(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】基板研磨装置、基板リリース方法および定量気体供給装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20230725BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B24B37/30 E
H01L21/304 622L
H01L21/304 622G
(21)【出願番号】P 2019110491
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 治
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/30
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップリング本体と、
前記トップリング本体と対向する第1面と、前記第1面の反対側の面であって基板を吸着保持することが可能な第2面と、を有する弾性膜と、
前記トップリング本体と前記弾性膜の第1面との間の空間に連通する第1ラインに設けられた第1バルブを介して前記空間を加圧および減圧することが可能な圧力調整装置と、
シリンダ内のピストンが下方に移動することにより、前記第1ラインに設けられた第2バルブを介して、前記ピストンの面積と前記ピストンのストロークに応じた一定量の気体を前記シリンダから前記空間に供給することが可能な定量気体供給装置と、を備える基板研磨装置。
【請求項2】
前記基板を前記弾性膜の第2面に吸着する時には、前記第2バルブが閉じ、前記第1バルブが開き、前記圧力調整装置が前記空間を減圧し、
前記基板を研磨する時には、前記第2バルブが閉じ、前記第1バルブが開き、前記圧力調整装置が前記空間を加圧し、
前記基板を前記弾性膜の第2面からリリースする時には、前記第1バルブが閉じ、前記第2バルブが開き、前記定量気体供給装置が前記空間に一定量の気体を供給する、請求項1に記載の基板研磨装置。
【請求項3】
錘が重力によって落下することにより、前記ピストンが下方に移動する、請求項1または2に記載の基板研磨装置。
【請求項4】
前記定量気体供給装置は、前記シリンダ、前記ピストンおよび前記錘を有し、
前記ピストンは、前記シリンダの内面と接して上下動可能であり、
前記シリンダの内部は、前記ピストンによって下部空間と上部空間とに分割され、
前記シリンダには、前記下部空間に相当する位置に第1開口が設けられ、前記上部空間に相当する位置に第2開口および第3開口が設けられ、
前記第1開口には、前記第2バルブを介して前記第1ラインと接続される第2ラインが接続され、
前記第2開口には、第3ラインが接続され、
前記第3開口には、前記錘と前記ピストンとを連結するピストンロッドが貫通し、
前記下部空間は、前記第2ラインに設けられた第3バルブが開くことによって大気開放することが可能であり、
前記上部空間は、前記第3ラインを介して減圧および大気開放することが可能である、請求項3に記載の基板研磨装置。
【請求項5】
前記基板を前記弾性膜の第2面に吸着する時、及び、前記基板を研磨する時には、前記上部空間は減圧され、かつ、前記下部空間は大気開放され、
前記基板を前記弾性膜の第2面からリリースする時には、前記上部空間は大気開放され、前記第3バルブが閉じる、請求項4に記載の基板研磨装置。
【請求項6】
トップリング本体と、
前記トップリング本体と対向する第1面と、前記第1面の反対側の面であって基板を吸着保持することが可能な第2面と、を有する弾性膜と、
前記トップリング本体と前記弾性膜の第1面との間の空間に連通する第1ラインに設けられた第1バルブを介して前記空間を加圧および減圧することが可能な圧力調整装置と、
を備え、
チャンバ内に格納されたブラダーを圧縮することにより、前記第1ラインに設けられた第2バルブを介して、前記チャンバの体積に応じた一定量の気体を前記ブラダーから前記空間に供給する、基板研磨装置。
【請求項7】
前記チャンバには、第4開口および第5開口が設けられ、
前記第4開口は、前記第2バルブを介して前記第1ラインと前記ブラダーとを接続する第4ラインが貫通しており、
前記第5開口には、第5ラインが接続され、
前記ブラダーは、前記第4ラインに設けられた第4バルブが開くことによって大気開放することが可能であり、
前記チャンバは、前記第5ラインを介して加圧および減圧することが可能である、請求項6に記載の基板研磨装置。
【請求項8】
前記基板を前記弾性膜の第2面に吸着する時、及び、前記基板を研磨する時には、前記チャンバは減圧され、前記ブラダーは大気開放され、
前記基板を前記弾性膜の第2面からリリースする時には、前記チャンバは加圧され、前記第4バルブが閉じる、請求項7に記載の基板研磨装置。
【請求項9】
