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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】半導体装置および通信システム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/28 20060101AFI20230731BHJP
   H01Q 9/30 20060101ALI20230731BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20230731BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H01Q21/28
H01Q9/30
H01Q1/50
H01Q9/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022048191
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2021068630の分割
【原出願日】2016-06-13
(65)【公開番号】P2022075939
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 博次
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-180762(JP,A)
【文献】特開2010-097990(JP,A)
【文献】特開2001-274527(JP,A)
【文献】特開平10-145267(JP,A)
【文献】特開2002-092576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/28
H01Q 9/30
H01Q 1/50
H01Q 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回路を有する半導体チップと、
前記半導体チップの第1の面を覆い、前記通信回路に電気的に接続されて前記半導体チップの前記第1の面に平行な第1の方向で蛇行往復させた線状パターンを含む第1のアンテナエレメントを有する第1の再配線層と、
前記半導体チップの前記第1の面とは反対側の第2の面を覆い、前記通信回路に電気的に接続されて前記半導体チップの前記第2の面に平行な第2の方向で蛇行往復させた線状パターンを含む第2のアンテナエレメントを有する第2の再配線層と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
通信回路を有する半導体チップと、
前記半導体チップの第1の面を覆い、前記通信回路に電気的に接続されて前記半導体チップの前記第1の面に平行な渦巻き状のパターンを含む第1のアンテナエレメントを有する第1の再配線層と、
前記半導体チップの前記第1の面とは反対側の第2の面を覆い、前記通信回路に電気的に接続されて前記半導体チップの前記第2の面に平行な渦巻き状のパターンを含む第2のアンテナエレメントを有する第2の再配線層と、
を含む半導体装置。
【請求項3】
前記第2のアンテナエレメントの一端は前記通信回路に接続され、前記第2のアンテナエレメントの他端は前記第1のアンテナエレメントの一端に接続される
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
通信回路を有する半導体チップと、
前記半導体チップの第1の面を覆い、前記通信回路に接続されて前記半導体チップの前記第1の面に平行な第1の方向で蛇行往復させた線状パターンを含む第1のアンテナエレメントを有する第1の再配線層と、
前記半導体チップの前記第1の面とは反対側の第2の面を覆い、前記通信回路に接続されて前記半導体チップの前記第2の面に平行な第2の方向で蛇行往復させた線状パターンと、前記通信回路に接続されて前記第2の方向で隣り合う島状パターンとを含む第2のアンテナエレメントを有する第2の再配線層と、
を含む半導体装置。
【請求項5】
前記島状パターンに接地電位が印加される
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のアンテナエレメント及び前記第2のアンテナエレメントの少なくとも一方のインピーダンスと前記通信回路のインピーダンスとを整合させるための整合回路を更に含む
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記通信回路と通信する通信装置と、
を含む通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面に無線通信用のアンテナを備えた半導体装置が知られている。例えば、特許文献1には、半導体チップを貫通して形成された2つの貫通電極を有する半導体装置において、半導体チップの一方の面に貫通電極の一方と接続したグランド層と、貫通電極の他方に接続したパッチアンテナとを無機絶縁層介して積層した構成が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、基板上にループ形状からなるループ部分を有したアンテナを備える半導体装置において。ループ部分の根元に、アンテナに対して並列に接続されるキャパシタが設けられることを特徴とする半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-158743号公報
