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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20230728BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230728BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230728BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20230728BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230728BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230728BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230728BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/30
G02F1/1335 500
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G09F9/00 313
H01L27/32
H05B33/14 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018119679
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2019008292
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-05-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2017125437
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪上 智恵
(72)【発明者】
【氏名】小橋 亜依
(72)【発明者】
【氏名】淺津 悠司
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】大▲瀬▼ 裕久
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/099016(WO,A1)
【文献】特開2009-244757(JP,A)
【文献】特開2005-189645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性組成物から形成される光選択吸収層を少なくとも1層含む光学フィルムであって、
前記光学フィルムは、樹脂フィルム、前記光選択吸収層、及び樹脂フィルムがこの順に積層された層構成を有し、かつ式(1)及び式(3)を満たし、
前記光選択吸収層は、接着剤層である光学フィルム。
A(405)≧0.5 (1)
A(405)/A(440)≧60 (3)
[式(1)及び(3)中、A(405)は、波長405nmにおける吸光度を表し、A(440)は、波長440nmにおける吸光度を表す。
【請求項2】
さらに、下記式(2)を満たす請求項1に記載の光学フィルム。
A(440)≦0.1 (2)
[式(2)中、A(440)は、波長440nmにおける吸光度を表す。]
【請求項3】
光選択吸収層の23℃における貯蔵弾性率Eが、100MPa以上である請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
光選択吸収層が、光硬化性成分(A)、光選択吸収化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物から形成される層である請求項1~のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
光選択吸収化合物(B)の含有量が、光硬化性成分(A)100質量部に対して、0.01~20質量部である請求項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
光選択吸収化合物(B)が、下記式(4)を満たす化合物である請求項又はに記載の光学フィルム。
ε(405)≧20 (4)
〔式(4)中、ε(405)は波長405nmにおける化合物のグラム吸光係数を表す。グラム吸光係数の単位はL/(g・cm)である。〕
【請求項7】
光選択吸収化合物(B)は、式(5)を満たす化合物である請求項に記載の光学フィルム。
ε(405)/ε(440)≧20 (5)
[式(5)中、ε(405)は波長405nmにおける化合物のグラム吸光係数を表し、ε(440)は波長440nmにおけるグラム吸光係数を表す。]
【請求項8】
光硬化性成分(A)が、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物及びエポキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の光学フィルムの少なくとも一方の面に、粘着剤層を有する粘着剤層付き光学フィルム。
【請求項10】
請求項に記載の粘着剤層付き光学フィルムを有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1層の光選択吸収層を含む光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や液晶表示装置等の表示装置(FPD:フラットパネルディスプレイ)には、有機EL素子、液晶セル等の表示素子や偏光板等の光学フィルムなど様々な部材が用いられている。これらの部材に用いられる有機EL化合物および液晶化合物等は有機物であるため、紫外線(UV)による劣化が問題となりやすい。このような問題を解決するため、例えば、特許文献1には370nm以下の波長域の紫外線吸収能が優れる紫外線吸収剤を偏光板の保護フィルムに添加した偏光板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-308936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の表示装置の薄型化が進む中、重合性液晶化合物を配向・光硬化させてなる液晶系位相差フィルムの開発が進められている。これらの液晶系位相差フィルムや有機EL発光素子は紫外線による劣化のみではなく、短波長の可視光においても劣化する傾向があることが明らかになってきた。しかしながら、特許文献1に記載の偏光板は、370nm以下の波長域の紫外線吸収能が優れていても、400nm付近の短波長の可視光の吸収性能が低く、液晶系位相差フィルムや有機EL発光素子の劣化抑制が十分ではない場合があった。
【0005】
そこで、400nm付近の短波長の可視光の吸収性能を有する粘着剤層を配置することで、液晶系位相差フィルムや有機EL発光素子の劣化を抑制できないか検討を行った。検討の結果、粘着剤層に400nm付近の短波長の可視光の吸収性能を有する化合物を含有させると、粘着剤層に含まれる400nm付近の短波長の可視光の吸収性能を有する化合物が、他の層に移行することによって位相差フィルムや偏光板の劣化を生じさせてしまう傾向にあることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に記載の発明を含む
[1]光学フィルムを提供する活性エネルギー線硬化性組成物から形成される光選択吸収層を少なくとも1層含み、かつ下記式(1)を満たす光学フィルム。
A(405)≧0.5 (1)
[式(1)中、A(405)は、波長405nmにおける吸光度を表す。]
[2]さらに、下記式(2)を満たす[1]に記載の光学フィルム。
A(440)≦0.1 (2)
[式(2)中、A(440)は、波長440nmにおける吸光度を表す。]
[3]下記式(3)を満たす[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
A(405)/A(440)≧5 (3)
[式(3)中、A(405)は波長405nmにおける吸光度を表し、A(440)は、波長440nmにおける吸光度を表す。]
[4]光選択吸収層の23℃における貯蔵弾性率Eが、100MPa以上である[1]~[3]のいずれかに記載の光学フィルム。
[5]光選択吸収層が、光硬化性成分(A)、光選択吸収化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物から形成される層である[1]~[4]のいずれかに記載の層
[6]光選択吸収化合物(B)の含有量が、光硬化性成分(A)100質量部に対して、0.01~20質量部である[5]に記載の光学フィルム。
[7]光選択吸収化合物(B)が、下記式(4)を満たす化合物である[5]又は[6]に記載の光学フィルム。
ε(405)≧20 (4)
〔式(4)中、ε(405)は波長405nmにおける化合物のグラム吸光係数を表す。グラム吸光係数の単位はL/(g・cm)である。〕
[8]光選択吸収化合物(B)は、式(5)を満たす化合物である[7]に記載の光学フィルム。
ε(405)/ε(440)≧20 (5)
[式(5)中、ε(405)は波長405nmにおける化合物のグラム吸光係数を表し、ε(440)は波長440nmにおけるグラム吸光度係数を表す。]
[9]光硬化性成分(A)が、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物及びエポキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む[6]~[8]のいずれかに記載の光学フィルム。
[10][1]~[9]に記載の光学フィルムの少なくとも一方の面に、粘着剤層を有する粘着剤層付き光学フィルム。
[11][10]に記載の粘着剤層付き光学フィルムを有する表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学フィルムは、光選択吸収層に含まれる400nm付近の短波長の可視光を選択的に吸収する化合物が光選択吸収層以外の層へ移行せず、位相差フィルムの劣化を抑制することができ、良好な表示特性を付与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る光学フィルムの一例を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る光学積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明に係る光学積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図4】本発明に係る光学積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図5】本発明に係る光学積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図6】本発明に係る光学積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0010】
本発明の光学フィルムは、活性エネルギー線硬化樹脂組成物から形成される光選択吸収層を少なくとも1層含み、下記式(1)を満たす光学フィルムである。
A(405)≧0.5 (1)
[波長405nmにおける光学フィルムの吸光度を表す。]
A(405)の値は大きいほど波長405nmにおける吸収が大きいことを示す。A(405)の値が1未満であると、波長405nmにおける吸収が低く、短波長の可視光における位相差フィルムや有機EL素子等の表示装置の劣化を抑制する効果が小さい。A(405)の値は、耐候劣化抑制の観点から、好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.8以上であり、特に好ましくは1.0以上である。
【0011】
本発明の光学フィルムは、さらに下記式(2)を満たすことが好ましい。
A(440)≦0.1 (2)
[式(2)中、A(440)は、波長440nmにおける吸光度を表す。]
A(440)の値が小さいほど波長440nmにおける吸収が低いことを表す。A(440)の値が0.1を超えると、表示装置における良好な色彩表現を損なう傾向にある。また、表示装置の発光を阻害する傾向にあるため、表示装置の輝度も低下する可能性がある。A(440)の値は、表示装置の発光阻害を抑制する観点から、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.04以下であり、特に好ましくは0.03以下である。
【0012】
本発明の光学フィルムは、さらに式(3)を満たすことが好ましい。
下記式(3)を満たす請求項1又は2に記載の光学フィルム。
A(405)/A(440)≧5 (3)
[式(3)中、A(405)は波長405nmにおける吸光度を表し、A(440)は、波長440nmにおける吸光度を表す。]
A(405)/A(440)の値は、波長440nmにおける吸収の大きさに対する波長405nmの吸収の大きさを表す。A(405)/A(440)の値が大きいほど405nm付近の波長域に特異的な吸収があることを表す。A(405)/A(440)の値は10以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、特に好ましくは60以上である。
【0013】
<本発明の光学積層体>
本発明の光学積層体の層構成の一例の断面模式図を図1に示した。
図1に示す本発明の光学フィルム10は、樹脂フィルム2(例えば、後述する樹脂フィルム(a))の少なくとも一方の面に光選択吸収層1が形成される。光選択吸収層1は、単層であってもよいし、多層であってもよい。また、樹脂フィルム2と光選択吸収層1との間に接着剤層又は粘着剤層があってもよい。この場合の接着剤層は、公知の接着剤(水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤)から形成される接着剤層であればよく、粘着剤層も公知の粘着剤から形成される粘着剤層であればよい。
【0014】
