(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒、その製造方法およびそれを用いた炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/83 20060101AFI20230725BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230725BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230725BHJP
C07C 17/154 20060101ALI20230725BHJP
C07C 19/01 20060101ALI20230725BHJP
C07C 19/03 20060101ALI20230725BHJP
C07C 19/04 20060101ALI20230725BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230725BHJP
【FI】
B01J23/83 Z
B01J35/10 301J
B01J37/02 101C
C07C17/154
C07C19/01
C07C19/03
C07C19/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020535173
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2019002235
(87)【国際公開番号】W WO2019164345
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-07-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0022207
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バン、ジュンウプ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ド ヘウイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ギョ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】バン、ヨンジュ
(72)【発明者】
【氏名】リョウ、ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョングン
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】原 賢一
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4159968(US,A)
【文献】特開平06-211525(JP,A)
【文献】国際公開第2017/216653(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74
C07B31/00-63/04
C07C1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Feを含む触媒物質、および
CeO
2を含む担体を含み、
前記触媒物質の含量は、触媒全体の重量を基準として、
3重量%以上9重量%以下のものであり、
前記触媒の全体重量に対して、前記Feの含量は、3重量%以上3.5重量%以下のものであ
り、
前記担体の全体重量に対してCeO
2
を50重量%以上100重量%以下で含むものである、
炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒。
【請求項2】
前記触媒物質の含量は、触媒全体の重量を基準として、
3重量%以上7重量%以下のものである請求項1に記載の炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒。
【請求項3】
前記触媒物質は、Y、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタナイドおよび希土類金属からなる群から選択される1以上の成分をさらに含むものである請求項1または2に記載の炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒。
【請求項4】
前記担体の比表面積は、50m
2/g以上250m
2/g以下のものである請求項1から3の何れか一項に記載の炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒。
【請求項5】
前記担体は、Zr、Y、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、ランタナイド元素および希土類元素からなる群から選択された1以上の元素を含む複合酸化物をさらに含むものである請求項1から4の何れか一項に記載の炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒。
【請求項6】
直径が0.1mm以上1.0mm以下のものである請求項1から
5の何れか一項に記載の炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒。
【請求項7】
CeO
2を含む担体を用意するステップ、および
Feを含む触媒物質を前記担体に担持するステップを含むものである請求項1から
6のいずれか一項に記載の炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒下で行われ、炭化水素のオキシクロロ化反応を含む炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法。
【請求項9】
450℃以上550℃以下の工程温度、0.5atm以上3atm以下の圧力および2000h
