(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】反応性乳化剤の保存方法
(51)【国際特許分類】
C09K 23/04 20220101AFI20230731BHJP
C08F 16/30 20060101ALI20230731BHJP
C09K 23/42 20220101ALI20230731BHJP
C08F 2/24 20060101ALI20230731BHJP
C08G 65/28 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C09K23/04
C08F16/30
C09K23/42
C08F2/24
C08G65/28
(21)【出願番号】P 2023525549
(86)(22)【出願日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2023004153
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2022018343
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】塚原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 聡
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/030717(WO,A1)
【文献】国際公開第02/057320(WO,A1)
【文献】特開2019-072998(JP,A)
【文献】特開2009-298732(JP,A)
【文献】特開平10-120712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00- 23/56
C08F 2/00- 2/60
C08F 6/00-246/00
C08G 65/00- 67/04
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
C09D 11/00- 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される反応性乳化剤を、水と混合した後に静置することを含む、前記反応性乳化剤の保存方法であって、前記反応性乳化剤及び水を含む反応性乳化剤含有組成物中の前記反応性乳化剤の含有量が60~98質量%である、保存方法。
【化1】
(式中、Rは炭素原子数8~20の炭化水素基を表し、nは5~50の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)
【請求項2】
反応性乳化剤含有組成物中の、一般式(1)で表される反応性乳化剤の含有量と、水の含有量の質量比が60:40~98:2である、請求項
1に記載の保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH安定性及び防腐性に優れる反応性乳化剤含有組成物、並びに、優れたpH安定性及び防腐性を維持するための反応性乳化剤の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、接着剤、粘着剤、コーティング剤、インク、セメント、モルタル、カーワックス等に、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の樹脂エマルションが使用される。その樹脂エマルションの各種特性を向上させるために、原料モノマーを乳化重合して樹脂エマルションを製造する際に反応性乳化剤を用いる方法があり、これまでに様々な反応性乳化剤が提案されてきた。
【0003】
反応性乳化剤としては、例えば、反応性基として(メタ)アリルエーテル基を有する各種反応性乳化剤(特許文献1、2)及び、反応性基として(メタ)アクリル酸エステル基を有する各種反応性乳化剤(特許文献3、4)が知られている。また、アリルエーテル基及びスルホン基を有する反応性乳化剤も知られており(特許文献5~8)、各種樹脂エマルションを製造する際に広く用いられている。
【0004】
しかし、このような反応性乳化剤のうち、アリルエーテル基及びスルホン基を有する反応性乳化剤においては、化合物単体の状態又は特定濃度以外の水溶液とした状態で静置すると、pHの安定性及び/又は防腐性に劣るために、長期保存に伴いpHが変化したり、組成物中で微生物が増殖したりするなど、長期保管によって反応性乳化剤としての特性が劣化するおそれがあることわかった。そこで、このような懸念点を解消するために、pH安定性及び防腐性に優れる、長期間安定的に保存が可能な反応性乳化剤含有組成物や、反応性乳化剤を安定的に保存する方法を提供することが必要となっている。
【0005】
【文献】特開昭63-054927号公報
【文献】特開昭63-319035号公報
【文献】特開昭63-077530号公報
【文献】特開昭63-185436号公報
【文献】特開2002-301353号公報
【文献】特開2006-075808号公報
【文献】国際公開第2009/133827号
【文献】特開平05-098190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、優れたpH安定性及び防腐性を維持するための反応性乳化剤の保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の反応性乳化剤と水とを特定の比率で含有する特定の反応性乳化剤含有組成物が、pHの安定性及び防腐性に優れ、よって特定の反応性乳化剤を特性の劣化の懸念なく長期間安定的に保存可能であることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表される反応性乳化剤を、水と混合した後に静置することを含む、反応性乳化剤の保存方法であって、反応性乳化剤及び水を含む反応性乳化剤含有組成物中の反応性乳化剤の含有量が60~98質量%である、保存方法である。
【0008】
【0009】
