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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】重合性液晶組成物および液晶重合膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230801BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20230801BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230801BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230801BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20230801BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F220/30
G02B5/30
G02B5/20 101
G02F1/13363
G02F1/1335 505
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019206944
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021080330
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 さくら
(72)【発明者】
【氏名】大槻 大輔
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/096724(WO,A1)
【文献】特開2003-315825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/、299/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン系帯電防止剤と界面活性剤と重合性液晶化合物とを含有する重合性液晶組成物であって、
前記ノニオン系帯電防止剤が、下記式(1-1)または(1-2)で表される化合物であり、

式(1-1)および(1-2)中、Rはそれぞれ独立して、水素またはメチル基であり;
は、炭素数1から20のアルキレン基、または式(L-1)もしくは式(L-2)で表される二価基であり、この炭素数1から20のアルキレン基において、少なくとも1つの-CH-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも一つの水素は、水酸基または炭素数1から5のアルキル基で置き換えられても良く;
は、単結合または炭素数1から20のアルキレン基であり、このLにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも一つの水素は、水酸基または炭素数1から5のアルキル基で置き換えられてもよく;

式(L-1)および(L-2)中、Dはそれぞれ、単結合、-CH-、-C(CH-、-C(CF-または-SO-であり、
前記重合性液晶化合物が、下記式(2)で表される化合物であり、


式(2)中、Aは独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピペラジン-1,4-ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基、またはラジカル重合性官能基を有する1価基で置き換えられてもよく;
は独立して、単結合、-CHCH-、-COO-、-OCO-、-CHO-、-OCH-、-OCHCHO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CHCHCOO-、-OCOCHCH-、-CHCHOCO-、または-COOCHCH-であり;
aおよびbは独立して、0から3の整数であり、かつaおよびbの和は、2から6であり;
は独立して、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-であり;
は独立して、単結合または炭素数1から20のアルキレン基であり、このQにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく;
PGはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシであり;
Gは1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、フルオレン-2,7-ジイルまたは式(G-1)~式(G-4)で表される基であり、この1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、およびフルオレン-2,7-ジイルにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基、またはラジカル重合性官能基を有する1価基で置き換えられてもよく;

式(G-1)~式(G-4)中、Xは独立して-CH-、-NH-、-O-、-S-、または-CO-であり、この-CH-または-NH-において、少なくとも1つの水素は炭素数1~5のアルキルで置き換えられてもよく、Xは独立して-CH=または-N=であり、Zは独立して単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-NR-、-C(CH)=N-NR-または-CH=N-N=CH-であり、ここで、Rは独立して水素、炭素数1~10のアルキル基またはラジカル重合性官能基を有する1価基であり、T、TおよびTはそれぞれπ電子の数が6~14である1価基であり、T、TおよびTはそれぞれ独立して、水素、トリフルオロメチル基、シアノ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のアルコキシカルボニル基、炭素数1~5のアルカノイル基、炭素数1~5のアルカノイルオキシ基、炭素数1~5のアルキルスルフィド基、またはラジカル重合性官能基を有する1価基であり、TとTは酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含む5~7員環の複素環または環状ケトンを形成しても良い、
重合性液晶組成物。
【請求項2】
上記ノニオン系帯電防止剤が、その分子量が2000以下である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
上記ノニオン系帯電防止剤の含有量が、上記重合性液晶化合物の全量に対して、0.01~15重量%である、請求項1または2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶重合体。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物をホモジニアス配向モードで重合して得られる液晶重合体。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物により得られる、位相差膜。
【請求項7】
請求項6に記載の位相差膜を含んだ、偏光板。
【請求項8】
請求項6に記載の位相差膜を含んだ、カラーフィルタ。
【請求項9】
請求項6に記載の位相差膜を含んだ、表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶組成物、液晶重合膜、特に表示素子向け位相差膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、視野角の拡大、画像色調の調整などのために、液晶表示装置に位相差膜を配置することが行われている。このような位相差膜として、延伸ポリマーフィルムが用いられている。重合性液晶化合物の硬化物である液晶重合体も、位相差膜として使用可能である。液晶重合体の使用は、製膜性の容易さ、膜厚の薄膜化や耐久性の向上などの観点から検討されている。
【0003】
液晶重合体は重合性液晶組成物溶液を基板に直接塗布することで、製膜できる。そのため、接着層を必要とせずに積層体を形成できる。液晶表示装置の薄型化、軽量化、コントラスト向上の観点から、液晶セルの内側に位相差を有す液晶重合膜を配置した、インセル位相差膜が開発されるようになった。
【0004】
液晶重合体の製膜工程において、重合性液晶組成物溶液を基板に塗布した後、溶剤を除去するために熱処理を行う(特許文献1)。該熱処理により、基板の周囲が高温となり、基板の周囲の湿度が低下する。基板の周辺の湿度が低いことから、基板の搬送の際の基板と装置の接触や基板と装置の剥離などにより帯電が発生しやすくなり、基板に静電気が溜まりやすくなる(特許文献2)。
【0005】
液晶パネルにおいて、パネルが静電気帯電していると、帯電によるDC印加により、液晶層の配向が乱されることが知られている(特許文献3)。重合性液晶材料でも同様に、基板が静電気帯電することにより重合性液晶層の配向が乱され、この配向乱れが固定化されることによる配向ムラが発生する。
【0006】
帯電による外観不良を改善する目的で、帯電防止剤として4級アンモニウム塩を含有する重合性液晶組成物が知られている(特許文献4)。
【0007】
しかし、インセル位相差膜は、配向膜等を介して位相差膜に含まれる不純物が液晶に溶出する可能性がある。不純物が液晶層に溶出すると、液晶層の電圧保持率(VHR)の低下、イオン密度(ID)の増加を招き、液晶表示素子においては白抜け、配向ムラ、焼き付きなどの表示不良を発現する可能性がある。(特許文献5)
【0008】
また、液晶重合体の製膜工程において、重合性液晶組成物溶液を基板に塗布した後、溶剤を除去するために熱処理を行う際、重合性液晶組成物溶液の濡れ性が乏しいためにハジキが発生してしまう。ハジキを改善する目的で、フッ素系ノニオン性界面活性剤、シリコ-ン系ノニオン性界面活性剤を使用することが一般的である。(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-181553号公報
【文献】国際公開2014/034503号
【文献】国際公開2012/050179号
【文献】特開2013-164520号公報
【文献】国際公開2015/129672号
【文献】特開2016-200639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
重合性液晶組成物を用いた液晶重合体成膜工程において、静電気による液晶分子の配向の乱れなどにより配向ムラが発生し、歩留まりが悪化するといった課題がある。また、4級アンモニウム塩などのイオン成分を含む重合性液晶組成物はインセル位相差膜に適用すると液晶セル中の液晶層にイオン成分が溶出し、液晶層の電圧保持率(VHR)の低下、イオン密度(ID)の増加を招き、液晶表示素子においては白抜け、配向ムラ、焼き付きなどの表示不良を発現させる懸念がある。
【0011】
重合性液晶組成物により得られる液晶重合膜をインセル位相膜として備える液晶表示素子においては、液晶重合膜の上にフォトスペーサーや保護膜等が形成される。上記の界面活性剤を含む重合性液晶組成物を用いる場合、得られた液晶重合膜上に塗布されるフォトスペーサーや保護膜等を製膜するための塗布液の濡れ性が悪いためにハジキが発生する、すなわち、リコート性が悪化する課題もある。重合性液晶組成物により得られる液晶重合膜をインセル位相膜として備える液晶表示素子を製造する際、帯電しやすく、リコート性の悪い液晶重合組成物を使用することは、製造歩留まり低下させ、さらに、得られる液晶表示素子の表示品位が損なわれるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らはノニオン系帯電防止剤を含有する重合性液晶組成物を用いることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明は以下の通りである。
【0013】
本発明の態様1は、ノニオン系帯電防止剤を含有する重合性液晶組成物。
【0014】
態様2は、界面活性剤を含有する、態様1に記載の重合性液晶組成物。
【0015】
態様3は、上記ノニオン系帯電防止剤が、式(B)で表される構造を有する化合物である、態様1または2に記載の重合性液晶組成物。
【0016】
態様4は、上記帯電防止剤が(メタ)アクリロイル基を有する、態様1から3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0017】
態様5は、上記帯電防止剤が、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシ(メタ)アクリレート化合物である、態様1から4のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0018】
態様6は、前記帯電防止剤が、式(1-1)または(1-2)で表される、態様1から5のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。