図2に記載の光学積層体10Aは、本発明の光学フィルム10と偏光板フィルムとを含む光学積層体である。図2に示した光選択吸収層1は、接着剤層としても機能する。
図3に記載の光学積層体10Bは、樹脂フィルム2、光選択吸収層1、偏光フィルム3、接着剤層4、保護フィルム5を含む光学積層体である。接着剤層4は、公知の接着剤から形成された接着剤層であってもよいし、本願の光選択吸収層2を接着剤層として用いてもよい。保護フィルム5は、位相差を有したフィルム(位相差フィルム)であってもよい。
図4に記載の光学積層体10C及び図5に記載の光学積層体10Dは、樹脂フィルム2、光選択吸収層1、偏光フィルム3、接着剤層4、保護フィルム5、粘着剤層6、光学フィルム40、粘着剤層30、発光素子110含む光学積層体である。接着剤層4は、公知の接着剤から形成された接着剤層であってもよいし、本願の光選択吸収層2を接着剤層として用いてもよい。
図6に記載の光学積層体10Eは、光選択吸収層1、樹脂フィルム2、接着剤層4、偏光フィルム3、接着剤層4、樹脂フィルム2を含む光学積層体である。図6において、光選択吸収層1は、表面処理層としても機能する。
つまり、本発明の光選択吸収層1は、接着剤層としても機能するし、表面処理層としても機能する。
【0015】
本発明の光選択吸収層1の厚みは、通常0.1~30μmである。
光選択吸収層1が、表面処理層として使用される場合の厚みは、5~15μmであることが好ましい。5μm未満であると、硬度が不充分となるおそれがある。15μmを超えると、残留溶剤が残ったり、塗膜密着性が低下するおそれがある。
光選択吸収層1が、接着剤層として使用される場合の厚みは、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
【0016】
光選択吸収層の23℃における貯蔵弾性率(E‘)が100MPa以上であることが好ましく、500MPa以上であることがより好ましく、1000MPa以上であることがさらに好ましく、100000MPa以下であることが好ましい。また光選択吸収層の80℃における貯蔵弾性率が、600MPa以上であることが好ましく、1000MPa以上であることがより好ましく、1500MPa以上であることがさらに好ましく、10000MPa以下であることが好ましい。
【0017】
光選択吸収層1が表面処理フィルムとして機能する場合、光選択吸収層の硬度が、JIS K5600-5-4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、H以上であることが好ましく、3H以上であることがより好ましく、4H以上であることがよりさらに好ましい。
【0018】
<光選択吸収層>
本発明の光学フィルムは、活性エネルギー線硬化性組成物から形成される光選択吸収層を少なくとも1層含む。該光選択吸収層を含むことにより、本発明の光学フィルムは式(1)を満たす。光選択吸収層は、上述した式(1)を満たすことが好ましく、上述した式(1)及び式(2)を満たすことがより好ましく、上述した式(1)、式(2)及び式(3)を満たすことがさらに好ましい。
光選択吸収層は、樹脂フィルム(以下、樹脂フィルム(a)という場合がある。)の少なくとも一方の面に形成される。
【0019】
活性エネルギー線硬化性組成物とは、活性エネルギー線の照射を受けて硬化する組成物を表す。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、可視光等が挙げられ、好ましくは紫外線である。紫外線光源としては、波長400nm以下に発光分布を有する光源が好ましく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
活性エネルギー線硬化性組成物は、光硬化性成分(A)、光選択吸収化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有する。
【0020】
光硬化性成分(A)としては、活性エネルギー線の照射によりラジカル重合反応により硬化する化合物又はオリゴマー(ラジカル重合性化合物)、並びに又は活性エネルギー線の照射によりカチオン重合反応により硬化する化合物(カチオン重合性化合物)等が挙げられる。
【0021】
<ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物等が挙げられる。本明細書において「(メタ)アクリル系化合物」とは、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選択される少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイルオキシ基」や「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」などというときについても同様である。活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物を1種又は2種以上含有することができる。
【0022】
(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及び、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルオリゴマー等の(メタ)アクリロイル基含有化合物を挙げることができる。(メタ)アクリルオリゴマーは好ましくは、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーである。(メタ)アクリル系化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0023】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0024】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートにおいて、そのアルキル基は炭素数3以上であれば直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のテルペンアルコールの(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のテトラヒドロフルフリル構造を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等のアルキル基部位にシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル部位にエーテル結合を有する(メタ)アクリレートも等も挙げられる。
【0025】
さらに、官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキル部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート;アルキル部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2)モノ(メタ)アクリレート、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタル酸、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヘキサヒドロフタル酸、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]コハク酸、4-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリメリット酸、N-(メタ)アクリロイルオキシ-N’,N’-ジカルボキシメチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリルアミドモノマーは、好ましくはN-位に置換基を有する(メタ)アクリルアミドである。そのN-位の置換基の典型的な例はアルキル基であるが、(メタ)アクリルアミドの窒素原子とともに環を形成していてもよく、この環は、炭素原子及び(メタ)アクリルアミドの窒素原子に加え、酸素原子を環構成員として有してもよい。さらに、その環を構成する炭素原子には、アルキルやオキソ(=O)のような置換基が結合していてもよい。
【0027】
N-置換(メタ)アクリルアミドとしては、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミドのようなN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドのようなN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。また、N-置換基は水酸基を有するアルキル基であってもよく、その例として、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。さらに、上記した5員環又は6員環を形成するN-置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例としては、N-アクリロイルピロリジン、3-アクリロイル-2-オキサゾリジノン、4-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン等が挙げられる。
【0028】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
テトラフルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のハロゲン置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート;
水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;
1,3-ジオキサン-2,5-ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕等のジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物等のビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;
ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等のビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート;シリコーンジ(メタ)アクリレート;
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート;
2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン;
2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート;
トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0029】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレート;3官能以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート;グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート;1,1,1-トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ]プロパン;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリルオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリルオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリルオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0031】
ウレタン(メタ)アクリルオリゴマーとは、分子内にウレタン結合(-NHCOO-)及び少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオールをポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する(メタ)アクリルモノマーとのウレタン化反応生成物等であり得る。
【0032】
上記ウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、例えば水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーであることができ、その具体例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを含む。水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー以外の具体例は、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーを含む。
【0033】
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネート等のジ-又はトリ-イソシアネート、及び、上記のジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
また、ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物とするために用いられるポリオールとしては、芳香族、脂肪族又は脂環式のポリオールの他、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を使用することができる。脂肪族及び脂環式のポリオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0035】
