(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】凝固卵様食品、加工食品、凝固卵様食品の製造方法、および加工食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20230724BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20230724BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20230724BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20230724BHJP
A23L 27/60 20160101ALN20230724BHJP
【FI】
A23J3/00 508
A23L35/00
A23L15/00 D
A23L23/00
A23L15/00 Z
A23L27/60 A
(21)【出願番号】P 2023526046
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2022039332
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2021176044
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】相楽 浩二
(72)【発明者】
【氏名】荒井 潤子
(72)【発明者】
【氏名】石川 千弘
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169488(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0020166(US,A1)
【文献】特表2021-524738(JP,A)
【文献】特表2002-541270(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026998(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/181759(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/181768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23
Google
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルセルロース、成分(A)、水、食用油脂およびタンパク素材を含む凝固卵様食品
であって、
前記メチルセルロースの含有量が、前記凝固卵様食品全体に対して0.5質量%以上10質量%以下であり、
前記成分(A)の含有量が、前記凝固卵様食品全体に対して0.5質量%以上25質量%以下であり、
前記水の含有量が、前記凝固卵様食品全体に対して40質量%以上95質量%以下であり、
前記食用油脂の含有量が、前記凝固卵様食品全体に対して3質量%以上50質量%以下であり、
前記タンパク素材の含有量が、前記タンパク素材に含まれるタンパク質含量換算値で、前記凝固卵様食品全体に対して0.05質量%以上10質量%以下である、凝固卵様食品。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が60質量%以上100質量%以下
【請求項2】
前記成分(A)の含有量が、前記メチルセルロースに対する質量比で、0.05以上5以下である、請求項1に記載の凝固卵様食品。
【請求項3】
さらに澱粉
(前記成分(A)を除く)を含む請求項1に記載の凝固卵様食品。
【請求項4】
前記澱粉が、タピオカ澱粉およびエンドウ澱粉からなる群から選択される1種または2種である、請求項3に記載の凝固卵様食品。
【請求項5】
さらに増粘多糖類を含む請求項1に記載の凝固卵様食品であって、
前記増粘多糖類が、スクシノグリカン、タマリンドガム、ジェランガム、発酵セルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、寒天、マンナンおよびアルギン酸からなる群から選択される1種または2種以上である、凝固卵様食品。
【請求項6】
前記凝固卵様食品が、凝固溶き卵様食品である、請求項1に記載の凝固卵様食品。
【請求項7】
前記凝固卵様食品が、凝固卵白様食品である、請求項1に記載の凝固卵様食品。
【請求項8】
凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品であって、
前記凝固卵白様食品部が請求項7に記載の凝固卵白様食品であり、
前記凝固卵黄様食品部が粉末状タンパク素材を含む、凝固卵様食品。
【請求項9】
前記凝固卵様食品が、クラッシュされたゆで卵様食品である、請求項7に記載の凝固卵様食品。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の凝固卵様食品を含む加工食品であって、
前記加工食品が、ソース類、フィリング類およびサラダ類からなる群から選択される1種である、加工食品。
【請求項11】
メチルセルロース、成分(A)、水、食用油脂およびタンパク素材を含む凝固卵様食品の製造方法であって、
前記メチルセルロース、前記成分(A)、前記水、前記食用油脂および前記タンパク素材を混合して乳化物を得る工程、
前記乳化物を加熱する工程、を含
み、
前記メチルセルロースの含有量が、前記凝固卵様食品全体に対して0.5質量%以上10質量%以下であり、
前記成分(A)の含有量が、前記凝固卵様食品全体に対して0.5質量%以上25質量%以下であり、
前記水の含有量が、前記凝固卵様食品全体に対して40質量%以上95質量%以下であり、
前記食用油脂の含有量が、前記凝固卵様食品全体に対して3質量%以上50質量%以下であり、
前記タンパク素材の含有量が、前記タンパク素材に含まれるタンパク質含量換算値で、前記凝固卵様食品全体に対して0.05質量%以上10質量%以下である、凝固卵様食品の製造方法。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が60質量%以上100質量%以下
【請求項12】
前記乳化物を得る工程において、さらに増粘多糖類を混合する工程を含む、請求項11に記載の凝固卵様食品の製造方法であって、
前記増粘多糖類が、スクシノグリカン、タマリンドガム、ジェランガム、発酵セルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、寒天、マンナンおよびアルギン酸からなる群から選択される1種または2種以上である、凝固卵様食品の製造方法。
【請求項13】
凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品の製造方法であって、
請求項11に記載の製造方法により前記凝固卵白様食品部を得る工程、
前記凝固卵白様食品部と前記凝固卵黄様食品部を混合する工程、を含み、
前記凝固卵黄様食品部が粉末状タンパク素材を含む、凝固卵様食品の製造方法。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか1項に記載の凝固卵様食品の製造方法により凝固卵様食品を得る工程、
前記凝固卵様食品を含む材料を調製して加工食品を得る工程、