トップリングの弾性膜の第2面に吸着保持された基板を前記弾性膜からリリースする基板リリース方法であって、
シリンダ内のピストンを下方に移動させることにより、前記トップリングにおけるトップリング本体と前記弾性膜の第1面との間の空間に、前記ピストンの面積と前記ピストンのストロークに応じた一定量の気体を前記シリンダから供給して、前記弾性膜と前記基板との間に隙間を生じさせる気体供給工程と、
前記隙間に流体を噴射する流体噴射工程と、を備える、基板リリース方法。
【請求項10】
錘が重力によって落下することにより、前記ピストンを下方に移動させる、請求項9に記載の基板リリース方法。
【請求項11】
トップリングの弾性膜の第2面に吸着保持された基板を前記弾性膜からリリースする基板リリース方法であって、
チャンバ内に格納されたブラダーを圧縮することにより、前記トップリングにおけるトップリング本体と前記弾性膜の第1面との間の空間に、前記チャンバの体積に応じた一定量の気体を前記ブラダーから前記空間に供給して、前記弾性膜と前記基板との間に隙間を生じさせる気体供給工程と、
前記隙間に流体を噴射する流体噴射工程と、を備える、基板リリース方法。
【請求項12】
トップリング本体と、
前記トップリング本体と対向する第1面と、前記第1面の反対側の面であって基板を吸着保持することが可能な第2面と、を有する弾性膜と、
前記トップリング本体と前記弾性膜の第1面との間の空間に連通する第1ラインに設けられた第1バルブを介して前記空間を加圧および減圧することが可能な圧力調整装置と、を備える基板保持装置に接続される定量気体供給装置であって、
シリンダ内のピストンが下方に移動することにより、前記第1ラインに設けられた第2バルブを介して、前記ピストンの面積と前記ピストンのストロークに応じた一定量の気体を前記シリンダから前記空間に供給することが可能な定量気体供給装置。
【請求項13】
トップリング本体と、
前記トップリング本体と対向する第1面と、前記第1面の反対側の面であって基板を吸着保持することが可能な第2面と、を有する弾性膜と、
前記トップリング本体と前記弾性膜の第1面との間の空間に連通する第1ラインに設けられた第1バルブを介して前記空間を加圧および減圧することが可能な圧力調整装置と、を備える基板保持装置に接続される定量気体供給装置であって、
チャンバ内に格納されたブラダーを圧縮することにより、前記第1ラインに設けられた第2バルブを介して、前記チャンバの体積に応じた一定量の気体を前記ブラダーから前記空間に供給することが可能な定量気体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板研磨装置、基板リリース方法および定量気体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トップリングのメンブレンに基板を吸着保持して研磨し、その後にメンブレンから基板をリリースする基板研磨装置が開示されている。基板のリリースは、メンブレンを加圧し、メンブレンと基板の外周部に生じた隙間に流体を噴射することによって行われる。
【0003】
メンブレンの加圧は、例えば電空レギュレータによる圧力制御が考えられる。電空レギュレータは低圧になると制御精度や応答性が悪化するため、ある程度大きな圧力でメンブレンを加圧することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
近年、半導体プロセスの微細化および高積層化に伴い、半導体デバイスが形成された基板は割れやすくなっている。そのため、基板のリリース時に電空レギュレータなどによってメンブレンに大きな圧力を与えると、基板が大きなストレスを受けて割れてしまうことがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、吸着保持した基板を安全にリリースすることができる基板研磨装置および基板リリース方法を提供すること、また、そのような基板研磨装置に接続し得る定量気体供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、トップリング本体と、前記トップリング本体と対向する第1面と、前記第1面の反対側の面であって基板を吸着保持することが可能な第2面と、を有する弾性膜と、前記トップリング本体と前記弾性膜の第1面との間の空間に連通する第1ラインに設けられた第1バルブを介して前記空間を加圧および減圧することが可能な圧力調整装置と、前記第1ラインに設けられた第2バルブを介して前記空間に一定量の気体を供給することが可能な定量気体供給装置と、を備える基板研磨装置が提供される。
【0008】
