(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】反射型マスクブランクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20230725BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G03F1/24
C23C14/34 U
(21)【出願番号】P 2020035517
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-02-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲月 判臣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 恒男
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-309868(JP,A)
【文献】特開2008-103481(JP,A)
【文献】特開2002-222764(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/86
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一の主表面上に形成された多層反射膜及び該多層反射膜上に形成された吸収体膜とを備え、上記多層反射膜が、互いに光学特性が異なる第1の層及び第2の層が交互に各々2層以上積層されてなる反射型マスクブランクを製造する方法であって、
上記多層反射膜を構成する第1の層及び第2の層を交互にスパッタ法により形成する工程を含み、
上記多層反射膜を構成する第1の層及び第2の層の形成において、各々の層の形成を、形成開始時から所定の厚さに到達するまでの第1段階と、上記所定の厚さに到達した後から形成終了時までの第2段階とで構成し、
第1の層の形成後の第2の層の形成、又は第2の層の形成後の第1の層の形成において、
第1段階のスパッタ圧力を0.08Pa以上、第2段階のスパッタ圧力を0.08Pa未満とし、かつ第1段階のスパッタ圧力を、直前の層の形成終了時のスパッタ圧力より高く、かつ第2段階のスパッタ圧力より高くすることを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項2】
上記工程において、第1の層を構成する金属又は半金属のターゲットと、第2の層を構成する金属又は半金属のターゲットとを基板の主表面とを対向させ、基板の主表面と対向している上記第1の層を構成する金属又は半金属のターゲット及び上記第2の層を構成する金属又は半金属のターゲットに交互に電力を印加した状態で、上記第1の層の形成後の第2の層の形成、又は上記第2の層の形成後の第1の層の形成において、第1段階のスパッタ圧力を、直前の層の形成終了時のスパッタ圧力より高く、かつ第2段階のスパッタ圧力より高くすることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
上記第1段階において形成される上記所定の厚さが、第1段階及び第2段階の全体で形成される厚さの1/20以上1/2未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
上記スパッタ法がマグネトロンスパッタ法であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
上記第1段階及び第2段階のスパッタ圧力を、Arガスで調整することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
上記第1の層及び第2の層が、各々、Si層及びMo層であり、上記第1の層及び第2の層が交互に各々40層以上積層されていることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
上記多層反射膜の波長13~14nmの極端紫外線(EUV)に対する入射角6°での反射率が66.5%以上であることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
上記多層反射膜が形成されている上記基板の主表面の表面粗さRMSが0.15nm以下であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSIなどの半導体デバイスの製造などに使用される反射型マスクの素材となる反射型マスクブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス(半導体装置)の製造工程では、転写用マスクに露光光を照射し、マスクに形成されている回路パターンを、縮小光学系を介して半導体基板(半導体ウェハ)上に転写するフォトリソグラフィ技術が用いられる。現時点では露光光の波長はフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いた193nmが主流となっている。
