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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】化合物の結合物、及び有機半導体材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20230728BHJP
   H01L 31/04 20140101ALI20230728BHJP
   H10K 10/40 20230101ALI20230728BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20230728BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20230728BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C07D519/00 311
H01L31/04
H10K10/40
H10K85/60
H10K30/50
H01L29/12
C07D519/00 CSP
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019549210
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037394
(87)【国際公開番号】W WO2019078040
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2017202189
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹波 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】家 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】安蘇 芳雄
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 一剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 光
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143823(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/155030(WO,A1)
【文献】特表2011-518226(JP,A)
【文献】LIU, S. et al,The Journal of Organic Chemistry,2014年,Vol. 79,pp. 3249-3254
【文献】GOGOI, S. et al.,Synthesis,2013年,Vol. 45,pp. 219-224
【文献】SHAH, H. C. et al.,Arkivoc,2009年,pp. 76-87
【文献】DAWOOD, N. T. A. et al.,Bollettino Chimico Farmaceutico,2001年,Vol. 140,pp. 149-154
【文献】EMAN, H. A. et al.,Journal of the Serbian Chemical Society,1997年,Vol. 62, No. 7,pp. 541-549
【文献】BERIONNI, G. et al.,European Journal of Organic Chemistry,2011年,pp. 5104-5113
【文献】REISINGER, A. et al.,Organic & Biomolecular Chemistry,2004年,Vol. 2,pp. 1227-1238
【文献】BATTERJEE, S. M.,Journal of the Chinese Chemical Society,2005年,Vol. 52,pp. 97-102
【文献】BOYER, J. H. et al.,Journal of the American Chemical Society,1956年,Vol. 78,pp. 423-425
【文献】PORTNOY, S.,Journal of Heterocyclic Chemistry,1970年,Vol. 7,pp. 703-705
【文献】ZHANG, Q. et al.,Organic & Biomolecular Chemistry,2012年,Vol. 10,pp. 2847-2854
【文献】BOYER, J. H. et al.,Journal of the American Chemical Society,1960年,Vol. 82,pp. 2218-2220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物と下記式(1a)で表される化合物とが連結した結合物。
【化1】
[式(1)中、R1は、アセチレン単位及び置換されていてもよいチオフェン環から選ばれる基Gを表し、該基Gが前記アセチレン単位である場合、該基Gはアクセプターユニットとしての芳香族基を含み、該基Gが前記置換されていてもよいチオフェン環である場合、該基Gは前記チオフェン環に結合されるアクセプターユニットとしての芳香族基を含む
式(1a)中、R1aは、アセチレン単位及び置換されていてもよいチオフェン環から選ばれる基G’を表す。
前記基Gのアクセプターユニットとしての前記芳香族基と前記基G’とが連結する。
式(1)、式(1a)中、A1は、-CN、マロノニトリル、-CF3、-CHO、-COORa、-SO2a、および-SO2-ORaよりなる群から選ばれる少なくとも1つを表す。但し、式中、Raは脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、または芳香族基から選ばれる有機基を表す。A1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
mは、1であり、nは、1~4の整数を表す。]
【請求項2】
前記アクセプターユニットとしての前記芳香族基は、下記式(Ar1-1k)~(Ar17-1k)のいずれかで表される構造である請求項1に記載の結合物。
【化2】
[上記式(Ar1-1k)~(Ar17-1k)において、*は前記基Gまたは前記基G’との結合手を表す。
Xは、ハロゲン原子を表す。
3は、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基を表す。
5は、アルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン化アルキル基を表す。R5を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
6およびR7は、それぞれ独立に、炭素数8~30の炭化水素基を表す。
n6は、0または1、n7は、0~3の整数、n8は、0~2の整数、n9は、0~4の整数を表す。]
【請求項3】
請求項1または2に記載の結合物の製造方法であって、
下記式(2a)で表される化合物に、塩基の存在下、アジド化合物を反応させて下記式(1a)で表される化合物を製造する工程、
得られた下記式(1a)で表される化合物をスズ化合物に変換する工程、
得られたスズ化合物と、前記アクセプターユニットにハロゲンが結合したジハロゲン中間体とをカップリング反応させる工程、
を含む結合物の製造方法。
【化3】
[式(2a)中、R1aは、アセチレン単位及び置換されていてもよいチオフェン環から選ばれる基G’を表す。
は、-CN、マロノニトリル、-CF、-CHO、-COOR、-SO、および-SO-ORよりなる群から選ばれる少なくとも1つを表す。但し、式中、Rは脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、または芳香族基から選ばれる有機基を表す。Aを複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
mは、1であり、nは、1~4の整数を表す。
式(1a)中、R1a、A、m、nは、上記と同義である。]
【請求項4】
請求項1または2に記載の結合物を含む有機半導体材料。
【請求項5】
請求項4に記載の有機半導体材料を含む有機電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラゾロピリジン化合物に関する。詳細には、有機半導体に用いることができる新規なテトラゾロピリジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラゾロピリジン化合物は、医薬中間体として知られている。例えば、特許文献1には、6-クロロニコチン酸クロリドを原料としてグリシジル基を有するテトラゾロピリジン化合物を合成している。また、非特許文献1には、種々の置換基を有するテトラゾロピリジン化合物が提案されている。しかし、上記の化合物を有機半導体材料に用いた場合の効果は知られていなかった。また、上記の化合物では、熱安定性が充分でない場合があった。
