(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】エッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101C
(21)【出願番号】P 2021075098
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】森川 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】土居 謙太
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏幸
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150628(WO,A1)
【文献】特開2017-108182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターン形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、
前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、Si
x
O
y
α
z
を形成可能なガスを含み、
複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する、
ことを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターン形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、
複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入
し、
前記レジスト保護膜形成工程は、前記エッチング工程による前記被処理体のエッチングが所定の状態となるまでおこなわない、
ことを特徴とするエッチング方法。
【請求項3】
前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、Si
x
O
y
α
z
を形成可能なガスを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記レジスト保護膜形成工程が、プラズマ成膜工程である、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記レジスト保護膜形成工程を、前記エッチング工程による前記被処理体が所定のアスペクト比となった後におこなう、
ことを特徴とする請求項
2記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記被処理体がシリコンから構成される、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記エッチング工程が、
前記レジストパターンに応じて、第1ガスを導入してシリコンの前記被処理体にデポ層を形成するデポ工程と、
前記レジストパターンに応じて、第2ガスを導入してシリコンの前記被処理体にドライエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、
第3ガスを導入してアッシング処理するアッシング工程と、を有し、
前記デポ工程において、前記第1ガスがフルオロカーボンを含み、
前記ドライエッチング工程において、前記第2ガスがフッ化硫黄およびフッ化シリコンを含み、
前記アッシング工程を、前記ドライエッチング工程の後におこなうとともに、
前記アッシング工程において、前記第3ガスが酸素ガスを含み、前記アッシング工程が、シリコンの前記被処理体表面に対して
凹部パターンを形成する方向への異方性を有する異方性プラズマ処理により処理され、
前記異方性プラズマ処理が、シリコンの前記被処理体に対向配置される電極に対してシリコンの前記被処理体表面の中央部と周縁部とで周波数の異なる交流電圧を印加して誘導結合プラズマを発生させて処理する、
ことを特徴とする請求項6記載のエッチング方法。
【請求項8】
その内部の減圧が可能で、前記内部でシリコンの前記被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の第一電極と、
前記第一電極に対して、第一の周波数λ1のバイアス電圧が印加されるように構成された第一の電源と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を挟んで、前記第一電極と対向し、かつ、中央部に配置された螺旋状の第二電極、及び、前記第二電極より外周部に配置された螺旋状の第三電極と、
前記第二電極に対して、第二の周波数λ2の交流電圧を印加する第二の高周波電源と、
前記第三電極に対して、第三の周波数λ3の交流電圧を印加する第三の高周波電源と、
前記チャンバ内にフッ素を含有するプロセスガスを導入するガス導入手段と、を備え、
前記チャンバ内において、前記チャンバの上蓋側、かつ、前記第一電極と対向する位置に、スパッタリング用の固体ソースを有するプラズマ処理装置によって、前記異方性プラズマ処理をおこなう際に、
前記第二の周波数λ2と前記第三の周波数λ3が、λ2>λ3の関係にある場合は、
前記ガス導入手段が前記上蓋の中央部に配置されている、ことを特徴とする請求項7記載のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチング方法に関し、特にレジストを用いるエッチング方法に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板から部品、たとえば、電子装置用の半導体部品または微小機械部品用のパーツなどを製造する際に、いわゆるボッシュ法など、プラズマによる異方性の(anisotropic)化学侵食(attack)によって作ることが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、そのような高アスペクト比の加工をおこなう際に、RIE-lagの問題を最小に抑えまたは解消するという目的が特許文献2に記載されている。
【0004】
シリコンウェーハに高アスペクト比となるビアやトレンチをドライエッチングによって形成する場合で、同ウェーハ上にアスペクト比の異なるパターンが混在する場合には、高アスペクト比のパターンに比べて、低アスペクト比のパターンにてエッチングレートが高くなる。このため、RIE-lag(Reactive Ion Etch-lag)と称する深さの差が発生するという問題があった。
【0005】
RIE-lagとは、プラズマエッチングにおいてマスク開口の大きさによりエッチング速度に差が出る現象のことである。このエッチング速度の差はビアやトレンチ等の溝(凹部)のアスペクト比(溝の幅に対する深さの比)に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5501893号明細書
【文献】特開2002-033313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、RI-lagの問題を解消するための処理など、フッ素や酸素を含むエッチング処理や、アッシング処理をおこなった場合に、樹脂性のレジストが消失してしまうという問題があった。
これにより、例えば、シリコンのドライエッチング処理をおこなう際などに、エッチング処理対象と樹脂レジストとの選択比が不足して、形成されるパターンの正確性が維持できないという問題があった。
【0008】
これを防止するためには、金属などから形成されてフッ素系あるいは酸素系のプラズマガスに耐性を有する保護膜、いわゆるハードマスク層と称される膜を、樹脂などのレジスト膜に積層する必要がある。しかし、フォトリソグラフィー工程によって、ハードマスク層に樹脂レジストと同じパターンを形成するためには、フッ素系や酸素系のエッチングやアッシングで用いる真空装置とは別に、金属等のハードマスク層を積層する装置、さらに、樹脂レジストへの処理とは別にハードマスク層にパターン形成するエッチング等の処理や洗浄処理工程をおこなう装置が必要となる。
【0009】
このため、シリコン基板等にビアやホール等を形成するなどの加工をおこなうためには必要な工程数が多くなる上に、複数の装置が必要であり、さらに、これらの装置間で、汚染の可能性を増加させてもシリコン基板を移動させる必要があるという問題があった。
しかも、ハードマスク層を積層しても、樹脂レジストがサイドから浸食されてしまい、樹脂レジストのパターン正確性が低下するという問題があった。
【0010】
特に、特許文献2に記載されるようなRI-lagの問題を最小にしようとする場合に、上記のようなフッ素や酸素系のプラズマ処理を用いていたため、樹脂レジストに関する問題を解決したいという要求があった。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.フッ素系や酸素系ガスを用いたプラズマ処理において、樹脂系のレジストパターンが減厚するあるいは消滅することを防止すること。
2.シリコンエッチングや、導体、絶縁物等の処理において形成パターンの正確性を維持すること。
3.いわゆるボッシュプロセスのような多段階シリコンエッチングプロセスにおいて、レジストパターンの消耗を防ぎ、かつ形成パターンの正確性を維持すること。
4.さらに他の上記導体、絶縁物の微細パターン形成プロセスにおいても、レジストパターンの消耗を防ぎ、かつ形成パターンの正確性を維持すること。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のエッチング方法は、
被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターン形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、
を有し、
複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する、
ことにより上記課題を解決した。
本発明のエッチング方法は、
前記レジスト保護膜形成工程が、プラズマ成膜工程である、
ことができる。
本発明のエッチング方法は、
前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyαzを形成可能なガスを含む、
ことができる。
本発明のエッチング方法は、
前記レジスト保護膜形成工程を、前記エッチング工程による前記被処理体のエッチングが所定の状態となるまでおこなわない、
ことができる。
本発明のエッチング方法は、
前記レジスト保護膜形成工程を、前記エッチング工程による前記被処理体が所定のアスペクト比となった後におこなう、
ことができる。
本発明のエッチング方法は、
前記被処理体がシリコンから構成される、
ことができる。
本発明のエッチング方法は、
前記エッチング工程が、
前記レジストパターンに応じて、第1ガスを導入してシリコンの前記被処理体にデポ層を形成するデポ工程と、
前記レジストパターンに応じて、第2ガスを導入してシリコンの前記被処理体にドライエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、
第3ガスを導入してアッシング処理するアッシング工程と、
を有し、
前記デポ工程において、前記第1ガスがフルオロカーボンを含み、
前記ドライエッチング工程において、前記第2ガスがフッ化硫黄およびフッ化シリコンを含み、
前記アッシング工程を、前記ドライエッチング工程の後におこなうとともに、
前記アッシング工程において、前記第3ガスが酸素ガスを含み、前記アッシング工程が、シリコンの前記被処理体表面に対して前記凹部パターンを形成する方向への異方性を有する異方性プラズマ処理により処理され、
前記異方性プラズマ処理が、シリコンの前記被処理体に対向配置される電極に対してシリコンの前記被処理体表面の中央部と周縁部とで周波数の異なる交流電圧を印加して誘導結合プラズマを発生させて処理する、
ことができる。
本発明のエッチング方法は、
その内部の減圧が可能で、前記内部でシリコンの前記被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の第一電極と、
前記第一電極に対して、第一の周波数λ1のバイアス電圧が印加されるように構成された第一の電源と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を挟んで、前記第一電極と対向し、かつ、中央部に配置された螺旋状の第二電極、及び、前記第二電極より外周部に配置された螺旋状の第三電極と、
前記第二電極に対して、第二の周波数λ2の交流電圧を印加する第二の高周波電源と、
前記第三電極に対して、第三の周波数λ3の交流電圧を印加する第三の高周波電源と、
前記チャンバ内にフッ素を含有するプロセスガスを導入するガス導入手段と、
を備え、
前記チャンバ内において、前記チャンバの上蓋側、かつ、前記第一電極と対向する位置に、スパッタリング用の固体ソースを有するプラズマ処理装置によって、
前記異方性プラズマ処理をおこなう際に、
前記第二の周波数λ2と前記第三の周波数λ3が、λ2>λ3の関係にある場合は、
前記ガス導入手段が前記上蓋の中央部に配置されている、
ことができる。
【0013】
本発明のエッチング方法は、
被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターン形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、
を有し、
複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する。
これにより、レジスト保護膜を形成してエッチング工程においてレジストパターンが減厚、あるいは、除去されてしまうことを防止または抑制して、被処理体に対するエッチング処理の正確性を維持することが可能となる。したがって、レジストパターンを形成するレジスト膜厚を小さくすることが可能となる。被処理体を低負荷で加工処理することができる。
さらに、レジスト膜厚を小さくすることによって、パターン精度を向上することができる。レジスト膜厚を小さくすることによって、露光光の波長が短い処理にも対応することが可能となる。同時に、プラズマ等に対するレジストの耐性を向上して、従来プラズマ処理に用いることができなかった種類のレジストで、プラズマ処理に対する脆弱性を持ったままでも、プラズマ処理を可能とすることができる。
【0014】
本発明のエッチング方法は、
前記レジスト保護膜形成工程が、プラズマ成膜工程である。
これにより、プラズマCVDによってレジスト保護膜を形成可能として、エッチング工程をおこなうプラズマ装置のチャンバと同じチャンバ内で、レジスト保護膜を形成することが可能となる。
【0015】
本発明のエッチング方法は、
前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyαzを形成可能なガスを含む。
これにより、レジストパターン上にフッ化酸化シリコンSiOFからなるレジスト保護膜を形成して、エッチング工程におけるレジストパターンが減厚、あるいは、除去されてしまうことを防止または抑制することができる。
また、フッ化酸化シリコンSiOFからなるレジスト保護膜を形成することで、レジストパターンに対する影響をほとんど与えないで保護性能を呈示することが可能となる。
ここで、レジスト保護膜形成工程における処理ガスは、SixOyαzを形成可能なガスまたは混合ガスであれば、これ以外にも適応可能である。たとえば、SixOyαzを形成可能なガスとして、SiF4ガス、SiCl4ガス、SiH4ガスの少なくとも1つを含むガスと酸素ガスとの混合ガス、または、TEOS(tetra ethoxy silane;正珪酸四エチルSi(OC2H5)4)ガス等、を挙げることができる。
【0016】
本発明のエッチング方法は、
前記レジスト保護膜形成工程を、前記エッチング工程による前記被処理体のエッチングが所定の状態となるまでおこなわない。
これにより、エッチング工程が、例えばシリコン基板に対して深掘りする処理など、所定の回数を繰り返しておこなう処理である場合に、処理開始直後にはレジストパターンへの減厚等のダメージがそれほどない場合に、レジスト保護膜形成をおこなわないことができる。したがって、例えば、エッチング加工が進んでおらず、加工深度が小さい間は、加工底面に対してレジスト保護膜が形成されて、処理の進度が抑制されてしまうことを防止できる。また、例えば、エッチング加工が進んで、加工深度が大きくなると、加工底面に対してレジスト保護膜が形成されず、処理の進度が抑制されないで処理をおこなうことができる。
【0017】
本発明のエッチング方法は、
前記レジスト保護膜形成工程を、前記エッチング工程による前記被処理体が所定のアスペクト比となった後におこなう。
