
図2は幹線ケーブル20に二本の分岐線ケーブル30が分岐接続されている箇所を示す分岐付ケーブル100の斜視図、図3は同箇所が樹脂成形体60によって封止された状態を示す斜視図である。
幹線ケーブル20は、ケーブルの中心位置する導体21と当該導体21を被覆する絶縁層22とを備えている。
導体21の材料には、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。
導体21は、複数の素線が撚り合わされてなる。例えば、導体21は、断面積が100[mm2]の導体である。なお、断面積は例示であって、その大きさは変更可能である。
絶縁層22の材料には、絶縁材料、例えば、架橋ポリエチレンが用いられている。なお、絶縁層22は、その外周が図示しないシースにより覆われていてもよい。
【0015】
[分岐線ケーブル]
分岐線ケーブル30は、ケーブルの中心位置する導体31と当該導体31を被覆する絶縁層32とを備えている。
導体31の材料には、銅又は銅合金が用いられている。
導体31は、複数の素線が撚り合わされてなる。例えば、導体31は、断面積が14[mm2]の導体である。なお、断面積は例示であって、その大きさは変更可能である。但し、分岐線ケーブル30の導体31は、断面積が幹線ケーブル20よりも小さいものが選択される。
絶縁層32の材料には、絶縁材料、例えば、架橋ポリエチレンが用いられている。なお、絶縁層32も、その外周が図示しないシースにより覆われていてもよい。
【0016】
[分岐コネクタ]
図4はケーブル接続前の状態の分岐コネクタ40の幹線ケーブル20の軸線方向から見た形状を示す側面図であり、図5は分岐コネクタ40の他の形状例を示す側面図である。
分岐コネクタ40は、ケーブル接続前の状態において、ケーブル軸線方向(長手方向)の全長に渡って図4に示す形状が連続するアルミニウム又はアルミニウム合金からなるブロックである。この分岐コネクタ40の図示下側と上側には、ケーブル導体が収容される溝状の接続部としての凹部41,42が軸線方向全長に渡って形成されている。
【0017】
幹線ケーブル20は、軸線方向の途中部分において絶縁層22が除去されて露出された状態の導体21が分岐コネクタ40の一方の凹部42に収容されて接続が行われる。
これに対して、分岐線ケーブル30は、二本分の導体31の良好な接続を図るために、第1中継用導体33を介して分岐コネクタ40に接続される。
【0018】
即ち、接続端部において絶縁層32が除去されて露出した状態の二本の分岐線ケーブル30の導体31が同じ方向に向けて並べられ、第1中継用導体33の一端部と共に、いわゆる締結具としてのT形コネクタ34等を使用して圧着接続によって束ねて、二本の導体31と第1中継用導体33とを電気的に接続する。なお、二本の導体31と第1中継用導体33とを電気的に接続可能であればT形コネクタ34に限らず、他のコネクタ相当の部材(スリーブ等)を使用しても良い。
そして、第1中継用導体33の他端部は、二本の導体31の延出方向によりもさらに遠方まで延出されており、当該他端部が、分岐コネクタ40の他方の凹部41に収容されて接続が行われる。つまり、各分岐線ケーブル30の導体31は、直接的には、分岐コネクタ40に接続されておらず、第1中継用導体33を介して間接的に接続される。
【0019】
なお、第1中継用導体33は、銅又は銅合金からなる裸撚り線である。この第1中継用導体33は、二本の導体31に対する電流が流れるので、第1中継用導体33と導体31の材料が等しい場合には、一本の導体31の断面積(軸垂直断面)の二倍以上の断面積(軸垂直断面)を有するものが使用される。例えば、一つの分岐コネクタ40により多くの分岐線ケーブル30を接続したい場合には、一つの導体31の断面積の本数倍以上の断面積の第1中継用導体33が使用される。
この第1中継用導体33は、撚り線ではなくとも良い。例えば、上記断面積の導体材料からなる棒状体でも良い。
なお、本明細書では、導体の断面積という場合には、軸垂直断面の断面積であって、導体が複数本の素線を撚り合わせた撚り線からなる場合には、各素線の断面積を全て合計した断面積を示すものとする。
【0020】
