(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】シリコーン粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20230731BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20230731BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230731BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230731BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20230731BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/05
C09J11/08
C09J7/38
C09J7/30
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2020029506
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】土田 理
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-047310(JP,A)
【文献】国際公開第2006/134997(WO,A1)
【文献】特開平10-158595(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110713816(CN,A)
【文献】特開2011-102336(JP,A)
【文献】国際公開第2005/033239(WO,A1)
【文献】特開2015-178584(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109837057(CN,A)
【文献】特開2000-169814(JP,A)
【文献】特開平05-209164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン粘着剤組成物であって、
(A)平均組成式(1)で表される、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基含有有機基を有し、アルケニル基が100g中に0.0002~0.05モル含まれるオルガノポリシロキサン:60~30質量部、
【化1】
(R
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1~10の1価炭化水素基であり、R
1のうち少なくとも2個は炭素数2~10のアルケニル基含有有機基を含む。aは2以上の整数、bは1以上の整数、c及びdは0以上の整数で、50≦a+b+c+d≦15000である。)
(B)R
2
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位を含み、(R
2
3SiO
1/2単位)/(SiO
4/2単位)がモル比で0.6~1.0であるポリオルガノシロキサン(R
2はそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~10の一価炭化水素基又は炭素数2~6のアルケニル基を示す。):40~70質量部、
(C)下記平均組成式(2)で表され、1分子中に少なくとも3個のSi-H基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン:前記組成物中のアルケニル基に対し、Si-H基がモル比で0.2~20となる量、
R
3
eH
fSiO
(4-e-f)/2 平均組成式(2)
(R
3は脂肪族不飽和基を除く非置換又は置換の炭素数1~10の1価炭化水素基を示し、e>0、f>0であり、さらに0<e+f≦3である。)
(D)前記組成物中のアルケニル基と前記(C)成分のSi-H基とをヒドロシリル化付加して硬化させるための白金族金属系触媒:前記(A)~(C)成分の総量に対し、金属量が1~500ppmとなる量、
(E)ケイ素を含まない熱可塑性樹脂:前記(A)~(C)成分の総量に対し、0.1~3質量部、
を含むことを特徴とするシリコーン粘着剤組成物。
【請求項2】
さらに(F)制御剤を、前記(A)~(C)成分の総量に対し0.01~5質量部を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコーン粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(E)成分が下記式(3)で表されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコーン粘着剤組成物。
【化2】
(R
4,R
5,R
6はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1~5の1価炭化水素基であり、mおよびnは1以上の整数で、1≦m≦20、1≦n≦20である。)
【請求項4】
