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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 3/00 20060101AFI20230724BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G06T3/00 750
G08G1/00 J
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019138832
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021022210
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「SIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術/モニタリングシステムの現場実証/空港管理車両を活用した簡易舗装路面点検システムの研究開発」事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】514229661
【氏名又は名称】株式会社ソーシャル・キャピタル・デザイン
(73)【特許権者】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】武藤 信義
(72)【発明者】
【氏名】村田 利文
(72)【発明者】
【氏名】上野 功
(72)【発明者】
【氏名】小沼 恵太郎
(72)【発明者】
【氏名】二又 尚人
(72)【発明者】
【氏名】水上 敬介
(72)【発明者】
【氏名】松澤 晴季
(72)【発明者】
【氏名】澤田 茜
(72)【発明者】
【氏名】安達 慎一
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄章
(72)【発明者】
【氏名】熊田 和人
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-105145(JP,A)
【文献】特開2017-090189(JP,A)
【文献】特開2007-043466(JP,A)
【文献】特開2017-181393(JP,A)
【文献】特開2019-106075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 3/00
G08G 1/00
H04N 1/387
H04N 23/00 - 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲箇所を含む隣り合う範囲の路面を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理システムであって,
前記画像処理システムは,
前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とにおいて特定された,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域に基づいて,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の隣に位置するように前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する表示処理部,を有しており,
前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域の撮影範囲の一部または全部は,前記第2の詳細画像情報における前記レーン領域の撮影範囲の一部または全部に含まれており,
前記表示処理部は,
前記第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報を伸縮処理を行わずに並べて表示する第1の表示形式と,単位距離間の画像情報の長さが一定となるように伸縮した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報とを並べて表示する第2の表示形式表示処理を行う,
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
撮影対象物の隣り合う範囲を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理システムであって,
前記画像処理システムは,
前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とにおいて特定された,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域に基づいて,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の隣に位置するように前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを,位置情報を対応させて表示する表示処理部,を有しており,
前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域の撮影範囲の一部または全部は,前記第2の詳細画像情報における前記レーン領域の撮影範囲の一部または全部に含まれる,
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項3】
前記表示処理部は,
前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の前記マージン領域の隣に位置するように,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する,
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記表示処理部は,さらに,
前記第1の詳細画像情報における前記レーン領域が,前記第2の詳細画像情報の前記レーン領域の隣に位置するように,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する,
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記表示処理部は,さらに,
前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の前記マージン領域の隣に位置するように前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する表示形式と,
前記第1の詳細画像情報における前記レーン領域が,前記第2の詳細画像情報の前記レーン領域に隣に位置するように,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する表示形式とが,切り替え可能である,
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記表示処理部は,
前記レーン領域と前記マージン領域とを区別可能に表示をする,
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記表示処理部は,
前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを区別可能に表示をする,
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項8】
撮影対象物の隣り合う範囲を撮影した第1の画像情報と第2の画像情報に対する画像処理システムであって,
前記画像処理システムは,
前記第1の画像情報と前記第2の画像情報について,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域とを特定し,前記マージン領域よりも外側の領域をトリミングして詳細画像情報を生成し,前記レーン領域よりも外側の領域をトリミングして広域画像情報を生成する画像情報処理部と,
前記第1の画像情報と前記第2の画像情報とを位置情報を用いて対応づけて表示処理を行う表示処理部と,を有しており,
前記表示処理部は,
前記第1の画像情報に基づく前記詳細画像情報と前記第2の画像情報に基づく前記詳細画像情報とが隣に位置するように表示し,
前記第1の画像情報に基づく前記広域画像情報と前記第2の画像情報に基づく前記広域画像情報とが隣に位置するように表示する,
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項9】
湾曲箇所を含む隣り合う範囲の路面を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理システムであって,
前記画像処理システムは,
前記第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報を伸縮処理を行わずに並べて表示する第1の表示形式と,単位距離間の画像情報の長さが一定となるように伸縮した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報とを並べて表示する第2の表示形式表示処理を行う表示処理部,
を有することを特徴とする画像処理システム。
【請求項10】
前記表示処理部は,
前記第1の表示形式において,対応する単位距離の位置関係が特定可能に表示する,
ことを特徴とする請求項1または請求項9に記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記表示処理部は,
前記第1の表示形式と,前記第2の表示形式とが切り替え可能である,