(式中、Rは炭素原子数8~20の炭化水素基を表し、nは5~50の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明による反応性乳化剤含有組成物は、pH安定性及び防腐性に優れる。よって特定の反応性乳化剤を特性の劣化の懸念なく長期間安定的に保存可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の反応性乳化剤含有組成物に含まれる反応性乳化剤は、以下の一般式(1)で表される。
【0012】
【0013】
(式中、Rは炭素原子数8~20の炭化水素基を表し、nは5~50の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)
【0014】
一般式(1)におけるRは、炭素原子数8~20の炭化水素基を表し、このような基としては例えば、オクチル基、分岐オクチル基、ノニル基、分岐ノニル基、デシル基、分岐デシル基、ウンデシル基、分岐ウンデシル基、ドデシル基、分岐ドデシル基、トリデシル基、分岐トリデシル基、テトラデシル基、分岐テトラデシル基、ペンタデシル基、分岐ペンタデシル基、ヘキサデシル基、分岐ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、分岐ヘプタデシル基、ステアリル基、分岐ステアリル基、エイコシル基、分岐エイコシル基等の直鎖又は分岐アルキル基;オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基、リノール基等の直鎖又は分岐アルケニル基;ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、ノニルフェニル基等の置換若しくは非置換アリール基等が挙げられる。これらの中でも、本発明の構成とすることによりpH安定性及び防腐性により優れる反応性乳化剤含有組成物が得られる観点からは、一般式(1)におけるRは、炭素原子数10~16の炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数10~16の分岐アルキル基又は炭素原子数12~16のアリール基であることがより好ましく、炭素原子数11~14の分岐アルキル基又は炭素原子数14~16のアリール基であることが更により好ましい。具体的にRとして、イソウンデシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ノニルフェニル基が好ましい。
【0015】
一般式(1)におけるnは、5~50の数を表す。これらの中でも、本発明の構成とすることによりpH安定性及び防腐性により優れる反応性乳化剤含有組成物が得られる観点からは、一般式(1)におけるnは、10~40であることが好ましく、10~30であることがより好ましい。
また、nの平均値は、8~45が好ましく、10~40がより好ましく、10~30が更に好ましい。
【0016】
一般式(1)におけるMは、水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表し、アルカリ金属原子としては例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。これらの中でも、本発明の構成とすることによりpH安定性及び防腐性により優れる反応性乳化剤含有組成物が得られる観点からは、一般式(1)におけるMは、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、又はアンモニウム基であることが好ましく、アンモニウム基であることがより好ましい。
【0017】
一般式(1)で表される化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができるが、例えば、特開2002-301353号公報に記載の方法や、特開2006-075808号公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、例えば、アリル基を有するグリシジルエーテルと炭素原子数8~20の脂肪族アルコールとの反応物に、エチレンオキサイドを付加した後、スルファミン酸、硫酸、無水硫酸、クロロスルホン酸等により硫酸エステル化し、必要に応じてアルカリ金属の水酸化物やアンモニア等により中和することで製造することができる。
【0018】
アリル基を有するグリシジルエーテルと炭素原子数8~20の脂肪族アルコールとを反応させる際の反応条件は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、例えば、室温~150℃、圧力0.01~1MPaの環境下で、必要に応じて第3級アミン、第4級アンモニウム塩、三フッ化ホウ素又はそのエーテル錯塩、塩化アルミニウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の触媒を用いて反応させる方法等を用いることができる。
【0019】
アリル基を有するグリシジルエーテルと炭素原子数8~20の脂肪族アルコールとの反応物にエチレンオキシドを付加させる際の反応条件は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、例えば、室温~150℃、圧力0.01~1MPaの環境下で、必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、三フッ化ホウ素等を触媒として用いて反応させる方法等を用いることができる。
【0020】
上記のスルファミン酸、硫酸、無水硫酸、クロロスルホン酸等により硫酸エステル化する際の反応条件は特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、例えば、室温~150℃、常圧~1MPaの環境下で、1~10時間程度反応させる方法等を用いることができる。
【0021】
また、一般式(1)で表される化合物の製造方法においては、必要に応じて、水やメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の有機溶媒を用いて製造してもよい。
