(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230801BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20230801BHJP
C08G 73/22 20060101ALI20230801BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/023
C08G73/22
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2018195999
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】四柳 拡子
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136462(JP,A)
【文献】特開2014-102285(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172793(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0120462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(e)成分を含む感光性樹脂組成物。
(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体
(b)加熱により架橋又は重合しうる架橋剤
(c)感光剤
(d)
1,2,3-トリアゾール及びその誘導体、1,2,3-ベンゾトリアゾール及びその誘導体、並びにテトラゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物
(e)ピリジン環を有する化合物及びイミダゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物(ただし、イミダゾリル基とアルコキシシリル基とを有するイミダゾールシラン化合物を除く)
【請求項2】
前記(d)成分が、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体
、1,2,3-ベンゾトリアゾール及びその誘導体、並びに1H-テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される1以上の化合物である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(e)成分が、ピリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、並びにベンズイミダゾール及びその誘導体からなる群から選択される1以上の化合物である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(d)成分の含有量が、前記(a)成分100質量部に対して0.3質量部以上である請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(e)成分の含有量が、前記(a)成分100質量部に対して0.1質量部以上である請求項1~4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(b)成分の含有量が、前記(a)成分100質量部に対して5質量部以上である請求項1~5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(c)成分がジアゾナフトキノン化合物を含む請求項1~6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して樹脂膜を形成する工程と、
前記露光後の樹脂膜を、アルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を形成する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項10】
パターン硬化膜である請求項9に記載の硬化物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の硬化物を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項12】
請求項11に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜及び層間絶縁膜には、優れた耐熱性、電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミドやポリベンゾオキサゾールが用いられている。近年、樹脂自身に感光特性を付与した感光性樹脂組成物が用いられており、これを用いるとパターン硬化膜の製造工程が簡略化でき、煩雑な製造工程を短縮できる。
【0003】
パターン硬化膜の製造工程において、現像工程ではN-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤が用いられていたが、環境への配慮から、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体等のアルカリ性水溶液に可溶な樹脂に感光剤としてジアゾナフトキノン化合物を混合する方法により、アルカリ水溶液で現像可能な樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
近年、コンピュータの高性能化を支えてきたトランジスタの微細化はスケーリング則の限界に直面しており、さらなる高性能化や高速化のために半導体素子を3次元的に積層する技術が必須と考えられている。このような背景のもと、TSV(Through Silicon Via)を用いた3次元パッケージ、インターポーザを用いた2.5次元パッケージ、又は2.1次元パッケージが提案されており、これらに代表される積層デバイス構造が注目を集めている(例えば、非特許文献1)。
【0005】
積層デバイス構造の中でも、マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ(Multi-die Fanout Wafer Level Packaging)は、1つのパッケージの中に複数のダイを一括封止して製造するパッケージであり、1つのパッケージの中に1つのダイを封止して製造する従来のファンアウトウエハレベルパッケージよりも低コスト化、高性能化が期待できるため注目を集めている。
【0006】
しかしながら、マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージの製造において、高性能なダイの保護や耐熱性の低い封止材を保護し歩留まりを向上させる観点から、200℃超の熱処理を行うことは好ましくない。このため、銅の再配線を行うための再配線形成層として使用するアルカリ可溶性樹脂にも低温硬化性が強く求められている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-265520号公報
【文献】国際公開第2014/115233号
【文献】国際公開第2008/111470号
【文献】特開2010-096927号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】「半導体技術年鑑2013 パッケージング/実装編」、株式会社日経BP、2012年12月、p.41-50
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アルカリ可溶性樹脂の低温硬化性を向上させるため、加熱により架橋又は重合しうる架橋剤(以下、「熱架橋剤」と称する場合がある。)が用いられる場合がある。しかしながら、そのような熱架橋剤を用いた場合、熱架橋剤同士、又は樹脂と熱架橋剤が縮合する高分子化反応が室温でも進行してしまう場合があり、液状の感光性樹脂組成物を室温で長期間保存したときの保存安定性が低下するという問題が浮上した。当該問題は、反応温度の低い熱架橋剤の場合には顕著となる。
【0010】
