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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】端子用複合材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/552 20210101AFI20230801BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20230801BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20230801BHJP
【FI】
H01M50/552
H01M50/562
H01M50/564
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019060246
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020161352
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】外木 達也
(72)【発明者】
【氏名】宮下 克己
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 浩義
(72)【発明者】
【氏名】安部 英則
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-085961(JP,A)
【文献】特開2016-193450(JP,A)
【文献】特開2014-164854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-598
C22F 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と放射状の広がりを持つ鍔部を有する電池端子の成形に適する、平角状の横断面を有する端子用複合材であって、銅または銅合金からなる第一金属層と、該第一金属層よりも加熱軟化されやすいアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第二金属層とが積層されており、前記第一金属層の前記第二金属層が積層されていない側は剥離面になっており、前記横断面において、全体厚さが4.0mm超であり、前記第二金属層の厚さが前記第一金属層の厚さの1.0倍~3.0倍である端子用複合材。
【請求項2】
前記第一金属層と前記第二金属層とが接合されている接合部は、前記第一金属層の成分と前記第二金属層の成分とを含む相互拡散層を有し、該相互拡散層の厚さが0.5μm~5.0μmである請求項1に記載の端子用複合材。
【請求項3】
前記第二金属層の幅は、第二金属層の厚さの3.0倍以上である請求項1または請求項2に記載の端子用複合材。
【請求項4】
銅または銅合金からなる第一金属層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第二金属層との界面に、第一金属層と第二金属層の反応を抑制する第三金属層を有する請求項に記載の端子用複合材。
【請求項5】
軸部と放射状の広がりを持つ鍔部を有する電池端子の成形に適する、平角状の横断面を有する端子用複合材の製造方法であって、溝を有する回転部材と、前記溝へ供給される線材を押出すためのダイスと、を有する押出機の前記溝へアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第二金属線材を供給し、銅または銅合金からなる第一金属線材を芯線として、前記ダイスから第一金属線材の周囲に第二金属線材を被覆して押出し、複合線材を得る工程と、前記複合線材の側面において、第二金属線材から形成される第二金属層を除去して第一金属線材から形成される第一金属層を露出させ、前記第二金属層を上層と下層に分割する工程と、前記第二金属層のいずれか一方の層を剥離して、前記第一金属層を露出させる工程を具備し、銅または銅合金からなる前記第一金属層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記第二金属層とが積層されており、前記第一金属層の前記第二金属層が積層されていない側は剥離面になっており、前記横断面において、全体厚さが4.0mm超であり、前記第二金属層の厚さが前記第一金属層の厚さの1.0倍~3.0倍である、複合材を形成する、端子用複合材の製造方法。
【請求項6】
前記剥離される第二金属層の厚さが、0.3mm以上1.5mm未満である請求項に記載の端子用複合材の製造方法。
