(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】極異方性リング磁石の製造装置及び製造方法並びに極異方性リング磁石の極位置位置決め治具
(51)【国際特許分類】
H01F 7/02 20060101AFI20230801BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
H01F7/02 C
H02K15/03 Z
(21)【出願番号】P 2019117564
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2019053318
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健志
(72)【発明者】
【氏名】磯田 修
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-261036(JP,A)
【文献】特開2003-289653(JP,A)
【文献】特開昭60-250617(JP,A)
【文献】特開2019-022278(JP,A)
【文献】特開2007-082345(JP,A)
【文献】特開平06-061039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/02
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性の円筒体の周方向に極異方性リング磁石の極数分の溝を有し、該溝の溝数-1の磁石を隣り合う磁極が異なるようにかつ磁石の無い溝を挟む磁石は同極となるように配置し、磁石の無い溝にマーキング孔を有する極位置位置決め治具と、前記極位置位置決め治具の軸方向の両端側に配置されたレールと、前記極位置位置決め治具の一方端側に配置した極異方性リング磁石押し込み手段と、前記マーキング孔を通じて、マーキングを行う極位置マーキング手段を有することを特徴とする極異方性リング磁石の製造装置。
【請求項2】
非磁性の円筒体の周方向に極異方性リング磁石の極数分の溝を有し、該溝の溝数-1の磁石を隣り合う磁極が異なるようにかつ磁石の無い溝を挟む磁石は同極となるように配置し磁石の無い溝に開けられたマーキング孔を有する極位置位置決め治具を準備する工程と、前記極位置位置決め治具に、極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を前記極位置位置決め治具と同軸に挿入する工程と、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置の少なくとも一つにマーキング孔を通じてマーキングする工程と、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を前記極位置位置決め治具から排出させる工程を有することを特徴とする極異方性リング磁石の製造方法。
【請求項3】
非磁性の円筒体の周方向に極異方性リング磁石の極数分の溝を有し、該溝の溝数-1の磁石を隣り合う磁極が異なるようにかつ磁石の無い溝を挟む磁石は同極となるように配置し、磁石の無い溝にはマーキング孔を有する極位置位置決め治具。
【請求項4】
非磁性の円筒体の周方向に極異方性リング磁石の極数分の溝を有し、該溝の溝数-1の磁石を隣り合う磁極が異なるようにかつ磁石の無い溝を挟む磁石は同極
となるように配置し、磁石の無い溝に開けられたマーキング孔を有する極位置位置決め治具と、前記極位置位置決め治具の軸方向に配置されたレールと、前記極位置位置決め治具の一方端側に配置した極異方性リング磁石押し出し手段と、前記マーキング孔を通じて、マーキングを行う極位置マーキング手段を有することを特徴とする極異方性リング磁石の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種モータに使用される極異方性リング磁石及び極異方性リング磁石を用いたローター並びに極異方性リング磁石の極位置を位置決めする治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、極異方性リング磁石はモータの小型化、高性能化に伴い性能の向上が図られ、小型化、多極化の方向に進みつつある。極異方性リング磁石はステッピングモータ等の回転子(ローター)用磁石として広く使用されている。
【0003】
極異方性リング磁石の着磁は、当該極異方性リング磁石の極数と同じ極数となるように構成した巻線部を有する着磁治具内に極異方性リング磁石を挿入しパルス磁場等を印加して行う。この場合、極異方性リング磁石の極と着磁ヨークの極がずれていると、着磁磁場によって、極異方性リング磁石は着磁ヨークの極に倣って回転する。この際、極異方性リング磁石の外周面に傷がつく恐れがある。また挿入した際の極位置のずれが大きい場合には、着磁が十分に行われない場合がある。
【0004】
特許文献1では極異方性リング磁石の極位置を着磁治具の極位置に合わせる磁気回路を有するヨークを着磁治具の上部に設け、当該ヨークで極異方性リングの極位置と着磁治具の極位置を合わせた後、着磁治具にて着磁する技術を公開している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
極異方性リング磁石を用いてローターを構成する場合、ローターのシャフトの周方向の定点と極異方性リング磁石の極の位置を合わせておく必要がある。ローターを組み込んでモータとした際にモータの制御は極位置を基準にして行う必要があるからである。
特許文献1の方法では、極異方性リング磁石の極位置と着磁治具の極位置を合わせることはできるが、着磁された極異方性リング磁石の極位置は目視確認できないので、極位置は別に磁性体等を用いて確認し、しかる後にマーキング等を行う必要がある。
