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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230727BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019078803
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020178019
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】江藤 謙次
(72)【発明者】
【氏名】岡山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】亀崎 厚治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋一
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-27533(JP,A)
【文献】特開2010-205885(JP,A)
【文献】特開2011-40569(JP,A)
【文献】特開平10-4041(JP,A)
【文献】特開2012-164716(JP,A)
【文献】特開2004-87781(JP,A)
【文献】特開2001-44270(JP,A)
【文献】特開2006-351863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を多段に収納するカセットと、
前記カセットを密閉可能に収納するチャンバと、
前記カセットを前記チャンバ内で昇降させる昇降機構と、
前記基板を前記カセットに対して搬出入する搬送ロボットと、
前記昇降機構及び前記搬送ロボットの動作を制御する制御部と、を備え、
前記チャンバの側面部には、前記基板を前記カセットに搬出入する際に開口する搬出入口が設けられ、
前記搬送ロボットには、前記基板が載置されるロボットアームが備えられ、
前記ロボットアームは、水平方向に移動することによって前記チャンバの外部から前記搬出入口を通じて前記カセット内に挿入可能とされ、かつ、前記カセット内において上昇または下降が可能とされ、
前記制御部は、前記カセット内において前記ロボットアームを下降させる際に前記昇降機構によって前記カセットを上昇させ、前記カセット内において前記ロボットアームを上昇させる際に前記昇降機構によって前記カセットを下降させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記カセットから前記基板を搬出する動作として、前記制御部は、前記チャンバの前記搬出入口から前記ロボットアームを前記カセット内に挿入させ、次いで、前記ロボットアームを上昇させて前記基板を下から持ち上げる際に前記昇降機構によって前記カセットを下降させ、次いで、前記ロボットアームを前記カセットから引き抜かせることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記カセットに前記基板を搬入する動作として、前記制御部は、前記チャンバの前記搬出入口から、前記基板を保持した前記ロボットアームを前記カセット内に挿入させ、次いで、前記ロボットアームを下降させる際に前記昇降機構によって前記カセットを上昇させて前記基板を前記カセット内に載置し、次いで、前記ロボットアームを前記カセットから引き抜かせることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ロボットアームが上昇または下降させる際に、前記カセットが前記ロボットアームの動く方向とは逆方向に動かすことによって、前記カセット内における前記ロボットアームの上昇時の変位量または下降時の変位量を小さくさせる、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱処理等、平板状の基板を水平位置として多段に載置し複数枚を同時に密閉チャンバ内で処理する装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような装置において、チャンバ内に基板を搬入する場合の手順について説明する。まず、基板をロボットアームによって保持させる。基板は、ロボットアームの上に載せられ、ロボットアームは基板を下から支える。次に、ロボットアームによって、基板を、チャンバの搬出入口からチャンバ内の基板加熱ユニットに挿入させる。このときのロボットアームは水平方向に動かす。ロボットアームを挿入する際の上下方向の位置は、基板加熱ユニットの基板の設置位置よりも高い位置とする。次に、ロボットアームを下降させて、基板を基板加熱ユニットに設けられた基板支持ピンの上に載置させる。これにより、ロボットアームから基板加熱ユニットに基板を受け渡させる。更に、チャンバ内のロボットアームを下降させて、ロボットアームを基板から十分に離間させる。その後、ロボットアームをチャンバから水平に引き出す。このようにして、チャンバ内に基板を搬入する。
