(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20230725BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20230725BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
C08L79/08
(21)【出願番号】P 2022561322
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2021036656
(87)【国際公開番号】W WO2022102281
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2020189724
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】新津 新平
(72)【発明者】
【氏名】原田 佳和
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118753(JP,A)
【文献】国際公開第2020/184628(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/153659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
C08L 79/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分と(B)成分とを含有する液晶配向剤。
(A)成分:液晶を配向させる能力を有する重合体(A)
(B)成分:下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルアミド化合物(B)
【化1】
(式(1)中、Pは、それぞれ独立して基「*-C(=O)-N(R)
2」を有する基を表し、Wは液晶性を発現する部分構造を表す。Rは、それぞれ独立して基「*-(CR’
2)
2-OH」を表し、R’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6の1価の有機基を表す。*は結合手を表す。)
【請求項2】
Pが、それぞれ独立して、基「*-C(=O)-N(R)
2」又は基「*-A-C(=O)-N(R)
2」を表し、
但し、Aは、炭素数1~30の2価の有機基であり、前記炭素数1~30の2価の有機基は、2価の炭化水素基、前記2価の炭化水素基の炭素-炭素結合間にヘテロ原子を有する基を含む2価のヘテロ原子含有基、および前記2価の炭化水素基及び2価のヘテロ原子含有基が有する一部又は全部の水素原子を置換基で置換した2価の有機基からなる群から選ばれる2価の有機基であり、Rは、請求項1で定義されたものである、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記基「*-(CR’
2)
2-OH」において、R’が水素原子である、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
上記Wが、下記式(w)で表される構造である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化2】
(Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のフェニレン基又はシクロヘキシレン基であり、X
1は単結合、-CO-、-COO-、-C=C-、-C≡C-、-N=N-又は-CONR
1-(R
1は水素原子又は1価の有機基である。)である。nは1~3の整数である。nが2又は3のとき、Ar
1、X
1は各々独立に上記定義を有する。「*」は結合手を示す。)
【請求項5】
ヒドロキシアルキルアミド化合物(B)が、下記式(b-1)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化3】
(2つのnは、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【請求項6】
前記重合体(A)が、ポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体が、下記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を含有するテトラカルボン酸成分を用いて得られる請求項6に記載の液晶配向剤。
【化4】
(Xは、下記式(x-1)~(x-13)から選ばれる構造を表す。)
【化5】
(R
1~R
4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、0又は1の整数であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、フェニレン、スルホニル基、又はアミド基を表す。2つのA
2は同一であっても異なっていてもよい。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
【請求項8】
前記式(x-1)が、下記式(x1-1)~(x1-6)からなる群から選ばれる請求項7に記載の液晶配向剤。
【化6】
(*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
【請求項9】
前記ポリイミド前駆体が、下記式(3)及び下記式(3A)で表されるジアミンから選ばれる少なくとも1種以上のジアミンを含有するジアミン成分を用いて得られる請求項
6~8のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化7】
(Y
3は下記式(O)で表される2価の有機基を表す。Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。Y
3aは下記式(a)で表される2価の有機基を表す。)
【化8】
(Arは、2価のベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環を表す。2つのArは同一でも異なってもよく、上記ベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。pは0又は1の整数である。Q
3は-(CH
2)
n-(nは2~18の整数である。)、又は上記-(CH
2)
n-の-CH
2-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。*は結合手を表す。)
【化9】
(式(a)において、ベンゼン環上の水素原子はハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい。Pはベンゼン環又はビフェニル構造のいずれかから選ばれる芳香環であり、ベンゼン環又はビフェニル構造上の水素原子はメチル基又はフッ素原子で置き換えられていてもよい。nは0~5の整数である。nが2以上の整数のとき、n個のPは独立に上記定義を有する。*は結合手を表す。)
【請求項10】
前記式(O)で表される2価の有機基が、下記式(o-1)~(o-16)のいずれかである、請求項9に記載の液晶配向剤。
【化10】
【化11】
(式(o-14)中、2つのmは、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【化12】
(式(o-1)~(o-16)中、*は結合手を表す。)
【請求項11】
前記ポリイミド前駆体が、窒素原子含有複素環(但し、ポリイミドが有するイミド環を除く。)、第二級アミノ基及び第三級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素原子含有構造を有するジアミンを含有するジアミン成分を用いて得られる請求項6~10のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項12】
前記ヒドロキシアルキルアミド化合物(B)の含有量が、前記重合体(A)100質量部に対して、0.1~50質量部である、請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項13】
密着助剤、架橋性化合物、および液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための誘電体または導電物質からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の液晶配向剤を基板に塗布し、焼成し、得られる膜に配向処理する液晶配向膜の製造方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の液晶配向剤から形成されてなる液晶配向膜。
【請求項16】
請求項15に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項17】
IPS駆動方式又はFFS駆動方式である請求項16に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、該液晶配向膜を使用した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から液晶表示装置は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、テレビジョン受像機等の表示部として幅広く用いられている。液晶表示装置は、例えば、素子基板とカラーフィルタ基板との間に挟持された液晶層、液晶層に電界を印加する画素電極及び共通電極、液晶層の液晶分子の配向性を制御する配向膜、画素電極に供給される電気信号をスイッチングする薄膜トランジスタ(TFT)等を備えている。液晶分子の駆動方式としては、TN方式、VA方式等の縦電界方式や、IPS方式、FFS(フリンジフィールドスイッチング)方式等の横電界方式が知られている。
【0003】
現在、工業的に最も普及している液晶配向膜は、電極基板上に形成された、ポリアミック酸及び/又はこれをイミド化したポリイミドに代表される重合体からなる膜の表面を、綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一方向に擦る、いわゆるラビング処理を行うことで作製されている。ラビング処理は、簡便で生産性に優れた工業的に有用な方法である。また、ラビング処理に代わる配向処理方法としては、偏光された放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている。光配向法は、光異性化反応を利用したもの、光架橋反応を利用したもの、光分解反応を利用したもの等が提案されている(非特許文献1、特許文献1参照)。
近年では、大画面で高精細な液晶テレビが主体となり、またスマートフォン、タブレットPCやカーナビゲーションといった小型の表示端末の普及が進み、液晶表示素子に対する高品質化の要求は従来よりも増してさらに高まっている。スマートフォンなどのモバイル用途及びカーナビゲーションなどの車載用途の液晶表示素子の信頼性試験として、パネルの振動試験を実施することがある。この振動試験では、輝点などの不良が発生しないことが求められる。
また、出来るだけ大きい表示面を確保するため、液晶表示素子の基板間を接着に用いるシール剤の幅をできるだけ狭くする所謂狭額縁化が要求されている。かかる狭額縁化に伴って、液晶表示素子を作製する際に用いるシール剤が、液晶配向膜上に重ねて塗布される。これに伴い、シール剤と液晶配向膜との間の接着性(以下、シール密着性ともいう。)が高い液晶配向膜が要求されている。