【0007】
極異方性リング磁石を用いてローターを構成する場合、極異方性リング磁石単体で着磁しその後ローターヨークに挿入配置するという製造方法がある。一方で、現実的には無着磁の極異方性リング磁石をローター大径部に挿入した後に着磁するという工程が取られる場合が多い。着磁後の磁石の取り回しは簡単ではなく、ローターの状態の方が機械組み立てに適するという理由からである。
【0008】
無着磁の状態で極異方性リング磁石をローター大径部に挿入配置するためには、あらかじめ極異方性リング磁石の極位置の少なくとも一つを知る必要がある。
図1及び
図2に従来のローター、ローターヨーク及び極異方性リング磁石を示す。
図1は極異方性リング磁石を用いたローターの斜視図(A)、及びローターヨーク9の斜視図(B)である。
図2は極異方性リング磁石の平面図及び平面図(C)及び平面図(C)のD-D断面図(E)である。
極異方性リング磁石の極位置の一つを無着磁の状態で知るために、極異方性リング磁石の成形時に成形金型の一部に凸部を設け、極異方性リング磁石2の極位置の一つに対応する位置に凹部3を設けている。
図1、
図2Aの破線7は極異方性リング磁石2の配向の様子を模式的に占めしたものである。
なお本明細書ではローターヨークと呼称するが必ずしも磁性体である必要は無く非磁性体であっても使用することはできる。
【0009】
ローター1は極位置に凹部3を有する極異方性リング磁石2とローター大径部6とローター大径部6の中心部を貫通するシャフト4とで構成される。シャフト4の片方の端部にはDカット5が設けられ、Dカット5と凹部3の周方向の位置が一致するように、極異方性リング磁石2は公知の方法にてシャフト大径部6に固着されている。
【0010】
粉末冶金法で極異方性リング磁石の一部に凹部を有するように製造(成形)すると、磁石の凹部を起点として亀裂が入り、磁石の合格率を低下させるという問題が発生する。
また凹部を有する磁石は製造コストが上がり値段を下げにくいという問題が発生する。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、極異方性リング磁石の端部に極位置に合わせ凹部を設けなくても、極位置を知ることができる極異方性リング磁石の製造装置及び製造方法並びに前記製造方法及び製造方法によって得られた極位置に合わせた凹部を有しない極異方性リング磁石の極位置とローターのシャフトのDカットに極異方性リング磁石の極位置の少なくとも一つを合わせてローターを構成することができるローターの製造装置及び製造方法及び極異方性リング磁石の極位置を知ることができる極位置位置決め治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る極異方性リング磁石の製造装置は、非磁性の円筒体の内周面側に極異方性リング磁石の極数分の磁石を隣り合う磁石の磁極が異なるように周方向に沿って等配した極位置位置決め治具と、前記極位置位置決め治具の軸方向の両端側に配置されたレールと、前記極位置位置決め治具の一方端側に配置した極異方性リング磁石押し込み手段と、前記極位置位置決め治具の他端側に配置した極位置マーキング手段を有することを特徴とする極異方性リング磁石の製造装置である。
【0013】
本発明によれば、極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置に簡便にマーキングをする製造装置を提供することができる。
【0014】
本発明に係る極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の製造方法は、非磁性の円筒体の内周面側に極異方性リング磁石の極数分の磁石を隣り合う磁石の磁極が異なるように周方向に沿って等配した極位置位置決め治具を準備する工程と、前記極位置位置決め治具に、極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を前記極位置位置決め治具と同軸に挿入し、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を回転させ、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置と前記極位置位置決め治具の磁石の周方向の位置を合わせる工程と、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置を周方向で保ったまま前記極位置位置決め治具から排出させる工程と、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置の少なくとも一つにマーキングする工程を有することを特徴とする極異方性リング磁石の製造方法である。
【0015】
本発明によれば、極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置に簡便にマーキングをする製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明に係る極異方性リング磁石を用いたローターの製造装置は、非磁性の円筒体の内周面側に極異方性リング磁石の極数分の磁石を隣り合う磁石の磁極が異なるように周方向に沿って等配した極位置位置決め治具と、前記極位置位置決め治具の軸方向の両端側に配置されたレールと、前記極位置位置決め治具の一方端側に配置した極異方性リング磁石押し込み手段と、前記極位置位置決め治具の他端側に配置した極異方性リング磁石をローターヨークに同軸かつ極異方性リング磁石の極位置とローターヨークの溝部を周方向で一致させてローターヨークに搭置する移載手段と、ローターヨークを移動するローターヨーク移動手段とを有することを特徴とする極異方性リング磁石を用いたローターの製造装置。
【0017】
