(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】光導波路、光導波路装置及び光導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20230731BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20230731BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20230731BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
G02B6/122
G02B6/13
G02B6/12 301
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2019217222
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2019131656
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 賢司
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0163918(US,A1)
【文献】特開平11-153721(JP,A)
【文献】特開2015-102739(JP,A)
【文献】特開2014-074869(JP,A)
【文献】特開2006-235126(JP,A)
【文献】特開平11-183761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42- 6/43
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クラッド層と、
前記第1クラッド層の上面に形成された複数のコア層と、
前記コア層を覆うように前記第1クラッド層の上面に形成された第2クラッド層と、
前記複数のコア層の各々に対応して設けられた複数の溝部と、
前記各コア層の延出方向において前記各コア層の
延出方向の端面に対向するように前記各溝部内に設けられるとともに、前記各コア層の延出方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面と、
前記傾斜面上に形成された光路変換ミラーと、を有し、
前記複数の溝部は、互いに離れて形成されており、
前記傾斜面は、前記第1クラッド層及び前記第2クラッド層のみに形成されており、
前記光路変換ミラーは、前記コア層とは接触されておらず、前記コア層と離れて設けられて
おり、
前記第2クラッド層は、前記コア層のうち前記コア層の延出方向の端面のみを覆うように形成されており、
前記各溝部は、前記各コア層と離れて形成されており、
前記各コア層の延出方向の端面と前記各溝部との間には、前記コア層の延出方向の端面を被覆する前記第2クラッド層が設けられている光導波路。
【請求項2】
前記第2クラッド層の上面を被覆するとともに、前記溝部を充填する第3クラッド層を更に有し、
前記光路変換ミラーは、前記第1クラッド層と前記第2クラッド層と前記第3クラッド層とを含むクラッド層のみに覆われている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記第1クラッド層と前記第2クラッド層と
前記第3クラッド層とは一体に形成されている請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記コア層の
延出方向の端面は、前記コア層の延出方向に対して垂直に延びる垂直面に形成されている請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項5】
前記光路変換ミラーは、前記傾斜面上のみに形成されており、段差の無い平坦な形状に形成されている請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の光導波路と、
前記光導波路が積層された配線基板と、
前記配線基板に実装された光学素子と、
を有する光導波路装置。
【請求項7】
第1クラッド層を形成する工程と、
前記第1クラッド層の上面に第2クラッド層を形成する工程と、
前記第2クラッド層から露出する前記第1クラッド層の上面に、前記第2クラッド層に延出方向の端面が接するコア層を形成する工程と、
前記第2クラッド層の上面に保護フィルムを形成する工程と、
前記保護フィルムの上面に対して斜めに入射されるレーザにより、前記コア層の延出方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面を有し、前記保護フィルム及び前記第2クラッド層を厚さ方向に貫通する溝部を形成する工程と、
前記保護フィルムをマスクとして、前記溝部の前記傾斜面上に金属膜からなる光路変換ミラーを形成する工程と、
前記保護フィルムを除去する工程と、
を有し、
前記溝部は、前記コア層と離れて形成される光導波路の製造方法。
【請求項8】
第1クラッド層を形成する工程と、
前記第1クラッド層の上面にコア層を形成する工程と、
前記第1クラッド層の上面に、前記コア層の側面を被覆する第2クラッド層を形成する工程と、
前記第2クラッド層の上面に保護フィルムを形成する工程と、
前記保護フィルムの上面に対して斜めに入射されるレーザにより、前記コア層の延出方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面を有し、前記保護フィルム及び前記第2クラッド層を厚さ方向に貫通する溝部を形成する工程と、
前記保護フィルムをマスクとして、前記溝部の前記傾斜面上に金属膜からなる光路変換ミラーを形成する工程と、
前記保護フィルムを除去する工程と、
を有する光導波路の製造方法。
【請求項9】
前記溝部と連通する開口部を形成する工程を更に有し、
前記開口部は、前記コア層の延出方向において前記光路変換ミラーと対向する前記コア層の端面が、前記コア層の延出方向に対して垂直に延びる垂直面に形成されるように、前記コア層の一部を除去して形成される請求項
8に記載の光導波路の製造方法。
【請求項10】
前記第2クラッド層の上面を被覆するとともに、前記溝部を充填する第3クラッド層を形成する工程を更に有する請求項
7から請求項
9のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光導波路装置及び光導波路の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気信号を扱う配線基板の上に光信号を扱う光導波路が形成された光導波路装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。光導波路装置は光電気複合基板であり、電気信号の伝達速度の限界を補うために、高速部分を光信号で伝達することができる。
【0003】
図25に示すように、光導波路装置100では、クラッド層111によってコア層112が囲まれた構造の光導波路110によって光信号が伝達される。そして、光学素子(図示略)が光導波路110の光路変換ミラー115に光結合されるように、光導波路110のクラッド層111の上に実装される。
【0004】
次に、光導波路装置100の光導波路110の製造方法の一例について説明する。
図26(a)に示すように、まず、基板130の上に、下部クラッド層111A、コア層112及び上部クラッド層111Bを順次形成する。続いて、切削装置の回転ブレードにより、上部クラッド層111B側からコア層112を分断するように溝部113を形成する。このとき、溝部113は、コア層112の延出方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面114を有している。また、
図26(b)に示すように、溝部113は、複数のコア層112が並ぶ図中上下方向(Y軸方向)の全長にわたって延びるように形成されている。この溝部113により、複数のコア層112が一括して分断されている。次いで、
図27(a)に示すように、溝部113に対応する開口部140Xを有するマスク140を形成する。次に、マスク140を用いて、溝部113の傾斜面114上に光沢のある金属膜を選択的に被着することにより、傾斜面114に光路変換ミラー115を形成する。その後、マスク140を除去することにより、
図27(b)に示すように、基板130上に光導波路110を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の光導波路装置100では、
図25に示すように、溝部113が基板130の図中上下方向(Y軸方向)の全長にわたって延びるように形成される。このような溝部113によって、光導波路110の設計自由度が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上面に形成された複数のコア層と、前記コア層を覆うように前記第1クラッド層の上面に形成された第2クラッド層と、前記複数のコア層の各々に対応して設けられた複数の溝部と、前記各コア層の延出方向において前記各コア層の延出方向の端面に対向するように前記各溝部内に設けられるとともに、前記各コア層の延出方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面と、前記傾斜面上に形成された光路変換ミラーと、を有し、前記複数の溝部は、互いに離れて形成されており、前記傾斜面は、前記第1クラッド層及び前記第2クラッド層のみに形成されており、前記光路変換ミラーは、前記コア層とは接触されておらず、前記コア層と離れて設けられており、前記第2クラッド層は、前記コア層のうち前記コア層の延出方向の端面のみを覆うように形成されており、前記各溝部は、前記各コア層と離れて形成されており、前記各コア層の延出方向の端面と前記各溝部との間には、前記コア層の延出方向の端面を被覆する前記第2クラッド層が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一観点によれば、設計自由度を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の光導波路装置を示す概略断面図(
図2における1-1線断面図)。
【
図2】第1実施形態の光導波路装置を示す概略平面図。
【
図3】第1実施形態の光導波路装置を示す斜視断面図。
【
図4】(a),(b)は、第1実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図5】(a),(b)は、第1実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図6】(a),(b)は、第1実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図7】(a),(b)は、第1実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図8】(a),(b)は、第1実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図9】(a),(b)は、第1実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図10】(a),(b)は、第1実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図11】(a),(b)は、第2実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図12】(a),(b)は、第2実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図13】(a),(b)は、第2実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図14】(a),(b)は、第2実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図15】(a),(b)は、第2実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図16】第3実施形態の光導波路装置を示す概略断面図(
図17における16-16線断面図)。
【
図17】第3実施形態の光導波路装置を示す概略平面図。
【
