(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】フルオロポリエーテル基含有ポリマー、表面処理剤及び物品
(51)【国際特許分類】
C08G 65/336 20060101AFI20230725BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C08G65/336
C09K3/18 102
C09K3/18 104
(21)【出願番号】P 2021562615
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044129
(87)【国際公開番号】W WO2021111992
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019218980
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 隆介
(72)【発明者】
【氏名】山根 祐治
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/212850(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216404(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00-67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化1】
(式中、Rfは1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、Lは独立に2価のヘテロ原子であり、L’は単結合であり、Yは独立に
炭素数3~10のアルキレン基、炭素数6~8のアリーレン基を含むアルキレン基、アルキレン基相互が酸素原子を介して結合している2価の基、アルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~4価のオルガノポリシロキサン残基のすべての結合手それぞれに炭素数2~10のアルキレン基が結合している2~4価の基からなる群より選ばれる基であり、Rは独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に水酸基、加水分解性基又は下記一般式(2)
【化2】
で表される基であり、nはケイ素原子毎に独立に1~3の整数であり、mは独立に1~
3の整数であり、X’は水酸基又は加水分解性基であり、Vは独立に単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2~6価の基であり、Eは独立に1価のポリエーテル基であり、oは独立に1~5の整数であり、αは1又は2である。)
【請求項2】
前記式(1)のαが1であり、Rfが下記一般式(3)で表される基である請求項1に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化3】
(式中、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF
3基であるフルオロアルキル基であり、Wは独立に1以上の水素原子を含むフルオロアルキレン基である。dは単位毎にそれぞれ独立して1~3の整数であり、p、q、r、s、t、u、vはそれぞれ0~200の整数で、p+q+r+s+t+u+v=3~200であり、これら各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、p、q、r、s、t、u、vが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【請求項3】
前記式(1)のαが2であり、Rfが下記一般式(4)で表される基である請求項1に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化4】
(式中、Wは独立に1以上の水素原子を含むフルオロアルキレン基である。dは単位毎にそれぞれ独立して1~3の整数であり、p、q、r、s、t、u、vはそれぞれ0~200の整数で、p+q+r+s+t+u+v=3~200であり、これら各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、p、q、r、s、t、u、vが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【請求項4】
前記式(1)において、Yが
下記式
【化5】
(式中、Dは炭素数2~8のアルキレン基であり、aは1~4の整数であり、bは独立に2~10の整数であり、cは1~9の整数である。)
からなる群より選ばれる基である請求項1~3のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【請求項5】
前記式(1)において、Eが下記一般式(5)で表される基である請求項1~4のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化6】
(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、eは1~4の整数であり、w、x、y、zはそれぞれ0~30の整数で、w+x+y+z=1~50であり、これら各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、w、x、y、zが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【請求項6】
前記式(1)において、Xがそれぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる基である請求項1~5のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【請求項7】
式(1)で表されるポリマーが、下記式で表されるポリマーから選ばれるものである請求項1~6のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
(式中、p1は5~100の整数、q1は5~100の整数、r1は1~100の整数、r2は1~99の整数、r3は1~99の整数で、p1、q1、r1、r2、r3の合計は10~110の整数である。なお、p1、q1、r1、r2、r3が付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
【請求項9】
フルオロポリエーテル基含有ポリマー中のフルオロポリエーテル基が、分子鎖末端に位置する1価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基である請求項8に記載の表面処理剤。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の表面処理剤で表面処理された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリエーテル基含有ポリマー(1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基を分子内に有する化合物)に関し、詳細には、撥水撥油性、耐摩耗性に優れた被膜を形成するフルオロポリエーテル基含有ポリマー、及び該ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤、並びに該表面処理剤で表面処理された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話のディスプレイをはじめ、画面のタッチパネル化が加速している。しかし、タッチパネルは画面がむき出しの状態であり、指や頬などが直接接触する機会が多く、皮脂等の汚れが付き易いことが問題となっている。そこで、外観や視認性をよくするためにディスプレイの表面に指紋を付きにくくする技術や、汚れを落とし易くする技術の要求が年々高まってきており、これらの要求に応えることのできる材料の開発が望まれている。特にタッチパネルディスプレイの表面は指紋汚れが付着し易いため、撥水撥油層を設けることが望まれている。しかし、従来の撥水撥油層は撥水撥油性が高く、汚れ拭取り性に優れるが、使用中に防汚性能が劣化してしまうという問題点があった。
【0003】
一般に、フルオロポリエーテル基含有化合物は、その表面自由エネルギーが非常に小さいために、撥水撥油性、耐薬品性、潤滑性、離型性、防汚性などを有する。その性質を利用して、工業的には紙・繊維などの撥水撥油防汚剤、磁気記録媒体の滑剤、精密機器の防油剤、離型剤、化粧料、保護膜など、幅広く利用されている。しかし、その性質は同時に他の基材に対する非粘着性、非密着性であることを意味しており、基材表面に塗布することはできても、その被膜を密着させることは困難であった。
【0004】
一方、ガラスや布などの基材表面と有機化合物とを結合させるものとして、シランカップリング剤がよく知られており、各種基材表面のコーティング剤として幅広く利用されている。シランカップリング剤は、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(一般にはアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基)を有する。加水分解性シリル基が、空気中の水分などによって自己縮合反応を起こして被膜を形成する。該被膜は、加水分解性シリル基がガラスや金属などの表面と化学的・物理的に結合することにより耐久性を有する強固な被膜となる。
【0005】
そこで、フルオロポリエーテル基含有化合物に加水分解性シリル基を導入したフルオロポリエーテル基含有ポリマーを用いることによって、基材表面に密着し易く、かつ基材表面に、撥水撥油性、耐薬品性、潤滑性、離型性、防汚性等を有する被膜を形成しうる組成物が開示されている(特許文献1~6:特表2008-534696号公報、特表2008-537557号公報、特開2012-072272号公報、特開2012-157856号公報、特開2013-136833号公報、特開2015-199906号公報)。
【0006】
該フルオロポリエーテル基含有化合物に加水分解性シリル基を導入したフルオロポリエーテル基含有ポリマーを含有する組成物で表面処理したレンズや反射防止膜等の硬化被膜は、スチールウールに対する摩耗耐久性に優れるものの、消しゴムに対する摩耗耐久性に劣る、もしくは十分な摩耗耐久性を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2008-534696号公報
【文献】特表2008-537557号公報
【文献】特開2012-072272号公報
【文献】特開2012-157856号公報
【文献】特開2013-136833号公報
【文献】特開2015-199906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、撥水撥油性、耐摩耗性に優れた硬化被膜を形成することができるフルオロポリエーテル基含有ポリマー、及び該ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤、並びに該表面処理剤で表面処理された物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討した結果、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーにおいて、後述する一般式(1)で表される水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基とポリエーテル基とを有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーを用いることにより、該ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤が、撥水撥油性、耐消しゴム摩耗性に特に優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記フルオロポリエーテル基含有ポリマー(1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基を分子内に有する化合物)、表面処理剤及び物品を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化1】
(式中、Rfは1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、Lは独立に2価のヘテロ原子であり、L’は単結合であり、Yは独立に
炭素数3~10のアルキレン基、炭素数6~8のアリーレン基を含むアルキレン基、アルキレン基相互が酸素原子を介して結合している2価の基、アルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~4価のオルガノポリシロキサン残基のすべての結合手それぞれに炭素数2~10のアルキレン基が結合している2~4価の基からなる群より選ばれる基であり、Rは独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に水酸基、加水分解性基又は下記一般式(2)
