(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】レーダ装置及び物標検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/282 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
G01S7/282 200
(21)【出願番号】P 2019057464
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀一
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-068569(JP,A)
【文献】特開2011-247776(JP,A)
【文献】特開2007-170845(JP,A)
【文献】特開2016-219940(JP,A)
【文献】特開2013-171006(JP,A)
【文献】特開2007-255915(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012201990(DE,A1)
【文献】特開2018-159550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
7/52 - 7/64
13/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1送信波、及び前記第1送信波よりも出力が大きい第2送信波を所定の時間間隔で送信する送信部と、
前記第1送信波の反射波及び前記第2送信波の反射波を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記第1送信波の反射波及び前記第2送信波の反射波に基づいて物標を検出する検出部と、
前記第1送信波の出力に対して相関を有
する出力指標を取得する指標取得部と、
前記指標取得部が取得した前記出力指標に基づいて、少なくとも前記送信部が送信する前記第1送信波の出力を制御する出力制御部と、
を備
え、
前記出力指標は、前記受信部が受信した前記第1送信波及び前記第2送信波の強度情報を含み、
前記出力制御部は、前記検出部による前記物標の検出結果が所定の条件を満たす場合に、前記第1送信波の出力を制御するレーダ装置。
【請求項2】
前記出力指標は、装置内の温度情報を含む、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記送信部は、基板上に配された送信アンテナを有し、
前記受信部は、前記基板上に配された受信アンテナを有し、
前記所定の条件を満たす場合は、所定の距離範囲以内である近傍領域に物標が存在しない場合であり、
前記出力指標は、前記送信アンテナから前記第1送信波及び前記第2送信波が送信された瞬間に前記受信アンテナが受信した前記第1送信波及び前記第2送信波の強度情報を含む、請求項
1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記所定の条件を満たす場合は、所定の距離範囲以内である近傍領域以外の領域に物標が存在し、当該物標により反射された前記第1送信波及び前記第2送信波を受信した場合であり、
前記出力指標は、当該受信した前記第1送信波及び前記第2送信波の強度情報を含む、請求項
1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記指標取得部が取得した前記出力指標に基づいて前記送信部が送信する前記第1送信波と前記第2送信波との間隔を変更する間隔変更部をさらに備える、請求項
1から4のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記送信部は、
高周波信号を生成して発振する発振部と、
前記発振部から入力された前記高周波信号を、入力される電流又は電圧信号に応じて増幅して出力する増幅部と、
を備え、
前記出力制御部は、前記指標取得部が取得した前記出力指標に基づいて、前記増幅部に入力される前記電流又は電圧信号を制御する、請求項
1から5のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記増幅部に入力される前記電流又は電圧信号は、前記第1及び第2送信波の出力に応じた第1及び第2電流値、又は第1及び第2電圧値を含み、
前記出力制御部は、前記指標取得部が取得した前記出力指標に基づいて、前記第1及び第2電流値それぞれ、又は前記第1及び第2電圧値それぞれを同様に増加又は減少するように構成されている、請求項
6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
電波を送出する送信部、電波を受信する受信部、前記受信部が受信した電波に基づいて物標を検出する検出部、前記送信部が送出する電波の出力の指標を取得する指標取得部、及び前記送信部が送出する電波の出力を制御する出力制御部を備えるレーダ装置を用いて物標を検出する方法であって、
前記送信部により、第1送信波、及び前記第1送信波よりも出力が大きい第2送信波を所定の時間間隔で送信する工程と、
前記送信部により、前記第1送信波の反射波及び前記第2送信波の反射波を受信する工程と、
