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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】測定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20230802BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20230802BHJP
   H04N 17/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
H04L27/26 410
H04L27/26 114
H04L27/26 111
H04B7/0413
H04N17/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019166059
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021044724
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】井地口 朋也
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩平
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-225789(JP,A)
【文献】国際公開第2008/142419(WO,A1)
【文献】特開2020-141388(JP,A)
【文献】特開2019-211285(JP,A)
【文献】特開2018-078553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04B 7/0413
H04N 17/00
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM信号を測定する測定装置であって、
MIMO伝送されたOFDM信号を受信し、同期再生後のOFDM信号における階層毎のスキャッタードパイロット(SP)信号を基にした周波数特性、及び、前記OFDM信号におけるデータ信号のコンスタレーションを少なくとも含む測定値を解析して測定する信号解析手段を備え、
前記信号解析手段は、前記同期再生後のOFDM信号における階層毎のSP信号を基にOFDM信号を補正する等化処理を実行する等化手段を備え、
前記等化手段は、
1系のSP信号の信号点配置と、前記1系のSP信号の信号点配置に対して所定のSPシンボルを規則的に符号反転した2系のSP信号の信号点配置の2種類のSP配置パターンを有するMIMO伝送時に、前記同期再生後のOFDM信号から階層毎のSP信号の先頭シンボルを検出するSP先頭検出手段と、
前記SP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間分のOFDM信号を格納するバッファメモリと、
前記所定シンボル期間分のOFDM信号について複素除算を行って、所定の伝搬路推定によりSP信号の振幅・位相変化量を推定するSP複素除算手段と、
前記振幅・位相変化量を用いて時間方向のSP補間処理を実行するSP時間方向補間手段と、
前記時間方向のSP補間処理後のOFDM信号について、SP信号が非線形の周波数特性を有する場合には、SP信号が線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号に変換する周波数特性変換手段と、
前記周波数特性変換手段から得られるOFDM信号に対して周波数方向のSP補間処理を行うSP周波数方向補間手段と、
前記周波数方向のSP補間処理後のOFDM信号を複素除算することにより前記OFDM信号を補正する複素除算手段と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記周波数特性変換手段は、前記時間方向のSP補間処理後のOFDM信号が階層毎に同一シンボル上でSP信号の先頭シンボルの符号が同じであるか異なっているかを判定し、SP信号が非線形の周波数特性を持つときにはSP信号が線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号に変換することを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記周波数特性変換手段は、前記時間方向のSP補間処理後のOFDM信号におけるSP信号の周波数特性を第1の周波数特性とし、前記第1の周波数特性を持つSP信号の符号反転の可能性がある階層の有無と符号反転の周期性をTMCC情報から判定し、符号反転の可能性があるとして判定した階層のSP信号については、当該所定シンボル期間分にて、判定した周期性に従い符号反転しているSPシンボルを非符号反転のSPシンボルに正負符号を反転させた第2の周波数特性に変換し、前記第1及び第2の周波数特性を比較して、線形に連続する方の周波数特性を持つOFDM信号を選択して前記SP周波数方向補間手段に出力することを特徴とする、請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記周波数特性変換手段は、前記第1及び第2の周波数特性の各々について、キャリア方向に隣接するSPシンボル間の振幅距離の総和を算出し、前記第1及び第2の周波数特性のうち、振幅距離の総和の小さい方が線形に連続する周波数特性であると判定し、より線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号を選択して出力することを特徴とする、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から4のいずれか一項に記載の測定装置における前記信号解析手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代地上デジタル放送のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号の測定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代地上波放送は、現行のISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)であるOFDM変調方式を継承した上で、伝送容量を拡大することが予定されている。
【0003】
例えば、現行の地上デジタル放送(ISDB-T)ではキャリア変調方式として信号点の間隔が均一なコンスタレーション(均一コンスタレーション;UC)の64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)を最大多値変調として用いており、1キャリアシンボルで6ビットを伝送している(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
一方、次世代地上波放送では、ハイビジョンを超える超高精細映像として4Kや8KのSHV(Super Hi-Vision)などの大容量コンテンツサービスを伝送するために、64QAMを超える多値変調(現在、4096QAMを最大多値変調として検討されている)とし、信号点の間隔が不均一なコンスタレーション(不均一コンスタレーション;NUC)のキャリア変調方式を含む超多値OFDM変調技術を用いて伝送容量を拡大することが検討されている(例えば、非特許文献2参照)。更に、次世代地上波放送では、水平偏波及び垂直偏波を同時に使う偏波MIMO(multiple-input and multiple-output)技術を用いて伝送容量を2倍に拡大することが検討されている。
【0005】
尚、現行の地上デジタル放送(ISDB-T)では、OFDM信号に多重されるデータ信号(データキャリア)の各階層(A階層、B階層、及びC階層)で共通して、スキャッタードパイロット(SP)信号のシンボルの配置が為され、即ち一種類のSP信号の信号点配置(キャリア番号方向については12キャリアに1回、シンボル番号方向については4シンボルに1回、SP信号の1シンボルを配置)となっている。
【0006】
