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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】蓄電システムおよび計測方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20230724BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230724BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230724BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230724BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230724BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 S
H01M10/48 P
H01M10/44 P
G01R31/389
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020510025
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2019012334
(87)【国際公開番号】W WO2019188890
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2018062766
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】可知 純夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀人
(72)【発明者】
【氏名】手塚 渉
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161211(JP,A)
【文献】特開2004-215459(JP,A)
【文献】特開2003-151643(JP,A)
【文献】特開2012-050228(JP,A)
【文献】特開2006-067683(JP,A)
【文献】国際公開第2014/033880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
G01R 31/36 -31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの鉛蓄電池セルを含む蓄電池列を複数並列に接続した多並列蓄電池モジュールと、前記多並列蓄電池モジュールの電力の授受を制御する交直変換装置と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に直列に接続されたスイッチと、前記蓄電池列の状態を前記蓄電池列毎に監視し、前記スイッチのオン/オフを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、解列された前記蓄電池列同士を互いに並列に接続するとき、接続対象の前記蓄電池列の電圧に関連する計測値に基づいて、接続対象の前記蓄電池列に対応する前記スイッチのオン/オフを制御し、前記蓄電池列の電圧に関連する計測値は、接続対象の前記蓄電池列間の電圧差であり、前記制御装置は、予め計測した前記蓄電池列の内部抵抗の値と、前記蓄電池列同士を接続したときに流れる循環電流の許容電流とを記憶する記憶部と、前記蓄電池列同士の接続の可否を判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記スイッチのオン/オフを切り替えるスイッチ制御部と、を有し、前記判定部は、接続対象の前記蓄電池列の電圧の計測値に基づいて算出した前記電圧差と前記記憶部に記憶された前記内部抵抗の値とに基づいて、接続対象の前記蓄電池列同士を接続したときに流れる循環電流の推定値を算出し、前記推定値が前記記憶部に記憶された前記許容電流より小さい場合に、前記スイッチ制御部に対して前記蓄電池列同士の接続を許可し、前記推定値が前記記憶部に記憶された前記許容電流より大きい場合に、前記スイッチ制御部に対して前記蓄電池列同士の接続を許可せず、前記記憶部に記憶される前記内部抵抗は、第1の抵抗と第2の抵抗とを含み、前記判定部は、接続対象の前記蓄電池列の状態を判定し、接続対象の前記蓄電池列が電圧の緩和状態の差に起因して前記電圧差が生じている第1の状態である場合には、前記第1の抵抗を用いて前記推定値を算出し、接続対象の前記蓄電池列が充電状態の差に起因して前記電圧差が生じている第2の状態である場合には、前記第2の抵抗を用いて前記推定値を算出することを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電システムにおいて、前記記憶部に記憶される前記内部抵抗の値は、前記蓄電池列同士を接続したときに流れる循環電流のピーク値の計測値と、接続する前の前記電圧差の計測値と、に基づいて算出した値であることを特徴とする蓄電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電システムにおいて、前記記憶部に記憶される前記内部抵抗は、前記蓄電池列を定電流で充電したときの当該蓄電池列の電圧の変化量と充電電流と基づいて算出された充電時の抵抗と、前記蓄電池列を定電流で放電したときの当該蓄電池列の電圧の変化量と放電電流とに基づいて算出された放電時の抵抗との合成抵抗である、ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の蓄電システムにおいて、前記記憶部に記憶される前記許容電流は、前記蓄電池列に許容された電流の最大値に対応する値、または前記蓄電池列に接続される機器に許容された電流の最大値に対応する値であることを特徴とする蓄電システム。
【請求項5】
請求項1に記載の蓄電システムにおいて、
前記蓄電池列の電圧に関連する計測値は、接続対象の前記蓄電池列の充電終了後および放電終了後からの経過時間である
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項6】
請求項に記載の蓄電システムにおいて、
前記制御装置は、
前記蓄電池列の充電終了後および放電終了後に前記蓄電池列の電圧が安定するまでの時間の基準値を示す安定基準時間を記憶する記憶部と、
前記蓄電池列同士の接続の可否を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記スイッチのオン/オフを制御するスイッチ制御部と、を有し、
前記判定部は、接続対象の前記蓄電池列の充電終了後および放電終了後からの経過時間を計測し、前記経過時間の計測値が前記記憶部に記憶された前記安定基準時間より大きい場合に、前記スイッチ制御部に対して前記蓄電池列同士の接続を許可し、前記経過時間の計測値が前記記憶部に記憶された前記安定基準時間より小さい場合に、前記スイッチ制御部に対して前記蓄電池列同士の接続を許可しない
ことを特徴とする蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムおよび蓄電池の内部抵抗の測定方法に関し、例えば鉛蓄電池の充放電を制御する蓄電システム、および鉛蓄電池の内部抵抗の計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉛蓄電池の大容量化の要求により、単一の鉛蓄電池セル(単電池)または複数の鉛蓄電池セルを直列に接続した蓄電池列(ストリング)を複数並列に接続した多並列蓄電池モジュールを備えた大規模な蓄電システムが普及しつつある。
【0003】
このような蓄電システムでは、蓄電池列の充放電制御において、蓄電池列同士の接続と解列を切り替える制御を行う場合がある。解列した蓄電池列を再接続する際に蓄電池列間に電圧差があった場合、再接続した直後に蓄電池列間に循環電流が流れる。この循環電流が大電流である場合、蓄電池の寿命に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
