(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む組成物及びそれを使用してフィルムを堆積させるための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20230801BHJP
C23C 16/30 20060101ALI20230801BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230801BHJP
C23C 16/50 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/30
H01L21/31 C
C23C16/50
(21)【出願番号】P 2020512505
(86)(22)【出願日】2018-08-29
(86)【国際出願番号】 US2018048580
(87)【国際公開番号】W WO2019046449
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-04-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ゴードン リッジウェイ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ニコラス バーティス
(72)【発明者】
【氏名】シンチアン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー リン アン アチタイル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ロバート エントレー
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】恩田 春香
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-5001(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0052115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C16/00-16/56
H01L21/205,31,312-32,365,469-475,86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Si
vO
wC
xH
yF
z(式中、v+w+x+y+z=100%であり、vは10~35原子%であり、wは10~65原子%であり、xは5~40原子%であり、yは10~50原子%であり、zは0~15原子%である)で表される誘電体膜の製造方法であって、前記方法は、
反応チャンバ内に基材を提供する工程、
アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む少なくとも1つの構造形成性前駆体及びポロゲンを含み、ここで、前記アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物は以下の式I
【化1】
(上式中、Х及びYは、OR
1、OR
2及びOC(O)R
3からなる群より独立して選ばれ、R
1-3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖C
1~C
10アルキル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルキニル基、C
3~C
10環状アルキル基、C
3~C
10複素環式アルキル基、C
5~C
10アリール基及びC
3~C
10ヘテロアリール基からなる群より選ばれ、R
4はC
3~C
10アルキル二価基であり、それはSi原子とともに4員、5員又は6員の飽和環状環を形成する)で表される構造を有し
(但し、1,1-ジエトキシ-1-シラシクロブタンは除く)
、及び、随意選択的に少なくとも1つの
酸化剤、を含む、ガス状試薬を前記反応チャンバに導入する工程、
前記反応チャンバ内の前記ガス状試薬にエネルギーを適用する工程であって、前記ガス状試薬の反応を誘発して、前記基材上に予備膜を堆積させる工程、ここで、前記予備膜は前記ポロゲンを含む、及び、
前記予備膜から前記ポロゲンの少なくとも一部を除去する工程であって、細孔及
び2.6以下の誘電率を有する多孔質誘電体膜を提供する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記構造形成性前駆体は硬化添加剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物は1,1-ジメトキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジエトキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジ-n-プロポキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジ-イソ-プロポキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロブタン
、1,1-ジ-n-プロポキシ-1-シラシクロブタン、1,1-ジ-イソ-プロポキシ-1-シラシクロブタン、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジ-イソ-プロポキシ-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジ-n-プロポキシ-1-シラシクロヘキサン、1-メトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロペンタン、1-メトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロブタン、1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロブタン、1-メトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロヘキサン、1-エトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロペンタン、1-エトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロブタン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポロゲンはシクロオクタンである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記硬化添加剤はテトラエトキシシランを含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記硬化添加剤はテトラメトキシシランを含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
プラズマ増強化学蒸着法である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ガス状試薬はO
2、N
2O、NO、NO
2、CO
2、水、H
2O
2、オゾン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ガス状試薬は酸化剤を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記適用する工程における前記反応チャンバはHe、Ar、N
2、Kr、Xe、NH
3、H
2、CO
2及びCOからなる群より選ばれる少なくとも1つのガスを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記除去する工程は、熱処理、紫外線(UV)処理、電子ビーム処理、ガンマ線処理及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つの処理を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記UV処理は前記熱処理の少なくとも一部の間に行われる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ポロゲンの前駆体は、
a.)式C
nH
2n(式中、n=4~14である)の置換又は非置換の環状炭化水素、
b.)一般式C
nH
(2n+2)-2y(式中、n=2~20及びy=0~n
である)の置換又は非置換の炭化水素、
c.)式C
nH
2n-2x(式中、xは分子内の不飽和部位の数であり、n=4~14である)を有する、置換又は非置換の単一又は複数の不飽和環状炭化水素、
d.)式C
nH
2n-2(式中、n=4~14である)の置換又は非置換の二環式炭化水素、
e.)式C
nH
2n-(2+2x)(式中、xは分子内の不飽和部位の数であり、n=4~14であり、二環式構造中の炭素数は4~12である)を有する置換又は非置換の多不飽和二環式炭化水素、及び、
f.)式C
nH
2n-4(式中、n=4~14であり、三環式構造の炭素数は4~12である)の置換又は非置換の三環式炭化水素、
からなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記ポロゲンの前駆体はシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1-メチル-4-(1-メチルエチル)シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロオクタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、ネオヘキサン、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-2,3-ブタジエン、置換ジエン、パラシメン、シクロオクテン、1,5-シクロオクタジエン、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキセン、α-テルピネン、ピネン、リモネン、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナン、スピロノナン、カンフェン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、デカヒドロナフタレン、アダマンチン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
誘電体膜の化学蒸着のための組成物であって、組成物は以下の式I:
【化2】
(上式中、Х及びYは、OR
1、OR
2及びOC(O)R
3からなる群より独立して選ばれ、R
