(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】ブラックジンジャー抽出物含有組成物及び経口用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/9068 20060101AFI20230724BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20230724BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230724BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230724BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230724BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20230724BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230724BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230724BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230724BHJP
A61K 31/352 20060101ALN20230724BHJP
A61K 8/9794 20170101ALN20230724BHJP
A61Q 19/02 20060101ALN20230724BHJP
A61Q 19/08 20060101ALN20230724BHJP
A23L 33/105 20160101ALN20230724BHJP
【FI】
A61K36/9068
A61K47/40
A61P3/02
A61P3/04
A61P39/06
A61P17/18
A61P17/14
A61P29/00
A61P17/00
A61K31/352
A61K8/9794
A61Q19/02
A61Q19/08
A23L33/105
(21)【出願番号】P 2021566849
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039146
(87)【国際公開番号】W WO2021131264
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2019236771
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】田川 岳
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 潤
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/170681(WO,A1)
【文献】特開2013-192513(JP,A)
【文献】特開2015-227329(JP,A)
【文献】特開2014-074006(JP,A)
【文献】特開2019-001739(JP,A)
【文献】特開2011-236133(JP,A)
【文献】特開平11-180867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 47/00-47/69
A61K 31/33-33/44
A23L 33/00-33/29
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラックジンジャー抽出物と、シクロデキストリンとを含有するブラックジンジャー抽出物含有組成物であって、
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、及び3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンの6種のポリメトキシフラボンの合計量を100質量部とした場合の、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボンの含有量が5質量部以下であり、
前記6種のポリメトキシフラボンの合計量を0.006mg/mLに調整した前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の吸光度を測定した場合に以下の式(1)を満たすことを特徴とするブラックジンジャー抽出物含有組成物。
P1/V1≧1.45 ・・・式(1)
前記式(1)中、V1は波長230nmから240nmの範囲における吸光度の最小値を示し、P1は波長260nmから270nmの範囲における吸光度の最大値を示す。
【請求項2】
6種のポリメトキシフラボンの合計量を0.05mg/mLに調整したブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の波長660nmの光の透過率が95%以上である請求項1に記載のブラックジンジャー抽出物含有組成物。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載のブラックジンジャー抽出物含有組成物を含有することを特徴とする経口用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックジンジャー抽出物含有組成物、及び前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物を含有する経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラックジンジャー(黒ショウガ)は、タイを原産国とする植物であり、古来より、民間薬的な利用法として、精力増進、性能力向上、胃腸の病気や疼痛の改善等の滋養強壮のために使用されてきた。また、南アジアの一部の地域では、健康のためにスライスしたブラックジンジャーを煮出してお茶として飲用したり、酒類に漬けて薬酒として飲用したりするなど、安全性の高いものである。
【0003】
また、ブラックジンジャーの抽出物は、優れた抗酸化作用、抗老化作用、抗炎症作用、育毛作用、抗肥満作用、美白作用などを有することが知られている(特許文献1参照)。そのため、ブラックジンジャーから有効成分を抽出し、活性の強いブラックジンジャー抽出物を経口用組成物に添加して摂取することが試みられている。
【0004】
しかしながら、ブラックジンジャー抽出物は、甘味がなく、苦味、渋味等の非嗜好性の呈味を有するため、後味が悪く、繰返して飲み難いという問題がある。
これに対し、ブラックジンジャー抽出物が有する苦味、渋味、後味等の呈味を改善したブラックジンジャー抽出物組成物が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、上記提案のブラックジンジャー抽出物組成物であっても、呈味の改善は十分満足できるものではなく、更に、水及び酸性溶液に対する溶解性も良好なものではないため、経口用組成物として応用し難いという問題があった。
【0006】
したがって、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を更に改善することができ、かつ、水及び酸性溶液に対する溶解性を改善することができるブラックジンジャー抽出物含有組成物及びこれを含有する経口用組成物の開発が強く望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-051790号公報
【文献】特開2013-192513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を改善することができ、かつ、水及び酸性溶液に対する溶解性を改善することができるブラックジンジャー抽出物含有組成物、及び前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物を含有する経口用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1> ブラックジンジャー抽出物と、シクロデキストリンとを含有するブラックジンジャー抽出物含有組成物であって、
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、及び3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンの6種のポリメトキシフラボンの合計量を100質量部とした場合の、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボンの含有量が5質量部以下であり、
前記6種のポリメトキシフラボンの合計量を0.006mg/mLに調整した前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の吸光度を測定した場合に以下の式(1)を満たすことを特徴とするブラックジンジャー抽出物含有組成物である。
P1/V1≧1.45 ・・・式(1)