更に、ラビング処理により配向特性を発現させる場合、液晶配向膜が削れることに起因するほこりが発生しやすいという問題点がある。ほこりが発生すると、液晶配向膜表面にほこりが付着して表示不良が発生するほか、TFT素子の回路破壊が生じて歩留まりが低下することになる。
このように振動試験やラビング処理に伴う不良が発生しない液晶表示素子やシール密着性が高い液晶配向膜を得るために、例えば液晶配向膜の機械強度を高める方法が考えられる。液晶配向膜の機械強度、特に膜強度を改善する方法として、液晶配向剤に架橋剤を添加する方法が挙げられる。これらの課題を解決する手段として、特定のポリイミド成分と特定のヒドロキシアルキルアミド化合物を含有する液晶配向剤が提案されている(特許文献2参照)。更には、液晶配向膜の基本特性である電気特性に関してもより高い初期特性を示すことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特開平9-297313号公報
【文献】WO2018/092811号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「液晶光配向膜」木戸脇、市村 機能材料 1997年11月号 Vol.17、 No.11 13~22ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によると、上記特許文献2に記載の特定のヒドロキシアルキルアミド化合物を添加した場合、得られる液晶配向膜の膜強度が改善するものの、液晶配向性に寄与する液晶配向膜の異方性が低減することが明らかとなった。
異方性が低い液晶配向膜は、液晶表示素子のコントラストが悪化し、長期交流駆動による残像(以下、AC残像ともいう。)が発生する恐れがある。それ故に、液晶配向膜の膜強度を高めつつ、液晶配向膜の異方性が高い液晶配向剤が求められている。
【0007】
以上のようなことから、本発明は、膜強度が高く、且つ、高い異方性を発現する液晶配向膜が得られる液晶配向剤、該液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のヒドロキシアルキルアミド化合物を用いることにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、下記の(A)成分と(B)成分とを含有することを特徴とする液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、該液晶配向膜を有する液晶表示素子、更には、該液晶配向剤に用いる新規化合物にある。
(A)成分:液晶を配向させる能力を有する重合体(A)
(B)成分:下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルアミド化合物(B)
【化1】
(式(1)中、Pは、それぞれ独立して基「*-C(=O)-N(R)
2」を有する基を表し、Wは液晶性を発現する部分構造を表す。Rは、それぞれ独立して基「*-(CR’
2)
2-OH」を表し、R’は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6の1価の有機基を表す。*は結合手を表す。)
【0009】
なお、本明細書において、*は、いずれの場合も、結合手を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。カルバメート系保護基としては、好ましくは、tert-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、膜強度が高く、且つ、高い異方性を発現する液晶配向膜が得られる液晶配向剤、該液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子が得られる。更には、表示不良の少ない液晶表示素子が提供される。また、シール密着性や電圧保持率や残像特性において優れた液晶配向膜が得られる。
本発明の上記効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下に述べることが一因と考えられる。
すなわち、中央に配置された液晶性を発現する部分構造により、残像特性の補填が行われると考えられる。特に、液晶性を発現する部分構造の両端に鎖状炭化水素が存在することで延伸性阻害の抑制ならびに液晶性発現効果の促進が行われることが大きく寄与していると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(A)成分>
本発明の液晶配向剤は、既知のものと同様に、液晶を配向させる能力を有する重合体を含有するが、かかる重合体は、液晶を配向させる能力を有するものであれば特に限定されない。本発明の液晶配向剤は、かかる重合体を1種含んでもよく、2種以上含んでもよい。
かかる重合体としては、例えば、ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミド、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、アクリルアミドポリマー、メタクリルアミドポリマー、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーネート、ポリウレア、ポリフェノール(ノボラック樹脂)、マレイミドポリマー、イソシアヌル酸骨格、トリアジン骨格を有した化合物を導入した重合体が挙げられる。
【0012】
これらの重合体を製造するための原料としては、それぞれ、下記のものが挙げられる。
重合体が、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等のポリイミド前駆体やポリイミドの場合は、テトラカルボン酸若しくはその誘導体から選択される少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物とジアミン;
重合体が(メタ)アクリルポリマーの場合は、(メタ)アクリル酸若しくはその誘導体、又は(メタ)アクリル酸エステル若しくはその誘導体;
重合体が(メタ)アクリルアミドポリマーの場合は、(メタ)アクリルアミド若しくはその誘導体;
【0013】
重合体がポリスチレンの場合は、スチレン若しくはその誘導体;
重合体がポリシロキサンの場合は、メトキシ基若しくはエトキシ基を有するシラン化合物;
重合体がポリアミドの場合は、ジカルボン酸及びその誘導体から選択される少なくとも一種のジカルボン酸成分とジアミン成分;
重合体がポリエステルの場合はジカルボン酸及びその誘導体から選択される少なくとも一種のジカルボン酸成分とジオール成分;
【0014】
重合体がポリウレタンの場合は、イソシアネートを有する化合物と水酸基を有する化合物;
重合体がポリカーネートの場合は、ビスフェノール誘導体とホスゲン若しくはホスゲン等価物(例えば、トリクロロホスゲン)若しくはジフェニルカーボネート;
重合体がポリウレアの場合は、ビスイソシアネート誘導体とジアミン成分;
重合体がマレイミドポリマーの場合は、マレイミド誘導体単独若しくはスチレンとの共重合;
重合体がイソシアヌル酸骨格やトリアジン骨格を有した化合物を導入したポリマーの場合は、イソシアヌル酸骨格やトリアジン骨格を有した化合物。
【0015】
<ポリイミド系重合体>
本発明の液晶配向剤に含有される重合体としては、なかでも、液晶配向剤としての実用性、塗布膜の機械的強度、及び液晶配向性の観点から、ポリイミド前駆体、及びポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる1つ以上の重合体(以下、ポリイミド系重合体ともいう。)が好ましい。
上記ポリイミド系重合体は、既知の方法で製造できる。例えば、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体からなるテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分と、を重(縮)合反応させることにより得られ、このポリイミド前駆体をイミド化することによりポリイミドが得られる。テトラカルボン酸二無水物の誘導体としては、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられる。
【0016】
<テトラカルボン酸成分>
ポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、例えば、芳香族、非環式脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を含むテトラカルボン酸成分から得られるものが挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、芳香環に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状炭化水素構造に結合する4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、鎖状炭化水素構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環式構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0017】
また、脂環式テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、これら4つのカルボキシ基はいずれも芳香環には結合していない。また、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0018】
本発明のポリアミック酸は、なかでも、下記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を含有するテトラカルボン酸成分から得られるものが好ましい。
【化2】
(Xは、下記式(x-1)~(x-13)から選ばれる構造を表す。)
【化3】
(R
1~R
4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、0又は1の整数であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、フェニレン、スルホニル基、又はアミド基を表す。2つのA
2は同一であっても異なっていてもよい。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
【0019】
上記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の好ましい具体例としては、Xが、上記式(x-1)~(x-8)、(x-10)~(x-13)から選ばれるものが挙げられる。
【0020】
上記式(x-1)は、なかでも、下記式(x1-1)~(x1-6)からなる群から選ばれるものが好ましい。
【化4】
(*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
【0021】
上記式(x-12)、(x-13)の好ましい具体例としては、下記式(x-14)~(x-29)が挙げられる。なお、式中の「*」は結合位置を表す。
【化5】
【化6】
【0022】
上記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体の使用量は、ジアミン成分と反応させる全テトラカルボン酸成分1モルに対して、60~100モル%含むことが好ましく、80~100モル%がより好ましく、90~100モル%がさらに好ましい。
【0023】
<ジアミン成分>
ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミン成分は特に限定されないが、下記式(3)及び下記式(3A)で表されるジアミンから選ばれる少なくとも1種以上のジアミンを含むジアミン成分が好ましい。上記ジアミン成分に含まれるジアミンは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化7】