また、上記のデバイスの再配線には銅等の導体が用いられるが、当該導体配線に対して樹脂の密着性(接着性)が不十分である傾向がある。この接着性不良は導体配線の断線や短絡の原因となりうる点で問題である。さらに、従来の樹脂は、銅等の金属に対して腐食性を有するという問題がある。特許文献4には、防錆効果を有する化合物を添加することで、銅を腐食させることなく優れた接着性を発揮できることが開示されているが、防錆効果を有する化合物を添加しても、銅基板上でパターン樹脂膜を作製し、加熱硬化した場合、開口部が赤く変色するという問題も浮上した。
【0011】
本発明は、熱架橋剤を含有するにもかかわらず保存安定性に優れる感光性樹脂組成物であって、基板との接着性が高く、さらに銅基板の変色抑制効果に優れる硬化膜を製造可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが鋭意検討した結果、熱架橋剤を含む感光性樹脂組成物に特定の2種類の含窒素化合物を組み合わせることで、感光性樹脂組成物の保存安定性を向上できることを見出した。また、当該感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は基板との接着性が高く、さらに銅基板上の開口部の変色を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下の感光性樹脂組成物等が提供される。
1.下記(a)~(e)成分を含む感光性樹脂組成物。
(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体
(b)加熱により架橋又は重合しうる架橋剤
(c)感光剤
(d)トリアゾール環を有する化合物及びテトラゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物
(e)ピリジン環を有する化合物及びイミダゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物
2.前記(d)成分が、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体、1,2,4-トリアゾール及びその誘導体、1,2,3-ベンゾトリアゾール及びその誘導体、並びに1H-テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される1以上の化合物である1に記載の感光性樹脂組成物。
3.前記(e)成分が、ピリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、並びにベンズイミダゾール及びその誘導体からなる群から選択される1以上の化合物である1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
4.前記(d)成分の含有量が、前記(a)成分100質量部に対して0.3質量部以上である1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
5.前記(e)成分の含有量が、前記(a)成分100質量部に対して0.1質量部以上である1~4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
6.前記(b)成分の含有量が、前記(a)成分100質量部に対して5質量部以上である1~5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
7.前記(c)成分がジアゾナフトキノン化合物を含む1~6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
8.1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して樹脂膜を形成する工程と、
前記露光後の樹脂膜を、アルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を形成する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
9.1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
10.パターン硬化膜である9に記載の硬化物。
11.9又は10に記載の硬化物を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
12.11に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱架橋剤を含有するにもかかわらず保存安定性に優れる感光性樹脂組成物であって、基板との接着性が高く、さらに銅基板の変色抑制効果に優れる硬化膜を製造可能な感光性樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程を説明する概略断面図である。
【
図2】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程を説明する概略断面図である。
【
図3】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程を説明する概略断面図である。
【
図4】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程を説明する概略断面図である。
【
図5】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程を説明する概略断面図である。
【
図6】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程を説明する概略断面図である。
【
図7】多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程を説明する概略断面図である。
【
図8】UBM(Under Bump Metal)フリーの構造を有するファンアウトパッケージの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜、及び電子部品の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
本明細書において「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、感光性樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、感光性樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書において室温とは23℃のことを言う。
【0017】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、下記(a)~(e)成分を含む。
(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体
(b)加熱により架橋又は重合しうる架橋剤
(c)感光剤
(d)トリアゾール環を有する化合物及びテトラゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物
(e)ピリジン環を有する化合物及びイミダゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物
以下、各成分を、それぞれ(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分と記す場合がある。本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくはポジ型感光性樹脂組成物である。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は特定の2種類の含窒素化合物、すなわち(d)成分と(e)成分とを含むため、(b)成分を含むにもかかわらず保存安定性が高く、かつ当該感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は基板との接着性が高く、さらに基板の変色抑制効果にも優れる。