【0003】
しかし、更なる微細パターンの形成が必要とされてきていることから、露光光としてArFエキシマレーザ光より更に波長の短い極端紫外(Extreme Ultraviolet:以下「EUV」と称す。)光を用いたEUVリソグラフィ技術が有望視されている。EUV光とは、波長が0.2~100nm程度の光であり、より具体的には、波長が13.5nm程度の光である。このEUV光は物質に対する透過性が極めて低く、従来の透過型の投影光学系やマスクが使えないことから、反射型の光学素子が用いられる。そのため、パターン転写用のマスクも反射型マスクが提案されている。反射型マスクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜の上にEUV光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものが一般的に用いられ、多層反射膜上の吸収体膜の有無により生じる、露光光であるEUV光の反射率の差によって、シリコンウェーハなどの被転写物上に、パターンを形成する。
【0004】
反射型マスクは、反射型マスクブランクを用いて製造されるが、反射型マスクブランクは、基板上に、露光光を反射する多層反射膜と、その上に露光光に対して反射率の低い吸収体膜を有し、更に、一般的には、多層反射膜と吸収体膜の間に保護膜を有する。多層反射膜は、屈折率の異なる層を交互に積層することで形成され、例えば、EUV光露光用には、モリブデン(Mo)層と、シリコン(Si)層とを交互に積層したものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
反射型マスクブランクは光学特性の改善や欠陥を検出しやすくする目的から、より平滑なものが求められている。また、反射型マスクを用いた露光の際には、吸収体膜により露光光が吸収され、多層反射膜が露出した部分で、露光光が多層反射膜により反射される。露光の際に高いコントラストを得るために、多層反射膜の露光光に対する反射率は、高いことが望ましい。また、多層反射膜は、反射率が高ければ高いほど、パターンを転写する対象、具体的には、シリコンウェーハなどの被転写物上に形成されたレジスト膜が、所定の露光量に達する時間を短くすることができることから、露光工程のスループット向上のために、より高い反射率を有することが求められている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、反射型マスクを用いた露光の際に、露光光に対してより高い反射率を与える多層反射膜を有する反射型マスクブランクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、反射型マスクブランクの多層反射膜として、互いに光学特性が異なる第1の層及び第2の層が交互に各々2層以上積層された多層反射膜を形成する際、第1の層及び第2の層を交互にスパッタ法により形成し、層の形成を、層の形成開始時から所定の厚さに到達するまでの第1段階と、上記所定の厚さに到達した後から形成終了時までの第2段階とし、層の形成後の次の層の形成において、第1段階のスパッタ圧力を、直前の層の形成終了時のスパッタ圧力より高く、かつ第2段階のスパッタ圧力より高くすることで、波長13~14nmの極端紫外線(EUV)に対して高い反射率を有する多層反射膜が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、以下の反射型マスクブランクの製造方法を提供する。
1.基板と、該基板の一の主表面上に形成された多層反射膜及び該多層反射膜上に形成された吸収体膜とを備え、上記多層反射膜が、互いに光学特性が異なる第1の層及び第2の層が交互に各々2層以上積層されてなる反射型マスクブランクを製造する方法であって、
上記多層反射膜を構成する第1の層及び第2の層を交互にスパッタ法により形成する工程を含み、
上記多層反射膜を構成する第1の層及び第2の層の形成において、各々の層の形成を、形成開始時から所定の厚さに到達するまでの第1段階と、上記所定の厚さに到達した後から形成終了時までの第2段階とで構成し、
第1の層の形成後の第2の層の形成、又は第2の層の形成後の第1の層の形成において、
第1段階のスパッタ圧力を0.08Pa以上、第2段階のスパッタ圧力を0.08Pa未満とし、かつ第1段階のスパッタ圧力を、直前の層の形成終了時のスパッタ圧力より高く、かつ第2段階のスパッタ圧力より高くすることを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法。