【文献】特開2010-135500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の無線通信は、システム運用上必要となる十分な通信距離を得る為、効率が高いアンテナを用いていた。しかしながら近年においては、比較的短い距離の通信区間で無線通信を行うシステムが増えつつある。例えば、RFID(radio frequency identifier)のように通信距離が数ミリメートルから数メートルであるものも少なくない。また、近年では、無線通信を用いて真贋判定を行う試みもなされている。このような用途で用いられる無線通信機器は、その用途の性質上可能な限り小型であることが好ましい場合が多い。無線通信機器としての小型化が強く求められることで、アンテナの小型化も求められる。既にスマートフォン等のモバイル機器ではアンテナの存在を感じさせないデザインが主流になっており、アンテナの小型化が商品価値にもなっている。
【0006】
半導体装置の分野において知られている再配線技術を用いることで、半導体チップ上に小型のアンテナを形成することが可能となる。しかしながら、従来の構成では、必要十分な性能を備えたアンテナを形成することが困難であった。
【0007】
本発明は、半導体装置内に形成されるアンテナの高性能化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置は、通信回路を有する半導体チップと、前記半導体チップの第1の面を覆い、前記通信回路に電気的に接続されて前記半導体チップの前記第1の面に平行な第1の方向で蛇行往復させた線状パターンを含む第1のアンテナエレメントを有する第1の再配線層と、前記半導体チップの前記第1の面とは反対側の第2の面を覆い、前記通信回路に電気的に接続されて前記半導体チップの前記第2の面に平行な第2の方向で蛇行往復させた線状パターンを含む第2のアンテナエレメントを有する第2の再配線層と、を含む。
【0009】
本発明に係る通信システムは、上記の半導体装置と、前記通信回路と通信する通信装置と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体装置内に形成されるアンテナの高性能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図3A】本発明の実施形態に係る第1のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図3B】本発明の実施形態に係る第2のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る通信ユニットの構成を示す図である。
図5A】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5B】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5C】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5D】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5E】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5F】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5G】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5H】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5I】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5J】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5K】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5L】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図6A】本発明の実施形態に係る第1のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図6B】本発明の実施形態に係る第2のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図7A】本発明の実施形態に係る第1のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図7B】本発明の実施形態に係る第2のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る通信ユニットの構成を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る通信ユニットの構成を示す図である。
図11A】本発明の実施形態に係る第1のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図11B】本発明の実施形態に係る第2のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図12A】本発明の実施形態に係る第1のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図12B】本発明の実施形態に係る第2のアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図13A】本発明の実施形態に係る通信ユニットの構成を示す図である。
図13B】本発明の実施形態に係る通信ユニットの構成を示す図である。
図13C】本発明の実施形態に係る通信ユニットの構成を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図15】本発明の実施形態に係る2つの通信ユニットの構成を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図17】本発明の実施形態に係る2つの通信ユニットの構成を示す図である。