【請求項7】
前記複合線材を得る工程の前に、第二金属層を剥離して第一金属層を露出させる側の第一金属線材の表面を酸化させる工程を具備する請求項または請求項に記載の端子用複合材の製造方法。
【請求項8】
前記複合線材を得る工程の前に、第二金属層を剥離して第一金属層を露出させる側の第一金属線材の表面に離型剤を塗布する工程を具備する請求項または請求項に記載の端子用複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リチウムイオン二次電池等の端子に用いられる端子用複合材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池として、リチウムイオン二次電池に代表される非水電界質二次電池の実用化が進展している。このような二次電池では、正極の端子(電極)としてアルミニウムまたはアルミニウム合金が使用され、負極の端子(電極)として銅または銅合金が使用され、電気自動車、ハイブリッド自動車、または太陽電池等の再生可能エネルギーを利用する電力の蓄電システムへの適用などが進められている。
【0003】
二次電池において、高出力が必要な場合は、単体のセル(単電池)の出力では足らないため、複数のセルを配線材によって直列または並列に接続したセルの集合体を含む組電池として利用することがある。複数のセルを接続する際には、異なるセルの正極と負極とを配線材によって接続することが必要となる。このとき、銅からなる配線材とアルミニウムからなる正極との接合では、異種金属の接合となるため、十分な接合強度等が得られないことがある。
【0004】
これを解決する手段の一つとして、例えば、特許文献1には、二次電池の配線材に、正極および負極と同じ金属をコンクラッド押出機やコンフォーム押出機で押出して得られる配線材を使用し、ボルト等の機械的接合で同種金属の接続とすることが記載されている。
また、特許文献2には、アルミニウムと銅を冷間圧接して得られるクラッド材を用い、軸部と放射状の広がりを持つ鍔部を有する端子を成形し、レーザー溶接等により正極および負極と配線材とを同種金属の接合とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-164854号公報
【文献】特開2016-85961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車等に利用される高出力の二次電池では、用途の観点から、今後、高出力化に加え、端子と配線材との接合信頼性や耐振動性をさらに向上させることが望まれている。ここで、特許文献1に記載のある配線材は、長辺が30~70mm、短辺が10~60mm、厚さが1~2mmで構成されることが明示されており、これを用いて二次電池を形成すると、高出力、特に大電流化の実現に対しては、不十分である。
【0007】
また、端子と配線材との接合信頼性や耐振動性をさらに向上させるためには、機械的な接合よりも、端子と配線材とを溶接して接合することによって、その接合部の接合強度をさらに向上させる方法、すなわち特許文献2に示されるようなクラッド材を用いた軸部と鍔部からなる端子が望ましい。
しかし、本発明者は、特許文献2に記載のある電池用端子は、厚さが4mmまであることが明示されており、これを用いて二次電池を形成すると、高出力、特に大電流化の実現に対しては、改良の余地があることを見出した。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、二次電池等の電池において、バスバー等の配線材と溶接によって接合される端子に好適な端子用複合材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の端子用複合材は、軸部と放射状の広がりを持つ鍔部を有する電池端子の成形に適する、平角状の横断面を有する端子用複合材であって、銅または銅合金からなる第一金属層と、該第一金属層よりも加熱軟化されやすいアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第二金属層とが積層されており、前記第一金属層の前記第二金属層が積層されていない側は剥離面になっており、前記横断面において、全体厚さが4.0mm超であり、前記第二金属層の厚さが前記第一金属層の厚さの1.0倍~3.0倍である。
【0010】
前記第一金属層と前記第二金属層とが接合されている接合部は、前記第一金属層の成分と前記第二金属層の成分とを含む相互拡散層を有し、該相互拡散層の厚さが0.5μm~5.0μmであることが好ましい。
【0011】