図18】(a),(b)は、第3実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図19】(a),(b)は、第3実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図20】(a),(b)は、第3実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図21】(a),(b)は、第3実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図22】(a),(b)は、第3実施形態の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【
図26】(a)は、従来例の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図、(b)は、従来例の光導波路装置の製造方法を示す概略平面図。
【
図27】(a),(b)は、従来例の光導波路装置の製造方法を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して各実施形態を説明する。なお、添付図面は、便宜上、特徴を分かりやすくするために特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが各図面で異なる場合がある。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示し、一部の部材のハッチングを省略している。以下の説明では、
図1における左右方向をX軸方向と称し、
図1における上下方向をZ軸方向と称し、
図1の紙面直交方向をY軸方向と称する。本明細書において、「平面視」とは、対象物をZ軸方向(例えば、鉛直方向)から見ることを言い、「平面形状」とは、対象物をZ軸方向から見た形状のことを言う。なお、本明細書における「平行」、「直交」や「水平」は、厳密に平行、直交や水平の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行、直交や水平の場合も含まれる。
【0011】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図10に従って第1実施形態を説明する。
図1に示すように、光導波路装置10は、配線基板20と、配線基板20上に形成された光導波路30と、光学素子50とを有している。光学素子50としては、例えば、面発光型半導体レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)や発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等の発光素子を用いることができる。また、光学素子50としては、例えば、フォトダイオード(PD)やアバランシェ・フォトダイオード(APD)等の受光素子を用いることができる。
【0012】
配線基板20は、基板本体21と、最上層の配線パターン22と、最下層の配線パターン23と、ソルダーレジスト層24とを有している。
基板本体21としては、最表層に配線パターン22,23が形成され、それら配線パターン22,23が基板内部を通じて相互に電気的に接続された構造を有していれば十分である。このため、基板本体21の内部には配線層が形成されていてもよく、配線層が形成されていなくてもよい。なお、基板本体21の内部に配線層が形成される場合には、複数の配線層が層間絶縁層を介して積層され、各配線層と各層間絶縁層に形成されたビアとによって配線パターン22,23が相互に電気的に接続される。基板本体21としては、例えば、コア基板を有するコア付きビルドアップ基板や、コア基板を有さないコアレス基板等を用いることができる。
【0013】
配線パターン22は、基板本体21の上面に設けられている。配線パターン22は、光学素子50の電極端子51と電気的に接続される接続パッドP1を有している。配線パターン22の厚さは、例えば、15μm~35μm程度とすることができる。配線パターン22の材料としては、例えば、銅(Cu)や銅合金を用いることができる。
【0014】
配線パターン23は、基板本体21の下面に設けられている。配線パターン23は、外部接続用パッドP2を有している。配線パターン23の厚さは、例えば、15μm~35μm程度とすることができる。配線パターン23の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0015】
ソルダーレジスト層24は、配線パターン23を覆うように基板本体21の下面に形成されている。ソルダーレジスト層24には、配線パターン23の一部を外部接続用パッドP2として露出させるための開口部24Xが形成されている。外部接続用パッドP2には、当該配線基板20をマザーボード等に実装する際に使用されるはんだボールやリードピン等の外部接続端子が接続される。なお、必要に応じて、開口部24Xから露出する配線パターン23上にOSP(Organic Solderability Preservative)処理を施してOSP膜を形成し、そのOSP膜に外部接続端子を接続するようにしてもよい。また、開口部24Xから露出する配線パターン23上に金属層を形成し、その金属層に外部接続端子を接続するようにしてもよい。金属層の例としては、例えば、金(Au)層、ニッケル(Ni)/Au層(Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層)や、Ni/パラジウム(Pd)/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)などを挙げることができる。ここで、Au層はAu又はAu合金からなる金属層、Ni層はNi又はNi合金からなる金属層、Pd層はPd又はPd合金からなる金属層である。これらNi層、Au層、Pd層としては、例えば、無電解めっき法により形成された金属層(無電解めっき金属層)を用いることができる。また、開口部24Xから露出する配線パターン23自体、あるいは配線パターン23上にOSP膜や金属層が形成されている場合には、それらOSP膜又は金属層自体を、外部接続端子としてもよい。
【0016】
なお、開口部24X及び外部接続用パッドP2の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。例えば、開口部24X及び外部接続用パッドP2の平面形状は、直径が200μm~300μm程度の円形状とすることができる。基板本体21の下面からソルダーレジスト層24の下面までの厚さは、例えば、20μm~40μm程度とすることができる。ソルダーレジスト層24の材料としては、例えば、エポキシ系又はアクリル系の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0017】
光導波路30は、配線基板20の基板本体21の上面に形成されている。光導波路30は、クラッド層31と、コア層32と、クラッド層33と、クラッド層34とを有している。
【0018】
クラッド層31は、基板本体21の上面に形成されている。クラッド層31は、例えば、配線パターン22を覆うように基板本体21の上面に形成されている。クラッド層31の上面には、1つ又は複数のコア層32が形成されている。
【0019】
図2に示すように、本実施形態のクラッド層31の上面には、2つのコア層32が形成されている。各コア層32は、光信号の伝搬を行うためのものである。各コア層32は、例えば、長尺状に形成されている。各コア層32は、例えば、X軸方向に延びるように形成されている。すなわち、本実施形態の各コア層32の延出方向は、X軸方向と一致している。各コア層32は、例えば、四角柱状に形成されている。複数のコア層32は、コア層32の延出方向と直交するY軸方向に沿って並んで設けられている。複数のコア層32は、例えば、平行に延びるように形成されている。なお、
図2は、
図1に示した光導波路装置10を上方から見た平面図であり、クラッド層34及び光学素子50等が透視的に描かれている。
【0020】
図1に示すように、クラッド層33は、クラッド層31の上面に形成されている。クラッド層33は、隣り合うコア層32の間の空間を充填するように形成されている。クラッド層33は、各コア層32の側面全面を覆うように形成されている。クラッド層33は、例えば、コア層32の上面全面を覆うように形成されている。
【0021】
クラッド層31,33には、1つ又は複数(ここでは、2つ)の溝部35が形成されている。各溝部35は、各コア層32に対応して設けられている。各溝部35は、例えば、クラッド層33の上面からクラッド層31の厚さ方向(Z軸方向)の途中まで延びるように形成されている。各溝部35は、例えば、光路を90度変換するための傾斜面36を有している。傾斜面36は、例えば、コア層32の延出方向(X軸方向)に対して所定の角度(例えば、45度)に傾斜して形成されている。すなわち、傾斜面36は、コア層32を伝搬する光の伝搬方向(進行方向)に対して45度傾斜して形成されている。溝部35の断面形状は、例えば、略直角三角形状に形成されている。
【0022】
傾斜面36は、例えば、クラッド層33の上面からクラッド層31の厚さ方向の途中まで延びるように形成されている。傾斜面36は、例えば、クラッド層31,33のみに形成されている。換言すると、傾斜面36は、コア層32に形成されていない。傾斜面36は、例えば、コア層32と離れて設けられている。傾斜面36は、X軸方向において、コア層32の延出方向の端面32Aと離れて設けられている。すなわち、傾斜面36は、コア層32と接触していない。但し、傾斜面36は、X軸方向において、コア層32の中心軸線の延長線上に形成されている。傾斜面36は、X軸方向において、コア層32の端面32Aと対向するように形成されている。ここで、本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。
【0023】
図2に示すように、複数の溝部35は、Y軸方向において、互いに離れて設けられている。すなわち、複数の溝部35は、Y軸方向において所定の間隔を空けて設けられている。
【0024】
各溝部35(傾斜面36)の平面形状は、例えば、四角形状に形成されている。各溝部35の平面形状は、例えば、上底と下底との長さが互いに異なる台形状に形成されている。各溝部35は、例えば、X軸方向において、コア層32から最も離れた端部からコア層32に近づくに連れて開口幅(つまり、Y軸方向に沿う開口幅)が狭くなるように形成されている。各溝部35の開口幅は、例えば、コア層32のY軸方向に沿う寸法(つまり、幅寸法)よりも広く設定されている。
【0025】
図3に示すように、傾斜面36は、例えば、X軸方向(コア層32の中心軸線)から見た正面形状が四角形状に形成されている。傾斜面36の正面形状は、例えば、上底と下底との長さが互いに異なる台形状に形成されている。傾斜面36は、例えば、上端から下端に向かうに連れて、Y軸方向に沿う寸法(つまり、幅寸法)が短くなるように形成されている。すなわち、傾斜面36は、クラッド層33の上面側からクラッド層31の下面側に向かうに連れて幅寸法が短くなるように形成されている。
【0026】
各傾斜面36には、光路を90度変換するための光路変換ミラー37が形成されている。すなわち、光導波路30には、複数(ここでは、2つ)の光路変換ミラー37が設けられている。
図2に示すように、複数の光路変換ミラー37は、例えば、Y軸方向において互いに離れて設けられている。すなわち、複数の光路変換ミラー37は、Y軸方向において所定の間隔を空けて設けられている。光路変換ミラー37の材料としては、例えば、良好な光反射性を有する金属材料を用いることができる。光路変換ミラー37の材料としては、例えば、金、銀(Ag)やアルミニウム(Al)等の金属材料を用いることができる。
【0027】
図3に示すように、各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面36を覆うように形成されている。各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面36の上部分の全体を覆うように形成されている。各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面36の上部分を、Y軸方向の全長にわたって覆うように形成されている。各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面36の下部分を露出するように形成されている。すなわち、傾斜面36の下部分は、光路変換ミラー37から露出されている。各光路変換ミラー37は、例えば、コア層32の下面及びクラッド層31の上面よりも下方に突出するように形成されている。各光路変換ミラー37は、例えば、コア層32の上面よりも上方に突出するように形成されている。各光路変換ミラー37の上端面は、例えば、クラッド層33の上面と面一になるように形成されている。