前記式(1)中、V1は波長230nmから240nmの範囲における吸光度の最小値を示し、P1は波長260nmから270nmの範囲における吸光度の最大値を示す。
<2> 前記<1>に記載のブラックジンジャー抽出物含有組成物を含有することを特徴とする経口用組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を改善することができ、かつ、水及び酸性溶液に対する溶解性を改善することができるブラックジンジャー抽出物含有組成物、及び前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物を含有する経口用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、試験例2において、6PMFの合計量を0.006mg/mLに調整した実施例1のブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の吸光度測定によって得られた紫外吸収スペクトを示す図である。「V1」は波長230nmから240nmの範囲における吸光度の最小値を示し、「P1」は波長260nmから270nmの範囲における吸光度の最大値を示し、「V2」は波長275nmから290nmの範囲における吸光度の最小値を示し、「P2」は波長320nmから340nmの範囲における吸光度の最大値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ブラックジンジャー抽出物含有組成物)
本発明のブラックジンジャー抽出物含有組成物は、ブラックジンジャー抽出物と、シクロデキストリンとを少なくとも含有し、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
【0013】
<ブラックジンジャー抽出物>
前記ブラックジンジャー抽出物の抽出原料として使用するブラックジンジャー(黒ショウガ)は、ショウガ科(Zingiberaceae)バンウコン属(Kaempferia)に属する植物である。学名は、ケンペリア・パルウィフローラ(Kaempferia parviflora)であり、東南アジアのタイ等に分布しており、この地域から容易に入手可能である。
前記ブラックジンジャーの入手方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、自然界から採取してもよいし、市販品を用いてもよい。
【0014】
<<6種のポリメトキシフラボン(6PMF)>>
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物は、5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、及び3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンの6種のポリメトキシフラボン(以下、前記6種のポリメトキシフラボンを「6PMF」と称することがある)を含むものである。
前記6種のポリメトキシフラボンは、前記ブラックジンジャー抽出物に由来する成分である。
【0015】
5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボンは、下記構造式(1)で表される化合物である。
【化1】
【0016】
3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボンは、下記構造式(2)で表される化合物である。
【化2】
【0017】
5,7-ジメトキシフラボンは、下記構造式(3)で表される化合物である。
【化3】
【0018】
5,7,4’-トリメトキシフラボンは、下記構造式(4)で表される化合物である。
【化4】
【0019】
3,5,7-トリメトキシフラボンは、下記構造式(5)で表される化合物である。
【化5】
【0020】
3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンは、下記構造式(6)で表される化合物である。
【化6】
【0021】
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における6PMFの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その下限値としては、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物全体の固形分量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、6PMFの含有量の上限値としては、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物全体の固形分量に対して、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における6PMFの含有量の上限値と下限値とは、目的に応じて適宜組み合わせることができるが、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物全体の固形分量に対して、1質量%~20質量%が好ましく、5質量%~15質量%がより好ましい。
なお、本発明において、ブラックジンジャー抽出物含有組成物全体の固形分量とは、ブラックジンジャー抽出物含有組成物を凍結乾燥することにより得られた固形物の質量を示す。
【0022】
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における6PMFの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、下記実施例(調製例2)に記載の分析条件で測定及び定量することができる。
【0023】
<<5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン(5-HMF)>>
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物は、5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン(以下、「5-HMF」と称することがある)を含有していてもよい。
5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボンは、前記ブラックジンジャー抽出物に由来する成分であり、下記構造式(7)で表される化合物である。
【化7】
【0024】
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における5-HMFの含有量は、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における6PMFの合計量を100質量部とした場合に、5質量部以下であり、3.5質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることが特に好ましい。6PMFの合計量100質量部に対して、5-HMFの含有量が5質量部以下であると、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を改善することができ、また水及び酸性溶液に対する溶解性を改善することができる点で有利である。一方、6PMFの合計量100質量部に対して、5-HMFの含有量が5質量部を超えると、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を改善することができず、また水及び酸性溶液に対する溶解性も改善することができない。
【0025】
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における5-HMFの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、下記実施例(調製例2)に記載の分析条件で測定及び定量することができる。
【0026】
なお、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物は、6PMF及び5-HMF以外のブラックジンジャー抽出物に由来する成分を種々含むものである。したがって、6PMF以外のブラックジンジャー抽出物に由来するポリメトキシフラボン類や、5-HMF以外のブラックジンジャー抽出物に由来するヒドロキシメトキシフラボン類を含んでいてもよい。
【0027】
-ブラックジンジャー抽出物の抽出方法-
前記ブラックジンジャー抽出物の抽出方法としては、6PMFを含む抽出物を得ることができる限り、特に制限はなく、植物の抽出に一般的に用いられる方法により容易に得ることができる。例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に前記抽出原料として使用するブラックジンジャーを浸漬し、必要に応じて適宜攪拌しながら可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣を除き、精製することによりブラックジンジャー抽出物を得る方法などが挙げられる。