-1以上20000h
-1以下の空間速度下で行われるものである請求項
8に記載の炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法。
【請求項10】
固定層反応器、流動層反応器または循環流動層反応器内で行われるものである請求項
8または
9に記載の炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法。
【請求項11】
前記オキシクロロ化反応の温度は、450℃以上530℃以下のものである請求項
8から1
0の何れか一項に記載の炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年2月23日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0022207号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒、その製造方法およびそれを用いた炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
原油価格の持続的な上昇により、安価でかつ埋蔵量の豊かな天然ガスの活用方案に関する研究は、その重要性がさらに増大しており、主に天然ガス中のメタンに対し、酸素を用いる熱分解反応および触媒を用いるカップリング反応に関する先行技術が多く報告されている。これと共にメタンの活性化のためにクロリン化合物を用いることができる従来の方案として、メタンとクロリンとを高温で熱分解する方法が、米国登録特許第4199533号、米国登録特許第4804797号、米国登録特許第4714796号および米国登録特許第4983783号などに開示されている。しかし、前記メタンのクロリンによる高温熱分解方法は、選択度の調節において単に提供される熱供給量および反応時間に依存するので、メチレンクロライドやコークスのような副産物の発生が付加的に多く生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許10-2010-0074017号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書は、炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒、その製造方法およびそれを用いた炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の一実施形態は、鉄(Fe)を含む触媒物質、およびセリウムオキサイド(CeO2)を含む担体を含み、前記触媒物質の含量は、触媒全体の重量を基準として、0.1重量%以上9重量%以下のものである炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒を提供する。
【0007】
また、本明細書の一実施形態は、セリウムオキサイド(CeO2)を含む担体を用意するステップ、および鉄(Fe)を含む触媒物質を前記担体に担持するステップを含む前記炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒の製造方法を提供する。
【0008】
また、本明細書の一実施形態は、前記炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒下で行われ、炭化水素のオキシクロロ化反応を含む炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書の一実施形態に係る炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒は、オキシクロロ化工程に用いられる場合、目的生成物の選択度を高めることができる効果を有する。
【0010】
また、本明細書の一実施形態に係る炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒は、オキシクロロ化工程に用いられる場合、一酸化炭素または二酸化炭素のような副産物の生成を抑制できる効果を有する。
【0011】
また、本明細書の一実施形態に係る炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒は、オキシクロロ化工程に用いられる場合、低い温度でも目的生成物の選択度を高めることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1から4および比較例1に係る触媒のXRDパターンを示すものである。
【
図5】実験例2に係るH
2-TPR実験結果を示す。
【
図6】実験例1から3で使用された反応器を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書について説明する。
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているとするとき、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材の間にさらに別の部材が存在する場合も含む。
【0014】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0015】
本明細書において、「触媒物質」は、触媒活性を有する「活性物質」であってもよい。
【0016】
本明細書において、 別の言及がない限り、「触媒」は、炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒であってもよい。
【0017】
