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特許7319813力覚提示システム、力覚提示装置、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】力覚提示システム、力覚提示装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20230726BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G06F3/01 560
B25J3/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019078499
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020177398
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】半田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】東 真希子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊宏
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-267174(JP,A)
【文献】特開平11-232012(JP,A)
【文献】国際公開第96/002887(WO,A1)
【文献】特開2010-102560(JP,A)
【文献】特開2010-287221(JP,A)
【文献】特開2018-202018(JP,A)
【文献】特開2009-276996(JP,A)
【文献】特開2002-304246(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
B25J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに力覚を提示する力覚提示装置と、前記力覚提示装置を制御する情報処理装置と、を有する力覚提示システムであって、
前記情報処理装置は、
仮想空間における第1物体の位置を制御し、前記仮想空間において前記力覚提示装置に対応付けられる第2物体の位置を制御する仮想空間制御部と、
前記仮想空間において前記第1物体と前記第2物体とが衝突した場合、当該衝突に応じた制御情報を前記力覚提示装置に送信する送信部と、を有し、
前記力覚提示装置は、
前記第1物体との衝突に応じた制御信号を前記情報処理装置から受信する受信部と、
前記受信部により受信された制御信号に基づいて、前記第1物体が前記第2物体と衝突した方向に、前記ユーザに把持される把持部をへこませる制御部と、
前記力覚提示装置を振動させる振動部と、を有し、
前記制御部は、第1時点で前記振動部の振動を開始させ、前記第1時点とは異なる第2時点で前記第1物体が前記第2物体と衝突した方向に前記把持部をへこませる制御を開始し、前記第1物体の材質及び前記第2物体の材質に応じて、前記第1時点と前記第2時点との時間差を異ならせる、力覚提示システム。
【請求項2】
前記振動部は、振動により音を出力し、
前記制御部は、前記第1時点で前記振動部により前記第1物体の材質及び前記第2物体の材質に応じた音の出力を開始させ、前記第2時点で前記第1物体が前記第2物体と衝突した方向に前記把持部をへこませる、
請求項に記載の力覚提示システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記振動部により前記第1物体の材質及び前記第2物体の材質に応じた音の出力を開始させた時点から、前記第1物体の材質に応じた時間が経過した場合、前記第1物体が前記第2物体と衝突した方向に前記把持部をへこませる、
請求項に記載の力覚提示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚提示システム、力覚提示装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD;Head Mounted Display)等を用いて、仮想空間上の物体(仮想物体)を表示するバーチャルリアリティ(VR;virtual reality)技術が知られている。また、仮想空間上の物体に対する接触感を振動等により提示する技術も知られている。
【0003】