1-3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖C
1~C
10アルキル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルキニル基、C
3~C
10環状アルキル基、C
3~C
10複素環式アルキル基、C
5~C
10アリール基及びC
3~C
10ヘテロアリール基からなる群より選ばれ、R
4はC
3~C
10アルキル二価基であり、それはSi原子とともに4員、5員又は6員の飽和環状環を形成する)を有するアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含み
(但し、1,1-ジエトキシ-1-シラシクロブタンは除く)、該化合物は、ハロゲン化物、水及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1つ以上の不純物を実質的に含まない、組成物。
【請求項16】
前記アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物は、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジエトキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジ-n-プロポキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジ-イソ-プロポキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロブタン
、1,1-ジ-n-プロポキシ-1-シラシクロブタン、1,1-ジ-イソ-プロポキシ-1-シラシクロブタン、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジ-イソ-プロポキシ-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジ-n-プロポキシ-1-シラシクロヘキサン、1-メトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロペンタン、1-メトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロブタン、1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロブタン、1-メトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロヘキサン、1-エトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロペンタン、1-エトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロブタン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
以下の式I:
【化3】
(上式中、Х及びYは、OR
1、OR
2及びOC(O)R
3からなる群より独立して選ばれ、R
1-3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖C
1~C
10アルキル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルキニル基、C
3~C
10環状アルキル基、C
3~C
10複素環式アルキル基、C
5~C
10アリール基及びC
3~C
10ヘテロアリール基からなる群より選ばれ、R
4はC
3~C
10アルキル二価基であり、それはSi原子とともに4員、5員又は6員の飽和環状環を形成する)を有する、蒸着によって低k誘電体膜を堆積させるためのアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物の使用
(但し、1,1-ジエトキシ-1-シラシクロブタンは除く)。
【請求項18】
前記化合物は、ハロゲン化物、水及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1つ以上の不純物を実質的に含まない、請求項17記載の使用。
【請求項19】
前記アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物は、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジエトキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジ-n-プロポキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジ-イソ-プロポキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロブタン
、1,1-ジ-n-プロポキシ-1-シラシクロブタン、1,1-ジ-イソ-プロポキシ-1-シラシクロブタン、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジ-イソ-プロポキシ-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジ-n-プロポキシ-1-シラシクロヘキサン、1-メトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロペンタン、1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロペンタン、1-メトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロブタン、1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロブタン、1-メトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロヘキサン、1-エトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロペンタン、1-エトキシ-1-アセトキシ-1-シラシクロブタン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項17記載の使用。
【請求項20】
前記ハロゲン化物は50ppm未満である、請求項18記載の使用。
【請求項21】
前記ハロゲン化物は10ppm未満である、請求項18記載の使用。
【請求項22】
前記ハロゲン化物は5ppm未満である、請求項18記載の使用。
【請求項23】
前記蒸着は化学蒸着である、請求項17記載の使用。
【請求項24】
前記化学蒸着はプラズマ増強化学蒸着である、請求項23記載の使用。
【請求項25】
キャリアガス及び酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも1つの要素をさらに含む、請求項15記載の組成物。
【請求項26】
前記要素はヘリウム及び酸素からなる群より選ばれる少なくとも1つの要素を含む、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
少なくとも1つの硬化添加剤をさらに含む、請求項15記載の組成物。
【請求項28】
前記硬化添加剤は少なくとも1つのテトラアルコキシシランを含む、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
前記誘電体膜の膜構造は-CH
2-メチレン及び-CH
2CH
2-エチレン架橋の少なくとも1つを含む、請求項1~14のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. 119(e)に基づいて2017年8月30日に出願された米国仮特許出願第62/552,040号の優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に取り込む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書において、構造形成性前駆体としてアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を使用して誘電体膜を形成するための組成物及び方法を記載する。より具体的には、本明細書に記載されているのは、多孔質低誘電体膜(「低k」膜又は約3.2以下の誘電率を有する膜)を形成するための組成物及び方法であり、ここで、膜を堆積するために使用される方法は化学蒸着(CVD)法である。本明細書に記載の組成物及び方法によって製造される低誘電体膜は、例えば、エレクトロニクスデバイスの絶縁層として使用することができる。
【0003】
エレクトロニクス業界は、回路及び集積回路(IC)の構成要素と、関連するエレクトロニクスデバイスとの間の絶縁層として誘電体材料を利用している。マイクロエレクトロニクスデバイス(例えば、コンピュータチップ)の速度及びメモリストレージ能力を向上させるために、ラインの寸法が縮小される。ラインの寸法が減少すると、層間絶縁膜(ILD)の絶縁要件がはるかに厳しくなる。間隔を縮小するには、RC時定数を最小限に抑えるために、より低い誘電率が必要であり、ここで、Rは導電線の抵抗であり、Cは絶縁誘電性中間層の静電容量である。静電容量(C)は間隔に反比例し、層間誘電体(ILD)の誘電率(k)に比例する。SiH4又はTEOS(Si(OCH2CH3)4、テトラエチルオルソシリケート)とO2から製造された従来のシリカ(SiO2)CVD誘電体膜は、4.0より大きい誘電率kを有する。業界がより低い誘電率のシリカ系CVD膜の製造を試みた方法は幾つかあり、最も成功したのは、約2.7~約3.5の範囲の誘電率を提供する有機基による絶縁性酸化ケイ素膜のドーピングである。このオルガノシリカガラスは、典型的に、メチルシラン又はシロキサンなどのオルガノシリコン前駆体と、O2又はN2Oなどの酸化剤から緻密膜(密度約1.5g/cm3)として堆積される。本明細書において、有機シリカガラスをOSGと呼ぶ。より高いデバイス密度とより小さな寸法で誘電率又は「k」値が2.7を下回ると、業界は緻密膜に適した低k組成物のほとんどがなくなり、絶縁特性を改善するために様々な多孔質材料に注意を向けてきた。
【0004】