を含む、加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固卵様食品、加工食品、凝固卵様食品の製造方法、および加工食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクランブルエッグ、オムレツ、卵焼き、ゆで卵等の卵食品は、多くの人々に広く親しまれている。しかしながら、卵はアレルゲン原料となるため、卵を摂取できない人々も多く存在している。また、近年は健康に対する関心や環境問題に対する関心の高まりにより、動物性食品を摂取しないビーガン食が普及し始めており、植物性原料のみから製造された卵代替品のニーズが高まっている。このような背景から、卵代替品について種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料とし、全原料中の卵の配合率が50重量%以下である液体生地を焼成し、熱凝固させることを特徴とする、卵様焼成凝固食品の製造法が記載されている。
特許文献2には、澱粉性野菜乃至澱粉細胞を蛋白ペーストと混合、加熱することを特徴とするスクランブルエッグ様食品の製造法が記載されている。
特許文献3には、熱凝固性タンパク質及び澱粉を含む凝固卵白様組成物を、ゆで卵の卵白部の様な食感を有する凝固卵白代替品として使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-169488号公報
【文献】特開2002-119260号公報
【文献】特開2004-147536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来報告されている卵代替品においては、味や食感の面において十分なものとはいえず、さらなる技術の開発が求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、凝固卵食品のような良好な味や食感を有する新規な凝固卵様食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、メチルセルロース、成分(A)、水、食用油脂およびタンパク素材を用いることで、凝固卵食品のような良好な味や食感を有する凝固卵様食品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の凝固卵様食品、加工食品、凝固卵様食品の製造方法、および加工食品の製造方法が提供される。
[1] メチルセルロース、成分(A)、水、食用油脂およびタンパク素材を含む凝固卵様食品。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が60質量%以上100質量%以下
[2] 前記成分(A)の含有量が、前記メチルセルロースに対する質量比で、0.05以上5以下である、[1]に記載の凝固卵様食品。
[3] さらに澱粉を含む[1]または[2]に記載の凝固卵様食品。
[4] 前記澱粉が、タピオカ澱粉およびエンドウ澱粉からなる群から選択される1種または2種である、[3]に記載の凝固卵様食品。
[5] さらに増粘多糖類を含む[1]~[4]のいずれか1つに記載の凝固卵様食品であって、
前記増粘多糖類が、スクシノグリカン、タマリンドガム、ジェランガム、発酵セルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、寒天、マンナンおよびアルギン酸からなる群から選択される1種または2種以上である、凝固卵様食品。
[6] 前記凝固卵様食品が、凝固溶き卵様食品である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の凝固卵様食品。
[7] 前記凝固卵様食品が、凝固卵白様食品である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の凝固卵様食品。
[8] 凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品であって、
前記凝固卵白様食品部が[7]に記載の凝固卵白様食品であり、
前記凝固卵黄様食品部が粉末状タンパク素材を含む、凝固卵様食品。
[9] 前記凝固卵様食品が、クラッシュされたゆで卵様食品である、[7]または[8]に記載の凝固卵様食品。
[10] [7]~[9]のいずれか1つに記載の凝固卵様食品を含む加工食品であって、
前記加工食品が、ソース類、フィリング類およびサラダ類からなる群から選択される1種である、加工食品。
[11] メチルセルロース、成分(A)、水、食用油脂およびタンパク素材を含む凝固卵様食品の製造方法であって、
前記メチルセルロース、前記成分(A)、前記水、前記食用油脂および前記タンパク素材を混合して乳化物を得る工程、
前記乳化物を加熱する工程、
を含む、凝固卵様食品の製造方法。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が60質量%以上100質量%以下
[12] 前記乳化物を得る工程において、さらに増粘多糖類を混合する工程を含む、[11]に記載の凝固卵様食品の製造方法であって、
前記増粘多糖類が、スクシノグリカン、タマリンドガム、ジェランガム、発酵セルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、寒天、マンナンおよびアルギン酸からなる群から選択される1種または2種以上である、凝固卵様食品の製造方法。
[13] 凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品の製造方法であって、
[11]または[12]に記載の製造方法により前記凝固卵白様食品部を得る工程、
前記凝固卵白様食品部と前記凝固卵黄様食品部を混合する工程、を含み、
前記凝固卵黄様食品部が粉末状タンパク素材を含む、凝固卵様食品の製造方法。
[14] [11]~[13]のいずれか1つに記載の凝固卵様食品の製造方法により凝固卵様食品を得る工程、
前記凝固卵様食品を含む材料を調製して加工食品を得る工程、
を含む、加工食品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凝固卵食品のような良好な味や食感を有する新規な凝固卵様食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。数値範囲の上限値及び下限値を示したときは、上限値及び下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。また、本実施形態において、各成分を単独でまたは2種以上組み合わせて含むことができる。
【0011】
本実施形態において、凝固卵様食品は、メチルセルロース、成分(A)、水、食用油脂およびタンパク素材を含む。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が60質量%以上100質量%以下
【0012】
(メチルセルロース)
メチルセルロースは、セルロースの水酸基の水素原子の一部がメトキシ基に置換されたものである。前記メチルセルロースの水酸基の水素原子の置換度(セルロースの水酸基の水素原子がメトキシ基に置換された割合)としては、特に制限はなく、何れのものを選択しても良い。
【0013】
凝固卵様食品中のメチルセルロースの含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.2質量%以上、よりいっそう好ましくは1.3質量%以上である。
また、凝固卵様食品中のメチルセルロースの含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらにより好ましくは4質量%以下、よりいっそう好ましくは3質量%以下である。
【0014】
(成分(A))
成分(A)は、条件(1)~(4)を満たす粉粒状物である。
条件(1)に関し、成分(A)は、乳化物を安定なものとする観点から、成分(A)全体に対して澱粉を75質量%以上含み、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上含む。
また、成分(A)中の澱粉の含有量の上限に制限はなく、成分(A)全体に対して100質量%以下であるが、組成物の性状等に応じて99.5質量%以下、99質量%以下等としてもよい。
【0015】
