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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】繊維加工用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/59 20060101AFI20230724BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20230724BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20230724BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20230724BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
D06M15/59
D06M15/564
D06M15/693
C08L77/00
C08L75/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019108803
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020200555
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】角▲高▼ 海理
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝政
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054962(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136888(WO,A1)
【文献】特開2014-043509(JP,A)
【文献】ポリウレタン水分散体 スーパーフレックス,日本,p.5-6,11-12,https://www.dks-web.co.jp/pdf/catalog/superflex.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
D04H1/00-18/04、
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回析式粒度分布測定装置で測定される質量平均粒子径が0.1μm以上2.5μm以下の第1樹脂粒子と、レーザー回析式粒度分布測定装置で測定される質量平均粒子径が5μm以上50μm以下の第2樹脂粒子とを含む、水性分散体からなる繊維加工用樹脂組成物であって、
前記第1樹脂粒子は、ポリアミド樹脂およびウレタン樹脂のうちの少なくとも1種を含む粒子であり、
前記第2樹脂粒子は、ポリアミド系ゴム弾性体粉体であり、
前記水性分散体の固形分濃度が50質量%以上80質量%以下である、繊維加工用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド系ゴム弾性体粉体の平均円形度は、0.7以上である、請求項1に記載の繊維加工用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド系ゴム弾性体粉体は、アミド単位とエーテル単位とを有している、請求項1又は2に記載の繊維加工用樹脂組成物。
【請求項4】
25℃における粘度が、30000mPa・s以上600000mPa・s以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維加工用樹脂組成物。
【請求項5】
繊維基布に適用して接着布を形成するために用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維加工用樹脂組成物。
【請求項6】
レーザー回析式粒度分布測定装置で測定される質量平均粒子径が0.1μm以上2.5μm以下の第1樹脂粒子及びレーザー回析式粒度分布測定装置で測定される質量平均粒子径が5μm以上50μm以下の第2樹脂粒子が、繊維基布に付着してなる、接着布であって、
前記第1樹脂粒子は、ポリアミド樹脂およびウレタン樹脂のうちの少なくとも1種を含む粒子であり、
前記第2樹脂粒子は、ポリアミド系ゴム弾性体粉体である、接着布。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維加工用樹脂組成物を、繊維基布に接触させる工程を備える、接着布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維加工用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の基材に対して繊維加工用樹脂エマルジョンを浸漬やコーティング等の方法により固定して、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、耐摩耗性、気体遮断性および接着性等の機能を付与することが行われてきた。中でも、繊維質素材を織布や不織布としたもの等を繊維基布として用い、それらの表面に繊維加工用樹脂の塗膜を形成した接着布は、衣料をはじめとする多くの分野で接着芯地等として用いられている。そして、樹脂塗膜を形成した接着芯地等の耐ドライクリーニング性や接着性を改善するための手法について、種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ビニル基含有モノマーを重合させた樹脂およびウレタン樹脂のうちの少なくとも一方である第1樹脂を第1水性分散媒に分散させた第1水性分散液と、共重合ポリアミド樹脂および共重合ポリエステル樹脂のうちの少なくとも一方である第2樹脂を第2水性分散媒に分散させた第2水性分散液と、を混合して得られることを特徴とする、繊維加工用水性分散液が開示されている。特許文献1に記載された繊維加工用水性分散液によれば、繊維製品の耐ドライクリーニング性や風合いを改良し、また接着性に優れる接着布を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-303446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような接着布には、優れた接着性が求められる。また、接着布は、繊維基布に接着された後、耐久性(具体的には、伸縮に対する耐久性)が求められる。
【0006】
このような状況下、本発明は、繊維基布に付着させることで、優れた接着性と耐久性を備える接着布が得られる、新規な繊維加工用樹脂組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定の平均粒子径であり、所定の樹脂を含む第1樹脂粒子と、所定の平均粒子径であり、所定の弾性体粉体である第2樹脂粒子とを含む水性分散体からなり、水性分散体の固形分濃度が所定範囲に設定された繊維加工用樹脂組成物は、繊維基布に付着させることで、優れた接着性と耐久性を備える接着布が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに鋭意検討を重ねて完成した発明である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維基布に付着させることで、優れた接着性と耐久性を備える接着布が得られる、新規な繊維加工用樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該繊維加工用樹脂組成物を利用した接着剤、接着布及びその製造方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、平均粒子径が0.05μm以上3μm以下の第1樹脂粒子と、平均粒子径が1μm以上500μm以下の第2樹脂粒子とを含む、水性分散体である。第1樹脂粒子は、ポリアミド樹脂およびウレタン樹脂のうちの少なくとも1種を含む粒子である。また、第2樹脂粒子は、ポリアミド系ゴム弾性体粉体である。さらに、水性分散体の固形分濃度は、50質量%以上80質量%以下である。本発明の繊維加工用樹脂組成物は、これらの構成を全て充足していることにより、繊維基布に付着させることで、優れた接着性と耐久性(具体的には、伸縮に対する耐久性)を備える接着布が得られる。