CVD法による多孔質ILDの分野における特許、公開出願及び刊行物としては、EP 1 119 035 A2及び米国特許第6,171,945号明細書が挙げられ、それらは、N2O及び場合により過酸化物などの酸化剤の存在下で不安定基を有する有機ケイ素前駆体からOSG膜を堆積し、次いで、熱アニールにより前記不安定基を除去して多孔性OSGを提供する方法を記載しており、米国特許第6,054,206号及び同第6,238,751号明細書が挙げられ、それらは堆積したOSGから本質的にすべての有機基を酸化性アニールにより除去して多孔質無機SiO2を得ることを教示しており、EP 1 037 275明細書が挙げられ、それは水素化炭化ケイ素膜を堆積し、次いで行う酸化プラズマによる処理によって多孔質無機SiO2に転化させることを記載しており、そして米国特許第6,312,793 B1号、WO00/24050及び文献Grill, A. Patel, V. Appl. Phys. Lett. (2001), 79(6), pp. 803-805が挙げられ、それらはすべて、有機ケイ素前駆体及び有機化合物から膜を共蒸着し、そして次いで熱アニールして、重合した有機成分の一部が保持されている多相OSG/有機膜を提供することを教示している。それらの参考文献において、膜の究極的な最終組成は残留ポロゲン及び約80~90原子%の高炭化水素膜含有量を示している。さらに、最終的な膜は、有機基を部分的に酸素原子で置き換えて、SiO2のようなネットワークを保持している。
【0005】
業界で認識されている課題は、低誘電率の膜は一般に多孔度が高く、膜への種の拡散、特に気相拡散が促進されることである。この拡散の増加により、膜のエッチング、フォトレジストのプラズマアッシング、銅表面のNH3プラズマ処理などの方法により、多孔質OSG膜から炭素をより多く除去することになりうる。OSG膜の炭素枯渇は、次の問題の1つ以上を引き起こす可能性がある:膜の誘電率の増加、膜エッチング及びウェットクリーニング工程での弓反り、疎水性の損失による膜中の湿分吸収、パターンエッチング後のウェットクリーン工程中の微細形状のパターン崩壊、及び/又は、限定するわけではないが、銅拡散バリア、例えば、Ta/TaN又はアドバンス化Co又はMnNバリア層などの後続の層を堆積するときの一体化の問題である。
【0006】
これらの問題の1つ以上に対する可能な解決策は、炭素含有量が増加した多孔質OSG膜を使用することである。第一のアプローチは、多孔質OSG層でのSi-メチル(Me)基の保持率が高くなるポロゲンを使用することである。残念ながら、Si-Meの含有量を増やすと、典型的に、機械的特性が低下するため、より多くのSi-Meを含む膜は、一体化に重要な機械的強度に悪影響を及ぼす。第二のアプローチは、例えば、米国特許第8,753,985号明細書に開示されているポロゲンなどの損傷耐性ポロゲン(DRP)を使用することであり、UV硬化後に、追加の非晶性炭素が膜内に残る。特定の場合に、この残留炭素は誘電率にも、機械的強度にも悪影響を与えない。しかしながら、DRPを使用してこれらの膜の炭素含有量を有意に増やすことは困難である。
【0007】
提案されているさらに別の解決策は、一般式Rx(RO)3-xSi(CH2)ySiRz(OR)3-zのエチレン又はメチレン架橋ジシロキサンを使用することであり、ここで、x=0~3であり、y=1又は2であり、z=0~3である。架橋された種の使用は、ネットワーク接続が同じままであるため、架橋性酸素を架橋性炭素鎖で置き換えることにより、機械強度への悪影響を回避すると考えられる。これは、架橋性酸素を末端メチル基で置き換えると、ネットワーク接続が低下することにより機械的強度が低下するとの考えから生じる。このようにして、酸素原子を1~2個の炭素原子に置き換えて、機械的強度を低下させることなく、原子質量パーセント(%)Cを増やすことができる。しかしながら、これらの架橋前駆体は、一般に、2つのケイ素基を有することによる分子量の増加により、非常に高い沸点を有する。沸点の上昇は、化学物質前駆体を蒸気供給ライン又はプロセスポンプ排出で凝縮せずに気相試薬として反応チャンバに供給することを困難にすることにより、製造プロセスに悪影響を与える可能性がある。
【0008】
したがって、当該技術分野において、堆積時に炭素含有量が増加した膜を提供するが、上記の欠点を被らない誘電体前駆体が必要である。
【発明の概要】
【0009】
発明の簡単な概要
本明細書に記載の方法及び組成物は上記の1つ以上の要求を満たす。本明細書に記載の方法及び組成物は、例えば、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロペンタン(DMSCP)又は1,1-ジエトキシ-1-シラシクロペンタン(DESCP)などのアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を構造形成性前駆体として使用し、それは、ポロゲン前駆体と共堆積した後に、UV硬化してポロゲンを除去し、そして堆積したままの膜を硬化させた後に、多孔質低k誘電体膜を提供し、該低k誘電体膜は同じ誘電率のジエトキシメチルシラン(DEMS)などの従来技術の構造形成性前駆体を使用する膜と同様の機械的特性を有する。さらに、構造形成性前駆体として本明細書に記載されているアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を使用して堆積された膜は、比較的高い量の炭素を含む。さらに、本明細書に記載のアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物は、他の先行技術の構造形成性前駆体、例えば、架橋前駆体(例えば、メチレン又はエチレン架橋ジシラン又はジシロキサン前駆体)と比較して、より低い分子量(Mw)を有し、本質的に2つのケイ素基を有する前記従来技術の構造性前駆体は、より高いMw及びより高い沸点を有し、それにより、本明細書に記載のアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式前駆体を、例えば大量生産法でのプロセスに対してより便利にする。
【0010】
本明細書に記載されているのは、式SivOwCxHyFz(式中、v+w+x+y+z=100%であり、vは10~35原子%であり、wは10~65原子%であり、xは5~45原子%であり、yは10~50原子%であり、zは0~15原子%である)により表される材料を含む多孔質誘電体膜であり、該膜は5.0~30.0%の体積気孔率の細孔を有し、2.3~3.2の誘電率を有し、そして硬度1.0~7.0及び弾性率4.0~40.0などの機械特性を有する。特定の実施形態において、膜は、X線光分光法(XPS)によって測定して、より高い炭素含有量(10~40%)を含み、例えば、XPS深度プロファイリングによって決定される炭素含有量を調べることにより測定される、O2又はNH3プラズマなどに暴露されたときの炭素除去の深さが減少することを示す。
【0011】
1つの態様において、以下の式Iを有するアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む誘電体膜の蒸着用の組成物は提供される。
【化1】
(上式中、Х及びYは、OR
1、OR
2及びOC(O)R
3からなる群より独立して選ばれ、R
1-3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖C
1~C
10アルキル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルキニル基、C
3~C
10環状アルキル基、C
3~C
10複素環式アルキル基、C
5~C
10アリール基及びC
3~C
10ヘテロアリール基からなる群より選ばれ、R
4はC
3~C
5アルキル二価基であり、それはSi原子とともに4員、5員又は6員の飽和環状環を形成し、そして該化合物は、ハロゲン化物及び水からなる群より選ばれる1つ以上の不純物を実質的に含まない)。
【0012】
別の態様において、多孔質誘電体膜を製造するための化学蒸着法は提供され、
基材を反応チャンバ内に提供すること、
ガス状試薬を反応チャンバ内に導入すること、ここで、前記ガス状試薬は下記式I:
【化2】
(上式中、Х及びYは、OR
1、OR
2及びOC(O)R
3からなる群より独立して選ばれ、R
1-3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖C
1~C
10アルキル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルキニル基、C
3~C
10環状アルキル基、C
3~C
10複素環式アルキル基、C
5~C
10アリール基及びC
3~C
10ヘテロアリール基からなる群より選ばれ、R
4はC
3~C
5アルキル二価基であり、それはSi原子とともに4員、5員又は6員の飽和環状環を形成する)を有するアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む構造形成性前駆体、及び、場合により少なくとも1つの酸素源を含む、
反応チャンバ内のガス状試薬にエネルギーを適用して、ガス状試薬の反応を誘発して、基材上に予備膜を堆積させること、ここで、前記予備膜はポロゲンを含む、及び、前記予備膜から実質的にすべてのポロゲンを除去して、細孔及び3.2未満の誘電率を有する多孔質膜を提供すること、を含む。特定の実施形態において、構造形成性前駆体は硬化添加剤をさらに含む。
【0013】
さらに別の態様において、多孔質誘電体膜を製造するための化学蒸着法は提供され、
基材を反応チャンバ内に提供すること、
ガス状試薬を反応チャンバ内に導入すること、ここで、前記ガス状試薬は下記式I:
【化3】
(上式中、Х及びYは、OR
1、OR
2及びOC(O)R
3からなる群より独立して選ばれ、R
1-3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖C
1~C
10アルキル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルキニル基、C
3~C
10環状アルキル基、C
3~C
10複素環式アルキル基、C
5~C
10アリール基及びC
3~C
10ヘテロアリール基からなる群より選ばれ、R
4はC
3~C
5アルキル二価基であり、それはSi原子とともに4員、5員又は6員の飽和環状環を形成する)を有するアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む構造形成性前駆体、及び、場合により少なくとも1つの酸素源、及び、場合により少なくとも1つのポロゲンを含む、
反応チャンバ内のガス状試薬にエネルギーを適用して、ガス状試薬の反応を誘発して、基材上に予備膜を堆積させること、ここで、前記予備膜はポロゲンを含む、及び、前記予備膜から実質的にすべてのポロゲンを除去して、細孔及び3.2未満の誘電率を有する多孔質膜を提供すること、を含む。特定の実施形態において、構造形成性前駆体は硬化添加剤をさらに含む。
【0014】
本発明の実施形態及び特徴は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本明細書に記載されているのは、多孔質低k誘電体膜を製造するための化学蒸着(CVD)方法であり、
