(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】イオン注入チャネリング技術により形成される超接合パワーシリコンカーバイド半導体デバイス及び関連方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20230731BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20230731BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20230731BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230731BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230731BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230731BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20230731BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230731BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20230731BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L29/91 F
H01L29/91 B
H01L29/78 652T
H01L29/78 652H
H01L29/78 652F
H01L29/78 658A
H01L29/91 K
H01L29/86 301F
H01L29/86 301M
H01L29/86 301E
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652J
H01L21/265 Z
H01L21/265 U
H01L21/265 V
H01L29/48 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205074
(22)【出願日】2021-12-17
(62)【分割の表示】P 2018562539の分割
【原出願日】2017-03-14
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】ウルフスピード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOLFSPEED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ブラント、エドワード ロバート
(72)【発明者】
【氏名】スヴォノフ、アレグザンダー ヴイ.
(72)【発明者】
【氏名】パラ、ヴィピンダス
(72)【発明者】
【氏名】リヒテンヴァルナー、ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン、キンチュン
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/013620(WO,A1)
【文献】Wong Leung, J et al.,Effect of crystal orientation on the implant profile of 60 keV Al into 4H-SiC crystals,Journal of Applied Physics,Vol.93, No.11,2003年,PP.8914-8917
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
H01L 21/329
H01L 21/336
H01L 29/04
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 29/861
H01L 29/868
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部及び下部を有するドリフト領域(220、320、420、520)であって、シリコンカーバイドを備えるドリフト領域と、
前記ドリフト領域の前記上部にある第1の接点(236、536)と、
前記ドリフト領域の前記下部にある第2の接点(232、532)と、
を備え、
前記ドリフト領域は、
第1の導電型の不純物がドープされる第1のピラーであって、<11-23>、<-1-123>、<1-213>、<-12-13>、<2-1-13>、及び<-2113>結晶軸の1つの+/-1.5°の範囲内にある角度で傾けられる第1の側壁を有する第1のピラー(224、324、424、524、724、774)と、
前記第1のピラーに隣接するとともに前記第1の導電型の不純物とは反対の第2の導電型の不純物がドープされる第2のピラー(226、326、426、526、726、776)と、
を含み、
前記第2のピラーは、<11-23>、<-1-123>、<1-213>、<-12-13>、<2-1-13>、及び<-2113>結晶軸の1つの+/-1.5°の範囲内にある角度で傾けられる第1の側壁を有し、
前記第1のピラーの前記第1の側壁は、前記第2のピラーの前記第1の側壁と同じ角度で傾けられ、
前記第1および第2のピラーの第1の側壁は、シリコンカーバイドドリフト層の上面
と垂直な平面に対して6°から35°の間の角度で傾斜し、
前記第1のピラーの前記第1の側壁は、前記第2のピラーの前記第1の側壁と対向して直接に接触し、
前記第1のピラーは、前記第1の導電型の注入ピラーを含み、前記第2の型のピラーは、前記第1のピラーに直接接触する前記第2の導電型の注入ピラーを含み、これにより、前記ドリフト領域内の超接合構造の一部である前記ドリフト層にp-n接合が形成される、半導体デバイス。
【請求項2】
前記第1のピラーおよび前記第2のピラーはそれぞれ、前記ドリフト領域上で第1の方向に延びる長手方向軸を有し、当該第1の方向に実質的に垂直である第2の方向に傾斜している、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記ドリフト領域は、2H、4H、又は6Hのシリコンカーバイドからなり、ここで、ピラーは、前記ドリフト領域が6Hシリコンカーバイドからなる場合は10°から13°の間の角度で、前記ドリフト領域が4Hシリコンカーバイドからなる場合は15.5°から18.5°の間の角度で、または、前記ドリフト領域が2Hシリコンカーバイドからなる場合は30°から33°の間の角度で、<0001>結晶軸から傾斜している少なくとも2つの側壁を有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記ドリフト領域と前記第2の接点との間にシリコンカーバイド基板(210、510)を更に備え、前記第1の導電型の不純物がp型導電性不純物であり、前記第2の導電型の不純物がn型導電性不純物であり、
前記シリコンカーバイド基板は、<10-10>および<11-20>結晶軸によって規定される平面に対して2°から8°の間の傾斜角度で切断されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
エッジ終端(360、460)を更に備え、前記第1及び第2のピラーが前記エッジ終端によって取り囲まれる請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記第1及び第2のピラーは、前記ドリフト領域の上面から前記ドリフト領域内へと少なくとも4ミクロン延びる請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記第1のピラーは、前記ドリフト領域の上面からの深さに応じて前記第1のピラーの少なくとも2.5ミクロン部分の全体にわたって10倍未満変化するドーピング濃度を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
半導体デバイスを形成する方法であって、
シリコンカーバイドのドリフト層(220、320、420、520)を形成するステップと、
シリコンカーバイドのドリフト層の上面にマスク(502、504)を形成するステップと、
前記ドリフト層の選択された部分に第1の導電型を有する不純物を注入するステップであって、第1の導電型を有する前記ドリフト層内に第1の注入領域(226、326、426、526、726、776)を形成するために、不純物が<11-23>、<-1-123>、<1-213>、<-12-13>、<2-1-13>、及び<-2113>結晶軸のいずれかの+/-1.5°以内の角度で注入され、前記第1の注入領域は前記シリコンカーバイドのドリフト層の上面
と垂直な平面に対して6°から35°の間の角度で傾斜している第1の側壁を有する、ステップと、
第1のマスク(502)を除去し、前記シリコンカーバイド層の上面に第2のマスク(504)を形成するステップと、
前記ドリフト層の選択された部分に前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する不純物を注入するステップと、を有し、
第2の導電型を有するドリフト層内に第2の注入領域(224、324、424、524、724、744)を形成するために、前記不純物は、<11-23>、<-1-123>、<1-213>、<-12-13>、<2-1-13>、及び<-2113>結晶軸のいずれかの+/-1.5°以内の角度で注入され、前記第2の注入領域(224、324、424、524、724、744)は、前記シリコンカーバイドのドリフト層の上面に対して傾斜した第1の側壁を有し、
前記第1および第2の導電型の不純物は同じ角度で注入され、前記第1のピラーの前記第1の側壁は、前記第2のピラーの前記第1の側壁と同じ角度で傾斜し、
前記第1のピラーの前記第1の側壁は、前記第2のピラーの前記第1の側壁に面して直接接触し、
前記第1の注入領域はp型のピラーからなり、前記第2の注入領域は前記p型のピラーと直接接触するn型のピラーからなり、これにより、前記ドリフト層内の超接合構造の一部である前記ドリフト層にp-n接合が形成される、方法。
【請求項9】
前記第1のピラーおよび前記第2のピラーの上面に前記第1の導電型の領域を注入することによってブロッキング接合(240、540)を形成することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シリコンカーバイドのドリフト層は、2H、4H、または6Hのシリコンカーバイドからなり、ここで、ピラーは、前記シリコンカーバイドのドリフト層が6Hシリコンカーバイドからなる場合は10°から13°の間の角度で、前記シリコンカーバイドのドリフト層が4Hシリコンカーバイドからなる場合は15.5°から18.5°の間の角度で、または、前記シリコンカーバイドのドリフト層が2Hシリコンカーバイドからなる場合は30°から33°の間の角度で、<0001>結晶軸から傾斜している少なくとも2つの側壁を有する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府の利害関係に関する陳述
本発明は、陸軍研究所により付与される契約番号W911NF-12-2-0064に基づく政府支援によってなされた。政府は本発明において特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、パワー半導体デバイスに関し、特に、超接合構造を有するパワー半導体デバイス及びそのようなデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
パワー半導体デバイスは、大きな電流を流して高電圧をサポートするために使用される。例えば、パワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(「MOSFET」)、バイポーラ接合トランジスタ(「BJT」)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(「IGBT」)、ショットキー(登録商標)ダイオード、接合バリアショットキー(「JBS」)ダイオード、マージドp-nショットキー(「MPS」)ダイオード、ゲートターンオフトランジスタ(「GTO」)、MOS制御サイリスタ、及び、様々な他のデバイスを含む多種多様なパワー半導体デバイスが当該技術分野において知られている。これらのパワー半導体デバイスは、一般に、単結晶シリコン半導体材料から、又は、より最近では、シリコンカーバイド系又は窒化ガリウム系の半導体材料から製造される。
【0004】
パワー半導体デバイスは横方向構造又は縦方向構造を有することができる。横方向構造を有するデバイスでは、デバイスの端子(例えば、パワーMOSFETデバイスにおけるドレイン端子、ゲート端子、及び、ソース端子)が半導体層構造の同じ主面(すなわち、上面又は下面)上にある。一方、縦方向構造を有するデバイスでは、少なくとも1つの端子が半導体層構造の各主面上に設けられる(例えば、垂直MOSFETデバイスでは、ソースが半導体層構造の上面にあってもよく、ドレインが半導体層構造の下面上にあってもよい)。半導体層構造は下層の基板を含んでも含まなくてもよい。本明細書中において、用語「半導体層構造」は、半導体基板及び/又は半導体エピタキシャル層などの1つ以上の半導体層を含む構造を指す。
【0005】
従来のシリコンカーバイドパワーデバイスは、一般に、第1の導電型(例えば、n型基板)を有するシリコンカーバイドウエハなどのシリコンカーバイド基板を有し、該基板上に第1の導電型(例えば、n型)を有するエピタキシャル層構造が形成される。このエピタキシャル層構造(1つ以上の別個の層を備えてもよい)は、パワー半導体デバイスのドリフト領域として機能する。デバイスは、一般に、p-n接合部及び/又はショットキー接合部を有する1つ以上のパワー半導体デバイスを含む「アクティブ領域」を含む。アクティブ領域は、ドリフト領域上及び/又はドリフト領域内に形成されてもよい。アクティブ領域は、逆バイアス方向の電圧を阻止して順バイアス方向に電流を流すための主接合部として作用する。また、デバイスは、アクティブ領域に隣接するエッジ終端領域を有してもよい。1つ以上のパワー半導体デバイスが基板上に形成されてもよく、また、各パワー半導体デバイスは一般にそれ自体のエッジ終端を有する。基板が完全に形成されて処理された後、基板は、複数のデバイスが同じ基板上に形成される場合、個々のエッジ終端付きパワー半導体デバイスを分離するようにダイシングされてもよい。パワー半導体デバイスが単位セル構造を有してもよく、この単位セル構造において、各パワー半導体デバイスのアクティブ領域は、互いに並列に配置されて単一のパワー半導体デバイスとして共に機能する多数の個々のデバイスを含む。
【0006】
パワー半導体デバイスは、大きな電圧及び/又は電流を(順方向又は逆方向遮断状態では)遮断する又は(順方向動作状態では)通すように設計されている。例えば、遮断状態において、パワー半導体デバイスは、数百又は数千ボルトの電位を維持するように設計されてもよい。しかしながら、デバイスが遮断するようになっている電圧レベルに印加電圧が近づく又はそのような電圧レベルを印加電圧が超えると、軽微なレベルの電流がパワー半導体デバイスを通じて流れ始めることができる。一般に「漏れ電流」と称されるそのような電流が非常に望ましくない場合がある。ドリフト領域の特にドーピング及び厚さの関数となり得るデバイスの設計電圧阻止能力を超えて電圧が増大される場合には、漏れ電流が流れ始める場合がある。しかしながら、電流漏れは、デバイスのエッジ終端及び/又は主接合部の不具合などの他の理由により発生する可能性がある。デバイスにおける電圧が降伏電圧を超えて臨界レベルまで増大されれば、電界の増大が半導体デバイス内の電荷キャリアの制御不可能な望ましくない急激な生成をもたらす場合があり、それにより、アバランシェ降伏として知られる状態につながる。
【0007】