【0010】
以下、本発明の繊維加工用樹脂組成物について、詳述する。
【0011】
本明細書において、「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term “comprising” includes “consisting essentially of” and “consisting of”.)。
【0012】
また、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができるものとする。
【0013】
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、第1樹脂粒子と第2樹脂粒子の水性分散体である。後述の通り、第1樹脂粒子と第2樹脂粒子の水性分散体は、例えば、第1樹脂粒子の水分散体と第2樹脂粒子とを混合する方法、第1樹脂粒子の水分散体と第2樹脂粒子の水分散体とを混合する方法などによって製造することができる。
【0014】
<第1樹脂粒子>
第1樹脂粒子は、平均粒子径が0.05~3μmである。本発明の繊維加工用樹脂組成物を繊維基布に付着させることで、より一層優れた接着性と耐久性を備える接着布が得られる観点(以下、接着性及び耐久性の観点)から、当該平均粒子径は、好ましくは0.1~2.5μm、より好ましくは0.1~2μmである。当該平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所社製SALD2300)で測定される質量平均粒子径である。
【0015】
第1樹脂粒子は、ポリアミド樹脂およびウレタン樹脂のうちの少なくとも1種の樹脂を含む粒子であり、これらのうち少なくとも1種の樹脂により構成されていることが好ましい。
【0016】
ポリアミド樹脂としては、特に制限されず、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸-テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミドPACM6(ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンアジパミド)等の脂環式ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’-ジフェニルメタン-ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等のポリアミドが挙げられる。また、ポリアミドとしては、下記の共重合ポリアミド樹脂であってもよいし、後述する第2樹脂粒子を構成するポリアミド系ゴム弾性体粉体と同じものも例示される。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
共重合ポリアミド樹脂は、-[NH(CH25CO]-、-[NH(CH26NHCO(CH24CO]-、-[NH(CH26NHCO(CH28CO]-、-[NH(CH210CO]-、及び-[NH(CH211CO]-からなる群より選択された少なくとも2種を構造単位として含むことが好ましい。
【0018】
共重合ポリアミド樹脂の具体例としては、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/610共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、6/66/610/11/12共重合ナイロン等が挙げられる。
【0019】
共重合ポリアミド樹脂は、例示したポリアミド樹脂と、ポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリアミドエラストマー等であってもよい。
【0020】
前記の接着性及び耐久性の観点から、本発明では、以上に説明した共重合ポリアミド樹脂のうち、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、とりわけ、6/12共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロンが好適に用いられる。
【0021】
ウレタン樹脂としては、水分散型接着剤として供されるものが好ましく使用され、たとえばポリマーの主鎖にイオン基を導入したポリウレタンを主体としたものが挙げられる。
【0022】
ウレタン樹脂の市販品としては、例えば、第一工業製薬社製の市販品である、スーパーフレックス90、スーパーフレックス107M、スーパーフレックス110、スーパーフレックス126、スーパーフレックス130、スーパーフレックス150、スーパーフレックス150HS、スーパーフレックス160、スーパーフレックス300、スーパーフレックス361、スーパーフレックス370、スーパーフレックス410、スーパーフレックス420、スーパーフレックス460、スーパーフレックス470、スーパーフレックス460S、スーパーフレックス500、スーパーフレックス600、スーパーフレックスE-2000、スーパーフレックスE-2500、スーパーフレックスE-4000、スーパーフレックスE-4500、スーパーフレックスE-4700、スーパーフレックスR-5000、楠本化成社製の市販品である、NeoRez R-960、NeoRez R-972、NeoRez R-9637、NeoRez R-9679、NeoRez AX-311、NeoRez R-966、NeoRez R-967、NeoRez R-9603、NeoRez R-600、NeoRez R-9320、NeoRez R-9617、NeoRez R-9621、NeoPac R-9000、NeoPac R-9699;三井化学社製の市販品である、タケラックW-615、タケラックW-6010、タケラックW-6020、タケラックW-6061、タケラックW-511、タケラックW-405、タケラックW-7004、タケラックW-605、タケラックW-512A6、タケラックW-635、タケラックW-635C、タケラックWS-7000、タケラックWS-5000、タケラックWS-5070X、タケラックWS-4000、タケラックXW-75-X35;ADEKA社製の市販品である、アデカボンタイターHUX-290H、(アデカボンタイターHUX-290K、アデカボンタイターHUK-290N、アデカボンタイターHUX-395D、アデカボンタイターHUX-394、アデカボンタイターHUX-232、アデカボンタイターHUX-240、アデカボンタイターHUX-320、アデカボンタイターHUX-350、アデカボンタイターHUX-380、アデカボンタイターHUX-381、アデカボンタイターHUX-388、アデカボンタイターHUX-380A、アデカボンタイターHUX-386、アデカボンタイターHUX-401、アデカボンタイターHUX-750、アデカボンタイターHUX-670、アデカボンタイターHUX-680、アデカボンタイターHUX-575、アデカボンタイターHUX-580;大成ファインケミカル社製の市販品である、WBR-016Uをはじめとする一連のシリーズ;三洋化成工業社製の市販品である、ユーコートUX-485、パーマリンUA-200をはじめとする一連のシリーズ等が挙げられる。