【0003】
本発明者らは、テトラゾロピリジン化合物を有機半導体材料として用いる技術を特許文献2に提案した。この特許文献2に開示した化合物は、テトラゾロピリジン部に、置換されていてもよい芳香族環、またはハロゲン原子が結合しており、水素原子、脂肪族炭化水素基、又は脂環式炭化水素基よりなる群から選ばれる官能基が結合していてもよい化合物である。この化合物を用いれば、LUMO準位を低く維持したままHOMO準位を引き上げることができるため、この化合物は、有機半導体材料として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2001-526282号公報
【文献】国際公開第2016/143823号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【文献】John M. Keith、「One-Step Conversion of Pyridine N-Oxides to Tetrazolo[1,5-a]Pyridines」、Journal of Organic Chemistry、2006、71、p.9540-9543
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テトラゾロピリジン化合物を有機半導体材料として用いるにあたって、LUMO準位を低く維持できるテトラゾロピリジン化合物の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の官能基を有するテトラゾロピリジン化合物またはその結合物は、LUMO準位を低く維持でき、有機半導体材料として有用であることを見出した。
【0008】
即ち、本発明の化合物またはその結合物は、下記式(1)で表されることを特徴とする。下記式(1)中、R1は、水素原子、または式(1)のテトラゾロピリジン部と共役π電子系を構成する基を表し、該基は連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を有していてもよい。R1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。A1は、-CN、マロノニトリル、-CF3、-CHO、-COORa、-SO2a、および-SO2-ORaよりなる群から選ばれる少なくとも1つを表す。但し、式中、Raは連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を表す。A1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。mは、0~3の整数、nは、1~4の整数を表す。但し、m+nは4である。なお式(1)で表される化合物は、複数が前記連結部で結合して結合物を形成してもよく、連結部同士は直接結合を形成する。
【0009】
【化1】
【0010】
前記共役π電子系を構成する基は、-C≡C-Rb、-CRb=CRb 2、および置換されていてもよい芳香族環よりなる群(但し、前記Rbは水素原子、連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を表し、複数のRbを有する場合は、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。前記芳香族環は、基Rcとして、連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を有していてもよい。)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0011】
本発明には、下記式(2)で表される化合物またはその結合物に、塩基の存在下、アジド化合物を反応させる下記式(1)で表される化合物またはその結合物の製造方法も含まれる。
また、下記式(1)で表される化合物またはその結合物は、下記式(2)で表される化合物またはその結合物をハロゲン化した後、アジド化合物を反応させることによっても製造できる。
下記式(2)中、R1は、水素原子、または式(1)のテトラゾロピリジン部と共役π電子系を構成する基を表し、該基は連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を有していてもよい。R1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。A1は、-CN、マロノニトリル、-CF3、-CHO、-COORa、-SO2a、および-SO2-ORaよりなる群から選ばれる少なくとも1つを表す。但し、式中、Raは連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を表す。A1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。mは、0~3の整数、nは、1~4の整数を表す。但し、m+nは4である。なお式(2)で表される化合物は、複数が前記連結部で結合して結合物を形成してもよく、連結部同士は直接結合を形成する。下記式(1)中、R1、A1、m、nは、上記と同義である。
【0012】
【化2】
【0013】
前記共役π電子系を構成する基は、-C≡C-Rb、-CRb=CRb 2、および置換されていてもよい芳香族環よりなる群(但し、前記Rbは水素原子、連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を表し、複数のRbを有する場合は、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。前記芳香族環は、基Rcとして、連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を有していてもよい。)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0014】
本発明には、上記の化合物またはその結合物を含む有機半導体材料も包含される。また、本発明には、この有機半導体材料を含む有機電子デバイスも包含される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の化合物またはその結合物は、特定の官能基を有するテトラゾロピリジン化合物またはその結合物であるため、LUMO準位を低く維持でき、有機半導体材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.化合物
本発明の化合物は、下記式(1)で表される。
【0017】
【化3】
【0018】
[式(1)中、R1は、水素原子、または式(1)のテトラゾロピリジン部と共役π電子系を構成する基を表し、該基は連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を有していてもよい。R1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
1は、-CN、マロノニトリル、-CF3、-CHO、-COORa、-SO2a、および-SO2-ORaよりなる群から選ばれる少なくとも1つを表す。但し、式中、Raは連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を表す。A1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
mは、0~3の整数、nは、1~4の整数を表す。但し、m+nは4である。
なお式(1)で表される化合物は、複数が前記連結部で結合して結合物を形成してもよく、連結部同士は直接結合を形成する。]
【0019】
以下、本発明について説明する。なお、以下「式(x)で表される化合物」を、単に「化合物(x)」という場合がある。
【0020】
(A1の説明)
上記A1は、電子求引性を示す置換基である。
上記A1は、-CN、マロノニトリル、-CF3、-CHO、-COORa、-SO2a、および-SO2-ORaよりなる群から選ばれる少なくとも1つを表し、-CNが好ましい。
上記式(1)において、nは、1~4の整数であり、好ましくは1または2、より好ましくは1である。
上記-COORa、-SO2a、-SO2-ORaにおいて、Raは連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を表す。連結部Ra及び有機基Raについては、後で説明する。
上記-COORa、-SO2a、-SO2-ORaにおいて、Ra以外の部分、即ち、-COO-、-SO2-、-SO2-O-の部分を、以下、結合基という。
【0021】
(R1の説明)
