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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20230731BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230731BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20230731BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20230731BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/53 200
A61F13/532 200
A61F13/535 200
A61F13/536 100
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021071324
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165811
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 沙也佳
(72)【発明者】
【氏名】梨子木 健人
(72)【発明者】
【氏名】木下 晃吉
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083132(JP,A)
【文献】特開2010-068954(JP,A)
【文献】特開2009-201848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液吸収性の吸収性コアを備え、
互いに交差する前後方向と幅方向と厚さ方向を有する吸収性物品であって、
展開且つ伸長状態において、
前記吸収性コアは、前記前後方向の一方側の端部より前記幅方向の長さが短い幅狭部を備え、
前記幅狭部は、着用時に着用者の股下に位置する股下部に設けられ、
前記一方側において、前記吸収性コアは、一対の折り誘導部及び一対のスリットを備え、一対の前記折り誘導部は、それぞれ前記一方側から前記前後方向の他方側に、且つ前記幅方向の中央部から外側に向かって傾斜し、
一対の前記スリットは、それぞれ前記前後方向に延在し、前記幅方向の両側に設けられており、
前記前後方向において、
前記スリットは、前記折り誘導部より前記他方側に位置し、前記幅狭部と前記前後方向において重なる部分を有し、
前記スリットの前記一方側の端は、前記幅狭部の前記一方側の端より前記他方側に位置し、
前記吸収性コアは、一対の切欠き部を備え、
前記切欠き部は、前記幅方向の側端部で、前記折り誘導部より前記一方側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
一対の前記折り誘導部同士は、前記一方側の端部において連続していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記折り誘導部が圧搾部であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記厚さ方向に見て、
前記折り誘導部の前記他方側の端の少なくとも一部と、前記スリットの前記一方側の縁が合致する合致点を有する、
又は、
前記折り誘導部を前記他方側に向かって延長させた仮想領域が、前記スリットの前記一方側の縁と交差する交差点を有する
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項4に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、吸収性パッドであって、
前記吸収性物品の非肌側面には、使い捨ておむつ又は衣服の肌側面に着脱可能に固定するための仮固定部を有し、
前記合致点又は前記交差点が、前記幅方向において、前記仮固定部の両端より内側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記他方側において、前記吸収性コアは、他方側折り誘導部及び一対の前記スリットを備え、
一対の前記他方側折り誘導部は、それぞれ前記他方側から前記一方側に、且つ前記幅方向の中央部から外側に向かって傾斜し、
前記前後方向において、
前記スリットは、前記他方側折り誘導部より前記一方側に位置し、
前記スリットの前記他方側の端は、前記幅狭部の前記他方側の端より前記一方側に位置することを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性物品であって、
前記前後方向において、前記幅狭部を三等分したときの一方側部分、中央部分、他方側部分について、
前記一方側部分には、前記折り誘導部の少なくとも一部が設けられ、
前記中央部分には、前記スリットの少なくとも一部が設けられ、
前記他方側部分には、前記他方側折り誘導部の少なくとも一部が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記前後方向において、前記幅狭部と前記折り誘導部とが重なる部分を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項8に記載の吸収性物品であって、
前記幅狭部と前記折り誘導部とが重なる部分の前記前後方向の長さが、前記折り誘導部の前記前後方向の長さの半分以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記スリットの前記前後方向の長さが、前記折り誘導部の前記前後方向の長さより長いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記前後方向に伸縮する一対の伸縮部材と、
前記吸収性物品を前記前後方向について折り畳むための、前記幅方向に沿った折り畳み部とを有し、
前記一対の伸縮部材は、前記幅方向においてそれぞれ前記スリットより外側で、前記吸収性コアより非肌側で、且つ前記折り畳み部を横断する位置に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項11に記載の吸収性物品であって、
前記伸縮部材の伸縮領域の前記前後方向の長さが、前記幅狭部の前記前後方向の長さより短いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項12に記載の吸収性物品であって、
前記スリットは、前記一方側から前記他方側まで延出し、