【0023】
第1樹脂粒子を構成する樹脂としては、自己架橋性を有するものを使用するのが好ましい。架橋構造を有する樹脂は、耐水性、耐溶剤性、耐候性などに優れるなどの利点を有するため、自己架橋型の樹脂を使用すれば、耐ドライクリーニング性や耐洗濯性が改善される。
【0024】
後述のように、例えば、第2樹脂粒子と第1樹脂粒子の水性分散体とを混合して繊維加工用樹脂組成物を製造する場合や、第1樹脂粒子の水性分散体と第2樹脂粒子の水性分散体とを混合して繊維加工用樹脂組成物を製造する場合、第1樹脂粒子の水性分散体における第1樹脂粒子の濃度は、20~70質量%とすることが好ましい。
【0025】
<第2樹脂粒子>
第2樹脂粒子は、平均粒子径が1~500μmである。接着性及び耐久性の観点から、当該平均粒子径は、好ましくは1~400μm、より好ましくは1~300μm、さらに好ましくは2~250μm、さらに好ましくは5~50μm、さらに好ましくは5~20μmである。当該平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所社製SALD2300)で測定される質量平均粒子径である。
【0026】
前記の接着性及び耐久性の観点から、第2樹脂粒子の平均粒子径は、第1樹脂粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。同様の観点から、第2樹脂粒子の平均粒子径は、第1樹脂粒子の平均粒子径の5倍以上であることが好ましい。
【0027】
なお、第2樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所社製SALD2300)で測定される質量平均粒子径である。
【0028】
第2樹脂粒子は、ポリアミド系ゴム弾性体粉体である。すなわち、第2樹脂粒子は、ポリアミド系ゴム弾性体粉体により構成されている。
【0029】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体は、ポリアミド系ゴム弾性体の粉体により構成されている。ポリアミド系ゴム弾性体は、ポリアミド系ゴムにより構成された弾性体である。ポリアミド系ゴム弾性体は、常温ではゴム弾性を示し、高温では可塑化する性質(熱可塑性樹脂と同様の性質)を示すことが好ましい。
【0030】
ポリアミド系ゴム弾性体の構造としては、特に限定されないが、高分子構造を備えていることが好ましい。さらに、ポリアミド系ゴム弾性体は、軟質高分子構造により構成されているか、または、硬質高分子部位と軟質高分子部位とを組み合わせた構造により構成されていることが好ましい。
【0031】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体は、アミド単位とエーテル単位とを有していることが好ましい。具体的には、ポリアミド系ゴム弾性体粉体は、下記式(1)で示される構造を含んでいることが好ましい。
【0032】
-[(A)-(X)-(E)]- (1)
【0033】
一般式(1)において、(A)はアミド単位を示し、(E)はエーテル単位を示し、(X)はアミド単位とエーテル単位とを結合する結合基を示している。
【0034】
アミド単位及びエーテル単位は、それぞれ、モノマー単位であってもよいし、ポリマー単位であってもよい。アミド単位がポリマー単位である場合、(A)はポリアミドブロックを構成する。また、エーテル単位がポリマー単位である場合、(E)はポリエーテルブロックを構成する。
【0035】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体において、一般式(1)で示される構造は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。例えば、ポリアミド系ゴム弾性体粉体は、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとが結合基によって結合されたブロック共重合体によって構成されていてもよいし、一般式(1)で示される構造が(1種類または2種類以上)結合した共重合体により構成されていてもよい。
【0036】
後述の通り、ポリアミド系ゴム弾性体粉体において、ポリアミドブロックは、硬質高分子部位を構成し、ポリエーテルブロックは、軟質高分子部位を構成する傾向にある。
【0037】
好ましいポリアミド系ゴム弾性体粉体の構造としては、一般式(1)において、(A)がポリアミドブロックであり、(E)がポリエーテルブロックであり、(A)と(E)とが結合基によって結合されたブロック共重合体である。限定的な解釈を望むものではないが、このような構造を有することにより、硬質高分子部位を構成するポリアミドブロックと、軟質高分子部位を構成するポリエーテルブロックとが好適に機能し、接着布に対して優れた接着力と耐久性を付与することができていると考えられる。
【0038】
アミド単位を構成するモノマーとしては、例えば、ラクタム化合物、アミノカルボン酸化合物、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩などが挙げられる。アミド単位を構成するモノマーは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0039】
ラクタム化合物としては、ε-カプロラクタム、ω-エナントラクタム、ω-ラウリルラクタム等が挙げられる。
【0040】
アミノカルボン酸化合物としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が例示される。
【0041】
ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩における、ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン等が例示される。また、ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸、ダイマー酸(リノール酸やオレイン酸を主成分とする不飽和脂肪酸より合成される炭素数36の不飽和ジカルボン酸)等が例示される。ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩は、好ましくはジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩であり、より好ましくは、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンからなる群より選択される1種と、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸からなる群より選択される1種の塩である。
【0042】
また、エーテル単位を構成するモノマーとしては、グリコール化合物などが挙げられる。また、エーテル単位は、ポリエーテル鎖を有するジアミン化合物等であってもよい。
【0043】
グリコール化合物としては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール等が例示される。また、ポリエーテル鎖を有するジアミン化合物としては、ポリエーテルジアミン等が例示される。
【0044】
アミド単位とエーテル単位とを結合する結合基(一般式(1)の(X))の構造としては、例えば、-CO-NH-、又は-CO-O-が例示され、好ましくは-CO-NH-である。