上記R1は、水素原子、または式(1)のテトラゾロピリジン部と共役π電子系を構成する基を表し、該基は連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を有していてもよい。R1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
上記式(1)において、mは、0~3の整数であり、好ましくは1または2、より好ましくは1である。
上記式(1)のテトラゾロピリジン部と共役π電子系を構成する基は、具体的には、-C≡C-Rb、-CRb=CRb 2、および置換されていてもよい芳香族環よりなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましく、より好ましくは-C≡C-Rbまたは置換されていてもよい芳香族環である。
上記-C≡C-Rb、-CRb=CRb 2において、Rbは水素原子、連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を表す。複数のRbを有する場合は、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。連結部Rb及び有機基Rbについては、後で説明する。
上記-C≡C-Rb、-CRb=CRb 2において、Rb以外の部分、即ち、-C≡C-、-C=C-の部分を、以下、結合基という。
【0022】
上記芳香族環としては、例えば、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が挙げられる。
【0023】
(芳香族炭化水素環)
上記芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環等が挙げられ、ベンゼン環が好ましい。
【0024】
(芳香族複素環)
上記芳香族複素環としては、例えば、下記式で表される含窒素芳香族複素環、含硫黄芳香族複素環、含酸素芳香族複素環等が挙げられ、これらは2つ以上のヘテロ原子を環構成原子として有していてもよく、該2つ以上のヘテロ原子は同一であってもよく異なっていてもよい。
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
中でも、ヘテロ原子を1つ以上含む5員または6員の単環式複素環が好ましく、より好ましくはチオフェン環、チアゾール環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、フラン環、オキサゾール環等である。
【0031】
上記芳香族環は、置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは臭素原子またはヨウ素原子であり、より好ましくは臭素原子である。
上記ハロゲン原子の置換数は、1または2が好ましく、1が特に好ましい。
【0032】
上記芳香族環は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい。
上記ハロゲン原子以外の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、-Mx1(Lx1kx等が挙げられる。
【0033】
(アルキル基)
上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、1-n-ブチルブチル基、1-n-プロピルペンチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基、n-ノニル基、1-n-プロピルヘキシル基、2-n-プロピルヘキシル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、2,3,3,4-テトラメチルペンチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-デシル基、1-n-ペンチルペンチル基、1-n-ブチルヘキシル基、2-n-ブチルヘキシル基、1-n-プロピルヘプチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3,7-ジメチルオクチル基、n-ウンデシル基、1-n-ブチルヘプチル基、2-n-ブチルヘプチル基、1-n-プロピルオクチル基、2-n-プロピルオクチル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、n-ドデシル基、1-n-ペンチルヘプチル基、2-n-ペンチルヘプチル基、1-n-ブチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、1-n-プロピルノニル基、2-n-プロピルノニル基、n-トリデシル基、1-n-ペンチルオクチル基、2-n-ペンチルオクチル基、1-n-ブチルノニル基、2-n-ブチルノニル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、n-テトラデシル基、1-n-ヘプチルヘプチル基、1-n-ヘキシルオクチル基、2-n-ヘキシルオクチル基、1-n-ペンチルノニル基、2-n-ペンチルノニル基、n-ペンタデシル基、1-n-ヘプチルオクチル基、1-n-ヘキシルノニル基、2-n-ヘキシルノニル基、n-ヘキサデシル基、2-ヘキシルデシル基、1-n-オクチルオクチル基、1-n-ヘプチルノニル基、2-n-ヘプチルノニル基、n-ヘプタデシル基、1-n-オクチルノニル基、n-オクタデシル基、1-n-ノニルノニル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、2-オクチルドデシル基、n-ヘンエイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、2-デシルテトラデシル基等が挙げられる。
【0034】
上記アルキル基の炭素数は、好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~24である。
【0035】
(アルコキシ基)
上記アルコキシ基としては、上記アルキル基に-O-が結合した基が挙げられる。
上記アルコキシ基の炭素数は、好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~24である。
【0036】
(ハロゲン化アルキル基)
上記ハロゲン化アルキル基としては、上記アルキル基の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子(特に好ましくはフッ素原子)で置換された基が挙げられる。
上記ハロゲン化アルキル基の炭素数は、好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~4である。
上記ハロゲン化アルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等のペルフルオロアルキル基等が挙げられ、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0037】
(-Mx1(Lx1kx
x1は、ホウ素原子またはスズ原子を表す。
x1は、炭素数1~6のアルキル基、-OH、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数6~10のアリールオキシ基、または炭素数7~10のアラルキルオキシ基を表し、複数のLx1は、Mx1とともに環を形成していてもよい。
x1で表されるアルキル基の炭素数は1~4が好ましい。
x1で表されるアルコキシ基としては、前記アルキル基に-O-が結合した基が挙げられ、該アルコキシ基の炭素数は1~4が好ましい。
x1で表されるアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基等が挙げられ、該アリールオキシ基の炭素数は6~8が好ましい。
x1で表されるアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基等が挙げられ、該アラルキルオキシ基の炭素数は7または8が好ましい。
kxは、Mx1の種類に応じて2または3を表す。kxは、Mx1がホウ素原子の場合2であり、Mx1がスズ原子の場合3である。
【0038】
x1がホウ素原子の場合、*-Mx1(Lx1kxとしては、下記式で表される基等が挙げられる。式中、Rx14は、水素原子、または炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子である。*は結合手を表す。
【0039】
【化9】
【0040】
x1がスズ原子の場合、*-Mx1(Lx1kxとしては、下記式で表される基等が挙げられる。式中、*は結合手を表す。Meはメチル基、Buはブチル基をそれぞれ示す。
【0041】
【化10】
【0042】
中でも、上記式(Om-1)、(Om-2)、(Om-5)、(Om-6)で表される基が好ましい。