[前記第二金属層の幅は、第二金属層の厚さの3.0倍以上であることが好ましい。
【0013】
銅または銅合金からなる第一金属層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第二金属層との界面に、第一金属層と第二金属層の反応を抑制する第三金属層を有することが好ましい。
【0014】
本発明の端子用複合材の製造方法は、軸部と放射状の広がりを持つ鍔部を有する電池端子の成形に適する、平角状の横断面を有する端子用複合材の製造方法であって、溝を有する回転部材と、前記溝へ供給される線材を押出すためのダイスと、を有する押出機の前記溝へアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる第二金属線材を供給し、銅または銅合金からなる第一金属線材を芯線として、前記ダイスから第一金属線材の周囲に第二金属線材を被覆して押出し、複合線材を得る工程と、前記複合線材の側面において、第二金属線材から形成される第二金属層を除去して第一金属線材から形成される第一金属層を露出させ、前記第二金属層を上層と下層に分割する工程と、前記第二金属層のいずれか一方の層を剥離して、前記第一金属層を露出させる工程を具備し、銅または銅合金からなる前記第一金属層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記第二金属層とが積層されており、前記第一金属層の前記第二金属層が積層されていない側は剥離面になっており、前記横断面において、全体厚さが4.0mm超であり、前記第二金属層の厚さが前記第一金属層の厚さの1.0倍~3.0倍である、複合材を形成する製造方法でる。
【0015】
前記剥離される第二金属層の厚さが、0.3mm以上1.5mm未満であることが好ましい。
【0016】
前記複合線材を得る工程の前に、第二金属層を剥離して第一金属層を露出させる側の第一金属線材の表面を酸化させる工程を具備することが好ましい。
また、前記複合線材を得る工程の前に、第二金属層を剥離して第一金属層を露出させる側の第一金属線材の表面に離型剤を塗布する工程を具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、二次電池等の電池において、バスバー等の配線材と溶接によって接合される端子に好適な端子用複合材およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の端子用複合材の一例を示す概略斜視図。
図2】本実施の端子用複合材の製造方法で用いる押出機の一例を示す概略断面図。
図3】本実施の端子用複合材の中間材の一例を示す概略斜視図。
図4】本実施の端子用複合材の製造方法で用いる製造装置全体の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の端子用複合材について説明する。図1は、端子用複合材10を示す概略斜視図である。本発明の端子用複合材10は、リチウムイオン二次電池等の電池が具備する端子に使用され、平角状の横断面を有する。そして、本発明の端子用複合材10は、第一の金属層11と、この第一金属層よりも加熱軟化されやすい第二金属層12とが積層されている。加熱軟化されやすい金属は、加熱軟化されにくい金属と比べて、軟化温度や降伏点が低く、同等の温度に加熱して押出し成形や鍛造プレス成形などの塑性加工を行なった際に、塑性流動しやすい。また、本発明の端子用複合材10は、第一金属層11および第二金属層12が接合されて、一体化されている。
尚、本発明の実施形態に係る端子用複合材10は、横断面が平角状であるが、この「平角状」には、四隅の角部が直角のものに加えて、角部が円弧状や面取り状のものも含む。
【0021】
本発明の端子用複合材10は、バスバー等の配線材との接合部において、十分な接合強度が得られる端子として使用されるために、図1で示す端子用複合材10の横断面において、第一金属層11と第二金属層12とが積層されている方向に沿った全体厚さtが4.0mm超である。
本発明の端子用複合材10は、全体厚さtを4.0mm超にすることにより、二次電池の高出力、特に大電流化の実現に寄与できる。そして、本発明の端子用複合材10は、全体厚さtを4.0mm超とすることにより、端子に成形した際に、塑性流動させるための体積を十分に確保することができるので、鍔部の厚さを2mm以上とすることができ、端子と配線材の接合する際の溶接時に、溶け込み深さをより深くすることが可能になり、配線材との接合をより強固にすることもできる。また、上記と同様の理由から、本発明の端子用複合材10は、全体厚さtを4.2mm以上にすることが好ましい。