【0004】
また、チャンバから基板を搬出する手順について説明する。まず、ロボットアームをチャンバの搬出入口から基板加熱ユニットまで挿入する。このときのロボットアームは水平方向に動かす。ロボットアームを挿入する際の上下方向の位置は、基板の設置位置よりも低い位置とする。次に、ロボットアームを上昇させて、ロボットアームを基板に接触させる。更にロボットアームを上昇させることで、基板加熱ユニットの基板支持ピンからロボットアームに基板を受け渡させる。基板が基板支持ピンから十分に離間された後、基板を保持したままロボットアームをチャンバから水平に引き出す。このようにして、チャンバから基板を搬出する。
【0005】
上述のように、チャンバに対して基板を搬入または搬出させる際には、チャンバ内においてロボットアームを上下動させる必要がある。ロボットアームはチャンバの搬送入口に挿入された状態で上下動させるので、搬出入口の高さは、ロボットアームの可動範囲を確保できるように設計する必要がある。すなわち、搬出入口の高さは、ある程度大きくせざるを得ない。
【0006】
ところで、チャンバの搬送入口はシャッタによって開閉自在とされている。一般に、搬送入口の周囲にはOリングが配設されている。搬送入口の閉鎖時にシャッタがOリングに密接することで、チャンバ内の密閉性が確保されている。
【0007】
チャンバ内で基板が加熱されると輻射熱が発生する。この輻射熱は、シャッタ及びOリングにも放射されるが、搬送入口の開口面積が大きくなるほど放射熱量が大きくなる。すなわち、搬送入口の開口面積が大きいと、シャッタ及びOリングへの熱負荷が高まり、シャッタ及びOリングの劣化が早まり、これらの交換周期が短くなる。従って、チャンバの搬出入口はできるだけ小さくすることが望まれる。
【0008】
このように、シャッタ及びOリングの劣化を抑制するためにはチャンバの搬出入口の開口面積を縮小したい。しかし、ロボットアームの可動範囲を確保する必要性から、搬出入口の開口面積の縮小化には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-263063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ロボットアームによって基板の搬出入を行う場合であっても、チャンバの搬出入口の開口面積を小さくすることが可能な基板処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 複数枚の基板を多段に収納するカセットと、
前記カセットを密閉可能に収納するチャンバと、
前記カセットを前記チャンバ内で昇降させる昇降機構と、
前記基板を前記カセットに対して搬出入する搬送ロボットと、
前記昇降機構及び前記搬送ロボットの動作を制御する制御部と、を備え、
前記チャンバの側面部には、前記基板を前記カセットに搬出入する際に開口する搬出入口が設けられ、
前記搬送ロボットには、前記基板が載置されるロボットアームが備えられ、
前記ロボットアームは、水平方向に移動することによって前記チャンバの外部から前記搬出入口を通じて前記カセット内に挿入可能とされ、かつ、前記カセット内において上昇または下降が可能とされ、
前記制御部は、前記カセット内において前記ロボットアームを下降させる際に前記昇降機構によって前記カセットを上昇させ、前記カセット内において前記ロボットアームを上昇させる際に前記昇降機構によって前記カセットを下降させることを特徴とする基板処理装置。
[2] 前記カセットから前記基板を搬出する動作として、前記制御部は、前記チャンバの前記搬出入口から前記ロボットアームを前記カセット内に挿入させ、次いで、前記ロボットアームを上昇させて前記基板を下から持ち上げる際に前記昇降機構によって前記カセットを下降させ、次いで、前記ロボットアームを前記カセットから引き抜かせることを特徴とする[1]に記載の基板処理装置。