【0028】
各光路変換ミラー37は、例えば、コア層32と離れて設けられている。各光路変換ミラー37は、X軸方向において、コア層32の延出方向の端面32Aと離れて設けられている。すなわち、各光路変換ミラー37は、コア層32と接触していない。但し、各光路変換ミラー37は、X軸方向において、コア層32の中心軸線の延長線上に形成されている。各光路変換ミラー37は、X軸方向において、コア層32の端面32Aと対向するように形成されている。
【0029】
各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面36のみに形成されている。換言すると、各光路変換ミラー37は、クラッド層33の上面やコア層32の上面に形成されていない。各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面36上に平坦に形成されている。例えば、各光路変換ミラー37は、段差を有さない平坦な形状に形成されている。例えば、各光路変換ミラー37は、段差を有さない薄板状に形成されている。
【0030】
各光路変換ミラー37の平面形状は、例えば、傾斜面36の平面形状に沿った形状に形成されている。各光路変換ミラー37の平面形状は、例えば、四角形状に形成されている。各光路変換ミラー37の平面形状は、例えば、上底と下底との長さが互いに異なる台形状に形成されている。各光路変換ミラー37は、例えば、X軸方向において、コア層32から最も離れた上端部からコア層32に近い下端部に向かうに連れて、Y軸方向に沿う寸法(つまり、幅寸法)が短くなるように形成されている。各光路変換ミラー37の幅寸法は、例えば、コア層32の幅寸法よりも広く設定されている。
【0031】
図1に示すように、クラッド層31,33及びコア層32には、それらクラッド層31とコア層32とクラッド層33とを厚さ方向に貫通する開口部38が形成されている。開口部38は、例えば、各コア層32に対応して設けられている。開口部38は、例えば、X軸方向において、コア層32の端面32Aと溝部35との間に設けられている。開口部38は、例えば、溝部35と連通するように形成されている。開口部38は、例えば、コア層32の端面32Aを露出するように形成されている。開口部38は、例えば、配線パターン22の上面の一部を露出するように形成されている。
【0032】
開口部38の内壁面は、例えば、配線パターン22の上面から垂直に立ち上がるように形成されている。例えば、コア層32の端面32Aは、コア層32の延出方向に対して垂直に延びる垂直面に形成されている。コア層32の端面32Aは、例えば、クラッド層31,33によって構成される開口部38の内壁面と面一になるように形成されている。なお、開口部38の内壁面を、コア層32の延出方向に対して所定の角度で傾斜する傾斜面に形成するようにしてもよい。
【0033】
図2に示すように、開口部38の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。開口部38の平面形状は、例えば、四角形状に形成されている。開口部38のY軸方向に沿う開口幅は、例えば、コア層32の幅寸法よりも広く形成されている。
【0034】
図1に示すように、クラッド層34は、例えば、クラッド層33の上面を覆うように形成されている。クラッド層34は、例えば、溝部35及び開口部38を充填するように形成されている。クラッド層34は、例えば、光路変換ミラー37を覆うように形成されている。クラッド層34は、例えば、クラッド層31,33から露出された光路変換ミラー37の表面全面を覆うように形成されている。これにより、光路変換ミラー37の表面全面は、クラッド層31,33,34によって覆われる。すなわち、光路変換ミラー37は、クラッド層31,33,34のみに覆われている。換言すると、光路変換ミラー37は、クラッド層31,33,34に埋設されている。
【0035】
クラッド層34は、例えば、コア層32の端面32Aを覆うように形成されている。このように、光導波路30は、基板本体21の上面に、クラッド層31とコア層32とクラッド層33とクラッド層34とがこの順番で積層された構造を有し、コア層32がクラッド層31とクラッド層33とクラッド層34とによって囲まれた構造を有している。
【0036】
これらクラッド層31,33,34及びコア層32の材料としては、基本的には同じ材料を用いることができる。例えば、クラッド層31,33,34及びコア層32の材料としては、光学素子50が使用する波長域において光透過性を有する樹脂材を用いることができる。具体的には、クラッド層31,33,34及びコア層32の材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などを用いることができる。但し、光信号の伝搬がコア層32内でのみ行われるようにするために、コア層32を構成する材料としては、そのコア層32の上下両面に形成されるクラッド層31,33,34を構成する材料よりも屈折率の高い材料が選定されている。なお、コア層32とクラッド層31,33,34との屈折率の差は、特に限定されないが、例えば、0.3%~5.5%程度が好ましく、0.8%~2.2%程度がより好ましい。
【0037】
クラッド層31の厚さ、具体的には配線パターン22の上面からクラッド層31の上面までの厚さは、例えば、10μm~15μm程度とすることができる。コア層32の厚さ、具体的にはクラッド層31の上面からコア層32の上面までの厚さは、例えば、30μm~80μm程度とすることができる。コア層32の幅寸法は、例えば、20μm~50μm程度とすることができる。コア層32のピッチは、例えば、100μm~300μm程度とすることができる。クラッド層33の厚さ、具体的にはクラッド層31の上面からクラッド層33の上面までの厚さは、例えば、30μm~100μm程度とすることができる。クラッド層34の厚さ、具体的にはクラッド層33の上面からクラッド層34の上面までの厚さは、例えば、30μm~80μm程度とすることができる。
【0038】
なお、
図1では、各クラッド層31,33,34を判り易くするため、実線にて区別している。例えば、光導波路30では、各クラッド層31,33,34の界面は消失していることがあり、境界は明確ではないことがある。
【0039】
図1に示すように、光導波路30には、配線パターン22の一部を接続パッドP1として露出させるための開口部30Xが形成されている。開口部30Xは、光学素子50の電極端子51に対応する位置に設けられている。開口部30Xは、例えば、光路変換ミラー37から、コア層32から離れる方向に離れた位置に設けられている。開口部30Xは、例えば、クラッド層31,33,34を厚さ方向に貫通するように形成されている。開口部30Xは、例えば、
図1において上側(クラッド層34の上面側)から下側(配線パターン22側)に向かうに連れて開口幅(開口径)が小さくなるテーパ状に形成されている。例えば、開口部30Xは、下側の開口端の開口径が上側の開口端の開口径よりも小さくなる逆円錐台形状に形成されている。
【0040】
接続パッドP1上には、その接続パッドP1と光学素子50の電極端子51とを電気的に接続するはんだ40が形成されている。はんだ40の材料としては、例えば、鉛(Pb)を含む合金、錫(Sn)とCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金などを用いることができる。
【0041】
なお、必要に応じて、開口部30Xから露出する配線パターン22上にOSP処理を施してOSP膜を形成し、そのOSP膜上にはんだ40を形成するようにしてもよい。また、開口部30Xから露出する配線パターン22上に金属層を形成し、その金属層上にはんだ40を形成するようにしてもよい。金属層の例としては、例えば、Au層、Ni/Au層や、Ni/Pd/Au層などを挙げることができる。
【0042】
図2に示すように、光導波路30には、各コア層32に対して2つの開口部30Xが形成されている。複数の開口部30Xは、例えば、Y軸方向に沿って並んで設けられている。複数の開口部30Xは、例えば、Y軸方向において所定の間隔を空けて設けられている。各開口部30Xは、例えば、X軸方向において溝部35と重ならない位置に設けられている。すなわち、1つの溝部35と2つの開口部30Xとは、Y軸方向における位置が互いに異なる位置に設けられている。例えば、1つの溝部35と2つの開口部30Xとは互い違いに設けられている。例えば、溝部35は、Y軸方向において2つの開口部30Xの間に設けられている。
【0043】
図1に示すように、光学素子50は、例えば、2つの電極端子51と、1つの受発光部52とを有している。2つの電極端子51は、例えば、その一方の電極端子51が光学素子50内のカソード電極(図示略)に接続され、他方の電極端子51が光学素子50内のアノード電極(図示略)に接続されている。各電極端子51としては、例えば、金属柱、金バンプやはんだバンプを用いることができる。金属柱の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。はんだバンプの材料としては、例えば、Pbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金などを用いることができる。
【0044】
受発光部52は、光学素子50が発光素子である場合には発光部となり、光学素子50が受光素子である場合には受光部となる。例えば、受発光部52の平面中心が光学素子50の光軸中心A1となる。光軸中心A1は、例えば、光学素子50が発光素子である場合には発光点となり、光学素子50が受光素子である場合には受光エリアの中心点となる。
【0045】
光学素子50は、光導波路30が積層(一体化)された配線基板20に実装されている。光学素子50は、例えば、電極端子51が開口部30X内に挿入され、電極端子51及びはんだ40を介して、配線基板20の接続パッドP1と電気的に接続されている。これにより、各光学素子50は、電極端子51及びはんだ40を介して、配線基板20の配線パターン22と電気的に接続されている。すなわち、各光学素子50は、配線基板20にフリップチップ実装されている。このとき、光学素子50は、受発光部52が光路変換ミラー37と対向するように、配線基板20に実装されている。光学素子50は、例えば、受発光部52が光路変換ミラー37の真上に配置されるように、配線基板20に実装されている。具体的には、光学素子50は、光軸中心A1が光路変換ミラー37の所定位置(例えば、光路変換ミラー37の傾斜面の中心)と平面視で重なるように、配線基板20に実装されている。換言すると、開口部30Xは、光軸中心A1と光路変換ミラー37の所定位置とを一致させた状態で、光学素子50の電極端子51が挿入可能な位置に形成されている。
【0046】
光学素子50と光導波路30及び配線基板20との間には、アンダーフィル樹脂60が形成されている。アンダーフィル樹脂60は、例えば、クラッド層34の上面と光学素子50の下面との隙間を充填するように形成されている。アンダーフィル樹脂60は、例えば、開口部30Xを充填するように形成されている。アンダーフィル樹脂60は、光学素子50の電極端子51と配線基板20の接続パッドP1との接続部分の接続強度を向上させるための樹脂である。アンダーフィル樹脂60の材料としては、例えば、光学素子50が使用する波長域において光透過性を有する樹脂材を用いることができる。アンダーフィル樹脂60の材料としては、例えば、クラッド層31,33,34と同一の樹脂材を好適に用いることができる。
【0047】
光学素子50が発光素子である場合には、発光部となる受発光部52の光軸中心A1(発光点)から出射された光は、図中矢印で示すように、光導波路30の溝部35に入射される。溝部35に入射された光は、傾斜面36に形成され光路変換ミラー37により光路が90度曲げられて光導波路30のコア層32に入射される。コア層32に入射された光は、コア層32内で全反射を繰り返して伝搬される。一方、光学素子50が受光素子である場合には、光導波路30のコア層32内を伝搬してきた光は、光路変換ミラー37で反射されて光導波路30の溝部35から出射され、受光部となる受発光部52の光軸中心A1に入射される。
【0048】
(光導波路装置10の製造方法)
次に、光導波路装置10の製造方法について説明する。なお、説明の便宜上、最終的に光導波路装置10の各構成要素となる部分には、最終的な構成要素の符号を付して説明する。
【0049】
まず、
図4(a)に示す工程では、配線基板20を準備する。まず、基板本体21の両面に所要の形状にパターニングされた配線パターン22,23を形成する。続いて、基板本体21の下面に、配線パターン23の一部を外部接続用パッドP2として露出させる開口部24Xを有するソルダーレジスト層24を形成する。ソルダーレジスト層24は、例えば、配線パターン23を覆うように基板本体21の下面にソルダーレジスト層24を形成した後、フォトリソグラフィ法によりソルダーレジスト層24を露光・現像して開口部24Xを形成する。