基材を反応チャンバ内に提供すること、反応チャンバ内に、例えば、1,1-ジメトキシ-1-シラシクロペンタン又は1,1-ジエトキシ-1-シラシクロペンタンなどのアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む少なくとも1つの構造形成性前駆体、及びポロゲンを含むガス状試薬を導入すること、反応チャンバ内のガス状試薬にエネルギーを適用して、ガス状試薬の反応を誘発して、基材上に予備膜を堆積させること、ここで、前記予備膜は、ポロゲン及び有機ケイ酸塩ガラスを含む、及び、前記予備膜から実質的にすべてのポロゲンを除去して、細孔及び3.2未満の誘電率を有する多孔質膜を提供することを含む。
【0016】
本明細書に記載されているアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物は、ジエトキシメチルシラン(DEMS)などの先行技術の構造形成性前駆体と比較して、誘電体膜の機械的特性に対してわずかな影響を及ぼしながら誘電体膜中により多くの炭素含有量を取り込むことを可能にする独自の属性を提供する。例えば、DEMSは、DEMSに2つのアルコキシ基、1つのメチル基及び1つの水素化物を含む混合リガンド系を提供し、これは反応部位のバランスを提供し、望ましい誘電率を維持しながら、より機械的に堅牢な膜の形成を可能にする。アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物の使用は、前駆体に機械的強度を低下させる傾向がある末端メチル基がないという利点を提供し、一方、シラ環式環の炭素は、OSG膜に炭素を提供して、誘電率を低下させ、疎水性を与える。
【0017】
低k誘電体膜は有機シリカガラス(「OSG」)膜又は材料である。有機ケイ酸塩は低k材料の候補であるが、これらの材料に多孔性を付加するためのポロゲンを添加しない場合の固有誘電率は3.2まで低く制限されている。ボイド空間の固有誘電率が1.0である多孔性を添加すると、膜の全体としての誘電率を低下し、一般的に機械的特性を犠牲にする。材料特性は膜の化学組成及び構造に依存する。有機ケイ素前駆体のタイプは膜の構造及び組成に強い影響を与えるので、必要な膜特性を提供する前駆体を使用して、所望の誘電率に到達するために必要な量の多孔性の付加が機械的に不健全な膜を製造しないことを確保することが有利である。本明細書に記載の方法及び組成物は、電気的及び機械的特性の望ましいバランス、ならびに高炭素含有量として他の有益な膜特性を有する多孔性低k誘電体膜を生成して、一体性プラズマ耐性を改善する手段を提供する。
【0018】
本明細書に記載の方法及び組成物の特定の実施形態において、シリコン含有誘電体材料の層は、反応チャンバを使用する化学蒸着(CVD)プロセスを介して基材の少なくとも一部の上に堆積される。適切な基材としては、限定するわけではないが、ヒ化ガリウム(「GaAs」)、シリコン、シリコン含有組成物、例えば、結晶性シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化シリコン(「SiO2」)などの半導体材料、シリコンガラス、窒化ケイ素、溶融シリカ、ガラス、石英、ホウケイ酸ガラス及びそれらの組み合わせが挙げられる。他の適切な材料としては、クロム、モリブデン、及び、半導体、集積回路、フラットパネルディスプレイ及びフレキシブルディスプレイ用途で一般的に使用される他の金属が挙げられる。基材は、例えば、シリコン、SiO2、有機ケイ酸塩ガラス(OSG)、フッ化ケイ酸塩ガラス(FSG)、炭窒化ホウ素、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、ホウ窒化物、有機無機複合材料、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔性有機及び無機材料及び複合材、酸化アルミニウム及び酸化ゲルマニウムなどの金属酸化物などの追加の層を有することができる。なおもさらなる層は、ゲルマノシリケート、アルミノシリケート、銅及びアルミニウム、ならびに、限定するわけではないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W又はWNなどの拡散バリア材料であることができる。
【0019】
特定の実施形態において、シリコン含有誘電体材料の層は、ポロゲン前駆体を含むか又は含まないアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む少なくとも1つの構造形成性前駆体を含むガス状試薬を反応チャンバ内に導入することにより、基材の少なくとも一部の上に堆積される。別の実施形態において、シリコン含有誘電体材料の層は、硬化添加剤と共にアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む少なくとも1つの構造形成性前駆体を含むガス状試薬を反応チャンバに導入することにより、基材の少なくとも一部の上に堆積される。
【0020】
本明細書に記載される方法及び組成物は、以下の式I:
【化4】
(上式中、Х及びYは、OR
1、OR
2及びOC(O)R
3からなる群より独立して選ばれ、R
1-3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖C
1~C
10アルキル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C
2~C
10アルキニル基、C
3~C
10環状アルキル基、C
3~C
10複素環式アルキル基、C
5~C
10アリール基及びC
3~C
10ヘテロアリール基からなる群より選ばれ、R
4はC
3~C
5アルキル二価基であり、それはSi原子とともに4員、5員又は6員の飽和環状環を形成する)を有するアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を使用する。
【0021】
上記の式において、そして記載全体を通して、用語「アルキル」は、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖官能基を表す。例示的な直鎖アルキル基としては、限定するわけではないが、メチル、エチル、n-プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基が挙げられる。例示的な分岐鎖アルキル基としては、限定するわけではないが、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル及びネオヘキシルが挙げられる。特定の実施形態において、アルキル基はそれに結合した1つ以上の官能基を有してよく、例えば、限定するわけではないが、結合したメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びn-プロポキシなどのアルコキシ基、ジメチルアミノなどのジアルキルアミノ基又はそれらの組み合わせである。他の実施形態において、アルキル基は、それに結合した1つ以上の官能基を有しない。アルキル基は飽和であっても、あるいは不飽和であってもよい。
【0022】
上記の式Iにおいて、そして記載全体を通して、用語「環状アルキル」は、3~10個の炭素原子を有する環状官能基を表す。例示的な環状アルキル基としては、限定するわけではないが、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0023】
上記の式Iにおいて、そして記載全体を通して、用語「複素環式」は、エポキシ基などのC3~C10複素環式アルキル基を表す。
【0024】
上記の式Iにおいて、そして記載全体を通して、用語「アルケニル基」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、2~10個又は2~10個又は2~6個の炭素原子を有する基を表す。
【0025】
上記の式Iにおいて、そして記載全体を通して、用語「アルキニル基」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有し、3~10個又は2~10個又は2~6個の炭素原子を有する基を表す。
【0026】
上記の式Iにおいて、そして記載全体を通して、用語「アリール」は、5~10個の炭素原子、又は6~10個の炭素原子を有する芳香族環状官能基を表す。例示的なアリール基としては、限定するわけではないが、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル及びo-キシリルが挙げられる。
【0027】
上記の式Iにおいて、そして記載全体を通して、用語「ヘテロアリール」は、C3~C10複素環式アリール基、1,2,3-トリアゾリル、ピロリル及びフラニルを表す。
【0028】
特定の実施形態において、式I又は他の記載された化学部分の1つ以上は、「非置換」又は「置換」であることができる。本明細書で使用されるときに、「置換」原子又は部分は、指定された化合物又は部分の通常の原子価を超えない限り、指定された化合物又は部分の水素原子を、指定された置換基からの選択肢で置き換えることができること、そして置換により安定した化合物が得られることを示す。例えば、メチル基が場合により置換されている場合に、メチル基内の炭素原子上の1、2又は3個の水素原子は、1、2又は3個の記載された置換基で置き換えることができる。
【0029】
上記の式Iにおいて、置換基R4は、Si原子と共に4員、5員又は6員の環状環を形成するC3~C10のアルキル二価基である。当業者が理解するように、R4は、Si原子と一緒に結合して式Iの環を形成する置換又は非置換炭化水素鎖であり、ここで、環は、4員、5員又は6員の環である。これらの実施形態において、環構造は、例えば、環状アルキル環などの飽和環であることができる。例示的な飽和環としては、限定するわけではないが、シラシクロブタン、シラシクロペンタン及びシラシクロヘキサン、好ましくはシラシクロペンタン又はメチルなどのアルキルで置換されたシラシクロペンタンが挙げられる。
【0030】
記載全体を通して、用語「アルコキシシラ環式」は、少なくとも1つのSi-アルコキシ基及び1つのケイ素原子を有し、炭素-炭素二重結合を有しない1つの環状環を有する化合物を指す。
【0031】
記載全体を通して、用語「アシルオキシシラ環式」は、少なくとも1つのSi-アシルオキシ基及び1つのケイ素原子を有し、炭素-炭素二重結合を有しない1つの環状環を有する化合物を指す。
【0032】
記載全体を通して、用語「酸素源」は、酸素(O2)、酸素とヘリウムとの混合物、酸素とアルゴンとの混合物、亜酸化窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、二酸化炭素、一酸化炭素及びそれらの組み合わせを含むガスを指す。
【0033】