これにより、エッチング工程が、例えばシリコン基板に対して深掘りする処理など、所定の回数を繰り返しておこなう処理である場合に、処理開始直後でエッチング箇所のアスペクト比がそれほど大きくなく、レジストパターンへの減厚等のダメージがそれほどない場合には、レジスト保護膜形成をおこなわないことができる。したがって、例えば、エッチング加工が進んでおらず、アスペクト比が小さい間は、加工底面に対してレジスト保護膜が形成されて、処理の進度が抑制されてしまうことを防止できる。また、例えば、エッチング加工が進んで、アスペクト比が大きくなると、加工底面に対してレジスト保護膜が形成されず、処理の進度が抑制されないで処理をおこなうことができる。
【0018】
本発明のエッチング方法は、
前記被処理体がシリコンから構成される。
これにより、シリコン基板を用いる半導体製造、MEMS等の素子製造における加工精度向上や、処理工程数の削減、処理コストの削減を可能とすることができる。
【0019】
本発明のエッチング方法は、
前記エッチング工程が、
前記レジストパターンに応じて、第1ガスを導入してシリコンの前記被処理体にデポ層を形成するデポ工程と、
前記レジストパターンに応じて、第2ガスを導入してシリコンの前記被処理体にドライエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、
第3ガスを導入してアッシング処理するアッシング工程と、
を有し、
前記デポ工程において、前記第1ガスがフルオロカーボンを含み、
前記ドライエッチング工程において、前記第2ガスがフッ化硫黄およびフッ化シリコンを含み、
前記アッシング工程を、前記ドライエッチング工程の後におこなうとともに、
前記アッシング工程において、前記第3ガスが酸素ガスを含み、前記アッシング工程が、シリコンの前記被処理体表面に対して前記凹部パターンを形成する方向への異方性を有する異方性プラズマ処理により処理され、
前記異方性プラズマ処理が、シリコンの前記被処理体に対向配置される電極に対してシリコンの前記被処理体表面の中央部と周縁部とで周波数の異なる交流電圧を印加して誘導結合プラズマを発生させて処理する。
これにより、レジストパターンの開口内周付近に付着したデポ層を、アッシング工程によって除去した状態で、ドライエッチング工程によって、シリコンの被処理体に凹部パターン形成することができる。したがって、レジストパターンの開口内周付近に付着したデポ層によって、凹部パターンのエッチングが深くなるにつれて細くなる先細りとなることを防止できる。
また、開口パターンの大きな凹部パターンにおいて、デポ工程において底部に付着するデポ層の厚さを大きくし、同時に、開口パターンの小さな凹部パターンにおいて、デポ工程において底部に付着するデポ層の厚さを小さくして、異なる径寸法の開口パターンを同時に形成する場合にも、凹部パターンの深さ寸法を等しくして、RIE-lagの発生を防止することができる。しかも、薄いレジストパターンを用いて、レジストパターンの減厚や消滅を来すことなく処理をおこなうことができる。
つまり、このシリコンドライエッチング手法は、デポジション堆積によるエッチングストップ効果を利用することで、シリコン基板に形成した異なる寸法の凹部パターン(ホールやトレンチなど)の処理後の深さの差を抑制することができる。
【0020】
本発明のエッチング方法は、
その内部の減圧が可能で、前記内部でシリコンの前記被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の第一電極と、
前記第一電極に対して、第一の周波数λ1のバイアス電圧が印加されるように構成された第一の電源と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を挟んで、前記第一電極と対向し、かつ、中央部に配置された螺旋状の第二電極、及び、前記第二電極より外周部に配置された螺旋状の第三電極と、
前記第二電極に対して、第二の周波数λ2の交流電圧を印加する第二の高周波電源と、
前記第三電極に対して、第三の周波数λ3の交流電圧を印加する第三の高周波電源と、
前記チャンバ内にフッ素を含有するプロセスガスを導入するガス導入手段と、
を備え、
前記チャンバ内において、前記チャンバの上蓋側、かつ、前記第一電極と対向する位置に、スパッタリング用の固体ソースを有するプラズマ処理装置によって、
前記異方性プラズマ処理をおこなう際に、
前記第二の周波数λ2と前記第三の周波数λ3が、λ2>λ3の関係にある場合は、
前記ガス導入手段が前記上蓋の中央部に配置されている。
これにより、チャンバ内において、前記チャンバの上蓋側、かつ、前記第一電極と対向する位置に、スパッタリング用の固体ソースを有することにより、固体ソースからプラズマ中に、不足するたとえば酸素元素が逐次導入される。これにより、被処理体であるシリコン基板に対して、基板の半径方向において酸素元素が均一に供給される。
これにより、上述したようにシリコン基板表面に対して凹部パターンを形成する方向への異方性の高い誘導結合プラズマを発生させて異方性プラズマ処理をおこなうことができるので、シリコン基板に加工される凹部パターンの側壁形状が、凹部パターンの深さ方向において略直線状に保たれる。ゆえに、シリコン基板の表面に沿った方向において、シリコン基板の半径方向の位置に依存せず、すなわち、シリコン基板の中央部と同様に外周部においても、エッチング形状が垂直(ストレート型)な凹部パターン(ホールやトレンチ等)を安定して作製することが可能となる。
したがって、基板サイズや基板形状に依存することなく、エッチング形状が垂直な凹部パターンをシリコン基板における処理面の全域に亘って作製できる。これらを低負荷でかつ薄いレジストパターンを用いて、レジストパターンの減厚や消滅を来すことなく処理をおこなうことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フッ素系や酸素系ガスを用いたプラズマ処理において、樹脂系のレジストパターンが減厚するあるいは消滅することを防止し、より薄いレジストパターンを用いて、低負荷で、加工精度を向上することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態によって製造された被処理体であるシリコン基板を示す模式断面図である。
【
図2】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
【
図3】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図4】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図5】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図6】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図7】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図8】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図9】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図10】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図11】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図12】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図13】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図14】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図15】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態で用いられる装置を示す模式断面図である。
【
図16】
図15の装置において、内周側と外周側に2つのスパイラル状電極を配置し、各電極にそれぞれ異なる周波数の電源を接続する位置を示す平面図である。
【
図17】
図15の装置において、第一電極(外径D)と第二電極(外径d)との関係を示す断面図である。
【
図18】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態で用いられる装置の他の例を示す模式断面図である。
【
図19】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態で用いられる装置の他の例を示す模式断面図である。
【
図20】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態で用いられる装置の他の例を示す模式断面図である。
【
図21】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態で用いられる装置の他の例を示す模式断面図である。
【
図22】本発明に係るエッチング方法の第1実施形態で用いられる装置の他の例を示す模式断面図である。
【
図23】本発明に係るエッチング方法の第2実施形態によって製造された被処理体である基板を示す模式断面図である。
【
図24】本発明に係るエッチング方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
【
図25】本発明に係るエッチング方法の第2実施形態を示す工程断面図である。
【
図26】本発明に係るエッチング方法の第2実施形態を示す工程断面図である。
【
図27】本発明に係るエッチング方法の第2実施形態を示す工程断面図である。
【
図28】本発明に係るエッチング方法の実施例を示す模式断面図である。
【
図29】本発明に係るエッチング方法の実施例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるエッチング方法によって製造されたシリコン基板を示す模式断面図である。
図2は、本実施形態におけるエッチング方法を示すフローチャートである。図において、符号Sは、シリコン基板(被処理体)である。
【0024】
本実施形態に係るエッチング方法は、シリコン基板Sを被処理体として、樹脂等のレジストを保護しつつエッチングをおこなうシリコンのドライエッチング方法である。なお、レジストを保護しつつエッチングをおこなうエッチング方法であれば、これに限定されない。
【0025】
本実施形態に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図1に示すように、シリコン基板Sの表面に凹部パターンVSおよび凹部パターンVLを形成する。
凹部パターンVSは、径寸法ΦSを有する。凹部パターンVLは、径寸法ΦLを有する。径寸法ΦLは、径寸法ΦSよりも大きく設定される。
【0026】
凹部パターンVSと凹部パターンVLとの深さは等しく設定される。
凹部パターンVSと凹部パターンVLとは、例えば4~8程度、より好ましくは、8~14程度の高アスペクト比である形状に形成される。
なお、凹部パターンVSと凹部パターンVLとは、シリコン基板Sを貫通していることもできる。
【0027】
本実施形態に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図2に示すように、前工程S01と、レジストパターン形成工程S02と、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、深さ判断工程S06aと、レジスト保護判断工程S06と、レジスト保護膜形成工程S07と、後工程S08と、を有する。
【0028】
図2に示す前工程S01では、公知のランプヒータ等を用いた200℃以上の熱処理として、シリコン基板Sの前処理をおこなう。
【0029】
図3は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示すレジストパターン形成工程S02では、
図3に示すように、シリコン基板Sの表面にパターンを有するレジスト層(マスク層)Mを形成する。
レジスト層(マスク層)Mは、公知の樹脂レジストから形成することができる。ポジ型、ネガ型、露光波長などの選択、塗布方法、成膜方法等、これらの条件を適宜選択して所定の厚さに形成することができる。レジスト層(マスク層)Mを構成する材質は、一例として、感光性絶縁体、その他公知のものを挙げることができる。
【0030】
さらに、レジストパターン形成工程S02では、
図3に示すように、レジスト層(マスク層)Mにシリコン基板Sにおける凹部パターンVSの形状に対応するように処理領域を設定する開口パターン(マスクパターン)MSと、凹部パターンVLの形状に対応するように処理領域を設定する開口パターン(マスクパターン)MLと、を形成する。
具体的には、レジストパターン形成工程S02では、フォトレジストであるレジスト層(マスク層)Mを積層して、露光現像等の処理をおこない、さらに、ウェットエッチング処理、ドライエッチング処理等公知の処理をおこなうことで、開口パターンMSと開口パターンMLとを有するレジスト層(マスク層)Mを形成する。
【0031】
図4は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示すデポ工程S03は、ドライエッチング工程S04において、凹部パターンVSと凹部パターンVLとの側壁をエッチングから保護することができるように、
図4に示すように、シリコン基板S全面にフルオロカーボン等のポリマーからなるデポ層D1を異方性プラズマ処理により形成する。
【0032】
デポ層D1は、フッ素化合物を使用したエッチングであるドライエッチング工程S04において、垂直な側壁VSq、VLqを達成するために、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqをエッチングから保護するとともに、エッチングを凹部パターンVS,VLの底部VSb,VLbに限定する。
【0033】
デポ層D1は、レジスト層(マスク層)Mの表面および凹部パターンVS,VLの底部VSb,VLbに積層する。また、
図4においては、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqにおいてはデポ層D1を示しているが、実際にはあまり積層されない。
【0034】
デポ工程S03は、CHF3、C2F6、C2F4、またはC4F8などの過フッ化炭化水素ガスを用いて、プラズマ処理をおこなう。ここで、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
【0035】
このとき、プラズマ処理装置10においては、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。デポ工程S03においては、内外の電力のいずれも電源が出力可能な最大値とし、レートを向上させることができる。
【0036】
また、プラズマ処理装置10においては、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2である電力が、後述するドライエッチング工程S04およびアッシング工程S05における値よりも小さく設定することができる。また、プラズマ処理装置10においては、第一電極12に対して、バイアス電圧を印加しないことができる。
デポ工程S03においては、所定の雰囲気圧力として処理をおこなう。さらに、デポ工程S03においては、Arなどの希ガスを所定量添加してもよい。
【0037】
デポ工程S03で形成されるデポ層D1は、径寸法の小さい開口パターンMSに対応する底部VSbに比べて、径寸法の大きい開口パターンMLに対応する底部VLbにおける膜厚が大きくなる。なお、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト層(マスク層)Mの表面におけるデポ層D1の膜厚に比べて、開口パターンMLの底部VLbにおけるデポ層D1の膜厚は同等かあるいは小さくなる。
【0038】
つまり、デポ層D1の膜厚は、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト層(マスク層)Mの表面におけるデポ層D1の膜厚TD1、開口パターンMLの底部VLbにおけるデポ層D1の膜厚TLD1、開口パターンMSの底部VSbにおけるデポ層D1の膜厚TSD1、の順に小さくなる。
【0039】
デポ工程S03において、上記のように条件設定をおこなうことにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb,VLbにおけるデポ層D1のデポジションカバレージをそれぞれ最適化するように制御することが可能となる。ここで、デポジションカバレージとして望ましい条件の方向は、必要な膜厚となるデポ層D1を底部VSb,VLbに積層する処理時間を短くすることである。つまり、デポ層D1を底部VSb,VLbに積層する成膜速度を増大することである。