本明細書において、「炭化水素のオキシクロロ化工程」は、炭化水素の水素を塩素に置換するための工程を意味し、炭化水素の酸化的クロロ化工程とも命名することができる。例えば、メタン気体(CH4)の水素を塩素に置換してクロロメタン(CH3Cl、CH2Cl2またはCHCl3)を生成する工程であってもよいし、下記化学式(I)で表されることができる。下記一般式(I)を通じて生成されたクロロメタンは、下記一般式(II)を通じて有用な化学物質製品に切り換えられる。下記一般式(I)ではクロロメタンだけでなく、一酸化炭素または二酸化炭素のような副産物が生成され得る。
【0018】
CH4+HCl+O2→クロロメタン+H2O (I)
クロロメタン→化学物質製品+HCl (II)
【0019】
本明細書では、前記一般式(I)の工程で使用される触媒で、かつ生成物のうちクロロメタンの選択度は高め、かつ一酸化炭素または二酸化炭素などの副産物の選択度は最小化することができる触媒を提供しようとする。
【0020】
本明細書の一実施形態は、鉄(Fe)を含む触媒物質、およびセリウムオキサイド(CeO2)を含む担体を含み、前記触媒物質の含量は、触媒全体の重量を基準として、0.1重量%以上9重量%以下のものである炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒を提供する。前記炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒は、触媒物質に鉄を含み、触媒物質の含量を特定の含量に調節して、担体がセリウムオキサイドを含むことによって、触媒の性能を向上させることができる。
【0021】
本明細書の一実施形態において、前記触媒物質の鉄(Fe)が含まれることによって、触媒の性能を向上させることができる。具体的に、触媒の酸化還元能力を増大するためには、触媒内の酸素空孔(oxygen vacancy)が十分に確保されなければならない。CeO2担体に鉄を担持するようになると、鉄イオン(Fe3+)が電荷補償メカニズムによって酸素空孔が豊かになり、これにより、触媒の酸化還元能力が増加するようになる。また、鉄が触媒物質に含まれることによって、炭化水素のオキシクロロ化工程で生じ得る一酸化炭素または二酸化炭素のような副産物の選択度を減らすことができる効果がある。
【0022】
本明細書は、炭化水素のオキシクロロ化反応を通じてクロロ化合物を製造するにおいて、担体としてセリウムオキサイドを含み、触媒物質に鉄を含むことによって、固定層、流動層または循環流動層反応器で使用することができる。
【0023】
また、本明細書の一実施形態に係る触媒を使用することによって、炭化水素のオキシクロロ化工程時に生じる副産物の生成を極力抑制し、目的生成物の生成を最大化しようとする。例えば、反応物がメタン(CH4)であり、目的生成物がメタンのクロロ化化合物であるCH3Cl、CH2Cl2およびCHCl3である場合、副産物であるCO2およびCOが生じるが、このとき、前記クロロ化メタンCH3Cl、CH2Cl2およびCHCl3の生成量を最大化し、副産物であるCO2およびCOの発生を最小化しようとする。この場合、有害な物質である二酸化炭素および一酸化炭素の発生量を最小化し、工程によって生じ得る危険を抑制しながら、目的生成物の生産量を増加させて工程コストの節減を誘導しようとする。
【0024】
本明細書の一実施形態において、前記炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒は、前記鉄を含む触媒物質が前記セリウムオキサイド(CeO2)を含む担体に担持されたものであってもよい。前記担持方法は、この技術の属する分野において一般的に使用される方法であれば、特に制限されず、具体的な方法については後述することにする。
【0025】
本明細書の一実施形態において、前記触媒物質に含まれる鉄は活性物質として使用することができる。具体的に、鉄が触媒物質に含まれることによって、炭化水素のオキシクロロ化工程で生じ得る一酸化炭素または二酸化炭素のような副産物の選択度を減らすことができる効果がある。
【0026】
本明細書の一実施形態において、前記触媒物質の含量は、触媒全体の重量を基準として、0.1重量%以上9重量%以下であってもよい。前記数値範囲を満足する場合、触媒物質による触媒の機能が効率的に行われることができ、触媒の非活性化現象が抑制できる効果がある。
【0027】
本明細書の一実施形態において、前記触媒物質の含量は、触媒全体の重量を基準として、1重量%以上7重量%以下であってもよい。前記数値範囲を満足する場合、触媒の酸化還元能力を増大して、優れた触媒の性能を維持することができる。前記触媒物質の含量は、触媒物質が担体に担持される程度を意味する。
【0028】
本明細書の一実施形態において、前記触媒物質は、前記鉄のほかに、イットリウム(Y)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタナイドおよび希土類金属からなる群から選択される1以上の成分をさらに含むことができる。
【0029】
本明細書の一実施形態において、前記アルカリ金属元素は、周期律表の1族のうち、水素を除く残りの元素を意味するものであり、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)またはフランシウム(Fr)であってもよい。
【0030】
本明細書の一実施形態において、前記アルカリ土類金属元素は、周期律表の2族元素を意味するものであり、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)またはラジウム(Ra)であってもよい。
【0031】
本明細書の一実施形態において、前記希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)またはルテニウム(Lu)であってもよい。
【0032】
本明細書の一実施形態において、前記触媒物質全体の重量に対して、前記鉄(Fe)の含量は、50重量%以上100重量%以下、好ましくは90重量%以上100重量%以下であってもよい。例えば、触媒物質として鉄のみが使用される場合、鉄の含量は、触媒物質全体重量に対して100重量%であり、触媒物質として鉄およびイットリウムが使用される場合、鉄の含量は、触媒物質全体重量に対して50重量%であってもよい。