一方、次世代地上波放送では、OFDM信号に多重されるデータ信号(データキャリア)の各階層(A階層、B階層、及びC階層)で個別に、SP信号のシンボルの配置を変更可能(例えば、A階層ではキャリア番号方向について6キャリアに1回、B階層ではキャリア番号方向について12キャリアに1回、SP信号の1シンボルを配置)に指定できるものとし、そのSP信号の信号点配置に係る情報はTMCC制御情報に含めて伝送することが検討されている。
【0007】
特に、次世代地上波放送において、MIMO方式でOFDM信号を伝送する時では、SP信号について、直交した1系・2系のSP信号を使用することが検討されている。
【0008】
図10は、次世代地上波放送で検討されているMIMO伝送時のSP信号として、直交した1系・2系のSP信号の配置(以下、単に「SP配置」とも称する。)と符号の一例を示す図である。例えば、MIMO伝送時に、1系のSP配置は水平偏波で、2系のSP配置は垂直偏波で伝送される。この1系及び2系のSP信号は、階層毎に、符号反転方式に対応して生成される。符号反転方式では、2系のSP信号について、1系として配置されるSP信号に+1、或いは-1を乗じたものとする(SPの振幅の絶対値は維持される)。
【0009】
より具体的には、2系のSP配置は、2系のOFDM信号のフレーム(以下、「OFDMフレーム」とも称する。)の先頭のSPシンボル(2系の先頭のキャリア番号の時間方向最初のSPシンボル)について、1系のOFDMフレームの先頭のSPシンボル(1系の先頭のキャリア番号の時間方向最初のSPシンボル)に+1を乗じたものとし(非符号反転)、このOFDMフレーム先頭のSPシンボルを基準に、キャリア間隔Dx及びシンボル間隔Dyを基に規定されるキャリア‐シンボル空間においてシンボル方向(時間方向)及びキャリア方向(周波数方向)にSPシンボルの符号値を交互に反転させる。更に、2系のSP配置は、OFDMフレームの先頭のSPシンボルを含むキャリア‐シンボル空間の基本ブロックを、キャリア方向及びシンボル方向に基本ブロック単位でSPシンボルの符号を交互に反転させて配列したものとする。このようにして、2系のSP配置は、OFDMフレーム先頭のSPシンボルを基準に、1系のSP配置に対して、シンボル方向(時間方向)にSP(非符号反転)シンボルとSP(符号反転)シンボルとが交互に割り当てられて、尚且つキャリア‐シンボル空間の基本ブロック単位で、キャリア方向及びシンボル方向にSPシンボルの符号を交互に反転させて配列される。
【0010】
ところで、偏波MIMOに対応したOFDM信号の測定装置が市販されている(例えば、非特許文献3参照)。従来のOFDM信号の測定装置は、MIMO-OFDM信号の復調時にはOFDMフレームの先頭シンボルから順次実施される。1系・2系の分離には、等化部の処理において符号反転したSPシンボルを用いて行われる。尚、伝搬路の推定にもSPシンボルが用いられている。このため、従来のMIMO-OFDM信号の測定装置では、OFDMフレームの先頭シンボルの検出を基に、受信電力、周波数特性、コンスタレーション、MER(Modulation Error Ratio(変調誤差比))、及び遅延プロファイルが測定可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】“地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式 標準規格 ARIB STD-B31 2.2版”、平成26年3月18日改定、一般社団法人 電波産業会(ARIB)
【文献】蔀 拓也、朝倉 慎悟、齋藤 進、斉藤 知弘、渋谷 一彦、“次世代地上放送に向けた伝送技術 ~ Non-Uniform Mappingによる超多値信号の伝送特性改善 ~”、映像情報メディア学会技術報告、Vol. 38、No. 5、2014年1月、pp.117-120
【文献】“LTEテストにおけるMIMO性能とコンディション・ナンバー”、キーサイトテクノロジーズ、[online]、[令和 1年8月19日検索]、インターネット〈URL:http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5990-4759JAJP.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
非特許文献3に開示されるような従来のOFDM信号の測定装置では、MIMO-OFDM信号の復調処理の際にOFDMフレームの先頭を検出するものとなっている。OFDMフレームの先頭の検出には、測定装置において、少なくとも1OFDMフレーム分の入力信号を一時的に保存するバッファメモリが必要になる。OFDMフレームは1フレームあたりFFTサイズが8kでは224シンボル期間、16kでは112シンボル期間、32kでは56シンボル期間の長さであることから、任意のFFTサイズでOFDMフレームの先頭を検出するには、バッファメモリのバッファ容量として、少なくとも224シンボル期間分が必要になる。このため、従来のOFDM信号の測定装置では、少なくとも1OFDMフレーム分のバッファ容量を持つバッファメモリを用意する必要があり、低廉化の観点で課題があった。また、従来のMIMO-OFDM信号の測定装置では、通常の受信機と同様に、OFDMフレームの先頭を検出するために必要となるプログラムやハードウェアも不可欠になり、コストの観点で改善の余地があった。更に、従来のOFDM信号の測定装置では、少なくとも1OFDMフレーム分の信号を取り込む時間が必要となるため、信号解析結果を得る時間に改善の余地があった。
【0013】
また、従来のOFDM信号の測定装置では、階層毎にSP配置の符号関係が異なる場合でも信号解析を可能とするには、OFDMフレームの先頭を検出しなければ、周波数特性やコンスタレーションの正しい測定ができないものとなっている。
【0014】
図11は、次世代地上波放送におけるMIMO伝送時の階層毎のSP配置例を示した図である。次世代地上波放送におけるMIMO伝送時では、階層毎にSP配置を同じ(階層間の符号関係も同じ)とすることができるし、階層毎にSP配置を異なる(階層間の符号関係も異なるときがある)ものとすることもでき、種々のSP配置パターンで構成できる。階層毎にSP配置を同じとする場合では、同一シンボルごとにSPの先頭の符号は揃うものとなる(図11の左図に示す例では、A階層、B階層、C階層の全てにおいてDy=4であり、階層間の符号関係も同じ)。一方、階層毎にSP配置を異なるものとする場合、シンボルによっては階層毎にSPの配置や符号関係が異なる場合が存在する(図10の右図に示す例では、A階層、B階層、C階層の各々においてDy=1,2,4のいずれかの値を持つ組み合わせとなり、階層間の符号関係も異なるときがある)。
【0015】
しかし、従来のOFDM信号の測定装置では、OFDMフレームの先頭を検出しなければ階層毎に異なるSPの配置や符号関係を周波数特性として線形に連続させるように復調することができないため、OFDMフレームの先頭の検出以外では周波数特性を線形に連続させることができず、コンスタレーションも正しく測定できないものとなる。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、階層毎にSP配置が異なる場合でも、より低コスト化で、より短時間にMIMO-OFDM信号の測定を可能とする測定装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の測定装置は、OFDM信号の測定装置であって、MIMO伝送されたOFDM信号を受信して、同期再生後のOFDM信号における階層毎のスキャッタードパイロット(SP)信号を基にした周波数特性、及び、前記OFDM信号におけるデータ信号のコンスタレーションを少なくとも含む測定値を解析して測定する信号解析手段を備え、前記信号解析手段は、前記同期再生後のOFDM信号における階層毎のSP信号を基にOFDM信号を補正する等化処理を実行する等化手段と、を備え、前記等化手段は、1系のSP信号の信号点配置と、前記1系のSP信号の信号点配置に対して所定のSPシンボルを規則的に符号反転した2系のSP信号の信号点配置の2種類のSP配置パターンを持つMIMO伝送時に、前記同期再生後のOFDM信号から階層毎のSP信号の先頭シンボルを検出するSP先頭検出手段と、前記SP