【0028】
前記抽出原料として使用する前記ブラックジンジャーの使用部位としては、6PMFを含む部位である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、花、蕾、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉等の地上部;根、根茎等の地下部などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ブラックジンジャーの使用部位としては、根、根茎等の地下部が好ましい。
【0029】
前記抽出原料として使用する前記ブラックジンジャーの大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、採取したそのままの大きさ、切断した所望の大きさ、微粉(パウダー)化された大きさなどが挙げられる。
【0030】
前記抽出原料として使用する前記ブラックジンジャーの状態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、採取したそのままの状態、乾燥した状態、粉砕した状態、搾汁の状態の状態などが挙げられる。これらの中でも、乾燥した状態が好ましい。
【0031】
前記ブラックジンジャーを前記乾燥した状態にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天日で乾燥する方法、通常使用される乾燥機を用いて乾燥する方法などが挙げられる。
【0032】
前記ブラックジンジャーを前記粉砕した状態にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ミキサー、シュガーミル、パワーミル、ジェットミル、衝撃式粉砕機等により粉砕する方法などが挙げられる。
【0033】
前記ブラックジンジャーを前記搾汁の状態にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧搾などが挙げられる。
【0034】
前記ブラックジンジャー抽出物の抽出溶媒としては、6PMFを含む抽出物を得ることができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性溶媒、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0035】
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記親水性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記水と前記親水性溶媒との混合溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記親水性溶媒として前記低級アルコールを使用する場合は、前記水10質量部に対して、前記親水性溶媒を1質量部~90質量部使用することが好ましく、前記親水性溶媒として前記低級脂肪族ケトンを使用する場合は、前記水10質量部に対して、前記親水性溶媒を1質量部~40質量部使用することが好ましく、前記親水性溶媒として多価アルコールを使用する場合は、前記水10質量部に対して、前記親水性溶媒を1質量部~90質量部使用することが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
これらの中でも、前記ブラックジンジャー抽出物の抽出溶媒は、安全性、取扱性の観点から、水とエタノールとの混合溶媒(含水エタノール)が好ましい。
前記含水エタノールを抽出溶媒として用いる場合のエタノールの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50容量%以上であることが好ましく、60容量%以上であることがより好ましい。
【0039】
前記抽出溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記抽出原料として使用するブラックジンジャーの5倍量~15倍量(質量比)が好ましい。
【0040】
前記ブラックジンジャー抽出物の抽出条件(抽出時間、抽出温度、圧力等の雰囲気条件など)としては、6PMFを含む抽出物を得ることができる限り、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができる。
抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50℃~95℃にて1時間~4時間程度であり、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40℃~80℃にて30分間~4時間程度である。
【0041】
前記ブラックジンジャー抽出物の精製方法としては、6PMFを含むものを得ることができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー、液-液分配抽出、膜分離などが挙げられる。これらの精製方法は、1種単独で行ってもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ブラックジンジャー抽出物は、前記吸着クロマトグラフィーにより精製されたものであることが好ましい。
【0042】
前記吸着クロマトグラフィーに用いられる吸着樹脂としては、6PMFを含むものを得ることができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芳香族系又は芳香族系修飾型の吸着樹脂が好ましい。
前記吸着樹脂の具体例としては、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP21、セパビーズSP825L、セパビーズSP850、セパビーズSP207(以上、三菱化学株式会社製)、アンバーライトXAD-2、アンバーライトXAD4、アンバーライトXAD7(以上、オルガノ株式会社製)などが挙げられる。
【0043】
前記ブラックジンジャー抽出物を精製する際に使用する前記吸着樹脂の量としては、前記吸着樹脂の性能などに応じて適宜選択することができるが、前記ブラックジンジャー抽出物の固形分量1質量部に対して、1容量部~50容量部使用することが好ましい。
なお、本発明において、前記ブラックジンジャー抽出物の固形分量とは、ブラックジンジャー抽出物を凍結乾燥することにより得られた固形物の質量を示す。
【0044】
前記吸着樹脂に吸着した前記ブラックジンジャー抽出物由来の成分の溶出に用いる溶媒(以下、「溶出溶媒」と称することがある)としては、6PMFを含む溶出画分を得ることができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性溶媒、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。これらは、前記ブラックジンジャー抽出物の抽出溶媒と同様のものを用いることができる。
【0045】
これらの中でも、前記溶出溶媒は、水とエタノールとの混合溶媒(含水エタノール)が好ましい。
前記含水エタノールを溶出溶媒として用いる場合のエタノールの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、6PMFを高含有する溶出画分を得ることができる点で、60容量%~100容量%が好ましく、75容量%がより好ましい。
これらの溶出溶媒により得られた溶出画分は、6PMFを含む溶出画分であれば、1つの溶出画分のみをブラックジンジャー抽出物として使用してもよく、複数の溶出画分を混合してブラックジンジャー抽出物として使用してもよい。
【0046】
前記精製に用いる溶媒の使用量としては、特に制限はなく、所望の6PMFの含有量などに応じて適宜選択することができるが、前記吸着樹脂の1倍量~20倍量(容量比)が好ましい。
【0047】
前記ブラックジンジャー抽出物の状態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ブラックジンジャー抽出物そのものであってもよく、前記ブラックジンジャー抽出物の濃縮物、前記ブラックジンジャー抽出物の希釈物、前記ブラックジンジャー抽出物の乾燥物などであってもよい。また、前記ブラックジンジャー抽出物は、前記ブラックジンジャー抽出物の乾燥物を、再度水、親水性溶媒、又はこれらの混合溶媒等の溶媒に混合又は溶解させたものであってもよい。
【0048】
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における前記ブラックジンジャー抽出物の固形分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物全体の固形分量に対して、1質量%~20質量%が好ましく、5質量%~15質量%がより好ましい。前記ブラックジンジャー抽出物の固形分の含有量が、1質量%未満であると、有効成分であるブラックジンジャー抽出物の所望の効果が得られないことがあり、20質量%を超えると、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の製造が困難なことがある。
