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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230731BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230731BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230731BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20230731BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20230731BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/31 C
H01L21/68 N
C23C16/505
C23C16/56
H05H1/46 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019127023
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2020013995
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】16/040,755
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】堅固山 裕子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 嵩志
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-227816(JP,A)
【文献】特表2013-504873(JP,A)
【文献】特開2003-297805(JP,A)
【文献】特開2007-214176(JP,A)
【文献】特開2004-014868(JP,A)
【文献】特開2001-237215(JP,A)
【文献】特開2004-228488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/683
C23C 16/505
C23C 16/56
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サセプタの上に設けられた基板にプラズマ処理を施すことと、
前記サセプタに対向するRF電極に予め定められた除電時間だけ電力を印加してプラズマを生じさせることで、前記基板の電荷量を減少させることと、
サセプタピンを前記サセプタの上面から突出させて前記サセプタピンで前記基板を持ち上げつつ、前記RF電極の自己バイアス電圧を測定することと、
制御部により、前記自己バイアス電圧が正の値であるときは前記除電時間を短くし、前記自己バイアス電圧が負の値であるときは前記除電時間を長くすることと、を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記除電時間は、
前記RF電極に電力を印加してプラズマを生じさせる第1時間と、
前記第1時間の経過後に予め定められた第1レートで前記RF電極のパワーを低下させる第2時間と、
前記第2時間の経過後に予め定められた第2レートで前記RF電極のパワーを0まで低下させる第3時間を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記制御部は、前記自己バイアス電圧が正の値であるときは前記第2時間を短くし、前記自己バイアス電圧が負の値であるときは前記第2時間を長くすることを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2時間は前記第3時間より長いことを特徴とする請求項2又は3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記制御部は、前記基板を処理するためのレシピに応じて前記除電時間を変更することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記制御部は、前記プラズマ処理のプラズマパワーが大きいほど前記除電時間を長くすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
サセプタの上に設けられた第1基板にプラズマ処理を施すことと、
前記サセプタに対向するRF電極に予め定められた除電時間だけ電力を印加して前記第1基板の電荷量を減少させることと、
サセプタピンを前記サセプタの上面から突出させて、前記サセプタピンで前記第1基板を持ち上げたときの前記RF電極の自己バイアス電圧を測定することと、を前記除電時間を変更して複数回行い、
前記サセプタの上に設けられた第2基板に前記第1基板に対するプラズマ処理と同じプラズマ処理を施すことと、