式(1-1)および(1-2)中、Rはそれぞれ独立して、水素またはメチル基であり;
は、炭素数1から20のアルキレン基、または式(L-1)もしくは式(L-2)で表される二価基であり、このLにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも一つの水素は、水酸基または炭素数1から5のアルキル基で置き換えられてもよく;
は、単結合または炭素数1から20のアルキレン基であり、このLにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも一つの水素は水酸基あるいは炭素数1から5のアルキル基で置き換えられてもてもよく;


式(L-1)及び(L-2)中、Dはそれぞれ、単結合、-CH-、-C(CH-、-C(CF-または-SO-である。
【0019】
態様7は、上記ノニオン系帯電防止剤が、その分子量が2000以下である、態様1から6のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0020】
態様8は、上記帯電防止剤の含有量が、重合性液晶化合物の全量に対して、0.01~15重量%である、様態1から7のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0021】
態様9は、態様1から8のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶重合体。
【0022】
態様10は、態様1から8のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物をホモジニアス配向モードで重合して得られる液晶重合体。
【0023】
態様11は、態様1から8のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物により得られる、位相差膜。
【0024】
態様12は、態様11に記載の位相差膜を含んだ、偏光板。
【0025】
態様12は、態様11項に記載の位相差膜を含んだ、カラーフィルタ。
【0026】
態様14は、態様11項に記載の位相差膜を含んだ、表示素子。
【発明の効果】
【0027】
本発明者らはノニオン系帯電防止剤を含有する重合性液晶組成物を用いることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0028】
ノニオン系帯電防止剤と界面活性剤を含有する重合性液晶組成物を用いて製造される液晶重合体は、製造工程で発生する配向方向のムラが無く、リコート性が高く有用である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明において、「リコート性」とは、重合性液晶組成物を重合して得られる液晶重合膜上に塗布される塗布液の濡れ易さである。リコートに優れるとは、液晶重合膜上で塗布液が濡れ易いことであり、リコート性が悪いとは、液晶重合膜上で塗布液が濡れ難いことである。
【0030】
本発明において、「配向欠陥」とは、液晶重合膜における液晶分子の配向の欠陥である。得られた基板つき液晶重合膜を、偏光顕微鏡で目視観察を行い、輝点として観察される。
本発明において、「配向ムラ」とは、得られた基板つき液晶重合体をクロスニコル状態の偏光板の間に挟持し、バックライト上で目視観察した時に見えるムラのことである。
【0031】
本発明において、「Re」とは、レターデーションであり、常光に対する異常光の位相の遅れのことである。位相差機能とはレターデーションを意味する。液晶重合体の層の厚みをdとし、Δnは複屈折率とすると、Re=Δn・dで表される。
【0032】
本発明において、「Re(λ)」とは、波長λnmの光を膜面に対して垂直に入射した時のレターデーションである。
【0033】
本発明において、「π電子の数」とは、価電子が局在化しているとみなして示した、有機化合物の価標による構造式において、{価標による構造式中の2重結合の個数}×2で算出した数である。また、化合物中に酸素、窒素が含まれる場合には、その酸素、窒素に含まれる非共有電子対の数と、前述した{価標による構造式中の2重結合の個数}×2で算出した数を合算した値である。
【0034】
本発明において「化合物(X)」とは、式(X)で表わされる化合物を意味する。ここで「化合物(X)」中のXは文字列、数字、記号等である。
【0035】
本発明において、「重合性官能基」とは、化合物中に有すると、光、熱、触媒などの手段により重合し、より大きな分子量を有する高分子へと変化させる官能基である。
本発明において、「単官能化合物」とは、重合性官能基を1つ有する化合物である。
本発明において、「多官能化合物」とは、重合性官能基を複数有する化合物である。
【0036】
本発明において、「液晶組成物」とは、液晶相を有する混合物である。
本発明において、「液晶化合物」とは、純物質として液晶相を有する化合物及び純物質として液晶相を有さないが液晶組成物の成分となる化合物の総称である。本発明において、「重合性化合物」とは、重合性官能基を少なくとも1つ有する化合物である。
【0037】
本発明において、「重合性液晶化合物」とは、液晶化合物である重合性化合物である。
本発明において、「非液晶性重合性化合物」とは、純物質では液晶相を有さない化合物である重合性化合物である。
【0038】
本発明において、「重合性液晶組成物」とは、重合性液晶化合物を含み、液晶相を有する組成物を意味する。
本発明において、「重合性液晶組成物溶液」とは、重合性液晶組成物と溶剤とを含む物を意味する。
本発明において、「液晶重合体」(liquid crystal polymer)とは、重合性液晶組成物を重合して得られた部分を意味する。
本発明において、「基板つき液晶重合体」とは、基板上の重合性液晶組成物を重合して得られる、基板を含む物を意味する。
【0039】
本発明において「室温」とは、15℃から35℃のいずれかの温度を指す。
【0040】
化学式中に下記の化学構造の記載があった場合には、波線部が原子または該官能基の結合位置である。ここで下記のCは任意の原子または官能基である。
【0041】
【0042】
化学式中に、同一の符号があり、複数存在する場合は、符号が示す構造は同一であっても異なるものであってもよい。
【0043】
本発明において、「液晶重合膜」(liquid crystal polymerized membrane)とは、液晶重合体および基板つき液晶重合体の総称であり、膜状だけでなく板状のものも含むものとする。
【0044】
本発明において、「位相差膜」とは、光学的異方性を有する素子であって、フィルムまたは板状の物である。
本発明において、「偏光板」とは、特定方向の光の透過率を制御し、直線偏光を作成する素子であって、膜状または板状の物である。
【0045】
本発明において、「ホモジニアス配向」とは、プレチルト角が0度から5度である配向状態を指す。
本発明において、「ホメオトロピック配向」とは、プレチルト角が、85度から90度である配向状態を指す。
本発明において、「ツイスト配向」とは、液晶分子の長軸方向の配向方向が基板に対して平行ではあり、かつ、液晶分子が基板から離れるにしたがって、基板表面の垂線を軸として、階段状にねじれている配向状態をいう。
【0046】
≪重合性液晶組成物≫
本発明の重合性液晶組成物は、少なくとも一つの重合性液晶化合物および少なくとも一種類のノニオン系帯電防止剤を含有する。
【0047】
≪1.ノニオン系帯電防止剤≫
本発明の重合性液晶組成物は、ノニオン系帯電防止剤を含有する。ノニオン系帯電防止剤は、水に溶かしたときに電離してイオン化しない親水基を有する帯電防止剤である。ノニオン系帯電防止剤を含有する重合性液晶からなる液晶重合体をインセル位相差膜として用いる場合、液晶セル中へのイオン成分の溶出が抑制されるため好ましい。
【0048】
本発明のノニオン系帯電防止剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコキシドなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル。ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル。ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ペンタエリスリットなどの脂肪酸アルカノールアミド、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノラウリン酸エステルなどの、グリセリン脂肪酸エステル。エポキシ化合物とメタクリル酸もしくはアクリル酸を反応させたエポキシアクリレート化合物であるエポキシエステル等が挙げられる。
【0049】
本発明のノニオン系帯電防止剤は、帯電防止やリコート性などの本発明の課題を解決する観点から、式(B)の構造を有する化合物であることが好ましい。