前記(E)成分の水酸基価が10~300mgOH/gであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシリコーン粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシリコーン粘着剤組成物の硬化物を基材の少なくとも片面に有することを特徴とする粘着性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な組成のシリコーン粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤とは接着剤の一種であり、基材に粘着剤を塗工して硬化させた粘着テープや粘着ラベルなどのかたちで使用されることが多く、粘着テープは我々が普段目にする粘着剤を使用した物品の代表的なものである。これらの物品は、ものを識別するためのラベルに使用されたり、荷物の梱包のために使われたり、あるいは複数のものを繋ぎ合わせるためなど、用途は多岐にわたる。
【0003】
粘着剤を構成するためのベース材料はいくつか種類があり、ゴム系、アクリル系、シリコーン系などに大別される。ゴム系粘着剤は古くから使用されている汎用的なベース材料であり、価格が安く汎用のテープなどの製品に使用される。アクリル系粘着剤はポリアクリレートをベースとして用いたものであり、化学的特性などはゴム系よりも優れていることから、ゴム系よりも高機能な粘着製品にも適用できる。シリコーン系粘着剤は高粘度のシリコーン生ゴム(ガム)とシリコーンレジンからなり、主鎖が多数のシロキサン結合を有することから様々な優れた特徴をもっており、具体的には、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐薬品性及び電気絶縁性などが挙げられる。
【0004】
シリコーン粘着剤は、前述のような優れた特性を活かし、耐熱テープや工程用のマスキングテープ、難燃性を有するマイカテープなど産業用の高機能なテープに使用されており、使用条件の厳しい環境下でも特性を発揮できる場面で使用されている。
【0005】
前述の通り、シリコーン粘着剤の主成分はガムとシリコーンレジンであるが、これら2成分の配合を変更することによって、粘着特性をコントロールしている(特許文献1~3)。ガムはベースポリマーであり、柔軟で表面に濡れやすい性質を示し、シリコーンレジンは粘着付与剤として用いられ、ベースポリマーに配合することで粘着性を付与する役割を担っている。確かにシリコーンレジンの添加によりシリコーン粘着剤組成物の粘着力は上げることができるが、シリコーンレジンの添加による粘着力の上昇幅には限界があり、単に配合を変更するだけで得られる粘着剤の特性自体が限られてしまっているのが現状である。しかし、単純にシリコーンレジン以外の成分による粘着特性のコントロールは難しく、ベースであるガムに相溶しつつ性能を引き出すことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5117713号公報
【文献】特許第6091518号公報
【文献】特許第6348434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、シリコーンレジン以外の成分の添加によって粘着特性をコントロールし、高い粘着力と高いタックを両立したシリコーン粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、シリコーン粘着剤組成物であって、
(A)平均組成式(1)で表される、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基含有有機基を有し、アルケニル基が100g中に0.0002~0.05モル含まれるオルガノポリシロキサン:60~30質量部、
【化1】
(R
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1~10の1価炭化水素基であり、R
1のうち少なくとも2個は炭素数2~10のアルケニル基含有有機基を含む。aは2以上の整数、bは1以上の整数、c及びdは0以上の整数で、50≦a+b+c+d≦15000である。)
(B)R
2
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位を含み、(R
2
3SiO
1/2単位)/(SiO
4/2単位)がモル比で0.6~1.0であるポリオルガノシロキサン(R
2はそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~10の一価炭化水素基又は炭素数2~6のアルケニル基を示す。):40~70質量部、
(C)下記平均組成式(2)で表され、1分子中に少なくとも3個のSi-H基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン:前記組成物中のアルケニル基に対し、Si-H基がモル比で0.2~20となる量、
R
3
eH
fSiO
(4-e-f)/2 平均組成式(2)
(R
3は脂肪族不飽和基を除く非置換又は置換の炭素数1~10の1価炭化水素基を示し、e>0、f>0であり、さらに0<e+f≦3である。)
(D)前記組成物中のアルケニル基と前記(C)成分のSi-H基とをヒドロシリル化付加して硬化させるための白金族金属系触媒:前記(A)~(C)成分の総量に対し、金属量が1~500ppmとなる量、
(E)ケイ素を含まない熱可塑性樹脂:前記(A)~(C)成分の総量に対し、0.1~3質量部、