複数回の前記自己バイアス電圧の測定で得られた前記自己バイアス電圧のうち絶対値が最小の自己バイアス電圧を与える前記除電時間だけ、前記RF電極に電力を印加して前記第2基板の電荷量を減少させることと、を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
前記第1基板はダミー基板であり、前記第2基板は製品基板であることを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記除電時間は、
前記RF電極に電力を印加してプラズマを生じさせる第1時間と、
前記第1時間の経過後に予め定められた第1レートで前記RF電極のパワーを低下させる第2時間と、
前記第2時間の経過後に予め定められた第2レートで前記RF電極のパワーを0まで低下させる第3時間を含むことを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第2時間は前記第3時間より長いことを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス成膜後、特に高パワー低温プロセスにおいては、Si基板が陰極であるサセプタに張り付くことがある。高周波(RF)電力によってプラズマを生じさせて成膜すると、Si基板に電荷がチャージされ、サセプタとSi基板が静電的に引き合い両者が張り付くと考えられている。
【0003】
基板がサセプタに張り付いている場合、サセプタピンを基板の裏面に接触させて基板を持ち上げようとすると、基板がサセプタから無理やり剥がされることとなり基板に大きな力がかかる。基板に及ぶ大きな力は、基板ズレによる搬送エラーを発生させたり、サセプタピン又は基板にダメージを及ぼしたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-44472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板がサセプタへ張り付くことを抑制するためには、基板の電荷量に応じて適切なプラズマ後処理を行い、基板の電荷量を低下させる必要がある。つまり、基板の電荷量に応じた除電が必要である。基板の電荷量はプラズマ処理の内容によって変化する。例えば、成膜時のプラズマ照射時間又はパワーによって基板の電荷量が変化する。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、基板の電荷量を低下させて基板がサセプタに張り付くことを抑制できる基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明に係る基板処理方法は、サセプタの上に設けられた基板にプラズマ処理を施すことと、該サセプタに対向するRF電極に予め定められた除電時間だけ電力を印加してプラズマを生じさせることで、該基板の電荷量を減少させることと、サセプタピンを該サセプタの上面から突出させて該サセプタピンで該基板を持ち上げつつ、該RF電極の自己バイアス電圧を測定することと、制御部により、該自己バイアス電圧が正の値であるときは該除電時間を短くし、該自己バイアス電圧が負の値であるときは該除電時間を長くすることと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の電荷量を低下させて基板がサセプタに張り付くことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】基板処理装置の構成例を示す図である。
図2】サセプタを下に動かしたことを示す図である。
図3】サセプタをさらに下に動かしたことを示す図である。
図4】基板処理方法の例を示すフローチャートである。
図5】除電の際のRFパワーの印加例を示す図である。
図6】自己バイアス電圧の例を示す図である。
図7】基板の張り付き有無とVdc amplitudeの関係を示す図である。
図8】第2時間の長さとVdc amplitudeの関係を例示する図である。
図9】別の例に係る基板処理方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態に係る基板処理方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態.
図1は基板処理装置の構成例を示す図である。チャンバ10の中にはサセプタ12が設けられている。サセプタ12の上に処理対象となる基板13を設けることができる。基板13は例えばSiウエハである。サセプタ12は駆動部14によって上下動させることができる。駆動部14は、TMC(Transfer Module Controller)16を介してUPC(unique platform controller)18からの指令を受け、その指令に応じてサセプタ12を上下動させる。サセプタ12にはサセプタ12の振動を検知する振動センサ20が取り付けられている。
