(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び位相差材
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230726BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G02B5/30
C08F20/10
(21)【出願番号】P 2020557835
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046645
(87)【国際公開番号】W WO2020111198
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018223167
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194846(WO,A1)
【文献】特開2016-224151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C08F 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、130℃以下で液晶性を呈する
とともに、光二量化する構造部位及び光異性化する構造部位の何れも含まない重合体、
(B)成分として、光二量化する構造部位又は光異性化する構造部位を有する低分子化合物、
を含有する液晶配向剤。
【請求項2】
(A)成分の重合体が、下記式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化1】
[式(1)中、
X
1は、-O-CO-又は-CO-O-を表し、
X
2は、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-NH-CO-、又は-CO-NH-を表し、
R
1は、水素原子又はメチル基を表し、
p1は、2~12の整数を表し、
Rは、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ環上の水素原子は炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基で置換されてもよく、
Z
1~Z
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子
数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基を表す。]
【請求項3】
(A)成分の重合体が、さらに下記式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位を有する共重合体である、請求項2に記載の液晶配向剤。
【化2】
[式(2)中、
X
3は、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-NH-CO-、又は-CO-NH-を表し、
Yは、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、ベンゾフェノン、及びフェニルベンゾエートからなる群から選ばれる環において該環上の2つの水素原子を除いた2価の基を表し、それぞれ環上の水素原子は炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基で置換されていてもよく、
R
2は、水素原子又はメチル基を表し、
p2は、それぞれ独立に、2~12の整数を表す。]
【請求項4】
前記(B)成分が、下記式(6)で表される化合物である、請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化3】
[式(6)中、
A
1及びA
2は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基を表し、
Q
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロアルキル基、-OH基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のハロアルコキシ基、-NH
2基、炭素原子数1~6のアルキルアミノ基、ジ(炭素原子数1~6のアルキル)アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、下記式(c-1)で表される基:
【化4】
(式(c-1)中、破線はQ
2又はベンゼン環との結合手を表し、A
3及びA
4は、それ
ぞれ独立に、水素原子、又はメチル基を表し、Q
9は-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のハロアルコキシ基、1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基を表し、当該1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基の水素原子は、それぞれ独立に下記Q
4乃至Q
7で定義された原子及び基からなる群から選ばれる原子又は基で置換されていてもよい。)、又は、下記式(c-2)で表される基:
【化5】
(式(c-2)中、破線はQ
2又はベンゼン環との結合手を表し、R
101は炭素原子数1~30のアルキレン基を表し、このアルキレン基の1つ若しくは複数の水素原子は、フッ素原子又は有機基で置き換えられていてもよく、また、R
101中の-CH
2CH
2-が-CH=CH-に置き換えられていてもよく、さらに、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、該アルキレン基は-O-、-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCO-、-NH-、-NHCONH-及び-CO-からなる群から選ばれる基によって中断されていてもよく、M
1は水素原子又はメチル基を表す。)を表し、Q
2は2価の芳香族基、2価の脂環族基、2価の複素環式基、又は2価の縮合環式基を表し、当該2価の芳香族基、2価の脂環族基、2価の複素環式基、又は2価の縮合環式基の水素原子は、それぞれ独立に下記Q
4乃至Q
7で定義された原子及び基からなる群から選ばれる原子又は基で置換されていてもよく、
Q
3は単結合、酸素原子、-COO-、又は-OCO-を表し、
qは0~3の整数を表し、
Q
4乃至Q
7はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロアルキル基、-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群から選ばれる原子又は基を表し、またQ
4は前記式(c-1)で表される基であってもよく、
Q
8は-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のハロアルコキシ基、1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基を表し、当該1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基の水素原子は、それぞれ独立に上記Q
4乃至Q
7で定義された原子及び基からなる群から選ばれる原子又は基で置換されていてもよい。]
【請求項5】
前記(B)成分が、前記(A)成分の重合体の全質量に対して0.5質量%~70質量%の割合にて含有される、請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のいずれか一項に記載の液晶配向剤の硬化膜からなる液晶配向膜。
【請求項7】
請求項
6に記載の液晶配向膜を用いて得られる位相差材。
【請求項8】
請求項
7に記載の位相差材を具備する電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルムなどの分子配向を制御した光学素子や液晶配向膜の製造に好適である液晶配向剤、液晶配向膜及び位相差材に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、光照射又は光照射と加熱冷却により複屈折を誘起する側鎖型液晶高分子に関して、特許文献1及び特許文献2において、光照射又は光照射と加熱処理する操作を含む工程によって作製される位相差フィルム及びその製造法が提案されている。また、特許文献3において、光照射により液晶配向能を付与させた液晶配向膜及びその製造法が提案されている。さらに特許文献4では、高分子構造の側鎖に光反応性基を有し、前記側鎖が相互に水素結合して2量体を形成する配向材が提案されている。
【0003】
これら特許文献1~4で提案した材料では、基材に塗布して製膜した後、直線偏光性紫外線を照射すると、高分子側鎖の軸選択的な光架橋反応によって異方性を付与でき、更にこのような膜を加熱すると、材料自体が液晶性を有することから未反応側鎖が軸選択的に光架橋した側鎖に沿って配向したり、光架橋した側鎖の方向と垂直方向に配向したりすることにより、膜全体を分子配向させることができる。このような膜は、分子配向により複屈折性が発現することから位相差フィルムとして利用することができ、また、膜表面に液晶分子を接触させると液晶分子の配向能を発現することから液晶配向膜としても機能する。
【0004】