2.上記工程において、第1の層を構成する金属又は半金属のターゲットと、第2の層を構成する金属又は半金属のターゲットとを基板の主表面とを対向させ、基板の主表面と対向している上記第1の層を構成する金属又は半金属のターゲット及び上記第2の層を構成する金属又は半金属のターゲットに交互に電力を印加した状態で、上記第1の層の形成後の第2の層の形成、又は上記第2の層の形成後の第1の層の形成において、第1段階のスパッタ圧力を、直前の層の形成終了時のスパッタ圧力より高く、かつ第2段階のスパッタ圧力より高くすることを特徴とする1記載の製造方法。
3.上記第1段階において形成される上記所定の厚さが、第1段階及び第2段階の全体で形成される厚さの1/20以上1/2未満であることを特徴とする1又は2記載の製造方法。
4.上記スパッタ法がマグネトロンスパッタ法であることを特徴とする1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
5.上記第1段階及び第2段階のスパッタ圧力を、Arガスで調整することを特徴とする1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
6.上記第1の層及び第2の層が、各々、Si層及びMo層であり、上記第1の層及び第2の層が交互に各々40層以上積層されていることを特徴とする1乃至5のいずれかに記載の製造方法。
7.上記多層反射膜の波長13~14nmの極端紫外線(EUV)に対する入射角6°での反射率が66.5%以上であることを特徴とする1乃至6のいずれかに記載の製造方法。
8.上記多層反射膜が形成されている上記基板の主表面の表面粗さRMSが0.15nm以下であることを特徴とする1乃至7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反射型マスクを用いた露光の際に、露光光に対してより高い反射率を与える多層反射膜を有する反射型マスクブランクを、生産性良く製造して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】反射型マスクブランクの一例を示す断面図である。
【
図2】反射型マスクブランクの他の例を示す断面図である。
【
図3】反射型マスクブランクの別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の反射型マスクブランクは、基板と、基板の一の主表面(表側の面)上に形成された多層反射膜、具体的には、極端紫外(EUV)光などの露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成された吸収体膜、具体的には、EUV光などの露光光を吸収し、反射率を低下させる吸収体膜とを備える。反射型マスクブランク(EUV用反射型マスクブランク)からは、吸収体膜をパターニングして形成される吸収体パターン(吸収体膜のパターン)を有する反射型マスク(EUV用反射型マスク)が製造される。EUVリソグラフィに用いられるEUV光の波長は13~14nmであり、通常、波長が13.5nm程度の光である。
【0013】
多層反射膜は、通常、基板の一の主表面に接して設けられることが好ましいが、本発明の効果を失わなければ、基板と多層反射膜との間に下地膜を設けることも可能である。吸収体膜は多層反射膜に接して形成してもよいが、多層反射膜と吸収体膜との間には、好ましくは多層反射膜と接して、より好ましくは多層反射膜及び吸収体膜と接して、保護膜(多層反射膜の保護膜)を設けてもよい。保護膜は、洗浄、修正等の加工などにおいて、多層反射膜を保護するためなどに用いられる。また、保護膜には、吸収体膜をエッチングによりパターニングするときの多層反射膜の保護や、多層反射膜の酸化を防止する機能を有するものが好ましい。一方、基板の一の主表面と反対側の面である他の主表面(裏側の面)下、好ましくは他の主表面に接して、反射型マスクを露光装置に静電チャックするために用いる導電膜を設けてもよい。なお、ここでは、基板の一の主表面を表側の面かつ上側、他の主表面を裏側の面かつ下側としているが、両者の表裏及び上下は便宜上定めたものであり、一の主表面と他の主表面とは、基板における2つの主表面(膜形成面)のいずれかであり、表裏及び上下は置換可能である。
【0014】
図1~3に、本発明の反射型マスクブランクの典型的な例を示す。
図1は、本発明の反射型マスクブランクの一例を示す断面図であり、この反射型マスクブランク100は、基板101の一の主表面上に、一の主表面に接して形成された多層反射膜102と、多層反射膜102に接して形成された吸収体膜103とを備える。
図2は、本発明の反射型マスクブランクの他の例を示す断面図であり、この反射型マスクブランク200は、基板101の一の主表面上に、一の主表面に接して形成された多層反射膜102と、多層反射膜102に接して形成された保護膜104と、保護膜104に接して形成された吸収体膜103とを備える。
図3は、本発明の反射型マスクブランクの別の例を示す断面図であり、この反射型マスクブランク300は、基板101の一の主表面上に、一の主表面に接して形成された多層反射膜102と、多層反射膜102に接して形成された保護膜104と、保護膜104に接して形成された吸収体膜103と、基板101の他の主表面上に、他の主表面に接して形成された導電膜105とを備える。