以下、各成分について説明する。
【0019】
((a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体)
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、好ましくは下記式(II)で表される構造単位を有する。
【化1】
(式(II)中、Uは4価の有機基であり、Vは2価の有機基である。)
式(II)におけるヒドロキシ基を含有するアミドユニットは、加熱工程における脱水閉環により、その少なくとも一部が耐熱性、耐薬品性及び電気特性に優れるオキサゾール環に変換される。
【0020】
また、式(II)で表される構造単位において、ヒドロキシ基を含有するアミドユニットは、ポリマーのアルカリ水溶液に対する可溶性向上に効果がある。
【0021】
式(II)で表される構造単位を有するポリマーは、構造単位を1種類のみ含有してもよく、2種類以上含有してもよい。2種類以上の構造単位を有する共重合体であるとき、式(III)で表される構造を有するポリマーであることが好ましい。
【化2】
(式(III)中、Uは4価の有機基であり、V及びWは各々独立に2価の有機基である。j及びkはモル分率であり、jとkの和は100モル%であり、jが60~99.9モル%、kが0.1~40モル%(好ましくはjが80~99.9モル%、kが0.1~20モル%)である。)
【0022】
式(II)及び(III)において、Uで表される4価の有機基は、ポリヒドロキシアミドの合成において用いられるジアミン類の残基である。Uで表される4価の有機基は、4価の芳香族基、又は炭素数6~40の有機基であることが好ましく、炭素数6~40の4価の芳香族基であることがより好ましい。4価の芳香族基としては、4個の結合部位がいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。
尚、芳香族基とは芳香族環を含む基をいう。
【0023】
Uで表される4価の有機基を与えるジアミン類としては、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
式(III)においてWで表される2価の有機基は、ポリヒドロキシアミドの合成において用いられるジアミン類の残基である。Wで表される2価の有機基は、2価の芳香族基、2価の脂肪族基、又は、炭素数4~20の有機基であることが好ましく、炭素数4~20の芳香族基であることがより好ましい。Wで表される2価の有機基は、Uで表される4価の有機基を与えるジアミン類以外のジアミン類の残基である。
【0025】
Wで表される2価の有機基を与えるジアミン類としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物が挙げられる。また、シリコーン基を有するジアミン類として、LP-7100、X-22-161AS、X-22-161A、X-22-161B、X-22-161C及びX-22-161E(いずれも信越化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
式(II)及び(III)において、Vで表される2価の有機基は、ポリヒドロキシアミドの合成において用いられるジカルボン酸、又はジカルボン酸誘導体(以下、ジカルボン酸類という)の残基である。Vで表される2価の有機基は、2価の芳香族基又は炭素数6~40の有機基であることが好ましい。
耐熱性の観点からは、炭素数6~40の2価の芳香族基であることが好ましく、2価の芳香族基としては、2個の結合部位がいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。
【0027】
低温(例えば200℃以下)での加熱工程において脱水閉環率が高く、良好な耐熱性、機械強度を有するという観点からは、Vが炭素数6~30の脂肪族構造を有する2価の有機基であることが好ましい。Vが炭素数6~30の脂肪族構造を有する2価の有機基である(a)成分と、後述の(b)成分を併せて用いることで、より良好な機械特性、耐薬品性及び耐熱性を有するパターン硬化膜を与えることができる。
【0028】
Vで表される2価の有機基を与えるジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、脂肪族直鎖構造を有するものとしては、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ-n-ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2-ジメチルスクシン酸、2,3-ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、3-エチル-3-メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3-メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6-テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9-ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸が挙げられ、さらに下記式で示されるジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化3】
(式中、Zは各々独立に炭素数1~6の炭化水素基であり、iは1~6の整数である。)
【0029】
本発明において、(a)成分の製造方法に特に制限はない。一般的にはジカルボン酸類とヒドロキシ基含有ジアミン類と、必要に応じてヒドロキシ基含有ジアミン類以外のジアミン類を用いることで合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
【0030】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸類とハロゲン化剤を溶剤中で反応させるか、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法で合成できる。ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。反応溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
【0031】
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶剤中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体1.0モルに対して、1.5~3.0モルが好ましく、1.7~2.5モルがより好ましく、ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0~50モルが好ましく、5.0~20モルがより好ましい。反応温度は、-10~70℃が好ましく、0~20℃がより好ましい。
【0032】
ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に、有機溶剤中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基を用いることができる。また、有機溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等を用いることができる。反応温度は、-10~30℃が好ましく、0~20℃がより好ましい。
【0033】
ジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミンが挙げられる。具体的には、2,5-ジアミノ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノテレフタル酸、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メチレン、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)エーテル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジカルボキシ-2,2’-ジメチルビフェニル、1,3-ジアミノ-4-ヒドロキシベンゼン、1,3-ジアミノ-5-ヒドロキシベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,1,3,3,-テトラメチル1,3-ビス(4-アミノフェニル)ジシロキサン、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