本発明によれば、簡便な装置で極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置とローターヨークの溝部とを一致させてローターヨークを製造することが可能となる。
【0018】
本発明に係る極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を用いたローターの製造方法は、非磁性の円筒体の内周面側に極異方性リング磁石の極数分の磁石を隣り合う磁石の磁極が異なるように周方向に沿って等配した極位置位置決め治具を準備する工程と、前記極位置位置決め治具に、極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を前記極位置位置決め治具と同軸に挿入し、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を回転させ、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置と前記極位置位置決め治具の磁石の周方向の位置を合わせる工程と、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置を周方向で保ったまま前記極位置位置決め治具から排出させる工程と、ローターヨークをローターヨーク移動装置により移動するとともに、ローターヨークの溝部及び/またはシャフトのDカット部を一定位置になるように回転する工程と、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置を周方向で保ったまま、前記ローターヨークに挿入配置する工程を含むことを特徴とする極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を用いたローターの製造方法。
【0019】
本発明によれば、簡便な装置で極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置とローターヨークの溝部とを一致させてローターを製造することが可能となる。
【0020】
本発明に係る極異方性リング磁石の製造装置は、非磁性の円筒体の周方向に極異方性リング磁石の極数分の溝を有し、該溝の溝数-1の磁石を隣り合う磁極が異なるようにかつ磁石の無い溝を挟む磁石は同極となるように配置し、磁石の無い溝にマーキング孔を有する極位置位置決め治具と、前記極位置位置決め治具の軸方向の両端側に配置されたレールと、前記極位置位置決め治具の一方端側に配置した極異方性リング磁石押し込み手段と、前記マーキング孔を通じて、マーキングを行う極位置マーキング手段を有することを特徴とする極異方性リング磁石の製造装置である。
【0021】
本発明によれば、極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置に極位置位置決め治具内にて簡便にマーキングをする製造装置を提供することができる。
【0022】
本発明に係る極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の製造方法は、非磁性の円筒体の周方向に極異方性リング磁石の極数分の溝を有し、該溝の溝数-1の磁石を隣り合う磁極が異なるようにかつ磁石の無い溝を挟む磁石は同極となるように配置しかつ磁石の無い溝に開けられたマーキング孔を有する極位置位置決め治具を準備する工程と、前記極位置位置決め治具に、極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を前記極位置位置決め治具と同軸に挿入し、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を回転させ、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置と前記極位置位置決め治具の磁石の周方向の位置を合わせる工程と、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置の少なくとも一つにマーキング孔を通じてマーキングする工程と、前記極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石を前記極位置位置決め治具から排出させる工程を有することを特徴とする極異方性リング磁石の製造方法である。
【0023】
本発明によれば、極位置を示す凹部を有さない極異方性リング磁石の極位置に簡便にマーキングをする製造方法を提供することができる。
【0024】
本発明の極位置位置決め治具は非磁性の円筒体の周方向に極異方性リング磁石の極数分の溝を有し、該溝の溝数-1の極位置位置決め磁石を隣り合う磁極が異なるようにかつ磁石の無い溝を挟む前記極位置位置決め磁石は同極となるように配置し、磁石の無い溝にはマーキング孔を有する極位置位置決め治具である。
【0025】
本発明によれば、極異方性リング磁石の極位置に簡単な方法にてマーキングを行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の極異方性リング磁石の製造装置及び製造方法並びにその製造装置及び製造方法によって得られた極異方性リング磁石を用いたローターの製造装置及び製造方法によれば、磁石の端面から周面にかけて磁極部を示す凹部が不要となるので、き裂などの不良発生が少なく、また金型に凸部を設ける等の加工が不要となるので、製造コストを低減することができる。また本発明の極位置位置決め治具によれば簡単に極異方性リング磁石の極位置にマーキングをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】極異方性リング磁石を用いたローターの斜視図(従来例)(A)及び円筒体の斜視図(B).