[3] 前記カセットに前記基板を搬入する動作として、前記制御部は、前記チャンバの前記搬出入口から、前記基板を保持した前記ロボットアームを前記カセット内に挿入させ、次いで、前記ロボットアームを下降させる際に前記昇降機構によって前記カセットを上昇させて前記基板を前記カセット内に載置し、次いで、前記ロボットアームを下降させて前記基板を前記カセット内に載置するとともに、前記昇降機構によって前記カセットを上昇させ、次いで、前記ロボットアームを前記カセットから引き抜かせることを特徴とする[1]に記載の基板処理装置。
[4] 前記制御部は、前記ロボットアームが上昇または下降させる際に、前記カセットが前記ロボットアームの動く方向とは逆方向に動かすことによって、前記カセット内における前記ロボットアームの上昇時の変位量または下降時の変位量を小さくさせる、[1]乃至[3]の何れか一項に記載の基板処理装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の基板処理装置によれば、制御部が、カセット内においてロボットアームを下降させる場合はカセットを上昇させ、カセット内においてロボットアームを上昇させる場合はカセットを下降させるので、従来の基板搬送装置に比べて、基板をチャンバに搬出入する際のロボットアームの上昇時の変位量及び下降時の変位量を小さくすることができ、これにより、搬出入口の開口面積を小さくすることができる。これにより、チャンバの搬出入口の開閉機構に対する熱負荷を軽減することができ、チャンバのメンテナンス頻度を少なくして、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0013】
また、本実施形態の基板処理装置によれば、カセットから基板Kを搬出する動作として、制御部が、ロボットアームをカセット内に挿入させた後に、ロボットアームを上昇させて基板の下から持ち上げるとともに、昇降機構によってカセットを下降させるので、従来の基板搬送装置に比べてロボットアームの上昇時の変位量を小さくすることができる。これにより、搬出入口の開口面積を小さくすることでき、また、基板Kの搬出時間を短縮することもできる。
【0014】
また、本実施形態の基板処理装置によれば、カセットに基板を搬入する動作として、制御部が、基板を保持したロボットアームをカセット内に挿入させた後に、ロボットアームを下降させて基板をカセット内に載置するとともに、昇降機構によってカセットを上昇させるので、従来の基板搬送装置に比べてロボットアームの下降時の変位量を小さくすることができる。これにより、搬出入口の開口面積を小さくすることでき、また、基板の搬入時間を短縮することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態である基板処理装置を示す平面模式図。
図2】本発明の実施形態である基板処理装置の要部を示す側面断面図。
図3】本発明の実施形態である基板処理装置の動作を説明する側面断面図。
図4】本発明の実施形態である基板処理装置の動作を説明する側面断面図。
図5】従来の基板処理装置の動作を説明する側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における基板処理装置を示す模式平面図であり、図において、符号1は基板処理装置である。
【0017】
本実施形態に係る基板処理装置1は、図1に示すように、平面視して多角形状のトランスファチャンバ2と、トランスファチャンバ2の各辺に接続された処理室となるチャンバ10~10Eと、を有する。
【0018】
本実施形態に係る基板処理装置1は、複数枚の基板を真空雰囲気等の密閉状態として処理するものとされ、その処理は特に限定されない。チャンバ10~10Eは、それぞれ、異なる処理を基板に施す処理室とされることができる。
例えば、チャンバ10~10Eのうち1箇所は、基板を出し入れするロード/アンロード室とすることができる。
【0019】
トランスファチャンバ2は、図1に示すように、その内部に、搬送ロボット2aを有し、トランスファチャンバ2と各チャンバ10~10Eとの間で、基板を搬送可能とされている。
なお、トランスファチャンバ2には、搬送ロボット2aを複数設置することもできる。
さらに、トランスファチャンバ2は、多角形であればよく、三角形から八角形程度まで、任意の平面形状とすることができる。
【0020】
また、基板処理装置1には、トランスファチャンバ2と、チャンバ10~10Eと、搬送ロボット2aとを制御する制御部100が備えられている。
【0021】
搬送ロボット2aには、水平方向、垂直方向に移動可能に構成されたロボットアーム2bが備えられている。搬送ロボット2aは、回転軸と、この回転軸に取り付けられたロボットアーム2bと、上下動装置とを有している。ロボットアーム2bの先端には、ロボットハンド2cが取り付けられている。