望ましくは、前記基板を前記弾性膜の第2面に吸着する時には、前記第2バルブが閉じ、前記第1バルブが開き、前記圧力調整装置が前記空間を減圧し、前記基板を研磨する時には、前記第2バルブが閉じ、前記第1バルブが開き、前記圧力調整装置が前記空間を加圧し、前記基板を前記弾性膜の第2面からリリースする時には、前記第1バルブが閉じ、前記第2バルブが開き、前記定量気体供給装置が前記空間に一定量の気体を供給する。
【0009】
望ましくは、前記定量気体供給装置は、シリンダ内のピストンに連結された錘が重力によって下方に移動することにより、前記ピストンの面積と前記ピストンのストロークに応じた一定量の気体を前記シリンダから前記空間に供給してもよい。
【0010】
具体的には、前記定量気体供給装置は、前記シリンダ、前記ピストンおよび前記錘を有し、前記ピストンは、前記シリンダの内面と接して上下動可能であり、前記シリンダの内部は、前記ピストンによって下部空間と上部空間とに分割され、前記シリンダには、前記下部空間に相当する位置に第1開口が設けられ、前記上部空間に相当する位置に第2開口および第3開口が設けられ、前記第1開口には、前記第2バルブを介して前記第1ラインと接続される第2ラインが接続され、前記第2開口には、第3ラインが接続され、前記第3開口には、前記錘と前記ピストンとを連結するピストンロッドが貫通し、前記下部空間は、前記第2ラインに設けられた第3バルブが開くことによって大気開放することが可能であり、前記上部空間は、前記第3ラインを介して減圧および大気開放することが可能であってもよい。
【0011】
より具体的には、前記基板を前記弾性膜の第2面に吸着する時、及び、前記基板を研磨する時には、前記上部空間は減圧され、かつ、前記下部空間は大気開放され、前記基板を前記弾性膜の第2面からリリースする時には、前記上部空間は大気開放され、前記第3バルブが閉じてもよい。
【0012】
また、望ましくは、前記定量気体供給装置は、チャンバ内に格納されたブラダーを圧縮することにより、前記チャンバの体積に応じた一定量の気体を前記ブラダーから前記空間に供給してもよい。
【0013】
具体的には、前記定量気体供給装置は、前記ブラダーおよび前記チャンバを有し、前記チャンバには、第4開口および第5開口が設けられ、前記第4開口は、前記第2バルブを介して前記第1ラインと前記ブラダーとを接続する第4ラインが貫通しており、前記第5開口には、第5ラインが接続され、前記ブラダーは、前記4ラインに設けられた第4バルブが開くことによって大気開放することが可能であり、前記チャンバは、前記第5ラインを介して加圧および減圧することが可能であってもよい。
【0014】
より具体的には、前記基板を前記弾性膜の第2面に吸着する時、及び、前記基板を研磨する時には、前記チャンバは減圧され、前記ブラダーは大気開放され、前記基板を前記弾性膜の第2面からリリースする時には、前記チャンバは加圧され、前記第4バルブが閉じてもよい。
【0015】
本発明の別の態様によれば、トップリングの弾性膜の第2面に吸着保持された基板を前記弾性膜からリリースする基板リリース方法であって、前記トップリングにおけるトップリング本体と前記弾性膜の第1面との間の空間に一定量の気体を供給して、前記弾性膜と前記基板との間に隙間を生じさせる気体供給工程と、前記隙間に流体を噴射する流体噴射工程と、を備える、基板リリース方法が提供される。
【0016】
前記気体供給工程では、シリンダ内のピストンに連結された錘を下方に移動させることにより、前記ピストンの面積と前記ピンストンのストロークに応じた一定量の気体を前記シリンダから前記空間に供給してもよい。
【0017】
前記気体供給工程では、チャンバ内に格納されたブラダーを圧縮することにより、前記チャンバの体積に応じた一定量の気体を前記ブラダーから前記空間に供給してもよい。
【0018】
本発明の別の態様によれば、トップリング本体と、前記トップリング本体と対向する第1面と、前記第1面の反対側の面であって基板を吸着保持することが可能な第2面と、を有する弾性膜と、前記トップリング本体と前記弾性膜の第1面との間の空間に連通する第1ラインに設けられた第1バルブを介して前記空間を加圧および減圧することが可能な圧力調整装置と、を備える基板保持装置に接続される定量気体供給装置であって、前記第1ラインに設けられた第2バルブを介して前記空間に一定量の気体を供給することが可能な定量気体供給装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
トップリング本体と弾性膜の第1面との間の空間に一定量の気体を供給できるため、吸着保持した基板を安全にリリースすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】基板研磨装置を含む基板処理装置の概略上面図。
【
図4】搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しを詳しく説明する図。
【
図5】搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しを詳しく説明する図。
