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特許7318841セラミックハニカム構造体及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】セラミックハニカム構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20230725BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20230725BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20230725BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
C04B37/00 A
F01N3/022 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023514699
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2022035221
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2021156546
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(74)【代理人】
【識別番号】100168206
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 健二
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 俊二
(72)【発明者】
【氏名】清水 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】石澤 俊崇
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187044(JP,A)
【文献】特開昭61-026572(JP,A)
【文献】特開昭60-141667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
B01D 46/00-46/90
B01D 53/00-53/12
B01D 53/34-53/96
C04B 35/00-35/84
C04B 37/00-37/04
F01N 3/00-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体の隔壁により仕切られた軸方向に貫通する複数の流路を有するとともに、前記流路の端部に目封止部が配設された複数のハニカムセグメントと、前記複数のハニカムセグメントの外壁同士を接合する接合材層とを備え、前記接合材層が、骨材となる炭化珪素粒子と、前記炭化珪素粒子を結合する結合相とを有し、前記結合相が、少なくともコーディエライト相とスピネル相とを含み、前記コーディエライト相のモル比M1[=コーディエライト相/(コーディエライト相+スピネル相)]が0.50以上1.0未満であり、前記結合相中の(コーディエライト相+スピネル相)の含有率が50質量%以上であることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項2】
前記結合相が、クリストバライト、ムライト、フォルステライトからなる群から選ばれた少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のセラミックハニカム構造体。
【請求項3】
前記接合材層の熱伝導率が0.1~4.0 W/m・Kであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックハニカム構造体。
【請求項4】
前記接合材層の気孔率が50~70%であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックハニカム構造体。
【請求項5】
炭化珪素粒子100質量部に対して、アルミナ源粒子及びマグネシア源粒子を合計で5~25質量部含む結合材と、有機バインダーとを配合し、水を添加して混合及び混錬して得られたスラリーを、前記ハニカムセグメントの外壁に塗布して前記ハニカムセグメントの外壁同士を接合し、乾燥後、1100~1350℃の範囲で、大気雰囲気下で焼成することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記結合材が、無機バインダーをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記無機バインダーが、コロイダルシリカ、及び/又はコロイダルアルミナであることを特徴とする請求項6に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記結合材が、造孔材をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記結合材が、スピネル粒子、ムライト粒子、フォルステライト粒子からなる群から選ばれた少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記アルミナ源粒子及び前記マグネシア源粒子を、モル比M2[=(Al2O3)/(Al2O3+ MgO)]が0.30~0.60で配合する