【0050】
なお、必要に応じて、外部接続用パッドP2上に、例えば、Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層を形成するようにしてもよい。金属層は、例えば、無電解めっき法により形成することができる。
【0051】
次いで、
図4(b)~
図8(b)に従って、配線基板20の上面に光導波路30を積層する。
まず、
図4(b)に示す工程では、基板本体21の上面に、配線パターン22を覆うようにクラッド層31を形成する。例えば、基板本体21の上面全面にクラッド層31となる感光性樹脂層(図示略)を形成し、フォトリソグラフィ法に基づいて露光・現像を行った後に、感光性樹脂層を硬化させることにより、クラッド層31を形成する。感光性樹脂層の形成方法としては、例えば、液状の感光性樹脂を基板本体21の上面全面に塗布するようにしてもよいし、半硬化状態の感光性樹脂シートを基板本体21の上面全面にラミネートするようにしてもよい。ここで、感光性樹脂としては、例えば、紫外線(UV)硬化型の樹脂を好適に使用することができる。UV硬化樹脂としては、例えば、変性アクリレート(エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等)をベース樹脂とし、光重合に必要な反応性アクリルモノマーと光重合開始剤及び添加剤を含んだ樹脂材を用いることができる。このようなUV硬化樹脂の主反応はラジカル重合である。このようなUV硬化樹脂を用いることにより、常温で処理することができ、さらに、熱硬化型の樹脂を用いる場合よりも短時間で硬化するため、作業時間を短縮することができる。なお、感光性樹脂層の材料等は、後述するコア層32及びクラッド層33,34を形成する工程においても同様である。
【0052】
続いて、
図5(a)に示す工程では、クラッド層31の上面に複数のコア層32を形成する。例えば、クラッド層31の上面全面にコア層32となる感光性樹脂層(図示略)を形成し、フォトリソグラフィ法に基づいて露光・現像を行った後に、感光性樹脂層を硬化させることにより、コア層32を形成する。本工程により、クラッド層31の上面に、帯状のコア層32が形成される。
【0053】
次いで、
図5(b)に示す工程では、クラッド層31の上面に、複数のコア層32の側面全面を被覆するクラッド層33を形成する。本実施形態のクラッド層33は、コア層32の上面を被覆するように形成される。例えば、クラッド層31の上面全面にクラッド層33となる感光性樹脂層(図示略)を形成し、フォトリソグラフィ法に基づいて露光・現像を行った後に、感光性樹脂層を硬化させることにより、クラッド層33を形成する。
【0054】
次に、
図6(a)に示す工程では、クラッド層33の上面に保護フィルム70を形成する。例えば、クラッド層33の上面に、そのクラッド層33の上面全面を覆う保護フィルム70を貼り付ける。保護フィルム70としては、例えば、ポリエステル又はPET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルムの表面に離型剤を施したフィルムを用いることができる。離型剤としては、シリコーン系離型剤やフッ素系離型剤を用いることができる。なお、保護フィルム70の離型剤の施された面がクラッド層33の上面に接着される。保護フィルム70の厚さは、例えば、10μm~50μm程度とすることができる。
【0055】
続いて、
図6(b)に示す工程では、クラッド層31,33の所要の箇所に、傾斜面36を有する溝部35を形成する。溝部35は、保護フィルム70を厚さ方向に貫通し、クラッド層33を厚さ方向に貫通するように形成されている。溝部35は、例えば、クラッド層31の厚さ方向の途中まで延びるように形成されている。溝部35は、例えば、コア層32を厚さ方向に貫通するように形成されている。溝部35は、傾斜面36がコア層32の延出方向(光伝搬方向)に対して所定角度(例えば、45度)で傾斜するように、X軸方向及びZ軸方向に対して傾いた状態で延びるように形成されている。溝部35は、例えば、保護フィルム70の上面からコア層32の延出方向の端面32Aに向かって徐々に近づくように傾いた状態で延びるように形成されている。
図6(b)に示した例では、溝部35が左斜め下方に延びるように形成されている。溝部35は、例えば、
図6(b)において上側(保護フィルム70の上面側)から下側(底面側)に向かうに連れて開口幅が小さくなるテーパ状に形成されている。溝部35は、例えば、底面における開口幅が上側の開口端の開口幅よりも小さくなる四角錐台状に形成されている。
【0056】
溝部35の内壁面のうち傾斜面36と対向する対向面35Aは、例えば、保護フィルム70とクラッド層31,33とコア層32とによって構成されている。すなわち、対向面35Aの一部は、コア層32の端面32Aによって構成されている。対向面35Aは、コア層32の延出方向に対して傾斜する傾斜面に形成されている。すなわち、本工程後のコア層32の端面32Aは、コア層32の延出方向に対して傾斜する傾斜面に形成されている。対向面35Aは、Z軸方向から見た平面視において、傾斜面36の一部と重なっている。
【0057】
以上説明した溝部35は、例えば、エキシマレーザやYAGレーザによるレーザ加工法によって形成することができる。例えば、溝部35の深さに高い寸法精度が要求される場合には、エキシマレーザを用いることが好ましい。エキシマレーザは1ショット、つまり1回の照射で加工される深さの精度が高いため、狙い値の深さに溝部35を精度良く加工することができる。
【0058】
レーザ加工法では、保護フィルム70の上面に対してレーザを斜めに入射させることにより(図中矢印参照)、そのレーザによって保護フィルム70、クラッド層31,33及びコア層32が斜め加工される。これにより、傾斜面36及び対向面35Aを有する溝部35が形成される。エキシマレーザを用いる場合には、例えば、レーザが中心軸より各7度で内側に傾くテーパ角度を有する。この場合において、光の伝搬方向に対する傾斜面36の傾斜角度を45度に設定するためには、エキシマレーザの照射角度が52度(=45度+7度)に設定される。
【0059】
なお、本例では、溝部35が保護フィルム70の上面からクラッド層31の厚さ方向の途中まで延びるように形成したが、溝部35の深さはこれに限定されない。例えば、溝部35を、保護フィルム70の上面から配線パターン22の上面まで延びるように形成してもよい。
【0060】
次に、
図7(a)に示す工程では、保護フィルム70をマスクとして利用し、溝部35の傾斜面36上に光沢のある金属膜71を選択的に被着する。金属膜71を傾斜面36に被着する方法としては、例えば、スパッタリング法や蒸着法などを用いることができる。金属膜71は、例えば、クロム(Cr)層と金(Au)層とが順に積層されて形成される。
【0061】
金属膜71は、例えば、保護フィルム70の上面全面を被覆するように形成される。金属膜71は、例えば、保護フィルム70から露出された溝部35の内壁面を被覆するように形成される。金属膜71は、例えば、溝部35の内壁面のうち保護フィルム70と平面視で重ならない部分を覆うように形成される。金属膜71は、例えば、溝部35の傾斜面36のうち対向面35Aと平面視で重ならない部分を覆うように形成される。具体的には、本例の金属膜71は、保護フィルム70によって構成される傾斜面36と、クラッド層33によって構成される傾斜面36と、クラッド層31によって構成される傾斜面36の一部とを覆うように形成される。このように傾斜面36を覆うように形成された金属膜71は、保護フィルム70の上面全面を覆う金属膜71と連続して形成されている。ここで、対向面35Aは、保護フィルム70と平面視で重なるように形成されている。このため、スパッタリング法や蒸着法などにより金属膜71を被着する場合には、対向面35Aには金属膜71が被着されない。
【0062】
本工程では、前工程のレーザ加工によって溝部35の形成された保護フィルム70がそのまま金属膜形成用マスクとして利用される。すなわち、レーザ加工によって形成された保護フィルム70の溝部35がそのまま金属膜形成用マスクの開口部となる。このため、金属膜形成用マスクに位置ずれが発生することを防止できる。また、金属膜形成用マスクの開口部の平面形状が溝部35の平面形状よりも大きくなることを抑制できる。これにより、溝部35の内壁面のみに金属膜71を形成することができる。
【0063】
続いて、保護フィルム70を除去する。例えば、クラッド層33の上面から保護フィルム70を剥離する。保護フィルム70が剥離されると、保護フィルム70の表面に形成されていた金属膜71が除去される。これにより、
図7(b)に示すように、クラッド層31,33に形成された溝部35の傾斜面36に形成された金属膜71のみが残り、その金属膜71によって光路変換ミラー37が構成される。また、クラッド層33の上面が外部に露出される。
【0064】
次に、
図8(a)に示す工程では、クラッド層31,33及びコア層32の所要の箇所に、それらクラッド層31,33及びコア層32を厚さ方向に貫通する開口部38を形成する。開口部38は、例えば、配線パターン22の上面の一部を露出するように形成されている。開口部38は、例えば、
図7(b)に示した対向面35Aに対応する位置に形成されている。開口部38は、例えば、X軸方向において光路変換ミラー37と離れた位置に形成されている。開口部38は、例えば、その内壁面がコア層32の延出方向(光伝搬方向)に対して垂直に延びる垂直面となるように形成される。具体的には、開口部38は、コア層32の端面32Aが光伝搬方向(ここでは、X軸方向)に対して垂直に延びる垂直面となるように形成される。本工程では、開口部38を形成する際にコア層32の端部の一部を削ることにより、コア層32の端面32Aを傾斜面から垂直面に形成する。
【0065】
開口部38は、例えば、エキシマレーザやYAGレーザによるレーザ加工法によって形成することができる。エキシマレーザを用いる場合には、例えば、エキシマレーザの照射角度が7度に設定される。
【0066】
続いて、
図8(b)に示す工程では、クラッド層33の上面に、クラッド層33の上面全面を覆うとともに、溝部35及び開口部38を充填するクラッド層34を形成する。例えば、クラッド層33の上面全面にクラッド層34となる感光性樹脂層(図示略)を形成し、フォトリソグラフィ法に基づいて露光・現像を行った後に、感光性樹脂層を硬化させることにより、クラッド層34を形成する。以上の工程により、配線基板20上に、コア層32がクラッド層31,33,34によって囲まれた構造の光導波路30が形成される。
【0067】
次いで、
図9(a)に示す工程では、光導波路30の所要箇所に、配線パターン22の一部を接続パッドP1として露出する開口部30Xを形成する。開口部30Xは、例えば、エキシマレーザやYAGレーザによるレーザ加工法によって形成することができる。なお、クラッド層31,33,34が感光性樹脂を用いて形成されている場合には、例えば、フォトリソグラフィ法により所要の開口部30Xを形成するようにしてもよい。
【0068】
次に、
図9(b)に示す工程では、開口部30Xから露出された接続パッドP1上にはんだ40を形成する。はんだ40は、例えば、はんだペーストの塗布などにより形成することができる。以上の製造工程により、光学素子50(
図1参照)を実装する前の光導波路装置10を製造することができる。
【0069】
続いて、
図10(a)に示す工程では、電極端子51及び受発光部52を有する光学素子50を準備する。次いで、光学素子50の電極端子51を配線基板20の接続パッドP1上に位置決めし、はんだ40を溶融させ、光学素子50の電極端子51を接続パッドP1に電気的に接続する。これにより、配線基板20に光学素子50がフリップチップ実装される。このとき、光学素子50の受発光部52が光路変換ミラー37の真上に配置され、各光学素子50の光軸中心A1と光路変換ミラー37の平面中心とが略一致するように配置される。これにより、光学素子50が光路変換ミラー37によって光導波路30(コア層32)に光結合される。
【0070】
次いで、
図10(b)に示す工程では、光導波路30の積層された配線基板20と光学素子50との隙間を充填するようにアンダーフィル樹脂60を形成する。アンダーフィル樹脂60は、開口部30X内にも充填される。
【0071】
以上の製造工程により、本実施形態の光導波路装置10を製造することができる。