【0045】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体において、結合基の構造が「-CO-NH-」であるの共重合体を、ポリエーテルブロックアミド共重合体と称し、結合基の構造が「-CO-O-」である共重合体を、ポリエーテルエステルブロックアミド共重合体と称する。すなわち、前記一般式(1)を用いて表現すれば、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとが結合基(E)を介して結合したブロック共重合体として、下記一般式(11)で表されるポリエーテルブロックアミド共重合体、下記一般式(12)で表されるポリエーテルエステルブロックアミド共重合体が例示される。
【0046】
-[(A)-(CO-NH)-(E)]- (11)
-[(A)-(CO-O)-(E)]- (12)
【0047】
一般式(11)及び(12)において、(A)はポリアミドブロックを示し、(E)はポリエーテルブロックを示す。
【0048】
限定的な解釈を望むものではないが、ポリアミド系ゴム弾性体粉体が、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含んでなるブロック共重合体である場合、ポリアミドブロックを有する硬質高分子部位(ハードセグメントともいう)と、ポリエーテルブロックを有する軟質高分子部位(ソフトセグメントともいう)とが組み合わされた構造を有すると考えられる。当該硬質高分子部位は、結晶性で融点が高く、また、当該軟質高分子部位は、非晶性でガラス転移温度が低いと考えられる。これらの特性によって、硬質高分子部位を構成するポリアミドブロックと、軟質高分子部位を構成するポリエーテルブロックとが好適に機能し、接着布に対して、優れた接着力と耐久性を付与することができていると考えられる。
【0049】
本発明においては、耐加水分解性、耐熱性に優れ、有機溶剤を用いなくても、粒度分布が優れたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液が得られやすいという観点から、ポリアミド系ゴム弾性体として、特にポリエーテルブロックアミド共重合体(一般式(11))を好適に用いることができる。
【0050】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体としては、公知の物質を用いることができ、また、公知の方法により製造されたものを用いることができる。また、市販されているものを用いることもできる。
【0051】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体を構成するポリアミド系ゴム弾性体を製造する方法としては、例えば、ラクタム化合物、アミノカルボン酸化合物、及びジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種と、ジカルボン酸とを反応させて、実質的に両末端がカルボキシル基であるポリアミドブロックを調製した後、このポリアミドブロックにグリコール化合物及びジアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を添加して、加熱することで反応させる方法等を挙げることができる。
【0052】
なお、ここで用いるジカルボン酸としては、例えば上記“ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩”の説明において例示したジカルボン酸化合物と同様のものを用い得る。
【0053】
また、ポリアミド系ゴム弾性体として市販品を用いる場合、例えば、宇部興産社製ポリエーテルブロックアミド共重合体(商品名“UBESTAXPA”)、アルケマ社製ポリエーテルエステルブロックアミド共重合体(商品名“Pebax”)、ダイセル・エボニック社製ポリエーテルブロックアミド共重合体(商品名“ダイアミド”)、エムスケミー・ジャパン社製ポリエーテルブロックアミド共重合体(商品名“グリルアミド”)、リケンテクノス社製ポリエーテルブロックアミド共重合体(商品名“ハイパーアロイアクティマー”)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリエーテルブロックアミド共重合体(商品名“ノバミット”)等を用いることができる。
【0054】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体の融点としては、特に限定されるものではないが、融点の下限としては100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、130℃以上であることが特に好ましい。融点の上限としては180℃未満であることが好ましく、170℃未満であることがより好ましく、160℃未満であることがさらに好ましく、150℃未満であることが特に好ましい。
【0055】
なお、ポリアミド系ゴム弾性体粉体の融点は、示差走査熱量計(DSC)によって求められる値である。
【0056】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体を構成するポリアミド系ゴム弾性体の曲げ弾性率としては、特に制限されないが、JIS K7171に準拠する方法で測定される曲げ弾性率が900MPa以下(例えば10~850MPa程度)であることが好ましく、600MPa以下(例えば25~550MPa程度)であることがより好ましく、450MPa以下(例えば55~400MPa程度)であることが特に好ましい。
【0057】
また、ポリアミド系ゴム弾性体粉体の10%変位圧縮強度は、0.1~4.5MPaが好ましく、より好ましくは0.5~3MPaである。
【0058】
ここで10%変位圧縮強度とは、樹脂粒子を島津製作所社製の微小圧縮試験機MCT-W500にて圧縮試験を行った場合に、粒子径に対して10%変形したときの荷重と粒子径から式[圧縮強度(MPa)=2.8×10%変形したときの荷重(N)/{π×粒子径(mm)×粒子径(mm)}]によって算出される値である。
【0059】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体の平均円形度としては、例えば0.7以上、好ましくは0.7~1、より好ましくは0.8~1が挙げられる。
【0060】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体の形状に関して、平均円形度は画像解析式粒子径分布測定装置(例えば、マイクロトラックベル社製マイクロトラックPartAn SI)を使用して測定される。平均円形度とは、測定可能な粒子径範囲で検知された投影像の円形度の値を全て合計し、その合計値を検知された投影像の数で割った値である。ここで投影像とは、装置が画像として検知(投影)した粒子の像である。円形度とは、投影像がどれだけ円に近いかを示す代表的な指標(円相当径/周囲長径)である。また、円相当径とは、粒子投影像と同じ面積を持つ円の直径である。周囲長径とは、投影像の周囲長と同じ周囲長を持つ円の直径である。
【0061】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体の具体的な製造方法としては、例えば、以下の方法を採用することができる。
【0062】
まず、容器内にポリアミド系ゴム弾性体、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体および水性媒体を投入し、これらの混合液を調製する。
【0063】