前記受信部により、前記受信する工程で受信した前記第1送信波の反射波及び前記第2送信波の反射波に基づいて物標を検出する工程と、
前記指標取得部により、前記第1送信波の出力に対して相関を有
する出力指標を取得する工程と、
前記出力制御部により、前記出力指標に基づいて、少なくとも前記第1送信波の出力を制御する工程と、
を備え
、
前記出力指標は、前記受信部が受信した前記第1送信波及び前記第2送信波の強度情報を含み、
前記出力制御部は、前記検出部による前記物標の検出結果が所定の条件を満たす場合に、前記第1送信波の出力を制御する物標検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置及び物標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波を送信し、物標(検出対象物)による反射波を受信して物標を検出(存在を認識)するレーダ装置が広く利用されている。レーダ装置の感度を向上して遠距離に存在する物標を検出できるようにするためには、送信波の出力を大きくすること有効である。しかし、送信波の出力を大きくすると、近距離に存在する物標の分解能(複数の物標を別々に認識する能力)が低下するという不都合がある。
【0003】
そこで、電力の小さいパルス状の近距離用送信波と電力の大きいパルス状の遠距離用送信波とを間隔を空けて送信することで、近距離の分解能向上と遠距離の感度向上とを両立する技術が公知である。しかしながら、近距離用送信波と遠距離用送信波とを用いるレーダ装置では、中間距離に物標が存在する場合、近距離用送信波の反射波と遠距離用送信波の反射波とが重なり合うことで物標を正しく検出できなくなる可能性がある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、近距離用送信波の周波数と遠距離用送信波の周波数とを異ならせることで、近距離用送信波の反射波と遠距離用送信波の反射波とを周波数分離する技術が提案されている。また、特許文献2には、近距離用送信波と遠距離用送信波との送信間隔を変化させて繰り返し送受信を行い、複数の受信信号において異なる時間位置に存在する成分を除去することで、一方の送信波の反射波信号を抽出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-247776号公報
【文献】特開昭61-133885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、周波数を切り換えるために極めて高速なICが必要となり、レーダ装置が高価となってしまうという不都合がある。一方、特許文献2に記載の方法では、1回の検出に複数回の送受信を行う必要があるため、検出に要する時間が長くなってしまうという不都合がある。
【0007】
本発明は、近距離用送信波の反射波と遠距離用送信波の反射波との干渉を簡易な構成で低減できるレーダ装置及び物標検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレーダ装置は、第1送信波、及び前記第1送信波よりも出力が大きい第2送信波を所定の時間間隔で送信する送信部と、前記第1送信波の反射波及び前記第2送信波の反射波を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記第1送信波の反射波及び前記第2送信波の反射波に基づいて物標を検出する検出部と、前記第1送信波の出力に対して相関を有する出力指標を取得する指標取得部と、前記指標取得部が取得した前記出力指標に基づいて、少なくとも前記送信部が送信する前記第1送信波の出力を制御する出力制御部と、を備える。
【0009】
また、本発明に係る物標検出方法は、第1送信波、及び前記第1送信波よりも出力が大きい第2送信波を所定の時間間隔で送信する工程と、前記第1送信波の反射波及び前記第2送信波の反射波を受信する工程と、記受信する工程で受信した前記第1送信波の反射波及び前記第2送信波の反射波に基づいて物標を検出する工程と、前記第1送信波の出力に対して相関を有する出力指標を取得する工程と、前記出力指標に基づいて、少なくとも前記第1送信波の出力を制御する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、近距離用送信波の反射波と遠距離用送信波の反射波との干渉を簡易な構成で低減できるレーダ装置及び物標検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1のレーダ装置の送信波の包絡波形を示す図である。
【
図3】
図1のレーダ装置の温度による回路特性の変化を示すグラフである。
【
図4】
図1のレーダ装置による物標検出の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図5のレーダ装置による物標検出の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第3実施形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第4実施形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態のレーダ装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のレーダ装置1の構成を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態のレーダ装置1は、