(Y
3は下記式(O)で表される2価の有機基を表す。Rは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。Y
3aは下記式(a)で表される2価の有機基を表す。)
【化8】
(Arは、2価のベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環を表す。2つのArは同一でも異なってもよく、上記ベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。pは0又は1の整数である。Q
3は-(CH
2)
n-(nは2~18の整数である。)、又は上記-(CH
2)
n-の-CH
2-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。)
【化9】
(式(a)において、ベンゼン環上の水素原子はハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい。Pはベンゼン環又はビフェニル構造のいずれかから選ばれる芳香環であり、ベンゼン環又はビフェニル構造上の水素原子はメチル基又はフッ素原子で置き換えられていてもよい。nは0~5の整数である。nが2以上の整数のとき、n個のPは独立に上記定義を有する。)
【0024】
上記式(O)におけるベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数2~10のフルオロアルケニル基、炭素数1~10のフルオロアルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0025】
上記式(O)で表される2価の有機基は、液晶配向性を高める観点から、下記式(o-1)~(o-16)で表される2価の有機基が好ましい。
【0026】
【0027】
【化11】
(式(o-14)中、2つのmは、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【0028】
【0029】
上記式(3a)で表される2価の有機基は、液晶配向性を高める観点から、下記式(A-1)~(A-7)で表される2価の有機基が好ましい。
【化13】
【0030】
式(3)及び式(3A)で表されるジアミンから選ばれる少なくとも1種以上のジアミンの合計の割合は、ジアミン成分1モルに対して1~95モル%であることが好ましく、1~90モル%であることがより好ましく、5~90モル%であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明に用いられるポリイミド系重合体は、得られる液晶配向膜の電圧保持率を高める観点から、窒素原子含有複素環(但し、ポリイミドが有するイミド環を除く。)、第二級アミノ基及び第三級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素原子含有構造(以下、特定窒素原子含有構造ともいう。)を有してもよい。特定窒素原子含有構造を有するポリイミド系重合体は、窒素原子含有構造を有する単量体、例えば、特定窒素原子含有構造を有するジアミンを原料の少なくとも一部に用いることにより得ることができる。
【0032】
上記特定窒素原子含有構造を有するジアミンが有していてもよい窒素原子含有複素環としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、キノキサリン、フタラジン、トリアジン、カルバゾール、アクリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。なかでも、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、キノリン、カルバゾール又はアクリジンが好ましい。
【0033】
上記特定窒素原子含有構造を有するジアミンが有していてもよい第二級アミノ基及び第三級アミノ基は、例えば、下記式(n)で表される。
【0034】
【化14】
上記式(n)において、Rは,水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。「*1、*2」は、炭化水素基に結合する結合手を表す。
【0035】
上記式(n)中のRの1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、メチルフェニル基等のアリール基等が挙げられる。Rは、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0036】
特定窒素原子含有構造を有するジアミンの具体例としては、例えば、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,6-ジアミノアクリジン、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、下記式(Dp-1)~(Dp-8)で表される化合物、下記式(z-1)~式(z-18)で表される化合物が挙げられる。
【化15】
【0037】
【0038】
【0039】
特定窒素原子含有構造を有するジアミンの使用割合は、液晶表示素子の電圧保持率を高める観点から、合成に使用するジアミンの全体量に対して1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましい。また、該使用割合は、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましい。
【0040】
本発明に用いられるポリイミド系重合体は、上記に記載のジアミン以外のその他のジアミンを含んでいてもよい。以下にその他のジアミンの例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を分子内に有し、Dを除く炭素数が6~30のジアミン;4,4’-ジアミノアゾベンゼン及び下記式(dT-1)~(dT-3)で表されるジアミンなどの光配向性基を有するジアミン;3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、下記式(3i-1)~(3i-5)で表されるジアミン、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール;2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸及び下記式(3b-1)~式(3b-4)で示されるジアミン化合物などのカルボキシ基を有するジアミン;4-(2-(メチルアミノ)エチル)アニリン、4-(2-アミノエチル)アニリン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチル-1H-インダン-5-アミン、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-6-アミン;下記式(h-1)~(h-3)で表されるジアミン等のウレア結合を有するジアミン;下記式(h-4)~(h-6)で表されるアミド結合を有するジアミン;メタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル及び2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリン等の光重合性基を末端に有するジアミン;コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル及び3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン等のステロイド骨格を有するジアミン;下記式(V-1)~(V-6)で表されるジアミン;1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等のシロキサン結合を有するジアミン;下記式(Ox-1)~(Ox-2)等のオキサゾリン構造を有するジアミン等のジアミン;国際公開第2018/117239号に記載の式(Y-1)~(Y-167)のいずれかで表される基に2つのアミノ基が結合したジアミン等。
【0041】
【化18】
【化19】
(式(3i-1)~(3i-3)において、2つのnは同一であっても異なっていてもよい。)
【0042】
【化20】
(式(3b-1)中、A
1は単結合、-CH
2-、-C
2H
4-、-C(CH
3)
2-、-CF
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH
3)-、-CONH-、-NHCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CON(CH
3)-又は-N(CH
3)CO-を表し、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~4の整数を表し、かつm1+m2は1~4の整数を表す。式(3b-2)中、m3及びm4はそれぞれ独立して、1~5の整数を表す。式(3b-3)中、A
2は炭素数1~5の直鎖又は分岐アルキル基を表し、m5は1~5の整数を表す。式(3b-4)中、A
3及びA
4はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2-、-C
2H
4-、-C(CH
3)
2-、-CF
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH
3)-、-CONH-、-NHCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CON(CH
3)-又は-N(CH
3)CO-を表し、m6は1~4の整数を表す。)
【0043】
【0044】
【化22】
(上記式(V-1)~(V-6)中、X
v1~X
v4、X
p1~X
p2は、それぞれ独立に、-(CH
2)
a-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-CH
2OCO-、-COO-、又は-OCO-を表し、X
v5は-O-、-CH
2O-、-CH
2OCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。X
aは、単結合、-O-、-NH-、-O-(CH
2)
m-O-、-C(CH
3)
2-、-CO-、-(CH
2)
m-、-SO
2-、-O-C(CH
3)
2-、-CO-(CH
2)
m-、-NH-(CH
2)
m-、-SO
2-(CH
2)
m-、-CONH-(CH
2)
m-、-CONH-(CH
2)
m-NHCO-、-COO-(CH
2)
m-OCO-、-CONH-、-NH-(CH
2)
m-NH-、又は-SO
2-(CH
2)
m-SO
2-を表し(但し、mは1~6の整数を表す。)、R
v1~R
v4、R
1a~R
1bは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表す。式(V-6)において、2つのkは同一であっても異なっていてもよい。)
【0045】
【0046】
上記基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を分子内に有し、Dを除く炭素数が6~30のジアミンとしては、下記式(5-1)~(5-10)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
【化24】
(Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。)
【0048】
<(B)成分>