【0022】
本発明の反応性乳化剤含有組成物は、反応性乳化剤として、一般式(1)のRが異なる炭化水素基である複数種の化合物の混合物であってもよく、Rが異なる炭化水素基である2種の化合物を含む混合物であり得る。一般式(1)のRが炭化水素基A又は炭化水素基Bを含むの2種類の化合物のみを反応性乳化剤として含む混合物である場合、その割合が、Rが炭化水素基Aである化合物1モルに対し、炭化水素基Bである化合物が0.1~10モルであることが好ましく、0.3~5モルであることがより好ましく、0.5~3モルであることが更に好ましく、0.8~1.5モルであることがまた更に好ましく、0.8~1.2モルであることが最も好ましい。例えば、前記割合は、一般式(1)のRが炭化水素基Aである化合物1モルに対し、Rが炭化水素基Bである化合物が1モルであることが好ましい。
【0023】
また、本発明の一実施態様では、反応性乳化剤として、2種類の一般式(1)で表される化合物のみを含む混合物が用いられる場合、一方の化合物のRはイソウンデシル基であり、他方の化合物のRはイソトリデシル基であり得る。また、本発明の別の実施態様として、一方の化合物のRはドデシル基であり、他方の化合物のRはテトラデシル基であり得る。
【0024】
本発明の反応性乳化剤含有組成物は、上述した一般式(1)で表される反応性乳化剤と、水とを含有する反応性乳化剤含有組成物であって、反応性乳化剤含有組成物中の一般式(1)で表される反応性乳化剤の含有量が60~98質量%である、反応性乳化剤含有組成物である。本発明に用いる水としては特に限定されず、水道水、イオン交換水、蒸留水、天然水、純水等を用いることができる。本発明においては、pH安定性及び防腐性により優れる反応性乳化剤含有組成物が得られる観点からは、反応性乳化剤含有組成物中の一般式(1)で表される反応性乳化剤の含有量が、70~98質量%であることが好ましく、80~96質量%であることがより好ましく、85~96質量%であることが更により好ましい。
なお、反応性乳化剤含有組成物中の一般式(1)で表される反応性乳化剤の含有量は、反応性乳化剤含有組成物全質量に対する一般式(1)で表される反応性乳化剤の割合(パーセンテージ)として表される。
【0025】
本発明において、反応性乳化剤含有組成物中の水の含有量は、目的に応じて適宜調整することができるが、pH安定性及び防腐性により優れる反応性乳化剤含有組成物が得られる観点からは、反応性乳化剤含有組成物中の水の含有量が、2~40質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、4~20質量%であることが更により好ましく、4~15質量%であることが特に好ましい。
なお、反応性乳化剤含有組成物中の一般式(1)で表される反応性乳化剤の含有量は、反応性乳化剤含有組成物全質量に対する水の割合(パーセンテージ)として表される。
【0026】
本発明において、反応性乳化剤含有組成物中の、一般式(1)で表される反応性乳化剤の含有量と水の含有量の比は、目的に応じて適宜調整することができるが、pH安定性及び防腐性により優れる反応性乳化剤含有組成物が得られる観点からは、反応性乳化剤含有組成物中の、一般式(1)で表される反応性乳化剤の含有量と水の含有量の質量比が60:40~98:2であることが好ましく、70:30~98:2であることがより好ましく、80:20~96:4であることが更により好ましく、85:15~96:4であることが特に好ましい。
【0027】
本発明の反応性乳化剤含有組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の界面活性剤(一般式(1)で表される反応性乳化剤を除く)、有機溶媒、可塑剤、防腐剤、増粘剤、分散剤等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル塩、硫化オレフィン塩、高級アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、グリセライド硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アルカノールアミドのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、N-アシル-N-メチルタウリンの塩、アシルオキシエタンスルホン酸塩、アルコキシエタンスルホン酸、N-アシル-N-カルボキシエチルタウリン又はその塩、アルキル又はアルケニルアミノカルボキシメチル硫酸塩等が挙げられる。
【0028】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グルセリン脂肪酸エステル、ポリグルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンエチレンジアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンロジンエステル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合物等の2種以上のアルキレンオキシドの共重合物等が挙げられる。
【0029】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルベタイン、アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤;N-脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、N-脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩等のイミダゾリウムベタイン型両性界面活性剤;脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアミドプロピルベタイン型両性界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルアミノジプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0030】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、アルキル(アルケニル)アミン塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0031】