また、パワー半導体デバイスは、該デバイスの設計降伏電圧よりも低い電圧レベルで軽微とは言えない量の漏れ電流が流れることができるようにし始める場合もある。特に、漏れ電流は、電界クラウディング効果に起因して高電界に直面し得るアクティブ領域のエッジで流れ始める場合がある。この電界クラウディング(及びその結果として生じる漏れ電流)を低減するために、パワー半導体デバイスのアクティブ領域の一部又は全部を取り囲むエッジ終端構造が設けられてもよい。これらのエッジ終端は、より広い領域にわたって電界を広げ、それにより、電界クラウディングを低減することができる。
【0008】
縦型パワー半導体デバイスにおいて、デバイスの阻止電圧定格は、一般に、ドリフト領域の厚さ及びドーピング濃度によって決定される。特に、デバイスの降伏電圧を増大させるために、ドリフト領域のドーピング濃度が減少され及び/又はドリフト領域の厚さが増大される。一般に、設計段階中、所望の阻止電圧定格が選択され、その後、所望の阻止電圧定格に基づいてドリフト領域の厚さ及びドーピングが選択される。ドリフト領域は順方向「オン」状態のデバイスのための電流経路であるため、ドリフト領域のドーピング濃度の減少及び厚さの増大は、デバイスのためのより高いオン状態抵抗をもたらし得る。したがって、これらのデバイスのためのオン状態抵抗と阻止電圧の間には固有のトレードオフがある。
【0009】
ドリフト領域が交互に並んだ高濃度にドープされたn型領域とp型領域とに分割される超接合型ドリフト領域が導入されてきた。縦型半導体デバイスでは、これらの並んだn型領域及びp型領域がしばしば「ピラー」と称される。ピラーは、フィン形状、柱形状、又は、他の形状を有し得る。これらのピラーの厚さ及びドーピングは、超接合が低抵抗及び高降伏電圧を伴うp-n接合のように作用するように制御され得る。したがって、超接合構造を用いることによって、デバイスの降伏電圧とドリフト領域のドーピングレベルとの間の従来のトレードオフを回避することができる。一般に、ピラーの少なくとも幾つかはイオン注入によって形成され、また、超接合構造の効果を高めるために、いわゆる「深い」注入(例えば、2.5ミクロンから5ミクロン以上のイオン注入深さ)が用いられる。超接合デバイスにおいて、ドリフト領域におけるドーピング濃度は、降伏電圧に対する影響が低減されたデバイスのオン状態抵抗を下げるために増大されてもよい。
【0010】
図1は、従来の超接合型ドリフト領域30を有するJBSダイオード10の形態を成す従来のパワー半導体デバイスの概略断面図である。
図1に示されるように、JBSダイオード10は、カソード接点20、オーミック接点層22、n型基板24、ドリフト領域30、p型ブロッキング接合部40、チャネル領域46、ショットキー接点42、及び、アノード接点44とを含む。カソード接点20及びアノード接点44はそれぞれ高導電性金属層を備えてもよい。ショットキー接点42は、ドリフト領域30と共にショットキー接合部を形成する層を備えてもよく、例えばアルミニウム層を備えてもよい。n型基板24は、窒素又はリンなどのn型不純物が高濃度にドープされたシリコンカーバイド基板を備えてもよい。オーミック接点層22は、シリコンカーバイド基板24に対するオーミック接点を形成するべくn型シリコンカーバイドに対するオーミック接点を形成する金属を備えてもよい。p型ブロッキング接合部40は、p型ドーパントが高濃度に注入されるドリフト領域30の上部にあるp型注入領域であってもよい。チャネル領域46はp型ブロッキング接合部40に隣接して位置される。チャネル領域46は、オン状態で電流を通すとともに遮断状態で電圧を遮断する半導体構造である。ダイオード10がその順方向オン状態にあるときには、電流がチャネル領域46を通じて流れる。
【0011】
ドリフト領域30は、少なくとも1つのn型ピラー32と少なくとも1つのp型ピラー34とを含むシリコンカーバイド半導体領域を備えてもよい。n型ピラー32及びp型ピラー34はそれぞれ、n型及びp型ドーパントがそれぞれドープされるエピタキシャル成長されたシリコンカーバイド領域を備えてもよい。n型ピラー32における電荷数は、p型ピラー34における電荷数にほぼ等しくてもよい。n型及びp型ピラー32,34は、例えば、ドリフト領域30の所定の部分にイオンを注入することによって形成されてもよい。当業者に知られているように、n型又はp型ドーパントなどのイオンは、所望のイオン種をイオン化して所定の運動エネルギーのイオンをイオン注入ターゲットチャンバ内の半導体層の表面へ向けてイオンビームとして加速させることによって半導体層又は半導体領域に注入されてもよい。所定の運動エネルギーに基づいて、所望のイオン種が半導体層中へ特定の深さまで侵入してもよい。
【発明の概要】
【0012】
本発明の実施形態にしたがって、上部及び下部を有するドリフト領域であって、シリコンカーバイドを備えるドリフト領域と、ドリフト領域の上部にある第1の接点と、ドリフト領域の下部にある第2の接点とを含む半導体デバイスが提供される。ドリフト領域は、ドリフト領域の上面と垂直な平面から6°~35°の角度で形成されるp-n接合を含む超接合構造を含む。p-n接合は、ドリフト領域を形成するシリコンカーバイド材料の結晶軸の+/-1.5°内で延びる。
【0013】
幾つかの実施形態において、結晶軸は、<11-23>結晶軸,<-1-123>結晶軸,<1-213>結晶軸,<-12-13>結晶軸,<2-1-13>結晶軸、又は、<-2113>結晶軸のうちの1つである。p-n接合がp型ピラーとn型ピラーとの間の界面を備えてもよく、また、p型ピラーの幅がn型ピラーの幅とほぼ等しくてもよい。幾つかの実施形態においてp型ピラー及びn型ピラーはそれぞれ、ドリフト領域の上面からドリフト領域内へと少なくとも4ミクロン延びてもよい。p型ピラーは、ドリフト領域の上面からの深さに応じてp型ピラーの少なくとも2.5ミクロン深い部分の全体にわたって10倍未満変化するドーピング濃度を有してもよい。
【0014】
本発明の更なる実施形態にしたがって、上部及び下部を有するドリフト領域であって、シリコンカーバイドを備えるドリフト領域と、ドリフト領域の上部にある第1の接点と、ドリフト領域の下部にある第2の接点とを含む半導体デバイスが提供される。これらのデバイスにおいて、ドリフト領域は、第1の導電型の不純物がドープされる第1のピラーであって、<0001>結晶軸から10°~13°、15.5°~18.5°、又は、30°~33°の角度で傾けられる第1の側壁を有する第1のピラーと、第1のピラーに隣接するとともに第1の導電型の不純物とは反対の第2の導電型の不純物がドープされる第2のピラーとを含んでもよい。
【0015】
幾つかの実施形態において、第1のピラー及び第2のピラーは、ドリフト領域内の超接合構造の少なくとも一部であるp-n接合をドリフト領域内に形成してもよい。第2のピラーは、<0001>結晶軸から10°~13°、15.5°~18.5°、又は、30°~33°の角度で傾けられる第1の側壁を有してもよい。第1のピラーの第1の側壁は、第2のピラーの第1の側壁と同じ角度で傾けられてもよい。第1のピラーの第1の側壁は、第2のピラーの第1の側壁と対向して直接に接触してもよい。
【0016】
幾つかの実施形態において、第1のピラーの第1の側壁は、第2のピラーの第1の側壁と同一平面上にあってもよい。第1のピラーの第1の体積が第2のピラーの第2の体積にほぼ等しくてもよい。半導体デバイスは、ドリフト領域と第2の接点との間にあるシリコンカーバイド基板を更に含んでもよい。第1の導電型の不純物はp型導電性不純物であってもよく、また、第2の導電型の不純物はn型導電性不純物であってもよい。シリコンカーバイド基板は、例えば2°~8°など、<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面に対して傾斜角度で切断されてもよい。幾つかの実施形態では、傾斜角度が約4°であってもよい。
【0017】
幾つかの実施形態において、デバイスは、第1及び第2のピラーを取り囲むエッジ終端を更に含んでもよい。第1及び第2のピラーは、ドリフト領域の上面からドリフト領域内へと少なくとも4ミクロン延びてもよい。ドリフト領域は、例えば、約5x1015cm-3~約5x1016cm-3のドーピング濃度を有してもよい。第1のピラーは、ドリフト領域の上面からの深さに応じて第1のピラーの少なくとも2.5ミクロン深い部分の全体にわたって10倍未満変化するドーピング濃度を有してもよい。
【0018】
本発明の更に別の実施形態にしたがって、上部及び下部を有するドリフト領域であって、シリコンカーバイドを備えるドリフト領域と、ドリフト領域の上部にある第1の接点と、ドリフト領域の下部にある第2の接点とを含む半導体デバイスが提供される。ドリフト領域が超接合構造を含み、超接合構造は、第1の導電型の不純物がドープされる第1のピラーであって、<11-20>結晶軸から-1.5°~1.5°の角度で傾けられる第1の側壁を有する第1のピラーと、第1のピラーに隣接するとともに第1の導電型の不純物とは反対の第2の導電型の不純物がドープされる第2のピラーであって、<11-20>結晶軸から-1.5°~1.5°の角度で傾けられる第1の側壁を有する第2のピラーとを有する。
【0019】
幾つかの実施形態では、第1のピラー及び第2のピラーがほぼ同じ幅を有してもよい。第1及び第2のピラーは、ドリフト領域の上面からドリフト領域内へと少なくとも5ミクロン延びてもよい。第1のピラーは、ドリフト領域の上面からの深さに応じて第1のピラーの少なくとも2.5ミクロン深い部分の全体にわたって10倍未満変化するドーピング濃度を有してもよい。
【0020】
本発明の更に他の実施形態にしたがって、シリコンカーバイド基板上に第1の導電型を有する不純物がドープされるシリコンカーバイドドリフト層が形成される、半導体デバイスの形成方法が提供される。ドリフト層の選択された部分には、第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する不純物を注入され、この場合、不純物は、超接合構造の一部である第2の導電型ピラーをドリフト層内に形成するために、<11-23>結晶軸,<-1-123>結晶軸,<1-213>結晶軸,<-12-13>結晶軸,<2-1-13>結晶軸、又は、<-2113>結晶軸のうちの1つの+/-1.5°内である角度で注入される。ドリフト層の選択された部分には、第1の導電型を有する不純物が注入されてもよく、この場合、不純物は、超接合構造の一部であるとともに第2の導電型ピラーとのp-n接合を形成する第1の導電型ピラーをドリフト層内に形成するために、<11-23>結晶軸,<-1-123>結晶軸,<1-213>結晶軸,<-12-13>結晶軸,<2-1-13>結晶軸、又は、<-2113>結晶軸のうちの1つの+/-1.5°内である角度で注入される。
【0021】
幾つかの実施形態では、第1及び第2の導電型ピラーがそれぞれ少なくとも1つの傾斜側壁を有してもよい。第2の導電型ピラーは、<0001>結晶軸から10°~13°、15.5°~18.5°、又は、30°~33°の角度で傾けられる少なくとも2つの側壁を有してもよい。シリコンカーバイド基板は、<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から2°~8°の角度でオフカットされてもよい。第1及び第2の導電型ピラーのそれぞれは、ドリフト層の上面からドリフト層内へと少なくとも4ミクロン延びてもよい。第2の導電型ピラーは、深さに応じて第2の導電型ピラーの少なくとも2.5ミクロン深い部分の全体にわたって10倍未満変化するドーピング濃度を有してもよい。方法は、<11-20>結晶軸の+/-1.5°以内である注入角度でドリフト層の選択された部分に不純物を注入するステップを更に含んでもよい。
【0022】
本発明の更に別の実施形態にしたがって、シリコンカーバイドドリフト層が形成された後にシリコンカーバイドドリフト層の上面にマスクが形成される、半導体デバイスの形成方法が提供される。ドリフト層の選択された部分には、第1の導電型を有する不純物が注入され、この場合、不純物は、第1の導電型を有する第1の注入領域をドリフト層内に形成するために<11-23>結晶軸,<-1-123>結晶軸,<1-213>結晶軸,<-12-13>結晶軸,<2-1-13>結晶軸、又は、<-2113>結晶軸のうちの1つの+/-1.5°内である角度で注入され、第1の注入領域は、シリコンカーバイドドリフト層の上面に対して傾けられる第1の側壁を有する。第1の側壁は、ドリフト層内の超接合構造の一部であるp-n接合の一方側をドリフト層内に形成する。ドリフト層の選択された部分には、第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する不純物が注入されてもよく、不純物は、記第2の導電型を有する第2の注入領域をドリフト層内に形成するために<11-23>結晶軸,<-1-123>結晶軸,<1-213>結晶軸,<-12-13>結晶軸,<2-1-13>結晶軸、又は、<-2113>結晶軸のうちの1つの+/-1.5°内である角度で注入され、第2の注入領域は、シリコンカーバイドドリフト層の上面に対して傾けられる第1の側壁を有する。
【0023】
幾つかの実施形態では、第1の注入領域がp型ピラーを備えてもよく、また、第2の注入領域は、p型ピラーと直接に接触するn型ピラーを備えてもよい。p型ピラーは、<0001>結晶軸から10°~13°、15.5°~18.5°、又は、30°~33°の角度で傾けられる少なくとも2つの側壁を有してもよい。n型ピラー及びp型ピラーはそれぞれ、ドリフト層の上面からドリフト層内へと少なくとも4ミクロン延びてもよい。p型ピラーは、深さに応じてp型ピラーの少なくとも2.5ミクロン深い部分の全体にわたって10倍未満変化するドーピング濃度を有してもよい。
【0024】
本発明の更なる理解を与えるために含まれるとともにこの出願に組み込まれてこの出願の一部を構成する添付図面は、本発明の特定の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】超接合型ドリフト領域を有する従来のパワー半導体デバイスの概略断面図である。
【
図2】4Hシリコンカーバイドにおける様々な結晶軸の相対位置を示す概略図である。
【
図3A】<0001>結晶軸に沿って見た4Hシリコンカーバイドの格子構造を示す。
【
図3B】<11-23>結晶軸に沿って見た4Hシリコンカーバイドの格子構造を示す。
【
図3C】<11-20>結晶軸に沿って見た4Hシリコンカーバイドの格子構造を示す。
【
図4】60keVの注入エネルギーで<0001>、<11-23>及び<11-20>結晶軸に沿って4Hシリコンカーバイドに注入された
27Alイオンにおける注入ドーパント濃度を示す二次イオン質量分析法(SIMS)データのグラフである。
【
図5A】イオン注入中に高度チャネリングをもたらすことができる注入角度を示す4Hシリコンカーバイド系半導体デバイスの概略平面図である。
【
図5B】イオン注入中に高度チャネリングをもたらすことができる注入角度を示す4Hシリコンカーバイド系半導体デバイスの概略側面図である。
【
図6A】エピタキシャル層と該エピタキシャル層上に形成される第1のイオン注入マスクとを有する半導体ウエハの平面図である。
【
図6B】エピタキシャル層と該エピタキシャル層上に形成される第2のイオン注入マスクとを有する半導体ウエハの平面図である。
【
図6C】第2のイオン注入マスクが除去された後の
図6Bの線6C-6Cに沿う断面図である。
【
図7A】エピタキシャル層と該エピタキシャル層上のマスクとを有する半導体ウエハの平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るチャネリングイオン注入技術を用いて形成される超接合型ドリフト領域を有するJBSダイオードの概略断面図である。
【
図9A】本発明の他の実施形態に係る超接合型ドリフト領域を有するパワー半導体デバイスの概略平面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る超接合型ドリフト領域を有する他のパワー半導体デバイスの概略平面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る複数のパワー半導体デバイスを有する半導体ウエハの概略平面図である。