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)溝部35を、各コア層32に対応して個別に設けるようにした。このため、従来の溝部113に比べて、溝部35の平面形状を小さく形成することができる。これにより、溝部35によって光導波路30のデザインが制約されることを抑制できるため、光導波路30の設計自由度を向上させることができる。
【0072】
例えば、
図25に示した従来の光導波路装置100のように、溝部113が基板130のY軸方向の全長にわたって形成されている場合には、光学素子の電極端子が挿入される開口部110Xと溝部113とが干渉しないように、開口部110Xの位置が制約される。例えば、X軸方向における開口部110Xと溝部113との間の距離を広く設定する必要がある。
【0073】
これに対し、本実施形態の光導波路装置10では、溝部35の平面形状が小さく形成されるため、開口部30XをX軸方向において溝部35と重ならない位置に形成することができる。このため、光導波路装置10では、X軸方向における開口部30Xと溝部35との間の距離を狭く設定することができる。これにより、光学素子50の電極端子51と受発光部52との間の間隔が狭い場合であっても、その光学素子50を配線基板20に好適に実装することができる。
【0074】
(2)溝部35の傾斜面36がクラッド層31,33のみに形成されている。すなわち、傾斜面36がクラッド層31,33のみによって構成されている。また、光路変換ミラー37がコア層32とは接触されておらず、コア層32と離れて設けられている。
【0075】
この構成によれば、傾斜面36がクラッド層31,33及びコア層32によって構成される場合に比べて、光導波路30における界面を減らすことができる。これにより、光導波路30における光伝搬損失を低減することができ、光導波路30の信頼性を向上することができる。
【0076】
(3)溝部35を充填するクラッド層34を設けた。これにより、光路変換ミラー37が外部に露出されないため、光路変換ミラー37に汚れが付着したり、光路変換ミラー37が損傷したりすることを抑制できる。
【0077】
(4)光路変換ミラー37を、クラッド層31,33,34のみで覆うようにした。これにより、光路変換ミラー37を、同一材料からなるクラッド層31,33,34のみによって被覆することができる。
【0078】
(5)光路変換ミラー37と対向するコア層32の端面32Aを、コア層32の延出方向(光伝搬方向)に対して垂直に延びる垂直面に形成した。これにより、コア層32の端面32Aにおいて光が意図しない方向に反射することを抑制できる。このため、光導波路30における光伝搬損失を低減することができる。
【0079】
(6)開口部38を形成することにより、コア層32の端面32Aを垂直面に形成した。これにより、コア層32の端面32Aを精度良く垂直に形成することができる。このため、光導波路30における光伝搬損失を好適に低減することができる。
【0080】
(7)溝部35を形成する前にクラッド層33の上面を覆う保護フィルム70を形成し、その保護フィルム70の上面に対して斜めに入射するレーザによって溝部35を形成した。その後、保護フィルム70をそのまま金属膜形成用マスクとして利用して、溝部35の傾斜面36に金属膜71からなる光路変換ミラー37を形成した。この製造方法によれば、レーザ加工によって形成された保護フィルム70の溝部35がそのまま金属膜形成用マスクの開口部となる。このため、金属膜形成用マスクに位置ずれが発生することを防止できる。また、金属膜形成用マスクの開口部の平面形状が溝部35の平面形状よりも大きくなることを抑制できる。これにより、溝部35の内壁面(ここでは、傾斜面36)のみに金属膜71からなる光路変換ミラー37を形成することができる。したがって、光路変換ミラー37の平面形状をより小さく形成することができる。また、保護フィルム70とは別に、金属膜形成用マスクを設ける必要がない。
【0081】
(8)例えば、従来の光導波路装置100の製造方法では、
図27(a)に示すように、回転ブレードにより溝部113が形成された後に、光路変換ミラー115の形成領域に対応する開口部140Xを有するマスク140が形成される。このとき、開口部140Xは、例えば寸法誤差や位置合わせ精度を考慮して、溝部113の幅及びコア層112の幅よりも広く形成される。このため、開口部140Xは、溝部113の周辺に位置する上部クラッド層111Bの上面を露出する。したがって、従来の光導波路装置100では、光路変換ミラー115が、傾斜面114に形成されるとともに上部クラッド層111Bの上面に形成される。この結果、従来の光路変換ミラー115には段差部が形成される。このように光路変換ミラー115が段差部を有する場合には、光導波路110内においてクラックが発生しやすくなる。
【0082】
これに対し、本実施形態の光導波路装置10では、傾斜面36のみに光路変換ミラー37が形成されており、その光路変換ミラー37が段差の無い平坦な形状に形成されている。このため、光導波路30内においてクラックが発生することを好適に抑制できる。
【0083】
(第2実施形態)
以下、
図11~
図15に従って第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。先の
図1~
図10に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0084】
まず、
図4(a)~
図5(a)に示した工程と同様の工程を実施することにより、
図11(a)に示した構造体を製造する。すなわち、基板本体21の上面にクラッド層31を形成し、クラッド層31の上面にコア層82を形成する。本例のコア層82は、例えば、
図5(a)に示したコア層32よりもX軸方向に沿う長さが長く形成されている。
【0085】
次に、
図11(b)に示す工程では、
図5(b)に示した工程と同様に、クラッド層31の上面に、複数のコア層82の側面全面を被覆するクラッド層33を形成する。本実施形態のクラッド層33は、コア層32の上面全面を被覆するように形成される。
【0086】
続いて、
図12(a)に示す工程では、
図6(a)に示した工程と同様に、クラッド層33の上面に保護フィルム70を形成する。
次いで、
図12(b)に示す工程では、
図6(b)に示した工程と同様に、クラッド層31,33及びコア層82の所要の箇所に、傾斜面86を有する溝部85を形成する。溝部85は、保護フィルム70を厚さ方向に貫通し、クラッド層33を厚さ方向に貫通するように形成されている。溝部85は、コア層82を厚さ方向に貫通するように形成され、コア層82を分断するように形成されている。溝部85は、例えば、クラッド層31の厚さ方向の途中まで延びるように形成されている。溝部85は、傾斜面86がコア層82の延出方向(ここでは、X軸方向)に対して所定角度(例えば、45度)で傾斜するように、X軸方向及びZ軸方向に対して傾いた状態で延びるように形成されている。溝部85は、例えば、底面における開口幅が上側の開口端の開口幅よりも小さくなる四角錐台状に形成されている。
【0087】
溝部85の傾斜面86は、例えば、保護フィルム70とクラッド層31,33とコア層82とによって構成されている。すなわち、傾斜面86の一部は、コア層82の端面によって構成されている。溝部85の内壁面のうち傾斜面86と対向する対向面85Aは、例えば、保護フィルム70とクラッド層31,33とコア層82とによって構成されている。すなわち、対向面85Aの一部は、コア層82の端面82Aによって構成されている。対向面85Aは、コア層82の延出方向に対して傾斜する傾斜面に形成されている。すなわち、本工程後のコア層82の端面82Aは、コア層82の延出方向に対して傾斜する傾斜面に形成されている。対向面85Aは、Z軸方向から見た平面視において、傾斜面86の一部と重なっている。
【0088】
以上説明した溝部85は、例えば、エキシマレーザやYAGレーザによるレーザ加工法によって形成することができる。
次に、
図13(a)に示す工程では、保護フィルム70をマスクとして利用し、溝部85の傾斜面86上に光沢のある金属膜71を選択的に被着する。金属膜71は、例えば、保護フィルム70の上面全面を被覆するように形成される。金属膜71は、例えば、溝部85の内壁面のうち保護フィルム70と平面視で重ならない部分を覆うように形成される。金属膜71は、例えば、溝部85の傾斜面86のうち対向面85Aと平面視で重ならない部分を覆うように形成される。具体的には、本例の金属膜71は、保護フィルム70によって構成される傾斜面86と、クラッド層33によって構成される傾斜面86と、コア層32によって構成される傾斜面86と、クラッド層31によって構成される傾斜面86の一部とを覆うように形成される。ここで、対向面85Aは、保護フィルム70と平面視で重なるように形成されている。このため、スパッタリング法や蒸着法などにより金属膜71を被着する場合には、対向面85Aには金属膜71が被着されない。
【0089】
続いて、クラッド層33の上面から保護フィルム70を剥離する。保護フィルム70が剥離されると、保護フィルム70の表面に形成されていた金属膜71が除去される。これにより、
図13(b)に示すように、クラッド層31,33及びコア層82に形成された溝部85の傾斜面86に形成された金属膜71のみが残り、その金属膜71によって光路変換ミラー37が構成される。すなわち、本例の光路変換ミラー37は、コア層82に接触するとともに、クラッド層31,33に接触している。
【0090】
次に、
図14(a)に示す工程では、
図8(a)に示した工程と同様に、クラッド層31,33及びコア層82の所要の箇所に、それらクラッド層31,33及びコア層82を厚さ方向に貫通する開口部38を形成する。開口部38は、例えば、配線パターン22の上面の一部を露出するように形成されている。開口部38は、例えば、コア層82の端面82Aがコア層82の延出方向(光伝搬方向)に対して垂直に延びる垂直面となるように形成される。本工程では、開口部38を形成する際にコア層82の端部の一部を削ることにより、コア層82の端面82Aを傾斜面から垂直面に形成する。
【0091】
続いて、
図14(b)に示す工程では、
図8(b)に示した工程と同様に、クラッド層33の上面に、クラッド層33の上面全面を覆うとともに、溝部85及び開口部38を充填するクラッド層34を形成する。以上の工程により、配線基板20上に、コア層82がクラッド層31,33,34によって囲まれた構造の光導波路30が形成される。このとき、光路変換ミラー37は、クラッド層31,33,34及びコア層82によって囲まれている。
【0092】
次いで、
図15(a)に示す工程では、
図9(a)に示した工程と同様に、光導波路30の所要箇所に、配線パターン22の一部を接続パッドP1として露出する開口部30Xを形成する。続いて、開口部30Xから露出された接続パッドP1上にはんだ40を形成する。以上の製造工程により、光学素子50(
図15(b)参照)を実装する前の光導波路装置10Aを製造することができる。
【0093】
次に、
図15(b)に示す工程では、電極端子51及び受発光部52を有する光学素子50を準備する。続いて、光学素子50の電極端子51を配線基板20の接続パッドP1上に位置決めし、はんだ40を溶融させ、光学素子50の電極端子51を接続パッドP1に電気的に接続する。このとき、光学素子50の受発光部52が光路変換ミラー37の真上に配置され、各光学素子50の光軸中心A1と光路変換ミラー37の平面中心とが略一致するように配置される。これにより、光学素子50が光路変換ミラー37によって光導波路30(コア層82)に光結合される。
【0094】
次いで、光導波路30の積層された配線基板20と光学素子50との隙間を充填するようにアンダーフィル樹脂60を形成する。アンダーフィル樹脂60は、開口部30X内にも充填される。
【0095】
以上の製造工程により、本実施形態の光導波路装置10Aを製造することができる。
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)、(3)、(5)~(8)と同様の効果を奏することができる。
【0096】
(第3実施形態)
以下、
図16~
図22に従って第3実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。先の
図1~
図15に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0097】
図16に示すように、光導波路装置10Bは、配線基板20と、配線基板20上に形成された光導波路90と、光学素子50とを有している。
光導波路90は、配線基板20の基板本体21の上面に形成されている。光導波路90は、クラッド層91と、コア層92と、クラッド層93と、クラッド層94とを有している。