そして、分岐コネクタ40は、図4における上下双方から図示しないダイスによって加圧され、圧縮接続により幹線ケーブル20の導体21と第1中継用導体33とが接続される。
このとき、分岐コネクタ40はアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、第1中継用導体33は銅又は銅合金製であるため、異種金属の接触により異種金属接触腐食が生じるおそれがある。このため、樹脂成形体60により水分の浸入を防止しているが、さらに、分岐コネクタ40の凹部41と第1中継用導体33との間には、導電性を有する金属微粒子(例えば、亜鉛微粒子)と粘性を有するグリス(鉱物油性のグリス、シリコーングリスその他のグリス全般又は鉱油)を含んだ混合物からなる導電性のコンパウンドを介在させることで、さらなる水分の浸入防止を図ることができる。また、このコンパウンドは、アルミニウムの酸化皮膜の破壊、再生防止等の効果も有するので、分岐コネクタ40の凹部42と幹線ケーブル20の導体21との間に介在させることが好ましい。
さらに、前述したT形コネクタ34がアルミニウム又はアルミニウム合金製である場合には、当該T形コネクタ34と各分岐線ケーブル30の導体31及び第1中継用導体33との間にも介在させることが好ましい。
【0021】
なお、分岐コネクタ40は、図5に示すように、一方の凹部42(又は、双方の凹部41,42)が上下方向ではなく側方に開放された構造としても良い。
【0022】
[樹脂成形体]
樹脂成形体60は、露出した幹線ケーブル20の導体21及び分岐線ケーブル30の導体31と、分岐コネクタ40と、第1中継用導体33と、T形コネクタ34とを絶縁性の樹脂により封止してなる。この樹脂成形体60により、幹線ケーブル20と分岐線ケーブル30の分岐接続部を絶縁し、外部からの物理的な衝撃、塵芥、水分等から保護することができる。
【0023】
[第1実施形態の技術的効果]
上記第1実施形態の分岐付ケーブル100は、幹線ケーブル20の導体21の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であって、一つの分岐コネクタ40から複数(例えば、二本)の分岐線ケーブル30が引き出されている構造である。このため、分岐付ケーブル100の軽量化を図ることが可能である。さらに、例えば、ビルの階毎に複数の分岐線ケーブル30を引き出したい場合のように、布設される特定の場所から複数の分岐線ケーブル30を引き出したい場合に、複数の分岐付きケーブルを布設する必要がなくなり、作業負担や必要な作業者人数を効果的に低減し、幹線ケーブルを通すための床貫通孔の拡大や孔数を増やすことを回避することが可能となる。
【0024】
また、分岐コネクタ40の材質がアルミニウム又はアルミニウム合金であるため、幹線ケーブル20の導体21の材質と同一又は近似するので、幹線ケーブル20の導体21における異種金属接触腐食の発生を抑え、分岐付ケーブル100の耐久性を高く維持することが可能となる。
【0025】
また、各分岐線ケーブル30がいずれも分岐コネクタ40から軸線方向に沿って同一方向に引き出されているので、各分岐線ケーブル30をいずれも幹線ケーブル20から同一方向に又は同一の軸垂直平面に布設する場合等に各分岐線ケーブル30の配置が容易となり、布設スペースの確保し易くなる。
【0026】
また、各分岐線ケーブル30の導体31を銅又は銅合金としているが、現在広く普及している電力量計は、接続端子が銅又は銅合金製である場合が多く、その場合に異種金属接触腐食の発生を回避して分岐付ケーブル100の耐久性を高く維持することが可能となる。
また、分岐線ケーブル30の接続先は、電力量計に限らず、例えば、分電盤に接続される場合もあり得るが、現在広く普及している分電盤も接続端子が銅又は銅合金製である場合が多く、同様の効果を得ることが可能である。
【0027】
また、分岐付ケーブル100では、二本の分岐線ケーブル30の導体31と、これらの導体31の合計断面積以上の断面積の第1中継用導体33とをT形コネクタ34で束ね、第1中継用導体33を介して、二本の分岐線ケーブル30の導体31を間接的に分岐コネクタ40に接続している。