本発明の液晶配向剤は、下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルアミド化合物(B)を含有することを特徴とする。
【化25】
(式(1)中、Pは、それぞれ独立して基「*-C(=O)-N(R)
2」を有する基を表し、Wは液晶性を発現する部分構造を表す。Rは、それぞれ独立して基「-(CR’
2)
2-OH」を表し、R’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6の1価の有機基を表す。)
【0049】
上記Wにおける液晶性を発現する部分構造としては、メソゲン構造が挙げられる。メソゲン構造としては、例えば下記式(w)で表される構造が挙げられる。
【化26】
(Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のフェニレン基又はシクロヘキシレン基であり、X
1は単結合、-CO-、-COO-、-C=C-、-C≡C-、-N=N-又は-CONR
1-(R
1は水素原子又は1価の有機基である。)である。nは1~3の整数である。nが2又は3のとき、Ar
1、X
1は各々独立に上記定義を有する。)
【0050】
上記式(w)において、X
1は、好ましくは単結合又は-COO-である。R
1の1価の有機基としては、例えば炭素数1~6のアルキル基、保護基などが挙げられる。保護基の具体例としては、例えばtert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、1,1-ジメチル-2-ハロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基などが挙げられる。
Ar
1及びAr
2の環部分の置換基は、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子が好ましく、メチル基又はフッ素原子がより好ましい。
上記式(w)で表される部分構造の好ましい具体例としては、例えば4,4’-ビフェニル基、4,4’-ビシクロへキシレン基、p-ターフェニレン基及び下記式(1-1)~式(1-4)のそれぞれで表される基、並びにこれらの基の環部分にメチル基又はフッ素原子を有する基などが挙げられる。
【化27】
【0051】
上記式(1)におけるPは、基「*-C(=O)-N(R)2」を有する基を表す。Pの具体例としては、基「*-C(=O)-N(R)2」又は基「*-A-C(=O)-N(R)2」が挙げられる。Aは炭素数1~30の2価の有機基を表す。Aにおける2価の有機基としては、例えば2価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素結合間にヘテロ原子を有する基を含む2価のヘテロ原子含有基、上記2価の炭化水素基及び2価のヘテロ原子含有基が有する一部又は全部の水素原子を置換基で置換した2価の有機基等が挙げられる。
【0052】
上記基「*-A-C(=O)-N(R)2」のAにおける2価の炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等のアルカン;エチレン、プロペン、ブテン、ペンテン等のアルケン;エチン、プロピン、ブチン、ペンチン等のアルキン等の炭素数1~30の鎖状炭化水素、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン等のシクロアルカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等のシクロアルケン等の炭素数3~30の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、アントラセン等の炭素数6~30の芳香族炭化水素等の炭化水素から、2個の水素原子を除いた2価の炭化水素基等が挙げられる。
【0053】
上記基「*-A-C(=O)-N(R)2」におけるAとしては、炭素数1~30の2価の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素、又は炭素数6~30の芳香族炭化水素から2個の水素原子を除いた2価の炭化水素基が好ましい。
炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素は、好ましくは炭素数2~30の2価の鎖状炭化水素、より好ましくは炭素数2~16の2価の鎖状炭化水素が好ましい。
【0054】
上記基「-(CR’2)2-OH」におけるR’の炭素数1~6の1価の有機基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、又はこれらの基の炭素-炭素結合間にヘテロ原子を有する基を含むヘテロ原子含有基、上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びヘテロ原子含有基が有する一部又は全部の水素原子を置換基で置換した基が挙げられる。
【0055】
上記基「*-A-C(=O)-N(R)2」のAおよび基「-(CR’2)2-OH」のR’において、ヘテロ原子を有する基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、リン原子及びイオウ原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基等が挙げられ、-O-、-NR-(Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。)、-CO-、-S-、-CO-及びこれらを組み合わせた基等が挙げられる。なかでも、-O-が好ましい。
【0056】
上記基「*-A-C(=O)-N(R)2」のAおよび基「-(CR’2)2-OH」のR’において、置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基等のアルコキシカルボニルオキシ基;シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0057】
液晶配向性を高める観点から、上記基「-(CR’2)2-OH」におけるR’は水素原子であることが好ましい。
【0058】
上記式(1)で表されるヒドロキシアルキルアミド化合物(B)は、下記式(b-1)で表される化合物であることが好ましい。下記式(b-1)におけるnは、それぞれ独立して、2~10がより好ましく、2~8がさらに好ましい。より好ましくは、下記式(Add-1)~(Add-2)で表される化合物である。なお、下記式(Add-1)~(Add-2)で表される化合物は、先行技術文献に開示されていない新規化合物である。
【化28】
(式(b-1)中、2つのnは、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【化29】
【0059】
本発明の液晶配向剤における上記式(1)で表されるヒドロキシアルキルアミド化合物(B)の好ましい含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、0.1~30質量部がより好ましい。
【0060】
<ポリアミック酸の製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下の方法により製造できる。具体的には、上記テトラカルボン酸成分と上記ジアミン成分とを有機溶媒の存在下で例えば-20~150℃、好ましくは0~50℃において、例えば30分~24時間、好ましくは1~12時間(重縮合)反応させることによって合成できる。
上記の反応に用いる有機溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。また、重合体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又は下記の式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることができる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
【化30】
(式[D-1]中、D
1は炭素数1~3のアルキル基を表し、式[D-2]中、D
2は炭素数1~3のアルキル基を表し、式[D-3]中、D
3は炭素数1~4のアルキル基を表す。)。
反応は任意の濃度で行うことができるが、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することもできる。反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸成分の合計モル数の比は0.8~1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0062】
上記反応で得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリアミック酸を析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0063】
ポリイミド前駆体がポリアミック酸エステルである場合は、(1)テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化する方法、(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応による方法、(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを重縮合させる方法、等の既知の方法による製造できる。
【0064】
上記ポリイミド前駆体は、それを製造するに際して、上記の如きテトラカルボン酸成分及びジアミンとともに、適当な末端封止剤を用いて得られる末端修飾型の重合体であってもよい。
末端修飾剤としては、例えば無水酢酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、トリメット酸無水物等の酸無水物や二炭酸ジ-tert-ブチル;アニリン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸等のモノアミン化合物;エチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物等を挙げられる。
末端修飾剤の使用割合は、使用するジアミン成分の計100モル部に対して、40モル部以下とすることが好ましく、30モル部以下とすることがより好ましい。
【0065】
<ポリイミドの製造方法>
本発明に用いられるポリイミドは、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸又はポリアミック酸エステルを既知の方法によりイミド化することにより製造できる。
例えば、ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応で得られたポリアミック酸の溶液に触媒を添加する(化学的)イミド化が簡便である。イミド化は、例えばイミド化させたい重合体を、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で撹拌することにより行うことができる。
ポリイミドにおいては、ポリアミック酸又はポリアミック酸エステルが有する官能基の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0066】
上記ポリアミック酸又はポリアミック酸エステルをイミド化してポリイミドを得る方法としては、上記ポリアミック酸又はポリアミック酸エステルの溶液をそのまま加熱する熱イミド化、又は上記ポリアミック酸又はポリアミック酸エステルの溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。熱イミド化させる場合の温度は、例えば100~400℃、好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0067】