【
図6】トップリング1から搬送機構600bへの基板受け渡しを詳しく説明する図。
【
図7】トップリング1から搬送機構600bへの基板受け渡しを詳しく説明する図。
【
図8】第2の実施形態に係る定量気体供給装置16を含む基板研磨装置300の概略構成を示す図。
【
図9】搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しの際の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図。
【
図10】基板研磨時の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図。
【
図11】基板リリース時の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図。
【
図12】第3の実施形態に係る定量気体供給装置16を含む基板研磨装置300の概略構成を示す図。
【
図13】搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しの際の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図。
【
図14】基板研磨時の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図。
【
図15】基板リリース時の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、基板研磨装置を含む基板処理装置の概略上面図である。本基板処理装置は、直径300mmあるいは450mmの半導体ウエハ、フラットパネル、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)などのイメージセンサ、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)における磁性膜の製造工程などにおいて、種々の基板を処理するものである。
【0023】
基板処理装置は、略矩形状のハウジング100と、多数の基板をストックする基板カセットが載置されるロードポート200と、1または複数(
図1に示す態様では4つ)の基板研磨装置300と、1または複数(
図1に示す態様では2つ)の基板洗浄装置400と、基板乾燥装置500と、搬送機構600a~600dと、制御部700とを備えている。
【0024】
ロードポート200は、ハウジング100に隣接して配置されている。ロードポート200には、オープンカセット、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、又はFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。SMIFポッド、
FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0025】
基板を研磨する基板研磨装置300、研磨後の基板を洗浄する基板洗浄装置400、洗浄後の基板を乾燥させる基板乾燥装置500は、ハウジング100内に収容されている。基板研磨装置300は、基板処理装置の長手方向に沿って配列され、基板洗浄装置400および基板乾燥装置500も基板処理装置の長手方向に沿って配列されている。
【0026】
ロードポート200、ロードポート200側に位置する基板研磨装置300および基板乾燥装置500に囲まれた領域には、搬送機構600aが配置されている。また、基板研磨装置300ならびに基板洗浄装置400および基板乾燥装置500と平行に、搬送機構600bが配置されている。
【0027】
搬送機構600aは、研磨前の基板をロードポート200から受け取って搬送機構600bに受け渡したり、乾燥後の基板を基板乾燥装置500から受け取ったりする。
【0028】
搬送機構600bは、例えばリニアトランスポータであり、搬送機構600aから受け取った研磨前の基板を基板研磨装置300に受け渡す。後述するように、基板研磨装置300におけるトップリング(不図示)は真空吸着により搬送機構600bから基板を受け取る。また、基板研磨装置300は研磨後の基板を搬送機構600bにリリースし、その基板は基板洗浄装置400に受け渡される。
【0029】
さらに、2つの基板洗浄装置400間に、これら基板洗浄装置400間で基板の受け渡しを行う搬送機構600cが配置されている。また、基板洗浄装置400と基板乾燥装置500との間に、これら基板洗浄装置400と基板乾燥装置500間で基板の受け渡しを行う搬送機構600dが配置されている。
【0030】
制御部700は基板処理装置の各機器の動きを制御するものであり、ハウジング100の内部に配置されてもよいし、ハウジング100の外部に配置されてもよいし、基板研磨装置300、基板洗浄装置400および基板乾燥装置500のそれぞれに設けられてもよい。