第1中継用導体33は、円形に一本にまとめられた導体なので、分岐コネクタ40に圧縮や圧着等の圧力を加える過程で周囲からの圧力が均一に伝わり、隙間等を生じる可能性を低減することができ、各分岐線ケーブル30から幹線ケーブル20までを良好に接続することが可能となる。
【0028】
[第2実施形態]
第2実施形態の分岐付ケーブル100Aについて図面を参照して説明する。この分岐付ケーブル100Aについて前述した分岐付ケーブル100と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略し、主に、分岐付ケーブル100と異なる点について説明する。
図6は幹線ケーブル20に二本の分岐線ケーブル30が分岐接続されている箇所を示す分岐付ケーブル100Aの斜視図、図7は同箇所が樹脂成形体60によって封止された状態を示す斜視図である。
この分岐付ケーブル100Aは、前述した分岐付ケーブル100と同様に、図1のように、幹線ケーブル20の各所において、複数の分岐線ケーブル30が分岐接続されている。
【0029】
前述した分岐付ケーブル100では、二本の分岐線ケーブル30の導体31と第1中継用導体33とをT形コネクタ34で束ね、第1中継用導体33を介して分岐コネクタ40に接続する構成を例示したが、この分岐付ケーブル100Aでは、二本の分岐線ケーブル30の導体31を束ねて分岐コネクタ40に接続する第2中継用導体33Aを備える構成を例示する。
【0030】
図8は第2中継用導体33Aの軸方向断面図である。図示のように、第2中継用導体33Aは、その一端部に二本の分岐線ケーブル30の導体31が挿入可能な筒状の被挿入部331Aを備え、他端部に分岐コネクタ40の凹部41に挿入可能な円柱状の挿入部332Aを備え、これらが一体的に同一材料から形成されている。ここでは、第2中継用導体33Aは、銅又は銅合金を材料とする場合を例示する。
【0031】
第2中継用導体33Aは、被挿入部331Aに各導体31が挿入された状態で圧縮接続又は圧着接続が行われ、これによって二本の導体31と第2中継用導体33Aとの電気的な接続が行われている。
また、第2中継用導体33Aは、挿入部332Aが分岐コネクタ40の凹部41に挿入した状態で圧縮接続が行われ、これによって第2中継用導体33Aを介して分岐コネクタ40と二本の導体31との電気的な接続が行われている。
【0032】
なお、第2中継用導体33Aの挿入部332Aは、二本の導体31に対する電流が流れるので、第2中継用導体33Aの挿入部332Aと導体31の材料が等しい場合には、一本の導体31の断面積(軸垂直断面)の二倍以上の断面積(軸垂直断面)を有するものが使用される。この場合も、一つの分岐コネクタ40により多くの分岐線ケーブル30を接続したい場合には、一つの導体31の断面積の本数倍以上の断面積の挿入部332Aが使用される。
【0033】
この場合も、分岐コネクタ40はアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、第2中継用導体33Aは銅又は銅合金製であるため、異種金属接触腐食を防ぐために、分岐コネクタ40の凹部41と第2中継用導体33Aとの間に、前述したコンパウンドを介在させることが好ましい。
【0034】
幹線ケーブル20の導体21と第2中継用導体33Aが圧縮接続された分岐コネクタ40は、分岐付ケーブル100の場合と同様に、樹脂成形体60により、露出した幹線ケーブル20の導体21及び分岐線ケーブル30の導体31と、第2中継用導体33Aと共に封止される。
【0035】
上記構成の分岐付ケーブル100Aの場合も前述した分岐付ケーブル100と同一の技術的効果を有する。
また、分岐付ケーブル100Aは、各分岐線ケーブル30の導体31を第2中継用導体33Aを介して分岐コネクタ40に接続しており、挿入部332Aが円柱状の導体なので、第1中継用導体33と同様又はそれ以上に隙間の発生を抑制し、各分岐線ケーブル30から幹線ケーブル20までを良好に接続することが可能となる。
さらに、第2中継用導体33Aは、各分岐線ケーブル30の導体31を挿入して圧縮接続できるので、接続作業をより容易に行うことができ、全体の布設作業効率を向上することができる。