【0043】
上記芳香族環は、更に、基Rcとして、連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を有していてもよい。連結部Rc及び有機基Rcについては、後で説明する。
【0044】
上記芳香族環としては、具体的には、下記式(Ar1)~(Ar8)で表される芳香族環が好ましい。
【0045】
【化11】
【0046】
[式(Ar1)~(Ar8)中、R2は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、-Mx1(Lx1kx、または基Rc(即ち、連結部Rc、又は連結部を有していてもよい有機基Rc)を表す。R2を複数有する場合、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
3は、水素原子またはアルキル基を表す。
p1は、0~3の整数、p2は、0~2の整数、p3は、0~5の整数、p4は、0~4の整数を表す。]
【0047】
上記R2のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは臭素原子またはヨウ素原子である。
【0048】
上記R2のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、-Mx1(Lx1kx、及び上記R3のアルキル基としては、上記芳香族環が有していてもよい置換基として例示したアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、または-Mx1(Lx1kxと同様である。上記R2は、好ましくはアルコキシ基またはハロゲン化アルキル基である。
【0049】
上記式(Ar1)~(Ar8)において、少なくとも1つのR2がハロゲン原子であってもよい。
【0050】
p1、p2、p3、p4は、それぞれ、0~2の整数が好ましい。
【0051】
上記式(Ar1)~(Ar8)の中でも、式(Ar1)~(Ar4)が好ましく、式(Ar1)~(Ar4)は、それぞれ、下記式(Ar1-1)~(Ar4-2)がより好ましい。
【0052】
【化12】
【0053】
[式(Ar1-1)~(Ar4-2)中、R4は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、または-Mx1(Lx1kxを表す。R4を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
2は、連結部Rc、又は連結部を有していてもよい有機基Rcを表す。
p5は、0~2の整数、p6は、0または1、p7は、0~4の整数、p8は、0~3の整数、p9は、0~3の整数、p10は、0~2の整数、p11は、0~5の整数、p12は、0~4の整数を表す。
*は結合手を表す。]
【0054】
上記X2は、上記式(Ar1-1)、(Ar2-1)においては5位に結合していることが好ましく、上記式(Ar4-1)においては6位に結合していることが好ましく、上記式(Ar3-1)においては4位に結合していることが好ましい。
【0055】
上記R4のハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、または-Mx1(Lx1kxとしては、それぞれ、上記R2として例示したハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、または-Mx1(Lx1kxと同様であり、ハロゲン原子、アルコキシ基、またはハロゲン化アルキル基が好ましい。
【0056】
p5、p6、p7、p8、p9、p10、p11、p12は、0または1が好ましい。
【0057】
(連結部、有機基の説明)
上述した様に、Ra、Rb、Rc、R2、X2は連結部、又は連結部を有する有機基であってもよい。
【0058】
上記式(1)で表される化合物が連結部を有する有機基を有している場合、該連結部は、式(1)で表される別の化合物が有する連結部と直接結合を形成する。一方の式(1)で表される化合物と他方の式(1)で表される化合物とが連結される場合、一方の式(1)で表される化合物のRa、Rb、Rc、R2、又はX2が連結部であり、他方の式(1)で表される化合物のRa、Rb、Rc、R2、又はX2が連結部を有する有機基であるのが好ましい。
【0059】
式(1)で表される化合物が連結部を有する有機基を有している場合について、下記式を用いて説明する。下記式では、一方の式(1)で表される化合物fと、他方の式(1)で表される化合物gが連結部hで連結している。化合物fにおいて、R1は、式(1)のテトラゾロピリジン部iと共役π電子系を構成する基を示し、該基は、連結部hを有している有機基Rbを有している。化合物gにおいて、R1は、式(1)のテトラゾロピリジン部iと共役π電子系を構成する基を示し、該基は、連結部hを有している。
【0060】
【化13】
【0061】
連結部を介して複数のテトラゾロピリジン部を有する場合、テトラゾロピリジン部の数は、2以上であれば特に限定されないが、好ましくは2~10、より好ましくは2~4、特に好ましくは2である。
【0062】
上記有機基としては、例えば、(1)脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基、(2)芳香族基が挙げられる。
【0063】
(1a)脂肪族炭化水素基
脂肪族炭化水素基は、直鎖状、又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
上記脂肪族炭化水素基は、アルキル基、或いはアルケニル基、アルキニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよく、アルキル基が好ましい。
上記脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~24が好ましく、より好ましくは炭素数1~20である。
【0064】
(1b)脂環式炭化水素基
脂環式炭化水素基は、単環、多環のいずれであってもよい。
上記脂環式炭化水素基は、シクロアルキル基、或いはシクロアルケニル基、シクロアルキニル基等の不飽和脂環式炭化水素基のいずれであってもよく、シクロアルキル基が好ましい。
上記脂環式炭化水素基の炭素数は3~20が好ましく、より好ましくは炭素数3~14である。
上記脂環式炭化水素基としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基等の単環式のシクロアルキル基;ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基等の多環式のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0065】
(2)芳香族基
芳香族基としては、上記R1で例示の芳香族環であってもよいが、アクセプターユニットであるのが好ましく、例えば、下記式(Ar1-1k)~(Ar17-1k)のいずれかで表される構造が挙げられる。
【0066】
【化14】
【0067】
[上記式(Ar1-1k)~(Ar17-1k)において、*は結合手を表す。
式中、*の一方が有機基Ra、Rb、Rc、R2、又はX2としての結合手を表し、*の他方は該有機基Ra、Rb、Rc、R2、又はX2が有する水素原子又は連結部を表す。
Xは、ハロゲン原子を表す。
3は、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基を表す。
5は、アルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン化アルキル基を表す。R5を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
6およびR7は、それぞれ独立に、炭素数8~30の炭化水素基を表す。
n6は、0または1、n7は、0~3の整数、n8は、0~2の整数、n9は、0~4の整数を表す。]
【0068】
上記Xのハロゲン原子は、上記R2のハロゲン原子と同様であり、臭素原子またはヨウ素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0069】
上記R3のアルキル基、上記R5のアルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン化アルキル基は、それぞれ、上記R2のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基と同様である。
【0070】
6およびR7で表される炭素数8~30の炭化水素基としては、炭素数8~30のアルキル基が好ましく、アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよい。