ここで、粒度分布の均一性が高いポリアミド系ゴム弾性体粉体を生産性良く得るため、必要に応じ、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体に加え、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤も用いることが好ましい。
【0064】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤を用いることができる。
【0065】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アルキル脂肪酸ジエタノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0066】
本発明において、粒度分布の均一性が高いポリアミド系ゴム弾性体粉体が得られやすいとの観点からノニオン系界面活性剤が好適に用いられ、特にエーテル結合を有するノニオン系界面活性剤が好適に用いられる。
【0067】
前述の界面活性剤の中では、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミドがエーテル結合を有するノニオン系界面活性剤に該当する。これらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0068】
なお、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルアミドの「アルキル」は、炭素数10~18のアルキルが好ましく、より具体的にはカプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリルが好ましく例示できる。また、上記ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの「脂肪酸」は、炭素数10~18の脂肪酸が好ましく、より具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が好ましく例示できる。なお、ソルビタン脂肪酸エステルの中でも、特にソルビタンモノラウレートが好ましい。
【0069】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、ノニオン系界面活性剤のうち2種以上を併用することが好ましく、エーテル結合を有するノニオン系界面活性剤のうち2種以上を併用することがより好ましい。
【0070】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤(すなわち、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤を用いない場合は、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を意味し、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤を用いる場合は、当該界面活性剤及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を意味する。以下同様。)の使用量は、ポリアミド系ゴム弾性体100質量部に対して20質量部未満が好ましく、1~12質量部がより好ましい。エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤の使用量が20質量部未満であれば、後述する水性媒体を除去する工程において、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤を除去しやすく望ましい。なお、ポリアミド系ゴム弾性体粉体の製造方法では、特に限定されるものではないが、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤は、水性媒体を除去する工程において、水性媒体に溶解されて可能な限り除去されるのが望ましい。
【0071】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体の製造において、必要に応じて、酸化防止剤を用いることができる。酸化防止剤を用いることで、得られるポリアミド系ゴム弾性体粉体の熱劣化や変色を防止し、耐久性を向上させることも可能である。酸化防止剤は、前記混合液に配合して用いることができる。
【0072】
酸化防止剤の種類は、特に限定されるものではないが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を用いることができる。
【0073】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、公知のヒンダードフェノール系酸化防止剤が使用できるが、代表的には、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチ-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t--ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びテトラキス[メチレン-3-(3,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニルプロピオネート)]メタン等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を使用することができる。なかでも、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチ-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼンが特に好ましい。
【0074】
硫黄系酸化防止剤としてはジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)などがあげられる。これらのなかでも、ペンタエリスリトール-テトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)が特に好ましい。
【0075】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4-ジイルビスフォスフォナイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイトなどを使用することができる。
【0076】
アミン系酸化防止剤としては、オクチル化ジフェニルアミン、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、フェニル-1-ナフチルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、N,N´-ジフェニル-p-フェニレンジアミンなどを使用することができる。
【0077】
酸化防止剤は、2種以上のものが併用されてもよい。これらの酸化防止剤を併用することで、ポリアミド系ゴム弾性体粉体の耐熱性を向上させることができる。
【0078】
酸化防止剤の使用量は、ポリアミド系ゴム弾性体100質量部に対して好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.05~8質量部であり、特に好ましくは0.1~5質量部である。
【0079】
前述の混合液の調製において用いる容器は、ポリアミド系ゴム弾性体が水性媒体中で軟化する温度以上の温度に加熱するための加熱手段と、内容物にせん断力を与えることのできる攪拌手段とを備えた耐圧容器が好ましい。例えば、攪拌機付きの耐圧オートクレーブ等を用いるのが好ましい。