【0022】
ロボットアーム2bは、互いに屈曲可能な第一、第二の能動アームと、第一、第二の従動アームとから構成されている。搬送ロボット2aは、被搬送物である基板を、チャンバ10~10E間で移動させることができる。
【0023】
ロボットアーム2bは、基板を載置できるように形成されており、複数本、例えば、平面視して2本、あるいは、4本形成されることができる。また、ロボットアーム2bにおける、基板の搬出入方向に沿う方向の長さは、基板をロボットアーム2b上に確実に載置して搬送することができるように基板より長く形成される。
【0024】
ロボットアーム2bの垂直方向における厚みは、後述するチャンバ10のカセット20に設けられた基板支持ピンの高さよりも薄く形成されている。このようにすることで、基板をロボットアーム2b上に載置して、チャンバ10へと搬送し、基板をチャンバ10内のカセット20における基板支持ピン上に移設する際に、基板を落下させることなくスムーズにロボットアーム2b上から基板支持ピン上に移設することができる。
【0025】
つまり、基板に集中荷重などがかかることなく確実に移設することができる。また、基板の処理が完了した後、チャンバ10から搬出する際に基板支持ピンにより形成される基板と後述する支持部21との間の隙間にロボットアーム2bを挿通することができるため、基板をロボットアーム2b上に確実に移設することができる。
【0026】
トランスファチャンバ2および各チャンバ10~10Eには、真空状態に保持できるように、図示しない真空ポンプが接続されている。また、トランスファチャンバ2および各チャンバ10~10Eには、所定の雰囲気ガスを供給するガス供給部を接続することができる。
【0027】
特に、チャンバ10には、図示しない窒素ガス供給部が設けられてもよい。窒素ガス供給部より窒素ガスをチャンバ10内に供給すると、例えば、加熱処理をする際に、基板の昇温速度を速めることができる。また、このときチャンバ10内の圧力は100Pa程度に保持できるように構成されることができる。
【0028】
また、トランスファチャンバ2には、排気口が形成されてもよい。排気口は、トランスファチャンバ2におけるチャンバ10との境界部近傍に形成さる。排気口により、トランスファチャンバ2内の排気をすることができるとともに、後述するシャッタ15a,16aが開状態に保持されているときには、チャンバ10内の排気をすることが可能となる。
この場合、チャンバ10に排気手段を設ける必要がなくなりコスト低減できる。また、チャンバ10からトランスファチャンバ2に流出した高温の窒素ガスは、搬送ロボット2aに到達する前に排気口から排出されるので、高温の窒素ガスによる搬送ロボットへの悪影響を防止することができる。
【0029】
本実施形態に係る基板処理装置1としては、チャンバ10が複数枚の基板に対して同時に加熱処理を施すものとして説明する。
チャンバ10における処理は熱処理に限定されない。また、チャンバ10A~10Eは、チャンバ10と同じ処理を施す同じ構成としてもよいし、異なる処理を施す処理室として異なる構成とすることもできる。チャンバ10と異なる処理としては、成膜、エッチング、洗浄等を挙げることができる。
【0030】
図2は、本実施形態の基板処理装置におけるチャンバを示す側断面図である。
チャンバ10は、図1及び図2に示すように、平面視して略矩形断面を有するとともに、鉛直方向の断面形状が略矩形とされている。チャンバ10は、密閉可能とされている。
【0031】
チャンバ10は、図2に示すように、天井部11aと、天井部11aと平行な底部12aと、平面視して天井部11aと底部12aとの輪郭に沿って立設された側部11b、12eとを有する。また、図2には示されないが、平面視して天井部11aと底部12aとの輪郭に沿って立設された別の側部がある。
【0032】
チャンバ10の側部12eには、図2に示すように、後述するように基板を出し入れする搬出入口15,16が設けられる。搬出入口15,16は、上下方向に離間して、例えば2箇所設けられる。なお、搬出入口15,16の設置数はこれに限定されるものではなく、1箇所でもよく、3箇所以上でもよい。
【0033】
搬出入口15,16には、それぞれ開閉可能なシャッタ15a,16aが設けられる。
シャッタ15a,16aは、いずれもシャッタ駆動部15b,16bによって開閉可能とされている。
【0034】
シャッタ駆動部15bが、シャッタ15aを開放した際には、搬送ロボット2aが、上下動装置によってロボットアーム2bを搬出入口15に対応する高さ位置まで移動して、ロボットアーム2bに支持された基板を搬出入口15からチャンバ10内に搬出入可能とされる。