図2に包絡波形(振幅の継時変化)を示すように、パルス状の第1送信波P1、及び第1送信波よりも出力が大きいパルス状の第2送信波P2を順番に送信する送信部2と、第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波を受信してデジタル信号に変換する受信部3と、受信部3が受信した第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波のデジタル信号に基づいて物標を検出する検出部4と、第1送信波P1の出力に対して相関を有する出力指標を取得する指標取得部5と、指標取得部5が取得した出力指標に基づいて送信部2が送信する第1送信波P1の出力を制御する出力制御部6と、レーダ装置1の内部温度を測定し、測定した温度を指標取得部5に出力指標として提供する温度センサ7と、を備える。検出部4、指標取得部5及び出力制御部6は、マイクロプロセッサ、メモリ等を有する単一の演算装置に適切なプログラムを行うことによって構成することができる。検出部4、指標取得部5及び出力制御部6は、機能的に区別されるものであって、物理的な構成やプログラムの構成において区分できるものでなくてもよい。
【0014】
送信部2は、第1送信波P1及び第2送信波P2の基準となる振幅及びパルス幅を定める原信号を生成する原信号生成部21と、原信号生成部21が生成した原信号に基づいて第1送信波P1及び第2送信波P2の包絡波形と相似形の波形信号を形成する波形信号形成回路22と、波形信号形成回路22が形成した波形信号を出力制御部6からの指令信号に従ってオフセットさせるオフセット回路23と、所定のキャリア周波数の局発信号を生成する発振部24と、発振部24が生成した局発信号に波形信号形成回路22が形成した波形信号を掛け合わせて増幅する送信増幅部25と、送信増幅部25から出力される信号を電波に変換して送出する送信アンテナ26と、を有する構成とすることができる。
【0015】
原信号生成部21は、第1送信波P1及び第2送信波P2の基準となる包絡波形を形成するための原信号を生成する。この原信号は、例えばデジタル回路により出力される矩形波状又は矩形波を重畳した階段状の波形を有する信号とすることができる。つまり、原信号生成部21は、マイクロプロセッサ等を用いて原信号を形成するよう構成することができる。このため、原信号生成部21は、検出部4、指標取得部5及び出力制御部6と同一の演算装置の一つの機能として実現することができる。
【0016】
波形信号形成回路22は、原信号生成部21から出力される原信号を、第1送信波P1及び第2送信波P2の包絡波形と相似形の波形を有する電気信号である波形信号に変換する。波形信号形成回路22が形成する波形信号は、送信増幅部25の構成に応じて適切な電気信号、具体的には第1送信波P1及び第2送信波P2の基準となる包絡波形と相似形の波形を有する電流信号又は電圧信号とすることができる。このような波形信号形成回路22は、原信号から高周波成分を除去するフィルタ回路と、高周波成分を除去した原信号を増幅する増幅回路とを有する構成とすることができる。
【0017】
オフセット回路23は、波形信号形成回路22が出力する波形信号の値を後述する出力制御部6からの指令信号に従ってオフセットする。具体的には、例えば、波形信号形成回路22が出力する波形信号が電圧値を含む電圧信号である場合、オフセット回路23は、複数のプルアップ抵抗と、それらのON/OFFをデジタル制御する回路が設けられており、出力制御部6からの指令信号に従って、一部又は全部のプルアップ抵抗のON/OFFを実施すればよい。これにより、オフセット回路23は、波形信号形成回路22から入力された電圧値に対し、出力制御部6からの指令信号に応じて電圧値を制御することで、送信増幅部25に出力される電圧値又は電流値(電圧値/電流値)をオフセット(増加又は減少)する。また、オフセットする電圧値/電流値は、第1送信波P1及び第2送信波P2を出力するタイミングによらず同じ電圧値/電流値をオフセットすることができる。なお、このようなオフセット回路23として、電圧信号を電流信号に変換する回路を用いるようにしてもよい。この他、オフセット回路23は、波形信号形成回路22からの波形信号と出力制御部6からの指令信号とを足し合わせる加算回路、波形信号形成回路22からの波形信号と出力制御部6からの指令信号とを掛け合わせる乗算回路等によって構成することできる。
【0018】
発振部24は、高周波信号を生成して発振する周知の発振器を有する構成とすることができる。発振部24が発振する局発信号の周波数としては、適宜選択することができるが、例えば1GHz以上100GHz以下とすることができる。
【0019】
送信増幅部25は、発振部24が生成した局発信号を波形信号形成回路22が形成した波形信号に応じた増幅率で増幅することにより、送信アンテナ26に供給する電力信号を形成する。送信増幅部25としては、周知の増幅回路を用いることができる。以下の例では、送信増幅部25は、入力される電流値に応じた増幅率で局発信号を増幅するものとし、オフセット回路23により送信増幅部25に入力される電流値がオフセットされるものとする。