前記伸縮部材の伸縮領域の前記前後方向の長さが、前記スリットの前記前後方向の長さより短いことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収コアを備える吸収性物品が広く知られている。例えば、特許文献1に示すように、着用者の排泄部にあたる中央領域と、中央領域より厚みが薄く、剛性が高い周縁領域を有する吸収性コアが、着用時に、幅方向の外側から内側に力を受けたとしても、高剛性の周縁領域によって吸収コアの形状を維持しやすくする吸収パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-47147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の吸収パッドは、吸収体の非肌面側に形成された溝によって、吸収パッドの中央領域が着用者の肌に向けて突出するように変形しやすくしたが、吸収パッドを着用する際に、着用者の足元側から股下に引き上げるまでに、吸収パッド(吸収コア)に着用者の脚が当接して、吸収パッドの中央領域が着用者の肌に向けて突出しない変形をしてしまい、着用者に不快感を与える恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、着用中の不快感を軽減させる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
液吸収性の吸収性コアを備え、
互いに交差する前後方向と幅方向と厚さ方向を有する吸収性物品であって、
展開且つ伸長状態において、
前記吸収性コアは、前記前後方向の一方側の端部より前記幅方向の長さが短い幅狭部を備え、
前記幅狭部は、着用時に着用者の股下に位置する股下部に設けられ、
前記一方側において、前記吸収性コアは、一対の折り誘導部及び一対のスリットを備え、 一対の前記折り誘導部は、それぞれ前記一方側から前記前後方向の他方側に、且つ前記幅方向の中央部から外側に向かって傾斜し、
一対の前記スリットは、それぞれ前記前後方向に延在し、前記幅方向の両側に設けられており、
前記前後方向において、
前記スリットは、前記折り誘導部より前記他方側に位置し、前記幅狭部と前記前後方向において重なる部分を有し、
前記スリットの前記一方側の端は、前記幅狭部の前記一方側の端より前記他方側に位置し、
前記吸収性コアは、一対の切欠き部を備え、
前記切欠き部は、前記幅方向の側端部で、前記折り誘導部より前記一方側に設けられていることを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収性物品の着用中の排泄物による不快感を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】パンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
図2】吸収性パッド10を装着した展開且つ伸長状態のおむつ1を肌側から見た概略平面図である。
図3】展開且つ伸長状態の吸収性パッド10を肌側から見た概略平面図である。
図4】展開且つ伸長状態の吸収性パッド10を非肌側から見た概略平面図である。
図5図3のS1-S1線での概略断面図である。
図6図3の吸収性コア32を肌側から見た概略平面図である。
図7】吸収性パッド10の着用時における吸収性コア32の変形について説明する概略斜視図である。
図8図8Aは、第1実施形態のスリット40と折り誘導部43を説明する図面である。図8Bは、第1実施形態の変形例を説明する図である。図8Cは、第1実施形態の変形例を説明する図である。
図9】展開且つ伸長状態の吸収性パッド100を肌側から見た概略平面図である。
図10図9の吸収性コア320の前側部10Fを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
液吸収性の吸収性コアを備え、互いに交差する前後方向と幅方向と厚さ方向を有する吸収性物品であって、展開且つ伸長状態において、前記吸収性コアは、前記前後方向の一方側の端部より前記幅方向の長さが短い幅狭部を備え、前記幅狭部は、着用時に着用者の股下に位置する股下部に設けられ、前記一方側において、前記吸収性コアは、一対の折り誘導部及び一対のスリットを備え、一対の前記折り誘導部は、それぞれ前記一方側から前記前後方向の他方側に、且つ前記幅方向の中央部から外側に向かって傾斜し、一対の前記スリットは、それぞれ前記前後方向に延在し、前記幅方向の両側に設けられており、前記前後方向において、前記スリットは、前記折り誘導部より前記他方側に位置し、前記幅狭部と前記前後方向において重なる部分を有し、前記スリットの前記一方側の端は、前記幅狭部の前記一方側の端より前記他方側に位置することを特徴とする吸収性物品である。
【0010】
このような吸収性物品によれば、吸収性物品の着用時に、折り誘導部によって、スリットが非肌側に向かって折られるように誘導されることで、一対のスリットで挟まれた領域を肌側に向かう凸形状とさせやすくなるため、吸収性コアを着用者の排泄口に近づけやすくなり、排泄物をより早く吸収し、排泄物による着用中の不快感を軽減させることができる。
【0011】
かかる吸収性物品であって、一対の前記折り誘導部同士は、前記一方側の端部において連続していることが望ましい。
【0012】
このような吸収性物品によれば、一対の折り誘導部同士が連続することで、吸収性物品の外部からの力を折り誘導部を通してスリットに伝えやすくなり、スリットで肌側に向かって折られやすくなる。
【0013】
かかる吸収性物品であって、前記折り誘導部が圧搾部であることが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、容易な工程で折り誘導部が形成された吸収性物品の提供が可能となる。
【0015】
かかる吸収性物品であって、前記厚さ方向に見て、前記折り誘導部の前記他方側の端の少なくとも一部と、前記スリットの前記一方側の縁が合致する合致点を有する、又は、前記折り誘導部を前記他方側に向かって延長させた仮想領域が、前記スリットの前記一方側の縁と交差する交差点を有することが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、合致点又は交差点において折り誘導部からスリットに向かって力を伝えやすくなるため、スリットを非肌側に向かって折られるように誘導させやすくなり、一対のスリットで挟まれた領域を肌側に向かって凸形状とさせやすくなる。
【0017】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、吸収性パッドであって、前記吸収性物品の非肌側面には、使い捨ておむつ又は衣服の肌側面に着脱可能に固定するための仮固定部を有し、前記合致点又は前記交差点が、前記幅方向において、前記仮固定部の両端より内側に設けられていることが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、吸収性物品のうち、仮固定部の幅方向の両端より内側は、仮固定部の幅方向の両端より外側よりも使い捨ておむつ又は衣服に固定されているため、着用者の脚から加えられる力及び使い捨ておむつ又は衣服の左右方向に収縮する力を折り誘導部を介してスリットに伝えやすくなり、スリットを非肌側に向かって折られるように誘導させやすくなる。
【0019】