また、蓄電池列同士の再接続時に流れる循環電流が多並列蓄電池モジュールと接続されるケーブルやブレーカ等の蓄電池周辺の機器の許容電流を超えた場合、発熱による電力部品の破損や劣化等が生じることが知られている。
【0005】
この循環電流による蓄電池および蓄電池周辺の機器への悪影響を防止するために、種々の手法が以前から検討されている。例えば、特許文献1には、複数の蓄電池列間を抵抗素子を介して接続する第1回路と、複数の蓄電池列間を抵抗素子を介さずに接続する第2回路とを備えた蓄電システムが開示されている。この蓄電システムにおいて蓄電池列同士を接続する場合、先ず、第1回路を選択して抵抗素子を介して蓄電池列同士を接続することにより、循環電流を抑制しつつ蓄電池列間の電圧差を減少させ、電圧差が縮小した後に、第2回路を選択して抵抗素子を介さずに蓄電池列同士を接続する。これにより、大きな循環電流が流れることによる蓄電池への悪影響を防止している。
【0006】
ところで、電圧差がある蓄電池列を接続した場合に流れる循環電流の大きさは、蓄電池電池の内部抵抗がわかれば、オームの法則により求めることができる。蓄電池列の内部抵抗の算出方法として、以下に示す方法が以前から知られている。
【0007】
例えば、特許文献2には、運用中の蓄電池の電圧および電流から内部抵抗を求める方法が開示されている。具体的には、蓄電池の運用中に所定の大きさの測定用抵抗素子を蓄電池に接続し、その測定用抵抗素子の電圧の変化ΔVと電流の変化ΔIを計測する。そして、蓄電池の内部抵抗Rを、計算式(R=ΔV/ΔI)に基づいて算出する。
【0008】
また、蓄電池の内部抵抗が周波数依存性を有することが知られており、非特許文献1には、コールコール(Cole-Cole)プロットを用いて蓄電池の内部抵抗を評価する技術が開示されている。
【0009】
ここで、コールコールプロットとは、横軸に蓄電池の内部抵抗の実数部、縦軸にその内部抵抗の虚数部を取り、周波数を0.1Hzから数十kHzまで振ったときの軌跡をプロットした図である。
【0010】
例えば、鉛蓄電池のコールコールプロットにおいて、周波数1kHz前後で軌跡が横軸に接する。この時の値は、インピーダンスの虚数部を含まないため、鉛蓄電池の直流内部抵抗を表すと理解されている。そこで、テスターを用いて、鉛蓄電池に1kHz前後の交流電流ΔI=Io・sin(ωt)が流れるように鉛蓄電池の放電電流を制御し、その時の電圧変化ΔV=Vo・sin(ωt+φ)を測定する。そして、交流電流ΔIおよび電圧変化ΔVのそれぞれの実効値の比から、鉛蓄電池の内部抵抗を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第6004350号公報
【文献】特開昭63-12981号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】板垣昌幸等、「拡散と電荷移動混合支配系における電気化学インピーダンスと反応速度の関係」、Zairyo-to-Kankyo, 51, 410-417,2002年
【文献】Daniel Roiu, et al.,「12V Battery modeling: model development, simulation and validation」, IEEE,2017年6月15日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した従来技術では、蓄電池列間の電圧差がどの程度まで小さくなれば、安全な循環電流になるかについての知見は開示されていない。
【0014】
また、特許文献1に開示された技術では、循環電流を抑えるために、複数の回路を蓄電池列毎に準備する必要があり、システム構成が複雑になり、コストの増加を招くという課題がある。
【0015】
また、非特許文献2に示されているように、蓄電池の内部抵抗は、放電時と充電時とで値が相違することが知られている。そのため、上述した特許文献2に開示された方法では、放電時の抵抗は測定できるが、充電時の抵抗は測定していないので、蓄電池の内部抵抗を正確に測定できているとは言えない。したがって、特許文献2に開示された方法で測定した内部抵抗を用いて循環電流の値を推定したとしても、その推定値は、実際に蓄電池列同士を接続したときに流れる循環電流の値からずれたものとなる。
【0016】
更に、本願発明者らは、実際に蓄電池列間を流れる循環電流は、非特許文献1に開示されている技術を用いて計測した内部抵抗に基づく循環電流の予測値に比べて数分の1と非常に小さいことを見出した。すなわち、従来の測定方法で求めた内部抵抗を用いた場合、実際よりも大きく循環電流を見積もってしまうことが分かった。
【0017】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、多並列蓄電池モジュールを備えた蓄電システムにおいて、より簡単な構成で、蓄電池列同士の接続を安全に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の代表的な実施の形態に係る蓄電システムは、少なくとも一つの鉛蓄電池セルを含む蓄電池列を複数並列に接続した多並列蓄電池モジュールと、前記多並列蓄電池モジュールの電力の授受を制御する交直変換装置と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に直列に接続されたスイッチと、前記蓄電池列の状態を前記蓄電池列毎に監視し、前記スイッチのオン/オフを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、解列された前記蓄電池列同士を互いに並列に接続するとき、接続対象の前記蓄電池列の電圧に関連する計測値に基づいて、接続対象の前記蓄電池列に対応する前記スイッチのオン/オフを制御してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る多並列蓄電池モジュールを有する蓄電システムによれば、より簡単な構成で、蓄電池列同士の接続を安全に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】鉛蓄電池の均等充電時の電圧と電流との関係を示す図である。
図2】蓄電池列の電圧の緩和状態の差に起因して発生する循環電流を示す図である。
図3】蓄電池列のSOCの差に起因して発生する循環電流を示す図である。
図4】実施の形態1に係る蓄電システムの構成を示す図である。
図5】監視部のハードウェア構成を示す図である。
図6】実施の形態1に係る蓄電システムによる、蓄電池列間の接続制御方法の流れを示すフロー図である。
図7】実施の形態1に係る蓄電池列の接続可否判定処理(ステップS2)の流れを示すフロー図である。
図8】実施の形態1に係る、蓄電池の内部抵抗の計測方法を説明するための図である。
図9】実施の形態1に係る、蓄電池の内部抵抗の計測方法の流れを示すフロー図である。
図10】実施の形態2に係る蓄電システムの構成を示す図である。
図11】安定基準時間Tsを説明するための図である。
図12】実施の形態2に係る蓄電池列の接続可否判定処理(ステップS2)の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0022】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る蓄電システム(100,100A)は、少なくとも一つの鉛蓄電池セルを含む蓄電池列(20_1~20_n)を複数並列に接続した多並列蓄電池モジュール(2)と、前記多並列蓄電池モジュールの電力の授受を制御する交直変換装置(3)と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に直列に接続されたスイッチ(4_1~4_n)と、前記蓄電池列の状態を前記蓄電池列毎に監視し、前記スイッチのオン/オフを制御する制御装置(1,1A)と、を備え、前記制御装置は、解列された前記蓄電池列同士を互いに並列に接続するとき、接続対象の前記蓄電池列の電圧に関連する計測値(ΔV,T)に基づいて、接続対象の前記蓄電池列に対応する前記スイッチのオン/オフを制御することを特徴とする。
