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特許7317226量子ドット、これを含む硬化性組成物、前記組成物を用いて製造された硬化膜および前記硬化膜を含むカラーフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】量子ドット、これを含む硬化性組成物、前記組成物を用いて製造された硬化膜および前記硬化膜を含むカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/20 101
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022519760
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 KR2020012595
(87)【国際公開番号】W WO2021075740
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0127122
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヨンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンギ
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミスン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ボムジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,インチェ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ミ チョン
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167751(WO,A1)
【文献】特表2021-501230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0278177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物で表面改質された量子ドット:
【化1】
前記化学式1において、
Lは、酸二無水物から誘導された2価の残基であり、
およびLは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、または置換もしくは非置換のC6~C20アリール基であり、
mは、1~20の整数である。
【請求項2】
前記Lは、下記の化学式2-1~化学式2-15のいずれか1つで表される化合物から誘導された2価の残基である、請求項1に記載の量子ドット。
【化2】
【化3】
【請求項3】
前記Lは、下記のグループ1から選択されたいずれか1つで表される、請求項1に記載の量子ドット。
【化4】
【請求項4】
前記化学式1は、下記の化学式1-1~化学式1-3のいずれか1つで表される、請求項1に記載の量子ドット:
【化5】
前記化学式1-1~化学式1-3において、
nは、1~20の整数である。
【請求項5】
前記量子ドットは、500nm~680nmで最大蛍光発光波長を有する、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項6】
請求項1に記載の量子ドット;および
末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性単量体を含む無溶媒型硬化性組成物。
【請求項7】
前記重合性単量体は、220g/mol~1,000g/molの分子量を有する、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記重合性単量体は、下記の化学式3で表される、請求項6に記載の硬化性組成物:
【化6】
前記化学式3において、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基であり、
およびLは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基またはエーテル基(*-O-*)である。
【請求項9】
前記無溶媒型硬化性組成物は、
前記量子ドット1重量%~60重量%、および
前記重合性単量体40重量%~99重量%
を含む、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記無溶媒型硬化性組成物は、重合開始剤、光拡散剤またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の量子ドット;
バインダー樹脂;および
溶媒
を含む溶媒型硬化性組成物。
【請求項12】
前記溶媒型硬化性組成物は、
前記量子ドット1重量%~40重量%;
前記バインダー樹脂1重量%~30重量%;および
前記溶媒残部量
を含む、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記溶媒型硬化性組成物は、重合性単量体、重合開始剤、光拡散剤またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
請求項6または請求項11に記載の組成物を用いて製造された硬化膜。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化膜を含むカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、量子ドット、これを含む硬化性組成物、前記組成物を用いて製造された硬化膜および前記硬化膜を含むカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な量子ドットの場合、疎水性を有する表面特性により分散する溶媒が制限的であり、このため、バインダーや硬化性モノマーなどのような極性システムへの導入に多くの困難を経験しているのが事実である。
【0003】
一例として、活発に研究されている量子ドットインク組成物の場合にも、その初期段階では相対的に極性度が低く、疎水性の程度が高い硬化型組成物に使用される溶媒にやっと分散する水準であった。そのため、全体組成物の総量対比20重量%以上の量子ドットを含めることが困難でインクの光効率を一定水準以上増加させることができず、光効率を増加させるために無理に量子ドットを追加投入して分散させてもインク-ジェッティング(Ink-jetting)が可能な粘度範囲(12cPs)を超えて、工程性を満足させることができなかった。
【0004】
また、ジェッティング(jetting)が可能な粘度範囲を実現するために、全体組成物の総量対比50重量%以上の溶媒を含めてインクの固形分含有量を低くする方法が用いられてきたが、この方法も、粘度の面ではある程度満足できる結果を提供するものの、ジェッティング(jetting)時における溶媒の揮発によるノズル乾燥、ノズル詰まり現象、ジェッティング(jetting)後の経時による単膜減少などの問題とともに、硬化後の厚さ偏差が激しくなって、実際の工程に適用しにくいというデメリットを有する。
【0005】
したがって、量子ドットインクは、溶媒を含まない無溶媒タイプが実際の工程への適用に最も好ましい形態であり、現在の量子ドット自体を溶媒型組成物に適用する技術はもはやある程度限界に達していると評価されている。
【0006】
現在まで報告されたところでは、実際の工程への適用に最も好ましい溶媒型組成物の場合、リガンド置換など表面改質されていない量子ドットが溶媒型組成物の総量対比約20重量%~25重量%程度の含有量で含まれており、このため、粘度の限界によって光効率および吸収率を増加させにくい状況である。一方、他の改善方向として、量子ドットの含有量を低くし、光拡散剤(散乱体)の含有量を増加させる方法も試みられているが、これも沈降問題や低い光効率問題を改善できずにいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一実施形態は、パッシベーション効果に優れた化合物で表面改質されて、優れた光効率を有する量子ドットを提供する。
【0008】
他の実施形態は、量子ドット含有硬化性組成物を提供する。
【0009】
さらに他の実施形態は、前記硬化性組成物を用いて製造された硬化膜を提供する。
【0010】
さらに他の実施形態は、前記硬化膜を含むカラーフィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態は、下記の化学式1で表される化合物で表面改質された量子ドットを提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
前記化学式1において、
Lは、酸二無水物から誘導された2価の残基であり、
