(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】疎水性磁性粒子での凝集による黒鉛粒子の濃縮
(51)【国際特許分類】
C01G 49/08 20060101AFI20230724BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20230724BHJP
B03C 1/005 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
C01G49/08 A
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/005
(21)【出願番号】P 2020517994
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 EP2018075152
(87)【国際公開番号】W WO2019063354
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ローデ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル メントゲス
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー クーン
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ エンリケ ムニサガ
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519073(JP,A)
【文献】米国特許第05161694(US,A)
【文献】特表2015-523299(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03181230(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/083575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 49/08
B03C 1/00
B03C 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 黒鉛粒子と不要材料とを含有する供給原料を用意する工程と、
b) 疎水性磁性粒子を前記供給原料に添加し、それにより前記磁性粒子と前記黒鉛粒子との凝集体を含有する負荷された供給原料を得る工程と、
c) 前記負荷された供給原料から磁場により前記凝集体を分離し、それにより前記凝集体を単離する工程と、
d)前記単離された凝集体をばらして前記磁性粒子および前記黒鉛粒子を個別に得る工程
を含む、黒鉛粒子を濃縮する方法。
【請求項2】
前記供給原料が、分散液である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記供給原料が、疎水性層を前記黒鉛粒子上に選択的に形成する捕収剤をさらに含有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記捕収剤が、鉱油、植物油、バイオディーゼル、BtL(バイオマス・トゥ・リキッド)燃料、石炭液化生成物、GtL(天然ガスからのガス・トゥ・リキッド)プロセスの生成物、長鎖アルコール、およびそれらの混合物より選択される炭化水素である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記供給原料が、前記供給原料の乾燥質量を基準として0.1~10重量%の前記捕収剤を含む、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記供給原料が5~99重量%の黒鉛を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記磁性粒子が、乾燥した黒鉛粒子および不要材料の重量を基準として、0.01~100重量%の量で前記供給原料に添加される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記供給原料が、天然の黒鉛鉱石、電子機器スクラップまたはバッテリスクラップをベースとする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記不要材料が、親水性金属化合物または親水性半金属化合物を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記供給原料を磁気分離にかけて、磁性または磁化可能材料を除去する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記供給原料中の前記黒鉛粒子の濃度を1.1~100倍上昇させる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記疎水性磁性粒子を、ポリオルガノシロキサン、アルキルシリコネート、アルキルトリクロロシラン、アルキルトリメトキシシラン、アルキルホスホン酸、モノまたはジアルキルホスホン酸エステル、脂肪酸、またはそれらの混合物より選択される疎水化剤による処理で疎水化する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記黒鉛粒子が、1nm~1mmの平均直径D