ポリエステルポリオールは、上記したポリオールと多塩基性カルボン酸又はその無水物との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物であり得るものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸等がある。
【0036】
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールの他、上記したポリオール又はジヒドロキシベンゼン類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオール等であり得る。
【0037】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するオリゴマーを意味する。
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールを脱水縮合反応させることにより得ることができる。
多塩基性カルボン酸又はその無水物としては、無水コハク酸、アジピン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、フタル酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
ポリオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0038】
エポキシ(メタ)アクリルオリゴマーは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得ることができる。エポキシ(メタ)アクリルオリゴマーは、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する。
ポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0039】
光選択吸収層を表面処理層として用いる場合は、光選択吸収層の硬度を高めるため、2官能(メタ)アクリレートモノマー及び多官能(メタ)アクリレートモノマーの合計含有量が光硬化性成分(A)100質量部に対して、50質量部以上、好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上である。
光選択吸収層を接着剤層として用いる場合、密着性の観点から、単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、光硬化性成分(A)100質量部に対して50質量部以上、好ましくは60質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。
【0040】
[カチオン重合性化合物]
カチオン重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりカチオン重合反応が進行し、硬化する化合物又はオリゴマーを表す。カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニル化合物等を挙げられる。カチオン重合性化合物は、好ましくはエポキシ化合物である。エポキシ化合物とは、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等を挙げることができる。中でも、耐候性、硬化速度及び接着性の観点から、エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物であることが好ましく、脂環式エポキシ化合物であることがより好ましい。
【0041】
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物である。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下記式(I)で示される構造における橋かけの酸素原子-O-を意味する。下記式(I)中、mは2~5の整数である。
【0042】
【化1】
【0043】
上記式(I)における(CH2m中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。(CH2m中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。
【0044】
中でも、エポキシシクロペンタン構造〔上記式(I)においてm=3のもの〕や、エポキシシクロヘキサン構造〔上記式(I)においてm=4のもの〕を有する脂環式エポキシ化合物は、硬化物のガラス転移温度が高く、接着性の面でも有利である。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
【0045】
A:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15-ジエポキシ-7,11,18,21-テトラオキサトリスピ
ロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-8,9-エポキシ-1,5-ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイド。
【0046】
【化2】
【0047】
【化3】
【0048】
芳香族エポキシ化合物は、分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物である。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物又はそのオリゴマー;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル等の多官能型のエポキシ化合物;エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0049】
水素化エポキシ化合物は、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルであり、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族ポリオールの具体例は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ポリビニルフェノール等の多官能型の化合物を含む。芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールにエピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。水素化エポキシ化合物の中でも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0050】
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環(3員の環状エーテル)を分子内に少なくとも1個有する化合物である。例えば、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等の単官能のエポキシ化合物;1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の2官能のエポキシ化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の3官能以上のエポキシ化合物;4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド等の、脂環式環に直接結合するエポキシ基1個と、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環とを有するエポキシ化合物等がある。中でも、接着性の観点から、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に2個有する2官能のエポキシ化合物(脂肪族ジエポキシ化合物ともいう)が好ましい。かかる好適な脂肪族ジエポキシ化合物は、例えば、下記式(II)で表すことができる。
【0051】
【化4】
【0052】
上記式(II)中のYは、炭素数2~9のアルキレン基、エーテル結合が介在している総炭素数4~9のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6~18の2価の炭化水素基である。
【0053】
上記式(II)で表される脂肪族ジエポキシ化合物としては、アルカンジオールのジグリシジルエーテル、繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、又は脂環式ジオールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0054】
オキセタン化合物は、分子内に1個以上のオキセタン環(オキセタニル基)を含有する化合物である。オキセタン化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルヘキシルオキセタン、1,4-ビス〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕ベンゼン、3-エチル-3〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕オキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-(シクロヘキシルオキシ)メチル-3-エチルオキセタン等が挙げられる。オキセタン化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物と併用してもよい。オキセタン化合物を併用することで、硬化速度や接着性を向上できることがある。
【0055】
ビニル化合物としては、脂肪族又は脂環式のビニルエーテル化合物が挙げられる。ビニル化合物としては、n-アミルビニルエーテル、i-アミルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、オレイルビニルエーテル等の炭素数5~20のアルキル又はアルケニルアルコールのビニルエーテル;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル、2-メチルシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等の脂肪族環又は芳香族環を有するモノアルコールのビニルエーテル;グリセロールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル等の多価アルコールのモノ~ポリビニルエーテル;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルモノビニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノ~ジビニルエーテル;グリシジルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテルメタクリレート等が挙げられる。
ビニル化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物、又はエポキシ化合物及びオキセタン化合物と併用してもよい。ビニル化合物を併用することで、硬化速度や接着剤の低粘度化を向上できることがある。
【0056】
光硬化性成分(A)は、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物を併用してもよい。
光硬化性成分(A)の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物100質量%に対して、通常50~99.5質量%であり、好ましくは70~97質量%である。
【0057】
<光選択吸収化合物(B)>
光選択吸収化合物(B)としては、波長405nmの光を選択的に吸収する化合物であり、式(5)を満たす化合物であることが好ましく、さらに式(6)を満たす化合物であることがより好ましい。
ε(405)≧20 (5)
〔式(5)中、ε(405)は波長405nmにおける化合物のグラム吸光係数を表す。グラム吸光係数の単位はL/(g・cm)である。〕
ε(405)/ε(440)≧20 (6)
[式(6)中、ε(405)は波長405nmにおける化合物のグラム吸光係数を表し、ε(440)は波長440nmにおけるグラム吸光度係数を表す。]
なお、グラム吸光度係数は、実施例に記載の方法で測定する。
【0058】
ε(405)の値が大きい化合物ほど波長405nmの光を吸収しやすく、紫外線や短波長の可視光による劣化抑制機能を発現しやすい。ε(405)の値が20L/(g・cm)未満であると、位相差フィルムや有機EL発光素子の紫外線や短波長の可視光による劣化抑制機能を発現するために、光吸収選択層中の光選択吸収化合物(B)の含有量が増大する。光選択吸収化合物(B)の含有量が増大すると、光選択吸収化合物(B)がブリードアウト又は不均一に分散してしまい、光吸収機能が不十分となることがある。ε(405)の値は20L/(g・cm)以上であることが好ましく、30L/(g・cm)以上であることがより好ましく、40L/(g・cm)以上であることがさらにより好ましく、通常500L/(g・cm)以下である。
【0059】
ε(405)/ε(440)の値が大きい化合物ほど、表示装置の色彩表現を阻害することなく405nm付近の光を吸収し、位相差フィルムや有機EL素子等の表示装置の光劣化を抑制することができる。ε(405)/ε(440)の値は20以上が好ましく、40以上がより好ましく、70以上がさらにより好ましく、80以上が特により好ましい。
【0060】
また、光選択吸収化合物(B)は、分子内にメロシアニン構造を含む化合物であることが好ましい。メロシアニン構造を含む化合物とは、-(N-C=C-C=C)-で示される部分構造を分子内に含有している化合物であって、例えば、メロシアニン系化合物、シアニン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