このように光照射と加熱により分子配向するという特性から、これら材料は様々な用途で利用することができる。しかし、これら材料では光反応性が充分であるとはいえず、照射時間の長時間化などが必要とされ、さらに光照射後の熱処理に150℃を超える高い温度とかなりの時間が必要とされ、好ましくない。また、特許文献1で開示されているように、光反応性を改善し短時間の直線偏光紫外線の照射で分子配向を誘起できる材料も提案されているが、光反応性の改善とは充分とはいえない。
【0005】
上記光照射後の熱処理において、高い温度で長時間の処理が必要とされる場合、一般に耐熱性の低いプラスチック材料を基材とするフィルムへの適用は困難となる。さらに、これらの光学性材料フィルムを得る場合には、通常、材料を有機溶媒に溶解した溶液から被膜を形成することとなるが、上記先行技術で開示された材料では、溶解性の問題から、一般的に用いられる低沸点溶媒の使用を困難にせしめていた。
【0006】
一方、近年、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子を用いた新しい光配向法(以下、配向増幅法とも称する)が検討されている。これは、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子を有する膜に、偏光照射によって配向処理を行い、その後、その側鎖型高分子膜を加熱する工程を経て、配向制御能が付与された塗膜を得るというものである。このとき、偏光照射によって発現した僅かな異方性がドライビングフォースとなり、液晶性の側鎖型高分子自体が自己組織化により効率的に再配向する。その結果、液晶配向膜として高効率な配向処理が実現し、高い配向制御能が付与された液晶配向膜を得ることができる(例えば、特許文献5を参照のこと。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-202409号公報
【文献】特開2003-307618号公報
【文献】特開2002-90750号公報
【文献】特開2007-304215号公報
【文献】国際公開第2014/054785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
配向増幅法に用いられる液晶配向膜に対して、高効率で異方性を導入に最適な偏光紫外線の照射量は、その塗膜における感光性基の光反応量が最適となる偏光紫外線の照射量に対応する。配向増幅法に用いられる液晶配向膜に対して偏光した紫外線を照射した結果、光反応する側鎖の感光性基が少ないと、十分な光反応量とならない。その場合、その後に加熱しても十分な自己組織化は進行しない。一方、光反応する側鎖の感光性基が過剰となると、得られる膜は剛直になって、その後の加熱による自己組織化の進行の妨げとなることがある。
【0009】
現在、配向増幅法に用いられる液晶配向膜の中には、用いられている重合体中の光反応性基の感度が高い為か、上述した最適な偏光紫外線の照射量の領域が狭いものがある。その結果、液晶表示素子の製造効率の低下が問題となっている。
【0010】
また、従来の配向増幅法では、用いられる重合体自体に光反応性基を有しているか、あるいは、重合体中に光反応性基が含まれていない場合においては、熱や光により重合体と化学結合を形成しうるような官能基などを有する重合体修飾基を持った添加剤を加え、重合体を化学修飾することが必要であり、光反応性基を持たない重合体のみからなる高分子膜で高度に一軸配向させた薄膜を得ることは困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、高効率で配向制御能が付与され、かつ、最適な偏光紫外線照射量や最適な焼成温度に調整が可能なプロセスマージンの広い液晶配向膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成するべく鋭意検討を行った結果、以下の発明を見出した
<1> (A)成分として、130℃以下で液晶性を呈する重合体、(B)成分として光二量化する構造部位又は光異性化する構造部位を有する低分子化合物を含有する液晶配向剤。
【0013】
<2> 前記<1>の液晶配向剤において、(A)成分の重合体が下記式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体であるのがよい。
【化1】
[式(1)中、
X
1は、-O-CO-又は-CO-O-である。
X
2は、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-NH-CO-、又は-CO-NH-である。
R
1は、水素原子又はメチル基である。
p1は、2~12の整数である。
Rは、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基からなる群から選ばれる基であり、それぞれ環上の水素原子は炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基で置換されてもよい。
Z
1~Z
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。]
【0014】
<3> 前記<2>の液晶配向剤において、(A)成分の重合体が、さらに下記式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位を有する共重合体であるのがよい。
【化2】
[式(2)中、
X
3は、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-NH-CO-、又は-CO-NH-である。
Yは、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、ベンゾフェノン、及びフェニルベンゾエートからなる群から選ばれる環において該環上の2つの水素原子を除いた2価の基を表し、それぞれ環上の水素原子は炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基で置換されていてもよい。
R
2は、水素原子又はメチル基である。
p2は、それぞれ独立に、2~12の整数である。]
【0015】
<4> 前記<1>~<3>のいずれかの液晶配向剤において、前記(A)成分は、光二量化する構造部位及び光異性化する構造部位の何れか一方又は双方を含まない重合体であるのがよい。
【0016】
<5> 前記<1>~<4>のいずれかの液晶配向剤において、(B)成分が下記式(6)で表される化合物であるのがよい。
【化3】
[式(6)中、
A
1及びA
2は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基を表し、
Q
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロアルキル基、-OH基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のハロアルコキシ基、-NH
2基、炭素原子数1~6のアルキルアミノ基、ジ(炭素原子数1~6のアルキル)アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、下記式(c-1)で表される基:
【化4】
(式(c-1)中、破線はQ
2又はベンゼン環との結合手を表し、A
3及びA
4は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基を表し、Q
9は-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のハロアルコキシ基、1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基であり、当該1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基の水素原子は、それぞれ独立に下記Q
4乃至Q
7で定義された原子及び基からなる群から選ばれる原子又は基で置換されていてもよい。)、又は、下記式(c-2)で表される基:
【化5】
(式(c-2)中、破線はQ
2又はベンゼン環との結合手を表し、R
101は炭素原子数1~30のアルキレン基であり、このアルキレン基の1つ若しくは複数の水素原子は、フッ素原子又は有機基で置き換えられていてもよい。また、R
101中の-CH
2CH
2-が-CH=CH-に置き換えられていてもよく、さらに、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、該アルキレン基は-O-、-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCO-、-NH-、-NHCONH-及び-CO-からなる群から選ばれる基によって中断されていてもよく、M
1は水素原子又はメチル基である。)を表し、
Q
2は2価の芳香族基、2価の脂環族基、2価の複素環式基、又は2価の縮合環式基であり、当該2価の芳香族基、2価の脂環族基、2価の複素環式基、又は2価の縮合環式基の水素原子は、それぞれ独立に下記Q
4乃至Q
7で定義された原子及び基からなる群から選ばれる原子又は基で置換されていてもよく、
Q
3は単結合、酸素原子、-COO-、又は-OCO-であり、
qは0~3の整数であり、
Q
4乃至Q
7はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロアルキル基、-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群から選ばれる原子又は基であり、またQ