(a)成分は、通常、アルカリ水溶液で現像する。そのため、アルカリ水溶液に可溶であることが好ましい。アルカリ水溶液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等の有機アンモニウム水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液などが挙げられる。
一般には、濃度が2.38質量%のTMAH水溶液を用いることが好ましい。よって、(a)成分はTMAH水溶液に対して可溶であることが好ましい。
【0035】
(a)成分がアルカリ水溶液に可溶であることの1つの基準を以下に説明する。(a)成分を任意の溶剤に溶かして溶液とした後、シリコンウエハ等の基板上にスピン塗布して膜厚5μm程度の樹脂膜を形成する。これをTMAH水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液のいずれか1つに、20~25℃で浸漬する。この結果、溶解して溶液となったとき、用いた(a)成分はアルカリ水溶液に可溶であると判断する。
【0036】
(a)成分のアルカリ性水溶液に可溶な樹脂の分子量は、ポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000~100,000であることが好ましく、15,000~100,000であることがより好ましく、20,000~85,000であることがさらに好ましい。(a)成分の重量平均分子量が10,000以上の場合、アルカリ現像液への適度な溶解性が確保できる。また、(a)成分の重量平均分子量が100,000以下の場合、溶剤への良好な溶解性が得られる傾向にあり、溶液の粘度が増大して取り扱い性が低下することを抑制できる。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。
また、重量平均分子量を数平均分子量で除した分散度は1.0~4.0が好ましく、1.0~3.5がより好ましい。
【0037】
((b)成分:加熱により架橋又は重合しうる架橋剤)
(b)成分の架橋剤は、通常、感光性樹脂組成物を塗布、露光及び現像した後、パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、(a)成分と反応(架橋反応)するか、又は架橋剤自身が重合する。
【0038】
(b)成分としては、下記式(IV)~(VIII)で示される化合物が挙げられる。下記式(VI)及び(VII)で示される化合物は、反応温度が他の公知の熱架橋剤と比較して低く、通常150~250℃である。
【化4】
(式(IV)中、Xは単結合又は1~4価の有機基であり、R
11は水素原子又は1価の有機基であり、R
12は1価の有機基である。lは1~4の整数であり、pは1~4の整数であり、qは0~3の整数である。lが2以上の場合、括弧内の基は同じでも異なってもよく、pが2以上の場合、括弧内の基は同じでも異なってもよく、qが2以上の場合、R
12は同じでも異なってもよい。)
【0039】
【化5】
(式(V)中、Yは各々独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基、炭素数1~10のアルキル基の水素原子の一部がヒドロキシル基で置換されたヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R
13及びR
14は各々独立に1価の有機基であり、R
15及びR
16は各々独立に水素原子又は1価の有機基であり、r及びtは各々独立に1~3の整数であり、s及びuは各々独立に0~3の整数である。
rが2以上の場合、括弧内の基は同じでも異なってもよく、tが2以上の場合、括弧内の基は同じでも異なってもよく、sが2以上の場合、R
13は同じでも異なってもよく、uが2以上の場合、R
14は同じでも異なってもよい。)
【0040】
式(V)中、Yは、好ましくは各々独立に炭素数1~4のアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基である。R
15及びR
16は、好ましくは水素原子である。r及びtは好ましくは2である。s及びuは好ましくは0である。
【化6】
(式(VI)中、R
17及びR
18は各々独立に水素原子又は1価の有機基であり、2つのR
18は互いが結合することで環構造となってもよい。)
【化7】
(式(VII)中、R
19~R
24は各々独立に水素原子、メチロール基又はアルコキシメチル基(アルコキシ部分の炭素数は好ましくは1~4)である。)
【0041】
式(IV)~(VI)において、1価の有機基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のヒドロキシアルコキシ基、又はこれら基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものが好ましいものとして挙げられる。また、Xの1~4価の有機基としては、上述した1価の有機基及び当該1価の有機基から水素原子を1~3個除いた基が挙げられる。
【0042】
この中でも、式(VI)、(VII)で表される化合物を用いると、感光性樹脂組成物を200℃以下の低温で硬化した場合に、優れた薬液耐性を有する硬化膜が得られる観点、及びポリマーとの架橋の観点から好ましい。
【0043】
式(VI)で表される化合物としては、具体的には下記式で表される化合物が挙げられる。
【化8】
(式中、R
25、R
26及びR
28は、各々独立に水素原子又は炭素数1~20(好ましくは炭素数1~10又は1~5)のアルキル基であり、R
27は、各々独立に水素原子又は炭素数1~10のアルキル基である。)
【0044】
式(IV)及び(V)で表される化合物としては、より具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化9】
【0045】
式(VI)及び(VII)で表される化合物としては、より具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化10】
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物における(b)成分の含有量は、(a)成分100質量部に対して5質量部以上が好ましく、5~40質量部とすることがより好ましく、5~30質量部とすることがさらに好ましい。
【0047】
((c)成分:感光剤)
(c)成分の感光剤は、活性光線の照射を受けて酸を発生する化合物であり、光を照射した部分のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。
【0048】
感光剤としては、ジアゾナフトキノン化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられ、中でもジアゾナフトキノン化合物は感度が高いため好ましい。
ジアゾナフトキノン化合物とは、ジアゾナフトキノン構造を有する化合物であり、下記式(A)又は(B)で表される構造を含む化合物が好ましい。
【化11】
【0049】
ジアゾナフトキノン化合物は、例えば、o-キノンジアジドスルホニルクロリド類と、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物等とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
【0050】