【0035】
シャッタ駆動部16bが、シャッタ16aを開放した際には、搬送ロボット2aが、上下動装置によってロボットアーム2bを搬出入口16に対応する高さ位置まで移動して、ロボットアーム2bに支持された基板を搬出入口16からチャンバ10内に搬出入可能とされる。
【0036】
チャンバ10の内部には、図2に示すように、処理する基板を複数支持するカセット20が設けられる。
カセット20は、図2に示すように、略矩形の支持部21が上下方向に複数設けられる。複数の支持部21は、ほぼ等しい輪郭形状を有する。複数の支持部21は、互いに上下方向に離間して配置される。
【0037】
複数の支持部21は、ほぼ等しい上下方向の離間距離を有する。複数の支持部21は、例えばその四隅に立設された支持柱22によって、互いの上下間隔を維持される。
支持柱22は、上下方向における複数の支持部21間の離間を維持可能であれば、この構成に限るものではない。
【0038】
本実施形態のカセット20においては、支持部21が6段配置される。したがって、本実施形態のカセット20においては、6枚の基板を支持して同時に処理することが可能とされる。なお、支持部21の段数はこれに限定されるものではない。
【0039】
複数の支持部21は、それぞれの上に基板を載置可能とされている。複数の支持部21は、いずれも、載置する基板よりもやや大きい輪郭形状とされる。
【0040】
また、複数の支持部21は、それぞれの上に載置された基板を加熱する図示略のヒータを備えている。支持部21に備えられたヒータは、いずれも、基板の全面で等しい加熱状態となるように配置される。具体的には、支持部に備えられたヒータは、支持部の全面に対応した配置とされることができる。
【0041】
ヒータは、例えば、カーボンからなる板状部材を2枚重ね合わせ、その板状部材どうしの間にシースヒータが挟持された構成としたものを用いることができる。ヒータは、チャンバ10の外部に設けられた図示しないヒータ電源よりシースヒータに電圧を印加することで、加熱されるように構成されている。加熱されたヒータからの輻射熱により基板を加熱できるように構成されている。
【0042】
なお、カセット20は、最上部の支持部21の上側に、支持部21とほぼ同じ輪郭形状のヒータ21aを有する。ヒータ21aは、支持柱22によって最上部の支持部21との上下間隔を維持される。ヒータ21aと最上部の支持部21との上下間隔は、上下方向に隣り合う支持部21と支持部21との上下間隔と等しく設定される。ヒータ21aは、ヒータと略同等の構成を有する。
【0043】
カセット20の最上部のヒータ21a、および、各段の支持部21に備えられたヒータは、図示しないヒータ線を介して、チャンバ10の外部に設けられたヒータ電源から加熱電力を供給される。
【0044】
支持部21の上面位置には、載置された基板を支持する基板支持ピンを有していてもよい。基板支持ピンは、ヒータの上面に複数取り付けられており、基板を載置したときに、基板の自重による撓みを最小限に抑制すべく適正な位置に取り付けられている。また、基板支持ピンは、平面視して搬送ロボット2aのロボットアーム2bと干渉しない位置に設けられている。
【0045】
基板支持ピンは、支持部21上に取り付けられた支柱と、支柱の上部に設けられたローラとを備えている。ローラは、その中心軸を中心に回転可能に構成されている。ローラの中心軸は水平方向に延在する。このローラに基板が載置されることにより、基板が加熱により熱伸びする際に、基板に傷が発生することを防止することができる。
【0046】
それぞれの基板支持ピンは、ローラの回転方向が基板の中心からそれぞれの基板支持ピンへ指向する方向に沿うように配置されている。つまり、基板が加熱されたときに、基板の熱伸び方向に対応するように基板支持ピンを配置する。なお、基板の中心に対応する位置の基板支持ピンはローラを設けず、固定されたピンとしてもよい。このように構成することで、基板を加熱しても基板の中心位置がずれなくなり、加熱が完了した基板を搬出入する際に、位置合わせをすることなく、確実に基板を搬出することができる。
【0047】
カセット20の最下層(底部)となる支持部21の下側位置には、図2に示すように、昇降軸23が下向きに延在するように接続される。昇降軸23は、平面視した支持部21の中央位置に接続される。
【0048】
昇降軸23は、チャンバ10の底部12aに設けられた貫通部12gを貫通する。昇降軸23は、貫通部12gを上下方向に摺動可能とされる。貫通部12gは、昇降軸23の外周面との間で摺動可能にシールされている。