4は前記式(c-1)で表される基であってもよく、
Q
8は-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のハロアルコキシ基、1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基であり、当該1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基の水素原子は、それぞれ独立に上記Q
4乃至Q
7で定義された原子及び基からなる群から選ばれる原子又は基で置換されていてもよい。]
【0017】
<6> 前記<1>~<5>のいずれかの液晶配向剤において、前記(B)成分が、前記(A)成分の重合体の全質量に対して0.5質量%~70質量%の割合にて含有されるのがよい。
【0018】
<7> 前記<1>~<6>のいずれかに記載の液晶配向剤の硬化膜からなる、液晶配向膜。
<8> 前記<7>に記載の液晶配向膜を用いて得られる位相差材。
<9> 前記<8>に記載の位相差材を具備する電子デバイス。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、比較的低温の焼成であっても、高効率で配向制御能を付与でき、かつ、最適な偏光紫外線照射量の領域が広いか、もしくは、高分子液晶の液晶発現温度を好適に選択可能である液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、該液晶配向膜を用いて得られる位相差材を提供することができる。さらには、該液晶配向剤を用いることで位相差フィルムなどの光学素子の製造におけるプロセスマージン(偏光紫外線照射量や焼成温度)の広い高分子フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0021】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、前記したように、(A)成分として、130℃以下で液晶性を呈する重合体を含有するとともに、(B)成分として光二量化する構造部位、又は光異性化する構造部位を有する低分子化合物を含有することを特徴とする。
【0022】
上記構成要件を満たす組成物が本発明の課題を解決し得る効果を奏するかは定かではないが、概ね以下のように考えられる。すなわち、上記構成要件を満たす組成物を基材に塗布してできる膜は、(A)成分の重合体に(B)成分の低分子化合物が分散された形態を呈する。この塗膜に直線偏光性紫外線を照射すると、分散された(B)成分が光二量化もしくは光異性化を起こし、塗膜に異方性を付与する。更にこの状態にて膜を加熱すると、分散された(B)成分によって発現した僅かな異方性がドライビングフォースとなり、液晶性を有する(A)成分の重合体自体が自己組織化により効率的に再配向する。この際(A)成分は130℃以下で液晶性を呈する重合体であるため、前述の膜の加熱条件が低温であっても再配向することが可能となる。
【0023】
<<(A)成分>>
(A)成分は、130℃以下で液晶性を呈する重合体である。好ましくは、前記式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体である。また、好ましくは式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位に加え、前記式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位をさらに有する共重合体である。なお本明細書では式(1)で表される単量体と式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位を含む共重合体について、単に“重合体”と表す場合がある。
本発明の一つの好ましい態様において、自己組織化により効率的に再配向するという観点から、前記(A)成分はその構造中に光二量化基も光異性化基も含有しない(一方又は双方とも)重合体であることが好ましい。
【0024】
上記した式(1)及び式(2)における、X1、X2、X3、Y、Z1~Z4、R1、R2、R、p1、及びp2は、それぞれ、上記で定義したとおりであるが、なかでも、それぞれ、X2、及びX3は、-O-、-O-CO-、又は-CO-O-であるのが好ましく、Yは、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、又はフェニルベンゾエートから選ばれる環において該環上の2つの水素原子を除いた2価の基であるのが好ましく、Z1~Z4は、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、又はハロゲン原子であるのが好ましく、Rは、フェニル基又はビフェニル基であるのが好ましい。また、p1、及びp2は、4~10であるのが好ましい。
【0025】
また、本発明において、上記式(1)で表される単量体の好ましい具体例としては、下記の構造の単量体が挙げられる。
【化6】
式中、R
1およびp1は前記の意味を表す。
【0026】
本発明において、上記式(2)で表される単量体の好ましい具体例としては、下記の構造の単量体が挙げられる。
【化7】
式中、R
2およびp2は前記の意味を表す。
【0027】
本発明の液晶配向剤に含有される、上記式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位と上記式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体は、以下の式(5)で表される。
【化8】
【0028】
上記式(5)における、X1、X2、X3、Y、Z1~Z4、R1、R2、R、p1、及びp2は、それぞれ、好ましい場合も含めて、上記式(1)、及び式(2)における定義と同じである。
また、n/mで表される(上記式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位)/(上記式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位)のモル比率は、好ましくは0/100~90/10であり、特に好ましくは、20/80~50/50である。
【0029】
上記式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位と、所望により上記式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する(共)重合体は、その数平均分子量が好ましくは1,000~100,000であり、なかでも、5,000~30,000であることが好ましい。この数平均分子量が上記範囲よりも小さい場合には分子配向が誘起できなくなり、また、上記範囲よりも大きい場合には製造が著しく困難になると共に、低沸点溶媒への溶解性が低下するため好ましくない。
【0030】
本発明の液晶配向剤に含有される、上記式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位と、所望により上記式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する(共)重合体は、上記単量体に加え、液晶性を損なわない程度に耐熱性を向上させるための架橋性単量体や、液晶性を損なうことのない感光性の単量体、又は液晶性の発現温度を調整するための単量体などを併用し、これらを共重合させた共重合体とすることができる。
【0031】
[重合体の製法]
(A)成分の重合体は、上記式(1)で表される単量体の重合により、また式(1)で表される単量体と、所望により上記式(2)で表される単量体、さらに必要に応じて液晶性の発現能を損なわない範囲でその他単量体を含むモノマー混合物の共重合によって得ることができる。
【0032】
その他の単量体(モノマー)としては、例えば工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーが挙げられる。
【0033】
その他のモノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0034】
不飽和カルボン酸の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0035】
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0036】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
またアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物として、グリシジル(メタ)アクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、および(3-エチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物も用いることができる。なお、例えば上記(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を意味する。
【0037】
ビニル化合物としては、例えば、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0038】
