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特許7323885画像処理装置、画像処理モデル生成装置、学習用データ生成装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理モデル生成装置、学習用データ生成装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230802BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230802BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230802BHJP
   G06T 7/32 20170101ALI20230802BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20230802BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
A61B6/03 360T
A61B6/03 375
A61B5/055 380
A61B5/055 383
G06T7/00 614
G06T7/00 350B
G06T7/32
G06T1/00 290
G06T3/00 750
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022504437
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2021008263
(87)【国際公開番号】W WO2021177374
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2020037135
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業・術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器システム開発」に係る委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】517056952
【氏名又は名称】株式会社Kompath
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 玄顕
(72)【発明者】
【氏名】道家 健仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 遼平
(72)【発明者】
【氏名】金 太一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 季
(72)【発明者】
【氏名】國井 尚人
(72)【発明者】
【氏名】小山 博史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 延人
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-525786(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044078(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/216125(WO,A1)
【文献】特表2019-534763(JP,A)
【文献】特表2019-531783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0030371(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110766652(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
A61B 5/055
A61B 8/00-8/15
G06T 7/00-7/90
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心領域抽出対象の3次元医用画像データである対象データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記対象データと、標準を表す3次元画像データである標準データとの間の一致度が大きくなるように、前記対象データの大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを前記標準データと揃えるように変換処理を行い、前記対象データに対して前記変換処理がされた3次元医用画像データである変換済データを生成する変換部と、
前記変換部によって得られた前記変換済データを、3次元医用画像データから該3次元医用画像データに含まれる関心領域を抽出するための予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記学習済みモデルによる演算によって前記変換済データに含まれる関心領域を抽出する領域抽出部と、
含み、
前記学習済みモデルは、学習用の3次元医用画像データと該学習用の3次元医用画像データに含まれる関心領域との組み合わせである学習用データに基づいて、予め学習されたモデルであり、
前記学習用データのうちの前記学習用の3次元医用画像データは、第1種類の医用画像であり、
前記学習用データのうちの前記関心領域は、第2種類の医用画像から抽出された関心領域であり、
第1種類の医用画像及び第2種類の医用画像は、患者に対して造影剤を投与した場合に撮像された医用画像であり、
前記対象データは、第1種類の医用画像及び第2種類の医用画像とは異なる種類の医用画像であり、
前記変換部は、前記対象データの輝度値の階調を補正する変換処理を行うと共に、前記対象データに対して前記変換処理を行うことにより、前記変換済データを生成する、
画像処理装置。
【請求項2】
関心領域抽出対象の3次元医用画像データである対象データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記対象データと、標準を表す3次元画像データである標準データとの間の一致度が大きくなるように、前記対象データの大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを前記標準データと揃えるように変換処理を行い、前記対象データに対して前記変換処理がされた3次元医用画像データである変換済データを生成する変換部と、
前記変換部によって得られた前記変換済データを、3次元医用画像データから該3次元医用画像データに含まれる関心領域を抽出するための予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記学習済みモデルによる演算によって前記変換済データに含まれる関心領域を抽出する領域抽出部と、
前記領域抽出部によって得られた前記関心領域に対し、前記対象データに対する前記変換処理に応じた逆変換処理を行い、変換前の前記対象データと前記逆変換処理がなされた前記関心領域との対応付けにより、前記対象データから関心領域を抽出し、該関心領域に基づいて、前記関心領域の3次元オブジェクトを生成する3次元オブジェクト生成部と、 を含む画像処理装置。
【請求項3】
関心領域抽出対象の3次元医用画像データである対象データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記対象データと、標準を表す3次元画像データである標準データとの間の一致度が大きくなるように、前記対象データの大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを前記標準データと揃えるように変換処理を行い、前記対象データに対して前記変換処理がされた3次元医用画像データである変換済データを生成する変換部と、
前記変換部によって得られた前記変換済データを、3次元医用画像データから該3次元医用画像データに含まれる関心領域を抽出するための予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記学習済みモデルによる演算によって前記変換済データに含まれる関心領域を抽出する領域抽出部と、
含み、
前記変換部は、前記対象データと一致した前記標準データの領域とは異なる領域を、前記対象データへ統合することにより、前記対象データを補完して、前記変換済データを生成する、
画像処理装置。
【請求項4】
