(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】多流路平板ポンプ及び細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
F04C 5/00 20060101AFI20230731BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
F04C5/00 341A
C12M3/00
F04C5/00 341K
F04C5/00 341J
F04C5/00 341E
(21)【出願番号】P 2019117424
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-04-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果 最適展開支援プログラム(課題番号:AS2815006U)産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503366841
【氏名又は名称】株式会社アイカムス・ラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小此木 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】安田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】安西 洋平
(72)【発明者】
【氏名】上山 忠孝
(72)【発明者】
【氏名】片野 圭二
(72)【発明者】
【氏名】足達 俊吾
(72)【発明者】
【氏名】茂木 克雄
(72)【発明者】
【氏名】夏目 徹
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-059489(JP,U)
【文献】特開2016-163620(JP,A)
【文献】特開平11-257249(JP,A)
【文献】特開2003-206870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0287613(US,A1)
【文献】国際公開第99/011309(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/174724(WO,A1)
【文献】特開2001-193670(JP,A)
【文献】特開2018-029488(JP,A)
【文献】特開2015-059563(JP,A)
【文献】登録実用新案第3196673(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 5/00
F04B 43/12-43/14
F04B 45/08-45/10
C12M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流路が並列配置された弾性平板と、
前記弾性平板の一面を押えて基準面を形成する支持カバー部と、
前記弾性平板の他面側から前記基準面側に押圧して各流路を弾性変形させた閉塞と各流路の開放とを交互に行い、この閉塞状態を各流路の出口側に向けて移動させることにより、各流路に流れる流体を前記出口側に吐出させる押出機構と、
前記押出機構による前記出口側への押圧速度を制御して各流路の流量調整を行う制御部と、
を備え、
前記弾性平板は、少なくとも前記押出機構による閉塞状態が形成される押出領域において、各流路の両側に各流路に沿った空気孔を形成
するとともに、少なくとも前記押出機構による閉塞領域が形成される押出領域において、各流路の前記押出機構側に各流路に沿って前記空気孔を除いて各流路をそれぞれ覆う突起線状部が形成されていることを特徴とする多流路平板ポンプ。
【請求項2】
前記流路の横断面形状は、半円形であることを特徴とする請求項
1に記載の多流路平板ポンプ。
【請求項3】
前記空気孔は、横断面形状の大小によって前記流路の弾性変形量を調整することを特徴とする請求項
1または2に記載の多流路平板ポンプ。
【請求項4】
前記弾性平板は、流体を吐出する複数の流路からなる吐出流路群と、前記流体を吸引する複数の流路からなる吸引流路群とが並列配置され、
前記押出機構は、前記吐出流路群と前記吸引流路群とに対する閉塞移動方向を異ならせることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一つに記載の多流路平板ポンプ。
【請求項5】
前記弾性平板は、
前記流路及び前記空気孔が溝状に形成された加工面を有する第1弾性平板と、
一面が前記加工面に面する平面の接合面であり該接合面の反対面に各流路に沿った突起線状部が形成された第2弾性平板と、
を有し、前記加工面と前記接合面とが向かい合った状態で、プラズマボンディングによって結合されていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一つに記載の多流路平板ポンプ。
【請求項6】
前記弾性平板は、
前記流路及び前記空気孔が溝状に形成された加工面を有する第1弾性平板と、
一面が前記加工面に面する平面の接合面であり該接合面の反対面に各流路に沿った突起線状部が形成された第2弾性平板と、