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0039】
マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0040】
(A)成分の重合体の製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、式(1)で表される単量体や式(2)で表される単量体(特定側鎖モノマー)に含まれるビニル基や(メタ)アクリロイル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、アニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0041】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤や、可逆的付加-開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができる。
【0042】
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物であるケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類(ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシシクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、および2,2’-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0043】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-イソプロピルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’-トリ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2-(4’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジ(メトキシカルボニル)-4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’-ジ(メトキシカルボニル)-4,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジ(メトキシカルボニル)-3,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(3-メチル-3H-ベンゾチアゾール-2-イリデン)-1-ナフタレン-2-イル-エタノン、又は2-(3-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-2(3H)-イリデン)-1-(2-ベンゾイル)エタノン等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することもできる。
【0044】
ラジカル重合法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。
【0045】
重合反応に用いる有機溶媒としては、生成した高分子が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0046】
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
【0047】
これら有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、生成する高分子を溶解させない溶媒であっても、生成した高分子が析出しない範囲で、上述の有機溶媒に混合して使用してもよい。
【0048】
また、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気(好ましくは脱酸素)されたものを用いることが好ましい。
【0049】
ラジカル重合の際の重合温度は30℃~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50℃~100℃の範囲である。また、反応は任意の単量体濃度で行うことができるが、単量体濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、単量体濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、モノマー濃度が、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0050】
上述のラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1モル%~10モル%であることが好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤などを追加することもできる。
【0051】
[重合体の回収]
上述の反応により得られた、重合体の反応溶液から、生成した高分子を回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して、それら重合体を沈殿させればよい。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等を挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2回~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0052】
本発明の液晶配向剤に含有される(A)成分の重合体の分子量は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性、および塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)が、2,000~1,000,000が好ましく、より好ましくは、5,000~100,000である。
【0053】
<(B)成分>
本発明の液晶配向剤は、(B)成分として、光二量化する構造部位、又は光異性化する構造部位を有する低分子化合物を含有する。ここで、低分子化合物とは、重合体ではないことを意味する。また、(B)成分の低分子化合物の分子量は、(A)成分との相溶性の観点から、(A)成分の重合体の重量平均分子量よりも低いことが好ましい。
【0054】
(B)成分の化合物が有することのできる光二量化する構造部位とは、光照射により二量体を形成する部位であり、その具体例としてはシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基等が挙げられる。これらのうち可視光領域での透明性の高さ、光二量化反応性の高さからシンナモイル基が好ましい。
【0055】
また、(B)成分の化合物が光配向性基として有することのできる光異性化する構造部位とは、光照射によりシス体とトランス体とに変わる構造部位を指し、その具体例としてはアゾベンゼン構造、スチルベン構造等からなる部位が挙げられる。これらのうち反応性の高さからアゾベンゼン構造が好ましい。
【0056】
上記光二量化する構造部位として、シンナモイル基を含むけい皮酸部位を有する化合物としては、下記式(6)で表される化合物が好ましい。
【化9】
式(6)中、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基を表し、
Q
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロアルキル基、-OH基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のハロアルコキシ基、-NH
2基、炭素原子数1~6のアルキルアミノ基、ジ(炭素原子数1~6のアルキル)アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、下記式(c-1)で表される基:
【化10】
(式(c-1)中、破線はQ
2又はベンゼン環との結合手を表し、A
3及びA
4は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基を表し、Q
9は-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のハロアルコキシ基、1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基であり、当該1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基の水素原子は、それぞれ独立に下記Q
4乃至Q
7で定義された原子及び基からなる群から選ばれる原子又は基で置換されていてもよい。)、又は、下記式(c-2)で表される基:
【化11】
(式(c-2)中、破線はQ
2又はベンゼン環との結合手を表し、R
101は炭素原子数1~30のアルキレン基であり、このアルキレン基の1つ若しくは複数の水素原子は、フッ素原子又は有機基で置き換えられていてもよい。また、R
101中の-CH
2CH