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間分のOFDM信号を格納するバッファメモリと、前記所定シンボル期間分のOFDM信号について複素除算を行って、所定の伝搬路推定によりSP信号の振幅・位相変化量を推定するSP複素除算手段と、前記振幅・位相変化量を用いて時間方向のSP補間処理を実行するSP時間方向補間手段と、前記時間方向のSP補間処理後のOFDM信号について、SP信号が非線形の周波数特性を有する場合には、SP信号が線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号に変換する周波数特性変換手段と、前記周波数特性変換手段から得られるOFDM信号に対して周波数方向のSP補間処理を行うSP周波数方向補間手段と、前記周波数方向のSP補間処理後のOFDM信号を複素除算することにより前記OFDM信号を補正する複素除算手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の測定装置において、前記周波数特性変換手段は、前記時間方向のSP補間処理後のOFDM信号が階層毎に同一シンボル上でSP信号の先頭シンボルの符号が同じであるか異なっているかを判定し、SP信号が非線形の周波数特性を持つときにはSP信号が線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号に変換することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の測定装置において、前記周波数特性変換手段は、前記時間方向のSP補間処理後のOFDM信号におけるSP信号の周波数特性を第1の周波数特性とし、前記第1の周波数特性を持つSP信号の符号反転の可能性がある階層の有無と符号反転の周期性をTMCC情報から判定し、符号反転の可能性があるとして判定した階層のSP信号については、当該所定シンボル期間分にて、判定した周期性に従い符号反転しているSPシンボルを非符号反転のSPシンボルに正負符号を反転させた第2の周波数特性に変換し、前記第1及び第2の周波数特性を比較して、線形に連続する方の周波数特性を持つOFDM信号を選択して前記SP周波数方向補間手段に出力することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の測定装置において、前記周波数特性変換手段は、前記第1及び第2の周波数特性の各々について、キャリア方向に隣接するSPシンボル間の振幅距離の総和を算出し、前記第1及び第2の周波数特性のうち、振幅距離の総和の小さい方が線形に連続する周波数特性であると判定し、より線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号を選択して出力することを特徴とする。
【0021】
更に、本発明のプログラムは、コンピュータを、本発明の測定装置における前記信号解析手段として機能させるためのプログラムとして構成する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、階層毎にSP配置が異なる場合でも、より低コスト化で、より短時間にMIMO-OFDM信号の測定が可能となる。つまり、本発明によれば、OFDMフレームの先頭の検出が不要となることから、必要となるプログラムやハードウェアが不要となり、MIMO-OFDM信号を信号解析するためのバッファメモリのバッファ容量を削減することができ、解析時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置における信号解析部の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置における一実施例の等化部の概略構成を示すブロック図である。
図4】従来技術のOFDM信号の測定装置における比較例の等化部の概略構成を示すブロック図である。
図5】従来技術のOFDM信号の測定装置における比較例の等化部の実動作として、OFDMフレームの先頭検出を行うときの動作と、このときに得られる周波数特性、及びコンスタレーションを概略的に示す図である。
図6】従来技術のOFDM信号の測定装置における比較例の等化部の課題として、SPの先頭検出を試みたときの動作と、このときに得られる周波数特性、及びコンスタレーションを概略的に示す図である。
図7】本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置における一実施例の等化部に設けられるMIMO伝送時の周波数特性変換部の制御を示すフローチャートである。
図8】(a)乃至(d)は、本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置における一実施例の等化部に設けられる周波数特性変換部の制御を説明する図である。
図9】本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置における一実施例の等化部の実動作として、SPの先頭検出を行うときの動作と、このときに得られる周波数特性、及びコンスタレーションを概略的に示す図である。
図10】次世代地上波放送で検討されているMIMO伝送時のスキャッターパイロット(SP)として、直交した1系・2系のパイロット信号の配置と符号の一例を示す図である。
図11】次世代地上波放送におけるMIMO伝送時の階層毎のSP配置例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置1について説明する。
【0025】
(全体構成)
図1は、本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置1の概略構成を示すブロック図である。図1に示す測定装置1は、複数種の偏波(本例では、水平偏波と垂直偏波)を用いてMIMO(或いはMISO)方式で伝送されたOFDM信号と、水平偏波と垂直偏波のうち一方の偏波を用いてSISO方式で伝送されたOFDM信号とを区別して受信し、これらのOFDM信号の所定の測定を行う装置として構成され、受信電力計測部11,12と、周波数変換部13,14と、アナログ/デジタル(A/D)変換部15、16と、信号解析部17と、データ収集部18と、を備えている。データ収集部18は、表示部181、操作部182、及び記録部183を有している。
【0026】
尚、MIMO方式とMISO方式は、複数種の偏波(本例では、水平偏波と垂直偏波)毎のOFDM信号を測定する観点から、測定装置1としては区別する必要はないことから、以下の説明でMIMOと称するときはMISOを含むものとする。更に、測定装置1は、MIMO方式のOFDM信号を測定できるよう構成されていることから、SISO方式のOFDM信号を測定することもできる。このため、以下の説明では、測定装置1が、主として、MIMO方式で伝送されたOFDM信号を受信し、後述する所定の測定を行う例を説明する。
【0027】
受信電力計測部11は、水平偏波用受信アンテナ(図示略)経由で水平偏波用のOFDM信号を受信してその受信電力を計測し、計測結果を示す受信電力データを生成して信号解析部17に出力する。また、受信電力計測部12は、垂直偏波用受信アンテナ(図示略)経由で垂直偏波用のOFDM信号を受信してその受信電力を計測し、計測結果を示す受信電力データを生成して信号解析部17に出力する。従って、受信電力計測部11,12は、OFDM信号を偏波毎に受信して偏波毎の受信電力を計測し、偏波毎の受信電力データを生成する受信電力計測手段として構成される。
【0028】
周波数変換部13は、水平偏波用受信アンテナ(図示略)経由で受信した水平偏波用のOFDM信号を中間周波数の信号に周波数変換し、A/D変換部15に出力する。また、周波数変換部14は、垂直偏波用受信アンテナ(図示略)経由で受信した垂直偏波用のOFDM信号を中間周波数の信号に周波数変換し、A/D変換部16に出力する。従って、周波数変換部13,14は、偏波毎に受信したOFDM信号をそれぞれ中間周波数の信号に周波数変換する周波数変換手段として構成される。
【0029】