【
図2】従来例の極異方性リング磁石の平面図(C)及び平面図(C)のD-D断面図(E)。
【
図3】本発明に用いる極位置位置決め治具のヨークの平面図(F)及び平面図(F)のG-G断面図(H)。
【
図4】本発明に用いる極位置位置決め治具の平面図(I)及び平面図(I)のK-K断面図(J)。
【
図5】本発明に用いる極位置位置決め治具に極異方性リング磁石を配置した平面図。極位置位置決め治具の磁石と極異方性リング磁石の極位置がずれている様子。(L)、極位置位置決め治具の磁石と極異方性リング磁石の極位置が一致しいる様子(M)。
【
図6】本発明の極異方性リング磁石の製造装置の一例を示す斜視図である。
【
図7】本発明の極異方性リング磁石を用いたローターの製造装置の一例を示す斜視図である。
【
図8】第一の実施形態を示す極異方性リング磁石を用いたローターの斜視図である。
【
図9】第二の実施形態を示す極異方性リング磁石を用いたローターの斜視図である。
【
図10】第三の実施形態を示す極位置位置決め治具の上面図(P)及び平面図(Q)である。
【
図12】極異方性リング磁石の一例を示す平面図(O)及び側面図(N)である。
【
図13】極位置位置決め治具へ極異方性リング磁石(4極)を挿入した場合の斜視図である。
【
図14】極位置位置決め治具に挿入した極異方性リング磁石(4極)が回転し極位置が合う状況を示す平面図である。(R)は挿入した後、(S)は極位置が極位置位置決め磁石と合った様子。
【
図15】本発明の極異方性リング磁石製造装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0029】
図3は本発明に用いる極位置位置決め治具の円筒体10を示す平面図(F)及びG-G断面
図Hである。
図4は極位置位置決め治具20の平面図(I)及びK-K断面図(J)である。
円筒体10は筒状をしており、内周面側から放射状に外周面側に向かってのびる溝12と溝の先には断面矩形の貫通孔11を有する。貫通孔11には極位置位置決め磁石13が挿入配されている。極位置位置決め磁石13は断面矩形の貫通孔11に挿入可能なように矩形形状をしており、隣り合う磁極の向きがそれぞれ異なるように配置されている。極位置位置決め磁石13の磁極は極位置位置決め治具の中心軸に向かう方向又は中心軸から離れる方向に放射状となるようにしてある。
溝11は極位置位置決め治具の円筒体10に貫通孔11を加工により作る際のワイヤーソーの歯の入り口となる溝である。15はスペーサでありワイヤーソーで形成した貫通孔11の長さが極位置位置決め磁石13の長手方向に対して長い場合に用いる。スペーサ15の材質は磁性体でも非磁性体でも良い。このような構成で極位置位置決め治具20を構成する。なお極位置位置決め治具20の軸方向の長さが極位置位置決め磁石13の軸方向の長さと同じの場合にはスペーサ15は不要である。
【0030】
図5は極位置位置決め治具20に極異方性リング磁石14を挿入した際に極位置位置決め磁石13に吸引され、極異方性リング磁石14の磁極Pが極位置位置決め磁石13の位置に回転する様子を示した図である。破線7は極異方性リング磁石14の配向の様子を示している。
極異方性リング磁石14を極位置位置決め治具20の内周面側に挿入した場合、極異方性リング磁石14の磁極の位置Pは必ずしも極位置位置決め磁石13の周方向の位置(極位置位置決め用治具20の磁極の位置)と同じであるとは限らない(
図5L)。極異方性リング磁石14は極位置位置決め磁石13に吸引され
図5Lの矢印(極異方性リング磁石14に示された矢印)のごとく回転し、
図5Mのごとく極位置位置決め磁石13の周方向の位置と極異方性リング磁石14の極の位置が一致する。
このようにして、極位置を示す凹部等が無い極異方性リング磁石の極の位置を特定することができる。
なお
図4及び
