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特許7318320共役ポリマー、有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、及び有機薄膜トランジスタ
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  • 特許-共役ポリマー、有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、及び有機薄膜トランジスタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】共役ポリマー、有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、及び有機薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/10 20230101AFI20230725BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20230725BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20230725BHJP
   H10K 10/40 20230101ALI20230725BHJP
【FI】
H10K85/10
H01L29/78 618B
C08G61/12
H10K10/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019104312
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020120098
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019009047
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真人
(72)【発明者】
【氏名】上田 さおり
(72)【発明者】
【氏名】宮下 真人
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174322(JP,A)
【文献】特開2007-208032(JP,A)
【文献】特開2007-197400(JP,A)
【文献】特表2008-519140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 85/10
H10K 10/40
H01L 29/786
C08G 61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される共役ポリマーであることを特徴とする共役ポリマー。
【化1】
(ここで、A、C、及びEは、それぞれ独立して、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、チアゾール環、チエノチオフェン環、2-エテニルチオフェン環またはベンゼン環からなる群の少なくとも1種の環を含む2価の連結基を示し、Bは下記一般式(B-9)~(B-14)からなる群の少なくとも1種で示される骨格を有する構造であり、Dは下記式(D-60)、(D―62)、(D-63)、(D-65)~(D-68)からなる群の少なくとも1種の連結基を示す。A、C及びEは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。bは1~3を示し、a、c、eは0であり、dは1~3である。nは2以上の整数を示す。)
【化2】
(ここで、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群の1種であり、Yは炭素原子であり、Zは炭素原子であり、Rは炭素数1~30のアルキル基又は炭素数4~30のアリール基である。)
【化3】
(ここで、*は他の構造との結合部位を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の共役ポリマーを含有することを特徴とする有機半導体層形成用溶液。
【請求項3】
請求項2に記載の有機半導体層形成用溶液を用いてなることを特徴とする有機半導体層。
【請求項4】
請求項3に記載の有機半導体層を含んでなることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
下記一般式(2)及び(3)で示される化合物を用い、カップリング反応させることを特徴とする請求項1に記載の共役ポリマーの製造方法。
-(B)b-Z (2)
-(C)c-(D)d-(E)e-(A)a-Z (3)
(ここで、A、B、C、D、E、a、b、c、d、及びeは、上記一般式(1)におけるA、B、C、D、E、a、b、c、d、及びeと同意義を示す。Z~Zは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニロキシ、メタンスロホニロキシ、トルエンスルホニロキシ、トリアルキルスズ、トリアリールスズ、ジアルコキシホウ素、ジヒドロキシホウ素、ハロゲン化亜鉛、ジメチルフルオロケイ素、ジフルオロメチルケイ素、またはハロゲン化マグネシウムを示す。但し、Z~Zの内、二つはハロゲン、トリフルオロメタンスルホニロキシ、メタンスロホニロキシ、トルエンスルホニロキシからなる群から選ばれ、残りの二つは、トリアルキルスズ、トリアリールスズ、ジアルコキシホウ素、ジヒドロキシホウ素、ハロゲン化亜鉛、ジメチルフルオロケイ素、ジフルオロメチルケイ素、トリエトキシケイ素、トリメトキシケイ素、ハロゲン化マグネシウムからなる群から選ばれる。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料等の電子材料への展開が可能な新規な共役ポリマー、これを用いた有機半導体層、及び有機薄膜トランジスタに関するものであり、特に移動度及び溶解性に優れることから様々なデバイス作製プロセスに適用可能な新規な共役ポリマー、これを用いた有機半導体層、及び有機薄膜トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されている。この有機半導体デバイスは、有機半導体層、基板、絶縁層、電極等の数種類の材料から構成され、中でも電荷のキャリア移動を担う有機半導体層は該デバイスの中心的な役割を有している。そして、有機半導体デバイス性能は、この有機半導体層を構成する有機半導体材料のキャリア移動度により左右されることから、高キャリア移動度を与える有機半導体材料の出現が所望されている。
【0003】
有機半導体層を作製する方法としては、高温真空下、有機材料を気化させて実施する真空蒸着法、有機材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法等の方法が一般的に知られている。このうち、塗布法は高温高真空条件を用いることなく印刷技術を用いても実施することができる。従って、デバイス作製の大幅な製造コストの削減を図ることが期待でき、経済的に好ましいプロセスである。
【0004】
このような塗布法に使用される有機半導体材料は、高いキャリア移動度、及びデバイス作製のプロセス上の観点から、0.1cm/V・sec以上のキャリア移動度、及び室温での溶解度が0.1重量%以上を持つことが好ましい。
【0005】
ここで、一般的に高分子半導体は低分子半導体と比べて、製膜性に優れていることが知られているが、低分子半導体と比べて薄膜の結晶性を高めることが難しいことから、低分子半導体と比べキャリア移動度が低い課題が存在する。薄膜の結晶性及び分子の配向性を高める方法として熱アニールが有効であるが、プラスチック基板の耐熱性を考慮して、140℃以下の温度でアニールすることが好ましい。
【0006】
現在、高分子材料としては、ポリ(2,5-ビス(3-アルキルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン)(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)、ポリ(2,7-ビス(3-アルキルチオフェン-2-イル)ナフトジチオフェン)(例えば、非特許文献3参照)等が提案されている。
【0007】
しかし、非特許文献2に記載されたポリ(2,5-ビス(3-アルキルチオフェニル-2-)チエノ[3,2-b]チオフェン)のアニール温度は150℃であり、非特許文献3に記載されたポリ(2,7-ビス(3-アルキルチオフェン-2-イル)ナフトジチオフェン)のアニール温度も150℃であり、より温和な温度でのアニールが求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】ネイチャー マテリアルズ、2006年、5巻、328~333頁
【文献】ジャーナル オブ アプライド フィジックス、2009年、105巻、024516-1~024516-5頁
【文献】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー、2011年、133巻、6852~6860頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高キャリア移動度で高溶解性、温和な温度でのアニールが可能な新規な塗布型の有機半導体材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、新規な共役ポリマーが高キャリア移動度を与えると共に、高溶解性、温和な温度でのアニールが可能な有機半導体材料となることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
即ち、本発明は、シクロペンタビフェニレン骨格を有するモノマー単位を含む共役ポリマー、有機半導体層、それを用いてなる有機薄膜トランジスタに関するものである。
【0012】
本発明のシクロペンタビフェニレン骨格を有するモノマー単位を含む共役ポリマーは、シクロペンタビフェニレン骨格をモノマー単位に含むものであれば何ら制限されない。
【0013】
該シクロペンタビフェニレン骨格を有するモノマー単位を含む共役ポリマーは、より詳細には下記一般式(1)で示される。
【0014】
【化1】
【0015】
(ここで、A、C、及びEは、それぞれ独立して、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、チアゾール環、チエノチオフェン環、2-エテニルチオフェン環またはベンゼン環からなる群の少なくとも1種の環を含む2価の連結基を示し、Bは少なくとも一つのシクロペンタビフェニレン骨格を含む縮合4環~縮合12環を含む2価の連結基を示し、Dは少なくとも一つの、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、または窒素原子を含む縮合2環~縮合7環を含む2価の連結基を示す。A、C及びEは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。bは1~3を示し、a、c、d、eは0~3であり、a、c、d、eの少なくとも一つが1以上である。nは2以上の整数を示す。)
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の共役ポリマーは上記一般式(1)で示される。
【0018】
一般式(1)のA、C、及びEは、それぞれ独立して、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、チアゾール環、チエノチオフェン環、2-エテニルチオフェン環またはベンゼン環からなる群の少なくとも1種の環を含む2価の連結基を示す。高移動度及び高溶解性のため、該連結基はチオフェン環、フラン環、セレノフェン環、チアゾール環からなる群の少なくとも1種を含むことが好ましく、チオフェン環を含むことがさらに好ましい。A、C及びEは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
一般式(1)のA、C、及びEで示される連結基としては、例えば、下記一般式(A-1)~(A~9)を挙げることができる。
【0020】
【化2】
【0021】
(ここで、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、または炭素数4~30のアリール基を示す。R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。*は他の構造との結合部位を示す。)
【0022】
該A、C、及びE示される連結基は、高移動度を示す共役ポリマーとなることから、(A-1)~(A-4)からなる群の少なくとも1種が好ましく、(A-1)~(A-3)からなる群の少なくとも1種がさらに好ましい。
【0023】
、Rにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を示し、安定であることからフッ素原子、塩素原子のいずれかが好ましい。
【0024】
