(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ケーブル及びハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/18 20060101AFI20230725BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01B7/18 E
H01B7/00 301
(21)【出願番号】P 2019216215
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】村山 知之
(72)【発明者】
【氏名】江島 弘高
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204591(JP,A)
【文献】特開2017-224433(JP,A)
【文献】特開2017-131054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/18
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本以上の導体を含む複数の電線ユニットと、
複数本の線状の介在と、
複数の前記電線ユニットと複数本の前記介在とを撚り合わせた集合体の周囲に巻き付けられているテープ部材と、
前記テープ部材の周囲を覆うシースと、を備え、
前記介在は、周方向に隣り合う2つの前記電線ユニットと前記テープ部材との間に配置されており、
複数本の前記介在のそれぞれは、-40℃での貯蔵弾性率が10
9Paよりも低
く、
前記介在及び前記シースは、ウレタンからなり、前記介在の外周面の算術平均粗さRaは、1μm以上30μm以下である、
ケーブル。
【請求項2】
複数本の前記介在のそれぞれは、周方向に隣り合う2つの前記電線ユニットと前記テープ部材とに接触している、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記介在と、前記介在と周方向に隣り合う前記電線ユニットと、前記テープ部材との間に、前記介在、前記電線ユニット、及び前記テープ部材と接触するように設けられた線状の第2介在を備えた、
請求項2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記介在の長手方向に垂直な断面における断面積が、0.75mm
2以上7.5mm
2以下である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記電線ユニットは、一対の信号線を撚り合わせた対撚線の周囲を内部シースで被覆した信号線ユニットを含み、
一対の前記介在が、前記信号線ユニットを挟み込むように前記内部シースに接触して設けられている、
請求項1乃至
4の何れか1項に記載のケーブル。
【請求項6】
前記内部シースは、ウレタンからなり、
前記内部シースの外周面の算術平均粗さRaが、1μm以上30μm以下である、
請求項
5に記載のケーブル。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れか1項に記載のケーブルと、
複数の前記電線ユニットの端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、
ハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル及びハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のハーネス(ワイヤハーネス)に用いられるケーブルとして、複数の電線を撚り合わせた集合体の周囲にテープ部材を巻き付け、テープ部材の外周を覆うようにシースを設けたものが知られている。また、ケーブルの外形を円形状に近づけるために、複数の電線と共に介在を撚り合わせて集合体を形成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。介在としては、一般に、ポリエチレンからなるものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリエチレンからなる介在は、低温時に硬くなり伸びが低下するため、低温下でケーブルに屈曲や揺動が加えられた際に断線しやすいという課題がある。