【化2】
で表される基であり、nはケイ素原子毎に独立に1~3の整数であり、mは独立に1~
3の整数であり、X’は水酸基又は加水分解性基であり、Vは独立に単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2~6価の基であり、Eは独立に1価のポリエーテル基であり、oは独立に1~5の整数であり、αは1又は2である。)
〔2〕
前記式(1)のαが1であり、Rfが下記一般式(3)で表される基である〔1〕に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化3】
(式中、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF
3基であるフルオロアルキル基であり、Wは独立に1以上の水素原子を含むフルオロアルキレン基である。dは単位毎にそれぞれ独立して1~3の整数であり、p、q、r、s、t、u、vはそれぞれ0~200の整数で、p+q+r+s+t+u+v=3~200であり、これら各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、p、q、r、s、t、u、vが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
〔3〕
前記式(1)のαが2であり、Rfが下記一般式(4)で表される基である〔1〕に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化4】
(式中、Wは独立に1以上の水素原子を含むフルオロアルキレン基である。dは単位毎にそれぞれ独立して1~3の整数であり、p、q、r、s、t、u、vはそれぞれ0~200の整数で、p+q+r+s+t+u+v=3~200であり、これら各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、p、q、r、s、t、u、vが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
〔4〕
前記式(1)において、Yが
下記式
【化106】
(式中、Dは炭素数2~8のアルキレン基であり、aは1~4の整数であり、bは独立に2~10の整数であり、cは1~9の整数である。)
からなる群より選ばれる基である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
〔5〕
前記式(1)において、Eが下記一般式(5)で表される基である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化5】
(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、eは1~4の整数であり、w、x、y、zはそれぞれ0~30の整数で、w+x+y+z=1~50であり、これら各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、w、x、y、zが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
〔6〕
前記式(1)において、Xがそれぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる基である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
〔7〕
式(1)で表されるポリマーが、下記式で表されるポリマーから選ばれるものである〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
(式中、p1は5~100の整数、q1は5~100の整数、r1は1~100の整数、r2は1~99の整数、r3は1~99の整数で、p1、q1、r1、r2、r3の合計は10~110の整数である。なお、p1、q1、r1、r2、r3が付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
〔8〕
〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
〔9〕
フルオロポリエーテル基含有ポリマー中のフルオロポリエーテル基が、分子鎖末端に位置する1価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基である〔8〕に記載の表面処理剤。
〔10〕
〔8〕又は〔9〕に記載の表面処理剤で表面処理された物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフルオロポリエーテル基含有ポリマーによれば、基材密着性、濡れ性が向上し、これにより該ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含有する表面処理剤にて表面処理された物品は、撥水撥油性、耐消しゴム摩耗性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフルオロポリエーテル基含有ポリマーは、分子内にフルオロポリエーテル基及び反応性官能基を有し、更にポリエーテル基を有するものであり、下記一般式(1)で表されるものである。本発明のフルオロポリエーテル基含有ポリマーは、1種単独でも2種以上の混合物でもよい。
【化10】
(式中、Rfは1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、Lは独立に2価のヘテロ原子であり、L’は独立に単結合又は2価のヘテロ原子であり、Yは独立に酸素原子、ケイ素原子及びシロキサン結合から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい、2~6価の炭化水素基であり、Rは独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に水酸基、加水分解性基又は下記一般式(2)
【化11】
で表される基であり、nはケイ素原子毎に独立に1~3の整数であり、mは独立に1~5の整数であり、X’は水酸基又は加水分解性基であり、Vは独立に単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2~6価の基であり、Eは独立に1価のポリエーテル基であり、oは独立に1~5の整数であり、αは1又は2である。)
【0013】
なお、本明細書において「約(数値)」とは、四捨五入されて表される数値(概数)のことであり、その表示される数値の一番下の桁が「0」でない場合、さらにその下の桁が四捨五入されてその表示される数値となる数値範囲までを含む。例えば、「約3当量」とは、2.5当量以上3.4当量以下のことをいい、「約0.02当量」とは0.015当量以上0.024当量以下のことをいう。また、その表示される数値の一番下の桁が「0」である場合、その一番下の桁が四捨五入されてその表示される数値となる数値範囲までを含む。例えば、「約50℃」とは、45℃以上54℃以下のことをいう。
【0014】
本発明のフルオロポリエーテル基含有ポリマーは、1価のフルオロオキシアルキル基又は2価のフルオロオキシアルキレン基(即ち、1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基)と、アルコキシシリル基等の加水分解性シリル基あるいは水酸基含有シリル基が、連結基を介して結合した構造であり、アルコキシシリル基等の加水分解性シリル基あるいは水酸基含有シリル基が分子内に1つ以上存在し、かつ、該加水分解性シリル基あるいは水酸基含有シリル基以外に分岐鎖末端にポリエーテル基を有することで、基材密着性、濡れ性が向上し、撥水撥油性、耐消しゴム摩耗性に優れることを特徴としている。
【0015】
上記式(1)において、Rfは1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、αが1の場合(即ち、Rfが1価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基の場合)は下記一般式(3)で表される1価のフルオロポリエーテル基であることが好ましく、αが2の場合(即ち、Rfが2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基の場合)は下記一般式(4)で表される2価のフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【0016】
【化12】
【化13】
(式中、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF
3基であるフルオロアルキル基であり、Wは独立に1以上の水素原子を含むフルオロアルキレン基である。dは単位毎にそれぞれ独立して1~3の整数であり、p、q、r、s、t、u、vはそれぞれ0~200の整数で、p+q+r+s+t+u+v=3~200であり、これら各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、p、q、r、s、t、u、vが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0017】
上記式(3)において、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF3基であるフルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。
【0018】
上記式(3)、(4)において、Wは独立に1以上の水素原子を含むフルオロアルキレン基であり、例えば、CF2単位、C2F4単位、C3F6単位、C4F8単位、C5F10単位、C6F12単位等の各パーフルオロアルキレン基において、フッ素原子の1個又は2個が水素原子で置換されたもの等が例示できる。
【0019】
上記式(3)、(4)において、dは単位毎にそれぞれ独立して1~3の整数であり、好ましくは1又は2である。
また、p、q、r、s、t、u、vはそれぞれ0~200の整数、好ましくは、pは5~100の整数、qは5~100の整数、rは0~100の整数、sは0~100の整数、tは0~100の整数、uは0~100の整数、vは0~100の整数であり、p+q+r+s+t+u+vは3~200、好ましくは10~110であり、p+qは10~105、特に15~60であることが好ましく、r=s=t=u=v=0であることが好ましい。p+q+r+s+t+u+vが上記上限値より小さければ密着性や硬化性が良好であり、上記下限値より大きければフルオロポリエーテル基の特徴を十分に発揮することができるので好ましい。
【0020】
上記式(3)、(4)において、各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、p、q、r、s、t、u、vが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。
【0021】
Rfとして、具体的には、下記のものを例示することができる。
【化14】
(式中、p’、q’、r’、s’、t’、u’はそれぞれ1以上の整数であり、その上限は上記p、q、r、s、t、uの上限と同じであり、v1’、v2’はそれぞれ1以上の整数であり、v1’とv2’の合計の上限はvの上限と同じであり、これらp’、q’、r’、s’、t’、u’、v1’、v2’の合計は3~200の整数である。r2’、r3’はそれぞれ1以上の整数であり、r2’とr3’の合計は2~199の整数である。また、p’、q’、r’、s’、t’、u’、v1’、v2’が付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0022】
上記式(1)において、Lは、独立に2価のヘテロ原子であり、L’は独立に単結合又は2価のヘテロ原子であり、これら2価のヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられる。Lとして、好ましくは酸素原子であり、L’として、好ましくは単結合又は酸素原子、より好ましくは単結合である。
【0023】
上記式(1)において、Yは、独立に2~6価、好ましくは2~4価、より好ましくは2価の炭化水素基であり、酸素原子、ケイ素原子及びシロキサン結合から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
【0024】
Yとして、具体的には、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数3~10のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6~8のアリーレン基を含むアルキレン基(例えば、炭素数8~16のアルキレン・アリーレン基等)、アルキレン基相互が酸素原子を介して結合している2価の基、アルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、ケイ素原子数2~10個、好ましくは2~5個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個、好ましくは3~5個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基の結合手に炭素数2~10のアルキレン基が結合している2~6価の基などが挙げられ、好ましくは炭素数3~10のアルキレン基、フェニレン基を含むアルキレン基、アルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、ケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~4価のオルガノポリシロキサン残基の結合手に炭素数2~10のアルキレン基が結合している2~4価の基であり、更に好ましくは炭素数3~6のアルキレン基である。