光選択吸収化合物(B)は、式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)という場合がある。)であることが好ましい。

[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~25のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7~15のアラルキル基、炭素数6~15のアリール基、複素環基を表し、該アルキル基又はアラルキル基に含まれる-CH-は-NR1A-、-CO-、-SO-、-O-又は-S-に置換されていてもよい。
1Aは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、該アルキル基に含まれる-CH-は-NR1B-、-CO-、-SO-、-O-又は-S-で置換されていてもよい。
1Bは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~25のアルキル基又は電子吸引性基を表すか、R及びRは互いに連結して環構造を形成してもよい。
及びRは互いに連結して環構造を形成してもよく、R及びRは互いに連結して環構造を形成してもよく、R及びRは互いに連結して環構造を形成してもよく、R及びRは、互いに連結して環構造を形成してもよい。]
【0061】
及びRで表される炭素数1~25のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-シアノプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-オクチル基、n-デシル、2-へキシル-オクチル基等が挙げられる。
及びRで表される炭素数1~25のアルキル基が有していてもよい置換基としては、以下の群Aに記載の基が挙げられる。
群A:ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルシリル基、炭素数2~8のアルキルカルボニル基、*-Ra1-(O-Ra2t1-Ra3(Ra1及びRa2は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルカンジイル基を表し、Ra3は炭素数1~6のアルキル基を表し、s1は1~3の整数を表す。)で表される基等が挙げられる。
炭素数1~12のアルキルシリル基としては、メチルシリル基、エチルシリル、プロピルシリル基等のモノアルキルシリル基;ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルエチルシリル基等のジアルキルシリル基;トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル基等のトリアルキルシリル基が挙げられる。
炭素数2~8のアルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0062】
及びRで表される炭素数7~15のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。アラルキル基に含まれる-CH-が、-SO-又は-COO-に置き換わった基としては2-フェニル酢酸エチル基等が挙げられる。
及びRで表される炭素数7~15のアラルキル基が有していてもよい置換基としては、上記群Aに記載の基が挙げられる。
【0063】
及びRで表される炭素数6~15のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
及びRで表される炭素数6~15のアリール基が有していてもよい置換基としては、上記群Aに記載の基が挙げられる。
及びRで表される炭素数6~15の複素環基としては、ピリジル基、ピロリジル基、キノリル基、チオフェン基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、ピロール基、チアゾリル基及びフラニル基等の炭素数3~9の芳香族複素環基が挙げられる。
【0064】
1A及びR1Bで表される炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0065】
、R及びRで表される炭素数1~6のアルキル基としては、R1Bで表される炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられる。
、R及びRで表される炭素数1~6のアルキル基が有していてもよい置換基としては、上記群Aに記載の基が挙げられる。
、R及びRで表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等炭素数6~15のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等の炭素数7~15のアラルキル基が挙げられる。
、R及びRで表される芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては上記群Aに記載の基が挙げられる。
、R及びRで表される芳香族複素環としては、ピリジル基、ピロリジル基、キノリル基、チオフェン基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、ピロール基、チアゾリル基及びフラニル基等の炭素数3~9の芳香族複素環基が挙げられる。
、R及びRで表される芳香族複素環が有していてもよい置換基としては、上記群Aに記載の基が挙げられる。
【0066】
及びRで表される炭素数1~25のアルキル基としては、R及びRで表される炭素数1~25のアルキル基と同じものが挙げられる。
及びRで表される炭素数1~25のアルキル基が有していてもよい置換基としては、上記群Aに記載の基が挙げられる。
【0067】
及びRで表される電子吸引性基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、式(I-1)で表される基が挙げられる。

[式中、R11は、水素原子又は炭素数1~25のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれるメチレン基の少なくとも1つは酸素原子に置換されていてもよい。
は、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR12CO-又はCONR13-を表す。
12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を表す。]
【0068】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec-ブチル基、ペルフルオロtert-ブチル基、ペルフルオロペンチル基及びペルフルオロヘキシル基等のパーフルオロアルキル基等が挙げられる。ハロゲン原子で置換されたアルキル基の炭素数としては、通常1~25である。
【0069】
11で表される炭素数1~25のアルキル基としては、R及びRで表されるアルキル基と同じものが挙げられる。
12及びR13で表される炭素数1~6のアルキル基としては、R1Aで表される炭素数1~6で表されるアルキル基と同じものが挙げられる。
【0070】
及びRは互いに連結して環構造を形成していてもよく、R及びRより形成される環構造としては、例えば、メルドラム酸構造、バルビツール酸構造、ジメドン構造等が挙げられる。
【0071】
及びRが互いに結合して形成される環構造としては、Rと結合している窒素原子を含む含窒素環構造であって、例えば、4~14員環の含窒素複素環が挙げられる。R及びRが互いに連結して形成される環構造は、単環であってもよいし、多環であってもよい。具体的には、ピロリジン環、ピロリン環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、オキサゾリン環、チアゾリン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、インドール環、イソインドール環等が挙げられる。
【0072】
及びRが互いに結合して形成される環構造としては、R及びRが結合している窒素原子を含む含窒素環構造であって、例えば、4~14員環(好ましくは4~8員環)の含窒素複素環が挙げられる。R及びRが互いに連結して形成される環構造は、単環であってもよいし、多環であってもよい。具体的には、R及びRが互いに連結して形成される環構造と同じものが挙げられる。
【0073】
及びRが互いに結合して形成される環構造としては、4~14員環の含窒素環構造が挙げられ、5員環~9員環の含窒素環構造が好ましい。R及びRが互いに結合して形成される環構造は、単環であってもよいし、多環であってもよい。これらの環は置換基を有していてもよく、このような環構造としては、前記R及びRが互いに連結して形成される環構造として例示したものと同じものが挙げられる。
【0074】
及びRが互いに連結して形成される環構造としては、R-C=C-C=C-Rが環の骨格を形成する環構造である。例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0075】
とRが互いに連結して環構造を形成している式(I)で表される化合物としては式(I-A)で表される化合物が挙げられ、R及びRが互いに連結して環構造を形成している式(I)で表される化合物としては、式(I-B)で表される化合物等が挙げられる。

[式(I-A)、式(I-B)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ上記と同じ意味を表す。
環W及び環Wは、それぞれ独立して、含窒素環を表す。]
【0076】
環W及び環Wは、環の構成単位として窒素原子を含有する含窒素環を表す。環W及び環Wは、それぞれ独立して、単環であってもよいし、多環であってもよく、窒素以外のヘテロ原子を環の構成単位として含んでいてもよい。環W及び環Wは、それぞれ独立して、5員環~9員環の環であることが好ましい。
【0077】
式(I-A)で表される化合物は、式(I-A-1)で表される化合物であることが好ましい。

[式(I-A)中、R、R、R、R及びRは、それぞれ上記と同じ意味を表す。
は、-CH-、-O-、-S-又は-NR1D-を表す。
14及びR15は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を表す。
1Dは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。]
【0078】
式(I-B)で表される化合物は、式(I-B-1)で表される化合物及び式(I-B-2)で表される化合物であることが好ましい。

[式(I-B-1)中、R、R及びRは、それぞれ上記と同じ意味を表す。
16は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基、アリール基を表す。]
【0079】

[式(I-B-2)中、R、R、R及びRは、それぞれ上記と同じ意味を表す。
30は、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、メルカプト基、アミノ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数2~13のアシル基、炭素数2~13のアシルオキシ基又は炭素数2~13のアルコキシカルボニル基を表す。
31は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、メルカプト基、炭素数1~12のアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアミノ基又は複素環基を表す。]
【0080】
30で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
30で表されるR30で表される炭素数2~13のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基等が挙げられる。
30で表される炭素数2~13のアシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
30で表される炭素数2~13のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
30で表される炭素数6~18の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の炭素数6~18のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等の炭素数7~18のアラルキル基が挙げられる。
30で表される炭素数1~12のアルキル基としては、R14で表される炭素数1~12のアルキル基と同じものが挙げられる。
30で表される炭素数1~12のアルキル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。
30は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、アミノ基又はメルカプト基であることが好ましい。
【0081】
31で表される炭素数1~12のアルキル基としては、R14で表される炭素数1~12のアルキル基と同じものが挙げられる。
31で表される炭素数1~12のアルコキシ基としては、R30で表される炭素数1~12のアルコキシ基と同じものが挙げられる。
31で表される炭素数1~12のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられる。
31で表される置換基を有していてもよいアミノ基としては、アミノ基;N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基等の1つの炭素数1~8のアルキル基で置換されたアミノ基;N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-メチルエチルアミノ基等の2つの炭素数1~8のアルキル基で置換されたアミノ基;等が挙げられる。
31で表される複素環としては、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基等の炭素数4~9の含窒素複素環基等が挙げられる。