図18A】本発明の実施形態に係るアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
図18B】本発明の実施形態に係るアンテナエレメントのパターンを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の構成を示す断面図である。半導体装置100は、WL-CSP(wafer-level chip size package)の形態を有する。半導体装置100は、通信回路21を有する半導体チップ101と、半導体チップ101の第1の面S1を覆う第1の再配線層102に形成され且つ通信回路21に接続された第1のアンテナエレメントA1と、半導体チップ101の第1の面S1とは反対側の第2の面S2を覆う第2の再配線層103に形成され且つ通信回路21に接続された第2のアンテナエレメントA2と、を含む。
【0014】
半導体チップ101は、例えばシリコンで構成される半導体基板20、SiO等の絶縁体で構成される絶縁膜23、ビア24a、24b、26、および電極パッド25a、25b、27を含んで構成されている。半導体基板20の回路形成面には、半導体装置100の外部に設けられた通信装置150(図2参照)と無線通信を行う通信回路21が設けられている。なお、通信回路21は、送信および受信の少なくとも一方の機能を有する。また、半導体基板20の回路形成面には、通信回路21以外の回路として、例えば電源回路22が設けられている。電極パッド25aおよび25bは、それぞれ、ビア24aおよび24bを介して通信回路21に接続されている。電極パッド27は、ビア26を介して電源回路22に接続されている。
【0015】
半導体チップ101の第2の面S2は、ポリイミドやPBO(ポリベンゾオキサゾール)等の絶縁体で構成される絶縁膜50で覆われている。絶縁膜50の表面には、第2の再配線層102における再配線によって形成された第2のアンテナエレメントA2および回路配線51が設けられている。第2のアンテナエレメントA2は、電極パッド25bおよびビア24bを介して通信回路21に接続されている。回路配線51は、電極パッド27およびビア26を介して電源回路22に接続されている。
【0016】
第2の再配線層103の表面は、例えば感光性樹脂などの絶縁体で構成される封止膜60で覆われている。端子パッド61は、封止膜60に形成された開口部において露出した回路配線51に接続されている。端子パッド61の表面には、半田ボールによって構成される外部接続端子70が設けられている。
【0017】
半導体チップ101には、第1の面S1から電極パッド25aに達する貫通電極32が設けられている。貫通電極32と半導体基板20とは、これらの間に設けられたSiO等の絶縁体で構成される絶縁膜31によって絶縁されている。絶縁膜31は、半導体チップ101の第1の面S1の全体も覆っている。
【0018】
絶縁膜31の表面には、第1の再配線層102における再配線によって形成された第1のアンテナエレメントA1が設けられている。第1のアンテナエレメントA1は、貫通電極32に接続されている。すなわち、第1のアンテナエレメントA1は、貫通電極32、電極パッド25aおよびビア24aを介して通信回路21に接続されている。第1のアンテナエレメントA1、絶縁膜31および貫通電極32は、エポキシ樹脂等で構成される封止膜40で覆われている。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る通信システム200の構成を示す図である。通信回路21は、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2を通信用のアンテナとして用いて、半導体装置100の外部に設けられた通信装置150と、無線通信を行う。
【0020】
図3Aは、第1の再配線層102に形成された第1のアンテナエレメントA1のパターンを模式的に示す斜視図である。図3Bは、第2の再配線層103に形成された第2のアンテナエレメントA2のパターンを模式的に示す斜視図である。
【0021】
図3Aに示すように第1のアンテナエレメントA1は、半導体チップ101の辺と平行なY方向に沿って再配線を蛇行往復させた1本の線状パターンを有する。第1のアンテナエレメントA1のパターンは、第1の再配線層102に形成される再配線のパターニングによって形成される。なお、アンテナエレメントA1の配線長は、無線通信に使用される電波の波長等に応じて適宜定められる。
【0022】
一方、図3Bに示すように第2のアンテナエレメントA2は、半導体チップ101の第2の面S2の所定範囲を塗りつぶした島状パターン(ベタパターン)を有する。第2のアンテナエレメントA2のパターンは、第2の再配線層103に形成される再配線のパターニングによって形成される。なお、第2のアンテナエレメントA2の島状パターンの配置、形状および範囲は、電波の放射パターンや放射効率の設計目標などに応じて適宜定められる。
【0023】
本実施形態に係る半導体装置100は、典型的には、第2のアンテナエレメントA2に接地電位を印加して使用する。図4は、第2のアンテナエレメントA2に接地電位を印加した場合における、通信回路21、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2を含む通信ユニット210の構成を示す図である。第2のアンテナエレメントA2に接地電位を印加することで、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2によりモノポールアンテナが構成される。すなわち、第1のアンテナエレメントA1は、モノポールアンテナのアンテナ線として機能し、第2のアンテナエレメントA2は、モノポールアンテナの接地面として機能する。第2のアンテナエレメントA2への接地電位の印加は、例えば、外部接続端子70と同様の半田ボールを用いた外部接続端子を介して行ってもよい。