ことを特徴とする請求項1,請求項9または請求項10に記載の画像処理システム。
【請求項12】
湾曲箇所を含む隣り合う範囲の路面を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理プログラムであって,
前記画像処理プログラムは,コンピュータを,
前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とにおいて特定された,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域に基づいて,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の隣に位置するように前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する表示処理部,として機能させ,
前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域の撮影範囲の一部または全部は,前記第2の詳細画像情報における前記レーン領域の撮影範囲の一部または全部に含まれており,
前記表示処理部は,
前記第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報を伸縮処理を行わずに並べて表示する第1の表示形式と,単位距離間の画像情報の長さが一定となるように伸縮した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報とを並べて表示する第2の表示形式表示処理を行う,
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項13】
撮影対象物の隣り合う範囲を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理プログラムであって,
前記画像処理プログラムは,コンピュータを,
前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とにおいて特定された,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域に基づいて,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の隣に位置するように,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを,位置情報を対応させて表示する表示処理部,として機能させ,
前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域の撮影範囲の一部または全部は,前記第2の詳細画像情報における前記レーン領域の撮影範囲の一部または全部に含まれる,
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項14】
撮影対象物の隣り合う範囲を撮影した第1の画像情報と第2の画像情報に対する画像処理プログラムであって,
前記画像処理プログラムは,コンピュータを,
前記第1の画像情報と前記第2の画像情報について,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域とを特定し,前記マージン領域よりも外側の領域をトリミングして詳細画像情報を生成し,前記レーン領域よりも外側の領域をトリミングして広域画像情報を生成する画像情報処理部,
前記第1の画像情報と前記第2の画像情報とを位置情報を用いて対応づけて表示処理を行う表示処理部,として機能させ,
前記表示処理部は,
前記第1の画像情報に基づく前記詳細画像情報と前記第2の画像情報に基づく前記詳細画像情報とが隣に位置するように表示し,
前記第1の画像情報に基づく前記広域画像情報と前記第2の画像情報に基づく前記広域画像情報とが隣に位置するように表示する,
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項15】
湾曲箇所を含む隣り合う範囲の路面を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理プログラムであって,
前記画像処理プログラムは,コンピュータを,
前記第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報を伸縮処理を行わずに並べて表示する第1の表示形式と,単位距離間の画像情報の長さが一定となるように伸縮した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報とを並べて表示する第2の表示形式表示処理を行う表示処理部,
として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
路面を撮影した画像情報に対する画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港の滑走路や道路などの路面に凹凸があると事故につながることがあるため,路面の異常,特に凹凸の異常の有無を検出することが路面の管理からは重要である。そこで,道路などを走行する車両に所定の装置を搭載し,路面を撮影することで,路面の凹凸の検出を行うことが従来より行われている。
【0003】
たとえば下記特許文献1,特許文献2に記載のようにスリット光を路面に照射し,それを撮影することで路面の凹凸を検出することが行われている。これらを用いることで,路面の凹凸を一定程度,検出することはできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-291195号公報
【文献】特開昭59-80501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの発明のように,路面を撮影することで画像情報を得る方式の場合,対象とする路面の全範囲に亘って漏れなく撮影をすることが求められる。そこで,車両が走行する経路(コース)の両脇にガイドとなるLEDを搭載したコーン(パイロン)を置き,それに沿って車両が走行することが考えられる。また,走行すべき経路をガイドするシステムとしてカーナビゲーションシステムがあり,カーナビゲーションシステムのガイドに沿って走行することも考えられる。
【0006】
しかし,コーンを置いた場合には,コーンの延長線上にある路面を撮影することはできないので,その延長線上の路面に凹凸の異常があった場合には検出することができない。そして,コーンの延長線上にある路面を撮影する場合には,コーンをずらした上で,撮影をしなければならないが,コーンの再設置,再撮影,撮影した画像情報の位置合わせなど著しい作業負担が発生する。
【0007】
カーナビゲーションシステムを用いた場合であっても,人が車両を運転した場合,自動運転のいずれの場合であっても,左右方向(横断方向)への多少の揺らぎが発生する。
【0008】
撮影対象となる路面が滑走路の場合,横断方向の幅が長いため,一度の走行では滑走路の左右全体に亘って撮影することができないことから,少しずつ左右に走行経路をずらしながら撮影を行うこととなる。これを模式的に示すのが図26である。図26では簡略化のため,滑走路を2つのコースに分割し,コース1とコース2とを一回ずつ走行する状態を模式的に示したものであるが,実際の滑走路の横断方向の幅はこれよりも広く,3以上のコースに分割されることが一般的である。また,図26における斜線部分は,レーン間の関係をわかりやすくするために付しているものである。
【0009】
図26のように車両がコースを走行してその滑走路の路面の撮影をした場合,滑走路全体を画像情報として表示する場合には,図26で示すように,コース1を走行することで撮影しなければならない領域であるレーン1の画像情報と,コース2を走行することで撮影しなければならない領域であるレーン2の画像情報とを,横断方向で位置を合わせる必要がある。なお,コースとは車両が走行する予定の領域(または車両の中心が通過する予定の軌跡)であり,レーンとは,車両がコースを走行することで撮影しなければならない路面の領域である。車両が理想的にコースを走行した場合,コースの横断方向の中心位置とレーンの横断方向の中心位置は一致する。またコースの境界はレーンの境界となる。
【0010】
すなわちレーン1の画像情報における点A,B,Cに対応するレーン2の画像情報における対応点A’,B’,C’を特定し,特定した対応点に基づいて,画像情報の合成処理を行う。そしてこの対応点の特定は,オプティカルフローや局所特徴量などの技術を用いて行う。このように特定した対応点を図27のA-A’,B-B’,C-C’のように対とし,これらを含む三角形の領域を設定する。なお,D,E,F,Gなどの点はほかのレーンの画像との間での対応点から特定した点とする。各レーン画像情報を中心線同士がレーン間の距離となるような位置に配置し,同時に対応点がすべて一致する(対応点同士が中点で重なる)ように各三角形に含まれる領域の画像情報をアフィン変換させ,画像情報同士を合成する。このとき,図28のA-B-Cの下側,A’-B’-C’の上側の画像情報を捨てる。
【0011】
このように,一連の処理は2つのレーンの画像情報について多数の対応点を探索し,その結果に基づいて画像情報を小さい領域でそれぞれアフィン変換をする必要があるため,膨大な時間を要する。そのため,撮影した結果をすぐに目視したい利用場面には適さない。
【0012】