【0015】
基板は、例えば、いわゆる6025基板(6インチ×6インチ×厚さ0.25インチ(SI単位では、通常、152mm×152mm×厚さ6.35mmと表記))を用いることができる。基板は、露光時における熱膨張によるパターンのゆがみを低減する必要があり、基板の熱膨張率は、絶対値として30ppb/℃以下、特に10ppb/℃以下であることが好ましい。このような材料としては、チタニアドープ石英ガラス(SiO2-TiO2系ガラス)などが挙げられる。
【0016】
基板は、多層反射膜中の欠陥の検出や、吸収体パターンの形成や吸収体膜中の欠陥の検出などにおいて、高い位置精度を得る観点からより平坦であることが好ましく、多層反射膜を形成する側の主表面において、露光パターン形成エリア、例えば、6025基板であれば、主表面の中央部、例えば132mm×132mmの範囲で、平坦度(平面度)が0.1μm以下、特に0.05μm以下であることが好ましい。また、基板は、多層反射膜を形成する側の主表面において、高い反射率を得るためには、表面粗さが小さいことが好ましく、表面粗さRMS(二乗平方根粗さ)が、0.15nm以下、特に0.1nm以下であることが好ましい。本発明において、表面粗さRMSは、原子間力顕微鏡AFMで、例えば1μm角の範囲で測定した値を用いることができる。
【0017】
一方、多層反射膜を形成する側の主表面とは反対側の主表面は、通常、反射型マスクを露光装置にセットするときに吸着される面となるため、十分なパターン位置精度を得るためには、基板のこの面も平坦であることが好ましく、平坦度(平面度)は1μm以下であることが好ましい。
【0018】
多層反射膜は、反射型マスクにおいてEUV光などの露光光を反射する膜であり、互いに光学特性が異なる複数種の層、例えば、互いに光学特性が異なる第1の層及び第2の層を交互に積層したもの、より具体的には、屈折率の異なる複数種の層、例えば、高屈折率層と低屈折率層とを、周期的に積層したものが用いられる。EUV光に対しては、高屈折率層の材料としては、ケイ素(Si)が用いられ、低屈折率層の材料としては、モリブデン(Mo)が用いられ、ケイ素(Si)層とモリブデン(Mo)層とが交互に積層したSi/Mo積層膜が挙げられる。複数種の層の積層は、例えば2周期以上(各々2層以上)、特に40周期以上(各々40層以上)で、好ましくは60周期以下(各々60層以下)であることが好ましい。この周期が少ないと、反射率が低くなるおそれがあり、周期が多いと膜が厚くなり、膜応力が大きくなるおそれがある。Si/Mo積層膜の場合、ケイ素(Si)層及びモリブデン(Mo)層は、各々、ケイ素単体及びモリブデン単体で形成されていることが好ましいが、各々、ケイ素化合物及びモリブデン化合物で形成されていてもよい。
【0019】
Si/Mo積層膜の場合、多層反射膜の基板に最も近い側の層を、Si層としても、Mo層としてもよい。また、基板から最も離間する側の層も、Si層としても、Mo層としてもよいが、Si層とすることが好ましい。多層反射膜の高屈折率層及び低屈折率層の厚さは、露光波長により適宜設定される。例えば、露光光がEUV光(露光波長が13~14nm)の場合は、高屈折率層及び低屈折率層とで構成される1周期分の厚さを6~8nmとし、1周期分の厚さのうち、高屈折率層の厚さを10~90%とすることが好ましい。また、多層反射膜中、高屈折率層及び低屈折率層の各々の厚さは、一定であっても、個々の層において異なっていてもよい。多層反射膜全体の膜厚は、通常240~320nm程度である。
【0020】
多層反射膜の成膜方法としては、ターゲットに電力を供給し、供給した電力で雰囲気ガスをプラズマ化(イオン化)して、スパッタリングを行うスパッタ法や、イオンビームをターゲットに照射するイオンビームスパッタ法がある。スパッタ法としては、ターゲットに直流電圧を印加するDCスパッタ法、ターゲットに高周波電圧を印加するRFスパッタ法がある。多層反射膜の形成には、一般には、表面粗さを低くできることから、イオンビームスパッタ法が用いられているが、イオンビームスパッタ法は、成膜装置が高価であり、生産性も低い。
【0021】
本発明においては、多層反射膜をスパッタ法により成膜する。スパッタ法とはArガスなどのガスをチャンバーに導入した状態でターゲットに電圧を印加し、ガスをイオン化し、ガスイオンによるスパッタリング現象を利用した成膜方法で、特にマグネトロンスパッタ法は生産性において有利である。マグネトロンスパッタ法とは、ターゲットの裏側などに磁石を配置し、磁場でターゲット直上のプラズマ密度を上げるスパッタ法であり、マグネトロンスパッタを適用すると、放電時のガス圧力(スパッタ圧力)が低くてもプラズマを維持でき、また、スパッタ速度が高くなるため好ましい。ターゲットに印加する電力はDCでもRFでもよく、またDCには、ターゲットのチャージアップを防ぐために、ターゲットに印加する負バイアスを短時間反転するパルススパッタリングも含まれる。