また、ユーザの指の位置に応じて、ユーザの指に接触している棒を伸縮させ、仮想空間上の物体を把持している感覚を提示する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-215795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、例えば、ユーザが把持する物体が仮想的な物体と衝突したこと等の力覚をユーザが認識しにくい場合がある。開示の技術は、より適切にユーザに対して力覚を提示できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ユーザに力覚を提示する力覚提示装置と、前記力覚提示装置を制御する情報処理装置と、を有する力覚提示システムを提供する。前記情報処理装置は、仮想空間における第1物体の位置を制御し、前記仮想空間において前記力覚提示装置に対応付けられる第2物体の位置を制御する仮想空間制御部と、前記仮想空間において前記第1物体と前記第2物体とが衝突した場合、当該衝突に応じた制御情報を前記力覚提示装置に送信する送信部と、を有し、前記力覚提示装置は、前記第1物体との衝突に応じた制御信号を前記情報処理装置から受信する受信部と、前記受信部により受信された制御信号に基づいて、前記第1物体が前記第2物体と衝突した方向に、前記ユーザに把持される把持部をへこませる制御部と、前記力覚提示装置を振動させる振動部と、を有し、前記制御部は、第1時点で前記振動部の振動を開始させ、前記第1時点とは異なる第2時点で前記第1物体が前記第2物体と衝突した方向に前記把持部をへこませる制御を開始し、前記第1物体の材質及び前記第2物体の材質に応じて、前記第1時点と前記第2時点との時間差を異ならせる
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、より適切にユーザに対して力覚を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る力覚提示システムの構成例を示す図である。
図2A】実施形態に係る力覚提示装置の構成の一例(その一)について説明する図である。
図2B】実施形態に係る力覚提示装置の構成の一例(その一)について説明する図である。
図2C】実施形態に係る力覚提示装置の構成の一例(その一)について説明する図である。
図3A】実施形態に係る力覚提示システムの機能ブロック図の一例を示す図である。
図3B】実施形態に係る力覚提示システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図4A】実施形態に係る力覚提示システムの処理の一例について説明する図である。
図4B】実施形態に係る力覚提示システムの処理の一例について説明する図である。
図4C】実施形態に係る力覚提示システムの処理の一例について説明する図である。
図5A】実施形態に係る力覚提示装置10におけるへこみ、振動、及び音が提示されるタイミングの一例について説明する図である。
図5B】実施形態に係る力覚提示装置10におけるへこみ、振動、及び音が提示されるタイミングの一例について説明する図である。
図6A】実施形態に係る力覚提示装置の構成の一例(その二)について説明する図である。
図6B】実施形態に係る力覚提示装置の構成の一例(その二)について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
<システム構成>
図1は、実施形態に係る力覚提示システム1の構成例を示す図である。図1において、力覚提示システム1は、力覚提示装置10、情報処理装置20、及び表示装置40を有する。
【0011】
図1の例では、力覚提示装置10と情報処理装置20は、例えば、USB(Universal Serial Bus)のケーブル30等により通信できるように接続されている。なお、力覚提示装置10と情報処理装置20との間を、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、または無線LAN等の無線より通信できるように接続してもよい。
【0012】
力覚提示装置10は、力覚提示装置10の現在の2次元または3次元の位置を情報処理装置20に通知する。なお、情報処理装置20は、レーザやステレオカメラ等により、力覚提示装置10の3次元位置を検出してもよい。また、力覚提示装置10は、情報処理装置20から受信した制御コマンドに従い、仮想空間における物体と衝突(接触)したことの力覚をユーザの指等に対して提示する。
【0013】
力覚提示装置10は、例えば、ボール式のマウスと同様に、力覚提示装置10がマウスパッド等の上を移動された際のトラックボールの回転に基づいて、力覚提示装置10の水平面上の位置(2次元位置)を取得してもよい。または光学式のマウスと同様に、赤外線、レーザ、LED等で力覚提示装置10の底面を照らし、力覚提示装置10がマウスパッド等の上を移動された際の赤外線、レーザ、LED等の反射をカメラセンサで検知することにより、力覚提示装置10の水平面上の位置を取得してもよい。
【0014】