【0033】
本明細書の一実施形態において、前記触媒の全体重量に対して、前記鉄(Fe)の含量は、1重量%以上7重量%以下、好ましくは1重量%以上6重量%以下、2重量%以上5重量%以下、または2.5重量%以上4重量%以下、または3重量%以上3.5重量%以下であってもよい。前記数値範囲で含まれる場合、優れた触媒の酸化還元能力を維持することができる。前述したように、CeO2担体に鉄を担持するようになると、鉄イオン(Fe3+)の電荷補償メカニズムによって酸素空孔が豊かになり、これにより、触媒の酸化還元能力が増加するようになる。しかし、多すぎる量の鉄が担持される場合、interstitial siteを占める鉄イオンが互いに固まる。このとき、interstitial compensation mechanismによって酸素空孔が減少する問題があり得る。しかし、鉄が前記数値範囲で含まれる場合、鉄が含まれない触媒に比べて副産物の生成を効果的に抑制することができ、鉄イオンが互いに固まることを防止することができるので、優れた触媒の酸化還元能力を維持することができる。
【0034】
本明細書の一実施形態において、前記担体全体重量に対してセリウムオキサイドを50重量%以上100重量%以下で含むことができる。前記数値範囲を満足するとき、担体に含まれるセリウムオキサイドの含量が多いので、セリウムオキサイドによる触媒自体の性能が改善できる。
【0035】
本明細書の一実施形態において、前記担体は、セリウムオキサイド(CeO2)の単一組成を有するものであってもよい。前記セリウムオキサイド(CeO2)の単一組成とは、前記担体がセリウムオキサイドのほかに、別の物質をほとんど含まないか、含んでいても少量含むことを意味する。例えば、前記担体全体100重量基準として前記セリウムオキサイドの含量が80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、または99重量%以上であってもよいし、最も好ましくは100重量%であってもよい。
【0036】
前記担体は、セリウムオキサイド(CeO2)の単一組成を有することは、この技術が属する分野において使用される一般的な方法によって確認することができる。例えば、X-Ray Diffraction peak patternsを確認してCeO2の存在有無を確認することができる。具体的に、(111)、(200)、(220)、(311)結晶面に該当するpeakが存在する場合、キュービック上のCeO2が存在することを確認することができる。また、Energy dispersive spectroscopy(EDS)の測定を通じてCeおよびO原子の存在有無および重量%を確認することができる。前記EDS分析は、SEM写真と共に試料の化学的組成を確認するために使用されるものである。前記セリウムオキサイドに対するEDS測定時、CeおよびO原子に該当するpeakが観察される。一方、CeおよびO原子ではない他の原子のpeakがほとんど観察されない場合、前記担体は、セリウムオキサイドの単一組成を有するものであることを確認することができる。
【0037】
本明細書の一実施形態において、前記担体は、セリウムオキサイドのみで構成されてもよい。
【0038】
本明細書の一実施形態において、前記セリウムオキサイド(CeO2)を含む担体は、粉末形状であってもよいし、粉末は球体形状であってもよいし、前記担体を含む触媒の直径については後述することにする。
【0039】
本明細書の一実施形態において、「A-B-C/CeO2触媒」は、CeO2担体に金属または金属酸化物であるA、BおよびCが担持されたことを意味することができる。
【0040】
本明細書の一実施形態において、前記担体の比表面積は、50m2/g以上250m2/g以下であってもよいし、100m2/g以上200m2/g以下、好ましくは120m2/g以上150m2/g以下であってもよい。前記数値範囲を満足する場合、触媒の活性成分との接触面積が広く確保でき、流入ガスが触媒内に伝達されるとき、物質伝達抵抗が適宜制御され、優れた原料ガスの転換率が達成できる。前記担体の比表面積は、担体の総重量(g)に対する面積(m2)を意味することができる。前記担体の比表面積は、この技術分野において一般的に使用される方法によって測定することができ、例えば、BET(Brunauer、Emmett and Teller)法によって測定することができる。これは担体表面に分子やイオンを吸着させ、その吸着量から表面積を測定する気相吸着法の一種であり、サンプルを250℃で5時間保管した後、Micromeritics ASAP 2010機械を用いて、N2 adsorption-desorption isothermを用いて測定することができる。
【0041】
本明細書の一実施形態において、前記担体は、Zr、Y、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、ランタナイド元素および希土類元素からなる群から選択された1以上の元素を含む複合酸化物をさらに含むことができる。アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、ランタナイド元素および希土類元素に関する具体的な例は、前述の通りである。
【0042】
本明細書の一実施形態において、前記複合酸化物の例は、CeZr複合酸化物(70:30)、CeZrLa複合酸化物(86:10:4)、CeZrLa複合酸化物(66:29:5)、CeZrLaY複合酸化物(40:50:5:5)、CeZrPr複合酸化物(40:55:5)、CeZrLaNdPr複合酸化物またはCeZrNdPrCa複合酸化物などがある。後段の括弧内の数字は、各元素の重量比率を意味する。
【0043】