また撮影対象となる路面が,湾曲をしているなどの場合の表示形式については考慮がされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで本発明者は,上記課題に鑑み,撮影時に横断方向への揺らぎが生じても,画像情報の抜けが生じない画像処理システムを発明した。また,撮影した結果をすぐに目視したい場合には,すぐに確認することができる画像処理システムを発明した。さらに,湾曲部分を含む撮影対象物についてもそれに応じた表示形式を可能とする画像処理システムを発明した。
【0014】
第1の発明は,湾曲箇所を含む隣り合う範囲の路面を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理システムであって,前記画像処理システムは,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とにおいて特定された,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域に基づいて,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の隣に位置するように前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する表示処理部,を有しており,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域の撮影範囲の一部または全部は,前記第2の詳細画像情報における前記レーン領域の撮影範囲の一部または全部に含まれており,前記表示処理部は,前記第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報を伸縮処理を行わずに並べて表示する第1の表示形式と,単位距離間の画像情報の長さが一定となるように伸縮した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報とを並べて表示する第2の表示形式表示処理を行う,画像処理システムである。
【0015】
本発明のように構成することで,撮影時に横断方向への揺らぎが生じても,画像情報の抜けが生じない。また,従来のように画像情報同士の複雑な合成処理も不要なので,処理時間を要することなく,また簡便な処理で画像情報の表示を実現することができる。さらに,湾曲がある路面を撮影した場合であっても,第1の表示形式では凹凸などの異常を実際のサイズと同様の大きさで確認することができるとともに,第2の表示形式では,隣り合う画像情報同士の横断方向のずれが少なくなるので,画像情報を横断して存在する凹凸等の異常の全体像を容易に確認することができる。
【0016】
第2の発明は,撮影対象物の隣り合う範囲を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理システムであって,前記画像処理システムは,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とにおいて特定された,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域に基づいて,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の隣に位置するように前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを,位置情報を対応させて表示する表示処理部,を有しており,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域の撮影範囲の一部または全部は,前記第2の詳細画像情報における前記レーン領域の撮影範囲の一部または全部に含まれる,画像処理システムである。
【0017】
本発明のように構成することで,撮影時に横断方向への揺らぎが生じても,画像情報の抜けが生じない。また,従来のように画像情報同士の複雑な合成処理も不要なので,処理時間を要することなく,また簡便な処理で画像情報の表示を実現することができる。
【0018】
上述の発明において,前記表示処理部は,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の前記マージン領域の隣に位置するように,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する,画像処理システムのように構成することができる。
【0019】
このように第2の領域同士が隣に位置するように,第1の画像情報と第2の画像情報とを表示することで,それぞれの境界付近にある凹凸などの異常を見落とすことがなくなる。
【0020】
上述の発明において,前記表示処理部は,さらに,前記第1の詳細画像情報における前記レーン領域が,前記第2の詳細画像情報の前記レーン領域の隣に位置するように,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する,画像処理システムのように構成することができる。
【0021】
第2の領域同士が隣に位置するように第1の画像情報と第2の画像情報とを表示することで,境界付近にある凹凸などの異常の見落としを減らすことはできるものの,境界付近が重複して表示される,全体のプロポーションが崩れるなど,視認性に影響を与える場合がある。そして,撮影対象物の全体の中から詳細に見るべき位置を決めるなどの場面では,より広い範囲で画像情報の表示を行うことが作業効率上,好ましい。そこで本発明のように,第1の領域同士が隣に位置するように第1の画像情報と第2の画像情報とを表示させることで,利用者の利便性を向上することができる。
【0022】
上述の発明において,前記表示処理部は,さらに,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の前記マージン領域の隣に位置するように前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する表示形式と,前記第1の詳細画像情報における前記レーン領域が,前記第2の詳細画像情報の前記レーン領域に隣に位置するように,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する表示形式とが,切り替え可能である,画像処理システムのように構成することができる。
【0023】
本発明のように,2つの表示形式を切り替え可能とすることで,利用者は目的に沿って表示を切り替えることができるので,利用者の利便性を向上させることができる。
【0024】
上述の発明において,前記表示処理部は,前記レーン領域と前記マージン領域とを区別可能に表示をする,画像処理システムのように構成することができる。
【0025】
上述の発明において,前記表示処理部は,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを区別可能に表示をする,画像処理システムのように構成することができる。
【0026】
撮影対象物がたとえば路面の場合には,アスファルト舗装されているなどの特徴があり,領域や画像情報の区別がつきにくいため,これらの発明のように,異なる領域,異なる画像情報が区別可能なように表示されていることがよい。
【0027】
第8の発明は,撮影対象物の隣り合う範囲を撮影した第1の画像情報と第2の画像情報に対する画像処理システムであって,前記画像処理システムは,前記第1の画像情報と前記第2の画像情報について,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域とを特定し,前記マージン領域よりも外側の領域をトリミングして詳細画像情報を生成し,前記レーン領域よりも外側の領域をトリミングして広域画像情報を生成する画像情報処理部と,前記第1の画像情報と前記第2の画像情報とを位置情報を用いて対応づけて表示処理を行う表示処理部と,を有しており,前記表示処理部は,前記第1の画像情報に基づく前記詳細画像情報と前記第2の画像情報に基づく前記詳細画像情報とが隣に位置するように表示し,前記第1の画像情報に基づく前記広域画像情報と前記第2の画像情報に基づく前記広域画像情報とが隣に位置するように表示する,画像処理システムである。
【0028】
本発明のように構成することで,撮影時に横断方向への揺らぎが生じても,画像情報の抜けが生じない。また,従来のように画像情報同士の複雑な合成処理も不要なので,処理時間を要することなく,また簡便な処理で画像情報の表示を実現することができる。
【0029】
第9の発明は,湾曲箇所を含む隣り合う範囲の路面を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理システムであって,前記画像処理システムは,前記第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報を伸縮処理を行わずに並べて表示する第1の表示形式と,単位距離間の画像情報の長さが一定となるように伸縮した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報とを並べて表示する第2の表示形式表示処理を行う表示処理部,を有する画像処理システムである。
【0030】
本発明のように構成することで,湾曲がある路面を撮影した場合であっても,第1の表示形式では凹凸などの異常を実際のサイズと同様の大きさで確認することができるとともに,第2の表示形式では,隣り合う画像情報同士の横断方向のずれが少なくなるので,画像情報を横断して存在する凹凸等の異常の全体像を容易に確認することができる。
【0031】
上述の発明において,前記表示処理部は,前記第1の表示形式において,対応する単位距離の位置関係が特定可能に表示する,画像処理システムのように構成することができる。
【0032】
第1の表示形式は,画像情報のサイズが伸縮されていないので,湾曲部分の内側と外側とでは画像情報の長さが相違する。そこで,本発明のように構成することで,単位距離の位置関係を容易に認識させることができる。