ことを特徴とする請求項5に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
前記結合材のアルミナ源粒子がアルミナ粒子又は水酸化アルミニウム粒子であり、マグネシア源粒子が酸化マグネシウム粒子又は水酸化マグネシウム粒子であることを特徴とする請求項5に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記炭化珪素粒子の粒子径D90及び粒子径D10の比D90/D10が1以上10未満である[ただし、粒子径D10及び粒子径D90は、それぞれ、粒子径と累積粒子体積との関係を示す曲線において、全粒子体積の10%に相当する累積粒子体積での粒子径、及び全粒子体積の90%に相当する累積粒子堆積での粒子径である。]ことを特徴とする請求項5に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中の粒子状物質(Particulate Matter(以下、「PM」という場合がある。))等を除去し、排気ガスを浄化するためのセラミックハニカムフィルタに用いられるセラミックハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるNOxやPMが大気中に放出されると人体や環境に悪影響を与えるおそれがあるため、排気装置としてディーゼルエンジンの排気管の途中に、NOx触媒を担持したハニカム構造体、及びPMを捕集するためのセラミックハニカムフィルタを装着することが従来から行われている。排気ガス中のPMを捕集し排気ガスを浄化するためのセラミックハニカムフィルタの一例を図3(a)及び図3(b)に示す。セラミックハニカムフィルタ500は、複数の流路53a、53bを形成する多孔質の隔壁52と外周壁51とからなるセラミックハニカム構造体510と、流入側封止流路53aの排気ガス流入側端面55a及び流出側封止流路53bの流出側端面55bをそれぞれ市松模様に交互に封止する流入側封止部56a及び流出側封止部56bとからなる。排気ガスは、図3(b)に点線矢印で示すように、排気ガス流入側端面55aに開口している流出側封止流路53bから流入し、隔壁52の表面及び内部に存在する連通孔を通過し、流出側端面55bに開口している流入側封止流路53aから排出される。排気ガスが隔壁52の表面及び内部に存在する連通孔を通過する際に、排気ガス中のPMが捕集され排気ガスの浄化が行われる。捕集されたPMは、その堆積量が所定の量になると燃焼して再生される。このようなセラミックハニカム構造体は、その使用環境が過酷になってきており、その構成材料として、耐熱衝撃性に優れる炭化珪素(SiC)粒子のような耐火性粒子を使用することが知られている。
【0003】
上記セラミックハニカム構造体では、再生時の不均一な加熱、PMの異常燃焼に伴う局部的な発熱、排気ガスの急激な温度変化による熱衝撃などによって、セラミックハニカム構造体内部に不均一な温度分布が生じて熱応力が作用し、クラックや破壊等の欠陥や溶損を発生させる問題がある。このような問題に対して、図1に示すように、複数のハニカムセグメント111を接合材層19によって一体的に接合することで、熱応力を分散緩和させる機能を持たせた分割構造のセラミックハニカム構造体110からなるセラミックハニカムフィルタ100が提案されている。
【0004】
例えば、特開平8-28246号は、長手方向に沿って並列する複数の流路を有し、かつこれらの流路の各端面は、それぞれ市松模様状に目封止されていると共に、ガスの入側と出側とでは開閉が逆の関係にあり、そして、これらの流路の隣接するものどうしは、多孔質な隔壁を通じて互いに通気可能にしたハニカムセグメント部材を、複数個結束させて集合体としたセラミックハニカム構造体において、前記各ハニカムセグメント部材の相互間に、少なくとも無機繊維、無機バインダー、有機バインダー及び無機粒子からなる接合材を充填、乾燥し、硬化して接合材層を形造り、その接合材層を介して各ハニカムセグメント部材が一体に接着されたセラミックハニカム構造体を開示している。
【0005】
国際公開第2006/098191号は、耐熱衝撃性に優れ、特にフィルタ再生時におけるクラック等の欠陥の発生が確実に抑制されたセラミックハニカム構造体として、複数のハニカムセグメントを接合する接合材層の外側部分(ハニカムセグメントの接合面との界面からそれぞれ全体の層厚の20%に相当する長さだけ離れた箇所までの部分)の気孔率が、外側部分より内方に位置する中心部分の気孔率よりも小さいセラミックハニカム構造体を開示している。国際公開第2006/098191号は、前記接合材層が、無機繊維(例えば、アルミノシリケート繊維)、無機バインダー(例えば、コロイダルシリカ、粘土)、無機粒子(例えば、炭化珪素)、及び水を混練してなる接合材により形成されると記載している。
【0006】