【0020】
送信アンテナ26は、送信増幅部25から供給される電力信号を電磁波に変換して第1送信波P1及び第2送信波P2を送出する。送信アンテナ26としては、周知のアンテナを用いることができる。
【0021】
受信部3は、電磁波を受信して電気信号に変換する受信アンテナ31と、受信アンテナ31が形成する電気信号を増幅する受信増幅部32と、受信増幅部32で増幅した電気信号から振幅成分(強度信号)を抽出する復調部33と、復調部33が抽出した強度信号をデジタル信号に変換するAD変換部34と、を有する。
【0022】
受信アンテナ31は、送信アンテナ26が送信した第1送信波P1及び第2送信波P2の反射波を受信して電気信号に変換する。受信アンテナ31としては、周知のアンテナを用いることができる。
【0023】
受信増幅部32は、受信アンテナ31が受信した第1送信波P1及び第2送信波P2の反射波の電気信号を増幅する。また、受信増幅部32は、復調部33の出力に残存する高周波成分を除去するためのフィルタ機能(高周波域のゲインが小さい回路構成)等を有してもよい。
【0024】
復調部33は、発振部24が生成した局発信号を用いて、受信増幅部32が増幅した電気信号からキャリア波の周波数成分を除去することで、反射波信号の強度変化を表すアナログ信号を形成、つまり包絡波を抽出する。この復調部33は、周知の乗算回路によって構成することができる。
【0025】
AD変換部34は、受信増幅部32が増幅したアナログ信号をデジタル信号に変換して、検出部4に提供する。このAD変換部34は、周知のAD変換器によって構成することができる。
【0026】
検出部4は、受信部3から提供される受信波の波形を解析することによって物標を検出するための演算を行う。具体的には、受信波に第1送信波P1又は第2送信波P2の反射波によって形成される強度のピークが存在する場合には、送信波を反射する物標が存在すると判断することができる。この場合、送信部2が第1送信波P1又は第2送信波P2を送信してから受信部3がその反射波を受信するまでの時間を算出することによって、レーダ装置1から物標までの距離を推定することができる。
【0027】
指標取得部5が取得する出力指標としては、第1送信波P1の出力を推定できる値であればどのような値でもよいが、本実施形態では装置内の温度情報が用いられる。送信部2が送信する第1送信波P1の出力は、波形信号と温度とに依存する。
図3に、異なる温度で測定した送信増幅部25に入力される電流(波形信号)の電流値と送信アンテナ26から送出される電磁波の電力値との関係を示す。図示するように、入力電流が小さい領域においては、送信部2の送信電力は温度が高いほど小さくなる。
【0028】
出力が大きい第2送信波P2は、送信電力(送信増幅部25の出力)が安定し、温度感受性が小さい領域(例えば
図3における入力電流の値としてI2付近)をピークとするよう形成することができる。このため、第2送信波P2の出力は、温度には殆ど影響されない。これに対して、出力が小さい第1送信波P1は、送信増幅部25の出力の温度感受性が高い領域(例えば
図3における入力電流の値としてI1付近)をピークとするよう形成する必要がある。このため、送信増幅部25に同じ波形信号を入力しても、第1送信波P1の実際の出力は、装置内の温度によって所望の値から大きくずれるおそれがある。逆に、送信増幅部25の温度特性を把握しておけば、装置内の温度情報から第1送信波P1出力を推測することができる。
【0029】
出力制御部6は、出力指標に基づいてオフセット回路23に対する指令信号の値を制御する。つまり、出力制御部6は、出力指標に基づいて送信増幅部25に入力される波形信号のオフセット量を制御することで、第1送信波P1、第2送信波P2の出力を略一定に保持(所望の値からずれてしまった出力を、所望の値に近付けるよう制御)する。すなわち、
図3に示すように、第1送信波P1の出力は、送信増幅部25に入力される電流及び温度により変化するが、第2送信波P2の出力は、送信増幅部25に入力される電流及び温度によって殆ど変化しないので、出力制御部6により温度に応じて送信増幅部25に入力される電流値をオフセットすることで、第1送信波P1及び第2送信波P2の出力を温度変化に対して略一定に保持することができる。これにより、第1送信波P1の反射波と第2送信波P2の反射波とが干渉するおそれを低減することができる。
【0030】
具体的には、出力制御部6は、オフセット回路23に対する指令信号の値を出力指標の関数として算出したり、出力指標の値と指令信号の値との対応関係を予め記憶させた参照テーブルを参照して指令信号を決定したりするよう構成することができる。
【0031】
温度センサ7としては、温度を検出できるものであればよく、例えばサーミスタ等を用いることができる。なお、第1送信波P1の出力は主に送信増幅部25の温度に依存すると考えられるが、温度センサ7は、レーダ装置1のパッケージ内の温度を測定するよう配設されていれば、その測定値を送信増幅部25の温度とみなして問題ない。さらに、温度センサ7が、レーダ装置1のパッケージ外の温度を測定するように配設されている場合においても、当該測定された温度に基づいてパッケージ内の対応する温度を所定の関数またはテーブルによって算定するようにしても問題ない。
【0032】
図4に、本発明の一実施形態に係る物標検出方法の手順を示す。