力覚提示装置10は、例えば、力覚提示装置10の下部に設けられたカメラ等により、力覚提示装置10の下に敷かれたパッドに記載された記号等を読み取り、読み取った記号等に基づいて、力覚提示装置10の水平面上の位置(2次元位置)を取得してもよい。または、力覚提示装置10は、例えば、各アームの接点のモータにより各アームの角度を検出し、予め設定されている各アームの長さと、各アームの角度とに基づいて、アームの先端等の位置を検出する3次元位置検出装置を用いて、力覚提示装置10の3次元位置を取得してもよい。この場合、力覚提示装置10は、3次元位置検出装置のアームの先端等に取り付けられてもよい。そして、3次元位置検出装置には、予め原点として設定されている所定の3次元位置に対する力覚提示装置10の現在の3次元位置を検出し、力覚提示装置10に出力してもよい。
【0015】
または、力覚提示装置10は、カメラと加速度センサを有し、カメラの画像と加速度センサで検出した加速度とに基づいて、力覚提示装置10の3次元位置を検出してもよい。
【0016】
情報処理装置20は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、及びセットトップボックス等の情報処理装置である。情報処理装置20は、力覚提示装置10の現実の位置に応じて、仮想空間における力覚提示装置10の位置に存在する物体と衝突したことの力覚をユーザに提示するための制御コマンドを力覚提示装置10に送信する。
【0017】
なお、情報処理装置20を力覚提示装置10の内部に収容することにより、情報処理装置20と力覚提示装置10とを一体の装置として構成してもよい。この場合、情報処理装置20として、例えば、組み込み用の小型コンピュータを用いてもよい。または、力覚提示装置10の制御装置19が、情報処理装置20の機能を有するようにしてもよい。
【0018】
図1の例では、情報処理装置20は、表示装置40により仮想空間における各物体の画像を表示させながら、力覚提示装置10により力覚をユーザに提示する。
【0019】
<力覚提示装置10の構成>
次に、図2Aから図2Cを参照し、実施形態に係る力覚提示装置10の構成の一例について説明する。図2Aから図2Cは、実施形態に係る力覚提示装置10の構成の一例(その一)について説明する図である。
【0020】
図2Aでは力覚提示装置10を横から見た場合の図が示されており、図2Bでは力覚提示装置10を上から見た場合の図が示されている。また、図2Cでは力覚提示装置10を分解した状態での斜視図が示されている。なお、図2Aから図2Cでは、説明のために、把持部12を半透明にして図示している。
【0021】
図2Aから図2Cの例では、力覚提示装置10は、基台部(筐体)11、及びユーザが把持する把持部12を有している。図2Aから図2Cの例では、基台部11は円筒形の筐体であり、把持部12は、例えば、弾性を有する塗料の層を表面に有し、スポンジの層を内面に有する球状のカバーである。把持部12は、例えば、スポンジ等の柔らかくて弾性のある球の一部を水平に切断し、内部をくり抜くことにより形成されてもよい。また、把持部12の表面には、例えば、ポリウレタン、シリコン等のゴム弾性を有する塗料が塗られてもよい。これにより、把持部12がへこまされた後の復元力が強まるとともに、把持部12の表面に汚れが付きにくくなる。また、へこまされる際に力が加わる部分が裂けることを低減することができる。
【0022】
図2Aから図2Cの例では、基台部11、及び把持部12により覆われる力覚提示装置10の内部には、振動部13、駆動部14、内部筐体15、位置センサ111、及び制御装置19等が設けられている。
【0023】
制御装置19は、例えば、組み込み用の小型コンピュータ等であり、情報処理装置20からの制御コマンドを受信し、受信した制御コマンドに基づいて、振動部13、及び駆動部14等の制御を行う。
【0024】
振動部13は、例えば、入力される電気信号を振動に変換する振動変換装置(トランスデューサー)である。図2Aから図2Cの例では、振動部13は、例えば、スピーカにおいて空気を振動させる部品であるスピーカユニットと同様の機構により、電気信号を振動に変換することにより、振動及び音をユーザに提示する振動変換装置である。
【0025】
駆動部14は、入力される電気信号を、把持部12をへこませる物理的運動に変換するアクチュエータである。図2Aから図2Cの例では、駆動部14は、4つのサーボモータを有し、各サーボモータは、サーボホーン16Aから16Dをそれぞれ回転させる。
【0026】