【0049】
<シクロデキストリン>
前記シクロデキストリンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、γ-シクロデキストリンが、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物を均一に製造できる点で好ましい。
前記シクロデキストリンは、公知の方法により製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0050】
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における前記シクロデキストリンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における6PMFの合計量を1質量部とした場合に、4質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましく、8質量部以上が更に好ましい。6PMFの合計量1質量部に対して、シクロデキストリンの含有量が少なくとも4質量部であることが、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を改善することができ、また水及び酸性溶液に対する溶解性を改善することができる点で有利であり、その上限値としては、特に制限はない。
【0051】
<<吸光度比(P1/V1)>>
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物は、6PMFの合計量を0.006mg/mLに調整した前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の吸光度を測定した場合に以下の式(1)を満たすものである。
P1/V1≧1.45 ・・・式(1)
前記式(1)中、V1は波長230nmから240nmの範囲における吸光度の最小値を示し、P1は波長260nmから270nmの範囲における吸光度の最大値を示す。
したがって、本明細書において、前記式(1)におけるP1/V1より算出される値は、「吸光度比(P1/V1)」と称することがある。
【0052】
前記吸光度比(P1/V1)は、上記の通り1.45以上であるが、1.5以上が好ましい。前記吸光度比(P1/V1)が1.45以上であると、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を改善することができ、また水及び酸性溶液に対する溶解性を改善することができる点で有利である。一方、前記吸光度比(P1/V1)が1.45未満であると、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を改善することができず、また水及び酸性溶液に対する溶解性も改善することができない。
前記吸光度比(P1/V1)は、1.45以上であれば、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を改善することができ、また水及び酸性溶液に対する溶解性を改善することができるものであるため、その上限値としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.0以下であることが好ましい。
前記吸光度比(P1/V1)の上限値と下限値とは、目的に応じて適宜組み合わせることができ、1.45以上2.0以下が好ましく、1.5以上2.0以下がより好ましい。
【0053】
<<吸光度比(P2/V2)>>
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物は、6PMFの合計量を0.006mg/mLに調整した前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の吸光度を測定した場合に、更に以下の式(2)を更に満たすことが好ましい。
P2/V2≧1.42 ・・・式(2)
前記式(2)中、V2は波長275nmから290nmの範囲における吸光度の最小値を示し、P2は波長320nmから340nmの範囲における吸光度の最大値を示す。
したがって、本明細書において、前記式(2)におけるP2/V2より算出される値は、「吸光度比(P2/V2)」と称することがある。
【0054】
前記吸光度比(P2/V2)は、上記の通り1.42以上が好ましく、1.44以上がより好ましく、1.46以上が更に好ましい。前記吸光度比(P2/V2)が1.42以上であると、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味を改善することができ、また水及び酸性溶液に対する溶解性を改善することができる点で有利である。
前記吸光度比(P2/V2)は、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味や、水及び酸性溶液に対する溶解性を好適に改善する点で、1.42以上であることが好ましいため、その上限値としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.7以下であることが好ましい。
前記吸光度比(P2/V2)の上限値と下限値とは、目的に応じて適宜組み合わせることができ、1.42以上1.7以下が好ましく、1.44以上1.7以下がより好ましい。
【0055】
前記吸光度を測定する際の前記水溶液中の前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の6PMFの合計量は、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物に0.006mg/mLとなるように蒸留水を加えることで調整することができる。
【0056】
6PMFの合計量を0.006mg/mLに調整した前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の吸光度は、例えば、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液を光路長10mmの石英セルに入れ、紫外可視分光光度計(型番:UV-1800、株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。前記V1、前記P1、前記V2、及び前記P2は、紫外可視分光光度計による測定で得られた紫外(UV)吸収スペクトルから確認することができる。なお、前記V1、前記P1、前記V2、及び前記P2は、対照試料として蒸留水を用い、バックグラウンド補正した値である。即ち、前記V1、前記P1、前記V2、及び前記P2は、いずれも対照試料としての蒸留水を光路長10mmの石英セルに入れ、紫外可視分光光度計(型番:UV-1800、株式会社島津製作所製)を用いて測定した値を差し引いた値である。
【0057】
<<透過率>>
6PMFの合計量を0.05mg/mLに調整したブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の波長660nmの光の透過率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましく、99.5%以上であることが特に好ましい。
前記透過率は、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水及び酸性溶液に対する溶解性の指標とすることができる。前記透過率の値が高い程、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水及び酸性溶液に対する溶解性が良好であることを示す。
【0058】
前記透過率を測定する際の前記水溶液中の前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の6PMFの合計量は、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物に0.05mg/mLとなるように蒸留水又は0.1質量%クエン酸溶液(pH2.8)を加えることで調整することができる。
【0059】
6PMFの合計量を0.05mg/mLに調整した前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の波長660nmの光の透過率は、例えば、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液を5分間超音波処理後、80℃にて20分間加温した後、常温(JIS Z 8703:1983規格に準拠)まで冷却した溶液を光路長10mmの石英セルに入れ、紫外可視分光光度計(型番:UV-1800、株式会社島津製作所製)を用いて測定した結果から算出することができる。具体的には、前記水溶液の波長660nmの光の透過率は、対照試料として蒸留水又は0.1質量%クエン酸溶液を用い、前記蒸留水又は0.1質量%クエン酸溶液の波長660nmの光の透過率を100%として算出することができる。