図4の物標検出方法は、
図1のレーダ装置1によって実施することができる。
【0033】
本実施形態の物標検出方法は、
図1のレーダ装置1の説明からも明らかなように、第1送信波P1の出力に対して相関を有する出力指標を取得する工程(ステップS01:出力指標取得工程)と、出力指標取得工程で取得した出力指標に基づいて第1送信波P1の出力を制御する工程(ステップS02:出力制御工程)と、第1送信波P1及び第2送信波P2を順番に送信する工程(ステップS03:送信工程)と、第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波を受信する工程(ステップS04:受信工程)と、受信工程で受信した第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波に基づいて物標を検出する工程(ステップS05:検出工程)と、物標検出動作を終了すべきか否かを確認する工程(ステップS06:終了確認工程)と、を備える。
【0034】
ステップS01の出力指標取得工程では、出力指標として、温度センサ7から温度情報を取得する。
【0035】
ステップS02の出力制御工程では、出力指標に基づいて第1送信波P1の出力を一定に保つことができるよう、オフセット回路23に対する指令値を決定する。
【0036】
ステップS03の送信工程では、出力制御工程で決定した指令値に従ってオフセット回路23で波形を矯正した波形信号を送信増幅部25に入力することによって、所定の出力の第1送信波P1及び第2送信波P2を送出する。
【0037】
ステップS04の受信工程では、受信部3により、物標における第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波を受信し、受信部3で生成された受信波の強度を示す信号を検出部4に入力する。
【0038】
ステップS05の検出工程では、第1送信波P1の反射波又は第2送信波P2の反射波のピークを確認し、ピークが存在する場合には物標が存在すると認識する。反射波のピークが確認された場合には、送信からピークの受信までの時間差に基づいて物標までの距離を算出する。
【0039】
ステップS06の終了確認工程では、物標の検出動作を終了するか否(ステップ01からステップS05までの工程を再度実行)かを、外部信号等に基づいて判定する。
【0040】
以上説明した物標検出方法を実行するレーダ装置1は、第1送信波P1の出力に対して相関を有する出力指標(温度情報)を取得し、取得した出力指標に基づいて送信部2が送信する第1送信波P1の出力を制御することにより、比較的出力変動が小さい第2送信波P2だけでなく、変動しやすい第1送信波P1の出力を略一定に保持することができる。なお、第1送信波P1及び第2送信波P2を送信する時間間隔Tを、例えば数百ns程度とすると、このような時間間隔で送信波ごとに個別に出力を制御することは困難である場合がある。そこで、上述した、第1送信波P1の出力と、第2送信波P2の出力との送信増幅部25に入力される電流値の変化及び温度の変化に対する特性の違いを利用し、送信増幅部25に入力される電流値を、温度に応じて、かつ第1送信波P1及び第2送信波P2を出力するタイミングによらずオフセットしてもよい。オフセットする電流値は、温度に応じて変化(増加又は減少)するが、波形信号形成回路22が出力する波形信号(波形信号形成回路22が出力する電圧値)の変化に対しては一定とすることができる。このような構成により、簡易な構成で、第1送信波P1及び第2送信波P2の出力を略一定に保持することができる。これによって、レーダ装置1は、第1送信波P1の反射波と第2送信波P2の反射波とが重なり合うことを簡易な構成で低減できるので、中距離域に存在する物標を精度よく検出することができる。したがって、レーダ装置1は、第1送信波P1により近距離域に存在する物標を比較的高い分解能で検出し、第2送信波P2により遠距離域に存在する物標を比較的高感度に検出することができると共に、中距離域に存在する物標も精度よく検出できる。
【0041】
続いて、本発明の第2実施形態のレーダ装置について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態のレーダ装置1Aの構成を示すブロック図である。
【0042】
図5のレーダ装置1Aは、第1送信波P1及び第2送信波P2を順番に送信する送信部2Aと、第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波を受信してデジタル信号に変換する受信部3と、受信部3が受信した第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波のデジタル信号に基づいて物標を検出する検出部4と、第1送信波P1の出力に対して相関を有する出力指標を取得する指標取得部5Aと、指標取得部5Aが取得した出力指標に基づいて第1送信波P1の出力を制御(調節)する出力制御部6Aと、を備える。検出部4、指標取得部A5及び出力制御部6Aは、単一の演算装置の異なる機能として構成することができる。なお、以降の説明において、先に説明した実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