o-キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、1,2-ベンゾキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリド、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリド、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリド等が使用できる。
【0051】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10-テトラヒドロ-1,3,6,8-テトラヒドロキシ-5,10-ジメチルインデノ[2,1-a]インデン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等が使用できる。
【0052】
アミノ化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が使用できる。
【0053】
ジアゾナフトキノン化合物としては、下記式(11)で表される化合物が好ましい。
【化12】
(式(11)中、Qは、各々独立に、水素原子又は下記式(12)又は(13)で表される基であり、複数のQのうち少なくとも1つは下記式(12)又は(13)で表される基である。)
【化13】
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物における(c)成分の含有量は、感光時の感度、解像度を良好なものとするために、(a)成分100質量部に対して、0.01~50質量部とすることが好ましく、0.1~30質量部とすることがより好ましく、0.5~25質量部とすることがさらに好ましく、3~20質量部とすることが特に好ましい。
【0055】
((d)成分:トリアゾール環を有する化合物及びテトラゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物)
(d)成分として、トリアゾール環を有する化合物及び/又はテトラゾール環を有する化合物を用いる。いずれかを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。(d)成分を用いることにより、感光性樹脂組成物から得られる硬化膜と基板(例えば、シリコン基板や銅基板)との密着性(接着性)を向上でき、かつ基板(例えば、銅)の腐食を防ぐことができる。
【0056】
「トリアゾール環を有する化合物」とは、分子構造中にトリアゾール環を含む化合物であり、縮合環の一部としてトリアゾール環を有する化合物も含む。
「テトラゾール環を有する化合物」とは、分子構造中にテトラゾール環を含む化合物であり、縮合環の一部としてテトラゾール環を有する化合物も含む。
【0057】
トリアゾール環を有する化合物としては、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体、1,2,4-トリアゾール及びその誘導体、並びに1,2,3-ベンゾトリアゾール(1H-ベンゾトリアゾール)及びその誘導体等が挙げられる。
誘導体としては、各化合物に置換基が置換した化合物等が挙げられる。
【0058】
上記の置換基としては、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~5)のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、アルコキシ基(アルキル部分の炭素数は1~10)、アミノ基、ニトロ基、メルカプト基、アルキルチオ基(アルキル部分の炭素数は1~5)、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基等が挙げられ、これらのうち1又は2以上が置換した化合物であってもよい。
【0059】
トリアゾール環を有する化合物としては、例えば、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、3-メルカプト-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジメチル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジプロピル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3-メルカプト-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、3,5-ジアミノ-1H-1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5,6-ジメチルベンゾトリアゾール、5-アミノ-1H-ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール-4-スルホン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
テトラゾール環を有する化合物としては、1H-テトラゾール及びその誘導体等が挙げられる。誘導体としては、1H-テトラゾールに置換基が置換した化合物等が挙げられる。
【0061】
上記の置換基としては、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~5)のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、アルコキシ基(アルキル部分の炭素数は1~10)、アミノ基、ニトロ基、メルカプト基、アルキルチオ基(アルキル部分の炭素数は1~5)、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基等が挙げられ、これらのうち1又は2以上が置換した化合物であってもよい。
【0062】
テトラゾール環を有する化合物としては、例えば、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-(メチルチオ)-1H-テトラゾール、5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-ニトロ-1H-テトラゾール1-メチル-1H-テトラゾール、5,5’-ビス-1H-テトラゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
(d)成分としては、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体、1,2,4-トリアゾール及びその誘導体、1,2,3-ベンゾトリアゾール及びその誘導体、5位に置換基を有する1H-ベンゾトリアゾール及びその誘導体、6位に置換基を有する1H-ベンゾトリアゾール及びその誘導体、5位及び6位に置換基を有する1H-ベンゾトリアゾール及びその誘導体、1H-テトラゾール及びその誘導体、5位に置換基を有する1H-テトラゾール及びその誘導体、並びに1位に置換基を有する1H-テトラゾール及びその誘導体が好ましく、1H-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5,5’-ビス-1H-テトラゾールがより好ましい。
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物における(d)成分の配合量は、(a)成分100質量部に対して0.3質量部以上が好ましく、0.3~30質量部がより好ましく、0.3~20質量部、0.3~10質量部又は0.3~5質量部がさらに好ましい。また、(a)成分100質量部に対して0.5~30質量部、1.0~20質量部、又は2~20質量部としてもよい。
【0065】
((e)成分:ピリジン環を有する化合物及びイミダゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物)
(e)成分として、ピリジン環を有する化合物及び/又はイミダゾール環を有する化合物を用いる。いずれかを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。
【0066】