触媒イミド化は、重合体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、好ましくは-20~250℃、より好ましくは0~180℃で撹拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基またはアミック酸エステル基の好ましくは0.5~30モル倍、より好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基またはアミック酸エステル基の好ましくは1~50モル倍、より好ましくは3~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミントリオクチルアミンなどを挙げることができ、なかでも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、なかでも、無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0068】
触媒イミド化の反応溶液から、生成したポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセロソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させた重合体は濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0069】
<重合体の溶液粘度・分子量>
本発明に用いられるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、これを濃度10~15重量%の溶液としたときに、例えば10~1000mPa・sの溶液粘度を持つものが作業性の観点から好ましいが、特に限定されない。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10~15質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0070】
上記ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~500,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な液晶配向性を確保することができる。
【0071】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記液晶を配向させる能力を有する重合体(A)と上記式(1)のヒドロキシアルキルアミド化合物(B)とを含有する。本発明の液晶配向剤は、好ましくは液晶を配向させる能力を有する重合体(A)が溶媒中に溶解された溶液中に、上記式(1)のヒドロキシアルキルアミド化合物(B)が添加された形態を有する。
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(A)の含有量(濃度)は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によっても適宜変更できるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1質量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは10質量%以下が好ましい。
【0072】
液晶配向剤に含有される溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルラクトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(tert-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(これらを総称して「良溶媒」ともいう)などを挙げられる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド又はγ-ブチロラクトンが好ましい。良溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20~99質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましく、特に好ましいのは、30~80質量%である。
【0073】
また、液晶配向剤に含有される溶媒は、上記溶媒に加えて液晶配向剤を塗布する際の塗布性や塗膜の表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう。)を併用した混合溶媒の使用が好ましい。併用する溶媒の具体例を下記するが、これらに限定されない。
【0074】
例えば、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソブチルカルビノール(2,6-ジメチル-4-ヘプタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(2-ブトキシエトキシ)-2-プロパノール、2-(2-ブトキシエトキシ)-1-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)など。
【0075】
なかでも、ジイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、又はジイソブチルケトンが好ましい。貧溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%が特に好ましい。貧溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境などに応じて適宜選択される。
【0076】
良溶媒と貧溶媒との好ましい溶媒の組み合わせとしては、良溶媒と貧溶媒との好ましい溶媒の組み合わせとしては、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールジアセテート、N,N-ジメチルラクトアミドとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチル、N-エチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチル、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、N-エチル-2-ピロリドンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとエチレングリコールモノブチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとプロピレングリコールジアセテート、N-エチル-2-ピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとN-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-エチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンと2,6-ジメチル-4-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンと2,6-ジメチル-4-ヘプタノン、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルと2,6-ジメチル-4-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソプロピルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルと2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとプロピレングリコールジアセテート、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドンとN,N-ジメチルラクトアミドとジイソブチルケトンなどを挙げることができる。
【0077】
本発明の液晶配向剤は、重合体(A)及びヒドロキシアルキルアミド化合物(B)に加えて、溶媒以外の成分(以下、添加剤成分ともいう。)を追加的に含有してもよい。このような添加剤成分としては、液晶配向膜と基板との密着性や液晶配向膜とシール材との密着性を高めるための密着助剤、液晶配向膜の強度を高めるための化合物(以下、架橋性化合物ともいう。)、液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための誘電体や導電物質などが挙げられる。
【0078】
上記架橋性化合物として、AC残像に対して良好な耐性を発現し、膜強度の改善が高い観点から、オキシラニル基、オキセタニル基、保護イソシアネート基、保護イソチオシアネート基、オキサゾリン環構造を含む基、メルドラム酸構造を含む基及びシクロカーボネート基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物、上記式(1)で表される化合物以外のヒドロキシアルキルアミド化合物又は下記式(e)で表される化合物から選ばれる化合物であってもよい。
【0079】
【化31】
(式(e)中、Aは芳香環を有する(m+n)価の有機基を表す。mは1~6の整数を表し、nは0~4の整数を表す。Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。上記芳香環の任意の水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数2~10のフルオロアルケニル基又は炭素数1~10のフルオロアルコキシ基で置き換えられてもよい。mが2以上である場合、Rはそれぞれ独立して上記定義を有する。)
【0080】
オキシラニル基を有する化合物の具体例としては、特開平10-338880号公報の段落[0037]に記載の化合物や、国際公開第2017/170483号に記載のトリアジン環を骨格にもつ化合物などの、2個以上のオキシラニル基を有する化合物が挙げられる。これらのうち、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、下記式(r-1)~(r-3)で表される化合物などの窒素原子を含有する化合物であってもよい。
【0081】
【0082】
オキセタニル基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2011/132751号の段落[0170]~[0175]に記載の2個以上のオキセタニル基を有する化合物等が挙げられる。
【0083】
保護イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、日本特開2014-224978号公報の段落[0046]~[0047]に記載の2個以上の保護イソシアネート基を有する化合物、国際公開第2015/141598号の段落[0119]~[0120]に記載の3個以上の保護イソシアネート基を有する化合物等が挙げられ、下記式(bi-1)~(bi-3)で表される化合物であってもよい。
【0084】
【0085】
保護イソチオシアネート基を有する化合物の具体例としては、日本特開2016-200798号公報に記載の、2個以上の保護イソチオシアネート基を有する化合物が挙げられる。
【0086】