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート等のエーテルエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;テルペン系炭化水素油、パラフィン系溶剤、カルビトール系溶剤、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0032】
可塑剤としては、例えば、アジピン酸エステル類、フマル酸エステル類、セバシン酸エステル類、クエン酸エステル類、マレイン酸エステル類、リン酸エステル類、エポキシ脂肪酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、スルホンアミド類、脂肪酸アミド類、ポリエステル類、塩素化パラフィン類等が挙げられる。
【0033】
防腐剤としては、例えば、パラベン、メチルパラベン、ベンゾエート、ベンジルアルコール、イソチアゾロン、イソチアゾリノン、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、アルカンジオール類、アルキルグリセリルエーテル類、トリアジン系化合物、安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸、サリチル酸塩、第四級アンモニウム塩系化合物、ハロゲン化化合物、環状有機窒素化合物、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、チメロサール、ブロノポール、チアベンダゾール、ジンクピリチオン、カルベンダジム、ピリジンオキサイドチオールナトリウム塩等が挙げられる。本発明においては、反応性乳化剤含有組成物が優れた防腐性を有するため、防腐剤を配合せずとも長期安定的に保存が可能なこと、及び、使用時又は使用後の安全性等の観点から、防腐剤を含有しないことが好ましい。
【0034】
増粘剤としては、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、ガッチガム、カラヤガム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸・マレイン酸コポリマー、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
【0035】
分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体、無水マレイン酸-スチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体、無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸-アクリル酸エステル共重合体、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0036】
本発明においては、pH安定性及び防腐性に優れ、長期間安定的に保存が可能な反応性乳化剤含有組成物が得られる観点から、上述したその他の成分の含有量が、合計で、反応性乳化剤含有組成物全質量に対して0~20質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0~3質量%であることが更により好ましく、その他の成分を含有しない(即ち、反応性乳化剤含有組成物が、一般式(1)で表される反応性乳化剤と水からなる)ことが特に好ましい。
【0037】
本発明の反応性乳化剤含有組成物は、反応性乳化剤が用いられてきた各種用途に用いることができ、例えば、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂用改質(撥水性向上、親水性調節、相溶性向上、帯電防止性向上、防曇性向上、耐水性向上、接着性向上、染色性向上、造膜性向上、耐候性向上、耐ブロッキング性向上等)剤、繊維加工助剤、繊維防汚加工剤等として用いることができる。また、本発明の反応性乳化剤含有組成物を乳化重合用乳化剤として用いる場合の、その具体的な製品分野も限定されず、例えば、塗料、接着剤、粘着剤、インク、フィルム、コーティング剤、紙塗工剤、サイズ剤、シーラー等に使用するための乳化重合物を製造するための乳化重合用乳化剤として用いることができる。
【0038】
本発明の反応性乳化剤含有組成物を乳化重合用乳化剤として用いる場合の、乳化重合物の原料モノマーは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。原料モノマーとして、例えば、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、ブタジエン系モノマー、イソプレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー等が挙げられ、より具体的には、本発明の反応性乳化剤含有組成物は、アクリレート系エマルション、スチレン系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、SBR(スチレン/ブタジエン)エマルション、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)エマルション、BR(ブタジエン)エマルション、IR(イソプレン)エマルション、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)エマルション等の乳化重合物を製造するための乳化重合用乳化剤として用いることができる。
【0039】