昇降軸23は中空状とされる。昇降軸23の内部には、支持部21に備えられたヒータと、チャンバ10外部に設けられたヒータ電源とを接続する複数本のヒータ線が全て通される。
【0049】
昇降軸23の内部は、チャンバ10内部と連通している。昇降軸23の内部における下端部には図示略のシールフランジが設けられる。シールフランジは、昇降軸23における下端部で、昇降軸23の内部を密閉可能にシールしている。
【0050】
昇降軸23は、図2に示すように、昇降駆動部30に接続されている。
昇降駆動部30は、カセット20をチャンバ10内で昇降させる。昇降駆動部30は、昇降軸23の下端を支持する昇降支持部31と、昇降支持部31を上下方向に位置規制して昇降するボールネジ32,32と、ボールネジ32を回転駆動する昇降回転部33と、を有する。
【0051】
ボールネジ32は、鉛直方向に立設される。ボールネジ32は、昇降支持部31を上下方向に貫通する貫通孔31aに螺合されている。
昇降回転部33によってボールネジ32を回転することで、昇降支持部31が上下方向に位置規制した状態で昇降する。これにより、昇降駆動部30が昇降軸23を昇降する。
昇降駆動部30と昇降軸23とは、昇降機構を構成している。
【0052】
昇降駆動部30によって昇降軸23を昇降することで、チャンバ10内でカセット20が上下方向に移動される。昇降機構の動作は、制御部100によって制御される。
【0053】
カセット20が、チャンバ10内で最も上側位置に移動された場合を考える。
この場合、図2に示すように、最下段となる支持部21は、搬出入口16に対応する高さ位置となる。同時に、下から4段目、上から3段目となる支持部21は、搬出入口15に対応する高さ位置となる。
【0054】
この状態で、シャッタ駆動部15bが、シャッタ15aを開放した際には、搬送ロボット2aが、上下動装置によってロボットアーム2bを搬出入口15に対応する高さ位置まで移動する。そして、ロボットアーム2bに支持された基板を搬出入口15から上から3段目となる支持部21に搬出入可能である。
【0055】
同様に、シャッタ駆動部16bが、シャッタ16aを開放した際には、搬送ロボット2aが、上下動装置によってロボットアーム2bを搬出入口16に対応する高さ位置まで移動する。そして、ロボットアーム2bに支持された基板を搬出入口16から最下段となる支持部21に搬出入可能である。
【0056】
さらに、多段とされた支持部21における一段分だけ、カセット20がチャンバ10内で下側に移動された場合を考える。
この場合、上から5段目、下から2段目となる支持部21は、搬出入口16に対応する高さ位置となる。同時に、下から5段目、上から2段目となる支持部21は、搬出入口15に対応する高さ位置となる。
【0057】
この状態で、シャッタ駆動部15bが、シャッタ15aを開放した際には、搬送ロボット2aが、上下動装置によってロボットアーム2bを搬出入口15に対応する高さ位置まで移動する。そして、ロボットアーム2bに支持された基板を搬出入口15から上から2段目となる支持部21に搬出入可能である。
【0058】
同様に、シャッタ駆動部16bが、シャッタ16aを開放した際には、搬送ロボット2aが、上下動装置によってロボットアーム2bを搬出入口16に対応する高さ位置まで移動する。そして、ロボットアーム2bに支持された基板を搬出入口16から下から2段目となる支持部21に搬出入可能である。
【0059】
さらに、多段とされた支持部21における一段分だけ、カセット20がチャンバ10内で下側に移動された場合を考える。
この場合、上から4段目、下から3段目となる支持部21は、搬出入口16に対応する高さ位置となる。同時に、最上段となる支持部21は、搬出入口15に対応する高さ位置となる。
【0060】
この状態で、シャッタ駆動部15bが、シャッタ15aを開放した際には、搬送ロボット2aが、上下動装置によってロボットアーム2b及びロボットハンド2cを搬出入口15に対応する高さ位置まで移動する。そして、ロボットハンド2cに支持された基板を搬出入口15から最上段となる支持部21に搬出入可能である。
【0061】
同様に、シャッタ駆動部16bが、シャッタ16aを開放した際には、搬送ロボット2aが、上下動装置によってロボットアーム2bを搬出入口16に対応する高さ位置まで移動する。そして、ロボットアーム2bに支持された基板を搬出入口16から下から3段目となる支持部21に搬出入可能である。
【0062】
昇降駆動部30によって昇降軸23を昇降する際には、チャンバ10内でカセット20が上下方向に移動可能な空間が形成されていることが必要である。