A/D変換部15は、中間周波数に周波数変換された水平偏波用のOFDM信号をデジタル値に変換し、信号解析部17に出力する。また、A/D変換部16は、中間周波数に周波数変換された垂直偏波用のOFDM信号をデジタル値に変換し、信号解析部17に出力する。従って、A/D変換部15,16は、中間周波数に周波数変換された偏波毎のOFDM信号をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段として構成される。
【0030】
信号解析部17は、当該デジタル値に変換された偏波毎のOFDM信号に多重される、TMCC信号及び階層毎に割り当てられるデータ信号を復調する手段と、当該データ信号の位相・振幅値を推定可能とするパイロット信号(SP信号)に基づく遅延プロファイル、及び周波数特性、並びに、当該データ信号のコンスタレーション、及び変調誤差比(MER)を解析して測定する手段と、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control Information)信号のMERを解析して測定する手段と、当該複数種の偏波(本例では、水平偏波と垂直偏波)の伝送に係る評価値を示すコンディション・ナンバー(条件数)を解析して測定する手段と、受信電力計測部11,12から得られる偏波毎の受信電力データを含む測定した各測定値を表示部181又は記録部183に出力する手段と、を備えている。
【0031】
本実施形態における信号解析部17は、必須ではないが、偏波毎のOFDM信号に多重されるLLch信号を復調し、LLch信号のMERを解析して測定する手段を更に備えるものとしている。
【0032】
そして、信号解析部17は、データ信号、TMCC信号、及びLLch信号のうちいずれの信号についてのMERを測定するかを、操作部182から選択的に指定できるようになっている。
【0033】
また、信号解析部17は、SP信号に基づく遅延プロファイル、及び周波数特性、階層毎のデータ信号のコンスタレーション、及びMER、並びに、コンディション・ナンバーの各測定値のうち全部を測定することができるように構成されるが、その変形例として、各測定値のうち一部を測定するよう、操作部182から選択的に指定する構成とすることもできる。
【0034】
また、信号解析部17によって測定した各測定値は、操作部182からの設定で、表示部181に表示することや記録部183に記録することを指定できるようになっている。
【0035】
データ収集部18は、受信地点の情報(GPS情報)を自動受信する機能を有し、操作部182からの解析指示で信号解析部17を作動させ、信号解析部17によって測定した各測定値を、受信地点の情報(GPS情報)とともに一画面で表示部181に一覧表示することや、記録部183に記録するように構成されている。
【0036】
(信号解析部)
図2は、本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置1における信号解析部17の概略構成を示すブロック図である。
【0037】
信号解析部17は、操作部182からの指示に基づいて作動する、水平偏波用信号解析部17H、垂直偏波用信号解析部17V、及び条件数算出部17Cを備える。
【0038】
水平偏波用信号解析部17Hは、A/D変換部15から得られる当該デジタル値に変換された水平偏波用のOFDM信号を入力し、操作部182からの指示に基づいて、このOFDM信号に多重されるTMCC信号及びLLch信号と、階層毎に割り当てられるデータ信号とを復調し、データ信号、TMCC信号、及びLLch信号、並びにSP信号に係る所定の測定を選択的に行い、受信電力計測部11から得られる水平偏波用OFDM信号の受信電力データを含む測定した各測定値を表示部181又は記録部183に出力する。
【0039】
垂直偏波用信号解析部17Vは、A/D変換部16から得られる当該デジタル値に変換された垂直偏波用のOFDM信号を入力し、操作部182からの指示に基づいて、このOFDM信号に多重されるTMCC信号及びLLch信号と、階層毎に割り当てられるデータ信号とを復調し、データ信号、TMCC信号、及びLLch信号、並びにSP信号に係る所定の測定を選択的に行い、受信電力計測部12から得られる垂直偏波用OFDM信号の受信電力データを含む測定した各測定値を表示部181又は記録部183に出力する。
【0040】
条件数算出部17Cは、MIMOを構成する伝搬路応答の行列から、水平偏波用信号解析部17H及び垂直偏波用信号解析部17Vの測定結果(遅延プロファイル及び周波数応答)を基に最大特異値及び最小特異値を求め、これらの比からコンディション・ナンバーを算出し、その算出値を表示部181又は記録部183に出力する。このコンディション・ナンバーの算出は、操作部182からの指示に基づいて、水平偏波用信号解析部17H及び垂直偏波用信号解析部17Vにより遅延プロファイル及び周波数応答の測定結果が得られるときに行う。コンディション・ナンバーの値が小さければMIMOを構成する伝搬路として良条件にあることを表し、値が大きければ悪条件にあることを表す。
【0041】
尚、図2において、垂直偏波用信号解析部17Vは水平偏波用信号解析部17Hと同様に構成されることから、水平偏波用信号解析部17Hの構成要素のみ詳細に図示している。以下、代表して、水平偏波用信号解析部17Hの構成要素について説明する。
【0042】
水平偏波用信号解析部17Hは、データ入出力部170と、同期再生部171と、TMCC復号部172と、制御情報読出部173と、等化部175と、信号分離部176と、デインターリーブ部177と、階層分離部178と、MER算出部179A,179B,179Cと、を備える。
【0043】
データ入出力部170は、受信電力計測部11から得られる水平偏波用OFDM信号の受信電力データを入力して、遅延プロファイル及び周波数応答等の他の測定値と関連付けるよう同期させるべく操作部182からの指示に基づいて表示部181又は記録部183に出力する。
【0044】
同期再生部171は、A/D変換部15から得られる当該デジタル値に変換された水平偏波用のOFDM信号を入力して直交復調し、OFDM信号のシンボル同期及びキャリア周波数を同期再生する機能部であり、ガードインターバル(GI)相関部1711、LLch,TMCC相関部1712、及びLLch,TMCC指定部1713を有する。
【0045】
ガードインターバル(GI)相関部1711は、直交復調したOFDM信号についてFFT(Fast Fourier Transform)窓分だけ離れた時点の信号を比較することによりガードインターバルの相関を取ることで有効シンボル位置を検出し、キャリア周波数を同期させる機能部である。
【0046】
LLch,TMCC相関部1712は、ガードインターバルの相関後のOFDM信号におけるキャリア周波数のずれを検出するために、そのOFDM信号に多重されているLLch信号及びTMCC信号を用いるか、又はLLch,TMCC指定部1713によって外部入力で指定されたLLch信号及びTMCC信号を用いて、OFDM信号のキャリア位置の相関検出を行う機能部である。LLch信号及びTMCC信号は、予めキャリア番号が決まっている信号であり、尚且つ通常、データ信号(データキャリア)より振幅が大きいため、FFT後に各キャリアの振幅を比較することによりそのキャリア位置を正確に検出することができ、OFDM信号のシンボル同期及びキャリア周波数を高精度に同期再生することができる。
【0047】
LLch,TMCC指定部1713は、LLch,TMCC相関部1712に対し、操作部182より外部入力でLLch信号及びTMCC信号を指定する機能部であり、特に、TMCC信号の指定では、そのTMCC信号に含まれるTMCC制御情報を操作部182から任意に設定することができる。
【0048】
TMCC復号部172は、LLch,TMCC相関部1712を経てシンボル同期及びキャリア周波数の同期再生が為されたOFDM信号から、TMCC信号を抽出して復号することによりTMCC制御情報を取得して制御情報読出部173に出力する。尚、キャリア変調方式や、誤り訂正符号化率といった符号化変調方式を示す伝送パラメータ情報はTMCC信号を復号することで得られる。
【0049】