成分(A)において、澱粉は、たとえば食品用の澱粉であり、各種由来のものを用いることができる。たとえば、澱粉として、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コメ澱粉、豆澱粉などの澱粉;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉などから、1種以上を適宜選ぶことができる。澱粉は、好ましくはタピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、コメ澱粉、および豆澱粉から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくは、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、および豆澱粉から選ばれる1種または2種以上である。
また、澱粉の由来原料は、好ましくはキャッサバ、とうもろこし、コメおよび豆からなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0016】
条件(2)に関し、成分(A)は、具体的には、低分子化澱粉と、他の澱粉とを含む。まず、低分子化澱粉について説明する。
低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量は、5質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは45質量%以上、よりいっそう好ましくは55質量%以上、さらにまた好ましくは65質量%以上である。なお、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0017】
低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ等のとうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、豆澱粉および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、および豆澱粉から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはハイアミロースコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチとしては、たとえばアミロース含量40質量%以上のものが入手可能である。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、より好ましくはアミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである。
【0018】
成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、3質量%以上であり、好ましくは8質量%以上、より好ましくは13質量%以上である。
また、成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、45質量%以下であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0019】
低分子化澱粉のピーク分子量は、3×103以上であり、好ましくは8×103以上である。
また、低分子化澱粉のピーク分子量は、5×104以下であり、好ましくは3×104以下であり、より好ましくは1.5×104以下である。なお、低分子化澱粉のピーク分子量の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0020】
ここで、低分子化澱粉は、その製造安定性に優れる観点から、好ましくは、酸処理澱粉、酸化処理澱粉および酵素処理澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは酸処理澱粉である。
【0021】
酸処理澱粉を得る際の酸処理の条件は問わないが、たとえば、以下のように処理することができる。
まず、原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉と水を反応装置に投入した後、さらに酸を投入する。あるいは水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的におこなう観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理をおこなう上での澱粉スラリーの濃度を、たとえば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0022】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0023】
酸処理反応条件については、たとえば酸処理時の無機酸濃度は、酸処理澱粉を安定的に得る観点から、0.05規定度(N)以上4N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.2N以上3N以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましい。さらに、同様の観点から、反応時間は、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0024】
成分(A)は、上記低分子澱粉以外の澱粉を含む。成分(A)中の低分子化澱粉以外の澱粉としては、たとえば前述した澱粉の中から選択して使用することができる。好ましくは、成分(A)中の低分子化澱粉以外の澱粉は、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、豆澱粉およびこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含み、より好ましくはコーンスターチを含み、さらに好ましくはコーンスターチである。
【0025】
条件(3)に関し、成分(A)の25℃における冷水膨潤度は5以上であり、好ましくは6以上であり、さらに好ましくは6.5以上である。
また、成分(A)の25℃における冷水膨潤度は20以下であり、好ましくは17以下、より好ましくは13以下、さらに好ましくは12以下である。
ここで、成分(A)の冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0026】
条件(4)に関し、成分(A)中の目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、成分(A)全体に対して60質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらにより好ましくは95質量%以上である。
また、成分(A)中の目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、成分(A)全体に対して100質量%以下である。
【0027】
成分(A)中の目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.075mmの篩の篩上の画分の含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは50質量%以上、よりいっそう好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、たとえば100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。
【0028】