したがって、チャンバ10の高さ寸法は、チャンバ10内でカセット20を上下方向に移動可能とする空間高さに規定される。
本実施形態では、複数の搬出入口15,16において、その高さ位置を上述するように設定したことで、チャンバ10の高さ寸法を小さくできる。
【0063】
次に、基板をチャンバ10に対して搬出入する動作について詳細に説明する。
本実施形態の基板処理装置1では、上述のように、ロボットアーム2bが、水平方向に移動して搬出入口15、16からチャンバ10内に挿入可能とされ、かつ、カセット20内において上昇または下降が可能とされている。また、制御部100は、搬送ロボット2a及び昇降駆動部30の動作を制御することができるようになっている。具体的には、制御部100は、カセット20内においてロボットアーム2bを下降させる場合は昇降機構によってカセット20を上昇させ、カセット20内においてロボットアーム2bを上昇させる場合は昇降機構によってカセット20を下降させる。
【0064】
カセット20内においてロボットアーム2bを下降させる場合とは、基板をカセット20内に設置する場合である。この場合は、昇降機構によってカセット20を上昇させることで、ロボットアーム2bに保持された基板と、カセット20内に設置された支持部21とを相互に接近させる。これにより、ロボットアーム2bの下降時の変位量を少なくする。
【0065】
また、カセット20内においてロボットアーム2bを上昇させる場合とは、基板をカセット20から取り出す場合である。この場合は、昇降機構によってカセット20を下降させることで、ロボットアーム2bに保持された基板と、カセット20内に設置された支持部21とを相互に離間させる接近させる。これにより、ロボットアーム2bの上昇時の変位量を少なくする。
【0066】
以下、図3及び図4を参照して、基板処理装置1の動作をより詳細に説明する。図3及び図4では、搬出入口15に対する搬出入動作を説明するが、搬出入口16に対する搬出入動作も同様である。
【0067】
まず、図3に基づき、カセット20から基板を搬出する動作を説明する。図3(a)は、チャンバ10内のカセット20の支持部21に基板Kが載置されている状態を示す。基板Kは、チャンバ10内において各種の処理が施された状態にある。支持部21の上面には複数の基板支持ピン21bが備えられており、基板支持ピン21bの上に基板Kが載せられている。基板Kと支持部21とは基板支持ピン21bによって離間されており、基板Kと支持部21との間にロボットアーム2bが挿入可能な空間が設けられている。なお、図3(a)には、上段側の支持部21も図示している。チャンバ10の側部12eに設けられた搬出入口15は開口されている。
【0068】
次に、図3(b)に示すように、制御部100の指令に基づき、搬出入口15からロボットアーム2bをチャンバ10内のカセット20に挿入させる。ロボットアーム2bは、カセット20内の支持部21と基板Kとの間の空間、すなわち基板Kよりも低い位置に向けて水平方向から挿入させる。
【0069】
次に、図3(c)に示すように、制御部100の指令に基づき、ロボットアーム2bをカセット20内で上昇させる。また、制御部100の指令に基づき、昇降機構によりカセット20を下降させる。ロボットアーム2bが上昇し、また、カセット20が下降する間に、ロボットアーム2bと基板Kとが相互に接近して接触し、基板支持ピン21bからロボットアーム2bに基板Kが受け渡される。そして、ロボットアーム2bに保持された基板Kは、基板保持ピン21aから離間される。
【0070】
次に、図3(d)に示すように、制御部100の指令に基づき、ロボットアーム2bを基板Kとともにチャンバ10及びカセット20から引き出す。ロボットアーム2bは、水平方向に引き出される。
【0071】
次に、図4に基づき、カセット21に基板を搬入する動作を説明する。
まず、図4(a)に示すように、制御部100の指令に基づき、搬出入口15からロボットアーム2bを基板Kとともにチャンバ10のカセット20内に挿入させる。ロボットアーム2bは、カセット20内の支持部21の上方の空間であって、基板Kの設置予定位置よりも上側の位置に向けて水平方向から挿入させる。
【0072】
次に、図4(b)に示すように、制御部100の指令に基づき、ロボットアーム2bを基板Kとともにカセット20内で下降させる。また、制御部100の指令に基づき、昇降機構によりカセット20を上昇させる。ロボットアーム2bとともに基板Kが下降し、また、カセット20が上昇する間に、基板Kと支持部21が相互に接近して基板Kと基板保持ピン21aとが接触し、ロボットアーム2bから基板支持ピン21bに基板Kが受け渡される。そして、ロボットアーム2bは基板Kから離間される。