前記標準データは、複数の3次元医用画像データの各々の大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを揃えた後に平均することにより生成された3次元画像データである、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記標準データは、複数の3次元医用画像データから予め選定された3次元医用画像データである、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記標準データは、複数の3次元医用画像データに対して統計的処理を行うことにより予め生成された3次元画像データである、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記学習済みモデルは、学習用の3次元医用画像データと該学習用の3次元医用画像データに含まれる関心領域との組み合わせである学習用データに基づいて、予め学習されたモデルである、
請求項2又は請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記学習用データは、
前記標準データとの一致度が大きくなるように前記変換処理がなされた前記学習用の3次元医用画像データと、該学習用の3次元医用画像データのうちの関心領域と、が対応付けられたデータである、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記対象データの輝度値の階調を補正する変換処理は、γ補正処理である、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記3次元オブジェクト生成部は、前記変換前の前記対象データと前記逆変換処理がなされた前記関心領域とのアダマール積によって、前記変換前の前記対象データと前記関心領域との対応付けを行うことにより、前記対象データから関心領域を抽出し、該関心領域に基づくボリュームレンダリングにより、前記関心領域の3次元オブジェクトを表示する、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記変換部は、前記対象データと一致した前記標準データの領域とは異なる領域を前記対象データへ統合する際に、前記標準データの輝度値の平均又は分散と、前記対象データの輝度値の平均又は分散とが近づくような補正処理を前記標準データに対して行って、前記統合をすることにより、前記変換済データを生成する、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1~請求項11の何れか1項に記載の画像処理装置の各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、画像処理装置、画像処理モデル生成装置、学習用データ生成装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、術中画像のセマンティックセグメンテーションに関する技術が知られている(例えば、特許文献1:特表2018-515197号公報)。特許文献1に開示されている技術は、トレーニングフェーズとテストフェーズとを用いる。具体的には、トレーニングフェーズでは、教師あり機械学習コンセプトを使用して、ラベリングされたトレーニングデータに基づき分類器をトレーニングし、テストフェーズ中、トレーニングされた分類器を適用し、腹腔鏡画像または内視鏡画像を新たに入力して、セマンティックセグメンテーションを実行する(特許文献1の段落[0009])。
【0003】
また、術前3D画像データを用いた術中画像ストリームにおけるシーン解析方法が知られている(例えば、特許文献2:特表2018-522622号公報)。この方法によれば、セマンティックにラベリングされた画像を生成し、セマンティックセグメンテーションのために機械学習ベースの分類器をトレーニングする目的で、術中画像ストリームのフレームが変換され、フレームに対しセマンティックセグメンテーションが実施される(特許文献2の段落[0010])。
【0004】
また、MR画像から疑似CT画像を生成する技術が知られている(例えば、特許文献3:特表2018-535732号公報)。この技術では、MR画像から疑似CT画像(合成CT画像又は誘導CT画像とも称される)を作成するために、訓練モジュール及び予測モジュールを含む学習ベースの手法が提供される。訓練モジュールは、選択された位置についてひとつ又はそれ以上のMR画像から抽出された特徴に基づいて任意の所与のボクセルのCT値を予測するのに使用できる予測モデル(回帰モデルとも呼ばれる)を構築する(段落[0034])。なお、予測モデルは、訓練データを使用して訓練することができ、訓練段階の間、収集された訓練データに回帰法(例えば、統計学習、回帰分析、機械学習など)を使用してモデルを訓練することができる(段落[0035])。
【0005】
また、医用画像から得られた注目領域の複数の抽出結果から適切な抽出結果を選択する際のユーザの負担を軽減する情報処理装置が知られている(例えば、特許文献4:特開2017-189394号公報)。この情報処理装置は、各パラメータセットの値を、機械学習を用いて、肺結節領域の抽出精度に基づいて事前に決める(特許文献4の段落[0034])。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1~上記特許文献4に記載の技術においては、患者から得られる医用画像のばらつき、例えば撮像機器による画像特性の違い等が考慮されていない。このため、患者から撮像された医用画像を学習用データとして用いたとしても、精度の良い学習済みモデルを生成することができない。したがって、そのような学習用データから生成された学習済みモデルを用いたとしても、精度の良い結果を得ることができない、という課題がある。
【0007】
開示の技術は、上記の事情に鑑みてなされたもので、医用画像から関心領域を精度良く抽出することができる、画像処理装置、画像処理モデル生成装置、学習用データ生成装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために開示の技術に係る画像処理装置は、関心領域抽出対象の3次元医用画像データである対象データを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記対象データと、標準を表す3次元画像データである標準データとの間の一致度が大きくなるように、前記対象データの大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを前記標準データと揃えるように変換処理を行い、前記対象データに対して前記変換処理がされた3次元医用画像データである変換済データを生成する変換部と、前記変換部によって得られた前記変換済データを、3次元医用画像データから該3次元医用画像データに含まれる関心領域を抽出するための予め学習された学習済みモデルへ入力して、前記学習済みモデルによる演算によって前記変換済データに含まれる関心領域を抽出する領域抽出部と、を含む。
【0009】
開示の技術の前記標準データは、複数の3次元医用画像データの各々の大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを揃えた後に平均することにより生成された3次元画像データであるようにすることができる。
【0010】
開示の技術の前記標準データは、複数の3次元医用画像データから予め選定された3次元医用画像データであるようにすることができる。
【0011】
開示の技術の前記標準データは、複数の3次元医用画像データに対して統計的処理を行うことにより予め生成された3次元画像データであるようにすることができる。
【0012】
開示の技術の前記学習済みモデルは、学習用の3次元医用画像データと該学習用の3次元医用画像データに含まれる関心領域との組み合わせである学習用データに基づいて、予め学習されたモデルであるようにすることができる。
【0013】
開示の技術の前記学習用データは、前記標準データとの一致度が大きくなるように前記変換処理がなされた前記学習用の3次元医用画像データと、該学習用の3次元医用画像データのうちの関心領域と、が対応付けられたデータであるようにすることができる。
【0014】
開示の技術においては、前記学習用データのうちの前記学習用の3次元医用画像データは、第1種類の医用画像であり、前記学習用データのうちの前記関心領域は、第2種類の医用画像から抽出された関心領域であるようにすることができる。
【0015】