【0082】
及びRが互いに連結して環構造を形成し、かつR及びRが互いに結合して環構造を形成する式(I)で表される化合物としては、式(I-C)で表される化合物等が挙げられる。

[式(I-C)中、R1、及びRは上記と同じ意味を表す。
21、R22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又はヒドロキシ基を表す。
及びXは、それぞれ独立して、-CH-又は-N(R25)=を表す。
25は、水素原子、炭素数1~25のアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。]
【0083】
25で表される炭素数1~25のアルキル基としては、Rで表される炭素数1~25のアルキル基と同じものが挙げられる。
25で表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基:ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基:ビフェニル基等が挙げられ、炭素数6~20の芳香族炭化水素基であることが好ましい。R25で表される芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0084】
及びRは、それぞれ独立して、電子吸引性基であることが好ましい。
【0085】
及びRが互いに連結して環構造を形成し、かつR及びRが互いに結合して環構造を形成する式(I)で表される化合物としては、式(I-D)で表される化合物等が挙げられる。

[式(I-D)中、R、R5、R7は上記と同じ意味を表す。
25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、ヒドロキシ基、アラルキル基を表す。]
【0086】
25、R26、R27及びR28で表される炭素数1~12のアルキル基としては、R1A及びR1Bで表される炭素数1~12のアルキル基と同じものが挙げられる。R25、R26、R27及びR28で表される炭素数1~12のアルキル基が有していてもよい置換基としてはヒドロキシ基が挙げられる。
25、R26、R27及びR28で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基等の炭素数7~15のアラルキル基が挙げられる。
【0087】
及びRが互いに連結して環構造を形成している化合物(I)としては、式(I-E)で表される化合物等が挙げられる。

[式(I-C)中、R、R、R、Rは、それぞれ上記と同じ意味を表す。
環Wは、環状化合物を表す。]
環Wは、5員環~9員環の環であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を環の構成単位として含んでいてもよい。
【0088】
式(I-E)で表される化合物は、式(IE-1)で表される化合物であることが好ましい。

[式(I-E-1)中、R、R、R及びRは、それぞれ上記と同じ意味を表す。
17、R18、R19、Rは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基、アリール基を表し、該アルキル基又はアラルキル基に含まれる-CH-基は-NR2D-、-C(=O)-、-C(=S)-、-O-、-S-に置換されていてもよく、R17及びR18は互いに連結して環構造を形成してもよく、R18及びR19は互いに連結して環構造を形成してもよく、R19及びRは、互いに連結して環構造を形成してもよい。R2Dは水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基、アリール基を表し、該アルキル基又はアラルキル基に含まれる-CH-基は-C(=O)-、-C(=S)-、-O-、-S-に置換されていてもよい。
m、p、qはそれぞれ独立して1~3の整数を表す。]
【0089】
式(I)で表される化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
光選択吸収化合物(B)の含有量は、光硬化性成分(A)100質量部に対して、通常0.01~20質量部であり、好ましくは0.05~15質量部であり、より好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.1~5質量部である。
【0101】
<光重合開始剤(C)>
[ラジカル重合性開始剤]
光硬化性成分(A)がラジカル重合化合物である場合、光重合開始剤(C)は光ラジカル重合開始剤を含有する。また、さらに、熱ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。光ラジカル重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によって、ラジカル硬化性化合物の重合反応を開始させるものである。活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、ラジカル重合開始剤を1種又は2種以上含有することができる。
【0102】
光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤としては従来公知のものを使用できる。光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインメ、チルエーテルベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等が挙げられる。
【0103】
ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、通常0.5~20質量部であり、好ましくは1~6質量部である。ラジカル重合開始剤を0.5重量部以上含有させることにより、ラジカル重合性化合物を十分に硬化させることができる。
【0104】
(カチオン重合性開始剤)
光硬化性成分(A)がカチオン重合性化合物である場合、光重合開始剤(C)は光カチオン重合開始剤である。光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン硬化性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、光カチオン硬化性化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;芳香族ジアゾニウム塩;鉄-アレーン錯体等を挙げることができる。
【0105】
芳香族ヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはジフェニルヨードニウムカチオンを挙げることができる。芳香族スルホニウム塩は、トリアリールスルホニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはトリフェニルスルホニウムカチオンや4,4’-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドカチオン等を挙げることができる。芳香族ジアゾニウム塩は、ジアゾニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはベンゼンジアゾニウムカチオンを挙げることができる。また、鉄-アレーン錯体は、典型的にはシクロペンタジエニル鉄(II)アレーンカチオン錯塩である。
【0106】
上に示したカチオンは、アニオン(陰イオン)と対になって光カチオン重合開始剤を構成する。光カチオン重合開始剤を構成するアニオンの例を挙げると、特殊リン系アニオン[(Rf)nPF6-n-、ヘキサフルオロホスフェートアニオンPF6 -、ヘキサフルオロアンチモネートアニオンSbF6 -、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネートアニオンSbF5(OH)-、ヘキサフルオロアーセネートアニオンAsF6 -、テトラフルオロボレートアニオンBF4 -、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンB(C65)4 -等がある。中でも、カチオン重合性化合物の硬化性及び得られる光選択吸収層の安全性の観点から、特殊リン系アニオン[(Rf)nPF6-n-、ヘキサフルオロホスフェートアニオンPF6 -であることが好ましい。
【0107】
光カチオン重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。中でも、芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため好ましく用いられる。
【0108】
光カチオン重合開始剤の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部に対して通常、0.5~10質量部であり、好ましくは6質量部以下である。光カチオン重合開始剤を0.5質量部以上配合することにより、カチオン重合性化合物を十分に硬化させることができる。
【0109】
(任意成分)
活性エネルギー線硬化性組成物は、必要に応じて、添加剤を含むことができる。添加剤としては、イオントラップ剤、連鎖移動剤、重合促進剤、増感剤、増感助剤、光安定剤、粘着付与剤、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、透光性微粒子、有機溶剤等の溶剤、熱重合開始剤、ブロッキング剤、防汚剤、界面活性剤、架橋剤、硬化剤、粘度調整剤、帯電防止剤、防汚剤、スリップ剤、屈折率調整剤、分散剤等が挙げられる。
【0110】
活性エネルギー線硬化性組成物を、ハードコート層等の表面処理層の形成に用いる場合、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリドン等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;1-メトキシ-2-プロパノール等のエーテルアルコール類、;水等が挙げられる。有機溶媒は、粘度等を考慮して選択して用いることができる。活性エネルギー線硬化性組成物に有機溶剤を含むことにより、樹脂フィルムに対する塗工性が向上する。
【0111】
これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。活性エネルギー線硬化性組成物が有機溶剤を含む場合には、塗工後にその有機溶剤を蒸発させる必要がある。そのため有機溶剤は、60℃~160℃の範囲の沸点を有するものであることが望ましい。また、その20℃における飽和蒸気圧は、0.1kPa~20kPaの範囲にあることが好ましい。
【0112】
レベリング剤としては、例えば、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤等の公知のものを挙げることができる。レベリング剤の含有量は、光硬化性成分(A)100質量部に対して0.1~1質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、特に光選択吸収層が表面処理層である場合、表面の平面性が悪くなり、ヘイズやムラが生じやすく、ブロッキング防止性が充分に発揮されないおそれがある。一方、1質量部を超えると、活性エネルギー線硬化性組成物の分散性やポットライフが悪くなりやすい。
【0113】
活性エネルギー線硬化性組成物は、光硬化性成分(A)の種類等によっては、接着機能を有する場合があり、接着剤として使用することができる。活性エネルギー線硬化性組成物を接着剤として使用する場合、その粘度が低いことが好ましい。具体的には、25℃における粘度が、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは300mPa・s以下であり、通常250mPa・s以上である。本発明に係る硬化性接着剤組成物は無溶剤型であることができるが、採用する塗工方式に適した粘度に調整するために有機溶剤を含有させてもよい。
【0114】
<樹脂フィルム(a)>
樹脂フィルム(a)は、特に限定されず、公知の樹脂フィルムを使用することができる。
樹脂フィルム(a)としては、偏光フィルム、位相差フィルム、ウィンドフィルム等の光学機能を有するフィルムであってもよい。光学機能を有するフィルムとは、光線を透過、反射、吸収することができるフィルムを意味する。
【0115】
ウィンドフィルムとは、フレキシブルディスプレイ等のフレキシブル表示装置における前面板を意味し、一般的には表示装置の最表面に配置される。ウィンドウフィルムは、例えばポリイミド樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。ウィンドウフィルムは、例えばポリイミド及びシリカを含む樹脂フィルム等の有機材料と無機材料とのハイブリッドフィルムであってもよい。また、ウィンドウフィルムはその表面に、表面硬度や防汚性、耐指紋性を機能付与するためのハードコート層が配置されていてもよい。ウィンドウフィルムとしては、特開2017―94488号記載のフィルム等が挙げられる。
【0116】
〔位相差フィルム〕
位相差フィルムとは、光学異方性を示す光学フィルムであって、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタクリレート、アセチルセルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニルなどからなる高分子フィルムを1.01~6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルムなどが挙げられる。中でも、ポリカーボネートフィルムやシクロオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸した高分子フィルムであることが好ましい。また、位相差フィルムは重合性液晶化合物を硬化させてなる位相差フィルムであってもよい。なお、本明細書において、位相差フィルムは、ゼロレタデーションフィルムを含み、一軸性位相差フィルム、低光弾性率位相差フィルム、広視野角位相差フィルムなどと称されるフィルムも含む。