およびLは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、または置換もしくは非置換のC6~C20アリール基であり、
mは、1~20の整数である。
【0014】
Lは、下記の化学式2-1~化学式2-15のいずれか1つで表される化合物から誘導された2価の残基であってもよい。
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
前記Lは、下記のグループ1から選択されたいずれか1つで表される。
【0018】
【化4】
【0019】
前記化学式1で表される化合物は、2000g/mol以下の重量平均分子量を有することができる。
【0020】
前記化学式1は、下記の化学式1-1~化学式1-3のいずれか1つで表される。
【0021】
【化5】
【0022】
前記化学式1-1~化学式1-3において、
nは、1~20の整数である。
【0023】
前記量子ドットは、500nm~680nmで最大蛍光発光波長を有することができる。
【0024】
他の実施形態は、前記量子ドットおよび末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性単量体を含む無溶媒型硬化性組成物を提供する。
【0025】
前記無溶媒型硬化性組成物中の重合性単量体は、220g/mol~1,000g/molの分子量を有することができる。
【0026】
前記無溶媒型硬化性組成物中の重合性単量体は、下記の化学式3で表される。
【0027】
【化6】
【0028】
前記化学式3において、
およびRはそれぞれ独立して、水素原子または置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基であり、
およびLは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基またはエーテル基(*-O-*)である。
【0029】
前記無溶媒型硬化性組成物は、前記量子ドット1重量%~60重量%、および前記重合性単量体40重量%~99重量%を含むことができる。
【0030】
前記無溶媒型硬化性組成物は、重合開始剤、光拡散剤またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0031】
さらに他の実施形態は、前記量子ドット、バインダー樹脂および溶媒を含む溶媒型硬化性組成物を提供する。
【0032】
前記溶媒型硬化性組成物は、前記量子ドット1重量%~40重量%;前記バインダー樹脂1重量%~30重量%;および前記溶媒残部量を含むことができる。
【0033】
前記溶媒型硬化性組成物は、重合性単量体、重合開始剤、光拡散剤またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0034】
さらに他の実施形態は、前記硬化性組成物を用いて製造された硬化膜を提供する。
【0035】
さらに他の実施形態は、前記硬化膜を含むカラーフィルタを提供する。
【0036】
その他、本発明の側面の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0037】
一実施形態は、特定の化合物で表面改質された量子ドットを提供し、前記特定のリガンドは量子ドットに対するパッシベーション効果が非常に優れ、前記化合物で表面改質された量子ドットは既存の量子ドットと比較して溶媒型硬化性組成物および無溶媒型硬化性組成物ともに容易に適用可能で工程性に優れているだけでなく、前記組成物を用いて製造された硬化膜の光効率も大きく向上させることができる。さらに、一実施形態による量子ドットを含む硬化性組成物は、保存安定性および耐熱性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0039】
本明細書において、特別な言及がない限り、「アルキル基」とは、C1~C20アルキル基を意味し、「アルケニル基」とは、C2~C20アルケニル基を意味し、「シクロアルケニル基」とは、C3~C20シクロアルケニル基を意味し、「ヘテロシクロアルケニル基」とは、C3~C20ヘテロシクロアルケニル基を意味し、「アリール基」とは、C6~C20アリール基を意味し、「アリールアルキル基」とは、C6~C20アリールアルキル基を意味し、「アルキレン基」とは、C1~C20アルキレン基を意味し、「アリーレン基」とは、C6~C20アリーレン基を意味し、「アルキルアリーレン基」とは、C6~C20アルキルアリーレン基を意味し、「ヘテロアリーレン基」とは、C3~C20ヘテロアリーレン基を意味し、「アルコキシレン基」とは、C1~C20アルコキシレン基を意味する。
【0040】
本明細書において、特別な言及がない限り、「置換」とは、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、C1~C20アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミン基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸またはその塩、C1~C20アルキル基、C2~C20アルケニル基、C2~C20アルキニル基、C6~C20アリール基、C3~C20シクロアルキル基、C3~C20シクロアルケニル基、C3~C20シクロアルキニル基、C2~C20ヘテロシクロアルキル基、C2~C20ヘテロシクロアルケニル基、C2~C20ヘテロシクロアルキニル基、C3~C20ヘテロアリール基またはこれらの組み合わせの置換基で置換されていることを意味する。
【0041】
また、本明細書において、特別な言及がない限り、「ヘテロ」とは、化学式内にN、O、SおよびPの少なくとも1つのヘテロ原子が少なくとも1つ含まれているものを意味する。
【0042】
さらに、本明細書において、特別な言及がない限り、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の両方とも可能であることを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の両方とも可能であることを意味する。
【0043】
本明細書において、特別な言及がない限り、「組み合わせ」とは、混合または共重合を意味する。
【0044】
本明細書内の化学式において、別途の定義がない限り、化学結合が描かれるべき位置に化学結合が描かれていない場合は、前記位置に水素原子が結合していることを意味する。
【0045】
本明細書において、カルド系樹脂とは、下記の化学式4-1~化学式4-11からなる群より選択された1つ以上の官能基が樹脂内の主骨格(backbone)に含まれる樹脂を意味する。
【0046】
また、本明細書において、特別な言及がない限り、「*」は、同一または異なる原子または化学式に連結される部分を意味する。
【0047】
一般的な量子ドットの場合、疎水性表面特性により分散する溶媒が制限的であるので、バインダー樹脂や硬化性単量体などのような極性システムに量子ドットを導入させるのに多くの困難を経験しているのが事実である。
【0048】
一例として、活発に研究されている量子ドット含有硬化性組成物の場合も、その初期段階では相対的に極性度(polarity)が低く、疎水性(hydrophobicity)が高い硬化性組成物に量子ドットがやっと分散する水準であった。そのため、全体組成物基準20重量%以上の高含量で量子ドットを含めることが困難で硬化性組成物の光効率を一定水準以上増加させることができず、光効率を増加させるために無理に量子ドットを追加投入および分散させてもインク-ジェッティング(Ink-jetting)が可能な粘度範囲(12cPs)を超えて工程性を満足させることができなかった。
【0049】
また、インク-ジェッティングが可能な粘度範囲を実現するために、全体硬化性組成物の総量対比50重量%以上の溶媒を含めて硬化性組成物を構成する固形分含有量を低下させる方法を用いてきたが、この方法も、粘度の面では優れることができるが、インク-ジェッティング時における溶媒の揮発によるノズル乾燥、ノズル詰まり現象、インク-ジェッティング後の経時による単膜減少、硬化後の厚さ偏差が激しくて、実際の工程に適用しにくいというデメリットがあった。
【0050】
したがって、量子ドット含有硬化性組成物は、溶媒を含まない無溶剤タイプが実際の工程に適用可能な開発方向であるという点を考える時、現在の量子ドット自体をそのまま適用するには限界があるのが事実である。
【0051】
現在まで報告されたところでは、リガンド置換など表面改質されていない量子ドットの場合、全体硬化性組成物中の20~25重量%程度の少ない含有量だけが含まれており、したがって、粘度の限界により光効率および吸収率を増加させにくいのが現状である。他の改善方向は、量子ドット含有量を低くし、TiOなどの光拡散剤の含有量を増加させる方法もあるが、これも沈降問題や低い光効率を改善できずにいる。
【0052】