【0040】
また、デポジションカバレージとして望ましい条件としては、エッチング深さおよびアスペクト比に応じてデポジションカバレージを調整することである。つまり、後述するように、底部VSb,VLbの深さ変化に対応してアスペクト比が変化した場合でも、所望の厚さのデポ層D1を所定の積層成膜速度で成膜することを可能にできる。
さらに、底部VSbに積層するデポ層D1に対する均一性および確実性と、底部VLbに積層するデポ層D1に対する均一性および確実性とを、それぞれ向上することである。
【0041】
図5は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示すドライエッチング工程S04は、
図5に示すように、異方性プラズマエッチングにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb,VLbを掘り下げて、底部VSb1,VLb1を形成する。
【0042】
このとき、ドライエッチング工程S04における処理条件、プラズマの異方性、および、デポ工程S03によって積層したデポ層D1の膜厚差等によって、ドライエッチング工程S04において形成する開口パターンMSに対応する底部VSb1および開口パターンMLに対応する底部VLb1の深さを均一になるように設定する。
【0043】
具体的には、開口パターンMSに対応する底部VSbに積層したデポ層D1の膜厚TSD1が、開口パターンMLに対応する底部VLbに積層したデポ層D1の膜厚TLD1に比べて小さく、かつ、開口パターンMSに対応する底部VSbに対するエッチング量が、開口パターンMLに対応する底部VLbに対するエッチング量に比べて小さいために、これらが相殺されて、開口パターンMSに対応する底部VSb1の深さと開口パターンMLに対応する底部VLb1の深さとが均一になる。
【0044】
また、ドライエッチング工程S04において処理条件、プラズマの異方性、および、デポ層D1によって、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに及ぼすエッチングの影響を極めて低減させる。これにより、側壁VSq,VLqがシリコン基板Sの表面と垂直で、かつ、略面一となり凹凸のない側壁VSq,VLqを深さ方向に延長して形成する。
つまり、凹部パターンVS,VLとして均一径寸法となるように底部VSb1,VLb1を形成する。
【0045】
この形状を実現するように、ドライエッチング工程S04においては、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
このとき、プラズマ処理装置10においては、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。
【0046】
また、プラズマ処理装置10においては、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、デポ工程S03における値よも大きく、また、アッシング工程S05における値と同じ値に設定することができる。
【0047】
また、プラズマ処理装置10においては、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3の供給電力と同じ値に設定することができる。
【0048】
また、プラズマ処理装置10においては、第一電極12に対して、周波数λ1であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ1は、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3よりも低い値に設定することができる。周波数λ1は、たとえば、400kHzとすることができる。
【0049】
また、ドライエッチング工程S04における異方性プラズマエッチングでは、SF6とO2の混合ガスをプラズマ分解して、Siの異方性エッチングをおこなうものである。これにより、SF6が分解して生成するFラジカルが、Siをエッチングする(F+Si→SiF4)。このエッチング反応は、等方性エッチングのため、異方性エッチングを行うために、側壁VSq,VLqに絶縁層(保護膜)を付着させて、側壁VSq,VLqのエッチング反応を抑制してもよい。
【0050】
ドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D1が除去されて側壁VSq,VLqが露出する。
【0051】
ここで、ドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、絶縁層を形成して、側壁VSq,VLqが保護されてもよい。同時に、Oによる側壁VSq,VLqの酸化と、エッチング生成物であるSiF4が再分解されたSiとOの反応によるSiOxのデポ膜の形成とによって側壁VSq,VLqが保護される。
【0052】
また、ドライエッチング工程S04では、エッチング生成物であるSiF4が不足することを防止するために、SiF4をガスとして供給することもできる。
【0053】
さらに、ドライエッチング工程S04においては、エッチングガスとしてSF6またはNF3を使用し、エッチングガスにケイ素化合物としてSiF4を、反応体としてO2、N2、N2O、NO、NOxまたはCO2を添加して、底部VSb,VLbを集中的にエッチングすることができる。
さらに、ドライエッチング工程S04においては、冷媒経路を内部に有した静電チャックを第一電極12に用いて処理中の基板温度を低温にすることで異方性を高めることができる。例えば、冷媒温度は10℃以下に設定される。
【0054】
図6は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示すアッシング工程S05は、
図6に示すように、ドライエッチング工程S04の終了後において、残存したデポ層D1を除去する。
特に、アッシング工程S05においては、レジスト層(マスク層)Mの開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したデポ層D1を確実に除去するように、その条件が設定される。
【0055】
アッシング工程S05においては、ドライエッチング工程S04の終了した後に、レジスト層(マスク層)Mの表面に付着しているデポ層D1と、レジスト層(マスク層)Mの開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したデポ層D1と、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに残存したデポ層D1と、を除去する。また、開口パターンMSに対応する底部VSb1に残存したデポ層D1と、開口パターンMLに対応する底部VLb1に残存したデポ層D1とがあった場合には、これを除去する。
【0056】
アッシング工程S05において、開口パターンMSの内周位置に残存したデポ層D1と、開口パターンMLの内周位置に残存したデポ層D1と、が除去しきれずに残存していた場合、好ましくない。
すなわち、繰り返しサイクルの次のサイクルとして後工程である、次のデポ工程S03において、残存したデポ層D1にさらにデポ層D2が堆積してしまい、レジスト層(マスク層)Mにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が減少してしまう。
【0057】
すると、繰り返しサイクルの1サイクル目のアッシング工程S05に対する後工程である2サイクル目のドライエッチング工程S04において、異方性を強めたエッチングをおこなっても、デポ層D1およびデポ層D2によって底部VSb1および底部VLb1までエッチングプラズマが到達することが阻害される。したがって、底部VSb1および底部VLb1におけるエッチングが好適におこなわれない可能性がある。このため、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直ではなくなり、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまう可能性を排除できなくなる。
【0058】
これに対して、開口パターンMSの内周位置にデポ層D1が残存せず、また、開口パターンMLの内周位置にデポ層D1が残存しない状態にした場合には、繰り返しサイクルの次のサイクルとして後工程である、次の2サイクル目となるデポ工程S03において、残存したデポ層D1にさらにデポ層D2が堆積することがなく、レジスト層(マスク層)Mにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が所定の大きさを維持している状態に維持することができる。
【0059】
すると、繰り返しサイクルの次のサイクルである2サイクル目のドライエッチング工程S04において、後工程として異方性を強めたエッチングをおこなうことで、デポ層D1およびデポ層D2によって底部VSb1および底部VLb1までエッチングプラズマが到達することが阻害されない。したがって、底部VSb1および底部VLb1におけるエッチングが好適におこなわれて、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直な状態で伸長され、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまうことを防止して、同径の凹部パターンVS,VLを高アスペクト比で形成することが可能となる。
【0060】
1サイクル目のアッシング工程S05において、上記のように、開口パターンMSとMLとの内周位置に残存したデポ層D1を確実に除去するために、使用ガスO2の解離度の高いプラズマ処理をおこなう必要がある。このために、1サイクル目のアッシング工程S05においても、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
【0061】
このとき、1サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。
【0062】
また、1サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、デポ工程S03における値よも大きく、また、ドライエッチング工程S04における値と同じか高い値に設定することができる。
【0063】
また、1サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3の供給電力と同じ値に設定することができる。
【0064】
また、1サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、第一電極12に対して、周波数λ1であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ1は、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3よりも低い値に設定することができる。1サイクル目のアッシング工程S05におけるバイアス電圧の電力は、1サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力と等しいか、1サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力よりも高く設定することができる。
【0065】
1サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングすることができる。O2ガス系異方性プラズマ処理では、開口パターンMS,MLの内周付近、および開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D1が確実に除去されて側壁VSq,VLqが露出する。同時に、1サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングするため、この工程では、樹脂からなるレジスト層(マスク層)Mが、多少除去されて減厚されることもある。
【0066】
本実施形態に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図2に示すように、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、を1サイクルとして繰り返す。これにより、凹部パターンVS,VLの深さを長くする。
また、1サイクル目のデポ工程S03~アッシング工程S05のエッチング工程が終了した際に、
図2に示すように、深さ判断工程S06aと、レジスト保護判断工程S06を有する。
【0067】
深さ判断工程S06aにおいては、次のレジスト保護判断工程S06へと進むかを判断する。このとき、深さ判断工程S06aにおける判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。
凹部パターンVS,VLの深さが足りない場合、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねるために、まず、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むかを判断するために、レジスト保護判断工程S06へと進む。また、凹部パターンVS,VLの深さが足りている場合、エッチングを終了して、後工程S08へと進む。
【0068】
レジスト保護判断工程S06においては、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねるか、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むかを判断する。
ここで、レジスト保護判断工程S06における判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さである。
【0069】
凹部パターンVS,VLの深さが足りない場合、後述するレジスト保護膜形成工程S07においてレジスト保護膜Mmを形成した場合に不具合が生じるからである。具体的には、後述するレジスト保護膜形成工程S07において、レジスト層(マスク層)Mの表面のみならず、開口パターンMS,MLの底部VSb,VLbにレジスト保護膜Mmを形成が形成されてしまう。開口パターンMS,MLの底部VSb,VLbにレジスト保護膜Mmを形成が形成された場合、底部VSb,VLbでのエッチングが進行しないなど、エッチングに好ましくない影響を与える可能性がある。
【0070】
レジスト保護判断工程S06における判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。具体的には、凹部パターンVS,VLのアスペクト比が例えば1~2程度である場合には、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを進め、凹部パターンVS,VLのアスペクト比が3~4程度である場合には、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進める。つまり、凹部パターンVS,VLの開口面積と、1サイクル目のエッチング工程における底部VSb,VLbのエッチング量に基づいて判断をおこなうことになる。
【0071】
なお、レジスト保護判断工程S06における判断は、前工程である1サイクル目後に、シリコン基板Sにおいて、凹部パターンVS,VLの深さを測定した結果から判断してもよいし、前工程におけるエッチング条件から類推して2サイクル目への移行を判断してもよい。エッチング条件による判断では、あらかじめ、所定の条件によるエッチング深さを設定して判断することになる。
【0072】
次に、2サイクル目にサイクルを進めた場合について説明する。
【0073】
図7は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示す2サイクル目のデポ工程S03は、深さ判断工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06による判断後におこなわれる。2サイクル目のデポ工程S03は、2サイクル目における後工程のドライエッチング工程S04において、凹部パターンVSと凹部パターンVLとの側壁をエッチングから保護可能とする。2サイクル目のデポ工程S03は、
図7に示すように、シリコン基板S全面にフルオロカーボン等のポリマーからなるデポ層D2を異方性プラズマ処理により形成する。
【0074】