また、図2Aから図2Cの例では、引き寄せ部17Aが、サーボホーン16Aの一端部16A1と、把持部12の内側の接合点18Aとに接続されている。また、引き寄せ部17Bが、サーボホーン16Aの他端部16A2と、把持部12の内側の接合点18Bとに接続されている。また、引き寄せ部17Cが、サーボホーン16Bの一端部16B1と、把持部12の内側の接合点18Cとに接続されている。また、引き寄せ部17Dが、サーボホーン16Bの一端部16B2と、把持部12の内側の接合点18Dとに接続されている。また、引き寄せ部17Eが、サーボホーン16Cの一端部16C1と、把持部12の内側の接合点18Eとに接続されている。また、引き寄せ部17Fが、サーボホーン16Cの一端部16C2と、把持部12の内側の接合点18Fとに接続されている。また、引き寄せ部17Gが、サーボホーン16Dの一端部16D1と、把持部12の内側の接合点18Gとに接続されている。また、引き寄せ部17Hが、サーボホーン16Dの一端部16D2と、把持部12の内側の接合点18Hとに接続されている。引き寄せ部17Aから引き寄せ部17Hは、一端が引っ張られた場合には他端にも引っ張られる力を伝達し、一端が押し込まれた場合にはたわむ等により他端に力を伝達しない部材でもよい。引き寄せ部17Aから引き寄せ部17Hは、例えば、糸(紐)、及び鎖等の形状の部材でもよい。一例としては、ナイロン製等の糸等でもよい。
【0027】
サーボホーン16Aの中心部104から一端部16A1までの長さ(サーボホーンの長さ)102をWとし、サーボホーン16Aの回転角度103をθとし、接合点18Aの移動距離101をDとすると、Dは、D≒|W×sinθ|で近似することができる。なお、サーボホーン16Aの長手方向が中心部104に最も近い把持部12の内側の点105と中心部104とを通る線に垂直な場合のサーボホーン16Aの回転角度を0度とする。
【0028】
図2Bに示すように、制御装置19は、サーボホーン16Aをθ回転させて引き寄せ部17Aを引っ張ることにより、接合点18Aに対面する把持部12の表面上の位置181(「第1部位」の一例。)を、距離Dだけへこませることができる。この場合、引き寄せ部17Bはたわむだけであるため、接合点18Bに対面する把持部12の表面上の位置182は変化しない。また、制御装置19は、サーボホーン16Aを-θ回転させて引き寄せ部17Bを引っ張ることにより、接合点18Bに対面する把持部12の表面上の位置182(「第2部位」の一例。)を、距離Dだけへこませることができる。サーボホーン16Bから16Dについても同様である。
【0029】
内部筐体15は、振動部13、駆動部14、内部筐体15、及び制御装置19等を収容する筐体である。内部筐体15により、把持部12がユーザに強く握られた場合等でも、駆動部14等を保護することができる。
【0030】
位置センサ111は、例えば、力覚提示装置10の3次元位置(x、y、z)と姿勢角(ロール、ピッチ、ヨー)を検出するセンサである。位置センサ111は、例えば、x、y、z方向の各加速度を計測する3つの加速度センサ、x、y、z方向の各角速度を計測する3つの角速度センサ、床面からの高さを計測するレーザセンサ、床面を撮影するカメラ等を含むハイブリッドセンサーでもよい。
【0031】
なお、力覚提示装置10は、例えば、内蔵されたバッテリーから給電されてもよいし、USBケーブル等により情報処理装置20等の外部装置または電源コンセントから給電されてもよい。なお、把持部12の形状は、図2A等に示すような球状に限らず、板状、円筒形状等でもよい。また、サーボホーンの数等は、図2A等の例に限定されない。
【0032】
<力覚提示システム1の機能構成>
次に、図3Aを参照し、実施形態に係る力覚提示システム1の機能構成について説明する。図3Aは、実施形態に係る力覚提示システム1の機能ブロック図の一例を示す図である。
【0033】
≪力覚提示装置10の機能構成≫
図3Aの例では、実施形態に係る力覚提示装置10の制御装置19は、位置検出部191、送受信部192、及び制御部193を有する。位置検出部191、送受信部192、及び制御部193の機能は、例えば、制御装置19にインストールされた1以上のプログラムが、力覚提示装置10のCPUに実行させる処理により実現されてもよい。
【0034】
位置検出部191は、例えば、位置センサ111により測定されたデータに基づいて、力覚提示装置10の位置を検出する。
【0035】
送受信部192は、情報処理装置20とデータを送受信する。送受信部192は、例えば、位置検出部191により検出された力覚提示装置10の位置情報を情報処理装置20に送信する。また、送受信部192は、例えば、仮想空間上の物体と力覚提示装置10との衝突に応じた制御信号を情報処理装置20から受信する。
【0036】
制御部193は、送受信部192により受信された制御信号に基づいて、振動部13を制御することにより、仮想空間上の第1物体と、力覚提示装置10に対応する仮想空間上の第2物体(アバター)との衝突に応じた振動、及び音を発生させる。
【0037】
また、制御部193は、送受信部192により受信された制御信号に基づいて、駆動部14を制御することにより、仮想空間上の第1物体が第2物体と衝突した方向(衝突した際に第1物体から第2物体を見た方向)に、把持部12をへこませる。