【0031】
図2および
図3は、それぞれ基板研磨装置300の概略斜視図およびトップリング1周辺部の概略断面図である。基板研磨装置300は基板を保持するトップリング1(基板保持装置)を有する。
図3に示すように、トップリング本体11(キャリアあるいはベースプレートともいう)、円環状のリテーナリング12、トップリング本体11の下方かつリテーナリング12の内側に取り付け可能な可撓性のメンブレン13(弾性膜)、トップリング本体11とリテーナリング12との間に設けられたエアバッグ14、圧力調整装置15、定量気体供給装置16、制御装置17などから構成される。なお、圧力調整装置15、定量気体供給装置16および/または制御装置17は、トップリング1を構成するものであってもよいし、トップリング1とは別個の装置であってもよい。
【0032】
リテーナリング12はトップリング本体11の外周部に設けられる。保持された基板Wの周縁はリテーナリング12に囲まれることとなり、研磨中に基板Wがトップリング1から飛び出さないようになっている。なお、リテーナリング12は1つの部材であってもよいし、内側リングおよびその外側に設けられた外側リングからなる2重リング構成であってもよい。後者の場合、外側リングをトップリング本体11に固定し、内側リングとトップリング本体11との間にエアバッグ14を設けてもよい。
【0033】
メンブレン13はトップリング本体11と対向して設けられる。具体的には、メンブレン13の上面がトップリング本体11と対向しており、トップリング本体11との間に空間Sが形成される。そして、空間Sを減圧して負圧にすることで、メンブレン13の下面が基板Wの上面を保持できる。さらにリテーナリングは上下に複数の部材で構成した多層リング構成であってもよい。
【0034】
エアバッグ14はトップリング本体11とリテーナリング12との間に設けられる。エアバッグ14により、リテーナリング12はトップリング本体11に対して鉛直方向に相対移動できる。
【0035】
圧力調整装置15は一端が空間Sに連通するライン(配管)L1に接続される。より具体的には、ラインL1にはバルブV1が設けられており、バルブV1の上流側(空間Sとは反対側)に圧力調整装置15が配置される。
【0036】
定量気体供給装置16はラインL1に接続される。より具体的には、ラインL1にはバルブV2が設けられており、バルブV2の上流側(空間Sとは反対側)に定量気体供給装置16が配置される。
【0037】
言い換えると、ラインL1は、一端が空間Sに連通し、他端は分岐している。そして、分岐した一方はバルブV1を介して圧力調整装置15に接続され、分岐した他方はバルブV2を介して定量気体供給装置16に接続される。このようにして、空間Sは、バルブV1を介して圧力調整装置15と接続され、バルブV2を介して定量気体供給装置16と接続されている。
【0038】
バルブV1が開き、バルブV2が閉じると、圧力調整装置15は、空間Sに流体(気体)を供給して加圧したり、真空引きして減圧したり、大気開放したりして、空間Sの圧力を調整できる。一方、バルブV2が開き、バルブV1が閉じると、定量気体供給装置16は空間Sに一定量の流体(気体)を供給できる。後述するが、この定量気体供給装置16を設けることが本実施形態の特徴の1つである。定量気体供給装置16の具体的な構成例は第2および第3の実施形態で述べる。
【0039】
制御装置17はトップリング1の各部の制御、例えばバルブV1,V2の開閉、圧力調整装置15、定量気体供給装置16の制御などを行う。
【0040】
また、基板研磨装置300は、下部にトップリング1が連結されたトップリングシャフト2と、研磨パッド3aを有する研磨テーブル3と、研磨液を研磨パッド3a上に供給するノズル4と、トップリングアーム5と、支持軸6とを有する。
【0041】
図2において、トップリングシャフト2の下端はトップリング1の上面中央に連結されている。不図示の昇降機構がトップリングシャフト2を昇降させることで、トップリング1に保持された基板Wの下面が研磨パッド3aに接触したり離れたりする。また、不図示のモータがトップリングシャフト2を回転させることでトップリング1が回転し、これによって保持された基板Wも回転する。
【0042】
研磨テーブル3の上面には研磨パッド3aが設けられる。研磨テーブル3の下面は回転軸に接続されており、研磨テーブル3は回転可能となっている。研磨液がノズル4から供給され、研磨パッド3aに基板Wの下面が接触した状態で基板Wおよび研磨テーブル3が回転することで、基板Wが研磨される。
【0043】
図3のトップリングアーム5は、一端にトップリングシャフト2が連結され、他端に支持軸6が連結される。不図示のモータが支持軸6を回転させることでトップリングアーム5が揺動し、トップリング1が研磨パッド3a上と、基板受け渡し位置(不図示)との間を行き来する。