かかる吸収性物品であって、前記他方側において、前記吸収性コアは、他方側折り誘導部及び一対の前記スリットを備え、一対の前記他方側折り誘導部は、それぞれ前記他方側から前記一方側に、且つ前記幅方向の中央部から外側に向かって傾斜し、前記前後方向において、前記スリットは、前記他方側折り誘導部より前記一方側に位置し、前記スリットの前記他方側の端は、前記幅狭部の前記他方側の端より前記一方側に位置することが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、吸収性物品の前後方向における一方側だけでなく、他方側においても、他方側折り誘導部によって、スリットが非肌側に向かって折られるように誘導して、一対のスリットで挟まれた領域を肌側に向かう凸形状とさせやすくなるため、吸収性物品の前後方向のどちらを前にしても着用が可能となる。
【0021】
かかる吸収性物品であって、前記前後方向において、前記幅狭部を三等分したときの一方側部分、中央部分、他方側部分について、前記一方側部分には、前記折り誘導部の少なくとも一部が設けられ、前記中央部分には、前記スリットの少なくとも一部が設けられ、前記他方側部分には、前記他方側折り誘導部の少なくとも一部が設けられていることが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、吸収性物品の前後方向のどちらを前にしても着用を可能としつつ、吸収性物品の着用時に、前後方向における着用者の前側に位置する折り誘導部又は他方側折り誘導部によって、前後方向における中央部に設けられたスリットが非肌側に向かって折られるように誘導されて、一対のスリットで挟まれた領域を肌側に向かう凸形状とさせやすくなる。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記前後方向において、前記幅狭部と前記折り誘導部とが重なる部分を有することが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、着用時に、スリットを起点として折りを生じさせる前に、折り誘導部を起点として吸収性コアの形状を変化させやすくなり、折り誘導部の形状の変化によってスリットを非肌側に向かって折って、一対のスリット間を凸形状とさせやすくなる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記幅狭部と前記折り誘導部とが重なる部分の前記前後方向の長さが、前記折り誘導部の前記前後方向の長さの半分以上であることが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、着用時に、スリットを起点として折りを生じさせる前に、折り誘導部を起点として吸収性コアの形状を変化させやすくなり、折り誘導部の形状の変化によってスリットを起点とする非肌側に向かう凸形状への折りを生じさせやすくなる。
【0027】
かかる吸収性物品であって、前記スリットの前記前後方向の長さが、前記折り誘導部の前記前後方向の長さより長いことが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、折り誘導部の前後方向の長さがスリットの前後方向の長さより長い場合よりも、前後方向に延在するスリットによって、吸収性コアで吸収された排泄物を吸収性コアの前後方向に拡散させやすくなる。
【0029】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアは、一対の切欠き部を備え、前記切欠き部は、前記幅方向の側端部で、前記折り誘導部より前記一方側に設けられていることが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品によれば、吸収性物品の着用時に、折り誘導部によって、スリットを非肌側に向かって折られるように誘導させることで、一対のスリットで挟まれた領域を肌側に向かう凸形状とさせやすくし、折り誘導部より一方側に設けられた切欠き部によって、吸収性コアの折り誘導部より一方側の部分を着用者の腹部の膨らみに沿った形状にさせやすくなる。
【0031】
かかる吸収性物品であって、前記前後方向に伸縮する一対の伸縮部材と、前記吸収性物品を前記前後方向について折り畳むための、前記幅方向に沿った折り畳み部とを有し、前記一対の伸縮部材は、前記幅方向においてそれぞれ前記スリットより外側で、前記吸収性コアより非肌側で、且つ前記折り畳み部を横断する位置に設けられていることが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品によれば、着用状態において、吸収性コアのスリットより幅方向の外側が伸縮部材によって上方に引き上げられやすくなるため、吸収性コアの幅方向の外側から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0033】
かかる吸収性物品であって、前記伸縮部材の伸縮領域の前記前後方向の長さが、前記幅狭部の前記前後方向の長さより短いことが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品によれば、伸縮部材の伸縮力によって、折り誘導部及びスリットによる吸収性コアの変形が阻害されてしまう恐れを軽減させることができる。
【0035】
かかる吸収性物品であって、前記スリットは、前記一方側から前記他方側まで延出し、前記伸縮部材の伸縮領域の前記前後方向の長さが、前記スリットの前記前後方向の長さより短いことが望ましい。
【0036】
このような吸収性物品によれば、伸縮部材の伸縮力によって、折り誘導部及びスリットによる吸収性コアの変形が阻害されてしまう恐れを軽減させることができる。
【0037】
===第1実施形態===
以下、本発明の「吸収性物品」として、大人用のパンツ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)の内側(肌側)に装着して使用する吸収性パッド10を例に挙げて実施形態を説明する。おむつ1と吸収性パッド10とは、別部材である。
【0038】
<<パンツ型使い捨ておむつ1>>
図1は、おむつ1の概略斜視図である。図2は、吸収性パッド10を装着した展開且つ伸長状態のおむつ1を肌側から見た概略平面図である。おむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつで、所謂2ピースタイプであり、着用者の前側に位置する腹側胴回り部1Aと着用者の後側に位置する背側胴回り部1Bと着用者の股下部に位置する股下部1Cを有する。おむつ1は、腹側胴回り部1Aと背側胴回り部1Bを構成する外装体2と、尿等の排泄物を吸収する吸収性コア4を備える吸収体3を有する。本実施形態では、吸収性パッド10を、2ピースタイプのパンツ型のおむつ1の内側に装着して使用する形態について説明するが、これに限られない。腹側胴回り部1Aと背側胴回り部1Bとを別体とする所謂3ピースタイプのパンツ型の使い捨ておむつや、テープ型の使い捨ておむつの内側に配置してもよい。
【0039】
吸収性パッド10をおむつ1に装着することで、着用者が排泄を行った後に、吸収性パッド10のみを取り替えることで、おむつ1を継続して使用することができるため、おむつ1を長時間使用することが可能となる。
【0040】
<<吸収性パッド10>>