開示の技術の第1種類の医用画像は、患者に対して造影剤を投与しない場合に撮像された医用画像であり、第2種類の医用画像は、患者に対して造影剤を投与した場合に撮像された医用画像である、ようにすることができる。
【0016】
開示の技術の第1種類の医用画像及び第2種類の医用画像は、患者に対して造影剤を投与した場合に撮像された医用画像である、ようにすることができる。
【0017】
開示の技術の前記対象データは、第1種類の医用画像及び第2種類の医用画像とは異なる種類の医用画像であり、前記変換部は、前記対象データの輝度値の階調を補正する変換処理を行うと共に、前記対象データに対して前記変換処理を行うことにより、前記変換済データを生成するようにすることができる。
【0018】
開示の技術の前記対象データの輝度値の階調を補正する変換処理は、γ補正処理であるようにすることができる。
【0019】
開示の技術は、前記領域抽出部によって得られた前記関心領域に対し、前記対象データに対する前記変換処理に応じた逆変換処理を行い、変換前の前記対象データと前記逆変換処理がなされた前記関心領域との対応付けにより、前記対象データから関心領域を抽出し、該関心領域に基づいて、前記関心領域の3次元オブジェクトを生成する3次元オブジェクト生成部を更に含むようにすることができる。
【0020】
開示の技術の前記3次元オブジェクト生成部は、前記変換前の前記対象データと前記逆変換処理がなされた前記関心領域とのアダマール積によって、前記変換前の前記対象データと前記関心領域との対応付けを行うことにより、前記対象データから関心領域を抽出し、該関心領域に基づくボリュームレンダリングにより、前記関心領域の3次元オブジェクトを表示するようにすることができる。
【0021】
開示の技術の前記変換部は、前記対象データと一致した前記標準データの領域とは異なる領域を、前記対象データへ統合することにより、前記対象データを補完して、前記変換済データを生成するようにすることができる。
【0022】
開示の技術の前記変換部は、前記対象データと一致した前記標準データの領域とは異なる領域を前記対象データへ統合する際に、前記標準データの輝度値の平均又は分散と、前記対象データの輝度値の平均又は分散とが近づくような補正処理を前記標準データに対して行って、前記統合をすることにより、前記変換済データを生成するようにすることができる。
【0023】
開示の技術の画像処理モデル生成装置は、標準を表す3次元画像データである標準データを設定するデータ設定部と、複数の学習用の3次元医用画像データの各々について、前記データ設定部により生成された前記標準データとの間の一致度が大きくなるように、複数の学習用の3次元医用画像データの各々の大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを揃えるように変換処理を行うと共に、該学習用の3次元医用画像データの関心領域に対して前記変換処理を行い、変換された前記学習用の3次元医用画像データと変換された前記関心領域とを対応付けて学習用データを生成する学習用データ生成部と、前記学習用データ生成部によって生成された前記学習用データに基づいて、3次元医用画像データから該3次元医用画像データに含まれる関心領域を抽出するための学習済みモデルを生成する学習部と、を含む。
【0024】
開示の技術の学習用データ生成装置は、複数の学習用の3次元医用画像データの各々について、標準を表す3次元画像データである標準データと前記学習用の3次元医用画像データとの間の一致度が大きくなるように、前記学習用の3次元医用画像データの大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを揃えるように変換処理を行うと共に、該学習用の3次元医用画像データの関心領域に対して前記変換処理を行い、変換された前記学習用の3次元医用画像データと変換された前記関心領域とを対応付けて学習用データを生成する学習用データ生成部を含む。
【0025】
また、開示の技術のプログラムは、コンピュータを、開示の技術の画像処理装置、開示の技術の画像処理モデル生成装置、及び学習用データ生成装置の各部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0026】
開示の技術によれば、医用画像から関心領域を精度良く抽出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態の医用画像処理システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態の医用画像処理システムの概要を説明するための説明図である。
図3】本実施形態の脳の各断面の医用画像を説明するための説明図である。
図4】本実施形態の脳の3次元オブジェクトを説明するための説明図である。
図5】T1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータの一例を示す図である。
図6】本実施形態の頭部の平均データを説明するための説明図である。
図7】3次元医用画像データを平均データへ近づける処理を説明するための説明図である。
図8】データ毎にばらつきのある3次元医用画像データの、位置、大きさ、向きを揃えた医用画像の学習用データを説明するための説明図である。
図9】画像処理装置として機能するコンピュータの概略ブロック図である。
図10】平均データ生成処理ルーチンの一例を示す図である。
図11】学習用データ生成処理ルーチンの一例を示す図である。
図12】学習処理ルーチンの一例を示す図である。
図13】画像処理ルーチンの一例を示す図である。
図14】実施例の結果を示す図である。
図15】本実施形態の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、開示の技術の一例である実施形態を詳細に説明する。
【0029】
<第1実施形態に係る医用画像処理システム100>
【0030】
図1は、第1実施形態の医用画像処理システム100を示すブロック図である。図1に示されるように、第1実施形態の医用画像処理システム100は、外部装置10と、画像処理装置20と、出力装置40とを備える。
【0031】
医用画像の一種として、T1強調画像とCEFIESTA(contrast enhanced fast imaging employing steady - state acquisition)画像とが知られている。T1強調画像は、核磁気共鳴画像法(MRI: Magnetic Resonance Imager)によって撮像される医用画像の一種であり、患者に対して造影剤を投与しない場合に撮像される医用画像の一例である。CEFIESTA画像は、GE(General Electric)社によるFast Imaging Employing Steady state Acquisitionと称される撮像方式によって撮像される医用画像であり、患者に対して造影剤を投与した場合に撮像される医用画像の一例である。
【0032】
T1強調画像は患者に対して造影剤を投与しなくとも得られるのに対し、CEFIESTA画像は患者に対して造影剤を投与する必要がある。患者に対して造影剤が投与されることにより、人体の所定部位の画像信号が強調されるため、T1強調画像よりもCEFIESTA画像の方が人体の所定部位が鮮明に映る。しかし、造影剤は人体に対して侵襲性を有しているため、患者に対してはなるべく造影剤を投与しないほうが好ましい。
【0033】
そこで、第1実施形態の医用画像処理システム100は、患者に対し造影剤を投与しなくとも得られるT1強調画像から関心領域を抽出する。具体的には、第1実施形態の医用画像処理システム100は、患者に造影剤を投与した際に得られるCEFIESTA画像を用いた機械学習によって得られる学習済みモデルによって、T1強調画像から関心領域を抽出する。そして、第1実施形態の医用画像処理システム100は、関心領域が抽出されたT1強調画像を用いて、患者の対象部位の3次元オブジェクトを生成する。なお、本実施形態における関心領域は、頭部を撮像した医用画像のうちの大脳領域である。また、第1実施形態においては、T1強調画像は第1種類の医用画像の一例であり、CEFIESTA画像は第2種類の医用画像の一例である。
【0034】
図2に、本実施形態の医用画像処理システム100が実行する処理の概要を説明するための説明図を示す。
【0035】
図2に示されるように、本実施形態では、人体の頭部の画像を対象とする。本実施形態の医用画像処理システム100は、図2に示される学習フェーズLP(Learning Phase)において、学習用のT1強調画像のグレースケール画像ImL1と学習用のCEFIESTA画像の2値化画像ImL2とが対応付けられた学習用データに基づいて、ニューラルネットワークMを機械学習させる。そして、医用画像処理システム100は、T1強調画像から大脳領域を抽出するための学習済みのニューラルネットワークLMを生成する。