2-が-CH=CH-に置き換えられていてもよく、さらに、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、該アルキレン基は-O-、-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCO-、-NH-、-NHCONH-及び-CO-からなる群から選ばれる基によって中断されていてもよく、M
1は水素原子又はメチル基である。)を表し、
Q
2は2価の芳香族基、2価の脂環族基、2価の複素環式基、又は2価の縮合環式基であり、当該2価の芳香族基、2価の脂環族基、2価の複素環式基、又は2価の縮合環式基の水素原子は、それぞれ独立に下記Q
4乃至Q
7で定義された原子及び基からなる群から選ばれる原子又は基で置換されていてもよく、
Q
3は単結合、酸素原子、-COO-、又は-OCO-であり、
qは0~3の整数であり、
Q
4乃至Q
7はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロアルキル基、-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群から選ばれる原子又は基であり、またQ
4は前記式(c-1)で表される基であってもよく、
Q
8は-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のハロアルコキシ基、1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基であり、当該1価の芳香族基、1価の脂環族基、1価の複素環式基、又は1価の縮合環式基の水素原子は、それぞれ独立に上記Q
4乃至Q
7で定義された原子及び基からなる群から選ばれる原子又は基で置換されていてもよい。
【0057】
Q2の2価の芳香族基としては、例えば1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン基等を;Q2の2価の複素環式基としては、例えば1,4-ピリジレン基、2,5-ピリジレン基、1,4-フラニレン基等を;Q2の2価の縮合環式基としては、例えば2,6-ナフチレン基等を、それぞれ挙げることができる。中でもQ2としては1,4-フェニレン基が好ましい。
【0058】
なお本発明では、光二量化する構造部位として上記シンナモイル基を有する部位を含む化合物として、シンナモイル基のベンゼン環部分がナフタレン環となった化合物、例えば下記式(6’)で表される化合物を用いることもできる。
【化12】
式(6’)中、A
1、A
2、Q
1、Q
2、Q
3、Q
8及びqは、式(6)中における定義と同義である。
また、Q
15~Q
20は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロアルキル基、-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群から選ばれる原子又は基を表す。
【0059】
上記式(6)で表される化合物の好ましい例としては、例えば下記式(6-1)~(6-5)
【化13】
(上式中、Q
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロアルキル基、-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のハロアルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基、及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基である。)のそれぞれで表されるけい皮酸化合物、当該けい皮酸化合物のアミド化物、及び、当該けい皮酸化合物のC
1-12アルキルエステル化物を挙げることができる。
【0060】
上記式(6)で表される化合物のうち、Q
1、又はQ
4が式(c-1)で表される化合物の好ましい例としては、例えば、下記の構造式(c-1-1)乃至(c-1-3)からなる群から選ばれるけい皮酸化合物、当該けい皮酸化合物のモノアミド化物、当該けい皮酸化合物のジアミド化物、当該けい皮酸化合物のモノC
1-12アルキルエステル化物、及び、当該けい皮酸化合物のジC
1-12アルキルエステル化物を挙げることができる。
【化14】
(上記式中、Q
7は上記式(6)における定義と同義である。)
【0061】
上記式(6)で表される化合物及び式(6’)で表される化合物(けい皮酸類似化合物という)のうち、Q
1が式(c-2)で表される化合物の好ましい例としては、例えば、下記式M1-1乃至M1-4からなる群から選ばれる式で表されるけい皮酸化合物及びけい皮酸類似化合物、当該けい皮酸化合物及びけい皮酸類似化合物のアミド化物、及び、当該けい皮酸化合物及びけい皮酸類似化合物のC
1-12アルキルエステル化物が挙げられる。
【化15】
(式中、M
1は水素原子又はメチル基であり、s1はメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0062】
上記式(6)で表される化合物及び式(6’)で表される化合物は、有機化学の定法を適宜に組み合わせて合成することができる。
【0063】
また、(B)成分である低分子化合物としては、式(6)で表されるけい皮酸化合物や式(6’)で表される化合物のうち、Q8が-OH基である化合物と、一分子中にエポキシ基を1個以上有する低分子化合物とを反応させて得られる化合物を用いることもできる。
【0064】
一分子中にエポキシ基を1個以上有する低分子化合物であるモノエポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、パラキシリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エポキシペンタン、エポキシブタン、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシドール(オキシラニルメタノール)、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート、ペンタメチレンオキシド、エポキシシクロペンタン、エポキシシクロヘキサン等が挙げられる。
【0065】
一分子中にエポキシ基を1個以上有する低分子化合物であるエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物としては、例えば、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3-トリス[p-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル及びビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0066】
また、入手が容易である点から市販品の化合物を用いてもよい。以下にその具体例(商品名)を挙げるが、これらに限定されるものではない:YH-434、YH-434L(日鉄ケミカル&マテリアル(株)(旧:東都化成(株))製)等のアミノ基を有するエポキシ樹脂;エポリードGT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、セロキサイド2021、セロキサイド3000((株)ダイセル(株)製)等のシクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂;jER(登録商標)1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同828(以上、三菱化学(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;jER(登録商標)807(三菱化学(株))製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;デナコールEX-252(ナガセケムテックス(株)製)、CY175、CY177、CY179、アラルダイトCY-182、同CY-192、同CY-184(以上、BASF社製)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製)、jER(登録商標)871、同872(以上、三菱化学(株)製)、ED-5661、ED-5662(以上、セラニーズコーティング(株)製)等の脂環式エポキシ樹脂;デナコールEX-611、同EX-612、同EX-614、同EX-622、同EX-411、同EX-512、同EX-522、同EX-421、同EX-313、同EX-314、同EX-321(ナガセケムテックス(株)製)等の脂肪族ポリグリシジルエーテル、TEPIC(登録商標)(日産化学(株)製)等。
【0067】
上記式(6)で表されるけい皮酸化合物又は式(6’)で表される化合物と上記エポキシ化合物を反応させて(B)成分である化合物を得る際には、エポキシ化合物のエポキシ基1個に対して1乃至1.2等量の上記式(6)で表されるけい皮酸化合物又は式(6’)で表される化合物を、有機溶媒中、室温で反応させればよい。その際の有機溶媒としては、後述する<<有機溶媒>>に記載した溶剤が挙げられる。
【0068】
上記光異性化する構造部位としてアゾベンゼン構造、又はスチルベン構造を有する化合物としては、下記式(7)で表される化合物が好ましい。
【化16】
式(7)中、L
1及びL
2は、それぞれ独立してN又はCHを表し、好ましくはL
1及びL
2の双方がNを表すか、またはL
1及びL
2の双方がCHを表し、
Q
1乃至Q
3は、前記式(6)におけるQ