【0033】
上述の発明において,前記表示処理部は,前記第1の表示形式と,前記第2の表示形式とが切り替え可能である,画像処理システムのように構成することができる。
【0034】
第1の表示形式は,画像情報のサイズが伸縮されていないので,湾曲部分の内側と外側のいずれの画像情報であっても,実際のサイズに近い。そのため,凹凸などの異常があったとしても画像情報から計測して誤差が少ない利点がある。一方,第2の表示形式は,第1の画像情報と第2の画像情報の横断方向のずれが少なくなるので,境界付近に存在する凹凸等の異常の全体像を画像情報から確認する場合には有益である。そこで,これらを切り替え可能とすることで,利用者がその目的に応じて適切な表示形式を選択でき,利用者の利便性を向上させることができる。
【0035】
第1の発明の画像処理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち,湾曲箇所を含む隣り合う範囲の路面を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理プログラムであって,前記画像処理プログラムは,コンピュータを,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とにおいて特定された,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域に基づいて,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の隣に位置するように前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを表示する表示処理部,として機能させ,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域の撮影範囲の一部または全部は,前記第2の詳細画像情報における前記レーン領域の撮影範囲の一部または全部に含まれており,前記表示処理部は,前記第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報を伸縮処理を行わずに並べて表示する第1の表示形式と,単位距離間の画像情報の長さが一定となるように伸縮した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報とを並べて表示する第2の表示形式表示処理を行う,画像処理プログラムである。
【0036】
第2の発明の画像処理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち,撮影対象物の隣り合う範囲を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理プログラムであって,前記画像処理プログラムは,コンピュータを,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とにおいて特定された,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域に基づいて,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域が,前記第2の詳細画像情報の隣に位置するように,前記第1の詳細画像情報と前記第2の詳細画像情報とを,位置情報を対応させて表示する表示処理部,として機能させ,前記第1の詳細画像情報における前記マージン領域の撮影範囲の一部または全部は,前記第2の詳細画像情報における前記レーン領域の撮影範囲の一部または全部に含まれる,画像処理プログラムである。
【0037】
第8の発明の画像処理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち,撮影対象物の隣り合う範囲を撮影した第1の画像情報と第2の画像情報に対する画像処理プログラムであって,前記画像処理プログラムは,コンピュータを,前記第1の画像情報と前記第2の画像情報について,撮影しなければならない路面の領域であるレーン領域と,前記レーン領域の左右両方若しくはいずれか一方の外側に設けた一定の幅の領域であるマージン領域とを特定し,前記マージン領域よりも外側の領域をトリミングして詳細画像情報を生成し,前記レーン領域よりも外側の領域をトリミングして広域画像情報を生成する画像情報処理部,前記第1の画像情報と前記第2の画像情報とを位置情報を用いて対応づけて表示処理を行う表示処理部,として機能させ,前記表示処理部は,前記第1の画像情報に基づく前記詳細画像情報と前記第2の画像情報に基づく前記詳細画像情報とが隣に位置するように表示し,前記第1の画像情報に基づく前記広域画像情報と前記第2の画像情報に基づく前記広域画像情報とが隣に位置するように表示する,画像処理プログラムである。
【0038】
第9の発明の画像処理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち,湾曲箇所を含む隣り合う範囲の路面を撮影した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報に対する画像処理プログラムであって,前記画像処理プログラムは,コンピュータを,前記第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報を伸縮処理を行わずに並べて表示する第1の表示形式と,単位距離間の画像情報の長さが一定となるように伸縮した第1の詳細画像情報と第2の詳細画像情報とを並べて表示する第2の表示形式表示処理を行う表示処理部,として機能させる画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0039】
本発明を用いることで,撮影時に横断方向への揺らぎが生じても,画像情報の抜けが生じない画像処理システムが可能となる。また,撮影した結果をすぐに目視したい場合には,すぐに確認することができる画像処理システムを発明した。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の画像処理システムの全体の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
図2】本発明の画像処理システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示すブロック図である。
図3】本発明の画像処理システムにおける画像情報処理の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の画像処理システムにおける詳細画像情報の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の画像処理システムにおける広域画像情報の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の画像処理システムで処理対象とする画像情報および位置情報を計測するための移動体搭載装置を車両に取り付けた場合の側面図である。
図7】本発明の画像処理システムで処理対象とする画像情報および位置情報を計測するための移動体搭載装置を車両に取り付けた場合の後方図である。
図8】移動体搭載装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
図9】撮影装置による撮影と照明装置による光の照射との関係を示す図である。
図10】撮影画像情報の伸縮を調整する伸縮処理を模式的に示す図である。
図11】撮影画像情報に対する剪断変形処理を模式的に示す図である。
図12】滑走路の路面をコースに区切り,各コースを移動体が走行して移動体搭載装置による撮影を行う場合を模式的に示す図である。
図13】移動体が書くコースを走行することにより撮影されたレーンの画像情報を,位置情報が対応するように時系列的に並べた状態を模式的に示す図である。
図14】撮影画像情報においてレーン線と,マージン線とを特定し表示した状態の一例を示す。
図15】詳細画像情報の一例を示す。
図16】広域画像情報の一例を示す。
図17】位置情報の補正を模式的に示す図である。
図18】詳細表示処理をした場合の一例を示す図である。
図19】広域表示処理をした場合の一例を示す図である。
図20】表示画面の一例を示す図である。
図21】表示画面の表示領域Bに広域画像情報として表示する一例を示す図である。
図22】表示画面の表示領域Cに詳細画像情報として表示する一例を示す図である。
図23】湾曲箇所がある場合のコースの一例を示す図である。
図24】実距離表示モードによるレーンの撮影画像情報の表示の一例を模式的に示す図である。
図25】キロポスト表示モードによるレーンの撮影画像情報の表示の一例を模式的に示す図である。
図26】撮影対象とする路面をコースに区切り,各コースを移動体が走行して路面の撮影を行う場合を模式的に示す図である。
図27】画像情報の合成処理において隣接する画像情報の対応点を特定する処理を模式的に示す図である。
図28】画像情報の合成処理において対応点がすべて一致する各三角形に含まれる領域の画像情報をアフィン変換して画像情報同士を合成する処理を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の画像処理システム1の全体の構成の一例のブロック図を図1に示す。また,本発明の画像処理システム1で用いるコンピュータのハードウェア構成の一例のブロック図を図2に示す。
【0042】