【0023】
〔2〕上記蓄電システムにおいて、前記蓄電池列の電圧に関連する計測値は、接続対象の前記蓄電池列間の電圧差(ΔV)であってもよい。
【0024】
〔3〕上記蓄電システムにおいて、前記制御装置は、予め計測した前記蓄電池列の内部抵抗(R,R1,R2)の値と、前記蓄電池列同士を接続したときに流れる循環電流の許容電流(Iper)とを記憶する記憶部(14)と、前記蓄電池列同士の接続の可否を判定する判定部(12)と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記スイッチのオン/オフを切り替えるスイッチ制御部(13)とを有し、前記判定部は、接続対象の前記蓄電池列の電圧の計測値に基づいて算出した前記電圧差と前記記憶部に記憶された前記内部抵抗の値とに基づいて、接続対象の前記蓄電池列同士を接続したときに流れる循環電流の推定値(Ice)を算出し、前記推定値が前記記憶部に記憶された前記許容電流より小さい場合に、前記スイッチ制御部に対して前記蓄電池列同士の接続を許可し、前記推定値が前記記憶部に記憶された前記許容電流より大きい場合に、前記スイッチ制御部に対して前記蓄電池列同士の接続を許可しないように構成されていてもよい。
【0025】
〔4〕上記蓄電システムにおいて、前記記憶部に記憶される前記内部抵抗は、第1の抵抗(R1)と第2の抵抗(R2)とを含み、前記判定部は、接続対象の前記蓄電池列の状態を判定し、接続対象の前記蓄電池列が電圧の緩和状態の差に起因して前記電圧差が生じている第1の状態である場合(図2参照)には、前記第1の抵抗を用いて前記推定値を算出し、接続対象の前記蓄電池列が充電状態の差に起因して前記電圧差が生じている第2の状態である場合(図3参照)には、前記第2の抵抗を用いて前記推定値を算出してもよい。
【0026】
〔5〕上記蓄電システムにおいて、前記記憶部に記憶される前記内部抵抗の値は、前記蓄電池列同士を接続したときに流れる循環電流のピーク値(Ip)の計測値と、接続する前の前記電圧差(ΔV)の計測値と、に基づいて算出した値であってもよい。
【0027】
〔6〕上記蓄電システムにおいて、前記記憶部に記憶される前記内部抵抗は、前記蓄電池列を定電流で充電したときの当該蓄電池列の電圧の変化量と充電電流と基づいて算出された充電時の抵抗と、前記蓄電池列を定電流で放電したときの当該蓄電池列の電圧の変化量と放電電流とに基づいて算出された放電時の抵抗との合成抵抗であってもよい。
【0028】
〔7〕上記蓄電システムにおいて、前記記憶部に記憶される前記許容電流は、前記蓄電池列に許容された電流の最大値に対応する値、または前記蓄電池列に接続される機器に許容された電流の最大値に対応する値であってもよい。
【0029】
〔8〕上記蓄電システムにおいて、前記蓄電池列の電圧に関連する計測値は、接続対象の前記蓄電池列の充電終了後および放電終了後からの経過時間(T)であってもよい。
【0030】
〔9〕上記蓄電システム(100A)において、前記制御装置(1A)は、前記蓄電池列の充電終了後および放電終了後に前記蓄電池列の電圧が安定するまでの時間の基準値を示す安定基準時間(Ts)を記憶する記憶部(14A)と、前記蓄電池列同士の接続の可否を判定する判定部(12A)と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記スイッチのオン/オフを制御するスイッチ制御部(13)とを有し、前記判定部は、接続対象の前記蓄電池列の充電終了後および放電終了後からの経過時間(T)を計測し、前記経過時間の計測値が前記記憶部に記憶された前記安定基準時間より大きい場合に、前記スイッチ制御部に対して前記蓄電池列同士の接続を許可し、前記経過時間の計測値が前記記憶部に記憶された前記安定基準時間より小さい場合に、前記スイッチ制御部に対して前記蓄電池列同士の接続を許可しないように構成されていてもよい。
【0031】
〔10〕少なくとも一つの鉛蓄電池セル(200)を含む蓄電池列(20_1~20_n)の内部抵抗(R,R1,R2)の計測方法であって、2つの前記蓄電池列間の電圧差(ΔV)を計測する電圧差計測ステップ(S51)と、前記2つの前記蓄電池列同士を接続したときに流れる循環電流のピーク値(Ip)を計測する循環電流計測ステップ(S52)と、前記電圧差計測ステップで計測した前記電圧差と、前記循環電流計測ステップで計測した前記循環電流とに基づいて、前記蓄電池列の内部抵抗を算出する内部抵抗算出ステップ(S53)とを含むことを特徴とする。
【0032】
〔11〕上記計測方法において、前記内部抵抗算出ステップは、前記循環電流計測ステップで計測した前記循環電流のピーク値と前記電圧差計測ステップで計測した前記電圧差との関係を示すグラフの傾きに基づいて、前記蓄電池列の内部抵抗を算出するステップを含んでもよい。
【0033】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0034】
≪本発明に係る蓄電池列間の接続制御の概要≫
本発明に係る蓄電池列間の接続制御の概要について説明する。
先ず、循環電流の発生原理について簡単に説明する。
循環電流は、蓄電池列の充電または放電後の電圧の緩和状態の差に起因して発生する場合と、接続する蓄電池列のSOCの差に起因して発生する場合とが考えられる。以下、図1乃至図3を用いてそれぞれの場合について説明する。
【0035】
先ず、蓄電池列の電圧の緩和状態の差に起因して循環電流が発生する場合について説明する。
一般に、蓄電池の充電停止後または放電停止後、蓄電池の電圧が変化して一定の値に収束すること(電圧が緩和すること)が知られている。ここでは、蓄電池の均等充電を例にとり説明する。
【0036】
図1は、鉛蓄電池の均等充電時の電圧と電流との関係を示す図である。
図1において、縦軸は均等充電時に流れる鉛蓄電池の電流(充電電流)と、鉛蓄電池の電圧(出力電圧)を表し、横軸は時間を表している。
【0037】
ここで、均等充電とは、鉛蓄電池の劣化の一因であるサルフェーションを除去するために定期的に鉛蓄電池を満充電状態にする充電制御である。均等充電の方式としては、例えば、定電流-定電圧充電(CCCV)方式と多段充電方式が知られている。
【0038】
定電流-定電圧充電方式は、初めに一定の電流値による充電(以下、「定電流充電」または「CC充電」とも称する。)を行い、蓄電池電圧が所定の閾値に達した後に、一定の電圧による充電(以下、「定電圧充電」または「CV充電」とも称する。)を行って鉛蓄電池を満充電状態まで回復させる充電方式である。
【0039】
多段充電方式は、初めに定電流充電を行い、蓄電池電圧が所定の閾値に達した後に前回の電流値よりも低い電流値での定電流充電を行うことを複数回繰り返し、最後に、所定の電圧で定電圧充電を行って鉛蓄電池を満充電状態まで回復させる充電方式である。
【0040】
いずれの充電方式も、均等充電の後半では、定電圧充電が行われる。図1には、一例として、定電流-定電圧充電方式で均等充電を行ったときの鉛蓄電池の充電電流と電圧の時間的な変化が示されている。
【0041】
図1に示すように、鉛蓄電池では、充電状態(state of charge:SOC)と電圧とは必ずしも比例していない。例えば、均等充電の末期には急激に電圧が上昇し、充電停止後は、長い時間をかけて電圧が緩和して所定の電圧Veqに収束する。
【0042】
図2は、蓄電池列の電圧の緩和状態の差に起因して発生する循環電流を示す図である。同図には、定電流-定電圧充電方式による均等充電完了後の二つの蓄電池列を接続したときに流れる循環電流とそれぞれの蓄電池列の電圧が示されている。
【0043】
図2において、縦軸は電流と電圧をそれぞれ表し、横軸は時間を表している。同図において、参照符号301は、接続対象の二つの蓄電池列のうち、先に均等充電(CV充電)が完了した第1の蓄電池列の電圧の時間的な変化を示し、参照符号302は、接続対象の二つの蓄電池列のうち、後に均等充電(CV充電)が完了した第2の蓄電池列の電圧の時間的な変化を示している。また、参照符号401は、第1の蓄電池列と第2の蓄電池列との間に流れる電流(循環電流)の時間的な変化を示している。