例えば、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びエポキシエステルが挙げられる。
【0050】
本発明のノニオン系帯電防止剤は、液晶化合物との相溶性や配向欠陥を軽減するなどの観点から、分子量は2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、1200以下がさらに好ましい。
【0051】
本発明のノニオン系帯電防止剤は、重合性液晶化合物との溶解性や有機溶剤との相溶性の観点から、エポキシ化合物とメタクリル酸もしくはアクリル酸を反応させたエポキシアクリレート化合物である前記帯電防止剤が好ましい。また、2つの(メタ)アクリロイル基を含有する前記帯電防止剤である場合、液晶重合体の耐熱性、耐水性、および耐薬品性などの低下を抑制することが出来るため、より好ましい。
【0052】
エポキシアクリレート化合物の好ましい化合物は式(1-1)または(1-2)で表される化合物の群から選択されるものである。

式(1-1)および(1-2)中、Rはそれぞれ独立して、水素またはメチル基であり;
は、炭素数1から20のアルキレン基、式(L-1)または式(L-2)で表される基あり、このLにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも一つの水素は水酸基あるいは炭素数1から5のアルキル基で置き換えられてもよく;

式(L-1)及び(L-2)中、Dはそれぞれ、単結合、-CH-、-C(CH-、-C(CF-または-SO-であり;Lは、単結合または炭素数1から20のアルキレン基であり、このLにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも一つの水素は水酸基あるいは炭素数1から5のアルキル基で置き換えられてもよい。
【0053】
式(1-1)で表される化合物の好適な具体例としては、式(1-1-1)~式(1-1-3)で表される化合物が挙げられる。


式(1-1-1)~式(1-1-3)中、Mは、水素、水酸基、少なくとも一つの水素が水酸基あるいは炭素数1から5のアルキル基で置き換えられてもよい、炭素数1から5のアルキル基であり;
は、それぞれ独立して水素またはメチル基である。
【0054】
式(1-2)で表される化合物の好適な具体例としては、式(1-2-1)で表される化合物が挙げられる。

式(1-2-1)中、Rは、それぞれ独立して水素またはメチル基である。
【0055】
密着性、帯電防止効果、および、リコート性が向上し、配向欠陥が発生しない観点から、重合性液晶組成物中の上記エポキシアクリレート化合物は、重合性液晶組成物全量に対して0.01~15重量%が好ましく、0.05~10重量%がより好ましい。0.2~5重量%がさらに好ましい。
【0056】
帯電防止効果、および、リコート性が向上する観点から、酸価(KOH mg/g)が2以上のエポキシアクリレート化合物が好ましく、酸価(KOH mg/g)が4以上のエポキシアクリレート化合物がより好ましい。
【0057】
≪2.重合性液晶化合物 ≫
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物を1つ以上含有する。重合性液晶化合物としては、液晶相の温度範囲の広さ、および有機溶剤との相溶性、波長分散の制御のし易さの観点から、式(2)で表される化合物が好ましい。
【0058】