【0073】
次に、図4(c)に示すように、制御部100の指令に基づき、チャンバ10の搬出入口15からロボットアーム2bを引き出す。ロボットアーム2bは、水平方向に引き出される。そして、図4(d)に示すように、支持部21の基板支持ピン21bに載せられた基板Kに対して、各種の処理が開始される。
【0074】
次に、比較のため、従来の基板処理装置における動作について図5を参照して説明する。従来の基板処理装置では、ロボットアームのみがカセット内において上下動し、カセット自体は上下動しない構成とされている。従来の基板処理装置の動作は、基板をチャンバから取り出す動作のみについて説明する。
【0075】
図5(a)は、チャンバ内のカセット220の支持部221に基板Kが載置されている状態を示す。従来の基板処理装置では、図5(b)に示すように、搬出入口215からロボットアーム202bをカセット内に挿入させる。ロボットアーム202bは、カセット220内の支持部221と基板Kとの間の空間、すなわち基板Kよりも低い位置に向けて水平方向から挿入させる。
【0076】
次に、図5(c)に示すように、ロボットアーム202bを上昇させて、ロボットアーム202bを基板Kに接触させる。更にロボットアーム202bを上昇させることで、支持部221の基板支持ピン221bからロボットアーム202bに基板を受け渡す。
【0077】
次いで、図5(d)に示すように、基板Kが基板支持ピン221bから十分に離間された後、基板Kを保持したままのロボットアーム202bを、チャンバの搬出入口215から水平方向に引き出す。このようにして、カセット220から基板Kを搬出する。
【0078】
本実施形態の基板処理装置1のカセット20内におけるロボットアーム2bの上昇時の変位または下降時の変位量(以下、変位量という)をΔLとし、従来の基板処理装置におけるロボットアーム202aの上昇時の変位量または下降時の変位量(変位量)をΔLとすると、本実施形態の変位量ΔLは、従来の変位量ΔLに比べて小さくなる。これは、ロボットアーム2bが上昇または下降する際に、カセット21がロボットアーム2bの動く方向とは逆方向に動くためである。このように、本実施形態では、ロボットアーム2bの変位量ΔLが従来の変位量ΔLよりも小さくなるため、搬出入口15、16の高さ方向の寸法を小さくすることができ、これにより、搬出入口15、16の開口面積を小さくすることができる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の基板処理装置1によれば、制御部100が、カセット20内においてロボットアーム2bを下降させる場合はカセット20を上昇させ、カセット20内においてロボットアーム2bを上昇させる場合はカセット20を下降させるので、従来の基板搬送装置に比べて、基板Kをチャンバ10に搬出入する際のロボットアーム2bの上昇時の変位量及び下降時の変位量を小さくすることができ、これにより、搬出入口15、16の開口面積を小さくすることができる。これにより、チャンバ10の搬出入口15、16の開閉機構に対する熱負荷を軽減することができ、チャンバ10のメンテナンス頻度を少なくして、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態の基板処理装置1によれば、カセット21から基板Kを搬出する動作として、制御部100が、ロボットアーム2bをカセット20内に挿入させた後に、ロボットアーム2bを上昇させて基板Kの下から持ち上げるとともに、昇降機構によってカセット20を下降させるので、従来の基板搬送装置に比べてロボットアーム2bの上昇時の変位量を小さくすることができる。これにより、搬出入口15、16の開口面積を小さくすることでき、また、基板Kの搬出時間を短縮することもできる。
【0081】
また、本実施形態の基板処理装置1によれば、カセット21に基板Kを搬入する動作として、制御部100が、基板Kを保持したロボットアーム2bをカセット20内に挿入させた後に、ロボットアーム2bを下降させて基板Kをカセット20内に載置するとともに、昇降機構によってカセット20を上昇させるので、従来の基板搬送装置に比べてロボットアーム2bの下降時の変位量を小さくすることができる。これにより、搬出入口15、16の開口面積を小さくすることでき、また、基板Kの搬入時間を短縮することもできる。
【符号の説明】
【0082】
1…基板処理装置、2a…搬送ロボット、2b…ロボットアーム、12e…側面部、15、16…搬出入口、10…チャンバ、20…カセット、100…制御部、K…基板。
図1
図2
図3
図4
図5