(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】制御システムおよびポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20230725BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
F04B49/10 311
F04B49/06 311
(21)【出願番号】P 2019205476
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】片山 直輝
(72)【発明者】
【氏名】石原 敏隆
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134606(JP,A)
【文献】特開2015-004312(JP,A)
【文献】特開2008-109789(JP,A)
【文献】特開2001-304134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/00-53/22
F04C 2/00-29/12
F04D 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプおよび該ポンプを駆動する電動機を有するポンプ装置のための制御システムであって、
第1記憶装置を有する制御部と、
第2記憶装置を有する少なくとも1台のインバータを備え、
前記インバータは、前記電動機に可変周波数の電力を供給する可変速手段であり、
前記制御部は、前記インバータの動作を制御するように構成されており、
前記ポンプ装置の運転に必要な設定値が
前記制御部に入力されると、前記設定値を前記第1記憶装置と前記第2記憶装置とに保存する
ように構成され、
前記制御部は、設定値が前記第1記憶装置に保存された回数をカウントする第1カウンタを有しており、
前記インバータは、設定値が前記第2記憶装置に保存された回数をカウントする第2カウンタを有しており、
前記制御部は、前記第1カウンタのカウント数が、前記第2カウンタのカウント数と同じ場合は、前記第1記憶装置に保存されている設定値を前記インバータに送信し、前記インバータは、前記制御部から送信された設定値を前記第2記憶装置に保存するように構成されている、制御システム。
【請求項2】
前記第2記憶装置は、前記インバータの可変速制御で用いるパラメータを保存する可変速制御パラメータ保存領域と、前記制御部で用いる前記設定値を保存する圧力制御パラメータ保存領域を有する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記設定値が前記制御部に入力されると、前記制御部は前記設定値を前記第1記憶装置に保存し、かつ前記設定値を前記インバータに送信するように構成され、
前記インバータは、前記制御部から送信された前記設定値を前記第2記憶装置内に保存するように構成されている、請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御部および前記インバータは、前記ポンプ装置のポンプの運転履歴を、前記第1記憶装置と前記第2記憶装置にそれぞれ保存するように構成されている、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
ポンプおよび該ポンプを駆動する電動機を有するポンプ装置のための制御システムであって、
第1記憶装置を有する制御部と、
第2記憶装置を有する少なくとも1台のインバータを備え、
前記インバータは、前記電動機に可変周波数の電力を供給する可変速手段であり、
前記制御部は、前記インバータの動作を制御するように構成されており、
前記インバータは、所定の条件が成立すると、前記第2記憶装置に保存されている、ポンプ装置の運転に必要な設定値を前記制御部に送信し、
前記制御部は、前記インバータから送信された前記設定値を前記第1記憶装置に保存する
ように構成され、
前記ポンプ装置の運転に必要な設定値が入力装置を介して入力されると、前記設定値を前記第1記憶装置と前記第2記憶装置とに保存するように構成され、
前記制御部は、前記入力装置を介して入力された前記設定値が前記第1記憶装置に保存された回数をカウントする第1カウンタを有しており、
前記インバータは、前記入力装置を介して入力された前記設定値が前記第2記憶装置に保存された回数をカウントする第2カウンタを有しており、
前記制御部は、前記第1カウンタのカウント数が、前記第2カウンタのカウント数と異なる場合は前記所定の条件が成立したと判断するように構成されている、制御システム。
【請求項6】
前記第2記憶装置は、前記インバータの可変速制御で用いるパラメータを記憶する可変速制御パラメータ保存領域と、前記設定値を保存する圧力制御パラメータ保存領域を有する、請求項
5に記載の制御システム。
【請求項7】
ポンプおよび該ポンプを駆動する電動機を有するポンプ装置のための制御システムであって、
第1記憶装置を有する制御部と、
第2記憶装置を有する少なくとも1台のインバータを備え、
前記インバータは、前記電動機に可変周波数の電力を供給する可変速手段であり、
前記制御部は、前記インバータの動作を制御するように構成されており、
前記インバータは、所定の条件が成立すると、前記第2記憶装置に保存されている、ポンプ装置の運転に必要な設定値を前記制御部に送信し、
前記制御部は、前記インバータから送信された前記設定値を前記第1記憶装置に保存するように構成され、
前記ポンプ装置の運転に必要な設定値が入力装置を介して入力されると、前記設定値を前記第1記憶装置と前記第2記憶装置とに保存するように構成され、
前記制御システムは、前記制御部に接続された表示装置をさらに備えており、
前記制御部は、前記第1記憶装置に保存されている設定値か、または前記第2記憶装置に保存されている設定値のどちらを前記ポンプ装置の運転に使用すべきかをユーザーに選択させるための案内を前記表示装置に表示させるよう構成されており、
ユーザーが前記入力装置を操作して前記第2記憶装置に保存されている設定値を選択したら、前記制御部は前記所定の条件が成立したと判断する
、制御システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記入力装置を介して入力された前記設定値が前記第1記憶装置に保存された回数をカウントする第1カウンタを有しており、
前記インバータは、前記入力装置を介して入力された前記設定値が前記第2記憶装置に保存された回数をカウントする第2カウンタを有しており、
前記第1カウンタのカウント数が、前記第2カウンタのカウント数と異なる場合は、前記制御部は、前記案内を前記表示装置に表示させるように構成されている、請求項
7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1記憶装置および前記第2記憶装置に保存されている前記設定値の変更履歴を前記表示装置に表示させるように構成されている、請求項
7または
8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1カウンタのカウント数を、前記第2カウンタのカウント数に一致させるように構成されている、請求項