成分(A)中の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上、よりいっそう好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、たとえば100質量%以下である。
【0029】
凝固卵様食品中の成分(A)の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.2質量%以上、よりいっそう好ましくは1.3質量%以上である。
また、凝固卵様食品中の成分(A)の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは7質量%以下、よりいっそう好ましくは5質量%以下である。
【0030】
凝固卵様食品中の成分(A)の含有量は、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.3以上、さらにより好ましくは0.5以上、よりいっそう好ましくは0.7以上である。
また、凝固卵様食品中の成分(A)の含有量は、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、さらにより好ましくは1.5以下であり、よりいっそう好ましくは1.3以下である。
【0031】
(食用油脂)
食用油脂の具体例として、菜種油、大豆油、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、えごま油、紅花油、ひまわり油、綿実油、こめ油、落花生油、カカオ脂、パーム核油、ヤシ油などの植物油脂;牛脂、豚脂、乳脂、鶏油、魚油等の動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成油脂などが挙げられる。また、これらに分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂が挙げられる。
【0032】
食用油脂は、好ましくは菜種油、大豆油、オリーブ油、およびこれらに分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0033】
また、これら食用油脂は野菜等の風味付与剤で油脂を処理したもの、フレーバー等の香料や、調味料、天然素材等で油脂に風味付けを行ったものでも良い。さらに、通常食用油脂に配合される成分を、発明の効果を損なわない範囲において含有していてもよい。例えば、トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、ローズマリー抽出物、茶抽出物、甘草抽出物等の酸化防止剤;クエン酸やリンゴ酸等の金属キレート剤;ビタミンA、ビタミンD等のビタミン類;シリコーン;香料;乳化剤等である。
【0034】
凝固卵様食品中の食用油脂の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、さらにより好ましくは10質量%以上、よりいっそう好ましくは12質量%以上である。
また、凝固卵様食品中の食用油脂の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは25質量%以下である。
【0035】
凝固卵様食品中の食用油脂の含有量は、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、さらにより好ましくは6以上、よりいっそう好ましくは7以上である。
また、凝固卵様食品中の食用油脂の含有量は、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは15以下、よりいっそう好ましくは12以下である。
【0036】
(タンパク素材)
タンパク素材は、タンパク質を含む素材のことである。
タンパク質は、好ましくは植物タンパク質である。植物タンパク質としては、グルテン等の小麦タンパク質;豆乳、大豆粉、分離大豆タンパク質等の大豆タンパク質;とうもろこしタンパク質;エンドウタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、リョクトウタンパク質、ソラマメタンパク質等の種子タンパク質;小麦ふすま、玄米全粒粉等の穀物由来タンパク質等が挙げられる。
タンパク質は、より好ましくは大豆タンパク質、エンドウタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、リョクトウタンパク質、ソラマメタンパク質、および小麦タンパク質からなる群から選択される1種または2種以上であり、さらに好ましくは大豆タンパク質である。
【0037】
タンパク素材は、好ましくは、豆乳、大豆粉、分離大豆タンパク、エンドウタンパク、ヒヨコマメタンパク、リョクトウタンパク、ソラマメタンパク、小麦グルテン、小麦ふすまおよび玄米全粒粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは豆乳、大豆粉、分離大豆タンパク、エンドウタンパク、ヒヨコマメタンパク、リョクトウタンパク、およびソラマメタンパクからなる群から選択される1種または2種以上であり、さらに好ましくは分離大豆タンパクである。
【0038】
凝固卵様食品中のタンパク素材の含有量は、タンパク素材に含まれるタンパク質含量換算値で、凝固卵様食品全体に対して好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上、さらにより好ましくは0.2質量%以上、よりいっそう好ましくは0.25質量%以上である。
また、凝固卵様食品中のタンパク素材の含有量は、タンパク素材に含まれるタンパク質含量換算値で、凝固卵様食品全体に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下、よりいっそう好ましくは1質量%以下である。
【0039】
凝固卵様食品中のタンパク素材の含有量は、タンパク素材に含まれるタンパク質含量換算値で、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、さらにより好ましくは0.25以上である。
また、凝固卵様食品中のタンパク素材の含有量は、タンパク素材に含まれるタンパク質含量換算値で、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、さらにより好ましくは2以下、よりいっそう好ましくは1以下である。
【0040】
(水)
凝固卵様食品に含まれる水は、通常の水のみでなく、牛乳、豆乳、果汁、野菜ジュース等の配合成分中の水分も含まれる。また、粉末等のフレーバーを溶かした水溶液なども使用可能である。すなわち、凝固卵様食品中の水の総含有量とは、凝固卵様食品を得る工程で配合される水および他の配合成分に含まれる水分のうち、メチルセルロースおよび成分(A)以外の成分に含まれる水を合算した量である。
【0041】
凝固卵様食品中の水の総含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは65質量%以上である。
また、凝固卵様食品中の水の総含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、さらにより好ましくは87質量%以下である。
【0042】
凝固卵様食品中の水の総含有量は、メチルセルロースに対する質量比で、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、さらにより好ましくは20以上、よりいっそう好ましくは25以上である。
また、凝固卵様食品中の水の総含有量は、メチルセルロースに対する質量比で、好ましくは98以下であり、より好ましくは95以下、さらに好ましくは90以下、さらにより好ましくは70以下である。
【0043】
凝固卵様食品中の水の総含有量は、食用油脂に対する質量比で好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上、さらにより好ましくは2.5以上、よりいっそう好ましくは3以上である。