オキサゾリン環構造を含む基を有する化合物の具体例としては、日本特開2007-286597号公報の段落[0115]に記載の、2個以上のオキサゾリン構造を含む化合物が挙げられる。
【0087】
メルドラム酸構造を含む基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2012/091088号に記載の、メルドラム酸構造を2個以上有する化合物が挙げられる。
【0088】
シクロカーボネート基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2011/155577号に記載の化合物が挙げられる。
【0089】
上記式(1)で表される化合物以外のヒドロキシアルキルアミド化合物の具体例としては、国際公開第2015/072554号や、日本特開2016-118753号公報の段落[0058]に記載の化合物、日本特開2016-200798号公報に記載の化合物、国際公開第2019/142927号に記載の化合物等が挙げられ、下記式(hd-1)~(hd-8)で表される化合物、下記式(hd1-1)~(hd1-4)で表される化合物であってもよい。
【0090】
【0091】
【0092】
上記式(e)のAにおける芳香環を有する(m+n)価の有機基としては、炭素数6~30の(m+n)価の芳香族炭化水素基、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が直接又は連結基を介して結合した(m+n)価の有機基、芳香族複素環を有する(m+n)価の基が挙げられる。上記芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、ナフタレンなどが挙げられる。芳香族複素環としては、例えばピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、ピリダジン環、ピラジン環、ベンゾイミダゾール環、インドール環、キノキサリン環、アクリジン環などが挙げられる。上記連結基としては、炭素数1~10のアルキレン基、又は上記アルキレン基から水素原子を一つ除いた基、2価又は3価のシクロヘキサン環等が挙げられる。尚、上記アルキレン基の任意の水素原子は、炭素数1~6のアルキル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基などの有機基で置換されてもよい。具体例を挙げるならば、国際公開第2010/074269号に記載の化合物、下記式(e-1)~(e-10)で表される化合物が挙げられる。
【0093】
【0094】
上記化合物は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されるものではない。例えば、国際公開第2015/060357号の53頁[0105]~55頁[0116]に開示されている上記以外の成分などが挙げられる。また、架橋性化合物は、2種類以上組み合わせてもよい。
【0095】
本発明の液晶配向剤における、架橋性化合物の含有量は、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましく、架橋反応が進行し、かつAC残像に対して良好な耐性を発現する観点から、より好ましくは1~15質量部である。
【0096】
上記密着助剤としては、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤を使用する場合は、AC残像に対して良好な耐性を発現する観点から、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部である。
【0097】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤から得られる。本発明の液晶配向膜は、水平配向型若しくは垂直配向型(VA型)の液晶表示素子の液晶配向膜に用いることができるが、中でもIPS方式又はFFS方式等の水平配向型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜である。本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向膜を具備するものである。本発明の液晶表示素子は、例えば以下の工程(1)~(4)或いは工程(1)~(2)及び(4)を含む方法により製造することができる。
【0098】
<工程(1):液晶配向剤を塗布する工程>
パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法により塗布する。ここで基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板とともに、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることもできる。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。また、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。
【0099】
液晶配向剤を基板に塗布し、成膜する方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、又はスプレー法等が挙げられる。なかでも、インクジェット法による塗布、成膜法が好適に使用できる。
【0100】
<工程(2):塗布した液晶配向剤を焼成する工程>
工程(2)は、基板上に塗布した液晶配向剤を焼成し、膜を形成する工程である。液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、溶媒を蒸発させたり、重合体中のアミック酸又はアミック酸エステルの熱イミド化を行ったりすることができる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができ、複数回行ってもよい。液晶配向剤の溶媒を除去する温度としては、例えば40~180℃で行うことができる。プロセスを短縮する観点で、40~150℃で行ってもよい。焼成時間としては特に限定されないが、1~10分又は、1~5分が挙げられる。重合体中のアミック酸又はアミック酸エステルの熱イミド化を行う場合には、上記有機溶媒を除去する工程の後、例えば150~300℃、又は150~250℃の温度範囲で焼成する工程ができる。焼成時間としては特に限定されないが、5~40分、又は、5~30分の焼成時間が挙げられる。
焼成後の膜状物の厚さは、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
【0101】
<工程(3):工程(2)で得られた膜に配向処理する工程>
工程(3)は、場合により、工程(2)で得られた膜に配向処理する工程である。即ち、IPS方式又はFFS方式等の水平配向型の液晶表示素子では該塗膜に対し配向能付与処理を行う。一方、VA方式又はPSAモード等の垂直配向型の液晶表示素子では、形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。液晶配向膜の配向処理方法としては、ラビング処理法、光配向処理法が好適である。光配向処理法としては、上記膜状物の表面に、一定方向に偏向された放射線を照射し、場合により、好ましくは、150~250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向性(液晶配向能ともいう)を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100~800nmの波長を有する紫外線又は可視光線を用いることができる。なかでも、好ましくは100~400nm、より好ましくは、200~400nmの波長を有する紫外線である。
【0102】
上記放射線の照射量は、1~10,000mJ/cm2が好ましい。なかでも、100~5,000mJ/cm2が好ましい。また、放射線を照射する場合、液晶配向性を改善するために、上記膜状物を有する基板を、50~250℃で加熱しながら照射してもよい。このようにして作製した上記液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
更に、上記の方法で、偏光された放射線を照射した液晶配向膜に、水や溶媒を用いて、接触処理するか、放射線を照射した液晶配向膜を加熱処理することもできる。
【0103】
上記接触処理に使用する溶媒としては、放射線の照射によって膜状物から生成した分解物を溶解する溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等が挙げられる。なかでも、汎用性や溶媒の安全性の点から、水、2-プロパンール、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルが好ましい。より好ましいのは、水、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルである。溶媒は、1種類でも、2種類以上組み合わせてもよい。
【0104】
上記の放射線を照射した塗膜に対する加熱処理は、50~300℃で1~30分とすることが好ましく、120~250℃で1~30分とすることがより好ましい。
【0105】
<工程(4):液晶セルを作製する工程>
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置する。具体的には以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置する。次いで、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶組成物を注入充填して膜面に接触した後、注入孔を封止する。
【0106】
また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶組成物を滴下する。その後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせて液晶組成物を基板の全面に押し広げて膜面に接触させる。次いで、基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化する。いずれの方法による場合でも、更に、用いた液晶組成物が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
なお、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交又は逆平行となるように対向配置される。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。
【0107】
そして、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0108】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。また、上記液晶配向剤に含まれる重合体組成物は、位相差フィルム用の液晶配向膜、走査アンテナや液晶アレイアンテナ用の液晶配向膜又は透過散乱型の液晶調光素子用の液晶配向膜、或いはこれら以外の用途、例えばカラーフィルタの保護膜、フレキシブルディスプレイのゲート絶縁膜、基板材料にも用いることができる。
【実施例】
【0109】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下における化合物の略号及び各特性の測定方法は、次のとおりである。また、「TMS」は、トリメチルシリル基を表す。
(テトラカルボン酸二無水物)
CA-1:下記式(CA-1)で表される化合物
(ジアミン)
DA-1:下記式(DA-1)で表される化合物