、Rにおける炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソバレリル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-ヘキシルウンデシル基、2-オクチルデシル基、2-オクチルドデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-デシルヘキサデシル基、3-ヘキシルデシル基、3-オクチルデシル基、3-オクチルドデシル基、3-デシルテトラデシル基、3-デシルヘキサデシル基、4-ヘキシルデシル基、4-オクチルデシル基、4-オクチルドデシル基、4-デシルテトラデシル基、4-デシルヘキサデシル基、4-シクロヘキシルブチル基、8-シクロヘキシルオクチル基等の分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、3-デシルシクロペンチル基、4-デシルシクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。そして、その中でも特に高移動度及び高溶解性を示す共役ポリマーとなることから、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等の炭素数6~24の直鎖アルキル基、及び2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、2-オクチルドデシル基、2-デシルドデシル基、2-デシルテトラデシル基、3-ヘキシルデシル基、3-オクチルデシル基、3-オクチルドデシル基、3-デシルテトラデシル基、4-ヘキシルデシル基、4-オクチルデシル基、4-オクチルドデシル基、4-デシルテトラデシル基、4-デシルヘキサデシル基等の炭素数8~26の分岐アルキル基からなる群の1種が好ましく、炭素数10~22の直鎖アルキル基又は炭素数10~24の分岐アルキル基からなる群の1種がさらに好ましい。
【0025】
なお、該炭素数1~30のアルキル基は、少なくとも一つ以上の水素原子をフッ素原子に置換することができる。また、該炭素数1~30のアルキル基は、一つ乃至三つの炭素原子を酸素原子に置換することができる。
【0026】
、Rにおける炭素数1~30のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基、ヘンイコシルオキシ基、ドコシルオキシ基等の直鎖アルコキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソバレロキシ基、イソヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、3-エチルヘプチルオキシ基、3-エチルデシルオキシ基、2-ヘキシルデシルオキシ基、2-オクチルデシルオキシ基、2-オクチルドデシルオキシ基、2-デシルテトラデシルオキシ基、2-デシルヘキサデシルオキシ基、3-ヘキシルデシルオキシ基、3-オクチルデシルオキシ基、3-オクチルドデシルオキシ基、3-デシルテトラデシルオキシ基、3-デシルヘキサデシルオキシ基、4-ヘキシルデシルオキシ基、4-オクチルデシルオキシ基、4-オクチルドデシルオキシ基、4-デシルテトラデシルオキシ基、4-デシルヘキサデシルオキシ基、4-シクロヘキシルブチルオキシ基、8-シクロヘキシルオクチルオキシ基等の分岐アルコキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、3-デシルシクロペンチルオキシ基、4-デシルシクロヘキシルオキシ基等の環状アルコキシ基が挙げられる。そして、その中でも特に高移動度及び高溶解性を示す共役ポリマーとなることから、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基、ヘンイコシルオキシ基、ドコシルオキシ基等の炭素数8~24の直鎖アルキルオキシ基、及び2-エチルヘキシルオキシ基、3-エチルヘプチルオキシ基、3-エチルデシルオキシ基、2-ヘキシルデシルオキシ基、2-オクチルデシルオキシ基、2-オクチルドデシルオキシ基、2-デシルドデシルオキシ基、2-デシルテトラデシルオキシ基、3-ヘキシルデシルオキシ基、3-オクチルデシルオキシ基、3-オクチルドデシルオキシ基、3-デシルテトラデシルオキシ基、4-ヘキシルデシルオキシ基、4-オクチルデシルオキシ基、4-オクチルドデシルオキシ基、4-デシルテトラデシルオキシ基、4-デシルヘキサデシルオキシ基等の炭素数8~26の分岐アルコキシ基が好ましく、炭素数10~22の直鎖アルコキシ基及び炭素数10~24の分岐アルコキシ基がさらに好ましい。
【0027】
なお、該炭素数1~30のアルコキシ基は、少なくとも一つ以上の水素原子をフッ素原子に置換することができる。また、該炭素数1~30のアルキル基は、一つ乃至三つの炭素原子を酸素原子に置換することができる。
【0028】
、Rにおける炭素数1~30のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチオルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ウンデシルチオ基、ドデシルチオ基等を挙げることができる。
【0029】
、Rにおける炭素数1~30のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデノイル基、ヘキサイデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、ノナデカノイル基、イコシロイル基、ヘンイコシロイル基、ドコシロイル基等の直鎖アシル基、イソブチリル基、2-エチルヘキサノイル基、3-エチルヘプタノイル基、3-エチルデカノイル基、2-ヘキシルデカノイル基、2-オクチルデカノイル基、2-オクチルドデカノイル基、2-デシルテトラデカノイル基、2-デシルヘキサデカノイル基、3-ヘキシルデカノイル基、3-オクチルデカノイル基、3-オクチルドデカノイル基、3-デシルテトラデカノイル基、3-デシルヘキサデカノイル基、4-ヘキシルデカノイル基、4-オクチルデカノイル基、4-オクチルドデカノイル基、4-デシルテトラデカノイル基、4-デシルヘキサデカノイル基、4-シクロヘキシルブチリル基、8-シクロヘキシルオクタノイル基等の分岐アルキル基等が挙げられる。
【0030】
該炭素数1~30のアシル基は、少なくとも一つ以上の水素原子をフッ素原子に置換することができる。また、該炭素数1~30のアシル基は、一つ乃至三つの炭素原子を酸素原子に置換することができる。
【0031】
、Rにおける炭素数2~30のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、2-メチルプロペニル基、ペンテニル基、2-メチルブテニル基、ヘキセニル基、2-メチルペンテニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、2-エチルヘキセニル基、ノネル基、2-エチルヘプテニル基、デセニル基、ドデセニル基、シクロペンテニル-1-基、シクロヘキセニル-1-基、シクロヘプテニル-1-基からなる群の1種が挙げられる。
【0032】
該炭素数2~30のアルケニル基は、少なくとも一つ以上の水素原子をフッ素原子に置換することができる。
【0033】
、Rにおける炭素数2~30のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、tert-ブチルジメチルシリルエチニル基からなる群の1種が挙げられる。
【0034】
該炭素数2~30のアルキニル基は、少なくとも一つ以上の水素原子をフッ素原子に置換することができる。
【0035】
、Rにおけるにおける炭素数4~30のアリール基は、炭素数4~30のヘテロアリール基を含む。該炭素数4~30のアリール基としては、例えば、フェニル基;p-トリル基、p-(ヘキシル)フェニル基、p-(オクチル)フェニル基、p-(デシル)フェニル基、p-(ドデシル)フェニル基、p-(テトラデシル)フェニル基、p-(ヘキサデシル)フェニル基、p-(オクタデシル)フェニル基、p-(2-エチルヘキシル)フェニル基等のアルキル置換フェニル基;2-フリル基、2-チエニル基;5-フルオロ-2-フリル基、5-メチル-2-フリル基、5-エチル-2-フリル基、5-(プロピル)-2-フリル基、5-(ブチル)-2-フリル基、5-(ペンチル)-2-フリル基、5-(ヘキシル)-2-フリル基、5-(オクチル)-2-フリル基、5-(テトラデシル)-2-フリル基、5-(ヘキサデシル)-2-フリル基、5-(2-エチルヘキシル)-2-フリル基、5-フルオロ-2-チエニル基、5-メチル-2-チエニル基、5-エチル-2-チエニル基、5-(プロピル)-2-チエニル基、5-(ブチル)-2-チエニル基、5-(ペンチル)-2-チエニル基、5-(ヘキシル)-2-チエニル基、5-(オクチル)-2-チエニル基、5-(デシル)-2-チエニル基、5-(ドデシル)-2-チエニル基、5-(テトラデシル)-2-チエニル基、5-(ヘキサデシル)-2-チエニル基、5-(オクタデシル)-2-チエニル基、5-(2-エチルヘキシル)-2-チエニル基、5-(2-ヘキシルウンデシル)-2-チエニル基、5-(2-オクチルドデシル)-2-チエニル基、4-(テトラデシル)-2-チエニル基、4-(ヘキサデシル)-2-チエニル基、4-(オクタデシル)-2-チエニル基、4-(2-エチルヘキシル)-2-チエニル基、4-(2-ヘキシルウンデシル)-2-チエニル基、4-(2-オクチルドデシル)-2-チエニル基等のアルキル置換ヘテロアリール基からなる群の1種を挙げることができる。
【0036】
該炭素数4~30のアリール基は、少なくとも一つ以上の水素原子をフッ素原子に置換することができる。
【0037】
一般式(1)のBは、少なくとも一つのシクロペンタビフェニレン骨格を含む縮合4環~縮合12環を含む2価の連結基を示す。該縮合4環~縮合12環を構成する全ての環は、4~8員環である。該4~8員環である環の具体例としてはシクロブテン環、ヒドロシクロペンタ環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、ピロール環、イミダゾール環、ベンゼン環、ピリジン環、シクロオクタテトラエン環を挙げることができ、該4~8員環は、高移動度のため、シクロブテン環、ヒドロシクロペンタ環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ベンゼン環からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。特に高溶解性のため、4~6員環であることが好ましく、シクロブテン環、ヒドロシクロペンタ環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ベンゼン環からなる群の少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0038】
該Bは、高溶解性及び高移動度のため、縮合5環~縮合9環を含む2価の連結基であることが好ましい。
【0039】
該Bで表される連結基としては、例えば、下記一般式(B-1)~(B~42)を挙げることができる。
【0040】
【化3】
【0041】
【化4】
【0042】
(ここで、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NH、またはC=Cを示し、Yは炭素原子または窒素原子を示し、Zは炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示し、Rはそれぞれ独立し、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、または炭素数4~30のアリール基からなる群の少なくとも1種を示す。*は他の構造との結合部位を示す。)。
【0043】
該Bは、高移動度及び高溶解性を示す共役ポリマーとなることから(B-9)~(B-14)及び(B-26)~(B-42)からなる群の少なくとも1種が好ましく、(B-9)~(B-14)及び(B-26)~(B-35)からなる群の少なくとも1種がさらに好ましい。
【0044】
Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NH、またはC=Cを示し、高移動度を示す共役ポリマーとなることから酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群の1種が好ましく、硫黄がさらに好ましい。
【0045】
Yは炭素原子または窒素原子の少なくともいずれかを示し、高移動度を示す共役ポリマーとなることから炭素原子が好ましい。
【0046】
Zは炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子からなる群の1種を示し、安定であることから炭素原子が好ましい。
【0047】
Rはそれぞれ独立し、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、または炭素数4~30のアリール基からなる群の1種を示し、高移動度を示す共役ポリマーとなることから炭素数1~30のアルキル基、炭素数4~30のアリール基が好ましい。
【0048】
該炭素数1~30のアルキル基は、高移動度及び高溶解性の観点から、炭素数6~24の直鎖アルキル基及び炭素数8~26の分岐アルキル基がさらに好ましく、炭素数10~22の直鎖アルキル基及び炭素数10~24の分岐アルキル基が特に好ましい。
【0049】
上記一般式(B-1)~(B~42)において、sp混成軌道の炭素上の水素原子及びNHの水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、または炭素数4~30のアリール基からなる群の少なくとも1種に置換することができ、高移動度を示す共役ポリマーとなることから、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数4~30のアリール基からなる群から選ばれることが好ましく、水素原子、フッ素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基からなる群から選ばれることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0050】
該炭素数1~30のアルキル基は、高移動度及び高溶解性の観点から、炭素数6~24の直鎖アルキル基及び炭素数8~26の分岐アルキル基がさらに好ましく、炭素数10~22の直鎖アルキル基及び炭素数10~24の分岐アルキル基が特に好ましい。
【0051】