送信部2Aは、第1送信波P1及び第2送信波P2の包絡波形と相似形の波形信号を生成する原信号生成部21Aと、原信号生成部21が生成した原信号に基づいて波形信号を形成する波形信号形成回路22Aと、所定のキャリア周波数の局発信号を生成する発振部24と、発振部24が生成した局発信号に波形信号形成回路22Aから出力される波形信号を掛け合わせる送信増幅部25と、送信増幅部25から出力される信号を電波に変換して送出する送信アンテナ26と、を有する構成とすることができる。
【0044】
原信号生成部21Aは、出力制御部6Aからの指令値を加味して、つまり温度による送信増幅部25のゲインの変化を考慮して、そのまま送信増幅部25に入力しても所定の出力の第1送信波P1が得られるような波形(特に波高)を有する波形信号を波形信号形成回路22Aに形成させられる原信号を生成する。この原信号生成部21Aも、検出部4、指標取得部5A及び出力制御部6と同一の演算装置の一つの機能として実現することができる。
【0045】
波形信号形成回路22Aは、原信号生成部21Aが生成した原信号に基づいて、送信増幅部25に入力される波形信号を生成する。波形信号形成回路22Aは、例えばDA変換器等によって構成することができる。
【0046】
指標取得部5Aは、出力指標として、検出部4から、受信部3が受信した第1送信波P1及び第2送信波P2の信号(以下受信波ということがある)の強度情報(電力値、電圧値、電流値等)を取得する。上述のように、第2送信波P2の出力は、温度条件にかかわらずほぼ一定であるため、第1送信波P1の電力の第2送信波P2の電力に対する比は、送信部2が出力する第1送信波P1の出力に比例する値と考えることができる。また、第1送信波P1の受信波と第2送信波P2の受信波との電力比は、第1送信波P1と第2送信波P2との電力比と略等しい値となると考えられる。このため、第1送信波P1及び第2送信波P2の受信波の強度情報によって、第1送信波P1の電力を推測することができる。
【0047】
出力制御部6Aは、指標取得部5Aが取得した出力指標に基づいて、原信号生成部21に第1送信波P1の出力を所定の値とすることができる原信号を生成させるためのパラメータの制御量を指示する指令値を算出する。この指令値は、第1送信波P1の出力を示す第1送信波P1の受信波と第2送信波P2の受信波との強度比を所定の目標値に近付けるようフィードバック制御されてもよい。
【0048】
なお、受信部3における第1送信波P1及び第2送信波P2の反射波の受信波の電力比は、物標の特性等によって、送信部2が送信した第1送信波P1及び第2送信波P2の電力比を正確に反映しないことがある。このため、出力制御部6Aは、送信部2から受信部3に直接伝播する第1送信波P1及び第2送信波P2の受信波の強度信号に応じて、第1送信波P1の出力を制御してもよい。さらには、送信アンテナ26、受信アンテナ31を同一の回路基板表面においてパッチアンテナ素子を用いて構成する(基板上に配する)場合には、出力制御部6Aは、受信部3が送信アンテナ26から送信基板表面を介して受信アンテナ31で受信した第1送信波P1及び第2送信波P2の強度信号に応じて、第1送信波P1の出力を制御してもよい。したがって、出力制御部6Aは、検出部4による物標の検出結果が所定の条件を満たす場合にのみ、第1送信波P1の出力を制御、つまり原信号生成部21Aに対する指令値を制御するよう構成されてもよい。具体例としては、出力制御部6Aは、一定の距離範囲内に物標が検出されていない場合のみ第1送信波P1の出力を制御するようにしてもよく、物標による反射波の強度が一定の閾値以下である場合のみ第1送信波P1の出力を制御するようにしてもよい。これによって、送信部2から受信部3に直接伝播する第1送信波P1及び第2送信波P2の受信波の強度信号に基づいて、第1送信波P1の出力をより正確に調節することができる。
【0049】
図6に、本発明の別の実施形態に係る物標検出方法の手順を示す。
図6の物標検出方法は、
図5のレーダ装置1Aによって実施することができる。
【0050】
本実施形態の物標検出方法は、第1送信波P1及び第2送信波P2を順番に送信する工程(ステップS11:送信工程)と、第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波を受信する工程(ステップS12:受信工程)と、受信工程で受信した第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波に基づいて物標を検出する工程(ステップS13:検出工程)と、物標検出動作を終了すべきか否かを確認する工程(ステップS14:終了確認工程)と、検出結果が近傍に物標が存在するものであるか否かを確認する工程(ステップS15:物標存在確認工程)と、第1送信波P1の出力に対して相関を有する出力指標を取得する工程(ステップS16:出力指標取得工程)と、出力指標取得工程で取得した出力指標に基づいて第1送信波P1の出力を制御する工程(ステップS17:出力制御工程)と、を備える。
【0051】
ステップS11の送信工程では、原信号生成部21Aが生成した原信号に基づいて波形信号形成回路22Aにより形成した波形信号を送信増幅部25に入力することによって、所定の出力の第1送信波P1及び第2送信波P2を送出する。
【0052】