【
図12A】本発明の実施形態に係るパワー半導体デバイスを製造する方法を例示する概略断面図である。
【
図12B】本発明の実施形態に係るパワー半導体デバイスを製造する方法を例示する概略断面図である。
【
図12C】本発明の実施形態に係るパワー半導体デバイスを製造する方法を例示する概略断面図である。
【
図12D】本発明の実施形態に係るパワー半導体デバイスを製造する方法を例示する概略断面図である。
【
図12E】本発明の実施形態に係るパワー半導体デバイスを製造する方法を例示する概略断面図である。
【
図12F】本発明の実施形態に係るパワー半導体デバイスを製造する方法を例示する概略断面図である。
【
図13】本発明の更なる実施形態に係るパワー半導体デバイスの概略断面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る技術を用いた<11-23>結晶軸に沿う4Hシリコンカーバイドに注入される
27Alイオンにおける注入ドーパント濃度を示すSIMSデータのグラフである。
【
図15A】本発明の実施形態に係る別の超接合ピラー構造を有するパワー半導体デバイスの概略平面図である。
【
図15B】本発明の実施形態に係る別の超接合ピラー構造を有するパワー半導体デバイスの概略平面図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る超接合型ドリフト領域を有するパワー半導体デバイスを製造する方法を示すフローチャートである。
【
図18】チタンショットキー接点及びタンタルショットキー接点を伴って実装される
図17の形態を有するJBSダイオードの順方向動作電流-電圧(I-V’’)特性のグラフである。
【
図19】タンタルショットキー接点を使用する
図17の形態を有するJBSダイオードの幾つかの異なる動作温度に関する逆阻止I-V特性のグラフである。
【
図20】本発明の実施形態に係るJBSダイオードの概略平面図である。
【
図21】
図20のJBSダイオードの線I-Iに沿う断面図である。
【
図22】そのp型ブロッキング接合部のドーピング濃度を示す
図20のJBSダイオードの線I-Iに沿う断面図である。
【
図23】本発明の実施形態に係るチャネリング技術を使用して異なる注入エネルギーで行われるドーパント注入における注入深さに応じたドーパント濃度を示すグラフである。
【
図24】従来のJBSダイオード及び本発明の実施形態に係るJBSダイオードの両方に関する電流密度に応じたショットキー接合部におけるシミュレートされた電界強度のグラフである。
【
図25】本発明の実施形態に係る幾つかのJBSダイオードの順方向動作I-V特性を示すグラフである。
【
図26】
図25のグラフを生成するために使用されるJBSダイオードの逆阻止I-V特性を示すグラフである。
【
図27】本発明の更なる実施形態に係るMOSFETの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
超接合型のドリフト領域を有するパワー半導体装置は、従来、2つの異なる方法で形成されてきた。第1の手法では、第1の導電型(例えば、n型)を有する半導体ドリフト領域を基板上にエピタキシャル成長させ、その後、エピタキシャル層内に1つ以上のトレンチを形成するためにエッチングステップが行われて、第1の導電型を有する半導体材料の1つ以上のピラーが形成されてもよい。その後、トレンチの側壁が酸化され、トレンチは、第2の導電型(例えば、p型)を有する不純物がドープされる半導体材料をエピタキシャル成長させることによって再充填されてもよく、それにより、第2の導電型を有する半導体材料の1つ以上のピラーが形成されてもよい。
【0027】
超接合型ドリフト領域を形成するための第2の手法では、半導体ドリフト領域を基板上にエピタキシャル成長させてもよく、その後、n型及びp型ドーパントをドリフト領域に選択的に注入して、それぞれのn型及びp型ピラーが形成されてもよい。注入されたドーパントは、例えば、熱アニールを介してピラー全体に拡散することができる。必要に応じて、所望の厚さを有する超接合型ドリフト領域を形成するために、複数のエピタキシャル成長及びイオン注入ステップが実行されてもよい。いずれの手法を用いても、例えばシリコンパワーデバイスに超接合型のドリフト領域を形成することができる。以下の考察から明らかなように、超接合型のドリフト領域を形成するために使用される半導体ピラーは、ドリフト領域の少なくとも一部を垂直方向に延在し、様々な異なる形状を有することができる領域である。
【0028】
超接合型ドリフト領域を形成するための上記の従来技術は、シリコンカーバイドなどの特定の高バンドギャップ半導体材料に超接合型ドリフト領域を形成するのにあまり適していない可能性がある。例えば、前述の第1の従来の製造方法、すなわち、第2の導電型の半導体材料で再充填されたドリフト領域にトレンチを形成することは、シリコンカーバイドにおいて問題となる可能性がある。これは、n型ピラーとp型ピラーとの間に形成される酸化物層の降伏電圧がシリコンカーバイドにおける降伏電圧とほぼ同じだからである。その結果、逆バイアス動作中に、酸化物層へのキャリアトンネリングが起こって、酸化物を通る漏れ電流又は破壊的なアバランシェ降伏が生じる可能性がある。更に、シリコンカーバイドでは、エピタキシャルトレンチリフィル工程中にトレンチ側壁の近傍に第2の導電型ドーパントが不均一に混入し、第2の導電型ピラーの電荷を制御することが困難になることがある。
【0029】
第2の前述の従来技術は、n型及びp型ドーパントが高温であってもシリコンカーバイド中で良好に拡散する傾向がないため、シリコンカーバイドではうまく機能しない可能性がある。これは、熱拡散が起こり得る前に解離する、窒化ガリウムベースの半導体材料のような他の様々な化合物半導体材料においても当てはまる。その結果、イオン注入プロセスは、ドリフト領域内の所望のドーパントプロファイルを得るための主要な手段を提供する。ドーパントイオンが半導体層中に注入されると、イオンは半導体層の結晶格子に損傷を与え、これは典型的には熱アニールによって部分的にしか修復できない。イオンが注入される深さは、インプラントのエネルギーに直接関係する。すなわち、より高いエネルギーで半導体層に注入されたイオンは、より深く層に入る傾向がある。したがって、深い注入領域を形成するには高エネルギー注入が必要である。しかしながら、格子損傷は注入エネルギーにも直接関係している。すなわち、高エネルギーインプラントは低エネルギーインプラントよりも格子損傷を引き起こす傾向があり、イオンインプラントの均一性は注入深さの増加とともに減少する。したがって、深さ及び/又は格子損傷の許容レベルによって良好なドーピング均一性を有する注入領域を形成するためには、多数の連続的なエピタキシャル成長/イオン注入ステップを実行して、数キロボルト程度の降伏電圧を達成するのに十分な厚さを有するドリフト層を得ることが必要である。そのような多数のエピタキシャル成長及びイオン注入工程は、デバイス製造の時間及びコストを増大させる。
【0030】
最近、その全内容が参照により本明細書中に組み入れられる米国特許公開第2015/0028350号に開示される、4Hシリコンカーバイドに超接合構造を形成するための第3の手法が提案されている。この手法では、n型及びp型ピラーがイオン注入によって形成され、イオン注入は、イオンを結晶中へと導くことができるように<0001>結晶軸から2°未満の注入角度になるように注意深く制御される。この手法は、900keVの注入エネルギーで4ミクロンまでの接合深さをもたらすことが示されており、600-1200ボルトの範囲の阻止電圧を有するパワー半導体デバイスを製造するための経済的に実現可能な方法を提供することができる。しかしながら、この手法は、一般に、より高い阻止電圧を有するデバイスを製造するためにスケーラブルではないと考えられている。
【0031】
本発明の実施形態は、4Hシリコンカーバイドにおけるイオン注入ステップの深さ及び品質並びに他の高いバンドギャップ及び/又は化合物半導体材料がイオンビームの長手方向軸に沿って見たときの格子構造の関数であるという認識に基づいている。特に、深いドーパントイオン注入深さ及び深さに応じたより均一なドーパント濃度を得るために特に有効な大きいチャネルをもたらすことができるシリコンカーバイド(又は他の材料)の格子構造とイオンビームとの間には特定の幾何学的関係が存在する。これらのチャネルに直接に沿ってイオンを注入することによって、より低いエネルギー注入を用いて深さに応じた良好な均一性を示す注入領域をシリコンカーバイドに形成することができ、その結果、格子損傷が低減される。
【0032】
幾つかの実施形態によれば、イオン注入は、4Hシリコンカーバイド層構造の<11-23>結晶軸に沿って又は対称的に等価な結晶軸に沿って行われてもよい。<11-23>結晶軸に対して対称的に等価な結晶軸は、<-1-123>結晶軸、<1-213>結晶軸、<-12-13>結晶軸、<2-1-13>結晶軸、及び、<-2113>結晶軸である。これらの6つの対称的に等価な結晶学的軸のそれぞれは、<0001>結晶軸から17度の傾斜を成す。本明細書中で詳細に説明されるように、これらの6つの結晶軸に沿って、イオン注入によるドーパントの深い注入を容易にする比較的大きなチャネルが結晶構造に現れる。他の例として、イオン注入は、注入軸に沿って見たときに原子の低い表面密度と共に非常に大きなチャネルを示す<11-20>結晶軸に沿って行われてもよい。より低いコスト及び/又はより高性能のパワー半導体デバイスをもたらすために使用され得るイオン注入を格子構造内のそのようなチャネルに沿って行うことにより、より一層深いイオン注入を(所定のイオン注入エネルギーに関して)達成できることが実証された。
【0033】
イオンが半導体材料に注入されると、注入されたイオンは、それらが半導体材料の結晶格子内の原子に衝突する際に散乱する傾向がある。注入方向が結晶格子の主軸のそれぞれに対して傾斜角度で方向付けられると、結晶格子中の原子は、注入方向に対してランダムな分布を有するように見える場合がある。結果として、注入されたイオンと結晶格子内の原子との間の衝突の可能性は、深さが増すにつれてかなり均一となり得る。しかしながら、注入の方向が結晶格子の主軸に沿って(又は主軸に非常に近い)場合、結晶格子内の原子は注入方向に対して「整列」し得る。原子がイオンビームの長手方向軸に沿って見てこのように整列すると、原子が位置されない結晶格子内にチャネルが現れる。これらのチャネルに沿ってイオンが注入されると、注入されたイオンは、結晶構造内のチャネルを下る傾向がある。これは、特に半導体層の表面付近で、注入されたイオンと結晶格子中の原子との間の衝突の可能性を減らす。結果として、イオン注入の注入深さ(ひいては、そのようなイオン注入によって形成される超接合構造の深さ)を大幅に増大することができ、降伏電圧の増大及び良好なオン状態抵抗レベルを有するデバイスを達成できる。本明細書中で使用される「注入深さ」という用語は、注入されたドーパントの濃度が1014cm-3を下回る、イオンが注入される結晶の表面からの深さを指す。
【0034】
殆どではないにしても多くのイオン注入用途では、注入の深さが注入領域の所望の深さより大きくてもよいため、注入の深さがチャネリングによって増大されることは望ましくない。その結果、シリコンカーバイド処理においては、従来、イオンを半導体層の結晶軸に沿って又は結晶軸付近に注入する際、注入されるべき層上にアモルファス二酸化ケイ素層などの犠牲スクリーン層を形成するとともに、アモルファススクリーン層を通じてイオンを半導体層に注入している。スクリーン層は、注入されたイオンの方向を無作為化するという効果を有し、それにより、下層の格子構造におけるチャネリング効果を低減する。
【0035】
一般に、チャネリングは、注入方向がシリコンカーバイド結晶の結晶軸の約2°以内であるとき、特に、注入方向が結晶軸の+/-1°以内であるときに、シリコンカーバイド中で起こる。注入方向が各結晶軸から+/-1°以上オフセットされると、チャネリング効果が著しく減少され、また、入方向がシリコンカーバイド結晶の各結晶軸から約2°以上オフセットされると、結晶格子内の原子は、注入方向に対してランダムに分布しているように見える場合がある。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態にしたがって、<11-23>結晶軸に沿って又は対称的に等価な結晶軸(すなわち、<11-23>結晶軸、<-1-123>結晶軸、<1-213>結晶軸、<-12-13>結晶軸、<2-1-13>結晶軸、及び、<-2113>結晶軸のうちの1つ)に沿ってイオンを注入することによって形成される超接合型ドリフト領域を有するパワー半導体デバイスが提供される。これらの6つの結晶軸のそれぞれは、<0001>結晶軸に対して17°の角度を成す。超接合型ドリフト領域は、p型不純物及びn型不純物がそれぞれ比較的高濃度にドープされる交互のピラーを含んでもよい。ピラーが比較的高いドーピング密度を有し得るため、半導体デバイスのオン状態抵抗を大幅に低減できる。また、ドリフト領域をより厚くできるため、デバイスの降伏電圧を増大させることができる。したがって、本発明の実施形態に係る半導体デバイスは、デバイスがそれらのオン状態にあるときにより低いドリフト領域抵抗も有しつつ従来のデバイスよりも高い降伏電圧を示すことができる。
【0037】
更なる実施形態にしたがって、上部及び下部を有する4Hシリコンカーバイドドリフト領域を含む半導体デバイスが提供される。ドリフト領域の上部に第1の接点が形成され、また、ドリフト領域の下部に第2の接点が形成される。ドリフト領域は、ドリフト領域の上面と垂直な平面から6°~35°の角度で形成されるp-n接合を含む超接合構造を含む。他の実施形態において、この角度は、ドリフト領域の上面に対して垂直な平面から10°~30°であってもよい。更に他の実施形態において、この角度は、ドリフト領域の上面に対して垂直な平面から14°~20°であってもよい。更に別の実施形態において、この角度は、ドリフト領域の上面に対して垂直な平面から6°~15°であってもよい。このp-n接合は、ドリフト領域を形成する4Hシリコンカーバイド材料の結晶軸の+/-1.5°以内で延びる。
【0038】
更なる実施形態にしたがって、上部及び下部を有する4Hシリコンカーバイドドリフト領域を含む半導体デバイスが提供される。ドリフト領域の上部に第1の接点が形成され、また、ドリフト領域の下部に第2の接点が形成される。ドリフト領域は、第1の導電型の不純物がドープされる第1のピラーを含み、第1のピラーは、<0001>結晶軸から15.5°~18.5°の角度で傾けられる第1の側壁を有する。ドリフト領域には、第1の導電型の不純物とは反対の第2の導電型の不純物がドープされる第2のピラーが設けられる。第1及び第2のピラーは互いに隣接してもよい。
【0039】
更に別の実施形態にしたがって、上部及び下部を有する4Hシリコンカーバイドドリフト領域を含む半導体デバイスが提供される。ドリフト領域の上部に第1の接点が形成され、また、ドリフト領域の下部に第2の接点が形成される。ドリフト領域は、第1の導電型の不純物がドープされる第1のピラーを含む超接合構造を含み、第1のピラーは、<11-20>結晶軸から-1.5°~1.5°の角度で傾けられる第1の側壁を有する。ドリフト領域は、第1のピラーに隣接するとともに第1の導電型の不純物とは反対の第2の導電型の不純物がドープされる第2のピラーを更に含み、第2のピラーは、<11-20>結晶軸から-1.5°~1.5°の角度で傾けられる第1の側壁を有する。
【0040】
また、前述の半導体デバイスを形成する方法も提供される。これらの方法によれば、ドーパント不純物は、ドリフト領域内に超接合構造の1つ以上のピラーを形成するために、<11-23>結晶軸(又は対称的に等価な結晶軸)又は<11-20>結晶軸のいずれかの+/-1.5°以内にある角度で半導体デバイスのドリフト領域の上面の選択された部分に注入される。