【0024】
以下に、半導体装置100の製造方法について説明する。図5A図5Lは、本発明の実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を示す断面図である。
【0025】
はじめに、公知の半導体製造プロセスを用いて、半導体基板20に、通信回路21、電源回路22および必要に応じてその他の回路を形成する。続いて、公知のCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、半導体基板20の回路形成面にSiO等の絶縁体で構成される絶縁膜23を形成する。続いて、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて絶縁膜23の所定位置にコンタクトホールを形成する。続いて、公知のスパッタ法を用いてAl等の導体で構成される導体膜を絶縁膜23の表面に形成する。これにより、絶縁膜23に形成されたコンタクトホールに導体が埋め込まれ、通信回路21に接続されたビア24a、24bおよび電源回路22に接続されたビア26が形成される。続いて、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて導体膜をパターニングすることで、ビア24aに接続された電極パッド25a、ビア24bに接続された電極パッド25b、およびビア26に接続された電極パッド27を形成する(図5A)。
【0026】
次に、上記の工程を経ることによって得られた半導体チップ101の電極パッド25a、25bおよび27の形成面である第2の面S2に接着剤(図示せず)を介して支持基板80を貼り付ける(図5B)。
【0027】
次に、公知のエッチング技術を用いて、半導体チップ101の第1の面S1から半導体基板20および絶縁膜23を貫通して電極パッド25aに達する貫通孔20a形成する(図5C)。
【0028】
次に、公知のCVD法を用いて、半導体チップ101の第1の面S1上にSiO等の絶縁体で構成される絶縁膜31を形成する。これにより、貫通孔20aの側面および底面も絶縁膜31で覆われる。絶縁膜31の貫通孔20aの底面を覆う部分は、その後のエッチングによって除去される。これにより、貫通孔20aの底面において電極パッド25aが露出する(図5D)。
【0029】
次に、公知のめっき法を用いて絶縁膜31の表面を覆うと共に貫通孔20aの側面および底面を覆うCu等の導体で構成される導体膜を形成する。この導体膜は、第1の再配線層102における再配線を構成する。続いて、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて導体膜をパターニングする。これにより、電極パッド25aに接続された貫通電極32が形成されると共に、第1の再配線層102に第1のアンテナエレメントA1が形成される(図5E)。第1のアンテナエレメントA1は、図3Aに示すような線状パターンとなるようにパターニングされる。
【0030】
次に、半導体チップ101の第1の面S1側を覆うエポキシ樹脂等で構成される封止膜40を形成する。第1のアンテナエレメントA1、貫通電極32は、封止膜40によって覆われ、貫通孔20aは、封止膜40によって埋められる(図5F)。
【0031】
次に、支持基板80を剥離して半導体チップ101の第2の面S2を表出させる(図5G)。
【0032】
次に、半導体チップ101の第2の面S2上にポリイミドやPBO(ポリベンゾオキサゾール)等の樹脂を塗布し、その後、この樹脂を硬化させることで、絶縁膜50を形成する。続いて、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて絶縁膜50に開口部50aおよび50bを形成する。開口部50aにおいて電源回路22に接続された電極パッド27が露出し、開口部50bにおいて通信回路21に接続された電極パッド25bが露出する(図5H)。
【0033】
次に、公知のめっき法を用いて絶縁膜50の表面を覆うCu等の導体で構成される導体膜を形成する。この導体膜は、第2の再配線層103における再配線を構成する。続いて、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて導体膜をパターニングする。これにより、電極パッド27に接続された回路配線51が形成されると共に、電極パッド25bに接続された第2のアンテナエレメントA2が形成される(図5I)。第2のアンテナエレメントA2は、図3Bに示すような島状パターンとなるようにパターニングされる。
【0034】
次に、第2の再配線層103の表面に感光性樹脂を塗布し、その後、この感光性樹脂を硬化させることで、封止膜60を形成する。続いて、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて封止膜60に開口部60aを形成する。開口部60aにおいて回路配線51が部分的に露出する(図5J)。
【0035】
次に、公知のめっき法を用いて封止膜60の表面を覆うCu等の導体で構成される導体膜を形成する。続いて、公知のフォトリソグラフィー技術を用いてこの導体膜をパターニングすることで、回路配線51に接続された端子パッド61を形成する(図5K)。
【0036】
次に、端子パッド61上に半田ボールで構成される外部接続端子70を形成する(図5L)。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態に係る半導体装置100によれば、半導体チップ101の第1の面S1を覆う第1の再配線層102に第1のアンテナエレメントA1が形成され、半導体チップ101の第2の面S2を覆う第2の再配線層102に第2のアンテナエレメントA2が形成される。このように、半導体チップ101の両面に形成された再配線層の各々にアンテナエレメントを形成することで、従来よりも高性能なアンテナを構成することが可能である。
【0038】