画像処理システム1は,後述する移動体搭載装置2で撮影した画像情報(撮影画像情報)と,計測した位置情報とを対応づけ,その表示処理を実行する。また,画像処理システム1は,移動体搭載装置2で撮影,計測した各情報が記録装置23に記録され,そこに記録された情報に基づいて処理を実行する。画像処理システム1の処理は,サーバやパーソナルコンピュータのほか,スマートフォンやタブレット型コンピュータなどの可搬型通信端末などのコンピュータによって実現される。
【0043】
コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報の通信をする通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,たとえばタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0044】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0045】
画像処理システム1のコンピュータは,一台のコンピュータであってもよいし,その機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0046】
本発明の画像処理システム1における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0047】
画像処理システム1は移動体搭載装置2で撮影した画像情報に基づいて処理を実行することが好ましいが,それに限定するものではない。
【0048】
移動体搭載装置2は,路面を走行する車両Cなどの移動体に搭載される装置であって,路面を撮影する少なくとも1台以上の撮影装置20と,2台以上の撮影装置20がある場合に各撮影装置20を同期して撮影を行わせる同期装置22と,位置情報を計測する位置情報計測装置21と,撮影装置20で撮影した撮影画像情報および撮影時刻と位置情報計測装置21で計測した位置情報および時刻とを記録する記録装置23とを有する。
【0049】
移動体搭載装置2を搭載した移動体としての車両Cの一例を図6および図7を示す。図6は,移動体搭載装置2を搭載した車両Cの側面図であり,図7は,移動体搭載装置2を搭載した車両Cの背面図である。また図8に移動体搭載装置2の構成の一例をブロック図で示す。
【0050】
撮影装置20は移動体が移動する路面を撮影する装置であって,少なくとも1台以上を備えている。なお,図6および図7では2台の撮影装置20を備えた場合を示している。撮影装置20としては,好ましくはラインセンサを用いることができるがそれに限定するものではない。ラインセンサは,線単位で路面状況を撮影する。たとえば1mm移動するたびに1mm分の路面を撮影をする。移動距離の検出は距離計を用いればよい。すなわち1mm移動することを距離計で検出することで撮影装置20により撮影を行う。ラインセンサはレンズとラインセンサ素子とを有する。ラインセンサのレンズは,路面を撮影可能なように,路面側に向けられている。ラインセンサは,路面の映像をレンズによってラインセンサ素子に結像させ,その光量をビデオ信号に変換して画像情報として出力する。ラインセンサが撮影した各画像情報は1mm分の画像情報である。そのため,ラインセンサは,所定の単位枚数分(たとえば1000枚分)の画像情報を連結し,一つの画像情報として後述する記録装置23に記録する。この単位枚数分の画像情報を撮影画像情報(またはフレーム)とする。
【0051】
撮影装置20は路面の撮影を開始する際には,位置情報計測装置21が所定のPPS信号を用いて,撮影装置20に対して計測開始のコマンドを送る。このコマンドを受け付けた撮影装置20は,撮影を開始するとともに,内蔵した計時手段を「0」にリセットして計時を開始する。そして,撮影装置20で所定の単位枚数,たとえば1000枚分を撮影したところで,計時手段で計時している時刻(相対時刻)を,撮影画像情報に対応づけて記録する。そして,計時手段はそのまま計時を継続し,次の単位枚数分の画像情報を撮影した時点における時刻を,撮影画像情報に対応づけて記録する。これを撮影が終了するまで反復する。すなわち,撮影装置20で単位枚数の画像情報を撮影するごとに,計時手段で計時している時刻(相対時刻)を記録し,撮影画像情報に対応づけて記録しておく。それぞれの単位枚数の画像情報を撮影するのに要した時間は,撮影画像情報に対応づけて記録している相対時刻の差分を演算すれば算出できる。このように撮影装置20での撮影を開始するタイミングと,位置情報計測装置21で位置情報および時刻情報を取得したタイミングとが同期をしていることから,撮影画像情報ごとの時刻情報は,位置情報計測装置21で取得した位置情報に,上記算出した時間を加算することで算出することができる。撮影画像情報ごとの時刻情報は,後述する画像情報処理部10の処理の際に算出をしてもよいし,撮影装置20が撮影画像情報を記録装置23に記録する際に行うなど,任意のタイミングで行うことができる。
【0052】
上述の単位枚数の画像情報を撮影するのに要した時間の記録は,計時手段で単位枚数ごとの撮影に要した時間を計時するとともに,撮影画像情報の撮影順番を対応づけて記録しておくのでもよいし,ほかの方法であってもよい。
【0053】
なお,撮影装置20としてラインセンサを用いず,通常の光学式カメラなどを用いる場合には,その撮影をした画像情報が撮影画像情報であり,また撮影画像情報ごとの時刻情報を記録しておけばよい。
【0054】
移動体搭載装置2は,2台以上の撮影装置20がある場合には,同期装置22を備える。同期装置22は,移動体搭載装置2における少なくとも2台以上の撮影装置20の撮影タイミングを同期させて路面を撮影する。
【0055】
位置情報計測装置21は,たとえばGPS装置であり,その位置情報を計測し,時刻情報を取得する。位置情報としてはたとえば緯度,経度が好ましいが,それに限定するものではない。位置情報計測装置21で計測した位置情報および時刻情報は,後述する記録装置23に記録する。位置情報計測装置21は,高精度のGPSレシーバー,たとえば「HemishereA101」などを用いることができる。
【0056】
位置情報計測装置21は,一定のタイミングごとに位置情報および時刻情報を取得する。たとえば1秒間に10回,1秒間に20回などのタイミングで位置情報および時刻情報を取得する。
【0057】
記録装置23は,撮影装置20で撮影した撮影画像情報と,位置情報計測装置21で計測した位置情報とを記録する。記録装置23は,移動体搭載装置2の一部として,移動体に設けてもよいし,クラウドサーバなどを用い,移動体の外部に設けてもよい。
【0058】
移動体搭載装置2は,移動体にどのように取り付けられていてもよく,たとえば図6および図7に示すように,移動体の後方に取り付けられるとよいが,それに限定するものではない。たとえば移動体の前方に取り付けられていてもよい。撮影装置20は,移動体の後端部よりも後方に位置しており,路面を上方から撮影する。撮影装置20は,移動体のルーフキャリア40などに取り付けた金属製の取付ビーム26(支持体)の後端部付近に設置される。
【0059】
取付ビーム26における撮影装置20の取り付け箇所の近傍には,位置情報計測装置21が取り付けられている。
【0060】
取付ビーム26の撮影装置20の付近から路面側に対して,支柱25aが下方に突出しており,照明装置24の上端部付近で接合している。また,照明装置24は,移動体の後端下部側に設けられた照明支持台27から上方に突出している支柱25b,25cとそれぞれ接合をしている。支柱25bは照明装置24の下方付近で接合しており,支柱25cは照明装置24の上方付近で接合している。なお,照明装置24の支持方法はいかなる方法であってもよい。
【0061】
照明装置24は,LEDなどの光源により,平行光または平行光に近い光を路面に対して照射する。照明装置24は,路面の変状に対してくっきりした均質の陰影ができるように路面を照らすために,路面に平行光に近い光を当てる。そのため光源としては指向性の高いLEDが好ましいが,それに限定されない。平行光を照射する角度は水平に近ければ陰影が大きくなりすぎ,垂直に近ければ陰影が生じないため,照明装置24を路面に対して一定の角度で傾けて照射することが好ましい。傾斜の方向は,撮影対象とする路面の特性に合わせればよい。撮影装置20による撮影と照明装置24による光の照射との関係を図9に示す。図9(a)では移動体の後方から撮影装置20による撮影と照明装置24による光の照射との関係を示す図であり,図9(b)は移動体の側方から撮影装置20による撮影と照明装置24による光の照射との関係を示す図である。撮影装置20の間隔Aは撮影対象とする幅方向の範囲,撮影装置20を取り付ける高さの位置関係,撮影装置20の画角にもよるが,たとえば260cm程度を撮影幅とし,撮影装置20を路面から140cm程度,撮影装置20の画角が約90度とすると,撮影装置20の間隔Aは,路面までの距離の約10%,たとえば14cm程度の間隔とすることが好ましい。
【0062】
なお,上記の寸法と各角度の関係は一例であって,寸法と角度はそれぞれ好適な関係となるように調整すればよい。
【0063】
また移動体の前方には,移動体の走行方向を路面に投影する投影装置30を備える。移動体には,図示しない管理コンピュータを備えておき,管理コンピュータによって特定されるガイド情報(移動体が走行すべき走行ルート(コース)を示すガイド情報)を投影装置30から投影する。管理コンピュータにおける処理および投影装置30からのガイド情報の投影の処理は,たとえば特開2017-090189号に記載の技術を用いることができるがそれに限定されない。
【0064】