量子ドットを含む既存の溶媒型硬化性組成物の問題点は、前述のように、インク-ジェッティング工程時、ノズル部分における溶媒乾燥現象のため、ノズル詰まりが発生し、溶媒の低い蒸気圧によりインク-ジェッティングされたピクセル内のインクが蒸発してターゲットピクセルの厚さを維持できず、インク-ジェッティング工程性を確保しにくいことである。
【0053】
また、ピクセル内に膜を形成した後、post baking(あるいは追加の熱硬化)工程を経ると、一定の厚さの層を形成するためにピクセルの高さをはるかに上回るインク量をインク-ジェッティングしてpinningポイント(滴が壊れない最大高さ)を形成しなければならないが、これも現実的に不可能な上に、工程可能な溶媒が40dyne/cmに近い表面張力を有していなければならないので、開発の可能性も非常に低い。
【0054】
そこで、本発明者らは長い間の研究の末、チオール基を有さず、従来一般に使用される量子ドット表面改質用リガンドとその構造が異なるだけでなく、酸二無水物から誘導された2価の残基を含むリガンドを用いて量子ドットを表面改質させることによって、量子ドットの光特性の低下を防止すると同時に、量子ドット含有硬化性組成物の保存安定性および耐熱性を大きく改善させた。
【0055】
例えば、前記リガンドは、下記の化学式1で表される。
【0056】
【化7】
【0057】
前記化学式1において、
Lは、酸二無水物から誘導された2価の残基であり、
およびLは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、または置換もしくは非置換のC6~C20アリール基であり、
mは、1~20の整数である。
【0058】
前記化学式1で表される化合物は、従来量子ドット表面改質物質として時々使用されるチオール系化合物とはその構造が全く異なる、酸二無水物から誘導されたリガンドであって、このようなリガンドで量子ドットを表面改質する場合、前記表面改質された量子ドットは、前記量子ドット含有組成物で製造された硬化膜の光効率を大きく向上させることができ、さらに、前記組成物の保存安定性および耐熱性も改善させることができる。
【0059】
例えば、前記Lは、下記の化学式2-1~化学式2-15のいずれか1つで表される化合物から誘導された2価の残基であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0060】
【化8】
【0061】
【化9】
【0062】
例えば、前記Lは、下記のグループ1から選択されたいずれか1つで表されるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0063】
【化10】
【0064】
前記化学式1で表される化合物は、2000g/mol以下の重量平均分子量、例えば400~2000g/molの重量平均分子量を有することができる。前記化学式1で表される化合物が前記範囲の重量平均分子量を有する場合、前記化合物で表面改質された量子ドット含有硬化性組成物の粘度を低く維持可能で、インク-ジェッティングに有利であり得る。
【0065】
例えば、前記化学式1は、下記の化学式1-1~化学式1-3のいずれか1つで表されるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0066】
【化11】
【0067】
前記化学式1-1~化学式1-3において、
nは、1~20の整数である。
【0068】
例えば、前記量子ドットは、500nm~680nmで最大蛍光発光波長を有することができる。
【0069】
他の実施形態による硬化性組成物は、前記化学式1で表される化合物で表面改質された量子ドットを含む。
【0070】
現在までの量子ドット含有硬化性組成物(インク)は、量子ドットとの相溶性が良いモノマーを特化させる方向に開発が行われており、さらに製品化まで行われている。
【0071】
一方、一般的で汎用的に使用されている重合性単量体である-ene系単量体(ビニル系単量体、アクリレート系単量体、メタクリレート系単量体などをすべて含み、単官能から多官能までを含む)は、量子ドットとの相溶性が少なく、量子ドットの分散性において限界があることによって、量子ドット含有硬化性組成物に有用に適用させるための多様な開発が難しいのが事実である。何よりも前記-ene系単量体は高濃縮量子ドットの分散性を示さないという点から、量子ドット含有硬化性組成物に適用させるのに困難があった。
【0072】
このようなデメリットにより、量子ドット含有硬化性組成物は、溶媒を相当量(50重量%以上)含む組成で開発されてきたが、溶媒の含有量が多くなる場合、インクジェッティング(Ink jetting)工程性が低下する問題がある。したがって、インクジェッティング(Ink jetting)工程性を満足させるために、無溶媒型硬化性組成物に対する需要がますます増加している。
【0073】
本願は、ますます需要が増大している無溶媒型硬化性組成物を提供し、末端に炭素-炭素二重結合を有する化合物を含む重合性単量体を、前記化学式1または化学式2で表される化合物で表面改質された量子ドットと共に使用することによって、硬化性組成物に対する量子ドットの親和性を向上させて、無溶媒システム(solvent-free system)においても量子ドットの高濃度分散性を与えることができかつ、量子ドット本来の光特性を阻害しないパッシベーション(passivation)効果まで達成することができる。
【0074】
以下、無溶媒型硬化性組成物を構成するそれぞれの成分について具体的に説明する。
【0075】
量子ドット
前記無溶媒型硬化性組成物に含まれる量子ドットとして、前記化学式1で表される化合物で表面改質された量子ドットを含む。
【0076】
例えば、前記量子ドットは、360nm~780nmの波長領域、例えば400nm~780nmの波長領域の光を吸収して、500nm~700nmの波長領域、例えば500nm~580nmで蛍光を放出したり、600nm~680nmで蛍光を放出することができる。つまり、前記量子ドットは、500nm~680nmで最大蛍光発光波長(fluorescence λem)を有することができる。
【0077】
前記量子ドットは、それぞれ独立して、20nm~100nm、例えば20nm~50nmの半値幅(Full width at half maximum;FWHM)を有することができる。前記量子ドットが前記範囲の半値幅を有する場合、色純度が高いことによって、カラーフィルタ内の色材料として使用する時、色再現率が高まる効果がある。
【0078】
前記量子ドットは、それぞれ独立して、有機物であるか無機物、または有機物と無機物とのハイブリッド(混成物)であってもよい。
【0079】
前記量子ドットは、それぞれ独立して、コアおよび前記コアを囲むシェルで構成され、前記コアおよびシェルは、それぞれ独立して、II-IV族、III-V族などからなるコア、コア/シェル、コア/第1シェル/第2シェル、合金、合金/シェルなどの構造を有することができ、これに限定されるものではない。
【0080】
例えば、前記コアは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAsおよびこれらの合金からなる群より選択された少なくとも1つ以上の物質を含むことができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記コアを囲むシェルは、CdSe、ZnSe、ZnS、ZnTe、CdTe、PbS、TiO、SrSe、HgSeおよびこれらの合金からなる群より選択された少なくとも1つ以上の物質を含むことができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0081】
一実施形態では、最近、全世界的に環境に対する関心が大きく増加し、有毒性物質に対する規制が強化されているので、カドミウム系コアを有する発光物質の代わりに、量子効率(quantum yield)はやや低いものの環境にやさしい非カドミウム系発光素材(InP/ZnS、InP/ZnSe/ZnSなど)を使用しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0082】
前記コア/シェル構造の量子ドットの場合、シェルを含む全体量子ドットそれぞれの大きさ(平均粒径)は、1nm~15nm、例えば5nm~15nmであってもよい。
【0083】
例えば、前記量子ドットは、それぞれ独立して、赤色量子ドット、緑色量子ドットまたはこれらの組み合わせを含むことができる。前記赤色量子ドットは、それぞれ独立して、10nm~15nmの平均粒径を有することができる。前記緑色量子ドットは、それぞれ独立して、5nm~8nmの平均粒径を有することができる。
【0084】