また、本実施形態に係る半導体装置100によれば、島状パターンを有する第2のアンテナエレメントA2に接地電位を印加することで、第2のアンテナエレメントA2をモノポールアンテナの接地面として機能させることができる。また、半導体装置100を搭載するリードフレーム等の基体をモノポールアンテナの接地面とする場合には、リードフレーム等の基体に第2のアンテナエレメントA2を電気的に接続することで、接地面の面積を拡大することができ、無線通信に用いられる電波の放射効率を向上させる効果が期待できる。また、半導体装置内に設けられる再配線によって接地面を構成することにより、半導体装置内に接地面を有していない場合と比較して電波の送受信状態の安定性を高めることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、第1の再配線層に形成された第1のアンテナエレメントA1をモノポールアンテナにおけるアンテナ線として用い、第2の再配線層に形成された第2のアンテナエレメントA2をモノポールアンテナの接地面として使用する場合を例示した。しかしながら、第1のアンテナエレメントA1を島状パターンとしてモノポールアンテナの接地面として機能させ、第2のアンテナエレメントA2を線状パターンとしてモノポールアンテナのアンテナ線として機能させてもよい。
【0040】
[第2の実施形態]
図6Aは、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置における第1の再配線層102に形成された第1のアンテナエレメントA1のパターンを模式的に示す斜視図である。図6Bは、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置における第2の再配線層103に形成された第2のアンテナエレメントA2のパターンを模式的に示す斜視図である。
【0041】
第2の実施形態に係る半導体装置は、第2のアンテナエレメントA2のパターンが上記第1の実施形態に係る第2のアンテナエレメントA2のパターンと異なる。第2の実施形態に係るアンテナエレメントA2は、図6Bに示すように、X方向に伸びる複数の配線とY方向に伸びる複数の配線とが交差した格子状のパターン(メッシュ状パターン)を有する。各格子の一辺の長さは、無線通信に使用される電波の波長よりも十分に短いものとされている。このように、各格子の一辺の長さを電波の波長よりも十分に短くすることで、第2のアンテナエレメントA2を、島状パターンとした場合と同様、モノポールアンテナの接地面として機能させることができる。
【0042】
第2のアンテナエレメントA2のパターンを格子状パターンとすることで、島状パターンとする場合と比較して、第2のアンテナエレメントA2の材料となる導体(例えばCu)の使用量を低減することができ、コストダウンを図ることができる。
【0043】
[第3の実施形態]
図7Aは、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置における再配線層102に形成された第1のアンテナエレメントA1のパターンを模式的に示す斜視図である。図7Bは、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置における第2の再配線層103に形成された第2のアンテナエレメントA2のパターンを模式的に示す斜視図である。図8は、通信回路21、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2を含む本発明の第3の実施形態に係る通信ユニット210の構成を示す図である。
【0044】
上記第1および第2の実施形態に係る半導体装置においては、第2のアンテナエレメントA2がモノポールアンテナの接地面として機能するものであった。これに対して、第3の実施形態に係る半導体装置においては、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2によってダイポールアンテナが構成される。
【0045】
図7Aに示すように、第1のアンテナエレメントA1は、半導体チップ101の辺と平行なY方向に沿って再配線を蛇行往復させた1本の線状パターンを有する。図7Bに示すように、第2のアンテナエレメントA2は、Y方向と直交するX方向に沿って再配線を蛇行往復させた1本の線状パターンを有する。
【0046】
このように、第1のアンテナエレメントA1と第2のアンテナエレメントA2とで、アンテナ線の伸長方向を変えることで、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2は、互いに異なる指向性を備えることができる。これにより、第1のアンテナエレメントA1は、第2のアンテナエレメントA2のアンテナ利得の低い方向を補い、第2のアンテナエレメントA2は、第1のアンテナエレメントA1のアンテナ利得の低い方向を補うように作用する。
【0047】
なお、本実施形態では、第1のアンテナエレメントA1と第2のアンテナエレメントA2とで、アンテナ線の伸長方向を変えることで両者において指向性を異ならせる場合を例示したが、第1のアンテナエレメントA1と第2のアンテナエレメントA2とでアンテナ線の長さ、形状、伸長方向および配置の少なくとも1つを変えることで、両者において指向性を含むアンテナの放射特性を異ならせるように構成してもよい。また、第1のアンテナエレメントA1と第2のアンテナエレメントA2とを、同じパターンで形成し、両者において同等の指向性を持たせるように構成してもよい。
【0048】
[第4の実施形態]
図9は、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置100Aの構成を示す断面図である。半導体装置100Aにおいて、第1の再配線層102に形成された第1のアンテナエレメントA1および第2の再配線層103に形成された第2のアンテナエレメントA2の双方が電極パッド25aに接続されている。すなわち、第1のアンテナエレメントA1と第2のアンテナエレメントA2とが相互に接続され、第1のアンテナエレメントA1と第2のアンテナエレメントA2とによって一体的な単一のアンテナエレメントが構成されている。