管理コンピュータ(図示せず)は,たとえば以下のような処理によって実現できる。GPS装置などの位置情報を取得する装置(移動体搭載装置2の位置情報計測装置21を兼用してもよい)によって緯度,経度情報,進行方向の情報を取得する。また走行ガイドを行う実空間(撮影対象とする路面のある空間)の一部または全部を2次元または3次元モデル化した空間情報(仮想空間情報)を記憶しておく。この際に,仮想空間情報を所定間隔で長さ,幅方向に区切り,長さ方向を,撮影対象とする路面の撮影範囲の所定位置からの距離(たとえば,メートル単位で0から3000)で表し,幅方向を,幅方向の基準位置からの撮影範囲を考慮した所定幅ごとのコース番号(たとえば,中央のコース番号0を基準として,その左右のコース番号を-10から+10とする)で表す。そして取得した位置情報,進行方向の情報に基づいて,対応する仮想空間の情報の一部を投影装置30から移動体の走行方向の前方の路面に投影させる。このコースのガイド情報に従って,移動体の運転者は移動体の走行を行う。
【0065】
なお,走行経路(コース)のガイドは,このような投影装置30を用いた場合,あるいは管理コンピュータによる処理以外の方法,たとえばカーナビゲーションシステムなどであってもよい。
【0066】
画像処理システム1は,移動体搭載装置2で記録した撮影画像情報,位置情報,時刻情報を用いて,撮影した画像情報を,表示装置72上で表示をする。画像処理システム1の処理を実行するコンピュータは,移動体搭載装置2を搭載した移動体に搭載されていてもよいし,移動体に搭載していなくてもよい。
【0067】
画像処理システム1は,画像情報処理部10と位置情報処理部11と画像情報記憶部12と表示処理部13とを有する。
【0068】
画像情報処理部10は,移動体搭載装置2の記録装置23に記録した撮影画像情報を取得し,後述の画像情報記憶部12に記憶させる。画像情報処理部10は,必要に応じて,撮影画像情報に対して補正処理を実行してもよい。
【0069】
画像情報処理部10は,撮影装置20が複数ある場合には,いずれか一つの撮影装置20を選択し,選択した撮影装置20で撮影した撮影画像情報を時系列的につなげることで,路面の表面を連続させた画像情報とすることができる。
【0070】
なお,画像情報処理部10は,撮影装置20が複数ある場合には,それぞれで撮影した撮影画像情報の共通の撮影範囲のみをトリミングしてもよい。
【0071】
画像情報処理部10は,撮影画像情報の伸縮を調整し,その大きさを補正する伸縮処理を実行する。移動体における距離計には誤差があることから,この誤差を,撮影画像情報を伸縮することで補正する。たとえば1mmの単位で計測する距離計に1%の誤差がある場合,3000mの滑走路では始点と終点で30mの誤差が生じる。そのため,撮影画像情報をそのまま連続的に並べたときに,後述する位置情報処理部11で補正した位置情報を用いて,撮影画像情報の伸縮を調整し,その大きさを補正することで,そのずれが最小となるようにする。
【0072】
この処理を模式的に示すのが図10である。図10では撮影装置20としてラインセンサを用いた場合を示している。まず画像情報処理部10は,撮影画像情報を,それぞれ撮影した時刻の順番に整列する。撮影装置20による撮影を開始するタイミング(rt0)と,位置情報計測装置21による時刻情報(at0)とは同期をしていることから,位置情報計測装置21で時刻情報を取得した時点から撮影装置20による撮影が開始されている。そして,撮影画像情報ごとに相対時間(rt1,rt2,rt3,・・・)が対応づけて記録されている。一方,位置情報計測装置21は,所定の間隔,たとえば1秒間に10回または20回などの間隔で,位置情報と時刻情報とを取得しているが,撮影画像情報の幅(たとえば所定単位の枚数が1000枚のとき1m)となったときに,必ずしも位置情報計測装置21で位置情報を取得しているとは限らない。
【0073】
そこで,画像情報処理部10は撮影画像情報の終端に対応する位置情報を算出する。具体的には,たとえば撮影画像情報2では,位置情報計測装置21で取得した時刻情報at6とat7の間で撮影画像情報2の終端に対応する位置がある。そこで,位置情報計測装置21で取得した時刻情報at6のときの位置情報P6(図10のC)と,位置情報計測装置21で取得した時刻情報at7のときの位置情報P7(図10のB)とから,比例配分によって,撮影画像情報2の終端に対応する位置(図10のA)を算出することができる。
【0074】
比例配分の算出方法にはさまざまなものがあるが,撮影画像情報2の終端に対応する位置における相対時間rt2は分かっているので,位置情報計測装置21で取得した時刻情報at0に,撮影画像情報ごとの相対時間rt1,rt2を加算することで,撮影画像情報2の終端に対応する位置Aにおける時刻情報を特定できる。ここで特定した時刻情報と,位置情報計測装置21で取得した時刻情報at6,at7とを比例配分することで比率が特定できるので,時刻情報at6のときの位置情報P6と,時刻情報at7のときの位置情報P7とを上記比率を用いて演算することで,撮影画像情報2の終端に対応する位置Aの位置情報を特定できる。
【0075】
このように,撮影画像情報ごとの位置情報が特定できれば,撮影画像情報の始端位置(始端位置は隣接する一つ前の撮影画像情報の終端位置)と終端位置とを比較することで撮影画像情報の実際の距離が算出できる。一方,撮影装置20は,所定単位の枚数,たとえば1mm分の1000枚の画像情報で構成されているので,その幅は1mである。そうすると,上記で算出した実際の距離と,所定単位の枚数と撮影の幅に基づく幅1mとを比較して,そのずれが撮影画像情報の伸縮率となる。たとえば,実際の距離が1010mmである場合,1%のずれがあるので,当該撮影画像情報を1%伸ばす処理を行う。この処理を撮影画像情報ごとに実行することで,撮影画像情報について,位置情報計測装置21で計測した精度の高い位置情報に基づく距離と合致するように,撮影画像情報を伸縮し,その大きさを補正することができる。
【0076】
さらに画像情報処理部10は,移動体の進行方向に対する横方向のずれを補正する剪断変形処理も実行する。これは,撮影画像情報の始端位置と終端位置との進行方向に対する横方向の位置情報の変化によって剪断変形処理を実行することで行える。この処理を図11に模式的に示す。
【0077】
画像情報処理部10は,上述のように撮影画像情報に対して,伸縮処理,剪断変形処理などのほか,台形補正処理,ノイズ除去処理などの適宜,必要な補正処理を実行してもよい。
【0078】
また,図12に示すように,たとえば滑走路の路面をコース1,コース2として区切り,各コースを移動体が走行して移動体搭載装置2による撮影をそれぞれ行う場合,コース1を走行することにより撮影されたレーン1の撮影画像情報(補正後の撮影画像情報も含む。本明細書において同様),コース2を走行することにより撮影されたレーン2の撮影画像情報を,位置情報が対応するように時系列的に並べた状態は図13に示すようになる。補正後の撮影画像情報においても揺らぎが生じるのは,剪断変形処理によっても補正できない横断方向への揺らぎが生じるからである。なお,図12以降における斜線部分は,レーン間の関係をわかりやすくするために付しているものである。
【0079】
そこで,画像情報処理部10は,撮影画像情報について,レーンの領域を示すレーン線Lと,マージン領域を示すマージン線Mとを設定する。レーンの領域とは,上述のように,移動体コースを走行することで撮影しなければならない路面の領域であって,撮影装置20の撮影範囲から任意の幅で設定する。ここで理想的にはコースの横断方向の位置情報とレーンの領域の横断方向の中心の位置情報とは一致する。そこで,コースの横断方向の位置情報に対応する位置を撮影画像情報から特定し,そこから横断方向に所定の幅(たとえば横断方向の中心から左右に100cmずつ)の位置にレーン線Lを設定し,レーンの領域とする。マージン領域とは,移動体の走行に際してレーンの横断方向への揺らぎを考慮してレーン領域の左右両方またはいずれか一方の外側に設けた一定の幅(たとえばレーン線Lから20cm外側)の領域である。したがってマージン領域は,隣接するレーンのレーン領域の内側となる。図14に,撮影画像情報においてレーン線Lと,マージン線Mとを特定し表示した状態を示す。ここではレーン領域の外側にマージン領域を設ける構成としたが,レーン領域の内側にマージン領域を設けるようにしてもよい。その場合には,以下の処理において,レーン線Lとマージン線Mとはそれぞれ逆に読み替えることとなる。
【0080】
マージン領域の幅は,移動体の走行の精度で定める。たとえば移動体を自動走行している場合には,自動走行における左右方向へのずれに応じた精度,投影装置30による走行ガイドを基準として人が移動体を運転する場合であれば,その人の技量に応じた精度などに基づいて,任意に設定する。撮影装置20によって撮影する範囲の幅は,少なくとも,レーン領域とする幅に対して,左右のマージン幅を加算したものとなる。撮影装置20によって撮影する範囲の幅が定まっている場合には,撮影範囲の幅からマージン幅として設定した幅を除いた幅がレーン領域の幅とすることができる。レーン領域の幅が200cm,マージン幅として左右に20cmずつとする場合には,撮影装置20によって撮影する幅は240cm以上とする。
【0081】
画像情報処理部10は,マージン線Mよりも外側の画像情報の領域はトリミングをし,マージン線Mよりも内側であって,撮影ができていない領域に対しては,黒塗りするなどの所定の画像処理を加えて,詳細画像情報として画像情報記憶部12に記憶させる。図15に詳細画像情報の一例を示す。図15(a)は移動体がコース1を走行することで撮影したレーン1の撮影画像情報に基づくレーン1の詳細画像情報であり,図15(b)は移動体がコース2を走行することで撮影したレーン2の撮影画像情報に基づくレーン2の詳細画像情報である。また,画像情報処理部10は,レーン線Lよりも外側の画像情報の領域はトリミングをして,広域画像情報として画像情報記憶部12に記憶させる。図16に広域画像情報の一例を示す。図16(a)は移動体がコース1を走行することで撮影したレーン1の撮影画像情報に基づくレーン1の広域画像情報であり,図16(b)は移動体がコース2を走行することで撮影したレーン2の撮影画像情報に基づくレーン2の広域画像情報である。