8に記載の制御システム。
【請求項11】
前記インバータは複数のインバータであり、
前記制御部は、前記複数のインバータのそれぞれの前記第2カウンタのカウント数を比較し、カウント数が大きい方のインバータに指令を発して、そのインバータの第2記憶装置に保存されている設定値を、前記制御部に送信させる、請求項
8に記載の制御システム。
【請求項12】
前記ポンプ装置の運転に必要な設定値は、前記ポンプ装置に組み込まれたポンプの吐出し圧力の設定値を少なくとも含む、請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項13】
電動機により駆動されるポンプと、
請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の制御システムを備え、
前記制御システムの前記制御部は、前記第1記憶装置に保存された前記設定値に基づいて前記ポンプの回転速度を決定する、ポンプ装置。
【請求項14】
前記ポンプ装置は、建物に水を供給するための給水装置である、請求項
13に記載のポンプ装置。
【請求項15】
前記給水装置は、直結型給水装置である、請求項
14に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置などのポンプ装置に組み込まれる制御システムに関し、特にポンプ装置の運転に必要な各種設定値をバックアップするための技術に関する。また、本発明は、そのような制御システムを備えたポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ装置の一例として、集合住宅などの建物に水を供給する給水装置がある。給水装置は、一般に、制御部を備えており、この制御部には、ポンプ装置毎の情報として、ポンプの運転に必要な各種設定値や運転履歴や故障履歴等の各種履歴が保存されている。制御部に保存されている設定値の例としては、ポンプの吐出し側の圧力制御にて用いる設定圧力、流入圧力低下等の各種異常の検出パラメータ、各種入出力等の入出力信号や装置構成などが挙げられる。例えば、水道本管に直結された、いわゆる直結型給水装置は、設置時に設定圧力を水道局に届け出し、当該設定圧力で給水することが必要とされる場合がある。これは、給水装置が過度に高い吐出し圧力で給水する給水装置が特定の地域に密集して設置されると、水道本管の圧力が低下するなど、その地域全体の給水にダメージを与えるおそれがあるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、制御部が深刻なダメージを受けると、制御部に保存されていた各種設定値が消失することがある。例えば、給水装置が落雷の影響を受けると、制御部が焼失してしまうことがある。このような場合、故障した制御部の設定値や履歴を参照することはできない。よって、故障した制御部を新たなものに交換したとしても、元々焼失した制御部に保存されていた設定値が不明であるため、焼失した制御部からは以前使用していた設定値を新たな制御部にコピーできない。つまり、新たな制御部は、焼失した制御部からコピーする以外の何らかの手段で、正しい設定値が入力されるまで、給水装置を適切に制御することができない。特に、制御部に記憶された設定圧力の値が消失すると、地域によっては、水道局に設定圧力の値を問い合わせる必要があり、結果として、焼失した制御部の交換を行って給水装置自体が復旧しても給水の復旧までに時間がかかることがあった。
【0005】
そこで、本発明は、ポンプ装置の運転に必要な各種設定値等の情報をバックアップすることができる制御システムを提供する。また、本発明は、そのような制御システムを備えたポンプ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、第1記憶装置を有する制御部と、第2記憶装置を有する少なくとも1台のインバータを備え、ポンプ装置の運転に必要な設定値が入力されると、前記設定値を前記第1記憶装置と前記第2記憶装置とに保存する、制御システムが提供される。
【0007】
一態様では、前記第2記憶装置は、前記インバータの可変速制御で用いるパラメータを保存する可変速制御パラメータ保存領域と、前記制御部で用いる前記設定値を保存する圧力制御パラメータ保存領域を有する。
一態様では、前記設定値が前記制御部に入力されると、前記制御部は前記設定値を前記第1記憶装置に保存し、かつ前記設定値を前記インバータに送信するように構成され、前記インバータは、前記制御部から送信された前記設定値を前記第2記憶装置内に保存するように構成されている。
【0008】
一態様では、前記制御部は、設定値が前記第1記憶装置に保存された回数をカウントする第1カウンタを有しており、前記インバータは、設定値が前記第2記憶装置に保存された回数をカウントする第2カウンタを有している。
一態様では、前記制御部は、前記第1カウンタのカウント数が、前記第2カウンタのカウント数と同じ場合は、前記第1記憶装置に保存されている設定値を前記インバータに送信し、前記インバータは、前記制御部から送信された設定値を前記第2記憶装置に保存するように構成されている。
一態様では、前記制御部および前記インバータは、前記ポンプ装置のポンプの運転履歴を、前記第1記憶装置と前記第2記憶装置にそれぞれ保存するように構成されている。
【0009】
一態様では、第1記憶装置を有する制御部と、第2記憶装置を有する少なくとも1台のインバータを備え、前記インバータは、所定の条件が成立すると、前記第2記憶装置に保存されている、ポンプ装置の運転に必要な設定値を前記制御部に送信し、前記制御部は、前記インバータから送信された前記設定値を前記第1記憶装置に保存する、制御システムが提供される。
【0010】
一態様では、前記第2記憶装置は、前記インバータの可変速制御で用いるパラメータを記憶する可変速制御パラメータ保存領域と、前記設定値を保存する圧力制御パラメータ保存領域を有する。
一態様では、前記ポンプ装置の運転に必要な設定値が入力装置を介して入力されると、前記設定値を前記第1記憶装置と前記第2記憶装置とに保存する。
【0011】
一態様では、前記制御部は、前記入力装置を介して入力された前記設定値が前記第1記憶装置に保存された回数をカウントする第1カウンタを有しており、前記インバータは、前記入力装置を介して入力された前記設定値が前記第2記憶装置に保存された回数をカウントする第2カウンタを有しており、前記制御部は、前記第1カウンタのカウント数が、前記第2カウンタのカウント数と異なる場合は前記所定の条件が成立したと判断するように構成されている。
【0012】
一態様では、前記制御システムは、前記制御部に接続された表示装置をさらに備えており、前記制御部は、前記第1記憶装置に保存されている設定値か、または前記第2記憶装置に保存されている設定値のどちらを前記ポンプ装置の運転に使用すべきかをユーザーに選択させるための案内を前記表示装置に表示させるよう構成されており、ユーザーが前記入力装置を操作して前記第2記憶装置に保存されている設定値を選択したら、前記制御部は前記所定の条件が成立したと判断する。