【0098】
クラッド層91は、基板本体21の上面に形成されている。クラッド層91は、例えば、配線パターン22を覆うように基板本体21の上面に形成されている。クラッド層91の上面には、1つ又は複数のコア層92が形成されている。
【0099】
図17に示すように、本実施形態のクラッド層91の上面には、2つのコア層92が形成されている。各コア層92は、光信号の伝搬を行うためのものである。各コア層92は、例えば、長尺状に形成されている。各コア層92は、例えば、X軸方向に沿って延びるように帯状に形成されている。本実施形態の各コア層92の延出方向は、X軸方向と一致している。各コア層92は、例えば、四角柱状に形成されている。複数のコア層92は、コア層92の延出方向と直交するY軸方向に沿って並んで設けられている。複数のコア層92は、例えば、平行に延びるように形成されている。なお、
図17は、
図16に示した光導波路装置10Bを上方から見た平面図であり、クラッド層94及び光学素子50等が透視的に描かれている。
【0100】
図16に示すように、クラッド層93は、クラッド層91の上面に形成されている。クラッド層93は、各コア層92の延出方向(ここでは、X軸方向)の端面92Aを覆うように形成されている。クラッド層93は、コア層92のうち端面92Aのみを覆うように形成されている。クラッド層93は、各コア層92の端面92Aと接するように形成されている。
図17に示すように、クラッド層93は、例えば、各コア層92に対応して設けられている。すなわち、本例の光導波路90では、クラッド層91の上面に2つのクラッド層93が形成されている。各クラッド層93は、例えば、X軸方向に沿って帯状に延びるように形成されている。各クラッド層93は、例えば、コア層92の端面92Aから反X矢印方向(図中右側)に向かって延びるように形成されている。各クラッド層93のY軸方向に沿う寸法(つまり、幅寸法)は、各コア層92の幅寸法よりも短くなるように形成されている。複数のクラッド層93は、コア層92の延出方向と直交するY軸方向に沿って並んで設けられている。複数のクラッド層93は、例えば、平行に延びるように形成されている。なお、クラッド層93を、コア層92の端面92Aよりも反X矢印方向(図中右方)に位置する領域全体に広がるように形成してもよい。
【0101】
図16に示すように、各クラッド層93は、例えば、各コア層92と略同じ厚さに形成されている。各クラッド層93の上面は、例えば、各コア層92の上面と同一平面上に形成されている。なお、各クラッド層93を、コア層92よりも厚く形成してもよいし、コア層92よりも薄く形成してもよい。
【0102】
クラッド層91,93には、1つ又は複数(ここでは、2つ)の溝部95が形成されている。各溝部95は、各コア層92に対応して設けられている。各溝部95は、例えば、クラッド層93の上面からクラッド層91の厚さ方向(Z軸方向)の途中まで延びるように形成されている。例えば、溝部95の底面は、クラッド層91の厚さ方向の途中に位置している。各溝部95は、例えば、光路を90度変換するための傾斜面96を有している。傾斜面96は、溝部95の内壁面の一部を構成している。傾斜面96は、例えば、コア層92の延出方向(X軸方向)に対して所定の角度(例えば、45度)に傾斜して形成されている。すなわち、傾斜面96は、コア層92を伝搬する光の伝搬方向(進行方向)に対して45度傾斜して形成されている。換言すると、溝部95は、傾斜面96がコア層92の延出方向(光伝搬方向)に対して45度傾斜するように、X軸方向及びZ軸方向に対して傾いた状態で延びるように形成されている。溝部95は、例えば、クラッド層93の上面からコア層92の端面92Aに向かって徐々に近づくように傾いた状態で延びるように形成されている。本例では、溝部95が左斜め下方に延びるように形成されている。溝部95は、例えば、
図16において上側(クラッド層93の上面側)から下側(底面側)に向かうに連れて開口幅が小さくなるテーパ状に形成されている。溝部95は、例えば、底面における開口幅が上側の開口端の開口幅よりも小さくなる四角錐台状に形成されている。溝部95は、例えば、その底面の一部がZ軸方向から見た平面視においてコア層92と重なるように形成されている。但し、溝部95の底面は、Z軸方向においてコア層92と離れた位置に設けられている。
【0103】
傾斜面96は、例えば、クラッド層93の上面からクラッド層91の厚さ方向の途中まで延びるように形成されている。傾斜面96は、例えば、クラッド層91,93のみに形成されている。換言すると、傾斜面96は、コア層92に形成されていない。傾斜面96は、例えば、コア層92と離れて設けられている。傾斜面96は、X軸方向において、コア層92の延出方向の端面92Aと離れて設けられている。すなわち、傾斜面96は、コア層92と接触していない。但し、傾斜面96は、X軸方向において、コア層92の中心軸線の延長線上に形成されている。傾斜面96は、X軸方向において、コア層92の端面92Aと対向するように形成されている。
【0104】
溝部95の内壁面は、傾斜面96と対向する対向面97を有している。対向面97は、X軸方向において傾斜面96と対向するように形成されている。対向面97は、例えば、クラッド層93の上面からクラッド層91の厚さ方向の途中まで延びるように形成されている。対向面97は、例えば、クラッド層91,93のみに形成されている。換言すると、対向面97は、コア層92に形成されていない。対向面97は、例えば、コア層92と離れて設けられている。すなわち、対向面97は、コア層92と接触していない。対向面97の一部は、X軸方向において、コア層92の端面92Aと対向するように形成されている。対向面97は、例えば、コア層92の延出方向に対して傾斜する傾斜面に形成されている。対向面97の上端側の一部は、例えば、Z軸方向から見た平面視において、傾斜面96の一部と重なっている。また、対向面97の下端側の一部は、例えば、Z軸方向から見た平面視において、コア層92の一部と重なっている。
【0105】
図17に示すように、複数の溝部95は、Y軸方向において、互いに離れて設けられている。すなわち、複数の溝部95は、Y軸方向において所定の間隔を空けて設けられている。
【0106】
各溝部95(傾斜面96)の平面形状は、例えば、四角形状に形成されている。各溝部95の平面形状は、例えば、上底と下底との長さが互いに異なる台形状に形成されている。各溝部95は、例えば、X軸方向において、コア層92から最も離れた端部からコア層92に近づくに連れて開口幅(つまり、Y軸方向に沿う開口幅)が狭くなるように形成されている。各溝部95の開口幅は、例えば、コア層92のY軸方向に沿う寸法(つまり、幅寸法)よりも広く設定されている。
【0107】
傾斜面96は、例えば、X軸方向(コア層92の中心軸線)から見た正面形状が四角形状に形成されている。傾斜面96の正面形状は、例えば、上底と下底との長さが互いに異なる台形状に形成されている。傾斜面96は、例えば、上端から下端に向かうに連れて、Y軸方向に沿う寸法(つまり、幅寸法)が短くなるように形成されている。すなわち、傾斜面96は、クラッド層93の上面側からクラッド層91の下面側に向かうに連れて幅寸法が短くなるように形成されている。
【0108】
各傾斜面96には、光路を90度変換するための光路変換ミラー37が形成されている。すなわち、光導波路90には、複数(ここでは、2つ)の光路変換ミラー37が設けられている。複数の光路変換ミラー37は、例えば、Y軸方向において互いに離れて設けられている。すなわち、複数の光路変換ミラー37は、Y軸方向において所定の間隔を空けて設けられている。光路変換ミラー37の材料としては、例えば、良好な光反射性を有する金属材料を用いることができる。光路変換ミラー37の材料としては、例えば、金、銀やアルミニウム等の金属材料を用いることができる。
【0109】
図16に示すように、各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面96を覆うように形成されている。例えば、各光路変換ミラー37は、Z軸方向から見た平面視において、対向面97と重ならない部分の傾斜面96を覆うように形成されている。各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面96の上部分の全体を覆うように形成されている。各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面96の上部分を、Y軸方向の全長にわたって覆うように形成されている。各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面96の下部分を露出するように形成されている。すなわち、傾斜面96の下部分は、光路変換ミラー37から露出されている。各光路変換ミラー37は、例えば、コア層92の下面及びクラッド層91の上面よりも下方に突出するように形成されている。各光路変換ミラー37の上端面は、例えば、クラッド層93の上面と面一になるように形成されている。各光路変換ミラー37の上端面は、例えば、コア層92の上面と同一平面上に形成されている。
【0110】
各光路変換ミラー37は、例えば、コア層92と離れて設けられている。各光路変換ミラー37は、X軸方向において、コア層92の延出方向の端面92Aと離れて設けられている。すなわち、各光路変換ミラー37は、コア層92と接触していない。但し、各光路変換ミラー37は、X軸方向において、コア層92の中心軸線の延長線上に形成されている。各光路変換ミラー37は、X軸方向において、コア層92の端面92Aと対向するように形成されている。
【0111】
各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面96のみに形成されている。換言すると、各光路変換ミラー37は、クラッド層93の上面やコア層92の上面に形成されていない。各光路変換ミラー37は、例えば、傾斜面96上に平坦に形成されている。例えば、各光路変換ミラー37は、段差を有さない平坦な形状に形成されている。例えば、各光路変換ミラー37は、段差を有さない薄板状に形成されている。
【0112】
図17に示すように、各光路変換ミラー37の平面形状は、例えば、傾斜面96の平面形状に沿った形状に形成されている。各光路変換ミラー37の平面形状は、例えば、四角形状に形成されている。各光路変換ミラー37の平面形状は、例えば、上底と下底との長さが互いに異なる台形状に形成されている。各光路変換ミラー37は、例えば、X軸方向において、コア層92から最も離れた上端部からコア層92に近い下端部に向かうに連れて、Y軸方向に沿う寸法(つまり、幅寸法)が短くなるように形成されている。各光路変換ミラー37の幅寸法は、例えば、コア層92の幅寸法よりも広く設定されている。
【0113】
図16に示すように、クラッド層94は、例えば、クラッド層93の上面を覆うように形成されている。クラッド層94は、例えば、溝部95を充填するように形成されている。クラッド層94は、例えば、光路変換ミラー37を覆うように形成されている。クラッド層94は、例えば、クラッド層91,93から露出された光路変換ミラー37の表面全面を覆うように形成されている。これにより、光路変換ミラー37の表面全面は、クラッド層91,93,94によって覆われる。すなわち、光路変換ミラー37は、クラッド層91,93,94のみに覆われている。換言すると、光路変換ミラー37は、クラッド層91,93,94に埋設されている。
【0114】
クラッド層94は、例えば、隣り合うコア層92の間の空間を充填するように形成されている。クラッド層94は、各コア層92の側面全面を覆うように形成されている。クラッド層94は、例えば、コア層92の上面全面を覆うように形成されている。このように、光導波路90は、基板本体21の上面に、クラッド層91とコア層92及びクラッド層93とクラッド層94とがこの順番で積層された構造を有し、コア層92がクラッド層91とクラッド層93とクラッド層94とによって囲まれた構造を有している。
【0115】
クラッド層94は、例えば、隣り合うクラッド層93の間の空間を充填するように形成されている。クラッド層94は、例えば、各クラッド層93の側面全面を覆うように形成されている。
【0116】
これらクラッド層91,93,94及びコア層92の材料としては、基本的には同じ材料を用いることができる。例えば、クラッド層91,93,94及びコア層92の材料としては、光学素子50が使用する波長域において光透過性を有する樹脂材を用いることができる。具体的には、クラッド層91,93,94及びコア層92の材料としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などを用いることができる。但し、光信号の伝搬がコア層92内でのみ行われるようにするために、コア層92を構成する材料としては、そのコア層92の周囲に形成されるクラッド層91,93,94を構成する材料よりも屈折率の高い材料が選定されている。なお、コア層92とクラッド層91,93,94との屈折率の差は、特に限定されないが、例えば、0.3%~5.5%程度が好ましく、0.8%~2.2%程度がより好ましい。