【0025】
ここで、シルアルキレン構造、シルアリーレン構造としては、下記に示すものが例示できる。
【化15】
(式中、R
1はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、フェニル基等の炭素数6~10のアリール基であり、R
1は同一でも異なっていてもよい。R
2はメチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)等の炭素数1~4のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6~10のアリーレン基である。)
【0026】
また、ケイ素原子数2~10個、好ましくは2~5個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個、好ましくは3~5個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基としては、下記に示すものが例示できる。
【化16】
【化17】
(式中、R
1は上記と同じである。gは1~9、好ましくは1~4の整数であり、hは2~6、好ましくは2~4の整数、jは0~8の整数、好ましくは0又は1で、h+jは3~10、好ましくは3~5の整数であり、kは1~3の整数、好ましくは2又は3である。)
【0027】
Yとしては、下記式で示される基が挙げられる。
【化18】
(式中、Dは炭素数2~16のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、aは1~4の整数であり、bは独立に2~10の整数であり、cは1~9の整数である。)
【0028】
ここで、Dは炭素数2~16、好ましくは炭素数2~8のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、好ましくは炭素数2~16、より好ましくは炭素数2~8のフッ素置換されていてもよい2価炭化水素基であり、2価炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)などや、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたもの等が挙げられる。Dとしては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基が好ましい。
また、aは1~4、好ましくは1~3の整数であり、bは独立に2~10、好ましくは2~6の整数であり、cは1~9、好ましくは1~4の整数である。
【0029】
Yの具体例としては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化19】
【化20】
【0030】
上記式(1)において、mは1~5の整数であり、1未満だと基材への密着性が低下し、6以上だと末端アルコキシ価が高すぎて性能に悪影響を与えるため、好ましくは1~3の整数であり、特に1が好ましい。
【0031】
上記式(1)において、Rは独立に炭素数1~4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、又はフェニル基であり、中でもメチル基が好適である。
また、nはケイ素原子毎に独立に1~3の整数、好ましくは2又は3であり、反応性、基材に対する密着性の観点から3がより好ましい。
【0032】
上記式(1)において、Xは独立に水酸基、加水分解性基又は下記一般式(2)で表される基である。
【化21】
(式中、L’、Y、R、m、nは上記と同じであり、X’は水酸基又は加水分解性基である。)
【0033】
ここで、加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1~10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2~10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などが挙げられる。
加水分解性基としては、中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0034】
上記式(2)において、X’は水酸基又は加水分解性基であり、加水分解性基としては、上記と同様のものが例示できる。
式(2)で表される基としては、下記に示すものが例示できる。
【化22】
【化23】
【0035】
Xとしては、中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0036】
上記式(1)において、Vは独立に単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2~6価の基である。
ここで、シルアルキレン基、シルアリーレン基としては、Yにおいて例示したシルアルキレン構造、シルアリーレン構造と同様のものが例示できる。
また、ケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基としては、Yにおいて例示した2~6価のオルガノポリシロキサン残基と同様のものが例示できる。
【0037】
Vのシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基から選ばれる2~6価の基としては、下記式で示される基が挙げられる。
【化24】
(式中、a、cは上記と同じである。)
【0038】
Vとしては、単結合、シルアリーレン基、ケイ素原子数2~10個の直鎖状の2価のオルガノポリシロキサン残基が好ましい。
【0039】
上記式(1)において、Eは独立に1価のポリエーテル基であり、好ましくは炭素数1~4のオキシアルキレン基の繰り返し単位を有するものであり、下記一般式(5)で表される基であることがより好ましい。
【化25】
(式中、Rは上記と同じであり、eは1~4の整数であり、w、x、y、zはそれぞれ0~30の整数で、w+x+y+z=1~50であり、これら各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、w、x、y、zが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0040】
上記式(5)において、Rは上記と同じであり、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、好ましくはメチル基である。
【0041】
上記式(5)において、eは1~4の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2又は3である。また、w、x、y、zはそれぞれ0~30の整数、好ましくは、wは0~15の整数、xは1~15の整数、yは0~15の整数、zは0~15の整数であり、w+x+y+zは1~50、好ましくは2~30であり、より好ましくはxは2~15であり、w=y=z=0であることが好ましい。w+x+y+zが上記上限値より小さければポリエーテル基の特徴を十分に発揮することができ、上記下限値より大きければ消しゴム摩耗耐久性を十分に発揮することができるので好ましい。
【0042】
上記式(5)において、各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。またw、x、y、zが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。
【0043】
Eの具体例としては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化26】
【0044】
上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーとしては、下記式で表されるものが例示できる。なお、各式において、フルオロオキシアルキル基又はフルオロオキシアルキレン基(1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基)を構成する各繰り返し単位の繰り返し数(又は重合度)は下記に示すが、上記式(3)、(4)を満足する任意の数をとり得るものであればよい。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【化30】
(式中、p1は5~100の整数、q1は5~100の整数、r1は1~100の整数、r2は1~99の整数、r3は1~99の整数で、p1、q1、r1、r2、r3の合計(例えばp1+q1、p1+q1+r1、又はp1+q1+r2+r3)は10~110の整数である。なお、p1、q1、r1、r2、r3が付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0049】
上記式(1)で表され、αが1の場合(即ち、Rfが1価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基の場合)又はαが2の場合(即ち、Rfが2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基の場合)のフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製方法としては、例えば、下記のような方法が挙げられる。
【0050】
まず、下記一般式(6)
【化31】
(式中、Rf、αは上記と同じであり、Mは脱離可能な1価の基である。)
で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、末端に脂肪族不飽和二重結合(オレフィン部位)を有し、かつ、β水素(即ち、金属原子のβ位の炭素原子に結合した水素原子)を有する有機金属試薬とを、好ましくは溶剤の存在下に反応させる。
【0051】
上記式(6)において、Mは脱離可能な1価の基であり、例えば、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アシル基などが挙げられる。
このようなMとしては、例えば下記の基が挙げられる。
【化32】
【0052】
上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。なお、各式において、フルオロオキシアルキル基又はフルオロオキシアルキレン基(1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基)を構成する各繰り返し単位の繰り返し数(又は重合度)は下記に示すが、上記式(3)、(4)を満足する任意の数をとり得るものであればよい。
【化33】
(式中、p1、q1、r1は上記と同じであり、それぞれのp1、q1、r1の合計は10~110の整数である。また、p1、q1、r1が付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0053】
上記末端に脂肪族不飽和二重結合を有し、かつ、β水素を有する有機金属試薬として、具体的には、有機リチウム試薬、グリニャール試薬、有機亜鉛試薬、有機ホウ素試薬、有機スズ試薬などが挙げられ、特に扱い易さの点から、グリニャール試薬、有機亜鉛試薬を用いることが好ましい。このような有機金属試薬としては、特に以下のものが好適に使用できる。
【化34】
【0054】
末端に脂肪族不飽和二重結合を有し、かつ、β水素を有する有機金属試薬の使用量は、上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(脱離可能な1価の基)1当量に対して、2~5当量、より好ましくは2.5~3.5当量、更に好ましくは約3当量用いることが好ましい。
【0055】
上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、末端に脂肪族不飽和二重結合を有し、かつ、β水素を有する有機金属試薬との反応には、溶剤を用いることができる。このとき用いる溶剤は、特に限定されないが、反応化合物がフッ素化合物である点からフッ素系溶剤を用いることが好ましい。フッ素系溶剤としては、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、AGC社から販売されているパーフルオロ系溶剤(アサヒクリンAC2000、アサヒクリンAC6000など)、3M社から販売されているハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(NOVEC7100:C4F9OCH3、NOVEC7200:C4F9OC2H5、NOVEC7300:C2F5-CF(OCH3)-CF(CF3)2など)、同じく3M社から販売されているパーフルオロ系溶剤(PF5080、PF5070、PF5060など)等が挙げられる。フッ素系溶剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。