を有し、前記加工面と前記接合面とが向かい合った状態で、プラズマボンディングによって結合された上部弾性平板と下部弾性平板とを備え、
前記上部弾性平板及び前記下部弾性平板の前記突起線状部が形成されない面を、板状剛性部材を介して対向させ、前記上部弾性平板と
前記板状剛性部材と前記下部弾性平板とをプラズマボンディングによって結合されることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一つに記載の多流路平板ポンプ。
【請求項7】
前記弾性平板は、ガス透過性の弾性部材であることを特徴とする請求項1~
6のいずれか一つに記載の多流路平板ポンプ。
【請求項8】
前記弾性平板は、PDMS又はシリコンラバーであることを特徴とする請求項1~
7のいずれか一つに記載の多流路平板ポンプ。
【請求項9】
前記押出機構は、各流路の直交方向に向けて、前記閉塞位置をずらすことを特徴とする請求項1~
8のいずれか一つに記載の多流路平板ポンプ。
【請求項10】
前記押出機構は、
ペリスタルティックポンプであることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一つに記載の多流路平板ポンプ。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一つに記載の多流路平板ポンプを用い、複数の培養領域が形成された培養容器の各培養領域に前記流路から培養液を供給し、及び/又は、各培養領域から培養液を吸引し、前記培養領域内の細胞を培養することを特徴とする細胞培養装置。
【請求項12】
前記弾性平板は、各培養領域に嵌合するアダプタの上部周縁を囲むように延び、前記弾性平板の各流路は、前記アダプタの各流路に結合され、前記弾性平板と前記アダプタとが一体形成されることを特徴とする請求項
11に記載の細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養液などの流体を複数の供給先に対して供給を行うポンプに対し、各供給先に対する流路接続を不要とする多流路平板ポンプ及び細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における幹細胞を利用した再生医療としては、例えば、肝硬変や血液疾患、心筋梗塞の治療、血管の構築、骨や角膜の再生、移植用皮膚の確保、などが考えられている。再生医療では、培養皿内で幹細胞などから目的とする細胞や臓器を増殖させ、人に移植するようにしている。最近では、骨髄由来の幹細胞から血管新生を行い、狭心症、心筋梗塞などの治療に成功している。
【0003】
ここで、従来の細胞培養装置は、培養皿内の培養液を定期的に入れ替えて培養細胞の増殖を行っていた。この細胞培養装置は、培養液の入れ替えに伴って細胞に大きな刺激が与えられ、また、細胞の代謝活動に伴って培養液中に老廃物が排出されることから、細胞にストレスや傷害を与えてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、培養液の入れ替えを行わず、培養液の送液及び排液を行って細胞培養を行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の培養皿を有した培養容器の各培養皿に培養液を供給する場合、供給ポンプと各培養皿との間を可撓性チューブなどによって接続する必要がある。培養皿の数が多い培養容器では、1つの培養皿に対して1つの可撓性チューブを接続する必要があることが装置接続に時間がかかるという課題があった。
【0007】
ここで、可撓性チューブの接続を容易にするため、供給ポンプが1つの可撓性チューブに対して動作させ、この1つの可撓性チューブを分岐して培養液を各培養皿に分岐すると、分岐された可撓性チューブに対する圧が均一にならない場合が生じ、場合によっては逆流してしまう。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、培養液などの流体を複数の供給先に対して供給を行うポンプに対し、各供給先に対する流路接続を不要とする多流路平板ポンプ及び細胞培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる多流路平板ポンプは、複数の流路が並列配置された弾性平板と、前記弾性平板の一面を押えて基準面を形成する支持カバー部と、前記弾性平板の他面側から前記基準面側に押圧して各流路を弾性変形させた閉塞と各流路の開放とを交互に行い、この閉塞状態を各流路の出口側に向けて移動させることにより、各流路に流れる流体を前記出口側に吐出させる押出機構と、前記押出機構による前記出口側への押圧速度を制御して各流路の流量調整を行う制御部と、を備え、前記弾性平板は、少なくとも前記押出機構による閉塞状態が形成される押出領域において、各流路の両側に各流路に沿った空気孔を形成していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記弾性平板は、少なくとも前記押出機構による閉塞領域が形成される押出領域において、各流路の前記押圧機構側に各流路に沿った突起線状部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記流路の横断面形状は、半円形であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