【0041】
ここで、添付図面を参照して、本発明の実施形態の例について説明する。多くの更なる実施形態を提供するために本明細書中に開示される異なる実施形態の特徴が任意の方法で組み合わされてもよいことが分かる。
【0042】
図2は、4Hシリコンカーバイドにおける様々な結晶軸の相対位置を示す概略図である。
図2に示されるように、<10-10>結晶軸は、<0001>結晶軸、<11-20>結晶軸、及び、<11-23>結晶軸のそれぞれに対して垂直である。<11-20>結晶軸は<0001>結晶軸に対して垂直であり、<11-23>結晶軸は、<11-20>結晶軸から離れる方向で<0001>結晶軸から約17°オフセットされる。
【0043】
図3A~
図3Cは、<0001>結晶軸、<11-23>結晶軸、及び、<11-20>結晶軸にそれぞれ沿って見た4Hシリコンカーバイドの格子構造を示す。
図3Aに示されるように、表面における原子密度(
図3Aでは原子が小円により示される)は比較的低く、これはより深いイオン注入深さにとって好ましい条件である。原子間に複数のチャネルが設けられ、これらのチャネルは、半導体材料中への注入イオンの比較的深い深さにまで至るチャネリングを可能にする。しかしながら、チャネル自体は断面積が比較的小さい。相対的に言えば、チャネルの断面積が小さければ小さいほど、注入深さが浅くなる。したがって、<0001>結晶軸に沿うイオン注入はチャネリングを成すが、達成できる注入深さは依然として限定される。
【0044】
図3Bは、<11-23>結晶軸に沿って見た4Hシリコンカーバイドの格子構造を示す。格子構造は、<-1-123>結晶軸、<1-213>結晶軸、<-12-13>結晶軸、<2-1-13>結晶軸、及び、<-2113>結晶軸のいずれかに沿って見ると
図3Bに示されるのと同じように見える。4Hシリコンカーバイドの六方格子を考えると、先に挙げられた6つの結晶軸は、全てが<0001>結晶軸から17度オフセットされ、互いに60度の増分で離間される。<0001>結晶軸から17度オフセットされるベクトルは、360度にわたって回転する円錐を形成する。<11-23>結晶軸、<-1-123>結晶軸、<1-213>結晶軸、<-12-13>結晶軸、<2-1-13>結晶軸、及び、<-2113>結晶軸は、全てがこの円錐に沿って延び、互いから60度離間される。この円錐回りの最大回転角で、格子構造は全体にわたって密集した原子で「過密状態」のように見える。しかしながら、
図3Bに関連して示されるように、<11-23>結晶軸、<-1-123>結晶軸、<1-213>結晶軸、<-12-13>結晶軸、<2-1-13>結晶軸、及び、<-2113>結晶軸に対応する6つの異なる位置では、格子構造内に別個のチャネルが現れるように原子が「整列」する。
図3Bから分かるように、これらの6つの結晶軸に沿って、表面における原子密度が
図3Aの例と比較して増大され、これは一般にイオンの散乱の増大をもたらす。しかしながら、好適には、原子間に設けられるチャネルは、
図3Aの例におけるチャネルと比較して大きい断面積を有する。本明細書中に示されるように、これにより、注入深さを増大させることができる。
【0045】
図3Cから分かるように、4Hシリコンカーバイドが<11-20>結晶軸に沿って見られると、表面における原子密度が非常に低くなり、大きな断面積を有するチャネルが格子構造内にもたらされる。そのような構造は、非常に深い注入深さを可能にし得る。しかしながら、残念ながら、<11-20>結晶軸は、一般に、ウエハが従来の態様で切断されるときにシリコンカーバイドウエハの主面に対して略垂直であり、したがって、<11-20>結晶軸に沿って又は<11-20>結晶軸から比較的小さい傾斜で主面を有するシリコンカーバイドウエハを提供することが難しい場合がある。そのため、<11-20>結晶軸に沿うイオン注入は、多くの用途において選択肢となり得ない。
【0046】
図4は、60keVの注入エネルギーで注入された
27Alイオンに関して4Hシリコンカーバイドにおける注入ドーパント濃度を示す二次イオン質量分析法(SIMS)により得られたデータのグラフであり、この場合、イオンは<0001>、<11-23>及び<11-20>結晶軸に沿って注入される。
図4における<11-23>結晶軸に関して示される結果と同一の結果が、<-1-123>結晶軸、<1-213>結晶軸、<12-13>結晶軸、<2-1-13>結晶軸、及び、<-2113>結晶軸のいずれかに沿う注入に関して予期される。
図4に示されるように、ドーパントイオンが<0001>結晶軸に沿って注入されると、ドーパント濃度が注入層内の深さに応じて比較的急速に低下し、また、ドーパント濃度は、約0.8ミクロンの深さで表面ドーパントから3桁減少される。一方、ドーパントイオンが<11-23>結晶軸に沿って注入されると、ドーパント濃度は、よりゆっくりと低下し、より均一なドーパント濃度を示す。更に、ドーパント濃度は、表面ドーパント濃度から約2.0ミクロンの深さまで3桁内にとどまり、これは<0001>結晶軸に沿って注入されるイオンの場合よりも250%深い。<11-20>結晶軸に沿ってドーパントイオンが注入されると、ドーパント濃度は、注入層内の深さに応じて非常に遅い速度で低下し、極めて均一のままである。この場合、ドーパント濃度は、表面ドーパント濃度から約3.2ミクロンの深さまで3桁内にとどまり、これは<0001>結晶軸に沿って注入されるイオンの場合よりも400%深い。このデータは、<11-23>結晶軸及び/又は<11-20>結晶軸(又は対称的に等価な結晶軸)に沿ってイオンを注入することによってより深いインプラントを達成できることを示す。前述したように、<11-20>結晶軸に沿う注入は、現在、幾つかの用途において商業的に実行し得ない。
図4に示されないが、チャネリングが使用されない場合、インプラント濃度は約0.2ミクロンの深さで10
-2未満である。
図4ではイオン注入が60keVの低い注入エネルギーで行われたことに留意すべきであり、より高い注入エネルギー(例えば、500~900keVの範囲)を用いると、非常に深い注入(したがって深い超接合構造)を4Hシリコンカーバイドデバイスで達成できると推測される。
【0047】
従来、4Hシリコンカーバイドウエハは、<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から小さいオフセット角でバルク4Hシリコンカーバイド材料のブールから切断される。このオフセット角はしばしば「オフカット」角と称される。ブールは、時として、<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面に沿って直接に切断されるが、シリコンカーバイドウエハがこの平面から小さいオフカット角で切断されると、より高い品質のシリコンカーバイドエピタキシャル層を一般に成長させることができる。約2度から約8度のオフカット角が一般的である。したがって、例えば、4Hシリコンカーバイドウエハが<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から4°の角度で切断されて(<11-23>結晶軸へ向けて傾斜される)<11-23>結晶軸に沿って注入する場合、イオンはウエハの上面から13°の角度で注入されるはずである。<11-23>結晶軸と対称的に等価な他の5つの結晶軸のうちの1つに沿ってイオンが注入されるようになっている場合には、(17°からの)注入角度の同様の調整が必要である。
【0048】
本発明の実施形態にしたがって、少なくとも部分的にイオン注入によって形成される超接合型のドリフト領域を有するパワー半導体デバイスが提供される。幾つかの実施形態において、超接合のn型ピラー及び/又はp型ピラーを形成するために使用されるドーパントイオンは、<0001>結晶軸から17°の角度で<11-23>結晶軸又は対称的に等価な結晶軸に沿って注入されてもよい。これは、エピタキシャル成長された4Hシリコンカーバイド層52が形成されて成る4Hシリコンカーバイドウエハ50の平面図及び側面図である
図5A及び5Bに関連して図示される。
図5A~
図5Bに示されるように、イオンは、イオン注入デバイスを使用してエピタキシャル層52の少なくとも一部に注入される。
図5A~5Bの例では、
図5Bに図式的に示されるように、ウエハ50が<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から4°の角度で切断される(<11-23>結晶軸に向けて傾斜される)。ウエハ50の上面は、イオンが<11-23>結晶軸に沿って(すなわち、<0001>結晶軸から17°の注入角度で)注入されるようにイオン注入デバイス54に対して13°の角度で傾斜される。
図5Aに示されるように、ウエハ50は、6つの位置56-1~56-6のうちの1つへとイオン注入デバイス54に対して回転され、この場合、注入軸に沿って見てチャネルが結晶格子内に現れる(前述したように、これらのチャネルは、<11-23>結晶軸、<-1-123>結晶軸、<1-213>結晶軸、<-12-13>結晶軸、<2-1-13>結晶軸、及び、<-2113>結晶軸に沿って現れる)。ウエハ50を注入ビームと位置合わせするために、ラザフォード後方散乱を使用して、注入角度を厳密に(例えば、0.1°の分解能まで)制御することができる。
図5A~
図5Bに示されないが、注入されるようになっているエピタキシャル層52の領域を画定するために注入マスクがエピタキシャル層52上に設けられてもよい。イオンは、最初にスクリーン層を通過することなく、マスクの開口を通じて直接にエピタキシャル層52中へ注入されてもよい。
【0049】
ウエハの上面に対して角度を成してウエハを注入する1つの結果は、超接合構造のn型及びp型ピラーがエピタキシャル層52の上面に対して角度を成して形成されることである。本発明の特定の実施形態に係るデバイスのこの特徴について、
図6A~
図6C及び
図7A~
図7Cを参照して更に詳しく説明する。
【0050】
図6A~
図6Cを最初に参照すると、
図6A及び
図6Bは、4Hシリコンカーバイド基板102を含み該基板102上で4Hシリコンカーバイドエピタキシャル層104が成長された4Hシリコンカーバイド構造100の平面図である。基板102は、<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から4°の角度で切断され、この場合、ウエハは<11-23>結晶軸へ向けて4°傾けられる。
図6Cは、
図6Bの線6C-6Cに沿う断面図である。
図6Aに示されるように、エピタキシャル層104の上面には、細長い開口部112が形成されて成る第1のマスク110が形成される。N型ドーパントが第1のマスク110の開口112を通じてエピタキシャル層104に選択的に注入される。
図6Bに示されるように、その後の処理ステップでは、第1のマスク110が除去され、また、細長い開口122を有する第2のマスク120がエピタキシャル層104の上面に形成される。P型ドーパントが第2のマスク120の開口122を通じてエピタキシャル層104に選択的に注入される。第2のマスク120は、イオン注入ステップがエピタキシャル層104内にn型及びp型ピラーを交互に形成できるように第1のマスク110によって露出されたエピタキシャル層104の領域を覆ってもよい。各マスク110,120は、開口112,122の下方の領域を除いてエピタキシャル層104の全表面を覆ってもよい。
図6A~
図6Cのそれぞれには注入方向を示す矢印130が与えられる。図示のように、
図6A~
図6Cの例では、注入方向がマスク110,120の細長い開口112,122に対して略垂直である。イオンは、エピタキシャル層104の上面に対して13°の角度で注入される。
【0051】
図6Cの断面図では、第2のマスク120が簡略化のために示されない。
図6Cにおいて分かるように、n型ドーパントがエピタキシャル層104に注入されると、n型ピラー140がエピタキシャル層104内に形成される。これらのn型ピラー140は、ドーパントイオンがエピタキシャル層104の上面に対して13°の角度で注入されるように、したがって、n型ドーパントがマスク領域の下方に入り込むように、角度を成してエピタキシャル層104を貫通して延びる。同様に、p型ドーパントがエピタキシャル層104に注入されると、p型ドーパントは、エピタキシャル層104内にp型ピラー150を形成する。p型ピラー150も角度を成してエピタキシャル層104を貫通して延びる。n型及びp型ピラー140,150の傾いた性質は、
図6Cの断面において容易に分かる。注入されないエピタキシャル層104の領域106は、例えば、低濃度にドープされたn型であってもよく或いはドープされなくてもよい。
【0052】
マスク110,120の細長い開口112,122を任意の選択された方向で形成できるため、マスク110,120の細長い開口112,122の方向をイオン注入機器の位置に対して回転させることができるのが分かる。
図7A~
図7Cは、4Hシリコンカーバイド基板102’を含み該基板102’上で4Hシリコンカーバイドエピタキシャル層104’が成長された他の構造100’内のピラー構造を示す。
図7A~
図7Cの場合、注入角度は、
図6A~
図6Cの場合に示される注入角度に対して90°回転される。特に、
図7Aは、細長い開口112’を含むマスク110’をその上に有する4Hシリコンカーバイド構造100’の平面図である。構造100’に含まれる基板102’は、<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から4°の角度で切断され、この場合、ウエハは<11-23>結晶軸に向けて4°傾けられる。
図7Aの矢印130’は注入方向を示す。図示のように、注入方向130’は、マスク110’の細長い開口112’の長手方向軸と平行である。
【0053】
図7B及び
図7Cは、
図7Aの線7B-7B及び線7C-7Cにそれぞれ沿う断面図である。
図7Bに示されるように、エピタキシャル層104’の各n型ピラー140’は傾斜端部を有する。図に示されないが、各p型ピラー150’は同じ形状を有する。細長い開口112’のそれぞれの端部をちょうど超えた部分の断面図である
図7Cにおいても各ピラー140’、150’の端部の傾斜を見ることができる。
図7Cに示されるように、ピラー140’、150’の底部は、エピタキシャル層104’の上面に対する13°の注入角度に起因して断面図中へと延び、一方、断面図に沿うエピタキシャル層106’の上部はドープされない。
【0054】
したがって、先の議論により示されるように、n型及びp型ピラーは傾斜されなくてもよい。
図6A~
図6Cに示されるように、ある場合には、ピラーの側壁がエピタキシャル層104の上面に対して傾斜されてもよい。
図7A~
図7Cに示されるように、他の場合には、ピラーの端壁が傾斜されてもよい。図に示されないが、注入方向が先の例に示される方向130,130’間にある他の場合には、ピラーの側壁及び端壁の両方が傾斜されてもよいことが分かる。いずれの場合にも、そのようなピラーは、本明細書では「傾斜ピラー」と称される。
【0055】
イオン注入深さを増大させるためのチャネリングの使用は、より深い注入を可能にするだけでなく、注入の横方向分布を減らすこともでき、それにより、良好なプロセス制御及びより小さい形態サイズがもたらされる。更に、チャネリングイオン注入が行われるときにはかなり薄い注入マスクが使用されてもよい。これは、さもなければ同様の注入範囲を達成するために必要とされるよりも注入エネルギーが低くなり得るからである。ある場合には、注入マスクは、さもなければ同様の注入範囲を得るために必要とされる厚さの半分未満であってもよい。
【0056】