図3は、展開且つ伸長状態の吸収性パッド10を肌側から見た概略平面図である。図4は、展開且つ伸長状態の吸収性パッド10を非肌側から見た概略平面図である。図5は、図3のI-I線での概略断面図である。吸収性パッド10は、互いに交差する前後方向、幅方向、及び、厚さ方向を有する。前後方向において、着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側とする。また、着用時において、着用者の胴側となる側を上側とし、着用者の股下となる側を下側とする。なお、上下方向は、前後方向に沿った方向である。厚さ方向において、着用者の身体に接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。図3等における中央線C-Cは幅方向の中心、中央線CLは前後方向の中心を示している。吸収性パッド10のうち、前後方向の中央線CLより前側の部分を前側部10F、中央線CLより後側の部分を後側部10Rともいう。
【0041】
吸収性パッド10の「展開状態」とは、吸収性パッド10の折り畳みを全て展開した状態をいい、「伸長状態」とは、吸収性パッド10を皺なく伸長させた状態であり、吸収性パッド10を構成する各部材(例えば後述するサイドシート50等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態である。
【0042】
図3図5に示すように、吸収性パッド10は、平面視において、略矩形状の形状を有しており、幅方向の中央線C-Cについて略対称な形状を有し、前後方向の中央線CLについて略対称な形状を有している。吸収性パッド10は、肌側シート20、非肌側シート22、吸収体30、サイドシート50、脚回り伸縮部材54、フック部25を有する。
【0043】
肌側シート20は、液透過性のシート部材であり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等が用いられる。肌側シート20は、吸収体30の肌側面の全域を覆う。非肌側シート22は、液不透過性のシート部材であり、例えば、ポリエチレン(PE)等の適宜な樹脂フィルム等が用いられる。非肌側シート22は、吸収体30の非肌側面の全域を覆う。
【0044】
吸収体30は、吸収性コア32とコアラップシート34を有し、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のコアラップシート34で吸収性コア32を被覆している。吸収性コア32は、尿や便等の排泄物を吸収するものであり、パルプ等の液体吸収性繊維や高吸収性ポリマー(SAP)等の液体吸収性粒状物を、所定形状に成形したものである。吸収性コア32の形状及び特徴については、後述する。
【0045】
サイドシート50は、肌側シート20及び非肌側シート22の幅方向の両側に設けられている。このサイドシート50は、吸収体30の幅方向の両端よりも幅方向の外側に延出し、吸収性パッド10の幅方向の両端を折り返し位置として幅方向の内側かつ厚さ方向の肌側に折り返されることによって、一対の防漏壁部51形成している。防漏壁部51には糸ゴム等の防漏壁伸縮部材52,52が、吸収性パッド10の前後方向に沿って伸長された状態で固定されている。この防漏壁伸縮部材52,52が前後方向に収縮することにより、吸収性パッド10の幅方向の両端部において一対の防漏壁部51が肌側に立ち上がり、吸収性パッド10の防漏壁(レッグサイドギャザー)として機能する。なお、サイドシート50を設けず、非肌側シート22を吸収体30の幅方向の外側まで延出させることによって、防漏壁部51が形成されるようにしても良い。また、防漏壁部51を備えない構成であってもよい。
【0046】
脚回り伸縮部材54は、幅方向における両側端部で、非肌側シート22の非肌側面とサイドシート50の肌側面との間に設けられている。脚回り伸縮部材54は、前後方向に伸縮可能な糸ゴム等の伸縮部材であり、脚回り伸縮部材54によって、脚回りの伸縮性を付与して、脚回りギャザー部を形成する。なお、図3等では、脚回り伸縮部材54の伸縮可能な伸縮領域を脚回り伸縮部材54として示している。
【0047】
フック部25は、吸収性パッド10をおむつ1の肌側面に着脱可能に固定するための仮固定部であり、図4に示すように、吸収性パッド10の非肌側面(非肌側シート22の非肌側)に設けられている。本実施形態のフック部25は、面ファスナーであるが、仮固定部としては、従来から知られた接着手段を用いることができ、例えば、ホットメルト等の接着剤、両面テープ等を挙げることができる。また、フック部25は、吸収性パッド10のおむつ1への仮固定ではなく、下着等の衣服の肌側面への仮固定にも用いることができる。
【0048】
<<着用状態について>>
一般的に、着用状態の吸収性物品の幅方向の中央部を肌側に向かって突出させると、吸収性物品(吸収性コア)を着用者の排泄口に当接させ、排泄物を素早く吸収することができ、着用中の不快感を軽減させやすくなることが知られている。しかし、従来の着用時及び着用状態の吸収性物品は、着用者の脚によって幅方向の外側から内側に向かって力が加えられると、吸収性物品(吸収性コア)が、着用者の意図に反する形状に変形する恐れがあった。特に、吸収性コアは、吸収性物品の中で厚い部材であり、剛性が高いため、一旦、着用者の意図に反する形状に変形をしてしまうと、所謂折り癖が付いて、その変形の修正が困難となり、着用者に不快感や違和感を与え続けることになる恐れがあった。
【0049】
これに対し、本実施形態の吸収性パッド10は、吸収性コア32によって、吸収性コア32(吸収性パッド10)を着用者の排泄口に近づけるように変形させやすくすることで、着用中の不快感や違和感を軽減させやすくなる。以下、吸収性コア32について説明する。
【0050】
<<吸収性コア32>>
図6は、図3の吸収性コア32を肌側から見た概略平面図である。図6に示すように、吸収性コア32は、平面視略砂時計形状を有しており、幅方向の中央線C-Cについて略対称な形状を有し、前後方向の中央線CLについて略対称な形状を有している。また、吸収性コア32は、前後方向の前側及び後側の端部より幅方向の長さが短い幅狭部Mを備える。幅狭部Mは、着用時に着用者の股下に位置する。具体的には、幅狭部Mは、吸収性コア32の前後方向の中央部が最も幅方向の長さが短くなるように、前後方向の前側及び後側の端部から前後方向の中央部且つ幅方向の内側に向かって湾曲したくびれ部である。「幅狭部M」とは、吸収性コア32のうち最も幅方向の長さが長い部分よりも幅方向の長さが短い領域であって、且つ、前後方向における中央(中央線CL)を含む部分である。「前後方向の前側の端部」とは、前側部10Fのうち最も幅方向の長さが長い部分を有し、且つ、幅狭部Mより前側の部分である。「前後方向の後側の端部」とは、後側部10Rのうち最も幅方向の長さが長い部分を有し、且つ幅狭部Mより後側の部分である。図6に示すように、前後方向の前側の端部の幅方向の長さ及び前後方向の後側の端部の幅方向の長さは、吸収性コア32(前側部10F、後側部10R)の最も幅方向の長さが長い部分であり、幅狭部Mの幅方向の長さは、前後方向の前側の端部の幅方向の長さ及び前後方向の後側の端部の幅方向の長さより短い。なお、図6に示すように、幅狭部Mの前側の端を前側端Mfとし、幅狭部Mの後側の端を後側端Mrとする。なお、幅狭部M(前側端Mf)より前側を前方部Fといい、幅狭部M(後側端Mr)より後側を後方部Rという。前方部Fは、前後方向の前側の端部であり、後方部Rは、前後方向の後側の端部でもある。