【0044】
上述したように、均等充電の鉛蓄電池の出力電圧は、長い時間をかけて緩和する。図2に示すように、第1および第2の蓄電池列の均等充電が異なるタイミングで終了した場合、第1の蓄電池列の電圧の緩和状態と第2の蓄電池列の電圧の緩和状態とが相違するため、第1の蓄電池列の電圧と第2の蓄電池列の電圧との間に電圧差ΔVが生じる。そのため、この緩和期間に、第1の蓄電池列と第2の蓄電池列とを接続すると、大きな循環電流が流れる虞がある。
【0045】
次に、蓄電池列のSOCの差に起因して循環電流が発生する場合について説明する。
図3は、蓄電池列のSOCの差に起因して発生する循環電流を示す図である。同図には、互いに異なるSOCの二つの蓄電池列を接続したときに流れる循環電流と電圧とが示されている。
【0046】
図3において、縦軸は電流と電圧を表し、横軸は時間を表している。
同図において、参照符号311は、接続対象の二つの蓄電池列のうち、SOCが高い方の第1の蓄電池列の電圧の時間的な変化を示し、参照符号312は、接続対象の二つの蓄電池列のうち、SOCが低い方の第2の蓄電池列の電圧の時間的な変化を示している。また、参照符号411は、第1の蓄電池列と第2の蓄電池列との間に流れる電流(循環電流)の時間的な変化を示している。
【0047】
蓄電システムの初期導入時や再起動時において、複数の蓄電池列を接続する場合、蓄電池列のSOCが互いに相違し、蓄電池列間で電圧が互いに相違している場合がある。例えば、図3に示すように、SOC(電圧)が互いに相違する第1の蓄電池列と第2の蓄電池列とを接続したとき、大きな循環電流が流れる虞がある。
【0048】
上述したように、循環電流は、接続する蓄電池列の電圧の緩和状態の差に起因して発生する場合と、接続する蓄電池列のSOCの差に起因して発生する場合とがあるが、いずれの場合においても、循環電流の大きさは、蓄電池列間の電圧差ΔVの大きさと内部抵抗とによって決まる。
【0049】
また、図2および図3に示すように、電圧の異なる蓄電池列同士を接続した時に流れる循環電流の実測値は、予想よりも小さく、且つ比較的早く減衰する場合があることを、本願発明者らは見出した。
【0050】
そこで、本発明に係る蓄電池列間の接続制御では、蓄電システムにおいて、解列されている蓄電池列同士を互いに並列に接続するとき、接続対象の蓄電池列の電圧に関連する計測値に基づいて、蓄電池列同士の接続の可否を判定する。
【0051】
ここで、電池列の電圧に関連する計測値としては、接続対象の蓄電池列間の電圧差や、接続対象の蓄電池列の充電終了後および放電終了後からの経過時間等を例示することができる。
本明細書では、実施の形態1として、接続対象の蓄電池列間の電圧差に基づいて蓄電池列同士の接続を制御する蓄電システムを例示し、実施の形態2として、蓄電池列の充電終了後および放電終了後からの経過時間に基づいて蓄電池列同士の接続を制御する蓄電システムを例示して、本発明に係る蓄電池列間の接続制御について詳細に説明する。
【0052】
≪実施の形態1≫
図4は、実施の形態1に係る蓄電システムの構成を示す図である。
同図に示される蓄電システム100は、例えばサイクルユースの鉛蓄電池を備えた蓄電システムである。蓄電システム100は、例えば、通常時に電力供給部6(商用電源)から負荷7に給電し、停電の発生時には、電源バックアップ用の鉛蓄電池から負荷7に給電する。
【0053】
電力供給部6は、蓄電システム100および負荷7に電力を供給する機能部である。電力供給部6は、例えば、商用電源である。なお、電力供給部6は、商用電源に加えて、太陽光発電(PV:Photovoltaics)等の再生可能エネルギーに基づいて電力を発生させる発電設備を有していてもよい。
【0054】
蓄電システム100は、蓄電池モジュール2、交直変換装置3、スイッチ4_1~4_n(nは2以上の整数)、ブレーカ5_1~5_nおよび制御装置1を備えている。
【0055】
蓄電池モジュール2は、電力を充放電可能に構成された鉛蓄電池を含む。蓄電池モジュール2は、少なくとも一つの鉛蓄電池セルを含む蓄電池列を複数並列に接続した多並列蓄電池モジュールである。
【0056】
具体的に、蓄電池モジュール2は、図4に示すように、m(mは1以上の整数)個の鉛蓄電池セル200が直列に接続された複数の蓄電池列20_1~20_nを並列に接続した構造を有している。以下、蓄電池モジュール2を「多並列蓄電池モジュール2」とも称する。また、それぞれの蓄電池列20_1~20_nを区別しない場合には、単に、「蓄電池列20」と表記する場合がある。
【0057】
また、蓄電池モジュール2は、各蓄電池列20_1~20_nの出力電圧(蓄電池電圧)を計測する電圧センサ201を蓄電池列20_1~20_n毎に有している。なお、各蓄電池列20_1~20_nの充電電流および放電電流を計測する電流センサを更に有していてもよい。
【0058】
交直変換装置(以下、「PCS(Power Conditioning System)」とも称する。)3は、後述する制御装置1によって制御され、電力供給部6、蓄電池モジュール2、および負荷7の間で相互に電力を変換し、電力供給部6、蓄電池モジュール2、および負荷7の間での電力の授受を制御する電力変換部である。
【0059】
例えば、PCS3は、電力供給部6からの交流電力(AC)を直流電力(DC)に変換して蓄電池モジュール2に供給する。PCS3は、例えば、DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ(AC/DC)、およびスイッチ回路等を含んで構成されている。
【0060】
スイッチ4_1~4_nは、PCS3と多並列蓄電池モジュール2との間の接続と遮断を切り替える装置である。図4に示すように、スイッチ4_1~4_nは、蓄電池列20_1~20_n毎に対応して設けられ、対応する蓄電池列20_1~20_nとPCS3との間に直列に接続されている。スイッチ4_1~4_nは、例えば電磁スイッチ(リレー)である。
【0061】
スイッチ4_1~4_nは、後述する制御装置1によってオン/オフが制御される。これにより、蓄電池列20_1~20_nは、蓄電池列20_1~20_n毎に、PCS3との間の接続と遮断が切り替え可能になる。
【0062】
なお、それぞれのスイッチ4_1~4_nを区別しない場合には、単に、「スイッチ4」と表記する場合がある。
【0063】
ブレーカ5_1~5_nは、蓄電池列20_1~20_n毎に設けられ、PCS3と各蓄電池列20_1~20_nとの間に過電流が流れた場合に、PCS3と各蓄電池列20_1~20_nとの間を開放する装置である。具体的に、ブレーカ5_1~5_nは、スイッチ4_1~4_nとそれぞれ直列に接続される。
【0064】
なお、それぞれのブレーカ5_1~5_nを区別しない場合には、単に、「ブレーカ5」と表記する場合がある。
【0065】
制御装置1は、蓄電システム100全体の統括的な制御を行う装置である。制御装置1は、各蓄電池列20_1~20_nの状態を、蓄電池列20_1~20_n毎に監視し、スイッチ4_1~4_nのオン/オフを制御する。
【0066】
図4に示すように、制御装置1は、蓄電池管理部10および監視部11を有する。
蓄電池管理部10は、蓄電システム100の各構成要素の統括的な制御を司る装置である。蓄電池管理部10は、例えばEMS(Energy Management System)である。
【0067】
蓄電池管理部10は、例えば、ハードウェア資源としての、CPU(central processing unit)等プロセッサと、RAM(Random access memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、I/F回路等の周辺回路とを有するデータ処理装置において、上記記憶装置に記憶されたプログラムに従って上記プロセッサが各種演算を実行して周辺回路を制御することにより、実現される。
【0068】