【0036】
なお、1つのデータは、同一の患者から撮像されたT1強調画像のグレースケール画像(以下、単に「T1強調画像」と称する。)とCEFIESTA画像の2値化画像(以下、単に「CEFIESTA画像」と称する。)との組み合わせである。なお、CEFIESTA画像の2値化画像は、医師等によって大脳領域が予め抽出された画像である。また、本実施形態においては、図3に示されるように、患者Pの脳の各断面を表す複数の画像Imを1つの3次元医用画像データとする。
【0037】
医用画像処理システム100は、図2に示される利用フェーズUP(Using Phase)において、大脳領域抽出対象のT1強調画像である3次元医用画像データImU1を、学習済みのニューラルネットワークLMへ入力して、3次元医用画像データの関心領域である大脳領域ImU2を生成する。そして、医用画像処理システム100は、大脳領域ImU2に基づいて、患者の対象部位の3次元オブジェクトを生成する。図4に、患者の脳の3次元オブジェクトの一例を示す。図4に示されるように、本実施形態では、患者の大脳の3次元オブジェクトBRが生成される。
【0038】
以下、具体的に説明する。
【0039】
外部装置10は、同一の患者から撮像されたT1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータを画像処理装置20へ入力する。また、外部装置10は、患者から撮像された大脳領域抽出対象のT1強調画像を画像処理装置20へ入力する。大脳領域抽出対象のT1強調画像は、後述する画像処理装置20において、大脳領域の抽出処理が行われる。
【0040】
画像処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、ネットワークインタフェース等を含んだコンピュータによって実現される。図1に示されるように、画像処理装置20は、機能的には、取得部21と、医用画像記憶部22と、データ設定部の一例である平均データ生成部23と、平均データ記憶部23Aと、学習用データ生成部24と、学習用データ記憶部25と、学習部26と、学習済みモデル記憶部27と、変換部28と、領域抽出部30と、オブジェクト生成部32とを備えている。
【0041】
取得部21は、外部装置10から入力された、複数の患者の各々についてのT1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータを取得する。そして、取得部21は、複数の患者の各々についてのT1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータを、医用画像記憶部22へ格納する。また、取得部21は、外部装置10から入力された、大脳領域抽出対象のT1強調画像を取得する。T1強調画像は、開示の技術の対象データの一例である。
【0042】
医用画像記憶部22には、複数の患者の各々についてのT1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータが格納される。本実施形態のCEFIESTA画像は、大脳領域と大脳領域とは異なる領域とが2値化されている。CEFIESTA画像における大脳領域の抽出は、医師等の人手によって予め行われる。例えば、図2に示されるように、CEFIESTA画像のうちの大脳領域が白画素によって表現され、大脳領域とは異なる領域が黒画素によって表現される。
【0043】
例えば、図5に示されるように、医用画像記憶部22には、複数の患者の各々についてのT1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられて格納される。
【0044】
図5に示される「患者ID」は患者を識別するための識別情報である。また、「画像ID」は画像を識別するための識別情報であり、1つの画像IDが1つの断面に対応する。このため、1枚の画像は脳の1つの断面を表す画像である。本実施形態では、1人の患者から得られた各断面のT1強調画像又はCEFIESTA画像を、1つの3次元医用画像データとして取り扱う。
【0045】
本実施形態においては、医用画像記憶部22に格納されたデータに基づいて、標準データの一例である平均データを生成した後、学習用データを生成する。図6に、平均データの生成を説明するための説明図を示す。
【0046】
図6に示されるように、患者Xの頭部の3次元医用画像データHXと、患者Yの頭部の3次元医用画像データHYと、患者Zの頭部の3次元医用画像データHZとを比較すると、個人差に起因して、大きさ及び形状等が異なる。更に、医用画像の撮像機器による特性の違いから、3次元医用画像データの大きさ、形状、向き、及び位置は、ばらばらなものとなる。このため、これら複数の患者の医用画像をそのまま学習用データとしてニューラルネットワークを学習させたとしても、精度の良い結果を得ることはできない。
【0047】
そこで、本実施形態においては、ばらつきのある3次元医用画像データ及び3次元医用画像データの関心領域の各々について、位置、大きさ、向きを揃えて学習用データを生成する。
【0048】
具体的には、本実施形態では、図6に示されるように、複数の患者の各々の3次元医用画像データから、平均の頭部の3次元医用画像データである平均データHAVを生成する。そして、本実施形態では、複数の患者の頭部の3次元医用画像データの各々を、平均データに近づけるようにアフィン変換等の変換処理を行う。これにより、複数の患者の3次元医用画像データ(T1強調画像及びCIFIESTA画像等)の各々は、位置、大きさ、及び向きの違いが抑えられ、位置、大きさ、及び向きが揃えられたデータとなる。
【0049】
以下、具体的に説明する。
【0050】
平均データ生成部23は、標準を表す3次元画像データである標準データの一例である平均データを設定する。具体的には、平均データ生成部23は、3次元医用画像データである複数のT1強調画像の各々の大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを揃えた後に平均して、複数のT1強調画像の平均データを生成する。
【0051】
具体的には、平均データ生成部23は、以下の(1)~(4)に示される手順に従って、患者のT1強調画像の平均データを生成する。
【0052】
(1)平均データ生成部23は、医用画像記憶部22に格納された複数のデータから、頭部の3次元医用画像データであるT1強調画像を取得する。例えば、平均データ生成部23は、医用画像記憶部22に格納されたデータの中から、10件のT1強調画像を読み出す。
(2)平均データ生成部23は、読み出した10件のT1強調画像の中から、基準となるT1強調画像である基準データを1つ選択する。なお、基準データは、ユーザによって選択されてもよい。
(3)平均データ生成部23は、基準データとは異なる9件のT1強調画像の各々を、1つの基準データに近づけるようにアフィン変換等の変換を行う。
(4)平均データ生成部23は、基準データのT1強調画像と、アフィン変換等の変換処理が施された9件のT1強調画像とを加算平均することにより、頭部の平均データを得る。そして、平均データ生成部23は、T1強調画像の平均データを、平均データ記憶部23Aに格納する。
【0053】
これにより、複数の3次元医用画像データの大きさ、向き、及び位置が揃えられた平均データが得られたことになる。例えば、図6に示されるように、複数の患者の各々の頭部の大きさ、向き、及び位置が異なるT1強調画像HX,HY,HZの、大きさ、向き、及び位置が揃えられ、平均データHAVが得られる。
【0054】
学習用データ生成部24は、平均データ記憶部23Aに格納された頭部の平均データを用いて、医用画像記憶部22に格納された複数の患者の各々のデータを平均データへ近づけることにより、学習用データを生成する。
【0055】
具体的には、学習用データ生成部24は、医用画像記憶部22に格納された複数の学習用の3次元医用画像データである学習用のT1強調画像の各々について、平均データ記憶部23Aに格納されたT1強調画像の平均データとの間の一致度が大きくなるように、複数の学習用のT1強調画像の各々の大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを揃えるように変換処理を行う。
【0056】