【0117】
液晶性化合物の塗布・配向によって光学異方性を発現させたフィルムや、無機層状化合物の塗布によって光学異方性を発現させたフィルムとしては、温度補償型位相差フィルムと称されるフィルム、JX液晶フィルム株式会社ら販売されている「NHフィルム(商品名;棒状液晶が傾斜配向したフィルム)」、富士フイルム株式会社から販売されている「WVフィルム(商品名;円盤状液晶が傾斜配向したフィルム)」、住友化学株式会社から販売されている「VACフィルム(商品名;完全二軸配向型のフィルム)」、「new VACフィルム(商品名;二軸配向型のフィルム)」などが挙げられる。
【0118】
ゼロレタデーションフィルムとは、正面レタデーションReと厚み方向のレタデーションRthとが、ともに-15~15nmであり、光学的に等方なフィルムをいう。ゼロレタデーションフィルムとしては、セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(鎖状ポリオレフィン系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂など)またはポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられ、レタデーション値の制御が容易で、入手も容易であるという点で、セルロース系樹脂またはポリオレフィン系樹脂が好ましい。ゼロレタデーションフィルムは、保護フィルムとしても用いることができる。ゼロレタデーションフィルムとしては、富士フイルム(株)から販売されている“Z-TAC”(商品名)、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“ゼロタック(登録商標)”、日本ゼオン(株)から販売されている“ZF-14”(商品名)などが挙げられる。
【0119】
本発明の光学フィルムにおいて、位相差フィルムは、重合性液晶化合物を硬化させてなる位相差フィルムが好ましい。
【0120】
液晶性化合物の塗布・配向によって光学異方性を発現させたフィルムとしては、
第一の形態:棒状液晶化合物が支持基材に対して水平方向に配向した位相差フィルム、
第二の形態:棒状液晶化合物が支持基材に対して垂直方向に配向した位相差フィルム、
第三の形態:棒状液晶化合物が面内で螺旋状に配向の方向が変化している位相差フィルム、第四の形態:円盤状液晶化合物が傾斜配向している位相差フィルム、
第五の形態:円盤状液晶化合物が支持基材に対して垂直方向に配向した二軸性の位相差フィルムがあげられる。
【0121】
たとえば、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに用いられる光学フィルムとしては、第一の形態、第二の形態、第五の形態が好適に用いられる。またはこれらを積層させて用いてもよい。
【0122】
位相差フィルムが、重合性液晶化合物の配向状態における重合体からなる層(以下、「光学異方性層」と称する場合がある)である場合、位相差フィルムは逆波長分散性を有することが好ましい。逆波長分散性とは、短波長での液晶配向面内位相差値の方が長波長での液晶配向面内位相差値よりも小さくなる光学特性であり、好ましくは、位相差フィルムが下記式(7)および式(8)を満たすことである。なお、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。
Re(450)/Re(550)≦1 (7)
1≦Re(630)/Re(550) (8)
本発明の光学フィルムにおいて、位相差フィルムが第一の形態でかつ逆波長分散性を有する場合、表示装置での黒表示時の着色が低減するため好ましく、前記式(7)において0.82≦Re(450)/Re(550)≦0.93であればより好ましい。さらに120≦Re(550)≦150が好ましい。
【0123】
位相差フィルムが、光学異方性層を有するフィルムである場合の重合性液晶化合物としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、並びに、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報、特開2011-207765号公報、特開2011-162678号、特開2016-81035号公報、国際公開第2017/043438号公報及び特表2011-207765号公報に記載の重合性液晶化合物が挙げられる。
【0124】
重合性液晶化合物の配向状態における重合体から位相差フィルムを製造する方法は、例えば、特開2010-31223号公報に記載の方法が挙げられる。
【0125】
第2の形態の場合、正面位相差値Re(550)は0~10nmの範囲に、好ましくは0~5nmの範囲に調整すればよく、厚み方向の位相差値Rthは、-10~-300nmの範囲に、好ましくは-20~-200nmの範囲に調整すればよい。厚み方向の屈折率異方性を意味する厚み方向の位相差値Rthは、面内の進相軸を傾斜軸として50度傾斜させて測定される位相差値R50と面内の位相差値R0 とから算出できる。すなわち、厚み方向の位相差値Rthは、面内の位相差値R0、進相軸を傾斜軸として50度傾斜させて測定した位相差値R50、位相差フィルムの厚みd、及び位相差フィルムの平均屈折率n0から、以下の式 (10)~(12)によりnx、ny及びnz を求め、これらを式(9)に代入して、算出することができる。
【0126】
th=[(n+n)/2-n]×d (9)
=(n-n)×d (10)
50=(n-n')×d/cos(φ) (11)
(n+n+n)/3=n (12)
ここで、
φ=sin-1〔sin(40°)/n
'=n×n/〔n ×sin(φ)+n ×cos(φ)〕1/2
【0127】
位相差フィルムは、二以上の層を有する多層フィルムであってもよい。例えば、位相差フィルムの片面又は両面に保護フィルムが積層されたものや、二以上の位相差フィルムが粘着剤又は接着剤を介して積層されたものが挙げられる。
【0128】
光学フィルム40が二以上の位相差フィルムが積層された多層フィルムである場合、本発明の光学フィルムを含む光学積層体の構成としては、図4に示したように、透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長位相差層50と透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長位相差層70とを、接着剤又は粘着剤60を介して積層した光学フィルム40を含む構成が挙げられる。また、図5に示したように、1/4波長位相差層50aとポジティブC層80とを、接着剤層又は粘着剤層を介して積層した光学フィルム40を含む構成も挙げられる。
【0129】
図4の1/4波長分の位相差を付与する1/4波長位相差層50、および透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長位相差層70は上記第一の形態の光学フィルムであっても第五の形態の光学フィルムであってもよい。図4の構成の場合、少なくとも片方が第五の形態であることがより好ましい。
【0130】
図5の構成の場合、1/4波長位相差層50aは上記第一の形態の光学フィルムであることが好ましく、さらに式(7)、式(8)を満たすことがより好ましい。
【0131】
〔偏光フィルム〕
偏光フィルムは、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過する機能を有するフィルムである。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素としてのヨウ素を吸着・配向させたヨウ素系偏光フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素としての二色性染料を吸着・配向させた染料系偏光フィルム、及びリオトロビック液晶状態の二色性染料をコーティングし、配向・固定化した塗布型偏光フィルム等が挙げられる。これらの偏光フィルムは、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を吸収するため吸収型偏光フィルムと呼ばれている。偏光フィルムは、吸収型偏光フィルムに限定されず、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を反射する反射型偏光フィルム、又はもう一方向の直線偏光を散乱する散乱型偏光フィルムでも構わないが、視認性に優れる点から吸収型偏光フィルムが好ましい。中でも、ポリビニルアルコール系樹脂で構成されるポリビニルアルコール系偏光フィルムがより好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性色素を吸着・配向させたポリビニルアルコール系偏光フィルムがさらに好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着・配向させたポリビニルアルコール系偏光フィルムが特に好ましい。
【0132】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等を含む。
【0133】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85~100mol%程度であり、98mol%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は通常、1000~10000程度であり、1500~5000程度が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
【0134】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは、例えば150μm以下であり、好ましくは100μm以下(例えば50μm以下)である。
【0135】
偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理(架橋処理)する工程;及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を含む方法によって製造できる。
【0136】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
【0137】
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤や水を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3~8倍程度である。
【0138】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、該フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0139】
ヨウ素による染色処理としては通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり0.01~1重量部程度であることができる。ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり0.5~20重量部程度であることができる。また、この水溶液の温度は、20~40℃程度であることができる。一方、二色性有機染料による染色処理としては通常、二色性有機染料を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。二色性有機染料を含有する水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり1×10-4~10重量部程度であることができる。この水溶液の温度は、20~80℃程度であることができる。
【0140】
二色性色素による染色後のホウ酸処理としては通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり2~15重量部程度であることができる。この水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり0.1~20重量部程度であることができる。この水溶液の温度は、50℃以上であることができ、例えば50~85℃である。
【0141】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、5~40℃程度である。水洗後に乾燥処理を施して、偏光フィルム30が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。この偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムなどとしての熱可塑性樹脂フィルムを硬化性接着剤組成物等を用いて貼合することにより、偏光板を得ることができる。
【0142】
また、偏光フィルムの製造方法の他の例として、例えば、特開2000-338329号公報や特開2012-159778号公報に記載の方法が挙げられる。
【0143】
偏光フィルムの厚みは、40μm以下とすることができ、好ましくは30μm以下(例えば20μm以下、さらには15μm以下、なおさらには10μm以下)である。特開2000-338329号公報や特開2012-159778号公報に記載の方法によれば、薄膜の偏光フィルム30をより容易に製造することができ、偏光フィルム30の厚みを、例えば20μm以下、さらには15μm以下、なおさらには10μm以下とすることがより容易になる。偏光フィルム30の厚みは、通常2μm以上である。偏光フィルムの厚みを小さくすることは、偏光板、ひいては画像表示装置の薄型化に有利である。
【0144】
偏光板の好ましい構成としては、偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤層を介して保護フィルムが積層された偏光板である。前記接着剤層が本発明の光選択吸収層1であってもよい。保護フィルムが偏光フィルムの一方の面にしか積層されない場合、視認側(パネルと逆側)に積層されることがより好ましい。視認側に積層された保護フィルムは、トリアセチルセルロース系樹脂又はシクロオレフィン系樹脂からなる保護フィルムであることが好ましい。保護フィルムは未延伸フィルムであってもよいし、任意の方向に延伸され位相差を有していてもよい。視認側に積層された保護フィルムの表面にはハードコート層やアンチグレア層などの表面処理層が設けられていてもよい。該表面処理層が、本発明における光選択吸収層であってもよい。