(ヒドロキシアルキルアミド化合物)
Add-1、Add-2:それぞれ、下記式(Add-1)、(Add-2)で表される化合物
(添加剤)
Add-C1、Add-C2:それぞれ、下記式(Add-C1)、(Add-C2)で表される化合物
Add-S1:下記式(Add-S1)で表される化合物
(有機溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
【0110】
【0111】
<1H-NMRの測定>
装置:フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT-NMR)「AVANCE III」(BRUKER製)500MHz。
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド([D6]-DMSO)。標準物質:テトラメチルシラン。
<粘度の測定>
溶液の粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)を用いて、温度25℃で測定した。
<分子量の測定>
分子量は常温GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド換算値として数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。
GPC装置:GPC-101(昭和電工社製)、カラム:GPC KD-803、GPC KD-805(昭和電工社製)の直列、カラム温度:50℃、溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)、流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0112】
<<ヒドロキシアルキルアミド化合物の合成>>
<合成例1(Add-1)>
以下に示す経路に従って化合物(Add-1)を合成した。
【0113】
(第1工程 化合物(1a)の合成)
【化38】
4,4’-ビフェノール(9.30g、50.0mmol)に対し、4-クロロ酪酸エチル(18.1g、120mmol、2.4当量)、炭酸カリウム(20.7g、150mmol)、ヨウ化カリウム(0.830g、5mmol)、及びDMF(93.0g)を加え、100℃で20時間加熱した。反応終了後、炭酸カリウムを濾過したろ液へ水(344g)を加えて結晶を析出させ、ろ過により化合物(1a)を取り出した。化合物(1a)はそのまま次工程に使用した。
【0114】
(第2工程 化合物(2a)の合成)
【化39】
水酸化カリウム(16.8g、300mmol)を水(117g)で溶解させた溶液と、エタノール(46.5g)の混合溶液に、上記で得られた化合物(1a)を全量投入し、80℃で20時間撹拌し、加水分解反応を行った。反応終了後、2規定塩酸(200mL、400mmol)を加えて中和したところ結晶が析出した。ろ過により回収後、水(195g)で4回、及びヘキサン(195g)でケーキ洗浄後に減圧乾燥させることで、化合物(2a)(15.8g、44.1mmol、2段階収率:88.2%)を得た。
【0115】
(第3工程 化合物(3a)の合成)
【化40】
化合物(2a)(3.20g、8.92mmol)に対し、トルエン(28.8g)、DMF(10.0mg)、及びオキザリルクロリド(3.39g、26.7mmol)を加え、60℃で4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮して化合物(3a)を得た。化合物(3a)はそのまま次工程に使用した。
【0116】
(第4工程 化合物(4a)の合成)
【化41】
上記で得られた化合物(3a)の全量を塩化メチレン(93.3g)に溶解させて300mLの4つ口フラスコへ移し、氷浴下でトリエチルアミン(3.61g、35.7mmol)とジエタノールアミンのトリメチルシリル保護体(4.45g、17.8mmol)の混合物を15分かけて滴下し、アミド化を実施した。なお、ジエタノールアミンのトリメチルシリル保護体は、WO2009/046536号に記載の方法を参考にして合成した。滴下終了後1時間撹拌させた後、水(32.4g)を加えて分液洗浄を行った。有機層を再度水(32.4g)で分液洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウム(10g)で脱水し、減圧乾燥することでオイル状の化合物(4a)(6.68g、8.13mmol、2段階収率:91.1%)を得た。
【0117】
(第5工程 Add-1の合成)
【化42】
上記で得られた化合物(4a)(6.68g、8.13mmol)に対し、アセトニトリル(66.8g)、酢酸(3.34g)、及びメタノール(33.0g)を加えて40℃で48時間加熱した。反応終了後、溶媒を留去後に乾燥を行い、Add-1(4.17g、7.83mmol、収率:96.2%)を得た。
以下に示す
1H-NMRの結果から、この化合物がAdd-1であることを確認した。
1H-NMR(500MHz,[D
6]-DMSO):δ=7.52(d,4H,J=8.5Hz),6.99(d,4H,J=8.5Hz),4.70(br,4H),4.00(t,4H,J=6.4Hz),3.52-3.47(m,8H),3.40-3.35(m,8H),2.52(t,4H,J=7.2Hz),1.95(quin,4H,J=6.6Hz)
【0118】
<合成例2(Add-2)>
以下に示す経路に従って化合物(Add-2)を合成した。
【0119】
(第1工程 化合物(1b)の合成)
【化43】
4,4’-ビフェノールの代わりに2,2’-ビフェノールを9.27g(49.8mmol)用いた以外は、上記化合物(1a)の合成と同様の方法にて実施し、化合物(1b)を得た。
【0120】
(第2工程 化合物(2b)の合成)
【化44】
化合物(1a)の代わりに化合物(1b)を用いた以外は、化合物(2a)の合成と同様の方法にて実施し、化合物(2b)を16.8g(46.9mmol、2段階収率:94.1%)得た。
【0121】
(第3工程 化合物(3b)の合成)
【化45】
化合物(2a)の代わりに化合物(2b)を3.55g(9.90mmol)用いた以外は、化合物(3a)の合成と同様の方法にて実施し、化合物(3b)を得た。
【0122】
(第4工程 化合物(4b)の合成)
【化46】
化合物(3a)の代わりに化合物(3b)を用いた以外は、化合物(4a)の合成と同様の方法にて実施し、化合物(4b)を7.60g(9.25mmol、2段階収率:93.4%)で得た。
【0123】
(第5工程 Add-2の合成)
【化47】
化合物(4a)の代わりに化合物(4b)を用いた以外は、(Add-1)の合成と同様の方法にて実施し、Add-2を4.90g(9.20mmol、収率:99.5%)で得た。
以下に示す
1H-NMRの結果から、この化合物がAdd-2であることを確認した。
1H-NMR(500MHz,[D
6]-DMSO):δ=7.29(t,2H,J=8.2Hz),7.16(d,2H,J=7.9Hz),7.05(d,2H,J=8.2Hz),6.97(t,2H,J=7.3Hz),4.70(br,4H),3.94(t,4H,J=6.5Hz),3.46-3.42(m,8H),3.32-3.27(m,8H),2.31(t,4H,J=8.0Hz),1.77(quin,4H,J=7.1Hz)
【0124】
<<液晶配向剤の調製>>
<実施例1>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-1(14.3g、50.0mmol)及びNMP(145g)を加えて、窒素雰囲気下、室温で撹拌して溶解させた。その後、CA-1(10.5g、48.0mmol)及びNMP(36.4g)を加えて、50℃で16時間撹拌して、濃度12%のポリアミック酸(PAA-1)の溶液(粘度:525mPa・s)を得た。このポリアミック酸(PAA-1)のMnは14,800、Mwは32,500であった。
上記ポリアミック酸(PAA-1)の溶液(5.63g)にNMP(4.61g)、BCS(3.75g)、Add-S1(1質量%NMP溶液、0.680g)、及びAdd-1(10質量%NMP溶液、0.340g)を加え、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(AL-1)を得た。
【0125】
<実施例2>
上記ポリアミック酸(PAA-1)の溶液(5.63g)にNMP(4.28g)、BCS(3.75g)、Add-S1(1質量%NMP溶液、0.680g)、及びAdd-1(10質量%NMP溶液、0.680g)を加え、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(AL-2)を得た。
<実施例3>
上記ポリアミック酸(PAA-1)の溶液(5.63g)にNMP(4.61g)、BCS(3.75g)、Add-S1(1質量%NMP溶液、0.680g)、及びAdd-2(10質量%NMP溶液、0.340g)を加え、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(AL-3)を得た。
<実施例4>
上記ポリアミック酸(PAA-1)の溶液(5.63g)にNMP(4.28g)、BCS(3.75g)、Add-S1(1質量%NMP溶液、0.680g)、及びAdd-2(10質量%NMP溶液、0.680g)を加え、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(AL-4)を得た。
【0126】
<比較例1>
上記ポリアミック酸(PAA-1)の溶液(5.63g)にNMP(4.61g)、BCS(3.75g)、Add-S1(1質量%NMP溶液、0.680g)、及びAdd-C1(10質量%NMP溶液、0.340g)を加え、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(AL-5)を得た。
<比較例2>
上記ポリアミック酸(PAA-1)の溶液(5.63g)にNMP(4.28g)、BCS(3.75g)、Add-S1(1質量%NMP溶液、0.680g)、及びAdd-C1(10質量%NMP溶液、0.680g)を加え、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(AL-6)を得た。
<比較例3>
上記ポリアミック酸(PAA-1)の溶液(5.63g)にNMP(4.95g)、BCS(3.75g)、Add-S1(1質量%NMP溶液、0.680g)、及びAdd-C2(0.0338g)を加え、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(AL-7)を得た。
<比較例4>
上記ポリアミック酸(PAA-1)の溶液(5.63g)にNMP(4.95g)、BCS(3.75g)、Add-S1(1質量%NMP溶液、0.680g)、及びAdd-C2(0.0675g)を加え、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(AL-8)を得た。
<比較例5>
上記ポリアミック酸(PAA-1)の溶液(5.63g)にNMP(4.95g)、BCS(3.75g)、及びAdd-S1(1質量%NMP溶液、0.680g)を加え、室温で3時間撹拌することで、液晶配向剤(AL-9)を得た。
【0127】
<ラビング耐性の評価>