一態様では、前記制御部は、前記入力装置を介して入力された前記設定値が前記第1記憶装置に保存された回数をカウントする第1カウンタを有しており、前記インバータは、前記入力装置を介して入力された前記設定値が前記第2記憶装置に保存された回数をカウントする第2カウンタを有しており、前記第1カウンタのカウント数が、前記第2カウンタのカウント数と異なる場合は、前記制御部は、前記案内を前記表示装置に表示させるように構成されている。
一態様では、前記制御部は、前記第1記憶装置および前記第2記憶装置に保存されている前記設定値の変更履歴を前記表示装置に表示させるように構成されている。
一態様では、前記制御部は、前記第1カウンタのカウント数を、前記第2カウンタのカウント数に一致させるように構成されている。
【0013】
一態様では、前記インバータは複数のインバータであり、前記制御部は、前記複数のインバータのそれぞれの前記第2カウンタのカウント数を比較し、カウント数が大きい方のインバータに指令を発して、そのインバータの第2記憶装置に保存されている設定値を、前記制御部に送信させる。
一態様では、前記ポンプ装置の運転に必要な設定値は、前記ポンプ装置に組み込まれたポンプの吐出し圧力の設定値を少なくとも含む。
【0014】
一態様では、電動機により駆動されるポンプと、上記制御システムを備え、前記制御システムの前記インバータは、前記電動機の可変速手段であって、前記制御システムの前記制御部は、前記第1記憶装置に保存された前記設定値に基づいて前記ポンプの回転速度を決定する、ポンプ装置が提供される。
一態様では、前記ポンプ装置は、建物に水を供給するための給水装置である。
一態様では、前記給水装置は、直結型給水装置である。
【0015】
一態様では、第1記憶装置を有する制御部と、第2記憶装置を有する少なくとも1台のインバータを備え、前記制御部および前記インバータは、前記制御部が作成したポンプ装置の履歴を、前記第1記憶装置と前記第2記憶装置にそれぞれ保存するように構成されている、制御システムが提供される。
一態様では、前記インバータは、所定の条件が成立すると、前記第2記憶装置に保存されている前記履歴を前記制御部に送信し、前記制御部は、前記インバータから送信された当該履歴を前記第1記憶装置に保存する。
一態様では、電動機により駆動されるポンプと、上記制御システムを備え、前記制御システムの前記インバータは、前記電動機の可変速手段であり、前記制御システムの前記制御部は、前記第1記憶装置に保存された設定値に基づいて前記ポンプの回転速度を決定する、ポンプ装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、設定値は、制御部の第1記憶装置およびインバータの第2記憶装置の両方に保存される。したがって、制御部を新たなものに交換した後に、第2記憶装置内に保存されている設定値を制御部に送信し、その設定値を制御部の第1記憶装置内に保存することができる。制御部は、第1記憶装置内に保存された設定値に基づいてポンプ装置の運転を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ポンプ装置としての給水装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】設定値のバックアップ動作の一実施形態を説明する機能ブロック図である。
【
図3】設定値のバックアップ動作を説明するフローチャートである。
【
図4】故障した制御部を新たな制御部に交換した後の動作の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】設定値のバックアップ動作の他の実施形態を説明する機能ブロック図である。
【
図6】設定値のバックアップ動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ポンプ装置としての給水装置の一実施形態を示す模式図である。給水装置は、集合住宅などの建物に水を供給するためのポンプ装置である。
図1に示すように、給水装置の吸込み口1Aは、吸込管6を介して水道本管11に接続されている。給水装置の吐出し口1Bは給水管7に接続されており、この給水管7は、図示しない建物の給水栓(蛇口など)に連通している。
【0019】
本実施形態の給水装置は、水道本管11の圧力を利用し、必要に応じて増圧することで建物の各給水栓に水を供給するように構成される。このタイプの給水装置は、吸込側が水道本管11に直結されているので、直結型給水装置と呼ばれる。ただし、本発明は本実施形態に限定されず、給水装置は、吸込側が受水槽に接続された受水槽型給水装置であってもよい。
【0020】
図1に示す給水装置は、水を加圧するための2台のポンプ2と、2台のポンプ2にそれぞれ連結され、ポンプ2を駆動する2台の電動機3と、これら2台の電動機3に可変周波数の電力を供給する可変速手段である2台のインバータ4と、ポンプ2の吐出し側に配置された2つの逆止弁9と、逆止弁9の吐出し側に配置された2つのフロースイッチ12と、フロースイッチ12の吐出し側に配置された吐出し圧力センサ15および圧力タンク17を備えている。
【0021】
吸込管6の一端は、各ポンプ2の吸込口に接続されており、吸込管6の他端は、水道本管11に接続されている。さらに、2つのポンプ2の吸込側には、流入圧力センサ23が配置されている。この流入圧力センサ23は、吸込管6に接続されており、吸込管6内の水圧を測定するようになっている。2台のポンプ2には、これらポンプ2の温度を測定するサーミスタ(温度センサ)22がそれぞれ取り付けられている。
【0022】
2台のポンプ2の吐出し口には、2本の吐出し管20Aがそれぞれ接続されており、2つの逆止弁9および2つのフロースイッチ12は、これら吐出し管20Aにそれぞれ取り付けられている。吐出し集合管20は、2本の吐出し管20Aの合流管である。吐出し圧力センサ15および圧力タンク17は、吐出し集合管20の流出管20Bに接続されている。吐出し圧力センサ15は、2本の吐出し管20Aのうちの一方に接続されてもよい。
【0023】
2台のインバータ4は、2台の電動機3にそれぞれ電気的に接続されている。本実施形態では、ポンプ2、電動機3、インバータ4、逆止弁9、およびフロースイッチ12は2組設けられ、これらは並列に配置されている。一実施形態では、1組、または3組以上のポンプ2、電動機3、インバータ4、逆止弁9、およびフロースイッチ12を設けてもよい。
【0024】
逆止弁9は、ポンプ2が停止しているときの水の逆流を防止するための弁である。フロースイッチ12はポンプ2を流れる水の流量を検出する流量検出器である。本実施形態におけるフロースイッチ12は、ポンプ2から吐き出された水の流量が所定の値以下にまで低下したことを検出する。一実施形態として、フロースイッチ12は、ポンプ2に流入する水の流量を検出してもよい。さらに一実施形態として、フロースイッチ12は、ポンプ2毎の2つのフロースイッチ12に代えて、吐出し集合管20の流出管20Bにひとつのフロースイッチ12を設けてもよいし、またはフロースイッチ12がなくてもよい。
【0025】
流入圧力センサ23は、ポンプ2の流入圧力を測定するための水圧測定器である。ポンプ2の流入圧力は、水道本管11内の水圧に相当する。吐出し圧力センサ15は、ポンプ2の吐出し圧力を測定するための水圧測定器である。圧力タンク17は、ポンプ2が停止している間の吐出し圧力を保持するための圧力保持器である。