例えば、チャネリングを伴うことなく4Hシリコンカーバイドで3.5ミクロンの接合深さを達成するために、5MeVの注入エネルギーで注入を行うことが必要な場合がある。そのような注入エネルギーにおいては、イオンがマスクされない領域にのみ注入されるようにするために、5.0ミクロンの厚さを有するSiO2マスクが一般に使用される。注入エネルギーが750keVまで低下される場合には、約2.0ミクロンの厚さを有するSiO2マスクが使用されてもよい。本発明の実施形態に係るチャネリング技術を用いると、かなり小さい注入エネルギーを使用できる(すなわち、3ミクロン以上の注入深さを得るには100kEV未満の注入エネルギーで十分かもしれない)と考えられる。したがって、幾つかの実施形態において、イオン注入マスクは、同様の注入深さを得るべく非チャネリング注入と共に使用されるマスクと比較してかなり薄くてもよく、また、そのようなより薄いマスクの使用は、デバイス製造時間を短縮して、製造コストを低減できる。
【0057】
先の
図6C、
図7B、及び、
図7Cに示される傾斜ピラーの他の想定し得る結果は、傾斜された幾何学的形態が(従来の超接合構造と比較して)デバイスの対称性に摂動をもたらすことができ、それにより、例えばデバイスの角領域で破壊電界を減らす可能性があることである。しかしながら、シミュレーションにより、例えば<0001>結晶軸から13°の注入角度を用いて良好な電場対称性を達成できることが分かった。
【0058】
図8は、本発明の実施形態に係るチャネリングイオン注入技術を用いて形成される超接合型ドリフト領域を有するJBSダイオード200の形態を成すパワー半導体デバイスの概略断面図である。
【0059】
図8に示されるように、JBSダイオード200は、基板210と、超接合構造を含むドリフト領域220と、接点層と、ブロッキング接合部240と、チャネル領域250とを含む。
【0060】
基板210は、上面212及び下面214を有する4Hシリコンカーバイド半導体ウエハを備えてもよい。基板210にはn型不純物がドープされてもよい(すなわち、n+シリコンカーバイド基板)。不純物は、例えば、窒素又はリンを含んでもよい。基板210のドーピング濃度は、例えば、1×1018atoms/cm3~1×1021atoms/cm3であってもよい。基板210は、任意の適切な厚さ(例えば、100~500ミクロンの厚さ)であってもよい。
【0061】
ドリフト領域220は、例えば、基板210の上面212上にエピタキシャル成長されるシリコンカーバイドドリフト領域220を成してもよい。例示的な実施形態では、ドリフト領域220が3~100ミクロン厚であってもよい。ドリフト領域220は、少なくとも第1のn型シリコンカーバイドピラー224及び第1のp型シリコンカーバイドピラー226を備える超接合構造を含む。
図8には示されないが、2つ以上のn型ピラー224及び/又は2つ以上のp型ピラー226が設けられてもよいことが分かる。設けられるピラー224,226の数は、ピラーのために選択される幅の関数である。一般に、各n型ピラー224及びp型ピラー226は同じ幅を有するが、本発明の実施形態はそれに限定されない。超接合型ドリフト領域220は、幾つかの実施形態では、交互のn型ピラー224とp型ピラー226との間で電荷バランスがとれるように設計されてもよい
【0062】
図8に示されるように、n型ピラー224及びp型ピラー226はそれぞれ傾斜ピラーを備える。各ピラー224,226は、基板210の上面に対して角度αで傾斜されてもよい。JBSダイオード200が
図6A~
図6Cに示される注入方向を使用して4°オフカット4Hシリコンカーバイドウエハ上に形成される場合には、角度αが13°であってもよい。前述のように、イオンが<11-23>結晶軸に沿って注入されるような約13°の注入角度は、<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から4°の角度で切断される4Hシリコンカーバイドウエハを注入する際に高レベルのチャネリングを達成し得る。
【0063】
図8は注入されるようになっているドリフト領域の全体を示すが、これが当てはまる必要がないことが分かる。例えば、他の実施形態では、ドリフト領域220の上部のみが注入されてもよい。以下、
図13を参照して、その深さ全体にわたって注入されないドリフト領域を有する本発明の実施形態に係るパワー半導体デバイスの一例について説明する。また、ドリフト領域の注入された部分のドーピング濃度がデバイスの上面からの距離の増大に伴って低下する傾向があることも分かる。
【0064】
再び
図8を参照すると、接点層は、基板210の底面214上にあるオーミック接点層230と、オーミック接点層230上にあるカソード接点232と、ドリフト領域220の上面にあるショットキー接点層234と、ショットキー接点層234上にあるアノード接点236とを含む。オーミック接点層230は、基板210に対するオーミック接点を形成する材料を備えてもよい。例えば、基板210が高濃度にドープされたn型シリコンカーバイド基板210を備える場合には、オーミック接点層230がシリコン/コバルト層を備えてもよい。カソード接点232は、銀層などの高導電性金属接点を備えてもよい。幾つかの実施形態において、カソード接点232は、例えばTi/Ni/Ag構造などの多層金属構造を備えてもよい。幾つかの実施形態において、基板210は、オーミック接点層230及びカソード接点232の形成前に部分的に又は完全に除去されてもよい。
【0065】
ショットキー接点層234は、シリコンカーバイドドリフト領域220と共にショットキー接点を形成する導電層を備えてもよい。幾つかの実施形態では、ショットキー接点層234がニッケル層を備えてもよい。アノード接点236は、アルミニウム層などの高導電性金属接点を備えてもよい。
【0066】
ブロッキング接合部240は、高濃度にドープされたp型領域をドリフト領域220の上部に備えてもよい。
図8に示されるように、幾つかの実施形態において、ブロッキング接合部240は、p型シリコンカーバイドピラー226の上面を実質的に又は完全に覆ってもよい。また、ブロッキング接合部240は、n型シリコンカーバイドピラー224の上面を部分的に覆ってもよい。ブロッキング接合部240は、JBSダイオード200が遮断状態で動作するときに電界を低減してショットキー接点234を電界から遮蔽するのに役立ってもよい。n型シリコンカーバイドピラー224とショットキー接点234との間にチャネル250が設けられてもよい。電流は、JBSダイオード200がそのオン状態にあるときにチャネル250を通じて流れる。ブロッキング接合部240は、例えば、MOSFET、JFET、BJT、又は、サイリスタ型構造を組み込んでデバイスを通じた電流の制御可能な流れを可能にしてもよい。
【0067】
ピラー224,226は、従来の4Hシリコンカーバイド半導体デバイスの超接合構造に含まれるピラーよりもかなり深く延びてもよい。この理由は、単一のイオン注入ステップにおいて
図3A~
図3Cに関して前述したように、ドーパントイオンがデバイス中へより深くまで注入され得るようにチャネリングが生じ得るようにする角度でn型及びp型ドーパントがシリコンカーバイドに注入されるからである。前述のように、これらのより深い注入は、厚い超接合型ドリフト層を有するパワー半導体デバイスのより速い製造を可能にする。より厚いドリフト層はデバイスの電圧遮断能力を高めるが、超接合構造は、さもなければドリフト層の厚さの増大の結果として生じるであろうデバイスのオン状態抵抗の任意のオフセッティング増大を低減する又は排除するのに役立つ。
【0068】
図9Aは、本発明の実施形態に係る超接合型ドリフト領域を有するパワー半導体デバイス300の概略平面図である。
図9Aでは、半導体ピラー構造を示すためにデバイス300の上側のメタライゼーション及び活性構造が省かれてしまっている。
【0069】
図9Aに示されるように、半導体デバイス300は、複数の交互配置されたn型シリコンカーバイドピラー324及びp型シリコンカーバイドピラー326を有する半導体ドリフト領域320を含む。
図9Aの実施形態において、各n型シリコンカーバイドピラー324は、基板302(
図9B参照)の上面で第1の方向(y軸方向)に沿って延びるバー又は「フィン」形状のピラーを備える。各p型シリコンカーバイドピラー326も同様に、基板302の上面で第1の方向(y軸方向)に沿って延びる棒状のピラーを備える。図示のように、n型ピラー324及びp型ピラー326は交互態様で配置される。ピラー324,326以外のドリフト領域320の部分は、例えば、n型及びp型ピラー324,326を取り囲む低濃度にドープされたn型シリコンカーバイドを備えてもよい。
【0070】
図9Aにも示されるように、複数のガードリング360がn型及びp型シリコンカーバイドピラー324,326を取り囲む。ガードリング360はエッジ終端構造を備えてもよい。当業者に知られるように、パワー半導体デバイスが遮断状態で動作される際には、電圧が増加されるにつれて、漏れ電流がアクティブ領域のエッジで流れ始め得る。漏れ電流はこれらのエッジ領域で流れる傾向がある。これは、デバイスのエッジでの電界過密効果がこれらの領域で電界の増大をもたらす場合があるからである。前述したように、デバイスにおける電圧が降伏電圧を超えて臨界レベルまで増大されれば、電界の増大が半導体デバイス内の電荷キャリアの急激な生成をもたらす場合があり、それにより、アバランシェ降伏につながる。アバランシェ降伏が起こると、電流が急激に増大して、電流が制御不可能になる場合があり、また、アバランシェ降伏事象が半導体デバイスを損傷又は破壊する場合さえある。
【0071】
この電界過密(及びその結果として生じる漏れ電流の増大)を低減するために、パワー半導体デバイスのアクティブ領域の一部又は全部を取り囲むガードリング360などのエッジ終端構造が設けられてもよい。これらのエッジ終端構造は、より広い領域にわたって電界を広げ、それにより電界過密状態を減らすように設計されてもよい。ガードリングは、ある知られたタイプのエッジ終端構造である。
図9Aの線9B-9Bに沿う断面図である
図9Bに示されるように、ガードリング360は、半導体デバイス300のアクティブ領域を取り囲むシリコンカーバイドドリフト領域320のより低濃度にドープされたn型エッジ部328の上部に形成される離間したp型トレンチ360を備えてもよい。シリコンカーバイドドリフト領域320のより低濃度にドープされたn型エッジ部328は、ドリフト領域320の成長中にドープされてもよい(この場合、ドリフト層320全体が低濃度にドープされ始め、その後、イオン注入によってより高濃度にドープされたn型及びp型ピラー324,326がドリフト層に形成される)。
図9A及び9Bは、エッジ終端構造として2つのガードリング360を使用するパワー半導体デバイス300を示すが、任意の適切なエッジ終端構造が使用されてもよいことが分かる。例えば、他の実施形態では、ガードリング360が接合終端延在部に取って代えられてもよい。また、幾つかの実施形態ではエッジ終端構造が省かれてもよいことも分かる。
【0072】
図9A及び
図9Bの実施形態では、n型ピラー324がイオン注入によって形成されるが、他の実施形態では、ドリフト領域がn型ピラーにとって望ましいドーピングと一致するドーピング濃度を有するn型層として成長されてもよく、その後、p型ピラーがイオン注入によって形成されてもよいことが分かる。
図10は、このように形成される本発明の実施形態に係る超接合型ドリフト領域420を有するパワー半導体デバイス400の概略平面図である(上側のメタライゼーション及び活性構造は省かれる)。
図10に示されるように、この実施形態において、n型ピラー424は、接合終端構造460を含むドリフト領域420の外周部に直接に接続してもよい。これは、p型ピラー426を形成するべくp型ドーパントが注入されるドリフト領域の部位を除きドリフト領域420をn型に均一にドープできるからである。
【0073】
図11は、本発明の実施形態に係る複数のパワー半導体デバイス400’が形成されて成る4Hシリコンカーバイドウエハ480の概略平面図である。パワー半導体デバイス400’は、前述したパワー半導体デバイス400と同様であるが、付加的なガードリングを含み、また、僅かに異なって形成されるピラーも有する。本発明の実施形態に係るパワー半導体デバイスのいずれかをパワー半導体デバイス400’の代わりに使用できるのが分かる。
【0074】
パワー半導体デバイス400’は、例えば、ウエハ480上に横列及び縦列を成して形成されてもよい。ウエハ480は、ウエハ480の上面が<10-10>結晶学的方向(
図11の平面図では上から下へと向かう方向)に延びる結晶面に沿うとともに<11-20>結晶学的方向(
図11の平面図では左から右へと向かう方向)に沿うように材料のブールから切断されてもよい。
図11には示されないが、より一般的には、ウエハ480は、この平面から小さいオフカット角で、例えば4°のオフカット角で切断される。
図11に示されるように、パワー半導体デバイス400’は、その棒形状のピラーが幾つかの実施形態では<11-20>結晶学的方向と垂直に且つ<10-10>結晶学的方向と平行に延びるようにウエハ480上で方向付けられ得る。他の方向が使用されてもよい。
【0075】
図5A~
図5Bを参照して前述したように、イオン注入デバイスは、1つ以上のパワー半導体デバイスを形成するために使用されるウエハ構造(例えば、エピタキシャル成長したシリコンカーバイドドリフト層をその上に伴う4Hシリコンカーバイドウエハ)の上面によって画定される平面に対して特定の角度に且つウエハ構造の外周の周りの所望の回転角に設定される。これらの角度は、チャネルが注入軸に沿って(すなわち、イオンが結晶格子内に撃ち込まれる方向に沿って)ウエハ構造の結晶格子内に存在するように選択される。しかしながら、イオン注入デバイスがウエハ構造に対して適切な角度関係に設定された時点で、イオンビームがウエハよりもかなり小さいことから、イオン注入デバイスがウエハ構造の小さい部分のみを注入できるのが分かる。
【0076】
本発明の実施形態にしたがって、イオン注入デバイスは、ウエハ構造の第1の「横列」を横切る所望の位置にイオンを注入するように(例えば、<11-20>結晶軸に沿って)第1の方向に移動されてもよい。これは、イオン注入デバイスが第1の方向に沿って移動されるにつれて注入され得るウエハの領域を示す第1の横列470によって
図11に図式的に示される。イオン注入デバイスは、この第1の横列に沿う全ての位置にイオンを注入せず、代わりに、注入されるべき特定のタイプのイオンが注入されるはずである位置にのみイオンを注入する。第1の横列470内の全ての適切な位置が注入されてしまった時点で、イオン注入デバイスをその後に水平に移動させて
図11における横列472などの第2の横列を横切る適切な位置でイオンを注入できるように、ウエハがイオン注入デバイスに対して第2の方向に移動されてもよい。このようにして、チャネリングが生じる適切な角度でウエハ480の全ての適切な領域が注入されてもよい。
【0077】
図12A~
図12Fは、本発明の実施形態に係るパワー半導体デバイス500を製造する方法を例示する概略断面図である。
図12Aに示されるように、n型ドリフト領域520が4Hシリコンカーバイド基板510上にエピタキシャル成長される。幾つかの実施形態において、ドリフト領域520には、成長中に、n型不純物が例えば1x10
15/cm
3~1x10
19/cm
3の濃度までドープされてもよい。
図12Bを参照すると、次に、第1のイオン注入マスク502がドリフト領域520上に形成されてもよく、その後、このマスク502が例えばフォトリソグラフィによってパターニングされてもよい。
図12Cを参照すると、複数のn型ピラー524を形成するためにn型ドーパントがドリフト領域520に注入されてもよい。n型ドーパントは、結晶格子内に選択された角度で現れるチャネルにイオンを注入するために、ドリフト領域520の上面に対して所定の角度で注入されてもよい。例えば、n型ドーパントイオンは、<11-23>結晶軸に沿って又は格子構造内に大きなチャネルが見られる他の5つの対称的に等価な結晶軸のうちの1つに沿って注入され得る。
図11に関して前述したイオン注入技術は、パワー半導体デバイス500を含むウエハの全ての領域にn型ドーパントイオンを注入するために使用されてもよく、この場合、n型ドーパントは、超接合構造を形成するためにドリフト領域に注入されるようになっている。n型ドーパントイオンがデバイス500の上面に対して角度を成して注入されると、n型ピラー524は一対の傾斜した側壁(そのうちの一方だけが