を含むことを特徴とするシリコーン粘着剤組成物を提供する。
【0009】
このような組成物であれば、シリコーンレジン以外の成分の添加によって粘着特性をコントロールし、高い粘着力と高いタックを両立することができる。
【0010】
また、本発明では、さらに(F)制御剤を、前記(A)~(C)成分の総量に対し0.01~5質量部を含むことができる。
【0011】
このような組成物であれば、本発明の効果をより向上させることができる。
【0012】
また、本発明では、前記(E)成分が下記式(3)で表されるものであることができる。
【化2】
(R
4,R
5,R
6はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1~5の1価炭化水素基であり、mおよびnは1以上の整数で、1≦m≦20、1≦n≦20である。)
【0013】
このようなものであれば、添加量を調整することでシリコーンレジン以外の成分により粘着特性をコントロールし、ベースであるガムに相溶しつつ性能を引き出すことができる。
【0014】
また、本発明では、前記(E)成分の水酸基価が10~300mgOH/gであることができる。
【0015】
このようなものであれば、本発明の効果をより一層向上させることができる。
【0016】
また、本発明では、上記シリコーン粘着剤組成物の硬化物を基材の少なくとも片面に有する粘着性物品を提供する。
【0017】
このようなものであれば、従来よりも高い粘着力と高いタックを両立した粘着性物品とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシリコーン粘着剤組成物は、従来よりも高い粘着力と高いタックを両立することができ、これを用いることによって、従来よりも高い粘着力と高いタックを両立した粘着性物品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述のように、高い粘着力と高いタックを両立したシリコーン粘着剤組成物の開発が求められていた。
【0020】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ケイ素を含まない熱可塑性樹脂を添加することにより、粘着特性をコントロールし高い粘着力と高いタックを両立したシリコーン粘着剤組成物を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
即ち、本発明は、シリコーン粘着剤組成物であって、
(A)平均組成式(1)で表される、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基含有有機基を有し、アルケニル基が100g中に0.0002~0.05モル含まれるオルガノポリシロキサン:60~30質量部、
【化3】
(R
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1~10の1価炭化水素基であり、R
1のうち少なくとも2個は炭素数2~10のアルケニル基含有有機基を含む。aは2以上の整数、bは1以上の整数、c及びdは0以上の整数で、50≦a+b+c+d≦15000である。)
(B)R
2
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位を含み、(R
2
3SiO
1/2単位)/(SiO
4/2単位)がモル比で0.6~1.0であるポリオルガノシロキサン(R
2はそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~10の一価炭化水素基又は炭素数2~6のアルケニル基を示す。):40~70質量部、
(C)下記平均組成式(2)で表され、1分子中に少なくとも3個のSi-H基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン:前記組成物中のアルケニル基に対し、Si-H基がモル比で0.2~20となる量、
R
3
eH
fSiO
(4-e-f)/2 平均組成式(2)
(R
3は脂肪族不飽和基を除く非置換又は置換の炭素数1~10の1価炭化水素基を示し、e>0、f>0であり、さらに0<e+f≦3である。)
(D)前記組成物中のアルケニル基と前記(C)成分のSi-H基とをヒドロシリル化付加して硬化させるための白金族金属系触媒:前記(A)~(C)成分の総量に対し、金属量が1~500ppmとなる量、
(E)ケイ素を含まない熱可塑性樹脂:前記(A)~(C)成分の総量に対し、0.1~3質量部、
を含むことを特徴とするシリコーン粘着剤組成物である。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
[(A)成分]
(A)成分は下記平均組成式(1)で表される1分子中に少なくとも2つのアルケニル基含有有機基を有し、アルケニル基が100g中に0.0002~0.05モル含まれるオルガノポリシロキサンである。
【化4】
(R
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1~10の1価炭化水素基であり、R
1のうち少なくとも2個は炭素数2~10のアルケニル基含有有機基を含む。aは2以上の整数、bは1以上の整数、cおよびdは0以上の整数で、50≦a+b+c+d≦15000である。)
【0024】
R1は炭素数1~10の1価炭化水素基であり、そのうち2個以上が炭素数2~10のアルケニル基含有有機基である。