【0026】
給水装置は、ポンプ2、電動機3、およびインバータ4の動作を制御する制御部25をさらに備えている。また、制御部25は、給水装置の運転に必要な各種設定値、およびプログラムを記憶した第1記憶装置27と、第1記憶装置27に記憶されたプログラムに含まれる命令に従って演算を実行する第1処理装置(例えばCPU)28とを備えている。流入圧力センサ23、フロースイッチ12、吐出し圧力センサ15、およびサーミスタ22は、制御部25に信号線によって接続されている。
【0027】
インバータ4は、通信線30によって制御部25に接続されている。通信線30の一端は、制御部25の通信ポート26に接続され、通信線30の他端は、2つのインバータ4のうちの一方の通信ポート64に接続されている。2つのインバータ4同士も通信線によって接続されている。制御部25とインバータ4は、各種指令や各種設定値の送受信のための通信を行う。
【0028】
制御部25は、以下に説明する自動運転による給水を行う。自動運転では、2台のポンプ2は、基本的に交互に始動されるように制御部25によって制御される。一実施形態として、2台のポンプ2のうちの一方が運転しているときは、他方のポンプ2は予備のポンプとして待機状態にある。制御部25は、ポンプ2のそれぞれの運転回数や停止時間が平準化されるようにこれらポンプ2の運転を制御する。ポンプ2が3台以上の給水装置は、少なくとも1台が予備ポンプとして待機状態にあるとよい。制御部25は、ポンプ2の台数や並列運転する台数を、給水装置の運転に必要な設定値(圧力制御パラメータ)として記憶するとよい。
【0029】
2台のポンプ2のうちの一方が運転しているときに、建物での水の使用が停止されると、そのポンプ2を流れる水の流量が低下する。フロースイッチ12は、ポンプ2を流れる水の流量が所定の値以下まで低下したこと(過少流量)を検出すると、過少流量検出信号を制御部25に送る。制御部25はこの過少流量検出信号を受け、インバータ4に指令を出して吐出し圧力が所定の停止圧力に達するまでポンプ2の回転速度を一時的に増加させる蓄圧運転を行い、圧力タンク17に蓄圧した後にポンプ2を停止させる。このようなポンプ2の停止動作は、小水量停止動作と呼ばれる。また、小水量停止動作にて全てのポンプ2が停止した状態を小水量停止状態と称す。なお、フロースイッチ12に代えて、またはフロースイッチ12に加えて、制御部25は、電動機3の電流値が所定の値以下であることを検出することで過少流量の検出を行ってもよい。制御部25は、蓄圧運転時の目標圧力や蓄圧運転の運転時間を、給水装置の運転に必要な設定値(圧力制御パラメータ)として記憶するとよい。
【0030】
全てのポンプ2が小水量停止状態にあるときに建物内の水が使用されると、圧力タンク17内に保持されている水が建物に供給される。圧力タンク17は、ポンプ2の頻繁な起動停止を防止し、且つ給水圧力の変化を円滑に保つ作用をする。建物内でさらに水が使用されると、圧力タンク17内の水が少なくなり、結果として吐出し圧力が所定の始動圧力以下に低下する。吐出し圧力は吐出し圧力センサ15によって測定される。吐出し圧力が上記始動圧力以下まで低下すると、制御部25は2台のポンプ2のうちの少なくとも一方の運転を開始するよう、対応するインバータ4に指令を発する。制御部25は、始動圧力や始動時のポンプ2の回転速度を、給水装置の運転に必要な設定値として記憶するとよい。また、制御部25は、給水先での水の需要が増えたら待機中のポンプ2を追加してもよい。制御部25は、待機中のポンプ2を追加する条件(例えば、ポンプ2の回転速度や圧力等)を、給水装置の運転に必要な設定値(圧力制御パラメータ)として記憶するとよい。
【0031】
ポンプ2の運転中に、制御部25は、吐出し圧力センサ15から送られる吐出し圧力の測定値に基づいて推定末端圧力一定制御または吐出圧力一定制御を実行する。吐出圧力一定制御では、吐出し圧力が所定の目標値(設定圧力)を維持するように一定に制御される。推定末端圧力一定制御で制御部25は、ポンプ2の吐出し圧力の目標値を適切に変化させることにより、建物内の末端の給水栓での水圧(末端圧)が所定の圧力(設定圧力)を維持するように制御する。
【0032】
本実施形態の制御システムは、制御部25およびインバータ4を含んで構成され、次のようにしてポンプ2の運転を制御する。制御部25は、吐出し圧力の設定圧力に基づく目標圧力と、ポンプ2の吐出し圧力、すなわち吐出し圧力センサ15の測定値との偏差にてPI演算を行い、インバータ4の周波数指令値を算出する。そして、制御部25は、算出した周波数指令値をインバータ4に発して、インバータ4は当該周波数指令値となるようモータ3を可変速制御する。このように、制御部25は、吐出し圧力の設定圧力と測定値に基づいてポンプ2を制御する。制御部25は、設定圧力、圧力偏差によるPI演算の係数を、給水装置の運転に必要な設定値(圧力制御パラメータ)として記憶するとよい。
【0033】
制御部25は、流入圧力センサ23および吐出し圧力センサ15から延びる信号線が接続された圧力信号入力端子33、フロースイッチ12から延びる信号線が接続された流量信号入力端子34、サーミスタ22から延びる信号線が接続された温度信号入力端子35を備えている。流入圧力の測定値、吐出し圧力の測定値、過少流量検出信号、およびポンプ温度の測定値は、圧力信号入力端子33、流量信号入力端子34、および温度信号入力端子35を通じて制御部25の第1処理装置28に入力されるようになっている。制御部25は、サーミスタ22から送られてくるポンプ2の温度の測定値が上限値を超えたときは、ポンプ過熱の異常を検出したとして、インバータ4に指令を発して該当するポンプ2の運転を停止させると共に故障履歴を作成する。さらに、制御部25は、流入圧力センサ23から送られてくる流入圧力の測定値がしきい値を下回ったときは、流入圧低下の異常を検出したとして、インバータ4に指令を発して全てのポンプ2の運転を停止させると共に故障履歴を作成する。制御部25は、ポンプ2の温度の上限値、流入圧低下のしきい値や検出時間を給水装置の運転に必要な設定値(圧力制御パラメータ)として記憶するとよい。
【0034】
制御部25は、漏電遮断器(Earth Leakage Circuit Breaker:ELB)38から延びる信号線が接続されたトリップ信号入力端子39をさらに備えている。漏電遮断器38は、商用電源40に接続された電力線41に設けられている。電力線41は2つのインバータ4に接続されており、交流電力は、電力線41を通じてインバータ4に供給される。漏電遮断器38が漏電を検出すると、漏電遮断器38はトリップ信号を発する。このトリップ信号は、トリップ信号入力端子39を通じて制御部25の第1処理装置28に入力される。制御部25は、トリップ信号を漏電遮断器38から受信したときは、異常を検出したとして、インバータ4に指令を発してポンプ2の運転を停止させると共に故障履歴を作成し第1記憶装置27に保存する。
【0035】