尚、本発明の端子用複合材10は、電池の大電流化を実現できる全体厚さtとして、二次電池の端子の大きさやセル間の距離等を考慮して、10.0mm以下にすることが好ましい。
【0022】
本発明の端子用複合材10は、第一金属層11よりも加熱軟化されやすい第二金属層12の厚さt2を、第一金属層11の厚さt1の1.0倍以上にすることで、軸部と鍔部からなる端子を鍛造プレスで成形する際に、第二金属層が第一金属層の塑性流動に引きずられることを抑制することができ、第二金属層で形成される端子の部位を所定の寸法に成形することが容易になる。
一方、本発明の端子用複合材10は、第二金属層12の厚さt2を、第一金属層11の厚さt1の3.0倍以下にすることで、第一金属層が第二金属層の塑性流動に引きずられることを抑制でき、第一金属層で形成される端子の部位を所定の寸法に成形することが容易になる。
また、本発明の端子用複合材10は、電気伝導率の観点から、第二金属層としてアルミニウムを選択し、第一金属層として銅を選択した場合は、第二金属層の厚さを、第一金属層の厚さの1.0倍~3.0倍にすることで、電池の大電流化に寄与することができる点で好ましい。ここで、純銅(C1020)の電気伝導率は101%IACSであり、純アルミ(A1050)の導電率は約60%IACSである。
【0023】
ここで、第一金属層11の厚さt1とは、図1に示す端子用複合材10の横断面において、第一金属層11と第二金属層12とが接合される界面の位置から当該界面に対向する第一金属層11の表面の位置までの領域に存在する第一金属層11の厚さが最小となる部分から求められる最小厚さである。また、第二金属層12の厚さt2とは、図1に示す端子用複合材10の横断面において、第一金属層11と第二金属層12とが接合される界面の位置から当該界面に対向する第二金属層12の表面の位置までの領域に存在する第二金属層12の厚さが最小となる部分から求められる最小厚さである。
そして、第一金属層11の厚さt1と第二金属層12の厚さt2との合計の厚さt、すなわち、端子用複合材の横断面における全体厚さは、上述した第一金属層11の最小厚さと第二金属層12の最小厚さとの和で求めることができる。
【0024】
本発明の実施形態に係る端子用複合材10は、第一金属層11と第二金属層12とが接合されている接合部において、第一金属層11の成分と第二金属層12の成分とを含む相互拡散層を有することが好ましい。本発明の実施形態に係る端子用複合材10は、このような相互拡散組織を第一金属層11の成分と第二金属層12の成分とが接合された部分に形成することにより、第一金属層11と第二金属層12が強固に一体化される。このため、端子用複合材10を端子に加工する際に、接合部分において、第一金属層11と第二金属層12とが剥離することや亀裂などが生じることを防止することができる。
【0025】
ここで、相互拡散層の厚さは、0.5μm~5.0μmであることが好ましい。相互拡散層の厚さを0.5μm以上にすることで、第一金属層11の成分と第二金属層12の成分との相互拡散による接合強度の向上効果を十分得ることができ、端子を成形する際の鍛造プレス時に、第一金属層11と第二金属層12の剥離を抑制できる。
また、相互拡散層の厚さを5.0μm以下にすることで、脆弱な金属間化合物の生成を抑制し、端子を形成する際の鍛造プレス時に、第一金属層11と第二金属層12の剥離を抑制できる。
【0026】
ここで、本発明の端子用複合材は、例えば、第二金属層12を押出しする際に、変形熱が発生し、第二金属層12が350℃以上の高温となる場合がある。本発明では、第二金属層12が上記温度になるまでから冷却までの時間を調整することにより、相互拡散層を所定の厚さとすることができる。また、上記の変形熱だけでは十分な相互拡散層を得られない場合は、第一金属層11を予め余熱しておくことや、押出した複合材10を別な加熱装置内で熱処理することによって所定厚さの相互拡散層を得ることもできる。
変形熱による温度と冷却までの時間を制御してもなお、5μm以上の相互拡散層が発生してしまう場合には、第一の金属層11と第二の金属層12の間に、例えば、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)、Sn(錫)等の反応抑制層を形成する第三金属層を設けてもよい。
【0027】
また、本発明の実施形態に係る端子用複合材10は、第二金属層12の幅wが、第二金属層12の厚さt2の3.0倍以上であることが望ましい。第二金属層12の幅wを3.0倍以上にすることで、第一金属層11と第二金属層12の接触長を長くすることができ、第二金属層12の変形熱で、第一金属層11を加熱することができ、所定厚さの相互拡散層を得ることができる。