50を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記磁性粒子が、磁性金属、磁性金属の強磁性もしくはフェリ磁性合金、磁性酸化鉄、立方晶フェライト、またはそれらの混合物を含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記黒鉛粒子が、化学元素としての炭素の六方晶または菱面体晶の結晶性多層変形形態である黒鉛を含む、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記単離された凝集体のばらしを、開裂剤を添加することにより達成する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記開裂剤が、液相全体の重量を基準として、0.001~10重量%の量で添加される非イオン性界面活性剤である、請求項
16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒鉛粒子と不要材料とを含有する供給原料を用意する工程と、疎水性磁性粒子を供給原料に添加し、それにより磁性粒子と黒鉛粒子との凝集体を含有する負荷された供給原料を得る工程と、負荷された供給原料から磁場により凝集体を分離し、それにより凝集体を単離する工程を含む、黒鉛粒子を濃縮する方法に関する。本発明はさらに、黒鉛粒子と、疎水性磁性粒子と、捕収剤とを含む凝集体に関する。
【0002】
黒鉛は、多くの用途にとって重要な原材料であり、黒鉛鉱石を採掘するための様々な方法が知られている。黒鉛は、様々な炭素質原材料から合成することも可能である。
【0003】
黒鉛鉱石の浮選は、一般に知られており、通常、黒鉛鉱石の精鉱を得るためには、幾つかの精製工程が必要である。
【0004】
ShujuanおよびMeng、Adv. J. Food Sci. and Technology、6(2014)、989~993には、微細な鱗状の黒鉛の3つの浮選工程を含む方法が開示されている。
【0005】
豪国特許出願公開第199060937号明細書には、不要な脈石材料から黒鉛粒子を破砕するために界面活性剤分散液を使用して黒鉛鉱石を処理することが開示されている。得られる遊離した黒鉛は、捕収剤としてのケロシンと起泡剤薬品とを使用してフロス浮選により回収される。
【0006】
米国特許第2012684号明細書には、黒鉛鉱石を機械的に処理することで得られた黒鉛鉱石精鉱をサイクルプロセスにおいて重硫酸アンモニウムで処理することにより精製することが開示されている。
【0007】
米国特許第2914383号明細書には、フッ素または塩素含有ガスの作用により黒鉛鉱石を精製することが記載されている。
【0008】
本発明の課題は、従来技術の欠点、例えば重硫酸塩またはハロゲンのような起泡剤薬品または腐食性薬品の使用を回避する黒鉛を濃縮する方法と、一回の工程で黒鉛の高濃縮をもたらす方法を見つけることであった。
【0009】
この課題は、
a) 黒鉛粒子と不要材料とを含有する供給原料を用意する工程と、
b) 疎水性磁性粒子を供給原料に添加し、それにより磁性粒子と黒鉛粒子との凝集体を含有する負荷された供給原料を得る工程と、
c) 負荷された供給原料から磁場により凝集体を分離し、それにより凝集体を単離する工程
を含む、黒鉛粒子を濃縮する方法により解決された。
【0010】
この課題は、黒鉛粒子と、疎水性磁性粒子と、捕収剤とを含む凝集体によっても解決された。
【0011】
黒鉛粒子を濃縮する方法は、通常、供給原料中の黒鉛粒子の濃度を、1.1~100倍、好ましくは2~20倍上昇させる。
【0012】
工程a)
工程a)では、黒鉛粒子と不要材料とを含有する供給原料を用意する。
【0013】
黒鉛とは、化学元素としての炭素の六方晶または菱面体晶の多層変形形態を指すことが好ましい。黒鉛は、2.1~2.3の密度、約3750℃の昇華点または約1の硬度を有し得る。一般的に、C6平面縮合環の平行した層が、黒鉛の結晶構造を成す。各炭素原子は、層の平面において、120°の角度で、3個の隣接する炭素原子に結合していてもよい。六方晶の黒鉛結晶格子では、第三の層が、第一の層の真下に配置(-A-B-A-B-配列)されており、菱面体晶の黒鉛結晶格子では、第四の層が、第一の層の真下に配置されている(-A-B-C-A-B-C-配列)。黒鉛は多層状の変形形態であってもよく、このことは、黒鉛が、少なくとも2個の層、好ましくは少なくとも3個の層、特に少なくとも10個の層を含んでいてもよいことを意味する。
【0014】