制御部25は、電力線41から分岐する電力線42に接続されており、電力線42を通じて電力が制御部25に供給されるようになっている。制御部25は電源スイッチ43を備えており、この電源スイッチ43が入れられると、電力は電力線42を通じて制御部25に供給される。制御部25は、ポンプ2が運転中であるかどうか(ポンプ2の発停)を示すON/OFF信号である運転信号や、ポンプ2やインバータ4などの故障を知らせる故障信号を装置外部に出力するための出力端子45をさらに備えている。
【0036】
制御システムは、制御部25に接続された操作装置47をさらに備えている。本実施形態では、操作装置47は制御部25上に配置されているが、制御部25に電気的に接続されている限りにおいて、操作装置47は制御部25から離れて配置されてもよい。例えば、操作装置47は、近距離無線通信(NFC)やBLUETOOTH(登録商標)などの無線通信、または有線ネットワーク、シリアル通信などの有線通信により制御部25に接続された、表示操作可能な外部表示器(不図示)であってもよい。操作装置47は、ポンプ2の試験・停止・自動運転を選択する運転切替スイッチ52と、運転・故障を示すランプ53と、給水装置の運転に必要な各種設定値(例えば吐出し圧力や流入圧力など)を制御部25に入力するための操作ボタン54を有する入力装置としての操作部55とを備えている。さらに、操作装置47は、給水やインバータ4に関する情報を表示するための液晶ディスプレイなどからなる表示装置56を備えている。入力装置としての操作部55と、表示装置56は、一体的な構成であるが、一実施形態では、操作部55と表示装置56は離れて配置されてもよい。
【0037】
運転切替スイッチ52を操作することにより、ポンプ2の運転状態を切り替えることができる。具体的には、操作装置47の運転切替スイッチ52にて「自動」を選択すると、制御部25は上述した自動運転による給水を行うため、インバータ4は制御部25からの指令に従って電動機3およびポンプ2を可変速制御する。運転切替スイッチ52にて「停止」を選択すると、制御部25は、吐出し圧力の状態にかかわらず、インバータ4、電動機3およびポンプ2を停止する。また、運転切替スイッチ52にて「試験」を選択すると、ユーザーは、制御部25を介して、インバータ4、電動機3、およびポンプ2を手動で運転することができる。
【0038】
また、操作部55の操作ボタン54を操作することにより、給水装置の運転に必要な各種設定値を入力したり、インバータ4の可変速制御で用いる設定(例えば加速時間や減速時間、ストール電流値等の可変速制御パラメータ)や表示装置56に表示する内容を変更する(切り替える)ことができるようになっている。給水装置の運転に必要な各種設定値である圧力制御パラメータの例としては、流入圧力低下の設定値、ポンプ2の吐出し圧力の設定値、ポンプ2の上限温度の設定値などが挙げられる。吐出し圧力の設定値は、具体的には、圧力一定制御の設定圧力または/および推定末端圧一定制御の設定圧力である。推定末端圧一定制御の設定圧力は、最大流量時のポンプ2の吐出し圧力の目標値であってもよい。流入圧力低下の設定値は、流入圧力低下を検出する圧力のしきい値ならびに検知時間である。ポンプ2の上限温度の設定値は、ポンプ2の温度が上限温度を超えたときにポンプ2の運転を停止させるための設定値である。その他、ポンプ2の始動圧力、停止圧力、各種異常の検出パラメータ、各種入出力等の装置構成も給水装置の運転に必要な各種設定値(圧力制御パラメータ)に含まれる。
【0039】
一般に、直結型給水装置の場合は、流入圧力低下のしきい値は、その給水装置が設置される地域の水道局によって規定されている。流入圧力は、水道本管11の圧力に相当する。この流入圧力(すなわち水道本管11内の圧力)が規定値よりも下がると、水道本管11のダメージを防止するために、ポンプ2の運転を停止しなければならない。また、吐出し圧力の制御に用いる設定圧力は、その給水装置が設置される地域の水道局への届け出が必要な場合がある。これは、吐出し圧力の設定圧力が高いと、給水量が増えた場合に水道本管11の圧力が低下して地域全体の給水に影響するおそれがあるためである。
【0040】
そこで、制御部25の第1記憶装置27には、少なくとも「流入圧力低下のしきい値」および/または、「設定圧力」等を含むポンプ装置の運転に必要な各種設定値が圧力制御パラメータとして保存されており、制御部25は、これら設定値に基づいてポンプ2の運転を適切に制御するように構成されている。具体的には、制御部25は、ポンプ2の吐出し圧力が始動圧よりも低下したらポンプ2の始動指令をインバータ4に送信し、更に、ポンプ2の回転速度を吐出し圧力と「設定圧力」とに基づいて算出し、インバータ4に送信する。また、小水量検知するか、もしくは、ポンプ2の流入圧力、すなわち流入圧力センサ23の測定値が、「流入圧力低下のしきい値」よりも低下したときは、インバータ4に指令を発してポンプ2の運転を停止させる。
【0041】
これらの可変速制御パラメータや圧力制御パラメータを含む各種設定値は、入力装置である操作部55または/および外部表示器を通じて制御部25に入力され、第1記憶装置27内に保存される。第1記憶装置27には、これら各種設定値のみならず、制御部25にて作成される各ポンプ2の運転履歴(すなわち、各ポンプ2の通算運転時間、各ポンプ2の運転回数)、故障履歴、および/または、変更履歴などの各種履歴も保存(記憶)される。第1記憶装置27は、RAM(ランダムアクセスメモリ)などの揮発性の主記憶装置と、ROM(リードオンリーメモリ)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの不揮発性の補助記憶装置を備えており、各種設定値や履歴は不揮発性の補助記憶装置に保存される。ただし、第1記憶装置27の具体的構成は本実施形態に限定されない。第1記憶装置27は、第1処理装置28に電気的に接続されている。第1処理装置28の例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、第1処理装置28の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0042】
各インバータ4は、第2記憶装置71および第2処理装置72を備えている。第2記憶装置71および第2処理装置72の具体的構成は、第1記憶装置27および第1処理装置28とそれぞれ同じであってもよいし、または異なってもよい。
【0043】
制御部25およびインバータ4を含む本実施形態の制御システムは、制御部25の第1記憶装置27に保存されている各種設定値および履歴を第2記憶装置71にバックアップするように構成されている。第1記憶装置27、第2記憶装置71には、後述するバックアップ動作を制御システムに実行させるためのプログラムが格納されている。制御部25の第1処理装置28および各インバータ4の第2処理装置72は、このプログラムに含まれる命令に従って演算を実行する。以下、このバックアップ動作について詳述する。
【0044】
給水装置の運転に必要な設定値が操作部55を通じて制御部25に入力されると、制御部25は設定値を第1記憶装置27に保存し、かつ設定値をインバータ4に送信するように構成されている。さらに、インバータ4は、制御部25から送られた設定値を第2記憶装置71内に保存するように構成されている。制御部25は、入力装置である操作部55を介して制御部25に入力された設定値が第1記憶装置27に保存された回数をカウントする第1カウンタ75を有している。各インバータ4は、入力装置である操作部55を介して制御部25に入力された設定値が第2記憶装置71に保存された回数をカウントする第2カウンタ76を有している。