本明細書の一実施形態において、前記炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒の直径は、0.1mm以上1.0mm以下、好ましくは0.1mm以上0.5mm以下、より好ましくは0.18mm以上0.25mm以下であってもよい。触媒の直径が0.1mmよりも小さい場合、反応器内の圧力降下現象が大きく生じ、反応物の転換率または反応速度が低下し得る。一方、触媒の直径が1.0mmを超過する場合、反応物が触媒層を通さない偏流(channeling)現象が生じ得る。前記触媒の直径は、触媒粒子の平均粒子径を意味することができる。前記触媒の直径は、この技術分野において一般的に使用される方法によって測定することができ、例えば、SEM(走査電子顕微鏡、Scanning Electron Microscopy)またはTEM(透過電子顕微鏡、Transmission Electron Microscopy)を用いて、2つ以上の触媒粒子の各直径を測定し、測定された粒子の直径の平均を平均粒子径として計算することができる。
【0044】
本明細書の一実施形態は、セリウムオキサイド(CeO2)を含む担体を用意するステップ、および鉄(Fe)を含む触媒物質を前記担体に担持するステップを含む炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒の製造方法を提供する。
【0045】
本明細書の一実施形態において、前記鉄(Fe)を含む触媒物質を前記担体に担持するステップは、初期含浸法(incipient wetness method)を用いることができ、そのほかに、別の含浸法も用いることができる。前記沈殿法では、共沈法(coprecipitation method)、均一沈殿法(homogeneous precipitation method)または連次沈殿法(sequential precipitation method)などを用いることができる。沈殿法で触媒粉末の製造時、構成要素である活性物質と担体とを同時に沈殿させることによって、粉末状の触媒が得られ、活性物質の比率を自由に調節することができ、活性物質と担体との間の相互結合力を強くして、安定性に優れた触媒粉末の製造が可能である。
【0046】
本明細書の一実施形態において、前記鉄(Fe)を含む触媒物質を前記担体に担持するステップは、鉄(Fe)を含む活性物質前駆体を含む前駆体水溶液に前記担体を入れて撹拌する方法で行うことができる。
【0047】
本明細書の一実施形態において、前記活性物質前駆体は、目的物質の種類に応じて異なってもよい。例えば、活性物質が銅である場合、活性物質前駆体は、カッパクロライドディハイドレート(Copper chloride dehydrate、CuCl2・2H2O)であり、活性物質が鉄(Fe)である場合、活性物質前駆体は、Fe(NO3)3・9H2Oであり、カリウムである場合、前駆体はカリウムクロライド(Potassium chloride、KCl)であり、ランタンである場合、前駆体はランタンクロライドヘプタハイドレート(Lanthanum chloride heptahydrate、LaCl3・7H2O)であってもよい。
【0048】
本明細書の一実施形態において、前記撹拌は、前駆体水溶液が担体によく担持できるように行われるものであって、0.5時間以上、好ましくは1時間以上行うことができる。
【0049】
本明細書の一実施形態において、炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒の製造方法は、触媒を乾燥するステップ、および触媒をか焼するステップを含むことができる。
【0050】
本明細書の一実施形態において、前記触媒を乾燥するステップは、触媒の水分を蒸発させるためのものであって、この技術が属する分野において一般的に使用される方法であれば、大きく制限されない。例えば、回転蒸発器(Rotary evaporator)を用いて水分を蒸発させ、100℃の温度で10時間以上乾燥する方法で行うことができる。
【0051】
本明細書の一実施形態において、前記触媒をか焼するステップは、担持した後、触媒に残っている前駆体物質を除去するために行われるものであって、この技術が属する分野において一般的に使用される方法であれば、大きく制限されず、例えば、100℃以上の温度で1から10時間の温度で行うことができる。前記遂行温度および遂行時間を満足する場合、前駆体物質を効果的に除去することができ、担体の相変化が起こることによって生じる耐久性低下の問題を抑制できる。
【0052】
本明細書の一実施形態は、前述した炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒下で行われ、炭化水素のオキシクロロ化反応を含む炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法を提供する。前述した炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒を適用する場合、炭化水素のオキシクロロ化化合物の生産量の増大および触媒の活性低下が低い。つまり、前述した炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒は、低温でも優れた活性を示し、低温工程に適したメリットを有する。
【0053】
本明細書の一実施形態において、前記炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法は、本明細書において、「工程」と表現することができる。
【0054】
本明細書の一実施形態において、炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒下で行われるということは、炭化水素のオキシクロロ化工程用触媒が設けられた反応器内に反応気体などを流入させて反応を誘導することであってもよい。
【0055】
本明細書の一実施形態において、炭化水素のオキシクロロ化反応は、炭化水素原料ガスの水素を塩素に置換させる反応を意味するものであり、前述の通りである。
【0056】