制御情報読出部173は、TMCC復号部172から得られたTMCC制御情報を階層毎にMER算出部179A,179B,179Cに出力する。尚、TMCC制御情報がLLch,TMCC指定部1713を経て操作部182からの外部入力でTMCC信号を指定しているときは、結局その指定したTMCC制御情報が読み出されるが、操作部182から外部入力されたTMCC制御情報を直接的に読み出してもよい。即ち、操作部182は、MER算出部179A,179B,179Cにて、外部入力するTMCC制御情報、及びOFDM信号に多重されているTMCC信号内のTMCC制御情報のうちいずれを用いるかを制御情報読出部173に対して設定することができる。
【0050】
SP信号は、LLch信号及びTMCC信号と同様に、予めキャリア番号、振幅及び位相が決まっているものであり、測定装置1側で既知である。そして、次世代地上波放送では、OFDM信号に多重されるデータキャリアの各階層(A階層、B階層、及びC階層)で個別に、SP信号のシンボルの配置を変更可能に指定できることから、本実施形態に係る測定装置1において、操作部182より外部入力で等化部175に対し抽出すべきSP信号を指定することもできる。
【0051】
等化部175は、本発明に係る特有の機能を有し、図3を参照して詳細は後述するが、LLch,TMCC相関部1712を経て同期再生後のOFDM信号を入力して、階層毎のSP信号の先頭シンボル(キャリア番号先頭のSPシンボル)を検出し、そのSP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間(本例では20シンボル期間であり、1OFDMフレーム分より短いシンボル期間)分のOFDM信号を格納するバッファメモリ1752を有する。ここで、本発明に係るバッファメモリ1752は、従来技術のような1OFDMフレーム期間(少なくとも224シンボル期間)分のOFDM信号を格納する必要はない点に留意する。
【0052】
そして、等化部175は、バッファメモリ1752に格納したOFDM信号について、複素除算を行って、所定の伝搬路推定(予め既知の送信信号としてのSP信号と、実際の受信信号としてのSP信号の伝搬路行列による推定)により振幅・位相変化量を推定して、時間方向のSP補間処理を実行後、本発明に係る周波数特性変換部1755により、SP信号が非線形の周波数特性を持つときに、SP信号が線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号に変換する処理を行う。
【0053】
続いて、等化部175は、周波数特性変換部1755から得られるOFDM信号に対して、周波数方向のSP補間処理を行って複素除算することにより、OFDM信号を補正する等化処理を実行し、信号分離部176に出力する。
【0054】
尚、等化部175は、操作部182からの指示に基づいて、SP補間処理後のOFDM信号におけるSP信号について、対応するOFDM信号を送信した送信装置(測定装置1側で既知である)の送信アンテナ(図示せず)から、本実施形態の測定装置1の受信アンテナ(図示せず)への経路の偏波毎の伝搬路応答(送受間の周波数軸上での変化量)から各経路の伝搬路応答を逆高速フーリエ変換することでその周波数領域の信号を時間領域の信号に変換することにより、送受間の時間軸上での変化量を示す遅延プロファイルを求め更に、遅延プロファイルを高速フーリエ変換することで周波数特性を求めて、これらの測定値を表示部181又は記録部183に出力する。つまり、伝搬路応答を時間軸上で測定するのが遅延プロファイル、周波数軸上で測定するのが周波数特性である。
【0055】
信号分離部176は、上記の等化部175によるSP補間及び複素除算処理後のOFDM信号に対し、操作部182より指定したZF、MMSE、MLDのうちいずれかによる信号分離・抽出法により信号分離を行うことで、当該MIMO方式の水平偏波用のOFDM信号から垂直偏波成分を分離除去し、デインターリーブ部177に出力する。
【0056】
ここでは、水平偏波用信号解析部17Hの構成について説明しているため、水平偏波用信号解析部17Hに設けられる信号分離部176はMIMO方式の水平偏波用のOFDM信号から垂直偏波成分を分離除去するものとなるが、垂直偏波用信号解析部17Vにも同様に設けられる信号分離部176は、MIMO方式の垂直偏波用のOFDM信号から水平偏波成分を分離除去するよう構成される。そこで、水平偏波用信号解析部17Hと垂直偏波用信号解析部17Vに設けられる各信号分離部176は、それぞれの偏波毎に信号分離するよう一体化させてもよい。いずれにしろ、図2に示すデインターリーブ部177以降の処理は、偏波毎のSP補間処理後のOFDM信号に対し実行される。
【0057】
デインターリーブ部177は、信号分離部176を経て得られる水平偏波用のOFDM信号に対し送信装置(図示略)側でインターリーブ処理された信号を元に戻すデインターリーブ処理を行い、階層分離部178に出力する。
【0058】
階層分離部178は、水平偏波用のOFDM信号に多重される各階層(A階層、B階層、及びC階層)のデータ信号(データキャリア)を分離して、それぞれMER算出部179A,179B,179Cに出力する。
【0059】
尚、階層分離部178は、操作部182からの指示に基づいて、偏波毎に、各階層(A階層、B階層、及びC階層)のデータ信号(データキャリア)のコンスタレーションを表示部181又は記録部183に出力する。
【0060】
また、階層分離部178は、MER算出部179A,179B,179Cのいずれか1つ以上に対して、対応するデータ信号とは別にIQ信号形式のTMCC信号及びLLch信号を多重して出力する。尚、本例の階層分離部178は、いずれの階層からもTMCC信号又はLLch信号の選択指定ができるように、MER算出部179A,179B,179Cの全てに対してTMCC信号及びLLch信号を多重している。
【0061】
MER算出部179A,179B,179Cは、操作部182からの指示に基づいて、TMCC制御情報を基に対応する符号化変調方式のデータ信号のMER、TMCC信号又はLLch信号のMERを選択的に算出して表示部181又は記録部183に出力する。
【0062】
(本発明に係る一実施例の等化部の構成)
図3は、本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置1における一実施例の等化部175の概略構成を示すブロック図である。本実施例の等化部175は、SP先頭検出部1751、バッファメモリ1752、SP複素除算部1753、SP時間方向補間部1754、周波数特性変換部1755、SP周波数方向補間部1756、複素除算部1757、及びデータ出力部1758を備える。
【0063】
図3に示す本実施例の等化部175は、従来技術に基づく等化部175P(図4を参照して後述する。)と比較して、より少ないバッファ容量のバッファメモリ1752としている点と、OFDMフレームの先頭を検出するのではなくSP信号の先頭シンボル(キャリア番号先頭のSPシンボル)を検出するSP先頭検出部1751を設ける点と、周波数特性変換部1755を新たに設けている点で、相違している。
【0064】
SP先頭検出部1751は、同期再生部171から同期再生後のOFDM信号を入力して、SP信号の先頭シンボルを検出し、そのSP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間(本例では20シンボル期間であり、1OFDMフレーム分より短いシンボル期間)分のOFDM信号をバッファメモリ1752に格納する。
【0065】
特に、SP先頭検出部1751は、図10を参照して説明したように、1系のSP信号の信号点配置と、1系のSP信号の信号点配置に対して所定のSPシンボルを規則的に符号反転した2系のSP信号の信号点配置とする2種類のSP配置パターンを持つMIMO伝送時においても、同期再生後のOFDM信号から階層毎のSP信号の先頭シンボルを検出し、そのSP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間(本例では20シンボル期間)分のOFDM信号をバッファメモリ1752に格納する。
【0066】