炭素数8~30のアルキル基としては、例えば、n-オクチル基、1-n-ブチルブチル基、1-n-プロピルペンチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基等の炭素数8のアルキル基;n-ノニル基、1-n-プロピルヘキシル基、2-n-プロピルヘキシル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、2,3,3,4-テトラメチルペンチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基等の炭素数9のアルキル基;n-デシル基、1-n-ペンチルペンチル基、1-n-ブチルヘキシル基、2-n-ブチルヘキシル基、1-n-プロピルヘプチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3,7-ジメチルオクチル基等の炭素数10のアルキル基;n-ウンデシル基、1-n-ブチルヘプチル基、2-n-ブチルヘプチル基、1-n-プロピルオクチル基、2-n-プロピルオクチル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基等の炭素数11のアルキル基;n-ドデシル基、1-n-ペンチルヘプチル基、2-n-ペンチルヘプチル基、1-n-ブチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、1-n-プロピルノニル基、2-n-プロピルノニル基等の炭素数12のアルキル基;n-トリデシル基、1-n-ペンチルオクチル基、2-n-ペンチルオクチル基、1-n-ブチルノニル基、2-n-ブチルノニル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基等の炭素数13のアルキル基;n-テトラデシル基、1-n-ヘプチルヘプチル基、1-n-ヘキシルオクチル基、2-n-ヘキシルオクチル基、1-n-ペンチルノニル基、2-n-ペンチルノニル基等の炭素数14のアルキル基;n-ペンタデシル基、1-n-ヘプチルオクチル基、1-n-ヘキシルノニル基、2-n-ヘキシルノニル基等の炭素数15のアルキル基;n-ヘキサデシル基、1-n-オクチルオクチル基、1-n-ヘプチルノニル基、2-n-ヘプチルノニル基、2-n-ヘキシルデシル基等の炭素数16のアルキル基;n-ヘプタデシル基、1-n-オクチルノニル基等の炭素数17のアルキル基;n-オクタデシル基、1-n-ノニルノニル基等の炭素数18のアルキル基;n-ノナデシル基等の炭素数19のアルキル基;n-エイコシル基、n-オクチルドデシル基等の炭素数20のアルキル基;n-ヘンエイコシル基等の炭素数21のアルキル基;n-ドコシル基等の炭素数22のアルキル基;n-トリコシル基等の炭素数23のアルキル基;n-テトラコシル基、2-デシルテトラデシル基等の炭素数24のアルキル基;等が挙げられる。
中でも好ましくは炭素数8~20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数8~16のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数8~16の分岐鎖状アルキル基であり、特に好ましくはn-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル、2-n-ヘキシルデシル基である。
【0071】
上記式(Ar1-1k)~(Ar17-1k)で表されるアクセプターユニットを有する式(1)で表される化合物としては、下記式の化合物(10)又は(20)が好ましく、化合物(10)がより好ましい。
【0072】
【化15】
【0073】
[式中、R1、A1は前記と同じ(但し、連結部を有さない)であり、m、nは前記と同じである。
10は、-C≡C-、-C=C-(即ち、R1の結合基部分)、または置換されていてもよい芳香族環を表し、A10は-COO-、-SO2-、又は-SO2-O-(即ち、A1の結合基部分)を表す。R10を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
20は、上記式(Ar1-1k)~(Ar17-1k)で表されるアクセプターユニットを表し、m1は1又は2である。R20を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。]
【0074】
上記式(10)又は式(20)で表される化合物がアクセプターユニット部R20に連結部を有する場合、該連結部は、下記式の化合物(11)又は(12)(好ましくは化合物(11))の連結部との間に直接結合を有するのが好ましい。
【0075】
【化16】
【0076】
[式中、R1、A1は前記と同じ(但し、連結部を有さない)であり、m、nは前記と同じである。
11は、-C≡C-Rb1、-CRb1=CRb1 2、および置換されていてもよい芳香族環よりなる群(但し、前記Rb1は連結部を表す。前記芳香族環は、連結部を有する。)から選ばれる少なくとも1つである。R11を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
11は、-COORa1、-SO2a1、および-SO2-ORa1よりなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Ra1は連結部を表す。A11を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。]
【0077】
上記R1、A1は、それぞれテトラゾロ[1,5-a]ピリジン環の5~8位のいずれの位置に結合していてもよいが、R1及びA1の少なくとも一方(好ましくは少なくともR1、より好ましくはA1及びR1の両方)が、テトラゾロピリジン環の5位及び/又は8位に結合しているのが好ましい。なおテトラゾロピリジン環の結合位置は下記式で示した位置表示に従うものとする。
【0078】
【化17】
【0079】
例えば、R1及びA1が1つずつテトラゾロ[1,5-a]ピリジン環の5~8位に結合している場合(即ち、m=1、n=1の場合)、R1及びA1の少なくとも一方が5位及び/又は8位に結合している以下の式(1-1)~(1-12)で示される配置が好ましい。
【0080】
【化18】
【0081】
[式(1-1)~(1-12)中、R1、A1は上記と同義である。]
【0082】
中でも、A1とR1とが隣接しない式(1-2)、(1-3)、(1-6)、(1-7)、(1-10)、(1-11)が好ましく、より好ましくはR1が5位又は8位で結合する式(1-2)、(1-3)、(1-10)、(1-11)であり、さらにより好ましくはR1及びA1が5位および8位で結合する式(1-3)、(1-10)であり、特に好ましくは式(1-10)である。
【0083】
式(1)で表される化合物としては、例えば、以下のものが例示できる(下記式中、Eは-CN、マロノニトリル、-CF3、又は-CHOを表し、好ましくは-CNを表す。Dは炭素数が1~20、好ましくは炭素数が1~10のアルキル基を表す。Gは炭素数が8~30の炭化水素基を表す。)。
【0084】
【化19】
【0085】
【化20】
【0086】
【化21】
【0087】
【化22】
【0088】
【化23】
【0089】
2.製造方法
本発明に係る下記式(1)で表される化合物またはその結合物は、(A)下記式(2)で表される化合物またはその結合物に、塩基の存在下、アジド化合物を反応させるか、(B)下記式(2)で表される化合物またはその結合物をハロゲン化した後、アジド化合物を反応させることによって製造できる。
【0090】
上記(A)に示した本発明に係る下記式(1)で表される化合物またはその結合物の製造方法の概要は、下記スキームで表される(工程1)。
【0091】
【化24】
【0092】
[式(2)中、R1は、水素原子、または式(1)のテトラゾロピリジン部と共役π電子系を構成する基を表し、該基は連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を有していてもよい。R1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
1は、-CN、マロノニトリル、-CF3、-CHO、-COORa、-SO2a、および-SO2-ORaよりなる群から選ばれる少なくとも1つを表す。但し、式中、Raは連結部、又は連結部を有していてもよい有機基を表す。A1を複数有する場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。
mは、0~3の整数、nは、1~4の整数を表す。但し、m+nは4である。
なお式(2)で表される化合物は、複数が前記連結部で結合して結合物を形成してもよく、連結部同士は直接結合を形成する。
式(1)中、R1、A1、m、nは、上記と同義である。]
【0093】