デポ層D2は、2サイクル目における後工程として、フッ素化合物を使用したエッチングであるドライエッチング工程S04において、垂直な側壁MSq、MLqを達成するために、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqをエッチングから保護するとともに、エッチングを凹部パターンVS,VLの底部VSb1,VLb1に限定する。
【0075】
デポ層D2は、レジスト層(マスク層)Mの表面および凹部パターンVS,VLの底部VSb1,VLb1に積層する。また、
図7においては、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqにおいてはデポ層D2を示しているが、実際にはあまり積層されない。
【0076】
2サイクル目のデポ工程S03は、1サイクル目のデポ工程S03と同様に、過フッ化炭化水素ガスを用いて、異方性プラズマ処理をおこなう。デポ工程S03においては、1サイクル目のデポ工程S03と同様に、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
【0077】
2サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、印加周波数λ2および周波数λ3、雰囲気圧力などの条件を、1サイクル目のデポ工程S03と同様に設定することができる。ここで、2サイクル目以降のデポ工程S03における処理条件は、1サイクル目のデポ工程S03と同じであっても、異なる設定としてもよい。
【0078】
なお、2サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目のデポ工程S03と同等の設定とすることもできるが、凹部パターンVS,VLの底部VSb1,VLb1へのデポジションレートの低下に対応するため、内周側の第二電極E2に印加する高周波または外周側の第三電極E3に印加する高周波の電力、もしくはその両方を増大させてもよく、デポジション粒子を引き込むためにバイアス電圧を印加する条件とすることができる。
【0079】
2サイクル目のデポ工程S03で形成されるデポ層D2は、1サイクル目のデポ工程S03と同様に、径寸法の小さい開口パターンMSに対応する底部VSbに比べて、径寸法の大きい開口パターンMLに対応する底部VLbにおける膜厚が大きくなる。なお、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト層(マスク層)Mの表面におけるデポ層D2の膜厚に比べて、開口パターンMLの底部VLbにおけるデポ層D2の膜厚は同等かあるいは小さくなる。
【0080】
つまり、デポ層D3の膜厚は、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト層(マスク層)Mの表面におけるデポ層D2の膜厚TD2、開口パターンMLの底部VLb1におけるデポ層D2の膜厚TLD2、開口パターンMSの底部VSb1におけるデポ層D2の膜厚TSD2、の順に小さくなる。
【0081】
2サイクル目のデポ工程S03において、上記の条件設定により、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb1,VLb1におけるデポ層D2のデポジションカバレージをそれぞれ最適化するように制御する。ここで、デポジションカバレージとして望ましい条件の方向は、必要な膜厚となるデポ層D2を底部VSb1,VLb1に積層する処理時間を短くすることである。つまり、デポ層D2を底部VSb1,VLb1に積層する成膜速度を増大することである。
【0082】
2サイクル目のデポ工程S03において、デポジションカバレージとして望ましい条件としては、エッチング深さおよびアスペクト比に対応してデポジションカバレージを調整することである。つまり、後述するように、底部VSb,VLbからの底部VSb1,VLb1の深さ変化に対応してアスペクト比が変化した場合でも、所望の厚さのデポ層D2を所定の積層成膜速度で成膜可能とする。
【0083】
さらに、底部VSb1に積層するデポ層D2に対する均一性および確実性と、底部VLb1に積層するデポ層D2に対する均一性および確実性とを、向上することである。
さらに、2サイクル目のデポ工程S03において、1サイクル目のデポ工程S03に対して、長い時間とすることができる。なお、3サイクル目以降のデポ工程S03においても同様である。
【0084】
図8は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示す2サイクル目のドライエッチング工程S04は、
図8に示すように、異方性プラズマエッチングにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb1,VLb1を掘り下げて、底部VSb2,VLb2を形成する。
【0085】
このとき、2サイクル目のドライエッチング工程S04における処理条件、プラズマの異方性、および、2サイクル目のデポ工程S03によって積層したデポ層D2の膜厚差等によって、ドライエッチング工程S04において形成する開口パターンMSに対応する底部VSb2および開口パターンMLに対応する底部VLb2の深さを均一になるように設定する。
【0086】
具体的には、開口パターンMSに対応する底部VSb1に積層したデポ層D2の膜厚TSD2が、開口パターンMLに対応する底部VLb1に積層したデポ層D2の膜厚TLD2に比べて小さく、かつ、開口パターンMSに対応する底部VSb1に対するエッチング量が、開口パターンMLに対応する底部VLb1に対するエッチング量に比べて小さいために、これらが相殺されて、開口パターンMSに対応する底部VSb2の深さと開口パターンMLに対応する底部VLb2の深さとが均一になる。
【0087】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04において処理条件、プラズマの異方性、および、デポ層D2によって、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに及ぼすエッチングの影響を極めて低減させる。これにより、側壁VSq,VLqがシリコン基板Sの表面と垂直で、かつ、略面一となり凹凸のない側壁VSq,VLqを深さ方向に延長して形成する。
つまり、凹部パターンVS,VLとして均一径寸法となるように底部VSb2,VLb2を形成する。
【0088】
この形状を実現するように、2サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理に強い異方性を持たせる。2サイクル目のドライエッチング工程S04は、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
このとき、2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様の条件とすることができる。
【0089】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、2サイクル目のデポ工程S03における値よも大きく、また、2サイクル目のアッシング工程S05における値と同じ値に設定することができる。
【0090】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3の供給電力と同じ値に設定することができる。
【0091】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、第一電極12に対して、周波数λ1であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ1は、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3よりも低い値に設定することができる。周波数λ1は、たとえば、400kHzとすることができる。
【0092】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04における異方性プラズマエッチングでは、1サイクル目と同様に、SF6とO2の混合ガスをプラズマ分解して、Siの異方性エッチングをおこなうものである。これにより、SF6が分解して生成するFラジカルが、Siをエッチングする(F+Si→SiF4)。このエッチング反応は、等方性エッチングのため、異方性エッチングを行うために、側壁VSq,VLqに保護膜を付着させており、側壁VSq,VLqのエッチング反応を抑制してもよい。
【0093】
2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D2が除去されて側壁VSq,VLqが露出する。
【0094】
ここで、2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、絶縁層を形成して、側壁VSq,VLqが保護されてもよい。同時に、Oによる側壁VSq,VLqの酸化と、エッチング生成物であるSiF4が再分解されたSiとOの反応によるSiOxのデポ膜の形成とによって側壁VSq,VLqが保護される。
【0095】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、エッチング生成物であるSiF4が不足することを防止するために、SiF4をガスとして供給することもできる。
【0096】
さらに、2サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、エッチングガスとしてSF6又はNF3を使用し、エッチングガスにケイ素化合物としてSiF4を、反応体としてO2、N2、N2O、NO、NOxまたはCO2を添加して、底部VSb1,VLb1を集中的にエッチングすることができる。
さらに、2サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目のドライエッチング工程S04に対して、長い時間とすることもできる。なお、3サイクル目以降のドライエッチング工程S04においても同様である。
【0097】
図9は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示す2サイクル目のアッシング工程S05は、
図9に示すように、2サイクル目のドライエッチング工程S04の終了後において、残存したデポ層D2を除去する。
特に、2サイクル目のアッシング工程S05においては、レジスト層(マスク層)Mの開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したデポ層D2を確実に除去するように、その条件が設定される。
【0098】
2サイクル目のアッシング工程S05においては、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、2サイクル目のドライエッチング工程S04の終了した後に、レジスト層(マスク層)Mの表面に付着しているデポ層D2と、レジスト層(マスク層)Mの開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したデポ層D2と、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに残存したデポ層D2と、を除去する。
さらに、開口パターンMSに対応する底部VSb2に残存したデポ層D2と、開口パターンMLに対応する底部VLb2に残存したデポ層D2と、があればこれを除去する。
【0099】
ここで、最も重要なのは、開口パターンMSの内周位置に残存したデポ層D2と、開口パターンMLの内周位置に残存したデポ層D2と、を除去することである。もしも、このデポ層D2が除去しきれずに残存していた場合には、繰り返しサイクルの次のサイクルとして後工程である、次のデポ工程S05において、残存したデポ層D2にさらにデポ層D3が堆積してしまい、レジスト層(マスク層)Mにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が減少してしまう。
【0100】
すると、2サイクル目の次サイクルである後工程として、3サイクル目となるドライエッチング工程S04において、異方性を強めたエッチングをおこなっても、デポ層D2およびデポ層D3によって底部VSb1および底部VLb1までエッチングプラズマが到達することが阻害される。したがって、底部VSb1および底部VLb1におけるエッチングが好適におこなわれず、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直ではなくなり、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまう可能性を排除できなくなる。
【0101】
これに対して、開口パターンMSの内周位置にデポ層D2が残存せず、また、開口パターンMLの内周位置にデポ層D2が残存しない状態にした場合には、繰り返しサイクルの次のサイクルとして後工程である、次の3サイクル目となるデポ工程S03において、残存したデポ層D2にさらにデポ層D3が堆積することがなく、レジスト層(マスク層)Mにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が所定の大きさを維持している状態に維持することができる。
【0102】
すると、繰り返しサイクルの次のサイクルである3サイクル目のドライエッチング工程S04において、後工程として異方性を強めたエッチングをおこなうことで、デポ層D2およびデポ層D3によって底部VSb2および底部VLb2までエッチングプラズマが到達することが阻害されない。したがって、底部VSb2および底部VLb2におけるエッチングが好適におこなわれて、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直な状態で伸長され、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまうことを防止して、同径の凹部パターンVS,VLを高アスペクト比で形成することが可能となる。
【0103】
2サイクル目のアッシング工程S05において、上記のように、開口パターンMSとMLとの内周位置に残存したデポ層D2を確実に除去するために、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、プラズマ処理に強い異方性を持たせる必要がある。このために、2サイクル目のアッシング工程S05においても、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
【0104】
このとき、2サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。
【0105】
また、2サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、デポ工程S03における値よも大きく、また、2サイクル目のドライエッチング工程S04における値と同じ値に設定することができる。
【0106】
また、2サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3の供給電力と同じ値に設定することができる。
【0107】
また、2サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、第一電極12に対して、周波数λ1であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ1は、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3よりも低い値に設定することができる。周波数λ1は、たとえば、400kHzとすることができる。
【0108】
また、2サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、第一電極12に対して、バイアス電圧を印加することが好ましい。2サイクル目のアッシング工程S05におけるバイアス電圧の電力は、2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力と等しいか、2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力よりも高く設定することができる。
【0109】
2サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングすることができる。O2ガス系異方性プラズマ処理では、開口パターンMS,MLの内周付近、および開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D2が確実に除去されて側壁VSq,VLqが露出する。同時に、2サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングするため、この工程では、樹脂からなるレジスト層(マスク層)Mが、多少除去されて減厚されることもある。