従って、バッファメモリ1752には、SP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間(本例では20シンボル期間)分のOFDM信号が格納される。ここで、次世代地上波放送では、図11を参照して説明したように、各階層(A階層、B階層、及びC階層)で個別に、SP(非符号反転)とSP(符号反転)とを含むSP配置をデータシンボルに対して種々のSP配置パターンで構成可能である。一方で、本実施例の等化部175においては、SP先頭検出部1751及び後述する周波数特性変換部1755を設けていることから、バッファメモリ1752は、いずれのSP配置パターンでも、最大で20シンボル期間分のバッファ容量で足りるようにしている。つまり、図11に例示するようにA階層、B階層、C階層の各々においてDy=1,2,4のいずれかの値を持つ組み合わせとなり、バッファメモリ1752は、最大でも、時間方向で4シンボル(Dy=4)×5シンボル(最大間隔)=20シンボル期間分のOFDM信号を一時記憶するバッファ容量であればよい。尚、バッファメモリ1752は、特定のDyの値を持つSP配置のみを指定して測定対象とする場合では、20シンボル期間未満のバッファ容量とすることも可能であり、例えば、最小で、時間方向で1シンボル(Dy=1)×1シンボル(最小間隔)=1シンボル期間分のOFDM信号を一時記憶するバッファ容量とすることも可能である。
【0067】
SP複素除算部1753は、バッファメモリ1752に格納されたSP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間分のOFDM信号について複素除算を行うことで伝搬路を推定して、予め既知の送信信号としてのSP信号と、実際の受信信号としてのSP信号の振幅・位相変化量を検出し、当該シンボル期間分のOFDM信号と、SP補間を行うために使用する振幅・位相変化量の情報をSP時間方向補間部1754に出力する。
【0068】
SP時間方向補間部1754は、SP複素除算部1753から得られる振幅・位相変化量の情報を基に、当該シンボル期間分のOFDM信号におけるシンボル方向(時間方向)のSP補間処理を実行して、時間方向のSP補間処理後のOFDM信号を周波数特性変換部1755に出力する。
【0069】
周波数特性変換部1755は、後述する図7及び図8を参照して詳細に説明するが、時間方向のSP補間処理後のOFDM信号について、時間方向のSP補間処理後のOFDM信号が階層毎に同一シンボル上でSP信号の先頭シンボルの符号が同じであるか異なっているかを判定し、SP信号が非線形の周波数特性を持つときにはSP信号が線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号に変換してSP周波数方向補間部1756に出力する。尚、周波数特性は、横軸をA階層、B階層、C階層の全てについて表されるSP信号のキャリア番号を横軸に、各階層のSP信号の振幅を縦軸で表した2次元で表すことができる。また、非MIMO伝送時では、この周波数特性変換部1755の処理は省略してバイパスできる。
【0070】
SP周波数方向補間部1756は、周波数特性変換部1755から得られる周波数特性を持つOFDM信号に対して、周波数方向のSP補間処理を行って複素除算部1757に出力する。
【0071】
複素除算部1757は、SP周波数方向補間部1756による周波数方向のSP補間処理後のOFDM信号を用いて、元のOFDM信号を複素除算することにより、OFDM信号を補正する等化処理を実行し、信号分離部176に出力する。
【0072】
データ出力部1758は、操作部182からの指示に基づいて、SP周波数方向補間部1756による周波数方向のSP補間処理後のOFDM信号におけるSP信号の周波数特性と、対応する遅延プロファイルのデータを外部出力する。尚、データ出力部1758は、操作部182からの指示に基づいて、SP時間方向補間部1754及び周波数特性変換部1755からそれぞれ得られるSP信号の周波数特性(第1及び第2の周波数特性)と、対応する遅延プロファイルのデータを外部出力するように構成することもできる。
【0073】
(従来技術に基づく比較例の等化部の構成)
ここで、図4乃至図6を参照して、非特許文献3に開示されるような従来の測定装置における比較例の等化部175Pと、その課題について説明する。図4は、従来技術のOFDM信号の測定装置における比較例の等化部175Pの概略構成を示すブロック図である。また、図5は、従来技術のOFDM信号の測定装置における比較例の等化部175Pの実動作として、OFDMフレームの先頭検出を行うときの動作と、このときに得られる周波数特性、及びコンスタレーションを概略的に示す図である。そして、図6は、従来技術のOFDM信号の測定装置における比較例の等化部175Pの課題として、SPの先頭検出を試みたときの動作と、このときに得られる周波数特性、及びコンスタレーションを概略的に示す図である。
【0074】
まず、図4に示すように、従来技術に基づく比較例の等化部175Pは、OFDMフレーム先頭検出部1751P、バッファメモリ1752P、SP複素除算部1753、SP時間方向補間部1754、SP周波数方向補間部1756、複素除算部1757、及びデータ出力部1758を備える。尚、等化部175PにおけるSP複素除算部1753、SP時間方向補間部1754、SP周波数方向補間部1756、複素除算部1757、及びデータ出力部1758の動作は、図3に示す本発明に係る一実施例の等化部175と同様に動作する。このため、図4においては、図3に示す本発明に係る一実施例の等化部175と同様な構成要素には同一の参照番号を付している。
【0075】
図4に示す比較例の等化部175Pでは、図3に示すSP先頭検出部1751ではなく、OFDMフレーム先頭検出部1751Pが設けられ、図3に示す周波数特性変換部1755が設けられていない。
【0076】
OFDMフレーム先頭検出部1751Pは、入力されるOFDM信号からOFDMフレームの先頭シンボルを検出し、1OFDMフレーム期間分のOFDM信号をバッファメモリ1752Pに格納する。
【0077】
従って、バッファメモリ1752Pには、1OFDMフレーム期間(少なくとも224シンボル期間)分のOFDM信号が格納される。このため、比較例の等化部175Pにおいては、任意のFFTサイズでOFDMフレームの先頭を検出するためのバッファメモリ1752Pのバッファ容量として、1OFDMフレーム期間(少なくとも224シンボル期間)分のOFDM信号を格納するバッファ容量が必要になり、高コストになる。
【0078】
図4に示すSP複素除算部1753は、バッファメモリ1752Pに格納された1OFDMフレーム期間(少なくとも224シンボル期間)分のOFDM信号について複素除算を行うことで伝搬路を推定して、予め既知の送信信号としてのSP信号と、実際の受信信号としてのSP信号の振幅・位相変化量を検出し、当該シンボル期間分のOFDM信号と、SP補間を行うために使用する振幅・位相変化量の情報をSP時間方向補間部1754に出力する。
【0079】
図4に示すSP時間方向補間部1754は、SP複素除算部1753から得られる振幅・位相変化量の情報を基に、当該シンボル期間分のOFDM信号におけるシンボル方向(時間方向)のSP補間処理を実行して、時間方向のSP補間処理後のOFDM信号をSP周波数方向補間部1756に出力する。
【0080】
図4に示すSP周波数方向補間部1756は、時間方向のSP補間処理後のOFDM信号に対して、周波数方向のSP補間処理を行って複素除算部1757に出力する。
【0081】
図4に示す複素除算部1757は、SP周波数方向補間部1756による周波数方向のSP補間処理後のOFDM信号を用いて、元のOFDM信号を複素除算することにより、OFDM信号を補正する等化処理を実行し、信号分離部176に出力する。
【0082】
図4に示すデータ出力部1758は、SP周波数方向補間部1756による周波数方向のSP補間処理後のOFDM信号におけるSP信号の周波数特性と、対応する遅延プロファイルのデータを外部出力する。
【0083】
ここで、1OFDMフレーム期間分のOFDM信号は、周期性を持つSP(非符号反転)とSP(符号反転)を含むものとなる。このため、例えば図5の左上図に示すように階層毎にSP配置が同じ(階層間の符号関係も同じ)とき(図示する例では、全ての階層でDy=4)、図5の右上図に示すように階層毎にSP配置を異なる(階層間の符号関係も異なるときがある)とき(図示する例では、A,B階層でDy=2、C階層でDy=4)、のいずれであっても、等化部175Pは、周波数方向もOFDMフレームの先頭を基準に等化処理を行うため、各階層(A階層、B階層、C階層)の全ての周波数特性が線形に連続したものを得ることができる(図5の左中図、及び右中図を参照)。尚、図5の左中図、及び右中図では、A階層、B階層、C階層を全て合わせた周波数特性を図示しており、IQ信号を構成する水平偏波のリアルパート(“水平Re”)、水平偏波のイマジナリパート(“水平Im”)、垂直偏波のリアルパート(“垂直Re”)、及び垂直偏波のイマジナリパート(“垂直Im”)の周波数特性が得られる。