【0013】
サセプタピン21は、例えばチャンバ10に固定され、基板13を搬送するときに基板13を支持するものである。サセプタ12が高い位置にあるときはサセプタ12の上面よりも下にサセプタピン21があり、サセプタ12が低い位置にあるときはサセプタ12の上面よりも上にサセプタピン21が突出する。
【0014】
サセプタ12の上にはRF電極30が設けられている。RF電極30は例えば環状に形成された排気ダクト32の上に設けることができる。RF電極30がサセプタ12に対向して設けられたことで、平行平板構造が提供されている。RF電極30には貫通孔が設けられている。例えば成膜用のガスが充填されたガス源42から、マスフローコントローラ40で流量制御されたガスが、RF電極30の貫通孔を介して基板13の上に提供される。RF電極30には、整合回路34を介してRFジェネレータ36が接続されている。UPC18から指令を受けたPMC(Process Module Controller)38が、RFジェネレータ36とマスフローコントローラ40を制御する。
【0015】
このように、図1の基板処理装置はプラズマ処理装置として構成することができる。プラズマ処理は、例えば基板に成膜したり、基板の膜を改質したり、基板の一部をエッチングしたりする処理である。
【0016】
図2は、駆動部14によって図1の場合と比べてサセプタ12を下に動かしたことを示す図である。サセプタ12を下に下げると、サセプタピン21が基板13の裏面に接触する。図3は、駆動部14によってさらにサセプタ12を下に動かしたことを示す図である。このとき、サセプタ12は基板13から離れ、サセプタピン21だけで基板13が支持される。基板13とサセプタ12の間に搬送用アームを挿入して、搬送用アームを上昇させることで搬送用アームによって基板13を支持し、基板13の搬送を可能とする。
【0017】
図4は、基板処理方法の例を示すフローチャートである。この例では、まず、ブロックB1にて、サセプタ12の上に設けられた基板13にプラズマ処理を施す。プラズマ処理では、例えば、RF電極30とサセプタ12の間に反応ガスを供給しつつ、RF電極30に交流電力を印加することでプラズマを生じさせ基板13に成膜する。プラズマを用いた他の処理を行ってもよい。このプラズマ処理によって基板13に電荷がチャージされる。
【0018】
次いで、ブロックB2において基板の電荷量を減少させる。この処理は除電ということもある。ここでは、RF電極30に予め定められた除電時間だけ電力を印加してプラズマを生じさせることで、基板13の電荷量を減少させる。供給するガスは不活性ガスでも反応ガスでもよい。例えば、除電のために提供するプラズマは不活性ガスプラズマとすることができる。なお、除電という言葉は、完全に電荷を無くすことだけでなく、電荷量を低下させることを含む。
【0019】
図5は、除電の際のRFパワーの印加例を示す図である。除電時間は、例えば第1時間T1、第2時間T2及び第3時間T3を含む。第1時間T1は時刻t0から時刻t1までの時間である。第1時間T1はRF電極30に電力を印加してプラズマを生じさせる時間である。第1時間T1はプラズマが安定するまでの任意の時間とすることができる。第1時間T1は例えば3秒である。
【0020】
第2時間T2は時刻t1から時刻t2までの時間である。第2時間T2では、予め定められた第1レートでRF電極30のパワーを低下させる。例えば140VのRFパワーを20秒で110Vまで低下させる。第3時間T3は時刻t2から時刻t3までの時間である。第3時間T3は、予め定められた第2レートでRF電極30のパワーを0まで低下させる。例えば110VのRFパワーを5秒で0Vまで低下させる。上述の3つのステップによりRFパワーを変化させながらプラズマ照射を行うことで、基板13の電荷量を減少させることができる。RFパワーを別の方法で変化させてもよい。
【0021】
次いで、ブロックB3において、サセプタピン21をサセプタ12の上面から突出させてサセプタピン21で基板13を持ち上げる。そして、この基板13の持ち上げの瞬間を含む一定の期間においてRF電極30の自己バイアス電圧を測定する。
【0022】
自己バイアス電圧について説明する。まず、RF電極30に印加される交流電圧の最大電圧と最小電圧の差は、VPP(Volt peak to peak)として知られている。このVPPは高周波のプラズマを扱う上でプロセスの監視等に用いることができる。具体的には、整合回路34にVPPセンサを設けて、そのVPPセンサで得られたVPPの値をUPC18などで監視することができる。そして、VPPの中間点となる電圧を自己バイアス電圧又はVdc(Volt Direct Current)という。例えば、RF電源で使用する整合回路にブロッキングコンデンサを設けることで、Vdcを生じさせることができる。自己バイアス電圧は、例えば成膜中にプラズマの様子を監視するために常時測定され、PLCロガー(PLC Logger)に保存される。成膜中の自己バイアス電圧は通常はマイナスである。