図12Cに見える)を有する。
【0078】
その後、第1のイオン注入マスク502が除去されてもよい。
図12Dを参照すると、次に、第2のイオン注入マスク504がドリフト領域520上に形成されてもよく、その後、このマスク504が例えばフォトリソグラフィによってパターニングされてもよい。
図12Eを参照すると、複数のp型ピラー526(そのうちの1つのみが
図12Eに示される)を形成するためにp型ドーパントがドリフト領域520に注入されてもよい。また、p型ドーパントも、結晶格子内に選択された角度で現れるチャネルにイオンを注入するために、ドリフト領域520の上面に対して所定の角度で注入されてもよい。例えば、p型ドーパントイオンは、n型ドーパントと同じ角度で注入され得る。
図11に関して前述したイオン注入技術は、パワー半導体デバイス500を含むウエハの全ての領域にp型ドーパントイオンを注入するために使用されてもよく、この場合、p型ドーパントは、超接合構造を形成するためにドリフト領域に注入されるようになっている。p型ドーパントイオンがデバイス500の上面に対して角度を成して注入されると、p型ピラー526は一対の傾斜した側壁(そのうちの一方だけが
図12Eに見える)を有する。p型ピラー526は、n型ピラー524に直接に接触してもよい。
【0079】
その後、第2のイオン注入マスク504が除去されてもよい。これらのステップを経て、ドリフト領域520内に超接合構造を共同して形成する1つ以上のn型シリコンカーバイドピラー524と1つ以上のp型シリコンカーバイドピラー526とを有する半導体デバイスが形成される。
【0080】
図12Fを参照すると、ブロッキング接合部540を形成するために、少なくともp型シリコンカーバイドピラー526の上部に、高濃度にドープされたp型領域が形成されてもよい。ブロッキング接合部540は、n型シリコンカーバイドピラー524の上部にチャネル領域550を画定する。半導体デバイス500がそのオン状態にあるとき、電流がチャネル領域550を通じて流れる。接点構造もデバイスに加えられてもよい。再び
図12Fを参照すると、接点構造は、例えば、基板510の底面上にあるオーミック接点層530と、オーミック接点層530上にあるカソード接点532と、ドリフト領域520の上面にあるショットキー接点層534と、ショットキー接点層534上にあるアノード接点536とを含んでもよい。
【0081】
本発明の実施形態に係る他の典型的なデバイス600が
図13に示される。
図13に示されるデバイス600は、イオン注入によって形成され得る様々な領域を有するパワーDMOSFETである。
【0082】
図13に示されるように、デバイス600は、n+基板602と、基板602上の約1.5x10
16cm
-3のドーピング濃度を有するn型ドリフト層604とを含む。ドリフト層604は約5ミクロンの厚さを有する。約5ミクロンの厚さと約7x10
16cm
-3のドーピング濃度とを有するn型電流拡散層606がドリフト層604上にある。ドリフト層604及びn型電流拡散層606は共にデバイス600のドリフト領域を形成してもよい。
【0083】
n型拡散層606にはp+ウェル領域608が形成され、また、p+ウェル領域608にはn+ソース領域610が形成される。n+ソース領域610は、約1x1020cm-3よりも大きいドーピング濃度を有するように縮退ドープされる。同様に、p+ウェル領域608は、約1x1020cm-3よりも大きいドーピング濃度を有するように縮退にドープされる。n型JFET注入領域612は、p+ウェル領域608に隣接するn型電流拡散層606内に形成される。n型JFET領域612は、n型電流拡散層606のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する。n型電流拡散層606上にゲート絶縁層620があり、また、ゲート絶縁層620上にゲート接点614がある。n+ソース領域610上にソース接点618が形成され、ソース接点618はp+ウェル領域608と接触する。ドレイン接点622が基板602上に形成される。
【0084】
デバイス600は、ディープp注入領域650をp+ウェル608の下方に更に含む。ディープp注入領域650は、約1x1017cm-3のドーピング濃度を有してもよい。ディープp注入領域650は、ドリフト領域内に約4.5ミクロンの深さまで延びてもよい。ディープp型層650は、あまり深くなくてもよいが、n型拡散層606を完全に貫通して延びるようになっている。ディープp型注入領域650は、前述したようなチャネリングイオン注入によって形成されてもよい。ディープp型注入領域650はp型ピラーを備えてもよい。ディープp型注入領域650に隣接する電流拡散層606の部分がn型ピラーを備えてもよい。これらのピラーは、ドリフト領域内に超接合構造を形成してもよい。ピラーは傾斜ピラーであってもよい。
【0085】
この超接合構造に起因して、ドリフト領域の上端部(すなわち、n型拡散層606)は、さもなければ従来の構造において想定し得るよりも高濃度にドープされ得る。これにより、デバイス600は、さもなければ所定の阻止電圧において想定し得るよりも低いオン状態抵抗を有することができる。
【0086】
前述したように、4Hシリコンカーバイド層構造の上面に対する注入角度は、基板を形成する4Hシリコンカーバイドウエハがブールから切断される方法によって決まる。<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面(すなわち、<0001>結晶軸に対して垂直である平面)に沿ってウエハが切断される場合、注入角度は約17°の角度であってもよい。<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から4°の角度で4Hシリコンカーバイドウエハが切断される場合、注入角度は、4°オフカットの方向に応じて約13°又は約21°となる(注入が<11-23>結晶軸に沿って行われる場合)。<11-23>結晶軸と対称的に等価な5つの結晶軸における注入角度は、そのようなオフカットウエハのための単純な幾何学的形態によって決定されてもよい。<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から4°の角度以外の角度でウエハが切断されてもよく、それにより、シリコンカーバイド層構造の上面により画定される平面に対する注入角度に対応する変化がもたらされることも同様に分かる。一般に、注入角度は、シリコンカーバイド層構造の上面により画定される平面から約6°~約35°の範囲内にあることが予期される。
【0087】
図14は、本発明の実施形態に係るイオン注入技術を使用して形成された幾つかの4Hシリコンカーバイド層構造に関する1cm
-3当たりの
27ALの濃度を示すSIMSデータのグラフである。ドーパントでは、イオンが<11-23>結晶軸に沿って注入された。イオンは、600keV及び900keVの注入エネルギーで注入された。
図14から分かるように、約5.5~6.5ミクロンの注入深さが4つの全てのケースで達成された。これらの注入深さは、同様の注入エネルギー及び従来技術を使用して達成できる注入深さをはるかに超える。
【0088】
本発明の実施形態がドリフト領域にn型材料及びp型材料のフィン状ピラーを使用して実装される超接合構造に限定されないことも分かる。例えば、
図15A及び15Bは、ドリフト領域内に他の形状のp型及びn型領域を有する本発明の実施形態に係るチャネリングイオン注入技術を使用して形成され得る超接合構造の2つの更なる例を示す。特に、
図15Aは、フィン形状ピラーとは対照的にn型724及びp型726材料の交互の円形リングの形態を成す超接合構造を含むパワー半導体デバイス700のドリフト領域の上面の概略平面図である。同様に、
図15Bは、チェッカーボードパターンで形成されるn型774及びp型776材料の複数の柱状ピラーの形態を成す超接合構造を含むパワー半導体デバイス750のドリフト領域の上面の概略的なピラー概略平面図である。いずれの場合にも、リング又は柱は、<0001>結晶軸に対して17°の角度を成す又は<0001>結晶軸から90°の角度(すなわち、<11-20>結晶軸に沿う)などのドーパントイオンの深いチャネリングを容易にする他の角度を成す側壁を含む。
【0089】
本発明の実施形態に係るイオン注入技術を使用して、厚さが例えば2ミクロン~10,15,20ミクロン以上の超接合を有するデバイスを形成してもよく、そのような超接合は、注入されるドーパントイオンのそれぞれのタイプごとに単一のイオン注入ステップを使用して形成される。ドリフト領域内の交互のn型ピラー及びp型ピラーは、例えば1ミクロン~50ミクロンの幅を有してもよい。更に、プロセスの各ステップで形成されるピラーが位置合わせされる状態でプロセスを複数回繰り返して、より一層深い注入を有するデバイスを形成することができる。例えば、
図12A~
図12Eに示されるイオン注入プロセスが実行された後、他のシリコンカーバイド層を最初のエピタキシャル層上にエピタキシャル成長させることができる。その後、この第2のエピタキシャル層に対してイオン注入ステップを繰り返して、超接合構造が全体にわたって延びる更に厚いドリフト領域を形成することができる。この成長プロセスとその後の注入を更なる回数繰り返すことができる。
【0090】
図16は、本発明の実施形態に係る超接合型ドリフト領域を有するパワー半導体デバイスを製造する方法を示すフローチャートである。
図16に示されるように、工程は、4Hシリコンカーバイド基板上に第1の導電型を有する不純物がドープされる4Hシリコンカーバイドドリフト層の形成から始まってもよい(ブロック790)。ドリフト層は、例えば、エピタキシャル成長によって形成されてもよい。幾つかの実施形態において、シリコンカーバイド基板は、シリコンカーバイド基板の<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面から例えば2°~8°の角度で切断されるオフカットシリコンカーバイドウエハであってもよい。幾つかの実施形態において、シリコンカーバイド基板は、他の角度でオフカットされてもよく、或いは、代わりに、<10-10>結晶軸及び<11-20>結晶軸により画定される平面に沿って切断されてもよい
【0091】
次に、第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する不純物がドリフト層の選択された部分に注入される(ブロック795)。ドリフト層は平坦な上面を有してもよく、また、イオン注入マスクを使用してドリフト層の平坦な上面の選択された部分に不純物が注入されてもよい。不純物は、第2の導電型のドーパントイオンの深いチャネリングを容易にするために、<11-23>結晶軸又は他の5つの対称的に等価な結晶軸のうちの1つの+/-1.5°内にある角度で注入されてもよい。この注入ステップは、超接合構造の一部であるドリフト層内に少なくとも1つの第2の導電型のピラーを形成してもよい。第2の導電型のピラーは、4Hシリコンカーバイドドリフト層の上面に対して傾斜される側壁を有してもよい。
【0092】
先の実施形態の例はドーパントイオンの深いチャネリングをもたらし得る特定の好ましいイオン注入角度について説明するが、そのようなチャネリングももたらし得る他の角度が使用されてもよいことが分かる。例えば、先の
図3Bに示されるチャネルが形成される前述した6つの結晶軸間の中間位置で17°の角度により画定される前述の円錐の周りの回転角において<0001>結晶軸から17°の角度で注入が行われる場合にある程度のチャネリングが生じると考えられる。したがって、本開示が先に具体的に特定される注入角度に限定されないことが分かる。
【0093】
本発明の更なる他の実施形態にしたがって、4Hシリコンカーバイドウエハの異なる部分を異なる回転角で注入することができる。例えば、再び
図5Aを参照すると、4Hシリコンカーバイドには、
図3Bに示されるように現れる格子構造を有する6つの対称的に等価な結晶軸が存在する。幾つかの実施形態では、ウエハの異なる部分がこれらの回転角のうちの異なる回転角で注入されてもよい。そのような技術は、例えば、形成されるピラーの全てがウエハの中心に向かって内側に傾くように使用されてもよい。端部ピラーは異なる電界に直面し得るため、ウエハの縁部から離れるようにピラーを傾けることが有利となり得る。
【0094】
JBSダイオード及びパワーMOSFETの形態を成す実施形態の例に関連して本発明の実施形態を説明してきた。しかしながら、例えばショットキーダイオード、JFET、BJT、PiNダイオード、金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)、GTO、IGBT、MOS制御サイリスタ、及び、他のパワー半導体デバイスなどの他のパワー半導体デバイスが本発明の実施形態に係る超接合ドリフト領域を有するように形成されてもよいことが分かる。
【0095】
本発明の先の実施形態は主に4Hシリコンカーバイドデバイスに関連して説明されているが、先の技術が2Hシリコンカーバイド、6Hシリコンカーバイド、3Cシリコンカーバイド、及び、15Rシリコンカーバイドを含む他のタイプのシリコンカーバイドに対して使用されてもよいことが分かる。したがって、2Hシリコンカーバイド及び6Hシリコンカーバイドに関して注入角度を適切に変化させることができるとともに、3Cシリコンカーバイド及び15Rシリコンカーバイドに関して結晶軸及び注入角度を適切に変化させることができることが分かる。例えば、<11-23>結晶軸(及びその等価な結晶軸)は4Hシリコンカーバイドにおける<0001>結晶軸に対して17°の角度を成すが、<11-23>結晶軸(及びその等価な結晶軸)と<0001>結晶軸との間の角度は、2Hシリコンカーバイドに関して約31.4°であり、6Hシリコンカーバイドに関して約11.5°である。したがって、様々な半導体ピラーの前述の側壁が<0001>結晶軸に対して傾けられる度合いは、使用されるシリコンカーバイドのタイプに依存し得る。
【0096】
前述のように、幾つかの実施形態によれば、4Hシリコンカーバイドが使用される場合、形成されるピラーは、<0001>結晶軸から15.5°~18.5°の角度で傾けられる側壁を有してもよい。4Hシリコンカーバイドの代わりに2Hシリコンカーバイドが使用される場合、注入角度を適切に変えることができるとともに、ピラーは、<0001>結晶軸に対して例えば30°~33°の角度で傾けられる側壁を有することができる。同様に、4Hシリコンカーバイドの代わりに6Hシリコンカーバイドが使用される場合、注入角度を適切に変えることができるとともに、ピラーは、<0001>結晶軸に対して例えば10°~13°の角度で傾けられる側壁を有することができる。したがって、4Hシリコンカーバイドに関して前述した本発明の実施形態を結晶軸間に異なる角度をもたらすような適切な調整を伴って他のタイプのシリコンカーバイドにも同様に適用できることが分かる。
【0097】
3Cシリコンカーバイドに関して、また、構造に関する立方体表記法を用いると、<001>結晶軸から離れる45°の傾きは、<110>族の結晶面に沿う高度チャネリングをもたらし得る。同様に、<001>結晶軸から離れる35.3°の傾きは、<111>族の結晶面に沿う高度チャネリングをもたらし得る。したがって、3Cシリコンカーバイドに関して、ピラーは、<001>結晶面に対して例えば34°~37°又は43°~47°の角度で傾けられる側壁を有し得る。
【0098】
本発明の更なる実施形態にしたがって、性能の向上を成し得るパワーシリコンカーバイドベースの接合バリアショットキー(JBS)ダイオードが提供される。本発明のこれらの実施形態に係るJBSダイオードは、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、インジウムなどのようなp型ドーパントが注入される深く注入されたp型ウェルを有することができる。幾つかの実施形態では、これらのp-ウェルが2ミクロンを超える深さを有してもよい。他の実施形態では、p-ウェルが3ミクロンを超える深さを有することができる。例えば、p-ウェルは、幾つかの実施形態では3~5ミクロンの深さを有してもよく、また、他の実施形態では2~5ミクロンの深さを有してもよい。深い注入のドーピングプロファイルは、デバイスのn型ドリフト層に準電荷バランスを与えるように選択されてもよく、それにより性能が向上する。