【0110】
2サイクル目のアッシング工程S05が終了した際に、2サイクル目のレジスト保護判断工程S06は、1サイクル目の深さ判断工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06と同様に、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねるか、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むか、後工程S08へと進むかを判断する。
【0111】
2サイクル目の深さ判断工程S06aにおいては、次のレジスト保護判断工程S06へと進むかを判断する。このとき、深さ判断工程S06aにおける判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。
凹部パターンVS,VLの深さが足りない場合、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねるために、まず、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むかを判断するために、レジスト保護判断工程S06へと進む。また、凹部パターンVS,VLの深さが足りている場合、エッチングを終了して、後工程S08へと進む。
【0112】
2サイクル目のレジスト保護判断工程S06において、1サイクル目のレジスト保護判断工程S06と同様に、判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。
【0113】
2サイクル目のレジスト保護判断工程S06は、1サイクル目のレジスト保護判断工程S06と同様に、凹部パターンVS,VLの深さが足りている場合、および、凹部パターンVS,VLのアスペクト比が上述した範囲より大きい場合に、レジスト保護膜形成工程S07においてレジスト保護膜Mmを形成するという判断をおこなう。
つまり、凹部パターンVS,VLの開口面積と、2サイクル目のエッチング工程における底部VSb1,VLb1のエッチング量に基づいて判断をおこなうことになる。
【0114】
なお、レジスト保護判断工程S06における判断は、前工程である2サイクル目後に、シリコン基板Sにおいて、凹部パターンVS,VLの深さを測定した結果から判断してもよいし、前工程におけるエッチング条件から類推して3サイクル目への移行を判断してもよい。エッチング条件による判断では、あらかじめ、所定の条件によるエッチング深さを設定して判断することになる。
【0115】
さらに、2サイクル目のレジスト保護判断工程S06において追加される判断基準としては、アッシング工程S05によってレジスト層(マスク層)Mの減厚量が所定の値より小さい場合には、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねる判断をおこなう。また、2サイクル目のレジスト保護判断工程S06における判断基準としては、アッシング工程S05によってレジスト層(マスク層)Mの減厚量が所定の値より大きい場合には、レジスト保護膜形成工程S07へと進む判断をおこなう。
【0116】
これは、レジスト層(マスク層)Mの減厚量が所定の値より大きい状態で、3サイクル目のエッチング工程へと進んだ場合、レジスト層(マスク層)Mの膜厚が足りなくなる可能性があり、エッチング加工による形状の正確性が維持できないためである。
【0117】
次に、レジスト保護膜形成工程S07へと進んだ場合を説明する。
【0118】
レジスト保護膜形成工程S07は、
図2に示すように、3サイクル目にサイクルを進める前におこなう。
図10は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示すレジスト保護膜形成工程S07は、
図10に示すように、レジスト層(マスク層)Mの表面にレジスト保護膜Mmを異方性プラズマ処理により形成する。
レジスト保護膜Mmは、3サイクル目以降における後工程のエッチング工程におけるドライエッチング工程S04およびアッシング工程S05において、レジスト層(マスク層)Mをエッチングから保護することが可能な膜である。
【0119】
レジスト保護膜形成工程S07において、デポ層D2に比べて、レジスト保護膜Mmのデポジションレートは高く設定される。デポ層D2のデポジションレートに比べて、レジスト保護膜Mmのデポジションレートは1.5倍程度高く設定される。
レジスト保護膜形成工程S07におけるプラズマCVDでは、SiF4とO2の混合ガス、または、SiCl4とO2の混合ガス、または、SiH4とO2の混合ガス、あるいは、TEOS(Tetraethyl orthosilicate , Tetraethoxysilane)等のSixOyαzを形成可能なガスによって、プラズマCVDをおこなう。これにより、SiOFの膜構成を有するレジスト保護膜Mmを形成することができる。
【0120】
ここで、レジスト保護膜形成工程S07においてSiF4とO2の混合ガスを用いた場合には、ドライエッチング工程S04で供給するガスと共通のガスであるSiF4を用いることができる。この場合、ガス供給に関する構成を共通化できるため好ましい。
【0121】
SiOF膜は、SiO2膜に似た構成となる。したがって、SiOF膜は、後工程である3サイクル目以降のエッチング工程である、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、においては減厚しない。
【0122】
つまり、レジスト保護膜Mmは、後工程である3サイクル目以降のエッチング工程である、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、においてレジスト層(マスク層)Mの減厚を防止することができる。
【0123】
レジスト保護膜Mmは、異方性プラズマ処理によりレジスト層(マスク層)Mの表面に形成されるが、凹部パターンVS,VLの側壁VSq,VLqには形成されない。また、レジスト保護膜Mmは、凹部パターンVS,VLの底部VSb2,VLb2には形成されない。これは、深さ判定工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06において凹部パターンVS,VLのアスペクト比が所定の値以上に設定されているためである。
【0124】
3サイクル目としてはじめておこなうレジスト保護膜形成工程S07において、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
このとき、3サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07におけるプラズマ処理装置10では、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。
【0125】
レジスト保護膜形成工程S07においても、プラズマ処理装置10では、ドライエッチング工程S04とアッシング工程S05と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、2サイクル目のデポ工程S03における値よも大きく、また、2サイクル目のドライエッチング工程S04、アッシング工程S05における値と同じ値に設定することができる。
【0126】
また、3サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07においても、プラズマ処理装置10では、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3の供給電力と同じ値に設定することができる。
【0127】
また、3サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07において、デポ工程S03と同様に、バイアス電圧を印加しないことができる。3サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07において、雰囲気圧力は、2サイクル目のドライエッチング工程S04、アッシング工程S05における値と同じ値に設定することができる。
【0128】
SiOFという構成を有するレジスト保護膜Mmがレジスト層(マスク層)Mの表面に積層された状態として、後工程である3サイクル目以降のエッチング工程のアッシング工程S05を重ねた場合、レジスト層(マスク層)Mの消耗を抑制することができる。
【0129】
しかし、SiOFという構成を有するレジスト保護膜Mmは、後工程である3サイクル目以降のエッチング工程である、デポ工程S03におけるCF系、つまり、CHF3、C2F6、C2F4、またはC4F8などの過フッ化炭化水素ガス、あるいは、ドライエッチング工程S04におけるエッチングガスとしてSF6又はNF3を使用し、エッチングガスにケイ素化合物としてSiF4を、反応体としてO2、N2、N2O、NO、NOxまたはCO2を添加したガス、例えば、SF6とO2の混合ガスによる異方性プラズマエッチングの処理により次第に消耗していく。
【0130】
したがって、凹部パターンVS,VLが所望の深さまで、所定数のサイクルを可能なように、レジスト保護膜Mmの膜厚を設定する。
さらに、所定数のサイクルが過ぎた場合には、後述するように、消耗したレジスト保護膜Mmの膜厚を回復するために、さらなるレジスト保護膜形成工程S07により、レジスト保護膜Mmをレジスト層(マスク層)Mの表面に再積層する。
【0131】
本実施形態に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図2に示すように、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、を1サイクルとして繰り返す。これにより、凹部パターンVS,VLの深さをさらに長くする。さらに、所定のサイクル数ごとに、つまり、所定の頻度で、レジスト保護膜形成工程S07により、レジスト保護膜Mmをレジスト層(マスク層)Mの表面に積層する。
レジスト保護膜形成工程S07に続いて、次の3サイクル目となるエッチング工程に進む。
【0132】
次に、3サイクル目にサイクルを進めた場合について説明する。
【0133】
図11は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示す3サイクル目のデポ工程S03は、3サイクル目における後工程のドライエッチング工程S04において、凹部パターンVSと凹部パターンVLとの側壁をエッチングから保護することができるように、
図11に示すように、レジスト保護膜Mm表面にフルオロカーボン等のポリマーからなるデポ層D3を異方性プラズマ処理により形成する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、1サイクル分としてのデポ工程S03において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0134】
デポ層D2は、3サイクル目における後工程として、フッ素化合物を使用したエッチングであるドライエッチング工程S04において、垂直な側壁MSq、MLqを達成するために、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqをエッチングから保護するとともに、エッチングを凹部パターンVS,VLの底部VSb2,VLb2に限定する。
【0135】
デポ層D3は、レジスト保護膜Mmの表面および凹部パターンVS,VLの底部VSb2,VLb2に積層する。また、
図11においては、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqにおいてはデポ層D3を示しているが、実際にはあまり積層されない。
【0136】
3サイクル目のデポ工程S03は、2サイクル目と同様に、CHF3、C2F6、C2F4、またはC4F8などの過フッ化炭化水素ガスを用いて、異方性プラズマ処理をおこなう。デポ工程S03においては、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
【0137】
3サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。
このとき、1サイクル目、および/または、2サイクル目のデポ工程S03と同等の設定とすることもできる。
【0138】
また、3サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2である電力が、後述するドライエッチング工程S04およびアッシング工程S05における値よりも小さく設定することができる。また、プラズマ処理装置10においては、第一電極12に対して、バイアス電圧を印加しないことができる。
3サイクル目のデポ工程S03においては、所定の雰囲気圧力として処理をおこなう。さらに、3サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目、および/または、2サイクル目のデポ工程S03と同等の設定とすることもできる。
【0139】
3サイクル目のデポ工程S03で形成されるデポ層D3は、2サイクル目のデポ工程S03と同様に、径寸法の小さい開口パターンMSに対応する底部VSb2に比べて、径寸法の大きい開口パターンMLに対応する底部VLb2における膜厚が大きくなる。なお、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト保護膜Mmの表面におけるデポ層D3の膜厚に比べて、開口パターンMLの底部VLb2におけるデポ層D3の膜厚は同等かあるいは小さくなる。
【0140】
つまり、デポ層D3の膜厚は、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト保護膜Mmの表面におけるデポ層D3の膜厚TD3、開口パターンMLの底部VLb2におけるデポ層D3の膜厚TLD3、開口パターンMSの底部VSb2におけるデポ層D3の膜厚TSD3、の順に小さくなる。
【0141】
3サイクル目のデポ工程S03において、上記のように条件設定をおこなうことにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb2,VLb2におけるデポ層D3のデポジションカバレージをそれぞれ最適化するように制御することが可能となる。ここで、デポジションカバレージとして望ましい条件の方向は、必要な膜厚となるデポ層D3を底部VSb2,VLb2に積層する処理時間を短くすることである。つまり、デポ層D3を底部VSb2,VLb2に積層する成膜速度を増大することである。
【0142】
また、3サイクル目のデポ工程S03において、デポジションカバレージとして望ましい条件としては、エッチング深さおよびアスペクト比に対応してデポジションカバレージを調整することである。つまり、後述するように、底部VSb1,VLb1からの底部VSb2,VLb2の深さ変化に対応してアスペクト比が変化した場合でも、所望の厚さのデポ層D3を所定の積層成膜速度で成膜することを可能にできる。
【0143】
さらに、底部VSb2に積層するデポ層D3に対する均一性および確実性と、底部VLb1に積層するデポ層D3に対する均一性および確実性とを、それぞれ向上することである。
さらに、3サイクル目のデポ工程S03において、1サイクル目のデポ工程S03、および/または、2サイクル目のデポ工程S03に対して、同様におこなうことができる。
【0144】
図12は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示す3サイクル目のドライエッチング工程S04は、
図12に示すように、異方性プラズマエッチングにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb2,VLb2を掘り下げて、底部VSb3,VLb3を形成する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、1サイクル分としてのドライエッチング工程S04において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0145】
このとき、3サイクル目のドライエッチング工程S04における処理条件、プラズマの異方性、および、3サイクル目のデポ工程S03によって積層したデポ層D3の膜厚差等によって、このドライエッチング工程S04において形成する開口パターンMSに対応する底部VSb3および開口パターンMLに対応する底部VLb3の深さを均一になるように設定する。
【0146】