供給原料は、天然の黒鉛鉱石をベースとしていても、または人工の供給源からのものであってもよい。天然の黒鉛鉱石は、その他の鉱物成分、例えば、石英、雲母、片麻岩および長石を含有することが一般的である。人工の供給源からの適切な供給原料としては、電子機器スクラップまたはバッテリスクラップがあり得る。バッテリスクラップは、粉末形態のアノードおよびカソード電極材料を含有していてもよい。供給原料は、天然の黒鉛鉱石、電子機器スクラップまたはバッテリスクラップをベースとすることが好ましい。
【0015】
別の形態では、黒鉛は、グラフェンとして知られる、炭素の六方晶単層の変形形態も指す。グラフェンは、酸化黒鉛の還元もしくは熱分解、ナトリウムとエタノールとのソルボサーマル合成、または有機溶媒での剥離(exfoliation)により製造することができる。これらの反応混合物または粗生成物も、供給原料として適している。好ましい形態において、黒鉛という用語は、グラフェンを含まない。
【0016】
供給原料は、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、特に少なくとも20重量%の黒鉛を含むことが一般的である。供給原料は、1~99重量%の黒鉛、好ましくは10~80重量%の黒鉛を含むことが一般的である。
【0017】
バッテリスクラップからの供給原料は、1~80重量%、好ましくは3~50重量%、特に1~15重量%の黒鉛を含有していてもよい。
【0018】
黒鉛粒子は黒鉛を含む。通常、黒鉛粒子は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも90重量%の黒鉛を含む。別の形態において、黒鉛粒子は、実質的に黒鉛から成る。
【0019】
供給原料は、付着している不要材料から遊離した黒鉛粒子が主に含有されるように前処理されてもよい。そのような前処理は、粉砕および篩分けまたはシフティング段階を含んでいてもよく、これらは、粉砕およびシフティング回路内で組み合わされてもよい。浮選または担体浮選による前処理も可能である。
【0020】
磁性または磁化可能材料、例えば、強磁性、フェリ磁性または常磁性材料(例示的には、磁性金属、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、または磁性合金、例えば、フェライトもしくは鉄希土類磁性合金、または磁性鉱物、例えば、磁鉄鉱、赤鉄鉱、磁硫鉄鉱)を含有し得る供給原料がある。供給原料を磁気分離にかけて、磁性または磁化可能材料を除去してもよい。供給原料は、10重量%まで、好ましくは5重量%まで、特に1重量%までの磁性または磁化可能粒子を含むことが一般的である。
【0021】
黒鉛粒子は、この粒子が効率的に磁鉄鉱粒子と凝集できるような平均直径を有することが一般的である。好ましい実施形態において、黒鉛粒子は、1nm~1mm、好ましくは0.1μm~500μm、最も好ましくは1μm~50μmの範囲のD50を有する。黒鉛粒子の平均直径は、レーザー回折測定により、例えば、ソフトウェアバージョン5.12GでのMastersizer2000または3000を使用するレーザー回折測定により求めることができ、ここで、試料は水またはアルコール中に分散している。黒鉛粒子の粒径を、使用前に研削または粉砕により低減してもよい。
【0022】
適切な不要材料は、金属、親水性金属化合物、または親水性半金属化合物を含み得る。不要材料は、金属酸化物もしくは半金属酸化物、金属もしくは半金属化合物を含む炭酸塩、金属もしくは半金属化合物を含むケイ酸塩、金属もしくは半金属化合物の硫化物、金属もしくは半金属化合物の水酸化物、またはそれらの混合物を含み得る。これらの材料は、鉱物、セラミックスまたはガラスとして存在していてもよい。
【0023】
一般的な金属酸化物または半金属酸化物としては、二酸化ケイ素(SiO2)、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、例えば、長石、曹長石(Na(Si3Al)O8)、雲母、例えば白雲母(KAl2[(OH、F)2AlSi3O10])、ガーネット(Mg、Ca、FeII)3(Al、FeIII)2(SiO4)3、関連するさらなる鉱物、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。不要材料は、SiO2、CaO、Al2O3、MgO、P2O3、ZrO2、Fe2O3、Fe3O4、CeO2、Cr2O3、複合酸化物マトリックス、およびそれらの混合物より選択され得る。
【0024】
電子機器スクラップまたはバッテリスクラップの場合、不要材料は、プラスチック、銅、銀、金、セラミックス、ガラス、カソード材料、例えば、亜鉛、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、様々な化学量論のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、または様々な化学量論のリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物を含み得る。
【0025】