また、凝固卵様食品中の水の総含有量は、食用油脂に対する質量比で好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは15以下、よりいっそう好ましくは10以下である。
【0044】
(澱粉)
本実施形態において、凝固卵様食品に、さらに澱粉を含むことが好ましい。当該澱粉は、例えば、タピオカ澱粉、エンドウ澱粉などの豆澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コメ澱粉などから1種以上を適宜選ぶことができる。当該澱粉には、未加工の澱粉のみならず、未加工の澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉も含まれる。なお、当該澱粉には、前記成分(A)中に含まれる澱粉は含まない。
前記化学的処理としては、例えば、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、アセチル化等のエステル化処理、ヒドロキシプロピル化等のエーテル化処理、架橋処理等;物理的処理としては、例えば、油脂加工処理、加熱処理、α化処理、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理等が挙げられる。このような処理は、1種の処理が単独で施されていてもよく、また2種以上の処理が組み合わされて施されていてもよい。
【0045】
前記澱粉は、好ましくはタピオカ澱粉および豆澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはタピオカ澱粉およびエンドウ澱粉からなる群から選択される1種または2種であり、さらに好ましくはタピオカ澱粉である。
また、タピオカ澱粉は、好ましくは架橋タピオカ澱粉、アセチル化タピオカ澱粉および油脂加工タピオカ澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはリン酸架橋タピオカ澱粉である。
また、エンドウ澱粉は、好ましくは未加工エンドウ澱粉およびアセチル化エンドウ澱粉からなる群から選択される1種または2種であり、より好ましくは未加工エンドウ澱粉である。
【0046】
凝固卵様食品中の澱粉の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上、さらにより好ましくは1.0質量%以上、よりいっそう好ましくは1.2質量%以上である。
また、凝固卵様食品中の澱粉の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは7質量%以下、よりいっそう好ましくは5質量%以下である。
【0047】
凝固卵様食品中の澱粉の含有量は、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.3以上、さらにより好ましくは0.5以上、よりいっそう好ましくは0.7以上である。
また、凝固卵様食品中の澱粉の含有量は、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、さらにより好ましくは1.5以下であり、よりいっそう好ましくは1.3以下である。
【0048】
(増粘多糖類)
本実施形態において、凝固卵様食品に、さらに増粘多糖類を含むことが好ましい。本実施形態における増粘多糖類は、スクシノグリカン、タマリンドガム、ジェランガム、発酵セルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、寒天、マンナンおよびアルギン酸からなる群から選択される1種または2種以上である。増粘多糖類は、より好ましくは、スクシノグリカン、タマリンドガム、ジェランガムおよびキサンタンガムからなる群から選択される1種または2種以上である。
【0049】
凝固卵様食品中の増粘多糖類の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらにより好ましくは0.8質量%以上である。
また、凝固卵様食品中の増粘多糖類の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、さらにより好ましくは5質量%以下、よりいっそう好ましくは3質量%以下である。
【0050】
凝固卵様食品中の増粘多糖類の含有量は、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.3以上、さらにより好ましくは0.5以上、よりいっそう好ましくは0.7以上である。
また、凝固卵様食品中の増粘多糖類の含有量は、メチルセルロースに対する質量比で好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、さらにより好ましくは1.5以下、よりいっそう好ましくは1.2以下である。
【0051】
凝固卵様食品には、上述の成分以外の成分を適宜配合してもよい。かかる成分の具体例として、例えば、塩やグルタミン酸ナトリウム等の調味料、色素等の着色料、香辛料、香料、保存料、酸味料、増粘剤、ゲル化剤、酸化防止剤等が挙げられる。中でも、ヒマラヤ塩等の硫黄含有塩を配合することが好ましい。硫黄含有塩を配合することで、凝固卵様食品に卵食品のような風味をより付与することができる。
【0052】
凝固卵様食品に硫黄含有塩を配合する場合、凝固卵様食品中の硫黄含有塩の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらにより好ましくは0.8質量%以上である。
また、凝固卵様食品中の硫黄含有塩の含有量は、凝固卵様食品全体に対して好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下、よりいっそう好ましくは1.5質量%以下である。
【0053】
(凝固卵様食品)
本発明における凝固卵様食品とは、鶏卵を使用し加熱等により凝固させた卵食品と類似した官能的特性を有する卵様食品のことをいう。凝固とは、卵様食品の少なくとも一部分が凝固していればよく、半熟状のもの等も含まれる。ただし、本発明の卵様食品は、鶏卵の全卵もしくは卵白を使用した卵食品に類似した卵様食品のことを指し、卵黄のみを使用した卵食品に類似したものは含まれない。
【0054】
(凝固溶き卵様食品)
本発明における凝固溶き卵様食品とは、前述の凝固卵様食品のうち、鶏卵の全卵液もしくは卵白液を加熱等により凝固させた卵食品に類似した官能的特性を有する卵様食品のことをいう。例えば、スクランブルエッグ、炒り卵、卵そぼろ、オムレツ、卵焼き、だし巻き卵、伊達巻、かきたま汁等の卵、親子丼等の卵等が挙げられる。
好ましくは、スクランブルエッグ、炒り卵、卵そぼろ、オムレツ、卵焼き、だし巻き卵および伊達巻からなる群から選択される1種である。
【0055】
(凝固卵白様食品)
本発明における凝固卵白様食品とは、前述の凝固卵様食品のうち、鶏卵の卵白液を加熱等により凝固させた卵食品に類似した官能的特性を有する卵様食品のことをいう。例えば、ゆで卵の白身部分、目玉焼きの白身部分等が挙げられる。
【0056】
(凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品)
本発明における凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品とは、前述の凝固卵様食品のうち、鶏卵の卵白液を加熱等により凝固させた卵食品に類似した官能的特性を有する凝固卵白様食品部と、鶏卵の卵黄液を加熱等により凝固させた卵食品に類似した官能的特性を有する凝固卵黄様食品部から少なくとも構成される凝固卵様食品のことをいう。例えば、ゆで卵、目玉焼き、ポーチドエッグ等が挙げられ、好ましくはクラッシュされたゆで卵である。