【0022】
スパッタ法による多層反射膜の成膜は、例えば、複数のターゲットを装着できるスパッタ装置を用いて成膜することができ、具体的には、第1の層を構成する金属又は半金属のターゲット(例えば、Siターゲット)と、第2の層を構成する金属又は半金属のターゲット(例えば、Moターゲット)とを用い、スパッタガスとして、Arガス、Krガスなどの希ガスを用いて、ターゲットと基板の主表面とを対向させて、第1の層を構成する金属又は半金属のターゲットと、第2の層を構成する金属又は半金属のターゲットとを交互にスパッタリングすることにより、第1の層及び第2の層を交互に形成して、成膜することができる。スパッタリングは、基板を主表面に沿って自転させながら実施することが好ましい。
【0023】
Si/Mo積層膜では、ケイ素(Si)層及びモリブデン(Mo)層を、各々、ケイ素化合物及びモリブデン化合物で形成する場合は、スパッタガスとして、希ガスと共に、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどの反応性ガスとを用いた反応性スパッタリングにより成膜することができる。また、ターゲットを、ケイ素化合物やモリブデン化合物としてもよい。
【0024】
スパッタ法による多層反射膜の成膜においては、スパッタガス圧については、各層の成膜初期において、ガス圧を高くすることで、スパッタガス圧を高めにし、その後にスパッタ圧力を低くすることで反射率を改善できる。つまり、スパッタ法による多層反射膜の成膜においては、第1の層及び第2の層の形成において、層の形成を、形成開始時から所定の厚さに到達するまでの第1段階と、所定の厚さに到達した後から形成終了時までの第2段階とで構成することが好ましく、その場合、第1の層の形成後の第2の層の形成、又は第2の層形成後の第1の層の形成において、第1段階のスパッタ圧力を、直前の層の形成終了時のスパッタ圧力より高く、かつ第2段階のスパッタ圧力より高くすることが有効である。
【0025】
第1の層を構成する金属又は半金属のターゲット及び第2の層を構成する金属又は半金属のターゲットのスパッタリングの切り替えのタイミングは、一方のターゲットによるスパッタリングの終了(電力の印加の終了)と、他方のターゲットによるスパッタリングの開始(電力の印加の開始)を同時にしても、一方のターゲットによるスパッタリングの終了(電力の印加の終了)後、他方のターゲットによるスパッタリングの開始(電力の印加の開始)を、所定の時間、例えば1~30秒間程度遅らせるようにしてもよい。
【0026】
第1段階において形成される厚さ(所定の厚さ)は、第1段階及び第2段階の全体で形成される厚さの1/20以上、特に1/10以上であることが好ましく、1/2未満、特に1/4以下であることが好ましい。また、第1段階のスパッタ圧力は、0.08Pa以上であることが好ましく、第2段階のスパッタ圧力は、0.08Pa未満であることが好ましい。即ち、スパッタ圧力は、0.08Paを境界として、これ以上のスパッタ圧力で層を形成する範囲を第1段階、これ未満で層の残部を形成する範囲を第2段階とすることができる。第1段階及び第2段階のスパッタ圧力は、Arガス、Krガスなどの希ガスで調整することができる。直前の層の形成時の第2段階から、対象とする層の形成時の第1段階、更に、対象とする層の形成時の第2段階において、スパッタ圧力を変化させる方法としては、Arガス、Krガスなどの希ガスの量(流量)を増減することにより調整することが好ましい。
【0027】
多層反射膜をこのように成膜することにより、高い反射率が達成される。また、多層反射膜をこのように成膜することにより、表面粗さを低く抑えることができ、例えば、多層反射膜の主表面の表面粗さRMSを、0.2nm以下、特に0.15nm以下とすることができる。
【0028】
本発明においては、上述した方法により多層反射膜を成膜することにより、反射率が高い多層反射膜を得ることができ、多層反射膜の組成や層構成にもよるが、例えば、極端紫外線(EUV)に対する入射角6°での反射率が、65%以上、特に66%以上、とりわけ66.5%以上の多層反射膜を得ることができる。この反射率は、多層反射膜の露光パターン形成エリア(吸収体パターンが形成されるエリア)内の最高値(ピーク値)である。一方、反射率の多層反射膜の露光パターン形成エリア内の最低値は、60%以上、特に62%以上であることが好ましい。また、露光パターン形成エリア内の反射率の平均値は62%以上、特に64%以上であることが好ましい。
【0029】