記空気孔は、横断面形状の大小によって前記流路の弾性変形量を調整することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記弾性平板は、流体を吐出する複数の流路からなる吐出流路群と、前記流体を吸引する複数の流路からなる吸引流路群とが並列配置され、前記押出機構は、前記吐出流路群と前記吸引流路群とに対する閉塞移動方向を異ならせることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記弾性平板は、前記流路及び前記空気孔が溝状に形成された加工面を有する第1弾性平板と、一面が前記加工面に面する平面の接合面であり該接合面の反対面に各流路に沿った突起線状部が形成された第2弾性平板と、を有し、前記加工面と前記接合面とが向かい合った状態で、プラズマボンディングによって結合されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記弾性平板は、前記流路及び前記空気孔が溝状に形成された加工面を有する第1弾性平板と、一面が前記加工面に面する平面の接合面であり該接合面の反対面に各流路に沿った突起線状部が形成された第2弾性平板と、を有し、前記加工面と前記接合面とが向かい合った状態で、プラズマボンディングによって結合された上部弾性平板と下部弾性平板とを備え、前記上部弾性平板及び前記下部弾性平板の前記突起線状部が形成されない面を、板状剛性部材を介して対向させ、前記上部弾性平板と前記板状部材と前記下部弾性平板とをプラズマボンディングによって結合されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記弾性平板は、ガス透過性の弾性部材であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記弾性平板は、PDMS又はシリコンラバーであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記押出機構は、各流路の直交方向に向けて、前記閉塞位置をずらすことを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる多流路平板ポンプは、上記の発明において、前記押出機構は、ペリスタティックポンプであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる細胞培養装置は、上記の発明のいずれか一つに記載の多流路平板ポンプを用い、複数の培養領域が形成された培養容器の各培養領域に前記流路から培養液を供給し、及び/又は、各培養領域から培養液を吸引し、前記培養領域内の細胞を培養することを特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかる細胞培養装置は、上記の発明において、前記弾性平板は、各培養領域に嵌合するアダプタの上部周縁を囲むように延び、前記弾性平板の各流路は、前記アダプタの各流路に結合され、前記弾性平板と前記アダプタとが一体形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、培養液などの流体を複数の供給先に対して供給を行うポンプに対し、各供給先に対する流路接続が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である多流路平板ポンプの平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した多流路平板ポンプのA-A線断面図である。
【
図3】
図3は、多流路平板ポンプに装着される弾性平板の斜視図である。
【
図5】
図5は、押圧機構によるポンプ動作を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、弾性平板の変形例1の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、弾性平板の変形例2の構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図1及び
図2に示した多流路平板ポンプを用いた細胞培養装置の構成を示す平面図である。
【
図9】
図9は、細胞培養装置のC-C線断面図である。
【
図10】
図10は、多流路平板ポンプの変形例3である押出機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
<多流路平板ポンプ>
図1は、本発明の実施の形態である多流路平板ポンプ1の平面図である。
図2は、
図1に示した多流路平板ポンプ1のA-A線断面図である。また、
図3は、多流路平板ポンプ1に装着される弾性平板20の斜視図である。さらに、
図4は、弾性平板20のB-B線断面図である。
【0026】
図1~
図4に示すように、多流路平板ポンプ1は、ローラ式のペリスタティックポンプである。多流路平板ポンプ1は、基台2の溝状凹部2aに押出機構10が配置され、押出機構10の上部に押出機構10を跨ぐように弾性平板20が載置され、押出機構10の上部から支持カバー部30が配置される。支持カバー部30は、弾性平板20を押出機構10に対して押圧した状態で挟み込む。このため、弾性平板20は、押出機構10の上部において、弧状に変形して保持される。また、基台2の平坦部2b上には、弾性平板20を位置決めする位置決め突起5を有し、位置決め突起5が弾性平板20に設けられた位置決め孔5aに嵌め込まれることによって弾性平板20が基台2上に位置決めされる。