Rの例としての該ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数4~30のアリール基の具体例は、例えば、上述の一般式(A-1)~(A~9)のR及びRと同様に考えることができ、ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数4~30のアリール基からなる群の少なくとも1種の具体例を挙げることができる。
【0052】
一般式(1)のDは、少なくとも一つの硫黄原子、酸素原子、セレン原子、または窒素原子を含む、縮合2環~縮合7環を含む2価の連結基を示す。該縮合2環~縮合7環を構成する全ての環は、4~8員環である。該4~8員環である環の具体例としては、例えば、シクロブテン環、ヒドロシクロペンタ環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、ピロール環、イミダゾール環、ベンゼン環、シクロオクタテトラエン環、ピリジン環、チアジアゾール環、ケトピロール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、イミド環等を挙げることができ、高移動度のため、4~6員環であることが好ましく、シクロブテン環、ヒドロシクロペンタ環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ベンゼン環、ピリジン環、チアジアゾール環、ケトピロール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、スクシンイミド環、グルタルイミド環からなる群の少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0053】
該Dで表される連結基としては、例えば、下記一般式(D-1)~(D~70)を挙げることができる。
【0054】
【化5】
【0055】
【化6】
【0056】
【化7】
【0057】
(ここで、*は他の構造との結合部位を示す。)
【0058】
該Dは、高移動度及び高溶解性を示す共役ポリマーとなることから(D-1)~(D-14)及び(D-52)~(D-70)からなる群の少なくとも1種が好ましく、アクセプター性を有する(D-52)~(D-70)からなる群の少なくとも1種がさらに好ましい。
【0059】
上記一般式(D-1)~(D-70)において、炭素原子上の水素原子、及びSiHとNHの水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、または炭素数4~30のアリール基からなる群の少なくとも1種に置換することができる。
【0060】
炭素原子上の置換基の例としての該ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数4~30のアリール基の具体例は、例えば、上述の一般式(A-1)~(A-9)のR及びRと同様に考えることができ、ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数4~30のアリール基からなる群の少なくとも1種の具体例を挙げることができる。
【0061】
一般式(D-1)~(D-70)における、sp混成軌道の炭素上の水素原子、SiH及びNHの水素原子は、高溶解性のため、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数4~30のアリール基からなる群の少なくとも1種の置換基で置換されていることが好ましく、炭素数1~30のアルキル基、炭素数4~30のアリール基からなる群の少なくとも1種の置換基で置換されていることがさらに好ましい。
【0062】
該炭素数1~30のアルキル基は、高移動度及び高溶解性の観点から、炭素数6~24の直鎖アルキル基及び炭素数8~26の分岐アルキル基がさらに好ましく、炭素数10~22の直鎖アルキル基及び炭素数10~24の分岐アルキル基が特に好ましい。
【0063】
一般式(D-1)~(D-70)における、sp混成軌道の炭素上の水素原子は、高移動度及び高溶解性のため、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基からなる群の少なくとも1種の置換基で置換されていることが好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0064】
一般式(1)のa、c、d、eは0~3を示し、a、c、d、eの少なくとも一つが1以上である。nは2以上の整数を示す。
【0065】
該a、c、d、eは、高移動度であることから、0~2が好ましい。a及びcが1の場合、d及びeは、0が好ましく、dが1の場合、c及びeは0または1、aは0であることが好ましい。
【0066】
一般式(1)のbは1~3を示し、高移動度であることから、1が好ましい。
【0067】
一般式(1)で示される共役ポリマーは、繰り返し単位であるnが2以上を有する化合物である。該nは2以上の整数であれば特に限定されないが、高移動度のため4以上が好ましく、高溶解性のため、300以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。
【0068】
該共役ポリマーの分子量は、よりキャリア移動度の大きい有機薄膜トランジスタを得るのに好適であるため、2,000~1,000,000であることが好ましく、4,000~300,000がさらに好ましく、10,000~150,000が特に好ましい。なお、本発明において、ポリマーの分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をいうものである。
【0069】
本発明の一般式(1)で示される共役ポリマーの具体的例示としては、以下のものを挙げることができる。
【0070】
【化8】
【0071】
【化9】
【0072】
【化10】
【0073】
【化11】
【0074】
【化12】
【0075】
本発明の一般式(1)で示される共役ポリマーを製造する方法としては、該共役ポリマーを製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いることも可能である。
【0076】
該共役ポリマーの製造方法としては、下記一般式(2)及び(3)で示される化合物を用い、カップリング反応させる方法を挙げることができる。
-(B)b-Z (2)
-(C)c-(D)d-(E)e-(A)a-Z (3)
(ここで、A、B、C、D、E、a、b、c、d、及びeは、上記一般式(1)におけるA、B、C、D、E、a、b、c、d、及びeと同意義を示す。Z~Zは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニロキシ、メタンスロホニロキシ、トルエンスルホニロキシ、トリアルキルスズ、トリアリールスズ、ジアルコキシホウ素、ジヒドロキシホウ素、ハロゲン化亜鉛、ジメチルフルオロケイ素、ジフルオロメチルケイ素、トリエトキシケイ素、トリメトキシケイ素、またはハロゲン化マグネシウムを示す。但し、Z~Zの内、二つはハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニロキシ、メタンスロホニロキシ、トルエンスルホニロキシからなる群から選ばれ、残りの二つは、トリアルキルスズ、トリアリールスズ、ジアルコキシホウ素、ジヒドロキシホウ素、ハロゲン化亜鉛、ジメチルフルオロケイ素、ジフルオロメチルケイ素、トリエトキシケイ素、トリメトキシケイ素、ハロゲン化マグネシウムからなる群から選ばれる。)
【0077】
該カップリング反応は、アリール-アリールカップリング反応であり、高収率であることから、スティルカップリング反応、鈴木カップリング反応、根岸カップリング反応、熊田カップリング反応、檜山カップリング反応からなる群の少なくとも1種が好ましく、スティルカップリング反応、鈴木カップリング反応の少なくともいずれかがさらに好ましい。
【0078】
一般式(2)及び(3)におけるZ~Zは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニロキシ、メタンスロホニロキシ、トルエンスルホニロキシ、トリアルキルスズ、トリアリールスズ、ジアルコキシホウ素、ジヒドロキシホウ素、ハロゲン化亜鉛、ジメチルフルオロケイ素、ジフルオロメチルケイ素、トリエトキシケイ素、トリメトキシケイ素、またはハロゲン化マグネシウムを示す。
【0079】
該ハロゲン原子は、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子、フッ素原子を示し、高反応性のため、臭素原子又はヨウ素原子の少なくともいずれかが好ましい。
【0080】
該トリアルキルスズのアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基を示し、例えば、トリメチルスズ、トリエチルスズ、トリプロピルスズ、トリブチルスズ、トリヘキシルスズ、トリシクロヘキシルスズを挙げることができ、入手性の良さからトリメチルスズ又はトリブチルスズの少なくともいずれかが好ましい。
【0081】
該トリアリールスズのアリール基は、炭素数6~10のアリール基を示し、例えば、トリフェニルスズ、トリ(o-トリル)スズ、トリ(m-トリル)スズ、トリ(p-トリル)スズ、トリナフチルスズを挙げることができる。
【0082】
該ジアルコキシホウ素のアルコキシ基は、炭素数1~10のアルコキシ基を示し、例えば、ジメトキシホウ素、ジエトキシホウ素、ジプロピロキシホウ素、ジイソプロピロキシホウ素、ジブトキシホウ素、ジヘキシロキシホウ素を示す。なお、二つのアルコキシ基はそれぞれの炭素原子が結合し環を形成することができ、例えば、1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル基、1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル基等を挙げることができる。該ジアルコキシホウ素として、反応性の高さから、4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル基、1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル基、5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル基等が好ましい。
【0083】
該ハロゲン化亜鉛は、例えば、ClZn、BrZn,IZnを挙げることができる。
【0084】
該ハロゲン化マグネシウムは、例えば、ClMg、BrMg、IMgを挙げることができる。
【0085】
該Z~Zの内、二つはハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニロキシ、メタンスロホニロキシ、トルエンスルホニロキシからなる群から選ばれ、残りの二つは、トリアルキルスズ、トリアリールスズ、ジアルコキシホウ素、ジヒドロキシホウ素、ハロゲン化亜鉛、ジメチルフルオロケイ素、ジフルオロメチルケイ素、トリエトキシケイ素、トリメトキシケイ素、またはハロゲン化マグネシウムからなる群から選ばれる。例えば、高い反応性のため、Z及びZが、トリアルキルスズ、トリアリールスズ、ジアルコキシホウ素、ジヒドロキシホウ素、ハロゲン化亜鉛、ジメチルフルオロケイ素、ジフルオロメチルケイ素、トリエトキシケイ素、トリメトキシケイ素、ハロゲン化マグネシウムからなる群から選ばれ、Z及びZが、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニロキシ、メタンスロホニロキシ、トルエンスルホニロキシからなる群から選ばれること、または、Z及びZが、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニロキシ、メタンスロホニロキシ、トルエンスルホニロキシからなる群から選ばれ、Z及びZが、トリアルキルスズ、トリアリールスズ、ジアルコキシホウ素、ジヒドロキシホウ素、ハロゲン化亜鉛、ジメチルフルオロケイ素、ジフルオロメチルケイ素、トリエトキシケイ素、トリメトキシケイ素、ハロゲン化マグネシウムからなる群から選ばれることが好ましい。
【0086】
一般式(1)の共役ポリマーを製造する方法であるスティルカップリング反応、鈴木カップリング反応、根岸カップリング反応、熊田カップリング反応、檜山カップリング反応には0価パラジウム化合物又は2価パラジウム化合物の少なくともいずれかの触媒が用いられる。0価パラジウム化合物としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス{トリ(tert-ブチル)ホスフィン}パラジウムを挙げることができ、2価パラジウム化合物としては、例えば、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、{1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン}パラジウムジクロライド、{1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン}パラジウムジクロライド、{1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン}パラジウムジクロライド、ビス(アセトニトリル)パラジウムジクロライド、ビス(エチレンジアミン)パラジウムジクロライド、酢酸パラジウムを挙げることができる。さらに該パラジウム化合物に、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスホニウムテトラフェニルボレートからなる群の少なくとも1種のホスフィンを添加することもできる。
【0087】
また、ニッケル化合物を触媒とすることもできる。該ニッケル化合物として、ビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル、{1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン}ニッケルジクロライド、{1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン}ニッケルジクロライドを挙げることができる。