一方、前記量子ドットの分散安定性のために、一実施形態による無溶媒型硬化性組成物は、分散剤をさらに含んでもよい。前記分散剤は、量子ドットのような光変換物質が無溶媒型硬化性組成物内で均一に分散するように補助し、非イオン性、陰イオン性または陽イオン性分散剤のすべてを使用することができる。具体的には、ポリアルキレングリコールまたはそのエステル類、ポリオキシアルキレン、多価アルコールエステルアルキレンオキシド付加物、アルコールアルキレンオキシド付加物、スルホン酸エステル、スルホン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アルキルアミドアルキレンオキシド付加物、アルキルアミンなどを使用することができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。前記分散剤は、量子ドットのような光変換物質の固形分対比0.1重量%~100重量%、例えば10重量%~20重量%使用できる。
【0085】
前記化学式1で表面改質された量子ドットは、前記無溶媒型硬化性組成物の総量に対して1重量%~60重量%、例えば3重量%~50重量%含まれる。前記表面改質された量子ドットが前記範囲内に含まれる場合、光変換率に優れ、パターン特性と現像特性を阻害せず、優れた工程性を有することができる。
【0086】
末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性単量体
前記末端に炭素-炭素二重結合を有する単量体は、前記無溶媒型硬化性組成物の総量に対して40重量%~99重量%、例えば50重量%~97重量%含まれる。前記末端に炭素-炭素二重結合を有する単量体の含有量が前記範囲内であってこそ、インクジェッティングが可能な粘度を有する無溶媒型硬化性組成物の製造が可能であり、また、製造された無溶媒型硬化性組成物内の量子ドットが優れた分散性を有し得て、光特性も向上できる。
【0087】
例えば、前記末端に炭素-炭素二重結合を有する単量体は、220g/mol~1,000g/molの分子量を有することができる。前記末端に炭素-炭素二重結合を有する単量体の分子量が前記範囲の場合、量子ドットの光特性を阻害することなく組成物の粘度を高めず、インク-ジェッティングに有利であり得る。
【0088】
例えば、前記末端に炭素-炭素二重結合を有する単量体は、下記の化学式3で表されるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0089】
【化12】
【0090】
前記化学式3において、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基であり、
およびLは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基またはエーテル基(*-O-*)である。
【0091】
例えば、前記末端に炭素-炭素二重結合を有する単量体は、下記の化学式3-1または3-2で表されるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0092】
【化13】
【0093】
例えば、前記末端に炭素-炭素二重結合を有する単量体は、前記化学式3-1または化学式3-2で表される化合物のほかにも、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ノボラックエポキシアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートまたはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0094】
また、前記末端に炭素-炭素二重結合を有する単量体と共に、従来の熱硬化性または光硬化性組成物に一般に使用される単量体をさらに含むことができ、例えば、前記単量体は、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどのオキセタン系化合物などをさらに含むことができる。
【0095】
重合開始剤
一実施形態による無溶媒型硬化性組成物は、重合開始剤をさらに含むことができ、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0096】
前記光重合開始剤は、感光性樹脂組成物に一般に使用される開始剤であって、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物、アミノケトン系化合物などを使用することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0097】
前記アセトフェノン系の化合物の例としては、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0098】
前記ベンゾフェノン系化合物の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-2-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0099】
前記チオキサントン系化合物の例としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0100】
前記ベンゾイン系化合物の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0101】
前記トリアジン系化合物の例としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ビフェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-s-トリアジンなどが挙げられる。
【0102】
前記オキシム系化合物の例としては、O-アシルオキシム系化合物、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、O-エトキシカルボニル-α-オキシアミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどを使用することができる。前記O-アシルオキシム系化合物の具体例としては、1,2-オクタンジオン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテートおよび1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1-オンオキシム-O-アセテートなどが挙げられる。
【0103】
前記アミノケトン系化合物の例としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(2-Benzyl-2-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-butanone-1)などが挙げられる。
【0104】
前記光重合開始剤は、前記化合物のほかにも、カルバゾール系化合物、ジケトン類化合物、スルホニウムボレート系化合物、ジアゾ系化合物、イミダゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物などを使用することができる。
【0105】
前記光重合開始剤は、光を吸収して励起した状態になった後、そのエネルギーを伝達することによって化学反応を起こす光増感剤と共に使用されてもよい。
【0106】
前記光増感剤の例としては、テトラエチレングリコールビス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネートなどが挙げられる。
【0107】
前記熱重合開始剤の例としては、パーオキサイド、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ヒドロパーオキサイド(例えば、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド)、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、2,2-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、t-ブチルパーベンゾエートなどが挙げられ、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオニトリルなどが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、当業界にて広く知られたものであれば、いずれでも使用可能である。
【0108】
前記重合開始剤は、前記無溶媒型硬化性組成物の総量に対して0.1重量%~5重量%、例えば1重量%~4重量%含まれる。重合開始剤が前記範囲内に含まれる場合、露光または熱硬化時に硬化が十分に起きて優れた信頼性を得ることができ、未反応開始剤による透過率の低下を防止して量子ドットの光特性の低下を防止することができる。
【0109】
光拡散剤(または光拡散剤分散液)