国際公開第2013/125713号は、フィルタの大型化に伴って再生時に発生する熱応力が増大しても、耐熱衝撃性が更に向上されたセラミックハニカム構造体として、一方の端面から他方の端面まで延び流体の流路を区画形成する多孔質の隔壁、及び最外周に位置し前記隔壁を取り囲むように配設された外周壁を有するとともに、所定の前記流路の一方の端部と残余の前記流路の他方の端部とに配設された目封止部を有する複数のハニカムセグメントと、前記複数のハニカムセグメントを、前記ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合する複数の気孔を有する接合材層とを備え、前記接合材層の前記気孔の全数の60%以上が、最大径を最小径で割ったときの値が1.2以下の気孔であるセラミックハニカム構造体を開示している。国際公開第2013/125713号は、前記接合材層が、骨材として炭化珪素65質量部、造孔材として発泡樹脂5質量部、コロイダルシリカ20質量部、カルボキシメチルセルロース0.5質量部、アルミノシリケートファイバー5質量部、分散剤0.1質量部、及び水を混合及び混錬して得られる接合材により形成されると記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、セラミックハニカム構造体としては更なる耐熱衝撃性の向上が強く望まれているが、特開平8-28246号、国際公開第2006/098191号、及び国際公開第2013/125713号に記載された接合材層を介してハニカムセグメント部材が一体に接着されたセラミックハニカム構造体は、フィルタとしての使用時や再生時に局所的に熱応力が発生した場合、接合材層の強度が不十分な場合があり、接合材層の接合強度のさらなる向上が望まれている。
【0008】
従って本発明の目的は、接合材層を介してハニカムセグメント部材が一体に接着されたセラミックハニカム構造体において、再生時の不均一な加熱、PMの異常燃焼に伴う局部的な発熱、排気ガスの急激な温度変化による熱衝撃などによって、セラミックハニカム構造体に熱応力が発生した場合であっても、従来と同等の熱応力緩和機能を有するとともに、優れた強度を有するセラミックハニカム構造体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、ハニカムセグメント部材を接合している接合材層の接合材原料に着目して、前記接合材層が、骨材となる炭化珪素粒子と炭化珪素粒子を結合する結合相とを有し、結合相が少なくともコーディエライト相とスピネル相とを特定のモル比で含むことにより、優れた熱応力緩和機能及び優れた強度を発揮することを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明のセラミックハニカム構造体は、多孔質体の隔壁により仕切られた軸方向に貫通する複数の流路を有するとともに、前記流路の端部に目封止部が配設された複数のハニカムセグメントと、前記複数のハニカムセグメントの外壁同士を接合する接合材層とを備え、前記接合材層が、骨材となる炭化珪素粒子と、前記炭化珪素粒子を結合する結合相とを有し、前記結合相が、少なくともコーディエライト相とスピネル相とを含み、前記コーディエライト相のモル比M1[=コーディエライト相/(コーディエライト相+スピネル相)]が0.50以上1.0未満であり、前記結合相中の (コーディエライト相+スピネル相)の含有率が50質量%以上であることを特徴とする。
【0011】
前記結合相は、クリストバライト、ムライト、フォルステライトからなる群から選ばれた少なくとも一種をさらに含んでもよい。
【0012】
前記接合材層の熱伝導率が0.1~4.0 W/m・Kであるのが好ましい。
【0013】
前記接合材層の気孔率は50~70%であるのが好ましい。
【0014】
セラミックハニカム構造体を製造する本発明の方法は、炭化珪素粒子100質量部に対して、アルミナ源粒子及びマグネシア源粒子を合計で5~25質量部含む結合材と、有機バインダーとを配合し、水を添加して混合及び混錬して得られたスラリーを、前記ハニカムセグメントの外壁に塗布して前記ハニカムセグメントの外壁同士を接合し、乾燥後、1100~1350℃の範囲で、大気雰囲気下で焼成することを特徴とする。
【0015】
前記結合材は、無機バインダーをさらに含むのが好ましい。
【0016】
前記無機バインダーは、コロイダルシリカ、及び/又はコロイダルアルミナであるのが好ましい。
【0017】
前記結合材は、造孔材をさらに含んでもよい。
【0018】
前記結合材は、スピネル粒子、ムライト粒子、フォルステライト粒子からなる群から選ばれた少なくとも一種をさらに含んでもよい。
【0019】
前記アルミナ源粒子及び前記マグネシア源粒子は、モル比M2[=(Al2O3)/(Al2O3+ MgO)]が0.30~0.60で配合するのが好ましい。
【0020】
前記結合材のアルミナ源粒子はアルミナ粒子又は水酸化アルミニウム粒子であるのが好ましく、マグネシア源粒子は酸化マグネシウム粒子又は水酸化マグネシウム粒子であるのが好ましい。
【0021】