【0060】
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の状態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉末状、ペースト状、液状などが挙げられる。これらの状態は、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の製造方法により適宜調整することができる。また、前記粉末状のものを、更に、固体状、顆粒状、キューブ状などに成形したものであってもよい。
【0061】
-製造方法-
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物のペースト状物又は液状物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ブラックジンジャー抽出物と、前記シクロデキストリンと、更に必要に応じて前記その他の成分とを添加混合し、ロータリーエバポレーター等の装置で減圧濃縮することにより製造することができる。
【0062】
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の粉末状物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ブラックジンジャー抽出物と、前記シクロデキストリンと、更に必要に応じて前記その他の成分とを添加混合し、ロータリーエバポレーター等の装置で減圧濃縮した後、更に、真空濃縮機、噴霧乾燥、熱風乾燥機、凍結乾燥機等の公知の乾燥機を用いて乾燥する方法などが挙げられる。これらの中でも、凍結乾燥機を用いて乾燥する方法が好ましい。
前記乾燥の際に温度をかける場合、その条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃~70℃前後で16時間~48時間程度乾燥することが好ましい。
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の乾燥後、例えば、乳鉢、衝撃式粉砕機等の公知の粉砕方法にて粉砕することで、ブラックジンジャー抽出物含有組成物の粉末状物を得ることができる。また、必要に応じて、前記粉末状物を篩い分けすることで、均一な粒径のブラックジンジャー抽出物含有組成物の粉末状物を得ることもできる。
【0063】
-用途-
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物は、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味が改善され、かつ、水及び酸性溶液に対する溶解性が改善されたものであることから、化粧料、飲食品、医薬品など分野を問わず幅広く利用可能である。また、後述する本発明の経口用組成物に好適に利用可能である。
【0064】
本発明のブラックジンジャー抽出物含有組成物は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【0065】
(経口用組成物)
本発明の経口用組成物は、本発明のブラックジンジャー抽出物含有組成物を含有し、必要に応じて更にその他の成分を含有する。
【0066】
本発明における経口用組成物は、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物を含むため、該ブラックジンジャー抽出物含有組成物の有効成分であるブラックジンジャー抽出物の作用により、精力増進、性能力向上、胃腸の病気や疼痛の改善等の滋養強壮や、抗酸化、抗老化、抗炎症、育毛、抗肥満、美白などのために用いることができるものである。
【0067】
前記経口用組成物とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではない。したがって、前記経口用組成物は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する飲食品を幅広く含むものを意味する。
【0068】
前記経口用組成物の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、アルコール飲料、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;サラダ、漬物等の惣菜;種々の形態の健康・美容・栄養補助食品;錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ、うがい薬等の医薬品、医薬部外品;口中清涼剤、口臭防止剤等の口腔内で使用する口腔清涼剤、歯磨剤などが挙げられる。これらの中でも、前記経口用組成物の種類は、飲料が好ましい。
【0069】
<ブラックジンジャー抽出物含有組成物>
前記経口用組成物における前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の含有量としては、特に制限はなく、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜調整することができる。
前記経口用組成物の種類が飲料である場合、前記飲料における前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記経口用組成物全体に対して、0.01質量%~50質量%が好ましく、場合によっては50質量%を超えても使用可能である。また、前記ブラックジンジャー抽出物として1日あたり75mg~300mgの摂取量で有効な結果が得られる。
【0070】
<その他の成分>
前記経口用組成物における前記その他の成分としては、特に制限はなく、通常の経口用組成物の製造に用いられる補助的原料又は添加物又はその他の成分の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性pH調整剤、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤、溶媒、安定化剤、酸化防止剤等の各種添加剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記経口用組成物における前記その他の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0072】
前記酸性pH調整剤としては、特に制限はなく、公知のpH調整剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フィチン酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記酸性pH調整剤の含有量としては、特に制限はなく、目的のpHに応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0073】
以下に調製例、実施例、比較例、及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの調製例、実施例、及び試験例に何ら限定されるものではない。
【0074】
(調製例1:ブラックジンジャー抽出物の調製)
ブラックジンジャーの根茎部のスライス物(乾燥)5kgに、60容量%エタノール水溶液50Lを加え、穏やかに撹拌しながら70℃にて1時間加熱還流抽出を行い、加熱還流抽出物を得た。次いで、前記加熱還流抽出物を、200メッシュ(株式会社飯田製作所製)のふるいを用いて濾過して不溶物を除去し、濾液を得た。得られた濾液を、ロータリーエバポレーターRE-10E-100型(柴田科学株式会社製)で、60℃の減圧下で濃縮し、更に凍結乾燥を行った。これにより、ブラックジンジャー抽出物420g(粉末状)を得た。
【0075】
得られたブラックジンジャー抽出物を100g量り取り、これに40容量%エタノール水溶液8Lを加えて撹拌して溶解させ、ブラックジンジャー抽出物の溶解液(以下、「未精製抽出物」と称することがある)を得た。
【0076】
(調製例2:精製液A及び精製液Bの調製)
合成吸着剤(ダイヤイオンHP20、三菱ケミカル株式会社製)を用いた2Lのカラムクロマトグラフィーに、調製例1で得られた未精製抽出物8L(ブラックジンジャー抽出物100gを含む)を4L/時間で付し、次いで、40容量%エタノール水溶液6Lを4L/時間で付して溶離させ、これをそれぞれ2Lずつ分画し、未吸着部(未精製抽出物の透過液及び40容量%エタノール溶出液)7画分を得た。
【0077】
次いで、前記カラムクロマトグラフィーに、75容量%エタノール水溶液16Lを6L/時間で付して吸着した成分を溶離させ、これを2Lずつ分画し、75容量%エタノール溶出液8画分を得た。以下、75容量%エタノール水溶液による溶出が早い順に、それぞれ「75容量%エタノール溶出液(1)」、「75容量%エタノール溶出液(2)」、「75容量%エタノール溶出液(3)」、「75容量%エタノール溶出液(4)」、「75容量%エタノール溶出液(5)」、「75容量%エタノール溶出液(6)」、「75容量%エタノール溶出液(7)」、及び「75容量%エタノール溶出液(8)」と称することがある。