一実施形態による無溶媒型硬化性組成物は、光拡散剤をさらに含むことができる。
【0110】
例えば、前記光拡散剤は、硫酸バリウム(BaSO)、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、ジルコニア(ZrO)またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0111】
前記光拡散剤は、前述した量子ドットに吸収されない光を反射させ、前記反射した光を量子ドットが再び吸収できるようにする。つまり、前記光拡散剤は、量子ドットに吸収される光の量を増加させて、硬化性組成物の光変換効率を増加させることができる。
【0112】
前記光拡散剤は、平均粒径(D50)が150nm~250nmであってもよいし、具体的には180nm~230nmであってもよい。前記光拡散剤の平均粒径が前記範囲内の場合、より優れた光拡散効果を有することができ、光変換効率を増加させることができる。
【0113】
前記光拡散剤は、前記無溶媒型硬化性組成物の総量に対して1重量%~20重量%、例えば5重量%~10重量%含まれる。前記光拡散剤が前記無溶媒型硬化性組成物の総量に対して1重量%未満で含まれる場合、光拡散剤を使用することによる光変換効率の向上効果を期待しにくく、20重量%を超えて含む時には、量子ドットの沈降問題が発生する恐れがある。
【0114】
その他の添加剤
前記量子ドットの安定性および分散性向上のために、一実施形態による無溶媒型硬化性組成物は、重合禁止剤をさらに含むことができる。
【0115】
前記重合禁止剤は、ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。一実施形態による無溶媒型硬化性組成物が前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物またはこれらの組み合わせをさらに含むことによって、無溶媒型硬化性組成物を印刷(コーティング)後、露光する間の常温架橋を防止することができる。
【0116】
例えば、前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物またはこれらの組み合わせは、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、カテコール、t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、ピロガロール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-ナフトール、トリス(N-ヒドロキシ-N-ニトロソフェニルアミナト-O,O’)アルミニウム(Tris(N-hydroxy-N-nitrosophenylaminato-O,O’)aluminium)またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0117】
前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物またはこれらの組み合わせは、分散液の形態で使用可能であり、前記分散液形態の重合禁止剤は、無溶媒型硬化性組成物の総量に対して0.001重量%~3重量%、例えば0.1重量%~2重量%含まれる。前記重合禁止剤が前記範囲内に含まれる場合、常温経時問題を解決すると同時に、感度低下および表面剥離現象を防止することができる。
【0118】
また、一実施形態による無溶媒型硬化性組成物は、耐熱性および信頼性向上のために、マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオ-ル;シラン系カップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0119】
例えば、一実施形態による無溶媒型硬化性組成物は、基板との密着性などを改善するために、ビニル基、カルボキシル基、メタクリルオキシ基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン系カップリング剤をさらに含むことができる。
【0120】
前記シラン系カップリング剤の例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γイソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、βエポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して使用することができる。
【0121】
前記シラン系カップリング剤は、前記無溶媒型硬化性組成物100重量部に対して0.01重量部~10重量部含まれる。シラン系カップリング剤が前記範囲内に含まれる場合、密着性、保存性などに優れている。
【0122】
また、前記無溶媒型硬化性組成物は、必要に応じて、コーティング性の向上および欠点生成防止効果のために、つまり、レベリング(leveling)性能を改善させるために、界面活性剤、例えば、フッ素系界面活性剤をさらに含むことができる。
【0123】
前記フッ素系界面活性剤は、4,000g/mol~10,000g/molの低い重量平均分子量を有することができ、具体的には6,000g/mol~10,000g/molの重量平均分子量を有することができる。また、前記フッ素系界面活性剤は、表面張力が18mN/m~23mN/m(0.1%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液で測定)であってもよい。前記フッ素系界面活性剤の重量平均分子量および表面張力が前記範囲内の場合、レベリング性能をさらに改善することができ、高速コーティング(high speed coating)時、シミの発生を防止することができ、気泡の発生が少なくて膜欠陥が少ないため、高速コーティング法であるスリットコーティング(slit coating)に優れた特性を付与する。
【0124】
前記フッ素系界面活性剤としては、BM Chemie社のBM-1000(登録商標)、BM-1100(登録商標)など;大日本インキ化学工業(株)社のメガファックF142D(登録商標)、同F172(登録商標)、同F173(登録商標)、同F183(登録商標)など;住友スリーエム(株)社のフロラードFC-135(登録商標)、同FC-170C(登録商標)、同FC-430(登録商標)、同FC-431(登録商標)など;旭硝子(株)社のサーフロンS-112(登録商標)、同S-113(登録商標)、同S-131(登録商標)、同S-141(登録商標)、同S-145(登録商標)など;東レシリコーン(株)社のSH-28PA(登録商標)、同-190(登録商標)、同-193(登録商標)、SZ-6032(登録商標)、SF-8428(登録商標)など;DIC(株)社のF-482、F-484、F-478、F-554などの名称で市販中のフッ素系界面活性剤を使用することができる。
【0125】
また、一実施形態による無溶媒型硬化性組成物は、前述したフッ素系界面活性剤と共に、シリコーン系界面活性剤を使用してもよい。前記シリコーン系界面活性剤の具体例としては、東芝シリコーン社のTSF400、TSF401、TSF410、TSF4440などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
前記フッ素系界面活性剤などを含む界面活性剤は、前記無溶媒型硬化性組成物100重量部に対して0.01重量部~5重量部、例えば0.1重量部~2重量部含まれる。前記界面活性剤が前記範囲内に含まれる場合、噴射された組成物内に異物が発生する現象が減少する。
【0127】
また、一実施形態による無溶媒型硬化性組成物は、物性を阻害しない範囲内で酸化防止剤などのその他の添加剤が一定量さらに添加されてもよい。
【0128】
例えば、前記硬化性組成物は、前述した無溶媒型硬化性組成物のほかにも、前記化学式1で表面改質された量子ドット、バインダー樹脂および溶媒を含む溶媒型硬化性組成物を提供することができる。この時、前記表面改質された量子ドットは、前記溶媒型硬化性組成物の総量対比1重量%~40重量%含まれる。前記表面改質された量子ドットが溶媒型硬化性組成物の総量対比前記含有量範囲で含まれていてこそ、工程性の面で有利であり得る。
【0129】
以下、溶媒型硬化性組成物を構成するそれぞれの成分について具体的に説明する。
【0130】
バインダー樹脂
前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂、カルド系樹脂、エポキシ樹脂またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0131】
前記アクリル系樹脂は、第1エチレン性不飽和単量体およびこれと共重合可能な第2エチレン性不飽和単量体の共重合体で、1つ以上のアクリル系繰り返し単位を含む樹脂であってもよい。
【0132】