1乃至Q
3の定義と同じであり、
qは0~3の整数であり、
Q
4乃至Q
7は、前記式(6)におけるQ
4乃至Q
7の定義と同じであり、
Q
10乃至Q
14は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロアルキル基、-OH基、-NH
2基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群から選ばれる原子又は基を表す。
【0069】
式(7)で表される化合物の例としては、アゾベンゼン、4-(フェニルアゾ)安息香酸および4-(フェニルアゾ)フェノール等が挙げられる。
【0070】
上記(B)成分は、上記(A)成分の重合体の全質量に対して0.5質量%~70質量%の割合にて含有されることが好ましく、5質量%~30質量%の割合にて含有されることがより好ましい。また、本発明においては、(B)成分の低分子化合物は、複数種の低分子化合物の混合物であってもよい。
【0071】
<液晶配向剤の調製>
本発明に用いられる液晶配向剤は、塗膜の形成に好適となるように塗布液(ワニス)として調製されることが好ましい。すなわち、(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて後述する各種添加剤を、有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。その際、溶液中の(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて添加される各種添加剤を合計した成分(以下、固形分とも称する)の含有量は、1質量%~20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%~15質量%、特に好ましくは3質量%~10質量%である。
【0072】
<有機溶媒>
本発明の液晶配向剤に含有される有機溶媒は、(A)成分及び(B)成分を溶解できる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1-ヘキサノール、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノールなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0073】
なかでも、本発明の液晶配向剤から得られる光配向膜を液晶配向膜として用いる場合、比較的低温で再配向処理する際に焼成後の残存溶媒が多いと、液晶の配向性や基板との密着性が悪化する場合があり、また、液晶セルの電気特性が悪化する場合があるため、沸点が低いか、蒸気圧の大きい有機溶媒を使用するのが好ましい。かかる有機溶媒の具体例としては、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1-ヘキサノール、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノールなどが好ましい。
【0074】
本発明の液晶配向剤に含有される重合体は、式(1)で表される単量体に由来する側鎖を有する重合体のほかに、液晶発現能および感光性能を損なわない範囲で、前記以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、樹脂成分(重合体成分)全体における他の重合体の含有量は、0.5質量%~80質量%、好ましくは1質量%~50質量%である。
【0075】
そのような他の重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレートやポリアミック酸やポリイミド等からなり、(A)成分である130℃以下で液晶性を呈する特定の重合体以外のその他の重合体等が挙げられる。
【0076】
本発明の液晶配向剤には、上記したものの他、本発明の効果が損なわれない限りであれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的で、誘電物質や導電物質、また、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的で、架橋性化合物を添加してもよい。
【0077】
さらに、膜厚の均一性や表面平滑性を向上させるために、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などの界面活性剤を添加してもよい。
より具体的には、例えば、エフトップ301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファックF171、F173、R-30(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(スリーエムジャパン(株)(旧:住友スリーエム(株))製)、アサヒガードAG710(AGC(株)製)、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル(株)製)などが挙げられる。
上記界面活性剤は、本発明の液晶配向剤に含有される重合体成分の100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.01~1質量部含有される。
【0078】
また液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物を添加してもよく、その具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物などが挙げられる。例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0079】
また添加剤として、光増感剤を用いることもでき、例えば無色増感剤および三重項増感剤を好ましく用いることができる。
【0080】
光増感剤としては、芳香族ニトロ化合物、クマリン(7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、7-ヒドロキシ4-メチルクマリン)、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、芳香族2-ヒドロキシケトン、およびアミノ置換された芳香族2-ヒドロキシケトン(2-ヒドロキシベンゾフェノン、モノ-もしくはジ-p-(ジメチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン)、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンズアントロン、チアゾリン(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン)、オキサゾリン(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン)、ベンゾチアゾール、ニトロアニリン(m-もしくはp-ニトロアニリン、2,4,6-トリニトロアニリン)、ニトロアセナフテン(5-ニトロアセナフテン)、(2-[(m-ヒドロキシ-p-メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール、ベンゾインアルキルエーテル、N-アルキル化フタロン、アセトフェノンケタール(2,2-ジメトキシフェニルエタノン)、ナフタレン、アントラセン(2-ナフタレンメタノール、2-ナフタレンカルボン酸、9-アントラセンメタノール、および9-アントラセンカルボン酸)、ベンゾピラン、アゾインドリジン、メロクマリン等が挙げられる。
【0081】
光増感剤として、好ましくは、芳香族2-ヒドロキシケトン(ベンゾフェノン)、クマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、およびアセトフェノンケタールを挙げることができる。
【0082】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向剤は、上記したように、優れた特性を有する液晶配向膜を作製できる。液晶配向膜は、例えば本発明の液晶配向剤を基材に塗布して塗膜を形成し、その後、該塗膜を乾燥させることにより作製できる。
【0083】
塗膜の形成は、通常、スピンコート法、印刷法、インクジェット法、バーコート法、グラビアコート法などで行われる。
乾燥は、通常、40~150℃で1~15分間、好ましくは、50~110℃で1~5分間行われる。
【0084】
本発明において、液晶配向剤の塗膜を形成する基材としては、好ましくは透明性の高い基材であれば特に限定されず、板状からフィルム状のものが使用される。
基材の材質は、ガラス、窒化珪素、シリコンウェハなどのセラミックス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、シクロオレフィン樹脂などの樹脂基材などを用いることができる。本発明では、上記したように、基材として、耐熱性の低い樹脂基材を用いることができるという特徴を有する。
【0085】
<位相差材の製造>
本発明の液晶配向剤を用いた位相差材は、以下の工程[I]から[IV]を含む方法にて製造できる。
すなわち、まず下記[I]~[III]を経て液晶配向膜を有する基板を製造する。次いで、下記工程[IV]を経ることにより、位相差材を製造することができる。
[I] 本発明の液晶配向剤を基板上に塗布し、塗膜を形成する工程;