本明細書の一実施形態において、流入ガスは、反応器内に流入されるガスの集合体を意味するものであり、反応後、反応器の外部に排出される排出ガスとは区別されるものである。
【0057】
本明細書の一実施形態において、前記炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法は、流入ガスと前述した触媒とを接触させることによるものであってもよい。前記炭化水素の部分酸化反応は、炭化水素原料ガスおよび塩化水素ガスを含む流入ガスと触媒とを接触させることによる。前記接触の意味は、触媒理論によって説明することができる。具体的に、触媒は、如何なる活性点(active sites)または活性中心(centers)を含み、前記活性点または活性中心で触媒作用が行われるようになる。前記活性点または活性中心に流入ガスが接して触媒反応が起こるようになる。例えば、反応器に触媒を充填して前記反応器内に前記流入ガスを流通させる方法がある。
【0058】
本明細書の一実施形態において、前記流入ガスは、炭化水素原料ガス、塩化水素ガスおよび酸素ガスをさらに含むことができる。
【0059】
本明細書の一実施形態において、前記炭化水素原料ガスは、炭素および水素を含むガスであって、目的生成物の原料となるガスを意味する。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの炭素数1から16の直鎖状または分枝鎖状の飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式飽和炭化水素、単環および多環芳香族炭化水素、都市ガス、LPG、ナフサ、および灯油などの炭化水素が挙げられる。
【0060】
本明細書の一実施形態において、前記塩化水素ガス(HCl)は、塩素原子の供給源として機能することができる。
【0061】
本明細書の一実施形態において、前記流入ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴンおよび二酸化炭素からなる群から選択された1または2以上の不活性ガスをさらに含むことができる。
【0062】
本明細書の一実施形態において、前記炭化水素原料ガスに対する塩化水素ガスの体積流量の比は、1:1から10:1、好ましくは1:1から5:1、より好ましくは1:1から3:1、最も好ましくは1.5:1から2.5:1であってもよい。前記数値範囲を満足する場合、優れた触媒の活性を維持することができる。これにより、目的生成物の選択度を高く維持できるというメリットがある。
【0063】
本明細書の一実施形態において、前記流入ガスは、酸素ガスをさらに含み、前記炭化水素原料ガスに対する酸素ガスの体積流量の比は、1:1から10:1、好ましくは2:1から6:1、より好ましくは3:1から5:1であってもよい。炭化水素原料ガスに対する酸素ガスの体積流量の比が1:1よりも小さい場合、目的生成物であるクロロメタンの選択度が減少し、炭化水素原料ガスに対する酸素ガスの体積流量の比が10:1よりも大きい場合、一酸化炭素または二酸化炭素のような副産物の選択度が増加する問題があり得る。
【0064】
本明細書の一実施形態において、前記炭化水素原料ガスに対する不活性ガスの体積流量の比は、1:0.5から1:10、好ましくは1:0.5から1:5であってもよい。
【0065】
前記体積流量の比は、この技術が属する技術分野において一般的に使用される方法によって測定することができ、反応器内に流入される流入ガスの温度および圧力を調節して達成することができる。例えば、前記体積流量の比は、常温(25℃)および常圧(1atm)で測定されたものであってもよいし、この技術分野において一般的に使用される体積流量計を使用して測定することができる。
【0066】
本明細書の一実施形態において、前記工程は、450℃以上550℃以下の工程温度、0.5atm以上3atm以下の圧力および2,000h-1以上20,000h-1以下の空間速度下で行われるものであってもよい。
【0067】
本明細書の一実施形態において、前記工程は、450℃以上530℃以下、450℃以上530℃未満、450℃以上520℃以下、または450℃以上510℃以下の工程温度下で行うことができる。前記の範囲を満足する場合、副産物が生成されることを抑制することができ、目的生成物の選択度を高めることができる。例えば、炭化水素原料がメタンである場合。1)塩化水素の酸化によるCl活性化種の生成、2)メタンとCl活性化種との反応によるCH3Clへの生成、および3)生成されたCH3Clの追加的な反応またはメタンの酸化から一酸化炭素または二酸化炭素の副産物の生成の順に反応が進む。このとき、工程温度が低温である場合、反応に対する触媒の影響が支配的であるので、触媒自体の酸化還元能力によって、1)の反応のCl活性化種の生成速度が、2)の反応のCl活性化種の消耗速度よりも速くなる。しかし、温度が高温である場合、温度の影響が徐々に増加し、3)の反応の速度がより速くなるので副産物の生成が増加するようになる問題がある。
【0068】
本明細書の一実施形態では、工程条件を前記のように調節して、前述した3)の反応の速度を制御しながら、1)および2)の反応の速度を適宜維持して一酸化炭素または二酸化炭素のような副産物が生成されることを抑制しようとする。
【0069】
本明細書の一実施形態において、前記流入ガスの空間速度は、10,000ml/(h・gcat)以上50,000ml/(h・gcat)以下であってもよい。前記の範囲を満足する場合、流入ガスが十分に流動的であるので、コークスが生じることを効果的に抑制できる。
【0070】
本明細書の一実施形態において、前記炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法は、固定層反応器、流動層反応器または循環流動層反応器内で行われるものであってもよい。
【0071】