なお、クラッシュされたゆで卵とは、ゆで卵の原型が崩れたゆで卵のことを指し、原形を崩す方法は特に問わない。例えば、包丁等でみじん切りにして刻む方法、スプーン等でつぶす方法、フードプロセッサー等で刻む方法等が挙げられる。
【0057】
凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品において、凝固卵白様食品部は、前述の凝固卵白様食品である。凝固卵黄様食品部は粉末状タンパク素材を含む。
【0058】
(粉末状タンパク素材)
粉末状タンパク素材とは、タンパク質を含む粉末状の素材のことである。
上記タンパク質は、好ましくは植物タンパク質である。植物タンパク質としては、大豆粉等の大豆タンパク質;とうもろこしタンパク質;エンドウタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、リョクトウタンパク質、ソラマメタンパク質等の種子タンパク質;小麦ふすま、玄米全粒粉等の穀物由来タンパク質等が挙げられる。
タンパク質は、より好ましくは大豆タンパク質、エンドウタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、リョクトウタンパク質およびソラマメタンパク質からなる群から選択される1種または2種以上であり、さらに好ましくはエンドウタンパク質である。
【0059】
粉末状タンパク素材は、好ましくは、大豆タンパク、エンドウタンパク、ヒヨコマメタンパク、リョクトウタンパク、ソラマメタンパク、小麦ふすまおよび玄米全粒粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはエンドウタンパクである。
【0060】
(加工食品)
本発明における加工食品は、例えば、タルタルソース等のソース類、サンドウィッチのフィリング等のフィリング類、ポテトサラダ等のサラダ類等が挙げられる。好ましくは、タルタルソース、フィリングおよびポテトサラダからなる群から選択される1種である。
【0061】
(凝固卵様食品の製造方法)
本実施形態において、凝固卵様食品の製造方法は、メチルセルロース、成分(A)、水、食用油脂およびタンパク素材を含む凝固卵様食品の製造方法であって、メチルセルロース、成分(A)、水、食用油脂およびタンパク素材を混合して乳化物を得る工程と、当該乳化物を加熱する工程と、を含む。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が60質量%以上100質量%以下
【0062】
乳化物を得る工程における混合方法は、たとえば、乳化物が適用される食品の種類、タンパク素材の性状等に応じて選択することができる。
具体的には、タンパク素材が粉体の場合であれば、メチルセルロース、成分(A)、タンパク素材、および食用油脂を均一に懸濁させておき、そこへ水を加え混合する。このときの混合装置がハンドミキサーの場合、たとえば30秒~5分、好ましくは1分~3分混合する。
また、タンパク素材が液体の場合であれば、メチルセルロース、成分(A)、および食用油脂を均一に懸濁させておき、そこへ液体のタンパク素材を加えて前述と同様に混合することで調製することができる。
また、ハンドミキサーの他に、縦型ミキサー、横型ミキサー、サイレントカッター等の機器を用いて混合することもできる。
但し、攪拌速度や攪拌羽根の形状、攪拌容器形状や各原料の仕込み重量によっても最適な乳化条件は異なるため、前述の方法に限定されるものではない。
【0063】
乳化物を加熱する工程における加熱方法は、特に限定されず、製造する卵様食品に応じて適宜選択することができる。加熱方法の具体例として、フライパンや鉄板上での加熱;オーブン等での加熱;スチームコンベクションオーブン等での加熱;レトルト加熱等が挙げられる。好ましくはオーブン等での加熱、フライパンや鉄板上での加熱、およびレトルト加熱からなる群から選択される1種である。
【0064】
乳化物を得る工程で得られる乳化物は、流動性を有するものであってもよいし、固形状であってもよい。乳化物は水中油滴型が好ましい。
【0065】
凝固卵様食品に澱粉をさらに含む場合、上述の乳化物を得る工程において、澱粉を混合する工程を含む。
【0066】
凝固卵様食品に増粘多糖類をさらに含む場合、上述の乳化物を得る工程において、増粘多糖類を混合する工程を含む。
【0067】
また、乳化物を得る工程の後、冷凍保管および冷蔵保管からなる群から選ばれる1種または2種の工程をさらに含んでもよい。
冷凍における保管温度は、たとえば-20℃以上0℃未満とすることができる。冷蔵における保管温度は、たとえば0℃以上15℃以下とすることができる。
【0068】
(凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品の製造方法)
本実施形態において、凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品の製造方法は、上述の本実施形態における凝固卵様食品の製造方法により凝固卵白様食品部を得る工程と、当該凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を混合する工程と、を含む。また、凝固卵黄様食品部は粉末状タンパク素材を含む。
【0069】
凝固卵黄様食品部は、食感を調整する観点および作業性の観点から、粉末状タンパク素材の他に水を加えることが好ましい。なお、ここでいう水は、上述した凝固卵様食品中の水と同様に、通常の水のみでなく、牛乳、豆乳、果汁、野菜ジュース等の配合成分中の水分も含まれる。
【0070】
凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を混合する工程における混合方法は、特に限定されない。例えば、ヘラ等を用いて混合する方法、縦型ミキサー、横型ミキサー、サイレントカッター等の機器を用いて混合する方法等が挙げられる。
また、当該混合工程において、凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部以外の成分を適宜混合してもよい。
【0071】
(加工食品の製造方法)
本実施形態において、加工食品の製造方法は、上述の本実施形態における凝固卵様食品の製造方法により凝固卵様食品を得る工程と、得られた凝固卵様食品を含む材料を調製して加工食品を得る工程と、を含む。
【0072】
凝固卵様食品を含む材料を調製して加工食品を得る工程において、調製方法は特に限定されず、製造する加工食品に応じて適宜選択することができる。例えば、混合、切断、加熱、冷却等により調製する方法が挙げられる。
例えば、凝固卵様食品を含むタルタルソースを製造する場合においては、上述の製造方法で得た凝固卵白様食品部と凝固卵黄様食品部を含む凝固卵様食品を、マヨネーズ等の材料と混合して調製することができる。
【0073】
加工食品中の凝固卵様食品の含有量は、製造する加工食品に応じて適宜選択することができるが、加工食品全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。
また、加工食品中の凝固卵様食品の含有量は、食品全体に対して100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、さらにより好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
【0075】
原材料として、主に以下のものを使用した。
[メチルセルロース]
・メチルセルロース:ヒートゲル超、ユニテックフーズ株式会社製(メトキシ基25~33%、溶解温度10℃以下)
[成分(A)]
・成分(A):製造例2で得られた粉粒状物1
[タンパク素材]
・分離大豆タンパク:プロファム781、ADMジャパン株式会社製(タンパク質含量90質量%以上)
[食用油脂]
・菜種油:AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製