【0044】
続いて、
図1の搬送機構600bから
図2および
図3のトップリング1に基板Wを受け渡す際の動作、すなわち、基板Wをトップリング1に吸着させる際の動作を説明する。基板Wをトップリング1に保持させる際、
図3のバルブV1は開き、バルブV2は閉じている。よって、空間Sは、圧力調整装置15と接続され、定量気体供給装置16とは切り離されている。
【0045】
図4および
図5は、搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しを詳しく説明する図である。
図4は搬送機構600bおよびトップリング1を側方から見た概略断面図であり、
図5はこれらを上方から見た図である。
【0046】
図4(a)に示すように、搬送機構600bのハンド601上に基板Wが載置されている。また、基板Wの受け渡しには、リテーナリングステーション800が用いられる。リテーナリングステーション800は、トップリング1のリテーナリング12を押し上げる押し上げピン801を有する。なお、リテーナリングステーション800はリリースノズルを有してもよいが、ここでは図示していない。
【0047】
図5に示すように、ハンド601は基板Wの下面の外周側の一部を支持する。そして、押し上げピン801とハンド601とが互いに接触しないように配置されている。
【0048】
図4(a)に示す状態で、トップリング1が下降するとともに、搬送機構600bが上昇する。トップリング1の下降により、押し上げピン801がリテーナリング12を押し上げ、基板Wがメンブレン13に接近する。さらに搬送機構600bが上昇すると、基板Wの上面がメンブレン13の下面に接触する(
図4(b))。
【0049】
この状態で、圧力調整装置15が空間Sを減圧して負圧にすることで、トップリング1のメンブレン13の下面に基板Wが吸着される。
【0050】
その後、搬送機構600bのハンド601は下降する(
図4(c))。
以上のようにしてメンブレン13に吸着保持された基板Wは、支持軸6が回転することによってトップリングアーム5が揺動し、研磨テーブル3の上方に移動される。そして、トップリング1が下降することで基板Wが研磨パッド3aに接触する。この状態で、圧力調整装置15が空間Sを加圧しつつ、トップリングシャフト2が回転することで、基板Wが研磨される。
【0051】
続いて、
図2および
図3のトップリング1から
図1の搬送機構600bに基板Wを受け渡す際の動作、すなわち、基板Wをトップリング1からリリース(離脱)させる際の動作を説明する。基板リリースの際、
図3のバルブV1は閉じ、バルブV2は開いている。よって、空間Sは、定量気体供給装置16と接続され、圧力調整装置15とは切り離されている。
【0052】
図6および
図7は、トップリング1から搬送機構600bへの基板受け渡しを詳しく説明する図である。
図6は搬送機構600bおよびトップリング1を側方から見た概略断面図であり、
図7はトップリング1およびリテーナリングステーション800を上方から見た図(ただし、
図6における搬送機構600bを省略)である。これらの図に示すように、リテーナリングステーション800は内側(基板W側)に向かう例えば3つのリリースノズル802を有する。
【0053】
図6(a)は基板Wがメンブレン13に吸着された状態である。このとき、リリースノズル802から流体(リリースシャワー)は噴射されない。
【0054】
図6(b)に示すように、トップリング1が下降するととともに、搬送機構600bが上昇する。これにより、搬送機構600bのハンド601が基板Wの下面に近づくが、両者は接触していない。また、押し上げピン801がリテーナリング12を押し上げる。
【0055】
この状態で、定量気体供給装置16は一定量の気体を空間Sに供給し、空間Sを加圧する。これにより、メンブレン13が膨らみ、メンブレン13の下面と基板Wの外周部との間に隙間が生じる。この隙間に向かって、リリースノズル802からエアなどの流体を噴射する。これにより、基板Wはメンブレン13からリリースされ、ハンド601上に載置される。
【0056】
本実施形態では一定量の気体を空間Sに供給するため、メンブレン13の膨らみ量も一定となる。したがって、常に、リリースノズル802からの流体噴射位置にメンブレン13の下面と基板Wの外周部との間の隙間を生じさせることができる。したがって、当該隙間にリリースノズル802から確実に流体を噴射でき、基板Wをメンブレン13からリリースできる。
【0057】
リリースノズル802からの流体噴射位置に隙間が形成され、かつ、基板Wが割れることがない圧力(例えば1~10hPa)が基板Wに与えられるよう、定量気体供給装置16から供給する気体の量を設定すればよい。また、メンブレン13が膨らむことによって基板Wに与えられる圧力は相対的に低下するため、基板Wに作用するストレスは安定して低く保たれる。