また、溶剤としては、上記フッ素系溶剤以外に有機溶剤を用いることができる。有機溶剤として、テトラヒドロフラン(THF)、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤を用いることができる。有機溶剤は単独で使用してもフッ素系溶剤と混合して使用してもよい。
溶剤の使用量は、上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー100質量部に対して、10~600質量部、好ましくは50~400質量部、更に好ましくは200~350質量部用いることができる。
【0056】
上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、末端に脂肪族不飽和二重結合を有し、かつ、β水素を有する有機金属試薬との反応条件としては、0~80℃、好ましくは45~70℃、より好ましくは約50℃で、1~12時間、好ましくは5~7時間とすることができる。
上記条件により反応を行った後、反応を停止し、分液操作により水層とフッ素溶剤層を分離する。得られたフッ素溶剤層を更に有機溶剤で洗浄し、溶剤を留去することで、下記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーが得られる。
【化35】
(式中、Rf、L’、αは上記と同じであり、Zは独立に2価炭化水素基であり、該炭化水素基はケイ素原子及び/又はシロキサン結合を含んでいてもよい。)
【0057】
ここで、上記式(7)において、Zは2価炭化水素基であり、炭素数1~20、特に2~12の2価炭化水素基であることが好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6~8のアリーレン基を含むアルキレン基(例えば、炭素数7~9のアルキレン・アリーレン基等)などが挙げられる。Zとして、好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキレン基である。
【0058】
このようなZとしては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化36】
【0059】
式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。なお、各式において、フルオロオキシアルキル基又はフルオロオキシアルキレン基(1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基)を構成する各繰り返し単位の繰り返し数(又は重合度)は下記に示すが、上記式(3)、(4)を満足する任意の数をとり得るものであればよい。
【化37】
【化38】
【化39】
(式中、p1、q1、r1は上記と同じであり、それぞれのp1、q1、r1の合計は10~110の整数である。また、p1、q1、r1が付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0060】
次に、上記で得られた式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、ポリエーテル基導入剤とを、塩基の存在下、必要により反応性を向上させる添加剤や溶剤を用い、0~90℃、好ましくは40~60℃、より好ましくは約50℃の温度で、1~48時間、好ましくは10~40時間、より好ましくは約24時間熟成する。
【0061】
また、別法として、例えば、上記で得られた式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを脱水素触媒の存在下、必要により溶剤を用いて0~60℃、好ましくは15~35℃、より好ましくは約25℃の温度で、10分~24時間、好ましくは30分~2時間、より好ましくは約1時間脱水素反応を行うことで、分子鎖末端にSiH基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーが得られる。
続いて、上記分子鎖末端にSiH基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子内にオレフィン部位を有するポリエーテル化合物(例えば、分子鎖片末端アルケニルオキシ基封鎖ポリアルキレンオキシド化合物等)とを溶剤、例えば1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1~72時間、好ましくは20~36時間、より好ましくは約24時間熟成させる。
【0062】
ここで、上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと反応させるポリエーテル基導入剤としては、例えば、ハロゲン化物などを用いることができ、具体的には、2-ブロモエチルメチルエーテル、エチレングリコール2-ブロモエチルメチルエーテル、ジエチレングリコール2-ブロモエチルメチルエーテル、トリエチレングリコール2-ブロモエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコール2-ブロモエチルメチルエーテルなどが挙げられる。
ポリエーテル基導入剤の使用量は、式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(水酸基)1当量に対して、1~15当量、より好ましくは3~6当量用いることができる。
【0063】
上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとポリエーテル基導入剤との反応に用いる塩基としては、例えば、アミン類やアルカリ金属系塩基などを用いることができ、具体的には、アミン類では、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、DBU、イミダゾールなどが挙げられる。アルカリ金属系塩基では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、アルキルリチウム、t-ブトキシカリウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどが挙げられる。
塩基の使用量は、式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(水酸基)1当量に対して、1~20当量、より好ましくは4~8当量、更に好ましくは約6当量用いることができる。
【0064】
上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとポリエーテル基導入剤との反応には、反応性を向上させる添加剤として、テトラブチルアンモニウムハライド、アルカリ金属系ハライドなどを用いてもよい。添加剤として、具体的には、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、クラウンエーテルなどが挙げられる。これら添加剤は、反応系中でポリエーテル基導入剤と触媒的にハロゲン交換することで反応性を向上させ、またクラウンエーテルは金属に配位することで反応性を向上させる。
添加剤の使用量は、式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(水酸基)1当量に対して、0.005~0.1当量、より好ましくは0.01~0.05当量、更に好ましくは約0.02当量用いることができる。
【0065】
上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとポリエーテル基導入剤との反応、又は上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応には、溶剤を用いてもよい。溶剤は必ずしも用いる必要はないが、用いられる溶剤としては、フッ素系溶剤として、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどの含フッ素芳香族炭化水素系溶剤、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。更に、有機溶剤として、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、THFなどを用いることができる。
溶剤を用いる場合の使用量は、式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー100質量部に対して、10~300質量部、好ましくは30~150質量部、更に好ましくは約50質量部用いることができる。
【0066】
また、上記で得られた式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、下記式で表される化合物が好ましい。
【化40】
(式中、a、cは上記と同じである。)
【0067】
このような分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記に示すものなどが挙げられる。
【化41】
【0068】
上記で得られた式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、7~30当量、より好ましくは5~20当量、更に好ましくは約10当量用いることができる。
【0069】
上記で得られた式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応に用いる脱水素触媒としては、例えば、ロジウム、パラジウム、ルテニウム等の白金族金属系触媒やホウ素触媒などを用いることができ、具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のホウ素触媒などが挙げられる。
脱水素触媒の使用量は、分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、0.01~0.0005当量、より好ましくは0.007~0.001当量、更に好ましくは約0.005当量用いることができる。
【0070】
続いて、反応を停止し、分液操作により水層とフッ素溶剤層を分離する。得られたフッ素溶剤層を更に有機溶剤で洗浄し、溶剤を留去することで、分子鎖末端にSiH基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーが得られる。
【0071】
上記で得られた分子鎖末端にSiH基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子内にオレフィン部位を有するポリエーテル化合物とを反応させる際の、分子内にオレフィン部位を有するポリエーテル化合物としては、例えば、下記式で表されるものを挙げることができる。
【化42】
(式中、R、w、x、y、z、w+x+y+zは上記と同じであり、これら各単位は直鎖状であっても分岐状であってもよい。e’は0~2の整数であり、また、w、x、y、zが付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0072】
具体的には、下記に示す分子鎖片末端がアリルオキシ基で封鎖され他方の末端がメトキシ基で封鎖されたポリエチレンオキシドなどの分子鎖片末端アルケニルオキシ基封鎖ポリアルキレンオキシド化合物等が挙げられる。
【化43】
(式中、xは上記と同じである。)
【0073】
分子鎖片末端アルケニルオキシ基封鎖ポリアルキレンオキシド化合物等の分子内にオレフィン部位を有するポリエーテル化合物として、具体的には、日油社製のユニオックスMA-200、ユニオックスMA-300、ユニオックスMA-350S、ユニオックスMA-500などが挙げられる。
分子内にオレフィン部位を有するポリエーテル化合物の使用量は、分子鎖末端にSiH基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、1~10当量、より好ましくは2~5当量、更に好ましくは約3当量用いることができる。
【0074】
上記で得られた分子鎖末端にSiH基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子内にオレフィン部位を有するポリエーテル化合物とを反応させる際の、ヒドロシリル化反応触媒としては、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体等、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒が挙げられる。好ましくはビニルシロキサン配位化合物等の白金系化合物である。
ヒドロシリル化反応触媒の使用量は、分子鎖末端にSiH基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの質量に対して、遷移金属換算(質量)で0.1~100ppm、より好ましくは1~50ppmとなる量で使用する。
【0075】