【0045】
第1カウンタ75および第2カウンタ76は、出荷時等でこれらカウンタ75,76に最初に電力が投入されたときに、カウント数が0に設定されるように構成される。第1カウンタ75および第2カウンタ76は、電力の供給が止まったときでも、現在のカウント数を保持できるように構成されている。第1カウンタ75および第2カウンタ76の構成は特に限定されないが、不揮発性メモリを有する電気式カウンタなどが使用される。
【0046】
図2は、設定値のバックアップ動作の一実施形態を説明する機能ブロック図である。操作装置47は、可変速制御パラメータや圧力制御パラメータを含む設定値を制御部25に入力し、制御部25は当該設定値を第1記憶装置27の制御パラメータ保存領域27aに保存する(矢印Y1参照)。制御パラメータ保存領域27aに保存された設定値の中で圧力制御パラメータは、制御部25からインバータ4に送信され(矢印Y2参照)、インバータ4は受信した設定値を第2記憶装置71の圧力制御パラメータ保存領域71bに保存する。制御パラメータ保存領域27aに保存された設定値の中で可変速制御制御パラメータは制御部25からインバータ4に送信され(矢印不図示)、インバータ4は受信した設定値を第2記憶装置71の可変速制御パラメータ保存領域71aに保存する。
【0047】
制御パラメータ保存領域27aに保存された圧力制御パラメータは、第1処理装置28の吐出し圧力制御部28aの制御パラメータとして用いられる(矢印Y3参照)と共に、主に運転停止信号を算出する第1処理装置28の自動発停制御部28bの制御パラメータとして用いられる(矢印Y4参照)。
【0048】
第1処理装置28の吐出し圧力制御部28aは、圧力センサ15,23にて検出された圧力および設定圧力等に基づいて(矢印Y3参照)目標圧の算出、ならびに当該目標圧と吐出し圧力との偏差を最小とするためのPI演算を行う。当該PI演算には、圧力制御パラメータとして制御パラメータ保存領域27aに保存された設定値であるPI乗数を用いる。
【0049】
第1処理装置28の自動発停制御部28bは、圧力センサ15にて検出された圧力および始動圧に基づいて(矢印Y4参照)ポンプ2の始動を判断する。また、自動発停制御部28bは、フロースイッチ12にて検出された過少水量および蓄圧運転に関する各種設定値(矢印Y4参照)に基づいてポンプ2の停止を判断する。また、自動発停制御部28bは、各種センサの検知値と各種設定値に基づいてポンプ2の異常停止を判断する。
【0050】
吐出し圧力制御部28aと自動発停制御部28bの算出結果は、第1処理装置28の速度制御部28cに入力される(矢印Y5、Y6参照)。速度制御部28cは、吐出し圧力制御部28aと自動発停制御部28bの算出結果に基づいてインバータ4への発停信号および指令周波数を算出し、これらをインバータ4へ送信する(矢印Y7参照)。
【0051】
発停信号および指令周波数を受信した第2処理装置72の電動機制御部72aは、第2記憶装置71の可変速制御パラメータ保存領域71aに保存されているパラメータ(例えば、加速時間、減速時間、ストール電流値等)を用いて、モータ3の周波数が当該指令周波数となるよう可変速制御を行う。ここで、圧力制御パラメータ保存領域71bの圧力制御パラメータとして保存されている設定値は、制御部25にて用いられる給水装置の運転にのみ必要な設定値である。つまり、インバータ4の第2記憶装置71は、インバータ4自身の可変速制御で用いるパラメータや履歴等の情報を記憶する可変速制御パラメータ保存領域71aに加えて、制御部25でのみ用いる給水装置の運転に必要な設定値や制御部25で作成した各種履歴の情報を保存する圧力制御パラメータ保存領域71bを有する。
【0052】
また、制御部25は、上述した所定の条件が成立したら、インバータ4に指令を発して、第2記憶装置71の圧力制御パラメータ保存領域71bに保存された設定値を、制御部25に送信させる(矢印Y20参照)。制御部25は、インバータ4から送られた設定値を、第1記憶装置27の制御パラメータ保存領域27aに保存し、制御パラメータ保存領域27aに保存した設定値を用いて吐出し圧力制御部28a、自動発停制御部28bを動作させる。
【0053】
図3は、設定値のバックアップ動作を説明するフローチャートである。
ステップ1-1では、ユーザーは、操作装置47の操作部55を操作し、操作装置47は、吐出し圧力の設定圧、流入圧力低下のしきい値などの設定値を制御部25に入力する。
ステップ1-2では、制御部25は、操作装置47から入力された設定値を第1記憶装置27内に保存する。さらに、第1処理装置28は、設定値が第1記憶装置27内に保存されたときの日時を第1記憶装置27に記録させる。この日時は、保存された設定値に関連付けられた状態で設定値の変更履歴として第1記憶装置27に記録される。なお、第1記憶装置27に記録される変更履歴は、保存された日時、保存したユーザー、変更前の設定値などが含まれてもよい。
ステップ1-3では、第1処理装置28は、第1カウンタ75に指令を発して現在のカウント数に1を加算させる。
【0054】
ステップ1-4では、制御部25は、上記ステップ1-1で制御部25に入力された設定値を各インバータ4に送信する。
ステップ1-5では、各インバータ4は、設定値を第2記憶装置71内の圧力制御パラメータ保存領域71bに保存する。さらに、第2処理装置72は、設定値が第2記憶装置71内に保存されたときの日時を第2記憶装置71に記録させる。この日時は、保存された設定値に関連付けられた状態で設定値の変更履歴として第2記憶装置71に記録される。なお、第2記憶装置71に記録される変更履歴は、保存された日時、保存したユーザー、変更前の設定値などが含まれてもよい。
ステップ1-6では、各インバータ4の第2処理装置72は、第2カウンタ76に指令を発して第2カウンタ76の現在のカウント数に1を加算させる。
【0055】
このようにして、制御部25に入力された設定値は、制御部25の第1記憶装置27と、インバータ4の第2記憶装置71の両方に保存(記憶)される。したがって、第1記憶装置27および第2記憶装置71に保存されている設定値は、すべて同じ数値である。本実施形態によれば、制御部25の第1記憶装置27に保存されている設定値が不測の故障などにより消失した場合でも、インバータ4の第2記憶装置71に保存されている設定値を、交換された新たな制御部25に送信し、その設定値を新たな制御部25の第1記憶装置27内に保存することができる。結果として、交換された新たな制御部25は、元々使用されていた適切な設定値に基づいて給水装置の運転を制御することができる。例えば、制御部25は、第1記憶装置27内に保存された吐出し圧力の設定圧力に基づいてポンプ2の回転速度を決定し、ポンプ2の動作を適切に制御することができる。
【0056】