保護フィルムが偏光フィルムの両面に積層される場合、パネル側(視認側と反対側)の保護フィルムは、トリアセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂からなる保護フィルム又は位相差フィルムであることが好ましい。位相差フィルムは後述するゼロレタデーションフィルムであってもよい。
偏光板とパネルとの間には、さらにその他の層又はフィルムが積層されていてもよい。有機ELディスプレイ用の円偏光板として用いる場合は、1/4波長位相差層と1/2波長位相差層とを有する位相差層、後述する逆波長分散性の1/4波長層が積層されていることが好ましい。位相差層は薄膜化の観点から液晶系位相差フィルムであることが好ましい。
【0145】
<光選択吸収層の製造方法>
活性エネルギー線硬化性組成物を、上記樹脂フィルム(a)上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥させた後、上記塗膜を硬化させることで、光選択吸収層を形成することができ、本発明の光学フィルムを製造することができる。活性エネルギー線硬化性組成は、その成分によって、接着機能を有する場合がある。
【0146】
活性エネルギー線硬化性組成物を塗布して塗膜を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
【0147】
乾燥の方法としては特に限定されないが、一般的に乾燥温度30~80℃で、乾燥時間3~120秒で行うとよい。上記乾燥温度が30℃未満であると、表面処理フィルムの製造に長時間を要し、また、製造コストが高くなることがある。一方、上記乾燥温度が80℃を超えると、表面処理フィルムの製造コストが高くなる問題があり、かつ、開始剤、溶剤等が乾燥炉内等に付着し外観を悪化させる恐れがある。また、上記乾燥時間が3秒未満であると、基材フィルムと表面処理層との密着性に劣ったり、干渉縞が発生したりするこことがある。一方、上記乾燥時間が120秒を超えると、上記塗膜の乾燥に長時間を要し、製造コストが高くなることがある。
【0148】
活性エネルギー線照射強度は、硬化性組成物毎に決定されるが、光重合開始剤の活性化に有効な波長領域の光照射強度が0.1~1000mW/cm2となるようにすることが好ましい。光照射強度が小さすぎると、反応時間が長くなりすぎ、一方でその光照射強度が大きすぎると、ランプから輻射される熱及び硬化性組成物の重合時の発熱により、硬化層の黄変や偏光フィルムの劣化、又は保護フィルムの肌不良を生じる可能性がある。また、硬化性組成物への光照射時間も、硬化性組成物毎に制御されるが、光照射強度と光照射時間の積として表される積算光量が10~5000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が小さすぎると、光重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる硬化層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が大きすぎると、光照射時間が非常に長くなって生産性向上には不利になりやすい。
【0149】
(表示装置)
本発明の光学フィルムは、有機EL素子、液晶セル等の表示素子に積層させて、有機EL表示装置や液晶表示装置等の表示装置(FPD:フラットパネルディスプレイ)に用いる事ができる。
【実施例
【0150】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特に断りのない限り重量基準である。
【0151】
<光選択吸収性化合物の合成>
[合成例1]光選択吸収性化合物(1)の合成

ジムロート冷却管、温度計を設置した200mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、特許文献(特開2014-194508)を参考に合成した式(aa)で表される化合物10g、無水酢酸(和光純薬工業株式会社製)3.6g、シアノ酢酸2-エチルヘキシル(東京化成工業株式会社製)6.9g、およびアセトニトリル(和光純薬工業株式会社製)60gを仕込み、マグネチックスターラーで撹拌した。内温25℃にてDIPEA(東京化成工業株式会社製)4.5gを滴下漏斗から1時間かけて滴下し、滴下終了後に内温25℃にてさらに2時間保温した。反応終了後、減圧エバポレーターを用いてアセトニトリルを除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)に供して精製し、式(aa1)で表される光選択吸収性化合物を含む流出液を、減圧エバポレーターを用いて溶媒を除去し、黄色結晶を得た。該結晶を60℃減圧乾燥することにより、黄色粉末として式(aa1)で表される光選択吸収性化合物(1)を4.6g得た。収率は50%であった。
【0152】
H-NMR解析を行ったところ、以下のピークが観測されたことから、光選択吸収性化合物1が生成したことが確認された。
H-NMR(CDCl3)δ:0.87-0.94(m、6H)、1.32-1.67(m、8H)、1.59-1.66(m、2H)、2.09(quin、2H)、3.00(m、5H)、3.64(t、2H)、4.10(dd、2H)、5.52(d、2H)、7.87(d、2H)
【0153】
<グラム吸光係数ε測定>
得られた光選択吸収性化合物(1)のグラム吸光係数を測定するために、光選択吸収性化合物(1)を2-ブタノンに溶解させた。得られた溶液(濃度;0.006g・L-1)を1cmの石英セルに入れ、石英セルを分光光度計UV-2450(株式会社島津製作所製)にセットし、ダブルビーム法により1nmステップ300~800nmの波長範囲で吸光度を測定した。得られた吸光度の値と、溶液中の光吸収性化合物濃度、石英セルの光路長から、波長ごとのグラム吸光係数を下記式を用いて算出した。
ε(λ)=A(λ)/CL
〔式中、ε(λ)は波長λnmにおける化合物のグラム吸光係数L/(g・cm)を表し、A(λ)は波長λnmにおける吸光度を表し、Cは濃度g/Lを表し、Lは石英セルの光路長cmを表す。〕
光選択吸収性化合物(1)の吸収極大波長(λmax)を測定したところ、λmax=389nm(2-ブタノン中)であり、ε(405)の値は47L/(g・cm)であり、ε(440)の値は0.1L/(g・cm)以下であり、ε(405)/ε(440)の値は80以上であった。
【0154】
[合成例2]光選択吸収性化合物(2)の合成

ジムロート冷却管、温度計を設置した200mL-四ツ口フラスコ内に、窒素雰囲気において、特開2014-194508を参考に合成した式(aa)で表される化合物10g、無水酢酸(和光純薬工業株式会社製)3.6g、シアノ酢酸2-ブチルオクチル(東京化成工業株式会社製)10g、及びアセトニトリル(和光純薬工業株式会社製)60gを仕込み、マグネチックスターラーで撹拌した。内温25℃にてDIPEA(東京化成工業株式会社製)4.5gを、得られた混合物に1時間かけて滴下した後、内温25℃にてさらに2時間保温した。その後、減圧エバポレーターを用いてアセトニトリルを除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)に供して精製し、式(aa2)で表される化合物を含む流出液を、減圧エバポレーターを用いて溶媒を除去し、黄色結晶を得た。該結晶を60℃減圧乾燥することにより、黄色粉末として式(aa2)で表される化合物(光選択吸収化合物(2))を4.6g得た。収率は56%であった。
上記と同じ方法でグラム吸光度係数を求めると、式(aa2)で表される化合物のε(405)の値は45L/(g・cm)であり、ε(420)の値は2.1L/(g・cm)であった。
【0155】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製>
(調製例1)活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1の調製
各成分を以下の割合で混合して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1を調製した。
N-ヒドロキシルエチルアクリルアミド 80部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 12部
多官能ウレタン化アクリレート 8部
(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)
イルガキュア 500(BASF(株)から入手) 3部
合成例1で得た光選択吸収性化合物(1) 1部
【0156】
(調製例2)活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A2の調製
各成分を以下の割合で混合して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1を調製した。
N-ヒドロキシルエチルアクリルアミド 80部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 12部
多官能ウレタン化アクリレート 8部
(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)
イルガキュア 500(BASF(株)から入手) 3部
合成例2で得た光選択吸収性化合物(2) 1部
【0157】
(調製例3)活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを調製
各成分を以下の割合で混合して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bを調製した。
N-ヒドロキシルエチルアクリルアミド 80部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 12部
多官能ウレタン化アクリレート 8部
(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)
イルガキュア 500(BASF(株)から入手) 3部
【0158】
(実施例1)光学フィルムA1の作製
厚み23μmの環状ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルム〔商品名「ZEONOR」、日本ゼオン株式会社製;以下COP樹脂フィルムという場合がある。〕を2枚用意した。COP樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1をバーコーターを用いて硬化後の膜厚が約5.0μmとなるように塗工した。もう1枚のCOP樹脂フィルムの表面にもコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面との活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを塗工した面を貼合し、ベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Hバルブ」使用〕を用いて照度250mW/cm2、積算光量が250mJ/cm2(UVB)となるように紫外線を照射し、光学フィルムA1を得た。光学フィルムA1は、COP樹脂フィルム/活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1の硬化層/COP樹脂フィルムの層構成を有する。
【0159】
(実施例2)光学フィルムA2の作製
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、製造例2で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A2に代えた以外は、実施例1と同様にして光学フィルムA2を作製した。光学フィルムA2は、COP樹脂フィルム/活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A2の硬化層/COP樹脂フィルムの層構成を有する。
【0160】
[製造例1]偏光フィルムの作製
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%、厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレビニロン VF-PE♯3000」〕を、37℃の純水に浸漬した後、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液(ヨウ素/ヨウ化カリウム/水(重量比)=0.04/1.5/100)に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウムとホウ酸とを含む水溶液(ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)=12/3.6/100)に56.5℃で浸漬した。フィルムを10℃の純水で洗浄した後、85℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された厚み約12μmの偏光子を得た。延伸は、主に、ヨウ素染色及びホウ酸処理の工程で行い、トータルの延伸倍率は5.3倍であった。
【0161】
(実施例3)偏光板A1の作製
厚み23μmの環状ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルム〔商品名「ZEONOR」、日本ゼオン株式会社製;以下COP樹脂フィルムという場合がある。〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1をバーコーターを用いて硬化後の膜厚が約5.0μmとなるように塗工した。その塗工面に、製造例1で作製した偏光フィルムを貼合し、保護フィルム付き偏光フィルム(1)を得た。