上記アジド化合物としては、例えば、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ビス(4-ニトロフェニル)ホスホリルアジド等のジアリールホスホリルアジド;トリメチルシリルアジド(TMSA)等のトリアルキルシリルアジド;等の有機アジド化合物、およびナトリウムアジドなどの無機アジド化合物が好ましい。前記有機アジド化合物は、ポリマー担持されていてもよい。中でも、有機アジド化合物がより好ましく、トリメチルシリルアジド等のトリアルキルシリルアジドが特に好ましい。
【0094】
上記アジド化合物の量は、前記化合物(2)1モルに対して、0.5モル以上、10モル以下が好ましく、より好ましくは1モル以上、8モル以下、さらに好ましくは1モル以上、5モル以下である。上記アジド化合物の量がこの範囲にあると、収率や反応効率が良好である。
【0095】
上記アジド化合物として、トリアルキルシリルアジドを用いる場合、さらに、スルホニルハライド化合物又はリン酸ハライド化合物を共存させることが好ましい。
【0096】
(スルホニルハライド化合物)
上記スルホニルハライド化合物としては、スルホニルクロリド化合物またはスルホニルフルオリド化合物等が挙げられる。即ち、メタンスルホニルクロリド、エタンスルホニルクロリド、プロパンスルホニルクロリド、イソプロパンスルホニルクロリド、ブタンスルホニルクロリド、ペンタンスルホニルクロリド、ヘキサンスルホニルクロリド等のアルキルスルホニルクロリド化合物;ベンゼンスルホニルクロリド、2-メチルベンゼンスルホニルクロリド、3-メチルベンゼンスルホニルクロリド、4-メチルベンゼンスルホニルクロリド、2-クロロベンゼンスルホニルクロリド、3-クロロベンゼンスルホニルクロリド、4-クロロベンゼンスルホニルクロリド、2-ブロモベンゼンスルホニルクロリド、3-ブロモベンゼンスルホニルクロリド、4-ブロモベンゼンスルホニルクロリド、2-ヨードベンゼンスルホニルクロリド、3-ヨードベンゼンスルホニルクロリド、4-ヨードベンゼンスルホニルクロリド、2-フルオロベンゼンスルホニルクロリド、3-フルオロベンゼンスルホニルクロリド、4-フルオロベンゼンスルホニルクロリド、2-トリフルオロメチルベンゼンスルホニルクロリド、3-トリフルオロメチルベンゼンスルホニルクロリド、4-トリフルオロメチルベンゼンスルホニルクロリド等のアリールスルホニルクロリド化合物;塩化スルフリル;等のスルホニルクロリド化合物;ノナフルオロブタンスルホン酸フルオリド、フェニルスルホン酸フルオリド等のスルホニルフルオリド化合物;等が挙げられる。中でも、スルホニルクロリド化合物が好ましく、アリールスルホニルクロリド化合物がより好ましく、4-メチルベンゼンスルホニルクロリドがさらに好ましい。
【0097】
上記スルホニルハライド化合物の量は、上記化合物(2)1モルに対して、0.5モル以上、20モル以下が好ましく、より好ましくは1モル以上、15モル以下、さらに好ましくは1モル以上、13モル以下、特に好ましくは1モル以上、10モル以下である。上記スルホニルハライド化合物の量がこの範囲にあると、収率や反応効率が良好である。
【0098】
(リン酸ハライド化合物)
上記リン酸ハライド化合物としては、ジメチルホスホリルクロリド、ジエチルホスホリルクロリド、ジプロピルホスホリルクロリド、ジイソプロピルホスホリルクロリド、ジブチルホスホリルクロリド等のジアルキルホスホリルクロリド化合物;ビス(2,2,2-トリクロロエチル)ホスホリルクロリド等のジハロゲン化アルキルホスホリルクロリド化合物;2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン;ジフェニルホスホリルクロリド、ビス(2-メチルフェニル)ホスホリルクロリド、ビス(3-メチルフェニル)ホスホリルクロリド、ビス(4-メチルフェニル)ホスホリルクロリド、ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホリルクロリド、ビス(2-クロロフェニル)ホスホリルクロリド、ビス(3-クロロフェニル)ホスホリルクロリド、ビス(4-クロロフェニル)ホスホリルクロリド、ビス(3,5-ジクロロフェニル)ホスホリルクロリド等のジアリールホスホリルクロリド化合物;1,2-フェニレンホスホロクロリデート;等が挙げられる。中でも、ジハロゲン化アルキルホスホリルクロリド化合物、ジアリールホスホリルクロリド化合物が好ましく、ビス(2,2,2-トリクロロエチル)ホスホリルクロリド、ジフェニルホスホリルクロリドがより好ましい。
【0099】
上記リン酸ハライド化合物の量は、上記化合物(2)1モルに対して、0.5モル以上、20モル以下が好ましく、より好ましくは1モル以上、15モル以下、さらに好ましくは1モル以上、13モル以下、特に好ましくは1モル以上、10モル以下である。上記リン酸ハライド化合物の量がこの範囲にあると、収率や反応効率が良好である。
【0100】
上記アジド化合物を反応させる際に共存させる塩基としては、N-メチルイミダゾール、イミダゾール等のイミダゾール化合物;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属塩化合物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属塩化合物;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、リチウムtert-アミルアルコキシド、ナトリウムtert-アミルアルコキシド、カリウムtert-アミルアルコキシド等のアルコキシアルカリ金属化合物;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化金属化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリアリルアミン、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルイミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エンなどの3級のアミン;等が挙げられる。中でも、イミダゾール化合物、アルカリ金属塩化合物、アミンが好ましく、より好ましくはN-メチルイミダゾール、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジンであり、さらに好ましくは炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジンである。
【0101】
上記塩基の量は、上記化合物(2)1モルに対して、0.5モル以上、10モル以下が好ましく、より好ましくは1モル以上、8モル以下、さらに好ましくは1モル以上、7モル以下、特に好ましくは1モル以上、5モル以下である。
【0102】
上記反応時、反応溶媒は用いないことが好ましい。反応溶媒を用いる場合、反応に影響を及ぼさない範囲で使用でき、例えば、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒等を用いることができる。
【0103】
前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフタン、メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジオキサンが挙げられる。
前記芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンが挙げられる。
前記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルが挙げられる。
前記炭化水素系溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンが挙げられる。
前記ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパンが挙げられる。
前記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
前記アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル3,4,5,6-テトラヒドロ-(1H)-ピリミジンが挙げられる。
また、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、スルホラン等のスルホン系溶媒を用いることができる。
【0104】
反応温度は、反応収率を高める観点から、0℃以上、200℃以下が好ましく、30℃以上、180℃以下がより好ましく、40℃以上、150℃以下がさらに好ましい。反応温度は、マイクロウェーブを用いて調節しても良い。
【0105】
上記化合物(2)において、例えば、R1及びA1が1つずつテトラゾロピリジン環の5~8位に結合している場合(即ち、m=1、n=1の場合)、R1及びA1の少なくとも一方が5位及び/又は8位に結合している以下の式(2-1)~(2-12)で示される配置が好ましい。