上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとポリエーテル基導入剤との反応により、あるいは、式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを反応させたポリマー(分子鎖末端にSiH基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー)と、分子内にオレフィン部位を有するポリエーテル化合物との反応により、下記式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーが得られる。
【化44】
(式中、Rf、L、L’、V、E、o、Z、αは上記と同じである。)
【0076】
式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、好ましくは下記に示すものが例示できる。なお、各式において、フルオロオキシアルキル基又はフルオロオキシアルキレン基(1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基)を構成する各繰り返し単位の繰り返し数(又は重合度)は下記に示すが、上記式(3)、(4)を満足する任意の数をとり得るものであればよい。
【化45】
【0077】
【化46】
(式中、p1、q1、r1は上記と同じであり、それぞれのp1、q1、r1の合計は10~110の整数である。また、p1、q1、r1が付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0078】
次いで、上記で得られた式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリメトキシシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物を混合し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1~72時間、好ましくは20~36時間、より好ましくは約24時間熟成させることにより、上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーが得られる。
【0079】
また、上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製方法の別法としては、例えば下記のような方法が挙げられる。
上記で得られた式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリクロロシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基(ハロゲン原子)を有する有機ケイ素化合物を混合し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1~72時間、好ましくは20~36時間、より好ましくは約24時間熟成させる。なお、熟成させた後、シリル基上の置換基(ハロゲン原子)を例えばメトキシ基などに変換してもよい。
【0080】
なお、上記分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物に代えて、加水分解性末端基を有さないSiH基含有有機ケイ素化合物を用いることもでき、この場合、有機ケイ素化合物として、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物を使用する。その際、上記の方法と同様にして上記式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを反応させた後、該反応物のポリマー末端のSiH基とアリルトリメトキシシラン等の分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを混合し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1~72時間、好ましくは20~36時間、より好ましくは約24時間熟成させる。
【0081】
ここで、上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(9a)~(9d)で表される化合物が好ましい。
【化47】
(式中、R、X、n、R
1、R
2、g、jは上記と同じである。iは1~5、好ましくは1~3の整数で、i+jは2~9、好ましくは2~4の整数であり、R
3は炭素数2~8の2価炭化水素基である。)
【0082】
ここで、R3の炭素数2~8、好ましくは2~4の2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)などが挙げられ、これらの中でもエチレン基、トリメチレン基が好ましい。
【0083】
このような分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリイソプロペノキシシラン、トリアセトキシシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリヨードシラン、また以下のようなシラン化合物が挙げられる。
【化48】
【0084】
上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを付加反応させる際の、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物の使用量は、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(末端オレフィン部位)1当量に対して、該有機ケイ素化合物中のSiH基が1.5~4当量、より好ましくは2~2.5当量となる量を用いることができる。
【0085】
また、上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(10a)~(10c)で表される化合物が好ましい。
【化49】
(式中、R
1、R
2、g、h、j、h+jは上記と同じである。)
【0086】
このような分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記に示すものなどが挙げられる。
【化50】
【0087】
上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを付加反応させる際の、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物の使用量は、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(末端オレフィン部位)1当量に対して、該有機ケイ素化合物中のSiH基が、5~30当量、より好ましくは7~20当量、更に好ましくは約10当量用いることができる。
【0088】
上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との付加反応物としては、例えば、下記に示すものが例示できる。なお、各式において、フルオロオキシアルキル基又はフルオロオキシアルキレン基(1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基)を構成する各繰り返し単位の繰り返し数(又は重合度)は下記に示すが、上記式(3)、(4)を満足する任意の数をとり得るものであればよい。
【化51】
(式中、p1、q1は上記と同じであり、p1、q1の合計は10~110の整数である。また、p1、q1が付された括弧内に示される各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0089】
また、上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、上記付加反応物のポリマー末端のSiH基と反応させる分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(11)で表される化合物が好ましい。
【化52】
(式中、R、X、nは上記と同じである。Uは単結合、又は炭素数1~6の2価炭化水素基である。)
【0090】
上記式(11)中、Uは単結合、又は炭素数1~6の2価炭化水素基であり、炭素数1~6の2価炭化水素基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基などが挙げられる。Uとして、好ましくは単結合、メチレン基である。
【0091】
このような分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記に示すものなどが挙げられる。
【化53】
【0092】
上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との付加反応物と、分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の、分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物の使用量は、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との付加反応物の反応性末端基(分子末端のSiH基)1当量に対して、前記分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物中のオレフィン部位が、1.5~4当量、より好ましくは2~2.5当量となる量を用いることができる。
【0093】
上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、用いられる溶剤としてはフッ素系溶剤が好ましく、フッ素系溶剤としては、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。
溶剤の使用量は、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー100質量部に対して、10~300質量部、好ましくは50~150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0094】
上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、ヒドロシリル化反応触媒としては、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体等、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒が挙げられる。好ましくはビニルシロキサン配位化合物等の白金系化合物である。
ヒドロシリル化反応触媒の使用量は、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー、又はこのポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応物の質量に対して、遷移金属換算(質量)で好ましくは0.01~100ppm、より好ましくは0.1~50ppmとなる量で使用する。
【0095】
その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで目的の化合物を得ることができる。
例えば、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、下記式で表される化合物
【化54】
を使用し、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物として、トリメトキシシランを使用した場合には、下記式で表される化合物が得られる。
【化55】
【0096】
また、例えば、式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位とポリエーテル部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、下記式で表される化合物
【化56】
を使用し、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物として、トリメトキシシランを使用した場合には、下記式で表される化合物が得られる。
【化57】
【0097】
本発明は、更に上記式(1)で表される水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーを含有する表面処理剤を提供する。該表面処理剤は、該フルオロポリエーテル基含有ポリマーの水酸基、又は該フルオロポリエーテル基含有ポリマーの末端加水分解性基を予め公知の方法により部分的に加水分解した水酸基を縮合させて得られる部分(加水分解)縮合物を含んでいてもよい。
【0098】
表面処理剤には、必要に応じて、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機チタン化合物(テトラn-ブチルチタネートなど)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸、フッ素変性カルボン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸など)を添加してもよい。これらの中では、特に酢酸、テトラn-ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫、フッ素変性カルボン酸などが望ましい。