本明細書の一実施形態において、前記炭化水素のオキシクロロ化化合物の製造方法は、中和工程をさらに含むことができる。中和工程は、反応物に含まれた塩化水素気体を除去するための工程である。具体的に、前記中和工程は、反応物を炭酸ナトリウムベッド(bed)がロードされた反応器に通すことによって行うことができる。前記中和工程は、1当量の炭酸ナトリウムに2当量の塩化水素が反応して1当量の二酸化炭素気体および2当量の塩化ナトリウムを生成するものであってもよいし、下記イメージで表されることができる。
【0072】
【0073】
以下、実施例を通じて、前述した内容を説明することにする。但し、本明細書の権利範囲は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0074】
<実施例1>
担体として、セリウムオキサイド担体(CeO2)粉末(3g、Rhodia(登録商標)製、surface area130m2/g以上)を用意した。触媒物質である鉄(Fe)は下記の方法によりCeO2担体に担持された。このとき、鉄(Fe)前駆体としては、Iron(III) nitrate nonahydrate(Fe(NO3)3および9H2O)を使用した。
【0075】
前記前駆体を計算された量だけ秤量して蒸留水に溶かして前駆体溶液を製造し、前記セリウムオキサイド担体を粉末状にして入れて1時間よく撹拌した後、回転蒸発器(Rotary evaporator)を用いて水を蒸発させ、鉄をセリウムオキサイド担体に担持させた。以後、100℃の温度で約12時間以上乾燥した後、600℃の温度で6時間焼成して製造した。
【0076】
このとき、鉄(Fe)の含量が、触媒全体の重量を基準として、1.5重量%であった。
【0077】
<実施例2>
鉄の含量が、触媒全体の重量を基準として、3重量%であることを除いては、前記実施例1と同一な方法で触媒を製造した。
【0078】
<実施例3>
鉄の含量が、触媒全体の重量を基準として、4重量%であることを除いては、前記実施例1と同一な方法で触媒を製造した。
【0079】
<実施例4>
鉄の含量が、触媒全体の重量を基準として、6重量%であることを除いては、前記実施例1と同一な方法で触媒を製造した。
【0080】
<比較例1>
他の金属が担持されていないことを除いては、実施例1と同一な方法で触媒を製造した。このとき、セリウムオキサイド担体(CeO2)粉末は、実施例1で説明したものと同一なものを使用した。
【0081】
図1は、前記実施例1から4および比較例1に係る触媒のX線回折分析法(XRD、X-ray diffraction)による図である。前記X線回折分析は、Ultra X18(Rigaku corp)を用いて、40kVおよび30mAの測定条件で測定することができる。Cu K-alphaがradiation sourceとして使用され、0.02°のscanning stepで測定した。
【0082】
<実験例1:触媒の性能実験>
試験条件
前記実施例および比較例で製造された触媒の粒子の大きさは、180μmから250μmにふるいにかけて(sieve)調節した。
【0083】
図6のようなquartz材料の固定層反応器(PBR)を実験に適用した。図面の青色で表示した部分に、前記実施例および比較例に係る触媒を充填(loading)した。工程温度は、前記固定層反応器の外部に備えられたthermocoupleを用いて調節した。
【0084】
Inlet気体の組成は、CH4:O2:HCl:Ar:N2=4:1:2:3:10の体積比からなっており、反応器内の圧力を調節して、Inlet気体の体積流量(υ0)が50ml/minであり、Flow rate/catalyst weightの比率[FT/Wcat]は、30,000ml/(h・gcat)になるように調節した。前記CH4:O2:HClは反応気体(reactant)であり、前記Arは希釈剤(diluent)として作用する。
【0085】
すべての気体の条件の設定が完了した後、反応器を450℃まで予熱した後、実験を始め、生成される気体の組成をモニターリングした。
【0086】
生成される気体の濃度をGCダウンストリーム(Gas Chromatograph downstream)によって測定した。CH4、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3の濃度は、FID(Flame Ionization Detector)を通じて測定し、CH4、N2、O2、CO2およびCOの濃度は、TCD(Thermal Conductivity Detector)を通じて測定した。生成される気体の凝縮を防止するために、生成される気体を150℃まで加熱することができる。
【0087】
気体に関連する歩留まりおよび選択度は、下記数学式(1)から3によって計算することができる。流入および流出される窒素気体に関連する補正係数(α)は、下記数学式(1)を通じて計算される。
【0088】
【0089】
前記
【数2】
は、反応器に流入される窒素気体のモル数であり、前記
【数3】
は反応器から抜け出す窒素気体のモル数である。
【0090】
メタン転換率(X:conversion、%)は、下記数学式2を通じて計算される。
【0091】
【0092】
前記
【数5】
は、反応器に流入されるメタン気体のモル数であり、前記
【数6】
は、反応器から抜け出すメタン気体のモル数である。
【0093】
生成される気体の選択度(S:selectivity)は、下記数学式3を通じて計算される。
【0094】
【0095】
前記
【数8】
は、反応器から抜け出す各生成気体のモル数であり、
【数9】
は、前記生成気体の総モル数である。
【0096】
このとき、工程温度は510℃であり、反応物の転換率および生成物の選択度を表1および
図2に示した。
【0097】
【0098】