ステップS12の受信工程では、受信部3により、物標における第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波を受信し、受信部3で生成された受信波の強度を示す信号を検出部4に入力する。なお、ステップS11及びステップS12を反復して実行し、ステップS13に進むようにしてもよい。
【0053】
ステップS13の検出工程では、検出部4により、第1送信波P1の反射波又は第2送信波P2の反射波のピークを確認し、ピークが存在する場合には物標が存在すると認識する。反射波のピークが確認された場合には、送信からピークの受信までの時間差に基づいて物標までの距離を算出する。
【0054】
ステップS14の終了確認工程では、物標の検出動作を終了するか否かを、外部信号等に基づいて判定する。検出動作を終了する場合は直ちに処理を終了し、検出動作を終了しない場合は次のステップS15に進む。
【0055】
ステップS15の物標存在確認工程では、検出工程での検出結果を確認し、所定の条件で近傍領域(例えば、3m以内の範囲)に物標が存在するか否かを確認する。近傍領域に物標が存在する場合はステップS1に戻り、近傍領域に物標が存在しない場合は次のステップS16に進む。
【0056】
ステップS16の出力指標取得工程では、出力指標として、検出部4から第1送信波P1及び第2送信波P2の受信波の強度情報を取得する。なお、受信波の強度情報を取得する際、近傍領域に物標が存在しない場合には、第1送信波P1及び第2送信波P2それぞれが送信アンテナ26から送信された瞬間に受信アンテナ31で受信した強度情報を取得するようにしてもよい(現実には送信アンテナ26と受信アンテナ31との距離に応じた極小の時間間隔が存在するが、この場合も本段落でいう「瞬間」に含む)。このようにして取得した強度情報を、送信アンテナ26から送信基板表面を介し受信アンテナ31で受信した第1送信波P1及び第2送信波P2の強度信号に対応する強度情報とすることができる。この他、近傍領域より遠方の領域(例えば、数m以内の範囲)に物標が存在し、当該物標の位置に対応する第1送信波P1及び第2送信波P2の反射波のピークをそれぞれ確認できた場合には、これらの第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波双方の受信強度を強度情報として取得するようにしてもよい。
【0057】
ステップS17の出力制御工程では、出力指標に基づいて第1送信波P1の出力を一定に保つことができるよう、原信号生成部に対する指令値を決定する。この出力制御工程を実行した後は、ここで決定した指令値を用いてステップS11の送信工程を再度行う。
【0058】
図5のレーダ装置1Aは、第1送信波P1の受信波と第2送信波P2の受信波との強度比に基づいて第1送信波P1の出力を推定するので、第2送信波P2の出力が適切な値であれば、送信増幅部25の個々の回路特性のバラつき等を考慮しなくても、第1送信波P1の出力を略一定に保持することができる。
【0059】
さらに、本発明の第3実施形態のレーダ装置について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態のレーダ装置1Bの構成を示すブロック図である。
【0060】
図7のレーダ装置1Bは、第1送信波P1及び第2送信波P2を順番に送信する送信部2と、第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波を受信してデジタル信号に変換する受信部3と、受信部3が受信した第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波のデジタル信号に基づいて物標を検出する検出部4と、第1送信波P1の出力に対して相関を有する第1の出力指標として温度情報を取得する第1指標取得部5と、第1送信波P1の出力に対して相関を有する第2の出力指標として1送信波P1の受信波及び第2送信波P2の受信波との強度情報を取得する第2指標取得部5Aと、2つの指標取得部5,5Aが取得した2種類の出力指標に基づいて第1送信波P1の出力を制御する出力制御部6Bと、を備える。
図7のレーダ装置1Bの第1指標取得部5は、
図1のレーダ装置1の指標取得部5と同様であり、
図7のレーダ装置1Bの第2指標取得部5Aは、
図5のレーダ装置1Aの指標取得部5Aと同様である。
【0061】
出力制御部6Bは、第1指標取得部5が取得した出力指標(温度情報)に基づいて第1送信波P1の出力を大まかに調節し、第2指標取得部5Aが取得した出力指標(反射波の強度情報)に基づいて第1送信波P1の出力を微調整することができる。
【0062】
図7のレーダ装置1Bでは、レーダ装置1Bの近傍に物標が存在し続ける場合であっても温度情報に基づいて第1送信波P1の出力を比較的正確に制御することができ、レーダ装置1Bの近傍に物標が存在しない場合には第1送信波P1及び第2送信波P2の受信波の強度情報に基づいてより正確に第1送信波P1の出力を制御することができる。
【0063】
さらに、本発明の第4実施形態のレーダ装置について説明する。
図8は、本発明の第3実施形態のレーダ装置1Cの構成を示すブロック図である。
【0064】