(e)成分は、感光性樹脂組成物を液状のまま室温で保存した場合に、(b)成分同士、又は(a)成分と(b)成分が縮合する高分子化反応を抑制する。これにより感光性樹脂組成物の保存安定性を向上することができ、長期間保存した後であっても、感光性樹脂膜を露光及び現像する場合に良好な溶解性及び感光特性を発揮することができる。さらに、(e)成分は当該感光性樹脂組成物から得られる硬化膜と基板(例えばシリコン基板又は銅基板)との密着性を向上させ、かつ基板上(例えば銅基板上)でパターニングした際に形成される開口部の変色を防ぐことができる。
【0067】
「ピリジン環を有する化合物」とは、分子構造中にピリジン環を含む化合物であり、縮合環の一部としてピリジン環を有する化合物も含む。
「イミダゾール環を有する化合物」とは、分子構造中にイミダゾール環を含む化合物であり、縮合環の一部としてイミダゾール環を有する化合物も含む。
【0068】
ピリジン環を有する化合物としては、ピリジン及びその誘導体等が挙げられる。誘導体としては、ピリジンに置換基が置換した化合物等が挙げられる。
【0069】
ピリジン環を有する化合物としては、ピリジン、2-アセチルピリジン、3-アセチルピリジン、4-アセチルピリジン、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、2-(アミノメチル)ピリジン、3-(アミノメチル)ピリジン、4-(アミノメチル)ピリジン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2-フェニルピリジン、3-フェニルピリジン、4-フェニルピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、3,5-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、2-メルカプトピリジン、3-メルカプトピリジン、4-メルカプトピリジン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
イミダゾール環を有する化合物としては、イミダゾール及びその誘導体、並びにベンズイミダゾール及びその誘導体等が挙げられる。誘導体としては、イミダゾール又はベンズイミダゾールに置換基が置換した化合物等が挙げられる。
【0071】
イミダゾール環を有する化合物としては、イミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、1-メチルベンズイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプト-1-メチルイミダゾール、2-メルカプト-5-メチルイミダゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
(e)成分のうち、ピリジン及びその誘導体、3位に置換基を有するピリジン及びその誘導体、4位に置換基を有するピリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、1位に置換基を有するイミダゾール及びその誘導体、2位及び4位に置換基を有するイミダゾール及びその誘導体、ベンズイミダゾール及びその誘導体が好ましく、ピリジン及びその誘導体、4-メチルピリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、1-メチルイミダゾール及びその誘導体、2-フェニル-4-メチルイミダゾール及びその誘導体、ベンズイミダゾール及びその誘導体がより好ましい。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物における(e)成分の配合量は、(a)成分100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.1~30質量部がより好ましく、0.1~20質量部又は0.1~15質量部がさらに好ましい。
【0074】
(溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、溶剤を含む。
溶剤としては、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3-メチルメトキシプロピオネート、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられる。感光性樹脂組成物中の他の成分を充分に溶解できるものであれば特に制限はない。
【0075】
この中でも、各成分の溶解性と樹脂膜形成時の塗布性に優れる観点から、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドを用いることが好ましい。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物における溶剤の含有量に特に制限はないが、(a)成分100質量部に対して50~400質量部が好ましく、100~300質量部がより好ましく、150~250質量部がさらに好ましい。
【0077】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、上記成分以外の公知のカップリング剤、溶解促進剤、溶解阻害剤、界面活性剤、レベリング剤等を含有してもよい。
【0078】
本発明の感光性樹脂組成物の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上又は100質量%が、(a)~(e)成分及び溶剤であってもよい。
本発明の感光性樹脂組成物は、本質的に(a)~(e)成分及び溶剤からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(a)~(e)成分及び溶剤のみからなってもよい。
【0079】
[パターン硬化膜の製造方法]
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上記の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、感光性樹脂膜をパターン露光して樹脂膜を形成する工程と、露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を形成する工程とを含む。
以下、各工程について説明する。
【0080】
(感光性樹脂膜形成工程)
本工程では、感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する。
基板としては、ガラス、半導体、TiO2、SiO2等の金属酸化物絶縁体、窒化ケイ素、銅、銅合金などが挙げられる。塗布方法に特に制限はないが、スピナー等を用いて行うことができる。
【0081】
乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。加熱温度は100~150℃であることが好ましい。加熱時間は30秒間~5分間が好ましい。これにより、感光性樹脂組成物から感光性樹脂膜を得ることができる。
感光性樹脂膜の膜厚は、5~100μmが好ましく、8~50μmがより好ましく、10~30μmがさらに好ましい。
【0082】
(露光工程)
本工程では、マスクを介して、感光性樹脂膜をパターン状に露光する。
照射する活性光線は、i線を含む紫外線、可視光線、放射線等が挙げられ、i線が好ましい。露光装置としては、平行露光機、投影露光機、ステッパ、スキャナ露光機等を用いることができる。
【0083】
(現像工程)
露光工程を経た樹脂膜を現像処理することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得ることができる。一般的に、ポジ型感光性樹脂組成物を用いた場合、露光部を現像液で除去する。
【0084】
現像液としてアルカリ水溶液を用いることができ、アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
アルカリ水溶液の濃度は、0.1~10質量%が好ましい。
【0085】
現像時間は、用いるポリベンゾオキサゾール前駆体の種類によっても異なるが、10秒間~15分間が好ましく、10秒間~5分間がより好ましく、生産性の観点から30秒間~4分間がさらに好ましい。
【0086】
上記の現像液にアルコール類又は界面活性剤を添加してもよい。添加量は、現像液100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。