式(2)中、Aは独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピペラジン-1,4-ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基、または重合性官能基を有する1価基で置き換えられてもよい。
は独立して、単結合、-CHCH-、-COO-、-OCO-、-CHO-、-OCH-、-OCHCHO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CHCHCOO-、-OCOCHCH-、-CHCHOCO-、または-COOCHCH-である。液晶重合膜の高温環境下における位相差機能の悪化の抑制の観点から、少なくとも1つが、-CHCHCOO-または-OCOCHCH-であることが好ましい。
aおよびbは独立して、0から3の整数であり、かつaおよびbの和は、2から6である。
は独立して、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-である。
は独立して、単結合または炭素数1から20のアルキレン基であり、このQにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。
PGはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である。
Gは1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、フルオレン―2,-7-ジイルまたは式(G-1)~式(G-4)で表される基である。この1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、およびフルオレン―2,-7-ジイルにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基、または重合性官能基を有する1価基で置き換えられてもよい。

式(G-1)~式(G-4)中、Xは独立して-CH-、-NH-、-O-、-S-、または-CO-であり、この-CH-または-NH-において、少なくとも1つの水素は炭素数1~5のアルキル基で置き換えられてもよく、Xは独立して-CH=または-N=であり、Zは独立して単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-NR-、-C(CH)=N-NR-または-CH=N-N=CH-であり、ここで、Rは独立して水素、炭素数1~10のアルキル基または重合性官能基を有する1価基であり、T、TおよびTはそれぞれπ電子の数が6~14である1価基であり、T、TおよびTはそれぞれ独立して、水素、トリフルオロメチル基、シアノ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のアルコキシカルボニル基、炭素数1~5のアルカノイル基、炭素数1~5のアルカノイルオキシ基、炭素数1~5のアルキルスルフィド基、または重合性官能基を有する1価基であり、TとTは酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含む5~7員環の複素環または環状ケトンを形成してもよい。
【0059】
式(2)で表される化合物の好ましい例を示す。
【0060】