介在が断線すると、ケーブルに屈曲や揺動が加えられた際に、介在が断線した箇所に応力が集中し、ケーブルの屈曲耐久性が低下してしまう場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、低温環境下におけるケーブルの屈曲耐久性を向上可能なケーブル及びハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、1本以上の導体を含む複数の電線ユニットと、複数本の線状の介在と、複数の前記電線ユニットと複数本の前記介在とを撚り合わせた集合体の周囲に巻き付けられているテープ部材と、前記テープ部材の周囲を覆うシースと、を備え、前記介在は、周方向に隣り合う2つの前記電線ユニットと前記テープ部材との間に配置されており、複数本の前記介在のそれぞれは、-40℃での貯蔵弾性率が109Paよりも低い、ケーブルを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、ケーブルと、複数の前記電線ユニットの端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、ハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温環境下におけるケーブルの屈曲耐久性を向上可能なケーブル及びハーネスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るケーブルを用いた車両の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係るケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係るハーネスの概略構成図である。
【
図4】本発明の一変形例に係るケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
(ケーブルを適用する車両の説明)
図1は、本実施の形態に係るケーブルが用いられた車両の構成を示す模式図である。
【0012】
車両100は、車体101に4つのタイヤハウス102を有し、2つの前輪103及び2つの後輪104がそれぞれのタイヤハウス102内に配置されている。本実施の形態では、車両100が前輪駆動車であり、前輪103がエンジンや電動モータからなる図略の駆動源の駆動力を受けて駆動される。すなわち、本実施の形態では、前輪103が駆動輪であり、後輪104が従動輪である。
【0013】
また、車両100は、2つの電動パーキングブレーキ装置130と、制御装置140とを有している。電動パーキングブレーキ装置130は、2つの後輪104のそれぞれに対応して設けられ、制御装置140から供給される電流によって作動して、後輪104に制動力を発生させる。制御装置140は、車室内に設けられたパーキングブレーキ作動スイッチ141の操作状態を検出可能であり、運転者は、このパーキングブレーキ作動スイッチ141をオン/オフ操作することで、電動パーキングブレーキ装置130の作動状態と非作動状態とを切り替えることが可能である。
【0014】
例えば、停車時おいて運転者がパーキングブレーキ作動スイッチ141をオフ状態からオン状態にすると、制御装置140は、所定時間(例えば1秒間)にわたって電動パーキングブレーキ装置130を作動させるための作動電流を出力する。これにより、電動パーキングブレーキ装置130が作動し、後輪104に制動力を発生させる。この電動パーキングブレーキ装置130の作動状態は、制御装置140から電動パーキングブレーキ装置130を非作動状態にするための電流が出力されるまで維持される。このように、電動パーキングブレーキ装置130は、主として車両100の停止後に制動力を発生させる。
【0015】
制御装置140は、運転者の操作によってパーキングブレーキ作動スイッチ141がオン状態からオフ状態にされた場合に、電動パーキングブレーキ装置130を非作動状態にするための電流を出力する。なお、制御装置140は、パーキングブレーキ作動スイッチ141がオフ状態にされた場合の他、例えばアクセルペダルが踏込操作された場合にも、電動パーキングブレーキ装置130を非作動状態にするための電流を出力する。
【0016】
また、前輪103及び後輪104には、車輪速を検出するための車輪速センサ(ABSセンサ)131が設けられている。車輪速センサ131は、それ自体は周知のものであり、前輪103又は後輪104と共に回転する環状の磁気エンコーダの磁界を検出する磁界検出素子を有し、この磁界の向きが変化する周期によって車輪速(前輪103又は後輪104の回転速度)を検出する。
【0017】
制御装置140と、前輪103の車輪速センサ131とは、複数の電線からなる前輪用電線群151、及び前輪用のハーネス152によって電気的に接続されている。前輪用電線群151と前輪用のハーネス152とは、車体101に固定された中継ボックス153内で接続されている。中継ボックス153は、左右一対の前輪103のそれぞれの近傍に配置されている。
【0018】
また、制御装置140と、後輪104の電動パーキングブレーキ装置130及び車輪速センサ131とは、複数の電線からなる後輪用電線群154、及び本実施の形態に係るケーブル1を用いたハーネス10によって電気的に接続されている。後輪用電線群154とハーネス10とは、車体101に固定された中継ボックス155内で接続されている。中継ボックス155は、左右一対の後輪104のそれぞれの近傍に配置されている。
【0019】
前輪用電線群151は、束ねられた状態で車体101に設けられた配線路150に配置されている。また、後輪用電線群154も、前輪用電線群151と同様に、束ねられた状態で車体101に設けられた配線路150に配置されている。
【0020】