本実施形態の学習用データ生成部24は、変換処理として、既知の技術である異方性スケーリングの一例であるアフィン変換を用いる。なお、アフィン変換によって変換処理が行われる場合には、一致度の一例である相関値が大きくなるように、アフィン変換処理がなされる。なお、1つの学習用のT1強調画像に対してアフィン変換処理が行われた場合には、1つのアフィン変換行列が得られる。
【0057】
また、学習用データ生成部24は、該学習用のT1強調画像の関心領域が抽出されているCEFIESTA画像の各々について、同様の変換処理を行う。具体的には、学習用データ生成部24は、学習用のT1強調画像を変換する際に得られたアフィン変換行列を用いて、関心領域が抽出されているCEFIESTA画像を変換する。
【0058】
そして、学習用データ生成部24は、変換された学習用の3次元医用画像データであるT1強調画像と、変換された関心領域であるCEFIESTA画像とを対応付けて学習用データを生成する。
【0059】
これにより、位置、大きさ、及び向きがばらばらであった複数のT1強調画像及び複数のCEFIESTA画像各々の大きさ、向き、及び位置が揃えられた状態となる。
【0060】
図7に、学習用のT1強調画像と学習用のCEFIESTA画像の大きさ、向き、及び位置を揃える処理を説明するための説明図を示す。図7(A)(B)には、ある患者P1の頭部の3次元医用画像データであるT1強調画像H1と、患者P1の大脳領域のCEFIESTA画像B1とが示されている。
【0061】
まず、学習用データ生成部24は、図7(A)に示されるように、ある患者P1の頭部のT1強調画像H1に対して、頭部の平均データHAVとの間の一致度が大きくなるように、アフィン変換Tを行い、変換処理がなされた患者P1の頭部のT1強調画像H1’を生成する。このときのアフィン変換Tにより、アフィン変換行列が得られる。
【0062】
次に、学習用データ生成部24は、図7(B)に示されるように、患者P1の大脳領域が抽出されたCEFIESTA画像B1に対し、頭部のT1強調画像H1を頭部の平均データHAVへ一致させた際に得られたアフィン変換行列を用いて変換処理を実施し、変換処理がなされた患者P1の大脳領域のCEFIESTA画像B1’を生成する。ただし、頭部のT1強調画像H1とCEFIESTA画像B1の元となるCEFIESTA画像の頭部の大きさ、向き、及び位置は既に揃っているものとする。
【0063】
これにより、ある患者P1のデータが平均データに近づけられた、患者P1の頭部のT1強調画像H1’と患者P1の大脳領域のCEFIESTA画像B1’とが得られる。
【0064】
そして、学習用データ生成部24は、変換された頭部のT1強調画像H1’に対応する3次元医用画像データと、変換された大脳領域のCEFIESTA画像B1’に対応する大脳領域とを対応付けて学習用データを生成する。
【0065】
学習用データ生成部24は、医用画像記憶部22に格納された複数のデータの各々に対して、上記の変換処理を実施し、大きさ、向き、及び位置が揃えられた学習用データを生成し、学習用データ記憶部25へ格納する。なお、学習用データを生成する際には、医用画像記憶部22に格納された複数のデータから、平均データを生成する際に用いたデータを除くようにしてもよい。
【0066】
学習用データ生成部24によって、患者毎の頭部の大きさ、向き、及び位置の差が吸収され、患者毎の脳の大きさ及び形状等のばらつきが低減された複数の患者の学習用データが得られる。更に、撮像条件の異なりによって発生したばらつきが低減された複数の患者の学習用データが得られる。
【0067】
学習用データ記憶部25には、学習用データ生成部24によって生成された、複数の患者の学習用データが格納される。具体的には、学習用データ記憶部25には、複数の患者の各々についての、大きさ、向き、及び位置が揃えられたT1強調画像を表す3次元医用画像データと、大きさ、向き、及び位置が揃えられたCEFIESTA画像を表す3次元医用画像データとが対応付けられた学習用データが格納される。
【0068】
例えば、図8に示されるように、学習用データ記憶部25には、複数の患者の各々についての大きさ、向き、及び位置が揃えられたT1強調画像と、大きさ、向き、及び位置が揃えられたCEFIESTA画像とが対応付けられて格納される。
【0069】
学習部26は、学習用データ記憶部25に格納された複数の学習用データに基づいて、T1強調画像から大脳領域を抽出するための学習済みモデルを生成する。本実施形態では、上記図2に示されるような学習済みのニューラルネットワークLMを生成する。なお、本実施形態においては学習アルゴリズムの一例としてディープラーニングを用いる。そして、学習部26は、学習済みのニューラルネットワークLMを学習済みモデル記憶部27へ格納する。
【0070】
変換部28は、取得部21により取得された大脳領域抽出対象のT1強調画像に対し、平均データ記憶部23Aに格納された頭部の平均データとの間の一致度が大きくなるように、対象データの大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを平均データと揃えるようにアフィン変換処理を行う。そして、変換部28は、大脳領域抽出対象のT1強調画像に対して当該変換処理がされた変換済データを生成する。
【0071】
本実施形態においては、頭部のばらつき等を低減させるために、頭部の平均のデータを生成し、その頭部の平均データとの一致度が大きくなるように各患者のデータを平均化して学習用データを生成した。そして、それらの学習用データから学習済みモデルが生成されているため、大脳領域抽出対象のT1強調画像に対しても同様の変換処理を実施する必要がある。このため、変換部28は、大脳領域抽出対象のT1強調画像と頭部の平均データとの間の一致度が大きくなるように、アフィン変換処理を行う。そして、変換部28は、アフィン変換処理が施された変換済データを得る。
【0072】
領域抽出部30は、学習済みモデル記憶部27に格納された学習済みのニューラルネットワークLMを読み出す。そして、領域抽出部30は、変換部28によって変換処理が行われた変換済データを学習済みのニューラルネットワークLMへ入力して、大脳領域を抽出する。これにより、造影剤を投与せずに撮像されたT1強調画像から、大脳領域が自動的に抽出されたことになる。
【0073】
オブジェクト生成部32は、領域抽出部30によって抽出された大脳領域に基づいて、患者の対象部位の3次元オブジェクトを生成する。なお、学習済みのニューラルネットワークLMから出力される画像は、大脳領域が「1」で表現され、大脳以外の領域が「0」で表現されている2値化画像である。本実施形態では、大脳の3次元オブジェクトを描画する際に既知の技術であるボリュームレンダリングを用いるため、グレースケール画像が必要となる。
【0074】
そこで、オブジェクト生成部32は、2値化画像うち「1」で表現されている大脳領域に基づいて、変換前の元の3次元医用画像データであるT1強調画像から大脳領域を抽出する。
【0075】
具体的には、オブジェクト生成部32は、領域抽出部30によって得られた大脳領域に対し、変換部28によって実施された、大きさ、向き、及び位置を合わせる変換処理に応じた逆変換処理を行う。
【0076】
例えば、図7(C)に示されるように、ある患者P2の頭部の3次元オブジェクトH2が、変換部28によるアフィン変換処理によって変換済データH2となった場合、その変換済データH2を学習済みのニューラルネットワークLMへ入力して、大脳領域B2が得られる。なお、大脳領域B2はボリュームデータである。
【0077】
オブジェクト生成部32は、大脳領域B2に対し、変換部28によって実施されたアフィン変換処理に応じた逆変換処理INVTを行い、変換前のT1強調画像と逆変換処理がなされた大脳領域B2との対応付けにより、T1強調画像から大脳領域を抽出する。具体的には、オブジェクト生成部32は、逆変換処理がなされた大脳領域B2と元の3次元医用画像データであるT1強調画像との間のアダマール積をとることにより、T1強調画像から大脳領域を抽出する。これにより、グレースケールの大脳領域が抽出される。
【0078】
そして、オブジェクト生成部32は、変換前の元のT1強調画像から抽出された大脳領域に基づいて、既知の技術であるボリュームレンダリングを用いて、患者の脳の3次元オブジェクトを表示する。具体的には、オブジェクト生成部32は、患者の脳のボリュームデータから生成された患者の脳の3次元オブジェクトを出力装置40へ出力する。
【0079】
出力装置40は、オブジェクト生成部32から出力された3次元オブジェクトを結果として出力する。出力装置40は、例えばディスプレイ等によって構成される。出力装置40からは、例えば、図4に示されるような、大脳の3次元オブジェクトBRが表示される。