【0061】



【0062】

【0063】
【0064】

【0065】
式(2-A-1)~式(2-A-20)、式(2-1-1)~式(2-1-5)、式(2-2-1)~式(2-2-6)、式(2-3-1)~式(2-3-6)、および式(2-4-1)~式(2-4-5)において、Yは独立して単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-であり、Qは独立して単結合または炭素数1~20のアルキレン基であり、該Qにおいて少なくとも1つの-CH2-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、PGは独立してアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基である。
【0066】
≪3.界面活性剤≫
重合性液晶組成物への界面活性剤の添加は、濡れ性を向上させ、ハジキを抑制する。
液晶重合体が均一な配向になりやすいため、および、重合性液晶組成物の濡れ性が向上するため、重合性液晶組成物中の界面活性剤は、重合性液晶組成物全量に対して0.001~0.5重量%が好ましく、0.01~0.2重量%がより好ましい。
界面活性剤として、イオン性界面活性剤、並びに、シリコーン系ノニオン性界面活性剤、フッ素系ノニオン性界面活性剤、ビニル系ノニオン性界面活性剤およびそのほかのノニオン界面活性剤がある。
【0067】
イオン性界面活性剤として、チタネート系化合物、イミダゾリン、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコール、およびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族、または芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などが、挙げられる。
【0068】
シリコーン系ノニオン性界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであって、側鎖および/または末端にポリエーテル基や長鎖アルキル基などの有機基を導入した化合物などが挙げられる。
【0069】
フッ素系ノニオン性界面活性剤としては、炭素数2~7のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を有する化合物などが挙げられる。
【0070】
炭素水素系ノニオン性界面活性剤としては、アクリル系ポリマーを主成分とした化合物などが挙げられる。
【0071】
ビニル系ノニオン性界面活性剤としては、重量平均分子量が1000~1000000の(メタ)アクリル系高分子などが挙げられる。重合性液晶組成物への重合性官能基を有する界面活性剤の添加は、液晶重合体の表面硬度を向上する。
【0072】
重合性液晶組成物の濡れ性が向上させ、ハジキを抑制する効果の観点から、フッ素系ノニオン性界面活性剤、シリコーン系ノニオン性界面活性剤あるいは、炭素水素系ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0073】
フッ素系ノニオン性界面活性剤、シリコーン系ノニオン性界面活性剤あるいは、炭素水素系ノニオン性界面活性剤は、塗膜の表面張力を低下させ、塗布性を良くするが、表面エネルギーが低いため、塗膜表面に偏在する傾向があり、そのような表面は、撥水撥油性が高くなる。上層へのリコート性と、下層への塗布性の観点から、フッ素系ノニオン性界面活性剤、シリコーン系ノニオン性界面活性剤あるいは炭素水素系ノニオン性界面活性剤と帯電防止剤の併用がより好ましい。
【0074】
≪4.光重合開始剤≫
本発明の重合性液晶組成物溶液は、光重合開始剤を1つ以上含有してもよい。
光重合開始剤の添加は、重合性液晶組成物の重合速度を最適化する。硬化プロセスの容易さから、重合開始剤は光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤および光アニオン重合開始剤に分類される。
重合反応速度を促進するため、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する重合性液晶化合物は、光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。重合反応速度を促進するため、エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合性液晶化合物は、光カチオン重合開始剤または光アニオン重合開始剤を用いることが好ましい。
【0075】
光ラジカル開始剤はベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤または水素引き抜き型重合開始剤などである。
【0076】
イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロピルフェニル)-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリニルフェニル)-ブタン-1-オンなどが、アセトフェノン型光重合開始剤である。
【0077】
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイドなどが、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤である。
【0078】
2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1-オクタノン、1,2-プロパンジオン,1-[4-[[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]チオ]フェニル-,2-(オルト-ベンゾイルオキシム)などが、オキシムエステル系光重合開始剤である。
【0079】
ベンゾフェノン、オキシフェニル酢酸,2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、オキシフェニル酢酸,2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステル、2-オキソ-2-フェニル酢酸メチルエステルなどが、水素引き抜き型重合開始剤である。
【0080】
光カチオン重合開始剤は、スルホニウム塩系光重合開始剤、ヨードニウム塩光重合開始剤またはトリアジン系光重合開始剤などである。
【0081】
トリ(4-メチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、トリ(4-メチルフェニル)スルホニウム六フッ化リン酸塩、(ビフェニル)[4-(フェニルチオ)フェニル] スルホニウム六フッ化リン酸塩などが、スルホニウム塩系光重合開始剤である。
【0082】
(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム六フッ化リン酸塩、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム六フッ化リン酸塩などが、ヨードニウム塩光重合開始剤である。
【0083】
2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、4-(3,4-ジメトキシフェニル)-2,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(2,4-ジメトキシ)スチリル-1,3,5-トリアジンなどが、トリアジン系光重合開始剤である。
【0084】
光アニオン重合開始剤は、イオン系光重合開始剤、非イオン系重合開始剤などである。
【0085】
1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸塩、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸塩などが、イオン系光重合開始剤である。
【0086】
2-ニトロフェニルメチル4-メタクリロイルオキシピペリジン-1-カルボキシレート、9-アントリルメチルN,N-ジエチルカルバメート、アセトフェノン-オルト-ベンゾイルオキシム、シクロヘキシルカルバミン酸2-ニトロベンジル、シクロヘキシルカルバミン酸1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル、1-(アントラキノン-2-イル)エチルイミダゾールカルボキシレート、1-ピペリジン-3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロパン-1-オンなどが、非イオン系重合開始剤である。
【0087】
液晶重合膜のコントラスト、べたつき防止、および、レターデーションの経時変化防止の観点から、重合性液晶組成物中の光重合開始剤の総含有重量は、重合性液晶組成物全量に対して、1~30重量%が好ましく、1~15重量%がより好ましく、3~10重量%が更に好ましい。
【0088】
光重合開始剤とともに増感剤を重合性液晶組成物溶液に添加してもよい。イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチル-4ジメチルアミノベンゾエート、および2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエートなどが増感剤である。
【0089】
重合性液晶組成物溶液への連鎖移動剤の添加により、重合性液晶化合物の反応率および液晶重合膜中の重合体の鎖の長さが調整できる。
該連鎖移動剤の量の増加により、重合性液晶化合物の反応率は低下する。該連鎖移動剤の量の増加により、該重合体の鎖の長さは減少する。
【0090】
チオール誘導体およびスチレンダイマー誘導体などが、連鎖移動剤である。
【0091】
ドデカンチオール、2-エチルへキシル-(3-メルカプト)プロピオネートなどが、単官能チオール誘導体である。
トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンなどが、多官能チオール誘導体である。
2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-1-ブテンなどが、スチレンダイマー系連鎖移動剤である。
【0092】
≪5.重合性液晶組成物への添加物≫
本発明の重合性液晶組成物に1種類以上の添加物をさらに添加してもよい。
【0093】
本発明の重合性液晶組成物は、非液晶性重合性化合物を含んでもよい。液晶相を維持するため、当該重合性液晶組成物中の非液晶性重合性化合物の合計重量は、当該重合性液晶組成物中の重合性化合物の合計重量の10分の1以下であることが好ましい。
【0094】