供給原料は、分散液、好ましくは水性分散液であり得る。分散液という用語は、懸濁液およびサスポエマルション(suspoemulsion)を含み得る。分散液の連続相は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%の水を含むことが一般的である。分散液は、3~50重量%、好ましくは10~45重量%の固体含量を有し得る。「分散液」という用語は、1つより多くの相を含む材料を指し、ここで、少なくとも1つの相が、しばしばコロイドサイズの範囲にある微細相領域から成り、連続相全体に分散している。
【0026】
供給原料は、捕収剤をさらに含有していてもよい。適切な捕収剤は、疎水性層を黒鉛粒子上に選択的に形成する。捕収剤は、浮選プロセスにおけるその使用について一般的に知られている。好ましい捕収剤は非イオン性捕収剤であり、これは、水中で解離しない液体状の非極性化合物であることが一般的である。
【0027】
捕収剤は炭化水素であることが好ましい。炭化水素は、均一な炭化水素であっても、または炭化水素混合物であってもよい。炭化水素は、0.1~100cP、好ましくは0.5~5cPの粘度を、いずれの場合にも20℃で有し得る。炭化水素は、鉱油、植物油、バイオディーゼル、BtL(バイオマス・トゥ・リキッド)燃料、石炭液化生成物、GtL(天然ガスからのガス・トゥ・リキッド)プロセスの生成物、長鎖アルコール、およびそれらの混合物であってもよい。捕収剤は、鉱油であることが好ましい。
【0028】
適切な鉱油は、褐炭、硬炭、泥炭、木材、石油、および可能であればその他の鉱物原材料から蒸留により生成される原油派生物および/または油である。鉱油は、パラフィン炭化水素、すなわち飽和した直鎖状および分枝鎖状の炭化水素と、ナフテン系炭化水素、すなわち飽和した環状炭化水素と、芳香族炭化水素との炭化水素混合物を含むことが一般的である。
【0029】
好ましい炭化水素は、ディーゼル、石油、ケロシンまたはガス油より選択される原油派生物である。ディーゼルは実質的に鉱油をベースとしており、すなわち、ディーゼルは蒸留による鉱油の分画における留分である。ディーゼルの主要構成要素は、主に、分子1個あたり約9~22個の炭素原子および170℃~390℃の沸点範囲を有するアルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素である。
【0030】
さらなる鉱油は、軽質ガス油(沸点235~300℃、仕様に応じて、「ディーゼル」、「ディーゼル燃料」、「DF」、「軽質ヒーティングオイル」、「LHO」とも称される)、重質ガス油(沸点300~375℃)、また(アメリカ合衆国では)「二番燃料(No.2 fuel)」である。
【0031】
長鎖アルコールは、脂肪族C3~C30アルコール、好ましくは脂肪族C8~C24アルコール、特に脂肪族C12~C18アルコール、例えばドデカノールであることが一般的である。
【0032】
植物油は、油料植物から得られる脂肪および脂肪油であることが一般的である。植物油は、例えばトリグリセリドを含む。本発明の目的に適した植物油は、例えば、ヒマワリ油、ナタネ油、サフラワー油、ダイズ油、コーン油、ラッカセイ油、オリーブ油、ニシン油、綿実油、ヤシ油、およびそれらの混合物から成る群より選択される。
【0033】
バイオディーゼルは、当業者に公知の組成を有することが一般的である。バイオディーゼルは、飽和C16~C18脂肪酸および不飽和C18脂肪酸のメチルエステル、特にナタネ油のメチルエステルを実質的に含む。
【0034】
石炭液化生成物は、例えばフィッシャー・トロプシュ法またはサソール法により得ることが可能である。BtLおよびGtLプロセスは、当業者に公知である。
【0035】
供給原料は、供給原料の乾燥質量を基準として、15重量%まで、好ましくは7重量%まで、特に4重量%までの捕収剤(例えば鉱油)を含むことが一般的である。別の形態において、供給原料は、供給原料の乾燥質量を基準として、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、特に0.2~3重量%の捕収剤(例えば鉱油)を含むことが一般的である。別の形態において、供給原料は、供給原料の乾燥質量を基準として、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、特に少なくとも0.3重量%の捕収剤(例えば鉱油)を含むことが一般的である。
【0036】
捕収剤は、所望の量で供給原料に添加されても、その他の方法工程からの供給原料中にすでに存在していてもよい。例えば、捕収剤は、廃棄物流、例えば、モータ、油圧装置または冷却液もしくは変圧器液(transformer liquids)からの廃棄物流中に含有される廃油に由来していてもよい。捕収剤は、所望の量で供給原料に添加されることが好ましい。
【0037】
捕収剤を含む供給原料は、例えば、撹拌機、ロータ・ステータミキサ、循環圧送システム、またはスタティックミキサを用いて、混合物流内で混合されてもよい。この混合は、0.1~1000kWh/m3の範囲、好ましくは1~700kWh/m3の範囲の特定の混合エネルギーで行われることが一般的である。