【0036】
[第3実施形態]
第3実施形態の分岐付ケーブル100Bについて図面を参照して説明する。この分岐付ケーブル100Bについて前述した分岐付ケーブル100と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略し、主に、分岐付ケーブル100と異なる点について説明する。
この分岐付ケーブル100Bは、前述した分岐付ケーブル100と異なり、第1中継用導体33を使用することなく、分岐コネクタ40の凹部41にケーブル軸線方向について同じ方向から複数の分岐線ケーブル30の導体31を配置して、圧縮接続により直接的に接続することを特徴としている。
【0037】
図9は圧縮接続直前の状態における分岐コネクタ40に対する幹線ケーブル20の導体21及び二本の分岐線ケーブル30の導体31の配置を軸線方向から見た説明図である。
図9(A)は図示の上下方向(導体21と導体31とが並んだ方向)に二つの導体31が並んだ状態、図9(B)及び図9(C)は図示の上下方向に対して図示の左右方向のそれぞれに傾斜して並んだ状態を示す。なお、二つの導体31は、図示左右方向に並んだ状態で圧縮接続を行うことも可能だが、ここでは図示を省略する。
【0038】
前述したように、二本の導体31をそのまま分岐コネクタ40に接続する場合には、その断面形状は二つの円が点接触で並んだ状態になり、分岐コネクタ40間で隙間等が生じる可能性が生じる。
このため、分岐付ケーブル100Bでは、分岐コネクタ40の圧縮接続の際の加圧力の調整等を行い、圧縮接続後の二つの導体31の軸垂直断面の断面形状が点接触ではなく、より広い範囲で接触する形状となるように構成している。
【0039】
図10(A)~図10(C)は、前述した図9(A)~図9(C)の各配置での圧縮接続後の二つの導体31及び分岐コネクタ40の断面形状を示している。なお、図10(A)~図10(C)では導体21の図示を省略している。また、図11図10(A)における圧縮接続後の二本の導体31の断面図である。
図9(A)の配置では、分岐コネクタ40の二つの凹部41,42の並び方向と同じ方向に二本の導体31が並ぶように配置して圧縮が行われる。
【0040】
分岐コネクタ40の凹部41と二つの導体31との間には前述したコンパウンドが介在するように塗布される。
図10(A)~図10(C)の各図において、二本の導体31と分岐コネクタ40との間にある隙間は、コンパウンドが介挿されている状態を図示している。
【0041】
図示のように、圧縮接続後の二本の分岐線ケーブル30の導体31の断面は、隣接する導体31同士が接した部位tの幅Wが、接続前の分岐線ケーブル30の導体31の外径の少なくとも10%以上、或いは20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、さらには60%以上とする。また、70%以上、80%以上、90%以上とするとさらに良い。
なお、図11では図10(A)の導体配置による圧縮接続後の状態のみを図示しているが、図10(B)及び図10(C)の導体配置の場合も導体31同士が接した部位tの幅Wは、上述した適正な広さとなっている。
【0042】
このように、二つの導体31の断面形状における接した部位tの幅Wが適正な広さを有することで、導体31同士がその境界を広く接した状態で分岐コネクタ40に接続されることになるので、導体31同士の接触した部位tの幅Wが狭すぎることで分岐コネクタ40との間に生じる隙間の発生を抑制することができる。従って、二本の導体31を直接的に分岐コネクタ40に接続する場合に懸念される隙間の発生による接続の不良状態の発生を効果的に低減することが可能となる。
【0043】
また、図12に示すように、二本の分岐線ケーブル30の導体31は、当該二本の導体31を締結して拘束する拘束具としてのバインド線35で束ねた状態で分岐コネクタ40に対して圧縮接続を行ってもよい。この場合、バインド線35は絶縁層32から引き出された導体31の先端部と絶縁層32に近い方の端部とに取り付けて、分岐コネクタ40を避ける配置とすることが好ましい。また、バインド線35は、圧縮接続後は除去してもよい。