蓄電池管理部10は、PCS3を駆動することにより、多並列蓄電池モジュール2の充放電制御を行う。例えば、蓄電池管理部10は、監視部11による多並列蓄電池モジュール2の監視結果に基づいて、定電流―定電圧充電(CCCV)方式等の各種充電方式で多並列蓄電池モジュール2の均等充電を実行する。
【0069】
監視部11は、多並列蓄電池モジュール2の電圧センサ201等によって計測された物理量を逐次取得し、当該物理量に基づいて多並列蓄電池モジュール2の状態を監視するデータ処理装置である。監視部11は、例えば、BMU(Battery Management Unit)である。
【0070】
具体的に、監視部11は、蓄電池列20_1~20_nの状態を蓄電池列20_1~20_n毎に監視し、スイッチ4_1~4_nのオン/オフを制御する。より具体的には、監視部11は、解列された蓄電池列20同士を互いに並列に接続するとき、接続対象の蓄電池列20の電圧に関連する計測値に基づいて、接続対象の蓄電池列20に対応するスイッチ4のオン/オフを制御する。
【0071】
図4に示すように、監視部11は、主な機能ブロックとして、スイッチ制御部13、判定部12、および記憶部14を備えている。これらの機能ブロックは、監視部11としてのデータ処理装置が有するハードウェア資源とソフトウェアとが協働することによって実現される。
【0072】
ここで、監視部11のハードウェア構成について説明する。
図5は、監視部11のハードウェア構成を示す図である。
監視部11は、ハードウェア資源として、演算装置101、記憶装置102、バス103、デジタル接点入出力回路(DIO)104、およびアナログ入力回路(AI)105を備えている。
【0073】
演算装置101は、CPUやDSP(digital signal processor)等のプロセッサによって構成されている。記憶装置102は、演算装置101に各種のデータ処理を実行させるためのプログラム1021と、演算装置101によるデータ処理で利用されるパラメータや演算結果等のデータ1022とを記憶する記憶領域を有し、例えばROM、RAM、HDD、およびフラッシュメモリ等から構成されている。
【0074】
本実施の形態に係る蓄電池列間の接続制御のためのプログラムは、例えばプログラム1021として記憶装置102に記憶されている。
【0075】
バス103は、演算装置101、記憶装置102、デジタル接点入出力回路104、およびアナログ入力回路105を相互に接続し、これらの装置間でデータの授受を可能にする機能部である。
【0076】
デジタル接点入出力回路(DIO)104は、監視部11の外部に設けられた外部機器から出力されたデジタル信号を入力するとともに、外部機器へデジタル信号を出力するための回路である。例えば、デジタル接点入出力回路104は、スイッチ4_1~4_nのオン/オフを制御するためのデジタル信号を出力可能である。
【0077】
アナログ入力回路(AI)105は、外部機器から出力されたアナログ信号を入力し、デジタル信号に変換する回路である。例えば、アナログ入力回路105は、電圧センサ201によって検出された各蓄電池列20_1~20_nの電圧を示すアナログ信号を入力し、デジタル信号に変換してバス103を介して記憶装置102等に記憶する。
【0078】
監視部11としてのデータ処理装置は、演算装置101が記憶装置102に記憶したプログラム1021に従って演算を実行して、記憶装置102、バス103、デジタル接点入出力回路104、およびアナログ入力回路105を制御することにより、図4に示した各機能部、すなわち、判定部12、スイッチ制御部13、および記憶部14が実現される。
【0079】
次に、監視部11の各機能ブロックについて詳細に説明する。
図4において、記憶部14は、蓄電池列間の接続制御のための各種データを記憶する機能部である。例えば、記憶部14には、内部抵抗情報141と許容電流情報142とが記憶されている。
【0080】
内部抵抗情報141は、予め計測された蓄電池列20の内部抵抗Rの値を示す情報である。内部抵抗Rの計測方法については、後述する。
【0081】
許容電流情報142は、蓄電池列20間の接続の可否を判定するための基準となる、循環電流の許容値(以下、「許容電流Iper」とも表記する。)を示す情報である。
【0082】
許容電流Iperは、例えば、蓄電池列20に許容された電流(充電電流および放電電流)の最大値に対応する値、または、ケーブル、端子台、スイッチ4(リレー)、およびブレーカ5等の蓄電池列20に接続される機器に許容された電流の最大値(定格電流)に対応する値であることが好ましい。以下に一例を示す。
【0083】
例えば、多並列蓄電池モジュール2が、196個(m=196)の鉛蓄電池セル200を直列に接続した10個(n=10)の蓄電池列20_1~20_10を並列に接続した構造を有し、サイクル寿命に影響を与えない範囲で許容される鉛蓄電池の最大の充電電流が200A、最大の放電電流が400Aであるとする。また、交直変換装置3は、入力電圧範囲が最大300V、定格電流1000Aであり、ブレーカ5_1~5_nは、定格電流200Aであるとする。
【0084】
この場合、交直変換装置3の定格電流が1000Aであり、10個の蓄電池列20_1~20_10が並列に接続されているため、蓄電池列20の一列あたりに許容される電流は最大100Aと算出することができる。
【0085】
しかしながら、蓄電システム100では、何らかの原因で蓄電池列20_1~20_nの一部が解列され、並列数が初期設定以下であった場合にも所定の出力(kW)を発生させる必要がある。そこで、蓄電池列20の許容電流Iperを、サイクル寿命に影響を与えない範囲で許容される鉛蓄電池の最大の電流(充電電流200A、放電電流400A)に合わせる。すなわち、この場合、許容電流Iperを“200A”とする。
【0086】
なお、この場合、交直変換装置3とブレーカ5_1~5_nと接続されるケーブルや端子台等の機器も許容電流Iper以上の定格電流(200A)を有するものを用いる。
【0087】
判定部12は、蓄電池列20同士の接続の可否を判定する機能部である。
判定部12は、接続対象の蓄電池列20の電圧の計測値に基づいて算出した接続対象の蓄電池列20間の電圧差ΔVと記憶部14に記憶された内部抵抗Rとに基づいて、接続対象の蓄電池列20同士を接続したときに流れる循環電流の推定値Iceを算出する。
【0088】
判定部12は、循環電流の推定値Iceが記憶部14に記憶された許容電流Iperより小さい場合に、スイッチ制御部13に対して蓄電池列20同士の接続を許可し、循環電流の推定値Iceが記憶部14に記憶された許容電流Iperより大きい場合に、スイッチ制御部13に対して蓄電池列20同士の接続を許可しない。
【0089】
スイッチ制御部13は、判定部12からの指示(判定結果)に応じて、スイッチ4_1~4_nのオン/オフを切り替える機能部である。例えば、スイッチ4_1~4_nがリレーである場合、スイッチ制御部13は、監視部11または蓄電池管理部10からの指示に応じてリレーのオン/オフを切り替えるための駆動信号をスイッチ4_1~4_nに出力する。
【0090】
次に、上述した制御装置1による蓄電池列間の接続制御方法の流れを説明する。
図6は、実施の形態1に係る蓄電システム100による蓄電池列間の接続制御方法の流れを示すフロー図である。
【0091】
ここでは、一例として、均等充電が完了した蓄電池列20から順にスイッチ4を制御してPCS3から解列し、全ての蓄電池列20の均等充電が完了した後に、各蓄電池列20を接続する場合について説明する。
【0092】
図6において、先ず、制御装置1は、蓄電池列20_1~20_nの再接続が必要か否かを判定する(ステップS1)。例えば、全ての蓄電池列20_1~20_nの均等充電が完了していない場合には、制御装置1は、蓄電池列20_1~20_nの再接続をすべきでないと判定し、全ての蓄電池列20_1~20_nの均等充電が完了するまで待機する。
【0093】
一方、ステップS1において、全ての蓄電池列20_1~20_nの均等充電が完了した場合には、制御装置1は、解列している蓄電池列20_1~20_nの再接続が必要と判定し、蓄電池列の接続可否判定処理を実行する(ステップS2)。
【0094】