【0051】
幅狭部Mの前後方向の長さは、125mm以上であることが好ましい。このようにすることで、着用時に、まず、折り誘導部43による変形の前にスリット40を起点として吸収性コア32が変形することを防ぎ、吸収性コア32が着用者の意図に反する形状に変形する恐れを軽減させることができる。
【0052】
吸収性コア32は、一対の折り誘導部43を備える。吸収性コア32の前後方向の前側、つまり、前側部10Fに、折り誘導部43として、前側折り誘導部(一方側折り誘導部)43faと前側折り誘導部(一方側折り誘導部)43fbを備え、吸収性コア32の前後方向の後側、つまり、後側部10Rに、折り誘導部43として、後側折り誘導部(他方側折り誘導部)43raと後側折り誘導部(他方側折り誘導部)43rbを備える。折り誘導部43を圧搾で形成することで、液体吸収性繊維の密度が高くなり、折り誘導部43が設けられていない領域よりも剛性が高くなる。また、容易な工程での折り誘導部43の形成が可能となる。本実施形態の各折り誘導部43は、吸収性コア32を非肌側から肌側に向かって厚さ方向に圧搾した圧搾部である。なお、圧搾によって形成された各折り誘導部43は、吸収性コア32を肌側から非肌側に向かって厚さ方向に圧搾した圧搾部でもよい。吸収性コア32を非肌側から肌側に向かって圧搾することで、折り誘導部43を肌側から非肌側に向かって突出するようにより折り曲げやすくなる。
【0053】
吸収性コア32は、一対のスリット40を備える。吸収性コア32の前側部10Fにスリット40として、スリット40fa、40fbを備え、後側部10Rに、スリット40として、スリット40ra、40rbを備える。各スリット40は、吸収性コア32を厚さ方向に貫通した貫通部である。なお、スリット40は、パルプ等の液体吸収性繊維や高吸収性ポリマー(SAP)等の液体吸収性粒状物が完全に存在しない部分だけでなく、多少の液体吸収性繊維や液体吸収性粒状物が存在する部分であっても良い。スリット40は、液体吸収性繊維や液体吸収性粒状物が周囲よりも明らかに少ない部分であり、周囲より剛性が低い部分をいう。
【0054】
本実施形態のスリット40は、幅方向の一方側(肌側面から見て左側)のスリット40faとスリットraは連続しており、幅方向の他方側(肌側面から見て右側)のスリット40fbとスリット40rbは連続し、それぞれ連続するスリット40fa、40raとスリット40fb、40rbが前後方向における中央を跨ぐように設けられている。前側部10Fのスリット40faと後方部Rのスリットraが連続し、前側部10Fのスリット40fbと後方部Rのスリット40rbが連続することで、スリット40で折れ曲がりやすくなり、スリット40fa、40raとスリット40fb、40rbをそれぞれとの間の領域Xを肌側に向かう凸形状とさせやすくしている。
【0055】
スリット40は、幅(太さ)が3mm以上であることが好ましく、スリット40全体の前後方向の長さが80mm以上であることが好ましい。このようにすることで、スリット40を起点として吸収性コア32を変形させやすくしつつ、スリット40によって、吸収性コア32が吸収した排泄物を前後方向に拡散させやすくなる。
【0056】
前側部10Fの構成は後側部10Rの構成と同様であるため、以下、前側部10Fの構成について説明する。
【0057】
折り誘導部43は、吸収性コア32の折りによる変形を誘導するための部分であり、互いに隣接する領域と剛性が異なる部分である。本実施形態では、折り誘導部43は、吸収性コア32は、厚さ方向に圧搾されていることで、隣接する領域より剛性が高くなる。そのため、折り誘導部43は、吸収性コア32の変形の起点となりやすい部分である。
【0058】
前側折り誘導部43faは、前後方向の前側から後側に、且つ、幅方向の中央部から外側に向かって傾斜している。具体的には、図6に示すように、前側折り誘導部43faは、幅方向の中央部から左斜め下に向かって傾斜した略直線状の所定の幅(太さ)を有する領域である。同様に、前側折り誘導部43fbは、前後方向の前側から後側に、且つ、幅方向の中央部からもう一方の外側に向かって傾斜している。具体的には、前側折り誘導部43fbは、幅方向の中央部から右斜め下に向かって傾斜した略直線状の所定の幅(太さ)を有する領域である。
【0059】
スリット40fa、40fbは、それぞれ前後方向に延在し、幅方向の両側に設けられている。本実施形態のスリット40fa、40fbは、前側部10Fのうち、前後方向の前側に直線部を備え、前後方向の後側に、幅方向の外側に向かって湾曲した湾曲部を備える。スリット40fa、40fbは、吸収性コア32が厚さ方向に貫通した部分であることで、隣接する領域より剛性が低くなっている。そのため、スリット40fa、40fbは、吸収性コア32の変形の起点となりやすい部分である。
【0060】
前後方向において、スリット40は、折り誘導部43より後側に位置し、スリット40は、幅狭部Mと前後方向において重なる部分を有し、スリット40の前側の端が、幅狭部Mの前側の端より後側に位置することで、着用時の吸収性コア32は図7に示すように変形しやすくなる。図7は、吸収性パッド10の着用時における吸収性コア32の変形について説明する概略斜視図である。
【0061】
本実施形態では、図6に示すように、前後方向において、スリット40fa、40fbが、前側折り誘導部43fa、43fbより後側に位置している。つまり、圧搾部のうち、スリット40fa、40fbより前側の部分を前側折り誘導部43fa、43fbという。また、スリット40fa、40fbは全域に亘って幅狭部Mに設けられているため、スリット40fa、40fbの全域は、幅狭部Mと前後方向において重なっており、スリット40fa、40fbの前側の端は、幅狭部Mの前側端Mfより後側に位置している。
【0062】
この吸収性パッド10を着用する際の吸収性コア32の変形について説明する。吸収性パッド10を着用する際の吸収性コア32の変形は、主に、着用者の脚から吸収性コア32(吸収性パッド10)に対して加えられる力やおむつ1や着衣等の外部から吸収性コア32(吸収性パッド10)に対して加えられる力によって生じやすい。
【0063】
まず、吸収性パッド10を着用の際に、吸収性パッド10をおむつ1の内側に装着させると、おむつ1(衣服)の胴回り部を構成する環形状によって、吸収性パッド10の前側部10Fの前側の端部と後側部10Rの後側の端部が肌側に向かって、立ち上がるように変形し、前側折り誘導部43fa、43fbが非肌側に向かって折れ曲がりやすくなる。
【0064】
続いて、吸収性パッド10を装着したおむつ1(図1)を脚元側から股間に向かって引き上げたときに、吸収性コア32が幅狭部Mを備えることで、吸収性コア32のスリット40fa、40fbより前側の部分と着用者の脚とが当接する前に、吸収性コア32の前後方向における中央部に着用者の脚が当接する恐れを軽減させる。吸収性コア32のスリット40fa、40fbより前側の領域に幅方向の外側から内側に向かって力が加えられると、スリット40fa、40fbより前側に位置する前側折り誘導部43fa、43fbが非肌側に向かって折り曲げられるように変形しやすくなり、前側折り誘導部43fa、43fbが非肌側に向かってより折り曲げられやすくなる。