【0080】
画像処理装置20は、例えば、図9に示すコンピュータ50で実現することができる。コンピュータ50はCPU51、一時記憶領域としてのメモリ52、及び不揮発性の記憶部53を備える。また、コンピュータ50は、外部装置10及び出力装置40等が接続される入出力interface(I/F)54、及び記録媒体59に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write(R/W)部55を備える。また、コンピュータ50は、インターネット等のネットワークに接続されるネットワークI/F56を備える。CPU51、メモリ52、記憶部53、入出力I/F54、R/W部55、及びネットワークI/F56は、バス57を介して互いに接続される。
【0081】
記憶部53は、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部53には、コンピュータ50を機能させるためのプログラムが記憶されている。CPU51は、プログラムを記憶部53から読み出してメモリ52に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0082】
<医用画像処理システム100の作用>
【0083】
次に、図10図12を参照して、本実施形態の医用画像処理システム100の作用について説明する。医用画像処理システム100が稼動し、外部装置10から、複数の患者の各々についてのT1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータが入力されると、取得部21は、そのデータの各々を医用画像記憶部22へ格納する。そして、平均データ生成の指示信号を画像処理装置20が受け付けると、画像処理装置20は、図10に示す平均データ生成処理ルーチンを実行する。
【0084】
<平均データ生成処理ルーチン>
【0085】
ステップS50において、平均データ生成部23は、例えば、医用画像記憶部22に格納された10件のT1強調画像を読み出す。
【0086】
ステップS52において、平均データ生成部23は、上記ステップS50で読み出された複数の患者のT1強調画像から、1つの基準データを選択する。
【0087】
ステップS54において、平均データ生成部23は、上記ステップS52で選択された基準データとは異なる9件のT1強調画像の各々について、上記ステップS52で選択された基準データとT1強調画像との間の大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを揃えるように、アフィン変換を行う。
【0088】
ステップS56において、平均データ生成部23は、上記ステップS52で選択された基準データに対応するT1強調画像と、上記ステップS54でアフィン変換が行われたT1強調画像とを加算平均して、平均データを生成する。
【0089】
ステップS58において、平均データ生成部23は、上記ステップS56で生成された平均データを、平均データ記憶部23Aへ格納する。
【0090】
<学習用データ生成処理ルーチン>
【0091】
次に、学習用データ生成の指示信号を画像処理装置20が受け付けると、画像処理装置20は、図11に示す学習用データ生成処理ルーチンを実行する。
【0092】
ステップS70において、学習用データ生成部24は、医用画像記憶部22へ格納された、複数の患者の各々についてのT1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータから、1つのデータを読み出す。
【0093】
ステップS72において、学習用データ生成部24は、平均データ記憶部23Aに格納されている平均データを読み出す。
【0094】
ステップS74において、学習用データ生成部24は、上記ステップS70で読み出されたデータのうちのT1強調画像と上記ステップS72で読み出された平均データとの間の大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを揃えるように、T1強調画像に対してアフィン変換を行う。このとき、アフィン変換行列が得られる。
【0095】
ステップS76において、学習用データ生成部24は、上記ステップS70で読み出されたデータのうちのCEFIESTA画像を、上記ステップS72で読み出された平均データと揃えるように、上記ステップS74で得られたアフィン変換行列を用いて、アフィン変換を行う。
【0096】
ステップS78において、学習用データ生成部24は、上記ステップS74で変換処理がなされたT1強調画像と、上記ステップS76で変換処理がなされたCEFIESTA画像とを対応付けて、学習用データ記憶部25へ1つの学習用データとして格納する。
【0097】
ステップS80において、学習用データ生成部24は、医用画像記憶部22に格納されている全てのデータについて、上記ステップS70~ステップS78の処理が実行されたか否かを判定する。全てのデータについて、上記ステップS70~ステップS78の処理が実行されている場合には、学習用データ生成処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップS70~ステップS78の処理が実行されていないデータが存在する場合には、ステップS70へ戻る。なお、医用画像記憶部22に格納された複数のデータのうちの平均データを生成する際に用いられたデータについては、学習用データの生成から除外するようにしてもよい。
【0098】
<学習処理ルーチン>
【0099】
上記学習用データ生成処理ルーチンによって、複数の患者の各々についての学習用データが生成され、学習用データ記憶部25に学習用データが格納されると、ニューラルネットワークMに対する機械学習処理の実行が可能となる。このため、学習処理の指示信号を画像処理装置20が受け付けると、画像処理装置20は、図12に示す学習処理ルーチンを実行する。
【0100】
ステップS100において、学習部26は、学習用データ記憶部25に格納された複数の学習用データを取得する。
【0101】
ステップS102において、学習部26は、上記ステップS100で取得された複数の学習用データに基づいて、T1強調画像から大脳領域を抽出するための学習済みニューラルネットワークLMを機械学習によって生成する。
【0102】
ステップS104において、学習部26は、上記ステップS102で生成された学習済みニューラルネットワークLMを、学習済みモデル記憶部27へ格納して、学習処理ルーチンを終了する。
【0103】
<画像処理ルーチン>
【0104】
上記学習処理ルーチンによって、学習済みのニューラルネットワークLMが、学習済みモデル記憶部27に格納されると、学習済みのニューラルネットワークLMを用いての大脳領域の抽出が可能となる。このため、外部装置10から、大脳領域抽出対象のT1強調画像が画像処理装置20へ入力されると、画像処理装置20は、図13に示す画像処理ルーチンを実行する。
【0105】
ステップS200において、取得部21は、大脳領域抽出対象のT1強調画像を取得する。
【0106】
ステップS201において、変換部28は、上記ステップS200で取得された大脳領域抽出対象のT1強調画像に対し、当該T1強調画像と平均データ記憶部23Aに格納された頭部の平均データとの間の一致度が大きくなるようにアフィン変換処理を行い、変換済データを生成する。
【0107】
ステップS202において、領域抽出部30は、学習済みモデル記憶部27に格納された学習済みのニューラルネットワークLMを読み出す。
【0108】
ステップS204において、領域抽出部30は、上記ステップS201で生成された変換済データを、上記ステップS202で読み出された学習済みのニューラルネットワークLMへ入力して、大脳領域のボリュームデータを抽出する。
【0109】
ステップS206において、オブジェクト生成部32は、上記ステップS204で抽出された大脳領域のボリュームデータに対し、上記ステップS201で実施されたアフィン変換処理に応じた逆変換処理を行う。そして、オブジェクト生成部32は、アフィン変換前のT1強調画像のボリュームデータと逆変換処理がなされた大脳領域のボリュームデータとのアダマール積により、元のT1強調画像から大脳領域を抽出する。これにより、グレースケールの大脳領域が抽出される。
【0110】
ステップS208において、オブジェクト生成部32は、上記ステップS206で得られたグレースケールの大脳領域のボリュームデータに基づいて、既知の技術であるボリュームレンダリングを用いて、患者の脳の3次元オブジェクトを生成する。