【0088】
上記パラジム化合物及びニッケル化合物に、銅化合物を添加しても良い。該銅化合物としては、例えば、ヨウ化銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、酢酸銅(I)等の1価銅; 塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、酢酸銅(II)、アセチルアセトナート銅(II)等の2価銅等を挙げることができ、その中でも1価銅が好ましく、ヨウ化銅(I)がさらに好ましい。
【0089】
該アリール-アリールカップリング反応では、反応促進のため、塩基を添加しても良い。該塩基としては、例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基; トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ナトリウムtert-ブトキサイドからなる群の少なくとも1種の有機塩基を好適なものとして挙げることができる。
【0090】
該アリール-アリールカップリング反応では、反応促進のため、フッ化物を添加しても良い。該フッ化物としては、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオライド、フッ化カリウム、フッカナトリム、フッ化セシウム、フッ化リチウム等を好適なものとして挙げることができる。
【0091】
さらに該アリール-アリールカップリング反応では、反応促進のため、相間移動触媒を添加しても良い。該相間移動触媒としては、例えば、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド水和物等を好適なものとして挙げることができる。
【0092】
一般式(2)及び(3)で示される化合物を用い、カップリング反応させる際には、好ましくは溶媒中で実施する。該溶媒に特に限定はなく、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン(以後、「THF」と略す)、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、エタノール、水、N,N-ジメチルホルムアミド(以後、「DMF」と略す)、N-メチルピロリドン(以後、「NMP」と略す)、トリエチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ジイソプロピルアミンからなる群の少なくとも1種を挙げることができ、また、これら溶媒は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良く、例えばトルエン/水、トルエン/エタノール/水のような2乃至3成分系でも使用することができる。
【0093】
パラジウム触媒、ニッケル触媒の使用量は、一般式(2)の化合物に対し、0.1~20モル%の範囲であり、0.5~10モル%の範囲が好ましい。
【0094】
ホスフィンの使用量は、上記パラジウム化合物に対し、0.9~8.0当量であり、1.0~3.0当量が好ましい。
【0095】
銅化合物の使用量は、一般式(2)の化合物に対し、0.5~30モル%の範囲であり、1~20モル%の範囲が好ましい。
【0096】
塩基の使用量は、一般式(2)の化合物に対し、0.8~2.5当量であり、1.2~2.2当量が好ましい。
【0097】
一般式(3)の化合物の使用量は一般式(2)の化合物に対し、0.8~1.3当量であり、0.9~1.2当量が好ましく、1.0~1.1当量がさらに好ましい。
【0098】
反応の際の温度は10~160℃であり、特に好ましくは30~140℃が好ましく、40~120℃がさらに好ましい。反応時間は1~72時間であり、2~48時間が好ましい。
【0099】
さらに、製造した一般式(1)の共役ポリマーは、ソックスレー抽出、再沈殿等の既存の方法により精製することができる。
【0100】
上記一般式(2)で示される化合物の製造方法としては、例えば、Z及びZが臭素原子、bが1で、上記一般式(B-9)のXが硫黄原子で、Yが炭素原子、Zが炭素原子、かつRがヘプタデシル基の場合の(B-9-Br)は、下記A1~E1の工程を経る方法により製造することができる。
(A1工程);パラジウム触媒の存在下、2-ブロモ-4-クロロ-1-ヨードベンゼンから誘導された2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-亜鉛クロライドと、1-ブロモ-4-クロロ-2-ヨードベンゼンから2,2’-ジブロモ-4,5’-ジクロロビフェニルを製造する工程。
(B1工程);A1工程により得られた2,2’-ジブロモ-4,5’-ジクロロビフェニルをブチルリチウムでジリチウム化合物とし、塩化銅(II)で分子内環化することによる2,6-ジクロロビフェニレンを製造する工程。
(C1工程);パラジウム触媒の存在下、3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェンから誘導された3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル亜鉛クロライドと、B1工程により得られた2,6-ジクロロビフェニレンから2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレンを製造する工程。
(D1工程);C1工程により得られた2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレンを三臭化ホウ素と処理し、(B-9-H)を製造する工程。
(E1工程);D1工程により得られた(B-9-H)をブチルリチウムでジリチウム化合物とし、臭素化剤と反応させ、(B-9-Br)を製造する工程。
【0101】
A1~E1の各工程の詳細を以下に示す。
【0102】
該A1工程は、パラジウム触媒の存在下、2-ブロモ-4-クロロ-1-ヨードベンゼンから誘導された2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-亜鉛クロライドと、1-ブロモ-4-クロロ-2-ヨードベンゼンのクロスカップリングから2,2’-ジブロモ-4,5’-ジクロロビフェニルを製造する工程である。
【0103】
2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-亜鉛クロライドは、例えば、エチルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムブロマイド等の有機金属試薬を用い、2-ブロモ-4-クロロ-1-ヨードベンゼンのヨウ素をマグネシウムハライドに交換後(2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-マグネシウムハライドの調製)、塩化亜鉛と金属交換することで調製することができる。また、該有機金属試薬の代わりにマグネシウム金属を用いることも可能である。
【0104】
2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-マグネシウムハライドを調製する条件としては、例えば、THF又はジエチルエーテル等の溶媒中、-80℃~20℃の温度範囲内で実施することができる。該マグネシウム塩(2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-マグネシウムハライド)の溶液に塩化亜鉛を反応させることで2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-亜鉛クロライドを調製することができる。塩化亜鉛はそのままの状態でもよいし、THFまたはジエチルエーテル溶液であってもかまわない。該マグネシウム塩と塩化亜鉛との反応の温度としては、-80℃~30℃の範囲内で実施できる。
【0105】
A1工程におけるパラジウム触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等を挙げることができ、反応温度としては、20℃~80℃の範囲を挙げることができる。
【0106】
該B1工程は、A1工程により得られた2,2’-ジブロモ-4,5’-ジクロロビフェニルを2当量以上のブチルリチウムでジリチウム化合物とし、塩化銅(II)で分子内環化することによる2,6-ジクロロビフェニレンを製造する工程である。
【0107】
該ジリチウム塩を調製する条件としては、例えば、2~4当量のブチルリチウムまたはtert-ブチルリチウムを用い、THFまたはジエチルエーテル等の溶媒中、-80℃~20℃の温度範囲で実施することができる。
【0108】
塩化銅(II)は該ジリチウム化合物に対し1~3当量使用し、分子内環化反応は-80℃~30℃の温度範囲で実施することができる。なお、塩化銅(II)の代わりに臭化銅(II)を用いることもできる。
【0109】
該C1工程は、B1工程により得られた2,6-ジクロロビフェニレンをパラジウム触媒またはニッケル触媒の存在下、3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェンから誘導された3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル亜鉛クロライドとカップリング反応させる工程である。
【0110】
C1工程におけるパラジウム触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス{トリ(tert-ブチル)ホスフィン}パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、{1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン}パラジウムジクロライド等を挙げることができ、さらに該パラジウム化合物に、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(2’,4’,6’-トリイソプロピル-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)ホスフィン、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2’-(ジメチルアミノ)ビフェニルからなる群の少なくとも1種のホスフィンを添加することもできる。
【0111】
該カップリング反応は、THF、ジエチルエーテルまたはトルエン等の溶媒中、20℃~80℃の温度範囲で実施することができる。
【0112】
また、該カップリング反応は、ニッケル化合物を触媒とすることもできる。該ニッケル化合物として、ビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル、{1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン}ニッケルジクロライド、{1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン}ニッケルジクロライドからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0113】
該反応の反応剤である3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル亜鉛クロライドは、例えば、3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェンをTHFまたはジエチルエーテル中、ブチルリチウムでリチオ化後、塩化亜鉛と金属交換することで調製することができる。
【0114】
さらに該3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル亜鉛クロライドは、3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イルマグネシウムクロライドまたは3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イルマグネシウムブロマイドに代えて使用することができる。
【0115】
3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェンは、例えば、特WO2015-163206号公報記載の方法で、3-ブロモチオフェンから製造することができる。
【0116】
該D1工程は、C1工程により得られた2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレンを三臭化ホウ素で分子内環化させることで(B-9-H)を製造する工程である。
【0117】
三臭化ホウ素は、2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレンに対し、1~8当量使用し、ジクロロメタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の溶媒中、-80℃~40℃の温度範囲で実施することができる。
【0118】
該E1工程は、D1工程により得られた(B-9-H)を2当量以上のブチルリチウムでジリチウム化合物とした後、臭素化剤と反応させ、(B-9-Br)を製造する工程である。
【0119】
該ジリチウム塩を調製する条件としては、例えば、2~6当量のブチルリチウムを用い、THF又はジエチルエーテル等の溶媒中、-80℃~35℃の温度範囲で実施することができる。
【0120】