【0028】
第一金属層11は、例えば、銅または銅合金からなることが好ましい。第一金属層11に使用される銅または銅合金としては、銅の濃度が99.9%以上からなる純銅(例えば、タフピッチ銅、無酸素銅)、または、Fe(鉄)、Sn(錫)、In(インジウム)、Ag(銀)、Zr(ジルコニウム)、Mg(マグネシウム)、Cr(クロム)等を少なくとも1種類以上含有し、残部が銅(例えば、銅の濃度が50%以上)および不可避不純物からなる銅合金等が適用可能である。
【0029】
第二金属層12は、第一金属層よりも加熱軟化されやすい、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることが好ましい。第二金属層12に使用されるアルミニウムとしては、アルミニウムの濃度が99.9%以上からなる純アルミニウム、または、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Cu(銅)、Co(コバルト)等を少なくとも1種類以上含有し、残部がアルミニウム(例えばアルミニウムの濃度が50%以上)および不可避不純物からなるアルミニウム合金等が適用可能である。
【0030】
尚、上記では、第一金属層を銅または銅合金とし、第二金属層をアルミニウムまたはアルミニウム合金とする例を説明したところ、本発明の実施形態に係る端子用複合材は、これに限定されない。また、第一金属層と第二金属層とは、ともに異なる金属で構成され、第二金属層が第一金属層よりも加熱軟化されやすい材料であればよく、上記の実施形態で示す以外の金属で構成されることでもよい。
【0031】
本発明の実施形態に係る端子用複合材は、例えば、図2に示される溝を有する回転部材であるホイール21を有する押出機20を使用して得ることができる。この押出機20では、ホイール21へ供給される第二金属線材22が、ホイール21の接線方向に配置されるダイチャンバー25のダイス23とニップル24を貫通して設置された第一金属線材11aの表面に供給される。これにより、第二金属線材22が芯材となる第一金属線材11aの表面に接するように周囲に被覆された状態となる。
そして、第二金属線材22が第一金属線材11aの表面に接するように被覆されている状態でダイス23に挿通され、ダイス23から押出されることにより、図3に示す第一の金属線材11aと第二の金属線層12とが接合した状態で一体化した、複合線材30を得ることができる。この複合線材30は、第二金属線材から形成される第二金属層と第一金属線材から形成される第一金属層を有する。
ここで、図3において、第二金属層12の厚さは、第一金属層11aの上部となる12aで、第一金属層11aの厚さの1.0倍~2.0倍にすることが好ましい。そして、第二金属層の厚さは、第一金属層11aの下部となる12b、および側面となる12cで、0.3mm以上1.5mm未満とすることが好ましい。
【0032】
上記で得た複合線材30は、水槽31等で所定の温度まで冷却したのち、端子用複合材の幅寸法を決定するために、側面の第二金属層12cを側面除去装置32により除去する。これにより、第二金属層12が、第一金属層11aの上下方向に分断される。ここで、第二金属層12cの除去には、例えば、ミーリングカッターによる切削や、スリットによる割断等の方法が採用できる。
第二金属層12が第一金属層11aの上下に分断された複合線材30は、巻取機33によりコイル状に巻取る。このとき、巻取機33の前に予備巻取機34等を設置して、第一金属層11aの下面に接した第二金属層12bを、予備巻取機34等で引張りながら剥離して、第一金属層を露出させる。これにより、本発明の端子用複合材を得ることができる。
【0033】
ここで、上記した剥離される第二金属層12bの厚さは、0.3m以上1.5mm未満であることが望ましい。剥離される第二の金属層12bの厚さを0.3mm以上にすることで、ダイス23における第二金属層12の流動を安定化することができ、均一に被覆することが可能になり、第一金属線材11aがダイス23と擦られることによる破断を抑制できる。
また、剥離される第二金属層12bの厚さを1.5mm未満にすることで、除去される第二金属層12bの厚さを薄くすることができ、過度な強度向上を抑制し、予備巻取機34での巻取りを容易にすることができる。
【0034】