【0065】
さらに、吸収性パッド10(おむつ1)を着用者の股間まで引き上げて、着用者の脚によってスリット40fa、40fbが設けられた幅狭部Mに左右方向の外側から加えられると、幅狭部Mと前後方向において重なるスリット40fa、40fbが変形しやすくなる。幅狭部Mに左右方向の外側から加えられると、おむつ1による力や着用者の脚による力などの外部からの力(以下、単に「外部からの力」ともいう。)が、非肌側に折り曲げられた前側折り誘導部43fa、43fbの変形によって、外部からの力を前側折り誘導部43fa、43fbからスリット40fa、40fbに伝え、スリット40fa、40fbの非肌側に向かう変形を誘導させやすくなる。つまり、非肌側に向かって折り曲げられた前側折り誘導部43fa、43fbより後側に位置するスリット40fa、40fbが、肌側に向かうように折れ曲がる恐れを軽減させ、スリット40fa、40fbが非肌側に向かうように折り曲げられやすくする。
【0066】
スリット40fa、40fbが非肌側に向かうように折り曲げられることで、図7に示すように、前後方向におけるスリット40faとスリット40fbの間の領域Xが肌側に向かう凸形状とさせることができる。領域Xを肌側に向かう凸形状とすることで、着用者の排泄口に近づけ、排泄口にフィットさせやすくなり、排泄物を素早く吸収することができる。これによって、着用者に与える、吸収性パッド10の表面に排泄物が残存することによる不快感を軽減させることができる。
【0067】
図8Aは、第1実施形態のスリット40と折り誘導部43を説明する図面である。図8Aに示すように、前側折り誘導部43fa、43fbの少なくとも一部と、スリット40fa、40fbの縁が合致する合致点Gを有することが好ましい。合致点Gによって、前側折り誘導部43faからスリット40faに外部からの力を伝えやすくなり、前側折り誘導部43fbからスリット40fbに外部からの力を伝えやすくなる。そのため、スリット40fa、40fbを非肌側に向かって折るように誘導させやすくなり、スリット40faとスリット40fbとの間の領域Xを肌側に向かって突出させやすくなる。なお、前側折り誘導部43fa、43fbを構成する圧搾部が、スリット40fa、40fbの前側の端より後側に設けられていてもよい。ただし、本実施形態における折り誘導部43は、スリット40fa、40fbとの合致点より前側の部分をいう。
【0068】
また、上述のとおり、吸収性パッド10は、非肌側面にフック部25を有している。図3に示すように、このフック部25の幅方向の両端より内側に、前側折り誘導部43fa、43fbと、スリット40fa、40fbの縁が合致する合致点Gが設けられていることが好ましい。吸収性パッド10において、幅方向におけるフック部25の両端より内側は、フック部25の幅方向の両端より外側の領域よりもおむつ1に固定された状態となる。そのため、合致点Gを幅方向におけるフック部25の両端より内側に設けることで、外部からの力を前側折り誘導部43fa、43fbを介してスリット40fa、40fbに伝えやすくして、スリット40fa、40fbを非肌側に折り曲げやすくすることができ、スリット40faとスリット40fbとの間の領域Xを肌側に向かって突出させやすくなる。
【0069】
図6及び図8Aに示すように、前側折り誘導部43faと前側折り誘導部43fbが、前側の端部において連続していることが好ましい。前側折り誘導部43faと前側折り誘導部43fbが連続することで、おむつ1や着用者の脚からの力などの外部からの力を前側折り誘導部43fa及び前側折り誘導部43fbを通してスリット40fa及びスリット40fbに伝えやすくなり、スリット40fa及びスリット40fbが非肌側に向かって折り曲げられ、スリット40faとスリット40fbとの間の領域Xを肌側に突出させやすくなる。
【0070】
前後方向において、幅狭部Mと前側折り誘導部43fa、43fbとが重なる部分を有することが好ましい。より好ましくは、幅狭部Mと前側折り誘導部43fa、43fbとが重なる部分の前後方向の長さが、前側折り誘導部43fa、43fbの前後方向の長さの半分以上であるとよい。図6等に示すように、本実施形態は、前後方向において、前側折り誘導部43fa、43fbの全域が幅狭部Mと重なっている。前後方向において、幅狭部Mと前側折り誘導部43fa、43fbとが重なることで、吸収性パッド10を着用する際に、前側折り誘導部43fa、43fbが折れ曲がる前に、スリット40fa、40fbを起点として折れ曲がってしまう恐れを軽減させて、まず、前側折り誘導部43fa、43fbを起点として吸収性コア32の変形を誘導させやすくなり、その後に、前側折り誘導部43fa、43fbの折れ曲がりによってスリット40fa、40fbを非肌側に向かって折り曲げるように誘導して、スリット40faとスリット40fbとで挟まれた領域Xを肌側に向かう凸形状とさせやすくなる。
【0071】
なお、前後方向における、前側折り誘導部43fa、43fbの前側の端と、幅狭部Mの前側の端を前側端Mfとの間の長さが、30mm以下であることが好ましい。このようにすることで、外部からの力をまず前側折り誘導部43fa、43fbの変形に作用させやすくなり、前側折り誘導部43fa、43fbの変形から、スリット40fa、40fbの非肌側への折れ曲がりを誘導させやすくなる。
【0072】
図6に示すように、スリット40fa、40fbの前後方向の長さL40fが、前側折り誘導部43fa、43fbの前後方向の長さL43fより長いことが好ましい(L40f>L43f)。スリット40fa、40fbは前後方向に沿っているため、前側折り誘導部43fa、43fbの前後方向の長さL43fがスリット40fa、40fbの前後方向の長さL40fより長い場合よりも吸収性コア32で吸収した排泄物を吸収性コア32の前後方向に拡散させやすくなり、吸収性コア32の広い範囲で排泄物を吸収しやすくなる。
【0073】
包装状態等の使用前の吸収性パッド10は、図3に示すように、前後方向の中心を含む中心部に設けられた、幅方向に沿った折り畳み部Hで前後方向に折り畳まれている。また、吸収性パッド10は、幅方向の両側に、前後方向に伸縮する一対の脚回り伸縮部材54を備えている。この一対の脚回り伸縮部材54が、幅方向において、それぞれスリット40fa、40fbより外側で、且つ、折り畳み部Hを横断する位置に設けられていることが好ましい。これによって、スリット40fa、40fbより幅方向の外側の吸収性パッド10の部分を脚回り伸縮部材54によって上方に引き上げやすくなり、着用状態の吸収性パッド10(吸収性コア32)を前後方向から見たときに、吸収性パッド10(吸収性コア32)幅方向の中央部より幅方向の両側端部が上方に位置するように湾曲した形状とすることができるため、吸収性コア32の幅方向の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。なお、本実施形態では、幅方向の両側に、2本ずつの脚回り伸縮部材54が設けられているが、幅方向の両側に1本ずつの脚回り伸縮部材54が設けられている構成であってもよく、脚回り伸縮部材54の数は、任意の数とすることができる。