ブチルリチウムの代わりに、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ブチルリチウム/テトラメチルエチレンジアミン、ブチルリチウム/ジイソプロピルアミン、ブチルリチウム/2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン等を用いることができる。
【0121】
臭素化剤としては、例えば、ブロモトリクロロメタン、テトラブロモメタン、1,2-ジブロモ-1,1,2,2-テトラクロロエタン、N-ブロモスクシンイミド(以後、NBSと略す。)等の臭素化剤を用いることができる。該臭素化反応は、2~6当量の臭素化剤を用い、-80℃~35℃の温度範囲で実施することができる。
【0122】
臭素化剤以外に、ヨウ素、1-クロロ-2-ヨードエタン、N-ヨードスクシンイミド等のヨウ素化剤を使用することもできる。
【0123】
そして、反応工程数が少ないことから好ましい具体的な(B-9-Br)の製造方法を以下の反応スキームに示す。
【0124】
【化13】
【0125】
さらに、製造した一般式(2)の化合物は、カラムクロマトグラフィー等に供することにより精製することができ、その際の分離剤としては、例えば、シリカゲル、活性アルミナ、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等を挙げることができる。
【0126】
製造した一般式(2)の化合物は、活性炭、ゼオライト、活性アルミナ等に供することにより溶液中で脱色精製することができ、その際の溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム等を挙げることができる。
【0127】
また、製造した一般式(2)の化合物は、さらに再結晶により精製してもよく、再結晶の回数を増やすことで純度を向上させることができる。再結晶の回数としては、高純度、高収率の観点から、好ましくは2~5回である。再結晶の回数を増やすことで純度を向上させることができる。再結晶に用いる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を挙げることができ、これらの任意の割合の混合物であってもよい。
【0128】
再結晶法では、加熱により一般式(2)の化合物の溶液を調製し(その際の溶液の濃度は、不純物を効率よく除去するため、0.01~10.0重量%の範囲が好ましく、0.05~5.0重量%の範囲がさらに好ましい。)、該溶液を冷却することで一般式(2)の化合物の結晶を析出させ単離するが、単離する際の最終的な冷却温度は、純度及び回収率向上のため、-20℃から40℃の範囲にあることが好ましい。なお、純度を測定する際には液体クロマトグラフィーにより分析することが可能である。
【0129】
上記一般式(3)で示される化合物は、既知の製造方法により合成することができる。または、市販されているものをそのまま用いることができる。
【0130】
本発明の共役ポリマーは、適当な溶媒に溶解させることで該共役ポリマーを含有する有機半導体層形成用溶液とすることができる。該溶媒としては、一般式(1)で示される共役ポリマーを溶解することが可能な溶媒であれば如何なる溶媒を使用してもよく、有機半導体層を形成する際、溶媒の乾燥速度を好適なものとすることができることから、常圧での沸点が100℃以上である有機溶媒が好ましい。
【0131】
本発明で用いることが可能な溶媒として、特に制限はなく、例えば、トルエン、メシチレン、o-キシレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、テトラリン、インダン等の芳香族炭化水素類;アニソール、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルアニソール、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,2-エチレンジオキシベンゼン等の芳香族エーテル類;クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン等の芳香族ハロゲン化合物;チオフェン、3-クロロチオフェン、2-クロロチオフェン、3-メチルチオフェン、2-メチルチオフェン、ベンゾチオフェン、2-メチルベンゾチオフェン、2,3-ジヒドロベンゾチオフェン、フラン、3-メチルフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、ベンゾフラン、2-メチルベンゾフラン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、チアゾール、オキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ピリジン等のヘテロ芳香族類;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、デカリン等の飽和炭化水素類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール類;フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、酢酸フェニル、シクロヘキサノールアセテート、3-メトキシブチルアセテート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート、γ-ブチロラクトン等のエステル類;THF、2-メトキシメチルテトラヒドロフラン等の環状エーテルからなる群の少なくとも1種などを挙げられることができ、その中でも適度な乾燥速度を持つことから、好ましくはトルエン、o-キシレン、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、テトラリン、インダン、オクタン、ノナン、デカン、アニソール、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルアニソール、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,2-エチレンジオキシベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、3-メチルチオフェン、ベンゾチアゾールであり、さらに好ましくは、トルエン、o-キシレン、メシチレン、テトラリン、インダン、オクタン、ノナン、デカン、アニソール、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルアニソールからなる群の少なくとも1種である。
【0132】
なお、本発明で用いる溶媒は、1種類の溶媒を単独で使用、または沸点、極性、溶解度パラメーターなど性質の異なる溶媒を2種類以上混合して使用することが可能である。
【0133】
一般式(1)で示される共役ポリマーを溶媒に混合溶解する際の温度としては、溶解を促進させる目的のため、0~80℃の温度範囲で行うことが好ましく、10~60℃の温度範囲で行うことが更に好ましい。
【0134】
また、一般式(1)で示される共役ポリマーを有機溶媒に溶解混合する時間は、均一溶液を得るため、1分~1時間で溶解することが好ましい。
【0135】
本発明では本発明の有機半導体層形成用溶液における一般式(1)で示される共役ポリマーの濃度が0.1~10.0重量%の範囲であると、取り扱いが容易になり、有機半導体層を形成する際の効率により優れるものとなる。また、有機半導体層形成用溶液の粘度が0.3~20mPa・sの範囲であると、より好適な塗工性を発現するものとなる。
【0136】
なお該溶液は、該共役ポリマー自体が適度の凝集性を有することから比較的に低温で調製することが可能、且つ耐酸化性があることから、塗布法による有機薄膜の製造に好適に適用できる。即ち、雰囲気から空気を除く必要がないことから塗布工程を簡略化することができる。さらに該溶液は、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(4-メチルスチレン)、ポリ(1-ビニルナフタレン)、ポリ(2-ビニルナフタレン)、ポリ(スチレン-ブロック-ブタジエン-ブロック-スチレン)、ポリ(スチレン-ブロック-イソプレン-ブロック-スチレン)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(スチレン-コ-2,4-ジメチルスチレン)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(スチレン-コ-α-メチルスチレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-ノルボルネン)、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリカルバゾール、ポリトリアリールアミン、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-コ-ジメチルトリアリールアミン)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(スチレン-コ-メタクリル酸メチル)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸フェニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル等が挙げることができ、好ましくはポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(エチレン-コ-ノルボルネン)、ポリメタクリル酸メチルからなる群の少なくとも1種のポリマーをバインダーとして存在させることもできる。これらのポリマーバインダーの濃度は、適度な溶液の粘度のため、0.001~10.0重量%であることが好ましい。
【0137】
該ポリマーバインダーのガラス転移温度(Tg)は、電子デバイス製造時のプロセス温度への対応により好適であることから105℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、130℃以上であることが特に好ましい。
【0138】
また、該ポリマーの分子量は、よりキャリア移動度の大きい有機薄膜トランジスタを得るのに好適であるため、5,000~1,000,000であることが好ましく、10,000~500,000がさらに好ましく、20,000~100,000が特に好ましい。なお、本発明において、ポリマーの分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をいうものである。
【0139】
該ポリマーは、一般的なポリマーバインダーとしての効果を有し、得られる有機半導体層の成膜性を向上させるものであり、絶縁性ポリマー及び半導体性ポリマーも用いることができる。
【0140】
該半導体性ポリマーとしては、例えば、ポリトリアリールアミン、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-コ-ジメチルトリアリールアミン)等を挙げることができる。
【0141】
本発明でポリマーバインダーとして用いることが可能なポリマーの具体的な例としては、上記で挙げたポリマー以外に、例えば、極性環状ポリオレフィン類、ポリスルホン類、アクリロニトリル-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-スチレン共重合体類等を挙げることができる。
【0142】
該極性環状ポリオレフィン類はより具体的には下記一般式(4)で示されるポリマーがさらに好ましい。
【0143】
【化14】
【0144】
(ここで、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基を示し、Xは、ハロゲン原子、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、または炭素数1~20のアルキルアミノ基を示す。pは20~5,000の整数を示し、q及びrはそれぞれ独立して0~2の整数を示す。実線と点線からなる結合は、単結合または2重結合を示す。)
【0145】
一般式(4)におけるR~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基を示し、高耐熱性のため、水素原子、炭素数1~20のアルキル基からなる群の少なくとも1種が好ましい。R~Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0146】
~Rにおける炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。炭素数6~20のアリール基は、例えば、フェニル基、p-トリル基、p-(ヘキシル)フェニル基、p-(オクチル)フェニル基、p-(2-エチルヘキシル)フェニル基等が挙げられる。炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基は、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基等が挙げられる。炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基は、例えば、フェノキシカルボニル基、4-メチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。炭素数1~20のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。炭素数6~20のアリールオキシ基は、例えば、フェノキシ基、4-メチルフェノキシ等が挙げられる。炭素数1~20のアルキルアミノ基は、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基等が挙げられる。そして、その中でも高耐熱性のため、置換基Rはメチル基、エチル基、n-プロピル基であることが好ましく、置換基R及びRは水素原子であることが好ましい。
【0147】