【0058】
その後、
図6(c)に示すように、基板Wが載置されたハンド601が下降するとともに、トップリング1が上昇する。
【0059】
このように、第1の実施形態では、基板Wを吸着したり研磨したりするための圧力調整装置15ではなく、定量気体供給装置16から一定量の気体を空間Sに供給する。これにより、基板Wのリリース時に基板Wに加わるストレスを小さくすることができる。結果として、メンブレン13に吸着保持された基板を安全にリリースできる。なお、従来の圧力調整装置では加圧時の最大圧力が500hPaもしくは1、000hPaなので、1~10hPaの低圧に対応することが困難である。そのため50hPa以上の設定圧で加圧時間を短くすることでメンブレンの膨らみ過ぎを防止していた。
【0060】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る定量気体供給装置16を含む基板研磨装置300の概略構成を示す図である。この定量気体供給装置16は、シリンダ21と、シリンダ21のピストン22に連結された錘24とを有し、重力により錘24が下方に移動することによってシリンダ21内の気体を空間Sに供給するものである。
【0061】
具体的には、定量気体供給装置16は、シリンダ21と、ピストン22と、ピストンロッド23と、錘24と、真空発生源25とを有する。
【0062】
シリンダ21は円柱状に鉛直方向に延びており、内部は空洞になっている。ピストン22の外周はシリンダ21の内面と接して上下動可能となっている。ピストンロッド23は鉛直方向に延びており、シリンダ21の上面に設けられた開口O3を貫通している。そして、ピストンロッド23の下端にピストン22が接続され、上端に錘24が固定されている。
【0063】
ピストン22によって、シリンダ21の内部は下部空間A1と上部空間A2とに分割されている。ピストン22の外周がシリンダ21の内面と接しているため、下部空間A1と上部空間A2との間で気体が行き来することはほとんどない。
【0064】
シリンダ21の下部空間A1に相当する位置に開口O1が設けられる。この開口O1にはラインL2が接続される。ラインL2はバルブV2を介してラインL1と接続されている。また、ラインL2にはバルブV3が設けられ、バルブV3が開くことによって下部空間A1を大気開放することが可能である。
【0065】
また、シリンダ21の上部空間A2に相当する位置に開口O2が設けられる。この開口O2にはラインL3が接続される。ラインL3には真空発生源25が接続されており、ラインL3を介して上部空間A2を減圧したり、大気開放したりできる。
なお、バルブV3および真空発生源25は
図3の制御装置17が制御する。
【0066】
図9は、搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しの際(
図4および
図5)の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図である。このとき、
図3のバルブV1は開き、バルブV2は閉じている。よって、圧力調整装置15が空間Sと接続され、定量気体供給装置16は空間Sとは切り離されている。
【0067】
定量気体供給装置16は待機状態とされる。待機状態では、バルブV3が開いており下部空間A1は大気開放される。また、真空発生源25は上部空間A2を減圧する(望ましくは真空にする)。これにより、ピストン22(およびピストンロッド23および錘24)が上昇した状態で保持される。
【0068】
そして、圧力調整装置15が空間Sを減圧して負圧にすることで、トップリング1のメンブレン13の下面に基板Wが吸着される。
【0069】
図10は、基板研磨時の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図である。
図9と同様、
図3のバルブV1は開き、バルブV2は閉じており、定量気体供給装置16は待機状態となっている。そして、圧力調整装置15が空間Sを加圧することで基板Wが
図2の研磨パッド3aに押し付けられて研磨される。
【0070】
図11は、基板リリース時(
図6および
図7)の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図である。
図9および
図10とは異なり、
図3のバルブV1は閉じ、バルブV2は開いている。よって、定量気体供給装置16が空間Sとは接続され、圧力調整装置15は空間Sとは切り離されている。
【0071】