【0099】
本発明の実施形態に係る前述のJBSダイオード及び様々な他のパワー半導体デバイスは、固有の望ましいドーピングプロファイルを有する深く注入された領域を形成するために多段階チャネリングイオン注入技術を用いて製造されてもよい。これらの技術を用いて形成されるこれらのデバイスは、幾つかの実施形態では、シリコンカーバイドパワー半導体デバイスであってもよい。本発明のこれらの実施形態に係るパワー半導体デバイスは、従来のパワー半導体デバイスと比較して、電力損失の低減、より低い漏れ電流、及び/又は、逆降伏電圧性能の向上などの性能向上を成すことができる。幾つかの実施形態において、デバイスは、2つのイオン注入ステップのうちの少なくとも1つにおいてチャネリング技術を使用してイオンが注入される2段階イオン注入プロセスを使用して形成されてもよい。多段階イオン注入プロセスの第1ステップは、比較的高い注入エネルギーでイオンを注入することができ、一方、他段階イオン注入プロセスの第2ステップは、より低い注入エネルギーでイオンを注入することができる。この技術を使用して、デバイスの性能を向上させる所望の注入プロファイルを達成することができる。
【0100】
ここで、
図17~
図27を参照して、本発明のこれらの実施形態を更に詳しく説明する。
【0101】
図17は、JBSダイオード800の形態を成すパワー半導体デバイスの断面図である。
図17に示されるように、JBSダイオード800は、カソード接点820、オーミック接点層822、n型基板824、ドリフト領域830、チャネル領域846を画定する複数のp型ブロッキング接合部840、ショットキー接点842、及び、アノード接点844とを含む。n型基板824は、窒素又はリンなどのn型不純物が高濃度にドープされるシリコンカーバイド基板を備えてもよい。ドリフト領域830は、エピタキシャル成長したn型シリコンカーバイド半導体領域であってもよい。カソード接点820及びアノード接点844はそれぞれ高導電性金属層を備えてもよい。ショットキー接点842は、ドリフト領域830と共にショットキー接合部を形成する層を備えてもよく、例えばチタン層を備えてもよい。オーミック接点層822は、シリコンカーバイド基板824に対するオーミック接点を形成するべくn型シリコンカーバイドに対するオーミック接点を形成する金属を備えてもよい。p型ブロッキング接合部840は、p型ドーパントが高濃度に注入されるドリフト領域830の上部にあるp型注入領域を備えてもよい。チャネル領域846はp型ブロッキング接合部840に隣接して位置される。チャネル領域846は、JBSダイオード800がその順方向オン状態にあるときに電流を遠し、JBSダイオード800がその逆遮断状態にあるときに電圧を遮断する。
【0102】
図18は、
図17のJBSダイオード800の順方向(オン状態)電流-電圧(I-V)特性を示すグラフである。
図18に示されるように、JBSダイオードが約0.9ボルトのターンオン電圧又は「ニー」電圧を有するとき、これはJBSダイオード800が電流を導通させ始める順方向電圧である。JBSダイオード800内で消費される電力は、このニー電圧の関数である。
【0103】
JBSダイオード800の電力損失を低減することが望ましい場合がある。電力損失は電圧に伴って直線的に変化するため、電力損失を低減するための1つの想定し得る手段は、ニー電圧を低減することである。ショットキー接点842を形成するためにチタンの代わりにタンタルを使用すると、
図17のシリコンカーバイドパワーJBSダイオード800のニー電圧を低減できることが分かった。特に、
図18にも示されるように、JBSダイオード800がタンタルショットキー接点842を有するように形成される場合、ニー電圧は約0.6ボルトまで減少され得る。ニー電圧のこの低下は、潜在的に著しく少ない電力損失をもたらし得る。
【0104】
しかしながら、残念ながら、タンタルショットキー接点842が使用されると、JBSダイオード800の逆漏れ電流が特により高い温度レベルでかなり増大する。これは、タンタルがチタンと比べて低いショットキーバリア高さを有するために起こり、また、特にデバイスが高温で動作しているときに、ショットキーバリア高さのこの低下は逆漏れ電流の増大を可能にする。タンタルショットキー接点842を有するJBSダイオード800の逆漏れ性能が
図19に示される。
図19において分かるように、25℃において、タンタルショットキー接点842を有するJBSダイオード800は、800ボルトを超える逆阻止電圧を示し、これは多くの用途において受け入れられる。しかしながら、温度が100℃まで上昇されると、逆阻止電圧が約650ボルトまで低下される。更に、温度が150℃まで上昇されると、逆阻止電圧が約500ボルトにしかならない。逆に、チタンショットキー接点842を有するJBSダイオード800は、150℃で800ボルトを超える逆降伏電圧を示す。したがって、タンタルショットキー接点842の使用がJBSダイオード842のニー電圧を有利に低減することができるが、ショットキーバリア高さの関連する減少は、逆漏れ電流の許容できない増大をもたらし、そのため、デバイスの逆阻止電圧の減少をもたらす。
【0105】
逆漏れ電流を低減し、したがって、逆降伏電圧を増大させるために使用され得る1つの技術は、ショットキー接点842の下方のドリフト領域830の上面に形成される注入されたp型ブロッキング接合部840の深さを増大させることである。より深く注入されたp型ブロッキング接合部の使用は、逆バイアス動作中に高い電界からショットキー界面(すなわち、ショットキー接点800と下層の半導体領域840,846との間の接合部)を遮蔽することができ、それにより、従来のデバイスで使用されるチタン、アルミニウム、又は、他のショットキー接点金属と比べて低いショットキーバリア高さを有するタンタルショットキー接点842を使用できる。しかしながら、より深く注入されたp型ブロッキング接合部の使用は、2つの更なる問題をもたらし得る。第1に、より深いブロッキング接合部は、デバイス800のオン状態抵抗を増大させる場合があり、これは電力損失を増大させるように作用する。第2に、より深いp型ブロッキング接合部は、ドリフト領域830の有効深さを減少させる場合があり、それにより、JBSダイオード800の逆降伏電圧を低減することができる。
【0106】
本発明の実施形態にしたがって、p型ブロッキング接合部を形成するために深いp型注入が行われてもよく、この場合、注入領域は、n型ドリフト領域に対する準電荷平衡を達成するように注意深く選択され得るドーピングプロファイルを有する。このようにして、ドリフト領域に超接合構造が形成されてもよい。超接合構造は、高い逆降伏電圧を依然として維持しつつ低い抵抗を示す一連のp-n接合のように作用し得る。超接合構造は、ドリフト領域の厚さが超接合構造によって効果的に大きく低減される場合に起こり得る逆降伏電圧の想定し得る低下を回避するために、ドリフト領域を部分的にのみ貫通して延びるように形成されてもよい。ここで、
図20~
図22を参照して、本発明のそのような実施形態について更に詳しく説明する。
【0107】
特に、
図20は、下層の半導体層の構造をより良く示すために上側金属層が省かれた本発明の実施形態に係るJBSダイオード900の概略平面図である。
図21は、
図21の図に含まれる上側金属層を伴う
図21のJBSダイオード900の線I-Iに沿う断面図である。
図22は、デバイス全体にわたるドーピング濃度を示す
図20のJBSダイオード900の線I-Iに沿う断面図である。明確にするために
図22には上側金属層も含まれる。
【0108】
図20及び
図21を参照すると、JBSダイオード900は、カソード接点920、オーミック接点層922、n型基板924、ドリフト領域930、チャネル領域946を画定する複数のp型ブロッキング接合部940、ショットキー接点942、及び、アノード接点944を含む。カソード接点920、オーミック接点層922、基板924、ドリフト領域930、及び、アノード接点944は、
図17のJBSダイオード800におけるそれらの対応する要素と同一であるため、これ以上の説明は省略する。また、JBSダイオード900は、アバランシェ降伏に対する保護のためのエッジ終端としての機能を果たすガードリング950も含む。
【0109】
JBSダイオード900は、幾つかの実施形態ではそれがタンタルショットキー接点942を含んでもよいという点でJBSダイオード800とは異なる。前述したように、そのようなタンタルショットキー接点942の使用は、ダイオード900のニー電圧を低減し、それにより、順方向オン状態動作中により低い電力損失レベルをもたらすことができる。更に、JBSダイオード900は、ドリフト領域930内へと更に一層延びて異なるドーピングプロファイルを有するp型ブロッキング接合部940を含む。深く注入されたp型ブロッキング接合部940の結果として、JBSダイオード900のチャネル領域946は、チャネル領域846がドリフト領域930内へと更に数倍延びてもよいという点でJBSダイオード800のチャネル領域846とは異なる。ガードリングはJBSダイオード800には示されないが、JBSダイオード900に含まれるガードリング950がJBSダイオード800内の任意の対応するガードリングよりも深くドリフト領域930内へと延びてもよいことが分かる。
【0110】
図22は、p型ブロッキング接合部940及びガードリング950のドーピングプロファイルを示す
図20の線I-Iに沿う概略断面図である。
図22において、p型領域はクロスハッチング領域に対応し、この場合、高ドーピング濃度、中ドーピング濃度、及び、低ドーピング濃度の領域を示すために3つの異なるタイプのクロスハッチングが使用される。
図22は本質的に概略的であり、また、異なるドーピング濃度の領域が
図22に示唆されるように急激に変化しないが代わりに徐々に変化することが分かる。同様に、p型ドーパントがイオン注入中の散乱に起因して及び/又は拡散に起因してn型領域内に低濃度で存在することが分かる。したがって、
図22がドーピング濃度の絶対的に正確な表示であるのとは対照的に本質的に概略的であってp型領域の一般的な形状及びドーピング濃度を示すために与えられているのが分かる。
【0111】
図22に示されるように、ドリフト領域930の上部において、注入されたp型ブロッキング接合部940は、高いp型ドーパント濃度を有することができる。例えば、幾つかの実施形態において、注入されたp型ブロッキング接合940の上部は、5x10
17cm
-3よりも大きいドーピング濃度を有することができる。相対的に高いドーピング濃度を有する各p型ブロッキング接合部の上部は、例えば、ドリフト領域830の上面からドリフト領域830内へと約0.5~約1.5ミクロン延びてもよい。上部の下方にあるp型ブロッキング接合部940の下部は、ドリフト領域930の隣接するn型部分の電荷を少なくとも準平衡にするようになっているドーピング濃度を有してもよい。このドーピング濃度は、p型ブロッキング接合部940の上部のドーピング濃度よりもかなり低くてもよい。例えば、幾つかの実施形態において、p型ブロッキング接合部940の下部は、p型ブロッキング接合部940の上部のドーピング濃度よりも少なくとも100倍低いドーピング濃度を有してもよい。他の実施形態において、p型ブロッキング接合部940の下部は、p型ブロッキング接合部940の上部のドーピング濃度よりも少なくとも1000倍低いドーピング濃度を有してもよい。ある場合には、p型ブロッキング接合部940の下部は、1x10
17cm
-3未満のドーピング濃度を有してもよい。実施形態の一例において、各p型ブロッキング接合部940の上部は1x10
18cm
-3よりも大きいドーピング濃度を有してもよく、また、各p型ブロッキング接合部940の下部は、7x10
16cm
-3未満のドーピング濃度を有してもよい。1つの特定の実施形態において、各p型ブロッキング接合部940の上部は2x10
18cm
-3よりも大きいドーピング濃度を有してもよく、また、各p型ブロッキング接合部940の下部は約3x10
16cm
-3~約5x10
16cm
-3のドーピング濃度を有してもよい。
【0112】
各p型ブロッキング接合部の高濃度にドープされた上部は、高い逆電圧に耐え得る強い電界を逆遮断動作中に生成し得る。各p型ブロッキング接合部940の適度にドープされた下部は、それらの間に介挿されるn型チャネル領域946に対して準電荷平衡を達成するように選択されるドーピング濃度を有してもよい。チャネル領域946の下部及びp型ブロッキング接合部940の下部は、高い逆降伏電圧を依然として維持しつつ低い抵抗を示す一連のp-n接合を備える超接合構造を形成してもよい。p型ブロッキング接合部940は、ドリフト領域930を部分的にのみ貫通して延びる。前述の構造及びドーピングプロファイルを有するデバイスは、
図23~
図26において分かるように、かなり改善された性能を示し得ることが分かってきた。「準電荷平衡」とは、p型ブロッキング接合部940の電荷がチャネル領域946の電荷にほぼ等しいことを意味する。これらの電荷がおおよそ等しい-例えば互いの20%以内である-限りにおいて、p型ブロッキング接合部940の下部及びそれらの間のチャネル領域946が超接合のように作用し、それにより、オン状態抵抗と逆電圧遮断性能との間の従来のトレードオフを低減できることが分かってきた。
【0113】
幾つかの実施形態において、
図22に示されるドーパントプロファイルは、多段階イオン注入プロセスを使用して達成されてもよい。これらのイオン注入ステップのうちの1つ以上がチャネリング技術を使用してもよい。幾つかの実施形態では、p型ドーパントが<0001>結晶軸に沿って注入されてもよい。前述したように、シリコンカーバイドウエハは、通常、<0001>結晶面に対して垂直な角度で切断されるのとは対照的にオフセットカットされる。ドーパントが<0001>結晶面に沿って注入されると、チャネリングが起こり、それにより、より深い注入が可能になる。
【0114】
ドーパントは、基板を形成するときに<0001>結晶面に対して垂直にウエハを切断した後に基板の上面に対して垂直な方向でイオンを注入することによって、或いは、軸外カットウエハを補償するために基板に対してイオン注入デバイスを傾けることによって、<0001>結晶軸に沿って注入されてもよい。
図23は、ドーパントが<0001>結晶軸に沿って注入されるときのn型シリコンカーバイド層の深さに応じたドーパント濃度を示すグラフである。
図23において、曲線960は、100keVの注入エネルギーにおける深さに応じたドーパント濃度を示し、曲線962は、300keVの注入エネルギーにおける深さに応じたドーパント濃度を示し、曲線964は、500keVの注入エネルギーにおける深さに応じたドーパント濃度を示し、曲線966は、700keVの注入エネルギーにおける深さに応じたドーパント濃度を示し、及び、曲線968は、900keVの注入エネルギーにおける深さに応じたドーパント濃度を示す。
図23に示される5つのイオン注入プロセスのそれぞれは、n型4Hシリコンカーバイドドリフト領域に
27Al+イオンを約1x10
13cm
-2の照射量で注入することによって行われ、この場合、注入は室温で行われた。
27Al+イオンはシリコンカーバイド中でp型ドーパントとして作用する。
【0115】
図23に示されるように、5つの注入プロセスのそれぞれに関して、ドーパント濃度は表面付近で非常に低く、この場合、低ドーパント領域がドリフト領域内へと深く延びれば延びるほど、使用される注入エネルギーが高くなる。例えば、900keVの注入エネルギーが使用される場合、ドーパント濃度は、ドリフト領域の上面から約0.3ミクロンの深さまでは無視することができ、ドーパント濃度は、約0.8ミクロンの深さまで1x10
16cm
-3に達しない。
【0116】