記載全体を通して、用語「誘電体膜」は、SivOwCxHyFz(式中、v+w+x+y+z=100%であり、vは10~35原子%であり、wは10~65原子%であり、xは5~40原子%であり、yは10~50原子%であり、zは0~15原子%である)の組成を有するケイ素及び酸素原子を含む膜を指す。
【0034】
式Iの特定の実施形態において、R
1は、メチル及びエチルからなる群より選ばれ、R
2は、メチル、エチル及びイソプロピルからなる群より選ばれ、R
4は、Si原子とともに4員、5員又は6員の飽和環状環を形成する。幾つかの実施形態において、Si原子を含む4員、5員又は6員の飽和環状環は、環構造上にメチル基などの少なくとも1つのアルキル置換基を有することができる。これらの実施形態の例は以下の通りである:
【化5】
【化6】
【0035】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の組成物及び方法は、アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物、1,1-ジメトキシシラシクロペンタン(DMSCP)又は1,1-ジエトキシシラシクロペンタン(DESCP)又は1,1-ジアセトキシ-1-シラシクロペンタンを構造形成性前駆体として使用し、該前駆体は以下の構造を有する。
【化7】
【0036】
本明細書に記載されているアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物ならびにそれを含む方法及び組成物は、限定するわけではないが、ハロゲン化物イオン及び水などの1つ以上の不純物を実質的に含まないことが好ましい。本明細書で使用するときに、各不純物に関連する「実質的に含まない」という用語は、100万部当たりに100部(ppm)以下、50ppm以下、10ppm以下及び5ppm以下、1ppm以下の各不純物、限定するわけではないが、例えば、塩化物又は水を意味する。
【0037】
幾つかの実施形態において、本発明によるアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物及び本発明による式Iを有する化合物を含む組成物は、好ましくは、実質的にハロゲン化物イオンを含まない。本明細書で使用されるときに、用語「実質的に含まない」は、例えば、塩化物(すなわち、HClなどの塩化物含有種又は四塩化ケイ素、ジクロロジエトキシシランなどの少なくとも1つのSi-Cl結合を有するケイ素化合物)、フッ化物、臭化物及びヨウ化物などのハロゲン化物イオン(又はハロゲン化物)に関するときに、ICP-MSで測定して5ppm(質量基準)未満、好ましくはICP-MSで測定して3ppm未満、より好ましくはICP-MSで測定して1ppm未満、そして最も好ましくはICP-MSで測定して0ppmを意味する。塩化物は式Iを有する化合物のための分解触媒として作用することが知られている。最終生成物中の有意なレベルの塩化物は、シリコン前駆体化合物を分解させる可能性がある。アルコキシシラ環式化合物又はアシルオキシシラ環式化合物の段階的な分解は膜堆積プロセスに直接影響を及ぼすことがあり、半導体製造者にとって膜の仕様を満たすことを困難にする可能性がある。さらに、貯蔵寿命又は安定性は、アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物の分解速度が高いことによって悪影響を受け、1~2年の貯蔵寿命を保証することが困難になる。式Iを有するアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物は、好ましくは、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+などの金属イオンを実質的に含まない。本明細書で使用されるときに、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関連する「実質的に含まない」という用語は、ICP-MSで測定して、5ppm未満(質量基準)、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0.1ppm未満を意味する。幾つかの実施形態において、式Iを有するアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物は、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+などの金属イオンを含まない。本明細書で使用されるときに、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Cr、貴金属、例えば、合成において使用されるルテニウム又は白金触媒からの揮発性Ru又はPt錯体などに関連する、金属不純物を「含まない」という用語は、ICP-MS又は金属を測定するための他の分析方法で測定して、1ppm未満、好ましくは0.1ppm(質量基準)を意味する。
【0038】
ハロゲン化物を実質的に含まない本発明による組成物は、(1)化学合成中に塩化物源を低減又は排除すること、及び/又は、(2)最終精製済生成物が実質的に塩化物を含まないように、粗製生成物から塩化物を除去する効果的な精製法を実施することにより実現できる。塩化物源は、クロロジシラン、ブロモジシラン、ヨードジシランなどのハロゲン化物を含まない試薬を使用することにより、合成中に低減され、それによってハロゲン化物イオンを含む副生成物の生成を回避することができる。さらに、前述の試薬は、得られる粗生成物が実質的に塩化物不純物を含まないように、塩化物不純物を実質的に含まないべきである。同様に、合成は、ハロゲン化物系の溶媒、触媒又は許容できないほど高レベルのハロゲン化物汚染を含む溶媒を使用すべきでない。粗製生成物はまた、最終生成物を塩化物などのハロゲン化物を実質的に含まないものとするために、様々な精製方法によって処理されうる。このような方法は先行技術において十分に記載されており、限定するわけではないが、蒸留又は吸着などの精製プロセスを挙げることができる。蒸留は、沸点の違いを利用して、所望の生成物から不純物を分離するために一般的に使用されている。吸着はまた、最終生成物がハロゲン化物を実質的に含まないように分離を行うために成分の異なる吸着特性を利用するために使用されうる。例えば、市販のMgO-Al2O3ブレンドなどの吸着剤を使用して、塩化物などのハロゲン化物を除去することができる。
【0039】
例えばDEMSなどの従来のシリコン含有構造形成性前駆体は、反応チャンバでエネルギーが与えられると重合して、ポリマー主鎖に-O-結合(例えば、-Si-O-Si-又はSi-O-C-)を有する構造を形成するが、例えばMESCAP分子などのアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物は重合して、主鎖の-O-架橋の一部が-CH2-メチレン又は-CH2CH2-エチレン架橋で置換された構造を形成すると考えられる。炭素が主に末端Si-Me基の形で存在する構造形成性前駆体としてDEMSを使用して堆積された膜において、%Si-Me(%Cに直接関連)と機械的強度の関係があり、ここで、架橋Si-O-Si基を2つの末端基Si-Me基で置換すると、ネットワーク構造が破壊されるため、機械的特性を低下させる。アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物の場合に、環状構造は、膜堆積又は硬化プロセス(堆積したままの膜中に含まれるポロゲン前駆体の少なくとも一部又は実質的にすべてを除去する)のいずれかで破壊されて、SiCH2Si又はSiCH2CH2Si架橋基を形成すると考えられる。このようにして、機械的強度の観点から、膜中の炭素含有量を増加させることによってネットワーク構造が破壊されないように、架橋基の形態で炭素を組み込むことができる。特定の理論に拘束されるつもりはないが、この属性により炭素が膜に追加され、膜のエッチング、フォトレジストのプラズマアッシング及び銅表面のNH3プラズマ処理などのプロセスからの多孔質OSG膜の炭素枯渇に対して膜がより耐性を持つようになると考えられる。OSG膜における炭素枯渇は、膜の誘電率の欠陥の増加、膜エッチング及びウェットクリーニング工程中の造作の弓反りの問題、及び/又は銅拡散バリアを堆積するときの一体化の問題を引き起こす可能性がある。
【0040】
本明細書に記載の誘電体膜を堆積させるための組成物は、約5~約60質量パーセントの式Iを有するアルキルアルコキシシラ環式化合物を含む構造形成前駆体、及び、ポロゲン前駆体の性質に応じて、約40~約95質量パーセントのポロゲン前駆体を含む。
【0041】
本明細書に含まれる方法及び組成物の特定の実施形態において、構造形成性前駆体は、R1
nSi(OR2)4-n(式中、R1及びR2は上記のように規定され、n=0、1、2、3である)の式を有する硬化添加剤をさらに含み、それにより、機械的強度が向上する。硬化添加剤の例としては、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)又はテトラメトキシシラン(TMOS)などの、R1
nSi(OR2)4-nにおいてn=0であるテトラアルコキシシランが挙げられる。硬化添加剤の別の例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどのジアルキルジアルコキシシランが挙げられる。硬化添加剤が使用される実施形態において、構造形成性部分の組成物は、約30~約95質量パーセントの、式Iを有するアルキル-アルコキシシラ環式化合物を含む構造形成性前駆体、約5~約70質量パーセントの硬化添加剤、及び、全前駆体流の約40~約95質量パーセントのポロゲン前駆体を含む。
【0042】
前述のように、ガス状試薬はさらに、例えば1,1-ジメトキシ-1-シラシクロペンタンなどのアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む少なくとも1つの構造形成性前駆体とともに反応チャンバに導入される1つ以上のポロゲン前駆体を含む。以下は、本発明により使用するためのポロゲンとしての使用に適した材料の非限定的な例である。
【0043】
1)一般式CnH2nの環式炭化水素(式中、n=4~14であり、環式構造中の炭素数は4~10であり、環式構造上に置換された複数の単純な又は分岐鎖炭化水素が存在することができる(すなわち、場合により存在する))。
例としては、シクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1-メチル-4-(1-メチルエチル)シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロオクタン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0044】
2)一般式CnH(2n+2)-2yの直鎖又は分岐鎖の飽和の単一又は複数の不飽和の炭化水素(式中、n=2~20であり、y=0-nである)。