アクリレート系エマルションとしては、例えば、2種以上の(メタ)アクリル酸(エステル)の組み合わせ、(メタ)アクリル酸(エステル)/スチレン、(メタ)アクリル酸(エステル)/酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸(エステル)/アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸(エステル)/ブタジエン、(メタ)アクリル酸(エステル)/塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アリルアミン、(メタ)アクリル酸(エステル)/ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アルキロールアミド、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N―ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N-ジエチルアミノエチルビニルエーテル、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0040】
スチレン系エマルションとしては、例えば、スチレン単独の他例えば、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/ブタジエン、スチレン/フマルニトリル、スチレン/マレインニトリル、スチレン/シアノアクリル酸エステル、スチレン/酢酸フェニルビニル、スチレン/クロロメチルスチレン、スチレン/ジクロロスチレン、スチレン/ビニルカルバゾール、スチレン/N,N-ジフェニルアクリルアミド、スチレン/メチルスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、スチレン/アクリロニトリル/メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール、スチレン/マレイン酸等が挙げられる。
【0041】
酢酸ビニル系エマルションとしては、例えば、酢酸ビニル単独の他、例えば、酢酸ビニル/スチレン、酢酸ビニル/塩化ビニル、酢酸ビニル/アクリロニトリル、酢酸ビニル/マレイン酸(エステル)、酢酸ビニル/フマル酸(エステル)、酢酸ビニル/エチレン、酢酸ビニル/プロピレン、酢酸ビニル/イソブチレン、酢酸ビニル/塩化ビニリデン、酢酸ビニル/シクロペンタジエン、酢酸ビニル/クロトン酸、酢酸ビニル/アクロレイン、酢酸ビニル/アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
本発明の反応性乳化剤含有組成物を各種用途に用いる際の、反応性乳化剤含有組成物の使用量は特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができるが、例えば、本発明の反応性乳化剤含有組成物を乳化重合用乳化剤として用いる場合、乳化重合物の原料モノマー100質量部に対する一般式(1)で表される反応性乳化剤の質量が、0.1~20質量部となる量で用いることが好ましく、0.2~10質量部となる量で用いることがより好ましく、0.5~8質量部となる量で用いることが更により好ましい。
【0043】
本発明の一般式(1)で表される反応性乳化剤の保存方法は、一般式(1)で表される反応性乳化剤を水と混合した後に静置することを含み、前記反応性乳化剤及び水を含む反応性乳化剤含有組成物中の前記反応性乳化剤の含有量が60~98質量%である、保存方法である。
【0044】
【0045】
(式中、Rは炭素原子数8~20の炭化水素基を表し、nは5~50の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)
【0046】
本発明に用いる一般式(1)で表される反応性乳化剤と水としては、上述した反応性乳化剤含有組成物に用いることができる反応性乳化剤と水を、それぞれ用いることができる。本発明における、一般式(1)で表される反応性乳化剤と水との混合方法は特に限定されず、例えば、常温~80℃で、スパーテルを用いて手動撹拌することにより混合する方法や、ロールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー等を用いて撹拌することにより混合する方法等を用いることができる。本発明においては、一般式(1)で表される反応性乳化剤を、反応性乳化剤を水と混合し、反応性乳化剤含有組成物全質量に対し反応性乳化剤の含有量が60~90質量%である反応性乳化剤含有組成物を調製した後にこれを静置することで、一般式(1)で表される反応性乳化剤を特性の劣化の懸念なく長期間安定的に保存することができる。
【0047】
本発明において、一般式(1)で表される反応性乳化剤を、反応性乳化剤の含有量が60~98質量%となる質量比で水と混合して反応性乳化剤含有組成物を調製した後に静置する際の、静置条件は特に限定されないが、例えば、0℃~60℃の冷蔵、室温、又は加温環境下、0~99%RHの湿度環境下で静置することにより、長期間(例えば1週間以上、好ましくは1か月以上)保存後でも、一般式(1)で表される反応性乳化剤を特性の劣化の懸念なく保存することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、%は特に記載が無い限り質量基準である。実施例及び比較例に使用した各成分を下記及び表1に示す。
【0049】
<反応性乳化剤>
反応性乳化剤1:一般式(1)において、nが10であり、Mがアンモニウム基であり、Rがイソウンデシル基である反応性乳化剤1aと、nが10であり、Mがアンモニウム基であり、Rがイソトリデシル基である反応性乳化剤1bとの混合物(1aと1bのモル比50:50)
反応性乳化剤2:一般式(1)において、nが20であり、Mがアンモニウム基であり、Rがイソウンデシル基である反応性乳化剤2aと、nが20であり、Mがアンモニウム基であり、Rがイソトリデシル基である反応性乳化剤2bとの混合物(2aと2bのモル比50:50)