前輪用のハーネス152は、一端部が前輪103の車輪速センサ131に接続され、他端部が中継ボックス153に収容されている。後輪用のハーネス10は、一端部が後輪104の電動パーキングブレーキ装置130及び車輪速センサ131に接続され、他端部が中継ボックス155に収容されている。
【0021】
(ケーブル1の構成)
図2は、本実施の形態に係るケーブル1の長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図2に示すように、ケーブル1は、1本以上の導体を含む複数の電線ユニット2と、複数本の線状の介在5と、複数の電線ユニット2と複数本の介在5とを撚り合わせた集合体6の周囲に巻き付けられているテープ部材7と、テープ部材7の周囲を覆うシース8と、を備えている。
【0022】
(電線ユニット2)
本実施の形態に係るケーブル1では、1本の電源線3からなる電源線ユニット21を2つ有すると共に、一対の信号線4を撚り合わせた対撚線43の周囲を内部シース44で被覆した信号線ユニット22を1つ有しており、合計3つの電線ユニット2が備えられている。換言すれば、ケーブル1は、一対の電源線3と一対の信号線4の合計4本の絶縁電線を備えている。
【0023】
電源線ユニット21を構成する電源線3は、電動パーキングブレーキ装置130に電流を供給するために用いられる。信号線4は、車輪速センサ131の検出信号を制御装置140に伝送するために用いられる。つまり、信号線4は、車両100の走行時に、車両100の走行状態を示す車両状態量の検出信号を制御装置140に伝送する。
【0024】
電源線3は、銅等の良導電性の導線からなる中心導体31を絶縁性の樹脂からなる絶縁体32で被覆した絶縁電線である。中心導体31は、複数の素線からなる撚線である。絶縁体32は、例えば架橋PE(ポリエチレン)又は難燃架橋PE(ポリエチレン)からなる。電源線3の外径は、例えば3mmである。
【0025】
信号線ユニット22を構成する信号線4は、銅等の良導電性の導線からなる中心導体41を絶縁性の樹脂からなる絶縁体42で被覆した絶縁電線である。中心導体41は、複数の素線からなる撚線である。絶縁体42は、例えば架橋PE(ポリエチレン)又は難燃架橋PE(ポリエチレン)からなる。信号線4の外径は、電源線3の外径よりも小さい。一対の信号線4より合わせた対撚線43を被覆する内部シース44は、柔軟性及び耐久性に優れた軟質の熱可塑性ウレタンからなる。内部シース44の外径(信号線ユニット22の外径)は、例えば4.3mmであり、電源線ユニット21(電源線3)の外径よりも大きい。
【0026】
なお、本実施の形態において、電源線3及び信号線4は、シールド導体により被覆されていない。つまり、電源線3と信号線4との間には、電磁波を遮蔽する導電性の部材が配置されていない。これは、電源線3に電流が流れるのは主として車両100の停車中であり、信号線4が電気信号を伝送するのは主として車両100の走行中であるため、信号線4と電源線3との間には、シールド導体を設ける必要がないことに着目したものである。つまり、一対の電源線3に電流が流れた場合、この電流により発生する電磁波は、一対の信号線4の電位差に影響を及ぼし得るが、制御装置140は、車速がゼロである車両100の停車中には、信号線4の電気信号を無視することができ、車両100の走行に悪影響を及ぼさないようにすることができる。また、信号線4がシールド導体に被覆されていないことにより、ケーブル1の柔軟性が増し、屈曲性が高まると共に、ケーブル1の軽量化ならびに低コスト化にも寄与することができる。
【0027】
(介在5)
複数本の介在5は、周方向に隣り合う2つの電線ユニット2とテープ部材7との間にそれぞれ配置される。介在5は、ケーブル1の外形を円形状に近づけるために設けられるものであり、その長手方向に垂直な断面形状が円形の線状に形成されている。介在5の外径は、各電線ユニット2の外径を考慮し、集合体6の外形が円形状に近くなるように適宜決定される。より具体的には、介在5の長手方向に垂直な断面における断面積は、0.75mm2以上7.5mm2以下であるとよい。介在5の断面積を0.75mm2以上とすることで、ケーブル1に屈曲や揺動が加えられた際に介在5が断線してしまうことを抑制でき、介在5の断面積を7.5mm2以下とすることで、ケーブル1の屈曲性が低下してしまうことを抑制できる。ここでは、外径1.7mmの介在5を用いた。
【0028】
なお、一般的なケーブルにおいて、糸状(あるいは繊維状)の介在が広く用いられているが、糸状(あるいは繊維状)の介在は端末加工時に手間がかかるため、本実施の形態では糸状(あるいは繊維状)の介在を使用せず、端末加工時の作業性に有利な線状の介在5を用いている。
【0029】
本実施の形態では、2本の介在5を用い、外径の大きい信号線ユニット22を周方向に挟み込むように両介在5を配置している。すなわち、周方向における一方の電源線ユニット21(電源線3)と信号線ユニット22との間、及び、他方の電源線ユニット21(電源線3)と信号線ユニット22との間に、それぞれ介在5が配置されている。介在5のそれぞれは、周方向に隣り合う2つの電線ユニット2の外面(ここでは、電源線3の絶縁体32の外面、及び内部シース44の外面)とテープ部材7の内面とにそれぞれ接触している。