【0038】
≪情報処理装置20の機能構成≫
図3Aの例では、実施形態に係る情報処理装置20は、送受信部21、及び仮想空間制御部22を有する。送受信部21、及び仮想空間制御部22の機能は、例えば、情報処理装置20にインストールされた1以上のプログラムが、情報処理装置20のCPUに実行させる処理により実現されてもよい。
【0039】
送受信部21は、力覚提示装置10とデータを送受信する。送受信部21は、例えば、力覚提示装置10の位置を示す情報を力覚提示装置10から受信する。
【0040】
仮想空間制御部22は、仮想空間における各物体の位置、移動、及び衝突を制御する。仮想空間制御部22は、仮想空間において力覚提示装置10に対応付けられる所定の物体(「第2物体」の一例)の位置を制御する。また、仮想空間制御部22は、仮想空間において一の物体と当該所定の物体とが衝突した場合、当該衝突に応じた制御情報を送受信部21により力覚提示装置10に送信させる。
【0041】
<処理>
次に、図3Bから図5Bを参照し、力覚提示システム1の処理について説明する。図3Bは、実施形態に係る力覚提示システム1の処理の一例を示すフローチャートである。図4Aから図4Cは、実施形態に係る力覚提示システム1の処理の一例について説明する図である。図5A及び図5Bは、実施形態に係る力覚提示装置10におけるへこみ、振動、及び音が提示されるタイミングの一例について説明する図である。
【0042】
ステップS1において、力覚提示装置10の位置検出部191は、力覚提示装置10の位置を検出する。続いて、ステップS2において、力覚提示装置10の送受信部192は、力覚提示装置10の位置情報を情報処理装置20に送信する。
【0043】
続いて、ステップS3において、情報処理装置20の仮想空間制御部22は、力覚提示装置10の位置情報に基づいて、仮想空間上の第2物体の位置を制御し、仮想空間上の第1物体と第2物体との衝突を検知する。なお、情報処理装置20の仮想空間制御部22は、力覚提示装置10の現実空間における位置と無関係に、仮想空間上の第2物体の位置を制御するようにしてもよい。この場合、力覚提示装置10は、位置センサ111を有しなくともよい。続いて、ステップS4において、情報処理装置20の送受信部21は、当該衝突に応じた制御情報を力覚提示装置10に送信する。
【0044】
続いて、ステップS5において、力覚提示装置10の制御部193は、送受信部192により受信された制御信号に基づいて、仮想空間上の第1物体が第2物体と衝突した方向に、把持部12をへこませる。
【0045】
なお、情報処理装置20は、仮想空間上の第1物体と第2物体との画像を、表示装置40に表示させてもよい。図4Aの例では、表示装置40に表示されている仮想空間の表示画面401において、物体404A(「第1物体」の一例。)、物体404B、力覚提示装置10の移動に応じて移動する物体402(「第2物体」の一例。)が示されている。
【0046】
図4Bのように、ユーザが、手451で力覚提示装置10を把持し、ユーザの前方の方向452に力覚提示装置10を移動させた場合、仮想空間制御部22は、物体402の位置を表示画面401の上方向403に移動させる。そして、仮想空間制御部22は、図4Aに示すように、物体402と物体404Aとが仮想空間上で衝突した場合、図3BのステップS4の処理で、図4Aに示すベクトル405の方向である、物体404Aが物体402と衝突した方向に、力覚提示装置10を振動させるとともにへこませる制御信号を送信する。これにより、ユーザは、力覚提示装置10がどの方向からどのくらいの力で衝突されたかを認識することができる。また、ユーザは、この衝突により、力覚提示装置10がベクトル405の方向に移動していくことを認識することができる。これにより、例えば、バレーボールの試合の映像を表示しながら、バレーボールのボールがどの方向からどのくらいの力で競技者により叩かれたか等の力覚を、当該ボールをアバターとする力覚提示装置10によりユーザに提示することができる。
【0047】
ここで、仮想空間制御部22は、例えば、物体404Aの位置、移動方向、移動速度、材質、及び質量と、物体402の位置、移動方向、移動速度、材質、及び質量とに基づいて、衝突により物体402が受ける力のベクトル405を算出してもよい。なお、物体404Aの材質、及び質量と、物体402の材質、及び質量とは、予め設定されていてもよい。
【0048】
また、仮想空間制御部22は、例えば、物体404Aの位置、及び形状と、物体402の位置、及び形状とに基づいて、衝突により物体402が力を受ける部位(衝突部位、衝突箇所)を算出してもよい。なお、物体404Aの形状と、物体402の形状とは、予め設定されていてもよい。
【0049】
そして、図3BのステップS5の処理で、力覚提示装置10の制御部193は、図4Cに示すように、受信した制御信号に基づいて、仮想空間上の第1物体が第2物体と衝突した方向462に、第1物体が第2物体と衝突した部位に対応する把持部12の部位461をへこませる。