【0080】
次に、前記混合液をポリアミド系ゴム弾性体の軟化温度以上に加熱して攪拌する。そして、これにより得られた乳濁液を室温まで冷却すると、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液が得られる。
【0081】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体は、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液から水性媒体を除去することで製造することができる。
【0082】
ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液から水性媒体を除去する方法としては、特に限定されないが、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液から水性媒体を蒸発させてポリアミド系ゴム弾性体粉体を得る方法、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液をろ材(例えば多孔質性を持つろ材が好ましい)を用いてろ過して、水性分散液から水性媒体をろ別して除去する方法、遠心分離機を用いて、もしくは水性分散液をデカンテーションして、ポリアミド系ゴム弾性体を沈降させた後、水性媒体を除去する方法等が例示できる。
【0083】
ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液からろ過により水性媒体を除去する方法としては、特に限定されない。
【0084】
ろ過は、常圧ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、熱時ろ過等いずれの方法も用いることができるが、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液は良好な湿ケーキが得られやすく水性媒体をろ過して除去する方法は生産性が優れるとの観点から、減圧ろ過もしくは加圧ろ過によるろ過が好適に用いることができる。
【0085】
湿ケーキの乾燥方法は特に制限されず、公知の乾燥方法を用い得る。例えば、乾燥装置を用いて乾燥させることができる。湿ケーキを乾燥するための装置としては、特に限定されず、熱風乾燥機、減圧乾燥機などの慣用の装置を用いることができる。湿ケーキを乾燥するための乾燥温度や常圧下、減圧下などの圧力条件は、特に限定されないが、乾燥温度は50~150℃程度が好ましく、70~100℃程度がより好ましい。乾燥温度が50℃以上であれば、より短時間で水性媒体を乾燥除去できるために生産効率の面で好ましい。また、乾燥温度が150℃以下であれば、ポリアミド系ゴム弾性体粉体の熱劣化をより抑制しながら乾燥ができる点で好ましい。
【0086】
なお、ポリアミド系ゴム弾性体粉体は、吸湿性を有しており、空気中に放置しておくと、次第に含水量が増えていく性質があるため、乾燥後は、速やかにデシケーター等の密閉容器に移動し、空気を遮断させることが好ましい。
【0087】
以上の製造方法によって得られたポリアミド系ゴム弾性体粉体の形状は、略球状である。
【0088】
ポリアミド系ゴム弾性体粉体としては、より粉体特性を向上させるために、シリカ、アルミナ等の無機系微粒子粉末を滑剤として添加し、流動性を向上させたものを使用することもできる。
【0089】
後述のように、例えば、第1樹脂粒子と第2樹脂粒子の水性分散体とを混合して繊維加工用樹脂組成物を製造する場合や、第1樹脂粒子の水性分散体と第2樹脂粒子の水性分散体とを混合して繊維加工用樹脂組成物を製造する場合、第2樹脂粒子の水性分散体における第2樹脂粒子の濃度は、20~70質量%とすることが好ましい。
【0090】
本発明の繊維加工用樹脂組成物を構成する水性分散体の固形分濃度は、50~80質量%である。前記の接着性及び耐久性の観点から、当該固形分濃度は、好ましくは50~77.5質量%程度、より好ましくは50~75質量%程度である。
【0091】
本発明の繊維加工用樹脂組成物の25℃における粘度は、塗工性の観点から、好ましくは30000~600000mPa・s、より好ましくは40000~550000mPa・s、さらに好ましくは50000~500000mPa・sである。粘度の測定条件は、B型粘度計(例えば、芝浦システム社製デジタル式ビスメトロン粘度計)を25℃、ローターNo.7、回転数4、10、20rpmの適正な範囲内で用いるときに得られる条件である。
【0092】
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、第1樹脂粒子、第2樹脂粒子、及び水に加えて、さらに、界面活性剤、増粘剤、架橋剤、可塑剤、分散助剤、消泡剤、柔軟剤、安定剤等の各種添加剤を少なくとも1種含んでいてもよい。
【0093】
界面活性剤としては、特に制限されず、公知の繊維加工用樹脂組成物に配合されているものが使用できる。界面活性剤としては、例えば、ロジン酸塩、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エタノールアミド等のノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。繊維加工用樹脂組成物に含まれる界面活性剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0094】
本発明の繊維加工用樹脂組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量としては特に制限されず、例えば、第1樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは35質量部以下、より好ましくは3~30質量部が挙げられる。
【0095】
増粘剤としては、公知の繊維加工用樹脂組成物に配合されているものが使用できる。増粘剤としては、水溶性ケイ酸アルカリ、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体系化合物;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系化合物;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系化合物;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルベンジルアルコール共重合物等のポリビニル系化合物;カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質誘導体;ビニルメチルエーテルー無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステルー無水マレイン酸の反応物のハーフエステル等の無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。繊維加工用樹脂組成物に含まれる増粘剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0096】