前記第1エチレン性不飽和単量体は、1つ以上のカルボキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体であり、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0133】
前記第1エチレン性不飽和単量体は、前記アクリル系バインダー樹脂の総量に対して5重量%~50重量%、例えば10重量%~40重量%含まれる。
【0134】
前記第2エチレン性不飽和単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルメチルエーテルなどの芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル化合物;2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル化合物;酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物;グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド化合物;などが挙げられ、これらを単独でまたは2以上混合して使用することができる。
【0135】
前記アクリル系バインダー樹脂の具体例としては、ポリベンジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などが挙げられるが、これに限定されるものではなく、これらを単独または2種以上を配合して使用することもできる。
【0136】
前記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、5,000g/mol~15,000g/molであってもよい。前記アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記範囲内の場合、基板との密着性に優れ、物理的、化学的物性が良いし、粘度が適切である。
【0137】
前記カルド系樹脂は、下記の化学式4で表される繰り返し単位を含むことができる。
【0138】
【化14】
【0139】
前記化学式4において、
31およびR32は、それぞれ独立して、水素原子または置換もしくは非置換の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基であり、
33およびR34は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であり、
は、単一結合、O、CO、SO、CR3536、SiR3738(ここで、R35~R38は、それぞれ独立して、水素原子または置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基である)または下記の化学式4-1~化学式4-11で表される連結基のいずれか1つであり、
【0140】
【化15】
【0141】
(前記化学式4-5において、
は、水素原子、エチル基、CCl、COH、CHCH=CHまたはフェニル基である。)
【0142】
【化16】
【0143】
は、酸無水物残基であり、
t1およびt2は、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0144】
前記カルド系樹脂の重量平均分子量は、500g/mol~50,000g/mol、例えば1,000g/mol~30,000g/molであってもよい。前記カルド系樹脂の重量平均分子量が前記範囲内の場合、硬化膜の製造時、残渣なくパターン形成がうまく行われ、溶媒型硬化性組成物の現像時に膜厚損失がなく、良好なパターンを得ることができる。
【0145】
前記カルド系樹脂は、両末端の少なくとも1つに下記の化学式5で表される官能基を含むことができる。
【0146】
【化17】
【0147】
前記化学式5において、
は、下記の化学式5-1~化学式5-7で表される。
【0148】
【化18】
【0149】
(前記化学式5-1において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、エステル基またはエーテル基である。)
【0150】
【化19】
【0151】
(前記化学式5-5において、Rは、O、S、NH、置換もしくは非置換のC1~C20アルキレン基、C1~C20アルキルアミン基またはC2~C20アルケニルアミン基である。)
【0152】
【化20】
【0153】
前記カルド系樹脂は、例えば、9,9-ビス(4-オキシラニルメトキシフェニル)フルオレンなどのフルオレン含有化合物;ベンゼンテトラカルボン酸ジ無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジ無水物、ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、ピロメリティックジ無水物、シクロブタンテトラカルボン酸ジ無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジ無水物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸ジ無水物、テトラヒドロフタル酸無水物などの無水物化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどのアルコール化合物;プロピレングリコールメチルエチルアセテート、N-メチルピロリドンなどの溶媒類化合物;トリフェニルホスフィンなどのリン化合物;およびテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロミド、ベンジルジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどのアミンまたはアンモニウム塩化合物のうちの2以上を混合して製造することができる。
【0154】
前記バインダー樹脂がカルド系樹脂の場合、これを含む溶媒型硬化性組成物、特に感光性樹脂組成物の現像性に優れ、光硬化時に感度が良くて微細パターン形成性に優れている。
【0155】
前記アクリル系樹脂の酸価は、80mgKOH/g~130mgKOH/gであってもよい。前記アクリル系樹脂の酸価が前記範囲内の場合、ピクセルパターンの解像度に優れている。
【0156】
前記エポキシ樹脂は、熱によって重合できるモノマー(monomer)またはオリゴマー(oligomer)として、炭素-炭素不飽和結合および炭素-炭素環状結合を有する化合物などを含むことができる。
【0157】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂および脂肪族ポリグリシジルエーテルなどを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0158】
このような化合物の市販品として、ビスフェニルエポキシ樹脂には油化シェルエポキシ(株)社のYX4000、YX4000H、YL6121H、YL6640、YL6677;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂には日本化薬(株)社のEOCN-102、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1020、EOCN-1025、EOCN-1027および油化シェルエポキシ(株)社のエピコート180S75;ビスフェノールA型エポキシ樹脂には油化シェルエポキシ(株)社のエピコート1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010および828;ビスフェノールF型エポキシ樹脂には油化シェルエポキシ(株)社のエピコート807および834;フェノールノボラック型エポキシ樹脂には油化シェルエポキシ(株)社のエピコート152、154、157H65および日本化薬(株)社のEPPN201、202;その他の環状脂肪族エポキシ樹脂にはCIBA-GEIGY A.G社のCY175、CY177およびCY179、U.C.C社のERL-4234、ERL-4299、ERL-4221およびERL-4206、昭和電工(株)社のショウダイン509、CIBA-GEIGY A.G社のアラルダイトCY-182、CY-192およびCY-184、大日本インキ工業(株)社のエピクロン200および400、油化シェルエポキシ(株)社のエピコート871、872およびEP1032H60、セラニーズコーティング(株)社のED-5661およびED-5662;脂肪族ポリグリシジルエーテルには油化シェルエポキシ(株)社のエピコート190Pおよび191P、共栄社油脂化学工業(株)社のエポライト100MF、日本油脂(株)社のエピオールTMPなどが挙げられる。
【0159】
前記バインダー樹脂は、前記溶媒型硬化性組成物の総量に対して1重量%~30重量%含まれる。
【0160】
溶媒