吸収体膜は、多層反射膜の上に形成され、露光光を吸収して、露光光の反射率を低減する膜であり、反射型マスクにおいては、吸収体膜が形成されている部分と、吸収体膜が形成されていない部分との反射率の差によって、転写パターンを形成する。吸収体膜は、位相シフト機能を有するものであってもよい。吸収体膜の反射率は、位相シフト機能を有するものでない場合は、露光光、特にEUV光に対して、10%以下、特に5%以下、とりわけ2%以下であることが好ましい。一方、位相シフト機能を有する吸収体膜の場合、露光光に対する反射率は、位相シフト機能を有していない吸収体膜より、反射率が高くてもよく、この場合、露光光、特にEUV光に対して、50%以下、特に30%以下であることが好ましく、更に、位相シフト機能を有していない吸収体膜と同様、10%以下、特に5%以下、とりわけ2%以下であることが好ましい。位相シフト機能を有する吸収体膜の位相差(位相シフト量)は、吸収体膜が形成されている領域から反射した光と、吸収体膜が形成されていない領域から反射した光との間の位相差として、150°以上、特に170°以上で、210°以下、特に190°以下であることが好ましく、より好ましくは略180°である。位相シフト効果を利用することで、解像度を上げることができる。
【0030】
吸収体膜は、単層で構成しても、複数層で構成してもよく、複数層で構成する場合、例えば、吸収体層と、吸収体層の基板から離間する側に設けられた、吸収体膜の検査において使用される検査光に対して反射防止機能を有する反射防止層とで構成してもよい。このようにすることで、パターン検査のときの検査感度を上げることができる。また、露光光に対する照射耐性を向上させるための層を、吸収体膜の基板から離間する側の最表層として設けてもよい。位相シフト機能を有する吸収体膜の場合、単層で構成すると、吸収体膜の反射率が材料に依存するため、反射率の調整ができないが、複数層で構成し、位相シフト機能を主に担う層と、位相シフト機能を主に担う層の基板から離間する側に設けられた、吸収体膜の検査において使用される検査光に対して反射防止機能を主に担う層とで構成すると、位相シフト機能を有する吸収体膜の位相差及び反射率の設定の自由度を高くすることができる。
【0031】
吸収体膜の材料としては、EUV光などの露光光を吸収し、パターン加工が可能な材料であれば、制限はない。吸収体膜の材料としては、例えば、クロム(Cr)又はタンタル(Ta)を含有する材料が挙げられる。また、クロム(Cr)又はタンタル(Ta)を含有する材料は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などを含有していてもよい。クロムを含有する材料として具体的には、Cr単体、CrO(化合物の表記は、構成元素を示すものであって、組成比を意味するものではない。以下同じ。)、CrN、CrON、CrC、CrCN、CrCO、CrCON、CrB、CrOB、CrNB、CrONB、CrCB、CrCNB、CrCOB、CrCONBなどのクロム化合物が挙げられる。タンタル(Ta)を含有する材料としては、Ta単体、TaO、TaN、TaON、TaC、TaCN、TaCO、TaCON、TaB、TaOB、TaNB、TaONB、TaCB、TaCNB、TaCOB、TaCONBなどのタンタル化合物が挙げられる。
【0032】
吸収体膜を、吸収体層と、反射防止層とで複数層に構成する場合や、位相シフト機能を主に担う層と、反射防止機能を主に担う層とで複数層に構成する場合は、各々の層を構成するクロム(Cr)やタンタル(Ta)などの金属元素を変更してもよいが、各々の層を構成する金属元素は共通として、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などの含有率を変更することにより、各々の層の機能を変えることも可能である。吸収体膜の膜厚は、通常30~100nm程度である。
【0033】
吸収体膜は、スパッタリングで成膜することができ、スパッタリングは、マグネトロンスパッタが好ましい。具体的には、クロムターゲット、タンタルターゲットなどの金属ターゲットや、クロム化合物ターゲット、タンタル化合物ターゲットなどの金属化合物ターゲット(クロム、タンタルなどの金属と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などとを含有するターゲット)などを用い、スパッタガスとして、Arガス、Krガスなどの希ガスを用いたスパッタリング、また、希ガスと共に、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどの反応性ガスとを用いた反応性スパッタリングにより成膜することができる。
【0034】
吸収体膜の上には、吸収体膜とエッチング特性が異なり、吸収体膜をパターニングする際のエッチングにおいてエッチングマスクとして機能するハードマスク膜を設けてもよい。このハードマスク膜は、吸収体パターンを形成した後には、残して吸収体膜の一部としても、取り除いて、反射型マスク上には残存させないようにしてもよい。更に、反射型マスクブランクは、基板から最も離間する側に、吸収体膜などのパターニングに用いるフォトレジスト膜などのレジスト膜が形成されたものであってもよい。フォトレジスト膜は、電子線(EB)レジストが好ましい。
【0035】