【0030】
本実施の形態に係るケーブル1では、複数本の介在5のそれぞれは、-40℃での貯蔵弾性率がポリエチレンよりも低いものが用いられる。これは、-40℃での貯蔵弾性率がポリエチレン以上であると、低温時に硬くなり材料の伸びが低下して、ケーブル1に屈曲や揺動が加えられた際に介在5が断線してしまうおそれがあるためである。介在5が断線すると、ケーブルに屈曲や揺動が加えられた際に、介在5の断線箇所に応力が集中して、屈曲耐久性が低下してしまうおそれが生じる。本実施の形態のように、介在5として、-40℃での貯蔵弾性率がポリエチレンよりも低いものを用いることで、低温環境下における介在5の柔軟性や伸びを維持して介在5の断線を抑制することが可能となり、低温環境下におけるケーブル1の屈曲耐久性を向上することが可能になる。
【0031】
より具体的には、介在5の-40℃での貯蔵弾性率は、ポリエチレンの-40℃での貯蔵弾性率である109Paよりも低いことが望ましい。このような条件を満たす材料として、ウレタン、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコンゴム等が挙げられる。本実施の形態では、柔軟性及び耐久性に優れた軟質の熱可塑性ウレタンからなる介在5を用いた。本実施の形態では、内部シース44と後述するシース8においてもウレタンを用いており、これらを同一の材料で介在5を構成することにより、製造コストを削減することが可能になる。なお、ウレタン及びEPDMの-40℃での貯蔵弾性率は108Paであり、シリコンゴムの-40℃での貯蔵弾性率は106Pa以上107Pa以下である。すなわち、介在5の-40℃での貯蔵弾性率は、106Pa以上108Pa以下であることがより望ましい。-40℃での貯蔵弾性率の測定方法としては、JIS K 7244(1998)にて規定される「プラスチック-動的機械特性の測定方法」がある。貯蔵弾性率はPaで表わされ、貯蔵弾性率は荷重サイクルを通じて蓄積される最大エネルギーに比例し粘弾性材料の剛性を示す(JIS K 7244-1 3.2項より)。また、ポリエチレン及びウレタンの-40℃での貯蔵弾性率については、JIS K 7224-4に記載の引張振動-非共振法を用いて測定した。
【0032】
介在5の外周面には、微細な凹凸が形成されていてもよい。より具体的には、ウレタンからなる介在5を用いる場合、介在5の外周面の算術平均粗さRaが、1μm以上30μm以下であってもよい。これにより、隣り合う電線ユニット2に対してケーブル長手方向に介在5が相対移動しやすくなり、ケーブル1の屈曲性を高めることが可能になる。介在5の外周面の表面粗さは、例えば、介在5を押出成形する際の条件を適宜設定することで、調整可能である。
【0033】
また、ケーブル1の屈曲性をさらに高めるために、信号線ユニット22の内部シース44の外周面にも、微細な凹凸を形成してもよい。この場合、ウレタンからなる内部シース44を用いる場合には、内部シース44の外周面の算術平均粗さRaを、1μm以上30μm以下とするとよい。
【0034】
(集合体6、テープ部材7、シース8)
集合体6は、2つの電源線ユニット21と、1つの信号線ユニット22と、2本の介在5とを撚り合わせて構成されている。集合体6の周囲には、集合体6の撚りを維持するためのテープ部材7がらせん状に巻き付けられている。テープ部材7としては、例えば、紙や不織布からなるものを用いることができる。シース8は、絶縁性の樹脂からなり、テープ部材7の周囲を覆うように設けられている。本実施の形態では、シース8は、柔軟性及び耐久性に優れた軟質の熱可塑性ウレタンからなる。
【0035】
(ハーネス10の構成)
図3は、本実施の形態に係るハーネス10の概略構成図である。
図3に示すように、ハーネス10は、上述の本実施の形態に係るケーブル1と、ケーブル1における複数の電線ユニット2の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えている。
【0036】
図3では、図示左側が車輪(後輪104)側の端部を示し、図示右側が車体101側(中継ボックス155側)の端部を示している。以下の説明では、ハーネス10の車輪(後輪104)側の端部を「一端部」、車体101側(中継ボックス155側)の端部を「他端部」という。
【0037】
2つの電源線ユニット21(電源線3)の一端部には、電動パーキングブレーキ装置130との接続のための車輪側電源コネクタ11が取り付けられ、2つの電源線ユニット21(電源線3)の他端部には、中継ボックス155内における後輪用電線群154との接続のための車体側電源コネクタ12が取り付けられている。
【0038】
信号線ユニット22(信号線4)の一端部には、車輪速センサ131が取り付けられ、信号線ユニット22(信号線4)の他端部には、中継ボックス155内における後輪用電線群154との接続のための車体側信号用コネクタ13が取り付けられている。
【0039】