【0038】
工程b)
工程b)では、疎水性磁性粒子を供給原料に添加し、それにより磁性粒子と黒鉛粒子との凝集体を含有する負荷された供給原料を得る。
【0039】
適切な磁性粒子は、磁性金属、好ましくは鉄およびその合金、コバルト、ニッケル、ならびにそれらの混合物;磁性金属の強磁性またはフェリ磁性合金、例えば、NdFeB、SmCo、およびそれらの混合物;磁性酸化鉄、例えば、磁鉄鉱、磁性赤鉄鉱、六方晶フェライト;立方晶フェライト;およびそれらの混合物より選択され得る。磁性粒子は、磁性酸化鉄、特に磁鉄鉱であることが好ましい。
【0040】
磁性粒子は、この粒子が効率的に黒鉛粒子と凝集できるような平均直径を有することが一般的である。好ましい実施形態において、磁性粒子は、1nm~1mm、好ましくは0.1μm~50μm、最も好ましくは1μm~20μmの範囲のD50を有する。「D50」という用語は、50重量%の相応する粒子が、前述の値よりも小さな直径を有することを意味する。磁性粒子の平均直径は、レーザー回折測定により、特に、ソフトウェアバージョン5.12GでのMastersizer2000を使用するレーザー回折測定により求めることができ、ここで、試料は、Na4P2O7水溶液中に分散している。磁性粒子、例えば磁鉄鉱の粒径を、使用前に研削または粉砕により低減してもよい。
【0041】
一般的に、本発明の方法で用いる磁性粒子の量は、すべての量の黒鉛粒子が磁性粒子との凝集により有利に分離され得るように決定することができる。好ましい実施形態において、磁性粒子は、乾燥した黒鉛粒子および不要材料の重量を基準として、0.01~100重量%、好ましくは0.1~20重量%、特に好ましくは0.5~10重量%、最も好ましくは1~5重量%の量で添加される。
【0042】
磁性粒子は疎水性磁性粒子である。磁性粒子は、その表面で疎水化されていることが一般的であり、すなわち、疎水化された磁性粒子である。磁性粒子は、疎水化剤による処理で疎水化されていることが好ましく、ここで、疎水化剤により処理された磁性粒子は、空気に対する粒子表面と水との間の接触角が、好ましくは30°超、より好ましくは60°超、さらにより好ましくは90°超、特に好ましくは140°超であることが好ましい。磁性粒子は、供給原料への添加前に疎水化剤により前処理されていることが好ましい。
【0043】
一般的に、疎水化剤は、処理前の磁性粒子の表面よりも大きな疎水性を磁性粒子の表面に付与する薬剤であり得る。適切な疎水化剤と、これらの疎水化剤により処理することで疎水性磁性粒子を製造する方法とが知られており、例えば、国際公開第2016/083491号、19頁21行~27頁30行、または国際公開第2015/110555号、7頁9行~11頁32行に挙げられているものが知られている。
【0044】
疎水化剤の例は、以下のものである。
【0045】
- ポリオルガノシロキサン、
- アルキルシリコネート、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属C1~6アルキルシリコネート、特にメチルシリコネート、
- アルキルトリクロロシラン、例えばC6~12アルキルトリクロロシラン、
- アルキルトリメトキシシラン、例えばC6~12アルキルトリメトキシシラン、
- アルキルホスホン酸、例えば、C6~18アルキルホスホン酸、特にオクチルホスホン酸、
- モノまたはジアルキルホスホン酸エステル、例えばC6~18モノまたはジアルキルホスホン酸エステル、
- 脂肪酸、例えば、C6~18脂肪酸、特に、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、
またはそれらの混合物。
【0046】
疎水化剤は、ポリオルガノシロキサンであることが好ましい。ポリオルガノシロキサン(シリコーンとしても知られている)は、式[RmSi(O)4-m/2]n[式中、mは1~3であり、nは少なくとも2であり、Rは有機基、例えば、メチル、エチルまたはフェニルである]を有することが一般的である。ポリオルガノシロキサンは、直鎖状であっても、環状であっても、または分枝鎖状であってもよい。適切なポリオルガノシロキサンおよびそれらの製造は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第32巻、Entry 「Silicones」、Wiley-VCH、2012、675~712頁から知られている。
【0047】
適切なポリオルガノシロキサンは、シリコーン油、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、またはブロックおよびグラフトポリオルガノシロキサンコポリマーであり、ここで、シリコーン油およびシリコーン樹脂がより好ましい。
【0048】
シリコーン油(シリコーン液としても知られている)は、通常2~4000個のモノマー単位を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンであることが一般的である。適切なシリコーン油は、メチルシリコーン油、メチルフェニルシリコーン油、フルオロシリコーン油、メチルハイドロジェンシリコーン油、またはメチルアルキルシリコーン油である。好ましいシリコーン油は、メチルシリコーン油およびメチルフェニルシリコーン油である。