図7は、実施の形態1に係る蓄電池列の接続可否判定処理(ステップS2)の流れを示すフロー図である。
ステップS2において、先ず、制御装置1は、接続対象の蓄電池列20間の電圧差ΔVを算出する(ステップS21)。
例えば、図4において、蓄電池列20_1と蓄電池列20_2とを接続する場合を考える。この場合、先ず、制御装置1の判定部12が、電圧センサ201によって計測した蓄電池列20_1の電圧V1の計測値と、電圧センサ201によって計測した蓄電池列20_2の電圧V2の計測値とを取得する。次に、判定部12が、蓄電池列20_1の電圧V1の計測値と蓄電池列20_2の電圧V2の計測値とに基づいて、蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との電圧差ΔV(=|V1-V2|)を算出する。
【0095】
ステップS21の後、制御装置1が、接続対象の蓄電池列20間に流れる循環電流の推定値Iceを算出する(ステップS22)。上述の例の場合、判定部12が、ステップS21で算出した電圧差ΔVと記憶部14に記憶されている内部抵抗Rとに基づいて、蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との間に流れる循環電流の推定値Iceを算出する。例えば、判定部12は、数式(Ice=ΔV/R)に基づいて、循環電流の推定値Iceを算出する。
【0096】
次に、制御装置1の判定部12が、循環電流の推定値Iceと、記憶部14に記憶されている許容電流Iperとを比較する(ステップS23)。
例えば、上述の例の場合、蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との間に流れる循環電流の推定値Iceが許容電流Iperよりも小さい場合、判定部12は、蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との接続が可能と判定する(ステップS24)。
【0097】
一方、蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との間に流れる循環電流の推定値Iceが許容電流Iperよりも大きい場合、判定部12は、蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との接続が不可と判定する(ステップS25)。
以上の手順により、蓄電池列の接続可否判定処理(ステップS2)が実行される。
【0098】
図6において、ステップS2の後、制御装置1は、蓄電池列の接続可否判定処理(ステップS2)の判定結果に基づいて、蓄電池列20同士の接続制御を行う(ステップS3)。
例えば、上述の例において、接続可否判定処理によって蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との接続が可能と判定した場合(ステップS24の場合)には、判定部12が、スイッチ制御部13に対して蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との接続を許可し、スイッチ制御部13に対してスイッチ4_1,4_2のオンを指示する(ステップS4)。これにより、スイッチ制御部13は、蓄電池列20_1に対応するスイッチ4_1と蓄電池列20_2に対応するスイッチ4_2をそれぞれオンさせる。
【0099】
一方、上述の例において、接続可否判定処理によって蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との接続が不可と判定した場合(ステップS25の場合)には、判定部12が、スイッチ制御部13に対して蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との接続を許可せず、スイッチ制御部13に対してスイッチ4_1,4_2のオフを指示する(ステップS5)。これにより、スイッチ制御部13は、蓄電池列20_1に対応するスイッチ4_1と蓄電池列20_2に対応するスイッチ4_2がそれぞれオフした状態を継続させる。
以上の手順により、制御装置1による、蓄電池列間の接続制御が行われる。
【0100】
次に、実施の形態1に係る、蓄電池の内部抵抗の計測方法について説明する。
図8は、実施の形態1に係る、蓄電池の内部抵抗の計測方法を説明するための図である。図9は、実施の形態1に係る、蓄電池の内部抵抗の計測方法の流れを示すフロー図である。
【0101】
図8図9に示すように、先ず、電圧が互いに異なる二つの鉛蓄電池を準備する(ステップS50)。例えば、対象となる蓄電システムで使用する鉛蓄電池と同じ種類の二つの鉛蓄電池を用意し、用意した二つの鉛蓄電池を十分に時間をかけて満充電にする。その後、夫々の鉛蓄電池を0.1CA相当の電流で異なる時間放電させ、放電終了後、二つの鉛蓄電池の電池電圧が安定するまで所定時間(例えば16時間)放置する。これにより、SOCが互いに異なる二つの鉛蓄電池を準備することができる。
【0102】
次に、所定時間の放置した夫々の鉛蓄電池の電圧Vs1,Vs2を測定し、電圧差ΔVs(=|Vs1-Vs2|)を求める(ステップS51)。
【0103】
次に、これらの鉛蓄電池を互いに接続し、鉛蓄電池間に流れる循環電流のピーク値Ipを測定する(ステップS52)。
【0104】
最後に、鉛蓄電池の内部抵抗を算出する(ステップS53)。例えば、ステップS50~S52を繰り返し行うことによって、電圧差ΔVと循環電流のピーク値Ipとの関係を示すグラフ(関数)を作成し、そのグラフの傾きに基づいて内部抵抗Rを算出する。
以上の手順により、蓄電池の内部抵抗Rを計測することができる。
【0105】
上述した計測方法によって計測された内部抵抗Rは、充電側の鉛蓄電池(電圧が低い方の鉛蓄電池)と放電側の鉛蓄電池(電圧が高い方の鉛蓄電池)の双方の抵抗値が反映されている。また、この計測方法によって計測された内部抵抗Rは、蓄電システム100に適用される蓄電池と同種の蓄電池を用いて実際に発生した循環電流の計測値に基づいているため、従来の方法によって計測された内部抵抗の値よりも正確である。
【0106】
ところで、上述の例において計測された内部抵抗Rは、蓄電システム100の初期導入時や定期点検時等において、鉛蓄電池の充電または放電が一定の時間以上行われず、電圧が十分緩和した状態の鉛蓄電池の内部抵抗に相当するものである。
すなわち、上述の例(図8および図9)において計測された内部抵抗は、蓄電池列のSOCの差に起因して循環電流が発生する場合(図3参照)の内部抵抗R1に相当する。
【0107】
一方、蓄電池列の電圧の緩和状態の差に起因して循環電流が発生する場合(図2参照)の内部抵抗R2は、以下のように求めることができる。例えば、図9に示すフロー図におけるステップS50において、充電停止後または放電停止後の電圧緩和途中の状態の鉛蓄電池を二つ準備し、これらの鉛蓄電池を用いてステップS51~S53の処理を行う。これにより、接続する蓄電池列の電圧の緩和状態の差に起因して発生する場合(図2参照)の内部抵抗R2を求めることができる。
【0108】
上述した手法により計測された内部抵抗Rの値は、内部抵抗情報141として記憶部14に予め記憶され、上述した蓄電池列間の接続制御(図6参照)における接続可否判定処理(図7参照)において用いられる。例えば、上述した内部抵抗R1および内部抵抗R2の何れか一方を内部抵抗Rとして記憶部14に記憶してもよいし、内部抵抗R1と内部抵抗R2の平均値を内部抵抗Rとして記憶部14に記憶してもよい。あるいは、内部抵抗R1と内部抵抗R2の双方を記憶部14に記憶してもよい。
【0109】
内部抵抗情報141として、内部抵抗R1と内部抵抗R2の双方を記憶する場合、制御装置1は、例えば、内部抵抗R1と内部抵抗R2とを使い分けて接続可否判定処理(ステップS2)を実行してもよい。以下、具体的に説明する。
【0110】
例えば、接続可否判定処理(ステップS2)におけるステップS22において循環電流の推定値Iceを算出する際に、蓄電池列の電圧の緩和状態に差が生じている第1の状態と、蓄電池列のSOCに差が生じている第2の状態のいずれの状態であるかを判定し、第1の状態の場合には、上述したステップS22において内部抵抗R1を用いて循環電流の推定値Ice(=ΔV/R1)を算出し、第2の状態の場合には、上述したステップS22において内部抵抗R2を用いて循環電流の推定値Ice(=ΔV/R2)を算出してもよい。