一般式(4)におけるXは、ハロゲン原子、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基を示す。
【0148】
における炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基は、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基は、例えば、フェノキシカルボニル基、4-メチルフェノキシカルボニル基、2,4-ジメチルフェノキシカルボニル基、4-エチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。炭素数1~20のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。炭素数6~20のアリールオキシ基は、例えば、フェノキシ基、4-メチルフェノキシ等が挙げられる。炭素数1~20のアルキルアミノ基は、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基等が挙げられる。高溶解性及び高耐熱性のため、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。
【0149】
pは20~5,000の整数を示し、よりキャリア移動度の大きい有機薄膜トランジスタを得るのに好適であるため、好ましくは40~2,000である。qは0~2の整数を示し、好ましくは1である。rは0~2の整数を示し、好ましくは0または1である。さらに好ましくは0である。
【0150】
実線と点線からなる結合は単結合又は2重結合を示し、熱的安定性のため、好ましくは単結合である。
【0151】
本発明でポリマーバインダーとして用いられるポリスルホン類はポリスルホン構造を有していれば特に制限がなく、より具体的には下記ポリスルホン1~5で示されるポリスルホン類からなる群の少なくとも1種が挙げられる。
【0152】
【化15】
【0153】
(ここで、置換基R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基を示し、sは10~20,000の整数を示す。R~Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0154】
置換基R~Rにおける炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル基、2-ヘキシルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。
【0155】
sは10~20,000の整数を示し、好ましくは10~10,000の整数である。
【0156】
本発明でポリマーバインダーとして用いられるアクリロニトリル-スチレン共重合体は、アクリロニトリルとスチレンの任意の比率の共重合体であり、良好な電気特性を示し、バイアスストレスをかけた時の閾値電圧の変化がより小さいものになるなど信頼性が向上することから、アクリロニトリルとスチレン重量比で10:90~50:50の比率であることが好ましく、20:80~40:60であることがさらに好ましい。
【0157】
本発明でポリマーバインダーとして用いられるメチルメタクリレート-スチレン共重合体は、メチルメタクリレートとスチレンの任意の比率の共重合体であり、良好な電気特性を示し、バイアスストレスをかけた時の閾値電圧の変化がより小さいものになるなど信頼性が向上することから、メチルメタクリレートとスチレンのモル比で1:99~90:10であることが好ましく、1:99~70:30であることがさらに好ましい。
【0158】
本発明でポリマーバインダーとして用いられるポリマーは、表面処理剤により表面エネルギーを調整したものを用いることができる。表面処理剤としては、シランカップリング剤を用いることができ、その具体例としては、例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、フェニルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、β-フェネチルトリクロロシラン、β-フェネチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。なお、本発明で用いるポリマーバインダーは、1種類のポリマーを単独で使用、または2種類以上のポリマーの混合物として使用することが可能である。更に、異なる分子量のポリマーを混合して使用することも可能である。
【0159】
本発明の一般式(1)の共役ポリマーは、上記で示したポリマーバインダーとブロック共重合体を形成していても良い。
【0160】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて有機半導体層を形成する際の塗布方法としては、有機半導体層を形成可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、キャストコート等の簡易塗工法;ディスペンサー、インクジェット、スリットコート、スロットダイコート、ブレードコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法を挙げることができ、中でも容易に効率よく有機半導体層とすることが可能となることから、スピンコート、ドロップキャスト、インクジェット、スロットダイコートであることが好ましい。
【0161】
本発明の有機半導体層形成用溶液を塗布後、溶媒を乾燥除去することにより、該有機半導体層形成用溶液を用いてなる有機半導体層を形成することが可能である。
【0162】
塗布した有機半導体層から溶媒を乾燥除去する際、乾燥する条件に特に制限はなく、例えば、常圧下、又は減圧下で溶媒の乾燥除去を行うことが可能である。
【0163】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する温度に特に制限はないが効率よく塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去することができ、有機半導体層を形成することが可能であるため、10~150℃の温度範囲で行うことが好ましく、プラスチック基板の耐熱性を考慮して、10~140℃の温度範囲がより好ましい。
【0164】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、除去する有機溶媒の気化速度を調節することで、一般式(1)で示される共役ポリマーの配向性の成長を促すことが可能になる。
【0165】
本発明の有機半導体層形成用溶液により形成される有機半導体層の膜厚に制限はなく、良好なキャリア移動が得られることから、1nm~1μmの範囲であることが好ましく、10nm~300nmの範囲であることが更に好ましい。
【0166】
また、得られる有機半導体層は、有機半導体層を形成後、40~200℃でアニール処理を行うことができるが、プラスチック基板の耐熱性を考慮して、40~140℃の温度範囲が好ましく、40~130℃がより好ましい。
【0167】
本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、該有機半導体層を含んでなる有機半導体デバイス、特に該有機半導体層を含んでなる有機薄膜トランジスタとして使用することが可能である。
【0168】
有機薄膜トランジスタは、基板上に、ソース電極及びドレイン電極を付設した有機半導体層とゲート電極とを絶縁層を介し積層することにより得ることができ、該有機半導体層に本発明の有機半導体層形成用溶液により形成した有機半導体層を用いることにより、優れた半導体・電気特性を発現する有機薄膜トランジスタとすることが可能である。
【0169】
図1に一般的な有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す。ここで、(A)は、ボトムゲート-トップコンタクト型、(B)は、ボトムゲート-ボトムコンタクト型、(C)は、トップゲート-トップコンタクト型、(D)は、トップゲート-ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示し、本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、いずれの有機薄膜トランジスタにも適用することが可能である。
【0170】
本発明に係る基板としては特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、フッ素化環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、セルローストリアセテート等のプラスチック基板;ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属基板等を挙げることができる。なお、ハイドープシリコンを基板に用いた場合、その基板はゲート電極を兼ねることができる。
【0171】
本発明に係るゲート電極としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、クロム、チタン、タンタル、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機材料;ドープされた導電性高分子(例えばPEDOT-PSS)等の有機材料を挙げることができる。
【0172】
また、上記の無機材料は、金属のナノ粒子インクとしても差し支えなく使用することができる。この場合の溶媒は、適度の分散性のため、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等の極性溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の炭素数6~14の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、インダン、アニソール、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,2-ジメチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール等の炭素数7~14の芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。該ナノ粒子インクを塗布後、導電性向上のため、80℃~200℃の温度範囲でアニール処理することが好ましい。
【0173】
本発明に係るゲート絶縁層としては特に制限はなく、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス等の無機材料;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイミド、ポリアミド酸ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリけい皮酸エチル、ポリけい皮酸メチル、ポリクロトン酸エチル、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン-コ-1-ブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタン、ポリシクロヘキサン、ポリシクロヘキサン-エチレン共重合体、ポリフッ素化シクロペンタン、ポリフッ素化シクロヘキサン、ポリフッ素化シクロヘキサン-エチレン共重合体、BCB樹脂(商品名:サイクロテン、ダウ・ケミカル社製)、Cytop(商標)、Teflon(商標)、パリレンC等のパリレン(商標)類のポリマー絶縁材料を挙げることができ、製法が簡便であることから、塗布法が適用できるポリマー絶縁材料(ポリマーゲート絶縁層)であることが好ましい。
【0174】
該ポリマーゲート絶縁層は、光架橋した後使用することもできる。
【0175】
該ポリマー材料を溶解させるに用いる溶媒としては特に制限がなく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の炭素数6~14の脂肪族炭化水素溶媒;メシチレン、p-シメン、ペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等の炭素数9~20の芳香族炭化水素溶媒;THF、1,2-ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-エチルヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノールアセテート、3-メトキシブチルアセテート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート等のエステル系溶媒;DMF、NMP等のアミド系溶媒;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒;パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、2-(ペンタフルオロエチル)ヘキサン、3-(ペンタフルオロエチル)ヘプタン等のフッ素化溶媒等が挙げられる。
【0176】
該ポリマー絶縁材料の濃度は、例えば、20~40℃の温度において0.1~10.0重量%である。当該濃度において得られる絶縁層の膜厚に制限はなく、耐絶縁性の観点から、好ましくは100nm~1μm、さらに好ましくは150nm~900nmである。
【0177】
そして、これらのゲート絶縁層の表面は、例えば、オクタデシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、β-フェネチルトリクロロシラン、β-フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン等のシラン類;オクタデシルホスホン酸、デシルホスホン酸、オクチルホスホン酸等のホスホン酸類;ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン類で修飾処理したものであっても使用することができる。一般的にゲート絶縁層の表面処理を行うことにより、有機半導体材料の結晶粒径の増大及び分子配向の向上のため、キャリア移動度、電流オン・オフ比の向上、及び閾値電圧の低下という好ましい結果が得られる。