保護膜の材料としては、ルテニウム(Ru)を含む材料が挙げられる。ルテニウム(Ru)を含む材料として具体的には、ルテニウム(Ru)単体、ルテニウム(Ru)に、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)などの金属を含有するルテニウム合金などが挙げられる。ルテニウム合金に含まれるルテニウムの含有率は50原子%以上100原子%未満であることが好ましい。保護膜の膜厚は、1nm以上であることが好ましく、10nm以下、特に5nm以下であることが好ましい。保護膜は、例えば、マグネトロンスパッタ法により成膜することができる。
【0036】
導電膜は、シート抵抗が100Ω/□以下であれば、材質や膜厚に特に制限はない。導電膜の材料としては、例えば、クロム(Cr)又はタンタル(Ta)を含有する材料が挙げられる。また、クロム(Cr)又はタンタル(Ta)を含有する材料は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などを含有していてもよい。クロムを含有する材料として具体的には、Cr単体、CrO、CrN、CrON、CrC、CrCN、CrCO、CrCON、CrB、CrOB、CrNB、CrONB、CrCB、CrCNB、CrCOB、CrCONBなどのクロム化合物が挙げられる。タンタル(Ta)を含有する材料としては、Ta単体、TaO、TaN、TaON、TaC、TaCN、TaCO、TaCON、TaB、TaOB、TaNB、TaONB、TaCB、TaCNB、TaCOB、TaCONBなどのタンタル化合物が挙げられる。導電膜の膜厚は、静電チャック用として機能すればよく、特に制限はないが、通常5~50nm程度である。導電膜の膜厚は、反射型マスクとして形成、即ち、吸収体パターンを形成した後に、多層反射膜及び吸収体パターンと、膜応力がバランスするように形成することが好ましい。導電膜は、例えば、マグネトロンスパッタ法により成膜することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実験例及び比較実験例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実験例に制限されるものではない。
【0038】
[実験例1]
152mm角、6.35mm厚の石英ガラス基板に、MoターゲットとSiターゲットを用い、両ターゲットと基板の主表面とを対向させ、基板を自転させながら、DCパルスマグネトロンスパッタリングにより、多層反射膜を成膜した。
【0039】
ターゲットを2つ装着でき、ターゲットを片方ずつ又は両方同時に放電することができるスパッタ装置に、各々のターゲットを装着し、まず、チャンバー内にArガスを流しながら、チャンバー内圧力を0.15PaとしてSiターゲットに電力を印加し、印加開始と同時に、Arガス流量を、層形成終了時(Siターゲットへの電力の印加停止時)のスパッタ圧力が0.033Paとなるまで下げて、1,800Wの電力を28秒間印加して厚さ4nmのケイ素(Si)層を形成し、Siターゲットへの電力の印加を停止した。
【0040】
ケイ素(Si)層の形成では、スパッタ圧力が、Siターゲットへの電力印加開始時の0.15Paから0.08Paに到達するまで(第1段階)の時間は2秒間、スパッタ圧力が、0.08Paを下回り、0.033Paとなって、Siターゲットへの電力印加を停止するまで(第2段階)の時間は、26秒であった。従って、第1段階において、ケイ素(Si)層全体の1/13に相当する厚さが形成された。
【0041】
次に、チャンバー内にArガスを流しながら、チャンバー内圧力を0.15PaとしてMoターゲットに電力を印加し、印加開始と同時に、Arガス流量を、層形成終了時(Moターゲットへの電力の印加停止時)のスパッタ圧力が0.036Paとなるまで下げて、900Wの電力を30秒間印加して厚さ3nmのモリブデン(Mo)層を形成し、Moターゲットへの電力の印加を停止した。
【0042】
モリブデン(Mo)層の形成では、スパッタ圧力が、Moターゲットへの電力印加開始時の0.15Paから0.08Paに到達するまで(第1段階)の時間は2秒間、スパッタ圧力が、0.08Paを下回り、0.036Paとなって、Moターゲットへの電力印加を停止するまで(第2段階)の時間は、28秒であった。従って、第1段階において、モリブデン(Mo)層全体の1/14に相当する厚さが形成された。
【0043】
ここまでの操作を1サイクルとし、これを40サイクル繰り返して、40サイクル目のモリブテン(Mo)層を形成した後、再度、上記の方法でケイ素(Si)層を形成して、多層反射膜とした。この多層反射膜は、基板側からケイ素(Si)層、モリブデン(Mo)層の順に、各々40層が交互に積層され、更に、基板から最も離間する側にケイ素(Si)層が1層積層されており、多層反射膜全体の膜厚は、約284nmである。
【0044】