そして、定量気体供給装置16のバルブV3が閉じ、かつ、ラインL3を介して上部空間A2は大気開放される。これにより、錘24が自由落下し、これに伴ってピストン22が下方に移動する。バルブV3が閉じられているため、下部空間A1内の気体はラインL2,L1を介して空間Sへ移動する。その結果、メンブレン13が下方に向かって膨らみ、メンブレン13と基板Wの外周部との間に隙間gが生じる。この隙間に流体を噴射することで、基板Wがメンブレン13の下面からリリースされる。
【0072】
以上により、一定量(すなわち、ピストン22の面積×ピストン22の落下距離(すなわち、ピストン22のストローク))の気体を空間Sに供給できる。なお、錘24は、空間S内の圧力に抗して完全に落下する程度の重さを有するにすればよい。
【0073】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態に係る定量気体供給装置16を含む基板研磨装置300の概略構成を示す図である。この定量気体供給装置16はブラダー(Bladder)32を有し、ブラダー32が圧縮されることでブラダー32内の気体を空間Sに供給するものである。
【0074】
具体的には、定量気体供給装置16は、チャンバ31と、ブラダー32と、圧力調整手段33とを有する。
【0075】
チャンバ31は内部が一定体積を有する空洞となっている。ブラダー32はゴムなど可撓性を有する材質で形成された風船状の容器であり、チャンバ31内に密封格納される。
【0076】
チャンバ31には開口O4,5が設けられる。開口O4にはラインL4が貫通している。ラインL4はバルブV2を介してラインL1とブラダー32とを接続している。また、ラインL4にはバルブV4が設けられ、バルブV4が開くことによってブラダー32を大気開放することが可能である。開口O5にはラインL5が接続される。ラインL5には圧力調整手段33が接続されており、ラインL5を介してチャンバ31を加圧したり減圧したりできる。なお、バルブV4および圧力調整手段33は
図3の制御装置17が制御する。
【0077】
図13は、搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しの際(
図4および
図5)の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図である。このとき、
図3のバルブV1は開き、バルブV2は閉じている。よって、圧力調整装置15が空間Sと接続され、定量気体供給装置16は空間Sとは切り離されている。
【0078】
定量気体供給装置16は待機状態とされる。待機状態では、バルブV4が開いておりブラダー32は大気開放される。また、圧力調整手段33はラインL5を介してチャンバ31を減圧する(望ましくは真空にする)。これにより、ブラダー32はチャンバ31とほぼ同体積まで膨らんだ状態で保持される。
【0079】
そして、圧力調整装置15が空間Sを減圧して負圧にすることで、トップリング1のメンブレン13の下面に基板Wが吸着される。
【0080】
図14は、基板研磨時の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図である。
図13と同様、
図3のバルブV1は開き、バルブV2は閉じており、定量気体供給装置16は待機状態となっている。そして、圧力調整装置15が空間Sを加圧することで基板Wが
図2の研磨パッド3aに押し付けられて研磨される。
【0081】
図15は、基板リリース時(
図6および
図7)の基板研磨装置300の動作状態を模式的に示す図である。
図13および
図14とは異なり、
図3のバルブV1は閉じ、バルブV2は開いている。よって、定量気体供給装置16が空間Sとは接続され、圧力調整装置15は空間Sとは切り離されている。
【0082】
そして、定量気体供給装置16のバルブV4が閉じ、かつ、圧力調整手段33はラインL5を介してチャンバ31を加圧する。これにより、ブラダー32が圧縮される。バルブV4が閉じられているため、ブラダー32内の気体はラインL4,L1を介して空間Sへ移動する。その結果、メンブレン13が下方に向かって膨らみ、メンブレン13と基板Wの外周部との間に隙間gが生じる。
【0083】
以上により、一定量(すなわち、チャンバ31の体積)の気体を空間Sに供給できる。なお、ブラダー32は、
図11~
図14に示した単純風船形状であってもよいし、ベローズ形状などであってもよく、特に制限はない。
【0084】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0085】
1 トップリング(基板保持装置)
11 トップリング本体
12 リテーナリング
13 メンブレン
14 エアバッグ
15 圧力調整装置
16 定量気体供給装置
17 制御装置
21 シリンダ
22 ピストン
23 ピストンロッド
24 錘
25 真空発生源
31 チャンバ
32 ブラダー
33 圧力調整手段
L1~L5 ライン
V1~V4 バルブ
O1~O5 開口
S 空間
W 基板