【0023】
図6は、図4のブロックB3の処理において測定される自己バイアス電圧の例を示す図である。図6では、第2時間T2を2秒、10秒、40秒として除電した後にサセプタピン21をサセプタ12から突出させてサセプタピン21で基板13を持ち上げたときの自己バイアス電圧が示されている。例えば、第2時間T2を2秒として除電した後に自己バイアス電圧を測定すると、自己バイアス電圧が一時的に-0.7V程度まで低下する。ベース電圧からピーク電圧までの差はVdc amplitudeとして示されている。第2時間T2を10秒として除電した後に自己バイアス電圧を測定すると、自己バイアス電圧が一時的に-0.2V程度まで低下する。第2時間T2を40秒として除電した後に自己バイアス電圧を測定すると、自己バイアス電圧が一時的に0.6V程度まで上昇する。このように、第2時間T2の長さを調整することで、例えば成膜処理の対象となった基板13の電荷量をコントロールできる。
【0024】
サセプタピン21で基板13を持ち上げるときの自己バイアス電圧の変化量が大きいほど、基板13の電荷量が大きい。言いかえれば、サセプタピン21で基板13を持ち上げるときの自己バイアス電圧の絶対値が大きいほど、基板13はサセプタ12に密着しており、基板13の帯電量[C/m2]は大きい。基板13がサセプタ12に張り付くことの弊害を抑制するためには、除電により基板13の電荷量を小さくして、サセプタピン21で基板13を持ち上げるときの自己バイアス電圧(Vdc)を小さくするべきである。
【0025】
図7は、基板の張り付き有無と、サセプタピン21で基板13を持ち上げるときのVdc amplitudeの関係を示す図である。横軸は、基板へのプラズマ処理の際に採用されたRFパワーを示す。縦軸はVdc amplitudeを示す。Vdc amplitudeは例えば図6に示されるように、サセプタピンで基板を持ち上げるときの自己バイアス電圧の変化量である。×で示された位置では、基板13がサセプタ12に張り付いて、サセプタピン21による基板13の持ち上げに伴いサセプタ12が振動した。○で示された位置では、サセプタピン21による基板13の持ち上げに伴う振動は検知されなかった。サセプタ12の振動は例えば図1の振動センサ20で検知できる。
【0026】
図7から、Vdc amplitudeが-1以下になると、基板13がサセプタ12に張り付きやすいことが分かる。図8は、第2時間T2の長さとVdc amplitudeの関係を例示する図である。第2時間T2を20秒程度とすると、Vdc amplitudeがほぼゼロになるので、基板13が十分に除電されていることが分かる。しかし、第2時間T2を20秒より大きくしても小さくしてもVdc amplitudeの絶対値が大きくなる。図8の例では、第2時間T2の増加に伴い、Vdc amplitudeが負の値から正の値に変化していく。この場合、第2時間T2を20秒より大きくしても小さくしても除電後に基板13に有意な電荷が残る。
【0027】
次いで、ブロックB4において、プロセスを終了させるか判定する。処理すべき基板がなければ、Yesに進み処理を終了する。新たな基板を処理する必要があればNoに進む。
【0028】
ブロックB4において、新たな基板を処理する必要があると判定された場合、ブロックB5へ処理を進める。ブロックB5では、ブロックB3で測定した自己バイアス電圧に応じて、必要に応じて除電時間を調整する。そのような調整は例えば制御部として機能するUPC18によって行うことができる。例えば、制御部は、自己バイアス電圧が正の値であるときは除電時間を短くし、自己バイアス電圧が負の値であるときは除電時間を長くする。より具体的には、自己バイアス電圧が正の値であるときは第2時間T2を短くし、自己バイアス電圧が負の値であるときは第2時間T2を長くすることができる。調整後の除電時間は次の基板の除電に適用することができる。
【0029】
サセプタピン21で基板13を持ち上げる際に測定された自己バイアス電圧が正の値であるときは、図8の例の場合、第2時間を短くする必要がある。他方、サセプタピン21で基板13を持ち上げる際に測定された自己バイアス電圧が負の値であるときは、図8の例の場合、第2時間T2を長くする必要がある。このように、制御部では、次の基板が十分除電されるように、次の基板に適用する第2時間T2を決める。ブロックB6において、上述の第2時間T2の調整が行われる。例えば、制御部の記憶部に記憶された第2時間T2を更新する。
【0030】
その後、調整後の第2時間T2を利用して、前述の一連の処理が新しい基板に対して実施される。簡単に説明すると、新しい基板に対して、処理済の基板に施されたプラズマ処理と同じプラズマ処理を施すことで、新しい基板に電荷が生じる。そして、調整された第2時間T2を含む除電で新しい基板を除電することで、基板の電荷量を十分減少させることができる。そのため、基板がサセプタに張り付くことが抑制される。