【0049】
図10は、通信回路21、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2を含む本発明の第4の実施形態に係る通信ユニット210の構成を示す図である。相互に接続された第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2は、モノポールアンテナのアンテナ線として機能する。なお、半導体装置100Aを搭載するリードフレーム等の基体をモノポールアンテナの接地面として使用してもよい。
【0050】
図11Aは、半導体装置100Aにおける第1の再配線層に形成された第1のアンテナエレメントA1のパターンを模式的に示す斜視図である。図11Bは、半導体装置100Aにおける第2の再配線層103に形成された第2のアンテナエレメントA2のパターンを模式的に示す斜視図である。第1のアンテナエレメントA1および第2アンテナエレメントA2は、それぞれ半導体チップ101の辺と平行なY方向に沿って再配線を蛇行往復させた線状パターンを有する。第1のアンテナエレメントA1の終端部e1は、貫通電極32を介して第2のアンテナエレメントA2の終端部e2に接続されている。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置100Aによれば、第1のアンテナエレメントA1と第2のアンテナエレメントA2とが相互に接続され、第1のアンテナエレメントA1と第2のアンテナエレメントA2とによって一体的な単一のアンテナエレメントが構成される。これにより、半導体チップの一方の面を覆う再配線層に形成されたアンテナエレメントのみでは実現することが困難なアンテナ性能をも実現することが可能となる。特に、第1のアンテナエレメントA1と第2のアンテナエレメントA2とを接続することで、より長い線長のアンテナ線を構成することができる。
【0052】
図12Aおよび図12Bは、それぞれ、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2のパターンの他の例を模式的に示す斜視図である。図12Aおよび図12Bに示すように、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2は、それぞれ半導体チップ101の各辺に沿った渦巻き状のパターンを有していてもよい。第1のアンテナエレメントA1の終端部e1は、貫通電極32を介して第2のアンテナエレメントA2の終端部e2に接続されている。
【0053】
上記した本発明の第1~第4の実施形態に係る半導体装置のアンテナエレメントの構成は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、図3Aに示す線状パターンを有する第1のアンテナエレメントA1と図3Bに示す島状パターンを有する第2のアンテナエレメントA2とを、貫通電極を介して相互に接続してもよい。同様に、図6Aに示す線状パターンを有する第1のアンテナエレメントA1と図6Bに示す格子状パターンを有する第2のアンテナエレメントA2とを、貫通電極を介して相互に接続してもよい。また、図3A図7A図7Bに示される蛇行パターンを、図12Aおよび図12Bに示されるような渦巻き状パターンに変更することも可能である。また、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2のパターンは、上記した蛇行パターン、渦巻き状パターン、島状パターン、格子状パターンに限らず任意のパターンで構成することも可能である。また、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2は、積層された複数の再配線層の再配線で構成されていてもよい。例えば、第1のアンテナエレメントA1は、半導体チップの第1の面S1を覆う1層目の再配線と、2層目の再配線を含んで構成されていてもよい。第2のアンテナエレメントA2についても同様である。
【0054】
[第5の実施形態]
図13A図13Bおよび図13Cは、それぞれ、本発明の第5の実施形態に係る通信ユニット210の構成を示す図である。通信ユニット210は、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2と、通信回路21との間に設けられた整合回路300を更に含み得る。第1のアンテナエレメントA1は第1の再配線層102に形成され、第2のアンテナエレメントA2は第2の再配線層103に形成されている。
【0055】
整合回路300は、例えば、キャパシタおよびインダクタ等の回路素子を含んで構成され、通信回路21と、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2との間のインピーダンスを整合させる役割を担う。整合回路300を構成する回路素子は、例えば、半導体チップ101とは別体のディスクリート部品で構成されていてもよい。この場合、整合回路300を構成するディスクリート部品を半導体チップ101の第1の面S1側または第2の面S2側に搭載し、第1のアンテナエレメントA1および第2のアンテナエレメントA2の少なくとも一方に整合回路300を構成するディスクリート部品を接続させる形態としてもよい。
【0056】
[第6の実施形態]
図14は、本発明の第6の実施形態に係る半導体装置100Bの構成を示す断面図である。図15は、半導体装置100Bに備えられた2つの通信ユニット210Aおよび210Bの構成を示す図である。
【0057】