【0025】
1価の炭化水素基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基などであり、更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が例示される。上記の中でも飽和の脂肪族基あるいは芳香族基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0026】
また、上記アルケニル基含有有機基は炭素数2~10のものであり、例として、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基等のアクリロイルアルキル基及びメタクリロイルアルキル基、シクロヘキセニルエチル基等のシクロアルケニルアルキル基、ビニルオキシプロピル基等のアルケニルオキシアルキル基などが挙げられる。これらのうち、特にビニル基が好ましい。
【0027】
(A)成分に含まれるアルケニル基の量は、オルガノポリシロキサン100gあたり0.0002~0.05モルであり、0.0004~0.04モルであるものが好ましく、0.0005~0.03モルがより好ましい。0.0002モルよりも小さいと架橋密度が小さくなり粘着層の凝集破壊が生じる場合があり、0.05モルよりも大きいと粘着層が硬くなり適切な粘着力やタックが得られない場合がある。
【0028】
平均組成式(1)におけるa~dについて、aは2以上の整数、bは1以上の整数、cおよびdは0以上の整数で、50≦a+b+c+d≦15000であり、好ましくは200≦a+b+c+d≦12000である。a+b+c+dが50より小さい場合、架橋点が多くなりすぎることで反応が遅れ、15000より大きい場合、組成物の粘度が非常に高くなるためハンドリング性が悪くなる。
【0029】
(A)成分は通常、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの環状低分子シロキサンを、触媒を用いて開環重合させて製造するが、重合後は原料である環状低分子シロキサンを含有しているため、これを加熱および減圧下で、反応生成物中に不活性気体を通気させながら、留去したものを用いることが好ましい。
【0030】
(A)成分としては、下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
R1-1R1-2
2SiO(R1-2
2SiO)pSiR1-2
2R1-1
R1-1R1-2
2SiO(R1-2
2SiO)p(R1-1R1-2SiO)qSiR1-2
2R1-1
R1-1
3SiO(R1-2
2SiO)p(R1-1R1-2SiO)qSiR1-1
3
R1-2
3SiO(R1-2
2SiO)p(R1-1R1-2SiO)qSiR1-2
3
(式中、R1-1はそれぞれ同一又は異種のアルケニル基含有有機基であり、R1-2はそれぞれ同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~10の1価炭化水素基であり、p≧47、q≧1である(但し、分子中に(R1-1R1-2SiO)q以外にR1-1を有しない場合はq≧2である。))
【0031】
R1-1,R1-2としては、上記R1で例示されたものが挙げられる。なお、47≦p≦11,998が好ましく、1≦q≦1,000が好ましく、2≦q≦800がより好ましい。
【0032】
より具体的な(A)成分としては、下記一般式で表されるようなものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe,Vi,Phはそれぞれメチル基、ビニル基、フェニル基を示す。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0033】
[(B)成分]
(B)成分はR2
3SiO1/2単位(R2はそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基又は炭素原子数2~6のアルケニル基を示す。)とSiO4/2単位を含み、(R2
3SiO1/2単位)/(SiO4/2単位)がモル比で0.6~1.0であり、好ましくは0.65~0.9であるポリオルガノシロキサンである。このモル比が0.6未満では粘着力やタックが低下することがあり、1.0を越える場合には粘着力や保持力が低下することがある。
【0034】
R2はそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基又は炭素原子数2~6のアルケニル基を表し、R2の炭素原子数1~10の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくは炭素原子数2~6のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、好ましくは炭素原子数6~10のアリール基を挙げることができる。炭素原子数2~6のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基等を挙げることができる。
【0035】
(B)成分は2種以上を併用してもよい。また、必要に応じてR2SiO3/2単位、R2
2SiO2/2単位を(B)成分に含有させることも可能である。
【0036】