なお、ここでは、2つの電源線ユニット21の他端部と信号線ユニット22の他端部に、個別にコネクタ12,13を設ける場合を説明したが、2つの電源線ユニット21と信号線ユニット22とを一括して接続する共用のコネクタを設けてもよい。
【0040】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るケーブル1では、電線ユニット2と共に撚り合わせられ集合体6を構成する線状の介在5として、-40℃での貯蔵弾性率が109Paよりも低いものを用いている。これにより、低温環境下でケーブル1に屈曲や揺動が加えられた際に介在5が断線することを抑制することが可能となり、低温環境下におけるケーブル1の屈曲耐久性を向上することが可能になる。
【0041】
(変形例)
上記実施の形態では、周方向における電源線ユニット21と信号線ユニット22との間に1つの介在5を設けた場合について説明したが、周方向に隣り合う電線ユニット2間に、複数の介在5を設けることも可能である。
【0042】
例えば、
図4に示すケーブル1aのように、周方向に隣り合う電線ユニット2間に、介在5に加えて第2介在9を設けて、2つの介在5,9を設けてもよい。第2介在9は、介在5と、介在5と周方向に隣り合う電線ユニット2(ここでは信号線ユニット22)と、テープ部材7との間に設けられる。第2介在9は、介在5、電線ユニット2(信号線ユニット22)、及びテープ部材7と接触するように設けられる。第2介在9としては、介在5と同じ材質のものを用いるとよく、-40℃での貯蔵弾性率が10
9Paよりも低いウレタン、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコンゴム等からなるものを用いることが望ましい。第2介在9を設けることで、ケーブル1aの外形をより円形状に近づけ、より良好な外観を得ることが可能になる。なお、ケーブル1aの外形をより円形状に近づけるため、周方向において介在5と隣り合う2つの電線ユニット2のうち、外径の大きいほうの電線ユニット2と介在5との間に、第2介在9を設けることがより望ましい。また、第2介在9の外径は、介在5の外径よりも小さい。
【0043】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0044】
[1]1本以上の導体を含む複数の電線ユニット(2)と、複数本の線状の介在(5)と、複数の前記電線ユニット(2)と複数本の前記介在(5)とを撚り合わせた集合体(6)の周囲に巻き付けられているテープ部材(7)と、前記テープ部材(7)の周囲を覆うシース(8)と、を備え、前記介在(5)は、周方向に隣り合う2つの前記電線ユニット(2)と前記テープ部材(7)との間に配置されており、複数本の前記介在(5)のそれぞれは、-40℃での貯蔵弾性率が109Paよりも低い、ケーブル(1)。
【0045】
[2]複数本の前記介在(5)のそれぞれは、周方向に隣り合う2つの前記電線ユニット(2)と前記テープ部材(7)とに接触している、[1]に記載のケーブル(1)。
【0046】
[3]前記介在(5)と、前記介在(5)と周方向に隣り合う前記電線ユニット(2)と、前記テープ部材(7)との間に、前記介在(5)、前記電線ユニット(2)、及び前記テープ部材(7)と接触するように設けられた線状の第2介在(9)を備えた、[2]に記載のケーブル(1a)。
【0047】
[4]前記介在(5)の長手方向に垂直な断面における断面積が、0.75mm2以上7.5mm2以下である、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0048】
[5]前記介在(5)がウレタンからなり、前記介在(5)の外周面の算術平均粗さRaが、1μm以上30μm以下である、[1]乃至[4]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0049】
[6]前記電線ユニット(2)は、一対の信号線(4)を撚り合わせた対撚線(43)の周囲を内部シース(44)で被覆した信号線ユニット(22)を含み、一対の前記介在(5)が、前記信号線ユニット(22)を挟み込むように前記内部シース(44)に接触して設けられている、[1]乃至[5]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0050】
[7]前記内部シース(44)の外周面の算術平均粗さRaが、1μm以上30μm以下である、[6]に記載のケーブル(1)。
【0051】
[8][1]乃至[7]の何れか1項に記載のケーブル(1)と、複数の前記電線ユニット(2)の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、ハーネス(10)。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…ケーブル
2…電線ユニット
21…電源線ユニット
22…信号線ユニット
3…電源線
31…中心導体
32…絶縁体
4…信号線
41…中心導体
42…絶縁体
43…対撚線
44…内部シース
5…介在
6…集合体
7…テープ部材
8…シース
10…ハーネス