【0050】
また、図3BのステップS5の処理で、制御部193は、受信した制御信号に基づいて、振動部13を制御することにより、第1物体と第2物体との衝突に応じた振動、及び音を発生させる。制御部193は、振動部13の振動を開始させる第1時点を、第1物体が第2物体と衝突した方向に把持部12をへこませる制御を開始する第2時点とは異なる時点としてもよい。この場合、制御部193は、振動部13の振動を開始させた後、第1物体が第2物体と衝突した方向に把持部12をへこませる制御を開始してもよい。これにより、把持部12の振動が開始されるタイミングと、把持部12のへこみが開始されるタイミングがずれるため、振動の開始による力覚とへこみの開始による力覚とがユーザに混同されにくくなる等により、ユーザにへこむ感触を知覚させ易くすることができる。
【0051】
または、制御部193は、第1物体が第2物体と衝突した方向に把持部12をへこませる制御を開始した後、振動部13の振動を開始させてもよい。この場合、へこみが開始される第2時点は振動が開始される第1時点よりも早い時点となる。これにより、把持部12の振動が開始されるタイミングと、把持部12のへこみが開始されるタイミングがずれるため、振動の開始による力覚とへこみの開始による力覚とがユーザに混同されにくくなる等により、ユーザにへこむ感触を知覚させ易くすることができる。
【0052】
力覚提示装置10の制御部193は、第1物体の材質と第2物体の材質とに応じた音を出力させる電気信号を、第1物体と第2物体との衝突の力の大きさに応じた振幅で、第1物体の材質と第2物体の材質と第1物体と第2物体との衝突の力の大きさとに応じた時間、振動部13に出力する。制御部193は、例えば、第1物体の材質と第2物体の材質とが金属等の硬い材質であれば、高い周波数の音を振動部13に出力させる。
【0053】
図5A、及び図5Bでは、制御部193は、振動部13の振動を開始させた後、第1物体が第2物体と衝突した方向に把持部12をへこませる制御を開始する場合の例について説明する。制御部193は、図5Bの例では、第1物体が第2物体と衝突した時点tから、当該時間(例えば、500ms)が経過した時点tまで、音を出力させる電気信号513を出力している。
【0054】
また、制御部193は、第1物体の材質と第2物体の材質とに応じた時間(遅延時間)が経過した後、第1物体と第2物体との衝突の力の大きさに応じた量だけ把持部12をへこませる電気信号を駆動部14のサーボモータに出力する。なお、制御部193は、情報処理装置20から受信した制御信号に基づいて、駆動部14の各サーボモータのうち、衝突した部位に対応するサーボモータを決定し、決定したサーボモータに当該電気信号を出力する。
【0055】
制御部193は、例えば、第1物体の材質と第2物体の材質とが金属等の硬い材質であれば、柔らかい材質の場合よりも当該遅延時間を短くする。これにより、材質に応じた衝突の力覚を提示できる。なお、制御部193は、第1物体が第2物体と衝突した方向に把持部12をへこませた後で振動部13の振動を開始させる場合も、同様に、材質に応じた遅延時間を算出し、へこませる制御を開始した後、当該遅延時間が経過した後、振動を開始させればよい。
【0056】
また、制御部193は、例えば、第1物体の材質と第2物体の材質とが金属等の硬い材質であれば、柔らかい材質の場合よりも短時間で把持部12をへこませる電気信号を出力する。これにより、より適切にユーザに対して衝突の力覚を提示できる。
【0057】
制御部193は、図5Aの例では、時点tよりも当該遅延時間(例えば、100ms)後の時点tから第1物体と第2物体との衝突の力の大きさに応じた時間が経過する時点tまでの間、所定の電圧501のパルス幅変調(PWM、Pulse Width Modulation)の電気信号502を出力している。
【0058】
第2物体が、例えば、ボール競技(例えば、バレーボール等)のボールのような復元力のある物体の場合、制御部193は、図5Aの時点t以降の時点において、電気信号502とは逆の波形の電気信号を駆動部14のサーボモータに出力し、サーボホーンの位置を元に戻してもよい。これにより、把持部12のスポンジ等の復元力により、へこんでいた箇所が元に戻される。
【0059】
制御部193は、接合点18Aから接合点18Hのうち、ユーザの指で把持される位置に対応する接合点と、ユーザの手のひらで把持される位置に対応する接合点とで、へこませる速度及び量を変化させてもよい。
【0060】
例えば、把持部12の表面に張られたシールの表記に基づき、ユーザは、接合点18Aから接合点18Eにそれぞれ対面する把持部12の表面上の5か所の各位置を各指で把持し、接合点18Fから接合点18Hにそれぞれ対面する把持部12の表面上の3か所の各位置を手のひらで把持する。