【0084】
そして、周波数特性として線形に連続したものを得ることができることから、この結果として、図5の左下図、及び右下図に例示するように、この周波数特性を用いて等化した信号のコンスタレーションは正しく得られる。尚、図5の左下図、及び右下図では、C階層の垂直偏波時のコンスタレーションを横軸及び縦軸をそれぞれI軸及びQ軸として図示しており、IQ信号を構成する垂直偏波のリアルパート(“垂直Re”)、及び垂直偏波のイマジナリパート(“垂直Im”)の座標値は正規化している。従って、図4に示す比較例の等化部175Pは、1OFDMフレーム期間分のOFDM信号を解析する分には、階層毎にSP配置や符号関係が同じであるか否かに関わらず、A階層、B階層、C階層の各コンスタレーションの測定も安定して得られる。
【0085】
ただし、図4に示す比較例の等化部175Pでは、少なくとも1OFDMフレーム分のバッファ容量を持つバッファメモリ1752Pを用意する必要があり、低コスト化に不利である。また、OFDMフレーム先頭検出部1751Pとして、OFDMフレームの先頭を検出するために必要となるプログラムやハードウェアも不可欠になり、この観点からも低コスト化に不利である。更に、比較例の等化部175Pは、少なくとも1OFDMフレーム分の信号を取り込む時間が必要となるため、信号解析時間の短縮にも不利である。
【0086】
ところで、図4に示す比較例の等化部175Pにおいて、バッファメモリ1752Pにおける少なくとも1OFDMフレーム分とする比較的大きなバッファ容量を許容するとしても、仮に、図4に示すOFDMフレーム先頭検出部1751Pを、図3に示すSP先頭検出部1751に単に置き換えたのみでは、階層毎に異なるSPの配置や符号関係を周波数特性として線形に連続させることができない。これについて、図6を参照して説明する。
【0087】
図6に示すように、図4に示すOFDMフレーム先頭検出部1751Pを、図3に示すSP先頭検出部1751に単に置き換えたのみである場合の等化部175Pは、例えば図6の左上図に示すように階層毎にSP配置が同じ(階層間の符号関係も同じ)とき(図示する例では、全ての階層でDy=4)であれば、周波数方向はSP信号の先頭シンボルを基準に等化することになるため、SP(非符号反転)とSP(符号反転)の周期性が保たれて、各階層(A階層、B階層、C階層)の全ての周波数特性が線形に連続したものを得ることができ(図6の左中図を参照)、A階層、B階層、C階層の各コンスタレーションの測定も安定して得られる(図6の左下図を参照)。
【0088】
しかしながら、図6の右上図に示すように階層毎にSP配置を異なる(階層間の符号関係も異なるときがある)とき(図示する例では、A,B階層でDy=2、C階層でDy=4)のとき、図4に示すOFDMフレーム先頭検出部1751Pを、図3に示すSP先頭検出部1751に単に置き換えたのみである場合の等化部175Pは、同じく周波数方向はSP信号の先頭シンボルを基準に等化することになるため、SP(非符号反転)とSP(符号反転)の周期性を保つことができず、本例ではC階層の周波数特性のみ非線形となり(図6の右中図を参照)、C階層のコンスタレーションの測定が不安定になる(図6の右下図を参照)。
【0089】
尚、図6の左中図、及び右中図についても、図5と同様にA階層、B階層、C階層を全て合わせた周波数特性を図示しており、図6の左下図、及び右下図についても、図5と同様にC階層の垂直偏波時のコンスタレーションを横軸及び縦軸をそれぞれI軸及びQ軸として図示している。
【0090】
つまり、図4に示すOFDMフレーム先頭検出部1751Pを、図3に示すSP先頭検出部1751に単に置き換えたのみである場合の等化部175Pであっても、SP信号の先頭シンボル(キャリア番号先頭のSPシンボル)はシンボル方向に所定間隔ごとに存在するため、階層毎のSP配置が同じであれば階層毎SPの符号の正負は一致するので、問題なく伝搬路を推定可能である。
【0091】
しかし、図4に示すOFDMフレーム先頭検出部1751Pを、図3に示すSP先頭検出部1751に単に置き換えたのみである場合の等化部175Pでは、階層毎にSP配置が異なる場合、同一シンボル内で階層毎のSPの符号の正負が異なる場合があるため、伝搬路を推定して得た周波数特性において、SPの符号の正負が異なるセグメントが反転してしまい、正しくOFDM復調を行うことができない。
【0092】
つまり、階層毎にSP配置が異なる場合においては同一シンボル内で最下層のSP(C階層)とその上の階層(A階層、B階層)のSPの先頭の符号が異なる場合があり、SP信号の先頭において符号が異なる場合に、SP信号の先頭シンボルより伝搬路を推定し周波数特性を求めると、周波数特性が線形とはならない。図6の右図で示すように、例えば最下層(C階層)のSPの符号が反転していると、最下層(C階層)の信号の符号が反転したような周波数特性となり、この周波数特性を用いて等化した信号のコンスタレーションは正しく復調されない。
【0093】
そこで、図3に示す本発明に係る一実施例の等化部175は、従来技術に基づく等化部175P(図4を参照して後述する。)と比較して、より少ないバッファ容量のバッファメモリ1752とし、尚且つ、OFDMフレームの先頭を検出するのではなくSP信号の先頭シンボル(キャリア番号先頭のSPシンボル)を検出するSP先頭検出部1751を設け、更に、以下、詳細に説明する周波数特性変換部1755を設けている。
【0094】
(本発明に係る一実施例の等化部における周波数特性変換部の制御)
図7は、本発明による一実施形態のOFDM信号の測定装置1における一実施例の等化部175に設けられるMIMO伝送時の周波数特性変換部1755の制御を示すフローチャートである。また、図8(a)乃至(d)は、周波数特性変換部1775の制御を説明する図である。
【0095】
図7に示すように、周波数特性変換部1775は、まず、時間方向のSP補間処理後のOFDM信号を入力し、そのSP信号の周波数特性を「第1の周波数特性」として、当該OFDM信号を一時保持する(ステップS1)。
【0096】
続いて、周波数特性変換部1755は、第1の周波数特性を持つSP信号の符号反転の可能性がある階層の有無と符号反転の周期性をTMCC情報から判定し、符号反転の可能性があるとして判定した階層のSP信号については、当該所定シンボル期間分(20シンボル期間分)において、判定した周期性に従いSP(符号反転)シンボルを、-1を乗じてSP(非符号反転)シンボルに変換する(ステップS2)。例えば、周波数特性変換部1755は、図8(a)に示すように、入力されるSP信号の第1の周波数特性としてC階層の周波数特性のみ非線形であるとすると、図8(b)に示すように、C階層の符号反転SPシンボルの正負符号を反転して、第1の周波数特性から第2の周波数特性を生成する。
【0097】
尚、図10を参照して説明したように、MIMO伝送時では、2系のOFDMフレームの先頭のSPシンボルについて、1系のOFDMフレームの先頭のSPシンボルに+1を乗じたものとし(非符号反転)、このOFDMフレーム先頭のSPシンボルを基準に、キャリア間隔Dx及びシンボル間隔Dyを基に規定されるキャリア‐シンボル空間においてシンボル方向(時間方向)及びキャリア方向(周波数方向)にSPシンボルの符号値を交互に反転させる。そして、2系のSP配置は、OFDMフレームの先頭のSPシンボルを含むキャリア‐シンボル空間の基本ブロックを、キャリア方向及びシンボル方向に基本ブロック単位でSPシンボルの符号を交互に反転させて配列したものである。そして、符号反転方式が採用されているか否かは、受信側で判別できるようにTMCC情報に記述される。
【0098】
続いて、周波数特性変換部1755は、「第1の周波数特性」を、当該判定に基づいてSPシンボルの正負符号を反転させた「第2の周波数特性」に変換し、この第2の周波数特性を持つOFDM信号を一旦生成し、一時保持する(ステップS3)。