前記炭化珪素粒子の粒子径D90及び粒子径D10の比D90/D10は1以上10未満である[ただし、粒子径D10及び粒子径D90は、それぞれ、粒子径と累積粒子体積との関係を示す曲線において、全粒子体積の10%に相当する累積粒子体積での粒子径、及び全粒子体積の90%に相当する累積粒子堆積での粒子径である。]のが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、接合材層を介してハニカムセグメント部材が一体に接着されたセラミックハニカム構造体において、再生時の不均一な加熱、PMの異常燃焼に伴う局部的な発熱、排気ガスの急激な温度変化による熱衝撃などによって、セラミックハニカム構造体に熱応力が発生した場合であっても、従来と同等の熱応力緩和機能を有するとともに、優れた強度を有する、セラミックハニカム構造体、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のセラミックハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2(a)】セラミックハニカムセグメントを模式的に示す斜視図である。
図2(b)】図2(a)のA-A断面図である。
図3(a)】セラミックハニカムフィルタの一例を模式的に示す正面図である。
図3(b)】図3(a)のセラミックハニカムフィルタの軸方向に平行な部分断面図である。ある。
図4】実施例で用いた4点曲げ試験機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0025】
[1]セラミックハニカム構造体
本発明の実施形態におけるセラミックハニカム構造体の一例を図1図2(a)及び図2(b)に示す。セラミックハニカム構造体100は、多孔質体の隔壁12により仕切られた軸方向に貫通する複数の流路13を有するとともに、前記流路13の端部に目封止部16a,16bが配設された複数のハニカムセグメント111と、前記複数のハニカムセグメント111の外壁17同士を接合する接合材層19とを備え、前記接合材層19が、骨材となる炭化珪素粒子と、前記炭化珪素粒子を結合する結合相とを有し、前記結合相が、少なくともコーディエライト相とスピネル相とを含み、前記コーディエライト相のモル比M1[=コーディエライト相/(コーディエライト相+スピネル相)]が0.50以上1.0未満であり、前記結合層中の (コーディエライト相+スピネル相)の含有率が50質量%以上であることを特徴とする。
【0026】
[1-1]ハニカムセグメント
ハニカムセグメント111は、図2(a)及び図2(b)に示すように、多孔質体の隔壁12により仕切られた軸方向に貫通する複数の流路13と、最外周に位置する外壁17と、前記流路13の端部に配設された目封止部16a、16bとからなる。目封止部16a、16bは、それぞれ流入側封止流路13aの排気ガス流入側端部15a、及び流入側封止流路13aに隣接する流出側封止流路13bの排気ガス流出側端部15bに市松模様に交互に設けられる。なお目封止部16a、16bは、流入側端部15a又は流出側端部15bから流路中心方向に入った位置に形成されていてもよい。
【0027】
ハニカムセグメント111を構成する流路13の軸方向に垂直な断面形状は、図2(a)に示すような正方形のものに限らず、三角形、六角形、八角形等の多角形のものであっても良いし、流入側封止流路13aと流出側封止流路13bとがともに四角形だが異なる大きさを組み合わせたもの、四角形と六角形とを組み合わせたもの、四角形と八角形とを組み合わせたもの、ともに八角形だが異なる大きさを組み合わせたもののような非対称形状であっても良い。また1つのハニカムセグメント111の軸方向に垂直な断面形状は、四角形に限らず、三角形、六角形等の形状であっても良い。
【0028】
ハニカムセグメント111の材料としては、耐熱衝撃性に優れるという観点から炭化珪素(SiC)を骨材とし、珪素を結合材とした珪素-炭化珪素系複合材、酸化物を結合材とした炭化珪素-酸化物系複合材等を用いることができる。
【0029】
[1-2]接合材層
接合材層19は、図1に示すように、複数のハニカムセグメント111をこれらのハニカムセグメント111の外壁17同士が対向するように隣接して配置された状態で接合するものである。接合材層19は、骨材となる炭化珪素粒子と、炭化珪素粒子を結合する結合相とを有し、結合相が、少なくともコーディエライト相とスピネル相とを含み、前記コーディエライト相のモル比M1[=コーディエライト相/(コーディエライト相+スピネル相)]が0.50以上1.0未満であり、前記結合相中の (コーディエライト相+スピネル相)の含有率が50質量%以上である。
【0030】
結合相が、少なくともコーディエライト相とスピネル相とを50質量%以上含み、前記コーディエライト相のモル比M1[=コーディエライト相/(コーディエライト相+スピネル相)]が0.50以上1.0未満にあることで、骨材である炭化珪素粒子間の熱伝導が良好となって、接合されたハニカムセグメントへ熱が良好に伝導するので、複数のハニカムセグメント間での温度差が速やかに解消され、その結果、応力集中が緩和される。さらに、骨材となる炭化珪素粒子同士を結合する結合相の強度が十分に得られることにより、接合材層として十分に高い強度を発揮することができる。
【0031】