【0061】
この場合、制御部193は、第2物体が第1物体と衝突した位置に対応する把持部12における第1位置がユーザの指により接触される位置である場合は、接合点18Aから接合点18Eのうち当該位置に対応する接合点を第1速度で第1量だけ第1物体が第2物体と衝突した方向にへこませる。
【0062】
また、制御部193は、当該衝突した位置に対応する把持部12における位置がユーザの手のひらにより接触される第2位置である場合、接合点18Fから接合点18Hのうち当該位置に対応する接合点を第1速度よりも速い第2速度(例えば、第1速度の2倍の速度)で、第1量よりも多い第2量(例えば、第1量の2倍の量)だけ第1物体が前記第2物体と衝突した方向にへこませる。これにより、手のひらが当たっている部位をへこませる場合、指が当たっている部位をへこませる場合と比較して、より速く、より大きく把持部12をへこませるため、指と比較して感覚が鈍い手のひらが当たっている部位でも適切に力覚を提示することができる。
【0063】
<駆動部14の変形例>
駆動部14は、図2Aから図2Cに示した構成の代わりに、図6A及び図6Bに示す構成としてもよい。図6A及び図6Bは、実施形態に係る力覚提示装置10の構成の一例(その二)について説明する図である。
【0064】
図6A及び図6Bの例では、駆動部14は、サーボモータ601、及びサーボモータ603を有する。サーボモータ601は、サーボモータ603が載置された台602を水平面上で回転させる。サーボモータ603は、鉛直方向から、水平面上の一方向にサーボホーン604を倒す。
【0065】
また、引き寄せ部605が、サーボホーン604の先端部と、把持部12の内側の接合点606とに接続されている。引き寄せ部605は、例えば、一定の剛性を有する棒状の部材でもよい。
【0066】
引き寄せ部605は、接合点606において、把持部12の内側に設置されたレール607上を移動する第1滑車にボールジョイントされている。
【0067】
図6Aに示すように、制御装置19は、サーボホーン604を当該一方向に倒させることにより、接合点606に対面する把持部12の表面上の位置をへこませることができる。
【0068】
図6Bに示すように、サーボモータ601によりサーボモータ603が載置された台602が水平面上で回転されると、接合点606がレール607上で移動する。サーボモータ601により台602が水平面上で回転させ、台602に載置されたサーボモータ603を動作させることにより、制御装置19は、レール607上の各位置に対面する把持部12の表面上の位置をへこませることができる。
【0069】
<変形例>
力覚提示装置10の制御装置19、及び情報処理装置20は、例えば複数のコンピュータにより構成されるクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。また、情報処理装置20における処理の少なくとも一部を、力覚提示装置10の制御装置19にて実行させるようにしてもよい。
【0070】
<実施形態のまとめ>
従来、例えば、バーチャルリアリティ技術の進展により、視覚(映像)、及び聴覚(音声)に加え、触力覚にも情報を提示する技術が注目されている。従来、仮想的な物体と接触した感覚を提示できる様々な手法が提案され、提案された手法の引用文献粒例えば、ビデオゲーム機のコントローラ等のユーザインターフェースとして実用化されている。
【0071】
仮想的な物体と接触した感覚を提示できる手法として、例えば、ユーザの手や指に振動を提示することにより擬似的に力を感じさせる手法、及びモータ等のアクチュエータを用いて物理的に反力を提示する手法等がある。
【0072】
上述した実施形態によれば、仮想的な第1物体と、ユーザに把持される力覚提示装置10に対応する第2物体とが仮想空間上で衝突した際、第1物体が第2物体と衝突した方向に、力覚提示装置10の把持部12をへこませる。これにより、例えば、衝突した位置及び方向をユーザに認識させることができる。
【0073】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。また、上述した各実施例の一部又は全部を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 力覚提示システム
10 力覚提示装置
11 基台部
12 把持部
13 振動部
14 駆動部
15 内部筐体
16A サーボホーン
16B サーボホーン
16C サーボホーン
16D サーボホーン
111 位置センサ
19 制御装置
191 位置検出部
192 送受信部
193 制御部
20 情報処理装置
21 送受信部
22 仮想空間制御部
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B