加水分解縮合触媒の添加量は触媒量であり、通常、フルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物100質量部に対して0.01~5質量部、特に0.1~1質量部である。
【0099】
該表面処理剤は、適当な溶剤を含んでもよい。このような溶剤としては、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶剤が望ましく、特には、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミン、エチルパーフルオロブチルエーテルが好ましい。
【0100】
上記溶剤はその2種以上を混合してもよく、フルオロポリエーテル基含有ポリマー及びその部分(加水分解)縮合物を均一に溶解させることが好ましい。なお、溶剤に溶解させるフルオロポリエーテル基含有ポリマー及びその部分(加水分解)縮合物の最適濃度は、処理方法により異なり、秤量し易い量であればよいが、直接塗工する場合は、溶剤及びフルオロポリエーテル基含有ポリマー(及びその部分(加水分解)縮合物)の合計100質量部に対して0.01~10質量部、特に0.05~5質量部であることが好ましく、蒸着処理をする場合は、溶剤及びフルオロポリエーテル基含有ポリマー(及びその部分(加水分解)縮合物)の合計100質量部に対して1~100質量部、特に3~30質量部であることが好ましい。
【0101】
本発明の表面処理剤は、刷毛塗り、ディッピング、スプレー、蒸着処理など公知の方法で基材に施与することができる。蒸着処理時の加熱方法は、抵抗加熱方式でも、電子ビーム加熱方式のどちらでもよく、特に限定されるものではない。また、硬化温度は、硬化方法によって異なるが、例えば、直接塗工(刷毛塗り、ディッピング、スプレー等)の場合は、25~200℃、特に25~80℃にて30分~36時間、特に1~24時間とすることが好ましい。また、蒸着処理で施与する場合は、20~200℃、特に25~80℃にて30分~36時間、特に1~24時間とすることが望ましい。また、加湿下で硬化させてもよい。硬化被膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1~100nm、特に1~20nmである。また、例えばスプレー塗工では予め水分を添加したフッ素系溶剤に希釈し、加水分解、つまりSi-OHを生成させた後にスプレー塗工すると塗工後の硬化が速い。
【0102】
本発明の表面処理剤で処理される基材は特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質のものであってよい。本発明の表面処理剤は、前記基材に撥水撥油性及び耐スチールウール摩耗性を付与することができる。特に、SiO2処理されたガラスやフイルムの表面処理剤として好適に使用することができる。
【0103】
本発明の表面処理剤で処理される物品としては、カーナビゲーション、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、カーオーディオ、ゲーム機器、眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、PC、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、保護フイルム、反射防止フイルムなどの光学物品が挙げられる。本発明の表面処理剤は、前記物品に指紋及び皮脂が付着するのを防止し、更に傷つき防止性(耐摩耗性)を付与することができるため、特にタッチパネルディスプレイ、反射防止フイルムなどの撥水撥油層として有用である。
【0104】
また、本発明の表面処理剤は、浴槽、洗面台のようなサニタリー製品の防汚コーティング、自動車、電車、航空機などの窓ガラス又は強化ガラス、ヘッドランプカバー等の防汚コーティング、外壁用建材の撥水撥油コーティング、台所用建材の油汚れ防止用コーティング、電話ボックスの防汚及び貼り紙・落書き防止コーティング、美術品などの指紋付着防止付与のコーティング、コンパクトディスク、DVDなどの指紋付着防止コーティング、金型用に離型剤あるいは塗料添加剤、樹脂改質剤、無機質充填剤の流動性改質剤又は分散性改質剤、テープ、フイルムなどの潤滑性向上剤としても有用である。
【実施例】
【0105】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0106】
[実施例1]
反応容器に、3-ブテニルマグネシウムブロミド272ml(0.5M THF溶液:1.4×10
-1mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(A)
【化58】
(A)
で表される化合物200g(4.5×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 400g、PF5060 200gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(B)
【化59】
(B)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー193g(数平均分子量;約4,430)を得た。
【0107】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.9-2.2(C-CH
2
CH2CH=CH2、-CF2-CH(OH)-CH2-)3H
δ3.6-3.8(-CF2-CH(OH)-CH2-)1H
δ4.8-4.9(-CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.6(-CH2CH=CH2)1H
【0108】
反応容器に、上記で得られた下記式(B)
【化60】
(B)
で表される化合物100g(2.3×10
-2mol)、ジエチレングリコール-2-ブロモエチルメチルエーテル20.9g(9.2×10
-2mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.17g(4.6×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液18g(1.4×10
-1mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(C)
【化61】
(C)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー94gを得た。
【0109】
1H-NMR
δ1.5-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ2.0-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3)12H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
δ4.7-5.0(C-CH2CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.7(C-CH2CH2CH=CH2)1H
【0110】
反応容器に、上記で得られた下記式(C)
【化62】
(C)
で表される化合物80g(1.7×10
-2mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン80g、トリメトキシシラン4.2g(3.4×10
-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液7.6×10
-2g(Pt単体として2.3×10
-7molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物82gを得た。
【0111】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(D)で表される構造であることが確認された。
【化63】
(D)
【0112】
1H-NMR
δ0.4-0.6(C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)2H
δ1.2-1.6(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)6H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3、-Si(OCH
3
)3)21H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
【0113】
[実施例2]
反応容器に、3-ブテニルマグネシウムブロミド153ml(0.5M THF溶液:7.7×10
-2mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(E)
【化64】
(E)
で表される化合物100g(2.6×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 200g、PF5060 100gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(F)
【化65】
(F)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー94g(数平均分子量;約3,940)を得た。
【0114】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.9-2.2(C-CH
2
CH2CH=CH2、-CF2-CH(OH)-CH2-)3H
δ3.6-3.8(-CF2-CH(OH)-CH2-)1H
δ4.8-4.9(-CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.6(-CH2CH=CH2)1H
【0115】
反応容器に、上記で得られた下記式(F)
【化66】
(F)
で表される化合物50g(1.3×10
-2mol)、ジエチレングリコール-2-ブロモエチルメチルエーテル12g(5.2×10
-2mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.10g(2.6×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液10g(7.5×10
-2mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(G)
【化67】
(G)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー44gを得た。
【0116】
1H-NMR
δ1.5-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ2.0-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3)12H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
δ4.7-5.0(C-CH2CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.7(C-CH2CH2CH=CH2)1H
【0117】
反応容器に、上記で得られた下記式(G)
【化68】
(G)
で表される化合物40g(9.8×10
-3mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン40g、トリメトキシシラン2.4g(2.0×10
-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液4.4×10
-2g(Pt単体として1.3×10
-7molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物40gを得た。
【0118】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(H)で表される構造であることが確認された。
【化69】
(H)
【0119】
1H-NMR
δ0.4-0.6(C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)2H
δ1.2-1.6(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)6H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3、-Si(OCH
3
)3)21H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
【0120】
[実施例3]
反応容器に、上記と同様にして得られた下記式(B)
【化70】
(B)
で表される化合物100g(2.3×10
-2mol)、トリエチレングリコール-2-ブロモエチルメチルエーテル24.9g(9.2×10