【0076】
[澱粉]
・リン酸架橋タピオカ澱粉:アクトボディーTP-4W、株式会社J-オイルミルズ製
・油脂加工タピオカ澱粉:製造例3で得られた油脂加工タピオカ澱粉
・アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉:アクトボディーATP-27、株式会社J-オイルミルズ製
・アセチル化タピオカ澱粉:アクトボディーA-700、株式会社J-オイルミルズ製
・未加工エンドウ澱粉:PURIS Pea Starch、PURIS社製
・アセチル化エンドウ澱粉:製造例4で得られたアセチル化エンドウ澱粉
【0077】
[増粘多糖類]
・増粘多糖類A:スクシノグリカン(サクシノグリカンJ、DSP五協フード&ケミカル株式会社製)
・増粘多糖類B:タマリンドガム40%、ジェランガム20%が配合された素材(ゲルアップJ-2050、三栄源エフエフアイ株式会社製)
・増粘多糖類C:発酵セルロース18.3%、キサンタンガム12.1%、カルボキシメチルセルロースナトリウム6.2%が配合された素材(サンアーティストPN、三栄源エフエフアイ株式会社製)
・増粘多糖類D:寒天(ウルトラ寒天イーナ、伊那食品工業株式会社製)
・増粘多糖類E:マンナン(ウルトラマンナン、伊那食品工業株式会社製)
・増粘多糖類F:マンナン(クイックマンナン、伊那食品工業株式会社製)
・増粘多糖類G:アルギン酸エステル(昆布酸501、株式会社キミカ製)
【0078】
[粉末状タンパク素材]
・エンドウ粉末たんぱく:エンドウたん白PP‐CS、オルガノフードテック株式会社製(タンパク質含量75-85質量%)
[その他]
・ヒマラヤ塩:ブラック岩塩パウダー粗めタイプ、エフアール株式会社製
・グルタミン酸ナトリウム:味の素、味の素株式会社製
・色素:KCオレンジGPE-1、神戸化成株式会社製
・ターメリック:S&Bターメリック、ヱスビー食品株式会社製
【0079】
(製造例1)低分子化澱粉の製造
粉粒状物1の原料となる低分子化澱粉として酸処理ハイアミロースコーンスターチを製造した。
ハイアミロースコーンスターチ(株式会社J-オイルミルズ製、HS-7、アミロース含量70質量%)を水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を後述の方法で測定したところ、ピーク分子量は1.2×104であった。
【0080】
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー株式会社製HPLCユニットを使用しておこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で、目開き0.15mm篩下の画分を回収した。この回収画分を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過を行い、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー株式会社製)2本
流速:0.5mL/min
移動相:5mM 硝酸ナトリウム含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー株式会社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。
検量線には、分子量既知のプルラン(Shodex Standard P-82、昭和電工株式会社製)を使用した。
【0081】
(製造例2)粉粒状物1の製造
コーンスターチ79質量%、製造例1で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチ20質量%、および、炭酸カルシウム1質量%を充分に均一になるまで袋内で混合した。2軸エクストルーダー(幸和工業社製KEI-45)を用いて、混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。
原料供給:450g/分
加水:17質量%
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃および100℃
出口温度:100~110℃
スクリューの回転数250rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られた加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を10質量%に調整した。
次いで、乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けした。篩分けした加熱糊化物を、所定の配合割合で混合し、表1に示す粒度分布を有する粉粒状物1を調製した。後述の方法で測定した粉粒状物1の25℃における冷水膨潤度を表1にあわせて示す。
【0082】
(冷水膨潤度の測定方法)
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、型番MX-50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃の恒温槽の中でゆるやかに撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプター)し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
(5)BをCで割った値を冷水膨潤度とした。
【0083】
【0084】
(製造例3)油脂加工タピオカ澱粉の製造
100質量部のタピオカ架橋でん粉「アクトボディーTP-1」(膨潤度18.4、株式会社J-オイルミルズ製)に、ハイリノールサフラワー油0.1質量部、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.05質量部、および、炭酸ナトリウム10質量部に対して水30質量部を加えて炭酸ナトリウムを完全に溶解させた25%炭酸ナトリウム水溶液0.4質量部(炭酸ナトリウム当量として0.1質量部)を加え、混合機(スーパーミキサー、株式会社カワタ製)で3000rpm、3分間均一に混合し、混合物(水分14.8%)を得た。この混合物を棚段式乾燥機にて70℃10日間加熱し、油脂加工タピオカ澱粉を得た。
【0085】
(製造例4)アセチル化エンドウ澱粉の製造
エンドウ澱粉(PURIS社製「PURIS Pea Starch」)170質量部に水269質量部を加えて懸濁液とした。この懸濁液に3質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8.4とした後、酢酸ビニルモノマーを8.55質量部加えて1時間反応させた。反応中の懸濁液のpHは、pHコントローラーにより8.4に維持した。反応後、3質量%塩酸水溶液でpH6に中和した。得られた澱粉を水で洗浄し、ろ過により回収した後、乾燥し、アセチル化エンドウ澱粉を得た。
【0086】
<実施例1>
表2に示す配合で、各実施例のスクランブルエッグ様食品を以下の方法により作製した。
1.粉体原料(メチルセルロース、成分(A)、大豆たんぱく、リン酸架橋タピオカ澱粉、塩、増粘多糖類)をボウルに秤とり、混ぜ合わせた。
2.上記1.に菜種油を加え、混ぜ合わせた。
3.上記2.に冷水を加え、ハンドミキサー(ハンドミキサーMK-H4-W、Panasonic製)で1分以上攪拌し、水中油滴型の乳化物を得た。
4.上記3.をフライパンにのせ、IHコンロで約1分30秒かき混ぜながら焼成し、スクランブルエッグ様食品を得た。
【0087】
作製したスクランブルエッグ様食品の食感について、1名の専門パネラーが以下の基準で評価した。3点以上を合格とした。評価結果を表2にあわせて示す。
【0088】
(食感)
5点:スクランブルエッグ様のふんわりとろとろした食感を強く感じる
4点:スクランブルエッグ様のふんわりとろとろした食感を感じる