【0087】
(加熱処理工程)
パターン樹脂膜を加熱処理することにより、(a)成分の官能基同士、又は、(a)成分と(b)成分間等に架橋構造を形成し、パターン硬化膜を得ることができる。また、加熱処理工程によって(a)成分が脱水閉環し、オキサゾール環を与える。
【0088】
加熱温度は、250℃以下が好ましく、120~250℃がより好ましく、160~230℃がさらに好ましい。この範囲内であることにより、基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスを歩留り良く生産することが可能となり、プロセスの省エネルギー化を実現することができる。
【0089】
加熱時間は、5時間以下が好ましく、30分間~3時間がより好ましい。この範囲内であることにより、架橋反応又は脱水閉環反応を充分に進行させることができる。また、加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよいが、パターン樹脂膜の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。
【0090】
加熱処理工程に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0091】
[半導体装置の製造工程]
次に、本発明のパターン硬化膜の製造方法の一例として、半導体装置の製造工程を図面に基づいて説明する。
図1~7は、多層配線構造を有するファンアウトパッケージの製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第7の工程へと一連の工程を表している。
図8はUBM(Under Bump Metal)フリーの構造を有するファンアウトパッケージの概略断面図である。
【0092】
これらの図において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。
この上に、ポリイミド樹脂等の膜が層間絶縁膜4としてスピンコート法等で形成される(第1の工程、
図1)。
【0093】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、層間絶縁膜4上にスピンコート法で形成され、これをマスクとして公知の方法によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられる(第2の工程、
図2)。
【0094】
窓6A部分に露出している層間絶縁膜4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが形成される。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光性樹脂層5を腐食するようなエッチング溶液を用いて感光性樹脂層5が除去される(第3の工程、
図3)。
【0095】
さらに、公知の方法を用いて、第2導体層7が形成され、第1導体層3との電気的接続が行われる(第4の工程、
図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、前記の工程を繰り返して行い各層が形成される。
【0096】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いて表面保護膜8を以下のようにして形成する。
即ち、本発明の感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、このパターン樹脂膜を加熱してパターン硬化膜、即ち表面保護膜8とする(第5の工程、
図5)。表面保護膜8は、導体層を外部からの応力や、α線等から保護する機能を担う。
【0097】
さらに、通常、表面保護膜8の表面に、スパッタ処理によって金属薄膜を形成した後、めっきレジストを公知の方法を用いて窓6Cに合わせて形成し、露出している金属薄膜部にめっきによってUBM(Under Bump Metal)と呼ばれる金属層9を析出させる。そして、めっきレジストをはく離し、金属層9の形成領域以外の金属箔膜をエッチング除去してUBMを形成する(第6の工程、
図6)。さらに、金属層9の表面にバンプと呼ばれる外部接続端子(バンプ10)が形成される(第7の工程、
図7)。金属層9はバンプ10に作用する応力を緩和する目的や、電気的接続信頼性を向上する目的で形成される。
【0098】
近年、製造コスト低減の観点から、このような金属層9(UBM)の形成工程を省略するために、表面保護膜8に窓6Cを形成した後、バンプ10を直接形成するUBMフリー構造が提案されている。UBMフリー構造では、金属間化合物の生成による電気抵抗上昇を抑制するために、バンプ10と接続される第2導体層7を通常よりも厚く形成することが好ましい。さらに、バンプ10に作用する応力を表面保護膜8で緩和することが好ましい。このため、厚く形成された第2導体層7を被覆し、応力緩和能を高めるために、表面保護膜8を厚く形成することが好ましい(
図8)。従って、UBMフリー構造では表面保護膜8に窓6Cを形成する際、樹脂膜をより厚く塗布し、露光、現像することが好ましい。
【0099】
[硬化物]
本発明の感光性樹脂組成物について上記の加熱処理工程を適用することにより硬化物とすることができる。本発明の硬化物は、上記のパターン硬化膜であってもよいし、パターンを有さない硬化物であってもよい。
【0100】
[電子部品]
本発明の電子部品は、上記のパターン硬化膜又は硬化物を有し、例えば、上記のパターン硬化膜の製造方法によって得られたパターン硬化膜を有する。
パターン硬化膜又は硬化物は、具体的には、電子部品の表面保護膜、カバーコート層、層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等として用いることができる。
電子部品としては、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス等が挙げられる。上述した半導体装置は本発明の電子部品の一実施形態であるが、上記に限定されず、様々な構造とすることができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0102】
合成例1
[(a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成]
撹拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N-メチル-2-ピロリドン60gを仕込み、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、撹拌溶解した。続いて、温度を0~5℃に保ちながら、ドデカン二酸ジクロリド7.48g(28mmol)及び4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド3.56g(12mmol)を10分間で滴下した後、フラスコ中の溶液を60分間撹拌した。上記溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIの重量平均分子量は33,100であり、分散度は2.0であった。
【0103】
合成例2
[(a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成]
撹拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N-メチル-2-ピロリドン60gを仕込み、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、撹拌溶解した。続いて、温度を0~5℃に保ちながら、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド11.86g(40mmol)を10分間で滴下した後、室温に戻しフラスコ中の溶液を3時間撹拌した。上記溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIIとする)。ポリマーIIの重量平均分子量は22,400、分散度は3.2であった。
【0104】