【0078】
次いで、前記カラムクロマトグラフィーに、90容量%エタノール水溶液10Lを6L/時間で付して吸着した成分を更に溶離させ、これを2Lずつ分画し、90容量%エタノール溶出液5画分を得た。以下、90容量%エタノール水溶液による溶出が早い順に、それぞれ「90容量%エタノール溶出液(1)」、「90容量%エタノール溶出液(2)」、「90容量%エタノール溶出液(3)」、「90容量%エタノール溶出液(4)」、及び「90容量%エタノール溶出液(5)」と称することがある。
【0079】
得られた75容量%エタノール溶出液(1)~(8)の8画分、及び90容量%エタノール溶出液(1)~(5)の5画分を、以下の分析条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付し、各溶出液中の5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、及び3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンの6種のポリメトキシフラボン(6PMF)の含有量(合計量)と、5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン(5-HMF)の含有量を定量した。
【0080】
<分析条件>
[分析用試料の調製]
50mLメスフラスコに75容量%エタノール溶出液(1)~(8)の各画分、及び90容量%エタノール溶出液(1)~(5)の各画分をそれぞれ1mL分取し、60容量%メタノール水溶液にて50mLとなるようにメスアップした。次いで、0.45μmメンブランフィルターで濾過し、HPLC用の分析用試料とした。
【0081】
[検量線用標準液の調製]
下記S1~S6に示す6種のポリメトキシフラボンの標準品を、正確にそれぞれ2mg秤取し、ジメチルスルホキシド1mLで溶解させ、更に100容量%メタノールで20mLとなるようにメスアップした。これを60容量%メタノール水溶液にて段階希釈した溶液を調製し、メンブランフィルター(孔径:0.45μm)で濾過し、6種のポリメトキシフラボンの検量線用標準液を調製した。
また、下記S7に示す5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボンの標準品を正確に2mg秤取し、ジメチルスルホキシド1mLで溶解させ、更に100容量%メタノールで20mLとなるようにメスアップした。これを60容量%メタノール水溶液にて段階希釈した溶液を調製し、メンブランフィルター(孔径:0.45μm)で濾過し、5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボンの検量線用標準液を調製した。
S1: 5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン(INDOFINE Chemical Company, Inc.製)
S2: 3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン(株式会社常盤植物化学研究所製)
S3: 5,7-ジメトキシフラボン(INDOFINE Chemical Company, Inc.製)
S4: 5,7,4’-トリメトキシフラボン(INDOFINE Chemical Company, Inc.製)
S5: 3,5,7-トリメトキシフラボン(株式会社常盤植物化学研究所製)
S6: 3,5,7,4’-テトラメトキシフラボン(株式会社常盤植物化学研究所製)
S7: 5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン(INDOFINE Chemical Company, Inc.製)
【0082】
[HPLC分析条件]
・ 分析装置:高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)
・ カラム:Ascentis(登録商標) Express C18(長さ:10cm、内径:4.6mm、粒径:2.7μm、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製)
・ 検出器:フォトダイオードアレイ(PDA)(株式会社島津製作所社製)
・ 検出波長:265nm(PDAは波長200nm~440nm)
・ カラム温度:40℃
・ 移動相:0.1容量%トリフルオロ酢酸含有60容量%メタノール水溶液
・ 分析時間:60分間
・ 流速:0.6mL/分間
・ 分析用試料注入量:10μL
【0083】
得られた75容量%エタノール溶出液(1)~(6)の6画分を合わせて、「精製液A」(9.9kg)とした。
また、得られた75容量%エタノール溶出液(7)及び(8)の2画分と、90容量%エタノール溶出液(1)~(5)の5画分を合わせて、「精製液B」(11.7kg)とした。
上記分析条件で定量した各溶出液中の6種のポリメトキシフラボン(6PMF)及び5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン(5-HMF)の含有量から算出した、精製液Aにおける6PMFの合計量は2.44mg/gであり、精製液Aにおける5-HMFの含有量は0.003mg/gであった。また、精製液A1中の固形分量は2.85mg/gであった。
また、上記分析条件で定量した各溶出液中の6PMF及び5-HMFの含有量から算出した、精製液Bにおける6PMFの合計量は0.09mg/gであり、精製液Bにおける5-HMFの含有量は0.09mg/gであった。また、精製液B中の固形分量は0.47mg/gであった。
前記精製液A中の固形分量は、精製液Aを凍結乾燥することにより得られた、精製液A 1g当たりの固形物の質量を示す。また、前記精製液B中の固形分量も同様に、精製液Bを凍結乾燥することにより得られた、精製液B 1g当たりの固形物の質量を示す。
【0084】
(実施例1)
γシクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標) W8 Food、株式会社シクロケム製)3.7gを水100mLに溶解させた溶解液を調製した。このγシクロデキストリンの溶解液に、調製例2で得られた精製液Aを192g(固形分として547.5mg)加えて混合した混合液を得た。次いで、前記混合液をロータリーエバポレーターN-1100型(東京理化器械株式会社製)で減圧濃縮を行い、得られた濃縮液を凍結乾燥し、乾燥物を乳鉢で粉砕して粉末化することで、実施例1のブラックジンジャー抽出物含有組成物4.3gを得た。
【0085】
(実施例2)
γシクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標) W8 Food、株式会社シクロケム製)3.8gを水100mLに溶解させた溶解液を調製した。また、調製例2で得られた精製液Aを192g(固形分として547.5mg)と、調製例2で得られた精製液Bを8g(固形分として3.8mg)とを混合した精製液の混合液を得た。この精製液の混合液を、前記γシクロデキストリンの溶解液に加えて混合した混合液を得た。次いで、前記混合液をロータリーエバポレーターN-1100型(東京理化器械株式会社製)で減圧濃縮を行い、得られた濃縮液を凍結乾燥し、乾燥物を乳鉢で粉砕して粉末化することで、実施例2のブラックジンジャー抽出物含有組成物4.3gを得た。
【0086】
(実施例3)
γシクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標) W8 Food、株式会社シクロケム製)3.5gを水100mLに溶解させた溶解液を調製した。また、調製例2で得られた精製液Aを176g(固形分として501.9mg)と、調製例2で得られた精製液Bを24g(固形分として11.4mg)とを混合した精製液の混合液を得た。この精製液の混合液を、前記γシクロデキストリンの溶解液に加えて混合した混合液を得た。次いで、前記混合液をロータリーエバポレーターN-1100型(東京理化器械株式会社製)で減圧濃縮を行い、得られた濃縮液を凍結乾燥し、乾燥物を乳鉢で粉砕して粉末化することで、実施例3のブラックジンジャー抽出物含有組成物4.0gを得た。
【0087】
(実施例4)
γシクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標) W8 Food、株式会社シクロケム製)2.9gを水100mLに溶解させた溶解液を調製した。また、調製例2で得られた精製液Aを148g(固形分として422.1mg)と、調製例2で得られた精製液Bを52g(固形分として24.6mg)とを混合した精製液の混合液を得た。この精製液の混合液を、前記γシクロデキストリンの溶解液に加えて混合した混合液を得た。次いで、前記混合液をロータリーエバポレーターN-1100型(東京理化器械株式会社製)で減圧濃縮を行い、得られた濃縮液を凍結乾燥し、乾燥物を乳鉢で粉砕して粉末化することで、実施例4のブラックジンジャー抽出物含有組成物3.4gを得た。
【0088】
(実施例5)
γシクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標) W8 Food、株式会社シクロケム製)2.5gを水100mLに溶解させた溶解液を調製した。また、調製例2で得られた精製液Aを124g(固形分として353.6mg)と、調製例2で得られた精製液Bを76g(固形分として36.0mg)とを混合した精製液の混合液を得た。この精製液の混合液を、前記γシクロデキストリンの溶解液に加えて混合した混合液を得た。次いで、前記混合液をロータリーエバポレーターN-1100型(東京理化器械株式会社製)で減圧濃縮を行い、得られた濃縮液を凍結乾燥し、乾燥物を乳鉢で粉砕して粉末化することで、実施例5のブラックジンジャー抽出物含有組成物2.9gを得た。
【0089】
(実施例6)
γシクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標) W8 Food、株式会社シクロケム製)3.2gを水100mLに溶解させた溶解液を調製した。また、調製例2で得られた精製液Aを160g(固形分として456.3mg)と、調製例2で得られた精製液Bを136g(固形分として64.4mg)とを混合した精製液の混合液を得た。この精製液の混合液を、前記γシクロデキストリンの溶解液に加えて混合した混合液を得た。次いで、前記混合液をロータリーエバポレーターN-1100型(東京理化器械株式会社製)で減圧濃縮を行い、得られた濃縮液を凍結乾燥し、乾燥物を乳鉢で粉砕して粉末化することで、実施例6のブラックジンジャー抽出物含有組成物3.7gを得た。
【0090】
(比較例1)
γシクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標) W8 Food、株式会社シクロケム製)3.4gを水100mLに溶解させた溶解液を調製した。また、調製例2で得られた精製液Aを168g(固形分として479.1mg)と、調製例2で得られた精製液Bを232g(固形分として109.9mg)とを混合した精製液の混合液を得た。この精製液の混合液を、前記γシクロデキストリンの溶解液に加えて混合した混合液を得た。次いで、前記混合液をロータリーエバポレーターN-1100型(東京理化器械株式会社製)で減圧濃縮を行い、得られた濃縮液を凍結乾燥し、乾燥物を乳鉢で粉砕して粉末化することで、比較例1のブラックジンジャー抽出物含有組成物4.0gを得た。
【0091】
(比較例2)
γシクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標) W8 Food、株式会社シクロケム製)2.4gを水100mLに溶解させた溶解液を調製した。また、調製例2で得られた精製液Aを112g(固形分として319.4mg)と、調製例2で得られた精製液Bを304g(固形分として144.0mg)とを混合した精製液の混合液を得た。この精製液の混合液を、前記γシクロデキストリンの溶解液に加えて混合した混合液を得た。次いで、前記混合液をロータリーエバポレーターN-1100型(東京理化器械株式会社製)で減圧濃縮を行い、得られた濃縮液を凍結乾燥し、乾燥物を乳鉢で粉砕して粉末化することで、比較例2のブラックジンジャー抽出物含有組成物2.9gを得た。
【0092】
(比較例3)
γシクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標) W8 Food、株式会社シクロケム製)3.6gを水100mLに溶解させた溶解液を調製した。調製例1で得られたブラックジンジャー抽出物1.5gを60容量%エタノール100mLに溶解させ後、前記γシクロデキストリンの溶解液に加えて混合した混合液を得た。次いで、前記混合液をロータリーエバポレーターN-1100型(東京理化器械株式会社製)で減圧濃縮を行い、得られた濃縮液を凍結乾燥し、乾燥物を乳鉢で粉砕して粉末化することで、比較例3のブラックジンジャー抽出物含有組成物5.1gを得た。
【0093】
(実施例7、13、及び19)
実施例1のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製において、γシクロデキストリンの含有量を、下記表2~4に示す含有量に変更したこと以外は、実施例1のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製と同様の方法で、実施例7、13、及び19のブラックジンジャー抽出物含有組成物を調製した。
【0094】
(実施例8、14、及び20)
実施例2のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製において、γシクロデキストリンの含有量を、下記表2~4に示す含有量に変更したこと以外は、実施例2のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製と同様の方法で、実施例8、14、及び20のブラックジンジャー抽出物含有組成物を調製した。
【0095】
(実施例9、15、及び21)
実施例3のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製において、γシクロデキストリンの含有量を、下記表2~4に示す含有量に変更したこと以外は、実施例3のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製と同様の方法で、実施例9、15、及び21のブラックジンジャー抽出物含有組成物を調製した。
【0096】
(実施例10、16、及び22)
実施例4のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製において、γシクロデキストリンの含有量を、下記表2~4に示す含有量に変更したこと以外は、実施例4のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製と同様の方法で、実施例10、16、及び22のブラックジンジャー抽出物含有組成物を調製した。
【0097】
(実施例11、17、及び23)
実施例5のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製において、γシクロデキストリンの含有量を、下記表2~4に示す含有量に変更したこと以外は、実施例5のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製と同様の方法で、実施例11、17、及び23のブラックジンジャー抽出物含有組成物を調製した。
【0098】
(実施例12、18、及び24)
実施例6のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製において、γシクロデキストリンの含有量を、下記表2~4に示す含有量に変更したこと以外は、実施例6のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製と同様の方法で、実施例12、18、及び24のブラックジンジャー抽出物含有組成物を調製した。
【0099】
(比較例4、7、及び10)
比較例1のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製において、γシクロデキストリンの含有量を、下記表2~4に示す含有量に変更したこと以外は、比較例1のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製と同様の方法で、比較例4、7、及び10のブラックジンジャー抽出物含有組成物を調製した。
【0100】
(比較例5、8、及び11)
比較例2のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製において、γシクロデキストリンの含有量を、下記表2~4に示す含有量に変更したこと以外は、比較例2のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製と同様の方法で、比較例5、8、及び11のブラックジンジャー抽出物含有組成物を調製した。
【0101】
(比較例6、9、及び12)
比較例3のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製において、γシクロデキストリンの含有量を、下記表2~4に示す含有量に変更したこと以外は、比較例3のブラックジンジャー抽出物含有組成物の調製と同様の方法で、比較例6、9、及び12のブラックジンジャー抽出物含有組成物を調製した。
【0102】
(試験例1)
-6PMF及び5-HMFの含有量の測定-
調製例2の分析方法における[分析用試料の調製]を、以下の方法に変更したこと以外は、調製例2の分析方法と同様の方法で、実施例1~24及び比較例1~12の各ブラックジンジャー抽出物含有組成物における6PMFの含有量(合計量)及び5-HMFの含有量を定量した。この定量値より、ブラックジンジャー抽出物含有組成物における6PMFの合計量を100質量部とした場合の、ブラックジンジャー抽出物含有組成物における5-HMFの含有量(質量部)を算出した。結果を下記表1~4に示す。