【0178】
本発明の有機薄膜トランジスタのソース電極及びドレイン電極の材料としては特に制限がなく、ゲート電極と同様の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同じであっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極材料に表面処理を実施することもできる。表面処理に用いる表面処理剤としては、例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオール、4-フルオロベンゼンチオール、4-メトキシベンゼンチオール等を挙げることができる。
【0179】
本発明の有機薄膜トランジスタは、速い動作性のため、キャリア移動度が、0.10cm/V・sec以上であることが好ましい。また、高いスイッチ特性のため、電流オン・オフ比が、1.0×10以上であることが好ましい。
【0180】
本発明の共役ポリマーは、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、ICタグ(RFIDタグ)、圧力センサー、バイオセンサー等の有機薄膜トランジスタの有機半導体層用途;有機薄膜太陽電池の有機半導体層用途;有機ELディスプレイ材料;有機半導体レーザー材料;フォトニック結晶材料等の電子材料に利用することができる。
【発明の効果】
【0181】
本発明の新規な共役ポリマーは、高いキャリア移動度を与えると共に高溶解性であり、140℃以下の温度で熱アニールすることができる。従って、プラスチック基板上に塗布で優れた半導体特性を発現する有機薄膜トランジスタを提供することが可能となり、その効果は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0182】
図1】;有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す図である。
【実施例
【0183】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0184】
生成物の同定にはH NMRスペクトル、ガスクロマトグラフィー-マススペクトル(GCMS)、及び液体クロマトグラフィー-マススペクトル(LCMS)分析を用いた。
H NMRスペクトル分析>
装置;日本電子製、(商品名)Delta V5(400MHz)
測定温度;23℃(温度指定がない場合)
<ガスクロマトグラフィー-マススペクトル分析>
装置;島津製作所製、(商品名)QP-2010 Ultra
カラム;アジレント社製、(商品名)DB-1,30m。
MSイオン化;電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)
<直接導入マススペクトル分析>
装置;島津製作所製、(商品名)QP-2010 Ultra
MSイオン化;電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)
<液体クロマトグラフィー-マススペクトル(LCMS)分析>
装置;ブルカー・ダルトニクス、(商品名)microTOF focus
MSイオン化;大気圧化学イオン化(APCI)法
LC条件;下記液体クロマトグラフィー分析の項目にて記載の条件。
【0185】
反応の進行の確認等は薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)分析を用いた。ビフェニレン誘導体の純度測定についても液体クロマトグラフィー分析を用いた実施した。
<薄層クロマトグラフィー分析>
メルク社の薄層クロマトグラフィー用PLCシリカゲル60F254 0.5mmを使用し、展開溶媒として、ヘキサン又は/及びトルエン、酢酸エチル及びトルエンを用いた。
<ガスクロマトグラフィー分析>
装置;島津製作所製、(商品名)GC2014
カラム;アジレント社製、(商品名)DB-1,30m
<液体クロマトグラフィー分析>
装置;東ソー製(コントローラー;PX-8020、ポンプ;CCPM-II、デガッサー;SD-8022)
カラム;東ソー製、(商品名)ODS-100V、5μm、4.6mm×250mm
カラム温度;33℃
溶離液;ジクロロメタン:アセトニトリル=2:8(容積比)
流速;1.0ml/分
検出器;UV(東ソー製、(商品名)UV-8020、波長;254nm)。
【0186】
共役ポリマーの融点測定はDSC(示差走査熱量計)を用いた。
<DSC測定>
装置;エスアイアイナノテクノロジー社製、型式;DSC6220
昇降温速度;10℃/min
走査範囲;-10℃~300℃。
【0187】
合成例1(2,2’-ジブロモ-4,5’-ジクロロビフェニルの合成)(A1工程)
窒素雰囲気下、50mlシュレンク反応容器に、2-ブロモ-4-クロロ-1-ヨードベンゼン(東京化成工業)1.29g(4.06mmol)及びTHF(脱水グレード)11mlを添加した。この溶液を0℃に冷却し、エチルマグネシウムクロライド(シグマ-アルドリッチ、2.0M)のTHF溶液2.1ml(4.2mmol)を滴下した。この混合物を0℃で15分間熟成し、2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-マグネシウムクロライドを調製した。
【0188】
一方、窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、塩化亜鉛(和光純薬工業)724mg(5.31mmol)及びTHF(脱水グレード)6mlを添加し、0℃に冷却した。この得られた白色微スラリー溶液中に、先に調製した2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-マグネシウムクロライド溶液をテフロン(登録商標)キャヌラーを用いて滴下し、さらにTHF(脱水グレード)1mlを用いて50mlシュレンク反応容器及びテフロン(登録商標)キャヌラーを洗浄しながら投入した。得られた混合物を室温まで徐々に昇温しながら攪拌した。生成した2-ブロモ-4-クロロフェニル-1-亜鉛クロライドのスラリー液に、1-ブロモ-4-クロロ-2-ヨードベンゼン(Combi-Blocks)1.00g(3.14mmol)及び触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業)29.0mg(0.0251mmol、1-ブロモ-4-クロロ-2-ヨードベンゼンに対し0.80モル%)を添加した。50℃で8時間反応を実施した後、容器を水冷し1M塩酸を添加することで反応を停止させた。トルエン及び食塩水を添加し、有機相を分相し、有機相を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(溶媒:ヘキサン)。2,2’-ジブロモ-4,5’-ジクロロビフェニル1.10gを得た(収率92%)。
MS m/z: 382(M+2、57%)、380(M、100%)、378(M-2、54)。
H NMR(CDCl):δ=7.69(d,J=2.2Hz,1H),7.59(d,J=8.6Hz,1H),7.37(dd,J=8.2Hz,2.2Hz,1H),7.25(dd,J=8.2Hz,2.4Hz,1H),7.21(d,J=2.6Hz,1H),7.16(d,J=8.2Hz,1H)。
【0189】
合成例2 (2,6-ジクロロビフェニレンの合成)(B1工程)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、合成例1で合成した2,2’-ジブロモ-4,5’-ジクロロビフェニル1.09g(2.86mmol)及びTHF(脱水グレード)38mlを添加した。この混合物を-78℃に冷却し、ブチルリチウム(東京化成工業、1.6M)のヘキサン溶液3.8ml(6.0mmol)を滴下した。この混合物を-78℃で1時間熟成した。ここへ、-78℃下で、塩化銅(II)(和光純薬工業)1.15g(8.55mmol)を投入した。得られた混合物を室温まで徐々に昇温しながら攪拌した。反応混合物に3M塩酸を添加後、トルエンを添加し分相した。有機相を3M塩酸及び食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(溶媒;ヘキサン)。2,6-ジクロロビフェニレンの淡黄色固体411mgを得た(収率65%)。
MS m/z: 220(M、100%)。
H NMR(CDCl):δ=6.76(dd,J=7.4Hz,1.8Hz,2H),6.64(d,J=1.8,2H),6.57(dd,J=7.3,2H)。
【0190】
合成例3 (2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレンの合成)(C1工程)
特WO2015-163206号公報記載の方法に従い、3-ブロモチオフェンのリチオ化/18-ペンタトリアコンタノンとの反応、及び硫酸/エタノールによるエトキシ化により3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェンを合成した。
【0191】
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン4.53g(7.32mmol)及びジエチルエーテル(脱水グレード)50mlを添加した。この溶液を-78℃に冷却し、ブチルリチウム(東京化成工業、1.6M)のヘキサン溶液5.0ml(8.0mmol)を滴下した。この混合物を室温で2時間攪拌し、再度-78℃に冷却し、3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イルリチウムを調製した。
【0192】
一方、窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に、塩化亜鉛(和光純薬工業)1.50g(11.0mmol)及びTHF(脱水グレード)50mlを添加し、-78℃に冷却した。この得られた白色微スラリー溶液中に、先に調製した3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イルリチウム溶液をテフロン(登録商標)キャヌラーを用いて滴下し、さらにジエチルエーテル(脱水グレード)3mlを用いて100mlシュレンク反応容器及びテフロン(登録商標)キャヌラーを洗浄しながら投入した。得られた混合物を室温まで徐々に昇温しながら攪拌した。生成した3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル亜鉛クロライドのスラリー液を減圧濃縮し、低沸分60mlを留去した。ここに、合成例2で合成した2,6-ジクロロビフェニレン405mg(1.83mmol)及び触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業)106mg(0.0917mmol、2,6-ジクロロビフェニレンに対し5.01モル%)を添加した。60℃で12時間反応を実施した後、容器を水冷し1M塩酸を添加することで反応を停止させた。トルエン及び食塩水を添加し、有機相を分相し、有機相を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒:ヘキサン→ヘキサン/トルエン=10/1)、2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレンの黄色固体736mgを得た(収率29%)。
MS m/z: 476(M+2、53%)、474(M、100%)、472(M-2、52)。
【0193】
合成例4 (2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレンの合成)(C1工程)
窒素雰囲気下、50mlシュレンク反応容器に、3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン677mg(1.09mmol)及びジエチルエーテル(脱水グレード)5mlを添加した。この溶液を-78℃に冷却し、ブチルリチウム(東京化成工業、1.6M)のヘキサン溶液0.82ml(1.3mmol)を滴下した。この混合物を室温で2時間攪拌後、氷冷し3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イルリチウムを調製した。
【0194】
一方、窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、塩化亜鉛(和光純薬工業)266mg(1.95mmol)及びTHF(脱水グレード)6mlを添加し、-40℃に冷却した。この得られた白色微スラリー溶液中に、先に調製した3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イルリチウム溶液をテフロン(登録商標)キャヌラーを用いて滴下し、さらにジエチルエーテル(脱水グレード)1mlを用いて50mlシュレンク反応容器及びテフロン(登録商標)キャヌラーを洗浄しながら投入した。得られた混合物を室温まで徐々に昇温しながら攪拌した。生成した3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル亜鉛クロライドのスラリー液を減圧濃縮し、低沸分を留去した。ここに、合成例2で合成した2,6-ジクロロビフェニレン61.3mg(0.277mmol)を添加した。
【0195】