【0074】
脚回り伸縮部材54の伸縮領域の前後方向の長さT54が、幅狭部Mの前後方向長さTMより短いことが好ましい(T54<TM)。これによって、脚回り伸縮部材54の伸縮力によって、前側折り誘導部43fa、43fb及びスリット40fa、40fbによって生じる吸収性コア32の変形が阻害されたり、意図に反する変形を生じさせたりする恐れを軽減させることができる。
【0075】
さらに、前側部10Fに設けられたスリット40fa、40fbは、吸収性コア32の後側まで延出し、それぞれスリット40ra、40rbと連続している。この連続したスリット40faとスリット40raの前後方向の長さT40、及びスリット40fbとスリットrbの前後方向の長さT40より、脚回り伸縮部材54の伸縮領域の前後方向の長さT54が短いことがより好ましい。脚回り伸縮部材54の伸縮力によって、前側折り誘導部43fa、43fb及びスリット40fa、40fbによって生じる吸収性コア32の変形が阻害されたり、意図に反する変形を生じさせたりする恐れをより軽減させることができる。
【0076】
図6等に示すように、吸収性コア32は、前側部10Fに、一対の切欠き部38を備える。前側部10Fに設けられた切欠き部38は、幅方向の側端部に設けられ、前側折り誘導部43fa、43fbより前側に設けられている。本実施形態では、切欠き部38より下側が幅狭部M、切欠き部38より前側が前方部Fである。前側部10Fに設けられた切欠き部38によって、前側折り誘導部43fa、43fbによる誘導で、一対のスリット40fa、40fbで挟まれた領域Xを肌側に向かう凸形状とさせやすくしつつ、前側折り誘導部43fa、43fbより前側に設けられた切欠き部38を変形の起点として、前方部Fを肌側に向かって引き上げやすくして、前方部Fを着用者の腹部に沿った形状にさせやすくなる。
【0077】
また、図6及び図8Aに示すように、吸収性パッド10(吸収性コア32)は、前側部10Fだけでなく、後側部10Rもスリット40ra、40rb及び後側折り誘導部43ra、43rbを有している。図6等に示すように、後側部10Rにおいても、前後方向において、スリット40ra、40rbが、後側誘導部43ra、43rbより前側に位置し、スリット40ra、40rbが、幅狭部Mと前後方向において重なる部分を有し、スリット40ra、40rbの後側の端が、幅狭部Mの後側の端より前側に位置する。これによって、吸収性パッド10を、前後方向を反転させて着用したとしても、図7に示すように吸収性コア32を変形させやすくなるため、吸収性パッド10の前後方向において、どちらを前側にしても着用が可能となる。
【0078】
前側部10Fと同様に、吸収性コア32は、後側部10Rにも、一対の切欠き部38を備える。後側部10Rに設けられた切欠き部38は、幅方向の側端部に設けられ、後側折り誘導部43ra、43rbより後側に設けられている。これによって、吸収性物品10を前後方向について反転させた状態で着用した場合でも、後側折り誘導部43ra、43rbによる誘導で、一対のスリット40ra、40rbで挟まれた領域Xを肌側に向かう凸形状とさせやすくしつつ、切欠き部38を変形の起点として、後方部Rを肌側に向かって引き上げやすくして、後方部Rを着用者の腹部に沿った形状にさせやすくなる。
【0079】
さらに、図6に示すように、前後方向において、幅狭部Mを三等分した時の前側部分M1、中央部分M2、後側部分M3について、前側部分M1には、前側折り誘導部43fa、43fbの少なくとも一部が設けられ、中央部分M2には、スリット40fa、40fb、40ra、40rbの少なくとも一部が設けられ、後側部分M3には、後側折り誘導部43ra、43rbの少なくとも一部が設けられていることが好ましい。これによって、吸収性パッド10を前後反転した状態での着用を可能としつつ、着用者の前側に設けられた前側折り誘導部43fa、43fb又は後側折り誘導部43ra、43rbが、スリット40fa、40fb、40ra、40rbを非肌側に折れるように誘導しやすくなり、スリット40fa、40raとスリット40fb、40fbとで挟まれた領域Xを肌側に向かう凸形状とさせやすくなる。
【0080】
折り誘導部43及びスリット40は、図8B及び図8Cに示すような構成であってもよい。図8B及び図8Cは、それぞれ第1実施形態の変形例を説明する図である。
【0081】
図8Bに示すように、幅方向の左側の前側折り誘導部43faと右側の前側折り誘導部43fbとが、連続せずに離間していてもよい。具体的には、前側折り誘導部43faの前側の端と前側折り誘導部43fbの端とが、所定距離だけ離れている。このような場合でも、前側折り誘導部43faと前側折り誘導部43fbが外部からの力をそれぞれスリット40fa、40fbに伝え、スリット40fa、40fbを非肌側に向かうように折れ曲がらせて、スリット40faとスリット40fbとの間の領域Xが肌側に突出するように吸収性コア32を変形させやすくなる。
【0082】
図8Cに示すように、前側折り誘導部43faと前側折り誘導部43fbがそれぞれスリット40fa、40fbと合致する合致点Gを有さず、前側折り誘導部43faと前側折り誘導部43fbとスリット40fa、40fbとが離間していてもよい。このような場合、前側折り誘導部43faを後側に向かって延長させた仮想領域43vが、スリット40faの前側の縁と交差する交差点Jを有し、前側折り誘導部43fbを後側に延長させた仮想領域43vが、スリット40fbの前側の縁と交差する交差点Jを有することが好ましい。図8Cにおいて、仮想領域43vを点線で示している。これによって、前側折り誘導部43faと前側折り誘導部43fbの折れ曲がりによって外部からの力をそれぞれスリット40fa、40fbに伝え、スリット40fa、40fbを非肌側に向かうように折れ曲がらせて、スリット40faとスリット40fbとの間の領域Xが肌側に突出するように吸収性コア32を変形させやすくなる。
【0083】
また、さらに、図8A図8Cには、前側から後側まで連続する形状の前側折り誘導部43faと前側折り誘導部43fbについて説明したが、これに限られない。前側折り誘導部43faが間欠的に圧搾された圧搾部の集合体、前側折り誘導部43fbが間欠的に圧搾された圧搾部の集合体であってもよい。
【0084】
===第2実施形態===
<<<吸収性パッド100>>>
図9は、展開且つ伸長状態の吸収性パッド100を肌側から見た概略平面図である。図10は、図9の吸収性コア320の前側部10Fを説明する図である。以下、第2実施形態の吸収性パッド100について、主に第1実施形態と異なる部分を説明し、第1実施形態の構成と共通する部分は、符号等を同じとし、吸収性パッド100の基本構成の詳細な説明は省略する。また、第1実施形態の吸収性パッド10の構成のいくつかは、第2実施形態の吸収性パッド100にも適用できる。