3点:スクランブルエッグ様のふんわりとろとろした食感をやや感じる
2点:スクランブルエッグ様のふんわりとろとろした食感をほとんど感じない
1点:スクランブルエッグ様のふんわりとろとろした食感を感じない
【0089】
【0090】
その結果、表2に示されるように、各実施例では、スクランブルエッグ様の良好な食感を有するスクランブルエッグ様食品を得ることができた。特に、増粘多糖類A(スクシノグリカン)を用いた実施例1-1の食感が良好だった。
【0091】
<実施例2>
表3に示す配合で、実施例2のスクランブルエッグ様食品を以下の方法により作製した。
1.粉体原料(メチルセルロース、成分(A)、大豆たんぱく、リン酸架橋タピオカ澱粉、塩、増粘多糖類、ホワイトコショウ、グルタミン酸ナトリウム)をボウルに秤とり、混ぜ合わせた。
2.上記1.に菜種油と色素を加え、混ぜ合わせた。
3.上記2.に冷水を加え、ハンドミキサーで1分以上攪拌し、水中油滴型の乳化物を得た。
4.上記3.をフライパンにのせ、IHコンロで約1分30秒かき混ぜながら焼成し、スクランブルエッグ様食品を得た。
【0092】
【0093】
作製したスクランブルエッグ様食品および対照例の卵を使用し製造された市販のスクランブルエッグの外観および食感について、4名の専門パネラーの平均点により評価した。外観については以下の基準で3段階評価し、2点以上を合格とした。食感については実施例1と同様の評価基準により評価した。評価結果を表4にあわせて示す。
【0094】
(外観)
3点:スクランブルエッグに見える
2点:スクランブルエッグにやや見える
1点:スクランブルエッグには見えない
【0095】
【0096】
その結果、表4に示されるように、実施例2において、対照例2-1および2-2の市販品のスクランブルエッグと遜色ない程度の外観および食感を有するスクランブルエッグ様食品を得ることができた。
【0097】
<実施例3>
表5に示す配合で、ゆで卵様食品を含むタルタルソースを以下の方法により作製した。
[A.植物性マヨネーズの作製]
ボウルに豆乳30質量部、ヒマラヤ塩4質量部、砂糖5質量部、酢20質量部、ホワイトペッパー0.5質量部、グルタミン酸ナトリウム0.3質量部、マスタード18質量部を秤とり、ハンドミキサーで約1分間攪拌した。その後、菜種油200質量部を加え、ハンドミキサーでとろみがつくまで攪拌し、植物性マヨネーズを得た。
【0098】
[B.ゆで卵様食品(白身)の作製]
白身、白身(黄着色)に分けて、以下の通り作製した。
1.粉体原料(メチルセルロース、粉粒状物1、大豆たんぱく、リン酸架橋タピオカ澱粉、塩、ターメリック(白身(黄着色)のみ))をボウルに秤とり、混ぜ合わせた。
2.上記1.に菜種油を加え、混ぜ合わせた。
3.上記2.に冷水を加え、ハンドミキサーで約2分攪拌し、水中油滴型の乳化物を得た。
4.上記3.をトレーにのせ、スチームコンベクションオーブンで、200℃、スチーム100%の条件で約10分焼成し、ゆで卵様食品を得た。
5.上記4.のゆで卵様食品の粗熱が取れたら、みじん切りにした。
【0099】
[C.タルタルソースの作製]
1.玉ねぎをみじん切りにし、水にさらした後ペーパータオルで絞り、水切りをした。
2.ボウルに、上記A.で作製した植物性マヨネーズ、上記B.で作製したゆで卵様食品(白身および白身(黄着色))、上記1.でみじん切りした玉ねぎ、エンドウ粉末たんぱく、および水をいれ、ヘラで軽く混ぜ合わせ、タルタルソースを得た。
【0100】
【0101】
作製したタルタルソースおよび対照例の卵を使用し製造された市販のタルタルソースの外観および味について、6名の専門パネラーが以下の基準で評価した。評点は専門パネラーの平均点とし、味については3点以上、外観については2点以上を合格とした。評価結果を表6にあわせて示す。
【0102】
(外観)
3点:タルタルソースに見える
2点:タルタルソースにやや見える
1点:タルタルソースには見えない
(味)
5点:卵のような濃厚感を強く感じる
4点:卵のような濃厚感を感じる
3点:卵のような濃厚感をやや感じる
2点:卵のような濃厚感をほとんど感じない
1点:卵のような濃厚感を感じない
【0103】
【0104】
その結果、表6に示されるように、実施例3では、各対照例と比較して、卵のような濃厚感を強く感じるタルタルソースを得ることができた。また、実施例3では、ゆで卵の黄身のような粉っぽさを感じることができた。
【0105】
<実施例4>
表7に示す配合で、各実施例のゆで卵の白身様食品を作製した。作製方法は、実施例3の[B.ゆで卵様食品(白身)の作製]にて前述した方法と同様である。
【0106】
作製したゆで卵の白身様食品の食感(歯切れ、ねちゃつき)について、2名の専門パネラーが以下の基準で評価した。評点は専門パネラーの平均点とし、3点以上を合格とした。評価結果を表7にあわせて示す。
【0107】
(歯切れ)
5点:噛んだ時、非常に歯切れが良い
4点:噛んだ時、かなり歯切れが良い
3点:噛んだ時、歯切れが良い
2点:噛んだ時、歯切れがやや悪い
1点:噛んだ時、歯切れが悪い
(ねちゃつき)
5点:全くねちゃつきが無い
4点:ほとんどねちゃつきが無い
3点:少しねちゃつきがあるが許容範囲
2点:ややねちゃつきがある
1点:かなりねちゃつきがある
【0108】
【0109】
その結果、表7に示されるように、各実施例において、食感が良好なゆで卵の白身様食品を得ることができた。特に、リン酸架橋タピオカ澱粉を用いた実施例4-1の食感が良好だった。
【0110】
<実施例5>
表8に示す配合で、ゆで卵様食品を含むタルタルソースを作製した。作製方法は、実施例3の[B.ゆで卵様食品(白身)の作製]において、菜種油と同時に色素を加えたことを除き、実施例3のA.~C.と同様の方法である。
【0111】
作製したタルタルソースの外観および味について、2名の専門パネラーが実施例3と同様の評価基準で評価した。評価結果を表8にあわせて示す。
【0112】
【0113】
その結果、表8に示されるように、各実施例において、外観が良好で卵のような濃厚感を感じるタルタルソースを得ることができた。特に、リン酸架橋タピオカ澱粉を用いた実施例5-1が味の面において良好だった。
【0114】
<実施例6>
表9に示す配合で、以下の方法により、各実施例のゆで卵の白身様食品を作製した。
1.粉体原料(メチルセルロース、粉粒状物1、大豆たんぱく、澱粉、塩)をボウルに秤とり、ヘラで混ぜ合わせた。
2.上記1.に菜種油を加え、ヘラで混ぜ合わせた。
3.上記2.に冷水を加え、ヘラで約1分間攪拌し、水中油滴型の乳化物を得た。
4.上記3.をビニールケーシング(ケーシング径30mm)に高さ10cmまで充填した。
5.上記4.のケーシングした乳化物をレトルト加熱(レトルト機器:平山製作所HLM-36LBC、中心温度121℃、加熱時間4分)し、ゆで卵の白身様食品を得た。
【0115】
作製したゆで卵の白身様食品の食感(歯切れ、ねちゃつき)について、2名の専門パネラーが実施例4と同様の基準で評価した。評点は専門パネラーの平均点とし、3点以上を合格とした。評価結果を表9にあわせて示す。
【0116】
【0117】
その結果、表9に示されるように、各実施例において、食感が良好なゆで卵の白身様食品を得ることができた。エンドウ澱粉を用いた場合でも、食感が良好なゆで卵の白身様食品を得られることが分かった。
【要約】
本発明は、凝固卵食品のような良好な味や食感を有する新規な凝固卵様食品に関する。
本発明の凝固卵様食品は、メチルセルロース、成分(A)、水、食用油脂およびタンパク素材を含むことを特徴とする。成分(A)は、以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物である。(1)澱粉含量が75質量%以上(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が60質量%以上100質量%以下