【0049】
適切なメチルシリコーン油は、500~200,000g/molのモル質量を有し得る直鎖状のポリジメチルシロキサンである。適切なメチルフェニルシリコーン油は、メチル基がフェニル基により部分的に置換されており、かつ500~200,000g/molのモル質量を有し得る直鎖状のポリジメチルシロキサンである。
【0050】
シリコーン樹脂は、15,000g/mol未満、好ましくは10,000g/mol未満の分子量を有する分枝鎖状のポリオルガノシロキサンであることが一般的である。シリコーン樹脂は、有機溶媒、例えばトルエンに可溶であることが一般的である。好ましいシリコーン樹脂は、MQ、TDおよびTタイプのシリコーン樹脂である。シリコーン樹脂は、オルガノクロロシラン、例えば、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、およびジフェニルジクロロシランの加水分解またはアルコール分解により製造されることが一般的である。
【0051】
疎水化剤は、シリコーン樹脂、例えば、10,000g/mol未満のモル質量を有する、式[RmSi(O)4-m/2]n[式中、mは1.1~3であり、nは少なくとも10であり、Rは有機基、例えば、メチルまたはフェニルである]の分枝鎖状のポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0052】
適切なブロックおよびグラフトポリオルガノシロキサンコポリマーは、ポリエーテルブロックがポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールを含み得るポリオルガノシロキサンポリエーテルブロックポリマーであるか、またはポリオルガノシロキサンと、ビニルモノマー、例えば、スチレン、アクリレートまたは酢酸ビニルとのグラフトポリマーである。
【0053】
負荷された供給原料は、分散液、好ましくは水性分散液であってもよい。分散液の連続相は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%の水を含むことが一般的である。分散液は、3~50重量%、好ましくは10~45重量%の固体含量を有し得る。供給原料が分散液であった場合、負荷された供給原料も分散液であることが一般的である。供給原料および負荷された供給原料は、水性分散液であることが好ましい。
【0054】
疎水性磁性粒子を供給原料に添加すると、磁性粒子と、黒鉛粒子と、任意で捕収剤との凝集体を含有する負荷された供給原料が得られる。
【0055】
また、供給原料または負荷された供給原料は、さらなる材料を含んでいてもよい。これらのさらなる材料は、粒子の分散性、粒子の表面電荷および分散媒体の化学的特性(例えば、pH値およびレドックス電位)を改善するために使用される当業者に公知の添加剤を含んでいてもよい。供給原料または負荷された供給原料の水性分散液のpH値は、約2~約13、好ましくは約4~約12であることが一般的であり得る。
【0056】
工程a)、b)およびc)は、約10~約60℃の温度、好ましくは周囲温度で実施されてもよい。
【0057】
負荷された供給原料に機械的エネルギー、好ましくは機械的せん断エネルギーを導入することが、凝集体の形成に有用である。
【0058】
機械的エネルギーの伝達は、いずれの装置でも達成することが可能である。例えば、機械的エネルギーの伝達は、単一の撹拌機または撹拌機構成により達成することが可能である。さらにまたはあるいは、機械的エネルギーの伝達を、混合容器内で乱流を生成するフロージェネレータ、例えばポンプにより達成することが可能であり、この乱流により、機械的エネルギーを、分散媒体と、第一のタイプの粒子と、第二のタイプの粒子と、磁石タイプの粒子との混合物に伝達することが可能である。
【0059】
機械的せん断エネルギーは、様々な手段で、負荷された供給原料に導入することが可能である。これは、エネルギーの取り込みをより効率的にするためのバッフルを含み得る撹拌容器により行われることが一般的である。その他の手段は、ボールミルまたは任意のタイプの撹拌ボールミルのような凝集体の粉砕である。また、ロータ・ステータ混合装置を使用すること、または負荷された供給原料を含む容器内容物を閉サイクルで圧送することも可能である。適切な量のエネルギーを導入することができれば、ポンプまたは重力により運ばれる管を通る分散液の乱流によっても、必要な凝集がもたらされる。スタティックミキサおよび向流式フローミキサ(counter current flow mixers)は、せん断エネルギーを分散液に導入する別の手法である。
【0060】