結合相中の(コーディエライト相+スピネル相)の含有率とは、結合相における各結晶相の質量比の合計に対する、コーディエライト相及びスピネル相の質量比の合計の割合[(コーディエライト相の質量比+スピネル相の質量)/各結晶相の質量比の合計]のことである。結合相中の(コーディエライト相+スピネル相)の含有率は55質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましく、70質量%以上であるのが最も好ましい。結合相には、コーディエライト相とスピネル相との他に、クリストバライト、ムライト、フォルステライト等その他の結晶相、及び非結晶相を合計で50質量%未満の割合で含んでも良く、40質量%未満の割合で含むことが好ましく、30質量%未満の割合で含むことがさらに好ましい。
【0032】
コーディエライト相のモル比M1とは、コーディエライト相のモル数とスピネル相のモル数から、[コーディエライト相(モル)/(コーディエライト相(モル)+スピネル相(モル))]で算出される比率のことである。コーディエライト相のモル比M1が0.50未満の場合、熱伝導が悪化して応力集中が緩和されにくくなるとともに、強度が低下する。一方、コーディエライト相のモル比M1の上限は、耐熱性を良好に保つために、0.95以下が好ましく、0.90以下がさらに好ましい。より好ましくは0.85以下であり、0.80以下が最も好ましい。
【0033】
コーディエライト相のモル比M1[=コーディエライト相/(コーディエライト相+スピネル相)]及び、結合相中の(コーディエライト相+スピネル相)の含有率は次のようにして求めることができる。まずハニカムセグメントの外壁に接合された接合材層の一部を粉末状にしてX線回折測定を行い、得られた粉末回折チャートから結晶相(コーディエライト相の(110)面、スピネル相の(311)面、クリストバライト相の(101)面、ムライト相の(110)面、フォルステライト相の(130)面)の各ピーク強度を求める。得られた各ピーク強度を各結晶相の質量に換算し、各結晶相の質量比を求める。各結晶相の質量比の合計を結晶相の合計質量比とする。結晶相の合計質量比に対する、コーディエライト相及びスピネル相の各質量比の合計の割合を結合相中の(コーディエライト相+スピネル相)の含有率とする。さらに、得られたコーディエライト相及びスピネル相の各質量比から、コーディエライト1モルの質量を585.0及びスピネル1モルの質量を142.3として、コーディエライト及びスピネルのモル数に換算し、コーディエライト相とスピネル相との合計に対するコーディエライト相のモル比M1を求める。
【0034】
接合材層19の熱伝導率が0.1~4.0 W/m・Kである場合に、接合されたハニカムセグメント111へ熱が良好に伝導し、応力集中が速やかに緩和されるので好ましい。熱伝導率が0.1 W/m・K未満の場合、熱伝導が悪化して応力集中が緩和されにくくなる。一方、熱伝導率が4.0 W/m・Kを超える場合、耐熱性が低下する場合がある。熱伝導率の下限は0.2 W/m・Kであるのが好ましく、上限は3.5 W/m・Kであるのが好ましい。上限は3.0 W/m・Kであるのがより好ましく、2.5 W/m・Kであるのがさらに好ましく、2.0 W/m・Kであるのが最も好ましい。
【0035】
接合材層19の気孔率が50~70%である場合に、接合材層19が十分に高い熱伝導性を有し、接合されたハニカムセグメントへ熱が良好に伝導するため、応力集中が緩和されるとともに、接合材層19が十分に高い強度を発揮する。気孔率が50%未満の場合、接合後に接合材を乾燥させた際に接合材が収縮して接合材層19内や接合材層19とハニカムセグメント111との界面に隙間が生じ、接合材層19の強度が低下する。一方、気孔率が70%超の場合、熱伝導が低下し、局所的に発生した熱応力がセグメント内に残留して熱応力集中が緩和されにくくなり、破損が生じやすくなる。気孔率の下限は55%であるのが好ましく、上限は65%であるのが好ましい。
【0036】
[1-3]セラミックハニカムフィルタ
例えば、図1に示すように、セラミックハニカムフィルタ100は、図2(a)及び図2(b)に示す複数のハニカムセグメント111を接合材層19によって接合一体化した後、流路13に直交する断面の外周形状が円形となるように加工し、加工後の外周面をコーティング材によって被覆して、外周壁11を形成してなる。前記断面の外周形状は、円形に限らず、楕円形、三角形、四角形、その他所望の形状であってもよい。
【0037】
流路13に形成される目封止部16a、16bは、焼成する前のハニカムセグメント成形体、又は焼成済のハニカムセグメントに対して形成しても良く、また複数のハニカムセグメントを接合する前、又は接合した後に形成しても良い。
【0038】
[2]セラミックハニカム構造体の製造方法
本発明のセラミックハニカム構造体の製造方法について、その一実施形態を説明する。
【0039】
(a) ハニカムセグメントの準備
まず、多孔質体の隔壁により仕切られた軸方向に貫通する複数の流路を有するとともに、前記流路の端部に市松模様に交互に目封止部が配設された複数のハニカムセグメントを用意する。
【0040】
(b) 接合材原料の準備