また、第二金属層12bの剥離を容易にするために、複合線材30を得る工程の前に、第一金属線材11aの第二金属層との引き剥がしを行なう表面側を、大気中で200℃以上に加熱して、予め酸化しておくことや、コーターロール35等を用いて離型剤を塗布しておくことが好ましい。ここで、上記で形成した第一金属層に形成された酸化膜のうち、第二金属層との剥離を伴わない部位の酸化膜は、例えば、回転するワイヤーブラシ等で除去することが好ましい。また、離型剤の塗布は、例えば、カーボンを主成分とする水系離型剤を、第一金属線材11aの第二金属層と剥離される表面側に塗布して、加熱乾燥することが好ましい。
【0035】
本発明の実施形態に係る製造方法では、押出機20に供給される第一金属線材11aを予め加熱するための予備加熱工程を設けてもよい。これにより、製造される端子用複合材10において、第一金属層11と第二金属層12との接合強度を高めることができる。
【実施例
【0036】
本発明の実施形態に係る端子用複合材を、図4に示す装置を用いて製造した。具体的には、第一金属層を形成するための、JISで規定されたC1020からなり、幅が15mm、厚さが2.5mmの平角銅線を用意して、ホイールの接線方向に配置されるダイチャンバー内に設置したダイスとニップルを貫通してセットした。
このとき、平角銅線は、押出機に入る前に、水にカーボンを分散させた離形剤を、後工程でアルミニウムを剥離する面側に塗布した。そして、平角銅線は、離型剤の乾燥と平角銅線の予熱のため、600℃に昇温した環状炉を通過させ、150℃に昇温した。
【0037】
次に、ホイールに設けられた溝部に、第二金属層を形成するための、JISで規定されたA1050からなり、直径が9.5mmのアルミニウム線材を供給した。
このとき、アルミニウム線材は、ダイチャンバーに押し込まれ、平角銅線の表面に供給して、アルミニウム線材が平角銅線の表面に接するように周囲を被覆した状態とした。そして、この状態でアルミニウム線材がダイスに挿通され、ダイスから押出すことにより、平角銅線とアルミニウム線材とが接合した状態で一体化した複合線材を成形した。尚、複合線材の外寸は、厚さが6mm、幅が16mmとした。
押出機は、アルミニウム線材の変形熱により加熱されるので、アルミニウム線材の供給量を調整することにより、押出温度を調整することができる。本実施例では押出速度を10m/分とし、押出温度が400℃となるようにアルミニウム線材の供給量を調整した。
【0038】
平角銅線の上面のアルミニウムは3mmとし、下面は0.5mm、側面はそれぞれ0.5mmとした。複合線材の外寸は、ダイスの開口部の寸法で規定し、平角銅線の周囲のアルミニウム厚さは、平角銅線とダイスの相対位置で規定した。平角銅線とダイスの相対位置は、平角線を貫通させるニップルの開口部とダイスの開口部の相対位置で規定した。
押出した複合材は、2m離れた水槽で常温まで冷却を行なった。このときの押出温度と冷却までの時間によって相互拡散層厚さを調整することが可能であり、本実施例では2μmとした。
【0039】
冷却した複合線材は、端子材としての幅寸法を得るために、サイドカッターにより側面を除去し、アルミニウム、銅、アルミニウムの3層構造とした。続いて、予備巻取機により下面のアルミニウムを剥離して、第一金属層となる銅と第二金属層となるアルミニウムからなる2層構造に成形して、巻取機で巻き取りながらコイル状とし、本発明例1となる端子用複合材を得た。
また、上記と同様な方法で、表1に示すように、形状および相互拡散厚さが異なる本発明例2~本発明例7、比較例1~比較例3となる端子用複合材も製造した。
【0040】
【表1】
【0041】
製造した各端子用複合材の評価は、長尺の製造可否について、第一金属層の破断の有無で評価した。また、各端子用複合材を端子に成形したときの信頼性は、第一金属層と第二金属層の界面の剥離の有無で評価した。そして、複合材を端子に成形した際の成形性は、所定の寸法が出せた場合を○、所定の寸法とならなかった場合を×とした。
また、端子とバスバーを溶接したときの溶接性は、バスバーの母材で破断した場合を○、溶接部で破断した場合を×として評価した。
評価結果は、表2の通りとなった。本発明例1~本発明例7の端子用複合材は、いずれも、総合評価が合格になったのに対し、比較例1~比較例3の端子用複合材は、長尺加工性、成形信頼性、溶接性いずれかで不合格となった。
【0042】
【表2】
【符号の説明】
【0043】
10 端子用複合材
11 第一金属層
11a 第一金属線材、第一金属層
12 第二金属層
12a 上面側第二金属層
12b 下面側第二金属層
12c 側面第二金属層
20 押出機
21 ホイール
22 第二金属線材
23 ダイス
24 ニップル
25 ダイチャンバー
30 複合線材
31 冷却水槽
32 側面除去装置
33 巻取機
34 予備巻取機
35 ロールコーター

図1
図2
図3
図4