凝集は、バッチプロセスの場合、凝集容積内で起こり得る。この場合、混合物は、この容積内に入れられ、例えば望ましい凝集が達成されるまで撹拌される。その後、混合物は凝集容積から放たれる。凝集は、連続的なフロープロセスの場合も、凝集容積内で起こり得る。この場合、混合物は、撹拌機を含む容積内に連続的に供給され、そこから放出される。望ましい凝集は、撹拌容積内に入る際の供給速度とそこから出る際の供給速度、すなわち撹拌容積内における分散液の平均滞留時間を制御することにより制御可能である。所定の撹拌力では、平均滞留時間により分散液のせん断エネルギーの取り込みが定まる。
【0061】
工程c)
工程c)では、負荷された供給原料から磁場により凝集体を分離し、それにより凝集体を単離する。
【0062】
磁場による凝集体の分離(磁気分離とも呼ばれる)は、当業者に公知のいずれの方法によっても実施することが可能である。適切な磁気分離器は、ドラム型分離器、高強度または低強度磁気分離器、連続式ベルト型分離器などである。永久磁石または電磁石を使用して磁場を生成してもよい。磁気分離は、例えばJan Svoboda「Magnetic Techniques for the Treatment of Materials」(2004)に記載のような連続的または半連続的な磁気分離技術により実施することが可能である。
【0063】
適切な磁気分離器は、当技術分野において公知のLIMS(低強度磁気分離器)、MIMS(中強度磁気分離器)またはWHIMS(湿式高強度磁気分離器)のタイプのものである。本発明の好ましい実施形態において、分離器は、MIMSまたはWHIMSのタイプのものである。磁気分離に使用される一般的な装置は、国際公開第2011/131411号、国際公開第2011/134710号、国際公開第2011/154178号、独国特許出願公開第102010023130号明細書、独国実用新案第202011104707号明細書、国際公開第2011/107353号、独国特許出願公開第102010061952号明細書、国際公開第2012/116909号、国際公開第2012/107274号、国際公開第2012/104292号、または国際公開第2013/167634号に開示されている。磁気分離器は、流路に沿って移動可能な少なくとも1個の磁石をさらに含むことが好ましい。磁気分離器は、向流で操作されることが好ましく、すなわち、磁場の移動は、懸濁液流の方向とは反対である。磁場の磁界強度は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.3、特に少なくとも0.5テスラであり得る。
【0064】
好ましい実施形態では、磁気分離設備により、分離の間に凝集体を分散剤、好ましくは水で洗浄することができる。洗浄により不活性材料を凝集体から除去することが好ましい。
【0065】
この磁気分離工程は、特に、一連の分離経路を通る前述の分離工程の非磁性生成物流を繰り返すことにより、または磁場を変調することにより繰り返してもよい。この一連の分離工程(当技術分野において捕捉として知られる)では、さらなる量の捕収剤および/または疎水性磁性粒子を、磁気分離段階の前に、工程b)について先に記載のように添加してもよい。この凝集体を、第一の分離の後かつ第二の分離の前に撹拌してもよく、それにより、捕捉された第二のタイプの粒子を遊離させ、第二の分離工程(当技術分野において洗浄として知られている)で分離してもよい。
【0066】
工程d)
黒鉛粒子を濃縮する方法は、d)単離された凝集体をばらして磁性粒子および黒鉛粒子を個別に得る工程をさらに含んでいてもよい。
【0067】
単離された凝集体のばらし、および磁性粒子からの黒鉛粒子の分離は、一般的には磁性粒子を再利用するために行われる。黒鉛粒子および磁性粒子は、磁場を用いて分離されてもよい。負荷された供給原料からの凝集体の分離について先に記載されているように、磁性粒子および黒鉛粒子の分離も1回以上行ってもよく、任意で撹拌および脱捕捉を分離工程の間に行う。
【0068】
ばらしは、開裂剤を添加することにより達成することが可能である。開裂剤は、有機溶媒、塩基性化合物、酸性化合物、酸化剤、還元剤、界面活性剤またはそれらの混合物を含んでいてもよい。開裂剤は、水と界面活性剤との混合物を含むことが好ましい。
【0069】
開裂剤としての有機溶媒の例は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、例えば、n-プロパノールまたはイソプロパノール;芳香族溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン;エーテル、例えば、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル;ケトン、例えばアセトン;芳香族または脂肪族炭化水素、例えば、例示的には6~10個の炭素原子を有する飽和炭化水素、例えば、ドデカン、ディーゼル燃料、ならびにそれらの混合物である。ディーゼル燃料の主成分は、主に、分子1個あたり約9~22個の炭素原子および170℃~390℃の沸点範囲を有するアルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素である。
【0070】