【0111】
ステップS210において、オブジェクト生成部32は、患者の脳の3次元オブジェクトを出力装置40へ出力して、画像処理ルーチンを終了する。
【0112】
出力装置40は、オブジェクト生成部32から出力された患者の脳の3次元オブジェクトを結果として出力する。
【0113】
以上説明したように、第1実施形態に係る画像処理装置20は、関心領域抽出対象の3次元医用画像データである対象データと、複数の3次元医用画像データの各々の大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを揃えた後に平均することにより生成された3次元医用画像データである平均データとの間の一致度が大きくなるように、対象データの大きさ、向き、及び位置の少なくとも1つを平均データと揃えるように変換処理を行う。そして、画像処理装置20は、対象データに対して変換処理がされた3次元医用画像データである変換済データを、3次元医用画像データから該3次元医用画像データに含まれる関心領域を抽出するための予め学習された学習済みモデルへ入力して、学習済みモデルによる演算によって変換済データに含まれる関心領域を抽出する。これにより、医用画像から関心領域を精度良く抽出することができる。また、患者から得られる医用画像のばらつきを低減させた学習用データから生成された学習済みモデルによって、医用画像から精度良く関心領域を抽出することができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、医用画像毎のばらつきが低減された学習用データを生成することができるため、少ない学習データで精度の良い学習済みモデルを得ることができる。
【0115】
また、本実施形態によれば、1人の患者の各断面を表す複数の医用画像の組み合わせを1つの学習用データとして取り扱うことにより、学習用データに、高さ方向の情報が反映される。このため、その学習用データが学習済みモデルへ反映され、患者の3次元オブジェクトを精度良く生成することができる。
【0116】
また、本実施形態によれは、患者への造影剤の投与が不要であるT1強調画像から、患者へ造影剤を投与して撮像されるCEFIESTA画像から関心領域を抽出した結果と同等に関心領域を抽出することができる。このため、患者の負担を低減させ、かつ精度良く関心領域が抽出されたデータを得ることができる。
【0117】
また、そのようにして得られた関心領域抽出画像から、患者の対象部位の3次元オブジェクトを精度良く生成することができる。特に、本実施形態によれば、学習済みモデルを用いて、T1強調画像の関心領域を抽出する。そして、本実施形態によれば、その関心領域が抽出されたT1強調画像に基づいて、ボリュームレンダリングにより、患者の対象部位の3次元オブジェクトを精度良く表示すことができる。
【0118】
<第2実施形態に係る医用画像処理システム>
【0119】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態に係る医用画像処理システムの構成は、第1実施形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。第2実施形態では、FIESTA画像から大脳領域を抽出する点が、第1実施形態と異なる。第2実施形態においては、FIESTA強調画像は第1種類の医用画像の一例であり、CEFIESTA画像は第2種類の医用画像の一例である。
【0120】
上述したように、FIESTA画像は、GE(General Electric)社によるFast Imaging Employing Steady state Acquisitionと称される撮像方式によって撮像される医用画像である。しかし、「CE」が付与されていないFIESTA画像は、患者に対して造影剤を投与しない場合に撮像される医用画像の一例である。第2実施形態によれば、患者へ造影剤を投与して撮像されるCEFIESTA画像から大脳領域を抽出することと同程度に、患者への造影剤の投与が不要であるFIESTA画像から大脳領域を精度良く抽出することができる。このため、第1実施形態と同様に、患者の負担を低減させて大脳領域を精度良く抽出することができる。
【0121】
第2実施形態の医用画像記憶部22には、第1実施形態でのT1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータに替えて、FIESTA画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータが格納される。
【0122】
また、第2実施形態の学習用データ記憶部25には、第1実施形態での複数の患者の各々についての、大きさ、向き、及び位置が揃えられたT1強調画像を表す3次元医用画像データと、大きさ、向き、及び位置が揃えられたCEFIESTA画像を表す3次元医用画像データとが対応付けられた学習用データに替えて、複数の患者の各々についての、大きさ、向き、及び位置が揃えられたFIESTA画像を表す3次元医用画像データと、大きさ、向き、及び位置が揃えられたCEFIESTA画像を表す3次元医用画像データとが対応付けられた学習用データが格納される。
【0123】
また、第2実施形態の領域抽出部30は、関心領域抽出対象の3次元医用画像データであるFIESTA画像を、第2実施形態の学習済みのニューラルネットワークへ入力して、FIESTA画像から大脳領域を抽出する。これにより、大脳領域が精度良く抽出される。
【0124】
第2実施形態のオブジェクト生成部32は、領域抽出部30によって抽出された大脳領域の情報に基づいて、アダマール積を行わずに、領域抽出部30から出力された「0」、「1」の2値化画像をマーチングキューブ法でサーフェスレンダリングすることにより、大脳領域の3次元オブジェクトを表示する。
【0125】
なお、第2実施形態に係る医用画像処理システムの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0126】
以上説明したように、第2実施形態に係る画像処理装置によれば、関心領域抽出対象の3次元医用画像データである対象データとは異なる種類の医用画像により予め学習された学習済みモデルを用いて、対象データから関心領域を抽出することができる。
【0127】
<第3実施形態に係る医用画像処理システム>
【0128】
次に、第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態に係る医用画像処理システムの構成は、第1実施形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。第3実施形態では、学習用データとして、CEFIESTA画像とCEFIESTA画像との組み合わせを用いる点が、第1実施形態及び第2実施形態と異なる。第3実施形態においては、CEFIESTA画像は第1種類の医用画像及び第2種類の医用画像の一例である。なお、CEFIESTA画像は、患者に対して造影剤を投与した場合に撮像される医用画像である。
【0129】
第3実施形態の医用画像記憶部22には、第1実施形態でのT1強調画像とCEFIESTA画像とが対応付けられたデータに替えて、大脳領域が抽出されていないCEFIESTA画像と大脳領域が抽出されているCEFIESTA画像とが対応付けられたデータが格納される。
【0130】
また、第3実施形態の領域抽出部30は、関心領域抽出対象の3次元医用画像データであるCEFIESTA画像を、第3実施形態の学習済みのニューラルネットワークへ入力して、CEFIESTA画像から大脳領域を抽出する。これにより、大脳領域が精度良く抽出される。
【0131】
第3実施形態のオブジェクト生成部32は、領域抽出部30によって抽出された大脳領域の情報に基づいて、アダマール積を行わずに、領域抽出部30から出力された「0」、「1」の2値化画像をマーチングキューブ法でサーフェスレンダリングすることにより、大脳領域の3次元オブジェクトを表示する。
【0132】
なお、第3実施形態に係る医用画像処理システムの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0133】
以上説明したように、第3実施形態に係る画像処理装置によれば、関心領域抽出対象の3次元医用画像データである対象データとは異なる種類の医用画像により予め学習された学習済みモデルを用いて、対象データから関心領域を抽出することができる。
【実施例1】
【0134】
次に、実施例を説明する。図14は、本実施形態の画像処理装置20によって生成された大脳の3次元オブジェクトである。図14に示されるように、大脳領域が精度良く抽出されていることがわかる。特に、脳溝及び脳回に関して精度良く抽出されていることがわかる。