制御部25は、各ポンプ2の運転履歴(例えば、各ポンプ2の通算運転時間、各ポンプ2の運転回数など)を、定期的に作成し第1記憶装置27に保存するように構成される。制御部25は、各ポンプ2の運転履歴、故障履歴、および/または変更履歴等の各種履歴を作成し第1記憶装置27に保存すると、その履歴をインバータ4に送り、インバータ4は当該履歴を第2記憶装置71の圧力制御パラメータ保存領域71bに保存するように構成される。したがって、制御部25にて作成される各種履歴が第1記憶装置27に保存されると、第2記憶装置71に自動的にバックアップされる。
【0057】
制御部25が新たな制御部25に交換された場合は、インバータ4の第2記憶装置71に保存されている履歴を、交換された新たな制御部25に送信し、その履歴を新たな制御部25の第1記憶装置27内に保存することができる。結果として、交換された新たな制御部25は、従前の制御部25から引き継いだ履歴に基づいて給水装置を適切に管理することができる。
【0058】
次に、故障した制御部25を新たな制御部25に交換した後の動作の流れを
図4のフローチャートを参照して説明する。なお、故障した制御部25と、新たな制御部25は同じ構成を有している。
ステップ2-1では、新たに交換された制御部25の電源スイッチ43が入れられ、電力の制御部25への供給が開始される。制御部25に最初に電力が投入されたとき(つまり、制御部25の電源スイッチ43が最初に入れられたとき)、制御部25の第1カウンタ75のカウント数は0になる。
【0059】
ステップ2-2では、制御部25の第1処理装置28は、第1カウンタ75のカウント数を、2台のインバータ4の第2カウンタ76のカウント数と比較する。
第1カウンタ75のカウント数が、第2カウンタ76のカウント数と同じ場合、ステップ2-3において、制御部25は、第1記憶装置27に保存されている設定値を各インバータ4に送信する。ここで、第1カウンタ75のカウント数が、第2カウンタ76のカウント数と同じとなる場合の例としては、新たな制御部25に交換した後に、設定値をその制御部25に入力したために第1カウンタ75のカウント数が0以外となった場合や、故障した制御部25を給水装置から一旦取り外したが、その故障が軽微であって修理によって回復できたために、その制御部25を引き続き使用する場合などが挙げられる。
【0060】
ステップ2-4では、2台のインバータ4は、制御部25から送られてきた設定値をそれぞれの第2記憶装置71に保存する。より具体的には、各インバータ4は、第2記憶装置71に保存されている現在の設定値を、制御部25から送られてきた設定値に書き換える。結果として、制御部25および2台のインバータ4に保存されている設定値は、すべて同じ数値となる。
【0061】
一方、第1カウンタ75のカウント数が、第2カウンタ76のカウント数と異なる場合は、ステップ2-5にて、制御部25の第1処理装置28は、制御部25の第1記憶装置27に保存されている設定値(通常は工場出荷時の初期設定値)か、またはインバータ4の第2記憶装置71に保存されている設定値のどちらを給水装置の運転に使用すべきか、ユーザーに選択させるための案内を表示装置56に表示させる。具体的には、当該案内は、保存された設定値と、第1記憶装置27またはインバータ4のいずれかを選択する選択手段とを示す。設定値の表示としては、制御部25の第1記憶装置27に保存されている設定値の一覧とインバータ4の第2記憶装置71に保存されている設定値の一覧を並べて表示する。または、制御部25の第1記憶装置27に保存されている設定値と異なるインバータ4の第2記憶装置71に保存されている設定値を一覧表示する等の例が挙げられる。また、選択手段は専用ボタンや操作部55の操作ボタン54等の操作手順の例が挙げられる。また、表示装置56には、第1記憶装置27並びに第2記憶装置71に保存されている設定値の変更履歴がユーザーに選択させるための案内に表示されるとよい。変更履歴ではいつ変更されたか等の情報が示されるため、ユーザーは最後に変更された設定値を選択するなど変更履歴を基に設定値を選択できる。
ここで、第1カウンタ75のカウント数が、第2カウンタ76のカウント数と異なる場合の例としては、制御部25が交換されたのに対して、インバータ4は交換されなかった場合が挙げられる。
【0062】
ステップ2-6では、ユーザーは、操作部55の操作ボタン54を操作して、制御部25の設定値か、またはインバータ4の設定値のいずれかを選択する。
上記ステップ2-6において制御部25の設定値を選択した場合、処理フローは上記ステップ2-3に進む。制御部25の設定値を選択する場合の例としては、制御部25に保存されている工場出荷時の初期設定値が、給水装置の運転にそのまま使用できるような場合が挙げられる。例えば、工場出荷時の初期設定値が、給水装置が設置されている地域の水道局で規定されている流入圧力低下のしきい値と等しい場合や、初期設定の設定圧で供給先の給水が賄える吐出し圧力以下のような場合である。
【0063】
一方、上記ステップ2-6においてユーザーがインバータ4の設定値を選択した場合は、制御部25は、所定の条件が成立したと判断する。そして、ステップ2-7において、制御部25の第1処理装置28は、2つのインバータ4のそれぞれの第2カウンタ76のカウント数を比較し、カウント数が大きい方のインバータ4に指令を発して、そのインバータ4の第2記憶装置71に保存されている設定値を、制御部25に送信させる。なお、給水装置が1つのインバータ4のみを備えている場合は、2つのインバータ4のそれぞれの第2カウンタ76のカウント数を比較する動作は省略される。
ステップ2-8では、設定値は、第1記憶装置27に送られ、第1記憶装置27に保存される。結果として、制御部25およびインバータ4に保存されている設定値は、同じ数値となる。制御部25は、第1記憶装置27内に保存された設定値に基づいて給水装置の運転を適切に制御することができる。
【0064】
ステップ2-9では、インバータ4は、2つの第2カウンタ76のカウント数のうちの大きい方を制御部25に送り、制御部25は、第1カウンタ75のカウント数を、インバータ4から送られてきた第2カウンタ76のカウント数に一致させる。
【0065】
上記ステップ2-4および上記ステップ2-9の後、ステップ2-10にて、第1処理装置28は、設定完了のメッセージを表示装置56に表示させる。その後、ステップ2-11にて、給水装置の運転が再開される。
【0066】
一実施形態では、上述したステップ2-5,2-6は省略されてもよい。この場合は、制御部25は、上記ステップ2-2でのカウンタ数の比較の結果、第1カウンタ75のカウント数が第2カウンタ76のカウント数と異なる場合は、所定の条件が成立したと判断する。そして、ステップ2-7において、制御部25の第1処理装置28は、2つのインバータ4のそれぞれの第2カウンタ76のカウント数を比較し、カウント数が大きい方のインバータ4に指令を発して、そのインバータ4の第2記憶装置71に保存されている設定値を、制御部25に送信させる。以降のステップは同様に行われる。
【0067】