【0106】
【化25】
【0107】
[式(2-1)~(2-12)中、R1、A1は上記と同義である。]
【0108】
中でも、A1とR1とが隣接しない式(2-2)、(2-3)、(2-6)、(2-7)、(2-10)、(2-11)が好ましく、より好ましくはR1が5位又は8位で結合する式(2-2)、(2-3)、(2-10)、(2-11)であり、さらにより好ましくはR1及びA1が5位および8位で結合する式(2-3)、(2-10)であり、特に好ましくは式(2-10)である。
【0109】
本発明に係る上記式(1)で表される化合物またはその結合物は、上記(B)に示す方法によっても製造できる。ハロゲン化することによって、上記(A)で示した塩基を用いなくても上記式(1)で表される化合物またはその結合物を製造できる。
【0110】
ハロゲン化は、種々の方法によって行うことができ、例えば、上記式(2)で表される化合物またはその結合物をハロゲン化試薬と接触させることによって行うことができる。上記ハロゲン化試薬としては、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン、および塩化ホスホリルなどの無機ハロゲン化物;塩化オキサリルおよび臭化オキサリルなどのシュウ酸ハロゲン化物などが挙げられる。
【0111】
上記反応時、溶媒として、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル3,4,5,6-テトラヒドロ-(1H)-ピリミジンなどのアミド系溶媒を用いることが好ましい。
【0112】
ハロゲン化して得られた化合物またはその結合物に、上記(A)で示した上記アジド化合物を反応させることによって、上記式(1)で表される化合物またはその結合物を製造できる。
【0113】
上記アジド化合物と反応させる際には、反応開始剤を添加することが好ましい。上記反応開始剤としては、例えば、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化亜鉛(ZnF2)、フッ化銅(CuF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、テトラメチルアンモニウムフルオリド(TMAF)、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート(TASF)などを用いることができる。
【0114】
上記化合物(2)は、公知の条件で得られたものを用いることができ、例えば、下記スキームで表されるように、下記式(3)で示される化合物(3)を酸化するか(工程2)、下記式(4)で示される酸化ハロゲン化物である化合物(4)のハロゲンを、上記A1で置換する方法(工程3)が挙げられる。
【0115】
【化26】
【0116】
[式中、Xは、ハロゲン原子を表す。R1、A1、m、nは、それぞれ上記と同義である。]
【0117】
(工程2)
上記化合物(3)と、酸化剤とを反応させることにより、化合物(2)を得ることができる。
上記酸化剤としては、例えば、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)等の過カルボン酸を用いることができる。
上記酸化剤の量は、化合物(3)1モルに対して、0.1モル以上、10モル以下が好ましく、より好ましくは0.5モル以上、5モル以下である。
工程2における反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン系溶媒が好ましい。
【0118】
(工程3)
上記化合物(4)のハロゲン原子X1を、上記A1で置換する方法は特に限定されず、公知の条件を採用できる。
反応温度は、反応収率を高める観点から、0℃以上、250℃以下が好ましく、30℃以上、230℃以下がより好ましく、40℃以上、200℃以下がさらに好ましい。反応温度は、マイクロウェーブを用いて調節しても良い。
【0119】
(有機半導体材料)
本発明の化合物(1)は、LUMO準位を低くできるため、有機半導体材料として有用である。テトラゾロピリジン部は、電子受容性であり、拡張π共役系でのアクセプター性ユニットとしての機能が期待できる。
【0120】
(有機電子デバイス)
本発明の有機半導体材料は、電子受容性が高いため、有機電子デバイスに有用である。上記有機電子デバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ素子、光電変換素子、太陽電池、太陽電池モジュール等が挙げられる。
【0121】
本願は、2017年10月18日に出願された日本国特許出願第2017-202189号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記日本国特許出願第2017-202189号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0122】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0123】
(実施例1)
窒素雰囲気下、ナスフラスコに、2,5-dibromopyridine(1.18g、5mmol)、CuCN(448mg、5mmol)、および無水DMF(30mL)を入れ、120℃で一晩加熱撹拌した。反応終了後、セライトろ過し、DMFを濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=5:1)を用いて精製し、目的物を292mg(収率32%)得た。
【0124】
【化27】
【0125】
次に、窒素雰囲気下、ねじ口試験管に、得られた5-bromo-2-cyanopyridine(292mg、1.6mmol)、2-stannylthiophene(1.2g、3.2mmol)、Pd(PPh34(184mg、0.016mmol)、および無水トルエン(10mL)を入れ、120℃で16時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=5:1)を用いて精製し、目的物を200mg(収率69%)得た。
【0126】
【化28】
【0127】
次に、ナスフラスコに、得られた5-Thienyl-2-cyanopyridine(200mg、1.07mmol)、mCPBA(396mg、1.6mmol)、および無水ジクロロメタン(20mL)を入れ、室温で3日撹拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層をジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH=20:1)を用いて精製し、N-oxideを76mg(収率35%)得た。
【0128】
【化29】
【0129】
次に、窒素雰囲気下、ねじ口試験管に、得られたN-oxide(76mg、0.37mmol)、DPPA(1g、3.7mmol)、および無水ピリジン(292mg、3mmol)を入れ、窒素雰囲気、120℃で20時間撹拌した。反応液は直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH=50:1)により精製し、目的物(Tz-1)を65mg(収率53%)得た。
【0130】
【化30】
【0131】
(実施例2)
窒素雰囲気下、2口フラスコに、上記実施例1で得られたTetrazolopyridine(45mg、0.2mmol)、および無水THF(10mL)中、-78℃でジイソプロピルアミン、ブチルリチウムより発生させたLDAを1.0当量加え、1時間撹拌した。1時間撹拌後、塩化トリブチルスズ(0.07mL、0.22mmol)を加え、室温でさらに一晩撹拌した。一晩撹拌後、水を加えて反応を停止させたのち、ジエチルエーテルにより抽出を行った。溶媒を濃縮し、アルミナカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=1:1)を用いて精製し、目的物(Tz-2)を88mg(収率85%)得た。
【0132】
【化31】
【0133】
(実施例3)
窒素雰囲気下、耐圧試験管に、2,5-dibromo-pyridine N-oxide(1.26g、5mmol)、2-stannylthiophene(1.86g、5mmol)、Pd(PPh34(578mg、0.5mmol)、および無水トルエン(20mL)を入れ、120℃で16時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=5:1)を用いて精製し、目的物を639mg(収率50%)得た。
【0134】
【化32】
【0135】