[II] [I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III][II]で得られた紫外線照射された塗膜を加熱し、液晶配向膜を有する基板を得る工程;
[IV] [III]で得られた液晶配向膜を有する基板上に、重合性液晶を塗布しこれを配向させた後、紫外線照射により重合性液晶を硬化して、位相差材を得る工程。
【0086】
<<工程[I]>>
工程[I]は、基板上に本発明の液晶配向剤を塗布する過程である。基板及び塗布方法は前記<液晶配向膜>に記載したとおりである。塗布後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により50~200℃、好ましくは50~150℃で溶媒を蒸発させて塗膜を得ることができる。
塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5nm~350nm、より好ましくは10nm~300nmである。
尚、[I]工程の後、続く[II]工程の前に塗膜の形成された基板を室温にまで冷却する工程を設けることも可能である。
【0087】
<<工程[II]>>
工程[II]では、工程[I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する。塗膜の膜面に偏光した紫外線を照射する場合、基板に対して一定の方向から偏光板を介して偏光された紫外線を照射する。使用する紫外線としては、波長100nm~400nmの範囲の紫外線を使用することができる。好ましくは、使用する塗膜の種類によりフィルター等を介して最適な波長を選択する。例えば、選択的に光架橋反応を誘起できるように、波長290nm~400nmの範囲の紫外線を選択して使用することができる。紫外線としては、例えば、高圧水銀灯から放射される光を用いることができる。
【0088】
偏光した紫外線の照射量は、使用する塗膜の種類に依存する。照射量は、該塗膜における、偏光した紫外線の偏光方向に対して、平行な方向の紫外線吸光度と垂直な方向の紫外線吸光度との差であるΔAの最大値(以下、ΔAmaxとも称する)を実現する偏光紫外線の量の、1%~70%の範囲内とすることが好ましく、1%~50%の範囲内とすることがより好ましい。
【0089】
<<工程[III]>>
工程[III]では、工程[II]で偏光した紫外線が照射された塗膜を加熱し、液晶配向膜を有する基板を得る。加熱により、塗膜に配向制御能を付与することができる。
【0090】
加熱は、ホットプレート、熱循環型オーブン、又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段を用いることができる。加熱温度は、使用する塗膜の液晶性を発現させる温度を考慮して決めることができる。
【0091】
加熱温度は、(A)成分である重合体が液晶性を発現する温度(以下、液晶発現温度という)の温度範囲内であることが好ましい。塗膜のような薄膜形態の場合、塗膜表面の液晶発現温度は、(A)成分である重合体をバルクで観察した場合の液晶発現温度よりも低いことが予想される。このため、加熱温度は、塗膜表面の液晶発現温度の温度範囲内であることがより好ましい。すなわち、偏光紫外線照射後の加熱温度の温度範囲は、使用する(A)成分である重合体の液晶発現温度の温度範囲の下限より10℃低い温度を下限とし、その液晶温度範囲の上限より10℃低い温度を上限とする範囲の温度であることが好ましい。加熱温度が、上記温度範囲よりも低いと、塗膜における熱による異方性の増幅効果が不十分となる傾向があり、また加熱温度が、上記温度範囲よりも高すぎると、塗膜の状態が等方性の液体状態(等方相)に近くなる傾向があり、この場合、自己組織化によって一方向に再配向することが困難になることがある。
【0092】
なお、液晶発現温度とは、例えば(A)成分である重合体、又は、液晶配向剤の塗膜表面において、固体相から液晶相への相転移が起こる液晶転移温度以上であって、液晶相からアイソトロピック相(等方相)への相転移を起こすアイソトロピック相転移温度(Tiso)以下の温度をいう。例えば、130℃以下で液晶性を発現するとは、固体相から液晶相への相転移が起こる液晶転移温度が130℃以下であり、また、130℃以下で液晶相からアイソトロピック相(等方相)への相転移が起こらないことを意味する。
【0093】
加熱後に形成される塗膜の厚みは、工程[I]で記した同じ理由から、好ましくは5nm~350nm、より好ましくは10nm~300nmであるのがよい。
【0094】
以上の工程を有することにより、本発明の製造方法では、塗膜への異方性の導入を高効率にて実現することができる。そしてその結果、液晶配向膜を有する基板を高効率に製造することができる。
【0095】
<<工程[IV]>>
[IV]工程は、[III]で得られた液晶配向膜を有する基板上に、重合性液晶を塗布しこれを配向させた後、紫外線照射により重合性液晶を硬化して、位相差材を得る工程である。
【0096】
本実施形態の液晶配向剤から形成された液晶配向膜は耐溶剤性および耐熱性を有しているため、この液晶配向膜に、重合性液晶、すなわち重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、その液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、液晶配向膜上で重合性液晶(位相差材料)を配向させることができる。そして、所望とする配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、光学異方性を有する層を持つ位相差材を形成することができる。
【0097】
重合性液晶(位相差材料)としては、例えば、重合性基を有する液晶モノマーおよびそれを含有する組成物等が用いられる。そして、配向材が形成される基板がフィルムである場合には、本実施の形態の位相差材を有するフィルムは、位相差フィルムとして有用となる。このような位相差材を形成する位相差材料は、液晶状態となって、配向材上で、水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向状態をとるものがあり、それぞれ必要とされる位相差特性に応じて使い分けることができる。
【0098】
また、3Dディスプレイに用いられるパターン化位相差材を製造する場合には、本実施形態の液晶配向剤から上記した方法で形成された液晶配向膜に、ラインアンドスペースパターンのマスクを介して所定の基準から、例えば、+45度の向きで偏光UV露光し、次いで、マスクを外してから-45度の向きで偏光UVを露光し、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された液晶配向膜を形成する。その後、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とする。液晶状態となった重合性液晶は、2種類の液晶配向領域が形成された液晶配向膜上で配向し、各液晶配向領域にそれぞれ対応する配向状態を形成する。そして、そのような配向状態が実現された位相差材料をそのまま硬化させ、上述の配向状態を固定化し、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置された、パターン化位相差材を得ることができる。
【0099】
また、本実施形態の液晶配向剤から形成された液晶配向膜は、液晶表示素子の液晶配向膜としての利用も可能である。例えば、上記のようにして形成された、本実施形態の配向材を有する2枚の基板を用い、スペーサを介して両基板上の配向材が互いに向かい合うように張り合わせた後、それらの基板の間に液晶を注入して、液晶が配向した液晶表示素子を製造することができる。
そのため、本実施の形態の液晶配向剤は、各種位相差材(位相差フィルム)や液晶表示素子等の製造に好適に用いることができる。
【0100】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は、該実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0102】
<重合体の分子量の測定>
合成例で調製したアクリル共重合体の分子量は、昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)、及び、昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPCカラム(KD-803、同KD-805)を用い以下のようにして測定した。
なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:昭和電工(株)製 標準ポリスチレン(分子量 約197,000、55,100、12,800、3,950、1,260、580)。
【0103】
<溶剤>
溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、シクロペンタノン(CP)を用いた。
【0104】
<合成例1>
特許文献(国際公開第2011/084546号)に記載の合成法にて、下記式(I)に表される化合物(M6CA)を合成した。
【0105】
<合成例2>
特許文献(特開平9-118717号公報)に記載の合成法にて、下記式(II)に表される化合物を合成した。
【0106】
<合成例3>