例としては、エチレン、プロピレン、アセチレン、ネオヘキサン、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-2,3-ブタジエン、置換ジエンなどが挙げられる。
【0045】
3)一般式CnH2n―2xの単一又は複数の不飽和環状炭化水素(式中、xは分子内の不飽和部位の数であり、n=4~14であり、環状構造中の炭素数は4~10であり、そして環状構造上に置換された複数の単純な又は分岐鎖の炭化水素が存在しうる)。不飽和は環内に又は環構造への炭化水素置換基の1つに配置できる。
例としては、パラシメン、シクロオクテン、1,5-シクロオクタジエン、ジメチルシクロオクタジエン、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキセン、α-テルピネン、ピネン、リモネン、ビニルシクロヘキセンなどが挙げられる。
【0046】
4)一般式CnH2n―2の二環式炭化水素(式中、n=4~14であり、二環式構造の炭素数は4~12であり、複数の単純又は分岐鎖の炭化水素が環状構造上に置換されうる) 。
例としては、ノルボルナン、スピロノナン、デカヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0047】
5)一般式CnH2n-(2+2x)の複数の不飽和の二環式炭化水素(式中、xは分子内の不飽和部位の数であり、n=4~14であり、二環式構造の炭素数は4~12であり、そして、環状構造上に置換された複数の単純又は分岐鎖の炭化水素が存在しうる)。不飽和は、環内に又は環構造への炭化水素置換基の1つに配置されうる。
例としては、カンフェン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
【0048】
6)一般式CnH2n-4の三環式炭化水素(式中、n=4~14であり、三環式構造中の炭素数は4~12であり、環状構造に置換されている複数の単純又は分岐鎖炭化水素が存在することができる)。
例としてはアダマンタンが挙げられる。
【0049】
語句「ガス状試薬」が時に本明細書に試薬を記載するために使用されるが、この語句は、ガスとして直接反応器に送られ、気化液体、昇華固体として送られ、及び/又は不活性キャリアガスによって反応器に輸送される試薬を包含することを意図する。
【0050】
さらに、試薬は、区別された供給源とは別個に、又は混合物として反応器に運ばれることができる。試薬は、任意の数の手段によって、好ましくはプロセス反応器への液体の送達を可能にする適切なバルブ及びフィッティングが取り付けられた加圧可能なステンレス鋼容器を使用して、反応器システムに送達されうる。
【0051】
構造形成種及び細孔形成種に加えて、堆積反応の前、その間及び/又はその後に、追加の材料を場合により反応チャンバに導入することができる。そのような材料としては、例えば、不活性ガス(例えば、He、Ar、N2、Kr、Xeなどであり、これらは、揮発性のより低い前駆体のキャリアガスとして使用でき、及び/又は堆積したままの材料の硬化を促進し、そして、より安定した最終膜を提供することができる)、反応性物質、例えばO2、O3及びN2Oなどの酸素含有種、気体又は液体有機物質、NH3、H2、CO2又はCOが挙げられる。1つの特定の実施形態において、反応チャンバに導入される反応混合物は、O2、N2O、NO、NO2、CO2、水、H2O2、オゾン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化剤を含む。別の実施形態において、反応混合物は酸化剤を含まない。
【0052】
エネルギーをガス状試薬に適用して、ガスを反応させ、基材上に膜を形成する。そのようなエネルギーは、例えば、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、リモートプラズマ、ホットフィラメント及び熱的(すなわち、非フィラメント)方法によって提供することができる。二次RF周波数源を使用して、基材表面でプラズマ特性を変更できる。好ましくは、膜は、プラズマ増強化学蒸着(「PECVD」)によって形成される。
【0053】
ガス状試薬のそれぞれの流速は、単一の200mmウエハあたり、好ましくは10~5000sccm、より好ましくは30~1000sccmの範囲である。個々の速度は、膜中に所望の量の構造形成性物質及びポロゲンを提供するように選択される。必要な実際の流速は、ウエハのサイズ及びチャンバ構成に依存することがあり、決して200mmウエハ又は単一ウエハチャンバに限定されない。
【0054】
幾つかの実施形態において、膜は、約50ナノメートル(nm)/分の堆積速度で堆積される。
【0055】
堆積中の反応チャンバ内の圧力は、約0.01~約600トル又は約1~15トルの範囲である。
【0056】
膜は、好ましくは、0.002~10ミクロンの厚さに堆積されるが、厚さは、必要に応じて変えることができる。パターン化されていない表面に堆積されたブランケット膜は優れた均一性を有し、妥当な端部を除外して、基材全体の1標準偏差で2%未満の厚さのばらつきがあり、ここで、例えば、基材の最も外側の5mmの端部は均一性の統計計算には含まれない。
【0057】
膜の多孔性を増加させ、それに応じてかさ密度を減少させて材料の誘電率をさらに低下させ、この材料の適用性を将来の世代(例えば、k<2.0)に拡張することができる。
【0058】
前述のように、堆積されたままの膜に含まれる実質的にすべてのポロゲン前駆体に対してポロゲン前駆体の少なくとも一部を後続の除去工程で除去する。ポロゲン前駆体の除去は、熱処理、紫外線処理、電子ビーム処理、ガンマ線処理及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上の処理によって行われる。1つの特定の実施形態において、ポロゲン除去工程はUV処理工程、熱処理工程又はそれらの組み合わせによって行われる。その実施形態において、UV処理工程は熱処理の少なくとも一部の間に行われる。
【0059】
アニールされた多孔性OSGとポロゲンを添加しない類似のOSGとの間の原子組成に統計的に有意な測定差がない場合に、堆積されたままの膜内に含まれる実質的にすべてのポロゲンに対する少なくとも一部の除去が想定される。本明細書に使用されるときに、堆積されたままの膜中のポロゲン前駆体の除去に関する用語「実質的に含まない」は、XPS又は他の手段で測定して、約2%以下、又は約1%以下、又は約50ppm以下又は約10ppm以下又は約5ppm以下のポロゲンを意味する。組成分析法に固有測定誤差(例えば、Х線光電子分光法(XPS)、ラザフォード後方散乱/水素前方散乱(RBS/HFS))及びプロセスの変動性の両方はデータの範囲に影響する。XPSの場合には、固有測定誤差は約+/-2原子%、RBS/HFSの場合には、これはより大きくなると予想され、種に応じて+/-2~5原子%の範囲である。プロセスの変動性は、データの最終的な範囲に対してさらに+/-2原子%寄与する。
【0060】
本発明の好ましい実施形態は、当該技術分野において知られた他の構造形成性前駆体を使用して堆積された他の多孔質低k誘電体膜と比較して、低い誘電率及び改善された機械的特性、熱安定性及び(酸素、水性酸化環境などに対する)耐薬品性を有する薄膜材料を提供する。式Iを有するアルキル-アルコキシ-及びアシシラ環式、アルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式化合物を含む、本明細書に記載の構造形成性前駆体は、炭素の膜への炭素のより高い取り込みを提供し(好ましくは、主に有機炭素の形態である-CHx、ここでxは1~3)、特定の前駆体又はネットワーク形成性化学物質を使用して膜を堆積させる。特定の実施形態において、膜中の水素の大部分は炭素に結合している。
【0061】
本明細書に記載の組成物及び方法により堆積された低k誘電体膜は、(a)約10~約35原子%、より好ましくは約20~約30原子%のシリコン、(b)約10~約65原子%、より好ましくは約20~約45原子%の酸素、(c)約10~約50原子%、より好ましくは約15~約40原子%の水素、(d)約5~約40原子%、より好ましくは約10~約45原子%の炭素を含む。膜はまた、1つ以上の材料特性を改善するために、約0.1~約15原子%、より好ましくは約0.5~約7.0原子%のフッ素を含むことができる。本発明の特定の膜に、他の要素のより少ない部分も存在しうる。OSG材料は、誘電率が業界で従来から使用されている標準材料であるシリカガラスの誘電率よりも低いときに、低k材料と考えられる。本発明の材料は、堆積手順に細孔形成性種又はポロゲンを加え、堆積されたままの(すなわち、予備)OSG膜にポロゲンを取り込み、予備膜の末端Si-CH3基又は架橋-(CH2)x-を実質的に保持しながら、予備膜から実質的にすべてのポロゲンを除去して、製品膜を提供することによって提供できる。製品膜は多孔質OSGであり、予備膜の誘電率及びポロゲンなしで堆積された類似の膜の誘電率よりも低くなった誘電率を有する。OSG中の有機基によって提供される疎水性を欠く多孔質無機SiO2とは対照的に、本発明の膜を多孔質OSGとして区別することが重要である。
【0062】
例えば、CVD TEOSによって生成されたシリカは、陽電子消滅寿命分光法(PALS)分析によって測定される固有自由体積細孔サイズが、球相当直径で約0.6nmである。小角中性子散乱(SANS)又はPALSによって決定される本発明の膜の細孔サイズは、好ましくは、球相当直径で5nm未満、より好ましくは、球相当直径で2.5nm未満である。
【0063】
膜の全多孔度は、プロセス条件及び所望の最終膜特性に応じて、5~75%であることができる。本発明の膜は、好ましくは、2.0g/ml未満、あるいは、1.5g/ml未満又は1.25g/ml未満の密度を有する。好ましくは、本発明の膜は、ポロゲンなしで製造された類似のOSG膜の密度よりも少なくとも10%低く、より好ましくは少なくとも20%低い密度を有する。
【0064】
膜の多孔性は膜全体で均一である必要はない。特定の実施形態において、多孔度勾配及び/又は様々な多孔度の層が存在する。そのような膜は、例えば、堆積中に前駆体に対するポロゲンの比率を調整することによって提供することができる。
【0065】
本発明の膜は、2.8~3.8の範囲の誘電率を有する一般的なOSG材料と比較して、より低い誘電率を有する。好ましくは、本発明の膜は、ポロゲンなしで製造された類似のOSG膜の誘電率よりも少なくとも0.3低く、より好ましくは少なくとも0.5低い誘電率を有する。好ましくは、本発明の多孔質膜のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルは、ポロゲンが欠如することを除いて実質的に同一の方法によって調製された参照膜の参照FTIRと実質的に同一である。