ポリマーI及びIIの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法標準ポリスチレン換算により求めた。
GPC法による重量平均分子量の測定条件は以下の通りである。ポリマー0.5mgに対して溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000
UVポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C-R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL-S300MDT-5×2
本溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/l)、H3PO4(0.06mol/l)
流速:1.0ml/分
検出器:UV270nm
【0105】
実施例1~12及び比較例1~8
[感光性樹脂組成物の調製]
表1に示す成分及び配合量にて各成分を混合し、感光性樹脂組成物を調製した。表1に示す配合量は、(a)成分100質量部に対する各成分の質量部である。用いた各成分は以下の通りである。
【0106】
((a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体)
・a-1:合成例1で得られたポリマーI
・a-2:合成例2で得られたポリマーII
【0107】
((b)成分:加熱により架橋又は重合しうる架橋剤)
・b-1:下記式で表される化合物(Allnex社製、商品名「サイメル300」)
【化14】
【0108】
・b-2:下記式で表される化合物(株式会社三和ケミカル製、商品名「ニカラックMX-270」)
【化15】
【0109】
((c)成分:感光剤)
・c-1:下記式で表される化合物(ダイトーケミックス株式会社製、商品名「4C-PA280」)
【化16】
【0110】
・c-2:下記式で表される化合物(ダイトーケミックス株式会社製、商品名「PA-28」)
【化17】
【0111】
((d)成分:トリアゾール環を有する化合物及びテトラゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物)
・d-1:1H-テトラゾール(東京化成工業株式会社製)
・d-2:5-アミノ-1H-テトラゾール(東京化成工業株式会社製)
・d-3:1H-ベンゾトリアゾール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【化18】
【0112】
((e)成分:ピリジン環を有する化合物及びイミダゾール環を有する化合物からなる群から選択される1以上の化合物)
・e-1:ピリジン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・e-2:4-メチルピリジン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・e-3:イミダゾール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・e-4:1-メチルイミダゾール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・e-5:ベンズイミダゾール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・e-6:2-フェニル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「2P4MZ」)
【化19】
【0113】
((e’)成分)
・e’-1:ピロール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・e’-2:N,N-ジエチルアニリン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【化20】
尚、(e’)成分とは、本発明で用いる(e)成分とは異なる成分を意味する。
【0114】
(溶剤)
BLO(γ-ブチロラクトン)
【0115】
[パターン樹脂膜の製造]
[感光性樹脂組成物の調製]で調製した直後の感光性樹脂組成物(以下、「保存前の感光性樹脂組成物」という場合がある)をシリコン基板及び銅基板上にスピンコートし、ホットプレート上にて110℃で3分間加熱して11.0~11.5μm(初期膜厚)の感光性樹脂膜を形成した。得られた感光性樹脂膜について、i線ステッパ(キヤノン株式会社製、商品名「FPA-3000iW」)及びマスクを用いて、i線(波長365nm)での縮小投影露光を行った。この際、エリアごとに露光量を変化させ、露光量の異なる複数のサンプルを調製した。露光後の樹脂膜について、TMAHの2.38%水溶液を用いて、現像後膜厚が初期膜厚の70~80%程度となる現像時間で現像を行い、パターン樹脂膜を製造した。得られたパターン樹脂膜の膜厚を測定した。
【0116】
また、[感光性樹脂組成物の調製]で調製した後、室温で2週間保存した感光性樹脂組成物(以下、「保存後の感光性樹脂組成物」という場合がある)について上記と同様の操作を行い、パターン樹脂膜を製造した。
【0117】
[保存安定性の評価(未露光部の溶解速度変化)]
保存前の感光性樹脂組成物から得られたシリコン基板上のパターン樹脂膜について、未露光部の溶解速度を、現像による膜圧の変化量(初期膜厚-現像後膜厚)を現像時間で除すことで算出した。保存後の感光性樹脂組成物から得られたパターン樹脂膜についても同様に未露光部の溶解速度を測定し、下記式に基づいて、保存前の感光性樹脂組成物の溶解速度に対する保存後の感光性樹脂組成物の溶解速度の変化率を算出した。結果を表1に示す。
溶解速度の変化率(%)={(溶解速度(保存前)-溶解速度(保存後))/溶解速度(保存前)}×100
得られた溶解速度の変化率の絶対値から、下記基準に沿って評価を行った。
A:溶解速度の変化率(絶対値)が0%以上10%未満
B:溶解速度の変化率(絶対値)が10%以上30%未満
C:溶解速度の変化率(絶対値)が30%以上
【0118】
[パターン硬化膜の製造]
[パターン樹脂膜の製造]で得られた保存前の感光性樹脂組成物から得られた銅基板上のパターン樹脂膜について、縦型拡散炉μ-TF(光洋サーモシステム株式会社製)を用いて、窒素雰囲気下、100℃で30分間加熱した後、さらに200℃で1時間加熱処理を行ってパターン硬化膜を得た。
【0119】
[銅基板開口部の変色の評価]
[パターン硬化膜の製造]で得られた銅基板上のパターン硬化膜について、開口部の観察を行い、以下の基準に基づき、評価した。結果を表1に示す。
A:開口部の変色が認められないもの
B:開口部がやや赤味がかって見えるもの
C:開口部の変色が重度に認められるもの
結果を表1に示す。
【0120】
[接着性の評価(基板接着格子数)]
[感光性樹脂組成物の調製]で調製した直後の感光性樹脂組成物をシリコン基板及び銅基板上にそれぞれスピンコートし、ホットプレート上にて110℃で3分間加熱して11.0~11.5μm(初期膜厚)の感光性樹脂膜を形成した。その後、[パターン硬化膜の製造]と同様の操作で硬化膜を作製し、得られた硬化膜について、JIS K 5600-5-6規格のクロスカット法に準じて、基板と硬化膜間の接着特性を以下の基準に基づき、シリコン基板及び銅基板それぞれについて評価した。結果を表1に示す。
A:基板に接着している硬化膜の格子数が100のもの
B:基板に接着している硬化膜の格子数が50~99のもの
C:基板に接着している硬化膜の格子数が50未満のもの
【0121】
【0122】
表1より、本発明の感光性樹脂組成物は保存安定性に優れ、当該感光性樹脂組成物から得られた硬化膜はシリコン基板及び銅基板への接着性が高く、かつ、変色抑制効果に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等の電子部品に使用できる。
【符号の説明】
【0124】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜
5 感光性樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜
9 金属層
10 バンプ