上記増粘剤としては、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、東亜合成社製のアロンA-7075、アロンA-7055、アロンB-300K及びアロンB-500、ADEKA社製のUH-420、UH-450、UH-462、UH-472、UH-540、UH-752、UH-756VF、UH-814N、ロームアンドハース社製のACRYSOLRM-8W、ACRYSOLRM-825、ACRYSOLRM-2020NPR、ACRYSOLRM-12W、ACRYSOLSCT-275、サンノプコ社製のSNシックナー612、SNシックナー621N、SNシックナー625N、SNシックナー627N、SNシックナー660T等が挙げられる。
【0097】
本発明の繊維加工用樹脂組成物が増粘剤を含む場合、その含有量としては特に制限されず、例えば、第1樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.5~7.5質量部が挙げられる。
【0098】
架橋剤としては、公知の繊維加工用樹脂組成物に配合されているものが使用できる。架橋剤としては、イソシアネート化合物が挙げられる。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の芳香族、脂肪族および脂環属の有機ポリイソシアネートまたはこれらの混合物およびこれらの有機ポリイソシアネート化合物をブロック化剤でブロックしたブロックドイソシアネート等が挙げられる。繊維加工用樹脂組成物に含まれる架橋剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0099】
市販のイソネシアート化合物としては、例えば、住化コベストロウレタン社製のバイヒジュール3100、デスモジュールN3400、デスモジュールDN等、三井化学社製のタケネートWD720、タケネートWD725、タケネートWD730等、旭化成社製のデュラネートWB40-100、デュラネートWB40-80D、デュラネートWX-1741等を例示できる。また、市販のブロックイソシアネートとしては、例えば、住化コベストロウレタン社製のバイヒジュールBL5140、バイヒジュールBL5235等、第一工業製薬社製のエラストロンBN-69、エラストロンBN-77、エラストロンBN-27、エラストロンBN-11、エラストロンBN-04等、三井化学社製のタケネートWB-700、タケネートWB-720、タケネートWB-730、タケネートWB-920、タケネートXWB-72-K55等を例示できる。
【0100】
本発明の繊維加工用樹脂組成物が架橋剤を含む場合、その含有量としては特に制限されず、例えば、第1樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.5~9質量部が挙げられる。
【0101】
本発明の繊維加工用樹脂組成物の製造方法は、水に第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子が分散されれば、特に制限されず、例えば、第1樹脂粒子の水分散体と第2樹脂粒子とを混合する方法、第1樹脂粒子の水分散体と第2樹脂粒子の水分散体とを混合する方法などが挙げられる。
【0102】
本発明の繊維加工用樹脂組成物の製造方法において、繊維加工用樹脂組成物を製造する際の温度は特に制限されず、例えば10~50℃、好ましくは15~40℃、特に好ましくは15~30℃で第1樹脂粒子と第2樹脂粒子が水に分散されるように製造することができる。10℃を下回ると液温が低いために液粘度が上昇し、上手く分散しにくい。また、50℃を超えると液温が高く、樹脂によっては塗工する前に自己架橋をしてしまい、接着性等の機能が低下してしまう恐れがある。
【0103】
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、繊維基布に適用して接着布を形成するために好適に用いられる。
【0104】
本発明の繊維加工用樹脂組成物を繊維基布に塗工して接着布を製造する方法としては、繊維加工用樹脂組成物が繊維基布に接触して、接触繊維加工用樹脂組成物に含まれる第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子が、繊維基布に付着すれば特に制限されないが、例えば、浸漬法、グラビアロール方式、ダブルドット方式、ペーストドット方式、パウダードット方式、スプレー方式等の公知の方法を利用できる。本発明の繊維加工用水性分散液においては、ペーストドット方式が好適に用いられる。
【0105】
本発明の繊維加工用樹脂組成物を用いた接着布の製造方法において、例えば、ペーストドット方式を採用する場合、前記の接着性及び耐久性の観点から、細孔径が0.5~10mmのスクリーンを用いて、ドット数1~50個/cm2、塗布量10~1000g/m2のドット状に繊維加工用樹脂組成物を繊維基布に塗布することが好ましい。
【0106】
本発明の繊維加工用樹脂組成物が塗布された繊維基布を、そのまま、あるいは必要に応じて、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂粉末を散布した後、余剰の粉末を除去して、25~50℃の温度で乾燥することにより、第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子が繊維基布表面に固着して、本発明の接着布が得られる。得られた接着布は、例えば、接着芯地として、アイロンや熱プレス機で様々な種類の表地と接着できる。また、本発明の繊維加工用樹脂組成物を利用した接着布は、伸縮に対する優れた耐久性を発揮することができる。
【0107】
本発明の接着布に用いられる基布としては、特に限定されず、各種繊維質素材を織布としたもの、あるいは不織布としたものが用いられる。素材としては、例えば、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成繊維が挙げられる。織布としては、例えば、前記素材から作られた織物、編物等が挙げられる。また不織布としては、前記素材を化学的方法、機械的方法、またはそれらの組み合わせにより絡み合わせてウェッブとしたもの等が挙げられる。
【0108】
繊維基布の目付量としては、特に制限されないが、好ましくは50~1000g/m2である。
【0109】
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、繊維基布に対して接着性を付与することができることから、接着剤ということもできる。
【実施例
【0110】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0111】
〔ポリアミド系ゴム弾性体粉体Aの製造例1〕
直径50mmのタービン型撹拌羽根を備えた内容積1リットルの耐圧オートクレーブ中に、ポリアミド系ゴム弾性体としてポリエーテルブロックアミド共重合体(融点135℃、曲げ弾性率89)160g、脱イオン水224g、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)16gを仕込み、密閉した。次に、撹拌しながらオートクレーブ内部を180℃まで昇温した。内温を180℃に保ちながらさらに撹拌した後、内容物を室温まで冷却し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。次に、得られた水性分散液からろ過により水性媒体を除去した。次に、湿ケーキを減圧乾燥機に入れ、減圧乾燥した後、取り出し、ポリアミド系ゴム弾性体粉体Aを得た。得られた粉体の質量平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD2300)で測定したところ、質量平均粒子径は11.0μmであった。この一部を採取し、走査型電子顕微鏡(JEOL社製JSM-6390LA)を用いて観察し、形状が略球状であることを確認した。また、ポリアミド系ゴム弾性体粉体Aの平均円形度については、画像解析式粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル社製マイクロトラックPartAn SI)を使用して測定した。その結果、ポリアミド系ゴム弾性体粉体Aの平均円形度は、0.98と測定された。