【0066】
本発明の膜は、無機フッ素(例えば、Si-F)の形態でフッ素を含有することもできる。フッ素は、存在する場合には、好ましくは、0.5~7原子%の範囲の量で含まれる。
【0067】
本発明の膜は、良好な耐薬品性を備え、熱的に安定している。特に、アニール後の好ましい膜は、N2下で425℃で等温で、1.0wt%/時未満の平均質量損失を有する。さらに、膜は、好ましくは、空気下で425℃で等温で、1.0wt%/時未満の平均質量損失を有する。
【0068】
膜は様々な用途に適している。膜は、半導体基材上への堆積に特に適しており、例えば、絶縁層、層間誘電体層及び/又は金属間誘電体層としての使用に特に適している。膜は順応性コーティングを形成することができる。これらの膜が示す機械的特性により、Alサブトラクティブ技術及びCuダマシン又はデュアルダマシン技術での使用に特に適している。
【0069】
膜は化学機械平坦化(CMP)及び異方性エッチングと適合性があり、シリコン、SiO2、Si3N4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔質有機及び無機材料、銅及びアルミニウムなどの金属、及び、拡散バリア層、例えば、限定するわけではないが、TiN、Ti(C)NTaN、Ta(C)N、Ta、W、WN又はW(C)Nなどの様々な材料に接着することができる。膜は、好ましくは、ASTM D3359-95aテープ引張試験などの従来の引張試験に合格するのに十分に前述の材料の少なくとも1つに接着することができる。膜の識別可能な除去がなければ、サンプルはテストに合格したと考えられる。
【0070】
したがって、特定の実施形態において、膜は、集積回路における絶縁層、層間誘電体層、金属間誘電体層、キャッピング層、化学機械平坦化(CMP)又はエッチストップ層、バリア層又は接着層である。
【0071】
本明細書に記載されている膜は均一に堆積された誘電体膜であるが、完全一体構造で使用される膜は、実際には、幾つかのサンドイッチ層からなり、例えば、ポロゲンがほとんど又はまったく含まれていないボトム又はトップの薄層が堆積され、又は、例えば、より高いプラズマ出力で層を堆積し、交互にポロゲン前駆体の流量比がより低い条件下で層を堆積し、それにより、ポロゲン前駆体のすべてがUV処理によって除去されないようにすることができる。これらのサンドイッチ層を利用して、例えば、接着、エッチング選択性又はエレクトロマイグレーション性能などの二次集積特性を向上させることができる。
【0072】
本発明は膜を提供するのに特に適しており、本発明の製品は、本明細書中で膜として主に記載されているが、本発明はそれに限定されない。本発明の製品は、コーティング、多層アセンブリ、及び必ずしも平面又は薄いものではない他のタイプの物体、及び必ずしも集積回路で使用されない多数の物体など、CVDによって堆積可能ないかなる形態でも提供することができる。好ましくは、基材は半導体である。
【0073】
本発明のOSG製品に加えて、本開示は、製品が製造される方法、製品を使用する方法、及び、製品の調製に有用な化合物及び組成物を含む。例えば、半導体デバイス上に集積回路を製造するための方法は、米国特許第6,583,049号明細書に開示されており、それを参照により本明細書に取り込む。
【0074】
堆積された膜中のポロゲンは反応チャンバに導入されたポロゲンと同じ形であっても又はなくてもよい。同様に、ポロゲン除去方法は、ポロゲン又はその断片を膜から解放することができる。本質的に、ポロゲン試薬(又は前駆体に結合したポロゲン置換基)、予備膜中のポロゲン及び除去されるポロゲンは、同じ種であっても又はなくてもよいが、すべてポロゲン試薬(又はポロゲン置換基)に由来する。ポロゲンが本発明の方法全体にわたって不変であるかどうかに関係なく、本明細書で使用される用語「ポロゲン」は、細孔形成性試薬(又は細孔形成性置換基)及びその誘導体を包含することを意図し、それらは本発明の全方法にわたって見出されるいずれかの形態である。
【0075】
本発明の組成物は、例えば、プロセス反応器へのポロゲン及びアルコキシシラ環式又はアシルオキシシラ環式前駆体の送達を可能にする適切なバルブ及びフィッティングが取り付けられた少なくとも1つの加圧可能な容器(好ましくはステンレス鋼)をさらに含むことができる。容器の内容物は事前に混合することができる。あるいは、ポロゲン及び前駆体は、別々の容器に、又は貯蔵中にポロゲンと前駆体を別々に維持するための分離手段を有する単一の容器に維持することができる。そのような容器はまた、所望されるときに、ポロゲンと前駆体を混合するための手段を有することもできる。
【0076】
ポロゲンは、熱アニーリング、化学処理、現場又は遠隔プラズマ処理、光硬化(例えば、UV)及び/又はマイクロ波処理を含むことができる硬化工程によって、予備(又は堆積されたままの)膜から除去される。硬度、安定性(収縮、大気暴露、エッチング、ウェットエッチングなどに対して)、一体性、均一性及び接着性などの材料特性を向上させるために、他の現場又は堆積後処理を使用することができる。そのような処理は、ポロゲン除去に使用されるのと同じ又は異なる手段を使用して、ポロゲン除去の前、その中及び/又はその後に膜に適用することができる。したがって、本明細書で使用するときに、用語「後処理」は、ポロゲンを除去し、場合により材料特性を向上させるために、エネルギー(例えば、熱、プラズマ、光子、電子、マイクロ波など)又は化学物質で膜を処理することを意味する。
【0077】
後処理が行われる条件は大きく変化可能であることができる。例えば、高圧下又は真空環境下で後処理を行うことができる。
【0078】
UVアニーリングは、以下の条件下で行われる好ましい方法である。
【0079】
環境は不活性(例えば、窒素、CO2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば、酸素、空気、希薄酸素環境、濃縮酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)又は還元性(希釈又は濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖又は分岐鎖、芳香族)など)であることができる。圧力は、好ましくは約1トル~約1000トル、より好ましくは大気圧である。しかしながら、真空環境はまた、熱アニーリングならびに他の後処理手段のために可能である。温度は200~500℃が好ましく、温度傾斜速度は0.1~100℃/分である。全UVアニーリング時間は、好ましくは0.01分~12時間である。
【0080】
OSG膜の化学処理は、以下の条件で行われる。
【0081】
フッ素化剤(HF、SIF4、NF3、F2、COF2、CO2F2など)、酸化剤(H2O2、O3など)、化学乾燥剤、メチル化剤又は最終的な材料の特性を向上させる他の化学処理の使用。そのような処理剤で使用される化学物質は、固体、液体、気体及び/又は超臨界流体状態であることができる。
【0082】
有機ケイ酸塩膜からポロゲンを選択的に除去するための超臨界流体後処理は以下の条件下で行われる。
【0083】
流体は、二酸化炭素、水、亜酸化窒素、エチレン、SF6及び/又は他の種類の化学物質であることができる。他の化学物質を超臨界流体に添加して、プロセスを強化することができる。化学物質は不活性(例えば、窒素、CO2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば、酸素、オゾン、亜酸化窒素など)又は還元性(例えば、希釈又は濃縮炭化水素、水素、水素を含むプラズマなど)であることができる。温度は好ましくは周囲温度から500℃までである。化学物質は、界面活性剤などのより大きな化学種を含むこともできる。総暴露時間は、好ましくは0.01分~12時間である。
【0084】
不安定基の選択的除去及びOSG膜の可能な化学修飾のためのプラズマ処理は、以下の条件下で行われる。
【0085】
環境は不活性(窒素、CO2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば、酸素、空気、希薄酸素環境、濃縮酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば、希釈又は濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖又は分岐鎖、芳香族)など)であることができる。プラズマ出力は、好ましくは0~5000Wである。温度は、好ましくは周囲温度から500℃である。圧力は、好ましくは10ミリトールから大気圧である。総硬化時間は、好ましくは0.01分~12時間である。
【0086】
有機ケイ酸塩膜からポロゲンを選択的に除去するための紫外線硬化は以下の条件下で行われる。
【0087】
環境は不活性(例えば、窒素、CO2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば、酸素、空気、希薄酸素環境、濃縮酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば、希釈又は濃縮炭化水素、水素など)であることができる。温度は好ましくは周囲温度から500℃である。出力は、好ましくは、0~5000Wである。波長は、好ましくは、IR、可視、UV又はディープUV(波長<200nm)である。総UV硬化時間は、好ましくは0.01分~12時間である。
【0088】
有機ケイ酸塩膜からポロゲンを選択的に除去するためのマイクロ波後処理は、以下の条件下で行われる。
【0089】
環境は不活性(例えば、窒素、CO2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば、酸素、空気、希薄酸素環境、濃縮酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば、希釈又は濃縮炭化水素、水素など)であることができる。温度は好ましくは周囲温度から500℃である。出力及び波長は変更可能であり、特定の結合に調整可能である。全硬化時間は、好ましくは0.01分~12時間である。
【0090】
有機ケイ酸塩膜からのポロゲン又は特定の化学種の選択的除去及び/又は膜特性の改善のための電子ビーム後処理は、以下の条件下で行われる。
【0091】