次いで、厚み40μmのトリアセチルセルロース系樹脂からなる位相差フィルム〔商品名「KC4CW」、コニカミノルタ株式会社製;以下TACフィルムという場合がある。〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1を硬化後の膜厚が約5.0μmとなるようにバーコーターを用いて塗工した。その塗工面と、保護フィルム付の偏光フィルム(1)の偏光フィルム側とを貼合して積層体を得た。この積層体における保護フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Hバルブ」使用〕を用いて照度250mW/cm2、積算光量が250mJ/cm2(UVB)となるように紫外線を照射し、硬化性接着剤組成物を硬化させ、偏光板を作製した。これを偏光板A1とする。偏光板A1は、COP樹脂フィルム/活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1の硬化層/偏光フィルム/活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A1の硬化層/TACフィルムの構成を有する。
【0162】
(実施例4)偏光板A2の作製
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A2に代えた以外は、実施例3と同様にして偏光板A2を作製した。偏光板A2はCOP樹脂フィルム/活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A2の硬化層/偏光フィルム/活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A2の硬化層/TACフィルムの構成を有する。
【0163】
(比較例1)偏光板Bの作製
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bとしたこと以外、偏光板Aと同様にして偏光板Bを作製した。偏光板Bは、COP樹脂フィルム/活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bの硬化層/偏光フィルム/活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Bの硬化層/TACフィルムの構成を有する。
【0164】
(合成例3)(メタ)アクリル系樹脂の合成
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、溶媒として酢酸エチル81.8部、単量体としてアクリル酸ブチル70.4部、アクリル酸メチル20.0部、およびアクリル酸2-フェノキシエチル8.0部、としてアクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部およびアクリル酸0.6部と混合して得られた溶液を仕込んだ。反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、内温を60℃にした。その後、アゾビスイソブチロニトリル0.12部を酢酸エチル10部に溶解させた溶液を添加した。1時間同温度で保持した後、内温を54~56℃に保ちながら、添加速度17.3部/Hrで酢酸エチルを、重合体の濃度がほぼ35%となるように反応容器内へ連続的に加えた。酢酸エチルの添加開始から12時間経過するまで内温を54~56℃に保持した後、酢酸エチルを加えて重合体の濃度が20%となるように調整して、(メタ)アクリル系樹脂の酢酸エチル溶液を得た。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは139万、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnは5.32であった。
【0165】
なお、重量平均分子量および数平均分子量の測定は、GPC装置にカラムとして「TSK gel XL(東ソー(株)製)」を4本、および「Shodex GPC KF-802(昭和電工(株)製)」を1本、計5本を直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて、試料濃度5mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で行い、標準ポリスチレン換算により算出した。
【0166】
(合成例4)(メタ)アクリル系樹脂粘着剤組成物Aの合成
合成例3で得られた(メタ)アクリル系樹脂の酢酸エチル溶液(樹脂濃度:20%)に、該溶液の固形分100部に対して、架橋剤(コロネートL、固形分75%:東ソー製)0.4部及びシラン化合物(信越化学工業製:KBM-403)0.4部を混合し、さらに固形分濃度が14%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物を得た。なお、上記架橋剤の配合量は、有効成分としての重量部数である。
【0167】
なお、合成例4で使用した架橋剤及びシラン化合物の詳細は以下のとおりである。
架橋剤:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、東ソー株式会社から入手した商品名「コロネートL」。
シラン化合物:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社から入手した商品名「KBM403」。
【0168】
<粘着剤層Aの作製>
粘着剤組成物Aを、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム〔リンテック(株)から入手した商品名「PLR-382190」〕の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層Aを作製した。
【0169】
(合成例5)(メタ)アクリル系樹脂粘着剤組成物B1の合成
合成例3で得られた(メタ)アクリル系樹脂の酢酸エチル溶液(樹脂濃度:20%)に、該溶液の固形分100部に対して、架橋剤(コロネートL、固形分75%:東ソー製)0.4部、シラン化合物(信越化学工業製:KBM-403)0.4部及び合成例1で得られた光選択吸収性化合物(1)2部を混合し、さらに固形分濃度が14%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物B1を得た。なお、上記架橋剤の配合量は、有効成分としての重量部数である。
【0170】
(合成例6)(メタ)アクリル系樹脂粘着剤組成物B2の合成
光選択吸収性化合物(1)2部に代えて、光選択吸収性化合物(2)1部を用いた以外は、合成例5と同様にして粘着剤組成物B2を得た。
【0171】
<粘着剤層B1の作製>
粘着剤組成物B1を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム〔リンテック(株)から入手した商品名「PLR-382190」〕の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層B1を作製した。
【0172】
粘着剤組成物B1を、粘着剤組成物B2に代えた以外は同様にして粘着剤層B2を作製した。
【0173】
<粘着剤層付偏光板の作製>
(実施例5)粘着剤層付き偏光板A1の作製
偏光板A1のトリアセチルセルロース系樹脂フィルムの表面に、コロナ処理を施し、上記で製造した粘着剤層Aをラミネーターにより貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生し、粘着剤層付き偏光板A1を得た。
【0174】
(実施例6)粘着剤層付き偏光板A2の作製
偏光板A1を偏光板A2に代えた以外は、実施例5と同様にして粘着剤層付偏光板A2を得た。
【0175】
(比較例2)粘着剤層付き偏光板B1の作製
偏光板Bのトリアセチルセルロース系樹脂フィルムの表面に、コロナ処理を施し、上記で製造した粘着剤層B1をラミネーターにより貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生し、粘着剤層付き偏光板B1を得た。
【0176】
(比較例3)粘着剤層付き偏光板B2の作製
粘着剤層B1を粘着剤層B2に代えた以外、比較例2と同様にして粘着剤層付き偏光板B2を得た。
【0177】
<光学フィルムの吸光度測定>
光学フィルムA1を30mm×30mmの大きさに裁断し、これをサンプルとした。作製したサンプルの波長300~800nm範囲の吸光度を、分光光度計(UV-2450:株式会社島津製作所製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
測定後のサンプルを、温度95℃のオーブンに48時間保管し、耐熱評価試験を実施した。保管後のサンプルの吸光度を測定し、光学フィルムA1の吸光度保持率を下記式に基づき吸光度保持率を求めた。結果を表1に示す。吸光度保持率が高いほど、光選択吸収機能の劣化がなく良好な耐熱性を示す。なお、COP樹脂フィルム単体の吸光度はほぼ0であった。
吸光度保持率=(耐久試験後のA(405)/耐久試験前のA(405))×100
【0178】
光学フィルムA1を光学フィルムA2に代えた以外、上記と同様にして吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
<粘着剤付き偏光板の吸光度測定>
粘着剤層付き偏光板A1を30mm×30mmの大きさに裁断し、粘着剤層と無アルカリガラス〔コーニング社製の商品名“EAGLE XG”〕とを貼合し、これをサンプルとした。作成したサンプルの波長300~800nm範囲の吸光度を、分光光度計(UV-2450:株式会社島津製作所製)を用いて測定した。A(405)は0.6、A(440)は0.05、A(405)/A(440)は12.7であった。
測定後のサンプルを、温度95℃のオーブンに48時間保管し、耐熱評価試験を実施した。保管後のサンプルの吸光度を測定し、粘着剤層付き偏光板A1の吸光度保持率を上記と同様にして求めた。結果は、94%であった。
なお、TACフィルム単体、COP樹脂フィルム単体及び無アルカリガラスのそれぞれの波長405nm、波長440nmにおける吸光度はほぼ0であった。
【0181】
粘着剤層付き偏光板A1を粘着剤層付き偏光板A2に代えた以外、上記と同様の方法にて、それぞれ吸光度を測定した。結果は、A(405)は0.5、A(440)は0.05、A(405)/A(440)は9.5、吸光度保持率は98%であった。
【0182】
<光選択吸収化合物の移行性評価>
以下の方法により、フィルムへの光選択吸収化合物の移行性を評価した。
装置名:フーリエ変換赤外分光光度計Cary 660 FTIR(Agilent Technologies製)
手法:検出器としてMCT(テルル化カドミウム水銀)を用いたATR法(結晶:ダイヤモンド)
【0183】
実施例3で作製した偏光板A1からトリアセチルセルロースを剥離し、剥離後のトリアセチルセルロース面をATR法でFTIR測定を行った。光選択吸収性化合物由来(1)の1550~1560cm-1のピークを確認した。
次いで、偏光板A1を温度95℃のオーブンに48時間保管した後、同様の方法を用いてFTIR測定を行った結果、トリアセチルセルロース面に光選択吸収性化合物(1)由来の1550~1560cm-1のピークの増大は確認できなかった。
加熱後にトリアセチルセルロース面に表層に光選択性吸収化合物(1)由来のピークの増大が確認できないことから、光選択吸収性化合物(1)の移行がないと判断した。結果を表2に示す。
【0184】
比較例2で作製した偏光板B1から粘着剤層を物理的に除去し、除去後のトリアセチルセルロース面を上記方法にて確認したところ、光選択吸収性化合物(1)由来の1550~1560cm-1のピークを確認した。
次いで、偏光板B1を温度95℃のオーブンに48時間保管した後、同様の方法を用いてFTIR測定を行った結果、トリアセチルセルロース面に光選択吸収性化合物(1)由来の1550~1560cm-1のピークの増大が確認できた。
加熱後にトリアセチルセルロース表層に光選択性吸収化合物(1)由来のピークの増大が確認できたことから、光選択吸収性化合物(1)の移行があったと判断した。結果を表2に示す。
【0185】
上記と同様にして、実施例3で作製した偏光板A1、比較例3で作製した偏光板B2における光選択吸収化合物の移行性評価を行った。結果を表2に示す。
【0186】
【表2】
【0187】
本発明の光学フィルムは、波長400nm付近(波長405nm)の光吸収能が良好である。そのため、本発明の光学フィルムを位相差フィルムや有機EL素子に積層すると、本発明の光学フィルムが波長405nm付近の短波長の可視光の光を吸収し、位相差フィルムや有機EL素子に対する短波長の可視光を遮ることができ、短波長の可視光から位相差フィルムや有機EL素子の劣化を抑制することができる。
本発明の光学フィルムは耐候性試験後であっても波長405nm付近の光吸収機能が良好(吸光度保持率が良好)であり、良好な耐候性(耐久性)を有する。そのため、本発明の光学フィルムは、短波長の可視光による位相差フィルム又は有機EL素子の劣化を抑制する機能を維持することができる。
本発明の光学フィルムは、波長400nm付近(405nm)の光を選択的に吸収する機能が高いだけでなく、耐長400nm付近(405nm)の光を選択的に吸収する化合物がその他の層へ移行せず、位相差フィルム等の劣化を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の光学フィルムは、良好な表示特性を有し、かつ短波長の可視光による光学フィルムの劣化を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0189】
10 光学フィルム
10A、10B、10C、10D、10E 光学積層体
1 光選択吸収層
2 樹脂フィルム(a)
3 偏光フィルム
4、6、60 接着剤層
5 保護フィルム
30 粘着剤層
40 光学フィルム
50、50a 1/4波長位相差層
70 1/2波長位相差層
80 ポジティブC層
100 偏光板
110 発光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6