次に、接合材層となる接合材原料として、骨材となる炭化珪素粒子100質量部に対して、アルミナ源粒子及びマグネシア源粒子を合計で5~25質量部含む結合材と、有機バインダーとを配合し混合する。必要に応じ無機バインダー、造孔材等を配合してもよい。ここでアルミナ源粒子及びマグネシア源粒子は、それぞれアルミナを含む化合物の粒子及びマグネシアを含む化合物の粒子のことであり、さらにアルミナ及びマグネシアを含む化合物の粒子を含む。炭化珪素粒子は、骨材として含有し、骨材同士が結合相を介して細孔を形成するように結合される。
【0041】
結合材としてのアルミナ源粒子及びマグネシア源粒子は、結合材中に合計で5~25質量部含む。このような配合量とすることにより、結合相が少なくともコーディエライト相とスピネル相とを含むようにできる。5質量部未満の場合、炭化珪素粒子同士を結合する結合相の結合強度が低下し、接合材層の強度が低下する。一方、25質量部を超える場合、耐熱性が低下する。炭化珪素粒子100質量部に対して、アルミナ源粒子とマグネシア源粒子の合計の下限は、好ましくは6質量部、より好ましくは7質量部である。一方、上限は、好ましくは23質量部、より好ましくは20質量部である。
【0042】
アルミナ源粒子及びマグネシア源粒子は、モル比M2[=(Al2O3)/(Al2O3 + MgO)]を0.30~0.60で配合するのが好ましい。このような配合比にすることで、結合層が少なくともコーディエライト相とスピネル相とを含むようにできる。モル比M2は、アルミナ源粒子とマグネシア源粒子の配合の質量比から計算によって決定する。すなわち、アルミナ源粒子及びマグネシア源粒子中のアルミナ分(Al2O3)のモル数とマグネシア分(MgO)のモル数とを算出し、アルミナ分(Al2O3)及びマグネシア分(MgO)の合計モル数に対するアルミナ分(Al2O3)のモル数を、モル比M2[=(Al2O3)/(Al2O3 + MgO)]として表す。
【0043】
例えば、アルミナ源として酸化アルミニウム[Al(OH)3]、マグネシア源として酸化マグネシウム[Mg(OH)2]を使用した場合、酸化アルミニウム中のアルミナ分、及び酸化マグネシウム中のマグネシア分は、それぞれ
Al(OH)3=(1/2)Al2O3+(3/2)H2O、及び
Mg(OH)2=MgO+H2O
と表されるので、酸化アルミニウム1モルあたりのアルミナ分は0.5モル、酸化マグネシウム1モル中のマグネシア分は1モルと計算できる。この関係から、前述したようにアルミナ分及びマグネシア分のモル数を求め、モル比M2を求める。またアルミナ及びマグネシアの両方を含む化合物(例えば、スピネル)の粒子を用いた場合も同様に、この化合物中のアルミナ分(Al2O3)及びマグネシア分(MgO)を算出してモル比M2を求める。
【0044】
モル比M2が0.30~0.60であることで、結合相が、少なくともコーディエライト相とスピネル相とを含み、前記コーディエライト相のモル比M1[=コーディエライト相/(コーディエライト相+スピネル相)]が0.50~0.85にある接合材層が得られ、接合されたハニカムセグメントへ熱が良好に伝導することで、応力集中が緩和されるとともに、結合相の強度が十分に得られる。モル比M2が0.30未満の場合、接合材層の熱伝導が悪化して応力集中が緩和されにくくなるとともに、強度が低下する。一方、モル比M2が0.60を超える場合、耐熱性が低下する。モル比M2の下限は好ましくは0.40である。
【0045】
アルミナ源粒子の平均粒子径は1~15μmであるのが好ましい。マグネシア源粒子の平均粒子径は1~15μmであるのが好ましい。
【0046】
アルミナ源粒子はアルミナ粒子又は水酸化アルミニウム粒子であるのが好ましく、マグネシア源粒子は酸化マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、又はタルク粒子であるのが好ましい。アルミナ源粒子としてアルミナ粒子又は水酸化アルミニウム粒子、及びマグネシア源粒子として酸化マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、又はタルク粒子を用いることで、後述するように、従来よりも低い焼成温度で、かつ非酸化雰囲気を必要とせずに焼成することが可能となるので好ましい。アルミナ源粒子としてアルミナ粒子、及びマグネシア源粒子として水酸化マグネシウム粒子を結合材として用いるのが特に好ましい。結合材として、これらのアルミナ源粒子及びマグネシア源粒子以外に、アルミナ及び/又はマグネシアの化合物からなるスピネル粒子、ムライト粒子、フォルステライト粒子等を含んでも良い。
【0047】
炭化珪素粒子の粒子径D90及び粒子径D10の比D90/D10は1以上10未満であるのが好ましい。D90/D10が1未満の場合、接合材層の骨材の粒度分布がブロードとなるため骨材同士の結合が弱くなり、接合材層の強度が低下する。一方、D90/D10が10以上の場合、接合材層を接合した後に接合材を乾燥させた際に、接合材が収縮して接合材層内及び接合材層とセグメントとの間に隙間が生じ、接合材層の強度が低下する。炭化珪素粒子のメジアン粒子径D50は、5~60μmであるのが好ましい。
【0048】