通信ユニット210Aは、半導体チップ101に形成された通信回路21Aと、半導体チップ101の第1の面S1を覆う第1の再配線層102に形成されたアンテナエレメントA1-1およびA1-2と、を含んで構成されている。アンテナエレメントA1-1およびA1-2は、例えば図3Aに示すような線状パターンを有し、これらによってダイポールアンテナが構成されている。図14に示すように、アンテナエレメントA1-1は、貫通電極32-1、電極パッド25aおよびビア24aを介して通信回路21Aに接続され、アンテナエレメントA1-2は、貫通電極32-2、電極パッド25bおよびビア24bを介して通信回路21Aに接続されている。
【0058】
一方、通信ユニット210Bは、半導体チップ101に形成された通信回路21Bと、半導体チップ101の第2の面S2を覆う第2の再配線層103に形成されたアンテナエレメントA2-1およびA2-2と、を含んで構成されている。アンテナエレメントA2-1およびA2-2は、例えば図3Aに示すような線状パターンを有し、これらによってダイポールアンテナが構成されている。図14に示すように、アンテナエレメントA2-1は、電極パッド25cおよびビア24cを介して通信回路21Bに接続され、アンテナエレメントA2-2は、電極パッド25dおよびビア24dを介して通信回路21Bに接続されている。
【0059】
なお、通信ユニット210Aおよび210Bの各々において、一方のアンテナエレメントが第1の再配線層102に形成された再配線で構成され、他方のアンテナエレメントが第2の再配線層103に形成された再配線で構成されていてもよい。
【0060】
このように、半導体装置100Bが複数の通信ユニットを備えることで、ダイバーシティアンテナを構成することも可能である。なお、半導体装置100Bが2つの通信ユニット210Aおよび210Bを備える場合を例示したが、半導体装置100Bは、3つ以上の通信ユニットを備えていてもよい。なお、半導体装置100Bにおいて、半導体チップ101には、図1に示される電源回路22や電極パッド27が設けられていてもよい。
【0061】
[第7の実施形態]
図16は、本発明の第7の実施形態に係る半導体装置100Cの構成を示す断面図である。図17は、半導体装置100Bに備えられた2つの通信ユニット210Aおよび210Bの構成を示す図である。図18Aは、半導体装置100Cにおいて、第1の再配線層102に形成されるアンテナエレメントA1のパターンを模式的に示す斜視図である。図18Bは、半導体装置100Cにおいて、第2の再配線層103に形成された第2のアンテナエレメントA2-1、A2-2およびA2-3のパターンを模式的に示す斜視図である。
【0062】
通信ユニット210Aは、半導体チップ101に形成された通信回路21Aと、半導体チップ101の第1の面S1を覆う第1の再配線層102に形成されたアンテナエレメントA1と、半導体チップ101の第2の面S2を覆う第2の再配線層103に形成され且つ接地電位が印加されるアンテナエレメントA2-1を含んで構成されている。アンテナエレメントA1は、例えば図18Aに示すような線状パターンを有し、アンテナエレメントA2-1は、例えば図18Bに示すような島状パターンを有し、これらによってモノポールアンテナが構成されている。なお、アンテナエレメントA2-1は、図6Bに示すような格子状パターンを有していてもよい。図16に示すように、アンテナエレメントA1は、貫通電極32、電極パッド25aおよびビア24aを介して通信回路21Aに接続され、アンテナエレメントA2-1は、電極パッド25bおよびビア24bを介して通信回路21Aに接続されている。
【0063】
一方、通信ユニット210Bは、半導体チップ101に形成された通信回路21Bと、半導体チップ101の第2の面S2を覆う第2の再配線層103に形成されたアンテナエレメントA2-2と、半導体チップ101の第2の面S2を覆う第2の再配線層103に形成され且つ接地電位が印加されるアンテナエレメントA2-3を含んで構成されている。アンテナエレメントA2-2は、例えば図18Bに示すような線状パターンを有し、アンテナエレメントA2-3は、例えば図18Bに示すような島状パターンを有し、これらによってモノポールアンテナが構成されている。なお、アンテナエレメントA2-3は、図6Bに示すような格子状パターンを有していてもよい。図16に示すように、アンテナエレメントA2-2は、電極パッド25dおよびビア24dを介して通信回路21Bに接続され、アンテナエレメントA2-3は、電極パッド25bおよびビア24cを介して通信回路21Bに接続されている。
【0064】
接地電位が印加されるアンテナエレメントA2-1およびA2-3は、図16に示すように、第2の再配線層103に形成された共通の再配線で構成されていてもよい。また、第2の通信ユニット210Bにおいて、モノポールアンテナのアンテナ線を構成するアンテナエレメントA2-2を第1の再配線層102に形成された再配線で構成してもよい。
【0065】
このように、半導体装置100Cが複数の通信ユニットを備えることで、ダイバーシティアンテナを構成することも可能である。なお、半導体装置100Cが2つの通信ユニット210Aおよび210Bを備える場合を例示したが、半導体装置100Cは、3つ以上の通信ユニットを備えていてもよい。また、半導体装置100Cにおいて、半導体チップ101には、図1に示される電源回路22や電極パッド27が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
20 半導体基板
21、21A、21B 通信回路
32 貫通電極
100、100A、100B、100C 半導体装置
101 半導体チップ
102 第1の再配線層
103 第2の再配線層
150 通信装置
200 通信システム
210、210A、210B 通信ユニット
300 整合回路
A1 第1のアンテナエレメント
A2 第2のアンテナエレメント
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B