【0082】
位置情報処理部11は,移動体搭載装置2の記録装置23に記録した位置情報および時刻情報を取得し,位置情報計測装置21で計測した位置情報を,撮影装置20(撮影画像装置が複数ある場合には,撮影画像情報を撮影した撮影装置20)の位置情報に補正する。位置情報の補正は,位置情報処理部11で取得した位置情報について,補正対象とする撮影装置20と位置情報計測装置21との位置のずれ量(撮影装置20と位置情報計測装置21とが離れている距離を示す横方向のオフセット)から補正する。これを模式的に示すのが図17である。
【0083】
なお,画像情報処理部10において,撮影装置20が複数ある場合に,撮影装置20のそれぞれで撮影した撮影画像情報の共通の撮影範囲のみをトリミングしている場合,得られた画像情報の中央は,撮影装置20a,20bの中央線と一致することから,位置情報処理部11の補正処理を実行しなくてもよい。
【0084】
画像情報記憶部12は,撮影画像情報,広域画像情報,詳細画像情報などの画像情報を記憶する。これらの画像情報は,それぞれ位置情報と対応づけられている。
【0085】
表示処理部13は,画像情報記憶部12に記憶した画像情報に基づいて表示処理を実行する。表示処理部13は,画像情報記憶部12に記憶した画像情報に基づいて,撮影対象とした路面をコースごとに並べて表示を行う。この際の表示処理としては,撮影対象とした路面を詳細に表示する詳細表示処理と,詳細表示よりも広域の範囲を表示する広域表示処理とを行う。
【0086】
詳細表示処理は,撮影画像情報のうちマージン領域の外側をトリミングした画像情報である詳細画像情報をコースごとに並べて表示をする表示処理である。詳細表示処理をした場合の一例を図18に示す。図18に示すように,詳細画像情報をコースごとに並べて表示をする場合には,各コースを走行することで撮影した各レーンの撮影画像情報に基づく詳細画像情報は,マージン線Mを各コースの区切り線として並置して表示される。そのため,コースを区別する線がマージン線Mとなり,その内側にある線がレーン線Lとなる。なお,図18では詳細画像情報をコースごとに隣接させて表示しているが,隣接させていなくてもよい。
【0087】
また広域表示処理は,撮影画像情報のうちレーン領域の外側をトリミングした画像情報である広域画像情報をコースごとに並べて表示をする表示処理である。広域表示処理をした場合の一例を図19に示す。図19に示すように,広域画像情報をコースごとに並べて表示をする場合には,各コースを走行することで撮影した各レーンの撮影画像情報に基づく広域画像情報は,レーン線Lを各コースの区切り線として並置して表示される。そのため,コースを区別する線がレーン線Lとなり,マージン領域およびマージン領域の画像情報は表示されない。図19では広域画像情報をコースごとに隣接させて表示しているが,隣接させていなくてもよい。
【0088】
たとえば幅60メートルの滑走路があり,それを幅2メートルのコースで分割した場合,60個のコースに分割される。そしてマージン幅を20cmとした場合,レーン幅は2メートルとなるので,撮影装置20では少なくとも240cm(=200cm+20cm+20cm)で撮影をすることとなる。そして詳細表示処理の際には,240cm幅の詳細画像情報をコース順に並べて表示をする。また広域表示処理の際には,200cm幅の広域画像情報をコース順に並べて表示をする。
【0089】
表示処理部13は,あらかじめ画像情報処理部10において生成され,画像情報記憶部12に記憶した詳細画像情報,広域画像情報に基づいて詳細表示処理,広域表示処理を行う場合を説明したが,あらかじめ画像情報処理部10において詳細画像情報,広域画像情報を生成するのではなく,表示処理の際に,撮影画像情報に基づいて詳細画像情報,広域画像情報を生成して表示してもよい。また詳細画像情報のみをあらかじめ生成して画像情報記憶部12に記憶させておき,広域画像情報は表示処理の際に生成して表示してもよい。
【0090】
表示処理部13は,詳細表示と広域表示とを連動させて,あるいは切り替えて表示を行う表示画面を表示させる。図20に詳細表示と広域表示とを連動させて表示を行う表示画面の一例を示す。
【0091】
図20の表示画面は,撮影対象とした路面(滑走路)の全体を進行方向,横断方向にそれぞれブロック状に分割をして選択可能とした表示領域A,広域表示処理を行う表示領域B,詳細表示処理を行う表示領域C,路面にある凹凸等の異常に関する情報を表示する表示領域Dの4つの表示領域を有する場合を示している。
【0092】
表示処理部13は,表示領域Aにおいて,画像情報を表示させたい位置のブロックA1が選択されたことを受け付けると,その位置情報に応じた広域画像情報を画像情報記憶部12から抽出して表示領域Bに表示させる。また,表示領域Bにおいて,詳細に表示をしたい領域B1の選択を受け付けると,選択された領域の中心の位置情報に基づいて,対応する詳細画像情報を画像情報記憶部12から抽出して表示領域Cに表示させる。
【0093】
表示領域Bに広域画像情報として表示する一例を図21に示す。また表示領域Cに詳細画像情報として表示する一例を図22に示す。なお,図21および図22は,広域表示処理と広域表示処理とで表示させる領域の相違をわかりやすくするため,ほぼ同じ領域の画像情報をほぼ同じ縮尺率で表示させている場合である。実際には,広域表示処理と詳細表示処理とで異なる縮尺率で表示されてもよい。
【0094】
表示領域Dに表示される路面の凹凸等の異常に関する情報としては,それぞれの異常に対して,異常の種類(ひび割れなど),大きさ,位置情報などが対応づけられているので,表示処理部13は,選択された異常の位置情報に基づいて,対応する位置にある広域画像情報,詳細画像情報をそれぞれ画像情報記憶部12から抽出し,広域画像情報は領域Bに,詳細画像情報は領域Cにそれぞれ表示させる。
【実施例1】
【0095】
つぎに本発明の画像処理システム1の処理プロセスの一例を図3乃至図5のフローチャートを用いて説明する。なお,以下の説明では移動体として車両Cの場合,撮影対象として滑走路の路面の場合を説明するが,それぞれ上記に限定するものではなく,移動体としては車両Cのほか,ドローンなどの飛翔体であってもよいし,撮影対象も滑走路の路面のほか,道路の路面など,ほかの対象物であってもよい。
【0096】
本発明の画像処理システム1で処理対象とする画像情報を撮影するため,車両Cの後方に移動体搭載装置2を取り付ける。そして撮影対象とする滑走路を車両Cで走行する。滑走路を車両Cで走行する際には,管理システム(図示せず)が車両Cの前方上方に設置した投影装置30から走行ガイドを路面に投影し,そのコースに従って走行をし,移動体搭載装置2で路面の撮影を行う。
【0097】
滑走路を走行する際には,移動体搭載装置2における位置情報計測装置21は,定期的に(たとえば1秒間に10回,20回),位置情報と時刻情報を取得する。取得した位置情報と時刻情報は,対応づけて記録装置23に記録する。また,各撮影装置20は,車両Cが所定の撮影単位,たとえば1mm移動することを距離計で計測すると,滑走路の路面を撮影する。各撮影装置20で撮影した各撮影画像情報にはその相対時間,または位置情報計測装置21で計時した時刻情報と相対時間を用いて算出される時刻情報とを対応づけて記録装置23に記録する。なお,移動体搭載装置2には2台以上の撮影装置20a,bがある場合,同期装置22により各撮影装置20a,bを同期して撮影を行うとともに,どの撮影装置20による撮影画像情報であるのか,撮影装置20ごとに識別可能とする。これは撮影した撮影画像情報に撮影装置20の識別情報が付されていてもよいし,撮影画像情報を保存するフォルダが撮影装置20ごとに分かれていてもよい。
【0098】
以上のように,車両Cが滑走路を走行することで撮影した滑走路の路面の撮影画像情報と相対時間または時刻情報,位置情報と時刻情報とが記録装置23に記録される。
【0099】
そして記録装置23に記録された撮影装置20の撮影画像情報と相対時間または時刻情報,位置情報と時刻情報とに基づいて,画像処理システム1が各処理を実行する。画像処理システム1の処理は,バッチ処理でもリアルタイム処理でもよい。記録装置23が車両Cに設けられる場合には,画像処理システム1を構成するコンピュータが記録装置23から有線または無線で情報を取得してもよいし,車両Cの外,たとえばクラウドサーバに設けられる場合には,画像処理システム1を構成するコンピュータが当該クラウドサーバから情報を取得してもよい。
【0100】
まず画像情報処理部10は,移動体搭載装置2の記録装置23に記録した撮影画像情報を取得する(S100)。そして取得した撮影画像情報とその相対時間または時刻情報とを対応づける。また画像情報処理部10は,撮影装置20で撮影した撮影画像情報を時系列的につなげる。これによって,滑走路を連続的に撮影した撮影画像情報が生成できる。
【0101】
位置情報処理部11は,移動体搭載装置2の記録装置23から位置情報および時刻情報を取得し(S110),位置情報処理部11が,位置情報計測装置21で計測した位置情報を,可視光画像情報に用いた撮影装置20の位置情報に補正をする。以後の処理で用いる位置情報は,補正後の位置情報(撮影装置20の位置情報)となる。
【0102】
そして画像情報処理部10は,時系列的に並べた撮影画像情報に,位置情報処理部11で補正した位置情報と時刻情報とを対応づけて,画像情報処理部10による撮影画像情報の伸縮処理,剪断変形処理を行う各補正処理を実行する。なお,補正処理はその一部または全部を行わなくてもよい。
【0103】