【0111】
以上、実施の形態1に係る蓄電システム100は、複数の蓄電池列20_1~20_nを並列に接続した多並列蓄電池モジュール2と、蓄電池列20_1~20_n毎に対応して設けられ、対応する蓄電池列20と交直変換装置3との間に直列に接続されたスイッチ4_1~4_nと、制御装置1とを備える。制御装置1は、解列された蓄電池列20同士を互いに並列に接続するとき、接続対象の蓄電池列20の電圧に関連する計測値に基づいて、接続対象の蓄電池列20に対応するスイッチ4のオン/オフを制御する。
【0112】
これによれば、従来技術のように循環電流を抑えるために複数の回路を蓄電池列毎に設ける必要がないので、より簡単な構成で、蓄電池列同士の接続を安全に行うことが可能となる。
【0113】
例えば、接続対象の蓄電池列20の電圧に関連する計測値として、接続対象の蓄電池列20間の電圧差ΔVを計測し、その情報に基づいて蓄電池列20間の電圧差ΔVが小さくなった状態を見極めて蓄電池列20同士を接続することにより、従来技術のように複雑な回路構成を採用することなく、循環電流による蓄電池および蓄電池周辺の機器への悪影響を防止することが可能となる。
【0114】
具体的には、蓄電システム100において、判定部12が、接続対象の蓄電池列の電圧の計測値に基づいて算出した電圧差ΔVと予め記憶しておいた内部抵抗Rの値とに基づいて、接続対象の蓄電池列20同士を接続したときに流れる循環電流の推定値Iceを算出し、推定値Iceが予め記憶しておいた許容電流Iperより小さい場合に、判定部12がスイッチ制御部13に対して蓄電池列20同士の接続を許可し、推定値Iceが許容電流Iperより大きい場合に、判定部12がスイッチ制御部13に対して蓄電池列20同士の接続を許可しない。
【0115】
これによれば、蓄電システム100の稼働時に、蓄電池および蓄電池周辺の機器への悪影響を及ぼすような大きな循環電流が流れるような状況での蓄電池列同士の接続を確実に防止することが可能となる。
【0116】
また、上述したように、蓄電システム100において、記憶部14に記憶される内部抵抗は、蓄電池列20の電圧の緩和状態に差が生じている第1の状態における内部抵抗R1(第1の抵抗)と、蓄電池列のSOCに差が生じている第2の状態における内部抵抗R2(第2の抵抗)とを含み、判定部12が、接続対象の蓄電池列20が第1の状態であると判定した場合に、内部抵抗R1を用いて循環電流の推定値Iceを算出し、接続対象の蓄電池列20が第2の状態であると判定した場合に、内部抵抗R2を用いて循環電流の推定値Iceを算出してもよい。
【0117】
これによれば、蓄電池列の電圧の緩和状態に差が生じている場合と蓄電池列のSOCに差が生じている場合とを区別して循環電流を推定するので、蓄電池列同士の接続をより安全に行うことが可能となる。
【0118】
また、蓄電システム100において、記憶部14に記憶される内部抵抗の値は、蓄電池列20同士を接続したときに流れる循環電流のピーク値の計測値と、接続する前の蓄電池列20間の電圧差ΔVの計測値とに基づいて算出した値である。
【0119】
これによれば、上述したように、従来の方法よりも正確に計測した内部抵抗を用いているので、循環電流をより正確に推定することができ、蓄電池列同士の接続をより安全に行うことが可能となる。
【0120】
なお、上記実施の形態では、実際に循環電流を発生させて内部抵抗を計測する方法を例示したが、これに限られない。例えば、蓄電システム100で用いられる蓄電池と同じ種類の1つの蓄電池(蓄電池列)に定電流源を接続して定電流で充電したときの電圧の変化量と充電電流とに基づいて充電時の蓄電池の抵抗を算出するとともに、同一の蓄電池(蓄電池列)に電子負荷を接続して定電流で放電したときの電圧の変化量と放電電流とに基づいて放電時の蓄電池の抵抗を算出する。そして、算出した充電時の抵抗と放電時の抵抗との合成抵抗(抵抗の和)を内部抵抗Rとしてもよい。
【0121】
これによれば、より正確な内部抵抗を用いて循環電流を推定することができるので、蓄電池列同士の接続をより安全に行うことが可能となる。
【0122】
また、蓄電システム100において、蓄電池列の接続可否判定処理(ステップS2)で用いる許容電流Iperは、蓄電池列20に許容された電流(充電電流および放電電流)の最大値に対応する値、または蓄電池列20に接続される機器(ブレーカ5、ケーブル、および端子台等)に許容された電流の最大値(定格電流)に対応する値に設定することが好ましい。これによれば、循環電流による蓄電池および蓄電池周辺の機器への悪影響を確実に防止することが可能となる。
【0123】
≪実施の形態2≫
図10は、実施の形態2に係る蓄電システムの構成を示す図である。
同図に示される蓄電システム100Aは、接続対象の蓄電池列間の電圧差ΔVではなく、蓄電池列の充電終了後および放電終了後からの経過時間に基づいて蓄電池列同士の接続を制御する点において、実施の形態1に係る蓄電システムと相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る蓄電システム100Aと同様である。
【0124】
蓄電システム100Aにおいて、制御装置1の記憶部14Aには、予め、安定基準時間情報143が記憶される。安定基準時間情報143とは、蓄電池列20の充電終了後および放電終了後に当該蓄電池列20の電圧が安定するまでの時間の基準値(「安定基準時間Ts」とも表記する。)の情報である。
【0125】
図11は、安定基準時間Tsを説明するための図である。
同図において、横軸は時間であり、縦軸は電圧である。参照符号601は、定電流-定電圧充電方式による均等充電の完了後の鉛蓄電池の電圧の時間的な変化を表している。
【0126】
図11に示すように、時刻t1において均等充電が完了した鉛蓄電池は、長い時間をかけて電圧が緩和して所定の電圧Veqに収束する。すなわち、複数の蓄電池列が互いに異なるタイミングで均等充電が終了した場合であっても、時間が経過するにつれて、蓄電池列間の電圧差ΔVは縮小していく。そこで、実施の形態2に係る蓄電システム100Aでは、充電終了後および放電終了後に接続対象の蓄電池列20の電圧が許容電圧Vperまで低下するのを待って、蓄電池列同士の接続を許可する制御を行う。
【0127】
安定基準時間Tsは、以下に示す方法によって計測することができる。
先ず、電圧が互いに異なる二つの鉛蓄電池を準備する。例えば、対象となる蓄電システムで使用する鉛蓄電池と同じ種類の二つの鉛蓄電池を用意し、用意した二つの鉛蓄電池の充電を同時に開始する。そして、一方の鉛蓄電池の充電を停止してから一定時間の経過後に、他方の鉛蓄電池の放電を停止する。
【0128】
次に、鉛蓄電池の内部抵抗Rを算出する。具体的には、二つの鉛蓄電池の電圧が緩和している期間に、当該二つの鉛蓄電池間の電圧差ΔVを計測した上で、上記二つの鉛蓄電池同士を接続し、循環電流のピーク値Ipを計測する。そして、鉛蓄電池の内部抵抗Rを、計測した電圧差ΔVと循環電流のピーク値Ipとの比(R=ΔV/Ip)に基づいて算出する。
【0129】
次に、二つの鉛蓄電池間の許容電圧差ΔVperを算出する。具体的には、実施の形態1と同様の許容電流Iperと、上述した手法によって算出した内部抵抗Rとに基づいて、数式(ΔVper=Iper×R)により、許容電圧差ΔVperを算出する。
【0130】
また、鉛蓄電池の緩和後の電圧Veqを計測する。例えば、鉛蓄電池の均等充電後、16時間経過したときの鉛蓄電池の電圧を計測し、その計測値を電圧Veqとする。
【0131】
次に、鉛蓄電池の充電完了後、許容電圧Vperまで低下する時間を計測する。
ここで、許容電圧Vperは、図11に示すように、Vper=Veq+ΔVperで表される電圧であり、この電圧まで鉛蓄電池の電圧が低下すれば、循環電流が流れたとしても鉛蓄電池等に悪影響を与えないと判定する基準となる電圧である。
【0132】