重合性液晶組成物への重合性官能基を2つ以上有する化合物の添加により、液晶重合体の機械的強度の強化若しくは耐薬品性の向上、またはその両方が期待できる。非液晶性重合性化合物はビニル系重合性官能基を1つまたは2つ以上有する化合物が挙げられる。
【0095】
多官能化合物の非液晶性重合性化合物として、ペンタエリストールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリストールトリメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、トリメチロールEO付加トリメタアクリレート、トリスメタアクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリスメタアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリメタアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリメタアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、などが挙げられる。
【0096】
重合性液晶組成物へのビスフェノール構造またはカルド構造を有する重合性化合物の添加は、重合体の硬化度の向上および液晶重合体のホメオトロピック配向を誘導する。
【0097】
重合性液晶組成物への連鎖移動剤の添加により、重合性液晶化合物の反応率および液晶重合膜中の重合体の鎖の長さが調整できる。該連鎖移動剤の量の増加により、重合性液晶化合物の反応率は低下する。該連鎖移動剤の量の増加により、該重合体の鎖の長さは減少する。
【0098】
チオール誘導体およびスチレンダイマー誘導体などが、連鎖移動剤である。
【0099】
ドデカンチオール、2-エチルへキシル-(3-メルカプト)プロピオネートなどが、単官能チオール誘導体である。
トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンなどが、多官能チオール誘導体である。
2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-1-ブテンなどが、スチレンダイマー系連鎖移動剤である。
【0100】
重合性液晶組成物への重合阻害剤の添加は、重合性液晶組成物の保存時の重合開始を防止する。重合阻害剤として、(1)ニトロソ基を有する化合物である、2,5-ジ(t-ブチル)ヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、メチレンブルー、ジフェニルピクリン酸ヒドラジド、フェノチアジン、N,N-ジメチル-4-ニトロソアニリンなど、および(2)ベンゾチアジン誘導体であるo-ヒドロキシベンゾフェノン、2H-1,3-ベンゾチアジン-2,4-(3H)ジオンなどが挙げられる。
【0101】
重合性液晶組成物への重合阻害剤の添加は、重合性液晶組成物中のラジカルの発生による重合性液晶組成物中の重合反応を抑制する。重合阻害剤の添加は、重合性液晶組成物の保存性を向上させる。
該重合阻害剤として、(1)フェノール系酸化防止剤、(2)イオウ系酸化防止剤、(3)リン酸系酸化防止剤、(4)アミン系酸化防止剤などが挙げられる。重合性液晶組成物との相溶性や液晶重合体の透明性の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。相溶性の観点からフェノール系酸化防止剤としては、水酸基のオルト位にt-ブチル基を有する化合物が好ましい。
【0102】
重合性液晶組成物への紫外線吸収剤の添加は、重合性液晶組成物の耐候性を向上させる。
重合性液晶組成物への光安定剤の添加は、重合性液晶組成物の耐候性を向上させる。
重合性液晶組成物への酸化防止剤の添加は、重合性液晶組成物の耐候性を向上させる。
重合性液晶組成物へのシランカップリング剤の添加は、基板と液晶重合膜との間の密着性を改善する。
【0103】
本発明の重合性液晶組成物は光学活性を有する化合物を含有してもよい。液晶組成物への光学活性を有する化合物の添加は、液晶重合膜をツイスト配向に誘導させる。該液晶重合体は、300~2000nmの波長領域における選択反射フィルムおよびネガティブ型Cプレートとして使用できる。
【0104】
光学活性を有する化合物として、不斉炭素を有する化合物、ビナフチル構造およびヘリセン構造などを有する軸不斉化合物並びにシクロファン構造などを有する面不斉化合物などが挙げられる。ツイスト配向の螺旋ピッチを固定化する観点から、この場合の光学活性を有する化合物は、重合性化合物であることが好ましい。
【0105】
本発明の重合性液晶組成物は二色性色素を含有してもよい。二色性色素と複合化した液晶重合体は、吸収型偏光板として使用することができる。
【0106】
二色性色素は、300~700nmの範囲に極大吸収波長を有するものが好ましい。二色性色素として、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、アントラキノン色素などが利用できる。アゾ色素として、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、スチルベンアゾ色素などが挙げられる。
【0107】
本発明の重合性液晶組成物は蛍光色素や量子ロッドを含有してもよい。蛍光色素や量子ロッドと複合化した液晶重合体は、偏光発光型フィルムおよび波長変換フィルムとして使用できる。
【0108】
≪6.重合性液晶組成物溶液≫
塗布を容易にするため、重合性液晶組成物と溶剤とを含む重合性液晶組成物溶液することが好ましい。溶剤の成分として、エステル、アミド系化合物、アルコール、エーテル、グリコールモノアルキルエーテル、芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、ケトン、アセテート系溶剤などが挙げられる。
【0109】
該アミド系化合物とは、アミド基を有する化合物であって溶剤の成分となるものを指す。アセテート系溶剤とは、アセテート基を有する化合物であって溶剤の成分となるものを指す。
【0110】
該エステルとして、酢酸アルキル、トリフルオロ酢酸エチル、プロピオン酸アルキル、酪酸アルキル、マロン酸ジアルキル、グリコール酸アルキル、乳酸アルキル、モノアセチン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。
【0111】
ここでいう「酢酸アルキル」には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチルなどが挙げられる。ここでいう「プロピオン酸アルキル」には、プロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチルなどが挙げられる。ここでいう「酪酸アルキル」には、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸プロピルなどが挙げられる。ここでいう「マロン酸ジアルキル」には、マロン酸ジエチルなどが挙げられる。ここでいう「グリコール酸アルキル」には、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。ここでいう「乳酸アルキル」には、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸n-プロピル、乳酸ブチル、乳酸エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0112】
該アミド系化合物として、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、N-メチルカプロラクタム、ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0113】
該アルコールとして、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、t-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、ブタノール、2-エチルブタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、1-ドデカノール、エチルヘキサノール、3、5、5-トリメチルヘキサノール、n-アミルアルコール、ヘキサフルオロ-2-プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-3-メトキシブタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどが挙げられる。
【0114】
該エーテルとして、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビス(2-プロピル)エーテル、1,4-ジオキサン、THFなどが好ましい。
【0115】
該グリコールモノアルキルエーテルとして、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどが挙げられる。
【0116】
ここでいう「エチレングリコールモノアルキルエーテル」には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。ここでいう「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」には、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。ここでいう「プロピレングリコールモノアルキルエーテル」には、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。ここでいう「ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル」には、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。ここでいう「エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート」には、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。ここでいう「ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート」には、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。ここでいう「プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート」には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが、挙げられる。ここでいう「ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート」には、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0117】