酸性化合物は、無機酸、例えば、HCl、H2SO4、HNO3またはそれらの混合物、有機酸、例えばカルボン酸であり得る。
【0071】
酸化剤としては、H2O2を、例えば30重量%の濃度の水溶液として使用することが可能である。
【0072】
塩基性化合物の例は、塩基性化合物の水溶液、例えば、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液、例えば、KOHまたはNaOH;石灰水、アンモニア水溶液、有機アミン水溶液である。
【0073】
界面活性剤の例は、非イオン性、アニオン性、カチオン性および/または双性イオン界面活性剤である。好ましい実施形態において、開裂は、臨界ミセル濃度以上の範囲の濃度で好ましくは生分解性および/または非イオン性の界面活性剤を使用することにより行われる。開裂剤は、液相全体の重量を基準として0.001~10重量%、好ましくは0.01~1重量%の量で添加される非イオン性界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤濃度は、好ましくは少なくともその臨界ミセル濃度(CMC)よりも高く、より好ましくはそのCMCよりも少なくとも2倍高い。
【0074】
このほぐしは、機械的に、例えば超音波または撹拌により補助されてもよい。
【0075】
本発明はさらに、黒鉛粒子と、疎水性磁性粒子と、捕収剤とを含む凝集体に関する。
【0076】
凝集体の成分は、疎水性相互作用に基づいて相互に付着し得る。一般的に、凝集体は十分に磁性があるため、例えば強力なCoSm永久磁石により生じ得る外部磁場によって、凝集体流がこの外部磁石を通過する際に、これらの凝集体を少なくとも磁気により偏向させることができる。凝集体における疎水性相互作用は、前述の流速において、凝集体を安定させたまま維持するのに十分なほど、すなわち分裂させないほど十分に強いことが一般的である。
【0077】
凝集体は、0.1~99.99重量%、好ましくは1~80重量%の黒鉛粒子を含み得る。
【0078】
凝集体は、0.01~99.9重量%、好ましくは20~99重量%の疎水性磁性粒子を含み得る。
【0079】
凝集体は、0.01~90重量%、好ましくは1~50重量%の捕収剤を含み得る。
【0080】
実施例
例1
a)供給原料
XRD分析によると20%である黒鉛、ならびに0.03%である炭酸塩としての炭素、カルシアン曹長石、玻璃長石としての長石、石英、磁硫鉄鉱および黒雲母を主要結晶構成要素として含有するヨーロッパ鉱床(European deposit)から黒鉛鉱石を粉砕して、20μmの粒径D50にした。20g(19.9gの乾燥質量)のこの粉砕された鉱石を、60gの濾液した川の水に分散させ、続いて、100mgの炭化水素捕収剤(直鎖状、分枝鎖状および環状アルカン(主にC9~11)の工業用混合物、芳香族含量2%未満、初期沸点160℃)(乾燥質量の供給原料を基準として0.5重量%)を添加した。その後、この分散液を、バッフル付ビーカー内で、Ultra Turrax(登録商標)T25撹拌機を用いて、10分にわたり10000rpmで激しく混合した(比エネルギー投入量は約600kWh/m3)。
【0081】
b)凝集
乾燥した疎水性磁鉄鉱粒子を、国際公開第2015/110555号の例1に準拠して、4μmのD50を有する磁鉄鉱粒子とポリオルガノシロキサン(固体メチルシリコーン樹脂、Mp35~55℃、約6700g/molの分子量Mwを有する約[CH3SiO1.5]100の平均組成)とをベースとして製造した。
【0082】
疎水性磁鉄鉱粒子(0.6g)を、3.6gの0.1重量%エトキシル化アルカノール水溶液(液体、曇点約55℃、EN1890に準拠して水中1%)に懸濁させた。
【0083】
得られた工程a)の供給原料に、0.6gの疎水性磁鉄鉱粒子の懸濁液を添加し、バッフル付ビーカー内で、30mmピッチブレード撹拌機により1400rpmで15分にわたり室温で撹拌した(比エネルギー投入量は約0.7kWh/m3)。
【0084】
c)磁気分離
得られた分散液を、6l/hの速度で、4×2mmのくさび型ワイヤマトリックスを備える湿式高強度磁気分離器(WHIMS)である実験室規模の磁気分離器に、0.7Tの磁場強度で圧送する(Eriez Magnetics Europe Ltd.、UKから市販で入手可能)。供給物の添加完了後に、マトリックスを水で濯ぐ。分散液と洗浄水とを合したものを非磁性尾鉱として捕収する。その後、磁場のスイッチを切り、磁鉄鉱黒鉛凝集体を含有する磁性留分をマトリックスから濯ぎ出して、磁性精鉱を得た。分析結果は、表1に要約されている。空気中で試料を燃焼させ、生成された二酸化炭素の量を測定することにより、黒鉛含量を求めた。
【0085】
黒鉛含量が上昇して、黒鉛鉱石中での20%から、磁性精鉱中での43.6%になることが示された。
【0086】
【0087】
例2
乾燥質量として20.1gの供給物、および500mgの炭化水素捕収剤(乾燥質量の供給原料を基準として2.5重量%)を用いたことを除いて、例1と同じ実験条件を使用した。
【0088】
分析結果は、表2に要約されている。
【0089】