具体的には、開口パターンMSに対応する底部VSb2に積層したデポ層D3の膜厚TSD3が、開口パターンMLに対応する底部VLb2に積層したデポ層D3の膜厚TLD3に比べて小さく、かつ、開口パターンMSに対応する底部VSb2に対するエッチング量が、開口パターンMLに対応する底部VLb2に対するエッチング量に比べて小さいために、これらが相殺されて、開口パターンMSに対応する底部VSb3の深さと開口パターンMLに対応する底部VLb3の深さとが均一になる。
【0147】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04において処理条件、プラズマの異方性、および、デポ層D3によって、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに及ぼすエッチングの影響を極めて低減させてもよい。これにより、側壁VSq,VLqがシリコン基板Sの表面と垂直で、かつ、略面一となり凹凸のない側壁VSq,VLqを深さ方向に延長して形成する。
つまり、凹部パターンVS,VLとして均一径寸法となるように底部VSb3,VLb3を形成する。
【0148】
この形状を実現するように、3サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
このとき、3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるプラズマ処理装置10では、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。
【0149】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、2サイクル目と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、3サイクル目のデポ工程S03における値よも大きく、また、3サイクル目のアッシング工程S05における値と同じ値に設定することができる。
【0150】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、2サイクル目と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3の供給電力と同じ値に設定することができる。
【0151】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、第一電極12に対して、周波数λ1であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ1は、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3よりも低い値に設定することができる。周波数λ1は、たとえば、400kHzとすることができる。
【0152】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04における異方性プラズマエッチングでは、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、SF6とO2の混合ガスをプラズマ分解して、Siの異方性エッチングをおこなうものである。これにより、SF6が分解して生成するFラジカルが、Siをエッチングする(F+Si→SiF4)。このエッチング反応は、等方性エッチングのため、異方性エッチングを行うために、側壁VSq,VLqに保護膜を付着させて、側壁VSq,VLqのエッチング反応を抑制してもよい。
【0153】
3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D2が除去されて側壁VSq,VLqが露出する。
【0154】
ここで、3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、絶縁層を形成して、側壁VSq,VLqが保護されてもよい。同時に、Oによる側壁VSq,VLqの酸化と、エッチング生成物であるSiF4が再分解されたSiとOの反応によるSiOxのデポ膜の形成とによって側壁VSq,VLqが保護される。
【0155】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04では、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、エッチング生成物であるSiF4が不足することを防止するために、SiF4をガスとして供給することもできる。
【0156】
さらに、3サイクル目のドライエッチング工程S04においては、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、エッチングガスとしてSF6又はNF3を使用し、エッチングガスにケイ素化合物としてSiF4を、反応体としてO2、N2、N2O、NO、NOxまたはCO2を添加して、底部VSb2,VLb2を集中的にエッチングすることができる。
さらに、3サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目のドライエッチング工程S04、および/または、2サイクル目のドライエッチング工程S04に対して、長い時間とすることもできる。
【0157】
図13は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示す3サイクル目のアッシング工程S05は、
図13に示すように、3サイクル目のドライエッチング工程S04の終了後において、残存したデポ層D3を除去する。
特に、3サイクル目のアッシング工程S05においては、開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したレジスト保護膜Mm表面付近のデポ層D3を確実に除去するように、その条件が設定される。
【0158】
3サイクル目のアッシング工程S05においては、1サイクル目および/または2サイクル目と同様に、3サイクル目のドライエッチング工程S04の終了した後に、レジスト保護膜Mmの表面に付着しているデポ層D3と、開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口内周付近に残存したデポ層D3と、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに残存したデポ層D3と、を除去する。
【0159】
さらに、3サイクル目のアッシング工程S05において、開口パターンMSに対応する底部VSb3に残存したデポ層D3と、開口パターンMLに対応する底部VLb3に残存したデポ層D3と、があればこれを除去する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は変化せず、3サイクル目のアッシング工程S05において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0160】
ここで、最も重要なのは、開口パターンMSの内周位置に残存したデポ層D3と、開口パターンMLの内周位置に残存したデポ層D3と、を除去することである。もしも、このデポ層D3が除去しきれずに残存していた場合には、繰り返しサイクルの次のサイクルにおける後工程である、4サイクル目以降のデポ工程S03において、残存したデポ層D3にさらに次のデポ層D4が堆積してしまい、レジスト層(マスク層)Mおよびレジスト保護膜Mmにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が減少してしまう。
【0161】
すると、3サイクル目より次以降のサイクルである後工程として、4サイクル目以降となるドライエッチング工程S04において、異方性を強めたエッチングをおこなっても、デポ層D2およびデポ層D3によって底部VSb2および底部VLb2までエッチングプラズマが到達することが阻害される。したがって、底部VSb2および底部VLb2におけるエッチングが好適におこなわれず、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直ではなくなり、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまう可能性を排除できなくなる。
【0162】
これに対して、開口パターンMSの内周位置にデポ層D3が残存せず、また、開口パターンMLの内周位置にデポ層D3が残存しない状態にした場合には、繰り返しサイクルの次のサイクルとして後工程である、次以降のサイクルにおけるデポ工程S03において、残存したデポ層D3にさらにデポ層D4が堆積することがなく、レジスト層(マスク層)Mおよびレジスト保護膜Mmにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が所定の大きさを維持している状態に維持することができる。
【0163】
すると、繰り返しサイクルの次以降のサイクルにおけるドライエッチング工程S04において、後工程として異方性を強めたエッチングをおこなうことで、デポ層D3およびデポ層D4によって底部VSb2および底部VLb2までエッチングプラズマが到達することが阻害されない。したがって、底部VSb2および底部VLb2におけるエッチングが好適におこなわれて、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直な状態で伸長され、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまうことを防止して、同径の凹部パターンVS,VLを高アスペクト比で形成することが可能となる。
【0164】
同時に、レジスト保護膜Mmは、アッシング工程S05においてレジスト層(マスク層)Mがなくならないように、充分な膜厚を維持していることが重要である。
【0165】
3サイクル目のアッシング工程S05において、上記のように、開口パターンMSとMLとの内周位置に残存したデポ層D3を確実に除去するために、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、プラズマ処理に強い異方性を持たせる必要がある。このために、3サイクル目のアッシング工程S05においても、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
【0166】
このとき、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。
【0167】
また、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、デポ工程S03における値よも大きく、また、3サイクル目のドライエッチング工程S04における値と同じ値に設定することができる。
【0168】
また、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2の供給電力が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3の供給電力と同じ値に設定することができる。
【0169】
また、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、第一電極12に対して、周波数λ1であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ1は、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3よりも低い値に設定することができる。周波数λ1は、たとえば、400kHzとすることができる。
【0170】
また、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、第一電極12に対して、バイアス電圧を印加することが好ましい。3サイクル目のアッシング工程S05におけるバイアス電圧の電力は、3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力と等しいか、3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力よりも高く設定することができる。
【0171】
3サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングすることができる。O2ガス系異方性プラズマ処理では、開口パターンMS,MLの内周付近、および開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D3が確実に除去されて側壁VSq,VLqが露出する。同時に、3サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングするが、レジスト層(マスク層)Mにはレジスト保護膜Mmが積層されていることで、レジスト層(マスク層)MはO2プラズマによって除去されない。
【0172】
本実施形態に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図2に示すように、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、を1サイクルとして繰り返す。これにより、凹部パターンVS,VLの深さをさらに長くする。
3サイクル目のデポ工程S03~アッシング工程S05のエッチング工程が終了した際に、
図2に示すように、深さ判断工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06を有する。
【0173】
3サイクル目の深さ判断工程S06aにおいては、次のレジスト保護判断工程S06へと進むかを判断する。このとき、深さ判断工程S06aにおける判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。
凹部パターンVS,VLの深さが足りない場合、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねるために、まず、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むかを判断するために、レジスト保護判断工程S06へと進む。また、凹部パターンVS,VLの深さが足りている場合、エッチングを終了して、後工程S08へと進む。
【0174】
3サイクル目のレジスト保護判断工程S06においては、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねるか、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むかを判断する。
ここで、3サイクル目のレジスト保護判断工程S06における判断基準としては、凹部パターンVS,VLの深さに加えて、レジスト保護膜Mmのエッチング程度、つまり、レジスト保護膜Mmの減厚程度とされる。
【0175】
凹部パターンVS,VLの深さ、あるいはアスペクト比は、3サイクル目以降のアッシング工程S05の終了時には充分な大きさを有している。したがって、3サイクル目以降のレジスト保護判断工程S06における基準は、レジスト保護膜Mmのエッチング程度、つまり、レジスト保護膜Mmの減厚程度によって判断される。
【0176】
3サイクル目のレジスト保護判断工程S06においては、3サイクル目のデポ工程S03~アッシング工程S05のエッチング工程が終了した時点で、次以降のサイクルにおけるデポ工程S03とドライエッチング工程S04とにおいて、レジスト保護膜Mmが充分な膜厚を維持し、充分なレジスト層(マスク層)Mに対する保護能すなわちエッチング耐性を保持している場合には、次サイクルである4サイクル目のエッチング工程へと進む判断をする。
【0177】
また、3サイクル目のレジスト保護判断工程S06においては、レジスト保護膜Mmが充分な膜厚を維持しておらず、充分なレジスト層(マスク層)Mに対する保護能すなわちエッチング耐性を有していないと予想される場合には、レジスト保護膜形成工程S07へと進む判断をする。
【0178】
なお、レジスト保護判断工程S06における判断は、前工程である3サイクル目後に、レジスト保護膜Mmの膜厚を測定した結果から判断してもよいし、前工程におけるエッチング条件から、レジスト保護膜Mmが充分な膜厚を維持していることを類推して、4サイクル目への移行を判断してもよい。エッチング条件による判断では、あらかじめ、所定の条件によるレジスト保護膜Mmの減厚程度を設定して判断することになる。
【0179】
なお、通常、シリコン基板Sのエッチングで、上述するようなデポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、を1サイクルとした場合、5~20サイクル、好ましくは、8~12サイクル程度で、一回のレジスト保護膜形成工程S07を挿入することができる。
【0180】
次に、4サイクル目について説明する。