まず,位置情報計測装置21で取得した時刻情報と,撮影画像情報ごとの相対時間に基づいて時刻情報を算出する。そして,各撮影画像情報の終端位置を,位置情報計測装置21で取得した時刻情報と位置情報とを用いて比例配分することで算出する。なお,撮影画像情報の終端位置は,隣接する撮影画像情報の始端位置として用いることができる。このように算出した撮影画像情報の始端位置と終端位置との進行方向の位置情報の差に基づく距離と,所定単位の枚数分と撮影幅とに基づく撮影画像情報の距離とを比較することで,撮影画像情報の伸縮比率を算出し,伸縮を行う。
【0104】
また,撮影画像情報の始端位置と終端位置との進行方向に対する横方向の位置情報の差に基づく距離に基づいて撮影画像情報の剪断変形処理を実行する。
【0105】
以上の処理を実行することで,滑走路の路面を撮影した撮影画像情報と位置情報とを対応づけることができる。
【0106】
このように補正処理を実行すると,画像情報処理部10は,撮影画像情報において,レーン領域を示すレーン線Lと,マージン領域を示すマージン線Mとを設定する(S120)。そして,詳細画像情報と広域画像情報とを生成する(S130)。
【0107】
まず画像処理部は,マージン線Mよりも外側の画像情報の領域はトリミングをし(S200),マージン線Mよりも内側であって,撮影ができていない領域に対しては,黒塗りするなどの所定の画像処理を加えて(S210),詳細画像情報として画像情報記憶部12に記憶させる(S220)。また画像処理部は,レーン線Lよりも外側の領域をトリミングをして(S300),広域画像情報として画像情報記憶部12に記憶させる(S310)。なお,レーン領域はマージン領域よりも内側であるので,撮影ができていない領域がないことがほとんどとなるが,何らかの障害により撮影ができていない領域があった場合には,マージン領域と同様に,黒塗りをするなどの所定の画像処理を加えてもよい。
【0108】
このように広域画像情報,詳細画像情報を画像情報記憶部12に記憶させたあと,撮影した滑走路の路面の画像情報を確認したい場合には,所定の操作が行われることで,表示処理部13が,図20に示すような表示画面を表示させる(S140)。
【0109】
そして表示画面の表示領域Aにおいて,表示させる位置の選択を受け付けると,表示処理部13は,その位置情報に対応する広域画像情報を画像情報記憶部12から抽出して表示領域Bに表示する。また,広域画像情報から詳細な画像情報の領域B1の選択を受け付けると,その位置情報に対応する詳細画像情報を画像情報記憶部12から抽出して表示領域Cに表示する。
【0110】
具体的には表示処理部13は,位置情報に対応する広域画像情報を画像情報記憶部12から抽出し,レーン線Lがコースの区切りを示す線となるように,隣り合うコースごとに,各コースに対応するレーンの広域画像情報を表示領域Bに表示させる。また表示処理部13は,位置情報に対応する詳細画像情報を画像情報記憶部12から抽出し,マージン線Mがコースの区切りを示す線となるように,隣り合うコースごとに各コースに対応するレーンの詳細画像情報を表示領域Cに表示させる。表示領域Cに詳細画像情報を表示する際には,マージン線Mとレーン線Lとが区別可能なように,異なる色,線種別(直線,破線,一点鎖線,二点鎖線など),異なる太さなどで表示をすることが好ましい。またマージン線Mとレーン線Lとを区別するほか,マージン領域とレーン領域とが区別可能になっているとよい。たとえばマージン領域とレーン領域を異なる色で表示する,マージン領域とレーン領域であることを表示させる,マークを付するなどがある。
【0111】
これによって,広い範囲を確認したい場合には広域画像情報を,詳細に確認をしたい場合には詳細画像情報を確認することができる。とくに詳細画像情報においてはマージン線Mがコースの区切りとなっているので,マージン領域が重畳して表示される。そのためコースの区切りにある凹凸などの異常を見落とすことがない。また隣り合うコースの画像情報同士の合成処理も不要なので,処理時間を要することなく,また簡便な処理で画像情報の表示を実現することができる。
【実施例2】
【0112】
路面には直線箇所のみならず,湾曲箇所もある。たとえば空港の場合,飛行機は駐機場から滑走路まで移動する際に,誘導路を移動する。そこで本実施例においては,湾曲箇所がある路面の場合における画面表示を行う場合を説明する。湾曲箇所がある場合のコースの一例を図23に示す。
【0113】
誘導路などの路面にはセンターライン(中央線など,路面を一定の幅で区切る線)およびキロポスト(距離を示す標識)が設定されている。そこで,移動体が走行するコースを,センターラインに対して直角方向に一定距離だけ離れた曲線を描くように設定する。なお曲線は折れ線であってもよい。
【0114】
このように設定されたコースに沿って,実施例1と同様に移動体が移動し,移動体搭載装置2によって路面を撮影をする。この場合,移動体搭載装置2は移動体の横断方向に知って路面を撮影するので,各コースに対応するレーンの撮影画像情報は,長い長方形となる。なお,厳密には湾曲部を走行すると移動体の左右の間で距離の歪みが発生するが,誘導路や道路の回転半径は十分に大きいことが一般的であるので,撮影画像情報の局所的な歪みは問題とはならない。
【0115】
しかし,湾曲部分の内側のコースと,外側のコースを走行した場合では,撮影距離の差が生じるので,コースに対応するレーンの撮影画像情報の長さが変わる。そこで本実施例においては,表示処理部13が実距離表示モードとキロポスト表示モードの2つの表示方法を切り替え可能として表示することで,対応する。
【0116】
実距離表示モードは,画像情報記憶部12に記憶した画像情報を,キロポスト(単位距離)間の撮影画像情報の長さが一定となるような伸縮処理を行わずに,そのまま実施例1と同様に並べる方式である。実距離表示モードを模式的に示すのが図24である。図24では右側が始点,左側が終点となっているが,左右逆,あるいは上下方向の表示をしても良い。実距離表示モードは,実際の走行距離で表示されているので,撮影画像情報を表示画面で表示する場合,凹凸などの異常を実際のサイズと同様の大きさで確認することができる。
【0117】
実距離表示モードでは,画像情報のサイズが伸縮されていないので,湾曲部分の内側のコース,外側のコースのいずれの画像情報であっても,実際のサイズに近い。そのため,凹凸などの異常があったとしても画像情報から計測して誤差が少ない利点がある。
【0118】
表示処理部13は,実距離表示モードにおいて,対応する位置関係を明らかにするため,各撮影画像情報に対応づけられた位置情報を用いて,同一キロポスト(単位距離)の位置に線を重畳表示するなどするとよい。これによって,同一キロポストの位置関係を,容易に認識することができる。
【0119】
キロポスト表示モードは,キロポスト(単位距離)間の撮影画像情報の長さが一定となるように,進行方向に伸縮しておき,その画像情報を表示する。この場合,各キロポスト間の拡縮率(たとえばコース1の20~40mキロポスト間は0.87倍など)をあらかじめ設定しておき,画像処理部においてあらかじめその伸縮率に応じた撮影画像情報を生成しておき,それを画像情報記憶部12に記憶させておく。そして表示処理部13における表示処理の際に,伸縮した撮影画像情報を表示させる。なお,画像処理部において表示させるほか,表示処理部13における表示の際に,撮影画像情報を伸縮してもよい。キロポスト表示モードを模式的に示すのが図25である。
【0120】
キロポスト表示モードでは,コース間の横断方向のずれが少なくなるので,コースを横断して存在する凹凸等の異常の全体像を画像情報から確認する場合には有益である。
【0121】
このように,表示処理部13は,実距離表示モードとキロポスト表示モードとをアイコンやボタン,プルダウンメニューなどによって,切り替え可能とすることが好ましい。
【0122】
実施例2の場合においても,それぞれの表示モード(実距離表示モード,キロポスト表示モード)で,実施例1と同様に詳細画像情報,広域画像情報を生成し,詳細表示処理,広域表示処理を表示処理部13が実行してもよい。
【0123】
本発明は,本発明の趣旨を逸脱しない範囲において,適宜,設計変更が可能である。また処理は一例であり,その処理を異なる順番で実行することも可能である。さらに,画面の表示についても適宜,変更可能である。また,すべての機能を備えずとも,一部の機能のみを備えるのであってもよい。
【0124】
一つの撮影対象を複数の画像情報に分割して撮影して表示する場合における画像情報同士の合成処理の課題は路面の撮影の場合に限られるものではない。そのため,本発明の画像処理システム1における画像情報処理,表示処理は,路面を撮影した画像情報のみに適用できるのではなく,一つの撮影対象を複数の画像情報に分割して撮影し,表示する場合にも適用することができる。たとえば建築物やトンネル,橋脚などさまざまな撮影対象物の場合に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の画像処理システム1を用いることで,撮影時に横断方向への揺らぎが生じても,画像情報の抜けが生じない。また,撮影した結果をすぐに目視したい場合には,すぐに確認することができる。
【符号の説明】
【0126】
1:画像処理システム
2:移動体搭載装置
C:車両
10:画像情報処理部
11:位置情報処理部
12:画像情報記憶部
13:表示処理部
20:撮影装置
21:位置情報計測装置
22:同期装置
23:記録装置
24:照明装置
25:支柱
26:取付ビーム
27:照明支持台
30:投影装置
40:ルーフキャリア
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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