【0031】
図4に示す除電の要領は変更することができる。例えば、第2時間T2は第3時間T3より長いものとしたが、各段階の時間を変更することができる。逐次処理される基板に対して同じ内容のプラズマ処理が施される場合、調整後の第2時間T2を継続使用することができる。したがって、一旦第2時間T2を調整すれば、同じプラズマ処理が行われる限り、第2時間T2の調整を省略することができる。他方、すべての基板の処理において第2時間を調整したり、一定の周期で第2時間を調整したりすることで、精密に調整された第2時間を得ることができる。
【0032】
この基板処理方法によれば、基板の処理が繰り返されるほど、例えば図8に示す除電時間とVdc amplitudeの関係を示すデータが蓄積されることになる。したがって、制御部は最新のデータだけを参照して除電時間を調整するのではなく、蓄積されたデータ全体を参照して除電時間を最適化することができる。このように、逐次得られる自己バイアス電圧のデータを用いることで、除電時間を最適化し、基板の電荷量を十分低下させることができる。
【0033】
基板処理においてはレシピの変更が想定される。基板を処理するためのレシピの変更があった場合、制御部は、レシピに応じて除電時間を変更することができる。つまり、制御部はレシピ毎に除電時間を調整し、レシピ毎に調整された除電時間を保持及び使用することができる。
【0034】
図7からプラズマ処理のプラズマパワーが大きいほど、基板がサセプタに張り付きやすいことが分かる。つまり、プラズマ処理のプラズマパワーが大きいほど、基板の電荷量が大きくなる。そこで、制御部は、プラズマ処理のプラズマパワーが大きいほど除電時間を長くすることができる。
【0035】
図9は、他の例に係る基板処理方法のフローチャートである。まずブロックB1にて最適な除電時間の条件出しを行う。この条件出しでは、プラズマ処理と、除電処理と、自己バイアス電圧の測定と、を除電時間を変更して複数回行う。例えば、まず、サセプタ12の上に設けられた第1基板にプラズマ処理を施す。次いで、RF電極30に予め定められた除電時間だけ電力を印加して第1基板の電荷量を減少させる。次いで、サセプタ12を下降させることで、サセプタピン21をサセプタ12の上面から突出させて、サセプタピン21で第1基板を持ち上げ、そのときのRF電極30の自己バイアス電圧を測定する。その後、別の第1基板に対して、一連の処理を除電時間を変更して行う。これを繰り返して、除電時間とVdc amplitudeの関係を得る。例えば、図8のような除電時間とVdc amplitudeの関係を得る。
【0036】
次いで、ブロックB2にて、第2基板に対し第1基板に対するプラズマ処理と同じプラズマ処理を施す。次いで、ブロックB3にて第2基板を除電する。この除電では、第1基板に対する複数回の自己バイアス電圧の測定で得られた自己バイアス電圧のうち絶対値が最小の自己バイアス電圧を与える除電時間だけ、RF電極30に電力を印加する。例えば、自己バイアス電圧の絶対値が最小となる除電時間をブロックB1において選択しておき、選択された除電時間でブロックB3の除電を実施してもよい。
【0037】
次いで、ブロックB4では、上述の処理で第2基板の電荷量を減少させた上で、第2基板をサセプタピン21で持ち上げて、搬送アームで第2基板を搬送する。次いで、ブロックB5にて、基板のプロセスを終了するか判定する。基板の処理を継続する場合は、ブロックB6にてレシピの変更の有無を確認する。レシピ変更がなければ、ブロックB1で所得した除電時間を新たな基板に対して適用する。他方、レシピ変更がある場合は、ブロックB1に進み、変更後のレシピに対する最適な除電時間を求めるための条件出しを、上述した要領で行う。
【0038】
例えば、第1基板はダミー基板であり、第2基板は製品基板である。除電時間におけるRFパワーの低下プロセスとして、例えば、図5で説明した第1時間と第2時間と第3時間を採用することができる。この例では第2時間は第3時間より長い。
【0039】
基板13をサセプタピン21で持ち上げるタイミングにおけるVdc振幅を測定し、そのVdc振幅が0に近づくように、上述した方法とは異なる方法で除電時間を調整してもよい。たとえば、Vdc振幅のデータをフィードバック制御あるいはフィードフォワード制御に利用することができる。除電時間を3つのステップによって構成したが、これを別の内容に変更してもよい。
【0040】
基板処理装置の構成は、プラズマ処理が可能な任意の構成に変更することができる。基板処理装置として、例えばPEALD又はPECVD等の処理を行うプラズマアシスト成膜装置を用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 チャンバ、 12 サセプタ、 13 基板、 14 駆動部、 20 振動センサ、 21 サセプタピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9