【0181】
図14は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図2に示す4サイクル目のデポ工程S03は、4サイクル目における後工程のドライエッチング工程S04において、凹部パターンVSと凹部パターンVLとの側壁をエッチングから保護することができるように、
図14に示すように、レジスト保護膜Mmの表面にフルオロカーボン等のポリマーからなるデポ層D4を異方性プラズマ処理により形成する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、1サイクル分としてのデポ工程S03において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0182】
デポ層D4は、4サイクル目における後工程として、フッ素化合物を使用したエッチングであるドライエッチング工程S04において、垂直な側壁MSq、MLqを達成するために、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqをエッチングから保護するとともに、エッチングを凹部パターンVS,VLの底部VSb3,VLb3に限定する。
【0183】
デポ層D4は、レジスト保護膜Mmの表面および凹部パターンVS,VLの底部VSb3,VLb3に積層する。また、
図14においては、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqにおいてはデポ層D4を示しているが、実際にはあまり積層されない。
【0184】
4サイクル目のデポ工程S03は、3サイクル目と同様に、CHF3、C2F6、C2F4、またはC4F8などの過フッ化炭化水素ガスを用いて、異方性プラズマ処理をおこなう。デポ工程S05においては、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
【0185】
4サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2が、外周側の第三電極E3に印加する高周波の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。
このとき、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのデポ工程S03と同等の設定とすることもできる。
【0186】
また、4サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、後述する内周側の第二電極E2に印加する高周波の周波数λ2である電力が、後述するドライエッチング工程S04およびアッシング工程S05における値よりも小さく設定することができる。また、プラズマ処理装置10においては、第一電極12に対して、バイアス電圧を印加しないことができる。
4サイクル目のデポ工程S03においては、所定の雰囲気圧力として処理をおこなう。さらに、4サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのデポ工程S03と同等の設定とすることもできる。
【0187】
4サイクル目のデポ工程S03で形成されるデポ層D4は、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのデポ工程S03と同様に、径寸法の小さい開口パターンMSに対応する底部VSb3に比べて、径寸法の大きい開口パターンMLに対応する底部VLb3における膜厚が大きくなる。なお、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト保護膜Mmの表面におけるデポ層D4の膜厚に比べて、開口パターンMLの底部VLb3におけるデポ層D4の膜厚は同等かあるいは小さくなる。
【0188】
つまり、デポ層D4の膜厚は、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト保護膜Mmの表面におけるデポ層D4の膜厚TD4、開口パターンMLの底部VLb3におけるデポ層D4の膜厚TLD4、開口パターンMSの底部VSb3におけるデポ層D4の膜厚TSD4、の順に小さくなる。
【0189】
4サイクル目のデポ工程S03において、上記のように条件設定をおこなうことにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb3,VLb3におけるデポ層D4のデポジションカバレージをそれぞれ最適化するように制御することが可能となる。ここで、デポジションカバレージとして望ましい条件の方向は、必要な膜厚となるデポ層D4を底部VSb3,VLb3に積層する処理時間を短くすることである。つまり、デポ層D4を底部VSb3,VLb3に積層する成膜速度を増大することである。
【0190】
また、4サイクル目のデポ工程S03において、デポジションカバレージとして望ましい条件としては、エッチング深さおよびアスペクト比に対応してデポジションカバレージを調整することである。つまり、後述するように、底部VSb2,VLb2からの底部VSb3,VLb3の深さ変化に対応してアスペクト比が変化した場合でも、所望の厚さのデポ層D3を所定の積層成膜速度で成膜することを可能にできる。
【0191】
さらに、底部VSb3に積層するデポ層D4に対する均一性および確実性と、底部VLb3に積層するデポ層D4に対する均一性および確実性とを、それぞれ向上することである。
【0192】
次に、
図2に示す4サイクル目のドライエッチング工程S04として、異方性プラズマエッチングにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb2,VLb2を掘り下げて、底部VSb3,VLb3を形成する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、1サイクル分としてのドライエッチング工程S04において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0193】
次に、
図2に示す4サイクル目のアッシング工程S05として、残存したデポ層D4を除去する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、アッシング工程S05において、レジスト保護膜Mmは減厚しない。
【0194】
さらに、4サイクル目の深さ判定工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06として、レジスト保護膜Mmの厚さに応じて、所定の頻度でレジスト保護膜形成工程S07を挿入するどうかを判断しつつ、さらに、エッチング工程のサイクルを回していく。
【0195】
これにより、シリコン基板Sの表面に、径寸法ΦSを有する凹部パターンVSと、径寸法ΦLを有する凹部パターンVLを、同じ深さとして形成する。
【0196】
さらに、
図2に示す後工程S08として、必要であればドライエッチング工程S04に類する工程によって、レジスト保護膜Mmを除去し、さらに、ウェットエッチング工程、あるいは、アッシング工程S05に類する工程によって、レジスト層(マスク層)Mを除去することで、本実施形態に係るシリコンのドライエッチング方法を終了する。
なお、本実施形態に係るシリコンのドライエッチング方法では、50サイクル程度のサイクル数を適応することができる。
【0197】
本実施形態のシリコンのドライエッチング方法は、
図2に示すように、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、を1サイクルとして繰り返すとともに、所定の頻度でレジスト保護膜形成工程S07を挿入することにより、異なる径寸法の凹部パターンVS,VLを同じ深さとして高アスペクト比に形成することを、シリコン基板Sに樹脂からなるレジスト層(マスク層)Mをパターンニングした簡単な構成で、金属等のHDM(ハードマスク)を用いることなく実現することが可能となる。
【0198】
なお、形成する凹部パターンVS,VLの深さに応じて、エッチング工程のサイクル数は任意の回数とすることができる。また、アッシング工程S05は、各サイクル毎におこなわなくてもよい。この場合、レジスト保護判断工程S06において、当該サイクルにおける開口パターンMS,MLの内周でのデポ層の残存度合いによって、アッシング工程S05の実施の有無を、同時に判断することができる。
【0199】
次に、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法において用いるプラズマ処理装置について、図面に基づいて説明する。
図15は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法において用いるプラズマ処理装置を示す模式断面図である。
図16は、
図15の装置において、内周側と外周側に2つのスパイラル状電極を配置し、各電極にそれぞれ異なる周波数の電源を接続する位置を示す平面図である。
図17は、
図15の装置において、第一電極(外径D)と第二電極(外径d)との関係を示す断面図である。図において、符号10は、プラズマ処理装置である。
【0200】
本実施形態におけるプラズマ処理装置10は、Dual frequency ICPとされる。プラズマ処理装置10は、
図15に示すように、たとえば排気手段TMPにより減圧可能なチャンバ11内において被処理体(シリコン基板)Sに対してプラズマ処理する装置である。
このプラズマ処理装置10においては、ガス導入手段が上蓋13の中央部15a(15)に配置され、固体ソース20a(20)の配置される領域が外周側に配された電極[第三電極E3(アンテナAT3)]と重なる位置に設けられている。
【0201】
プラズマ処理装置10では、チャンバ11内において、固体ソース20aの配置される領域が、第三電極E3と重なる位置にあり、かつ、印加する周波数が低い方の電極(第三電極E3)を少なくとも覆うように配置されており、固体ソース20aがチャンバ11の上蓋13と別体として設けられている。
【0202】
プラズマ処理装置10において、第二電極E2は印加する周波数が高い方の電極であり、第三電極E3は印加する周波数が低い方である。すなわち、プラズマ処理装置10では、第二の周波数λ2と第三の周波数λ3が、λ2>λ3の関係にある。
プラズマ処理装置10において、第二電極E2はプラズマを形成するための電力およびプラズマ分布を制御する電力を印加する電極であり、第三電極E3は形成されたプラズマの電子温度を加熱する電極である。
プラズマ処理装置10には、ガス導入手段が上蓋13の中央部に配置されている。
【0203】
プラズマ処理装置10は、チャンバ11と、平板状の第一電極(基板の支持手段)12と、高周波電源Aと、上蓋13と、螺旋状の第二電極E2(アンテナAT2)と、螺旋状の第三電極E3(アンテナAT3)と、ガス導入口15と、ガス導入手段(不図示)と、を備えている。
第一電極(支持手段)12は、チャンバ11内に配され、被処理体Sを載置する。高周波電源(第一の高周波電源)Aは、第一電極12に対して、周波数(第一の周波数)λ1のバイアス電圧を印加可能である。
【0204】
螺旋状の第二電極E2と螺旋状の第三電極E3とは、いずれもチャンバ11外に配され、チャンバ11の上蓋13を形成する石英板を挟んで、第一電極12と対向するように配置される。螺旋状の第二電極E2は上蓋13に沿って中央部に配置され、螺旋状の第三電極E3は上蓋13に沿って第二電極E2より外周部に配置される。
【0205】
高周波電源(第二の高周波電源)Bは、第二電極E2に対して、周波数(第二の周波数)λ2の交流電圧を印加可能である(
図15)。第二電極E2は、螺旋状の内周端に配置され、第二の高周波電源Bから高周波を印加する第一の部位と、螺旋状の外周端に配置され、アースに接地される第二の部位とを有する(
図16)。
【0206】
高周波電源(第三の高周波電源)Cは、第三電極E3に対して、周波数(第三の周波数)λ3の交流電圧を印加可能である(
図15)。第三電極E3は、螺旋状の内周端に配置され、第三の高周波電源Cから高周波を印加する第三の部位と、螺旋状の外周端に配置され、アースに接地される第四の部位とを有する(
図16)。
【0207】
第二の高周波電源Bは、第二電極E2に対して、第二の周波数λ2の交流電圧を印加する。第三の高周波電源Cは、第三電極E3に対して、第三の周波数λ3の交流電圧を印加する。
【0208】
プラズマ処理装置10におけるガス導入手段(不図示)は、上蓋13に配されたガス導入口15(15a)から、チャンバ11内にフッ素(F)を含有するプロセスガスGを導入する。
プラズマ処理装置10は、チャンバ11内において、チャンバ11の上蓋13側、かつ、第一電極12と対向する位置に、スパッタリング用の固体ソース20を有する。特に、プラズマ処理装置10では、固体ソース20の配置される領域が外周側に配された第三電極E3と重なる位置に設けられている。
【0209】
上記構成により、プラズマ処理装置10においては、チャンバ11内の上蓋13側に、第二電極E2によるプラズマP2と第三電極E3によるプラズマP3が生じる。そして、プラズマ処理装置10では、固体ソース20の配置される領域が外周側に配された第三電極E3と重なる位置に設けられているので、固体ソース20は主にプラズマP3によってスパッタリングされる。固体ソース20として酸化シリコンを設けることにより、固体ソース20からプラズマ(特にプラズマP3)の中に、不足するたとえば酸素元素が逐次導入される。
【0210】
ここで、酸素元素(O)及びフッ素元素(F)の発光分光強度、並びにこれらの比率O/Fとの関係を所定の状態とするために、高周波(13.56MHz)の電源パワーを2kWに固定し、低周波(2MHz)の電源パワーを0W~3kWの範囲で変更することができる。
【0211】
プラズマ処理装置10において、
図17に示すように、シリコン基板Sを載置する第一電極12(外径D)と、固体ソース20と重ならない内周側の第二電極E2(外径d)との関係を設定する。
【0212】
・第二電極(アンテナ2)の直径dが、基板の支持手段(基板ステージ)である第一電極12の直径Dに対して1/2以下の場合は、外周部のプラズマ密度が低下し、Fラジカルの生成量が著しく低下する。このため、基板の外周部が、基板の中央部と同様にエッチングを行うことができない。
・第二電極(アンテナ2)の直径dが、基板の支持手段(基板ステージ)である第一電極12の直径Dの1.3倍以上の場合は、第三電極E3(アンテナ3)に低周波を印加し、固体ソース20から酸素元素を供給しても、基板から遠いため、基板外周部に効果が及ばない。
【0213】
したがって、本実施形態のプラズマ処理装置10においては、固体ソース20から酸素元素を供給する際には、関係式D/2≦d≦Dを満たすことが好ましい。
【0214】
本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法によれば、デポ層D1~D4~によるエッチストップ効果を利用して、シリコン基板SにRIE-lagを抑制して異なる径寸法(ΦA,ΦBなど)を有するホールやトレンチなどの凹部パターンVS,VL形成する際でも、樹脂等のレジスト層(マスク層)Mに、エッチング工程で用いるガスを兼用したレジスト保護膜Mmを形成するだけで、ドライエッチング処理をおこなうことができる。
【0215】
しかも、金属等のハードマスクを用いることがないため、金属等の成膜工程が必要なく、金属成膜用のチャンバ、パターニング、洗浄等、金属用に特化した工程および装置を必要としない。したがって、工程数の削減および、必要な装置の削減、製造コストの削減等を図ることができる。
【0216】
また、デポ工程S03におけるデポジション堆積と、ドライエッチング工程S05におけるエッチングとの反復の後に、デポ層D1~D4~を除去するアッシング工程S05を追加することで、サイクル毎にデポジションを除去する。これにより、エッチング途中の開口パターンMS,MLの領域に対応する側壁VSq,VLqに付着したCxFy系ポリマーからなるデポ層D1~D4~も除去される。
【0217】
さらに、ドライエッチング工程S04では、プラズマ処理装置10におけるDual frequency ICP(例えば、13.56MHzと2MHzとからなる)により、添加ガスO2を積極解離させることで側壁VSq,VLqにSiOx保護膜を常時形成させることができる。
レジスト保護膜形成工程S07とアッシング工程S05とデポ工程S03とドライエッチング工程S04とを、同一のチャンバ11内でおこなうことにより、in-situとして、開口パターンMS,MLにおけるレジスト保護膜Mmの開口内周付近に付着したデポ層D1~D4~が除去された状態でドライエッチングをおこなうことができる。
【0218】