図7のレーダ装置1Cは、第1送信波P1及び第2送信波P2を順番に送信する送信部2Bと、第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波を受信してデジタル信号に変換する受信部3と、受信部3が受信した第1送信波P1の反射波及び第2送信波P2の反射波のデジタル信号に基づいて物標を検出する検出部4と、第1送信波P1の出力に対して相関を有する第1の出力指標として温度情報を取得する第1指標取得部5と、第1送信波P1の出力に対して相関を有する第2の出力指標として1送信波P1の受信波及び第2送信波P2の受信波との強度情報を取得する第2指標取得部5Aと、2つの指標取得部5,5Aが取得した2種類の出力指標に基づいて第1送信波P1の出力を制御する出力制御部6Cと、出力制御部6Cからの指示に応じて送信部2が送信する第1送信波P1と第2送信波P2との間隔を変更する間隔変更部8と、を備える。
【0065】
送信部2は、第1送信波P1及び第2送信波P2の基準となる振幅及びパルス幅を定める原信号を生成する原信号生成部21Cと、原信号生成部21Cが生成した原信号に基づいて波形信号を形成する波形信号形成回路22と、波形信号形成回路22が形成した波形電流の電流値を出力制御部6からの指令信号に従ってオフセットさせるオフセット回路23と、所定のキャリア周波数の局発信号を生成する発振部24と、発振部24が生成した局発信号に波形信号形成回路22が形成した波形信号を掛け合わせる送信増幅部25と、送信増幅部25から出力される信号を電波に変換して送出する送信アンテナ26と、を有する構成とすることができる。
【0066】
原信号生成部21Cは、第1送信波P1の原信号と第2送信波P2の原信号との時間間隔を間隔変更部8からの指令信号に応じて変更する。
【0067】
出力制御部6Cは、第1送信波P1の反射波と第2送信波P2の反射波とが重なり合うことを防止するために、第1送信波P1の出力制御と、間隔変更部8を用いた第1送信波P1と第2送信波P2との間隔変更とを組み合わせる。このため、出力制御部6Cは、第1送信波P1の出力の温度変化による変動を抑制することができればよい。
【0068】
間隔変更部8は、第1送信波P1の出力が大きくなるほど、第1送信波P1と第2送信波P2との間隔を大きくするよう、原信号生成部21Cに指令信号を与える。間隔変更部8は、出力制御部6Cによる第1送信波P1の出力制御が限度に達した後に第1送信波P1と第2送信波P2との間隔を変更して第1送信波P1の反射波と第2送信波P2の反射波との干渉を防止してもよく、出力制御部6Cによる第1送信波P1の出力制御と同時に第1送信波P1と第2送信波P2との間隔を変更して第1送信波P1の出力制御量を低減してもよい。
【0069】
図8のレーダ装置1Cでは、第1送信波P1の出力制御に加えて、第1送信波P1と第2送信波P2との間隔変更を行うため、送信増幅部25の温度変化に対するゲインの変化率が大きい場合であっても、比較的広い温度範囲において第1送信波P1の反射波と第2送信波P2の反射波との干渉を防止することができる。また、レーダ装置1Cは、第1送信波P1の出力を制御するので、第1送信波P1と第2送信波P2との間隔を過度に大きくする必要がなく、第1送信波P1による近距離域の物標検出と、第2送信波P2による遠距離域の物標検出とを比較的短時間で行うことができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。
【0071】
例として、本発明において第1送信波及び第2送信波の一方又は両方は、各実施形態で用いるようなパルス波に限られず、一定の振幅でキャリア周波数が連続的に変化する周波数変調連続波等であってもよい。
【0072】
本発明に係るレーダ装置において、送信部及び受信部は、複数のチャネルを備えてもよい。つまり、送信部及び受信部は、複数のアンテナと使用するアンテナを選択するセレクタとを有する構成とされてもよい。
【0073】
本発明に係るレーダ装置において、送信増幅部は、入力される電圧信号(電圧値)に応じた増幅率で局発信号を増幅する構成としてもよい。
【0074】
本発明に係るレーダ装置は、所定の距離範囲以内である近傍領域以外の領域に物標が存在し、当該物標により反射された第1送信波及び第2送信波を受信した場合に、当該受信した第1送信波及び第2送信波の強度情報を含む出力指標に基づいて、第1送信波の出力を制御してもよい。
【0075】
本発明に係るレーダ装置は、第1送信波の出力だけでなく、第2送信波の出力も制御するよう構成されてもよい。例として、増幅部に入力される電流又は電圧信号は、第1及び第2送信波の出力に応じた第1及び第2電流値、又は第1及び第2電圧値を含み、出力制御部は、指標取得部が取得した出力指標に基づいて、第1及び第2電流値それぞれ、又は第1及び第2電圧値それぞれを同様に増加又は減少する(例えば、第1及び第2電流値それぞれを、温度に応じて同じ値増加または減少する)ように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,1A,1B,1C レーダ装置
2,2A,2C 送信部
3 受信部
4 検出部
5,5A 指標取得部
6,6A,6B,6C 出力制御部
7 温度センサ
8 間隔変更部
21,21C 原信号生成部
22,22A 波形信号形成回路
23 オフセット回路
24 発振部
25 送信増幅部
26 送信アンテナ
31 受信アンテナ
32 受信増幅部
33 復調部
34 AD変換部
P1 第1送信波
P2 第2送信波