-2mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.17g(4.6×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液18g(1.4×10
-1mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(J)
【化71】
(J)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー90gを得た。
【0121】
1H-NMR
δ1.5-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ2.0-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)4-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)4-O-CH3)16H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)4-O-CH3))1H
δ4.7-5.0(C-CH2CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.7(C-CH2CH2CH=CH2)1H
【0122】
反応容器に、上記で得られた下記式(J)
【化72】
(J)
で表される化合物80g(1.7×10
-2mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン80g、トリメトキシシラン4.2g(3.4×10
-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液7.6×10
-2g(Pt単体として2.3×10
-7molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物80gを得た。
【0123】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(K)で表される構造であることが確認された。
【化73】
(K)
【0124】
1H-NMR
δ0.4-0.6(C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)2H
δ1.2-1.6(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)6H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)4-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)4-O-CH3、-Si(OCH
3
)3)25H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)4-O-CH3))1H
【0125】
[実施例4]
反応容器に、5-ヘキセニルマグネシウムブロミド272ml(0.5M THF溶液:1.36×10
-1mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(A)
【化74】
(A)
で表される化合物200g(4.5×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 400g、PF5060 200gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(L)
【化75】
(L)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー189g(数平均分子量;約4,450)を得た。
【0126】
1H-NMR
δ1.3-1.8(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2CH=CH2)6H
δ1.9-2.1(C-CH2CH2CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.3-3.5(-CF2-CH(OH)-CH2-)1H
δ3.6-3.8(-CF2-CH(OH)-CH2-)1H
δ4.7-4.9(-CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.7(-CH2CH=CH2)1H
【0127】
反応容器に、上記で得られた下記式(L)
【化76】
(L)
で表される化合物40g(9.0×10
-3mol)、ジエチレングリコール-2-ブロモエチルメチルエーテル8.2g(3.6×10
-2mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.06g(1.6×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液7.2g(5.4×10
-2mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(M)
【化77】
(M)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー21gを得た。
【0128】
1H-NMR
δ1.3-1.8(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2CH=CH2)6H
δ1.9-2.1(C-CH2CH2CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3)12H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
δ4.8-5.1(C-CH2CH2CH=CH
2
)2H
δ5.6-5.8(C-CH2CH2CH=CH2)1H
【0129】
反応容器に、上記で得られた下記式(M)
【化78】
(M)
で表される化合物20g(4.3×10
-3mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン20g、トリメトキシシラン1.05g(8.6×10
-3mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液2.0×10
-2g(Pt単体として5.9×10
-8molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物21gを得た。
【0130】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(N)で表される構造であることが確認された。
【化79】
(N)
【0131】
1H-NMR
δ0.4-0.6(C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)2H
δ1.1-1.8(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)10H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3、-Si(OCH
3
)3)21H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
【0132】
[実施例5]
反応容器に、3-ブテニルマグネシウムブロミド126ml(0.5M THF溶液:6.3×10
-2mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(O)
【化80】
(O)
で表される化合物100g(2.1×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 200g、PF5060 100gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(P)
【化81】
(P)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー96g(数平均分子量;約4,800)を得た。
【0133】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.9-2.2(C-CH
2
CH2CH=CH2、-CF(CF3)-CH(OH)-CH2-)3H
δ3.5-3.7(-CF(CF3)-CH(OH)-CH2-)1H
δ4.8-4.9(-CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.6(-CH2CH=CH2)1H
【0134】
反応容器に、上記で得られた下記式(P)
【化82】
(P)
で表される化合物40g(8.2×10
-3mol)、ジエチレングリコール-2-ブロモエチルメチルエーテル7.5g(3.3×10
-2mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.06g(1.6×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(4.9×10
-2mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(Q)
【化83】
(Q)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー38gを得た。
【0135】
1H-NMR
δ1.5-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ2.1-2.3(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3)12H
δ3.6-3.8(CF(CF3)-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
δ5.0-5.2(C-CH2CH2CH=CH
2
)2H
δ5.7-5.8(C-CH2CH2CH=CH2)1H
【0136】
反応容器に、上記で得られた下記式(Q)
【化84】
(Q)
で表される化合物20g(4.1×10
-3mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン20g、トリメトキシシラン1.0g(8.2×10
-3mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.9×10
-2g(Pt単体として5.9×10
-8molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物19gを得た。
【0137】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(R)で表される構造であることが確認された。
【化85】
(R)
【0138】
1H-NMR
δ0.4-0.6(C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)2H
δ1.2-1.7(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)4H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3、-Si(OCH
3
)3)21H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
【0139】
[実施例6]
反応容器に、上記と同様にして得られた下記式(C)
【化86】
(C)
で表される化合物40g(8.7×10
-3mol)と下記式(S)
【化87】
(S)
で表されるシロキサン11.7g(8.7×10
-2mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン40gを混合し、80℃まで加熱した。その後、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液3.9×10
-2g(Pt単体として1.2×10
-7molを含有)を添加し、80℃で24時間熟成させた。その後、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(T)
【化88】
(T)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー41gを得た。
【0140】
1H-NMR
δ0-0.3(-Si-(CH
3
)2-)12H
δ0.4-0.6(C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)2H
δ1.2-1.7(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)6H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3)12H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
δ3.9-4.1(-Si(CH3)H)1H
【0141】
反応容器に、上記で得られた下記式(T)
【化89】
(T)
で表される化合物20g(4.2×10