【0027】
押出機構10は、複数のローラ12が回転軸に対して円条に均等配置される。
図2では、8つのローラ12が円状に配置されている。複数のローラ12は、ローラ支持部11によって、ローラ12を回転自在に支持する。押出機構10は、ローラ支持部11の回転に伴って湾曲した弾性平板20を押圧して各流路21を弾性変形させた閉塞と各流路21の開放とを交互に行い、この閉塞状態を各流路21の出口側(図上左側)に向けて移動させることにより、各流路21に流れる流体を前記出口側に吐出させる。すなわち、ローラ12が弾性平板20を押圧し、各流路21を回転方向に扱きつつ、移動することによって流体を吐出させる。
【0028】
なお、押出機構10の回転駆動は、駆動モータ3によって行われる。駆動モータ3は、制御ユニット4によって押出機構10の回転速度が制御される。すなわち、制御部としての制御ユニット4は、駆動モータ3を介して流体の吐出流量を制御する。
【0029】
弾性平板20は、押出機構10に直交し内部に、両端部が開放した複数の流路21が形成されている。各流路21は、ピッチPで並列配置されている。
図3に示すように、弾性平板20は、平面視がHの字型の平板であり、くびれた部分が押出機構10の上部に湾曲して配置される。弾性平板20は、例えば、PDMS(Polydimethylsiloxane)を含むシリコンラバーなどの弾性部材で形成される。なお、弾性平板20のゴム弾性は、例えば硬度30°程度である。また、弾性平板20は、ガス透過性の弾性部材であり、流体内の気泡除去を行うことができる。
【0030】
図4に示すように、弾性平板20内に形成される流路21の断面形状は半円形であり、弾性変形に伴う流路21の閉塞状態が確実になるようにしている。弾性平板20は、流路21の両側に各流路21に沿った空気孔22,23が形成されている。空気孔22,23の断面形状は矩形であり、押圧方向に対して薄く、かつ、押圧方向に直交する方向の幅を広くしている。なお、並列配置された流路21のうちの両側の流路21の外側の空気孔23は、流路21間に配置される空気孔22の幅よりも小さく、例えば空気孔22の幅の半分の幅としている。なお、空気孔22,23の両端部は、平坦部2b上において大気に開放する開放孔22a,23aが形成されている。
【0031】
また、弾性平板20は、押出機構10によって流路21の閉塞状態が形成される湾曲部分において、押出機構10側に各流路21に沿った突起線状部24が形成される。
【0032】
図5に示すように、押出機構10のローラ12が弾性平板20の突起線状部24を押圧すると、突起線状部24が流路21側に押し込まれ、流路21を閉塞状態にする。この際、空気孔22,23は、突起線状部24の流路21側への押し込みに伴い、潰れる。すなわち、空気孔22,23は、突起線状部24が流路21側に押し込みまれ易いようにして、流路21の閉塞状態を確実にする。この流路21の閉塞状態が確実に行われることによって、流路21内の流体の戻りがなくなり、流体の流量制御を精度よく行うことができる。なお、空気孔22,23の断面形状の大小によって流路21の弾性変形量を調整することができる。また、支持カバー部30は、弾性平板の一面(上面)を抑えて、押出機構10の押圧に対する基準面を形成する。なお、流体は、例えば薬液であり、薬液の流量は、例えばμlレベルの微小流量である。また、弾性平板20の突起線状部24は、他の領域の部材よりも硬度を高め、潰れないように形成してもよい。
【0033】
本実施の形態では、押出機構10のローラ12が介在するポンプ部の複数の流路21と、平坦部2b上の複数の流路21とが一体形成された弾性平板20を用いているので、流体の複数の供給先に対する複数の流路接続が不要となる。
【0034】
<変形例1>
図6は、弾性平板20の変形例1の構成を示す断面図である。
図6に示すように、変形例1の弾性平板20は、第1弾性平板41と第2弾性平板42とをそれぞれ別個に簡単な金型成形によって製造し、その後、第1弾性平板41と第2弾性平板42とをプラズマボンディングによって結合し、
図4に示した弾性平板20を生成する。なお、上記の実施の形態である一体型の弾性平板20は、射出成形によって製造するようにしている。
【0035】
第1弾性平板41は、流路21及び空気孔22,23が溝状に形成された加工面41aを有する。一方、第2弾性平板42は、一面が加工面41aに面する平面である接合面42aが形成され、接合面42aの反対面に各流路21に沿った突起線状部24が形成される。その後、第1弾性平板41の加工面41aと第2弾性平板42の接合面42aとが、各流路21と各突起線状部24とが対向するように、プラズマボンディングによって結合される。
【0036】
本変形例1では、弾性平板20を金型成形によって製造しており、射出成形に比して精度の高い流路21や空気孔22,23、突起線状部24を形成することができる。
【0037】
<変形例2>
図7は、弾性平板40の変形例2の構成を示す断面図である。
図7に示すように、2つの弾性平板20(上部弾性平板及び下部弾性平板)をミラー配置し、各弾性平板20の突起線状部24が形成されない面41bを向い合せ、この間に板状剛性部材43を配置し、2つの弾性平板20と板状剛性部材43とをプラズマボンディングによって結合したものである。