図5では磁石の個数を極異方性リング磁石の個数と一致させたが、必ずしも一致させる必要は無く、例えば極異方性リング磁石の極数の約数分の磁石が配置されていれば良くあるいは極異方性リング磁石の極位置が位置決めできる程度に少なくとも一つの磁石が配置されていれば良い。なお約数分の磁石を等配した際には隣り合う磁石の磁極は同極となる場合と異極となる場合があるが極位置を位置決めする磁石の極位置の磁極の向きに合わせ適宜設定する。
極異方性リング磁石は磁極は必ず異極同士が隣り合っているので、約数分の磁石を等配する際には、等配した位置における極異方性リング磁石の磁極と吸引する向きに磁石を配置すればよい。
【0031】
(第一の実施形態)
図6は第一の実施形態を示す極異方性リング磁石の製造方法を示す斜視図である。極位置位置決め治具20の軸方向の前後には棒状の一対のレール24、25が配置してあり、レール24,25は極位置を位置決めする極異方性リング磁石14が極位置位置決め治具20の中央部の孔部へ挿入、排出できるように高さと幅を調節してある。極異方性リング磁石14は図示しない移載手段により前部のレール24に載置される。23は極異方性リング磁石14を極位置位置決め治具20に挿入するための押し込み手段(押し出し手段)であり、円盤状の頭部21と押し込み棒22によって構成される。
押し込み棒23は図示しない押し込み機構により、極異方性リング磁石14を極位置位置決め治具20に挿入する。極位置位置決め治具20に挿入された極異方性リング磁石14は前述の作用によって磁極の位置が極位置位置決め磁石の位置(磁極の位置)にそろうこととなる。
【0032】
その後再度押し込み手段(押し出し手段)により極異方性リング磁石14は極位置位置決め治具20により後部のレール25上に押しだされる。押しだされた後の極異方性リング磁石14のそれぞれの間隔は前後の極異方性リング磁石14の磁石の影響受けない程度に適宜設定すればよい。
26は公知の印字手段(マーキング手段)であり、周方向に位置決めされた極異方性リング磁石14の極位置にマーク27を施す。
無着磁の状態で極位置にマークを施された極異方性リング磁石14は例えば
図8のごとくのシャフト4のDカット5平面部とマーク27の周方向の位置を一致させるようにシャフトの大径部6に固着させ、ローター50を形成する。
【0033】
(第二の実施形態)
図7は第二の実施形態を示す極異方性リング磁石を用いたローターの製造方法を示す斜視図である。
極位置位置決め治具20の軸方向の前後には棒状の一対のレール24、25が配置してあり、レールは極位置を位置決めする極異方性リング磁石14が極位置位置決め治具の中央部の孔部の挿入、排出できるように高さと幅を調節してある。
極異方性リング磁石14は図示しない移載手段により前部のレール24に載置される。23は極異方性リング磁石14を極位置位置決め治具20に挿入するための押し込み手段(押し出し手段)であり、円盤状の頭部21と押し込み棒22によって構成される。
押し込み棒22は図示しない押し込み機構により、極異方性リング磁石14を極位置位置決め治具20に挿入する。極位置位置決め治具20に挿入された極異方性リング磁石14は前述の作用によって磁極位置が極位置位置決め磁石の位置(磁極の位置)にそろうこととなる。
その後再度押し込み手段(押し出し手段)により極異方性リング磁石14は極位置位置決め治具20により後部のレール25上に押しだされる。押しだされた後の極異方性リング磁石14のそれぞれの間隔は前後の極異方性リング磁石14の影響を受けない程度に適宜設定すればよい。
【0034】
30は極異方性リング磁石移載手段であり、周方向の極位置の定まった極異方性リング磁石14をローターヨーク9に挿入配置する。ローターヨーク9は大径部6とシャフト4とで構成され、シャフトの一方端部にはDカット5が設けられている。その際ローターシャフト4のDカット部5と極異方性リング磁石14の周方向の極位置が一致するようにする。
移載手段30は例えば支柱部31と開閉軸32とつかみ部33からなり、つかみ部33を開閉し極異方性リング磁石14をレール25からつかみ取りローターヨーク9に挿入する。その際極異方性リング磁石14の極位置が周方向で常に定位置となるように挿入するようにしてある。