具体的には、一つの鉛蓄電池の均等充電の完了した時点(t1)で計時を開始し、その鉛蓄電池の電圧がVperに到達したときの経過時間を安定基準時間Tsとする。したがって、この安定基準時間Tsの経過後に蓄電池列同士を接続した場合、許容電流Iper以下の循環電流しか流れないので、循環電流による蓄電池および蓄電池周辺の機器へ悪影響を防止することが可能となる。
【0133】
以上の方法により計測した安定基準時間Tsの情報を、安定基準時間情報143として制御装置1Aの記憶部14Aに予め記憶しておく。
【0134】
なお、上述の方法は、蓄電池の充電時の安定基準時間Tsの計測方法であるが、蓄電池の放電時の安定基準時間Tsについても同様の手順で計測することが可能である。すなわち、鉛蓄電池の放電後の内部抵抗R、電圧Veq、許容電圧Vper、および許容電圧差ΔVperを算出した上で、上記と同様の方法により、蓄電池の放電時の安定基準時間Tsを計測すればよい。
【0135】
実施の形態2に係る蓄電システム100Aにおいて、判定部12Aは、接続対象の蓄電池列20の充電終了後および放電終了後からの経過時間Tを計測し、経過時間Tの計測値が記憶部14に記憶された安定基準時間Tsより大きい場合に、スイッチ制御部13に対して蓄電池列20同士の接続を許可し、経過時間Tの計測値が安定基準時間Tsより小さい場合に、スイッチ制御部13に対して蓄電池列20同士の接続を許可しない。
【0136】
例えば、判定部12Aは、各蓄電池列20_1~20_nの電流(充電電流および放電電流)と電圧の監視結果やPSC3との通信により、各蓄電池列20_1~20_nの充電および放電の停止を検出する。判定部12Aは、充電および放電の停止を検出に応じて蓄電池列20_1~20_n毎に計時を開始し、各蓄電池列20_1~20_nの充電経過後および放電経過後の経過時間Tをそれぞれ計測する。そして、監視対象の蓄電池列20を他の蓄電池列20と接続する必要がある場合には、監視対象の蓄電池列20の経過時間Tと安定基準時間Tsとを比較し、経過時間Tが安定基準時間Tsを超えるまでは、監視対象の蓄電池列20を他の蓄電池列20に接続することを禁止する。
【0137】
次に、実施の形態2に係る蓄電池列間の接続制御方法の流れについて説明する。
実施の形態2に係る蓄電池列間の接続制御方法の全体的な流れは、実施の形態1と同様であり(図6参照)、蓄電池列の接続可否判定処理(ステップS2)の内容が実施の形態1と相違する。そこで、以下では、実施の形態2に係る、蓄電池列の接続可否判定処理(ステップS2)の流れについて説明する。
【0138】
図12は、実施の形態2に係る蓄電池列の接続可否判定処理(ステップS2)の流れを示すフロー図である。
【0139】
ここでは、図10において、電圧の緩和が終了して平衡状態(電圧:Veq)となっている蓄電池列20_1に、蓄電池列20_2を接続する場合について考える。
【0140】
先ず、ステップS2の蓄電池列の接続可否判定処理において、制御装置1Aの判定部12Aは、蓄電池列20_2の充電(均等充電)完了後からの経過時間Tが安定基準時間Tsに到達したか否かを判定する(ステップS21A)。
【0141】
ステップS21Aにおいて、蓄電池列20_2の経過時間Tが安定基準時間Tsに到達している場合、判定部12Aは、蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との接続が可能と判定する(ステップS22A)。
【0142】
一方、蓄電池列20_2の経過時間Tが安定基準時間Tsに到達していない場合、判定部12Aは、蓄電池列20_1と蓄電池列20_2との接続が不可と判定する(ステップS23A)。
以上の手順により、ステップS2の接続可否判定処理が実行される。
その他の処理は、実施の形態1に係る蓄電システム100と同様である(図6参照)。
【0143】
以上、実施の形態2に係る蓄電システム100Aによれば、実施の形態1に係る蓄電システム100と同様に、より簡単な構成で、蓄電池列同士の接続を安全に行うことが可能となる。
【0144】
例えば、接続対象の蓄電池列20の電圧に関連する計測値として、接続対象の蓄電池列20の充電終了後および放電終了後からの経過時間Tを計測し、その情報に基づいて蓄電池列間の電圧差ΔVが小さくなった状態を見極めて蓄電池列同士を接続することにより、従来技術のように複雑な回路構成を採用することなく、循環電流による蓄電池および蓄電池周辺の機器への悪影響を防止することが可能となる。
【0145】
より具体的には、蓄電システム100において、判定部12Aが、接続対象の蓄電池列20の充電終了後および放電終了後からの経過時間Tを計測し、経過時間Tの計測値が記憶部14Aに記憶された安定基準時間Tsより大きい場合に、スイッチ制御部13に対して蓄電池列20同士の接続を許可し、経過時間Tの計測値が記憶部14に記憶された安定基準時間Tsより小さい場合に、スイッチ制御部13に対して蓄電池列20同士の接続を許可しない。
【0146】
これによれば、実施の形態1に係る蓄電システム100と同様に、蓄電池および蓄電池周辺の機器への悪影響を及ぼすような大きな循環電流が流れるような状況での蓄電池列同士の接続を確実に防止することが可能となる。また、これによれば、電圧差ΔVを計測する必要がない。
【0147】
なお、実施の形態2では、蓄電池の電圧測定を必須としないために、想定される電圧差ΔVが許容電圧差ΔVperにまで緩和する時間をTsとした(図11参照)。すなわち、蓄電池同士を接続したときに充電される方(電圧の低い方)の蓄電池列の電圧は緩和後の電圧Veqより低くならないので、電圧Veqを充電される側の蓄電池列の電圧とし、放電する側(電圧の高い方)の蓄電池列の電圧がこの電圧Veqに十分近づく時間をTsとしたが、これに限られない。
【0148】
例えば、充電される側の蓄電池列についても、充電又は放電が停止してからの経過時間、すなわち、解列してからの経過時間に基づいて電圧を予想し、この電圧と充電する側の蓄電池列の電圧との差と許容電圧ΔVperとを比較して、蓄電池列同士の接続の可否を判定してもよい。
【0149】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0150】
例えば、実施の形態1,2では、何らかのトリガによってデジタル接点入出力回路(DIO)104を制御しようとするソフトウェアが動作した場合に、上述したインターロックに係るソフトウェアモジュールを通過するようにソフトウェアを構成し、許容電流Iperを超える循環電流が流れることが予想される場合、または充電終了後(放電終了後)の経過時間Tが安定基準時間Tsを経過する前に、蓄電池列を並列接続する操作が実施されないようにしたが、これに限られない。
【0151】
例えば、実施の形態1において、スイッチ4としてのリレーの制御コイルと制御装置1との間にリレーを配置し、蓄電池列20の電圧差ΔVが所定の電圧以下になるまでは、上記リレーによってスイッチ4と制御装置1との間を開放することで、物理的にインターロックを実現してもよい。
【0152】
また、実施の形態2において、例えば、スイッチ4としてのリレーの制御コイルと制御装置1との間にタイマーリレーを配置し、蓄電池列20の充電終了後および放電終了後の経過時間Tが安定基準時間Tsを過ぎるまでは、上記タイマーリレーによってスイッチ4と制御装置1との間を開放することで、物理的にインターロックするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0153】
1,1A…制御装置、2…多並列蓄電池モジュール、3…交直変換装置、4,4_1~4_n…スイッチ、5,5_1~5_n…ブレーカ、6…電力供給部、7…負荷、10…蓄電池管理部、11…監視部、12,12A…判定部、13…スイッチ制御部、14,14A…記憶部、20,20_1~20_n…蓄電池列、100,100A…蓄電システム、141…内部抵抗情報(R,R1,R2)、142…許容電流情報(Iper)、143…安定基準時間情報(Ts)、200…鉛蓄電池セル、201…電圧センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12