【0085】
第1実施形態と同様に、第2実施形態の吸収性パッド100は、肌側シート20、非肌側シート22、吸収体30、サイドシート50、脚回り伸縮部材54、フック部25を有する。また、第1実施形態と同様に、吸収性コア320は、幅狭部M及び一対のスリット40を備え、複数の圧搾部45からなる、所定の幅(太さ)を備える折り誘導部43を有する。
【0086】
第2実施形態の吸収性コア32には、前後方向における中央部及び幅方向における中央部の中央領域Zを除く略全域に亘って、略格子状の圧搾部45が設けられている。圧搾部45は、幅方向及び前後方向において連続しない不連続部分を有している。圧搾部45が設けられた領域は剛性が高くなっており、圧搾部45が設けられた領域と圧搾部45が設けられていない隣接する領域とは剛性差が生じている。第2実施形態では、中央領域Zには、圧搾部45が設けられておらず、吸収性コア32の幅方向における一対のスリット40の間の領域には、圧搾部45が設けられていない。
【0087】
第2実施形態の折り誘導部43は、互いに隣接する圧搾部45と、圧搾部45が設けられていない領域との間の剛性が異なる部分であり、具体的には、互いに隣接する圧搾部45と中央領域Zとの間の剛性が異なる部分である。吸収性コア32は、厚さ方向に圧搾されていることで、隣接する領域より剛性が高くなる。図10において、第2実施形態の折り誘導部43は、仮想線43wで囲まれた領域に設けられた圧搾部45であり、変形を生じさせやすい部分であって、各圧搾部45(折り誘導部43)は、図10に示すように、前側から後側に、且つ幅方向の中央部から外側に向かって傾斜している。そのため、折り誘導部43によって、外部からの力をスリット40fa、40fbに伝え、スリット40fa、40fbを非肌側に向かって折れ曲がるように誘導し、スリット40faとスリット40fbとの間の領域Xを肌側に向かって突出させやすくなり、図7に示すような形状に吸収性コア32を変形させやすくなる。
【0088】
また、第2実施形態の吸収性コア32は、中央領域Zを除く略全域は、略格子状の圧搾部45を有し、剛性が高い部分が間欠的に設けられていることで、吸収性コア32の厚みが薄く(厚さ方向の長さが短く)、折れ曲がり起点となりやすい部分である。つまり、第2実施形態の吸収性コア32の中央領域Zを除く領域は、一対のスリット40及び圧搾部45によって、吸収性コア32を変形させやすくなる。これによって、着用時の外部からの力を折り誘導部43を介してスリット40fa、40fbに伝えやすくなり、スリット40fa、40fbを非肌側に向かって折れ曲がるように誘導させやすくなる。そして、スリット40faとスリット40fbとの間の中央領域Zを肌側に向かって突出させやすくなる。さらに、肌側に向かって突出されたスリット40fa、40fbとの間は、圧搾部45が設けられていない中央領域Zでもあるため、中央領域Zをより平坦な面の状態で、着用者の排泄口に近づけやすくなるため、着用者の排泄口への肌当たりを向上させつつ、排泄物を素早く吸収しやすくなるため、着用中の違和感や不快感を減少させることができる。
【0089】
なお、第2実施形態の吸収性コア32において、必ずしも中央領域Zに圧搾部45を設けない構成に限られない。例えば、一対のスリット40faとスリット40fbとの間に、前方部Fや後方部Rに設けた圧搾部45と同様の圧搾部を設けてもよい。一対のスリット40faとスリット40fbとの間に圧搾部を設ける場合であっても、圧搾部45と、圧搾部と隣接する圧搾部が設けられていない領域との間の剛性差が異なる部分を設けることで、折り誘導部43が、スリット40fa、40fbを非肌側に向かって折れ曲がるように誘導することができ、スリット40faとスリット40fbとの間を肌側に向かって突出させやすくなる。また、吸収性コア32のより広い範囲に圧搾部を設けることで、吸収性コア32の厚さを薄く(厚さ方向の長さを短く)することができ、且つ、吸収性コア32全体の剛性が高くなるため、吸収性コア32の変形を促しやすくなる。
【0090】
===その他の実施形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0091】
上述の実施形態においては、本発明の吸収性物品を大人用のパンツ型の使い捨ておむつ1の内側に配置する吸収性パッド10として説明したが、これに限られない。例えば、本発明の吸収性物品としては、単体で着衣等に設置する生理用ナプキン及び吸収パッド、大人用及び子供用のパンツ型の使い捨ておむつやテープ型の使い捨ておむつ、ショーツ型ナプキン、子供用の使い捨ておむつの内側に配置する吸収性パッド等であってもよい。
【0092】
上述の実施形態では、吸収性コア32を圧搾によって形成された折り誘導部43としたが、これに限られない。折り誘導部43が、吸収性コア32における剛性の異なる部分であればよい。例えば、折り誘導部43を、吸収性コア32において液体吸収性繊維の単位面積あたりの質量(g/m)が異なる部分や、吸収性コアが厚さ方向に貫通された貫通部としてもよい。
【0093】
上述の実施形態では、スリット40が、直線部と湾曲部とを備える貫通部としたが、これに限られない。スリット40は、前後方向に延在する形状であればよく、湾曲部を備えない矩形形状や直線状等の任意の形状にすることができる。
【0094】
また、上述の実施形態では、幅方向の一方側(左側)のスリット40faとスリットraが連続し、幅方向の他方側(右側)のスリット40fbとスリット40rbが連続したが、各スリット40は、前後方向に沿った形状であればよく、スリット40faとスリットraとが離間し、スリット40fbとスリット40rbとが離間してもよい。
【0095】
上述の実施形態では、前後方向において、幅狭部Mと重なる位置に折り誘導部43fa、43fbを設けたが、これに限られない。スリット40fa、40fbが折り誘導部43fa、43fbより後側に設けられていればよく、例えば、折り誘導部43fa、43fbの全体を前方部Fに設けてもよいし、前方部Fと幅狭部Mとを跨ぐように設けてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 パンツ型使い捨ておむつ(おむつ)、
2 外装体、
3 吸収体、
4 吸収性コア、
10、100 吸収性パッド(吸収性物品)、
10F 前側部(一方側)、
10R 後側部(他方側)、
20 肌側シート、
22 非肌側シート、
25 フック部(仮固定部)、
30 吸収体、
32、320 吸収性コア、
34 コアラップシート、
38 切欠き部、
40 スリット、
40fa、40fb、40ra、40rb スリット、
43 折り誘導部、
43fa、43fb 前側折り誘導部(折り誘導部)、
43ra、43rb 後側折り誘導部(他方側折り誘導部)、
43v 仮想領域、
45 圧搾部、
50 サイドシート、
51 防漏壁部、
52 防漏壁伸縮部材、
54 脚回り伸縮部材、
M 幅狭部、
F 前方部、
R 後方部、
H 折り畳み部、
X 中央領域、
G 合致点、
J 交差点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10