前記溶媒は、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;メチルラクテート、エチルラクテートなどの乳酸アルキルエステル類;メチルヒドロキシアセテート、エチルヒドロキシアセテート、ブチルヒドロキシアセテートなどのヒドロキシ酢酸アルキルエステル類;メトキシメチルアセテート、メトキシエチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシメチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどの酢酸アルコキシアルキルエステル類;メチル3-ヒドロキシプロピオネート、エチル3-ヒドロキシプロピオネートなどの3-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、メチル3-エトキシプロピオネートなどの3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-ヒドロキシプロピオネート、エチル2-ヒドロキシプロピオネート、プロピル2-ヒドロキシプロピオネートなどの2-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-メトキシプロピオネート、エチル2-メトキシプロピオネート、エチル2-エトキシプロピオネート、メチル2-エトキシプロピオネートなどの2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート、エチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネートなどの2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-メトキシ-2-メチルプロピオネート、エチル2-エトキシ-2-メチルプロピオネートなどの2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチルプロピオネート、2-ヒドロキシ-2-メチルエチルプロピオネート、ヒドロキシエチルアセテート、メチル2-ヒドロキシ-3-メチルブタノエートなどのエステル類;またはピルビン酸エチルなどのケトン酸エステル類の化合物があり、また、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセチルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0161】
例えば、前記溶媒は、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレンジグリコールメチルエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;エタノールなどのアルコール類またはこれらの組み合わせを使用することが好ましい。
【0162】
例えば、前記溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレンジグリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2-ブトキシエタノール、N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、プロピレンカーボネート、γブチロラクトンまたはこれらの組み合わせを含む極性溶媒であってもよい。
【0163】
前記溶媒は、溶媒型硬化性組成物の総量に対して残部量、例えば30重量%~80重量%、例えば35重量%~70重量%含まれる。溶媒が前記範囲内に含まれる場合、溶媒型硬化性組成物が適切な粘度を有することによって、スピンコーティングおよびスリットを用いた大面積コーティング時に優れたコーティング性を有することができる。
【0164】
例えば、前記溶媒型硬化性組成物は、前記成分のほかに、前述した末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性単量体、重合開始剤、光拡散剤およびその他の添加剤のいずれか1つ以上をさらに含むことができ、具体的な組成や含有量などは前述した通りである。
【0165】
例えば、前記溶媒型硬化性組成物は、感光性樹脂組成物であってもよい。この場合、前記溶媒型硬化性組成物は、前記重合開始剤として光重合開始剤を含むことができる。
【0166】
また、他の実施形態は、前述した無溶媒型硬化性組成物および溶媒型硬化性組成物を用いて製造された硬化膜、前記硬化膜を含むカラーフィルタおよび前記カラーフィルタを含むディスプレイ装置を提供する。
【0167】
前記硬化膜の製造方法の一つは、前述した無溶媒型硬化性組成物および溶媒型硬化性組成物を基板上にインクジェット噴射方法で塗布してパターンを形成する段階(S1)と、前記パターンを硬化する段階(S2)とを含む。
【0168】
(S1)パターンを形成する段階
前記無溶媒型硬化性組成物は、インクジェット分散方式で0.5~20μmの厚さに基板上に塗布することが好ましい。前記インクジェット噴射は、各ノズルあたり単一カラーのみ噴射して必要な色の数に応じて繰り返し噴射することによってパターンを形成することができ、工程を低減するために必要な色の数を各インクジェットノズルを介して同時に噴射する方式でパターンを形成することもできる。
【0169】
(S2)硬化する段階
前記得られたパターンを硬化させて画素を得ることができる。この時、硬化させる方法としては、熱硬化工程または光硬化工程をすべて適用することができる。前記熱硬化工程は、100℃以上の温度に加熱して硬化させることが好ましく、さらに好ましくは、100℃~300℃に加熱して硬化させることができ、さらにより好ましくは、160℃~250℃に加熱して硬化させることができる。前記光硬化工程は、190nm~450nm、例えば200nm~500nmのUV光線などの活性線を照射する。照射に使用される光源には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、金属ハロゲン化物ランプ、アルゴンガスレーザなどを用いることができ、場合によっては、X線、電子線なども利用可能である。
【0170】
前記硬化膜の製造方法の他の一つは、前述した無溶媒型硬化性組成物および溶媒型硬化性組成物を用いてリソグラフィ法を用いて硬化膜を製造するもので、製造方法は次の通りである。
【0171】
(1)塗布および塗膜形成段階
前述した硬化性組成物を所定の前処理を施した基板上に、スピンまたはスリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法などの方法を用いて所望の厚さ、例えば2μm~10μmの厚さに塗布した後、70℃~90℃の温度で1分~10分間加熱して溶媒を除去することによって塗膜を形成する。
【0172】
(2)露光段階
前記得られた塗膜に必要なパターン形成のために所定形態のマスクを介在した後、190nm~450nm、例えば200nm~500nmのUV光線などの活性線を照射する。照射に使用される光源には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、金属ハロゲン化物ランプ、アルゴンガスレーザなどを用いることができ、場合によっては、X線、電子線なども利用可能である。
【0173】
露光量は、前記硬化性組成物の各成分の種類、配合量および乾燥膜の厚さに応じて異なるが、例えば、高圧水銀灯を用いる場合、500mJ/cm以下(365nmのセンサによる)である。
【0174】
(3)現像段階
前記露光段階に続いて、アルカリ性水溶液を現像液として用いて不必要な部分を溶解、除去することによって、露光部分だけを残存させて画像パターンを形成させる。つまり、アルカリ現像液で現像する場合、非露光部は溶解し、イメージカラーフィルタパターンが形成される。
【0175】
(4)後処理段階
前記現像によって得られた画像パターンを耐熱性、耐光性、密着性、耐クラック性、耐薬品性、高強度、保存安定性などの面で優れたパターンを得るために、再び加熱したり、活性線照射などを行って硬化させることができる。
【実施例
【0176】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0177】
(リガンド合成)
合成例1
Polyoxyethylene Monomethyl Ether400g(MPEG-400、Hannong化成)、Bicyclo[2.2.2]oct-7-ene-2,3,5,6-tetracarboxylic dianhydride124g、toluene500g、triethylene amine60gを入れて、100℃まで昇温して24時間反応させる。反応終了後、5%HCl水溶液で中和させた後、tolueneを除去して、下記の化学式1-1Aで表される最終収得物500gを得る。
【0178】
【化21】
【0179】
合成例2