該芳香族炭化水素として、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、i-プロピルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、s-ブチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、テトラリンなどが挙げられる。
【0118】
該ハロゲン化芳香族炭化水素として、クロロベンゼンなどが挙げられる。該脂肪族炭化水素として、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられる。ハロゲン化脂肪族炭化水素として、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどが挙げられる。脂環式炭化水素として、シクロヘキサン、デカリンなどが挙げられる。
【0119】
該ケトンとして、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルプロピルケトンなどが挙げられる。
【0120】
アセテート系溶剤として、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、1-メトキシ-2-プロピルアセテートなどが挙げられる。
【0121】
重合性液晶化合物との相溶性の観点から、重合性液晶組成物中の溶剤は、重合性液晶組成物全量に対して、30~96重量%が好ましく、50~90重量%がより好ましく、60~90重量%が更に好ましい。
【0122】
≪基板≫
ガラス、プラスチック、金属などが、基板の材質である。該ガラスや該金属は表面にスリット状の加工を施してもよい。該プラスチックは、延伸処理並びに親水化処理および疎水化処理などの表面処理を施してもよい。
基板上にホモジニアス配向およびチルト配向の液晶重合膜を形成する場合は、重合性液晶組成物を基板に塗布する前に、基板に対し、表面処理を行い、液晶重合膜の配向を誘導する。該表面処理としてはラビング処理や直線偏光紫外線照射などの方法がある。
【0123】
重合性液晶組成物の一様な配向を得るためには、基板上に配向膜を形成することが好ましい。
【0124】
以下の手順は、基板上の配向膜の形成およびラビング処理の一例である:
(1)配向剤の溶液を基板に塗布し、
(2)得られた塗膜を有する基板に対して、熱処理し、
(3)レーヨン、綿、ポリアミドなどの素材からなるラビング布を金属ロールなどに捲き付け、
(4)基板に該ロールを接し、
(5)該ロールを回転させながら基板表面と平行に該ロールを移動させる、または該ロールを固定したまま基板を移動させる。
該配向剤はポリイミド、ポリアミック酸またはポリビニルアルコールを含む溶液が挙げられる。
【0125】
以下の手順は、基板上の配向膜の形成および偏光紫外線照射の一例である:
(1)配向剤の溶液を基板に塗布し、
(2)得られた塗膜を有する基板に対して、熱処理し、
(3)基板上の塗膜に、波長250~400nmの直線偏光を照射し、
(4)必要な場合は、加熱処理を施す。
該配向剤は感光性基を有するポリイミド、ポリアミック酸、シクロオレフィンポリマーまたはポリアクリレートなどを含む溶液が用いられる。該感光性基は、カルコン基、シンナメート基、シンナモイル基、スチルベン基、シクロブタン基、またはアゾベンゼン基などが挙げられる。
【0126】
≪液晶重合膜≫
本発明の液晶重合膜は、以下の工程などで作製される。
(I)重合性液晶組成物溶液を、基板上に塗布し、
(II)基板上の重合性液晶組成物溶液から、溶媒を除き、基板上に重合性液晶組成物の塗膜を得、
(III)基板上の重合性液晶組成物を配向させた状態で、光、熱、触媒などの手段で重合させて、液晶重合膜を作製する。
【0127】
重合性液晶組成物溶液の塗布には、各種コート法が用いられる。基板上の重合性液晶組成物の膜厚の均一性の観点から、塗布方法として、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、およびスリットダイコート法が好ましく、スリットダイコート法が好ましい。
【0128】
溶媒を除去するために、基板つき液晶重合体を形成させる際の乾燥中に熱処理することが好ましい。ホットプレート、乾燥炉並びに温風または熱風の吹き付けなどで、該熱処理が可能である。
【0129】
本発明の液晶重合膜を得るために、電子線、紫外線、可視光線、赤外線などの手段を利用できる。液晶重合膜を得るために照射する光の波長の範囲は150~500nmである。好ましい光の波長の範囲は250~450nmであり、より好ましい範囲は300~400nmである。
【0130】
該光の光源として、低圧水銀ランプ、高圧放電ランプ、ショートアーク放電ランプが利用できる。殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、およびブラックライトなどが、低圧水銀ランプである。高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが、該高圧放電ランプである。超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、および水銀キセノンランプなどが、ショートアーク放電ランプである。
【0131】
基板から液晶重合膜を取り除いて、別の基板に定着させる方法として、以下の方法が知られている。
(1)基板上に作成された液晶重合膜と、粘接着剤層を有する基板とを、該液晶重合膜と該粘接着剤層とが接するように張り合わせ、
(2)該液晶重合膜と該粘接着剤層とが接するように張り合わせた物を、初期に作成された基板部分と液晶重合膜との間で剥離させ、
(3)粘接着剤層を有する基板上に液晶重合膜を定着させる。
【0132】
偏光板を基板として液晶重合膜を形成することで、光学補償等の機能を有する、高機能な偏光板が製造できる。たとえば、1/4波長のレターデーションを有する液晶重合膜と偏光板を組合せることで、円偏光板が製造できる。
ヨウ素または二色性色素をドープした吸収型の偏光板、ワイヤーグリッド偏光板等の反射型偏光板などが、偏光板である。
【実施例
【0133】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例における評価法を次に示す。
【0134】
<配向方向のムラ評価>
得られた配向方向のムラ評価用液晶重合膜つき基板の液晶配向方向が、クロスニコルになる偏光板の偏光方向に対して45°になるように挟み、バックライト上で目視観察し、ムラの発生有無を確認した。完全にムラを確認できれば×、わずかにムラが発生していたら○、完全にムラが無ければ◎とした。次に、シンテック(株)製のOPTIPRO-micro偏光解析装置を用い、配向方向のムラ評価用液晶重合膜つき基板の液晶配向方向に対して45°の角度で基板の対角線上の遅相軸配向角を測定した。基板の面内二箇所(LとR)の配向角のズレが生じた場合、ムラが発生しており、二箇所とも同じ配向角であればムラが発生していない。
【0135】
<配向欠陥評価>
得られた液晶重合膜を偏光顕微鏡で暗視野状態にして観察し、光抜け(微細な光の透過)による配向欠陥が全くないのを良、一部に欠陥が見られるのを不良とした。
【0136】
<純水接触角評価>
(1)得られた液晶重合膜に、接触角計PCA-1の液滴法にて、針ゲージ22G(内径0.4mm)を用いて純水を2.0μl滴下し、
(2)1000ms後の接触角をθ/2法を用いて算出した。
(3)算出した接触角が80°未満なら良、80°以上なら不良とした。
接触角が小さいほうが積層の際の濡れ性が良く、好ましい。
【0137】
実施例および比較例において、重合性液晶化合物 (2-A-1-1)、(2-A-2-1)、および(2-A-12-1)は以下に示す構造である。
【0138】
【化1】
【0139】
<試薬の入手>
実施例において、「Irganox 1076」は、BASFジャパン(株)の酸化防止剤、イルガノックス(商標)1076である。
実施例において、「NCI-930」、(株)ADEKAの光重合開始剤、アデカアークルズ(商標)NCI-930である。
実施例において、「DS-21」は、DIC(株)のフッ素系界面活性剤、メガファック(商標)DS-21である。
実施例において、「F-556」は、DIC(株)のフッ素系界面活性剤、メガファック(商標)F-556である。
実施例において、「TEGOFlow370」は、巴工業(株)のアクリル系界面活性剤、TEGO(商標)Flow370である。
実施例において、「PGL XPW」は、ダイセル・オルネクス(株)製のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルのノニオン系帯電防止剤である。分子量は約2,980である。
実施例において、「PGL 20PW」は、ダイセル・オルネクス(株)製のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルのノニオン系帯電防止剤である。分子量は約1,500である。
実施例において、「PGL 10PSW」は、ダイセル・オルネクス(株)製のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルのノニオン系帯電防止剤である。分子量は約760である。
実施例において、「PGL 03P」は、ダイセル・オルネクス(株)製のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルのノニオン系帯電防止剤である。分子量は約240である。
実施例において、「ライトエステルID」は、共栄社化学(株)製で、式(C-1)で示されるイソデシルメタクリレート化合物である。分子量は約230である。
実施例において、「EB3703」はダイセル・オルネクス(株)製で、EBECRYL(商標)3703である。アミン変性ビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート化合物である。分子量は約850である。
実施例において、「MT3547」は、東亞合成(株)の非液晶性重合化合物で、アロニックス(商標)MT-3547である。式(C-2)で示される3官能アクリレート化合物である。分子量は約250である。
実施例において、「M402」は東亞合成(株)の非液晶性重合化合物で、アロニックス(商標)M-402である。式(C-3)で示される、多官能アクリレート化合物である。分子量は約580である。