-3mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン20g、アリルトリメトキシシラン1.36g(8.4×10
-3mol)及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液2.0×10
-2g(Pt単体として6.0×10
-8molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物20gを得た。
【0142】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(U)で表される構造であることが確認された。
【化90】
(U)
【0143】
1H-NMR
δ0-0.3(-Si-(CH
3
)2-)12H
δ0.4-0.7(C-CH2CH2CH2CH
2
-Si、Si-CH
2
CH2CH
2
-Si)6H
δ1.2-1.8(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si、Si-CH2CH
2
CH2-Si)8H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3、-Si(OCH
3
)3)21H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
【0144】
[実施例7]
反応容器に、3-ブテニルマグネシウムブロミド288ml(0.5M THF溶液:1.4×10
-1mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(W)
【化91】
(W)
で表される化合物200g(4.8×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 400g、PF5060 200gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(X)
【化92】
(X)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー188g(数平均分子量;約4,290)を得た。
【0145】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.9-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ2.4-2.6(-CF2-CH(OH)-CH2-)1H
δ3.9-4.0(-CF2-CH(OH)-CH2-)1H
δ4.7-4.9(-CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.7(-CH2CH=CH2)1H
【0146】
反応容器に、上記で得られた下記式(X)
【化93】
(X)
で表される化合物100g(2.3×10
-2mol)、ジエチレングリコール-2-ブロモエチルメチルエーテル21g(9.2×10
-2mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.17g(4.6×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液18g(1.4×10
-1mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(Y)
【化94】
(Y)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー89gを得た。
【0147】
1H-NMR
δ1.5-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ2.0-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3)12H
δ3.9-4.0(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
δ4.8-5.1(C-CH2CH2CH=CH
2
)2H
δ5.6-5.8(C-CH2CH2CH=CH2)1H
【0148】
反応容器に、上記で得られた下記式(Y)
【化95】
(Y)
で表される化合物80g(1.7×10
-2mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン80g、トリメトキシシラン4.2g(3.4×10
-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液7.6×10
-2g(Pt単体として2.3×10
-7molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物78gを得た。
【0149】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(Z)で表される構造であることが確認された。
【化96】
(Z)
【0150】
1H-NMR
δ0.4-0.6(C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)2H
δ1.2-1.6(C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)6H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))3H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3、-Si(OCH
3
)3)21H
δ3.9-4.0(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))1H
【0151】
[実施例8]
反応容器に、3-ブテニルマグネシウムブロミド282ml(0.5M THF溶液:1.4×10
-1mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(A’)
【化97】
(A’)
で表される化合物100g(2.4×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 200g、PF5060 100gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(B’)
【化98】
(B’)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー94g(数平均分子量;約4,400)を得た。
【0152】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)4H
δ1.9-2.2(C-CH
2
CH2CH=CH2、-CF2-CH(OH)-CH2-)6H
δ3.6-3.8(-CF2-CH(OH)-CH2-)2H
δ4.8-4.9(-CH2CH=CH
2
)4H
δ5.5-5.6(-CH2CH=CH2)2H
【0153】
反応容器に、上記で得られた下記式(B’)
【化99】
(B’)
で表される化合物40g(9.4×10
-3mol)、ジエチレングリコール-2-ブロモエチルメチルエーテル17.0g(7.5×10
-2mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.14g(3.8×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液14g(1.1×10
-1mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(C’)
【化100】
(C’)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー39gを得た。
【0154】
1H-NMR
δ1.5-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)4H
δ1.9-2.1(C-CH2CH
2
CH=CH2)4H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))6H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3)24H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))2H
δ5.0-5.2(C-CH2CH2CH=CH
2
)4H
δ5.7-5.8(C-CH2CH2CH=CH2)2H
【0155】
反応容器に、上記で得られた下記式(C’)
【化101】
(C’)
で表される化合物20g(4.4×10
-3mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン20g、トリメトキシシラン2.2g(1.8×10
-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液4.7×10
-2g(Pt単体として1.4×10
-7molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物21gを得た。
【0156】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(D’)で表される構造であることが確認された。
【化102】
(D’)
【0157】
1H-NMR
δ0.4-0.6(-O-CH2CH2CH
2
-Si、C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)8H
δ1.2-1.7(-O-CH2CH
2
CH2-Si、C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)16H
δ3.0-3.2(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH
3
))6H
δ3.3-3.6(-O-(CH
2
CH
2
O)3-O-CH3、-Si(OCH
3
)3)42H
δ3.7-3.8(CF2-CH-O-(CH2CH2O)3-O-CH3))2H
【0158】
比較例として、以下のポリマーを使用した。
[比較例1]
【化103】
(E’)
【0159】
【0160】
【0161】
表面処理剤の調製及び硬化被膜の形成
実施例1、3で得られた式(D)、(K)で表される構造のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び比較例1、2、3の式(E’)、(F’)、(G’)で表されるポリマーを、濃度20質量%になるようにNovec 7200(3M社製、エチルパーフルオロブチルエーテル)に溶解させて表面処理剤を調製した。最表面にSiO2を10nm処理したガラス(コーニング社製 Gorilla)に、各表面処理剤4μlを真空蒸着し(処理条件は、圧力:3.0×10-3Pa、加熱温度:500℃)、25℃、湿度50%の雰囲気下で12時間硬化させて膜厚8nmの硬化被膜を形成した。
【0162】
撥水撥油性の評価
[初期撥水撥油性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、接触角計Drop Master(協和界面科学社製)を用いて、硬化被膜の水に対する接触角(撥水性)を測定した(液滴:2μl、温度:25℃、湿度:40%)。結果(初期水接触角)を表1に示す。
初期においては、実施例、比較例共に良好な撥水性を示した。
【0163】
[耐摩耗性の評価1]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、下記条件で10,000回擦った後の硬化被膜の水に対する接触角(撥水性)を上記と同様にして測定し、耐摩耗性の評価1とした。試験環境条件は25℃、湿度40%である。結果(摩耗後水接触角)を表1に示す。
耐消しゴム摩耗性
消しゴム:Minoan社製
接触面積:6mmφ
移動距離(片道):40mm
移動速度:3,200mm/分
荷重:1kg/6mmφ
【0164】
【0165】
[耐摩耗性の評価2]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、下記条件で15,000回擦った後の硬化被膜の水に対する接触角(撥水性)を上記と同様にして測定し、耐摩耗性の評価2とした。評価は8回摩耗試験を行った内、水接触角が100°以上を合格とし、合格率を算出している。試験環境条件は25℃、湿度40%である。結果(摩耗後水接触角100°以上の合格率)を表2に示す。
耐消しゴム摩耗性
消しゴム:Minoan社製
接触面積:6mmφ
移動距離(片道):40mm
移動速度:3,200mm/分
荷重:1kg/6mmφ
【0166】
【0167】
実施例1、3、比較例3のポリマーは、分子内にポリエーテル基を有することにより、消しゴム摩耗回数10,000回後の水接触角が分子内にポリエーテル基を有さない比較例1、2のポリマーに比べ良好な結果となった。更に実施例1、3のポリマーは、基材密着性基が比較例3のポリマーに比べ少ないことから基材上での分子運動性に優れるため、水接触角が100°以上を保った。また、15,000回の摩耗耐久性試験の合格率も優れる結果となった。