40はローターヨーク9の移動手段であり、ローターヨーク9を極異方性リング磁石14の挿入地点まで移動する。
41はローターシャフト4をローター移動手段40に固定するための凹部である。
【0035】
ローターヨーク9は、Dカット5の平面部をあらかじめ周方向で固定してローターヨーク移動手段40に載置しても良いし、矢印のように指示しない回転機構によりローターシャフト4を回転させて、Dカット5の平坦部と極異方性リング磁石の極位置が一致するような周方向位置にしても良い。
本実施形態によれば、
図9に示すような、極異方性リング磁石の極位置とローターシャフト4のDカット5の平面部が一致したローター60を得ることができる。
【0036】
(第三の実施形態)
図10は第三の実施形態に用いる極位置位置決め治具の上面図及び平面図である。
極位置位置決め治具の構成が第一の実施形態及び第二の実施形態と異なる。
図11は同斜視図。
図12は極異方性磁石の一例。
図13は極位置位置決め治具50へ極異方性リング100磁石を挿入した斜視図。
図14は極位置位置決め治具50に挿入した極異方性リング磁石100が回転し極位置が合う様子を示す図。
図15本発明の極異方性リング磁石の製造装置の例を示す斜視図である。これらの図面を使用し、本発明を説明する。 第三の実施形態においては磁極数が4極の極異方性リング磁石100の極位置を決める極位置位置決め治具50について説明する。
【0037】
図10、
図11において極位置位置決め治具50は円筒状であり非磁性の金属、例えば非磁性のステンレスや真鍮などからなる。外周面側には軸方向に沿って断面矩形の溝60(60a、60b)が周方向に4カ所、極位置位置決め治具50の軸中心から90度ずつずらして形成されている。断面矩形の溝60は極位置位置決め治具50の外周面側に等間隔で配置されている。
【0038】
溝60には極位置位置決め治具50の径方向を磁化方向とする極位置位置決め磁石80が3ケ、隣り合う磁石の磁化方向が異なるように配置されている。極位置位置決め磁石80aの磁化方向は極位置位置決め治具50の径方向外側を向いている。極位置位置決め磁石80bの磁化方向は極位置位置決め治具50の径方向内側を向いている。極位置位置決め磁石80aに挟まれ、かつ極位置位置決め磁石80bと対向する位置の溝60bには磁石は配置されていない。当該溝60bには極位置位置決め治具50の中心孔90に向かって貫通する線状のマーキング孔70が穿孔されている。溝60aは磁石80が挿入配置できる貫通孔であっても良い。
【0039】
極異方性リング磁石100は円筒形状をしており、中央部に貫通孔120を有する。磁極が4極になるように形成されている。点線110にて配向の様子を示した。
図13にて極異方性リング磁石100を極位置位置決め治具50の貫通孔90に挿入配置した状況を示した。極位置位置決め磁石80の軸方向長さは極位置位置決め治具50の軸方向長さと同じにしてあるが、極位置を位置決めする極異方性リング磁石磁石100の軸方向長さと同じ長さにすればよく、さらに極位置位置決め治具50にて位置決めする極異方性リング磁石100が極位置位置決め治具50内で十分に回転する長さであれば良い。また極位置位置決め磁石80の大きさ(幅や厚さ)は極異方性リング磁石100が極位置位置決め治具50内で十分に回転する長さであれば良い。
【0040】
図14にて極異方性リング磁石100を極位置位置決め治具50に挿入した際に極異方性リング磁石100の極位置が極位置位置決め磁石80の位置に倣い回転する様子を示す。
図14(R)は極異方性リング磁石100を極位置位置決め治具50に挿入した直後の図、
図14(S)は極位置位置決め治具50に配置された3つの極位置位置決め磁石80の磁界に倣って極異方性リング磁石100が回転し極異方性リング磁石100の極と極位置位置決め治具50の極位置位置決め磁石80の周方向の位置が一致した後の図である。
図14(R)において挿入した磁石は極位置位置決め磁石に吸引され矢印方向に回転し
図14(S)に示すように極位置位置決め磁石の位置と磁極の位置が一致する。
【0041】