【0112】
〔共重合ポリアミド樹脂粒子Bの製造例2〕
製造例1において共重合ポリアミド(6/12共重合ナイロン、融点130℃、溶融粘度1000Pa・s)に変更した以外は、製造例1と同様に操作し、共重合ポリアミド樹脂粒子Bを得た。得られた粉体の質量平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD2300)で測定したところ、質量平均粒子径は12.5μmであった。この一部を採取し、走査型電子顕微鏡(JEOL社製JSM-6390LA)を用いて観察し、形状が略球状であることを確認した。また、共重合ポリアミド樹脂粒子Bの平均円形度については、画像解析式粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル社製マイクロトラックPartAn SI)を使用して測定した。その結果、共重合ポリアミド樹脂粒子Bの平均円形度は、0.90と測定された。
【0113】
〔ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液Cの製造例3〕
直径35mmのタービン型撹拌羽根を備えた内径70mm、高さ150mm、内容積450mLのジャケット付きの耐圧オートクレーブ中に、ポリアミド系ゴム弾性体(融点135℃、曲げ弾性率89)160g、脱イオン水224g、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)16gを仕込み、密閉した。次に、撹拌しながらオートクレーブ内部を180℃まで昇温した。内温を180℃に保ちながらさらに撹拌した後、内容物を室温まで冷却し、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液Cを得た。得られたポリアミド系ゴム弾性体水性分散液Cの質量平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD2300)で測定したところ、質量平均粒子径は1.9μmであった。
【0114】
〔共重合ポリアミド樹脂水性分散液Dの製造例4〕
直径35mmのタービン型撹拌羽根を備えた内径70mm、高さ150mm、内容積450mLのジャケット付きの耐圧オートクレーブ中に、共重合ポリアミド(6/66/12共重合ナイロン、融点120℃、溶融粘度600Pa・s)120g、脱イオン水179.6gおよび水酸化ナトリウム0.4gを仕込み密閉した。次に、攪拌機を始動し毎分150回転で攪拌しながら、ジャケット部に加熱油を循環することにより、オートクレーブ内部を150℃まで昇温した。内温を150℃に保ちながら、さらに30分間攪拌した後、内容物を室温まで冷却し、樹脂濃度40質量%の共重合ポリアミド樹脂水性分散液Dを得た。得られた共重合ポリアミド樹脂水性分散液Dの質量平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD2300)で測定したところ、質量平均粒子径は0.6μmであった。
【0115】
<実施例1>
第2樹脂粒子として製造例1で得られたポリアミド系ゴム弾性体粉体A76質量部、第1樹脂粒子としてウレタン樹脂エマルジョン(商品名;スーパーフレックス126、第一工業製薬社製、固形分30質量%)100質量部、増粘剤(商品名;SNシックナー660T、サンノプコ社製、固形分20質量%)0.9質量部を混合し、粘度65000mPa・secのペースト状の繊維加工用樹脂組成物(固形分濃度60.6質量%)を得た。
【0116】
得られた繊維加工用樹脂組成物を細孔径2.0mmのスクリーンを用いて、目付量160g/m2のナイロン/ポリウレタン不織布の表面に、ドット数10個/cm2、塗布量83g/m2で、ドット状に塗布した。次いで40℃、5分の条件で乾燥し、接着布を得た。
【0117】
<実施例2>
第2樹脂粒子として製造例1で得られたポリアミド系ゴム弾性体粉体A76質量部、第1樹脂粒子として製造例3で得られたポリアミド系ゴム弾性体水性分散液C100質量部を混合し、粘度65000mPa・secのペースト状の繊維加工用樹脂組成物(固形分濃度55.6%)を得た。得られた繊維加工用樹脂組成物を実施例1と同様にして接着布を得た。
【0118】
<実施例3>
第2樹脂粒子として製造例1で得られたポリアミド系ゴム弾性体粉体A76質量部、第1樹脂粒子として製造例4で得られた共重合ポリアミド樹脂水性分散液D100質量部を混合し、粘度87000mPa・secのペースト状の繊維加工用樹脂組成物(固形分濃度55.8質量%)を得た。得られた繊維加工用樹脂組成物を実施例1と同様にして接着布を得た。
【0119】
<比較例1>
第2樹脂粒子として製造例2で得られた共重合ポリアミド樹脂粒子B76質量部、第1樹脂粒子としてウレタン樹脂エマルジョン(商品名;スーパーフレックス126、第一工業製薬社製、固形分30質量%)100質量部、増粘剤(商品名;SNシックナー660T、サンノプコ社製、固形分20質量%)0.9質量部を混合し、粘度150000mPa・secのペースト状の繊維加工用樹脂組成物(固形分濃度60.6質量%)を得た。得られた繊維加工用水性分散液を実施例1と同様にして接着布を得た。
【0120】
<比較例2>
第2樹脂粒子として製造例2で得られた共重合ポリアミド樹脂粒子B76質量部、第1樹脂粒子として製造例4で得られた共重合ポリアミド樹脂水性分散液D100質量部を混合し、粘度87000mPa・secのペースト状の繊維加工用樹脂組成物(固形分濃度55.6質量%)を得た。得られた繊維加工用樹脂組成物を実施例1と同様にして接着布を得た。得られた繊維加工用水性分散液を実施例1と同様にして接着布を得た。
【0121】
<比較例3>
第2樹脂粒子として製造例1で得られたポリアミド系ゴム弾性体粉体A37質量部、第1樹脂粒子としてウレタン樹脂エマルジョン(商品名;スーパーフレックス126、第一工業製薬社製、固形分30質量%)100質量部、増粘剤(商品名;SNシックナー660T、サンノプコ社製、固形分20質量%)0.9質量部を混合し、粘度65000mPa・secのペースト状の繊維加工用樹脂組成物(固形分濃度47.4質量%)を得た。得られた繊維加工用樹脂組成物を実施例1と同様にして接着布を得た。
【0122】
各実施例および各比較例で得られたそれぞれの接着布について、以下の方法で接着性及び耐久性を評価し、その結果を表1に示した。
【0123】
[接着性の評価方法]
接着布とナイロン/ポリウレタン不織布とを、ホットプレスを用いて170℃、0.5kgf/cm2、30秒の条件で接着し、試験布を得た。得られた試験布を、接着強度試験法(JIS L1086)に準拠して、試験布を幅25mmに裁断後、引張試験機を用いて引張速度50mm/分の条件で剥離強度を測定した。
【0124】
[耐久性の評価方法]
前記の[接着性の評価方法]と同様にして得た試験布を、引張試験機を用いて、引張速度40cm/分で2cm往復させる伸縮を1サイクルとし、100サイクル及び1000サイクル伸縮させた後、それぞれ、前記の[接着性の評価方法]と同様にして剥離強度を測定し、伸縮前の剥離強度(100%)に対する変化率(%)を算出した。算出された変化率に基づき、以下の基準に従って耐久性を評価した。
〇:変化率が90%超であり、耐久性に優れている
△:変化率が70%以上90%以下であり、耐久性にやや劣る
×:耐久性が70%未満であり、耐久性に劣る
【0125】
【表1】