なお炭化珪素粒子の粒子径D10、メジアン粒子径D50及び粒子径D90は、例えば、日機装(株)製マイクロトラック粒度分布測定装置(MT3000)を用いて測定することができる。測定された粒子径と累積粒子体積(特定の粒子径以下の粒子体積を累積した値)との関係を示す曲線において、全粒子体積の10%に相当する累積粒子体積での粒子径をD10(μm)、全粒子体積の50%に相当する累積粒子体積での粒子径をメジアン粒子径D50(μm)、及び全粒子体積の90%に相当する累積粒子堆積での粒子径をD90(μm)とする。
【0049】
有機バインダーは、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等を挙げることができる。これらの中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び/又はメチルセルロースを用いるのが好ましい。有機バインダーは、接合材原料100質量%に対して5~15質量%含有するのが好ましい。
【0050】
無機バインダーは、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等を挙げることができる。無機バインダーは、接合材原料100質量%に対して40質量%以下含有しても良い。
【0051】
造孔材は、発泡樹脂、発泡済樹脂、カーボン、吸水性樹脂、フライアッシュバルーン等を挙げることができる。これらの中でも粒子径のばらつきが小さい、発泡樹脂及び発泡済樹脂が好ましい。造孔材は、接合材原料100質量%に対して20質量%以下含有しても良い。造孔材の効果を発揮させるためには2質量%以上含有するのが好ましい。
【0052】
(c) 接合材スラリーの準備
混合した接合材原料に水を添加して混練してスラリーを形成する。水の含有量は、原料に対して20~50質量%であるのが好ましい。
【0053】
(d) セラミックハニカム構造体の作製
形成されたスラリーをハニカムセグメントの外壁に塗布し、ハニカムセグメントの互いの外壁同士が対向するように隣接して配置し、隣接するハニカムセグメント同士を圧着して接合する。このハニカムセグメント接合体を乾燥後、必要により端面、外周等の加工を施し、1100~1350℃の温度範囲で、酸化雰囲気で焼成することにより接合されたセラミックハニカム構造体を製造する。
【0054】
乾燥の方法は、特に限定されないが、熱風乾燥、マイクロ波加熱乾燥、高周波加熱乾燥等の方法を挙げることができる。
【0055】
焼成は、1100~1350℃の温度範囲で行う。このような温度範囲で焼成することで、アルミナ粒子と水酸化マグネシウム粒子とが焼結により炭化珪素粒子同士を結合する結合相となり、結合相を形成するための焼成コストを従来よりも低コストに抑えることができる。1100℃未満の場合、炭化珪素粒子と結合相との結合が不十分となり、接合材層の十分な強度を得られない。一方、1350℃を超える場合、耐熱衝撃性が低下する。本発明の方法では焼成温度を低くできるため、従来技術のように酸化を抑制するために非酸化雰囲気で行う必要が無く、酸化雰囲気で焼成を行うことができ、焼成工程におけるコスト増を抑制できる。温度の下限は1150℃であることが好ましく、1200℃であることがより好ましく、1250℃であることがさらに好ましく、1300℃であることが最も好ましい。
【0056】
次に、作製した接合されたセラミックハニカム構造体の外周部を、所望の例えば円柱状に研削加工して、加工された外周面にコーティング材を塗布して乾燥させて外周壁を形成する。コーティング材としては、シリカ、コロイダルシリカ、炭化珪素粒子等から選択される少なくとも1種に、有機バインダー、水等を混合したものを用いることができる。乾燥条件としては、例えば、80~150℃で0.5~2.0時間とする。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
実施例1及び2
(a) ハニカムセグメントの作製
ハニカムセグメント原料として炭化珪素粉末及び珪素粉末、有機バインダーとしてメチルセルロースを配合して混合し、水を添加して混錬して可塑性の坏土を作製した。この坏土を押出成形して、マイクロ波で乾燥した後、大気雰囲気中で350℃で脱脂後、1450℃でAr雰囲気で焼成し、隔壁厚さが200μm、46.5セル/cm2(300セル/平方インチ)のセル密度、断面が一辺34 mmの正方形、長さが304 mmのハニカムセグメントを得た。得られたハニカムセグメントの流路の端部に、市松模様に交互に目封止材を配設し、目封止部を形成した。
【0059】
(b) 接合材スラリーの調整
次に、接合材として、表1に示す粒径を有する炭化珪素粒子、及び結合材(アルミナ源粒子及びマグネシア源粒子)粒子と、有機バインダーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として発泡済み樹脂、及び無機バインダーとしてコロイダルシリカとを表1に示す添加量で配合し混合した。混合した接合材原料に水を添加して混練してスラリーを調整した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表1-2】
【0062】