次に、窒素雰囲気下、耐圧試験管に、得られた5-bromo-2-thienylpyridine N-oxide(128mg、0.5mmol)、ZnCN2(117mg,1.0mmol)、Pd(PPh34(46mg、0.04mmol)、および無水DMF(3mL)を入れ、マイクロウェーブ反応装置で加熱し、200℃で15分加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH=20:1)を用いて精製し、目的物を102mg定量的に得た。
【0136】
【化33】
【0137】
次に、ねじ口試験管に、N-oxide(102mg、0.5mmol)、DPPA(1.36g、2.5mmol)、および無水ピリジン(395mg、5mmol)を入れ、窒素雰囲気、120℃で20時間撹拌した。反応液は、直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH=50:1)により精製し、目的物(Tz-3)を25mg(収率22%)得た。
【0138】
【化34】
【0139】
(実施例4)
ナスフラスコに、上記実施例3で得られたN-oxide(1.33g、6.6mmol)を入れ、POCl3(10.1g、66mmol)を添加した後、無水DMF(0.5ml、6.6mmol)を添加し、窒素雰囲気、70℃で、2時間撹拌した。2時間撹拌後、POCl3を濃縮し、濃縮液をクロロホルム/水に滴下し、Na2CO3水溶液で中和後、クロロホルムにて抽出し、溶媒を濃縮した。得られた粗品をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=5:1)を用いて精製し、さらに再結晶精製(Hexane/AcOEt=2:1)を行い、目的物を0.63g(収率43%)得た。
【0140】
【化35】
【0141】
次に、ナスフラスコに、得られた6-Cl-Pyridine(620mg、2.8mmol)、TBAF(1.0M solution in THF 3.0ml、3.1mmol)、TMSA(0.8ml、3.2mmol)を入れ、窒素雰囲気、65℃で、16時間撹拌した。16時間撹拌後、水およびトルエンを加え、分液後、AcOEtで抽出し、溶媒を濃縮した。得られた粗品をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH=50:1)を用いて精製し、目的物を392mg(収率63%)得た。
【0142】
【化36】
【0143】
(実施例5)
窒素雰囲気下、ねじ口試験管に、2,5-dibromo-pyridine N-oxide(186mg、1.0mmol)、Trimethylsilylacetylene(98mg、1.0mmol)、Pd(PPh34(55mg、0.05mmol)、CuI(10mg、0.05mmol)、THF(10mL)およびEt3N(4mL)を入れ、60℃で16時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=3:1)を用いて精製し、目的物を128mg(収率50%)得た。
【0144】
【化37】
【0145】
次に、窒素雰囲気下、耐圧試験管に、得られたN-oxide(349mg、1.3mmol)、ZnCN2(304mg、2.6mmol)、Pd(PPh34(60mg、0.05mmol)、および無水DMF(5mL)を入れ、マイクロウェーブ反応装置で加熱し、200℃で15分加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH=20:1)を用いて精製し、目的物を174mg(収率62%)得た。
【0146】
【化38】
【0147】
次に、ねじ口試験管に、得られたN-oxide(175mg、0.8mmol)、DPPA(1.11g、4mmol)、および無水ピリジン(316mg、4mmol)を入れ、窒素雰囲気、120℃で20時間撹拌した。20時間撹拌後、反応液は、直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH=50:1)により精製し、目的物(Tz-4)を100mg(収率48%)得た。
【0148】
【化39】
【0149】
(実施例6)
窒素雰囲気下、ねじ口試験管に、ジブロモチオフェン誘導体(56mg、0.1mmol)、ピリジンN-oxide(87mg、0.3mmol)、Pd(PPh34(5.5mg、0.05mmol)、CuI(1.0mg、0.05mmol)、THF(5mL)、およびEt3N(2mL)を入れ、60℃で、16時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/AcOEt=20:1)を用いて精製し、目的物を32mg(収率46%)得た。
【0150】
【化40】
【0151】
次に、ねじ口試験管に、得られたN-oxide(32mg、0.05mmol)、DPPA(138mg、0.5mmol)、および無水ピリジン(39.5mg、0.5mmol)を入れ、窒素雰囲気、120℃で20時間撹拌した。20時間撹拌後、反応液は、直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH=50:1)により精製し、目的物(Tz-5)を26mg得た。
【0152】
【化41】
【0153】
(実施例7)
窒素雰囲気下、2口フラスコにtetrazolopyridine(113mg、0.5mmol)、および無水THF(11.3mL)中、-80℃でLDAを1.1当量加え、1時間撹拌した。1時間撹拌後、塩化トリブチルスズ(0.17mL、0.61mmol)を加え、室温でさらに一晩撹拌した。一晩撹拌後、水を加え反応停止させたのち、ジエチルエーテルにより抽出を行った。抽出後、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=1:1)を用いて精製し、目的物を220mg(収率85%)得た。
【0154】
【化42】
【0155】
次に、窒素雰囲気下で、二つ口フラスコに得られたスズ化tetrazolopyridine(130mg、0.25mmol)、ジブロモ体(450mg、0.5mmol)、P(o-tolyl)3(6.0mg、0.02mmol)、Pd2(dba)3・CHCl3(5.0mg、0.005mmol)、無水トルエン(4mL)、およびDMF(1mL)を入れ、80℃で12時間加熱撹拌した。12時間加熱撹拌後、溶媒を濃縮し、分取GPCを用いて精製し、目的物Aを135mg(収率45%)得た。
【0156】
【化43】
【0157】
(サイクリックボルタンメトリー)
上記で得られた目的物Aについて、サイクリックボルタンメトリー測定装置(BAS社製、「CV-620C voltammetric analyzer」)を用い、溶媒としてo-ジクロロベンゼンとアセトニトリルの5:1溶媒を用い、Bu4NPF6が0.1Mの溶液を用いて測定した。その結果、LUMOは-3.52eV、HOMOは-5.35eVであった。よって目的物Aは、低いLUMO準位を有しているため、n型半導体の材料として好適に用いることができると考えられる。
【0158】
(FET測定)
オゾン処理したシリコン基板上を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用いて処理した。HMDS処理後の基板表面に、上記目的物Aを1mg/mLの濃度となるようにクロロホルムに溶解した溶液をスピンコート(1000rpm、1分間)してボトムゲート-ボトムコンタクト型のFET素子を作製し、FET測定を行った。チャンネル長さは5μmとした。次に、得られたFET素子を80℃または120℃で1時間アニールし、同様の方法でFET測定を行った。結果を下記表1に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
上記表1から明らかなように、目的物Aは120℃でアニールを行った後でも化合物が分解することなく、良好な電子移動特性を示すことが分かった。
【0161】
(密度汎関数法によるシミュレーション)
下記式(Tz-11)~(Tz-16)で表される化合物について、それぞれ、密度汎関数法によるシミュレーションを行って、LUMO準位、HOMO準位を計算した。シミュレーションは、ソフトウェアとしてガウシアン社製のGaussian9を用い、密度汎関数計算B3LYP/6-31G(d,p)levelで行った。結果を表2に示す。
【0162】
【化44】
【0163】
【化45】
【0164】
【化46】
【0165】
【表2】
【0166】
上記シミュレーションにより、本発明の化合物は、LUMO準位を低く維持でき、有機半導体材料として有用であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の化合物は、電子受容性が高いため、有機半導体材料として有用である。また、本発明の有機半導体材料は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ素子、光電変換素子、太陽電池、太陽電池モジュール等の有機電子デバイスに有用である。