しかも、レジスト保護膜形成工程S07により、レジスト層(マスク層)Mをアッシングやエッチングから保護することが可能なレジスト保護膜Mmを形成して、レジスト層(マスク層)Mの減厚を抑制することができる。これにより、金属、酸化シリコン等のハードマスクを必要としない。
したがって、ハードマスク層の成膜、エッチング、洗浄塔の追加の工程および追加の装置を用いることがない。しかも、レジスト保護膜形成工程S07とドライエッチング工程S04とで、共通するガスを用いることが可能となる。
【0219】
なお、本実施形態におけるプラズマ処理装置10としては、次の構成とすることも可能である。
図18は、本実施形態において処理をおこなうプラズマ装置の他の例を示す模式断面図である。
【0220】
この例におけるプラズマ処理装置10は、
図18に示すように、ガス導入手段が上蓋13の中央部に配置され、固体ソース20b(20)の配置される領域が2つの電極[第二電極E2(アンテナAT2)、第三電極E3(アンテナAT3)]と重なる位置にある。
【0221】
つまり、
図18の構成からなるプラズマ処理装置10においては、チャンバ11内において、固体ソース20bの配置される領域が、第二電極E2および第三電極E3と重なる位置にあり、かつ、両電極を覆うように配置されており、固体ソース20bがチャンバ11の上蓋13と別体として設けられている。
【0222】
この構成により、
図18のプラズマ処理装置における固体ソース20b(20)は、低周波プラズマP3において、優先的に、スパッタリングされる。ゆえに、被処理体であるシリコン基板Sに対して、シリコン基板Sの半径方向において酸素元素が増加するように供給される。
【0223】
したがって、
図18のプラズマ処理装置においても、
図15のプラズマ処理装置と同様に、基板の中央部から外周部に亘る全域において、プラズマ処理における異方性を強化し、シリコン基板に加工される凹部パターンの側面形状が、凹部パターンの深さ方向において略直線状に保たれる。
【0224】
図19は、本実施形態において処理をおこなうプラズマ装置の他の例を示す模式断面図である。
【0225】
この例におけるプラズマ処理装置10では、
図19に示すように、
図18のプラズマ処理装置と同様の作用・効果が得られる。これに加えて、
図19のプラズマ処理装置においては、チャンバの上蓋それ自体が固体ソースであることから、チャンバ内に固体ソースを保持する手段が不要となる。また、チャンバの上蓋が固体ソースから構成されているので、チャンバ内におけるプラズマP2、P3の放電状態を一段と安定したものとすることができる。
【0226】
したがって、
図19のプラズマ処理装置においても、
図15のプラズマ処理装置と同様に、シリコン基板の中央部から外周部に亘る全域において、シリコン基板に加工される凹部パターンの側面形状が、凹部パターンの深さ方向において略直線状に保たれる。
【0227】
図20は、本実施形態において処理をおこなうプラズマ装置の他の例を示す模式断面図である。
【0228】
この例におけるプラズマ処理装置10では、
図20に示すように、ガス導入手段がチャンバ11の側壁部15b(15)に配置され、固体ソース20d(20)の配置される領域が内周側の電極[第二電極E2(アンテナAT2)]と重なる位置にある。
【0229】
この例におけるプラズマ処理装置10は、第二電極E2は印加する周波数が低い方の電極であり、第三電極E3は印加する周波数が高い方である。すなわち、
図20のプラズマ処理装置10では、第二の周波数λ2と第三の周波数λ3が、λ2<λ3の関係にあり、前記ガス導入手段がチャンバ11の側壁部15b(15)に配置されている。
【0230】
図15のプラズマ処理装置10では、ガス導入手段がチャンバ11の側壁部15b(15)に配置される場合は、基板中心において不具合な状況が発生する傾向にある。そこで、この例におけるプラズマ処理装置10においては、
図20に示すように、固体ソース20d(20)を内周側の電極[第二電極E2(アンテナAT2)]と重なる位置に配置した。
【0231】
これにより、
図15のプラズマ処理装置において基板外周部に対する作用・効果が、
図20のプラズマ処理装置では、基板中心部に対して得られる。
したがって、
図20のプラズマ処理装置においても、
図15のプラズマ処理装置と同様に、基板の中央部から外周部に亘る全域において、シリコン基板に加工される凹部パターンの側面形状が、凹部パターンの深さ方向において略直線状に保たれる。
【0232】
図21は、本実施形態において処理をおこなうプラズマ装置の他の例を示す模式断面図である。
【0233】
この例におけるプラズマ処理装置10では、
図21に示すように、ガス導入手段がチャンバ11の側壁部15b(15)に配置され、固体ソース20e(20)の配置される領域が2つの電極[第二電極E2(アンテナAT2)、第三電極E3(アンテナAT3)]と重なる位置にある。
【0234】
すなわち、
図21に示す構成からなるプラズマ処理装置においては、チャンバ11内において、固体ソース20eの配置される領域が、第二電極E2および第三電極E3と重なる位置にあり、かつ、両電極を覆うように配置されており、固体ソース20eがチャンバ11の上蓋13と別体として設けられている。
【0235】
この構成により、
図21のプラズマ処理装置における固体ソース20e(20)は、低周波プラズマP2において、優先的に、スパッタリングされる。ゆえに、被処理体であるシリコン基板Sに対して、シリコン基板Sの半径方向において酸素元素が増加するように供給される。
【0236】
したがって、
図21のプラズマ処理装置においても、
図20のプラズマ処理装置と同様に、基板の中央部から外周部に亘る全域において、基板に加工される凹部の側面形状が、凹部の深さ方向において略直線状に保たれる。
【0237】
図22は、本実施形態において処理をおこなうプラズマ装置の他の例を示す模式断面図である。
【0238】
この例におけるプラズマ処理装置10では、
図22に示すように、チャンバ内において、チャンバの上蓋が固体ソース20f(20)から構成されている。
これにより、
図22に示すプラズマ処理装置10は、
図21に示すプラズマ処理装置10と同様の作用・効果が得られる。
【0239】
これに加えて、
図22に示すプラズマ処理装置10においては、チャンバの上蓋それ自体が固体ソースであることから、チャンバ内に固体ソースを保持する手段が不要となる。また、チャンバの上蓋が固体ソースから構成されているので、チャンバ内におけるプラズマP2、P3の放電状態を一段と安定したものとすることができる。
【0240】
したがって、
図22に示すプラズマ処理装置においても、
図21に示すプラズマ処理装置と同様に、基板の中央部から外周部に亘る全域において、基板に加工される凹部の側面形状が、凹部の深さ方向において略直線状に保たれる。
【0241】
以下、本発明に係るエッチング方法の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図23は、本実施形態におけるエッチング方法によって製造された基板を示す模式断面図である。
図24は、本実施形態におけるエッチング方法を示すフローチャートである。
【0242】
本実施形態におけるエッチング方法は、
図23に示すように、基板Sに積層したポリイミド層Pをパターン形成するものである。
本実施形態におけるエッチング方法は、
図24に示すように、前工程S11と、レジストパターン形成工程S12と、レジスト保護膜形成工程S17と、エッチング工程S14と、後工程S18と、を有する。
【0243】
図24に示す前工程S11では、導体もしくは絶縁体もしくは半導体からなる基板Sの全面に、所定の厚さのポリイミド層Pを形成する前処理をおこなう。
【0244】
図25は、本実施形態におけるエッチング方法を示す工程断面図である。
図24に示すレジストパターン形成工程S12では、
図25に示すように、ポリイミド層Pの表面にレジスト層(マスク層)Mを形成する。
レジスト層(マスク層)Mは、公知の樹脂レジストから形成することができる。ポジ型、ネガ型、露光波長などの選択、塗布方法、成膜方法等、これらの条件を適宜選択して所定の厚さに形成することができる。レジスト層(マスク層)Mを構成する材質は、一例として、感光性絶縁体、その他公知のものを挙げることができる。
【0245】
さらに、レジストパターン形成工程S12では、
図25に示すように、レジスト層(マスク層)Mに形成するパターンPSの形状に対応するように処理領域を設定する開口パターン(マスクパターン)MSを形成する。
具体的には、レジストパターン形成工程S12では、フォトレジストであるレジスト層(マスク層)Mを積層して、露光現像等の処理をおこない、さらに、ウェットエッチング処理、ドライエッチング処理等公知の除去処理をおこなうことで、開口パターンMSを有するレジスト層(マスク層)Mを形成する。
【0246】
図26は、本実施形態におけるエッチング方法を示す工程断面図である。
図24に示すレジスト保護膜形成工程S17は、
図26に示すように、レジスト層(マスク層)Mの表面にレジスト保護膜Mmを異方性プラズマ処理により形成する。なおレジスト保護膜形成工程S17は後工程のエッチング工程S14と異なる処理室で行うこともできる。
レジスト保護膜Mmは、後工程のエッチング工程S14において、レジスト層(マスク層)Mをエッチングから保護することが可能な膜である。
【0247】
レジスト保護膜形成工程S17におけるプラズマCVDでは、SiF4とO2の混合ガス、SiCl4とO2の混合ガス、あるいは、SiH4、TEOS等とO2の混合ガスなどのSixOyαzを形成可能なガスを供給することによって、プラズマCVDをおこなう。これにより、SiOFの膜構成を有するレジスト保護膜Mmを形成することができる。
【0248】
SiOF膜は、SiO2膜に似た構成となる。したがって、SiOF膜は、後工程であるエッチング工程S14においては減厚しない。
【0249】
レジスト保護膜Mmは、異方性プラズマ処理によりレジスト層(マスク層)Mの表面に形成されるが、開口パターンMSの側壁に、同様の厚さには形成されない。また、レジスト保護膜Mmは、開口パターンMSの底部にも同様の厚さには形成されない。これは、保護膜Mmのステップカバレッジが小さいためである。
【0250】
本実施形態におけるレジスト保護膜形成工程S17においても、第1実施形態におけるレジスト保護膜形成工程S07と同様に、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
本実施形態におけるレジスト保護膜形成工程S17においても、第1実施形態におけるレジスト保護膜形成工程S07と同様に、所定の条件を設定する。
例えば、プラズマCVDの条件としては、第1実施形態と同様の条件を挙げることができる。
【0251】
図27は、本実施形態におけるエッチング方法を示す工程断面図である。
図24に示すエッチング工程S14は、
図27に示すように、異方性プラズマエッチングにより、開口パターンMSに対応するポリイミド層Pを掘り下げて、凹部パターンPSを形成する。
エッチング工程S14におけるエッチング条件としては、ガス種、ガス流量、電力、圧力、温度、プラズマからの距離、時間等を挙げることができる。
【0252】
さらに、
図24に示す後工程S18として、必要であればウェットエッチング工程、あるいは、第1実施形態と同様の工程によって、レジスト保護膜Mmを除去し、さらに、ウェットエッチング工程、あるいは、エッチング工程S14に類する工程によって、レジスト層(マスク層)Mを除去することで、本実施形態に係るエッチング方法を終了する。
【0253】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【実施例】
【0254】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
ここで、本発明におけるエッチング方法の具体例として、確認試験について説明する。
【0255】
<実験例1>
上述したように、
図18に示すプラズマ処理装置10を用いて、第1実施形態のようにシリコン基板Sに樹脂からなるレジスト層(マスク層)Mおよびレジスト保護膜Mmを用いて凹部パターンVS,VLを形成した。
ここでは、凹部パターンVSをΦAが3μm、深さ26μmのVia、凹部パターンVLをΦBが5μm、深さ26μmのViaとして形成した。この際、デポ工程S03、ドライエッチング工程S04、アッシング工程S05を1サイクルとして、50サイクル繰り返した。また、10サイクルごとにレジスト保護形成工程S07を挿入した。
【0256】
・デポ工程S03: 炭素含有薄膜デポジション
・ドライエッチング工程S04: 炭素含有膜をマスクとしたTSV底部絶縁層エッチ
・アッシング工程S05: 炭素含有膜アッシング
・レジスト保護膜形成工程S07: SiOF膜形成;10サイクル目終了時より実施。
・後工程S08: 貫通電極形成
【0257】
以下に、Via形成における諸元を示す。
図18に示すプラズマ処理装置10において、基板の支持手段(基板ステージ)である第一電極12の直径D[mm]は400に固定し、第二電極(アンテナ2)の直径d[mm]を400に固定した。
【0258】
デポ工程S03における条件
供給ガス; C4F8
ガス流量; C4F8;200sccm
処理雰囲気圧力; 9Pa
内側電極供給電力; 1500W
内側電極供給周波数λ2;13.56MHz
外側電極供給電力; 2000W
外側電極供給周波数λ3; 2MHz
バイアス電力; 0W
処理時間; 14sec
【0259】
ドライエッチング工程S04における条件
供給ガス; SF6, O2, SiF4
ガス流量; SF6,;275sccm
O2;40sccm
SiF4;50sccm,
処理雰囲気圧力; 9Pa
内側電極供給電力; 2000W
内側電極供給周波数λ2;13.56MHz
外側電極供給電力; 2000W
外側電極供給周波数λ3;2MHz
バイアス電力;100~200W
バイアス電力周波数λ1;400kHz
処理時間; 10sec
【0260】
アッシング工程S05における条件
供給ガス; O2
ガス流量; O2;450sccm,
処理雰囲気圧力; 9Pa
内側電極供給電力; 2000W
内側電極供給周波数λ2;13.56MHz
外側電極供給電力; 2000W
外側電極供給周波数λ3;2MHz
バイアス電力;200W
バイアス電力周波数λ1;400kHz
処理時間; 20sec
【0261】
レジスト層;化学増幅系レジストPMERシリーズ
膜厚;5μm
【0262】
レジスト保護膜形成工程S07における条件
10サイクルごとに実施
供給ガス; O2, SiF4
ガス流量; O2;160sccm
SiF4;200sccm,
処理雰囲気圧力; 9Pa
内側電極供給電力; 2000W
内側電極供給周波数λ2;13.56MHz
外側電極供給電力; 2000W
外側電極供給周波数λ3;2MHz
バイアス電力;0W
処理時間; 10sec
【0263】
このように形成した凹部パターンVS,VLの断面の模式図を
図28に示す。
【0264】
また、比較のため、SiOF膜を形成しないでおこなった凹部パターンの断面の模式図を
図29に示す。
【0265】
上記の結果から、本発明としては、以下のように設定することが重要である。
・CxFy deposition-step→Etch-step→Deposition-ash stepの計3ステップの反復によりRIE-lagを無くすシリコンドライエッチングプロセス手法を、樹脂レジストにより正確におこなうことができた。
・CxFy deposition-step→Etch-step→Deposition-ash stepの計3ステップの反復プロセスに加え、SiOF膜の形成プロセスを同一のプロセスチャンバー内で実行する。
【0266】
これにより、チャンバを移動しないことで、パーティクルの減少が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0267】
本発明の活用例として、内包するデバイス層の保護、耐性の無いレジスト材料の保護を挙げることができる。
【符号の説明】
【0268】
D1,D2,D3,D4…デポ層
M…レジスト層(マスク層)
Mm…レジスト保護膜
MS,ML…開口パターン(マスクパターン)
VS,VL…凹部パターン
VSq、VLq…側壁
VSb,VLb,VSb1,VLb1,VSb2,VLb2,VSb3,VLb3…底部
A…高周波電源(第一の高周波電源)
B…高周波電源(第二の高周波電源)
C…高周波電源(第三の高周波電源)
E2…第二電極(アンテナAT2)
E3…第三電極(アンテナAT3)
G…プロセスガス…
M/B…マッチングボックス
S…被処理体(シリコン基板)
TMP…排気手段
λ1…周波数(第一の周波数)
λ2…周波数(第二の周波数)
λ3…周波数(第三の周波数)
10…プラズマ処理装置
11…チャンバ
12…第一電極(支持手段)
13…上蓋
20,20a,20b,20c,20d,20e,20f…固体ソース