ドーパント濃度は表面付近で非常に低いが、濃度は深さの増大に伴って急激に上昇する。
図23から明らかなように、注入エネルギーが低ければ低いほど、深さの増大に伴うドーパント濃度の上昇が速くなる。ドーパント濃度は、5つの注入エネルギーの全てにおいてこの急速な上昇の高さでピークに達して、小さな局所的ピークを示し、その後、ドーパント濃度は、延在深さにわたってゆっくりと減少する。ドーピングプロファイルのこの特性は重要である。これは、そのことが、<0001>結晶軸に沿うチャネリング注入がかなりの深さ範囲にわたって比較的一定の濃度を有する深い注入を形成できることを意味するからである。比較的一定のドーピング濃度の領域の端部で、ドーパント濃度は、その後、
図23の各曲線の右側に見られるように、ゼロに向かって急速に減少する。
【0117】
したがって、
図23の各曲線960,962,964,966,968は、ドーパント濃度が比較的僅かな変化(例えば、0~500%の変化)を示す比較的平坦な領域を有する。注入プロファイルのこの態様は、各p型ブロッキング接合部の適度にドープされた下部を生成するために使用できる。これは、p型ブロッキング接合部940の下部間にあるn型チャネル領域946を準電荷平衡させるほぼ一定のドーピングプロファイルを有することができるからである。例えば、1つの実施形態の例では、
図23の曲線968により示されるように、約1ミクロンから約3ミクロンまでの深さで約5x10
16cm
-3のドーパント濃度を有するp型ブロッキング接合部940の下部を形成するために第1のイオン注入ステップとして900keVのp型ドーパントの注入が行われてもよい。その後、例えば、100keVの注入エネルギーを使用して第2のイオン注入ステップが行われてもよい。
図23に示されるように、これは、表面直下から約1ミクロンの深さまで約2x10
17cm
-3のドーピング濃度を有するべく各p型ブロッキング接合部940の上部を形成する。このようにして、
図22に示されるドーピングプロファイルを得るために一連のチャネリング注入が使用されてもよい。ここで、「ほぼ一定のドーピングプロファイル」という用語は、ドーピング濃度が半分未満の大きさだけ変化することを意味する。
【0118】
図23を参照して前述した多段階チャネリング注入は、幾つかの利点を有し得る。第1に、インプラントを室温で行うことができ、それにより、製造コストを低減することができる。更に、チャネリング注入は、シリコンカーバイド結晶への損傷の著しい低減をもたらすことができる。これは、イオンが散乱(結晶損傷を引き起こす)の大きな減少を伴って結晶中に深く侵入するとともに、イオンが電子雲相互作用に起因して主に減速されて結晶格子内で停止されるからである。p型ドーパントは、95%を超える活性化レベルなどの非常に高い活性化レベルを達成することができる。これは、チャネリング注入が結晶格子内の電気的に活性な位置へのより一貫したイオン注入を容易にするからである。チャネリング注入は、比較的平坦なドーピングプロファイルを伴って深い接合部の形成を可能にする。このドーピングプロファイルは、JBSダイオード(又は他のデバイス)のオン抵抗を低減できるとともにショットキー接合部における電界強度を低下させてより低いショットキーバリア高さのショットキー接点の使用を可能にする一般に電荷平衡な超接合構造をドリフト領域内に深く形成することを容易にし得る。更に、イオン注入プロセスの多段階の性質は、高い逆阻止電圧レベルをサポートするより高濃度にドープされたp型領域をドリフト領域の上面に形成できるようにする。
【0119】
図24は、従来のイオン注入技術を用いて形成されるp型ブロッキング接合部を有する幾つかのJBSダイオードに関する及び本発明の実施形態に係る前述のチャネリングイオン注入技術を用いて形成される幾つかのJBSダイオードに関する電流密度に応じたショットキー接合部におけるシミュレートされた電界強度のグラフである。前述したように、ショットキー接合部における電界が高すぎる場合、低いショットキーバリア高さを有するタンタルなどのショットキー接点金属がショットキー接点を形成するために使用されれば、逆バイアス動作中に高い漏れ電流が結果として生じ得る。
図24に示されるように、従来の最先端のJBSダイオードを用いると、ショットキー接合部における電界強度は8-9x10
-6A/micronの電流密度で約1.4x10
6V/cmである。一方、同じ電流密度では、本発明の実施形態に係るJBSダイオードにおけるショットキー接合部の電界強度は、約9x10
5V/cm~1x10
6V/cmまで低減され、又は、約40%低減される。電界のこの減少は、タンタルなどのより低いショットキーバリア高さのショットキー接点金属の使用を可能にするのに十分である。
【0120】
図25は、本発明の実施形態に係る幾つかのJBSダイオードの順方向動作I-V特性を示すグラフである。
図25に示されるように、順方向オン状態電流-電圧特性は、約0.7ボルトのニー電圧をもたらす。
図26は、
図25に含まれるデータを生成するために使用されるJBSダイオードの逆阻止I-V特性を示すグラフである。
図26に示されるように、各デバイスは750ボルトを超える逆阻止電圧レベルを示す。更に、3つ全てのJBSダイオードは、極めて低い漏れ電流レベル及び非常に鋭い破壊特性を示し、これらはいずれも望ましい。
【0121】
また、p型注入の照射量は、デバイスの順方向電圧レベルと逆漏れ電流との間のトレードオフを伴う場合があることも分かってきた。特に、より高いAl照射量は、ショットキー界面をより効果的に遮蔽する傾向があり、そのため、逆漏れ電流を低下させ得る。一方、より低いAl照射量は、デバイスが順方向バイアス動作中に導通し始めるニー電圧を更に低減することができ、それにより、より低い電力損失レベルをもたらすことができる。
【0122】
先の例はJBSダイオードに焦点を当てているが、本発明の実施形態に係る多段階チャネリング注入が例えばPiNダイオードなどの他のデバイスを製造するために使用できることが分かる。また、本明細書中で論じられる注入技術を用いて
図20~
図21のJBSダイオード900に含まれる深く注入されたガードリング950などの深く注入された終端構造を形成できることも分かる。更に、これらの技術は、より低い抵抗値を有するJFET領域を可能にするためにディープpウェルが設けられ得るMOSFETなどの他のデバイスにおいても使用されてもよい。ここで、
図27を参照して、そのようなデバイスの一例について説明する。
【0123】
図27は、本発明の更なる実施形態に係るパワーMOSFETの単位セル1000の断面図である。
図27に示されるように、単位セル1000は、高濃度にドープされた(n+)単結晶n型シリコンカーバイド基板1010上に実装されてもよい。低濃度にドープされた(n-)シリコンカーバイドドリフト領域1020が基板1010上に設けられる。シリコンカーバイドドリフト領域1020は、一般に、シリコンカーバイド基板1010上にエピタキシャル成長によって形成される。n型シリコンカーバイド電流拡散層1030がn
-シリコンカーバイドドリフト層1020上に設けられる。電流拡散層1030は、より低濃度にドープされたn
-シリコンカーバイドドリフト層1020のドーピング濃度を超えるドーピング濃度を有する適度にドープされた電流拡散層1030をもたらすために、n
-シリコンカーバイドドリフト層1020の形成後に例えばエピタキシャル成長によって形成されてもよい。その後、一対の離間したp型シリコンカーバイドウェル1040(「p-ウェル」)がn型電流拡散層1030の上面に形成されてもよい。p-ウェル1040は、前述の多段階チャネリングイオン注入技術を用いてn型電流拡散層1030の上側領域にp型イオンを注入することによって形成されてもよい。各p-ウェル1040は、高濃度にドープされた上部1042と、より適度にドープされた下部1044とを有してもよい。n型シリコンカーバイドJFET領域1050がp-ウェル1040間の電流拡散層1030の上側中央部に設けられてもよく、このn型シリコンカーバイドJFET領域1050はイオン注入によって形成されてもよい。
【0124】
各p-ウェル1040の上部1042は高濃度にドープされてもよい。例えば、幾つかの実施形態において、各p-ウェル1040の上部1042は、2x1017cm-3~1x1020cm-3のドーピング濃度を有してもよい。各p-ウェル1040の下部1044は適度なドーピング濃度を有してもよい。例えば、幾つかの実施形態において、各p-ウェル1040の下部1044は、5x1016cm-3~5x1017cm-3のドーピング濃度を有してもよい。各p-ウェル1040の下部1044は、超接合構造を形成するためにn型電流拡散層1030と準電荷平衡にされていてもよい。超接合構造をこのように設けると、オン状態抵抗を減少させることなく且つゲート酸化物における電界強度を増大させることなくJFET領域1050をより高濃度にドープすることができる。JFET領域1050のドーピング濃度は、例えば、電流拡散層1030の残りの部分のドーピング濃度よりも1桁以上大きくてもよい。
【0125】
高濃度にドープされた(n+)n型シリコンカーバイド領域1060が各p-ウェル1040の上部1042内に形成される。高濃度にドープされた(n+)n型シリコンカーバイド領域1060は、単位セル1000に含まれる2つの個々のトランジスタのためのソース領域として作用し、一方、電流拡散層1030、ドリフト領域1020、及び、基板1010は共に単位セル1000のための共通ドレイン領域として作用する。チャネル領域がソース領域1060とJFET領域1050との間の各p-ウェル1040内に設けられる。JFET領域1050、p-ウェル1040の一部、及び、n型シリコンカーバイド領域1060の一部には、ゲート絶縁層1070(例えば、シリコン酸化物層)が設けられる。ゲート絶縁層1070上には半導体又は金属ゲート電極1080が設けられる。幾つかの実施形態では、ゲート絶縁層1070がゲート電極1080を取り囲んでもよい。
【0126】
共通のソース接点として作用するソース接点1090(例えば金属層)がn+ソース領域1060上に設けられ、また、共通のドレイン接点として作用するドレイン接点1095(例えば、他の金属層)がn+シリコンカーバイド基板1000の裏面に設けられる。
【0127】
本発明の実施形態に係る前述のイオン注入技術は、多くの利点を示すことができる。前述のように、この技術は、p型ブロッキング接合部、p-ウェル、及び、デバイス性能の向上をもたらし得るドーピングプロファイルを有する他の注入領域を形成するために使用されてもよい。更に、チャネリングドーピング技術の使用は、95%を超えるレベルのようなより一層高いドーパント活性化レベルをもたらすことができ、それにより、より一貫した及び/又は反復可能なドーピングをもたらすことができるとともに、ドーピングに必要な時間の量を少なくすることもできる。これは、所定のレベルの活性化ドーパントを得るために必要なドーパントが少ないからである。
【0128】
先の説明では、ドリフト層のn型部分にn型基板及びチャネルを有する半導体デバイスに関して実施形態の例が説明されているが、先の各実施形態におけるn型層及びp型層の導電性を逆にするだけで反対の導電型のデバイスを形成できることが分かる。したがって、本発明がn型及びp型デバイスの両方をカバーすることが分かる。同様に、本明細書中に開示されるイオン注入技術にしたがって形成される各パワー半導体デバイスが一般に単位セル構造内に並列に配置される複数の個々のデバイスを備えることが分かる。
【0129】
以上、本発明の実施形態が示される添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明してきた。しかしながら、この発明が多くの異なる形態で具現化されてもよいとともに前述の実施形態に限定されるように解釈されるべきでないことが分かる。むしろ、これらの実施形態は、この開示が完璧で且つ完結しており、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。全体にわたって同様の番号は同様の要素を指す。
【0130】
第1、第2などの用語がこの明細書の全体にわたって様々な要素を説明するために使用されるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解される。これらの用語は、ある要素を他の要素と区別するためだけに使用される。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。「及び/又は」という用語は、関連する挙げられた項目の1つ以上の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0131】
本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定しようとするものではない。本明細書で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が別段明確に示さない限り、複数形も含むことが意図される。用語「備える」、「備えている」、「含む」、及び/又は、「含んでいる」は、本明細書中で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は、構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又は、それらのグループの存在又は付加を排除するものではないことが更に理解される。
【0132】
層、領域、又は、基板などの要素が他の要素「の上にある」又は「へと延びる」と言及されるときには、それが他の要素上に直接にあってもよく、又は、それが他の要素へと直接に延びていてもよく、或いは、介在する要素が存在してもよいことが理解される。一方、ある要素が他の要素「の上に直接にある」又は「へと直接に延びる」と言及されるときには、介在要素が存在しない。ある要素が他の要素に「接続される」又は「結合される」と言及されるときには、それが他の要素に直接に接続又は結合されてもよく、或いは、介在する要素が存在してもよいことも理解される。一方、ある要素が他の要素に「直接に接続される」又は「直接に結合される」と言及されるときには、介在要素が存在しない。
【0133】
本明細書中では、図に示されるように1つの要素、層又は領域と他の要素、層又は領域との関係を説明するために、「下方」又は「上方」又は「上側」又は「下側」又は「上端」又は「下端」又は「水平」又は「横」又は「垂直」などの相対用語が使用される場合がある。これらの用語が図面に描かれる向きに加えてデバイスの異なる向きを含むように意図されることが理解される。
【0134】
本明細書中では、本発明の理想化された実施形態(及び中間構造体)の概略的な例示である断面図を参照して本発明の実施形態が記載される。図面中の層及び領域の厚さは、明確にするために誇張される場合がある。更に、例えば製造技術及び/又は公差の結果としての図の形状からの変形が予期されるべきである。
【0135】
本発明の幾つかの実施形態は、層及び/又は領域における多数キャリア濃度を指すn型又はp型などの導電型を有するものとして特徴付けられる半導体層及び/又は領域に関連して説明される。したがって、n型材料は、負に帯電した電子の多数平衡濃度を有し、一方、p型材料は、正に帯電した正孔の多数平衡濃度を有する。幾つかの材料は、他の層又は領域と比較して相対的に大きい(「+」)又は小さい(「-」)多数キャリアの濃度を示すために(n+、n-、p+、p-、n++、n--、p++、p-の場合のように)「+」又は「-」を用いて示される場合がある。しかしながら、そのような表記は、層又は領域内に多数キャリア又は少数キャリアの特定の濃度が存在することを意味するものではない。
【0136】
図面及び明細書には、本発明の典型的な実施形態が開示されており、また、特定の用語が使用されるが、それらは一般的且つ記述的な意味でのみ使用されており、限定のためではなく、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲に記載される。