(B)成分は触媒存在下において、その表面に存在する加水分解性基を縮合させてもよい。これにより粘着剤組成物の粘着力を向上させる効果が見込まれ、アルカリ性触媒を用い、室温~還流下で反応させ、必要に応じ中和すればよい。
【0037】
アルカリ性触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシドなどの金属アルコキシド;ブチルリチウムなどの有機金属;カリウムシラノレート;アンモニアガス、アンモニア水、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの窒素化合物などがあげられるが、アンモニアガス又はアンモニア水が好ましい。縮合反応の温度は、室温から有機溶剤の還流温度でおこなえばよい。反応時間は、特に限定されないが、0.5~20時間、好ましくは1~16時間とすればよい。
【0038】
さらに、反応終了後、必要に応じて、アルカリ性触媒を中和する中和剤を添加しても良い。中和剤としては、塩化水素、二酸化炭素などの酸性ガス;酢酸、オクチル酸、クエン酸などの有機酸;塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸などが挙げられる。アルカリ性触媒としてアンモニアガス又はアンモニア水、低沸点のアミン化合物を用いた場合は、窒素などの不活性ガスを通気し留去してもよい。
【0039】
(A)成分の配合量は60~30質量部、(B)成分の配合量は40~70質量部であって、(A)、(B)成分の配合質量比は、(A)/(B)=60/40~30/70であり、55/45~35/65がより好ましい。(A)、(B)成分の合計を100とした場合に、(B)成分の割合が40未満だと後述する(E)成分の相溶性が悪くなる場合があり、70を越えると組成物の耐熱性が悪くなる場合がある。
【0040】
[(C)成分]
(C)成分は下記平均組成式(2)で表され、1分子中に少なくとも3個のSi-H基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。
R3
eHfSiO(4-e-f)/2 平均組成式(2)
(R3は脂肪族不飽和基を除く非置換または置換の炭素数1~10の1価炭化水素基を示し、e>0、f>0であり、さらに0<e+f≦3である。)
【0041】
R3は脂肪族不飽和基を除く炭素数1~10の1価炭化水素基である。具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基などであり、更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が例示される。上記1価炭化水素基としては、飽和の脂肪族基あるいは芳香族基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0042】
平均組成式(2)におけるe及びfは、e>0,f>0かつ0<e+f≦3を満たす数であり、好ましくはe>0,f>0かつ0<e+f<3を満たす数である。
【0043】
(C)成分は下記一般式(4)のものを例示することができるが、これに限定されるものではない。
R7
3Si-O-(SiR8
2-O)r-(SiR9H-O)s-O-SiR10
3 一般式(4)
(R7,R10はそれぞれ脂肪族不飽和基を除く炭素数1~10の1価炭化水素基又は水素原子を示し、R8,R9はそれぞれ脂肪族不飽和基を除く炭素数1~10の1価炭化水素基を示し、rは0≦r≦100であり、sは3≦s≦80である。)
【0044】
R8,R9はそれぞれ脂肪族不飽和基を除く炭素数1~10の1価炭化水素基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。R8,R9としては、飽和の脂肪族基あるいは芳香族基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0045】
R7,R10はそれぞれ脂肪族不飽和基を除く炭素数1~10の1価炭化水素基又は水素原子である。R7,R10の炭素数1~10の1価炭化水素基としては、上記と同様のものが例示され、rは0≦r≦100であり、0≦r≦80又は0<r≦80が好ましく、sは3≦s≦80であり、4≦s≦70が好ましい。
【0046】
(C)成分の使用量は組成物中のアルケニル基に対する(C)成分中のSi-H基のモル比が0.2~20であり、特に0.5~15の範囲となるように配合することが好ましい。0.2未満では架橋密度が低くなり、これにより凝集力、保持力が低くなることがある。20を超えると架橋密度が高くなり適度な粘着力及びタックが得られないことがある。
【0047】
(C)成分は通常、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの環状低分子シロキサンとテトラメチルシクロテトラシロキサンなどのSi-Hを含有するシロキサンを、酸触媒を用いて開環重合させて製造するが、重合後は原料である環状低分子シロキサンを含有しているため、これを加熱および減圧下で、反応生成物中に不活性気体を通気させながら、留去したものを用いることが好ましい。
【0048】
(C)成分の具体的な構造を表したものとしては下記一般式に示すようなものなどが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記一般式中のMeはメチル基を示す。