【0117】
クラッド層91の厚さ、具体的には配線パターン22の上面からクラッド層91の上面までの厚さは、例えば、10μm~15μm程度とすることができる。コア層92の厚さ、具体的にはクラッド層91の上面からコア層92の上面までの厚さは、例えば、30μm~80μm程度とすることができる。コア層92の幅寸法は、例えば、20μm~50μm程度とすることができる。コア層92のピッチは、例えば、100μm~300μm程度とすることができる。クラッド層93の厚さ、具体的にはクラッド層91の上面からクラッド層93の上面までの厚さは、例えば、30μm~90μm程度とすることができる。クラッド層93の幅寸法は、例えば、50μm~100μm程度とすることができる。クラッド層94の厚さ、具体的にはクラッド層93の上面からクラッド層94の上面までの厚さは、例えば、30μm~80μm程度とすることができる。
【0118】
なお、
図16では、各クラッド層91,93,94を判り易くするため、実線にて区別している。例えば、光導波路90では、各クラッド層91,93,94の界面は消失していることがあり、境界は明確ではないことがある。
【0119】
光導波路90には、配線パターン22の一部を接続パッドP1として露出させるための開口部90Xが形成されている。開口部90Xは、光学素子50の電極端子51に対応する位置に設けられている。開口部90Xは、例えば、光路変換ミラー37から、コア層92から離れる方向に離れた位置に設けられている。開口部90Xは、例えば、クラッド層91,93,94を厚さ方向に貫通するように形成されている。開口部90Xは、例えば、
図16において上側(クラッド層94の上面側)から下側(配線パターン22側)に向かうに連れて開口幅(開口径)が小さくなるテーパ状に形成されている。例えば、開口部90Xは、下側の開口端の開口径が上側の開口端の開口径よりも小さくなる逆円錐台形状に形成されている。
【0120】
接続パッドP1上には、その接続パッドP1と光学素子50の電極端子51とを電気的に接続するはんだ40が形成されている。はんだ40の材料としては、例えば、Pbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金などを用いることができる。
【0121】
なお、必要に応じて、開口部90Xから露出する配線パターン22上にOSP処理を施してOSP膜を形成し、そのOSP膜上にはんだ40を形成するようにしてもよい。また、開口部90Xから露出する配線パターン22上に金属層を形成し、その金属層上にはんだ40を形成するようにしてもよい。金属層の例としては、例えば、Au層、Ni/Au層や、Ni/Pd/Au層などを挙げることができる。
【0122】
図17に示すように、光導波路90には、各コア層92に対して2つの開口部90Xが形成されている。複数の開口部90Xは、例えば、Y軸方向に沿って並んで設けられている。複数の開口部90Xは、例えば、Y軸方向において所定の間隔を空けて設けられている。各開口部90Xは、例えば、X軸方向において溝部95と重ならない位置に設けられている。すなわち、1つの溝部95と2つの開口部90Xとは、Y軸方向における位置が互いに異なる位置に設けられている。例えば、1つの溝部95と2つの開口部90Xとは互い違いに設けられている。例えば、溝部95は、Y軸方向において2つの開口部90Xの間に設けられている。
【0123】
図16に示すように、光学素子50は、光導波路90が積層(一体化)された配線基板20に実装されている。光学素子50は、例えば、電極端子51が開口部90X内に挿入され、電極端子51及びはんだ40を介して、配線基板20の接続パッドP1と電気的に接続されている。これにより、各光学素子50は、電極端子51及びはんだ40を介して、配線基板20の配線パターン22と電気的に接続されている。すなわち、各光学素子50は、配線基板20にフリップチップ実装されている。このとき、光学素子50は、受発光部52が光路変換ミラー37と対向するように、配線基板20に実装されている。光学素子50は、例えば、受発光部52が光路変換ミラー37の真上に配置されるように、配線基板20に実装されている。具体的には、光学素子50は、光軸中心A1が光路変換ミラー37の所定位置(例えば、光路変換ミラー37の傾斜面の中心)と平面視で重なるように、配線基板20に実装されている。換言すると、開口部90Xは、光軸中心A1と光路変換ミラー37の所定位置とを一致させた状態で、光学素子50の電極端子51が挿入可能な位置に形成されている。
【0124】
光学素子50と光導波路90及び配線基板20との間には、アンダーフィル樹脂60が形成されている。アンダーフィル樹脂60は、例えば、クラッド層94の上面と光学素子50の下面との隙間を充填するように形成されている。アンダーフィル樹脂60は、例えば、開口部90Xを充填するように形成されている。アンダーフィル樹脂60は、光学素子50の電極端子51と配線基板20の接続パッドP1との接続部分の接続強度を向上させるための樹脂である。アンダーフィル樹脂60の材料としては、例えば、光学素子50が使用する波長域において光透過性を有する樹脂材を用いることができる。アンダーフィル樹脂60の材料としては、例えば、クラッド層91,93,94と同一の樹脂材を好適に用いることができる。
【0125】
光学素子50が発光素子である場合には、発光部となる受発光部52の光軸中心A1(発光点)から出射された光は、図中矢印で示すように、光導波路90の溝部95に入射される。溝部95に入射された光は、傾斜面96に形成され光路変換ミラー37により光路が90度曲げられて光導波路90のコア層92に入射される。コア層92に入射された光は、コア層92内で全反射を繰り返して伝搬される。一方、光学素子50が受光素子である場合には、光導波路90のコア層92内を伝搬してきた光は、光路変換ミラー37で反射されて光導波路90の溝部95から出射され、受光部となる受発光部52の光軸中心A1に入射される。
【0126】
(光導波路装置10Bの製造方法)
次に、光導波路装置10Bの製造方法について説明する。なお、説明の便宜上、最終的に光導波路装置10Bの各構成要素となる部分には、最終的な構成要素の符号を付して説明する。
【0127】
まず、
図18(a)に示す工程では、
図4(a)に示した工程と同様に、配線基板20を準備する。次に、基板本体21の上面に、配線パターン22を覆うようにクラッド層91を形成する。例えば、基板本体21の上面全面にクラッド層91となる感光性樹脂層(図示略)を形成し、フォトリソグラフィ法に基づいて露光・現像を行った後に、感光性樹脂層を硬化させることにより、クラッド層91を形成する。感光性樹脂層の形成方法としては、例えば、液状の感光性樹脂を基板本体21の上面全面に塗布するようにしてもよいし、半硬化状態の感光性樹脂シートを基板本体21の上面全面にラミネートするようにしてもよい。ここで、感光性樹脂としては、例えば、UV硬化型の樹脂を好適に使用することができる。UV硬化樹脂としては、例えば、変性アクリレート(エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等)をベース樹脂とし、光重合に必要な反応性アクリルモノマーと光重合開始剤及び添加剤を含んだ樹脂材を用いることができる。このようなUV硬化樹脂の主反応はラジカル重合である。このようなUV硬化樹脂を用いることにより、常温で処理することができ、さらに、熱硬化型の樹脂を用いる場合よりも短時間で硬化するため、作業時間を短縮することができる。なお、感光性樹脂層の材料等は、後述するコア層92及びクラッド層93,94を形成する工程においても同様である。
【0128】
続いて、
図18(b)に示す工程では、クラッド層91の上面にクラッド層93を形成する。本例では、クラッド層91の上面に、複数の帯状のクラッド層93を形成する。例えば、クラッド層91の上面全面にクラッド層93となる感光性樹脂層(図示略)を形成し、フォトリソグラフィ法に基づいて露光・現像を行った後に、感光性樹脂層を硬化させることにより、帯状のクラッド層93を形成する。
【0129】
次いで、
図19(a)に示す工程では、クラッド層91の上面に複数のコア層92を形成する。各コア層92は、そのコア層92の延出方向の端面92Aがクラッド層93に接するように形成される。例えば、クラッド層93から露出されたクラッド層91の上面にコア層92となる感光性樹脂層(図示略)を形成し、フォトリソグラフィ法に基づいて露光・現像を行った後に、感光性樹脂層を硬化させることにより、コア層92を形成する。本工程により、クラッド層91の上面に、帯状のコア層92が形成される。
【0130】
次に、
図19(b)に示す工程では、クラッド層93の上面に保護フィルム72を形成する。例えば、クラッド層93の上面及びコア層92の上面に、それらクラッド層93の上面全面及びコア層92の上面全面を覆う保護フィルム72を貼り付ける。保護フィルム72としては、例えば、ポリエステル又はポリエチレンテレフタレートのフィルムの表面に離型剤を施したフィルムを用いることができる。離型剤としては、シリコーン系離型剤やフッ素系離型剤を用いることができる。なお、保護フィルム72の離型剤の施された面がクラッド層93の上面及びコア層92の上面に接着される。保護フィルム72の厚さは、例えば、10μm~50μm程度とすることができる。
【0131】
続いて、
図20(a)に示す工程では、クラッド層91,93の所要の箇所に、傾斜面96を有する溝部95を形成する。溝部95は、保護フィルム72を厚さ方向に貫通し、クラッド層93を厚さ方向に貫通するように形成されている。溝部95は、例えば、クラッド層91の厚さ方向の途中まで延びるように形成されている。溝部95は、傾斜面96がコア層92の延出方向(光伝搬方向)に対して所定角度(例えば、45度)で傾斜するように、X軸方向及びZ軸方向に対して傾いた状態で延びるように形成されている。溝部95は、例えば、保護フィルム72の上面からコア層92の延出方向の端面92Aに向かって徐々に近づくように傾いた状態で延びるように形成されている。溝部95は、コア層92と離れて形成されている。
【0132】
溝部95の内壁面を構成する傾斜面96及び対向面97は、例えば、保護フィルム72とクラッド層91,93とによって構成されている。傾斜面96及び対向面97は、コア層92の端面92Aに接していない。すなわち、傾斜面96及び対向面97は、コア層92の端面92Aと離れて形成されている。対向面97は、コア層92の延出方向に対して傾斜する傾斜面に形成されている。対向面97は、Z軸方向から見た平面視において、傾斜面96の一部と重なっている。
【0133】
以上説明した溝部95は、例えば、エキシマレーザやYAGレーザによるレーザ加工法によって形成することができる。例えば、溝部95の深さに高い寸法精度が要求される場合には、エキシマレーザを用いることが好ましい。エキシマレーザは1ショット、つまり1回の照射で加工される深さの精度が高いため、狙い値の深さに溝部95を精度良く加工することができる。
【0134】
レーザ加工法では、保護フィルム72の上面に対してレーザを斜めに入射させることにより(図中矢印参照)、そのレーザによって保護フィルム72及びクラッド層91,93が斜め加工される。これにより、傾斜面96及び対向面97を有する溝部95が形成される。エキシマレーザを用いる場合には、例えば、レーザが中心軸より各7度で内側に傾くテーパ角度を有する。この場合において、光の伝搬方向に対する傾斜面96の傾斜角度を45度に設定するためには、エキシマレーザの照射角度が52度(=45度+7度)に設定される。
【0135】
なお、本例では、溝部95が保護フィルム72の上面からクラッド層91の厚さ方向の途中まで延びるように形成したが、溝部95の深さはこれに限定されない。例えば、溝部95を、保護フィルム72の上面から配線パターン22の上面まで延びるように形成してもよい。
【0136】
次に、
図20(b)に示す工程では、保護フィルム72をマスクとして利用し、溝部95の傾斜面96上に光沢のある金属膜73を選択的に被着する。金属膜73を傾斜面96に被着する方法としては、例えば、スパッタリング法や蒸着法などを用いることができる。金属膜73は、例えば、Cr層とAu層とが順に積層されて形成される。
【0137】