始めに全面にITO電極が付いたガラス基板を準備した。基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板であり、基板上の全面には膜厚35nmのITO電極が形成されている。次に、上記実施例及び比較例で得られた液晶配向剤AL-1~AL-9を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板のITO面に、スピンコート法にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の赤外線加熱炉で20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させてポリイミド膜を得た。このポリイミド膜を、レーヨン布でラビング処理(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した。本基板を顕微鏡にて観察を行い、膜面にラビング処理によるスジや削れカスが全く見られなかったものを「◎」、わずかにカスが見えたものを「〇」、酷いスジや削れカスがみられたものを「×」と定義して評価を行った。
【0128】
<異方性の評価>
上記ラビング耐性の評価と同様にしてラビング処理まで行った基板に対し、液晶配向膜評価システム(レイ・スキャン LYS-LH30S-1A)(モリテックス社製)を用いて異方性の評価を行った。異方性が0.15以上であるものを「◎」、0.1以上0.15未満であるものを「〇」、0.1未満であるものを「×」と定義して評価を行った。
【0129】
<シール密着性評価用の液晶セルの作製>
始めに全面にITO電極が付いたガラス基板を準備した。基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板であり、基板上の全面には膜厚35nmのITO電極が形成されている。次に、上記実施例及び比較例で得られた液晶配向剤AL-1~AL-9を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板のITO面に、スピンコート法にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の赤外線加熱炉で20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させてポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング処理(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して10°傾いた方向)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去し、80℃で10分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。次に、一方の基板の液晶配向膜面に4μmのスペーサーを散布し、もう一方の基板の液晶配向膜面上には、シール剤(723K1)(協立化学産業社製)を塗布し、これらの基板の液晶配向膜面が向き合うように、かつ基板をラビング方向が逆方向になるように貼り合わせを行った。その際、両基板端が1cm重複するようにし、またシール剤の塗布量は、貼り合わせ後のシール剤の直径が3mmになるように、かつ基板が重複する領域の中心部にくるように調整した。その後、貼り合わせ後の基板に、照度20mW/cm2のメタルハライドランプを用いて、365nmの波長換算で3J/cm2の紫外線を照射し、その後、熱循環型クリーンオーブンにて120℃で60分間加熱処理をして、密着性の評価用のセルを作製した。
【0130】
<シール密着性の評価>
シール密着性の評価は、卓上型精密万能試験機(AGS-X 500N)(島津製作所社製)を用いて行った。具体的には、得られたセルの上下基板の端の部分を固定した後、両基板の重複部分を上側から毎秒5mmの速度で押し込みを行い、剥離する際の圧力(N)を測定した。そして、計測したシール剤の直径より見積もった面積(cm2)で圧力(N)を規格化した値を用いてシール密着性を評価した。評価は、破断強度の値が大きいものほど密着性に優れる、即ち、本評価に優れるとした。圧力が1.5N/cm2以上であるものを「〇」、1.5N/cm2未満であるものを「×」と定義して評価を行った。
【0131】
<電圧保持率評価用の液晶セルの作製>
始めに電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には膜厚35nmのITO電極が形成されており、電極は縦40mm、横10mmのストライプパターンである。
次に、上記実施例及び比較例で得られた液晶配向剤AL-1~AL-9を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板に、スピンコート法にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の赤外線加熱炉で20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させてポリイミド膜付き基板を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去し、80℃で10分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に4μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板をラビング方向が逆方向、かつ膜面が向き合うようにして張り合わせた。その後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネガ型液晶MLC-7026-100(メルク社製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから評価に用いた。
【0132】
<電圧保持率の評価>
上記液晶セルに60℃の温度下で1Vの電圧を60μsec印加し、166.7msec後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として算出した。電圧保持率の値が高いほど良好である。なお、液晶表示素子の電気特性の1つである電圧保持率が上昇すると、液晶表示素子の表示不良の1つである線焼き付きが発生しにくくなることが知られている。電圧保持率が75%以上であるものを「◎」、50%以上75%未満であるものを「〇」、50%未満であるものを「×」と定義して評価を行った。
【0133】
<FFS駆動液晶セルの作製>
フリンジフィールドスィッチング(Fringe Field Switching:FFS)モード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製した。
始めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたITO電極が形成されていた。第1層目の対向電極の上には第2層目として、CVD(化学蒸着)法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されていた。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素が形成されていた。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmであった。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されていた。
第3層目の画素電極は、中央部分が内角160°で屈曲した幅3μmの電極要素が6μmの間隔を開けて平行になるように複数配列された櫛歯形状を有しており、1つの画素は、複数の電極要素の屈曲部を結ぶ線を境に第1領域と第2領域を有していた。
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっていた。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が-10°の角度(時計回り)をなすように形成されていた。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されていた。
次に、上記実施例及び比較例で得られた液晶配向剤AL-1~AL-9を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板と裏面にITO膜が成膜されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板に、スピンコート法にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の赤外線加熱炉で20分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して10°傾いた方向)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去し、80℃で10分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。これら2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い、ラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた。その後、シール剤を硬化させて、セルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネガ型液晶MLC-7026-100(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから評価に使用した。
【0134】
<長期交流駆動による残像評価>
上記で作製した液晶セルを用い、60℃の恒温環境下、周波数60Hzで±6Vの交流電圧を120時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
放置の後、液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1画素の第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度Δとして算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し同様の角度Δを算出した。
第1画素の角度Δと第2画素の角度Δの平均値が0.6°未満であるとき、特に残像特性に優れている、即ち「◎」とし、0.6°以上1.0°未満であるものを「〇」、1.0°以上であるものを「×」と定義して評価を行った。
【0135】
【0136】
表1に示されるように、本発明の(B)成分であるヒドロキシアルキルアミド化合物Add-1~Add-2を含む液晶配向剤を用いた場合(実施例1~4)は、(B)成分を含まない液晶配向剤を用いた場合(比較例1~5)に比べて、ラビング耐性に優れ、かつ、異方性の発現も良好である。更には、シール密着性や電圧保持率や残像特性においても良好である。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、IPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子に代表される、種々の液晶表示素子に好適に用いることができる。そして、これらの表示素子は、表示を目的とする液晶ディスプレイに限定されず、さらには、位相差フィルム用の液晶配向膜、走査アンテナや液晶アレイアンテナ用の液晶配向膜又は透過散乱型の液晶調光素子用の液晶配向膜、或いはこれら以外の用途、例えばカラーフィルタの保護膜、フレキシブルディスプレイのゲート絶縁膜、基板材料にも用いることができる。
【0138】
なお、2020年11月13日に出願された日本特許出願2020-189724号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。