このように、バインド線35により導体31を束ねた状態で分岐コネクタ40に接続することにより、導体31同士の隙間の発生を抑制し、良好な接続を行うことができる。
【0044】
また、図13に示すように、二本の分岐線ケーブル30の導体31は、予め、ダイス36等の型に嵌めて圧力を加えて一つにまとめた状態で分岐コネクタ40に対して圧縮接続を行ってもよい。この場合、ダイス36は、二本の導体31を一本の円柱状に固める形状とすることが好ましい。
このように、ダイス36により導体31を一本にまとめた状態で分岐コネクタ40に接続することにより、導体31同士の隙間の発生を抑制し、良好な接続を行うことができる。なお、前述したバインド線35とダイス36とを両方併用しても良い。
【0045】
また、図14に示すように、二本の分岐線ケーブル30の導体31は、分岐コネクタ40に対してケーブル軸線方向の両方向に引き出しても良い。すなわち、分岐コネクタ40の凹部41に対して軸線方向の一方から片方の分岐線ケーブル30の導体31を配置し、凹部41に対して軸線方向の他方からもう片方の分岐線ケーブル30の導体31を配置する。そして、これらを圧縮接続により接続する。
【0046】
このように、分岐コネクタ40から軸線方向の両方向に分岐線ケーブル30を引き出すことにより、例えば、図15に示すように、幹線ケーブル20のケーブル軸線方向に沿って電力の供給先となる電力量計50が複数並んで配置されている場合に、分岐コネクタ40の数を最小限としながら、各分岐線ケーブル30の布設長さも短くすることができ、効率的な配線を可能とし、布設時の作業負担やコストを低減することが可能となる。
【0047】
また、図16に示すように、分岐コネクタ40の軸線方向の両側に引き出される分岐線ケーブル30の本数は一本ずつではなく、より多い本数を引き出しても良い。この場合、さらに多くの電力の供給先(電力量計50)に向けて分岐線ケーブル30を布設することが可能となる。
【0048】
なお、分岐コネクタ40の軸線方向両側に分岐線ケーブル30を引き出すのは、前述した分岐付ケーブル100,100Aについても同様に実施することが可能である。
例えば、分岐付ケーブル100の場合には、第1中継用導体33を分岐コネクタ40の軸線方向両側から引き出せるように分岐コネクタ40よりも十分に長くして、その両側において、それぞれT形コネクタ34により各分岐線ケーブル30の導体31を個別に接続すればよい。この場合、第1中継用導体33の断面積は、両側に接続される全ての分岐線ケーブル30の導体31の断面積の合計以上とすべきである。
また、分岐付ケーブル100Aの場合には、挿入部332Aの両端部に被挿入部331Aを形成し、両側から分岐線ケーブル30の導体31を接続可能とすればよい。この場合も、第2中継用導体33Aの挿入部332Aの断面積は、両側に接続される全ての分岐線ケーブル30の導体31の断面積の合計以上とすべきである。
【0049】
[その他]
上記各実施形態において、各種の導体21,31の外径や素線の本数は一例であり、適宜変更可能である。
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0050】
例えば、上記各実施形態では、分岐線ケーブル30の導体31が銅又は銅合金である場合を例示したが、導体31がアルミニウム又はアルミニウム合金である分岐線ケーブル30を使用しても良い。
【符号の説明】
【0051】
20 幹線ケーブル
21 導体
22 絶縁層
30 分岐線ケーブル
31 導体
32 絶縁層
33 第1中継用導体
33A 第2中継用導体
331A 被挿入部
332A 挿入部
34 T形コネクタ(締結具)
35 バインド線(拘束具)
36 ダイス
40 分岐コネクタ
41,42 凹部(接続部)
50 電力量計
60 樹脂成形体
100,100A,100B 分岐付ケーブル
t 導体同士が接した部位
W 導体同士が接した部位の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16