次に、得られた多層反射膜の入射角6°のEUV光(波長13~14nm)に対する反射率を、euv tech.社のEUVマスク全自動反射率計LPR-1016で測定したところ、66.69%であった。
【0045】
[実験例2]
152mm角、6.35mm厚の石英ガラス基板に、MoターゲットとSiターゲットを用い、両ターゲットと基板の主表面とを対向させ、基板を自転させながら、DCパルスマグネトロンスパッタリングにより、多層反射膜を成膜した。
【0046】
ターゲットを2つ装着でき、ターゲットを片方ずつ又は両方同時に放電することができるスパッタ装置に、各々のターゲットを装着し、まず、チャンバー内にArガスを流しながら、チャンバー内圧力を0.10PaとしてSiターゲットに電力を印加し、印加開始から2秒後に、Arガス流量を、層形成終了時(Siターゲットへの電力の印加停止時)のスパッタ圧力が0.033Paとなるまで下げて、1,800Wの電力を22秒間印加して厚さ4nmのケイ素(Si)層を形成し、Siターゲットへの電力の印加を停止した。
【0047】
ケイ素(Si)層の形成では、スパッタ圧力が、Siターゲットへの電力印加開始から0.10Paで成膜した時間が2秒間、更に0.10Paから0.08Paに到達するまで(第1段階)の時間は2秒間、スパッタ圧力が、0.08Paを下回り、0.033Paとなって、Siターゲットへの電力印加を停止するまで(第2段階)の時間は、22秒であった。従って、第1段階において、ケイ素(Si)層全体の1/6に相当する厚さが形成された。
【0048】
次に、チャンバー内にArガスを流しながら、チャンバー内圧力を0.10PaとしてMoターゲットに電力を印加し、印加開始から2秒後に、Arガス流量を、層形成終了時(Moターゲットへの電力の印加停止時)のスパッタ圧力が0.036Paとなるまで下げて、900Wの電力を22秒間印加して厚さ3nmのモリブデン(Mo)層を形成し、Moターゲットへの電力の印加を停止した。
【0049】
モリブデン(Mo)層の形成では、スパッタ圧力が、Moターゲットへの電力印加開始から0.10Paで成膜した時間が2秒間、更に0.10Paから0.08Paに到達するまで(第1段階)の時間は2秒間、スパッタ圧力が、0.08Paを下回り、0.036Paとなって、Moターゲットへの電力印加を停止するまで(第2段階)の時間は、22秒であった。従って、第1段階において、モリブデン(Mo)層全体の1/6に相当する厚さが形成された。
【0050】
ここまでの操作を1サイクルとし、これを40サイクル繰り返して、40サイクル目のモリブテン(Mo)層を形成した後、再度、上記の方法でケイ素(Si)層を形成して、多層反射膜とした。この多層反射膜は、基板側からケイ素(Si)層、モリブデン(Mo)層の順に、各々40層が交互に積層され、更に、基板から最も離間する側にケイ素(Si)層が1層積層されており、多層反射膜全体の膜厚は、約284nmである。
【0051】
次に、得られた多層反射膜の入射角6°のEUV光(波長13~14nm)に対する反射率を、euv tech.社のEUVマスク全自動反射率計LPR-1016で測定したところ、66.53%であった。
【0052】
[比較実験例1]
152mm角、6.35mm厚の石英ガラス基板に、MoターゲットとSiターゲットを用い、両ターゲットと基板の主表面とを対向させ、基板を自転させながら、DCパルスマグネトロンスパッタリングにより、多層反射膜を成膜した。
【0053】
ターゲットを2つ装着でき、ターゲットを片方ずつ又は両方同時に放電することができるスパッタ装置に、各々のターゲットを装着し、まず、チャンバー内にArガスを流しながら、チャンバー内圧力を0.10Paで維持しながらSiターゲットに電力を印加し、1,800Wの電力を24秒間印加して厚さ4nmのケイ素(Si)層を形成し、Siターゲットへの電力の印加を停止した。
【0054】
次に、チャンバー内にArガスを流しながら、チャンバー内圧力を0.10Paで維持しながらMoターゲットに電力を印加し、900Wの電力を24秒間印加して厚さ3nmのモリブデン(Mo)層を形成し、Moターゲットへの電力の印加を停止した。
【0055】
ここまでの操作を1サイクルとし、これを40サイクル繰り返して、40サイクル目のモリブテン(Mo)層を形成した後、再度、上記の方法でケイ素(Si)層を形成して、多層反射膜とした。この多層反射膜は、基板側からケイ素(Si)層、モリブデン(Mo)層の順に、各々40層が交互に積層され、更に、基板から最も離間する側にケイ素(Si)層が1層積層されており、多層反射膜全体の膜厚は、約284nmである。
【0056】
次に、得られた多層反射膜の入射角6°のEUV光(波長13~14nm)に対する反射率を、euv tech.社のEUVマスク全自動反射率計LPR-1016で測定したところ、66.25%であった。
【符号の説明】
【0057】
100、200、300 反射型マスクブランク
101 基板
102 多層反射膜
103 吸収体膜
104 保護膜
105 導電膜