【0103】
[分析用試料の調製]
実施例1~24及び比較例1~12の各ブラックジンジャー抽出物含有組成物(粉末)を10mg秤取し、60容量%メタノールに溶解させ、更に60容量%メタノールで50mLとなるようにメスアップした。次いで、メンブランフィルター(孔径:0.45μm)で濾過し、HPLC用の分析用試料とした。
【0104】
(試験例2)
-吸光度の測定-
実施例1~24及び比較例1~12の各ブラックジンジャー抽出物含有組成物(粉末)に蒸留水を加えて、それぞれ6PMFの合計量が0.006mg/mLとなるように各ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液を調製して試験試料とした。
紫外可視分光光度計(型番:UV-1800、株式会社島津製作所製)を用い、光路長10mmの石英セルに、実施例1~24及び比較例1~12の各試験試料を入れ、波長200nmから450nmまでの吸光度を2nm刻み以下の間隔でスキャンを行い、紫外(UV)吸収スペクトルを得た。
【0105】
図1には、実施例1の紫外(UV)吸収スペクトルを示した。実施例1では、
図1の紫外(UV)吸収スペクトルから、波長230nmから240nmの範囲における吸光度の最小値V1、波長260nmから270nmの範囲における吸光度の最大値P1、波長275nmから290nmの範囲における吸光度の最小値V2、及び波長320nmから340nmの範囲における吸光度の最大値P2を確認し、これらの吸光度の値から、吸光度比(P1/V1)及び吸光度比(P2/V2)を算出した。なお、前記V1、前記P1、前記V2、及び前記P2は、対照試料としてとして蒸留水を用い、バックグラウンド補正した値である。
図では示さないが、実施例2~24及び比較例1~12も同様の方法で吸光度比(P1/V1)及び吸光度比(P2/V2)を算出した。結果を下記表1~4に示す。
【0106】
(試験例3)
-透過率の測定-
実施例1~24及び比較例1~12の各ブラックジンジャー抽出物含有組成物(粉末)に、蒸留水又は0.1質量%クエン酸溶液を加え、それぞれ6PMFの合計量が0.05mg/mLとなるように調製し、5分間超音波処理後、80℃にて20分間加温した後、常温まで冷却して試験試料とした。
紫外可視分光光度計(型番:UV-1800、株式会社島津製作所製)を用い、光路長10mmの石英セルに、実施例1~24及び比較例1~12の各試験試料を入れ、波長660nmの光の透過率(T%)を測定した。対照試料には蒸留水又は0.1質量%クエン酸溶液を用い、蒸留水の波長660nmの光の透過率(T%)を100%として、実施例1~24及び比較例1~12の各試験試料の光の透過率を算出した。結果を下記表1~4に示す。
【0107】
(試験例4)
-味覚センサーによる味覚試験-
実施例1~24及び比較例1~12の各ブラックジンジャー抽出物含有組成物(粉末)のうちのいくつかの実施例及び比較例について、味覚センサーによる味覚試験を行った。下記表1~4において、味覚センサーによる味覚試験を実施していない実施例は、「N.D.」と示した。
具体的には、実施例及び比較例の各ブラックジンジャー抽出物含有組成物(粉末)に10mM塩化カリウムを含む20容量%エタノール溶液を加え、それぞれ6PMFの合計量が0.24mg/mLとなるように調製し、分析用試料とした。
次に、味覚センサー(味覚認識装置 TS-5000Z、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)により、苦味センサー(C00、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)及び塩味センサー(CT0、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)を用いて、前記分析用試料の苦味分析を行った。
得られたセンサー出力のデータを、調製例1で得られたブラックジンジャー抽出物を用いて調製したブラックジンジャー抽出物含有組成物(比較例)のデータを基準(0)として、味覚認識装置(TS-5000Z)に付属の解析アプリケーション(ECE食品評価用データを使用)により苦味を数値化した。具体的には、各実施例及び比較例において、以下のものを基準(0)とした。
・ 実施例1、3、及び6、並びに、比較例1及び2については比較例3を基準(0)とした。
・ 実施例7、9、及び12、並びに、比較例4及び5については比較例6を基準(0)とした。
・ 実施例13、15、及び18、並びに、比較例7及び8については比較例9を基準(0)とした。
・ 実施例19、21、及び24、並びに、比較例10及び11については比較例12を基準(0)とした。
結果を下記表1~4に示す。なお、前記味覚センサーによる苦味の数値は、その数値が基準(0)より正の数の場合は苦味が強く、負の数の場合は苦味が弱いことを示す。
【0108】
(試験例5)
-官能評価による味覚試験-
実施例1~24及び比較例1~12の各ブラックジンジャー抽出物含有組成物(粉末)のうちのいくつかの実施例及び比較例について、官能評価による味覚試験を行った。下記表1~4において、官能評価による味覚試験を実施していない実施例は、「N.D.」と示した。
具体的には、実施例及び比較例の各ブラックジンジャー抽出物含有組成物(粉末)に水を加え、それぞれ6PMFの合計量が0.03mg/mLとなるように調製し、得られた各ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液を検体とした。
成人の専門パネラー10名(男性5名、女性5名)が前記検体を試飲し、下記評価基準に基づき苦味を評価した。各専門パネラーの評価の平均値を下記表1~4に示す。
なお、前記検体の提供はダブルブラインドで行い、各専門パネラー同士は隔離した状態で評価を行った。また、調製例1で得られたブラックジンジャー抽出物を用いて調製したブラックジンジャー抽出物含有組成物(比較例)の検体を「評価基準1:非常に苦い検体」の基準検体として用いた。具体的には、各実施例及び比較例において、以下のものを基準検体とした。
・ 実施例1、3、5、及び6、並びに、比較例1については比較例3を基準検体とした。
・ 実施例7、9、11、及び12、並びに、比較例4については比較例6を基準検体とした。
・ 実施例13、15、17、及び18、並びに、比較例7については比較例9を基準検体とした。
・ 実施例19、21、23、及び24、並びに、比較例10については比較例12を基準検体とした。
-苦味の評価基準-
5:苦くない
4:やや苦い
3:少し苦い
2:かなり苦い
1:非常に苦い(基準検体)
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> ブラックジンジャー抽出物と、シクロデキストリンとを含有するブラックジンジャー抽出物含有組成物であって、
前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、及び3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンの6種のポリメトキシフラボンの合計量を100質量部とした場合の、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物における5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボンの含有量が5質量部以下であり、
前記6種のポリメトキシフラボンの合計量を0.006mg/mLに調整した前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の吸光度を測定した場合に以下の式(1)を満たすことを特徴とするブラックジンジャー抽出物含有組成物である。
P1/V1≧1.45 ・・・式(1)
前記式(1)中、V1は波長230nmから240nmの範囲における吸光度の最小値を示し、P1は波長260nmから270nmの範囲における吸光度の最大値を示す。
<2> 6種のポリメトキシフラボンの合計量を0.05mg/mLに調整したブラックジンジャー抽出物含有組成物の水溶液の波長660nmの光の透過率が95%以上である前記<1>に記載のブラックジンジャー抽出物含有組成物である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のブラックジンジャー抽出物含有組成物を含有することを特徴とする経口用組成物である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のブラックジンジャー抽出物含有組成物は、ブラックジンジャー抽出物が有する呈味が改善され、かつ、水及び酸性溶液に対する溶解性が改善されたものであることから、化粧料、飲食品、医薬品など分野を問わず幅広く利用可能である。また、後述する本発明の経口用組成物に好適に利用可能である。
また、本発明の経口用組成物は、前記ブラックジンジャー抽出物含有組成物を含むため、精力増進、性能力向上、胃腸の病気や疼痛の改善等の滋養強壮や、抗酸化、抗老化、抗炎症、育毛、抗肥満、美白など好適に利用可能である。