化合物(II)10.0g、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)(0.3g)とメトキシフェノール(4.1g)を室温でジクロロメタン100mlに溶解した後、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)(7.9g)を加え、室温で反応させることにより、下記式(III)に表される化合物11.4g(収率85%)を得た。
【0107】
【0108】
<A成分の合成>
<合成例4>
上記式(II)で表されるメタクリル酸エステル(10.0g)と上記式(III)で表されるメタクリル酸エステル(5.8g)を、式(II)化合物:式(III)化合物=70:30となる割合(モル比)で1,4-ジオキサン(143.7g)中に溶解し、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(0.2g)を添加して、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液を得た。アクリル共重合体溶液をジエチルエーテル(1,000g)に徐々に滴下して固体を析出させ、ろ過および減圧乾燥することでアクリル共重合体(P-1)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは14,000、Mwは28,000であった。
【0109】
<合成例5>
上記式(II)で表されるメタクリル酸エステル(10.0g)と上記式(III)で表されるメタクリル酸エステル(9.0g)を、式(II)化合物:式(III)化合物=60:40となる割合(モル比)で1,4-ジオキサン(172.8g)中に溶解し、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(0.2g)を添加して、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液を得た。アクリル共重合体溶液をジエチルエーテル(1,000g)に徐々に滴下して固体を析出させ、ろ過および減圧乾燥することでアクリル共重合体(P-2)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは15,000、Mwは32,000であった。
【0110】
<合成例6>
上記式(II)で表されるメタクリル酸エステル(15.0g)を1,4-ジオキサン(136.8g)中に溶解し、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(0.2g)を添加して、80℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液を得た。アクリル共重合体溶液をジエチルエーテル(1,000g)に徐々に滴下して固体を析出させ、ろ過および減圧乾燥することでアクリル重合体(P-3)を得た。得られたアクリル重合体のMnは14,000、Mwは34,000であった。
【0111】
<実施例1>
(A)成分として上記合成例4で得たアクリル共重合体(P-1)を100質量部、(B)成分として4-メトキシけい皮酸(MCA)を10質量部混合し、これに溶媒としてPMおよびCPを加え、溶媒組成がPM:CP=70:30(質量比)、固形分濃度が5.0質量%の配向材形成組成物(A-1)を調製した。
【0112】
<実施例2~8および比較例1~2>
各成分の種類と配合量を、それぞれ表1に記載の通りとしたほかは、実施例1と同様に実施し、配向材形成組成物(A-2)~(A-10)を、それぞれ調製した。
【0113】
【表1】
M6CA:4-(6-メタクリルオキシヘキシル-1-オキシ)けい皮酸(前記式(I)で表される化合物)
CAM:4-ヒドロキシけい皮酸メチル
MCAEH:4-メトキシけい皮酸2-エチルヘキシル
AZO1:4-(フェニルアゾ)安息香酸
AZO2:4-(フェニルアゾ)フェノール
【0114】
[重合性液晶溶液の調製]
重合性液晶LC242(BASF社製)29.0g、重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)0.9g、レベリング剤としてBYK-361N(BYK社製)0.2g、溶媒としてメチルイソブチルケトンを加えて固形分濃度が30質量%の重合性液晶溶液(RM-1)を得た。
【0115】
<実施例9~17および比較例3~4>
[液晶配向性の評価1]
実施例1~8および比較例1~2で得た各配向材形成組成物を、5cm角の無アルカリガラス(イーグルXG)上もしくはCOP(シクロオレフィンポリマー)フィルム上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上でプリベーク温度60℃、60秒間の加熱乾燥を行い、膜厚200nmの各配向膜を形成した。この各配向膜に313nmの直線偏光を200mJ/cm2の露光量で垂直に照射し、その後、ホットプレート上で表2に記載のポストベーク温度で10分間の加熱乾燥することで、配向処理を行った。続いて各配向膜上に、重合性液晶溶液(RM-1)を、スピンコーターを用いて回転数2,000rpmにて塗布した。この塗膜を温度90℃のホットプレート上で60秒間乾燥後、500mJ/cm2で露光し、位相差材を作製した。作製した基板上の位相差材を一対の偏光板で挟み込み、位相差材における位相差特性の発現状況を観察し、位相差が欠陥なく発現しているものを○、欠陥があるもしくは位相差が発現していないものを×として「液晶配向性」の欄に記載した。評価結果は、後に表2にまとめて示す。
【0116】
[配向度の評価]
実施例1~8および比較例1~2で得た各配向材形成組成物を、5cm角の無アルカリガラス(イーグルXG)上もしくはCOPフィルム上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上でプリベーク温度60℃、60秒間の加熱乾燥を行い、膜厚200nmの各配向膜を形成した。この各配向膜に313nmの直線偏光を200mJ/cm2の露光量で垂直に照射し、その後、ホットプレート上で表2に記載のポストベーク温度で10分間の加熱乾燥することで、配向処理を行った。配向処理後の各薄膜の偏光UV-vis吸収スペクトルを測定し、以下の式1により面内配向度Sを算出した。
(式1)面内配向度S=(Aper-Apara)/(A+2Apara)
(ここで、Aperは吸光度測定における偏光UV照射軸に対して垂直成分の吸光度、Aparaは平行成分の吸光度を表す。)
なお、AperおよびAparaはいずれも264nmにおける吸光度の値を使用した。
【0117】
【0118】
表2の実施例9~17に示すように、配向材形成組成物A-1~A-8を用いた場合、ポストベーク温度100℃の条件で、良好な液晶配向性を示す位相差材が得られた。また、配向処理後の配向膜は高い面内配向度を示した。
【0119】
それに対して、比較例3に示すように、配向材形成組成物A-9を用いた場合、良好な液晶配向性を示す位相差材を得るためには、ポストベーク温度を140℃まで上げる必要があった。また、ポストベーク温度が100℃の場合は配向処理後の配向膜は低い面内配向度を示した。
【0120】
また、比較例4に示すように、配向材形成組成物A-10を用いた場合、ポストベーク条件によらず良好な配向性を示す位相差材は得られなかった。また、配向処理後の配向膜は低い面内配向度を示した。
【0121】
<実施例18>
[コレステリック配向した液晶フィルムの作製]
実施例1で得た配向材形成組成物A-1を、5cm角の無アルカリガラス(イーグルXG)上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上でプリベーク温度60℃、60秒間の加熱乾燥を行い、膜厚200nmの配向膜を形成した。この配向膜に313nmの直線偏光を200mJ/cm2の露光量で垂直に照射し、その後、ホットプレート上で100℃、10分間の加熱乾燥することで、配向処理を行った。続いて配向膜上に、メルクパフォーマンスマテリアルズ(株)製のコレステリック配向用重合性液晶溶液RMS11-067を、スピンコーターを用いて回転数2,000rpmにて塗布した。この塗膜を温度75℃のホットプレート上で120秒間乾燥後、500mJ/cm2で露光し、硬化したコレステリック液晶フィルムを得た。得られたコレステリック液晶フィルムの透過率を、分光光度計(島津製作所(株)製 UV-3600)を用いて測定した。490~520nmの波長領域でコレステリック配向に特有の選択反射が観測され、良好なコレステリック配向性を示す液晶フィルムが得られたことを確認した。
【0122】
<実施例19>
5cm角の無アルカリガラス(イーグルXG)をCOPフィルムに変更した以外、実施例18と同様の手法で硬化したコレステリック液晶フィルムを作製した。得られたコレステリック液晶フィルムは、490~520nmの波長領域でコレステリック配向に特有の選択反射が観測され、良好なコレステリック配向性を示す液晶フィルムが得られたことを確認した。
【0123】
<実施例20>
配向材形成組成物A-4を用いた以外、実施例18と同様の手法で硬化したコレステリック液晶フィルムを作製した。得られたコレステリック液晶フィルムは、490~520nmの波長領域でコレステリック配向に特有の選択反射が観測され、良好なコレステリック配向性を示す液晶フィルムが得られたことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜や位相差材は、耐熱性の小さいプラスチック上にも形成し得るために、分子配向を制御した光学素子や液晶配向膜として広い範囲において使用し得るもので、産業上の高い有用性を有する。