反応性乳化剤3:一般式(1)において、nが30であり、Mがアンモニウム基であり、Rがイソウンデシル基である反応性乳化剤3aと、nが30であり、Mがアンモニウム基であり、Rがイソトリデシル基である反応性乳化剤3bとの混合物(3aと3bのモル比50:50)
反応性乳化剤4:一般式(1)において、nが10であり、Mがアンモニウム基であり、Rがノニルフェニル基である反応性乳化剤
反応性乳化剤5:一般式(1)において、nが10であり、Mがアンモニウム基であり、Rがドデシル基である反応性乳化剤5aと、nが10であり、Mがアンモニウム基であり、Rがテトラデシル基である反応性乳化剤5bとの混合物(5aと5bのモル比50:50)
反応性乳化剤6:一般式(1)において、nが10であり、Mがナトリウム原子であり、Rがイソウンデシル基である反応性乳化剤6aと、nが10であり、Mがナトリウム原子であり、Rがイソトリデシル基である反応性乳化剤6bとの混合物(6aと6bのモル比50:50)
なお、上記nの値は平均値である。
【0050】
[反応性乳化剤含有組成物の調製]
ポリプロピレン製ディスカップに、得られる反応性乳化剤含有組成物の質量が1000gとなるよう反応性乳化剤1~6をそれぞれ加えた後、ホモディスパー(プライミクス株式会社製 DH-25)で回転数500rpmで撹拌しながら蒸留水を滴下し、さらに30分撹拌することで、以下の表1~6に示す通りに実施例1~24、比較例1~36の反応性乳化剤含有組成物を調製した。なお、表1~6において、表中の%は質量%を表す。
【0051】
[pH安定性の評価]
調製した実施例1~24、比較例1~36の反応性乳化剤含有組成物について、以下の方法によりpH安定性の評価を行った。具体的には、110mlスクリュー管に調製した実施例1~24、比較例1~36の反応性乳化剤含有組成物をそれぞれ100g入れ、pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製 HM-25R)を用いてpHをそれぞれ測定した。続いて、各反応性乳化剤含有組成物を50℃の恒温槽中にて3か月間静置し、静置後のpHをそれぞれ測定した。静置前後のpHの値を用いて、下記pH安定性の評価基準に基づき、各反応性乳化剤含有組成物のpH安定性を評価した。評価結果を表1~6に示す。本評価結果が○であれば、長期間保存後でも反応性乳化剤の劣化の懸念が極めて小さいことを示す。
【0052】
<pH安定性の評価基準>
○(excellent):静置前のpHと静置後のpHとの差が0.5未満であった ×(bad):静置前のpHと静置後のpHとの差が0.5以上であった
【0053】
[防腐性の評価]
調製した実施例1~24、比較例1~36の反応性乳化剤含有組成物について、以下の方法により5種の菌類に対する防腐性の評価を行った。具体的には、まず下記の5種の菌類をそれぞれ25~37℃で24時間~10日間培養後、滅菌リン酸緩衝生理食塩水により希釈することで菌懸濁液を作成した。そして、各反応性乳化剤含有組成物に対して菌濃度が2.0×106~3.0×106CFU/mlとなるよう菌懸濁液を滴下し、30℃で28日静置後、生菌濃度を測定した。静置後の生菌濃度を用いて下記の防腐性の評価基準に基づき各反応性乳化剤含有組成物の防腐性を評価した。評価結果を表1~6に示す。本評価結果が○であれば、反応性乳化剤含有組成物中での菌類の増殖を十分に防ぐことができ、長期間保存後でも反応性乳化剤を各種用途に使用可能であることを示す。
【0054】
<試験対象の菌類>
Pseudomonas aeruginosa(細菌)
Escherichia coli(細菌)
Candida Albicans(カビ)
Cladosporium sphaerospermum(カビ)
Paecilomyces variotii(真菌)
【0055】
<防腐性の評価基準>
○(excellent):静置後の生菌濃度がいずれも1.0×104CFU/ml未満であった
×(bad):静置後の生菌濃度のいずれかが1.0×104CFU/ml以上であった
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
[使用性の評価]
実施例1~24、比較例1~36で製造した反応性乳化剤含有組成物のうち、反応性乳化剤含有組成物中の一般式(1)で表される反応性乳化剤の含有量が25質量%、45質量%、95質量%、100質量%である反応性乳化剤含有組成物について、以下の方法によりそれぞれ使用性の評価を行った。具体的には、各反応性乳化剤含有組成物の静置時の外観観察及び粘度測定を行い、下記使用性の評価基準に基づき、各反応性乳化剤含有組成物の使用性を評価した。評価結果を表7に示す。本評価結果が○であれば、塗料やコーティング剤を製造する際に、本組成物を均一に効率よく添加できることを示す。なお、各反応性乳化剤含有組成物の粘度は、コーンプレート型回転粘度計(東機産業社製 TV-20)を用いて、25℃条件下、回転数10rpmで測定した。
【0063】
<使用性の評価基準>
◎(excellent):均一液状の外観であり、粘度が10,000mPa・s以下であった
○(good):均一液状の外観であり、粘度が10,000mPa・s超過100,000mPa・s以下であった
×(bad):ゲル状又は固体状である、及び/又は、粘度が100,000mPa・s超過であった
【0064】
【0065】
上記の結果から、本発明の反応性乳化剤含有組成物は、pH安定性及び防腐性に優れており、長期保存時も反応性乳化剤としての特性が劣化するおそれがなく、長期間安定的に保存が可能であることが示された。さらに、本発明の反応性乳化剤含有組成物は、使用性にも優れることが示された。
【要約】
本明細書では、下記の一般式(1)で表される反応性乳化剤と、水とを含有する反応性乳化剤含有組成物であって、反応性乳化剤含有組成物中の一般式(1)で表される反応性乳化剤の含有量が60~98質量%である、反応性乳化剤含有組成物及び前記反応性乳化剤の保存方法を開示する。
【化1】
(式中、Rは炭素原子数8~20の炭化水素基を表し、nは5~50の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)