窒素雰囲気下、50mlシュレンク反応容器に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業)6.0mg(Pdとして0.0131mmol、2,6-ジクロロビフェニレンに対し4.7モル%)、ジシクロヘキシル(2’,4’,6’-トリイソプロピル-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)ホスフィン12.7mg(0.0266mmol)及びTHF(脱水グレード)2mlを添加し、65℃で15分間加熱した。この得られた溶液をテフロン(登録商標)キャヌラーを用いて上記の100mlシュレンク反応容器に投入し、さらにTHF(脱水グレード)1mlを用いて50mlシュレンク反応容器及びテフロン(登録商標)キャヌラーを洗浄しながら投入した。得られた混合物を65℃で20時間反応を実施した後、さらにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業)6.2mg(Pdとして0.0135mmol、ジシクロヘキシル(2’,4’,6’-トリイソプロピル-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)ホスフィン12.2mg(0.0256mmol)及びTHF(脱水グレード)2mlからなる溶液をテフロン(登録商標)キャヌラーを用いて投入し、65℃で20時間反応させた。得られた反応混合物を水冷し1M塩酸を添加することで反応を停止させた。トルエン及び食塩水を添加し、有機相を分相し、有機相を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒:ヘキサン→ヘキサン/トルエン=10/1)、2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレンの黄色固体203mgを得た(収率53%)。
MS m/z: 476(M+2、53%)、474(M、100%)、472(M-2、52)。
H NMR(CDCl):δ=7.14(d,J=5.4Hz,2H),7.02(d,J=5.2,2H),6.77(d,J=6.9Hz,2H),6.71(s,2H),6.60(d,J=6.6Hz,2H),3.20(q,J=7.0Hz,4H),1.75(m,8H),1.26(m,120H),1.09(t,J=6.8Hz,6H),0.88(t,J=6.8Hz,12H)。
【0196】
合成例5 (B-9-Hの合成)(D1工程)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、合成例3で合成した2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレン402mg(0.289mmol)及びジクロロメタン(脱水グレード)8mlを添加した。この混合物を0℃に冷却後、三臭化ホウ素(東京化成工業、1.0M)のジクロロメタン溶液1.2ml(1.2mmol)を滴下し、室温で24時間撹拌した。得られた反応混合物へ、水を加えてクエンチし、トルエンで抽出した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン→ヘキサン/トルエン=20/1)、B-9-Hの橙色固体232mgを得た(収率62%)。
MS(APCI+) m/z: 1294(M+H)。
【0197】
合成例6 (B-9-Hの合成)(D1工程)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、合成例4で合成した2,6-ビス{3-(1-エトキシ-1-ヘプタデシルオクタデシル)チオフェン-2-イル}ビフェニレン114mg(0.0822mmol)及びジクロロメタン(脱水グレード)5mlを添加した。この混合物を-50℃に冷却後、三臭化ホウ素(東京化成工業、1.0M)のジクロロメタン溶液0.60ml(0.60mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温し、さらに室温で2時間撹拌した。得られた反応混合物へ、水を加えてクエンチし、トルエンで抽出した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン→ヘキサン/トルエン=20/1)、B-9-Hの橙色固体93.2mgを得た(収率87%)。
H NMR(CDCl):δ=7.22(d,J=5.0Hz,2H),6.90(d,J=4.8,2H),6.70(d,J=0.9Hz,2H),6.60(d,J=0.9Hz,2H),1.88(dt,J=4.7Hz,J=12Hz,4H),1.76(dt,J=4.5Hz,J=12Hz,4H),1.25(m,120H),0.88(t,J=7.2Hz,12H)。
【0198】
合成例7 (B-9-Brの合成)(E1工程)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、合成例5で合成したB-9-H225mg(0.174mmol)及びTHF(脱水グレード)8mlを添加した。この混合物を-78℃に冷却し、ブチルリチウム(東京化成工業、1.6M)のヘキサン溶液0.40ml(0.64mmol)を滴下した。このジリチオ化反応を-78℃で15分間、及び室温で30分間熟成した。ジリチオ化反応物を-78℃に冷却し、1,2-ジブロモ-1,1,2,2-テトラクロロエタン(東京化成工業)208mg(0.638mol)とTHF(脱水グレード)2mlからなる溶液を滴下した。得られた混合物を室温まで昇温後、水及びトルエンを添加し、分相した。有機相を食塩水及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン→ヘキサン/トルエン=5/1)、B-9-Brの橙色固体207mgを得た(収率82%)。
MS(APCI) m/z: 1452(M+H)。
【0199】
合成例8 (B-9-Brの合成)(E1工程)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、合成例6で合成したB-9-H84.0mg(0.0649mmol)及びTHF(脱水グレード)5mlを添加した。この混合物を-78℃に冷却し、ブチルリチウム(東京化成工業、1.6M)のヘキサン溶液0.20ml(0.32mmol)を滴下した。このジリチオ化反応を-78℃で15分間、及び室温で20分間熟成した。ジリチオ化反応物を-78℃に冷却し、1,2-ジブロモ-1,1,2,2-テトラクロロエタン(東京化成工業)124mg(0.380mol)とTHF(脱水グレード)2mlからなる溶液を滴下した。得られた混合物を室温まで昇温後、水及びトルエンを添加し、分相した。有機相を食塩水及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン→ヘキサン/トルエン=10/1)、B-9-Brの橙色固体84.8mgを得た(収率90%)。
H NMR(CDCl):δ=6.91(s,2H),6.70(d,J=0.9Hz,2H),6.60(d,J=0.9Hz,2H),1.88(dt,J=4.1Hz,J=12Hz,4H),1.76(dt,J=4.5Hz,J=12Hz,4H),1.25(m,120H),0.88(t,J=7.2Hz,12H)。
【0200】
実施例1 (共役ポリマー(化合物1)の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、合成例7で合成したB-9-Br174mg(0.120mmol)、4,7-ビス(4,4,5,5)-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾール(東京化成工業)46.6mg(0.120mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業)2.2mg(0.0024mmol)、トリ-o-トリルホスフィン(東京化成工業)2.9mg(0.0096mmol)、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業)2.5mg(0.0062mmol)、1.0M炭酸ナトリウム水1ml、及びトルエン6mlを添加した。この混合物の窒素バブリングを20分間行った後、加熱還流下で、48時間攪拌した。さらに、ブロモベンゼン(東京化成工業)100μl添加し、加熱還流を4時間、2-フェニル-4,4,5,5-1,3,2-ジオキサボロラン(東京化成工業)100mg添加し12時間、加熱還流した(オイルバス温度113℃)。得られた反応混合物を40℃に冷却し、100mlのメタノールと2mlの塩酸の混合溶液中へ投入した。生成したスラリー液を濾過し、得られた固体をソックスレー抽出した。メタノール、ヘキサン、クロロホルムで抽出洗浄し、ヘキサン及びクロロホルム抽出成分を合わせた。この溶液にジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(東京化成工業)100mgを添加し、3時間加熱還流した。得られた反応液を水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮液をメタノールから2回再沈殿を行い、化合物1の127mgを得た(収率74%)。
GPCよりMw=138,000、Mn=98,000、PDI=1.4であった。
【0201】
実施例2 (有機半導体層形成用溶液の作製)
窒素雰囲気下、10mlサンプル管に、実施例1で合成した共役ポリマー(化合物1)の10mg及び1,2-ジクロロベンゼン(シグマ-アルドリッチ、脱水グレード)1240mgを添加し、50℃に加熱溶解後、室温下(25℃)に放冷し、有機半導体層形成用溶液を調製した。25℃で10時間後も溶液状態を維持しており(化合物1の濃度は0.80重量%)、スピンコート及びインクジェットによる製膜に適した化合物であることを確認した。
【0202】
実施例3 (有機半導体層及び有機薄膜トランジスタの作製)
実施例2で得られた有機半導体層形成用溶液を用い、トップゲート-ボトムコンタクト型(D)のp型有機薄膜トランジスタを作製した。各構成部材の材質及び製膜方法を表1に示した。共役ポリマー(化合物1)の薄膜の膜厚は53nmであった。
【0203】
【表1】
【0204】
作製した有機薄膜トランジスタの電気物性は、半導体パラメーターアナライザー(ケースレー4200SCS)を用いて、ドレイン電圧(Vd=-50V)で、ゲート電圧(Vg)を+10~-50Vまで0.5V刻みで走査し、伝達特性の評価を行った。
その結果正孔のキャリア移動度は0.48cm/V・sec、電流オン・オフ比は4.0×10であった。
【0205】
実施例4 (有機半導体層及び有機薄膜トランジスタの作製)
実施例3でアニール条件を130℃、15分間とした以外は、実施例3と同様の操作を繰り返した。得られた有機薄膜トランジスタの伝達特性から正孔のキャリア移動度は0.73cm/V・sec、電流オン・オフ比は2.8×10であり、130℃での熱アニールで性能の向上が見られた。
【0206】
実施例5 (共役ポリマー(化合物1)の合成)
オイルバス温度を90℃とした以外は、実施例1と同様の方法により、化合物1を得た(収率85%)。
H NMR(CDCl):δ=8.03(m,2H),7.89(m,2H),6.83-6.58(m,4H),2.01(m,4H),1.86(m,4H),1.28(m,120H),0.87(t,J=7.2Hz,12H)。
GPCよりMw=3,600、Mn=2,700、PDI=1.3であった。
DSCより融点及びTgのピークは見られなかった。
【0207】
比較例1
(有機半導体層形成用溶液の作製)
窒素雰囲気下、10mlサンプル管に、ポリ{2,5-ビス(3-テトラデシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン}(シグマ-アルドリッチ)を用い、実施例2と同様の方法により、有機半導体層形成用溶液を調製した(0.80重量%)。25℃で10時間後はゲル状態となっており、ドロップキャスト及びインクジェットによる製膜に適していない状態となっていた。
【0208】
(有機半導体層及び有機薄膜トランジスタの作製)
上記の50℃に加熱溶解させた状態の該有機半導体層形成用溶液を用い、実施例3と同様の方法により、膜厚41nmのポリ{2,5-ビス(3-テトラデシルチエニル-2-)チエノ[3,2-b]チオフェン}の薄膜を作製し、トップゲート-ボトムコンタクト型のp型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0209】
該トランジスタ素子の伝達特性の評価を行った結果、正孔のキャリア移動度は0.068cm/V・sec、電流オン・オフ比は1.0×10であった。
【0210】
比較例2
アニール条件を130℃、15分間とした以外は、比較例1と同様の操作を繰り返した。得られた有機薄膜トランジスタの伝達特性から正孔のキャリア移動度は0.066cm/V・sec、電流オン・オフ比は1.0×10で、向上はみられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明の共役ポリマーは、高いキャリア移動度を与えると共に溶解性に優れ、140℃以下の温和な温度で熱アニールすることができることからプラスチック基板を有する有機薄膜トランジスタに代表される有機薄膜半導体デバイス材料としての適用が期待できる。
【符号の説明】
【0212】
(A):ボトムゲート-トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(B):ボトムゲート-ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(C):トップゲート-トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(D):トップゲート-ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
1:有機半導体層
2:基板
3:ゲート電極
4:ゲート絶縁層
5:ソース電極
6:ドレイン電極
図1