【0135】
また、本実施形態によって生成された患者の大脳のボリュームデータと、医師によるCEFIESTA画像に対するラベル付け結果から生成された大脳のボリュームデータとの間の一致度(ダイス係数)を、以下の表に示す。以下の表に示されている結果は、大脳領域が抽出されていないCEFIESTA画像と大脳領域が抽出されているCEFIESTA画像とが対応付けられた学習用データに基づき学習済みモデルを生成し、未知のCEFIESTA画像に対して大脳領域を抽出した結果である。
【0136】
【表1】

【0137】
上記表に示されるように、複数の患者の各々についてのダイス係数は、何れも0.9以上の値となっている。この結果は、従来よりも高精度に大脳の3次元オブジェクトが生成されていることを示している。このため、医用画像から大脳領域が精度良く生成され、大脳の3次元オブジェクトが高精度に生成されているといえる。
【0138】
なお、開示の技術は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0139】
例えば、上記第1実施形態では、第1種類の医用画像がT1強調画像であり、第2種類の医用画像がCEFIESTA画像である場合を例に説明した。また、上記第2実施形態では、第1種類の医用画像がFIESTA画像であり、第2種類の医用画像がCEFIESTA画像である場合を例に説明した。また、上記第3実施形態では、第1種類の医用画像がCEFIESTA画像であり、第2種類の医用画像もCEFIESTA画像である場合を例に説明した。
【0140】
しかし、第1種類の医用画像及び第2種類の医用画像の組み合わせは、これに限定されるものではなく、脳領域を医師の手で抽出することが出来得る医用画像であればどのような組み合わせであってもよい。例えば、第1種類の医用画像及び第2種類の医用画像としては、T2強調画像及びCT画像等、医用画像であればどのようなものであってもよい。また、本実施形態では、CEFIESTA画像の2値化画像を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、グレースケール画像等を用いるようにしてもよい。
【0141】
また、図15に示されるように、複数種類の医用画像Im1,Im2,Im3,Im4を用いて学習済みモデルを生成し、任意の種類の医用画像から異なる種類の医用画像を生成する、又は、医用画像から対象の領域を抽出して、対象部位の3次元オブジェクトBRを生成するようにしてもよい。
【0142】
また、本実施形態においては、患者の対象部位の一例として脳を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の部位であってもよい。例えば、動脈の3次元オブジェクトを生成する際に、本実施形態を用いるようにしてもよい。
【0143】
また、本実施形態では、異方性スケーリングの一例としてアフィン変換を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の手法を用いて変換処理を行っても良い。
【0144】
また、上記実施形態では、平均データ生成処理ルーチンと、学習用データ生成処理ルーチンと、学習処理ルーチンと、画像処理ルーチンとが同一の画像処理装置20内で実行される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、平均データ生成処理ルーチンを実行する平均データ生成装置、学習用データ生成処理ルーチンを実行する学習用データ生成装置、学習処理ルーチンを実行する画像処理モデル生成装置、及び画像処理ルーチンのみを実行する画像処理装置のように、別々の装置として構成するようにしてもよい。
【0145】
例えば、上記実施形態では、モデルの一例としてのニューラルネットワークモデルをディープラーニングによって学習させる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ニューラルネットワークモデルとは異なる他のモデルを、ディープラーニングとは異なる他の学習方法によって学習させてもよい。
【0146】
また、本実施形態では、第1種類の医用画像と第2種類の医用画像とを用いて学習済みモデルを生成し、関心領域抽出対象の3次元医用画像データである対象データを学習済みモデルへ入力して、関心領域を抽出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、対象データに対して所定の変換処理を施してもよい。
【0147】
例えば、関心領域抽出対象の3次元医用画像データがT2強調画像であり、第3実施形態の画像処理装置20を用いてT2強調画像から関心領域を抽出する場合を例に考える。この場合、T2強調画像はCEFIESTA画像とは異なる種類の医用画像であるものの、T2強調画像の撮像方式はCEFIESTA画像の撮像方式と似ている。このため、T2強調画像に何らかの変換処理を施し、CEFIESTA画像に似させたうえで、CEFIESTA画像によって予め学習された学習済みモデルへ入力することにより、T2強調画像から関心領域を抽出することができる。このため、この場合には、変換部28は、対象データであるT2強調画像に対して平均データと揃える変換処理を行った後に、T2強調画像の輝度値の階調を補正する変換処理を行うことにより変換済データを生成する。例えば、変換部28は、T2強調画像に対してγ補正処理を施すことにより、CEFIESTA画像に似させたうえで、γ補正処理がなされたT2強調画像を学習済みモデルへ入力して関心領域を抽出することもできる。なお、変換部28は、T2強調画像の輝度値の階調を補正する変換処理を行った後に、T2強調画像に対して平均データと揃える変換処理を行ってもよい。
【0148】
また、関心領域抽出対象の3次元医用画像データである対象データの一部が欠落していている場合には、その部分を補完して学習済みモデルへ入力するようにしてもよい。
【0149】
例えば、医療現場においては、患者の頭部全体ではなく、患部付近のみを撮像する場合がある。この場合、そのような患部のみが写った3次元医用画像データである対象データを、頭部全体が写った3次元医用画像データの学習用データから生成された学習済みモデルへ入力したとしても、対象データの患部以外の欠落している部分が原因となり、関心領域の抽出に失敗する場合がある。
【0150】
このため、対象データの一部が欠落していている場合には、その部分を平均データから補完するようにしてもよい。具体的には、この場合、変換部28は、対象データを平均データと揃えるように変換処理を行う際に、対象データと一致した平均データの領域とは異なる領域を、対象データへ統合することにより、対象データを補完して、変換済データを生成する。なお、この場合、変換部28は、平均データの輝度値の平均又は分散と、対象データの輝度値の平均又は分散とが近づくような補正処理を平均データに対して行って統合をすることにより、変換済データを生成するようにしてもよい。そして、領域抽出部30は、補完された対象データを学習済みモデルへ入力して関心領域を抽出する。なお、この場合、領域抽出部30は、抽出された関心領域から、対象データに対応する患部の箇所のみ抽出結果とする。
【0151】
また、上記実施形態では、標準を表す3次元画像データとして平均データを用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。
【0152】
例えば、複数の3次元医用画像データから予め選定された3次元医用画像データを標準データとしてもよい。この場合には、例えば、標準的な頭部を有している患者の3次元医用画像データが、標準データとして予め設定される。
【0153】
または、例えば、複数の3次元医用画像データに対して統計的処理を行うことにより予め生成された3次元画像データを標準データとしてもよい。この場合には、例えば、複数の3次元医用画像データに対して統計的処理の一例である主成分分析を実施し、それにより得られた第1主成分等に相当する3次元画像データを標準データとすることができる。
【0154】
また、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0155】
2020年3月4日に出願された日本国特許出願2020-037135号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
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図15