【化10】
【0049】
[(D)成分]
(D)成分は、組成物中のアルケニル基と(C)成分中のSi-H基をヒドロシリル化付加して硬化させるための白金族金属系触媒であり、中心金属としては白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムなどが例として挙げられ、中でも白金が好適である。白金触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などが挙げられる。
【0050】
(D)成分の含有量としては、(A),(B),(C)成分の総量に対し、金属量が質量換算で1~500ppmとなるような量が好ましく、2~450ppmがより好ましい。1ppm未満になると、反応が遅く、硬化不十分となることにより粘着力や保持力の各種特性が発揮されないことがある。500ppmを超えると、硬化物の柔軟性が乏しくなることがある。
【0051】
[(E)成分]
(E)成分は、ケイ素を含まない熱可塑性樹脂である。ケイ素を含まない熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、具体的な構造としては下記式(3)で表されるものが挙げられる。
【化11】
(R
4,R
5,R
6はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1~5の1価炭化水素基であり、m及びnは1以上の整数で、1≦m≦20、1≦n≦20である。)
【0052】
このような構造であれば、添加量を調整することでシリコーンレジン以外の成分により粘着特性をコントロールし、ベースであるガムに相溶しつつ性能を引き出すことができる。
【0053】
R4,R5,R6はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1~5の1価炭化水素基である。1価の炭化水素基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基が挙げられ、更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が例示される。上記1価炭化水素基としては、飽和の脂肪族基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0054】
式中、mおよびnは1以上の整数で、1≦m≦20、1≦n≦20であり、好ましくは2≦m≦15、2≦n≦15であり、より好ましくは2≦m≦10、2≦n≦10である。
【0055】
(E)成分の水酸基価は10~300mgOH/gであってよく、好ましくは15~280mgOH/gであり、より好ましくは20~250mgOH/gである。10mgOH/g以上であれば適切な粘着特性が得られ、300mgOH/g以下であればベースとなるシリコーン粘着剤組成物に十分に相溶する。
【0056】
(E)成分の含有量としては、上記(A)~(C)成分の総量に対し、0.1~3質量部であり、好ましくは0.2~2.8質量部であり、より好ましくは0.3~2.5質量部である。0.1質量部よりも少ない場合には十分に粘着特性を変えることができない可能性があり、3質量部よりも多い場合には逆にシリコーン粘着剤としての機能、具体的には耐熱性などを損ねる可能性がある。
【0057】
[(F)成分]
(F)成分は制御剤であり、制御剤はシリコーン粘着剤組成物を調合又は基材に塗工する際に加熱硬化の以前に付加反応が開始して処理液が増粘やゲル化を起こさないようにするために添加するものである。制御剤は付加反応触媒である白金族金属に配位して付加反応を抑制し、加熱硬化させるときには配位がはずれて触媒活性が発現する。付加反応硬化型シリコーン組成物に従来使用されている制御剤はいずれも使用することができる。具体例としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン、マレイン酸エステル、アジピン酸エステル等が挙げられる。
【0058】
(F)成分の含有量としては、(A)~(C)成分の総量に対し0.01~5質量部であってよく、好ましくは0.02~4質量部であり、より好ましくは0.03~3質量部である。0.01質量部以上であれば十分なポットライフを得ることができ、5質量部以下であれば制御能が強すぎて反応性が悪くなることがない。
【0059】
[有機溶剤]
前述の成分をすべて混合すると、粘度が高くなりハンドリングが困難になることがあるため、希釈するために溶剤を任意で加えてもよい。溶剤としては、トルエン、キシレン、などの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン、などの脂肪族炭化水素系溶剤、工業用ガソリン、石油ベンジン、ソルベントナフサ、などの炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、などのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,4ジオキサンなどのエーテル系溶剤、2-メトキシエチルアセタート、2-エトキシエチルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、2-ブトキシエチルアセタート、などのエステルとエーテル部分を有する溶剤、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン、などのシロキサン系溶剤、またはこれらの混合溶剤、などもあげられる。