【0038】
これにより、流路21が多段構成され、流路21が密集でき、流路21の数を密度高く形成することができる。なお、板状剛性部材43は、弾性平板20よりも弾性変形が少ない部材であり、下部(図面下側)からのローラ12の押圧に対して変形しにくい基準面を形成するとともに、この基準面全体を上部側に押圧し、支持カバー部30によって上部の突起線状部24を流路21側に押し込んで、上部側の流路21を閉塞状態にする。
【0039】
なお、上記の実施の形態では、ローラ式のペリスタティックポンプを一例として示したが、フィンガー式のペリスタティックポンプであってもよい。また、流路接続に関しては、他の容積型ポンプであってもよい。
【0040】
<細胞培養装置>
図8は、
図1及び
図2に示した多流路平板ポンプ1を用いた細胞培養装置100の構成を示す平面図である。また、
図9は、細胞培養装置100のC-C線断面図である。細胞培養装置100は、基板101上に薬液供給タンク102、廃液回収タンク103、多流路平板ポンプ1に対応する多流路平板ポンプ1a,1b、培養容器50、駆動モータ3、制御ユニット4が配置される。なお、駆動モータ3は、多流路平板ポンプ1a,1bを共通して駆動するが、多流路平板ポンプ1aの押出機構の回転と多流路平板ポンプ1bの押出機構の回転とは逆になる。
【0041】
培養容器50には、4つの培養皿51~54が形成されている。培養皿51~54には、培養皿51~54内の培養液を吐出及び吸引するアダプタ61~64が嵌め込まれる。多流路平板ポンプ1a,1bの弾性平板20は一体形成される。多流路平板ポンプ1a,1bの一体形成された弾性平板20は、培養容器50側上面まで延在し、アダプタ61~64の上面が結合されている。
【0042】
そして、薬液供給タンク102から供給される多流路平板ポンプ1aの4つの流路21aは、それぞれアダプタ61~64に連通し、薬液供給タンク102内の薬液が培養皿51~54に供給される。また、培養皿51~54内の薬液は、アダプタ61~64から4つの流路21bを介して廃液回収タンク103に吐出される。
【0043】
図9に示すように、アダプタ61,62は、それぞれ流路21aを介して培養皿内において薬液が満たされる密閉空間E内に薬液を供給するとともに、それぞれ流路21bを介して培養皿内における薬液を吸引して廃液回収タンク103に送出する。密閉空間E内の培養細胞Sには、培養細胞Sの増殖あるいは維持に必要な薬液が、かん流する。
【0044】
本細胞培養装置100では、流路21a,21bがアダプタ61~64まで連通する弾性平板を配置するのみで、多流路平板ポンプ1a,1bとの間の流路接続のみでなく、培養皿51~54に対する流路接続も不要となり、組立が容易になる。なお、各流路21a,21bは、分岐や合流する箇所がないため、逆流のない確実な送液を行うことができる。また、本細胞培養装置100では、多流路平板ポンプ1bを用いて薬液の回収を行っているが、多流路平板ポンプ1bを設けず、流路21bを廃液回収タンク103側に直接接続するようにしてもよい。また、多流路平板ポンプ1aと薬液供給タンク102との間及び多流路平板ポンプ1bと廃液回収タンク103との間は、コネクタ接続するようにしてもよい。同様にアダプタ61~64と各流路21a,21bとの接続もコネクタ接続するようにしてもよい。
【0045】
なお、上述した培養容器50は、培養皿51~54に限らず、多数のウェルを有したマイクロプレートにも適用でき、液体も薬液に限らず、試薬等であってもよい。
【0046】
<変形例3>
図10は、多流路平板ポンプ1の変形例3である押出機構の構成を示す図である。本変形例3では、押出機構10のローラ12が軸方向に沿い、かつ、押出機構10の回転方向に沿って、弾性平板20を押圧する半径が大きい押圧領域が互い違いに配置されたローラ112が形成されている。この押圧領域の軸方向の幅は、流路21のピッチPである。なお、ローラ112は、ローラ支持部111によって支持されている。
【0047】
本変形例3では、隣接する流路21の軸方向に対して、ローラ112が同時に押圧することがないため、流路21内で押し出される流体の脈動発生を防止することができる。
【0048】
なお、上記の実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、上述した実施の形態または変形例の各構成要素は適宜組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1,1a,1b 多流路平板ポンプ
2 基台
2a 溝状凹部
2b 平坦部
3 駆動モータ
4 制御ユニット
5 位置決め突起
5a 位置決め孔
10 押出機構
11,111 ローラ支持部
12,112 ローラ
20,40 弾性平板
21,21a,21b 流路
22,23 空気孔
22a,23a 開放孔
24 突起線状部
30 支持カバー部
41 第1弾性平板
41a 加工面
41b 面
42 第2弾性平板
42a 接合面
43 板状剛性部材
50 培養容器
51~54 培養皿
61~64 アダプタ
101 基板
100 細胞培養装置
102 薬液供給タンク
103 廃液回収タンク
E 密閉空間
P ピッチ
S 培養細胞