実施例1から4および比較例1を比較すると、担体CeO2に鉄を担持する場合、鉄を担持していない場合(比較例1)に比べて、CO2およびCO副産物の選択度が低いことを確認することができた。これは、鉄イオン(Fe3+)がCeO2のlatticeにincorporationされ、電荷補償メカニズム(charge compensation mechanism)によって酸素空孔(oxygen vacancy)が豊かになり、これにより、触媒の酸化還元能力が増加したからである。一方、実施例1から4を比較すると、鉄イオンの担持量に応じてメタンの転換率および副産物の選択度が変わることを確認することができた。鉄の担持量が1.5重量%である実施例1および鉄の担持量が3重量%を超過する実施例4の場合、メタンの転換率が約17.3%であった。しかし、鉄の担持量が3重量%である実施例2の場合、メタンの転換率が22.6%であり、最も高い転換率を達成することができた。これは、鉄の担持量が増加するにつれて鉄による触媒の酸化還元能力が増加できるが、鉄が担持されすぎると、鉄が互いに固まり、interstitial compensation mechanismによって酸素空孔(oxygen vacancy)が減少したからである。
【0099】
つまり、CeO2担体に鉄(Fe)が担持されるとき、クロロ化化合物の選択度は高め、副産物の選択度を減少させることができた。特に、実施例2および3による触媒が最も優れた性能を示した。
【0100】
<実験例2:触媒の還元特性変化の実験>
鉄の含量による触媒の還元性の変化を観察するために、H
2-TPR分析(H
2-Temperature Programmed Reduction、MicrotracBel Copr社BEL CAT II利用)およびXRD回折分析を行った。比較例1および実施例1から4による触媒をair条件で10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温させながら前処理した後、40℃まで冷却した。その後、5%H
2/N
2混合気体を活用して900℃まで10℃/分の速度で昇温し、H
2-TPR分析を行った。具体的に、5%H
2/Ar条件で10℃/minの昇温速度で900℃に昇温させながら、触媒を還元させた。結果を
図5に示し、XRD回折分析を実施して前記表1に示した。
【0101】
また、実施例1から実施例4を比較すると、実施例2の触媒が最も強い相互作用を示すことを確認することができた。これにより、鉄の担持量に応じて、触媒に生じる酸素空孔が変化でき、これにより、鉄と担体との間の相互作用の程度が変化することを確認することができた。
【0102】
鉄の担持量が0~3重量%に増加するほど(比較例1、実施例1および実施例2)、unit cell lattice parameterが減少することを確認することができた。これは、粒子の大きさが小さい鉄イオン(Fe3+、0.64Å)が担体であるCeO2のセリウムイオン(Ce4+、1.01Å)を置換して入り、cell shrinkageが起こるからである。Cell shrinkageが起こることは、鉄と担体のCeとの相互作用がよく生じて固形体(Fe-Ce solid solution)が生成されたからである。前記の結果から、鉄の含量が3wt%である実施例2の触媒が、鉄と担体のCeとの相互作用の程度が最も高いことを確認することができた。
【0103】
一方、鉄の含量が4wt%以上である実施例3および4の場合、鉄の含量が増加するとき、unit cell lattice parameterがむしろ増加することを確認することができた。これは鉄の量が増加し、鉄同士固まる現象が生じ、Ceとsolid solutionとをなすFeの量が減少したからである。
【0104】
H2-TPR分析の結果、低い温度で還元ピークが示される場合、触媒の酸化還元能力が良いことを意味する。鉄の担持量が0~3重量%に増加するほど(比較例1、実施例1および実施例2)還元ピークが示される温度が低くなる傾向を示す。
【0105】
これは、Fe-Ce固溶体(Fe-Ce solid solution)のFe3+およびCe4+の酸化数の差による電荷補償メカニズム(charge compensatingmechanism)によって生じた酸素空孔(oxygen vacancy)の濃度差によるものと説明することができる。つまり、Fe-Ce固溶体の生成程度と前記酸素空孔の濃度とは比例関係にある。また、前記酸素空孔が生じるようになると、触媒物質と担体との間の相互作用が強くようになり、結果として優れた触媒の酸化還元能力が得られる。
【0106】
鉄の担持量が0~3重量%に増加するほど(比較例1、実施例1および実施例2)、Fe-Ce固溶体の濃度が増加し、実施例2の触媒が最も多くの酸素空孔を有することを確認することができた。
【0107】
鉄が担持されていない比較例1の触媒は、最も高い温度で担体還元ピークが生じ、鉄の含量が3重量%である実施例2の触媒は、最も低い温度である320℃で担体還元ピークが生じた。これは鉄と担体との間の相互作用が強い場合に生じる現象であり、鉄の含量が3重量%である実施例2の触媒が最も強い相互作用が生じることを確認することができた。
【0108】
<実験例3:工程温度による実験>
工程温度による効果を比較するために、前記実施例2および3による触媒を適用して実験を進めた。物質の転換率または選択度を表2、
図3および
図4に示した。
図3および
図4は、それぞれ実施例2および実施例3による触媒を適用した実験結果を示すものである。
【0109】
【0110】
実施例7によると、工程温度が530℃超過である場合、副産物である二酸化炭素および一酸化炭素が多く生成されることを確認することができた。このような結果は、工程温度が530℃超過である場合、工程過程において、工程温度による影響が増加して生成されたCH3Clが追加的に反応するか、CH4が直接酸化して副産物である二酸化炭素および一酸化炭素が多く生成されたからである。一方、処理温度が530℃以下である場合、CH3Clが追加的に反応することを抑制するか、CH4が直接酸化することを抑制して副産物である二酸化炭素および一酸化炭素が生成されることを防止することができた。
【0111】
前記のような結果から、本明細書の一実施形態に係る触媒は、530℃以下の低温でも優れた活性を示すことを確認することができた。