環境は、真空、不活性(例えば、窒素、CO2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば、酸素、空気、希薄酸素環境、濃縮酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)、又は還元性(例えば、希釈又は濃縮炭化水素、水素など)であることができる。温度は好ましくは周囲温度から500℃である。電子密度及びエネルギーは変更可能であり、特定の結合に調整可能である。総硬化時間は、好ましくは0.001分~12時間であり、連続的又はパルス的であることができる。電子ビームの一般的な使用に関する追加のガイダンスは、S. ChattopadhyayらのJournal of Material Science, 36(2001)4323-4330、G Kloster ら、Proceedings of IITC, June 3-5, 2002, SF, CA及び米国特許第6,207,555号(B1)明細書、同第6,204,201号(B1)明細書及び同第6,132,814号(A1)明細書などの刊行物から入手可能である。電子ビーム処理の使用はポロゲンの除去及びマトリックス内の結合形成プロセスを介した膜の機械的特性の向上を提供する。
【0092】
本発明は、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、それらに限定されるとは認められないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0093】
例
代表的な膜又は200mmウエハ処理は、様々な異なる化学前駆体及びプロセス条件から、Advance Energy 200 RFジェネレーターが取り付けられた200 mm DxZ反応チャンバ又は真空チャンバ内のApplied Materials Precision-5000システムを使用して、プラズマ増強CVD(PECVD)法により形成された。PECVDプロセスは、一般的に次の基本的な工程を含んだ:ガスフローの初期設定及び安定化、シリコンウエハ基材上への膜の堆積、及び、基材取り出し前のチャンバのパージ/排気。堆積後に、膜はUVアニーリングを受けた。UVアニーリングは、広帯域UV電球を備えたFusion UVシステムを使用して、10トル未満の1つ以上の圧力及び<400℃の1つ以上の温度でヘリウムガスフロー下でウエハを保持して行った。実験は、p型Siウエハ(抵抗率範囲=8~12Ω-cm)で行われた。
【0094】
厚さ及び屈折率は、SCI FilmTek 2000反射率計で測定した。誘電率は、中抵抗率のp型ウエハ(範囲8~12Ω-cm)でHgプローブ技術を使用して決定した。FTIRスペクトルは、Nicholet Nexxus 470分光計を使用して測定した。比較例1及び例1において、機械的特性は、MTSナノインデンタを使用して決定した。組成データは、Physical Electronics 5000LSでのX線光電子分光法(XPS)によって取得した。該データは原子質量パーセントで提供されている。表に報告されている原子質量パーセント%の値には、水素は含まれていない。
【0095】
比較例1:ジエトキシメチルシラン(DEMS)及びシクロオクタンからの多孔質OSG膜の堆積
構造形成性DEMS及びポロゲン前駆体シクロオクタンの複合層を、200mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。200標準立方センチメートル(sccm)のCO2キャリアガスフロー、10sccmのO2、350ミリインチのシャワーヘッド/ウエハ間隔、275℃のウエハチャック温度、600Wプラズマが適用された8トルのチャンバ圧力を使用して、960ミリグラム/分(mg/min)のシクロオクタン及び240mg/minの流速で、直接液体注入(DLI)により、前駆体を反応チャンバに供給した。次に、得られた膜をUVアニールして、シクロオクタンポロゲンを除去し、膜を機械的に強化した。上記のように、膜の様々な属性(例えば、誘電率(k)、弾性率(GPa)及び原子質量パーセント炭素(%C))を得た。
【0096】
例1:後続のUV硬化を伴う犠牲ポロゲン前駆体としてのシクロオクタンを用いた1,1-ジエチオキシ-1-シラシクロペンタン(DESCP)からの多孔質OSG膜の堆積:
【0097】
DESCPを構造形成性前駆体として、シクロオクタンをポロゲン前駆体として使用して、複合層を堆積させた。200mmウエハ上に複合膜を堆積させるための堆積条件は以下のとおりである。200標準立方センチメートル(sccm)のヘリウムキャリアガスフロー、10sccmのO2、350ミリインチのシャワーヘッド/ウエハ間隔、250℃のウエハチャック温度、600Wプラズマが100秒間適用された8トルのチャンバ圧力を使用して、363ミリグラム/分(mg/min)のDESCP、737mf/minのシクロオクタンの流速で、直接液体注入(DLI)により、前駆体を反応チャンバに供給した。得られた堆積されたままの膜は厚さが757nmであり、屈折率(RI)が1.47であった。堆積後に、複合膜を12分間UVアニーリング工程に暴露した。UVアニール後に、膜は24%収縮して厚さ576nmになり、1.38の屈折率であった。この膜は2.50の誘電率及び10.4GPaの弾性率及び1.4GPaの硬度を有していた。元素組成はXPSにより、21.4%C、46.5%O、32.1%Siであると分析した。
【0098】
例2:1,1-ジメトキシ-1-シラシクロペンタン(DMSCP)及びシクロオクタンからの多孔質OSG膜の堆積(予測)
構造形成性DMSCP及びポロゲン前駆体シクロオクタンの複合層は、200mm処理のために以下のプロセス条件を使用して堆積した。200立方センチメートル(sccm)のCO2キャリアガスフロー、20sccmのO2、350ミリインチのシャワーヘッド/ウエハ間隔、250℃のウエハチャック温度、600Wプラズマが適用された8トルのチャンバ圧力を使用して、960mg/分のシクロオクタンの流速で、直接液体注入(DLI)により、前駆体を反応チャンバに供給し、そして240mgmのDMSCPをDLIによりチャンバに供給した。次に、得られた膜をUVアニールして、ポロゲンを除去し、膜を機械的に強化した。上記のように、膜の様々な属性(例えば、誘電率(k)、弾性率(GPa)及び原子質量パーセント炭素(%C))を得た。
【0099】
比較例2:後続のUV硬化を伴う犠牲ポロゲン前駆体としてシクロオクタンを用いた1-メチル-1-エトキシ-1-シラシクロペンタン(MESCP)からのOSG膜の堆積:
MESCPを構造形成性前駆体として、シクロオクタンをポロゲン前駆体として使用して、複合層を堆積させた。200mm処理のために以下のプロセス条件を使用して堆積した。200標準立方センチメートル(sccm)のヘリウムキャリアガスフロー、25sccmのO2、350ミリインチのシャワーヘッド/ウエハ間隔、300℃のウエハチャック温度、600Wプラズマが120秒間適用された8トルのチャンバ圧力を使用して、280ミリグラム/分(mg/min)のDESCP、800mf/minのシクロオクタンの流速で、直接液体注入(DLI)により、前駆体を反応チャンバに供給した。得られた堆積されたままの膜は厚さが567nmであり、屈折率(RI)が1.45であった。堆積後に、複合膜を12分間UVアニーリング工程に暴露した。UVアニール後に、膜は17%収縮して厚さ467nmになり、1.39の屈折率であった。この膜は2.54の誘電率及び8.6GPaの弾性率及び1.3GPaの硬度を有していた。元素組成はXPSにより、23.0%C、45.6%O、31.4%Siであると分析した。
【0100】
比較例3:後続のUV硬化を伴う犠牲ポロゲン前駆体としてシクロオクタンを用いたジエトキシメチルシラン(DEMS)からのOSG膜の堆積:
DEMSを構造形成性前駆体として、シクロオクタンをポロゲン前駆体として使用して、複合層を堆積させた。200mmウエハ上に複合膜を堆積させるための堆積条件は以下のとおりである。200標準立方センチメートル(sccm)のヘリウムキャリアガスフロー、25sccmのO2、350ミリインチのシャワーヘッド/ウエハ間隔、250℃のウエハチャック温度、600Wプラズマが80秒間適用された8トルのチャンバ圧力を使用して、220ミリグラム/分(mg/min)のDEMS、880mf/minのシクロオクタンの流速で、直接液体注入(DLI)により、前駆体を反応チャンバに供給した。得られた堆積されたままの膜は厚さが411nmであり、屈折率(RI)が1.44であった。堆積後に、複合膜を12分間UVアニーリング工程に暴露した。UVアニール後に、膜は19%収縮して厚さ334nmになり、1.36の屈折率であった。この膜は2.50の誘電率及び8.5GPaの弾性率及び1.0GPaの硬度を有していた。元素組成はXPSにより、13.2%C、54.0%O、32.8%Siであると分析した。
【0101】
例4:1,1-ジエトキシ-1-シラシクロペンタンの合成
磁気攪拌棒及び還流冷却器を備えた3口の2000mL丸底フラスコにおいて、900mLヘキサン中の130.0g(838mmol)の1,1-ジクロロ-1-シラシクロペンタンに、内容物を加熱還流しながら添加漏斗を介して93.0g(2012mmol)のエタノールを添加した。添加が完了したら、反応混合物をさらに30分間還流し、次いで、窒素でパージしてHClを除去しながら室温まで冷却した。反応混合物のGCは、所望の1,1-ジエトキシ-1-シラシクロペンタンへの約75%の転化を示した。残りは一置換1-クロロ-1-エトキシ-1-シラシクロペンタンであった。追加のエタノール19.0g(419mmol)及びトリエチルアミン42.0g(419mmol)を反応混合物に加えて、一置換種を生成物に完全に転化させた。得られた白色スラリーを室温で一晩攪拌した。次に、スラリーをろ過した。周囲圧力下での蒸留により溶媒を除去した。生成物を143gの量で5トルの圧力下で46℃の沸点で真空蒸留した。収率は90%であった。
【0102】
例5:1,1-ジメトキシ-1-シラシクロペタンの合成
磁気攪拌棒を備えた3口3000mL丸底フラスコにおいて、1800mLのヘキサン/THFの1:1混合物中の100.0g(645mmol)の1,1-ジクロロ-1-シラシクロペンタンに、260.0g(2579mmol)のトリエチルアミン、次いで、62.0g(1934mmol)のメタノールを0℃で添加した。得られた白色スラリーを室温に温め、16時間攪拌し、その後に、中程度の多孔度のフィルタで濁ったろ液としてろ過した。ろ液を追加のメタノール20.0g(624mmol)で処理し、数時間撹拌した後に、再度ろ過した。無色透明のろ液のGCは、所望の1,1-ジメトキシ-1-シラシクロペンタンへの完全な転化を示した。50℃で100トルの真空下でロトバップによりろ液から揮発性物質を除去した。生成物を、純度90%で60gの量で、65トルの圧力下に75℃の沸点で真空蒸留することにより精製した。収率は58%であった。
【0103】
ある特定の実施形態及び実施例を参照して上記に示しそして記載してきたが、本発明は、それにもかかわらず、示された詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲の範囲内及び均等の範囲内で、本発明の主旨から逸脱することなく、様々な修正を詳細部に加えることができる。例えば、本文書で広く列挙されるすべての範囲は、その範囲内で、より広い範囲に含まれるすべてのより狭い範囲を包含することが明確に意図されている。