Polyoxyethylene Monomethyl Ether400gの代わりにPolyoxyethylene phenyl ether(PH-4、Hannong化成)270gを用いたことを除けば、合成例1と同様に実施して、下記の化学式1-2Aで表される最終収得物400gを得る。
【0180】
【化22】
【0181】
合成例3
Polyoxyethylene Monomethyl Ether400gの代わりにPolyoxyethylene cumyl phenyl ether(Hannong化成)520gを用いたことを除けば、合成例1と同様に実施して、下記の化学式1-3Aで表される最終収得物630gを得る。
【0182】
【化23】
【0183】
比較合成例1
2口丸底フラスコに、2-mercapto-1-ethanol10g、2-2-(2-methoxyethoxy)ethoxy acetic acid13.3g、p-toluenesulfonic acid monohydrate2.1gをそれぞれ入れて、cyclohexane300mLに溶解する。注入口にdean starkを締結し、それにcondensorを連結する。8時間reflux後、反応を終了する。(dean starkに集まった水の最終収得量を確認)。Separating funnelに反応物を移し、抽出(extraction)、中和段階を経て溶媒を除去した後、真空オーブン乾燥して、下記の化学式C-1で表される最終収得物を得る。
【0184】
【化24】
【0185】
(リガンドで表面改質された量子ドット分散液の製造)
製造例1
3口丸底フラスコにマグネチックバーを入れて、量子ドット-CHA(cyclohexyl acetate)溶液(固形分26wt%~27wt%)を計量投入する。これに前記化学式1-1で表されるリガンドを投入する。
【0186】
1分程度よく混合した後、80℃窒素雰囲気で撹拌する。反応終了後、常温にcoolingした後、Cyclohexaneに量子ドット反応液を入れて沈殿をとる。遠心分離により沈殿した量子ドットパウダーとcyclohexaneを分離する。澄んだ溶液は注ぎ出して廃棄し、沈殿は真空オーブンにて1日間十分に乾燥して、表面改質された量子ドットを得る。
【0187】
前記表面改質された量子ドットを下記の化学式3-2で表される単量体(1,6-hexanediol diacrylate、Miwon商社)に12時間撹拌して、表面改質された量子ドット分散液を得た。
【0188】
【化25】
【0189】
製造例2
化学式1-1で表されるリガンドの代わりに前記化学式1-2で表されるリガンドを用いたことを除けば、製造例1と同様に行った。
【0190】
製造例3
化学式1-1で表されるリガンドの代わりに前記化学式1-3で表されるリガンドを用いたことを除けば、製造例1と同様に行った。
【0191】
比較製造例1
化学式1-1で表されるリガンドの代わりに前記化学式C-1で表されるリガンドを用いたことを除けば、製造例1と同様に行った。
【0192】
評価1:分散性
Particle size analyzerを用いて製造例1~製造例3および比較製造例1から製造された量子ドット分散溶液上の粒度をマイクロ粒度分析機(Micro Particle Size Analyzer)でそれぞれ3回ずつ測定して平均を求め、その結果を下記表1に示した。
【0193】
【表1】
【0194】
前記表1から、製造例1~製造例3の量子ドット分散溶液は、粒度分布が狭い特性を有し、高沸点および高表面張力溶媒によく分散することを確認できるが、比較製造例1の量子ドット分散溶液は、粒度分布が広い特性を有し、高沸点および高表面張力溶媒によく分散しないことを確認できる。
【0195】
(無溶媒型硬化性組成物の製造)
実施例1
前記製造例1で得られた分散液を計量した後、前記化学式3-2で表される単量体と混合して希釈し、重合禁止剤(メチルヒドロキノン、TOKYO CHEMICAL社)を入れて5分間撹拌する。次に、光開始剤(TPO-L、Polynetron社)を投入した後、光拡散剤(TiO(固形分50重量%);Dittotechnology(株))を入れる。全体分散液を1時間撹拌して無溶媒型硬化性組成物を製造する。無溶媒型硬化性組成物の総量を基準として、量子ドットは40重量%、化学式3-2で表される単量体は48重量%、重合禁止剤は1重量%、光開始剤は3重量%および光拡散剤は8重量%含まれる。
【0196】
実施例2
製造例1で得られた分散液の代わりに前記製造例2で得られた分散液を用いたことを除けば、実施例1と同様に行った。
【0197】
実施例3
製造例1で得られた分散液の代わりに前記製造例3で得られた分散液を用いたことを除けば、実施例1と同様に行った。
【0198】
比較例1
製造例1で得られた分散液の代わりに前記比較製造例1で得られた分散液を用いたことを除けば、実施例1と同様に行った。
【0199】
評価2:光特性評価
実施例1~実施例3および比較例1で製造された無溶媒型硬化性組成物をそれぞれイエローフォトレジスト(YPR)上にスピンコーティング機(Mikasa社、Opticoat MS-A150、800rpm、5秒)を用いて約15μmの厚さに塗布し、窒素雰囲気下、395nm UV露光機で5000mJ(83℃10秒)で露光した。この後、積分球装置(QE-2100、otsuka electronics)に2cm×2cmの単膜試験片をローディングして、光変換率を測定した。以後、前記ローディングされた単膜試験片を180℃の窒素雰囲気乾燥炉内で30分間乾燥した後、露光後乾燥するまでの光維持率を測定し、測定結果を下記表2に示した。
【0200】
【表2】
【0201】
前記表2から、一実施形態による無溶媒型硬化性組成物は、光特性が非常に優れていることを確認できる。
【0202】
(溶媒型硬化性組成物の製造)
実施例4
下記言及された構成成分を当該含有量として溶媒型硬化性組成物(感光性樹脂組成物)を製造した。
【0203】
具体的には、溶媒に光重合開始剤を溶解させた後、2時間常温で十分に撹拌した。次に、バインダー樹脂を製造例1の量子ドット分散液、分散剤(EVONIK社、TEGO D685)および重合性単量体と共に投入し、再び2時間常温で撹拌した。これに光拡散剤およびフッ素系界面活性剤を添加した後、1時間常温で撹拌し、前記生成物を3回ろ過して不純物を除去することによって、感光性樹脂組成物を製造した。
【0204】
1)量子ドット分散液:製造例1
2)バインダー樹脂:カルド系バインダー樹脂(TSR-TA01、TAKOMA社)25重量%
3)重合性単量体:ペンタエリスリトールヘキサメタクリレート(DPHA、Nippon Kayaku社)5.4重量%
4)光重合開始剤:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO、Sigma-Aldrich社)0.7重量%
5)溶媒:ジメチルアジペート(dimethyl adipate)39重量%
6)光拡散剤:二酸化チタン分散液(TiO固形分20重量%、平均粒径:200nm、Dittotechnology(株))15重量%
7)その他の添加剤:フッ素系界面活性剤(F-554、DIC社)0.9重量%
実施例5
製造例1の量子ドット分散液の代わりに製造例2の量子ドット分散液を用いたことを除けば、実施例4と同様に行った。
【0205】
実施例6
製造例1の量子ドット分散液の代わりに製造例3の量子ドット分散液を用いたことを除けば、実施例4と同様に行った。
【0206】
比較例2
製造例1の量子ドット分散液の代わりに比較製造例1の量子ドット分散液を用いたことを除けば、実施例4と同様に行った。
【0207】
評価3:量子ドットの光変換率および光変換維持率評価
前記実施例4~実施例6および比較例2で製造された硬化性組成物をそれぞれガラス基板上にスピンコーティング機(Mikasa社、Opticoat MS-A150、150rpm)を用いて6μmの厚さに単膜コーティングした後、熱板(hot-plate)を用いて80℃で1分間乾燥して塗膜を得た。この後、露光機(Ushio社、ghi broadband)を用いて100mJ/cmの出力(power)でUVを照射した後、convection clean oven(jongro株式会社)で180℃で30分間ポスト-ベーキング(post-baking;POB)を進行させ、光変換率を測定して、その結果を表3に示した。
【0208】
【表3】
【0209】
前記表3に示すように、一実施形態による表面改質された量子ドットを用いた溶媒型硬化性組成物は、カラーフィルタ工程を進行させることによる光変換率の低下が小さくて、光維持率が高いことを確認できる。
【0210】
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実地できることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的であり、限定的ではないと理解しなければならない。