他の実施形態では、上述したステップ2-2は省略されてもよい。この場合は、制御部25は、上記ステップ2-1で新たに交換された制御部25の電源スイッチ43が入れられた後、制御部25の第1処理装置28は、第1カウンタ75のカウント数を第2カウンタ76のカウント数と比較せずに、ステップ2-5にて、制御部25の第1記憶装置27に保存されている設定値か、またはインバータ4の第2記憶装置71に保存されている設定値のどちらを給水装置の運転に使用すべきか、ユーザーに選択させるための案内を表示装置56に表示させる。ステップ2-5にて制御部25内の設定値が選択された場合は、以降のステップは同様に行われる。ステップ2-5にてインバータ4内の値が選択された場合は、ステップ2-7に代えてどのインバータ4の値を用いるかをユーザーに選択させ、当該選択された設定を制御部25に送信してもよい。以降のステップは同様に行われる。
【0068】
図5は、設定値のバックアップ動作の他の実施形態を説明する機能ブロック図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0069】
本実施形態では、操作装置47は、制御部25およびインバータ4に有線通信または無線通信で接続された外部操作装置である。この操作装置47は、
図1に示す操作装置47と同様に、表示装置56と、入力装置として操作部55を備えている。
【0070】
操作装置47は、設定値を制御部25に入力し、制御部25は設定値を第1記憶装置27の制御パラメータ保存領域27aに保存する(矢印Y1参照)。さらに、操作装置47は、上記設定値をインバータ4に直接入力し(矢印Y2参照)、インバータ4は設定値を第2記憶装置71の圧力制御パラメータ保存領域71bに保存する。
【0071】
また、制御パラメータ保存領域27aに保存された設定値は、第1処理装置28の吐出し圧力制御部28aの制御パラメータとして用いられる(矢印Y3参照)と共に、主に運転停止信号を算出する第1処理装置28の自動発停制御部28bの制御パラメータとして用いられる(矢印Y4参照)。
【0072】
第1処理装置28の吐出し圧力制御部28aは、圧力センサ15,23にて検出された圧力および設定圧等に基づいて目標圧の算出、ならびに当該目標圧と吐出し圧力との偏差を最小とするためのPI演算を行う。吐出し圧力制御部28aと自動発停制御部28bの算出結果は、制御パラメータとして第1処理装置28の速度制御部28cに入力される(矢印Y5、Y6参照)。速度制御部28cは、当該制御パラメータに基づいてインバータ4への発停信号および指令周波数を算出し、これらをインバータ4へ送信する(矢印Y7参照)。
【0073】
発停信号および指令周波数を受信した第2処理装置72の電動機制御部72aは、第2記憶装置71の可変速制御パラメータ保存領域71aに保存されているパラメータを用いて、モータ3の周波数が当該指令周波数となるよう可変速制御を行う。ここで、圧力制御パラメータ保存領域71bのパラメータは、制御部25にて用いられる制御パラメータである。つまり、インバータ4の第2記憶装置71は、インバータ4自身の可変速制御で用いるパラメータを記憶する可変速制御パラメータ保存領域71aに加えて、制御部25にて用いる設定値を保存する圧力制御パラメータ保存領域71bを有する。
【0074】
また、制御部25は、所定の条件が成立したら、インバータ4に指令を発して、第2記憶装置71の圧力制御パラメータ保存領域71bに保存された設定値を、制御部25に送信させる(矢印Y20参照)。制御部25は、インバータ4から送られた設定値を、第1記憶装置27の制御パラメータ保存領域27aに保存する。
【0075】
なお、設定値を制御部25に送信させる(矢印Y20参照)ための所定の条件とは、例えば、以下(1)、(2)のうち、いずれかの条件を含む。
(1)ユーザーによる操作装置47への所定の操作。
例えば、操作装置47が所定の値を入力する不図示の専用のボタンを有する、もしくは操作装置47への所定の操作など、ユーザーからの指令によって操作装置47がインバータ4の設定値を制御部25に送信するための指令を送信し、制御部25が当該指令を受信したときに、上述の所定の条件を満たしたとして設定値を制御部25に送信させる。
(2)制御部25の電源起動時に、第1カウンタ75のカウント数が、第2カウンタ76のカウント数と異なる。
これは、
図4のステップ2-2の判断に該当する。
【0076】
図6は、設定値のバックアップ動作を説明するフローチャートである。
ステップ3-1では、ユーザーは、操作装置47の操作部55を操作し、操作装置47は、吐出し圧力、流入圧力などの設定値を制御部25に入力する。
ステップ3-2では、制御部25は、操作装置47から入力された設定値を第1記憶装置27内に保存する。さらに、第1処理装置28は、設定値が第1記憶装置27内に保存されたときの日時を第1記憶装置27に記録させる。この日時は、保存された設定値に関連付けられた状態で設定値の変更履歴として第1記憶装置27に記録される。なお、第1記憶装置27に記録される変更履歴は、保存された日時、保存したユーザー、変更前の設定値などが含まれてもよい。
ステップ3-3では、第1処理装置28は、第1カウンタ75に指令を発して現在のカウント数に1を加算させる。
【0077】
ステップ3-4では、操作装置47は、上記設定値を、制御部25を経由せずに各インバータ4に直接入力する。なお、本実施形態では、制御部25に設定値を入力する操作装置47と各インバータ4に設定値を入力する操作装置47とは同じ端末を用いているが、一実施形態では、制御部25と各インバータ4とは異なる端末を用いてもよい。なお、操作装置47は、パソコンやスマートフォン等に制御部25用および/またはインバータ4用のアプリケーションをダウンロードした汎用端末を用いてもよい。
ステップ3-5では、各インバータ4は、設定値を第2記憶装置71内に保存する。さらに、第2処理装置72は、設定値が第2記憶装置71内に保存されたときの日時を第2記憶装置71に記録させる。この日時は、保存された設定値に関連付けられた状態で第2記憶装置71に記録される。
ステップ3-6では、各インバータ4の第2処理装置72は、第2カウンタ76に指令を発して第2カウンタ76の現在のカウント数に1を加算させる。
このようにして、設定値は、制御部25の第1記憶装置27と、インバータ4の第2記憶装置71の両方に保存(記憶)される。
【0078】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0079】
1A 吸込み口
1B 吐出し口
2 ポンプ
3 電動機
4 インバータ
6 吸込管
7 給水管
9 逆止弁
11 水道本管
12 フロースイッチ
15 吐出し圧力センサ
17 圧力タンク
20 吐出し集合管
20A 吐出し管
20B 流出管
22 サーミスタ(温度センサ)
23 流入圧力センサ
25 制御部
26 通信ポート
27 第1記憶装置
27a 制御パラメータ保存領域
28 第1処理装置
30 通信線
33 圧力信号入力端子
34 流量信号入力端子
35 温度信号入力端子
38 漏電遮断器
39 トリップ信号入力端子
40 商用電源
41 電力線
42 電力線
43 電源スイッチ
45 出力端子
47 操作装置
52 運転切替スイッチ
54 操作ボタン
55 操作部
56 表示装置
64 通信ポート
71 第2記憶装置
71a 可変速制御パラメータ保存領域
71b 圧力制御パラメータ保存領域
72 第2処理装置
75 第1カウンタ
76 第2カウンタ