金属膜73は、例えば、保護フィルム72の上面全面を被覆するように形成される。金属膜73は、例えば、保護フィルム72から露出された溝部95の内壁面を被覆するように形成される。金属膜73は、例えば、溝部95の内壁面のうち保護フィルム72と平面視で重ならない部分を覆うように形成される。具体的には、本例の金属膜73は、保護フィルム72によって構成される傾斜面96と、クラッド層93によって構成される傾斜面96と、クラッド層91によって構成される傾斜面96の一部とを覆うように形成される。このように傾斜面96を覆うように形成された金属膜73は、保護フィルム72の上面全面を覆う金属膜73と連続して形成されている。ここで、対向面97は、保護フィルム72と平面視で重なるように形成されている。このため、スパッタリング法や蒸着法などにより金属膜73を被着する場合には、対向面97には金属膜73が被着されない。
【0138】
本工程では、前工程のレーザ加工によって溝部95の形成された保護フィルム72がそのまま金属膜形成用マスクとして利用される。すなわち、レーザ加工によって形成された保護フィルム72の溝部95がそのまま金属膜形成用マスクの開口部となる。このため、金属膜形成用マスクに位置ずれが発生することを防止できる。また、金属膜形成用マスクの開口部の平面形状が溝部95の平面形状よりも大きくなることを抑制できる。これにより、溝部95の内壁面のみに金属膜73を形成することができる。
【0139】
続いて、保護フィルム72を除去する。例えば、クラッド層93の上面から保護フィルム72を剥離する。保護フィルム72が剥離されると、保護フィルム72の表面に形成されていた金属膜73が除去される。これにより、
図21(a)に示すように、クラッド層91,93に形成された溝部95の傾斜面96に形成された金属膜73のみが残り、その金属膜73によって光路変換ミラー37が構成される。また、コア層92の上面及びクラッド層93の上面が外部に露出される。
【0140】
次に、
図21(b)に示す工程では、コア層92の上面全面及びクラッド層93の上面全面を覆うとともに、溝部95を充填するクラッド層94を形成する。クラッド層94は、例えば、隣り合うコア層92の間の空間を充填するように形成される。クラッド層94は、例えば、隣り合うクラッド層93の間の空間を充填するように形成される。例えば、クラッド層91,93及びコア層92の上面にクラッド層94となる感光性樹脂層(図示略)を形成し、フォトリソグラフィ法に基づいて露光・現像を行った後に、感光性樹脂層を硬化させることにより、クラッド層94を形成する。以上の工程により、配線基板20上に、コア層92がクラッド層91,93,94によって囲まれた構造の光導波路90が形成される。
【0141】
次いで、
図22(a)に示す工程では、光導波路90の所要箇所に、配線パターン22の一部を接続パッドP1として露出する開口部90Xを形成する。開口部90Xは、例えば、エキシマレーザやYAGレーザによるレーザ加工法によって形成することができる。なお、クラッド層91,93,94が感光性樹脂を用いて形成されている場合には、例えば、フォトリソグラフィ法により所要の開口部90Xを形成するようにしてもよい。
【0142】
次に、開口部90Xから露出された接続パッドP1上にはんだ40を形成する。はんだ40は、例えば、はんだペーストの塗布などにより形成することができる。以上の製造工程により、光学素子50(
図16参照)を実装する前の光導波路装置10Bを製造することができる。
【0143】
続いて、
図22(b)に示す工程では、電極端子51及び受発光部52を有する光学素子50を準備する。次いで、光学素子50の電極端子51を配線基板20の接続パッドP1上に位置決めし、はんだ40を溶融させ、光学素子50の電極端子51を接続パッドP1に電気的に接続する。これにより、配線基板20に光学素子50がフリップチップ実装される。このとき、光学素子50の受発光部52が光路変換ミラー37の真上に配置され、各光学素子50の光軸中心A1と光路変換ミラー37の平面中心とが略一致するように配置される。これにより、光学素子50が光路変換ミラー37によって光導波路90(コア層92)に光結合される。
【0144】
次いで、光導波路90の積層された配線基板20と光学素子50との隙間を充填するようにアンダーフィル樹脂60を形成する。アンダーフィル樹脂60は、開口部90X内にも充填される。
【0145】
以上の製造工程により、本実施形態の光導波路装置10Bを製造することができる。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(5),(7),(8)の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
【0146】
(9)溝部95をクラッド層91,93のみに形成し、溝部95をコア層92と離れて形成するようにした。この構成によれば、コア層92の端面92Aを垂直面に維持したまま、溝部95を形成することができる。このため、溝部95を形成した後に、コア層92の端面92Aを垂直面に形成するためのレーザ加工を行う必要がない。これにより、レーザ加工の回数を減らすことができ、製造コストを低減することができる。
【0147】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0148】
・上記第1及び第2実施形態の光導波路30では、クラッド層31とクラッド層33とクラッド層34とが積層された構造を採用したが、これに限定されない。
例えば
図23に示すように、光導波路30として、
図1に示したクラッド層31とクラッド層33とクラッド層34とが一体化されたクラッド層39を有する構造を採用するようにしてもよい。クラッド層39では、
図1に示したクラッド層31とクラッド層33とクラッド層34との界面が消失している。この場合には、光路変換ミラー37がクラッド層39内に埋設されている。このような光導波路30では、部材同士の界面が少なくなるため、光伝搬損失をより低減することができる。
【0149】
同様に、上記第3実施形態の光導波路90として、クラッド層91とクラッド層93とクラッド層94とが一体化されたクラッド層を有する構造を採用してもよい。
・
図24は、
図1に示した光導波路装置10に電子部品55を搭載した状態を示している。
図24に示すように、本変更例の光導波路装置10は、配線基板20と、光導波路30と、光学素子50と、電子部品55とを有している。電子部品55としては、例えば、光学素子50(発光素子)を駆動するドライバ等のICチップや、光学素子50(受光素子)からの光出力信号を処理するDSP(Digital Signal Processor)やアンプ等を組み込んだICチップを用いることができる。
【0150】
配線基板20は、基板本体21の上面に形成されたソルダーレジスト層25を有している。ソルダーレジスト層25は、例えば、基板本体21の上面のうち光導波路30の形成されていない領域に形成されている。ソルダーレジスト層25は、例えば、配線パターン22を覆うように形成されている。ソルダーレジスト層25には、配線パターン22の一部を接続パッドP3として露出させるための開口部25Xが形成されている。接続パッドP3上には、その接続パッドP3と電子部品55の電極端子56とを電気的に接続するはんだ41が形成されている。はんだ41の材料としては、例えば、Pbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金などを用いることができる。
【0151】
なお、必要に応じて、開口部25Xから露出する配線パターン22上にOSP処理を施してOSP膜を形成し、そのOSP膜上にはんだ41を形成するようにしてもよい。また、開口部25Xから露出する配線パターン22上に金属層を形成し、その金属層上にはんだ41を形成するようにしてもよい。金属層の例としては、例えば、Au層、Ni/Au層や、Ni/Pd/Au層などを挙げることができる。
【0152】
開口部25X及び接続パッドP3の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。例えば、開口部25X及び接続パッドP3の平面形状は、直径が50μm~200μm程度の円形状とすることができる。基板本体21の上面からソルダーレジスト層25の上面までの厚さは、例えば、10μm~100μm程度とすることができる。ソルダーレジスト層25の材料としては、例えば、エポキシ系又はアクリル系の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0153】
電子部品55は、その一方の面(ここでは、下面)に電極端子56が形成されている。電子部品55は、電極端子56及びはんだ41を介して、配線基板20の接続パッドP3と電気的に接続されている。すなわち、電子部品55は、配線基板20にフリップチップ実装されている。これにより、電子部品55は、電極端子56、配線パターン22及び電極端子51を通じて、光学素子50と電気的に接続されている。電極端子56としては、例えば、金属柱、金バンプやはんだバンプを用いることができる。金属柱の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。はんだバンプの材料としては、例えば、Pbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金などを用いることができる。
【0154】
なお、1つの光学素子50に対応して1つの電子部品55を設けるようにしてもよいし、複数の光学素子50に対応して1つの電子部品55を設けるようにしてもよい。
配線基板20と電子部品55との間には、例えば、アンダーフィル樹脂61が形成されている。アンダーフィル樹脂61は、例えば、ソルダーレジスト層25の上面と電子部品55の下面との隙間を充填するように形成されている。アンダーフィル樹脂61は、例えば、開口部25Xを充填するように形成されている。アンダーフィル樹脂61は、電子部品55の電極端子56と配線基板20の接続パッドP3との接続部分の接続強度を向上させるための樹脂である。アンダーフィル樹脂61の材料としては、例えば、エポキシ系の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0155】
なお、上記第2実施形態の光導波路装置10A及び上記第3実施形態の光導波路装置10Bのそれぞれに電子部品55を搭載するようにしてもよい。
・
図24に示した光導波路装置10からアンダーフィル樹脂61を省略してもよい。
【0156】
・上記各実施形態におけるアンダーフィル樹脂60を省略するようにしてもよい。
・上記各実施形態におけるコア層32,82,92の平面形状は、直線状に限定されない。例えば、コア層32,82,92の平面形状を、湾曲部を有する形状、分岐部や交差部を有する形状、集光部(例えば、他の部分と比べて幅が狭くなっている部分)や光拡散部(例えば、他の部分と比べて幅が広くなっている部分)を有する形状に形成してもよい。
【0157】
・上記第1及び第2実施形態では、コア層32,82の上面を被覆するようにクラッド層33を形成するようにした。これに限らず、コア層32,82の上面を露出するようにクラッド層33を形成するようにしてもよい。この場合には、例えば、クラッド層33の上面は、コア層32,82の上面と面一になるように形成される。また、クラッド層34は、例えば、クラッド層33の上面全面を被覆するとともに、コア層32,82の上面全面を被覆するように形成される。
【0158】
・上記第1実施形態において、
図6(b)に示した工程で形成される溝部35を、コア層32と離れて形成するようにしてもよい。この場合には、溝部35を形成した後に、コア層32の延出方向の端面32Aを垂直面に維持することができる。
【0159】
・上記各実施形態におけるクラッド層34,94を省略してもよい。
・上記第1及び第2実施形態における開口部38の形成を省略してもよい。
・上記第3実施形態では、クラッド層93を形成した後にコア層92を形成するようにした。これに限らず、例えば、コア層92を形成した後にクラッド層93を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0160】
10,10A,10B 光導波路装置
20 配線基板
21 基板本体
22 配線パターン
30,90 光導波路
30X,90X 開口部
31,91 クラッド層(第1クラッド層)
32,82,92 コア層
32A,82A,92A 端面
33,93 クラッド層(第2クラッド層)
34,94 クラッド層(第3クラッド層)
35,85,95 溝部
35A,85A,97 対向面
36,86,96 傾斜面
37 光路変換ミラー
38 開口部
39 クラッド層
50 光学素子
51 電極端子
52 受発光部
60 アンダーフィル樹脂
70,72 保護フィルム
71,73 金属膜