【0060】
[シリコーン粘着剤組成物の使用方法]
一般的に、シリコーン粘着剤組成物には触媒は混合されていないことが多いが、本発明では、触媒は、実際に使用する前に均一に混合して使用する。
【0061】
シリコーン粘着剤組成物を塗工する基材としては紙やプラスチックフィルム、ガラス、金属が選択される。紙としては、上質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、ポリエチレンラミネート紙、クラフト紙などが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルムなどが挙げられる。ガラスについても、厚みや種類などについて特に制限はなく、化学強化処理などをしたものでもよい。また、ガラス繊維にも適用でき、ガラス繊維は単体でも他の樹脂と複合したものでも使用できる。金属としては、アルミ箔、銅箔、金箔、銀箔、ニッケル箔などが例示される。これらの基材の中でも、シリコーン粘着剤組成物は特にプラスチックフィルムを基材として使用されることが多い。
【0062】
塗工方法は、公知の塗工方式を用いて塗工すればよく、例えばコンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工等が挙げられる。
【0063】
塗工量については、特に制限はないが、0.1~300μmとすることができ、好ましくは0.5~200μmである。
【0064】
硬化条件としては、80~150℃で20秒~10分とすればよいが、この限りではない。
【0065】
[粘着性物品]
こうして上記のようなシリコーン粘着剤組成物の硬化物を基材の少なくとも片面に有する粘着性物品を作製することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下においてMeはメチル基、Viはビニル基を表す。
【0067】
[実施例1]
(A)成分として下記平均組成式(A-1)で表されるポリシロキサン(a-1)を35質量部、
【化12】
【0068】
(B)成分として、Me
3SiO
1/2単位及びSiO
4/2単位を含有し、(Me
3SiO
1/2単位)/(SiO
4/2単位)のモル比が0.85であるメチルポリシロキサン(b-1)の60質量%トルエン溶液を不揮発分として65質量部となる量、
(C)成分として下記平均組成式(C-1)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン(c-1)を0.35質量部、
【化13】
【0069】
(E)成分として下記式(E-1)で表される熱可塑性樹脂(e-1)(水酸基価:54mgOH/g)を0.5質量部、
【化14】
(F)成分としてエチニルシクロヘキサノールを0.25質量部、
(D)成分として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の白金分を0.5質量%含むトルエン溶液(d-1)を0.5質量部、
それぞれ添加し、シリコーン粘着剤組成物を作製した((C)成分中のSi-H基は、組成物中のビニル基に対し、モル比で10.5倍)。
この組成物を用い、粘着力とボールタックを後述のように評価した。
【0070】
[比較例1]
前記実施例1の組成に対し、(E)成分を含まないシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0071】
[比較例2]
前記実施例1の組成に対し、(E)成分の代わりに同量の(B)成分を添加し配合したシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0072】
[実施例2]
(E)成分の添加量を1.0質量部とすること以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0073】
[比較例3]
前記実施例2の組成に対し、(E)成分の代わりに同量の(B)成分を添加し配合したシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0074】
[実施例3]
(E)成分の添加量を1.5質量部とすること以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0075】
[比較例4]
前記実施例3の組成に対し、(E)成分の代わりに同量の(B)成分を添加し配合したシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0076】
[実施例4]
(E)成分の添加量を2.0質量部とすること以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0077】
[比較例5]
前記実施例4の組成に対し、(E)成分の代わりに同量の(B)成分を添加し配合したシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0078】
[比較例6]
前記比較例1の組成に対し、(B)成分をさらに4.0質量部添加したシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0079】
[実施例5]