【0099】
続いて、周波数特性変換部1755は、第1及び第2の周波数特性を比較して、より線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号を選択する。
【0100】
より具体的には、周波数特性変換部1755は、第1及び第2の周波数特性の各々について、階層におけるキャリア方向に隣接するSPシンボル間の振幅距離の総和を算出する(ステップS4)。例えば、周波数特性変換部1755は、図8(c)に示すように、図8(a)に示す第1の周波数特性についてMIMO伝送の偏波毎の全ての階層におけるキャリア方向に隣接するSPシンボル間の振幅距離の総和を算出するとともに、図8(d)に示すように、図8(b)に示す第2の周波数特性についてMIMO伝送の偏波毎の全ての階層におけるキャリア方向に隣接するSPシンボル間の振幅距離の総和を算出する。尚、図8(c),(d)は、A階層(又はB階層)とC階層の境界に現れるSPシンボルを拡大図示しており、特に、図8(c)は、図8(d)に比べて、非線形の周波数特性になっている様子を例示している。
【0101】
最終的に、周波数特性変換部1755は、第1及び第2の周波数特性のうち、振幅距離の総和の小さい方が線形に連続する周波数特性であると判定し、より線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号を選択してSP周波数方向補間部1756に出力する(ステップS5)。SP配置は、TMCC情報から符号反転している階層を知ることができるが、線形でない周波数特性と、線形な周波数特性のいずれが第一に現れるかは、検出したSP信号の先頭シンボルによって変化することになる。即ち、検出したSP信号の先頭シンボルの階層毎の符号が揃っていれば線形な周波数特性が第一に現れるが、揃っていなければ非線形な周波数特性が第一に現れることから、ステップS4,S5の検証処理が必要になる。
【0102】
このようにして、周波数特性変換部1755は、時間方向のSP補間処理後のOFDM信号が階層毎に同一シンボル上でSP信号の先頭シンボルの符号が同じであるか異なっているかを判定し、SP信号が非線形の周波数特性を持つときにはSP信号が線形に連続する周波数特性を持つOFDM信号に変換する。
【0103】
従って、周波数特性変換部1755を有する図3に示す本発明に係る一実施例の等化部175は、SP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間(本例では20シンボル期間)分のOFDM信号の解析であっても、例えば図9の左上図に示すように階層毎にSP配置が同じ(階層間の符号関係も同じ)とき(図示する例では、全ての階層でDy=4)、図9の右上図に示すように階層毎にSP配置を異なる(階層間の符号関係も異なるときがある)とき(図示する例では、A,B階層でDy=2、C階層でDy=4)、のいずれであっても、各階層(A階層、B階層、C階層)の全ての周波数特性が線形に連続したものを得ることができる(図9の左中図、及び右中図を参照)。
【0104】
そして、周波数特性として線形に連続したものを得ることができることから、この結果として、図9の左下図、及び右下図に例示するように、この周波数特性を用いて等化した信号のコンスタレーションは正しく得られる。従って、SP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間(本例では20シンボル期間であり、1OFDMフレーム分より短いシンボル期間)分のOFDM信号の解析であっても、階層毎にSP配置や符号関係が同じであるか否かに関わらず、A階層、B階層、C階層の各コンスタレーションの測定も安定して得られる。尚、図9の左中図、及び右中図についても、図6と同様にA階層、B階層、C階層を全て合わせた周波数特性を図示しており、図9の左下図、及び右下図についても、図6と同様にC階層の垂直偏波時のコンスタレーションを横軸及び縦軸をそれぞれI軸及びQ軸として図示している。
【0105】
これにより、図3に示す本発明に係る一実施例の等化部175は、SP信号の先頭シンボルから所定シンボル期間(本例では20シンボル期間であり、1OFDMフレーム分より短いシンボル期間)分のOFDM信号の解析であっても、階層毎にSP配置が同一である場合、及び異なる場合のいずれの場合でも、線形に連続した周波数特性のOFDM信号を形成することができ、安定したコンスタレーションを得ることができる。
【0106】
従って、本実施形態の測定装置1によれば、階層毎にSP配置が異なる場合でも、より低コスト化で、より短時間にMIMO-OFDM信号の測定が可能となる。つまり、本実施形態の測定装置1によれば、OFDMフレームの先頭の検出が不要となることから、必要となるプログラムやハードウェアが不要となり、MIMO-OFDM信号を信号解析するためのバッファメモリのバッファ容量を削減することができ、解析時間の短縮が可能となる。
【0107】
上述した各実施形態の例に関して、測定装置1の信号解析部17、或いは信号解析部17及びデータ収集部18として機能するコンピュータを構成し、これらの装置の各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。具体的には、各手段を制御するための制御部をコンピュータ内の中央演算処理装置(CPU)で構成でき、且つ、各手段を動作させるのに必要となるプログラムを適宜記憶する記憶部を少なくとも1つのメモリで構成させることができる。即ち、そのようなコンピュータに、CPUによって該プログラムを実行させることにより、上述した各手段の有する機能を実現させることができる。更に、各手段の有する機能を実現させるためのプログラムを、前述の記憶部(メモリ)の所定の領域に格納させることができる。そのような記憶部は、装置内部のRAM又はROMなどで構成させることができ、或いは又、外部記憶装置(例えば、ハードディスク)で構成させることもできる。また、そのようなプログラムは、コンピュータで利用されるOS上のソフトウェア(ROM又は外部記憶装置に格納される)の一部で構成させることができる。更に、そのようなコンピュータに、各手段として機能させるためのプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録することができる。また、上述した各手段をハードウェア又はソフトウェアの一部として構成させ、各々を組み合わせて実現させることもできる。
【0108】
上述の各実施形態については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、上述の説明では、測定装置1は、主としてMIMO方式のOFDM信号の測定を行う例に説明したが、MISO方式のOFDM信号の測定や、SISO方式のOFDM信号の測定にも利用できる。従って、本発明は、上述の各実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、次世代地上波放送のOFDM信号を測定する用途に有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 測定装置
11,12 受信電力計測部
13,14 周波数変換部
15,16 アナログ/デジタル(A/D)変換部
17 信号解析部
17H 水平偏波用信号解析部
17V 垂直偏波用信号解析部
17C 条件数算出部
18 データ収集部
170 データ入出力部
171 同期再生部
172 TMCC復号部
173 制御情報読出部
175 等化部
175P 従来技術における等化部
176 信号分離部
177 デインターリーブ部
178 階層分離部
179A,179B,179C MER算出部
181 表示部
182 操作部
183 記録部
1751 SP先頭検出部
1751P 従来技術におけるOFDMフレーム先頭検出部
1752 バッファメモリ
1752P 従来技術におけるバッファメモリ
1753 SP複素除算部
1754 SP時間方向補間部
1755 周波数特性変換部
1756 SP周波数方向補間部
1757 複素除算部
1758 データ出力部
図1
図2
図3
図4
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図10
図11