図15は第三の実施形態を示す極異方性リング磁石の製造方法を示す斜視図である。極位置位置決め治具50の軸方向の前後には棒状の一対のレール24、25が配置してあり、レールは極位置を位置決めする極異方性リング磁石100が極位置位置決め治具の中央部の孔部へ挿入、排出できるように高さと幅を調節してある。極異方性リング磁石100は図示しない移載手段により前部のレール24に載置される。23は極異方性リング磁石14を極位置位置決め治具20に挿入するための押し込み手段(押し出し手段)であり、円盤状の頭部21と押し込み棒22によって構成される。
押し込み棒23は図示しない押し込み機構により、極異方性リング磁石100を極位置位置決め治具50に挿入する。極位置位置決め治具50に挿入された極異方性リング磁石100は前述の作用によって磁極の位置が極位置位置決め治50具の極位置位置決め磁石80の位置(磁極の位置)にそろうこととなる。
26は公知の印字手段(マーキング手段)である。マーキング手段26は例えばインクジェットによる刻印装置でありノズルの先からインクを噴射する。マーキング手段26は極位置位置決め治具50に穿孔された孔70を通じて、周方向に位置決めされた極異方性リング磁石100の極位置にマーキング27を施す。
実施の形態3によればマーキングは磁石100が極位置位置決め治具50に挿入された状態で行われるので、極位置とマーキングにずれが生じにくい。
【0042】
その後再度押し込み手段(押し出し手段)により極異方性リング磁石は極位置位置決め治具20により後部のレール25上に押しだされる。押しだされた後の極異方性リング100磁石のそれぞれの間隔は前後の磁石の影響受けない程度に適宜設定すればよい。
無着磁の状態で極位置にマークを施された極異方性リング磁石100は例えば
図8のごとく(磁極数は異なるが組立の参考図とする)シャフト4のDカット5平面部とマーク27の周方向の位置を一致させるようにシャフトの大径部6に固着させ、ローター50を形成する。
【0043】
本発明によれば、極位置位置決め治具50に一対のレール24,25や押し込み手段等をそろえなくとも極位置位置決め治具50のみでも使用することができる。極位置位置決め治具50を単体で使用する際には、極位置のわからない極異方性リング磁石100を極位置位置決め磁石50に例えば手を使って挿入し、極位置が極位置位置決め磁石80とそろった段階でマーキング孔70の位置にマジック等で極位置を記入すればよい。
【0044】
本発明において、極数分の磁石を等配したが、極数を除く約数分の磁石を配置することでも本発明は実施可能である。その際は選択する約数によって隣り合う磁石の磁極は同極となる場合と異極となる場合があるが極位置を位置決めする磁石の極位置の磁極の向きに合わせ適宜設定する。
【0045】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって限定されることはない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲の変更はすべて含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 50,60 ローター
2 極異方性リング磁石(極位置を示す凹部を有する)
3 凹部
4 ローターシャフト
5 Dカット
6 ローター大径部
7 配向の様子
9 ローターヨーク
10 円筒体
11 貫通孔
12 溝部
13 磁石
14 極異方性リング磁石(極位置を示す凹部を有さない)
15 スペーサ
20 極位置位置決め治具
23 磁石押し込み(押し出し)手段
24 25 レール
26 印字手段
27 マーク(極位置を示す)
30 極異方性リング磁石移載手段
40 ローターヨーク移動手段
50 極位置決め治具(4極異方性)
60(60a、60b)溝
70 マーキング孔
80(80a、80b)極位置位置決め磁石
90 貫通孔(極位置位置決め治具)
100 極異方性リング磁石(4極異方性)
110 磁極数4極の極異方性リング磁石の配向の様子
120 貫通孔