【0140】
実施例において、ノニオン系帯電防止剤であるエポキシ化合物とメタクリル酸もしくはアクリル酸を反応させたエポキシアクリレート化合物(1-1-1-1)、(1-1-1-2)、(1-1-2-1)、(1-1-3-1)、(1-2-1-1)は以下に示す構造である。

分子量は、(1-1-1-2)は約350、(1-1-2-1)は約350、(1-1-2-1)は約350、(1-1-3-1)は約480、(1-2-1-1)は約210である。
【0141】
<作製に用いた装置>
実施例において、超高圧水銀灯は、ウシオ電機社製のマルチライトUSH-250BYである。
本発明の実施例において、紫外線照度計は、ウシオ電機社製のUIT-150-Aである。
本発明の実施例において、365nm付近の波長の照度を計測するための受光器は、ウシオ電機社製のUVD-S365である。
【0142】
<光配向処理済み配向膜付きガラス基板の作製>
ポリアミック酸溶液PLA-6500を、ガラス基板にスピンコートした。
(1)で作製した光配向剤を、光配向剤がスピンコートされていないガラス面がホットプレートに接するように、60℃のホットプレート上に1分間置き、光配向剤に含まれる溶媒を除去することで、ガラス基板上に塗膜を作製した。
(2)で得られた塗膜に、室温で、塗膜表面に対して90°の方向から、波長365nmの直線偏光を2J/cmのエネルギーで照射した。
その後、230℃に設定したオーブン中で30分間焼成し、膜厚100nmの光配向処理を施された基板を得た。
ここで、PLA-6500は、JNC(株)製の、光配向処理用桂皮酸エステルポリマーである。当該光配向処理は、ホモジニアス配向モードを誘導するものである。
【0143】
<液晶重合膜付き基板の作製>
液晶重合膜を、以下の手順で作製した:
(1)重合性液晶組成物溶液を、配向処理を施された基板上にスピンコートトし、塗膜を作製した。
(2)60℃で3分間、ホットプレートにより加熱し、該塗膜から溶剤を除去した。
(3)続けて、配向処理を施された面上の手順(2)を経た塗膜に対し、90°の方向から、室温で、一定出力の、紫外線を照射し、液晶重合体の層を作製した。ここで、紫外線照射は、365受光器を用いて、配向処理を施された面上の塗膜の表面に対する、直線紫外線の露光量が500mJ/cmになるように、照射時間を5秒から40秒の間で調整した。
【0144】
<配向方向のムラ評価用液晶重合膜の作製>
配向方向のムラ評価用液晶重合膜を、以下の手順で作製した:
(1)重合性液晶組成物溶液を、配向処理を施された基板上にスピンコートトし、塗膜を作製した。
(2)60℃で3分間、ホットプレートにより加熱し、該塗膜から溶剤を除去した。
(3)当該ガラス基板の塗膜の裏面の半分を金属の棒で15秒間擦りつけた。
(4)続けて、配向処理を施された面上の手順(2)を経た塗膜に対し、90°の方向から、室温で、一定出力の、紫外線を照射し、液晶重合体の層を作製した。ここで、紫外線照射は、365受光器を用いて、配向処理を施された面上の塗膜の表面に対する、直線紫外線の露光量が500mJ/cmになるように、照射時間を5秒から40秒の間で調整した。
【0145】
<重合性液晶組成物溶液の調製>
[実施例1から12]
ノニオン系帯電防止剤を含有する重合性液晶組成物溶液[(E-1)から(E-12)]を以下の手順で作製した。
(1)表1、2に記載の通り、重合性液晶化合物を混合し、混合物を得た。
(2)当該混合物に、表1、2に記載の通りの、界面活性剤、ノニオン系帯電防止剤、8重量部の光重合開始剤NCI-930を加え、さらに、0.1重量部の酸化防止剤Irganox 1076を加えて、重合性液晶組成物を得た。
(3)得られた重合性液晶組成物25重量部に対して、溶剤シクロペンタノン75重量部加えて、重合性液晶組成物溶液を調製し、表1、2に記載の名称を名づけた。
【0146】
【表1】


【表2】

【0147】
[比較例1から13]
ノニオン系帯電防止剤を含有しない重合性液晶組成物溶液[(F-1)から(F-13)]を以下の手順で調製した。
(1)表3および4に記載の通り、重合性液晶化合物を混合し、混合物を得た。
(2)当該混合物に、表3および4に記載の通りの、界面活性剤、その他添加剤、8重量部の光重合開始剤NCI-930を加え、さらに、0.1重量部の酸化防止剤Irganox 1076を加えて、重合性液晶組成物を得た。
(3)得られた重合性液晶組成物25重量部に対して、溶剤シクロペンタノン75重量部加えて、重合性液晶組成物溶液を調製し、表4および5に記載の名称を名づけた。なお、重合性液晶組成物溶液(F-13)においては、成分が溶剤に均一に溶解しなかった。重合性液晶化合物と加えたノニオン系帯電防止剤の相溶性が悪いためと推察される。
【0148】
【表3】


【表4】

【0149】
[実施例13]
ノニオン系帯電防止剤を含有する重合性液晶組成物溶液を用いて液晶重合膜付き基板を作製し、配向方向のムラ、配向欠陥および純水接触角を評価した。
重合性液晶溶液[(E-1)から(E-12)]を用いて、上記に記載の方法で液晶重合膜付き基板を作成し、表5に記載の名称を名づけた。
【0150】
<配向方向のムラ評価>
液晶重合膜付き基板[(RFE-1)から(RFE-12)]を、偏光解析装置を用いて上記に記載の方法に従って配向方向のムラ評価を行った。表5に結果を記載した。
【0151】
<配向欠陥評価>
液晶重合膜液晶重合膜付き基板[(RFE-1)から(RFE-12)]を、偏光顕微鏡で観察し上記の方法に従って配向欠陥を評価した。表5に結果を記載した。
【0152】
<純水接触角評価>
液晶重合膜付き基板[(RFE-1)から(RFE-12)]を、200℃のオーブンで30分間焼成した。焼成後の液晶重合膜付き基板を、上記に記載の純水接触角評価方法に従って接触角を測定した。表5に結果を記載した。
【0153】
【表5】

【0154】
[比較例14]
ノニオン系帯電防止剤を含有しない重合性液晶組成物溶液を用いて、実施例13同様に液晶重合膜付き基板を作製し、配向方向のムラ、配向欠陥および純水接触角を評価した。液晶重合膜付き基板の名称と評価結果を表6に記載した。
【0155】
【表6】
【0156】
以上から、本発明の重合性液晶組成物から得られる液晶重合膜は、製造工程で発生する配向方向のムラと配向欠陥が無く、リコート性が高く、インセル位相差膜の製造において有用であると結論する。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の重合性液晶組成物から得られる液晶重合膜は、製造工程で発生する配向方向のムラと配向欠陥が無く、リコート性が高い。このため、インセル位相差膜をはじめとする位相差膜の材料として、実用的に用いることができる。