(c) セラミックハニカム構造体の作製 調整したスラリーをハニカムセグメントの外壁に塗布し、ハニカムセグメントの互いの外壁同士が対向するように隣接して配置し、隣接するハニカムセグメント同士を圧着して、2つのハニカムセグメント111、111が接合材層19を介して接合一体化したハニカムセグメント接合体を得た。このハニカムセグメント接合体を110℃で2時間乾燥後、1300℃で酸化雰囲気で焼成して、実施例1及び2のハニカムセグメント構造体200とした。
【0063】
尚、表1において、炭化珪素粒子以外の粒子のモル比M2は、用いたアルミナ(Al2O3)と水酸化マグネシウム(MgO)とから求めたモル数の比(Al2O3)/(Al2O3 + MgO)で算出した。表2において、コーディエライトのモル比M1は、接合材層をX線回折法により測定したコーディエライト相とスピネル相との測定値から、コーディエライト (モル)/[コーディエライト(モル)+スピネル(モル)]で算出した。結合相中の(コーディエライト相+スピネル相)の含有率は、結合相における各結晶相の質量比の合計に対する、コーディエライト相とスピネル相の質量比の合計の割合で算出した。
【0064】
比較例1
実施例1と同様にハニカムセグメントを作製し、同様に目封止部を形成した。
次に、接合材として、表1に示す粒径を有する炭化珪素粒子と、有機バインダーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースと、及び無機バインダーとしてコロイダルシリカとを表1に示す添加量(炭化珪素粒子100質量部に対する配合量)で配合し混合した。混合した接合材原料に水を添加して混練してスラリーを調整した。
【0065】
調整したスラリーをハニカムセグメントの外壁に塗布し、ハニカムセグメントの互いの外壁同士が対向するように隣接して配置し、隣接するハニカムセグメント同士を圧着して、2つのハニカムセグメント111、111が接合材層19を介して接合一体化したハニカムセグメント接合体を得た。このハニカムセグメント接合体を110℃で2時間乾燥後、1300℃で酸化雰囲気で焼成して、比較例1のハニカムセグメント構造体200とした。
【0066】
得られた実施例1、2及び比較例1のハニカムセグメント構造体200を用いて、以下に示す方法により、接合材層の気孔率、熱伝導率、及び曲げ強度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0067】
(a)気孔率の測定
気孔率は、水銀圧入法により測定した。ハニカムセグメント構造体200から切り出した試験片(10 mm×10 mm×10 mm)を、Micromeritics社製オートポアIIIの測定セル内に収納し、セル内を減圧した後、水銀を導入して加圧し、加圧時の圧力と試験片内に存在する細孔中に押し込まれた水銀の体積との関係を求めるた。前記圧力を細孔径に換算し、細孔径の大きい側から小さい側に向かって積算した累積細孔容積(水銀の体積に相当)を細孔径に対してプロットし、細孔径と累積細孔容積との関係を示すグラフを得た。水銀を導入する圧力は0.5 psi(0.35×10-3 kg/mm2)とし、圧力から細孔径を算出する際の常数は、接触角=130°及び表面張力=484 dyne/cmの値を使用した。なお水銀の加圧力が1800 psi(1.26 kg/mm2、細孔径約0.1μmに相当)での累積細孔容積を全細孔容積とした。気孔率は、得られた全細孔容積の値から、炭化珪素の真比重を3.2 g/cm3として、計算によって求めた。
【0068】
(b)熱伝導率の測定
熱伝導率は、ハニカムセグメント接合体から10 mm×10 mm×0.6~2.5 mmの形状の試験片を作製し、レーザーフラッシュ法による熱拡散率測定装置(ネッチ・ジャパン、LFA467HT)を用いて測定した熱拡散率、比熱及び試験片の密度から算出した。
【0069】
(c)曲げ強度比
曲げ強度比は、ハニカムセグメント構造体200を端面から流路方向に長さ20 mmの長さで、流路方向に垂直に切断して得られた試料片を、接合材層19の部分に曲げ応力が加わるように、図4に示す4点曲げ試験機に設置し、荷重点間距離L1=20 mm、支点間距離L2=60 mmの条件で、流路方向に荷重Wを負荷して曲げ強度を測定し、比較例1の曲げ強度を1.00とした相対値で評価した。
【0070】
【表2】
【0071】
表2より、本発明の実施例1及び2のハニカムセグメント構造体は、比較例1のハニカムセグメント構造体に比べて、熱伝導性に優れ、かつ約1.2倍程度高い曲げ強度を有していることがわかる。
【要約】
多孔質体の隔壁により仕切られた軸方向に貫通する複数の流路を有するとともに、前記流路の端部に目封止部が配設された複数のハニカムセグメントと、前記複数のハニカムセグメントの外壁同士を接合する接合材層とを備え、前記接合材層が、骨材となる炭化珪素粒子と、前記炭化珪素粒子を結合する結合相とを有し、前記結合相が、少なくともコーディエライト相とスピネル相とを含み、前記コーディエライト相のモル比M1[=コーディエライト相/(コーディエライト相+スピネル相)]が0.50以上1.0未満であり、前記結合相中の(コーディエライト相+スピネル相)の含有率が50質量%以上であることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4