(E)成分を下記式(E-2)で表される熱可塑性樹脂(e-2)(水酸基価:163mgOH/g)1.0質量部とすること以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【化15】
【0080】
[実施例6]
(A)成分の(a-1)の量を50質量部、(B)成分の(b-1)の量を50質量部、(C)成分の(c-1)の量を0.50質量部とした以外は実施例2と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した((C)成分中のSi-H基は、組成物中のビニル基に対し、モル比で10.5倍)。
【0081】
[比較例7]
前記実施例6の組成に対し、(E)成分を含まないシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0082】
[実施例7]
(A)成分の(a-1)の代わりに下記式(A-2)で表されるポリシロキサン(a-2)を50質量部、
【化16】
(B)成分の(b-1)の量を50質量部、(C)成分の(c-1)の量を0.37質量部とした以外は実施例2と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した((C)成分中のSi-H基は、組成物中のビニル基に対し、モル比で5.6倍)。
【0083】
[比較例8]
前記実施例7の組成に対し、(E)成分を含まないシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0084】
[実施例8]
(B)成分の(b-1)の代わりにMe3SiO1/2単位及びSiO4/2単位を含有し、(Me3SiO1/2単位)/(SiO4/2単位)のモル比が0.75であるメチルポリシロキサン(b-2)の60質量%トルエン溶液を不揮発分として50質量部となる量、(C)成分の(c-1)の量を0.50質量部、(E)成分として熱可塑性樹脂(e-1)(水酸基価:54mgOH/g)を1.0質量部添加した以外は比較例7と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0085】
[比較例9]
前記実施例8の組成に対し、(E)成分を含まないシリコーン粘着剤組成物を作製し、この組成物を用い、粘着力とボールタックを評価した。
【0086】
[粘着力]
シリコーン粘着剤組成物溶液を、厚み23μm、幅25mmのPETフィルムに硬化後の厚みが30μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工した後、130℃/1分の条件で加熱し硬化させ、粘着テープを作製した。この粘着テープをガラス板に貼りつけ、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーを2往復させることにより圧着した。粘着テープを貼り合わせたガラス板を一定の湿度と温度がかかる恒温槽へ所定日数入れた後に取り出し、引っ張り試験機を用いて300mm/分の速度で180゜の角度でテープをガラス板から引き剥がすのに要する力(N/25mm)を測定した。
【0087】
[ボールタック]
シリコーン粘着剤組成物溶液を、厚み23μm、幅25mmのPETフィルムに硬化後の厚みが30μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工した後、130℃/1分の条件で加熱し硬化させ、粘着テープを作製した。このテープの粘着面を上にした状態で傾斜角30°の斜面上に置き、助走距離10cmのところから剛球を転がして、粘着剤層の範囲内で止まる剛球の最大値で評価した。ボールの大きさは、直径が1インチのものを32とし、1/32インチのものを1として、数値が大きくなるほど大きな剛球を止めることができる、つまりタック値が高いということを示している。
【0088】
実施例1~8と比較例1~9の結果をあわせて表1に示す。
【表1】
【0089】
実施例1と比較例1では、(E)成分の添加により粘着力が高くなっていることがわかり、比較例2では(E)成分と同量の(B)成分を添加し配合しているが、粘着力の上昇幅は実施例1には及ばない。同様に、実施例2~4及び比較例3~5において、(E)成分の添加量を増やした場合の粘着力と、(E)成分の代わりに同量の(B)成分を添加した場合の粘着力とを比較すると、いずれも(E)成分が配合されている方が粘着力が高くなっていることがわかる。比較例6では、実施例2、3程度の粘着力になるように(B)成分をさらに添加配合しているが、タックの値が低くなってしまっている。このことから(E)成分の添加により、これまでのシリコーン粘着剤組成物では実現が難しかった粘着特性のコントロール、すなわち高い粘着力と高いボールタックの両立が可能となったことがわかる。
【0090】
実施例5では、構造の異なる(E)成分を添加しているが、他の実施例同様に粘着力の上昇が確認できる。実施例6~8および比較例7~9ではベースとなるシリコーン粘着剤組成物の組成を変更しているが、いずれの場合でも(E)成分の添加による粘着力上昇が確認できた。
【0091】
このように本発明であれば、これまで困難であった高い粘着力と高いタックを両立したシリコーン粘着剤組成物を得ることができる。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。